特許第6843329号(P6843329)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6843329海水冷却水系の海生生物の付着障害防止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843329
(24)【登録日】2021年2月26日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】海水冷却水系の海生生物の付着障害防止方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/50 20060101AFI20210308BHJP
   C02F 1/76 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   C02F1/50 531M
   C02F1/50 510E
   C02F1/50 520F
   C02F1/50 520K
   C02F1/50 540A
   C02F1/50 540B
   C02F1/50 550C
   C02F1/50 550D
   C02F1/50 550L
   C02F1/76 Z
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-18045(P2020-18045)
(22)【出願日】2020年2月5日
(65)【公開番号】特開2020-138197(P2020-138197A)
(43)【公開日】2020年9月3日
【審査請求日】2020年2月5日
【審判番号】不服2020-13069(P2020-13069/J1)
【審判請求日】2020年9月17日
(31)【優先権主張番号】特願2019-31606(P2019-31606)
(32)【優先日】2019年2月25日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000154727
【氏名又は名称】株式会社片山化学工業研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】505112048
【氏名又は名称】ナルコジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】村上 誠
【合議体】
【審判長】 日比野 隆治
【審判官】 金 公彦
【審判官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−153759(JP,A)
【文献】 特開2007−160142(JP,A)
【文献】 特公平6−29163(JP,B2)
【文献】 特許第5879596(JP,B1)
【文献】 G.Petrucci et al.,”Chlorine Dioxide in seawater for fouling control and post−disinfection in potable waterworks”,Desalination,No.182,2005年,p.283−291
【文献】 Hans−Curt Flemming,“SPRINGER SERIES ON BIOFILMS Marine and Industrial Biofouling”,Springer−Verlag,2009年,p.270,275,277,279,280
【文献】 原 猛也ら,「二酸化炭素が海生生物に与える影響の予備的検討」,海生研研報,第8号,2005年,p.11−17
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化塩素を一定濃度で連続的に添加したときに所望の海生生物の付着障害防止効果が得られる一過式海水冷却水系の海水中の二酸化塩素の最小濃度を基準濃度とし、
記海水中の二酸化塩素濃度が、前記基準濃度未満の低濃度の期間と前記基準濃度以上の高濃度の期間とが交互になるように、二酸化塩素または該海水中で二酸化塩素を発生し得る化合物を低濃度および高濃度で交互に添加することからなり、
前記基準濃度未満の低濃度が、前記基準濃度の1/4〜9/10の濃度であり、前記基準濃度以上の高濃度が、0.02〜0.5mg/Lであることを特徴とする一過式海水冷却水系の海生生物の付着障害防止方法。
【請求項2】
