【実施例1】
【0017】
本発明の実施例1について、
図1〜
図3を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例1における最上部ケーシングを説明する図である。
図2は、本発明の実施例1における最上部ケーシングの水空気供給部から、水、又は、水及び空気が供給される様子を説明する断面図である。
図3は、本発明の実施例1における障害破砕方法を説明する図である。
【0018】
(ケーシング)
実施例1におけるケーシングKは最上部ケーシング1を最上部に有している。最上部ケーシング1は、
図1、
図2に示すように、円筒形状(φ700〜2300mm)をしており、天面には蓋部1aが全面に設けられて塞がれている。また、蓋部1aには水空気供給部1bが設けられ、水用ホース(図示せず)によって供給された水Wが最上部ケーシング1の内部に供給可能とされている。また、同様に、水空気供給部1bにおける空気用ホース(図示せず)によって供給された空気Aが最上部ケーシング1の内部に供給可能とされている。水空気供給部1bに供給された水Wと空気Aは水空気供給部1bで混合されてケーシングK内に供給される。また、水W及び空気Aは図示しない制御部によって、水Wのみの供給、又は、水及び空気の供給を選択することができる。さらに、水用ホース、又は空気用ホースから水空気供給部1bを介して、削孔液(例えば、ベントナイト)を最上部ケーシング1の内部に供給することができる。
【0019】
ここで、最上部ケーシング1は、通常、ドレットラーと呼ばれるもので、このドレットラーの下にケーシングが接続されるが、本発明においては最上部ケーシングと呼ぶ。
【0020】
図1に示すように、最上部ケーシング1の上部には、シーベルと呼ばれる回転が可能な治具が接続されており、最上部ケーシング1はシーベル4を介して掘削機11に取付けられる(
図3参照)。水用ホース及び空気用ホースはこのシーベル4及び水空気供給部1bの中を通っている。最上部ケーシング1の下部には中間ケーシング3(
図3参照)がボルトによって接続され、さらに中間ケーシング3の下部には最下部ケーシング2(
図3参照)がボルトによって接続されている。最下部ケーシング2の下端には掘削刃が設けられている。中間ケーシング3は必須ではなく、掘削する地中の深さが浅い場合は接続しなくてもよい。少なくとも最上部ケーシング1と最下部ケーシング2が接続されていればよい。つまり、本発明におけるケーシングKは、中間ケーシング3が最上部ケーシング1と最下部ケーシング2との間に、一つ又は複数接続されていても接続されていなくてもよく、少なくとも最上部ケーシング1と最下部ケーシング2が接続されていればよい。
【0021】
最上部ケーシング1の水空気供給部1bから供給された水Wや空気Aは、ケーシングKの下端の土圧に供給されて土を軟らかくすることで、ケーシングK下端の掘削刃による掘削力が向上し、効率的に地中に埋め込むことができる。従来のケーシングの側面には軽量化のために複数の穴が形成されているが、実施例1における最上部ケーシング1、最下部ケーシング2、及び中間ケーシング3は、元々杭打ちに用いられるケーシングであって生コンが漏れないようにその側面部分には穴が形成されておらず、最下部ケーシング2の下端のみ開口されている。そのため、供給された水Wや空気AがケーシングKの外にでることがなく、効率的にケーシングK下端の土を軟らかくすることができ、ケーシングKの掘削力を向上させることができる。特に、水に加えて空気を供給することで、砂利等が舞い上げられて水との相乗効果で土を軟らかくすることができる。
【0022】
ここで、掘削機11は、高トルクのシーベル4(回転ヘッド)と押し込み力の大きな削孔装置を備えた自走可能な掘削機である。ケーシングKを掘削機11に取付けてシーベル4を回転させながら下方へ押し込むことにより、ケーシングKを地中に埋込み可能であり、コンクリート等の障害物があれば、大きい押し込み力により破砕することができる。また、後述のように、破砕具やハンマークラブを取付けることができ、ケーシングK内の障害物を破砕したり、破砕された障害物を除去することが可能である。さらに、掘削力が向上することにより小型の掘削機11で埋込みが可能であるため、従来の全周回転機に比べて狭いスペースで作業が可能であり、隣接建物や敷地境界との離隔が小さい場所でも施工することができる。実施例1においては、離隔が1.5mでも施工可能である。
【0023】
