(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記成分(A)及び成分(B)を含有し、前記成分(B)の質量に対する成分(A)の質量の比率((A)/(B))が1/99〜30/70であることを特徴とする、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
成分(A):
下記式(1)で表されかつ下記式(2)の関係を満足するポリオキシアルキレンモノオール(a1)と、分子内に2個以上のイソシアネート基を含有するイソシアネート(a2)との反応物であるウレタン化合物
R1O−(PO)n−H ・・・(1)
(式(1)中、
R1は炭素数1〜22の炭化水素基であり、
POは炭素数3のオキシアルキレン基を表し、
nは25以上の数を示す。)
0.35≦ML/MH≦0.75 ・・・(2)
(ゲル浸透クロマトグラフィー測定により求められるクロマトグラム上の屈折率強度が最大となる極大点KからベースラインBへの垂線の長さをLとし、屈折率強度がL/2となるクロマトグラム上の2点のうち溶出時間が早いほうを点Oとし、溶出時間が遅いほうを点Qとし、点Oと点Qを結ぶ直線Gと前記極大点Kから前記ベースラインへ引いた垂線との交点をPとしたとき、点Oと交点Pの距離をMHとし、点Qと交点Pの距離をMLとする。)
成分(B):
エチレン性不飽和基を2個以上有するウレタン(メタ)アクリレート化合物
【発明を実施するための形態】
【0014】
(成分(A))
成分(A)は、下記式(1)で表されかつ下記式(2)の関係を満足するポリオキシアルキレンモノオール(a1)と、分子内に少なくとも2個以上のイソシアネート基を含有するイソシアネート(a2)との反応物であるウレタン化合物である。
R
1O−(PO)
n−H ・・・(1)
【0015】
式(1)において、R
1は、炭素数1〜22の炭化水素基から選ばれる一種または二種以上である。R
1の炭素数は、反応性の観点から1〜22とするが、1〜14が好ましく、1〜6が更に好ましい。また、R
1の炭化水素基は、直鎖でも分岐でも良いが、直鎖のものがより好ましい。また、炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、芳香族炭化水素基を例示できるが、アルキル基が特に好ましい。
【0016】
R
1は、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、イソセチル基、オクタデシル基、イソステアリル基、イコシル基、ドコシル基が挙げられる。更に、炭素数1〜6の炭化水素基としては、直鎖でも分岐でも良いが、直鎖のものがより好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
【0017】
POは、炭素数3のオキシアルキレン基である。また、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表す。nが25未満であると、作業性の改善が不十分となるため、nは25以上であり、40以上であることがより好ましい。また、nが大きくなるにつれて粘度が上昇し、取扱いが困難になることから、nは150以下であることが好ましく、120以下であることがより好ましい。
【0018】
本発明のポリオキシアルキレン誘導体(a1)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)において、示差屈折率計を用いて得られたクロマトグラムによって規定される。このクロマトグラムとは、屈折率強度と溶出時間との関係を表すグラフである。本発明のポリオキシアルキレン誘導体では、クロマトグラムが左右非対称であり、式(2)の関係を満たす。なお、M
L/M
Hが1に近い値であるほど、クロマトグラムの形状は左右対称となる。
0.35≦M
L/M
H≦0.75 ・・・(2)
【0019】
ポリオキシアルキレン誘導体(a1)のゲル浸透クロマトグラフィーにおいて、クロマトグラムの屈折率強度の極大点が複数ある場合は、それらのうち屈折率強度が最も大きい点を極大点Kとする。さらに、同じ屈折率強度の極大点が複数ある場合は、溶出時間の遅いほうを屈折率強度の極大点Kとする。この際、ゲル浸透クロマトグラフィーに使用した展開溶媒などに起因するピークや、使用したカラムや装置に起因するベースラインの揺らぎによる擬似ピークは除く。
【0020】
M
L/M
Hは、それぞれ以下のようにしてクロマトグラムから算出する(
図1参照)。
(1) クロマトグラム上の屈折率強度の極大点KからベースラインBへ垂線を引き、垂線の長さをLとする。
(2) 屈折率強度がL/2となるクロマトグラム上の2点のうち、溶出時間が早いほうを点Oとし、溶出時間が遅いほうを点Qとする。