前記基準濃度未満の低濃度が、前記基準濃度の1/3〜9/10の濃度である請求項1に記載の一過式海水冷却水系の海生生物の付着障害防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水冷却水系の海生生物の付着障害防止方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、低濃度の薬剤添加でその効果を長期間持続し、しかも広範な海生生物種やスライムの付着障害を防止し得る海水冷却水系の海生生物の付着障害防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海水は、工業用の冷却水として、特に火力発電所や原子力発電所の復水器の冷却水として多量に使用されている。そのため、海水取水路壁や配管内および熱交換器内には、ムラサキイガイなどのイガイ類やフジツボ類、コケムシ類、ヒドロ虫類などの海生生物種が多量に付着して、様々な障害を惹き起こす。これらの中でも足糸で着生するムラサキイガイなどの二枚貝類は、成長が速く、成貝になると熱交換器チューブの一部を閉塞させて海水の通水を阻害し、また乱流を生じさせ、エロージョン腐食などの障害を惹き起こす。
【0003】
これら海生生物種の密集着生(付着)を防止するために、従来から次亜塩素酸ナトリウム、電解塩素もしくは塩素ガスなどの塩素発生剤(「塩素剤」ともいう)、過酸化水素もしくは過酸化水素発生剤(「過酸化水素剤」ともいう)の添加が行われている。
一方、二酸化塩素は、殺菌力が強く、トリハロメタンのような有害な有機塩素化合物を形成しないため、環境への影響が小さいという利点がある。
例えば、特開平1−275504号公報(特許文献1)には、二酸化塩素として少なくとも0.015ppm以上、好ましくは1ppm以上の、二酸化塩素または二酸化塩素発生剤を有効成分とする水中付着生物防除剤に関する技術が、特開平6−153759号公報(特許文献2)には、淡水または海水を使用する施設に設置された淡水または海水を通す水路に、0.1〜2.0ppmの比較的低濃度の二酸化塩素水溶液を連続的もしくは10.0〜30.0ppmの比較的高濃度の二酸化塩素水溶液を間欠的に注入することからなる、水路に付着する生物の付着防止または防除方法に関する技術が開示されている。
また、この出願の出願人は、二酸化塩素と過酸化水素とを併用する海生生物の付着防止方法およびそれに用いる付着防止剤を提案している(特許第5879596公報:特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−275504号公報
【特許文献2】特開平6−153759号公報
【特許文献3】特許第5879596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、二酸化塩素は化学物質として極めて不安定であり、これを対象系に用いても海生生物の付着障害防止効果の持続性に問題があり、その貯蔵や輸送は非常に困難である。例えば、特許文献2に記載のように、二酸化塩素製造装置を用いて現場で二酸化塩素を製造することもできるが、薬剤の単価が高価になるという新たな課題が生じる。
そこで、二酸化塩素を用いて広範な海生付着生物の付着障害を有効に防止すると共に、そのランニングコストのさらなる削減が求められている。
【0006】
本発明は、低濃度の薬剤添加でその効果を長期間持続し、しかも広範な海生生物種やスライムの付着障害を防止し得る海水冷却水系の海生生物の付着障害防止方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明の発明者は、二酸化塩素の海水中の濃度と海生生物との接触時間などの条件を特定の範囲に設定することにより、具体的には、所望の海生生物の付着障害防止効果が得られる海水中の二酸化塩素の最小濃度を基準濃度としたときに、この基準濃度未満になるように二酸化塩素をほぼ連続的に添加しつつ、基準濃度以上になるように二酸化塩素を短時間で間欠的に添加することにより、ムラサキイガイなどのイガイ類やフジツボ類、コケムシ類、ヒドロ虫類およびスライムなどを含む広範な海生生物種の付着障害を長期間持続して有効に防止し得ること、さらには従来技術と比較して、薬剤添加量を低減させても海生生物やスライムなどの有効な付着障害防止効果が得られることを意外にも見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明の発明者は、本発明の構成を採用することにより、薬剤の総使用量が削減されるにもかかわらず、広範な海生生物種およびスライムの付着障害を有効に防止できるという意外な効果を見出した。
【0008】
かくして、本発明によれば、二酸化塩素を一定濃度で連続的に添加したときに所望の海生生物の付着障害防止効果が得られる一過式海水冷却水系の海水中の二酸化塩素の最小濃度を基準濃度とし、
記海水中の二酸化塩素濃度が、前記基準濃度未満の低濃度の期間と前記基準濃度以上の高濃度の期間とが交互になるように、二酸化塩素または該海水中で二酸化塩素を発生し得る化合物を低濃度および高濃度で交互に添加することからなり、
前記基準濃度未満の低濃度が、前記基準濃度の1/4〜9/10の濃度であり、前記基準濃度以上の高濃度が、0.02〜0.5mg/Lであることを特徴とする一過式海水冷却水系の海生生物の付着障害防止方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低濃度の薬剤添加で、薬剤の総使用量が削減されるにもかかわらず、その効果を長期間持続し、しかも広範な海生生物種やスライムの付着障害を防止し得る海水冷却水系の海生生物の付着障害防止方法を提供することができる。
