【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、センター・オブ・イノベーション事業「共進化社会システム創成拠点」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記返還量算出部は、前記電力グリッドに電力を供給する所定の発電機の発電効率に基づき、前記返還物の量を算出することを特徴とする請求項1に記載の電力預かり装置。
前記燃料供給施設から供給される燃料を用いて発電することにより、前記電力グリッドに電力を供給する発電機をさらに備えたことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の電力預かりシステム。
前記ユーザが所有する電気自動車に対し、前記預かり電力の返還に用いる前記返還物としての前記電力を供給する充電設備をさらに備えたことを特徴とする請求項5〜請求項9のいずれか一項に記載の電力預かりシステム。
前記返還量を算出するステップでは、前記電力グリッドに電力を供給する所定の発電機の発電効率に基づき、前記返還物の量を算出することを特徴とする請求項11に記載の電力預かり方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記課題を解決するためになされた第1の発明は、ユーザの発電設備で発電した電力を電力事業者が預かる電力預かり装置であって、前記発電設備から電力グリッドに逆潮流した電力量を、前記ユーザからの預かり電力の量として受信する制御部と、前記預かり電力の量に基づき、前記預かり電力の返還に用いる返還物の返還量を算出する返還量算出部と、を備え、前記返還量算出部は、前記預かり電力の量に相当する電力量を前記電力事業者が発電するのに要する前記返還物の量を、前記返還量として算出することを特徴とする。
【0014】
これによれば、発電設備を所有するユーザに対し、余剰電力を預けることにより自ら蓄電池を準備することなく実質的な蓄電(蓄エネルギー)を行うことを可能とし、しかも電力の返還時には預けた電力量(エネルギー)よりも大きな電力量(エネルギー)を得ることを可能とする。
【0015】
また、第2の発明は、上記の第1の発明において、前記返還量算出部は、前記電力グリッドに電力を供給する所定の発電機の発電効率に基づき、前記燃料の量を算出することを特徴とする。
【0016】
これによれば、預かり電力の量に相当する電力を発電するのに要する燃料の量を、発電機の発電効率に基づき間接的に算出することが可能となる。
【0017】
また、第3の発明は、上記の第1の発明または第2の発明において、前記返還物は、燃料または電力の少なくとも一方から選択されることを特徴とする。
【0018】
これによれば、ユーザは、電力事業者からの預かり電力の返還時に、返還物を、燃料、電力、または、燃料と電力との組み合わせのいずれかから選択することが可能となる。
【0019】
また、第4の発明は、上記の第3の発明において、前記返還物は、前記電力事業者から前記ユーザへの返還時に、前記ユーザにより指定されることを特徴とする。
【0020】
これによれば、ユーザは、電力事業者からの預かり電力の返還時に、返還物を自由に選択することが可能となる。したがって、ユーザは、電力事業者と、返還物の指定に関して自由度の高い電力預かり契約を結ぶことが可能となる。
【0021】
また、第5の発明は、第1の発明ないし第4の発明のいずれかに記載の電力預かり装置と、前記電力預かり装置と、前記ユーザが所有する前記発電設備としての太陽光発電設備と、前記ユーザが所有する、燃料を使用して発電する燃料使用発電装置と、前記電力預かり装置に対してネットワークを介して通信可能に接続され、前記太陽光発電設備から電力グリッドに逆潮流した前記電力量に関するデータを前記電力預かり装置に送信する電力量計と、前記電力預かり装置が預かった前記預かり電力の返還に用いる前記返還物としての燃料を前記燃料使用発電装置に対して供給する燃料供給施設と、を備えた電力預かりシステムである。
【0022】
これによれば、発電設備を所有するユーザに対し、余剰電力を預けることにより自ら蓄電池を準備することなく実質的な蓄電(蓄エネルギー)を行うことを可能とし、しかも電力の返還時には預けた電力量(エネルギー)よりも大きな電力量(エネルギー)を得ることを可能とする。
【0023】
また、第6の発明は、上記の第5の発明において、前記太陽光発電設備で発電された電力のうち、自家消費されない余剰電力が電力グリッドに逆潮流されることを特徴とする。
【0024】
これによれば、ユーザが所有する太陽光発電設備で発電された電力のうち、自家消費されない余剰電力を電力事業者が預かることが可能となる。
【0025】
また、第7の発明は、上記の第5の発明または第6の発明において、前記燃料供給施設から供給される燃料を用いて発電することにより、前記電力グリッドに電力を供給する発電機をさらに備えたことを特徴とする。
【0026】
これによれば、ユーザからの預かり電力の量を、ユーザに燃料電池用の燃料で返還することが可能となる。
【0027】
また、第8の発明は、第5の発明ないし第7の発明のいずれかにおいて、前記燃料使用発電装置が燃料電池であることを特徴とする。
【0028】
これによれば、ユーザが所有する燃料使用発電装置として、電力グリッドに電力を供給する発電機よりも電力効率が高い装置を用いることが可能となる。これにより、ユーザに対して、電力の返還時には預けた電力量(エネルギー)よりも大きな電力量(エネルギー)を得ることが可能となる。
【0029】
また、第9の発明は、上記の第8の発明において、前記燃料電池が、前記ユーザが所有する燃料電池自動車に搭載され、前記燃料電池に対し、前記預かり電力の返還に用いる前記燃料としての水素を供給する水素ステーションをさらに備えたことを特徴とする。
【0030】
