【実施例】
【0012】
<活動量計の構成>
以下、
図1〜
図6を用いて本実施形態に係る活動量計を詳述する。
【0013】
図1は、本実施形態による活動量計1の構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、活動量計1は、予め設定した使用者の身長値および体重値を含む個人データS1を出力する個人データ入力手段10と、使用者の脚部の動きを検出して、進行方向加速度信号と重力方向加速度信号とを含む3次元の加速度信号S2を出力する加速度測定手段20と、加速度測定手段20からの加速度信号S2に基づき加速度特性データS3を出力する信号処理手段31と、個人データS1と加速度特性データS3とから運動データS6を算出する歩行・走行速度算出手段32と、タイミング手段33とからなるデータ処理手段30を有している。また活動量計1は、データ処理手段30からの運動データS6を表示する表示手段40と、記憶手段50と、データ処理手段30からの運動データS6を受けるとともにデータ処理手段30に対してコマンドデータS7を出力する通信手段60と、電源70とを有している。
【0014】
なお
図1においては、活動量計1の通信手段60とデータの送受信を行う外部情報端末90と送受信用の電磁界Wとを破線で示している。
【0015】
個人データ入力手段10は4つの有接点式スイッチで構成され、使用者の個人データを予め設定する。
加速度測定手段20は、3次元の加速度信号を出力する加速度センサであって、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)型技術により形成され、使用者の進行方向、重力方向、左右方向の3次元の加速度信号を出力する。
【0016】
データ処理手段30はマイクロプロセッサで構成され、活動量計1の全体の動作を制御すると共に、データ処理手段30における各要素をソフトウエアの形態で備えている。
表示手段40は液晶表示器で構成され、使用者の歩行・走行に係る歩行・走行速度、歩数、歩幅、総消費カロリ、日時情報を表示する。
記憶手段50はフラッシュメモリによる不揮発メモリで、運動データS6と日付情報とを記憶する。
【0017】
通信手段60はNFC(Near Field Communication)と称される通信手段で構成され、データ処理手段30からの運動データS6を電磁界Wによって外部情報端末90に送信し、また外部情報端末90から制御信号を受けてコマンドデータS7によってデータ処理手段30を制御する。なお通信手段60はBluetooth(登録商標)と称される通信手段を用いて構成しても良い。
電源70はボタン型の1次電池を用いたが2次電池で構成してもよい。
【0018】
<データ処理手段30における各要素の詳細説明>
データ処理手段30は信号処理手段31と歩行・走行速度算出手段32とタイミング手段33とを備えている。
【0019】
信号処理手段31は、加速度測定手段20が出力する進行方向加速度信号と重力方向加速度信号と左右方向加速度信号の3次元の加速度信号S2を所定時間間隔でサンプリングし、移動平均として知られる信号処理方法でフィルタリングを行い、使用者の歩行・走行時に係る複数のデータで構成される加速度特性データS3を出力する。
【0020】
歩行・走行速度算出手段32は回帰式発生手段32aと歩行・走行速度回帰手段32bとを備え、個人データS1と加速度特性データS3とから、歩行・走行速度と歩数と歩幅と総消費カロリデータとを含む運動データS6を出力し表示手段40及び通信手段60に入力する。
【0021】
タイミング手段33は日時情報を備えており、タイミング信号S4を信号処理手段31に出力し動作のタイミングを管理するとともに日時情報を記憶手段50に供給する。
【0022】
<信号処理手段31の動作の説明>
以下、
図1〜
図3を用いて信号処理手段31の動作を詳述する。
図2は、使用者の右脚部の足首部Lに活動量計1を装着した状態を示す側面図である。
図2に示す様に、Xと図示した方向は歩行・走行における進行方向で、Yと図示した方向は重力方向である。
【0023】
図3(a)は任意の時刻T1〜時刻T4における使用者Pの歩行・走行時の姿勢を示す模式図であり、
図3(b)は当該時刻T1〜時刻T4における加速度信号S2の進行方向加速度信号S2xの振幅変化を示す時系列グラフであって、
図3(a)および
図3(b)の各々に示す時刻T1〜時刻T4は同一時刻ある。
【0024】
図3(a)は、足首部Lに活動量計1を装着した使用者Pの歩行・走行の動作を示し、時刻T1では、使用者Pは、後方への蹴り出しを終えた右足を、前方に蹴り出す直前である。また、時刻T2では、前方に蹴り出した右足が着地し、後方に蹴り出す直前である。時刻T3での動作は時刻T1の動作と同様であり、また時刻T4での動作は時刻T2の動作と同様である。
【0025】
図3(b)は、横軸を時刻、縦軸を進行方向加速度信号S2xの振幅(相対値)を示す時系列グラフであって、時刻T1〜時刻T4では右足が前方あるいは後方に蹴り出される直前なので、進行方向加速度信号S2xの振幅は0である。