すなわち、従来技術の二酸化塩素の単独添加と比較して少量添加であっても、優れた海生生物の付着障害防止効果を得ることができる。また、この薬剤添加量の削減は、薬剤使用量を含めてランニングコストのさらなる削減効果をもたらす。
また、本発明の海生生物の付着障害防止方法は、排水中の残留塩素濃度が規制対象となる塩素剤や臭素剤を用いず、殺菌力が強く、有害な有機塩素化合物を形成しない二酸化塩素を用いるため、環境への影響が小さいという利点がある。
本発明の海生生物の付着障害防止方法は、広範な海生生物種、例えば、ムラサキイガイなどのイガイ類やフジツボ類、コケムシ類、ヒドロ虫類などの海生生物やスライムの付着障害防止に有効である。
本発明のメカニズムは、次のように考えられる。
付着生物は、まず基質表面にバクテリア等が付着してスライムが形成され、次いで珪藻類(植物プランクトン)が付着してバクテリアフィルムが形成され、これらのバクテリアフィルムが酸性多糖体を生産し、大型付着生物幼生が誘引されることにより遷移するものと考えられている。
本発明の海生生物の付着障害防止方法では、高濃度の二酸化塩素が、付着生物の遷移の過程を効率的に阻害し、基準濃度よりも低濃度の期間を設けても十分な付着障害防止が得られるものと考えられる。
【0010】
また、本発明の海生生物の付着障害防止方法は、次の条件のいずれか1つを満たす場合に、上記の効果をより発揮する。
(1)基準濃度未満の低濃度が、基準濃度の1/4〜9/10の濃度である。
(2)基準濃度未満の低濃度が、基準濃度の1/3〜9/10の濃度である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(海生生物の付着障害防止方法)
本発明の海水冷却水系の海生生物の付着障害防止方法は、二酸化塩素を一定濃度で連続的に添加したときに所望の海生生物の付着障害防止効果が得られる海水中の二酸化塩素の最小濃度を基準濃度とし、
前記海水冷却水系の海水中の二酸化塩素濃度が、前記基準濃度未満の低濃度の期間と前記基準濃度以上の高濃度の期間とが交互になるように、二酸化塩素または該海水中で二酸化塩素を発生し得る化合物を添加することを特徴とする。
【0012】
(二酸化塩素)
本発明において用いられる二酸化塩素は、極めて不安定な化学物質であるため、その貯蔵や輸送は非常に困難である。したがって、二酸化塩素または海水中で二酸化塩素を発生し得る化合物を海水に直接添加してもよいが、その場で公知の方法により二酸化塩素を製造(生成)するか、または海水中で二酸化塩素を発生し得る化合物を水に添加して二酸化塩素を発生させ、所望の添加濃度に調整して用いるのが好ましい。ここで、「水」としては、特に限定されず、工業用水、上水などが挙げられる。
例えば、次のような反応により二酸化塩素を製造することができ、市販の二酸化塩素発生器(装置)を用いることもできる。
(1)次亜塩素酸ナトリウムと塩酸と亜塩素酸ナトリウムとの反応
NaOCl+2HCl+2NaClO2 → 2ClO2+3NaCl+H2
(2)亜塩素酸ナトリウムと塩酸との反応
5NaClO2+4HCl → 4ClO2+5NaCl+2H2
(3)塩素酸ナトリウム、過酸化水素および硫酸との反応
2NaClO3+H22+H2SO4 → 2ClO2+Na2SO4+O2+2H2
【0013】
(基準濃度)
本発明の海生生物の付着障害防止方法では、二酸化塩素の基準濃度に基づいて、海水冷却水系の海水に特定濃度の二酸化塩素または海水中で二酸化塩素を発生し得る化合物(以下、これらを合わせて「二酸化塩素」ともいう)を特定時間添加する。
本発明において、二酸化塩素の「基準濃度」とは、二酸化塩素を一定濃度で連続的に添加したときに所望の海生生物の付着障害防止効果が得られる海水中の二酸化塩素の最小濃度を意味する。
なお、「基準濃度」は、二酸化塩素の添加時間により変動する。例えば、一日当たりの添加を考えた場合、添加時間が長ければ基準濃度は低くなる。逆に、添加時間が短ければ基準濃度は高くなる。したがって、本発明における基準濃度とは、二酸化塩素を任意の時間一定濃度で連続的に添加したとき、所望の海生生物の付着防止効果が得られる海水中の二酸化塩素の最小濃度を意味する。上記の任意の時間とは、実際に添加する時間に合わせればよい。
【0014】
また、「基準濃度」は、添加対象の海水系冷却水系の海水の汚れ状態や温度(水温)、海水に生息する海生生物種(付着生物種)などによっても変動するので、予め下記の方法により、添加対象の海水系冷却水系に水路試験装置を設けて「海生生物付着防止効果」を測定し、その結果から決定することができる。
【0015】
(1)付着防止効果確認用のアクリル製カラム(内径64mm×長さ300mm×厚さ2mm、表面積602.88cm2)を設置した多系統の水路(試験区)に、測定対象の海水を流量1m3/hで一過式に通水する。
