特許第6843357号(P6843357)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843357
(24)【登録日】2021年2月26日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】鮫撃退装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/24 20110101AFI20210308BHJP
   A01K 79/00 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   A01M29/24
   A01K79/00 J
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-70525(P2019-70525)
(22)【出願日】2019年4月2日
(65)【公開番号】特開2020-167945(P2020-167945A)
(43)【公開日】2020年10月15日
【審査請求日】2020年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】504141377
【氏名又は名称】株式会社テクノパルス
(73)【特許権者】
【識別番号】599101807
【氏名又は名称】宇賀神電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 敦史
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 哲弥
【審査官】 田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−036257(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0303375(US,A1)
【文献】 特開2006−149275(JP,A)
【文献】 特開2001−037259(JP,A)
【文献】 米国特許第04200809(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 29/24
A01K 79/00
H02M 9/00
H05C 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路から電圧を付加して水中に設置される複数の電極間に電気パルスを発生させる鮫撃退装置であって、
前記電気回路は、直流又は交流電圧を発生する電源と、該電源の出力側に配置される昇圧回路と、該昇圧回路で昇圧された交流電圧を直流電圧に整流する整流回路と、該整流回路の出力側に配置され該整流回路からの電流が流れる第1コンデンサと、該整流回路と該第1コンデンサとを接続する第1接続路と、該第1接続路とは別異に該整流回路と該第1コンデンサとを接続する第2接続路と、該第1コンデンサの出力側に配置され該第1コンデンサから放電した電流が流れる第2コンデンサと、該第1コンデンサと該第2コンデンサとを接続する第3接続路と、該第2コンデンサと前記電極との間に配置され該第2コンデンサを放電させて該電極に電圧を付加する出力回路とを備え、
前記第1接続路は、第1抵抗器と、前記第1コンデンサに流れる電流をON/OFFする第1スイッチ回路とを備え、
前記第2接続路は、第2抵抗器と、前記第1コンデンサに流れる電流をON/OFFする第2スイッチ回路とを備え、
前記第3接続路は、第3抵抗器と、前記第2コンデンサに流れる電流をON/OFFする第3スイッチ回路とを備え、
前記第1抵抗器は、前記第2抵抗器に対して抵抗値が大きく、前記第1コンデンサは、前記第2コンデンサに対して静電容量が大きい鮫撃退装置。
【請求項2】
前記第1コンデンサは、電解コンデンサである請求項1に記載の鮫撃退装置。
【請求項3】
前記電気回路は、前記第1スイッチ回路を所定時間ONにして前記第1コンデンサの充電を行う第1コンデンサ主充電工程を行い、その後、該第1スイッチ回路をOFFにするとともに前記第2スイッチ回路をONにして該第1コンデンサの充電を行う第1コンデンサ副充電工程と、該第2スイッチ回路をOFFにするとともに第3スイッチ回路をONにして該第1コンデンサによって前記第2コンデンサの充電を行う第2コンデンサ充電工程とを少なくとも1回繰り返し、しかる後、前記出力回路によって該第2コンデンサを放電させる第2コンデンサ放電工程を行うよう構成される、請求項1又は2に記載の鮫撃退装置。
【請求項4】