(3) 点Oと点Qを結んだ直線Gと、屈折率強度の極大点Kから、ベースラインBへ引いた垂線との交点をPとする。
(4) 点Oと交点Pの距離をM
H、交点Pと点Qの距離をM
Lとする。
【0021】
本発明で用いるポリオキシアルキレン誘導体(a1)は、0.35≦M
L/M
H≦0.75を満たすものである。M
L/M
Hが0.75より大きくなると、分子量分布は左右対称に近づき、耐衝撃性の効果が低下する。そのため、M
L/M
Hを0.75以下とするが、0.62以下とすることがより好ましい。
【0022】
また、M
L/M
Hが0.35より小さくなると、分子量分布における高分子量側の偏りが大きくなり、粘度が高くなり、取扱いが困難になる。そのため、M
L/M
Hを0.35以上とするが、0.36以上とすることがより好ましい。
【0023】
本発明において、M
LおよびM
Hを求めるためのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)は、システムとしてSHODEX GPC101専用システム、示差屈折率計としてSHODEX RI−71S、ガードカラムとしてSHODEX KF−GS、カラムとしてSHODEX KF804Lを3本連続装着し、カラム温度40℃、展開溶媒としてテトラヒドロフランを1ml/分の流速で流し、得られた反応物の0.1質量部のテトラヒドロフラン溶液0.1mlを注入し、BROWIN GPC計算プログラムを用いて屈折率強度と溶出時間で表されるクロマトグラムを得る。
【0024】
本発明で示されるポリオキシアルキレン誘導体(a1)を製造する際には、好ましくは、複合金属シアン化物触媒(以下、DMC触媒と略記する)の存在下で、炭素数3のプロピレンオキシドを開環付加させる。反応容器内に、分子中に少なくとも1個の水酸基を有する原料アルコールとDMC触媒を加え、不活性ガス雰囲気の撹拌下、プロピレンオキシドを連続もしくは断続的に添加し付加重合する。ポリオキシプロピレンは加圧して添加しても良く、大気圧下で添加しても良い。
【0025】
この時、プロピレンオキシドの平均供給速度に制限はないが、プロピレンオキシドの仕込み量によって変化させることが望ましい。具体的には、プロピレンオキシドの全供給量の5〜20質量部を供給する間の速度をV
1、プロピレンオキシドの全供給量の20〜50質量部を供給する間の速度をV
2、プロピレンオキシドの全供給量の50〜100質量部を供給する間の速度をV
3とした時、V
1/V
2=1.1〜2.0、V
2/V
3=1.1〜1.5となるようにプロピレンオキシドの平均供給速度を制御することが好ましい。また、反応温度は、50〜150℃が好ましく、70〜110℃がより好ましい。反応温度が150℃より高いと、触媒が失活するおそれがあり、反応温度が50℃より低いと、反応速度が遅く生産性に劣る。
【0026】
本発明で示されるポリオキシアルキレン誘導体(a1)を製造する際には、原料アルコールとして、式(1)においてR
1で示される炭素数1〜22の炭化水素を有する1価アルコールを使用することができる。
【0027】
原料アルコールおよびプロピレンオキシドに含まれる微量の水分量については特に制限はないが、原料アルコールに含まれる水分量については0.5質量部以下、プロピレンオキシドに含まれる水分量については0.1質量部以下であることが望ましい。
【0028】
DMC触媒の使用量は、特に制限されるものではないが、生成するポリオキシアルキレン誘導体に対して0.0001〜0.1質量部が好ましく、0.001〜0.05質量部がより好ましい。DMC触媒の反応系への投入は初めに一括して導入しても良く、順次分割して導入しても良い。反応終了後、複合金属錯体触媒の除去を行う。触媒の除去は、濾別や遠心分離、合成吸着剤による処理など公知の方法により行うことができる。
【0029】
本発明で示されるポリオキシアルキレン誘導体(a1)を製造する際に用いるDMC触媒は公知のものを用いることができ、例えば式(3)で表すことができる。
Ma[M’x(CN)y]b(H
2O)c・(R) ・・・(3)
【0030】
式(3)中、MおよびM’は金属、Rは有機配位子、a、b、xおよびyは金属の原子価と配位数により変わる正の整数であり、cおよびdは、金属の配位数により変わる正の整数である。金属Mとしては、Zn(II)、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Ni(II)、Al(III)、Sr(II)、Mn(II)、Cr(III)、Cu(II)、Sn(II)、Pb(II)、Mo(IV)、Mo(VI)、W(IV)、W(VI)などが挙げられ、なかでもZn(II)が好ましく用いられる。
【0031】