(2)薬剤無添加(ブランク)の水路を設け、その他の水路にそれぞれ濃度(カラム内での設定濃度)の異なる二酸化塩素を各水路のカラムの上流側(手前)から任意の時間一定濃度で連続的に添加する(一日当たり24時間未満の任意の時間でよい場合、その添加時間は一日当たり20時間添加とする)。
(3)薬剤無添加の水路のカラム内に海生生物が50g付着した時点で、海水の通水と薬剤添加を停止する。
(4)各水路のカラムを取り出し、付着した海生生物を含むカラムの質量W1(g)を計量し、予め試験前に測定しておいた乾燥時のカラムの質量W0(g)との差から付着生物量[W1−W0(g)]を求める。
(5)付着生物量が5g/600cm2以下の場合に十分な海生生物の付着防止効果があると判断し、その薬剤濃度を「基準濃度」とする。
なお、上記(3)の付着生物量が50gに満たない場合、その付着生物量の0.1倍以下になる場合を「十分な海生生物の付着障害防止効果あり」と判断し、そのときの薬剤濃度を「基準濃度」としてもよく、また海水冷却水系で薬剤添加により障害対象となる海生生物の付着がないときの薬剤最小濃度を「基準濃度」と判断してもよい。
【0016】
海水を通水する期間および薬剤を添加する期間は、海水系冷却水系の海水の状態により異なるが、通常、20〜90日程度である。
試験例に記載のように、その場で二酸化塩素を調製して用いる場合には、予備試験において二酸化塩素の発生を確かめておく。
付着生物量には、ムラサキイガイなどのイガイ類やフジツボ類、コケムシ類などの海生付着生物と共に、カラムに付着するスライムの排泄物や死骸、細胞外分泌物などの有機質を多く含むデトリタス、海水中に含まれる粘度粒子や浮遊物も含めることとする。
【0017】
また、「基準濃度」は、海生生物の付着障害を受ける熱交換器や復水器またはその前の配管などにおいて、二酸化塩素を一定濃度で連続的に添加することにより十分な海生生物の付着障害防止効果が得られる二酸化塩素の最小濃度ともいえる。
したがって、実際に海生生物の付着障害防止のために二酸化塩素を一定濃度で連続的に添加している海水冷却水系においては、熱交換器や復水器では海生生物の付着防止に有効な最小濃度が維持されていると考えられるので、出口近傍での二酸化塩素濃度を基準濃度とすることもできる。
上記のように「基準濃度」は、添加対象の海水系冷却水系の海水の汚れ状態や温度(水温)、海水に生息する海生生物種(付着生物種)などにより変動するが、通常、熱交換器や復水器の海生生物付着の対象設備出口近傍において、0.02〜0.10mg/L程度である。
【0018】
本発明では、「低濃度の期間」と「高濃度の期間」とを交互に設けることが必要であり、このような構成を採用することにより、薬剤の総使用量が削減されるにもかかわらず、広範な海生生物種やスライムの付着障害を持続して防止することができる。
すなわち、本発明では、二酸化塩素を用いて海水冷却水系の海生生物の付着障害を防止しようとする、例えば、熱交換器のような所望の場所における海水中の二酸化塩素が所望の濃度になるように、より具体的には「低濃度の期間」と「高濃度の期間」とが交互になるように、海水冷却水系中の任意の場所に二酸化塩素を添加して、二酸化塩素の濃度を調整する。
したがって、二酸化塩素の添加の観点では、「低濃度の期間」および「高濃度の期間」は、それぞれ「低濃度添加の期間」および「高濃度添加の期間」と言い換えてもよい。
【0019】
(低濃度の期間)
本発明の海生生物の付着障害防止方法では、海水冷却水系の海水中の二酸化塩素濃度が基準濃度未満の低濃度になるように二酸化塩素を添加する期間を設ける。
基準濃度未満の低濃度は、基準濃度の1/4〜9/10の濃度であるのが好ましい。
低濃度が基準濃度の1/4未満では、十分な海生生物の付着障害防止効果が得られないことがある。一方、低濃度が基準濃度の9/10を超えると、薬剤添加量の削減効果が得られないことがある。
好ましい低濃度は、基準濃度の1/3〜9/10であり、より好ましくは2/5〜9/10の濃度、さらに好ましくは基準濃度の2/3〜9/10の濃度である。
上記のように低濃度は、添加対象の海水系冷却水系の海水の汚れ状態や温度(水温)、海水に生息する海生生物種(付着生物種)などにより変動するが、通常、海生生物付着の対象設備出口近傍において0.008〜0.09mg/L程度、好ましくは0.01〜0.05mg/L程度である。
【0020】
「低濃度の期間」での二酸化塩素の添加時間は、二酸化塩素濃度にもよるが、その濃度が0.008〜0.09mg/Lである場合には、一日当たり6時間以上であるのが好ましい。
添加時間が6時間未満では、「高濃度の期間」を交互に設けても十分な海生生物の付着障害防止効果が得られないことがある。
より好ましい添加時間は、8時間以上、さらに好ましい順に10時間以上、16時間以上、18時間以上、20時間以上、22時間以上である。
「低濃度の期間」は、一日当たり上記時間となるように何回かに分けて添加してもよい。
【0021】
(高濃度の期間)
