【実施例】
【0028】
本発明を以下の試験例により具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0029】
[試験例1]
二酸化塩素による海生生物の付着障害防止効果を確認した。
太平洋に面した和歌山県沿岸の某所に水路試験装置を設け、試験を行った。
水中ポンプを用いて揚水した未濾過の海水(pH8)を、5系統に分岐させた水路
(試験区)に流量1m
3/hで70日間(2018年8月〜同年10月)、一過式に通水し、各水路に二酸化塩素を、表1に示す薬剤濃度および一日当たりの添加時間になるように添加した。
【0030】
上記の「基準濃度」の決定方法に準拠した予備試験により、基準濃度を測定した。すなわち、二酸化塩素の添加時間を24時間として21日間海水を通水した。その結果、薬剤無添加の水路のカラム内に海生生物が50g付着した。そこで、通水と薬剤添加を停止し、二酸化塩素をそれぞれの濃度で添加した水路のカラムを取り出し、海生生物が付着したカラムの付着生物量を求め、付着生物量が5g/600cm
2以下となった二酸化塩素の添加量を基準濃度とした。その結果、本試験の水系における二酸化塩素の基準濃度は、0.025mg/Lであると判断したので、「低濃度の期間」の濃度として0.010mg/Lを設定し、「高濃度の期間」の濃度として0.10mg/Lと0.19mg/Lを設定した。
なお、薬剤濃度は下記の付着障害防止効果確認用のアクリル製カラム内での設定濃度であるが、本試験例では、薬剤添加後に下記するテストチューブから放出されるまでの経路が短く、設定濃度が放出濃度とほぼ同程度であることを確認している。
【0031】
各水路内には、付着障害防止効果確認用にアクリル製カラム(内径64mm×長さ300mm×厚さ2mm、表面積602.88cm
2)を挿入し、通水終了後にカラムに付着した付着生物量を測定し、付着障害防止効果を評価した。
また、各水路内には、スライム汚れ防止効果確認用にチタン管からなるテストチューブ(内径23.4mm、長さ1000mm、肉厚1.0mm)を設置し、通水終了後にテストチューブの内面に形成されたスライムを主体とする汚れ量を測定し、汚れ防止効果を評価した。なお、ブランクとして薬剤無添加についても試験した。
得られた結果を、薬剤濃度および一日当たりの添加時間と共に表1に示す。
【0032】
(二酸化塩素)
二酸化塩素は、表1に示す濃度の二酸化塩素が得られるように、亜塩素酸ナトリウムおよび塩酸をそれぞれ適宜純水で希釈した水溶液を、薬剤添加ポイント前のチューブ内で混合し、1時間の滞留時間を持たせることで発生した二酸化塩素水溶液を付着障害防止効果確認用アクリル製カラムおよびチタン管からなるテストチューブの手前から定量ポンプを用いて添加した。なお、二酸化塩素の発生については、予備試験においてその発生を確認している。
【0033】
(付着障害防止効果の確認)
試験後、水路から取り外したカラムの質量Wa(g)を測定した。予め試験前に測定しておいた乾燥時のカラムの質量Wb(g)と共に、次式により付着生物量(g)を算出した。
付着生物量(g)=Wa−Wb
この試験期間における海水温は28〜26℃で推移し、薬剤無添加の水路のカラム内の付着生物量は326g/600cm
2と多く、付着生物は、主としてミドリイガイなどのイガイ類やフジツボ類、コケムシ類などの海生付着生物に由来する。また、カラムには、付着生物やスライムの排泄物や死骸、細胞外分泌物などの有機質を多く含むデトリタス、海水中に含まれる粘度粒子や浮遊物も付着するが、これらも付着生物量に含める。
ブランクでの海生生物の付着状況から、本試験例では付着生物量が15g以下の場合に十分な海生生物の付着障害防止効果があると判断できる。また、付着生物量が5g以下の場合には、生物や汚れの付着が目視では全く確認されず、最良の海生生物の付着障害防止と判断できる。
【0034】
(汚れ防止効果の確認)
試験後、水路から取り外したテストチューブの内面に形成されたスライムを主体とする汚れを掻き取り、100mLのメスシリンダーに回収し、4時間静置後の湿体積を計量した。
