特許第6843324号(P6843324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6843324ナノコンポジット粒子及びその製造方法、カラム充填材、表面処理剤、フィルタ、並びにナノコンポジット粒子分散液の製造方法及び表面処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843324
(24)【登録日】2021年2月26日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】ナノコンポジット粒子及びその製造方法、カラム充填材、表面処理剤、フィルタ、並びにナノコンポジット粒子分散液の製造方法及び表面処理方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/06 20060101AFI20210308BHJP
   C08K 5/5419 20060101ALI20210308BHJP
   C08L 43/04 20060101ALI20210308BHJP
   C08L 9/02 20060101ALI20210308BHJP
   C08L 25/06 20060101ALI20210308BHJP
   C08K 3/06 20060101ALI20210308BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20210308BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20210308BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20210308BHJP
   C09D 125/10 20060101ALI20210308BHJP
   C09D 109/06 20060101ALI20210308BHJP
   C09D 125/04 20060101ALI20210308BHJP
   B01D 17/022 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   C08L9/06
   C08K5/5419
   C08L43/04
   C08L9/02
   C08L25/06
   C08K3/06
   C08K3/22
   C09K3/18 104
   C09D5/16
   C09D125/10
   C09D109/06
   C09D125/04
   B01D17/022 501
【請求項の数】22
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-35956(P2017-35956)
(22)【出願日】2017年2月28日
(65)【公開番号】特開2018-141062(P2018-141062A)
(43)【公開日】2018年9月13日
【審査請求日】2019年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504229284
【氏名又は名称】国立大学法人弘前大学
(74)【代理人】
【識別番号】100132207
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100181490
【弁理士】
【氏名又は名称】金森 靖宏
(72)【発明者】
【氏名】高橋 里香
(72)【発明者】
【氏名】澤田 英夫
【審査官】 土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−180097(JP,A)
【文献】 特開2003−138046(JP,A)
【文献】 特開2010−235943(JP,A)
【文献】 特開2016−164226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
C09D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンブタジエン共重合体と、下記式(I)で示されるフッ素含有化合物とを含有することを特徴とするナノコンポジット粒子。
【化1】
(上記式(I)中、R1はフルオロアルキル基を含有する基を表し、R2はアルキル基又はアルコキシアルキル基を表し、R3及びR4は各々独立して水素原子又は1価の有機基を表し、xは1〜100の整数であり、yは0〜100の整数である。)
【請求項2】
有機又は無機微粉末をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載のナノコンポジット粒子。
【請求項3】
前記有機微粉末が、アクリロニトリルブタジエンゴム粉末、スチレンブタジエンゴム粉末又はポリスチレン粉末であることを特徴とする請求項2に記載のナノコンポジット粒子。
【請求項4】
前記フッ素含有化合物と前記ポリスチレン粉末との含有比(質量基準)が、1:1〜5:1であることを特徴とする請求項3に記載のナノコンポジット粒子。
【請求項5】
前記スチレンブタジエン共重合体が、未加硫のスチレンブタジエンゴムを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のナノコンポジット粒子。
【請求項6】
前記スチレンブタジエン共重合体が、スチレンブタジエンポリマーであり、
加硫剤をさらに含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のナノコンポジット粒子。
【請求項7】