本発明の海生生物の付着障害防止方法では、海水冷却水系の海水中の二酸化塩素濃度が基準濃度以上の高濃度になるように二酸化塩素を添加する期間を設ける。
基準濃度以上の高濃度は、添加対象の海水系冷却水系の海水の汚れ状態や温度(水温)、海水に生息する海生生物種(付着生物種)などにより変動するが、通常、海生生物付着の対象設備出口近傍において0.02〜0.5mg/L程度、好ましくは0.03〜0.5mg/L程度、より好ましくは0.05〜0.5mg/L程度である。
【0022】
「高濃度の期間」での二酸化塩素の添加時間は、二酸化塩素濃度にもよるが、その濃度が0.02〜0.5mg/Lである場合には、一日当たり0.2〜8時間であるのが好ましい。
添加時間が0.2時間未満では、「低濃度の期間」を交互に設けても十分な海生生物の付着障害防止効果が得られないことがある。一方、添加時間が8時間を超えると、薬剤添加量の削減効果が得られないことがある。
より好ましい添加時間は、0.2〜7時間であり、さらに好ましい順に0.2〜6時間、0.35〜6時間、0.35〜4時間、0.5〜4時間、1〜4時間である。
【0023】
「高濃度の期間」における二酸化塩素濃度と添加時間は、通常、所望の効果に対して、濃度が高いほど添加時間が短くなり、基準濃度に近いほど添加時間が長くなる傾向にある。
また、「低濃度の期間」と「高濃度の期間」とを、一日を超えて交互に設けてもよく、「低濃度の期間」と「高濃度の期間」との間に、薬剤無添加の期間を設けてもよい。
【0024】
(他の添加剤)
本発明の海生生物の付着障害防止方法では、当該技術分野で公知の他の海生生物付着防止剤を併用してもよく、過酸化水素;ジアミン、第3級アミン、第4級アンモニウム塩などのカチオン系界面活性剤;ジアルキルジチオカルバミン酸塩;他の塩素剤(電解塩素を含む);臭素剤を併用するのが特に好ましい。
また、本発明の海生生物の付着障害防止方法では、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、当該技術分野で公知の他の添加剤を併用してもよく、例えば、鉄系および銅系の金属腐食防止剤、消泡剤などが挙げられる。
【0025】
(添加場所)
海水冷却水系は、例えば、取水系設備、復水器やその他機器などの冷却対象となる設備および放水系設備などからなる。取水系設備は、導水路、海水中の異物を除去するスクリーン、循環水ポンプ(取水ポンプ)および循環水管(取水管)などからなる。
【0026】
本発明における二酸化塩素の添加場所は、取水路、熱交換器または復水器に付帯する配管中や導水路、熱交換器の入口または復水器の入口のいずれであってもよいが、海生生物の付着による障害防止効果の点で、取水ポンプの取水口近傍、熱交換器または復水器の入口が好ましい。
また、本発明における二酸化塩素の添加場所は、1箇所に限らず、本発明の添加条件に適合する、すなわち二酸化塩素を用いて海水冷却水系の海生生物の付着障害を防止しようとする所望の場所における海水中の二酸化塩素の濃度について、「低濃度の期間」と「高濃度の期間」とが交互に設けられる限り、複数箇所設けてもよい。
【0027】
(添加方法)
本発明における二酸化塩素の添加方法としては、注入ポンプなどを用いた方法が挙げられる。本発明において微量の薬剤を海水冷却水系中に、迅速にかつ実質的に均一に拡散させるためには、従来の物理的手段を用いることができる。具体的には、該水系中への拡散器、撹拌装置や邪魔板などの設置が挙げられる。また、これらに該当する設備は海水冷却水系に付設されているので、これを転用してもよい。
【実施例】
【0028】
本発明を以下の試験例により具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0029】
[試験例1]
二酸化塩素による海生生物の付着障害防止効果を確認した。
太平洋に面した和歌山県沿岸の某所に水路試験装置を設け、試験を行った。
水中ポンプを用いて揚水した未濾過の海水(pH8)を、5系統に分岐させた水路
(試験区)に流量1m3/hで70日間(2018年8月〜同年10月)、一過式に通水し、各水路に二酸化塩素を、表1に示す薬剤濃度および一日当たりの添加時間になるように添加した。
【0030】
上記の「基準濃度」の決定方法に準拠した予備試験により、基準濃度を測定した。すなわち、二酸化塩素の添加時間を24時間として21日間海水を通水した。その結果、薬剤無添加の水路のカラム内に海生生物が50g付着した。そこで、通水と薬剤添加を停止し、二酸化塩素をそれぞれの濃度で添加した水路のカラムを取り出し、海生生物が付着したカラムの付着生物量を求め、付着生物量が5g/600cm2以下となった二酸化塩素の添加量を基準濃度とした。その結果、本試験の水系における二酸化塩素の基準濃度は、0.025mg/Lであると判断したので、「低濃度の期間」の濃度として0.010mg/Lを設定し、「高濃度の期間」の濃度として0.10mg/Lと0.19mg/Lを設定した。