これによれば、本発明に係る電力預かりシステムを燃料電池自動車に適用することが可能となる。
【0031】
また、第10の発明は、上記の第5の発明ないし第9の発明のいずれかにおいて、前記ユーザが所有する電気自動車に対し、前記預かり電力の返還に用いる前記返還物としての前記電力を供給する充電設備をさらに備えたことを特徴とする。
【0032】
これによれば、本発明に係る電力預かりシステムを電気自動車に適用することが可能となる。
【0033】
また、第11の発明は、ユーザの発電設備で発電した電力を電力事業者が預かる電力預かり方法であって、前記発電設備から電力グリッドに逆潮流した電力量を、前記ユーザからの預かり電力の量として受信するステップと、前記預かり電力の量に基づき、前記預かり電力の返還に用いる返還物の返還量を算出するステップと、を含み、前記返還量を算出するステップでは、前記預かり電力の量に相当する電力量を前記電力事業者が発電するのに要する前記返還物の量を、前記返還量として算出することを特徴とする。
【0034】
これによれば、発電設備を所有するユーザに対し、余剰電力を預けることにより自ら蓄電池を準備することなく実質的な蓄電(蓄エネルギー)を行うことを可能とし、しかも電力の返還時には預けた電力量(エネルギー)よりも大きな電力量(エネルギー)を得ることを可能とする。
【0035】
また、第12の発明は、上記の第11の発明において、前記返還量を算出するステップでは、前記電力グリッドに電力を供給する所定の発電機の発電効率に基づき、前記燃料の量を算出することを特徴とする。
【0036】
これによれば、預かり電力の量に相当する電力を発電するのに要する燃料の量を、発電機の発電効率に基づき間接的に算出することが可能となる。
【0037】
また、第13の発明は、上記の第11の発明または第12の発明において、前記返還物は、燃料または電力の少なくとも一方から選択されることを特徴とする。
【0038】
これによれば、ユーザは、電力事業者からの預かり電力の返還時に、返還物を、燃料、電力、または、燃料と電力との組み合わせのいずれかから選択することが可能となる。
【0039】
また、第14の発明は、上記の第13の発明において、前記返還物は、前記電力事業者から前記ユーザへの返還時に、前記ユーザにより指定されることを特徴とする。
【0040】
これによれば、ユーザは、電力事業者からの預かり電力の返還時に、返還物を自由に選択することが可能となる。したがって、ユーザは、電力事業者と、返還物の指定に関して自由度の高い電力預かり契約を結ぶことが可能となる。
【0041】
また、第15の発明は、上記の第11の発明ないし第14の発明のいずれかにおいて、前記ユーザが所有する所定の設備に電力または燃料を供給するステップと、前記所定の設備に供給した前記電力または前記燃料の料金を課金するステップと、をさらに含み、前記料金を課金するステップでは、前記電力または前記燃料の料金から前記返還量に相当する分を減じた料金を課金することを特徴とする。
【0042】
これによれば、ユーザに対して電力または燃料の料金を課金するときに、電力または燃料の料金から返還量に相当する分を減じた料金を課金することにより、ユーザに対して電力または燃料を実質的に返還することが可能となる。
【0043】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0044】
(第1実施形態)
図1及び
図2は、本発明の第1実施形態に係る電力預かりシステム1の全体構成図であり、
図1は預かり時の各種命令/データ/燃料/電力の流れを、
図2は返還時の各種命令/データ/燃料/電力の流れをそれぞれ示す。
図1及び
図2に示すように、電力預かりシステム1は、顧客10(ユーザ)が所有する発電設備としての太陽光発電設備2、燃料を使用して発電する燃料使用発電装置としての燃料電池3、通信装置4、及びスマートメータ(SM)5と、電力事業者20が所有する電力預かり装置6、燃料供給施設7、発電機8、及びサーバ9とから構成されている。通信装置4及びスマートメータ5は、インターネットや専用回線等のネットワークを介して、電力預かり装置6と接続されている。また、電力預かり装置6は、LAN(Local Area Network)や専用回線等のネットワークを介して、発電機8及びサーバ9と接続されている。
【0045】
この第1実施形態では、電力事業者20は電力/ガス小売事業者であり、顧客10に電力及びガスを供給する。電力は、電力グリッド30を介して顧客10に供給される。本実施形態では、電力事業者20が供給するガスは都市ガス(メタンガス)であり、ガス配管網を介して顧客10に供給されるものとする。なお、電力事業者20が供給するガスはLPガス(プロパンガス)であってもよい。この場合は、LPガスは、ガス供給設備と顧客10とを接続する配管ラインや、トラックで輸送されるガスボンベ等を介して顧客10に供給される。
【0046】
太陽光発電設備2(以降、「太陽電池2」と称する)は、太陽電池パネルを使用した太陽光発電により電力を生成する公知の太陽光発電装置である。太陽電池2で発電した電力は、太陽電池2が設置された一般家屋や商業施設等(すなわち、顧客10が所有する電力使用設備等)で使用されるが、自家消費等で使用されずに余った電力(余剰電力)は、太陽電池2から電力グリッド30に逆潮流する。
【0047】
燃料電池3は、炭化水素(メタン、プロパン、ブタン等)や水素等の燃料と空気中の酸素との電気化学反応により電力を生成する公知の燃料電池発電装置である。燃料電池3は、例えば、SOFC(固体酸化物形燃料電池)、PCFC(プロトン伝導型固体酸化物燃料電池)またはPEFC(固体高分子形燃料電池)であり得る。特にPCFCは複数のセルモジュールを燃料パスにおいてカスケード接続することで、理論発電効率が80%を超える可能性を有することから、燃料電池3の選択肢として好ましい。本実施形態では、燃料電池3は、電力/ガス小売事業者20から供給される都市ガス(メタンガス)を燃料として使用する。