前記式(I)において、yが0であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のナノコンポジット粒子。
【請求項8】
前記式(I)において、R1で表されるフルオロアルキル基を含有する基が、下記式(II)で表される基であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のナノコンポジット粒子。
【化2】
(上記式(II)中、pは0〜2の整数である。)
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のナノコンポジット粒子を含むことを特徴とするカラム充填材。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載のナノコンポジット粒子と、前記ナノコンポジット粒子を分散させてなる分散媒とを含むことを特徴とする表面処理剤。
【請求項11】
フィルタ基材と、
請求項1〜8のいずれかに記載のナノコンポジット粒子と
を含み、
前記ナノコンポジット粒子が前記フィルタ基材に担持されてなることを特徴とするフィルタ。
【請求項12】
スチレンブタジエン共重合体と、下記式(I)で示されるフッ素含有化合物と、分散媒とを、アルカリ条件下にて混合することを特徴とするナノコンポジット粒子分散液の製造方法。
【化3】
(上記式(I)中、R1はフルオロアルキル基を含有する基を表し、R2はアルキル基又はアルコキシアルキル基を表し、R3及びR4は各々独立して水素原子又は1価の有機基を表し、xは1〜100の整数であり、yは0〜100の整数である。)
【請求項13】
有機微粉末又は無機微粉末をさらに混合することを特徴とする請求項12に記載のナノコンポジット粒子分散液の製造方法。
【請求項14】
前記有機微粉末が、アクリロニトリルブタジエンゴム粉末、スチレンブタジエンゴム粉末又はポリスチレン粉末であることを特徴とする請求項13に記載のナノコンポジット粒子分散液の製造方法。
【請求項15】
前記フッ素含有化合物と前記ポリスチレン粉末とを、1:1〜5:1の含有比(質量基準)で混合することを特徴とする請求項14に記載のナノコンポジット粒子分散液の製造方法。
【請求項16】
前記スチレンブタジエン共重合体が、未加硫のスチレンブタジエンゴムを含むスチレンブタジエンゴム組成物であることを特徴とする請求項12〜15のいずれかに記載のナノコンポジット粒子分散液の製造方法。
【請求項17】
前記スチレンブタジエン共重合体が、スチレンブタジエンポリマーであって、
加硫剤をさらに混合することを特徴とする請求項12〜15のいずれかに記載のナノコンポジット粒子分散液の製造方法。
【請求項18】
前記加硫剤が、硫黄及び酸化亜鉛であることを特徴とする請求項17に記載のナノコンポジット粒子分散液の製造方法。
【請求項19】
前記式(I)において、yが0であることを特徴とする請求項12〜18のいずれかに記載のナノコンポジット粒子分散液の製造方法。
【請求項20】
前記式(I)において、R1で表されるフルオロアルキル基を含有する基が、下記式(II)で表される基であることを特徴とする請求項12〜19のいずれかに記載のナノコンポジット粒子分散液の製造方法。
【化4】
(上記式(II)中、pは0〜2の整数である。)
【請求項21】
請求項12〜20のいずれかに記載の方法により製造された前記ナノコンポジット粒子分散液から前記分散媒を除去することを特徴とするナノコンポジット粒子の製造方法。
【請求項22】
請求項12〜20のいずれかに記載の方法により製造された前記ナノコンポジット粒子分散液を被処理基材の表面に塗布することを特徴とする表面処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノコンポジット粒子及びその製造方法、カラム充填材、表面処理剤、フィルタ、並びにナノコンポジット粒子分散液の製造方法及び表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用機械部品等の生産には、多種、多量の油が使用されており、製造工程における部品洗浄や製品洗浄の工程等で排出される含油排水の量も多くなっている。このような含油排水から油と水とを分離する油水分離技術として、例えば、比重分離等の静置分離技術、遠心分離技術、吸着分離技術等が知られている。
【0003】
これらの分離技術のうち、静置分離技術は多大な時間を要するという問題があり、遠心分離技術は大掛かりな装置を必要とするという問題があり、吸着分離技術は大量の含油排水の処理に不向きであるという問題がある。そこで、従来、水及び油に対する親和性に違いを有する、撥水・親油表面を有する油水分離材を用い、当該親和性の差を利用して水と油とを分離する技術が提案されている(特許文献1参照)。また、所定のフッ素化合物と無機化合物とがナノコンポジット化された複合材料であって、親水・撥油性を有するフッ素含有ナノコンポジット粒子をろ紙や不織布に担持させた油水分離膜が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
タッチパネルを含むディスプレイ表面には、指紋の付着によって画面の視認性を低下させてしまうという問題がある。そのため、指紋が付着しても当該指紋を視認し難い耐指紋表面が求められている。このような耐指紋表面として、従来、油脂成分が広がることで液滴が形成されず、指紋が視認され難くなる撥水・親油表面が知られている(特許文献3参照)。
【0005】
ある種のフッ素系化合物は、機材の表面処理に用いると、優れた撥水性、撥油性、防汚性等を発現し得ることが知られている。このようなフッ素系化合物を含む表面処理剤により得られる表面処理層は、防汚層等の機能性薄膜として、例えば、ガラス、プラスチック、繊維、建築部材等の多種多様な基材に設けられている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−91168号公報