なお、薬剤濃度は下記の付着障害防止効果確認用のアクリル製カラム内での設定濃度であるが、本試験例では、薬剤添加後に下記するテストチューブから放出されるまでの経路が短く、設定濃度が放出濃度とほぼ同程度であることを確認している。
【0031】
各水路内には、付着障害防止効果確認用にアクリル製カラム(内径64mm×長さ300mm×厚さ2mm、表面積602.88cm2)を挿入し、通水終了後にカラムに付着した付着生物量を測定し、付着障害防止効果を評価した。
また、各水路内には、スライム汚れ防止効果確認用にチタン管からなるテストチューブ(内径23.4mm、長さ1000mm、肉厚1.0mm)を設置し、通水終了後にテストチューブの内面に形成されたスライムを主体とする汚れ量を測定し、汚れ防止効果を評価した。なお、ブランクとして薬剤無添加についても試験した。
得られた結果を、薬剤濃度および一日当たりの添加時間と共に表1に示す。
【0032】
(二酸化塩素)
二酸化塩素は、表1に示す濃度の二酸化塩素が得られるように、亜塩素酸ナトリウムおよび塩酸をそれぞれ適宜純水で希釈した水溶液を、薬剤添加ポイント前のチューブ内で混合し、1時間の滞留時間を持たせることで発生した二酸化塩素水溶液を付着障害防止効果確認用アクリル製カラムおよびチタン管からなるテストチューブの手前から定量ポンプを用いて添加した。なお、二酸化塩素の発生については、予備試験においてその発生を確認している。
【0033】
(付着障害防止効果の確認)
試験後、水路から取り外したカラムの質量Wa(g)を測定した。予め試験前に測定しておいた乾燥時のカラムの質量Wb(g)と共に、次式により付着生物量(g)を算出した。
付着生物量(g)=Wa−Wb
この試験期間における海水温は28〜26℃で推移し、薬剤無添加の水路のカラム内の付着生物量は326g/600cm2と多く、付着生物は、主としてミドリイガイなどのイガイ類やフジツボ類、コケムシ類などの海生付着生物に由来する。また、カラムには、付着生物やスライムの排泄物や死骸、細胞外分泌物などの有機質を多く含むデトリタス、海水中に含まれる粘度粒子や浮遊物も付着するが、これらも付着生物量に含める。
ブランクでの海生生物の付着状況から、本試験例では付着生物量が15g以下の場合に十分な海生生物の付着障害防止効果があると判断できる。また、付着生物量が5g以下の場合には、生物や汚れの付着が目視では全く確認されず、最良の海生生物の付着障害防止と判断できる。
【0034】
(汚れ防止効果の確認)
試験後、水路から取り外したテストチューブの内面に形成されたスライムを主体とする汚れを掻き取り、100mLのメスシリンダーに回収し、4時間静置後の湿体積を計量した。
ブランクにおいて掻き取ったスライムは主にテストチューブに付着した微生物に由来する。カラムでの付着防止効果の確認と同様に、テストチューブの内面に付着したスライムにもデトリタスが含まれるが、テストチューブのチタン管径はカラム径の約1/3であり、その管内の海水冷却水の流速は速く、ムラサキイガイなどのイガイ類やフジツボ類、コケムシ類などの海生付着生物の付着はないことを確認している。
ブランクでのスライムの付着状況から、本試験例では湿体積が5mL以下の場合に十分なスライムの付着障害防止効果があると判断できる。また、湿体積が2mL以下の場合には、スライムの付着が目視では全く確認されず、最良の海生生物の付着障害防止と判断できる。
【0035】
【表1】
【0036】
表1の結果から次のことがわかる。
(1)二酸化塩素を一日当たり20〜22時間低濃度添加すると共に、二酸化塩素を一日当たり2〜4時間高濃度添加した場合(実施例1および2)に優れた付着障害防止効果が得られること
さらに詳しくは、積算量(薬剤の総使用量)が同じでも、二酸化塩素の添加を「基準濃度」で連続的に行う方法(比較例1)と比較して、「低濃度の期間(基準濃度の2/5の濃度で一日当たり20〜22時間添加)」と「高濃度の期間(基準濃度の7.6倍または4倍の濃度で一日当たり2〜4時間)」とが交互になるように行うことにより(実施例1および2)、「付着生物量」が減少すること
(2)濃度0.010mg/Lの二酸化塩素を10時間で2回低濃度添加し、濃度0.10mg/Lの二酸化塩素を2時間で2回高濃度添加した場合(実施例2)には、濃度0.010mg/Lの二酸化塩素を22時間低濃度添加し、2時間だけ濃度0.19mg/Lの二酸化塩素を高濃度添加した場合(実施例1)と比較して、試験後のカラムについて付着物量が少ないこと
さらに詳しくは、二酸化塩素の添加を「低濃度の期間(基準濃度の2/5の濃度で10時間添加)」と「高濃度の期間(基準濃度の4倍の濃度で2時間添加)」とが交互になるように一日当たり2回繰り返すことにより(実施例2)、「付着生物量」が顕著に減少すること
【0037】
[試験例2]
二酸化塩素を「低濃度の期間」と「高濃度の期間」とが交互になるように添加したときの海生生物の付着障害防止効果を確認した。
太平洋に面した和歌山県沿岸の某所に水路試験装置を設け、試験を行った。