前記出力回路は、複数の前記電極のうちの一つである第1電極に対し、直前に行った前記第2コンデンサ放電工程で付加する電圧の極性に対して、次に行われる該第2コンデンサ放電工程では極性を切り替えて付加する出力電圧極性切替回路として構成される、請求項3に記載の鮫撃退装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば漁船等に取り付けて使用され、釣り糸や魚網等により確保した魚類を鮫の被害から防御するための鮫撃退装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば釣り糸を使って魚類を確保するには、釣り針を先端に取り付けた仕掛糸を水中に垂らしておき、釣り針に魚が掛かったときに、仕掛糸を引き上げることで魚を捕獲する。また魚網を使う場合には、漁船より海底に網を仕掛け、しばらく時間をおいた後に網を
引き上げることにより魚類を捕獲する。しかし、捕獲した魚類を水中から引き揚げる際には付近を遊泳する鮫に狙われることがあり、魚の漁獲量に損失を与え漁業関係者に甚大な被害を与えている。
【0003】
従来、捕獲した魚類が鮫に襲撃される事態を防止するための装置として、例えば特許文献1に開示された装置が知られている。鮫は顔の部分にロレンチニ瓶と称する微弱電流を検知する器官を持っており、通常時はこの機能を用いて、砂に隠れている魚や、遠くにいる魚を探し出すことができる。その反面、水中に電気パルスを発生させるとこれに敏感に反応する。この装置は、水中に配置される第1の電極、及び第1の電極から所定距離離れて配置される第2の電極を備え、第1の電極及び第2の電極の一方がプラス極、他方がマイナス電極となるように電圧を付加することによって電極間に電気パルスを発生させることができるため、水中を遊泳する鮫に電気的な衝撃を与えて、捕獲した魚類を襲おうとする鮫を撃退することができる。
【0004】
また、このような複数の電極間に電気パルスを発生する装置の詳細な構成を示すものとしては、例えば特許文献2が知られている。この装置は、交流電源と、交流電源を所定の高電圧に昇圧する高圧トランスと、高圧トランスの出力側に取り付けられ、交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、整流回路の後段に配置され、ゲート電圧によりオン・オフ動作する充電用サイリスタと、充電用サイリスタから出力された電力を一時的に蓄積するコンデンサと、コンデンサの後段に配置され、ゲート電圧によりオン・オフ動作する放電用サイリスタと、放電用サイリスタの後段側に接続されるコイルと、コイルの出力側に接続され、一定の間隔をもって水中に配置される複数本の電極とを備えている。そして、充電用サイリスタ及び放電用サイリスタに所望のタイミングでゲート電圧を供給し、各サイリスタのオン・オフを制御してコンデンサへの充電電圧値及びコンデンサの充電・放電のタイミングを制御することによって、電極間に電気パルスを発生するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−149275号公報
【特許文献2】特許第3188864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献2の装置は電源からの入力電流が大きく、例えば漁船等に取り付けて使用する場合には、容量の比較的大きなバッテリーを用いる場合でも連続して使用できる時間はそれ程長くできないという問題を抱えている。
【0007】
本発明はこのような問題点を解決することを課題とするものであり、連続して使用することのできる時間を従来よりも大幅に延長することができる鮫撃退装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電気回路から電圧を付加して水中に設置される複数の電極間に電気パルスを発生させる鮫撃退装置であって、前記電気回路は、直流又は交流電圧を発生する電源と、該電源の出力側に配置される昇圧回路と、該昇圧回路で昇圧された交流電圧を直流電圧に整流する整流回路と、該整流回路の出力側に配置され該整流回路からの電流が流れる第1コンデンサと、該整流回路と該第1コンデンサとを接続する第1接続路と、該第1接続路とは別異に該整流回路と該第1コンデンサとを接続する第2接続路と、該第1コンデンサの出力側に配置され該第1コンデンサから放電した電流が流れる第2コンデンサと、該第1コンデンサと該第2コンデンサとを接続する第3接続路と、該第2コンデンサと前記電極との間に配置され該第2コンデンサを放電させて該電極に電圧を付加する出力回路とを備え、前記第1接続路は、第1抵抗器と、前記第1コンデンサに流れる電流をON/OFFする第1スイッチ回路とを備え、前記第2接続路は、第2抵抗器と、前記第1コンデンサに流れる電流をON/OFFする第2スイッチ回路とを備え、前記第3接続路は、第3抵抗器と、前記第2コンデンサに流れる電流をON/OFFする第3スイッチ回路とを備え、前記第1抵抗器は、前記第2抵抗器に対して抵抗値が大きく、前記第1コンデンサは、前記第2コンデンサに対して静電容量が大きい鮫撃退装置である。