【0048】
通信装置4は、電力預かり装置6に対して各種命令やID(識別子)等を送信可能な通信機能を有している。通信装置4は、専用端末であってもよいし、タブレット端末、スマートフォン端末、パーソナルコンピュータ端末等であってもよい。顧客10は、この通信装置4を操作して、電力預かり装置6に対して、余剰電力の預かりを要求する「蓄電要求」、預けた電力量の返還を要求する「返還要求」、及び返還物(燃料または電力)を指定する「返還物指定」の各種命令を送信することができる。これらの命令は、顧客10固有のIDと共に送信される。
【0049】
スマートメータ5は、顧客10の電力使用量及びガス使用量をそれぞれ計測し、計測した電力使用量及びガス使用量に関するデータ(以降、「使用量データ」と称する)を電力預かり装置6に対して送信可能な通信機能を有する公知の電力量計/ガス量計である。使用量データは、顧客のIDと共に、電力預かり装置6に適宜送信される(
図2参照)。
【0050】
また、このスマートメータ5は、太陽電池2で発電した余剰電力が電力グリッド30に逆潮されたときに、その余剰電力の量(逆潮流電力量)を計測し、計測した逆潮流電力量に関するデータ(以降、「蓄電量データ」と称する)を電力預かり装置6に送信する(
図1参照)。蓄電量データは、IDと共に、電力預かり装置6に適宜送信される。
【0051】
また、通信装置4をスマートメータ5と連携させ、スマートメータ5から電力預かり装置6に蓄電量データが送信されるときに、蓄電要求を自動的に送信するようにしてもよい。また、通信装置4を省略し、蓄電要求が蓄電量データと共にスマートメータ5から電力預かり装置6に送信されるようにしてもよい。また、電力預かり装置6の側において、蓄電量データを受信した事実をもって蓄電要求がなされたと判断するようにしてもよい。
【0052】
燃料供給施設7は、ガス配管網を介して、顧客10の燃料電池3またはガス使用設備(ガスコンロ、ガスレンジ等)に都市ガスを供給する。また、燃料供給施設7は、配管ラインを介して発電機8に都市ガスを供給する。詳細については後述するが、この燃料供給施設7は、顧客10から預かった電力を燃料で返還する場合には、燃料電池3に都市ガスを算出した返還量で返還する。
【0053】
発電機8は、燃料供給施設7から供給された都市ガスを燃料として使用して、火力発電により電力を生成する。発電機8で発電された電力は、電力グリッド30に供給され、電力グリッド30を介して、顧客10または図示しない一般電力需要者に供給される。
【0054】
より具体的には、発電機8は燃料供給施設7から供給された燃料を燃やした燃焼ガスでガスタービンを回転させて発電しており、制御部21はガスタービンの回転数が一定となるよう発電機8を制御する。太陽電池2で発電した余剰電力が電力グリッド30に逆潮流すると、発電機8の負荷が軽くなりガスタービンの回転速度が高速側にシフトするため、発電機8に要求される発電量が低下したときには、燃料供給施設7から発電機8に供給される燃料の供給量を減らすことにより、ガスタービンの回転速度が一定に保たれる。このとき、発電機8の出力が絞られる。したがって、太陽電池2から電力グリッド30に余剰電力が逆潮流すると、発電機8の出力を絞った分だけ、発電機8での火力発電に使用される燃料が節約されることとなる。
【0055】
サーバ9は、電力預かり装置6から受信したデータを記憶可能な一般的なサーバ装置である。なお、サーバ9は、クラウド上に設けられたクラウドサーバであってもよい。
【0056】
電力グリッド30は、送電線、変電所、配電線等の電力設備を含む電力網であり、顧客10、電力事業者20、及び図示しない一般電力需要者を相互に接続している。
【0057】
電力預かり装置6は、各種の情報処理を実行可能なコンピュータから構成されている。また、電力預かり装置6は、ネットワークを介して、通信装置4、スマートメータ5、発電機8、及びサーバ9と通信可能な通信機能を有している。この電力預かり装置6は、電力事業者20が管理する監視センタ等に配置される。
【0058】
この電力預かり装置6は、顧客10が操作する通信装置4から蓄電要求の命令を受信したとき(以降、「預かり時」とも称する)には、スマートメータ5から受信した蓄電量データに基づき、太陽電池2から電力グリッド30に逆潮流した余剰電力を預かったと見なす。なお、通常、スマートメータ5は、30分に1回程度の頻度で蓄電量データを出力している。また、顧客10が操作する通信装置4から返還要求の命令を受信したとき(以降、「返還時」とも称する)には、預かった電力(以降、「預かり電力」と称する)の量に相当する量の都市ガス(燃料)または電力を顧客10に返還する。なお、説明の便宜上、「返還」という表現を用いているが、実際には、顧客10に対するガス料金または電気料金の課金時に、燃料または電力の返還量に相当する分を減じた分を課金することにより、燃料または電力が顧客10に返還されたものとする。
【0059】
図3は、電力預かり装置6のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3に示すように、電力預かり装置6は、公知のハードウェア構成を備えており、所定の制御プログラムに基づき各種情報処理や周辺機器の制御等を統括的に実行するCPU(Central Processing Unit)等からなるプロセッサ11、プロセッサ11のワークエリア等として機能するRAM(Random Access Memory)12、プロセッサ11が実行する制御プログラムやデータを格納するROM(Read Only Memory)13、及びネットワークを介した通信処理を実行するネットワークインターフェース(I/F)14を備えている。
【0060】