【特許文献2】特開2015−187220号公報
【特許文献3】特開2010−128363号公報
【特許文献4】特開2014−196432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載されている油水分離技術や、特許文献3に記載されている撥水・親油表面においては、優れた撥水・親油性を有する材料が必須であり、当該撥水・親油性をさらに向上させてなる材料の提案に対する要望が高まっている。
【0008】
また、上記特許文献4に記載されている撥水・撥油表面においても同様に、優れた撥水・撥油性を有する材料が必須であり、当該撥水・撥油性をさらに向上させてなる材料の提案に対する要望が高まっている。
【0009】
上記課題に鑑みて、本発明は、極めて高い撥水性と、撥油性又は親油性とを有するナノコンポジット粒子及びその製造方法、当該ナノコンポジット粒子を用いて油水分離に利用可能なカラム充填材及びフィルタ、被処理基材の表面に極めて高い撥水性と、撥油性又は親油性とを付与することのできる表面処理剤及び表面処理方法、並びにナノコンポジット粒子分散液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、スチレンブタジエン共重合体と、下記式(I)で示されるフッ素含有化合物とを含有することを特徴とするナノコンポジット粒子を提供する(発明1)。
【0011】
【化1】
(上記式(I)中、R1はフルオロアルキル基を含有する基を表し、R2はアルキル基又はアルコキシアルキル基を表し、R3及びR4は各々独立して水素原子又は1価の有機基を表し、xは1〜100の整数であり、yは0〜100の整数である。)
【0012】
上記発明(発明1)において、有機又は無機微粉末をさらに含有するのが好ましく(発明2)、前記有機微粉末が、アクリロニトリルブタジエンゴム粉末、スチレンブタジエンゴム粉末又はポリスチレン粉末であるのが好ましく(発明3)、前記フッ素含有化合物と前記ポリスチレン粉末との含有比(質量基準)が、1:1〜5:1であるのが好ましい(発明4)。
【0013】
上記発明(発明1〜4)において、前記スチレンブタジエン共重合体が、未加硫のスチレンブタジエンゴムを含んでいてもよいし(発明5)、スチレンブタジエンポリマーであって、加硫剤をさらに含有していてもよい(発明6)。
【0014】
上記発明(発明1〜6)において、前記式(I)において、yが0であるのが好ましく(発明7)、前記式(I)において、R1で表されるフルオロアルキル基を含有する基が、下記式(II)で表される基であるのが好ましい(発明8)。
【0015】
【化2】
(上記式(II)中、pは0〜2の整数である。)
【0016】
また、本発明は、上記発明(発明1〜8)に係るナノコンポジット粒子を含むことを特徴とするカラム充填材(発明9)、上記発明(発明1〜8)に係るナノコンポジット粒子と、前記ナノコンポジット粒子を分散させてなる分散媒とを含むことを特徴とする表面処理剤(発明10)、及びフィルタ基材と、上記発明(発明1〜8)に係るナノコンポジット粒子とを含み、前記ナノコンポジット粒子が前記フィルタ基材に担持されてなることを特徴とするフィルタ(発明11)を提供する。
【0017】
さらに、本発明は、スチレンブタジエン共重合体と、下記式(I)で示されるフッ素含有化合物と、分散媒とを、アルカリ条件下にて混合することを特徴とするナノコンポジット粒子分散液の製造方法を提供する(発明12)。
【0018】
【化3】
(上記式(I)中、R1はフルオロアルキル基を含有する基を表し、R2はアルキル基又はアルコキシアルキル基を表し、R3及びR4は各々独立して水素原子又は1価の有機基を表し、xは1〜100の整数であり、yは0〜100の整数である。)
【0019】
上記発明(発明12)において、有機微粉末又は無機微粉末をさらに混合するのが好ましく(発明13)、前記有機微粉末が、アクリロニトリルブタジエンゴム粉末、スチレンブタジエンゴム粉末又はポリスチレン粉末であるのが好ましく(発明14)、前記フッ素含有化合物と前記ポリスチレン粉末とを、1:1〜5:1の含有比(質量基準)で混合するのが好ましい(発明15)。
【0020】
上記発明(発明12〜15)において、前記スチレンブタジエン共重合体が、未加硫のスチレンブタジエンゴムを含むスチレンブタジエンゴム組成物であってもよいし(発明16)、スチレンブタジエンポリマーであって、加硫剤をさらに混合してもよく(発明17)、前記加硫剤として、硫黄及び酸化亜鉛を用いることができる(発明18)。
【0021】
上記発明(発明12〜18)において、前記式(I)において、yが0であるのが好ましく(発明19)、前記式(I)において、R1で表されるフルオロアルキル基を含有する基が、下記式(II)で表される基であるのが好ましい(発明20)。
【0022】
【化4】
(上記式(II)中、pは0〜2の整数である。)
【0023】
さらにまた、本発明は、上記発明(発明12〜20)に係る方法により製造された前記ナノコンポジット粒子分散液から前記分散媒を除去することを特徴とするナノコンポジット粒子の製造方法(発明21)、及び上記発明(発明12〜20)に係る方法により製造された前記ナノコンポジット粒子分散液を被処理基材の表面に塗布することを特徴とする表面処理方法を提供する(発明22)。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、極めて高い撥水性と、撥油性又は親油性とを有するナノコンポジット粒子及びその製造方法、当該ナノコンポジット粒子を用いて油水分離に利用可能なカラム充填材及びフィルタ、被処理基材の表面に極めて高い撥水性と、撥油性又は親油性とを付与することのできる表面処理剤及び表面処理方法、並びにナノコンポジット粒子分散液の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態について説明する。