金属M’としては、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)、Cr(II)、Cr(III)、Mn(II)、Mn(III)、Ni(II)、V(IV)、V(V)などがあげられ、なかでもFe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)が好ましく用いられる。
【0032】
有機配位子としては、アルコール、エーテル、ケトン、エステルなどが使用でき、アルコールがより好ましい。好ましい有機配位子は水溶性のものであり、具体例としては、tert-ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、iso-ブチルアルコール、N,N-ジメチルアセトアミド、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。特に好ましくはtert-ブチルアルコールが配位したZn
3[Co(CN)
6]
2である。
【0033】
本発明のイソシアネート(a2)は、分子内に2個以上のイソシアネート基を含有するイソシアネートである。
2官能イソシアネートの具体例としては、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂肪族及び脂環式ジイソシアネート、1,4−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0034】
3官能イソシアネートの具体例としては、1,4−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどのジイソシアネートを重縮合してイソシアヌレート変性させたイソシアヌレート体、前記ジイソシアネートをアダクト変性させたアダクト体、前記ジイソシアネートとグリセリンやトリメチロールプロパンなどの三価アルコールをビウレット変性させたビウレット体が挙げられる。
【0035】
4個以上のイソシアネート基を含有する多官能イソシアネートの具体例としては、前記ジイソシアネートとポリオールあるいはポリアミンとの反応により得られるイソシアネート化合物が挙げられる。
【0036】
本発明の成分(A)は、ポリオキシアルキレンモノオール(a1)と、分子内に2個以上のイソシアネート基を含有する脂肪族、脂環式または芳香族イソシアネート(a2)とのウレタン化反応により得られる。
【0037】
ウレタン化反応において、(a1)成分と(a2)成分の割合は、(a1)成分中の水酸基1当量に対してポリイソシアネート(a2)中のイソシアネート基が0.3〜3当量であることが好ましく、0.5〜2当量が更に好ましく、0.9〜1.2当量がより好ましい。反応温度としては、通常20〜150℃であり、30〜100℃が好ましく、40〜80℃がより好ましい。なお、反応の終点はイソシアネート基を示す2270cm
-1の赤外吸収スペクトルの消失や、JIS K 7301に記載の方法でイソシアネート基の含有量を求めることで確認することができる。
【0038】
更に、ウレタン化反応では反応速度を促進する目的で触媒を用いることができる。ウレタン化触媒の具体例としては、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレートなどのスズ化合物、ジルコニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)などのジルコニウム化合物などが挙げられる。本発明のウレタン化反応においても、これらの触媒を用いることができる。
【0039】
(成分(B))
本発明で示される活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は成分(B)を有効成分として含む。本発明で用いる成分(B)は、2個以上のエチレン性不飽和基を有するウレタン(メタ)アクリレートであればよい。
【0040】
2個以上のエチレン性不飽和基を有するウレタン(メタ)アクリレートは、通常、ポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートをエチレン性不飽和基が2個以上となるように反応させてなるものであり、必要に応じてポリオール化合物を反応させてもよい。
【0041】
上記ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式系ポリイソシアネート、或いはこれらポリイソシアネートの3量体化合物または多量体化合物、アロファネート型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート、水分散型ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0042】