また、電力預かり装置6は、周辺機器として、電力預かり装置6の管理者等が各種命令やデータを入力するためのキーボードやタッチパネル等から構成される入力装置15、電力預かり装置6の管理者等に各種情報を表示するモニタ16、及び電力預かり装置6で使用する各種データやそれらデータの演算結果等を記憶するHDD(Hard Disk Drive)等から構成されるストレージ17等を備えている。上記の各構成要素11−17は、バス18を介して相互に接続されている。
【0061】
なお、電力預かり装置6としては、コンピュータに限らず、同様の機能を果たす他の情報機器(サーバ等)から構成してもよい。また、電力預かり装置6の各種機能の少なくとも一部を他の公知のハードウェアによる処理によって代替してもよい。
【0062】
電力預かり装置6は、制御部21と、返還量算出部22とを備えている。制御部21及び返還量算出部22の機能は、
図3に示した電力預かり装置6のハードウェア構成において、プロセッサ11が所定の制御プログラムを実行することによって実現される。また、電力預かり装置6と、通信装置4、スマートメータ5、発電機8、及びサーバ9との通信は、電力預かり装置6のネットワークI/F14により実現される。
【0063】
制御部21は、ネットワークを介した通信装置4との通信により、通信装置4から蓄電要求、返還要求、返還物指定等の各種の命令を受信する。上述したように、これらの命令は、顧客10のIDと共に、通信装置4から送信される。そして、制御部21は、通信装置4から蓄電要求を受信したとき(預かり時)には後述する預かり時の処理を実行し、返還要求を受信したとき(返還時)には後述する返還時の処理を実行する。
【0064】
また、制御部21は、スマートメータ5から蓄電量データまたは使用量データを取得する。上述したように、これらのデータは、顧客10のIDと共に、スマートメータ5から送信される。制御部21が取得した蓄電量データまたは使用量データは顧客10のIDと共にサーバ9に送信され、顧客10のIDに関連付けてサーバ9記憶される。
【0065】
また、制御部21は、余剰電力の逆潮流時における発電機8の発電効率に関するデータをさらに取得する。制御部21が取得した発電機8の発電効率に関するデータは、ストレージ17等に記憶される。もっとも、発電機8の発電効率については独立して計測が可能であることから、予め(あるいは定期的に)計測した発電効率をストレージ17に記憶しておき、制御部21はこの記憶されたデータを参照してもよい。
【0066】
返還量算出部22は、制御部21により制御されて、予め定められた計算式等に基づき、電力または燃料電池用の燃料の少なくとも一方を用いて顧客10に対して預かり電力を返還するための返還量を算出する。具体的には、返還時には、制御部21は、返還要求と共に受信したIDをキーとして、そのIDに対応する蓄電量データをサーバ9から読み出し、返還量算出部22に送信する。そして、返還量算出部22は、制御部21から受信した蓄電量データ、すなわち顧客10からの預かり電力の量に基づき、燃料または電力の返還量を算出する。燃料または電力のいずれを返還するかは、通信装置4から受信した返還物指定により決定される。
【0067】
燃料で返還する場合には、返還量は、顧客10からの預かり電力の量に相当する電力を電力事業者20が所有する発電機8で発電するのに要する燃料の量として算出される。例えば、預かり電力の量が1kWhである場合、発電機8の発電効率に基づき、発電機8において1kWhの電力量を発電する際の燃料の量が返還量として算出される。本実施形態では、上述したように、太陽電池2で発電した余剰電力が電力グリッド30に逆潮流することにより、発電機8に要求される発電量が低下する(すなわち、発電機8の燃料が節約される)ため、その発電機8において節約される燃料が顧客10に返還されるとみなすこともできる。後に詳述するように、顧客10の燃料電池3の発電効率は、一般に発電機8による火力発電の発電効率よりも高いため、返還された燃料を燃料電池3の発電に用いることにより、顧客10は、預けた電力量(エネルギー)よりも大きな電力量(エネルギー)を得ることが可能となる。
【0068】
電力で返還する場合には、顧客10からの預かり電力の量(またはその一部)を返還量とする。
【0069】
なお、電力事業者20は、図示しない蓄電池を所有していてもよい。当該蓄電池は制御部21によって充放電が制御される。顧客10の発電設備(ここでは太陽電池2)で発電され電力グリッド30に逆潮流された電力を当該蓄電池に充電し、顧客10に電力を返還するように構成してもよい。
【0070】
さて、上述したように、顧客10の発電設備で発電された電力が電力グリッド30に逆潮流すると、発電機8の出力を絞った分だけ使用される燃料が節約されるが、一般に発電機8は定格運転を行う場合に最大の発電効率が得られるよう設計されており、発電機8の出力が定格より小さくなると発電効率は徐々に低下する。即ち、多数の顧客10の発電設備が大量の電力を電力グリッド30に逆潮流した状況では、発電機8の出力が抑制され、結果として発電機8の発電効率が低下するおそれがある。
【0071】
そこで、発電機8の出力が所定の閾値を下回る場合に、制御部21は発電機8の出力を積極的に抑制するのではなく、発電機8の出力をある程度維持したまま、発電した電力の一部を蓄電池に充電するように制御することで、充電池を発電機8の発電効率低下を防止する電力バッファとして機能させることが可能となる。蓄電池に充電された電力は、例えば夕刻時等の電力消費量がピークとなる時間帯に放電され、無駄なく利用される。
【0072】
図4は、電力預かりシステム1における預かり時の処理の流れを示すフロー図である。
【0073】
まず、顧客10は、通信装置4を操作して、電力預かり装置6の制御部21に、余剰電力の預かりを要求する命令である蓄電要求を、顧客10のIDと共に送信する(ステップST101)。