ブランクにおいて掻き取ったスライムは主にテストチューブに付着した微生物に由来する。カラムでの付着防止効果の確認と同様に、テストチューブの内面に付着したスライムにもデトリタスが含まれるが、テストチューブのチタン管径はカラム径の約1/3であり、その管内の海水冷却水の流速は速く、ムラサキイガイなどのイガイ類やフジツボ類、コケムシ類などの海生付着生物の付着はないことを確認している。
ブランクでのスライムの付着状況から、本試験例では湿体積が5mL以下の場合に十分なスライムの付着障害防止効果があると判断できる。また、湿体積が2mL以下の場合には、スライムの付着が目視では全く確認されず、最良の海生生物の付着障害防止と判断できる。
【0035】
【表1】
【0036】
表1の結果から次のことがわかる。
(1)二酸化塩素を一日当たり20〜22時間低濃度添加すると共に、二酸化塩素を一日当たり2〜4時間高濃度添加した場合(実施例1および2)に優れた付着障害防止効果が得られること
さらに詳しくは、積算量(薬剤の総使用量)が同じでも、二酸化塩素の添加を「基準濃度」で連続的に行う方法(比較例1)と比較して、「低濃度の期間(基準濃度の2/5の濃度で一日当たり20〜22時間添加)」と「高濃度の期間(基準濃度の7.6倍または4倍の濃度で一日当たり2〜4時間)」とが交互になるように行うことにより(実施例1および2)、「付着生物量」が減少すること
(2)濃度0.010mg/Lの二酸化塩素を10時間で2回低濃度添加し、濃度0.10mg/Lの二酸化塩素を2時間で2回高濃度添加した場合(実施例2)には、濃度0.010mg/Lの二酸化塩素を22時間低濃度添加し、2時間だけ濃度0.19mg/Lの二酸化塩素を高濃度添加した場合(実施例1)と比較して、試験後のカラムについて付着物量が少ないこと
さらに詳しくは、二酸化塩素の添加を「低濃度の期間(基準濃度の2/5の濃度で10時間添加)」と「高濃度の期間(基準濃度の4倍の濃度で2時間添加)」とが交互になるように一日当たり2回繰り返すことにより(実施例2)、「付着生物量」が顕著に減少すること
【0037】
[試験例2]
二酸化塩素を「低濃度の期間」と「高濃度の期間」とが交互になるように添加したときの海生生物の付着障害防止効果を確認した。
太平洋に面した和歌山県沿岸の某所に水路試験装置を設け、試験を行った。
水中ポンプを用いて揚水した未濾過の海水(pH8)を、6系統に分岐させた水路(試験区)に流量1m
3/hで76日間(2019年3月〜同年6月)、一過式に通水し、各水路に二酸化塩素を、表2に示す薬剤濃度および一日当たりの添加時間になるように添加した。
【0038】
上記の「基準濃度」の決定方法に準拠した予備試験により、基準濃度を測定した。すなわち、二酸化塩素の添加時間を24時間として50日間海水を通水した。その結果、薬剤無添加の水路のカラム内に海生生物が45g付着した。付着生物量が50gに達成しなかったが、通水と薬剤添加を停止し、二酸化塩素をそれぞれの濃度で添加した水路のカラムを取り出し、海生生物が付着したカラムの付着生物量を求め、付着生物量が4.5g/600cm
2以下となった二酸化塩素の添加量を基準濃度とした。その結果、本試験の水系における二酸化塩素の基準濃度は、0.025mg/Lであると判断したので、「低濃度の期間」の濃度として0.020mg/Lを設定し、「高濃度の期間」の濃度として0.030mg/L〜0.070mg/Lを設定した。
なお、薬剤濃度は下記の付着障害防止効果確認用のアクリル製カラム内での設定濃度であるが、本試験例では、薬剤添加後に下記するテストチューブから放出されるまでの経路が短く、設定濃度が放出濃度とほぼ同程度であることを確認している。
【0039】
各水路内には、付着障害防止効果確認用にアクリル製カラム(内径64mm×長さ300mm×厚さ2mm、表面積602.88cm
2)を挿入し、通水終了後にカラムに付着した付着生物量を測定し、付着障害防止効果を評価した。
また、各水路内には、スライム汚れ防止効果確認用にチタン管からなるテストチューブ(内径23.4mm、長さ1000mm、肉厚1.0mm)を設置し、通水終了後にテストチューブの内面に形成されたスライムを主体とする汚れ量を測定し、汚れ防止効果を評価した。なお、ブランクとして薬剤無添加についても試験した。