上記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、分子内に水酸基を1つ、(メタ)アクリロイル基を1つ以上含有する水酸基含有(メタ)アクリレートが用いられる。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、脂肪酸変性−グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基を1つ含有する水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物;グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイル−オキシプロピルメタクリレート等のエチレン性不飽和基を2つ含有する水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基を3つ以上含有する水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物等が挙げられる。
【0043】
上記ポリオール化合物としては、例えば、脂肪族ポリオール、脂環族ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、(メタ)アクリル系ポリオール、ポリシロキサン系ポリオール等が挙げられる。
【0044】
上記(B)成分の2個以上のエチレン性不飽和基を有するウレタン(メタ)アクリレートの製造法は、上記各成分を、公知の反応手段により反応させることで製造することができる。
【0045】
通常、上記ポリイソシアネート、水酸基含有(メタ)アクリレート、必要に応じて用いるポリオール化合物を、反応器に一括または別々に仕込み公知の反応手段によりウレタン化反応させて製造することができる。ポリオール化合物を用いる場合には、ポリオール化合物とポリイソシアネート系化合物とを予め反応させて得られる反応生成物に、水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて製造する方法が、ウレタン化反応の安定性や副生成物の低減等の点で有用である。
【0046】
上記のウレタン化反応においては、反応系の残存イソシアネート基含有率が0.5重量%以下になる時点で反応を終了させることにより、2個以上のエチレン性不飽和基を有するウレタン(メタ)アクリレートが得られる。
【0047】
また、上記ウレタン化反応においては、反応を促進する目的で触媒を用いることも好ましい。かかる触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、トリメチル錫ヒドロキシド、テトラ−n−ブチル錫、ビスアセチルアセトナート亜鉛、ジルコニウムトリス(アセチルアセトネート)エチルアセトアセテート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等の有機金属化合物、オクテン酸錫、ヘキサン酸亜鉛、オクテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸ジルコニウム、ナフテン酸コバルト、塩化第1錫、塩化第2錫、酢酸カリウム等の金属塩、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等のアミン系触媒、硝酸ビスマス、臭化ビスマス、ヨウ化ビスマス、硫化ビスマス等の他、ジブチルビスマスジラウレート、ジオクチルビスマスジラウレート等の有機ビスマス化合物や、2−エチルヘキサン酸ビスマス塩、ナフテン酸ビスマス塩、イソデカン酸ビスマス塩、ネオデカン酸ビスマス塩、ラウリル酸ビスマス塩、マレイン酸ビスマス塩、ステアリン酸ビスマス塩、オレイン酸ビスマス塩、リノール酸ビスマス塩、酢酸ビスマス塩、ビスマスリビスネオデカノエート、ジサリチル酸ビスマス塩、ジ没食子酸ビスマス塩等の有機酸ビスマス塩等のビスマス系触媒等が挙げられ、中でも、ジブチル錫ジラウレート、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセンが好適である。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0048】
ウレタン化反応においては、イソシアネート基に対して反応する官能基を有しない有機溶剤、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族類等の有機溶剤を用いることができる。
【0049】
また、反応温度は、通常30〜90℃、好ましくは40〜80℃であり、反応時間は、通常2〜10時間、好ましくは3〜8時間である。
【0050】
上記(B)成分の2個以上のエチレン性不飽和基を有するウレタン(メタ)アクリレートは、2種以上混合して用いても良い。