【0074】
続いて、太陽電池2で発電した電力のうちの自家消費等で使用されずに余った余剰電力が電力グリッド30に逆潮流したときに、太陽電池2から電力グリッド30に逆潮流した余剰電力の量(逆潮流電力量)をスマートメータ5で計測する(ステップST102)。
【0075】
次に、スマートメータ5は、計測した余剰電力の量に関するデータ(蓄電量データ)を、顧客10のIDと共に、電力預かり装置6の制御部21に送信する(ステップST103)。なお、蓄電量データは、例えば30分の間に電力グリッド30に逆潮流した電力量の累積値とされている。
【0076】
そして、制御部21は、スマートメータ5から受信した蓄電量データ及び顧客10のIDをサーバ9に送信し、顧客10のIDに関連付けてサーバ9に記憶する(ステップST104)。
【0077】
これにより、電力預かり装置6は、顧客10の太陽電池2で発電した余剰電力を預かったと見なす。
【0078】
なお、本実施形態では、顧客10の通信装置4から電力預かり装置6に蓄電要求とIDを送信することにより、この預かり時の処理が開始されるように構成したが、太陽電池2から電力グリッド30に余剰電力が逆潮流したときに、この預かり時の処理が自動的に開始されるようにしてもよい。この場合は、上記のステップST101は省略される。
【0079】
図6は、電力預かりシステム1における返還時及び返還後の処理の流れを示すフロー図である。
【0080】
まず、顧客10は、通信装置4を操作して、電力預かり装置6の制御部21に、預けた電力量の返還を要求する命令である返還要求を、顧客10のIDと共に送信する(ステップST201)。
【0081】
続いて、顧客10は、通信装置4を操作して、電力預かり装置6の制御部21に、返還物を指定する命令である返還物指定を送信する(ステップST202)。返還物は、燃料または電力のいずれか一方を指定することができる。もちろん、返還物として、燃料及び電力の両方を指定し、かつ燃料と電力の比率を指定することも可能である。
【0082】
次に、電力預かり装置6の制御部21は、返還量算出部22を制御して、返還物(燃料/電力)の返還量を算出する(ステップST203)。上述したように、燃料で返還する場合には、顧客10からの預かり電力の量に相当する電力を発電するのに要する燃料の量を返還量とする。電力で返還する場合には、顧客10からの預かり電力の量(またはその一部)を返還量とする。算出した返還量は、顧客10のIDに関連付けてサーバ9に記憶する。
【0083】
続いて、返還量算出部22で算出した返還量に基づき、指定された返還物を算出した返還量で顧客10に返還する(ステップST204)。燃料で返還する場合には、燃料供給施設7から燃料電池3に、燃料を算出した返還量で返還する。電力で返還する場合には、発電機8から顧客10に、電力を算出した返還量で返還する。なお、説明の便宜上、「返還物を算出した返還量で返還する」という表現を用いているが、実際には、返還物は、燃料供給施設7または発電機8から顧客10に通常供給される燃料または電力と区別できない場合があり、その場合は、顧客10に対するガス料金または電気料金の課金時に、燃料または電力の返還量に相当する分を減じた分を課金することにより、燃料または電力が顧客10に返還されたものとすることができる。
【0084】
具体的には、燃料または電力の返還後は、スマートメータ5は、顧客10のガス使用量または電力使用量を定期的に計測し、ガス使用量または電力使用量を示す使用量データを、顧客10のIDと共に電力預かり装置6の制御部21に送信する(ステップST205)。制御部21は、スマートメータ5から受信した使用量データを顧客10のIDに関連付けてサーバ9に記憶する(ステップST206)。
【0085】
そして、電力/ガス小売事業者20は、顧客10に対するガス料金または電気料金の課金時に、顧客10のIDをキーにしてサーバ9から使用量及び返還量を読み出し、使用量から返還量を減じた分の料金を課金する。すなわち、燃料または電力の返還量に相当する分については課金しない。なお、返還量が使用量を上回った場合には、その上回った分の料金を顧客10に支払う(マイナス課金)か、または、繰り越して次回の課金時に充当するようにするとよい。
【0086】
なお、本実施形態では、顧客10の通信装置4から電力預かり装置6に返還要求とIDを送信することにより、この返還時の処理が開始されるように構成したが、所定のタイミングで、または預かり電力の量が所定の量に達したときに、この返還時の処理が自動的に開始されるようにしてもよい。この場合は、上記のステップST201及びST202は省略される。また、返還物は、予め指定しておくとする。
【0087】
このように、この第1実施形態に係る電力預かりシステム1によれば、顧客10は、太陽電池2で発電した余剰電力を電力預かり装置6に預けることができる。そして、返還時には、預けた過剰電力を電力または燃料電池用の燃料で返還してもらうことができる。これにより、顧客10は、太陽電池2で発電した余剰電力を、自ら蓄電池を準備することなく実質的に蓄電することが可能となる。
【0088】
また、燃料電池3の発電効率は一般に火力発電よりも高く、火力発電の発電効率が例えば改良型コンバインドサイクル発電(AAC)なら約50%なのに対して、高効率燃料電池であるSOFC/PCFCの場合は、発電効率は例えば約70%である。したがって、燃料電池3としてSOFC/PCFCを用いる場合、燃料電池3の発電効率は火力発電の約1.4倍になる。そして、顧客10が1kWhの電力量を預けた場合には、より効率の低い発電機8(火力発電)で1kWhの電力量を発電するための燃料が返還されるので、より効率の高い燃料電池3は、その返還された燃料を使用して発電すると、1.4kWhの電力量を発電することができる。すなわち、預けた電力量が燃料として返還される場合は、高効率燃料電池(SOFC/PCFC)を使用することで、預けた電力量の1.4倍のエネルギーを得ることができる。