[ナノコンポジット粒子]
本実施形態に係るナノコンポジット粒子は、スチレンブタジエン共重合体と、下記式(I)で示されるフッ素含有化合物とをナノコンポジット化してなるナノ粒子複合体を含有する。
【0026】
【化5】
上記式(I)中、R1はフルオロアルキル基を含有する基を表し、R2はアルキル基又はアルコキシアルキル基を表し、R3及びR4は各々独立して水素原子又は1価の有機基を表し、xは1〜100の整数であり、yは0〜100の整数である。
【0027】
上記式(I)において、R1で表されるフルオロアルキル基を含有する基としては、例えば、−CF3、−C25、−C37、−C613、−C715等の−Cq2q+1(q=1〜10)で表されるフルオロアルキル基;オキシフルオロアルキレン基等を挙げることができ、これらのうち、下記式(II)で示されるオキシフルオロアルキレン基であるのが好ましい。
【0028】
【化6】
上記式(II)中、pは0〜2の整数である。
【0029】
上記式(I)において、R2で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1〜2のアルキル基が挙げられ、R2で表されるアルコキシアルキル基としては、例えば、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基等の炭素数2〜4のアルコキシアルキル基が挙げられる。これらのうち、R2で表される基としては、アルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0030】
上記式(I)において、R3及びR4で表される有機基としては、例えば、下記式(i)〜(v)で示される基を挙げることができる。
【0031】
【化7】
【0032】
上記式(I)において、トリアルコキシシリル基又はトリアルコキシアルコキシシリル基(−Si(OR2)3)が結合する中間鎖(−CH2−CH−)の数xは、1〜100であり、好ましくは1〜50、より好ましくは1〜10、特に好ましくは2〜5である。また、中間鎖(−CH2−CR34−)の数yは、0〜100であり、好ましくは0〜50、より好ましくは0〜10である。
【0033】
上記フッ素含有化合物として好適な化合物としては、下記式(III)〜(VII)で示される化合物を例示することができる。特に、上記フッ素含有化合物が下記式(III)又は式(IV)で示される化合物(上記式(I)においてy=0である化合物)であると、1分子中に占められるフッ素原子の割合が大きいことで、本実施形態に係るナノコンポジット粒子を生成する反応を効率的に進行させることができる。
【0034】
【化8】
式(III)中、x’は2又は3である。
【0035】
【化9】
【0036】
【化10】
式(IV)及び式(V)中、R1’は、−CF(CF3)OCF2CF(CF3)OC37で表される基である。式(IV)中、xaは1〜100の整数である。式(V)中、xbは1〜100の整数であり、ybは1〜500の整数である。
【0037】
【化11】
式(VI)中、xcは1〜10の整数であり、ycは0〜100の整数である。
【0038】
【化12】
式(VII)中、xdは1〜10の整数であり、ydは0〜100の整数である。
【0039】
上記式(I)で示されるフッ素含有化合物は、下記式(Ia)で示されるフッ素含有過酸化物の存在下に、下記式(Ib)で示される単量体と、下記式(Ic)で示される単量体とを重合させることにより得られる。なお、この反応生成物(フッ素含有化合物)中には、フルオロアルキル基を含有する基(R1)が片末端のみに導入されているオリゴマーが任意の割合で含まれていてもよい。
【0040】
【化13】
式(Ia)〜(Ic)中、R1はフルオロアルキル基を含有する基を表し、R2はアルキル基又はアルコキシアルキル基を表し、R3及びR4は各々独立して水素原子又は1価の有機基を表す。
【0041】
本実施形態におけるスチレンブタジエン共重合体は、未加硫のスチレンブタジエンポリマー及び加硫剤を少なくとも含み、所望により加硫促進剤、老化防止剤、補強剤、可塑剤等を含むスチレンブタジエンゴム組成物(未加硫ゴム)又は当該未加硫ゴムが加硫してなるスチレンブタジエンゴムであってもよいし、スチレンブタジエンポリマーであってもよい。当該スチレンブタジエン共重合体が、スチレンブタジエンポリマーである場合、本実施形態に係るナノコンポジット粒子は、硫黄、酸化亜鉛等の加硫剤をさらに含有してなるのが好ましく、ステアリン酸等の加工助剤を含有していてもよい。
【0042】
本実施形態に係るナノコンポジット粒子におけるスチレンブタジエン共重合体とフッ素含有化合物との含有比(質量基準)としては、1:0.5〜1:15であるのが好ましく、1:1〜1:15であるのがより好ましく、1:1〜1:10であるのが特に好ましい。スチレンブタジエン共重合体とフッ素含有化合物との含有比(質量基準)が上記範囲内にあることで、より高い撥水性及び撥油性が発現され得る。
【0043】