水中ポンプを用いて揚水した未濾過の海水(pH8)を、6系統に分岐させた水路(試験区)に流量1m3/hで76日間(2019年3月〜同年6月)、一過式に通水し、各水路に二酸化塩素を、表2に示す薬剤濃度および一日当たりの添加時間になるように添加した。
【0038】
上記の「基準濃度」の決定方法に準拠した予備試験により、基準濃度を測定した。すなわち、二酸化塩素の添加時間を24時間として50日間海水を通水した。その結果、薬剤無添加の水路のカラム内に海生生物が45g付着した。付着生物量が50gに達成しなかったが、通水と薬剤添加を停止し、二酸化塩素をそれぞれの濃度で添加した水路のカラムを取り出し、海生生物が付着したカラムの付着生物量を求め、付着生物量が4.5g/600cm2以下となった二酸化塩素の添加量を基準濃度とした。その結果、本試験の水系における二酸化塩素の基準濃度は、0.025mg/Lであると判断したので、「低濃度の期間」の濃度として0.020mg/Lを設定し、「高濃度の期間」の濃度として0.030mg/L〜0.070mg/Lを設定した。
なお、薬剤濃度は下記の付着障害防止効果確認用のアクリル製カラム内での設定濃度であるが、本試験例では、薬剤添加後に下記するテストチューブから放出されるまでの経路が短く、設定濃度が放出濃度とほぼ同程度であることを確認している。
【0039】
各水路内には、付着障害防止効果確認用にアクリル製カラム(内径64mm×長さ300mm×厚さ2mm、表面積602.88cm2)を挿入し、通水終了後にカラムに付着した付着生物量を測定し、付着障害防止効果を評価した。
また、各水路内には、スライム汚れ防止効果確認用にチタン管からなるテストチューブ(内径23.4mm、長さ1000mm、肉厚1.0mm)を設置し、通水終了後にテストチューブの内面に形成されたスライムを主体とする汚れ量を測定し、汚れ防止効果を評価した。なお、ブランクとして薬剤無添加についても試験した。
得られた結果を、薬剤濃度および一日当たりの添加時間と共に表2に示す。
【0040】
(二酸化塩素)
二酸化塩素は、試験例1と同様に発生させ、添加も同様の方法で実施した。
【0041】
(付着障害防止効果の確認)
試験例1と同様にして、カラムの付着生物量(g)を算出し、海生生物の付着防止効果を確認した。
この試験期間における海水温は15〜22℃で推移し、薬剤無添加の水路のカラム内の付着生物量は233g/600cm2と多く、付着生物は、主としてムラサキイガイなどのイガイ類やフジツボ類、コケムシ類などの海生付着生物に由来する。また、カラムには、付着生物やスライムの排泄物や死骸、細胞外分泌物などの有機質を多く含むデトリタス、海水中に含まれる粘度粒子や浮遊物も付着するが、これらも付着生物量に含める。
ブランクでの海生生物の付着状況から、本試験例では付着生物量が15g以下の場合に十分な海生生物の付着障害防止効果があると判断できる。また、付着生物量が5g以下の場合には、生物や汚れの付着が目視では全く確認されず、最良の海生生物の付着障害防止と判断できる。
【0042】
(汚れ防止効果の確認)
試験例1と同様にして、4時間静置後の湿体積を計量し、汚れ防止効果を確認した。
ブランクにおいて掻き取ったスライムは主にテストチューブに付着した微生物に由来する。カラムでの付着防止効果の確認と同様に、テストチューブの内面に付着したスライムにもデトリタスが含まれるが、テストチューブのチタン管径はカラム径の約1/3であり、その管内の海水冷却水の流速は速く、ムラサキイガイなどのイガイ類やフジツボ類、コケムシ類などの海生付着生物の付着はないことを確認している。
ブランクでのスライムの付着状況から、本試験例では湿体積が5mL以下の場合に十分なスライムの付着障害防止効果があると判断できる。また、湿体積が2mL以下の場合には、スライムの付着が目視では全く確認されず、最良の海生生物の付着障害防止と判断できる。
【0043】
【表2】
【0044】
表2の結果から次のことがわかる。
(1)二酸化塩素の添加を「基準濃度」で一日当たり22時間連続的に行う方法(比較例3)と比較して、「低濃度の期間(基準濃度の4/5の濃度で一日当たり18時間添加)」と「高濃度の期間(基準濃度の2.8倍の濃度で一日当たり2時間)」とを交互になるように行うことにより(実施例3)、積算量(薬剤の総使用量)が削減できること
実際の使用場面を想定することにより、本発明の二酸化塩素の添加積算量の削減効果の優れていることがわかる。例えば、実施例3の積算量0.50mg/L×時間/日は、比較例3の積算量0.55mg/L×時間/日に対して、0.05mg/L×時間/日の削減効果があり、これを一般的な火力発電所の冷却用の海水取水量15万m3/時間に当てはめると、225kg/月の二酸化塩素の削減になる。
【0045】
(2)二酸化塩素の添加を「基準濃度」で一日当たり22時間連続的に行う方法(比較例3)と比較して、「低濃度の期間(基準濃度の4/5の濃度で一日当たり18時間添加)」と「高濃度の期間(基準濃度の2.4倍の濃度で一日当たり3時間)」とを交互になるように行うことにより(実施例4)、同等の積算量(薬剤の総使用量)で「付着生物量」が顕著に減少すること