【0089】
さらに、SOFCに限らず燃料電池3の発電効率は、熱利用まで考慮すると90%を超える。したがって、燃料電池3で生成された熱を利用した給湯システムを含めると、燃料電池3の総合効率は上述の火力発電の約1.8倍になる。したがって、顧客10が1kWhの電力量を預けた場合に、燃料電池3が返還された燃料を使用して発電すると、1.8kWh相当のエネルギーを利用することができる。すなわち、預けた電力量の1.8倍のエネルギーを得ることができる。
【0090】
また、預けた電力量が電力で返還される場合には例えば約4%の送電ロスが発生するため、預けた電力量が目減りする。しかし、預けた電力量が燃料で返還される場合の燃料の搬送ロスはほぼ無視できるので、預けた電力量が目減りすることはない。
【0091】
このように、顧客10は、預けた電力量が燃料で返還される場合には、返還された燃料を使用して燃料電池3で発電することにより、預けた電力量よりも大きな電力量を得ることが可能となる。
【0092】
また、これにより、電力供給におけるカーボンフリー化の推進に寄与することができるので、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」及び目標13「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」に貢献することが可能となる。
【0093】
また、電力預かりシステム1を蓄エネルギーシステムとして捉えたとき、本実施形態の電力預かりシステム1は、顧客10が蓄電池を利用する場合よりも効率が高くなる。すなわち、一般に蓄電池は10%程度の充放電ロスを伴うため、例えば余剰電力を蓄電池に充電した場合、顧客10には90%のエネルギーが返還されることとなる。上述したように本実施形態によれば、燃料電池3を用いた場合、顧客10には預けた電力量の1.4倍〜1.8倍のエネルギーが返還されるから、本発明に係る電力預かりシステム1は蓄エネルギーシステムとしても極めて有用である。
【0094】
なお、本実施形態では、発電機8は火力発電としたが、発電機8は水素を燃料とする水素発電であってもよい。この場合は、燃料供給施設7から発電機8に供給される燃料は水素となり、燃料供給施設7から顧客10に返還される燃料も水素とし得る。よって、配管ラインやガスボンベ等を介して燃料供給施設7から顧客10に水素あるいは水素を混合したメタンガス等を返還するようにするとよい。
【0095】
さて、上述したように本実施形態においては、電力預かりシステム1が預かる対象を太陽電池2の余剰電力とし、また返還する対象を燃料電池3が発電に使用する燃料として説明したが、電力預かりシステム1が預かる対象は、太陽電池2の余剰電力に限られない。すなわち、預かる対象としての電力は、風力発電やいわゆる小水力発電に由来するものであってもよく、また顧客10に電力を預ける意思がある限りにおいて、余剰電力である必要はない。
【0096】
さらに、電力預かりシステム1が返還する対象(返還物)は、燃料電池3が使用する燃料に限られない。すなわち、顧客10は返還された燃料を燃料電池用として区別する必要はなく、返還された燃料のうち一部が燃料電池3の発電に用いられてもよい。
【0097】
さらに、顧客10は燃料電池3を所有していなくてもよい。本実施形態によれば、電力預かりシステム1が返還する返還物は燃料または電力のいずれか、または燃料と電力の両方とすることができる。電力預かりシステム1によって電力から燃料へのエネルギー源の転換が図られることで、顧客10は燃料電池3を所有していなくても、より光熱費を節約可能なエネルギー源を選択して利用できることから、経済的なメリットを享受できる。
【0098】
すなわち、本実施形態に係る電力預かりシステム1において、電力預かり装置6は、ユーザの発電設備(太陽電池2、風力発電設備、小水力発電設備等)で発電した電力(余剰電力に限らず)を、電力事業者20が預かる電力預かり装置6であって、発電設備から電力グリッド30に逆潮流した電力量をユーザからの預かり電力の量として受信する制御部21と、預かり電力の量に基づき、ユーザに対して返還する燃料の返還量を算出する返還量算出部22と、を備え、返還量算出部22は、預かり電力の量に相当する電力量を電力事業者20が発電するのに要する燃料の量を、返還量として算出する構成とされていてもよい。
【0099】
もちろん、顧客10は返還された燃料を全て燃料電池3の燃料として用いることで、本発明のメリットを最大限に享受できる。例えば、給湯を全て燃料電池3によって賄い、他には燃料を使用しない環境、すなわち燃料電池3とオール電化とを組み合わせた個人宅等においては、本発明の効果が最大限に発揮され、顧客10は大きな経済的なメリットを享受できる。
【0100】
さらに、返還物は、電力事業者20から顧客10への返還時に、顧客10が操作する通信装置4から電力預かり装置6の制御部21に返還物指定を送信することによって、顧客10が指定することができる。これにより、顧客10は、電力事業者20からの預かり電力の返還時に、返還物を自由に選択することが可能となる。また、返還物が燃料と電力との組み合わせである場合には、燃料と電力との比率を指定することもできる。したがって、顧客10は、電力事業者20と、返還物の指定に関して自由度の高い電力預かり契約を結ぶことが可能となる。
【0101】
(第2実施形態)
図6及び
図7は、本発明の第2実施形態に係る電力預かりシステム1の全体構成図であり、
図6は預かり時の各種命令/データ/燃料/電力の流れを、
図7は返還時の各種命令/データ/燃料/電力の流れをそれぞれ示す。なお、この第2実施形態では、以下で特に言及しない事項については、上記の第1実施形態の場合と同様として詳細な説明を省略する。また、