得られた結果を、薬剤濃度および一日当たりの添加時間と共に表2に示す。
【0040】
(二酸化塩素)
二酸化塩素は、試験例1と同様に発生させ、添加も同様の方法で実施した。
【0041】
(付着障害防止効果の確認)
試験例1と同様にして、カラムの付着生物量(g)を算出し、海生生物の付着防止効果を確認した。
この試験期間における海水温は15〜22℃で推移し、薬剤無添加の水路のカラム内の付着生物量は233g/600cm
2と多く、付着生物は、主としてムラサキイガイなどのイガイ類やフジツボ類、コケムシ類などの海生付着生物に由来する。また、カラムには、付着生物やスライムの排泄物や死骸、細胞外分泌物などの有機質を多く含むデトリタス、海水中に含まれる粘度粒子や浮遊物も付着するが、これらも付着生物量に含める。
ブランクでの海生生物の付着状況から、本試験例では付着生物量が15g以下の場合に十分な海生生物の付着障害防止効果があると判断できる。また、付着生物量が5g以下の場合には、生物や汚れの付着が目視では全く確認されず、最良の海生生物の付着障害防止と判断できる。
【0042】
(汚れ防止効果の確認)
試験例1と同様にして、4時間静置後の湿体積を計量し、汚れ防止効果を確認した。
ブランクにおいて掻き取ったスライムは主にテストチューブに付着した微生物に由来する。カラムでの付着防止効果の確認と同様に、テストチューブの内面に付着したスライムにもデトリタスが含まれるが、テストチューブのチタン管径はカラム径の約1/3であり、その管内の海水冷却水の流速は速く、ムラサキイガイなどのイガイ類やフジツボ類、コケムシ類などの海生付着生物の付着はないことを確認している。
ブランクでのスライムの付着状況から、本試験例では湿体積が5mL以下の場合に十分なスライムの付着障害防止効果があると判断できる。また、湿体積が2mL以下の場合には、スライムの付着が目視では全く確認されず、最良の海生生物の付着障害防止と判断できる。
【0043】
【表2】
【0044】
表2の結果から次のことがわかる。
(1)二酸化塩素の添加を「基準濃度」で一日当たり22時間連続的に行う方法(比較例3)と比較して、「低濃度の期間(基準濃度の4/5の濃度で一日当たり18時間添加)」と「高濃度の期間(基準濃度の2.8倍の濃度で一日当たり2時間)」とを交互になるように行うことにより(実施例3)、積算量(薬剤の総使用量)が削減できること
実際の使用場面を想定することにより、本発明の二酸化塩素の添加積算量の削減効果の優れていることがわかる。例えば、実施例3の積算量0.50mg/L×時間/日は、比較例3の積算量0.55mg/L×時間/日に対して、0.05mg/L×時間/日の削減効果があり、これを一般的な火力発電所の冷却用の海水取水量15万m
3/時間に当てはめると、225kg/月の二酸化塩素の削減になる。
【0045】
(2)二酸化塩素の添加を「基準濃度」で一日当たり22時間連続的に行う方法(比較例3)と比較して、「低濃度の期間(基準濃度の4/5の濃度で一日当たり18時間添加)」と「高濃度の期間(基準濃度の2.4倍の濃度で一日当たり3時間)」とを交互になるように行うことにより(実施例4)、同等の積算量(薬剤の総使用量)で「付着生物量」が顕著に減少すること
(3)二酸化塩素の添加を「基準濃度」の4/5の濃度で一日当たり24時間連続的に行う方法(比較例4)と比較して、「低濃度の期間(基準濃度の4/5の濃度で一日当たり18時間添加)」と「高濃度の期間(基準濃度の1.2倍の濃度で一日当たり4時間)」とを交互になるように行うことにより(実施例5)、同等の積算量(薬剤の総使用量)で「付着生物量」が顕著に減少すること
【0046】
[試験例3]
二酸化塩素を「低濃度の期間」と「高濃度添加の期間」とが交互になるように添加したときの海生生物の付着障害防止効果を確認した。
太平洋に面した和歌山県沿岸の某所に水路試験装置を設け、試験を行った。
水中ポンプを用いて揚水した未濾過の海水(pH8)を、4系統に分岐させた水路(試験区)に流量1m