本実施形態に係るナノコンポジット粒子は、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム粉末、スチレンブタジエンゴム粉末、ポリスチレン粉末等の微粉末をさらに含有してなるのが好ましい。微粉末は有機系材料により構成されていてもよいし、無機系材料により構成されていてもよいが、当該微粉末を含有してなることで、優れた撥水性及び親油性が発現され得る。すなわち、本実施形態に係るナノコンポジット粒子において、スチレンブタジエン共重合体及び上記式(I)で示されるフッ素含有化合物とともに、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム粉末、スチレンブタジエンゴム粉末、ポリスチレン粉末等の微粉末を含有せしめるか否かにより、撥油性と親油性とをコントロールすることができる。
【0044】
本実施形態に係るナノコンポジット粒子がアクリロニトリルブタジエンゴム粉末、スチレンブタジエンゴム粉末、ポリスチレン粉末等の微粉末を含有することで、当該ナノコンポジット粒子において撥水性及び親油性が発現され得るメカニズムは明らかではないが、スチレンブタジエン共重合体、フッ素含有化合物及び上記微粉末をナノコンポジット化させると、ホスト分子としてのフッ素含有化合物に、ゲスト分子としてのスチレンブタジエン共重合体及び上記微粉末が取り込まれたときに、スチレンブタジエン共重合体と上記微粉末表面に存在する官能基との反応又は相互作用により、フッ素含有化合物の特性(撥油性)が発現され難いような三次元構造形態となるためであると推察される。
【0045】
アクリロニトリルブタジエンゴム粉末、スチレンブタジエンゴム粉末、ポリスチレン粉末等の微粉末の粒子径(算術平均粒子径)は、特に限定されるものではないが、0.1〜500μm程度であり、好ましくは1〜300μm程度である。上記微粉末の粒子径が0.1μm未満であると、フッ素含有化合物との三次元構造形態が生成され難くなることで、撥水性及び親油性が得られないおそれがあり、500μmを超えると、フッ素含有化合物の分子集合体に上記微粉末が取り込まれ難くなることで、スチレンブタジエン共重合体と反応又は相互作用し難くなるおそれがある。
【0046】
本実施形態に係るナノコンポジット粒子におけるアクリロニトリルブタジエンゴム粉末又はスチレンブタジエンゴム粉末の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、フッ素含有化合物とアクリロニトリルブタジエンゴム粉末又はスチレンブタジエンゴム粉末との含有比(質量基準)は、1:1〜1:10程度の範囲で適宜設定され得る。
【0047】
また、本実施形態に係るナノコンポジット粒子におけるポリスチレン粒子の含有量は、特に限定されるものではないが、フッ素含有化合物に対する含有比率の調整により、ナノコンポジット粒子が発現する撥油性及び親油性をコントロールすることができる。例えば、フッ素含有化合物とポリスチレン粉末との含有比(質量基準)が1:1〜5:1以上程度の範囲で設定されると、本実施形態に係るナノコンポジット粒子に撥水性及び撥油性を付与することができ、1:1〜4:1(質量基準)程度の範囲で設定されると、本実施形態に係るナノコンポジット粒子に撥水性及び親油性を付与することができる。
【0048】
本実施形態に係るナノコンポジット粒子は、10〜700nm程度、好ましくは10〜100nm程度の平均粒子径(算術平均粒子径)を有し、種々の溶媒にナノ粒子として好適に分散させることができる。なお、本実施形態に係るナノコンポジット粒子の平均粒子径は、例えば、動的光散乱式(DLS)粒子径分布測定装置を用いて測定され得る。
【0049】
上述した本実施形態に係るナノコンポジット粒子は、優れた撥水性と撥油性又は親油性とを有する。ここで、撥水性とは、例えば、上記ナノコンポジット粒子を担持させた基材(ガラス基材等)の表面について接触角計(例えば、協和界面科学社製のDropMaster300(製品名)等)を用いて水の接触角(°)を測定したとき、水の接触角が相対的に大きいことを意味する。具体的には、水の接触角が好ましくは130°以上、より好ましくは180°以上である。
【0050】
また、撥油性とは、例えば、上記ナノコンポジット粒子を担持させた基材(ガラス基材等)の表面について接触角計(例えば、協和界面科学社製のDropMaster300(製品名)等)を用いてドデカンの接触角(°)を測定したとき、ドデカンの接触角が相対的に大きいことを意味する。具体的には、ドデカンの接触角が好ましくは75°以上、より好ましくは80°以上である。
【0051】
さらに、親油性とは、例えば、上記ナノコンポジット粒子を担持させた基材(ガラス基材等)の表面について接触角計(例えば、協和界面科学社製のDropMaster300(製品名)等)を用いてドデカンの接触角(°)を測定したとき、ドデカンの接触角が相対的に小さいことを意味する。具体的には、ドデカンの接触角が好ましくは30°以下、より好ましくは0°である。
【0052】
上述したように、本実施形態に係るナノコンポジット粒子は、優れた撥水性と撥油性又は親油性とを有するため、撥水性及び親油性を有するナノコンポジット粒子は、そのまま油水分離用のカラムクロマトグラフィーにおける充填材として利用することができる。当該ナノコンポジット粒子を充填材として用いると、含油排水中の油成分は親油性を奏するナノコンポジット粒子の表面に親和することでナノコンポジット粒子の間隙を通り抜けやすくなる。一方、水成分は撥水性を奏するナノコンポジット粒子の間隙を通り抜け難い。そのため、上記ナノコンポジット粒子を充填材として用いることで、油水分離が可能となる。
【0053】
また、所定のフィルタ基材(ろ紙、不織布、ガラス等)の表面に撥水性及び親油性を有するナノコンポジット粒子を担持させることで、油水分離用のフィルタとしても利用することができる。フィルタ基材の表面にナノコンポジット粒子を担持させる方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ナノコンポジット粒子を所定の分散媒に分散してなる分散液に、フィルタ基材を浸漬させる方法等が挙げられる。