また、時刻T1以降および時刻T3以降では、進行方向加速度信号S2xは、右足を前方に踏み出す動作に対応して次第に増加し、時刻T1および時刻T3から区間jt隔てた時点で極大になりその後減少する。すなわち区間jtは進行方向加速度信号S2xの振幅が0の状態から増加して極大になるまでの区間である。
【0026】
図3(b)に示す様に、時刻T1〜時刻T3においては、進行方向加速度信号S2xの振幅は0で繰り返し動作における同一状態なので、信号処理手段31は、時刻T1〜時刻T3の区間pt−aを、進行方向加速度信号の時系列上の周期である「ピッチデータ」として算出する。
【0027】
図3(b)において、信号処理手段31は、区間pt−aにおける進行方向加速度信号S2xの平均値と重力方向加速度信号S2yの平均値とをベクトル合成して成る「xy合成値」と、区間jtの時間である「ジャーク増加時間」と、当該区間jtでの進行方向加速度信号S2xの加加速度信号であるジャーク信号(以降、「ジャーク信号」と略記)を所定間隔で累積し算出した「ジャーク累積値」と、さらにジャーク増加時間とジャーク累積値との積を「ジャーク評価値」として算出する。
【0028】
なお、ジャーク(加加速度)とは、加速度信号の時系列上の変化量として知られた物理量であって、本実施形態では加速度信号の所定時間内(微小時間)での変化量を算出する方法を用いている。また、本実施形態の「ジャーク累積値」は、区間jtを所定間隔とし、この区間jt内で得られた複数のジャーク信号を累積加算した値であるものとする。
【0029】
信号処理手段31は、以上の様に算出した「ピッチデータ」と「xy合成値」と「ジャーク増加時間」と「ジャーク累積値」と「ジャーク評価値」とで構成した加速度特性データS3を出力し、歩行・走行速度算出手段32に入力する。
【0030】
<歩行・走行速度算出手段32の動作の説明>
図1に示すように、歩行・走行速度算出手段32は回帰式発生手段32aと歩行・走行速度回帰手段32bと、図示していないが歩数、歩幅、総消費カロリデータを算出する手段とを備え、信号処理手段31から加速度特性データS3と個人データ入力手段10から使用者の個人データS1とを入力して歩行・走行速度、歩数、歩幅、総消費カロリデータから構成される運動データS6を出力する。
【0031】
歩行・走行速度算出手段32における回帰式発生手段32aおよび歩行・走行速度回帰手段32bの動作を詳述する。
回帰式発生手段32aは、複数の被検者について、身長値と体重値とを含む個人データS1と、当該被検者の歩行・走行における加速度特性データS3および歩行・走行速度実測値とを一括して記憶データとして備えており、当該記憶データに基づき、任意の使用者の個人データと歩行・走行における加速度特性データとから歩行・走行速度を算出する回帰式S5を具備する。
【0032】
詳述すると、本実施形態での回帰式S5は、個人データと加速度特性データS3とを線形結合した数式であり、歩行・走行速度を算出する回帰式であって、身長をm(メートル)単位、体重をkg(キログラム)単位、ピッチデータを秒単位とし、「xy合成値」および「ジャーク増加時間」および「ジャーク累積値」および「ジャーク評価値」については相対値を用い、
「歩行・走行速度=a×身長値+b×体重値+c×1/(ピッチデータ)+d×(xy合成値)+e×(ジャーク増加時間)+f×(ジャーク累積値)+g×(ジャーク評価値)+h」
によって示される式である。ここに線形結合の係数a〜hは、本実施形態においては、a=0.00879、b=0.0056、c=2.34、d=0.143、e=−0.112、f=−0.0624、g=0.00269、h=−7.76、とする。
【0033】
なお回帰式発生手段32aは、図示していないがデータ更新手段を備えており、外部情報端末90から新しい被検者についての歩行・走行速度実測値と当該被検者の身長値と体重値とを含む個人データおよび加速度特性データS3とを逐次入力して自動更新する。
そして回帰式発生手段32aは、更新された歩行・走行速度実測値と身長値と体重値とを含む個人データと加速度特性データS3とで成るデータ分布を近似する回帰式S5を、例えば最小二乗法を用いて算出する。
【0034】
これにより回帰式発生手段32aは、回帰式S5の係数a〜hを最新のものに更新する。尚、外部情報端末90などの外部機器や装置で回帰式S5を算出しておき、これをデータ更新手段が受信し、回帰式S5自体を直接更新してもよい。すなわち回帰式発生手段32aは、歩行・走行速度実測値と当該被検者の個人データを具備しなくても構わず、個人データと加速度データとを線形結合した回帰式S5が具備された態様であればよい。
【0035】
歩行・走行速度回帰手段32bは回帰式発生手段32aから入力した回帰式S5を用い、個人データS1における身長値および体重値と加速度特性データS3とを当該回帰式S5に用いて、歩行・走行速度を算出する。