【0009】
ここで、前記第1コンデンサは、電解コンデンサであることが好ましい。
【0010】
また前記電気回路は、前記第1スイッチ回路を所定時間ONにして前記第1コンデンサの充電を行う第1コンデンサ主充電工程を行い、その後、該第1スイッチ回路をOFFにするとともに前記第2スイッチ回路をONにして該第1コンデンサの充電を行う第1コンデンサ副充電工程と、該第2スイッチ回路をOFFにするとともに第3スイッチ回路をONにして該第1コンデンサによって前記第2コンデンサの充電を行う第2コンデンサ充電工程とを少なくとも1回繰り返し、しかる後、前記出力回路によって該第2コンデンサを放電させる第2コンデンサ放電工程を行うよう構成されることが好ましい。
【0011】
前記出力回路は、複数の前記電極のうちの一つである第1電極に対し、直前に行った前記第2コンデンサ放電工程で付加する電圧の極性に対して、次に行われる該第2コンデンサ放電工程では極性を切り替えて付加する出力電圧極性切替回路として構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明における鮫撃退装置の電気回路は、整流回路からの電流が流れる第1コンデンサと、第1コンデンサから放電した電流が流れる第2コンデンサの2つのコンデンサを設け、第1コンデンサに蓄積した電荷を第2コンデンサに蓄積させ、それを放電することによって複数の電極間に電圧を付加するようにしている。また、整流回路と第1コンデンサは、第1接続路と第1接続路とは別異にこれらをつなぐ第2接続路とで接続し、第1接続路には、第1抵抗器と第1スイッチ回路を設け、第2接続路には、第2抵抗器と第2スイッチ回路を設けている。更に第1抵抗器は第2抵抗器に対して抵抗値が大きく、第1コンデンサは第2コンデンサに対して静電容量が大きいものを採用している。このような構成によれば、第1接続路によって予め第1コンデンサに少ない電流で電荷を蓄積させることができるため、入力電流が大きかった従来の装置よりも連続して使用することができる時間を大幅に延長することが可能となり、漁業を行う際には操業時間を長く確保することができる。また第1コンデンサは、第2コンデンサよりも多くの電荷を蓄えることができるうえ、第2コンデンサに電荷を供給して減った分の電荷は第2接続路によって第1接続路よりも短時間で充電することができるため、第2コンデンサへ十分な電荷を供給することが可能となり、所定の間隔で電気パルスを発生させ続けることができる。
【0013】
ここで、第1コンデンサとしては電解コンデンサを採用することが好ましく、この場合は、静電容量が大きなコンデンサであっても小型のものを使用できるため、装置の大きさを小さくすることができる。
【0014】
また電気回路は、第1スイッチ回路を所定時間ONにして第1コンデンサの充電を行う第1コンデンサ主充電工程を行い、その後、第1スイッチ回路をOFFにするとともに第2スイッチ回路をONにして第1コンデンサの充電を行う第1コンデンサ副充電工程と、第1コンデンサによって第2コンデンサの充電を行う第2コンデンサ充電工程を少なくとも1回繰り返し、しかる後、出力回路によって第2コンデンサを放電させる第2コンデンサ放電工程を行うよう構成されることが好ましく、この場合は、第1コンデンサ主充電工程で蓄積した第1コンデンサの電荷が第2コンデンサに流れても、その分の電荷を第1コンデンサ副充電工程によって短時間で補うことができる。
【0015】
また出力回路を、複数の電極のうちの一つである第1電極に対し、直前に行った第2コンデンサ放電工程で付加する電圧の極性に対して、次に行われる第2コンデンサ放電工程では極性を切り替えて付加する出力電圧極性切替回路として構成する場合は、電流の流れる方向を変化させてあらゆる方向から近づく鮫に対して有効に電気的な衝撃を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に従う鮫撃退装置の一実施形態を示すブロック図である。
図2図1に示すブロック図の各部における電圧波形を示す図である。
図3図1に示すブロック図の各部における電流波形を示す図である。
図4】比較例である鮫撃退装置のブロック図である。
図5図4に示すブロック図の各部における電圧波形と電流波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明に従う鮫撃退装置の一実施形態について説明する。