【0051】
(組成比率)
本発明における樹脂組成物において、成分(A)の質量と成分(B)の質量に対する比率は、(A)/(B)=1/99〜30/70、好ましくは2/98〜20/80、より好ましくは5/99〜12/88である。上記成分(A)の質量の成分(B)の質量に対する比率(A)/(B)が1/99未満であると、耐衝撃性が低下する。一方、(A)/(B)が30/70を超えても、耐衝撃性の効果にそれ以上のプラス効果はない。
【0052】
<光重合開始剤>
本発明の硬化性樹脂組成物には、光重合開始剤を配合しても良い。前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾインまたはベンゾインアルキルエーテル;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸等の芳香族ケトン;ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等のベンジルケタール;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン等のアセトフェノン;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド等のアシルフォスフィンオキシドが挙げられる。
【0053】
<その他の成分>
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物には、任意成分として、(メタ)アクリル重合体、表面調整剤、レベリング剤、充填剤、顔料、シランカップリング剤、帯電防止剤、消泡剤、防汚剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、光重合開始剤、有機溶剤等を配合することができる。
【0054】
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させる方法としては、赤外線、可視光線、紫外線、X線、γ線および電子線などの活性エネルギー線の群より選ばれる光線を選択することができる。活性エネルギー線の照射方法は、通常の硬化性樹脂組成物の硬化方法を用いることができる。活性エネルギー線照射装置として紫外線を用いる場合、波長が200〜450nmの領域にスペクトル分布を有するフュージョンUVシステムズ(株)製Hバルブ等の無電極ランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ガリウムランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。活性エネルギー線の照射量は、積算光量として通常10〜3,000mJ/cm
2であり、50〜2,000mJ/cm
2が好ましく、100〜1,000mJ/cm
2がより好ましい。照射時の雰囲気は空気中でもよく、窒素やアルゴン等の不活性ガス中で硬化してもよい。
【実施例】
【0055】
(参考合成例:複合金属シアン化物錯体触媒の合成)
塩化亜鉛2.1gを含む2.0mlの水溶液中に、カリウムヘキサシアノコバルテートK
3Co(CN)
6を0.84g含む15mlの水溶液を、40℃にて撹拌しながら15分間かけて滴下した。滴下終了後、水16ml、tert-ブチルアルコール16gを加え、70℃に昇温し、1時間撹拌した。室温まで冷却後、濾過操作を行い、固体を得た。この固体に、水14ml、tert-ブチルアルコール8.0gを加え、30分間撹拌した後、濾過操作を行い、固体を得た。さらに再度、この固体にtert-ブチルアルコール18.6g、メタノール1.2gを加え、30分間撹拌した後、濾過操作を行い、得られた固体を40℃、減圧下で3時間乾燥し、複合金属シアン化物錯体触媒0.7gを得た。
【0056】
(合成例1:ポリオキシアルキレン化合物(a1−1)の合成)
撹拌機、圧力計、温度計、安全弁、ガス吹き込み管、排気管、冷却用コイルおよび蒸気ジャケットを装備したステンレス製5Lの高圧反応装置に、n−ブタノール200gと参考合成例の複合金属シアン化物錯体触媒0.2gを量り取り、系内を窒素ガスで置換した。撹拌下、100〜120℃、0.05〜0.30MPa以下の条件で、ガス吹き込み管より、プロピレンオキシド243gを16時間かけて滴下した。その後、反応槽内を100〜120℃に保ちながら、撹拌下、0.05〜0.60MPaの条件で、ガス吹き込み管より、徐々にプロピレンオキシドを投入し、全量で3270gを加圧添加した。添加終了後、100〜120℃で1時間反応させた。反応槽から2200gを抜き取り、反応槽内の残存物を100〜120℃に昇温し、0.05〜0.60MPaの条件で、ガス吹き込み管より、プロピレンオキシド1110gを2時間かけて添加した。添加終了後、100〜120℃で1時間反応させた。再度、反応槽より1044gを抜き取り、反応槽の残存物を110℃へと昇温し、0.05〜0.60MPaの条件で、ガス吹き込み管より、プロピレンオキシド312gを40分かけて添加した。添加終了後、100〜120℃で1時間反応させた後、窒素ガスを吹き込みながら13kPa以下、80℃で1時間減圧処理を行った。窒素ガスで0.05MPaまで加圧後、反応物を抜き取り、濾過を行い、式(1)で表される化合物(a1−1)を得た。