3/hで79日間(2019年8月〜同年10月)、一過式に通水し、各水路に二酸化塩素を、表2に示す薬剤濃度および一日当たりの添加時間になるように添加した。
【0047】
上記の「基準濃度」の決定方法に準拠した予備試験により、基準濃度を測定した。すなわち、二酸化塩素の添加時間を24時間として50日間海水を通水した。その結果、薬剤無添加の水路のカラム内に海生生物が50g付着した。そこで、通水と薬剤添加を停止し、二酸化塩素をそれぞれの濃度で添加した水路のカラムを取り出し、海生生物が付着したカラムの付着生物量を求め、付着生物量が5g/600cm
2以下となった二酸化塩素の添加量を基準濃度とした。その結果、本試験の水系における二酸化塩素の基準濃度は、0.015mg/Lであると判断したので、「低濃度の期間」の濃度として0.012mg/Lを設定し、「高濃度の期間」の濃度として0.020mg/Lを設定した。
なお、薬剤濃度は下記の付着障害防止効果確認用のアクリル製カラム内での設定濃度であるが、本試験例では、薬剤添加後に下記するテストチューブから放出されるまでの経路が短く、設定濃度が放出濃度とほぼ同程度であることを確認している。
【0048】
各水路内には、付着障害防止効果確認用にアクリル製カラム(内径64mm×長さ300mm×厚さ2mm、表面積602.88cm
2)を挿入し、通水終了後にカラムに付着した付着生物量を測定し、付着障害防止効果を評価した。
また、各水路内には、スライム汚れ防止効果確認用にチタン管からなるテストチューブ(内径23.4mm、長さ1000mm、肉厚1.0mm)を設置し、通水終了後にテストチューブの内面に形成されたスライムを主体とする汚れ量を測定し、汚れ防止効果を評価した。なお、ブランクとして薬剤無添加についても試験した。
得られた結果を、薬剤濃度および一日当たりの添加時間と共に表3に示す。
【0049】
(二酸化塩素)
二酸化塩素は、試験例1と同様に発生させ、添加も同様の方法で実施した。
【0050】
(付着障害防止効果の確認)
試験例1と同様にして、カラムの付着生物量(g)を算出し、海生生物の付着防止効果を確認した。
この試験期間における海水温は29〜24℃で推移し、薬剤無添加の水路のカラム内の付着生物量は147g/600cm
2と多く、付着生物は、主としてミドリイガイなどのイガイ類やフジツボ類、コケムシ類などの海生付着生物に由来する。また、カラムには、付着生物やスライムの排泄物や死骸、細胞外分泌物などの有機質を多く含むデトリタス、海水中に含まれる粘度粒子や浮遊物も付着するが、これらも付着生物量に含める。
【0051】
(汚れ防止効果の確認)
試験例1と同様にして、4時間静置後の湿体積を計量し、汚れ防止効果を確認した。
【0052】
【表3】
【0053】
表3の結果から次のことがわかる。
(1)二酸化塩素の添加を「基準濃度」で連続的に行う方法(比較例5)と比較して、「低濃度の期間(基準濃度の4/5の濃度で一日当たり17時間添加)」と「高濃度の期間(基準濃度の4/3倍の濃度で一日当たり7時間)」とが交互になるように行うことにより(実施例6)、積算量(薬剤の総使用量)が少ないにもかかわらず「湿体積量」が1/3以下に減少すること
(2)二酸化塩素の添加を「低濃度の期間(基準濃度の4/5の濃度で8.5時間添加)」と「高濃度の期間(基準濃度の4/3倍の濃度で3.5時間添加)」とが交互になるように一日当たり2回繰り返すことにより(実施例7)、積算量(薬剤の総使用量)が少ないにもかかわらず「付着生物量」が減少するとともに、「湿体積量」が1/2程度に減少すること
【0054】
海生生物は付着幼生期に付着し、その付着のメカニズムは一般的に形成されたスライム状の生物被膜に付着するものとされている。本試験の湿体積量はスライム量であり、その付着基盤となるスライム量が少ない状況を作ることは、海生生物の付着およびそれによる障害を未然に防止することにつながる。そのため湿体積量がほとんど確認できないような2mL以下であれば、薬剤による直接的な海生生物への付着防止だけでなく、間接的な付着防止効果の両面から付着障害を防止できるものと考えられる。