【0054】
さらには、撥水性及び親油性を有するナノコンポジット粒子は、ガラス等の被処理基材の表面に撥水・親油性を付与し、当該被処理基材の表面に耐指紋性能を奏させるために用いられる表面処理剤の材料として利用され得る。
【0055】
一方で、撥水性及び撥油性を有するナノコンポジット粒子は、ガラス等の被処理基材の表面に撥水・撥油性を付与し、当該被処理基材の表面に、機能性薄膜としての防汚層等を形成するために用いられる表面処理剤の材料として利用され得る。
【0056】
本実施形態における表面処理剤は、上記ナノコンポジット粒子と、ナノコンポジット粒子を分散させてなる分散媒とを含む。分散媒としては、例えば、1,2−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、トルエン等が挙げられる。
【0057】
上記表面処理剤におけるナノコンポジット粒子の含有量は、分散媒100容量部に対し、1.5〜3.5質量部であるのが好ましく、1.7〜3.5質量部であるのがより好ましく、1.7〜3.2質量部であるのが特に好ましい。ナノコンポジット粒子の含有量が分散媒100容量部に対して1.5質量部未満であると、表面処理後の被処理基材の表面上におけるナノコンポジット粒子の存在量が少なく、高い撥水性と、撥油性又は親油性とが付与されないおそれがあり、3.5質量部を超えると、表面処理剤中のナノコンポジット粒子量が多く、表面処理を施す際、均一な改質膜が形成され難くなるおそれがある。
【0058】
[ナノコンポジット粒子の製造方法]
上述したナノコンポジット粒子は、スチレンブタジエン共重合体と、上記式(I)で示されるフッ素含有化合物とを、溶媒(分散媒)中、アルカリ性条件下(塩基触媒存在下)で混合させることでナノコンポジット化させてナノコンポジット粒子分散液を調製し、当該ナノコンポジット粒子分散液から溶媒(分散媒)を除去することによって製造され得る。
【0059】
スチレンブタジエン共重合体としては、スチレンブタジエンポリマーと加硫剤(硫黄及び酸化亜鉛)とを少なくとも含み、所望により加硫促進剤、老化防止剤、補強剤、可塑剤等を含むスチレンブタジエンゴム組成物(未加硫ゴム)であってもよいし、スチレンブタジエンポリマーのみであってもよい。スチレンブタジエン共重合体としてスチレンブタジエンポリマーのみを用いる場合、加硫剤としての硫黄及び酸化亜鉛を混合してもよく、さらに加工助剤としてのステアリン酸を混合してもよい。加硫剤、加工助剤、加硫促進剤、老化防止剤、補強剤、可塑剤等の添加剤の添加量は、特に制限されず、適宜設定される。
【0060】
スチレンブタジエン共重合体とフッ素含有化合物との混合比は、例えば、フッ素含有化合物100質量部に対し、スチレンブタジエン共重合体5〜150質量部程度、好ましくは10〜150質量部程度、より好ましくは10〜100質量部程度である。
【0061】
上記溶媒(分散媒)としては、特に限定されるものではなく、例えば、1,2−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、トルエン等が挙げられる。
【0062】
塩基触媒としては、例えば、アンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等を用いることができるが、反応による副生成物としての無機塩が生成されない点で、アンモニア水を用いるのが好ましい。塩基触媒の添加量は、スチレンブタジエン共重合体と上記フッ素含有化合物との合計100質量部に対して、0.1〜1.2容量部であるのが好ましく、0.1〜1.1容量部であるのがより好ましく、0.5〜1.1容量部であるのが特に好ましい。
【0063】
本実施形態のナノコンポジット粒子の製造方法において、所望により微粉末(例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム粉末、スチレンブタジエンゴム粉末、ポリスチレン粉末等)をさらに混合してもよい。微粉末を混合することで、高い撥水性及び親油性を発現し得るナノコンポジット粒子を製造することができる。一方で、微粉末を混合しないことで、高い撥水性及び撥油性を発現し得るナノコンポジット粒子を製造することができる。すなわち、上記微粉末を混合するか否かにより、製造されるナノコンポジット粒子の特性としての撥油性及び親油性をコントロールすることができる。なお、上記微粉末を混合することによりナノコンポジット粒子にて撥水性及び親油性が発現されるメカニズムは明らかではないが、スチレンブタジエン共重合体と上記微粉末表面に存在する官能基との反応又は相互作用により、フッ素含有化合物の特性(撥油性)が発現され難い構造を形成するためであると推察される。
【0064】
分散液から溶媒(分散媒)を除去する方法としては、特に限定されるものではないが、エバポレータ等を用いて減圧下にて溶媒(分散媒)を蒸発させる方法、マントルヒーターで加熱する方法等が挙げられる。これらのうち、エバポレータ等を用いて減圧下にて溶媒(分散媒)を蒸発させる方法であれば、スチレンブタジエン共重合体の加硫(架橋)を促進させることなく溶媒(分散媒)を蒸発させることができる点で好ましい。
【0065】
[表面処理剤の製造方法]
本実施形態における表面処理剤としては、上記ナノコンポジット粒子分散液をそのまま用いてもよいが、当該ナノコンポジット粒子分散液から溶媒(分散媒)を蒸発させてナノコンポジット粒子を得て、得られたナノコンポジット粒子を溶媒(分散媒)に再分散させることで表面処理剤を製造してもよい。