図6及び
図7において、上記の第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付している。
【0102】
この第2実施形態は、電力事業者20が、電力/ガス小売事業者ではなく、電力小売事業者であり、発電機8のみを有しており、燃料供給施設7を有していない点が上記の第1実施形態と異なる。また、この第2実施形態は、サーバ9はクラウドサーバであり、電力事業者20の外部に設けられている。
【0103】
この第2実施形態では、顧客10に燃料を供給する燃料供給施設7は、電力事業者20の外部に設けられている。したがって、燃料供給施設7から顧客10に返還された燃料の料金は、電力小売事業者20と燃料供給施設7の所有者との間で清算され、清算された金額を減じて燃料供給施設7が顧客10に課金することとなる。
【0104】
このように、第2実施形態に係る電力預かりシステム1によれば、電力事業者20が、電力小売事業者である場合でも、上記の第1実施形態と同様に、顧客10からの預かり電力の量を燃料または電力で返還することができる。
【0105】
(第3実施形態)
図8及び
図9は、本発明の第3実施形態に係る電力預かりシステム1の全体構成図であり、
図8は預かり時の各種命令/データ/燃料/電力の流れを、
図9は返還時の各種命令/データ/燃料/電力の流れをそれぞれ示す。なお、この第3実施形態では、以下で特に言及しない事項については、上記の第1実施形態の場合と同様として詳細な説明を省略する。また、
図8及び
図9において、上記の第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付している。
【0106】
この第3実施形態は、電力事業者20が、電力/ガス小売事業者ではなく、分散型電源を有するエネルギーサービス会社である点が、上記の第1実施形態と異なる。
【0107】
エネルギーサービス会社20は、第1の電力消費地であるサイトAに配置された分散電源41と、第2の電力消費地であるサイトBに配置された分散電源42とを有している。分散電源41及び分散電源42は、比較的小規模な火力発電設備であり、燃料供給施設43または燃料供給施設44から燃料の供給を受けて発電を行う。
【0108】
上述したように、電力グリッド30に顧客10の所有する発電設備が発電した電力が逆潮流したとき、発電所(ここでは分散電源41及び分散電源42)の負荷は軽くなる。制御部21は、分散電源41及び分散電源42の発電効率や、燃料供給施設43及び燃料供給施設44から供給される燃料単価等に基づいて、最も燃料節約効果が高い(例えば燃料コストが最も高い、あるいは発電効率が最も低い、あるいはこれらを総合的に評価して)分散電源を選択して、燃料供給を強制的に抑制し、逆に最も燃料節約効果が低い分散電源の燃料供給を増加させて、分散電源を群として制御して電力グリッド30へ電力を供給する。
【0109】
この第3実施形態では、顧客10に燃料を供給する燃料供給施設7は、エネルギーサービス会社20の外部に設けられている。なお、この燃料供給施設7は、顧客10にのみ燃料を供給する。したがって、燃料供給施設7から顧客10に返還された燃料の料金は、電力小売事業者20と燃料供給施設7の所有者との間で清算され、清算された金額を減じて燃料供給施設7が顧客10に課金することとなる。上述したように、電力事業者20は最も燃料節約効果が大きい分散電源を選択していることから、顧客10が電力事業者20とは異なる事業者の燃料供給施設7から燃料を購入している場合であっても、電力事業者20の利益を圧迫することが回避される。
【0110】
このように、第3実施形態に係る電力預かりシステム1によれば、電力事業者20が、エネルギーサービス会社20である場合でも、上記の第1実施形態と同様に、顧客10からの預かり電力の量を燃料または電力で返還することができる。
【0111】
(第4実施形態)
図10及び
図11は、本発明の第1実施形態に係る電力預かりシステム1の全体構成図であり、
図10は預かり時の各種命令/データ/燃料/電力の流れを、
図11は返還時の各種命令/データ/燃料/電力の流れをそれぞれ示す。なお、この第4実施形態では、以下で特に言及しない事項については、上記の第1実施形態の場合と同様として詳細な説明を省略する。また、
図10及び
図11において、上記の第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付している。
【0112】
この第4実施形態では、顧客10が、いわゆる定置型の燃料電池3の代わりに、燃料電池3を搭載した燃料電池自動車50を有している点と、電力事業者20が水素ステーション60をさらに有している点とが、上記の第1実施形態と異なる。また、この第4実施形態では、顧客10からの預かり電力の量の返還時には、水素ステーション60から燃料電池自動車50に水素が返還される。
【0113】
燃料電池自動車50は、搭載した燃料電池3で発電した電力でモータを駆動して走行する公知の燃料電池自動車である。また、燃料電池自動車50は、所定の無線通信ネットワークを介して電力預かり装置6と無線通信可能な通信部51を有している。
【0114】
水素ステーション60は、燃料電池自動車50に水素を供給する公知の水素供給施設であり、供給制御部61と流量計62とを有している。また、図示しないが、水素ステーション60は、水素を蓄えておくための水素タンクや、燃料電池自動車50の燃料タンクに水素を充填するためのディスペンサ等の公知の設備を備えている。
【0115】
供給制御部61は、燃料電池自動車50への水素の供給を制御する機能を有している。また、供給制御部61は、インターネットや専用回線等のネットワークを介して電力預かり装置6と通信可能な通信機能を有している。
【0116】