【0057】
得られた反応物について、ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定を行った。表1に得られた反応物の分析値を示す。
【0058】
(ゲル浸透クロマトグラフィーの測定)
ゲル浸透クロマトグラフィーには、システムとしてSHODEX GPC101専用システム、示差屈折率計としてSHODEX RI−71S、ガードカラムとしてSHODEX KF−GS、カラムとしてSHODEX KF804Lを3本連続装着し、カラム温度40℃、展開溶媒としてテトラヒドロフランを1ml/分の流速で流し、得られた反応物の0.1質量%テトラヒドロフラン溶液0.1mlを注入し、BROWIN GPC計算プログラムを用いて屈折率強度と溶出時間で表されるクロマトグラムを得た。このクロマトグラムからM
L/M
Hを求めると、0.52であった。
【0059】
(合成例2:ポリオキシアルキレン化合物(a1−2)の合成)
プロピレンオキシド全添加量を4779gとした以外は、合成例1と同様にして式(1)で表される化合物(a1−2)を得た。
【0060】
得られた反応物について、ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定を行った。表1に得られた反応物の分析値を示す。
【0061】
また、表1にプレミノール S1004F(旭硝子(株)製、高分子量ポリプロピレングリコール)の分析値を示した。
【0062】
【表1】
【0063】
(合成例3:ウレタン化合物(A−1)の合成)
攪拌装置、ガス導入管、冷却管及び温度計を備えたフラスコに、(a1−1)を301g、ジブチルスズジラウレート0.05gを仕込み、40℃に昇温した。次に、(a2)成分としてヘキサメチレンジイソシアネート(デュラネート50M−HDI:旭化成ケミカルズ(株)社製。以下、「HDI」という)8.1gを発熱に注意しながら2時間かけて滴下した。この時の(a1−1)の水酸基1当量に対するHDIのイソシアネート基は1.0当量である。滴下終了後、60℃で2時間反応させて、JISK7301に記載の方法でイソシアネート基の含有量が0.1%以下となるまで反応を行い、ウレタン化合物(A−1)を得た。
【0064】
(合成例4:ウレタン化合物(A−2)の合成)
攪拌装置、ガス導入管、冷却管及び温度計を備えたフラスコに、(a1−2)を303g、ジブチルスズジラウレート0.05gを仕込み、40℃に昇温した。次に、(a2)成分としてイソホロンジイソシアネート6.4gを発熱に注意しながら2時間かけて滴下した。この時の(a1−2)の水酸基1当量に対するイソホロンジイソシアネートのイソシアネート基は1.0当量である。滴下終了後、60℃で2時間反応させて、JISK7301に記載の方法でイソシアネート基の含有量が0.1%以下となるまで反応を行い、ウレタン化合物(A−2)を得た。
【0065】
(合成例5:ウレタン化合物(A’−1)の合成)
攪拌装置、ガス導入管、冷却管及び温度計を備えたフラスコに、(a1)成分として、「プレミノール S1004F」を295g、ジブチルスズジラウレート0.05gを仕込み、40℃に昇温した。次に、(a2)としてHDIを15.3gを発熱に注意しながら2時間かけて滴下した。この時のプレミノール S1004Fの水酸基1当量に対するHDIのイソシアネート基は1.0当量である。滴下終了後、60℃で2時間反応させて、JISK7301に記載の方法でイソシアネート基の含有量が0.1%以下となるまで反応を行い、ウレタン化合物(A’−1)を得た。
【0066】
(合成例6;ウレタン(メタ)アクリレート(B−1)の合成)
攪拌装置、ガス導入管、冷却管及び温度計を備えたフラスコに、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(大阪有機化学工業(株)製ビスコート300、水酸基価:130mgKOH/g、ペンタエリスリトールトリアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレート=70/30(質量%))258g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.05g、ジブチルスズジラウレート0.05gを仕込み、空気を吹き込みながら40℃に昇温した。次に、HDI50.5gを発熱に注意しながら2時間かけて滴下した。滴下終了後、60℃で2時間反応させて、JISK7301に記載の方法でイソシアネート基の含有量が0.1%以下となるまで反応を行い、6官能ウレタンアクリレート(B−1)(数平均分子量765)/ペンタエリスリトールテトラアクリレート混合物(質量比で75/25の混合物)を得た。