【0018】
図1は、本発明に従う鮫撃退装置の一実施形態を示すブロック図である。本実施形態の鮫撃退装置は、電気回路1と、電気回路1に接続されるとともに海水中Wに設置される複数の電極2とを備えている。本実施形態では、2つの電極(第1電極2a、第2電極2b)を備えているが、電極2は3個以上であってもよい。本実施形態では電気回路1を駆動させることによって、第1電極2aと第2電極2bの電極間に最大出力電圧±1000Vの電気パルスが周期0.5秒毎に発生するように構成されている。なお、第1電極2aと第2電極2bの電極間の負荷抵抗は10Ωであるとする。
【0019】
電気回路1は、直流又は交流電圧を発生する電源3を備えている。電源3は種々のものが採用可能であり、本実施形態では、一例としてDC24Vで40Ahのバッテリーを使用するとして説明する。
【0020】
電源3の出力側には、昇圧回路4が設けられている。昇圧回路4にはトランス等が設けられていて、電源3から供給される電圧を例えば出力電圧が1100V程度になるように昇圧することが可能である。
【0021】
また昇圧回路4の出力側には、昇圧された交流電圧を直流電圧に整流する整流回路5が設けられている。
【0022】
そして整流回路5の出力側には、第1コンデンサ6が設けられている。第1コンデンサ6は、後述する第2コンデンサよりも静電容量が大きいものを使用している。本実施形態の第1コンデンサ6は、静電容量が1000μF程度になるものを使用している。また第1コンデンサ6としては、セラミックやプラスチックフィルムを誘電体として使用したものでもよいが、本実施形態においては電解コンデンサを使用している。これにより、静電容量は大きいながらも小型化を図ることができる。
【0023】
ここで、整流回路5と第1コンデンサ6は第1接続路7によって接続されている。また整流回路5と第1コンデンサ6は、第1接続路7とは別異にこれらをつなぐ第2接続路8によっても接続されている。
【0024】
第1接続路7には、第1抵抗器9と、第1コンデンサ6に流れる電流をON/OFFする第1スイッチ回路10が設けられている。また第2接続路8には、第2抵抗器11と、第1コンデンサ6に流れる電流をON/OFFする第2スイッチ回路12が設けられている。第1抵抗器9は、第2抵抗器11よりも抵抗値が大きくなるものを使用している。本実施形態では、第1抵抗器9においては抵抗値が10kΩ程度のものを使用し、第2抵抗器11においては抵抗値が500Ω程度のものを使用している。これにより、第1接続路7では第2接続路8よりも電流が流れにくくなる。また、第1スイッチ回路10及び第2スイッチ回路12は、ON時間制御回路13にも接続されていて、第1スイッチ回路10のON/OFF時間、及び第2スイッチ回路12のON/OFF時間は、ON時間制御回路13によって制御することができるように構成されている。
【0025】
また第1コンデンサ6の出力側には、第2コンデンサ14が設けられている。第2コンデンサ14は、静電容量が第1コンデンサ6よりも小さいものを使用している。本実施形態では静電容量が100μF程度になるものを選定し、第2コンデンサ14に対して第1コンデンサ6の静電容量が10倍程度になるようにしている。また第2コンデンサ14としては、セラミックやプラスチックフィルムを誘電体として使用した種々のものが使用可能であるが、誘電正接(タンデルタ)が小さいものが好ましい。本実施形態においては、誘電体にポリプロピレンを使用したものを使用している。
【0026】
第1コンデンサ6と第2コンデンサ14は、第3接続路15によって接続されている。また第3接続路15には、第3抵抗器16と、第2コンデンサ14に流れる電流をON/OFFする第3スイッチ回路17が設けられている。なお第3抵抗器16の抵抗値は、本実施形態では3kΩ程度である。また第3スイッチ回路17は、第1スイッチ回路10及び第2スイッチ回路12と同様にON時間制御回路13にも接続されていて、第3スイッチ回路17のON/OFF時間は、ON時間制御回路13によって制御することが可能である。
【0027】
そして、第2コンデンサ14と電極2の間には、第2コンデンサ14を放電させて電極2に電圧を付加する出力回路18が設けられている。出力回路18は、例えば第2コンデンサ14と電極2の間に配置される一つのサイリスタで構成されるものであり、この場合は、サイリスタにゲート信号を入力することによって第2コンデンサ14に蓄積された電荷を電極2に流すことができる。
【0028】