従来は、全周回転機によって、水や空気を供給しないでケーシングを地中に埋め込んで障害物を破砕することが行われていた。その場合、ケーシングを回転させながら地中に埋め込む際に、掘削力が弱く効率的な障害物の破砕ができないことがあった。また、全周回転機を使っているため広いスペースが必要で隣接地までの離隔が少ないところでは施行が困難であった。これに対して、実施例1においては、最上部ケーシング1内に水や空気を供給可能であるため、ケーシングKを地中に埋め込む際に水や空気でケーシングK下端の土を軟らかくして掘削することで、掘削力が向上し、小型の掘削機で効率的に障害物の破砕や除去を行うことができる。
【0024】
水空気供給部1bから供給する水Wや空気Aは、ケーシングKで掘削する土壌によって水Wのみ、又は、水W及び空気Aというように供給するものを選択することができる。例えば、粘性度が高い土の場合は空気の効果が少ないので水Wのみ供給するようにしてもよい。
【0025】
(障害破砕方法)
実施例1の障害破砕方法について
図3を参照して説明する。
図3(a)と
図3(b)はケーシング準備工程を説明する図であり、
図3(c)は破砕工程を説明する図である。
【0026】
まず、ケーシング準備工程を実施する。ケーシング準備工程では、天面に蓋部1aを有し、当該蓋部1aから内部に水、又は、水及び空気を供給可能な水空気供給部1bを有している最上部ケーシング1の下部に、掘削深さを深くするため中間ケーシング3をボルトで接続し、さらに掘削刃を下端に有した最下部ケーシング2を中間ケーシング3にボルトで接続したケーシングKを準備する。そして、ケーシングKを掘削機11にシーベル4を介して取り付ける。
【0027】
ここで、中間ケーシング3は必ずしも必要ではなく、掘削の深さが浅い場合には必要ない。すなわち、最上部ケーシング1に少なくとも最下部ケーシング2を接続すればよい。逆に掘削深さを深くする場合は、中間ケーシング3を複数接続すればよい。この場合、最初から複数の中間ケーシング3を接続してもよいが、掘削機11の高さの都合により、後から中間ケーシング3を追加してもよい。すなわち、一旦、ケーシングKにより後述の破砕工程を実施し、その後、他のケーシングを地中に残したまま最上部ケーシング1のみを分離し、最上部ケーシング1の下部に追加の中間ケーシング3を接続して地中に残したケーシングに接続するようにすればよい。
【0028】
次に、破砕工程を実施する。破砕工程では、掘削機11に取付けたシーベル4を回転させることでケーシングKを回転させながら地中に圧入して、コンクリートや鉄骨等の障害物があれば破砕する。その際、ケーシングKの掘削力を高めるために、水空気供給部1bから水Wや空気Aを供給してケーシングK下端の土を軟らかくすることで掘削力が向上し、効率的に障害物を破砕することができる。従来は、水や空気を供給せずにケーシングを地中に埋め込んでいたので、ケーシングの掘削力が弱く地中への埋込みに時間がかかることがあったが、本発明の実施例1では、この問題を解決して、効率的にケーシングを地中に埋め込んで障害物を破砕できる。
【0029】
また、従来、ケーシングの外側に配管して水をケーシング下端に外側から供給することが一部では行われていたが、この場合は余分な配管が必要になり手間がかかるとともに、この配管の土圧に対する抵抗によりケーシングの掘削力が低下するという問題があった。このため、実施例1のように、ケーシングKの内部に水Wや空気Aを供給することによってケーシングKの掘削力を効率的に向上させることができる。
【0030】
水W、空気Aを両方供給するか、一方のみとするかは、掘削する土壌によって選択する。すなわち、粘性度が高い土の場合は空気の効果が少ないので水Wのみ供給するようにしてもよい。その他の場合は、水W及び空気Aを供給するとよい。特に、砕かれた岩が堆積しているところや砂礫層について水W及び空気Aを供給すると効果的である。
【0031】
また、実施例1では、掘削機11にケーシングKを取付けて水や空気を供給しながら地中に埋め込んでいるので、従来の全周回転機を設置してケーシングを埋め込む場合に比べて隣接する建物等に近い現場でも効率的にケーシングKにより地中に埋込み、障害物を破砕することができる。実施例1においては、隣接する建物が1.5mくらいの離隔であっても障害物の破砕をすることができる。
【0032】
なお、実施例1においては、最上部ケーシング1に少なくとも最下部ケーシング2を接続する構成としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、最上部ケーシング1の下端に掘削刃を備えている場合は、必ずしも最下部ケーシング2を接続する必要はない。
【0033】
このように、実施例1においては、地中に埋め込むケーシングであって、