【0066】
ナノコンポジット粒子を溶媒(分散媒)に再分散させる際に、スチレンブタジエンポリマーが添加された溶媒(分散媒)にナノコンポジット粒子を再分散させるのが好ましい。溶媒(分散媒)にスチレンブタジエンポリマーが添加されていることで、ナノコンポジット粒子が略均一に分散した分散溶液として表面処理剤を製造することができる。
【0067】
ナノコンポジット粒子を再分散させる溶媒(分散媒)としては、例えば、1,2−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、トルエン等が挙げられる。
【0068】
[表面処理方法]
本実施形態における表面処理方法は、被処理基材の表面に表面処理剤を塗布する工程を含む。被処理基材の表面に表面処理剤を塗布する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、刷毛、ローラー、スプレー等を用いて塗布する方法や、表面処理剤に被処理基材を浸漬させる方法等が挙げられる。
【0069】
上述したように、本実施形態に係るナノコンポジット粒子は、優れた撥水性と、撥油性又は親油性とを有する。したがって、撥水性及び親油性を有するナノコンポジット粒子をカラム充填材及びフィルタに用いることで、油水分離に好適に利用することができる。また、本実施形態に係るナノコンポジット粒子を含む分散液を表面処理剤として用いることで、被処理基材の表面に極めて高い撥水性と、撥油性又は親油性とを付与することができる。
【0070】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属するすべての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0071】
以下、試験例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の試験例等に何ら限定されるものではない。
【0072】
[試料1]
スチレンブタジエンポリマー(SBR)10mgと、上記式(III)で示されるフッ素含有化合物100mgと、アンモニア水1mLとを、分散媒としての1,2−ジクロロエタンに添加し、室温で5時間攪拌することで、ナノコンポジット粒子を含む試料溶液を調製した。
【0073】
[試料2]
スチレンブタジエンポリマー(SBR)の添加量を20mgに変更した以外は、試料1と同様にしてナノコンポジット粒子を含む試料溶液を調製した。
【0074】
[試料3]
スチレンブタジエンポリマー(SBR)の添加量を50mgに変更した以外は、試料1と同様にしてナノコンポジット粒子を含む試料溶液を調製した。
【0075】
[試料4]
スチレンブタジエンポリマー(SBR)の添加量を100mgに変更した以外は、試料1と同様にしてナノコンポジット粒子を含む試料溶液を調製した。
【0076】
[試料5]
スチレンブタジエンポリマー(SBR)100g、酸化亜鉛5g及び硫黄1gを8インチロールによって混練してスチレンブタジエンゴム組成物(未加硫ゴム,SBRZn-S)を調製した。
【0077】
次に、この未加硫ゴム(SBRZn-S)10mgと、上記式(III)で示されるフッ素含有化合物(VM)100mgと、アンモニア水1mLとを、分散媒としての1,2−ジクロロエタンに添加し、室温で5時間攪拌することで、ナノコンポジット粒子を含む試料溶液を調製した。
【0078】
[試料6]
上記未加硫ゴム(SBRZn-S)の添加量を20mgに変更した以外は、試料5と同様にしてナノコンポジット粒子を含む試料溶液を調製した。
【0079】
[試料7]
上記未加硫ゴム(SBRZn-S)の添加量を50mgに変更した以外は、試料5と同様にしてナノコンポジット粒子を含む試料溶液を調製した。
【0080】
[試料8]
上記未加硫ゴム(SBRZn-S)の添加量を100mgに変更した以外は、試料5と同様にしてナノコンポジット粒子を含む試料溶液を調製した。
【0081】
[試料9]
スチレンブタジエンポリマー(SBR)100g、ステアリン酸1g、酸化亜鉛5g及び硫黄1gを8インチロールによって混練してアクリロニトリルブタジエンゴム組成物(未加硫ゴム,SBRSt-Zn-S)を調製した。
【0082】
次に、この未加硫ゴム(SBRST-Zn-S)10mgと、上記式(III)で示されるフッ素含有化合物(VM)100mgと、アンモニア水1mLとを、分散媒としての1,2−ジクロロエタンに添加し、室温で5時間攪拌することで、ナノコンポジット粒子を含む試料溶液を調製した。
【0083】
[試料10]
上記未加硫ゴム(SBRST-Zn-S)の添加量を20mgに変更した以外は、試料9と同様にしてナノコンポジット粒子を含む試料溶液を調製した。
【0084】
[試料11]
上記未加硫ゴム(SBRST-Zn-S)の添加量を50mgに変更した以外は、試料9と同様にしてナノコンポジット粒子を含む試料溶液を調製した。
【0085】
[試料12]
上記未加硫ゴム(SBRST-Zn-S)の添加量を100mgに変更した以外は、試料9と同様にしてナノコンポジット粒子を含む試料溶液を調製した。
【0086】
[試料13]
分散媒としての1,2−ジクロロエタンにポリスチレン粉末(算術平均粒子径:90μm,PSt)5mgをさらに添加した以外は、試料9と同様にしてナノコンポジット粒子を含む試料溶液を調製した。
【0087】
[試料14]
ポリスチレン粉末(PSt)の添加量を10mgに変更した以外は、試料13と同様にしてナノコンポジット粒子を含む試料溶液を調製した。
【0088】
[試料15]