【0067】
<合成例7;ウレタン(メタ)アクリレート(B−2)の合成>
攪拌装置、ガス導入管、冷却管及び温度計を備えたフラスコに、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(大阪有機化学工業(株)製ビスコート300、水酸基価:130mgKOH/g、ペンタエリスリトールトリアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレート=70/30(質量%))221g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.05g、ジブチルスズジラウレート0.05gを仕込み、空気を吹き込みながら40℃に昇温した。次に、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(デュラネートTPA−100:旭化成ケミカルズ(株)社製。)87.3gを発熱に注意しながら2時間かけて滴下した。滴下終了後、60℃で2時間反応させて、JISK7301に記載の方法でイソシアネート基の含有量が0.1%以下となるまで反応を行い、9官能ウレタンアクリレート(B−2)(数平均分子量1398)/ペンタエリスリトールテトラアクリレート混合物(質量比で78/22の混合物)を得た。
【0068】
【表2】
【0069】
<実施例1>
30ml褐色スクリュー管に合成例3で得たウレタン化合物(A−1)を1.0g、ウレタン(メタ)アクリレート(B−1)を9.0g量り取り、さらに光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF製イルガキュア184)を0.3g量り取った。これをボルテックスミキサーにて1分間混合させ活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、所定の基材上に乾燥膜厚が25μmとなるよう塗工し、80W/cmの無電極UVランプ(Hバルブ)を用いて積算光量500mJ/cm
2のエネルギー量を照射することで硬化物試験片を得た。この硬化物試験片を用いて以下の評価を行った。
【0070】
<透明性>
基材としてポリカーボネート板(日本テストパネル(株)製、厚さ1mm、70×150mm)を用いた硬化膜試験片について、JIS K7361に準拠して、全光線透過率(%)を以下の規準で評価した。
全光線透過率が92%以上 (評価:◎)
全光線透過率が90%以上 (評価:○)
全光線透過率が90%未満 (評価:×)
【0071】
<表面硬度>
基材としてポリカーボネート板(日本テストパネル(株)製、厚さ1mm、70×150mm)を用いた硬化膜試験片について、JIS K5600に準拠して、荷重750gの条件で引っ掻き硬度(鉛筆法)を測定し、下記の基準で評価した。
鉛筆硬度が2H以上 (評価:◎)
鉛筆硬度がF〜H (評価:○)
鉛筆硬度が2B以下 (評価:×)
【0072】
<耐衝撃性>
基材としてガラス板(松浪硝子(株)製、厚さ1mm、40×75mm)を用いた硬化膜試験片について、25℃、60RH%の条件下、鋼球(直径16mm、重量16g)を落下させたとき、硬化膜表面に跡痕がなく、かつ、ガラス基材に割れのない最大高さを以下の基準により判定した。
◎:最大高さが45cm以上である。
○:最大高さが35〜44cmである。
×:最大高さが34cm以下である。
【0073】
<実施例2〜3、比較例1、2>
表3記載の配合比で活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を調製し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0074】
【表3】
【0075】
表3の評価結果から、本発明に係る実施例1〜3の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物は、透明性、表面硬度、耐衝撃性に優れている。
【0076】
表3の比較例1においては、(A)成分を含んでおらず、透明性、表面硬度は優れるが、耐衝撃性に劣ることがわかる。
比較例2においては、式(1)で表される化合物のGPCチャートより算出したM
L/M
Hが本発明の範囲を外れており、耐衝撃性が劣る結果である。