前記ケーシングは、少なくとも最上部ケーシング及び掘削刃を下端に有した最下部ケーシングを備え、
前記最上部ケーシングは、天面がふさがれた蓋部を有し、当該蓋部から内部に水、又は、水及び空気を供給可能な水空気供給部を有していることを特徴とするケーシングを用いることにより、ケーシング内から下端の土圧に対して水と空気を供給して土を軟らかくし、ケーシングの掘削力を向上させることができるため、小型の掘削機や全周回転機でケーシングを埋め込むことが可能となり、狭いスペースでも効率よく地中の障害物を破砕することができる。
【0034】
また、実施例1においては、地中の障害物を破砕する障害破砕方法であって、
天面に蓋部を有し、当該蓋部から内部に水、又は、水及び空気を供給可能な水空気供給部を有している最上部ケーシングの下部に、掘削刃を下端に有した最下部ケーシングを少なくとも接続したケーシングを準備するケーシング準備工程と、
前記ケーシングを掘削機に取付けて回転させながら地中に埋込むとともに、地中の障害物を破砕する破砕工程と、を備え、
前記破砕工程では、前記最上部ケーシングの前記水空気供給部から、水、又は、水及び空気を供給することを特徴とする障害破砕方法により、ケーシング内から下端の土圧に対して水と空気を供給して土を軟らかくし、ケーシングの掘削力を向上させることができるため、小型の掘削機で埋込みが可能となり、狭いスペースでも効率よく地中の障害物を破砕することができる。
【実施例2】
【0035】
本発明の実施例2は、実施例1における障害破砕方法にケーシング内破砕工程を追加した点で実施例1と異なっている。実施例2における障害破砕方法について、
図4を参照して説明する。
図4は、本発明の実施例2における障害破砕方法を説明する図である。
【0036】
図4(a)、
図4(b)は、ケーシング準備工程を示しており、
図4(c)は、破砕工程を示している。ケーシング準備工程と破砕工程については、実施例1とおなじであるので説明を省略する。
【0037】
図4(d)は、ケーシング内破砕工程を示している。すなわち、破砕工程において、水や空気を供給しながらケーシングKを地中に埋め込んで障害物Bを破砕した後、ケーシングK内に破砕されたものの大きな障害物Bがある場合に、ケーシング内破砕工程を実施する。ケーシング内破砕工程では、掘削機11からケーシングK(つまり最上部ケーシング1)を取外し、代わりに破砕具5を取り付ける。そして、掘削機11によって破砕具5をケーシングK内に下降させる。破砕具5が障害物Bに到着すると、掘削機11のシーベル4を回転させることで破砕具5を回転させるとともに圧力を障害物Bに加えて破砕する。破砕具5は大きなネジ山のような掘削刃で構成され、回転させながら圧力を加えることで障害物Bが破砕される。
【0038】
ケーシング内破砕工程は、必ずしも必要ではなく、ケーシングK内に大きな障害物Bが存在する場合にのみ実施すればよい。ケーシングK内に大きな障害物が存在するかどうかは、センサー等でセンシングして調べればよい。
【0039】
このように、実施例2においては、破砕具によりケーシング内破砕工程を実施することで、ケーシング内の大きな障害物を細かく砕くことができる。
【実施例3】
【0040】
本発明の実施例3は、地中の障害物を破砕した後、ケーシング内の破砕された障害物を除去する障害除去工程を追加した点で実施例1、実施例2と異なっている。実施例3における障害除去方法について、
図5を参照して説明する。
図5は、本発明の実施例3における障害除去方法を説明する図である。
【0041】
図5(a)はケーシング準備工程、
図5(b)は破砕工程、
図5(c)はケーシング内破砕工程、
図5(d)は障害除去工程を示している。まず、ケーシング準備工程を実施する。ケーシング準備工程では、天面に蓋部1aを有し、当該蓋部1aから内部に水、又は、水及び空気を供給可能な水空気供給部1bを有している最上部ケーシング1の下部に、掘削深さを深くするため中間ケーシング3を接続し、さらに掘削刃を下端に有した最下部ケーシング2を接続したケーシングKを準備する。そして、ケーシングKを掘削機11にシーベル4を介して取り付ける。
【0042】
ここで、中間ケーシング3は必ずしも必要ではなく、掘削の深さが浅い場合には必要ない。すなわち、最上部ケーシング1に少なくとも最下部ケーシング2を接続すればよい。逆に掘削深さを深くする場合は、中間ケーシング3を複数接続すればよい。この場合、最初から複数の中間ケーシング3を接続してもよいが、掘削機11の高さの都合により、後から中間ケーシング3を追加してもよい。すなわち、一旦、ケーシングKにより後述の破砕工程と障害除去工程とを実施し、その後、他のケーシングを地中に残したまま最上部ケーシング1のみを分離し、最上部ケーシング1の下部に追加の中間ケーシング3を接続して地中に残したケーシングに接続するようにすればよい。