流量計62は、公知の水素流量計であり、水素ステーション60から燃料電池自動車50に供給される水素の供給量を計測する。流量計62で計測された水素の供給量に関するデータ(使用量データ)は、顧客10のIDと共に、供給制御部61の通信機能を用いて電力預かり装置6に適宜送信される。顧客10のIDは、燃料電池自動車50に水素を供給したときに、燃料電池自動車50のユーザ(顧客10)から取得するものとする。
【0117】
水素ステーション60は、水素をその場で製造するオンサイト型であってもよいし、水素を他の場所で製造するオフサイト型であってもよい。オンサイト型の場合は、水素ステーション60は、改質器を有しており、その改質器を使用して、電力事業者20の燃料供給施設7から配管ラインやガスボンベ等を介して水素ステーション60に供給される燃料から水素を製造する。あるいは、水素ステーション60は、水を電気分解して水素を製造してもよい。オフサイト型の場合は、他の場所で製造した水素を水素ボンベに加圧充填して、トレーラーやトラック等で水素ステーション60に輸送する。
【0118】
この第4実施形態での預かり時の処理は、上記の第1実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0119】
図12は、第4実施形態に係る電力預かりシステム1における返還時及び返還後の処理の流れを示すフロー図である。
【0120】
まず、燃料電池自動車50のユーザ(顧客10)は、通信部51を操作して、返還要求と顧客10のIDとを電力預かり装置6の制御部21に送信する(ステップST301)。
【0121】
続いて、電力預かり装置6の制御部21は、返還量算出部22を制御して、水素ステーション60から燃料電池自動車50に返還される水素の返還量を算出する(ステップST302)。預かり電力の量に相当する電力を発電するのに要する燃料の量に基づいて、当該燃料と同等の熱量をもつ水素の量、または、預かり電力の量に相当する電力を発電するのに要する水素の量を返還量とする。算出した返還量は、顧客10のIDに関連付けてサーバ9に記憶される。
【0122】
そして、水素ステーション60から燃料電池自動車50に、算出した返還量で水素を返還する(ステップST303)。なお、説明の便宜上、「水素を返還する」という表現を用いているが、実際には、返還される水素は、水素ステーション60から燃料電池自動車50に通常供給される水素と区別できない場合があり、その場合は、顧客10に対する水素料金の課金時に、水素の返還量に相当する分を減じた料金を課金することにより、水素が顧客10に返還されたものとすることができる。
【0123】
具体的には、燃料電池自動車50は、水素ステーション60を定期的に利用する。したがって、燃料電池自動車50が水素ステーション60を利用するたびに、水素ステーション60の供給制御部61は、燃料電池自動車50に供給した水素の量を示す使用量データを、顧客10のIDと共に電力預かり装置6の制御部21に送信する(ステップST304)。制御部21は、供給制御部61から受信した使用量データを、顧客10のIDに関連付けてサーバ9に記憶する(ステップST305)。
【0124】
そして、電力/ガス小売事業者20は、顧客10に対する水素料金の課金時(すなわち、水素ステーション60で燃料電池自動車50に水素を充填した際の決済時)に、顧客10のIDをキーにしてサーバ9から使用量及び返還量を読み出し、使用量から返還量を減じた分の料金を顧客に課金(費用請求)する。すなわち、水素の返還量に相当する分については課金しない。なお、返還量が使用量を上回った場合には、その上回った分の料金を顧客に支払うか、または、繰り越して次回の課金時に充当するようにするとよい。
【0125】
このように、第4実施形態に係る電力預かりシステム1によれば、顧客10が電力預かり装置6に預けた電力量を、水素ステーション60を介して、燃料電池自動車50に水素で返還することができる。すなわち、本発明に係る電力預かりシステム1を燃料電池自動車50に適用することが可能となる。
【0126】
なお、上記の第1実施形態と同様に、顧客10は、預けた電力量を、電力グリッド30から電力の供給を受ける充電スタンドや充電器等の充電設備を介して電力で返還してもらってもよい。なお、この場合の顧客10は電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)のオーナであり、返還された電力はEVやPHVに搭載されたバッテリの充電に充てられる。
【0127】
また、上記の第1実施形態と同様に、発電機8は水素発電であってもよい。この場合は、燃料供給施設7から発電機8に供給される燃料は水素となる。よって、配管ラインや水素ボンベ等を介して燃料供給施設7から水素ステーション60に水素を供給するようにするとよい。
【0128】
以上、本開示を特定の実施形態に基づいて説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって、本開示はこれらの実施形態によって限定されるものではない。また、上記実施形態に示した本開示に係る電力預かり装置、電力預かりシステム、及び電力預かり方法の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本開示の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【0129】
例えば、上記の各実施形態では、顧客10が所有する燃料使用発電装置として燃料電池3を用いたが、顧客10が所有する燃料使用発電装置は、燃料電池3に限定されるものではない。ただし、燃料使用発電装置は、ユーザに対し、電力の返還時には預けた電力量(エネルギー)よりも大きな電力量(エネルギー)を得ることを可能にすべく、電力グリッド30に電力を供給する発電機8よりも発電効率が高いものであることが望ましい。