ポリスチレン粉末(PSt)の添加量を20mgに変更した以外は、試料13と同様にしてナノコンポジット粒子を含む試料溶液を調製した。
【0089】
[試料16]
ポリスチレン粉末(PSt)の添加量を50mgに変更した以外は、試料13と同様にしてナノコンポジット粒子を含む試料溶液を調製した。
【0090】
[試料17]
ポリスチレン粉末(PSt)の添加量を100mgに変更した以外は、試料13と同様にしてナノコンポジット粒子を含む試料溶液を調製した。
【0091】
[試料18]
分散媒としての1,2−ジクロロエタンにアクリロニトリルブタジエンゴム粉末(算術平均粒子径:46μm,NBRCR)5mgをさらに添加した以外は、試料9と同様にしてナノコンポジット粒子を含む試料溶液を調製した。
【0092】
[試料19]
アクリロニトリルブタジエンゴム粉末(NBRCR)の添加量を10mgに変更した以外は、試料18と同様にしてナノコンポジット粒子を含む試料溶液を調製した。
【0093】
[試料20]
アクリロニトリルブタジエンゴム粉末(NBRCR)の添加量を20mgに変更した以外は、試料18と同様にしてナノコンポジット粒子を含む試料溶液を調製した。
【0094】
[試料21]
アクリロニトリルブタジエンゴム粉末(NBRCR)の添加量を50mgに変更した以外は、試料18と同様にしてナノコンポジット粒子を含む試料溶液を調製した。
【0095】
[試料22]
アクリロニトリルブタジエンゴム粉末(NBRCR)の添加量を100mgに変更した以外は、試料18と同様にしてナノコンポジット粒子を含む試料溶液を調製した。
【0096】
[試料23]
分散媒としての1,2−ジクロロエタンにスチレンブタジエンゴム粉末(算術平均粒子径:287μm,SBRCR)5mgをさらに添加した以外は、試料9と同様にしてナノコンポジット粒子を含む試料溶液を調製した。
【0097】
[試料24]
スチレンブタジエンゴム粉末(SBRCR)の添加量を10mgに変更した以外は、試料23と同様にしてナノコンポジット粒子を含む試料溶液を調製した。
【0098】
[試料25]
スチレンブタジエンゴム粉末(SBRCR)の添加量を20mgに変更した以外は、試料23と同様にしてナノコンポジット粒子を含む試料溶液を調製した。
【0099】
[試料26]
スチレンブタジエンゴム粉末(SBRCR)の添加量を50mgに変更した以外は、試料23と同様にしてナノコンポジット粒子を含む試料溶液を調製した。
【0100】
[試料27]
スチレンブタジエンゴム粉末(SBRCR)の添加量を100mgに変更した以外は、試料23と同様にしてナノコンポジット粒子を含む試料溶液を調製した。
【0101】
[試料28]
スチレンブタジエンポリマー(SBR)10mgを1,2−ジクロロエタンに溶解させ、その後、アンモニア水1mLを添加し、室温で5時間攪拌することで、試料溶液を調製した。
【0102】
[試料29]
スチレンブタジエンポリマー(SBR)の添加量を20mgに変更した以外は、試料28と同様にして試料溶液を調製した。
【0103】
[試料30]
未加硫ゴム(SBRST-Zn-S)を添加しなかった以外は、試料14と同様にしてナノコンポジット粒子を含む試料溶液を調製した。
【0104】
[試料31]
未加硫ゴム(SBRST-Zn-S)を添加しなかった以外は、試料19と同様にしてナノコンポジット粒子を含む試料溶液を調製した。
【0105】
[試料32]
未加硫ゴム(SBRST-Zn-S)を添加しなかった以外は、試料24と同様にしてナノコンポジット粒子を含む試料溶液を調製した。
【0106】
〔試験例1〕接触角測定試験
試料1〜32の各試料溶液に被表面処理基材としてのガラスを浸漬させ、各基材の表面処理を行った。表面処理が施された各基材における水及びドデカンの接触角(deg)を、接触角計(協和界面科学社製,製品名:DropMaster300)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
上記試験例1の結果から明らかなように、スチレンブタジエン共重合体と、上記式(III)にて示されるフッ素含有化合物とをナノコンポジット化してなるナノコンポジット粒子を担持させた基材(試料1〜12)においては、水の接触角がドデカンの接触角よりも大きくなり、撥水・親油性を付与することができることが確認された。
【0109】
一方、スチレンブタジエン共重合体と、上記式(III)にて示されるフッ素含有化合物と、ポリスチレン粉末、アクリロニトリルブタジエンゴム粉末又はスチレンブタジエンゴム粉末とをナノコンポジット化してなるナノコンポジット粒子を担持させた基材(試料18〜27)においては、優れた撥水・撥油性を付与することができることが確認された。特に、スチレンブタジエン共重合体と、上記式(III)にて示されるフッ素含有化合物と、ポリスチレン粉末とをナノコンポジット化してなるナノコンポジット粒子を担持させた基材(試料13〜17)においては、優れた撥水性を付与することができ、ポリスチレン粉末の配合量を調整することで、ナノコンポジット粒子が発現する撥油性と親油性とをコントロール可能であることが確認された。
【0110】
試料1〜12及び試料30〜32の結果と対比すると、ナノコンポジット粒子において、スチレンブタジエン共重合体及び上記式(III)にて示されるフッ素含有化合物とともに、所定の微粒子を含むことで、優れた撥水性及び親油性を示すことができるものと推察される。また、試料28及び試料29の結果から、上記式(III)にて示されるフッ素含有化合物を含むことで、優れた撥水性が示されることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、撥水性と、撥油性又は親油性とが要求される製品の技術分野において有用である。