【0043】
次に、破砕工程を実施する。破砕工程では、掘削機に取付けられているシーベル4を回転させることでケーシングKを回転させながら地中に圧入して、コンクリートや鉄骨等の障害物があれば破砕する。その際、ケーシングKの掘削力を高めるために、水空気供給部1bから水Wや空気Aを供給してケーシングK内からケーシングK下端の土を軟らかくすることで掘削力が向上し、効率的に障害物を破砕することができる。従来は、水や空気を供給せずにケーシングを地中に埋め込んでいたので、ケーシングの掘削力が弱く地中への埋込みに時間がかかることがあったが、本発明の実施例3では、この問題を解決して、効率的にケーシングを地中に埋め込んで障害物を破砕できる。
【0044】
水W、空気Aを両方供給するか、一方のみとするかは、掘削する土壌によって選択する。すなわち、粘性度が高い土の場合は空気の効果が少ないので水Wのみ供給するようにしてもよい。
【0045】
また、実施例3においては、掘削機11にケーシングKを取付けて水や空気を供給しながら地中に埋め込んでいるので、従来の全周回転機を設置してケーシングを埋め込む場合に比べて隣接する建物等に近い現場でも効率的にケーシングKにより地中に埋込み、障害物を破砕することができる。実施例3においては、隣接する建物が1.5mくらいの離隔であっても障害物の破砕をすることができる。
【0046】
次に、ケーシング内破砕工程を実施する。すなわち、破砕工程において、水や空気を供給しながらケーシングKを地中に埋め込んで障害物Bを破砕した後、ケーシングK内に破砕されたものの大きな障害物がある場合に、ケーシング内破砕工程を実施する。ケーシング内破砕工程では、ケーシングKを地中に残したまま掘削機11からケーシングK(つまり最上部ケーシング1)を取外し、代わりに破砕具5を取り付ける。そして、掘削機11によって破砕具5をケーシングK内に下降させる。破砕具5が障害物Bに到着すると、掘削機11のシーベル4を回転させることで破砕具5を回転させるとともに圧力を障害物Bに加えて破砕する。破砕具5は大きなネジ山のような切削刃で構成され、回転させながら圧力を加えることで障害物が破砕される。
【0047】
なお、ケーシング内破砕工程は必ずしも必要ではなく、ケーシングK内に大きな障害物Bが存在する場合に実施すればよい。ケーシングK内に大きな障害物が存在するかどうかは、センサー等でセンシングして調べてもよいが、後述の障害除去工程でハンマークラブが障害物Bを把持できないときに実施するようにしてもよい。
【0048】
次に、障害除去工程を実施する。障害除去工程では、掘削機11に取付けられていたケーシングK又は破砕具5を取外して、ハンマークラブ6を取り付ける。そして、ハンマークラブ6を地中に埋設されているケーシングK内に挿入し下降させる。ハンマークラブ6が破砕された障害物Bに到着したら、障害物Bを把持して地上に引上げ、所定の場所に載置する。ハンマークラブ6は、複数の把持爪を備えており、この複数の把持爪を閉じることで障害物Bを把持することができる。
【0049】
なお、実施例3においては、最上部ケーシング1に少なくとも最下部ケーシング2を接続する構成としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、最上部ケーシング1の下端に掘削刃を備えている場合は、必ずしも最下部ケーシング2を接続する必要はない。
【0050】
このように、実施例3においては、地中の障害物を破砕する障害除去方法であって、
天面に蓋部を有し、当該蓋部から内部に水、又は、水及び空気を供給可能な水空気供給部を有している最上部ケーシングの下部に、掘削刃を下端に有した最下部ケーシングを少なくとも接続したケーシングを準備するケーシング準備工程と、
前記ケーシングを掘削機に取付けて回転させながら地中に埋込むとともに、地中の障害物を破砕する破砕工程と、
地中に埋設された前記ケーシング内に、掘削機に取付けたハンマークラブを挿入して障害物を把持し、地中から除去する障害除去工程と、を備え、
前記破砕工程では、前記最上部ケーシングの前記水空気供給部から、水、又は、水及び空気を供給することを特徴とする障害除去方法により、ケーシング内から下端の土圧に対して水と空気を供給して土を軟らかくし、ケーシングの掘削力を向上させることができるため、小型の掘削機で埋込みが可能となり、狭いスペースでも効率よく地中の障害物を破砕することができる。