(3)二酸化塩素の添加を「基準濃度」の4/5の濃度で一日当たり24時間連続的に行う方法(比較例4)と比較して、「低濃度の期間(基準濃度の4/5の濃度で一日当たり18時間添加)」と「高濃度の期間(基準濃度の1.2倍の濃度で一日当たり4時間)」とを交互になるように行うことにより(実施例5)、同等の積算量(薬剤の総使用量)で「付着生物量」が顕著に減少すること
【0046】
[試験例3]
二酸化塩素を「低濃度の期間」と「高濃度添加の期間」とが交互になるように添加したときの海生生物の付着障害防止効果を確認した。
太平洋に面した和歌山県沿岸の某所に水路試験装置を設け、試験を行った。
水中ポンプを用いて揚水した未濾過の海水(pH8)を、4系統に分岐させた水路(試験区)に流量1m3/hで79日間(2019年8月〜同年10月)、一過式に通水し、各水路に二酸化塩素を、表2に示す薬剤濃度および一日当たりの添加時間になるように添加した。
【0047】
上記の「基準濃度」の決定方法に準拠した予備試験により、基準濃度を測定した。すなわち、二酸化塩素の添加時間を24時間として50日間海水を通水した。その結果、薬剤無添加の水路のカラム内に海生生物が50g付着した。そこで、通水と薬剤添加を停止し、二酸化塩素をそれぞれの濃度で添加した水路のカラムを取り出し、海生生物が付着したカラムの付着生物量を求め、付着生物量が5g/600cm2以下となった二酸化塩素の添加量を基準濃度とした。その結果、本試験の水系における二酸化塩素の基準濃度は、0.015mg/Lであると判断したので、「低濃度の期間」の濃度として0.012mg/Lを設定し、「高濃度の期間」の濃度として0.020mg/Lを設定した。
なお、薬剤濃度は下記の付着障害防止効果確認用のアクリル製カラム内での設定濃度であるが、本試験例では、薬剤添加後に下記するテストチューブから放出されるまでの経路が短く、設定濃度が放出濃度とほぼ同程度であることを確認している。
【0048】
各水路内には、付着障害防止効果確認用にアクリル製カラム(内径64mm×長さ300mm×厚さ2mm、表面積602.88cm2)を挿入し、通水終了後にカラムに付着した付着生物量を測定し、付着障害防止効果を評価した。
また、各水路内には、スライム汚れ防止効果確認用にチタン管からなるテストチューブ(内径23.4mm、長さ1000mm、肉厚1.0mm)を設置し、通水終了後にテストチューブの内面に形成されたスライムを主体とする汚れ量を測定し、汚れ防止効果を評価した。なお、ブランクとして薬剤無添加についても試験した。
得られた結果を、薬剤濃度および一日当たりの添加時間と共に表3に示す。
【0049】
(二酸化塩素)
二酸化塩素は、試験例1と同様に発生させ、添加も同様の方法で実施した。
【0050】
(付着障害防止効果の確認)
試験例1と同様にして、カラムの付着生物量(g)を算出し、海生生物の付着防止効果を確認した。
この試験期間における海水温は29〜24℃で推移し、薬剤無添加の水路のカラム内の付着生物量は147g/600cm2と多く、付着生物は、主としてミドリイガイなどのイガイ類やフジツボ類、コケムシ類などの海生付着生物に由来する。また、カラムには、付着生物やスライムの排泄物や死骸、細胞外分泌物などの有機質を多く含むデトリタス、海水中に含まれる粘度粒子や浮遊物も付着するが、これらも付着生物量に含める。
【0051】
(汚れ防止効果の確認)
試験例1と同様にして、4時間静置後の湿体積を計量し、汚れ防止効果を確認した。
【0052】
【表3】
【0053】
表3の結果から次のことがわかる。
(1)二酸化塩素の添加を「基準濃度」で連続的に行う方法(比較例5)と比較して、「低濃度の期間(基準濃度の4/5の濃度で一日当たり17時間添加)」と「高濃度の期間(基準濃度の4/3倍の濃度で一日当たり7時間)」とが交互になるように行うことにより(実施例6)、積算量(薬剤の総使用量)が少ないにもかかわらず「湿体積量」が1/3以下に減少すること
(2)二酸化塩素の添加を「低濃度の期間(基準濃度の4/5の濃度で8.5時間添加)」と「高濃度の期間(基準濃度の4/3倍の濃度で3.5時間添加)」とが交互になるように一日当たり2回繰り返すことにより(実施例7)、積算量(薬剤の総使用量)が少ないにもかかわらず「付着生物量」が減少するとともに、「湿体積量」が1/2程度に減少すること
【0054】
海生生物は付着幼生期に付着し、その付着のメカニズムは一般的に形成されたスライム状の生物被膜に付着するものとされている。本試験の湿体積量はスライム量であり、その付着基盤となるスライム量が少ない状況を作ることは、海生生物の付着およびそれによる障害を未然に防止することにつながる。そのため湿体積量がほとんど確認できないような2mL以下であれば、薬剤による直接的な海生生物への付着防止だけでなく、間接的な付着防止効果の両面から付着障害を防止できるものと考えられる。