なお、本実施形態における出力回路18は、第1電極2aと第2電極2bに付加する電圧の極性が、プラス極又はマイナス極に切り替わる出力電圧極性切替回路として構成されている。具体的には、第2コンデンサ14の一端側と第1電極2aとを接続するとともに、電流が第2コンデンサ14から第1電極2aに向かって流れるのを許容する第1サイリスタ19と、第2コンデンサ14の一端側と第2電極2bとを接続するとともに、電流が第2コンデンサ14から第2電極2bに向かって流れるのを許容する第2サイリスタ20と、第2コンデンサ14の他端側と第1電極2aとを接続するとともに、電流が第1電極2aから第2コンデンサ14に向かって流れるのを許容する第3サイリスタ21と、第2コンデンサ14の他端側と第2電極2bとを接続するとともに、電流が第2電極2bから第2コンデンサ14に向かって流れるのを許容する第4サイリスタ22とを備えている。また、第1サイリスタ19〜第4サイリスタ22は、これらにゲート信号を個別に入力可能なゲート信号発生回路23に接続されている。ここでゲート信号発生回路23は、前述のON時間制御回路13とも接続されている。なお、極性の切り替えに関する詳細な説明は後述する。
【0029】
このような構成になる鮫撃退装置においては、ON時間制御回路13からの指令によって、第2スイッチ回路12をOFFにするとともに第3スイッチ回路17もOFFにした状態で第1スイッチ回路10をONにする。これにより、第1コンデンサ6には第1抵抗器9及び第1スイッチ回路10を介して電流が流れることになる。ここで、整流回路5における出力電圧をVc、第1抵抗器9の抵抗値をR1、第1コンデンサ6の静電容量をC1、第1スイッチ回路10をONにしてから経過した時間をTとする場合、第1コンデンサ6の電極間の電圧であるV1は、下記の式(1)で表される。
【0030】
式(1):V1=Vc×(1−EXP((−1/(C1×R1))×T))
【0031】
またこのときの第1スイッチ回路10におけるON/OFFのタイミングを図2(a)に示すとともに、第1コンデンサ6の電極間の電圧V1の電圧波形を図2(b)に示す。
【0032】
また電源3から昇圧回路4に入力される入力電流Iinは、昇圧回路4で使用するトランスの巻線比をNとする場合、下記の式(2)で表される。
【0033】
式(2):Iin=N×(Vc−V1)/R1
【0034】
また、このときの電源3からの入力電流Iinの電流波形を図3(b)に示す。なお、図3(a)は図2(a)と同一の図であって、第1スイッチ回路10におけるON/OFFのタイミングを示している。また図2(a)、(b)及び図3(a)、(b)では、第1スイッチ回路10がOFFからONに切り替わったときを0秒とし、そこから第1スイッチ回路10がOFFに切り替わるまでを示している。ここで、第1スイッチ回路10が所定時間ONとなって(本実施形態では25秒間)第1コンデンサ6の充電を行う工程を第1コンデンサ主充電工程と称する。なお、第1スイッチ回路10が25秒間ON状態であるときの平均入力電流は約2Aである。
【0035】
次いで、第1スイッチ回路10をOFFにするとともに第2スイッチ回路12をONにして(第3スイッチ回路17はOFFのまま)、第2抵抗器11及び第2スイッチ回路12を介してt1時間(本実施形態では0.07秒間)第1コンデンサ6に電流を流し、第1コンデンサ6の充電を行う。ここで、この工程を第1コンデンサ副充電工程(1回目)と称する。なお本工程以降において、第1スイッチ回路10はOFFのままとする。また、図2(c)、図3(c)は第2スイッチ回路12におけるON/OFFのタイミングを示し、図2(d)、図3(d)は第3スイッチ回路17におけるON/OFFのタイミングを示すものとする。
【0036】
ここで、第2抵抗器11の抵抗値をR2、第1スイッチ回路10をOFFにするとともに第2スイッチ回路12をONにしてから経過した時間をT、第1スイッチ回路10をOFFにする直前の第1コンデンサ6の電極間の電圧をV01maxとする場合、t1時間における第1コンデンサ6の電極間の電圧であるV1は、下記の式(3)で表される。またt1時間における電源3から昇圧回路4に入力される入力電流Iinは、下記の式(4)で表される。
【0037】
式(3):V1=Vc×(1−EXP((−1/(C1×R2))×T))+V01max
式(4):Iin=N×(Vc−V1)/R2
【0038】
また、t1時間における第1コンデンサ6の電極間の電圧であるV1の電圧波形を図2(e)に示し、t1時間における電源3から昇圧回路4に入力される入力電流Iinの電流波形を図3(e)に示す。
【0039】