また歩行・走行速度算出手段32における図示していない手段によって、歩行・走行速度回帰手段32bからの歩行・走行速度にピッチデータを乗じて歩幅を算出する。さらにxy合成値の時系列上の振幅変化と個人データS1とから、知られた方法で歩数および総消費カロリデータを算出する。
以上の様に、データ処理手段30は歩行・走行速度と歩数と歩幅と総消費カロリデータとを含む運動データS6を出力し表示手段40及び通信手段60に入力する。通信手段60は電磁界Wによって運動データS6を外部情報端末90に送信し、使用者は手元の外部情報端末90にて歩行・走行速度と歩数と歩幅と総消費カロリデータとからなる運動データS6を知ることができる。
【0036】
図4を用いて本発明の活動量計1の測定例を説明する。
図4は、男性12名と女性10名との計22名の被検者について、左右の足首に交互に活動量計1を装着し、複数の速度で所定距離を歩行・走行させ、所要時間から算出した速度実測値(km/H)と、回帰式S5によって算出した速度算出値(km/H)との比較を相関図に表したもので、横軸は速度実測値(km/H)、縦軸は回帰式S5によって算出された「速度算出値(km/H)」である。
当該相関図の総データ数は2114ポイントで、各ポイントを直線回帰した結果は、y=0.969x+0.1512、相関係数R^2=0.969、である。
【0037】
すなわち、上記の回帰式S5に基づき、任意の使用者の身長値と体重値と歩行・走行時の加速度特性データS3とを回帰式発生手段32aが備える回帰式S5に用いることによって、使用者の歩行・走行速度を、相関係数0.969の高率で算出することが可能となる。
【0038】
<フローチャートの説明>
次に、
図5を用いて本実施形態に係る活動量計の動作を説明する。
図5は本実施形態に係る活動量計の動作例および歩行・走行速度算出方法を例示するフローチャートである。
【0039】
<Q1ステップ>
使用者は、個人データ入力手段によって身長、体重を含む個人データを入力する。
【0040】
<Q2ステップ>
使用者は、歩行・走行していない時における活動量計1の向きが規定の向きとなるように、例えば、活動量計1を右足の足首部に、表示手段40の表示面が外側向きとなるように装着する。また使用者は、活動量計の加速度測定手段からの加速度信号の一方向の出力が使用者の歩行・走行における進行方向と一致し、かつ加速度信号の他方向の出力が使用者の重力方向の動きと一致するように装着する。
使用者が歩行・走行を開始すると、活動量計の加速度測定手段は進行方向加速度信号と重力方向加速度信号とを含む3次元の加速度信号を出力する。
【0041】
<Q3ステップ>
データ処理手段は、進行方向加速度信号の時系列上の周期である「ピッチデータ」と、当該周期における進行方向加速度信号の平均値と重力方向加速度信号の平均値とをベクトル合成して成る「xy合成値」と、ジャーク信号が増加する区間の時間である「ジャーク増加時間」と、ジャーク信号が増加する区間でのジャーク信号の累積値である「ジャーク累積値」と、「ジャーク増加時間」と「ジャーク累積値」との積である「ジャーク評価値」とで構成される加速度特性データS3を算出する。
【0042】
<Q4ステップ>
歩行・走行速度算出手段32の歩行・走行速度回帰手段32bは、加速度特性データS3と個人データS1と回帰式発生手段32aに記憶された回帰式S5によって、歩行・走行速度を算出する。
【0043】
<Q5ステップ>
歩行・走行速度算出手段32は加速度特性データS3と歩行・走行速度とに基づき歩数、歩幅、総消費カロリデータを算出し、歩行・走行速度、歩数、歩幅、総消費カロリデータとを備えた運動データS6と日時情報とを表示手段40及び通信手段60に出力する。
【0044】
<Q6ステップ>
外部情報端末90は電磁界Wによって運動データS6および日時情報を受信し表示する。使用者は活動量計1の表示手段40又は外部情報端末90の表示によって歩行・走行速度、歩数、歩幅、総消費カロリデータ、日時情報を把握することができる。
【0045】
(活動量計1の構造例の説明)
図6を用いて活動量計1の構造例を説明する。
図6(a)は個人データ入力手段10と表示手段40とを具備した例であり、
図6(b)はこれらを具備しない例である。
図6(a)において、表示手段40の日時表示部45に日時情報が表示され、歩数表示部41に当該日時における累計歩数、総消費カロリ表示部42に累計総消費カロリ、歩幅表示部44に当該日における歩幅の代表値、歩行・走行速度表示部43に当該日時における歩行・走行速度の代表値を表示する。代表値として平均値または瞬時値、最高、最低値などを選ぶことができる。
図6(b)において、活動量計2は発光素子または発音体で構成される報知手段Dを備えており、個人データ入力手段と表示手段との機能は外部情報端末90を用いる。
【0046】
以上述べたように、本実施形態によれば、一般家庭で日常的に携行する活動量計によって容易にかつ簡便に歩行・走行速度を算出、表示する活動量計及び歩行・走行速度算出方法が実現する。
【0047】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替及び改質は、すべて本発明の範囲内のものである。