その後は、第2スイッチ回路12をOFFにするとともに第3スイッチ回路17をONにして、第1コンデンサ6から第3抵抗器16及び第3スイッチ回路17を介してt2時間(本実施形態では0.1秒間)第2コンデンサ14に電流を流し、第2コンデンサ14の充電を行う。なお、この工程を第2コンデンサ充電工程(1回目)と称する。
【0040】
ここで、第3抵抗器16の抵抗値をR3、第2コンデンサ14の静電容量をC2、第2スイッチ回路12をOFFにするとともに第3スイッチ回路17をONにしてから経過した時間をT、第2スイッチ回路12をOFFにする直前の第1コンデンサ6の電極間の電圧をV1maxとする場合、t2時間における第1コンデンサ6の電極間の電圧であるV1は、下記の式(5)で表される。またt2時間における第2コンデンサ14の電極間の電圧であるV2は、下記の式(6)で表される。
【0041】
式(5):V1=V1max×EXP((−1/(C1×R3))×T)
式(6):V2=V1×(1−EXP((−1/(C2×R3))×T))
【0042】
また、t2時間における第1コンデンサ6の電極間の電圧であるV1の電圧波形を図2(e)に示し、t2時間における第2コンデンサ14の電極間の電圧であるV2の電圧波形を図2(f)に示す。なお、図3(e)に示すように、電源3から昇圧回路4に入力される入力電流Iinはt2時間では殆ど流れていない。
【0043】
しかる後、第3スイッチ回路17をOFFにするとともに第2スイッチ回路12をONにして、第2抵抗器11及び第2スイッチ回路12を介してt3時間(本実施形態では0.02秒間)第1コンデンサ6に電流を流し、第1コンデンサ6の充電を行う。ここで、この工程を第1コンデンサ副充電工程(2回目)と称する。
【0044】
ここで、第3スイッチ回路17をOFFにするとともに第2スイッチ回路12をONにしてから経過した時間をT、第3スイッチ回路17をOFFにする直前の第1コンデンサ6の電極間の電圧をV1minとする場合、t3時間における第1コンデンサ6の電極間の電圧であるV1は、下記の式(7)で表される。またt3時間における電源3から昇圧回路4に入力される入力電流Iinは、下記の式(8)で表される。
【0045】
式(7):V1=Vc×(1−EXP((−1/(C1×R1))×T))+V1min
式(8):Iin=N×(Vc−V1)/R1
【0046】
また、t3時間における第1コンデンサ6の電極間の電圧であるV1の電圧波形を図2(e)に示し、t3時間における電源3から昇圧回路4に入力される入力電流Iinの電流波形を図3(e)に示す。
【0047】
次いで、第2スイッチ回路12をOFFにするとともに第3スイッチ回路17をONにして、第1コンデンサ6から第3抵抗器16及び第3スイッチ回路17を介してt4時間(本実施形態では0.3秒間)第2コンデンサ14に電流を流し、第2コンデンサ14の充電を行う。なお、この工程を第2コンデンサ充電工程(2回目)と称する。
【0048】
ここで、第2スイッチ回路12をOFFにするとともに第3スイッチ回路17をONにしてから経過した時間をT、第2スイッチ回路12をOFFにする直前の第1コンデンサ6の電極間の電圧をV1maxとする場合、t4時間における第1コンデンサ6の電極間の電圧であるV1は、前述の式(5)で表される。またt4時間における第2コンデンサ14の電極間の電圧であるV2は、前述の式(6)で表される。
【0049】
また、t4時間における第1コンデンサ6の電極間の電圧であるV1の電圧波形を図2(e)に示し、t4時間における第2コンデンサ14の電極間の電圧であるV2の電圧波形を図2(f)に示す。なお、図3(e)に示すように、電源3から昇圧回路4に入力される入力電流Iinはt4時間では殆ど流れていない。
【0050】
このように、t1〜t4時間において電源3から昇圧回路4に入力される入力電流Iinは、殆どが第2スイッチ回路12をONしたときにしか流れないことになる。なお、t1〜t4時間において第2スイッチ回路12をONしたときの平均入力電流は約0.5Aになる。
【0051】
その後は、第3スイッチ回路17をOFFにするとともに、ゲート信号発生回路23からの指令によって第1サイリスタ19〜第4サイリスタ22にゲート信号を入力する。本実施形態においては、第1サイリスタ19と第4サイリスタ22にゲート信号を入力し、第1サイリスタ19と第4サイリスタ22を介して第2コンデンサ14に蓄積した電荷をt5時間(本実施形態では0.01秒)の間で第1電極2aと第2電極2bに放電することによって、第1電極2aと第2電極2bの間に電気パルスを発生させる。なお、この工程を第2コンデンサ放電工程と称する。また、t5時間に第1電極2aと第2電極2bに付加される出力電圧Voutの電圧波形を図2(g)に示す。
【0052】
しかる後は、上述した第1コンデンサ副充電工程(1回目)、第2コンデンサ充電工程(1回目)、第1コンデンサ副充電工程(2回目)、第2コンデンサ充電工程(2回目)を行って第2コンデンサ14を充電する。そして、ゲート信号発生回路23からの指令によって第2サイリスタ20と第3サイリスタ21にゲート信号を入力することにより、図2(g)に示すように直前の第2コンデンサ放電工程とは極性を切り替えて、第1電極2aと第2電極2bの間に電気パルスを発生させることができる。
【0053】
このような鮫撃退装置は、電源3からの平均入力電流を抑えることができるため、連続して使用することができる時間を大幅に延長することができる。この点を明らかにするために、比較例を挙げながら説明する。図4は、比較例として示した鮫撃退装置100のブロック図である。なお、上述したサメ撃退装置と共通する部分は、図面中に同一の符号を付している。
【0054】
比較例においては、第3スイッチ回路17をONにすることによって整流回路5から流れる電流で第2コンデンサ14を充電する。そして、ゲート信号発生回路23からの指令によって第1サイリスタ19〜第4サイリスタ22にゲート信号を入力し、第2コンデンサ14に蓄積した電荷を放電させて第1電極2aと第2電極2bの間に電気パルスを発生させるようにしている。
【0055】
ここで、比較例における、第3スイッチ回路17のON/OFFのタイミングを図5(a)に示す。また図5(b)は、第2コンデンサ14の電極間の電圧であるV2の電圧波形を示し、図5(c)は、第1電極2aと第2電極2bに付加される出力電圧Voutの電圧波形を示し、図5(d)は、電源3から昇圧回路4に入力される入力電流Iinの電流波形を示す。
【0056】
比較例では、電源3から昇圧回路4に入力される入力電流Iinのピークは約21Aであり、平均入力電流は約8Aである。すなわち、電源3として40Ahのバッテリーを使用する場合、比較例の鮫撃退装置を連続して使用することができる時間は約5時間となる。このため、漁業を行う際には操業時間の全てで使用できないことが発生する。一方本実施形態の鮫撃退装置では、第1スイッチ回路10をONにして最初に第1コンデンサ6を充電する際の極短時間(25秒間)に比較例よりも少ない電流(平均入力電流で約2A程度)しか流れず、またその後の連続的な使用では、平均入力電流で約0.5Aが流れる程度である。このため、電源3として40Ahのバッテリーを用いる場合は約80時間に亘って連続して使用することができる。また、本実施形態の鮫撃退装置を使う際、連続的な使用時間をそれ程長くする必要が無い場合は、容量の小さいバッテリーを使うこともできるため、装置の小型化を図ることもできる。また、第2コンデンサ14では充放電が繰り返されるが、本実施形態では誘電体にポリプロピレンの如き誘電正接(タンデルタ)が小さいものを使用しているため、発熱による影響を抑えることができる。
【0057】
以上、本発明に従う鮫撃退装置について具体的な実施形態を示しながら説明したが、本発明に従う鮫撃退装置は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に従う範疇で種々の変更を加えたものも含まれる。例えば上述した第1抵抗器9は、第2抵抗器11に対して約20倍の抵抗値となるものであったが、一例として2〜40倍になる範囲で任意に選択してもよい、また第1コンデンサ6は、第2コンデンサ14に対して約10倍の静電容量を持つものであったが、一例として2〜20倍になる範囲で任意に選択してもよい。また、上述したところでは第1コンデンサ副充電工程と第2コンデンサ充電工程を2回繰り返してから第2コンデンサ放電工程を行ったが、繰り返しは1回でもよいし3回以上であってもよい。更に、電気パルスを1回出力する毎に極性を切り替えることに限られず、2回以上の任意の回数毎に極性を切り替えてもよいし、極性を切り替えずに各電極が同一の極性のままで電気パルスが出力されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1:電気回路
2:電極
2a:第1電極
2b:第2電極
3:電源
4:昇圧回路
5:整流回路
6:第1コンデンサ
7:第1接続路
8:第2接続路
9:第1抵抗器
10:第1スイッチ回路
11:第2抵抗器
12:第2スイッチ回路
13:ON時間制御回路
14:第2コンデンサ
15:第3接続路
16:第3抵抗器
17:第3スイッチ回路
18:出力回路(出力電圧極性切替回路)
19:第1サイリスタ
20:第2サイリスタ
21:第3サイリスタ
22:第4サイリスタ
23:ゲート信号発生回路
図1
図2
図3
図4
図5