【文献】
Toshio Kawahara, et.al,"Gate Voltage Control of Stochastic Resonance in Carbon Nanotube Field Effect Transistors",2011 21st International Conference on Noise and Fluctuations,米国,IEEE,2011年 8月22日,p.364-367
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記入力信号をゲート端子に受け、ドレイン端子にバイアス電圧が印加され、ソース端子の電圧を、前記出力信号として出力する請求項1記載の有機電界効果トランジスタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、システム数が多く必要であり全体のサイズが肥大化することや、ノイズ強度の変化によるパフォーマンスの変化が大きいという問題点が存在する。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、簡易な構成で、入力信号のノイズに対してロバストな出力信号を生成することができる有機電界効果トランジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために第1の発明に係る有機電界効果トランジスタは、入力信号に対して、非線形応答特性を有する出力信号であって、内部ノイズを付加した出力信号を生成して出力する有機電界効果トランジスタであって、前記入力信号に含まれる外部ノイズによる、前記出力信号の変動が所定値以下である。
【0008】
第1の発明に係る有機電界効果トランジスタによれば、入力信号に対して、非線形応答特性を有する出力信号であって、内部ノイズを付加した出力信号を生成する際に、入力信号に含まれる外部ノイズによる、前記出力信号の変動が所定値以下となる。このように、緩やかな確率共鳴が起こり、入力に含まれるノイズに関わらずほぼ一定のパフォーマンスで信号伝達が可能である。
【0009】
第2の発明に係る有機電界効果トランジスタは、入力信号に対して、非線形応答特性を有する出力信号であって、内部ノイズを付加した出力信号を生成して出力する有機電界効果トランジスタであって、前記出力信号に付加される内部ノイズが大きいほど、前記入力信号に含まれる外部ノイズによる、前記出力信号の変動が小さくなる。
【0010】
第2の発明に係る有機電界効果トランジスタによれば、入力信号に対して、非線形応答特性を有する出力信号であって、内部ノイズを付加した出力信号を生成する際に、出力信号に付加される内部ノイズが大きいほど、前記入力信号に含まれる外部ノイズによる、前記出力信号の変動が小さくなる。このように、緩やかな確率共鳴が起こり、入力に含まれるノイズに関わらずほぼ一定のパフォーマンスで信号伝達が可能である。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明の有機電界効果トランジスタによれば、内部ノイズを付加した出力信号を生成し、確率共鳴を生じさせて、入力信号に含まれる外部ノイズによる、出力信号の変動が所定値以下となるか、又は出力信号に付加される内部ノイズが大きいほど、前記入力信号に含まれる外部ノイズによる、前記出力信号の変動が小さくなることにより、簡易な構成で、入力信号のノイズに対してロバストな出力信号を生成することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る有機電界効果トランジスタの構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る有機電界効果トランジスタの機能構成を示す概略図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る有機電界効果トランジスタの非線形応答システムの構成を示す回路図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る有機電界効果トランジスタの入出力特性を示すグラフである。
【
図5】外部ノイズの強度の変化に対する入出力相関係数の変化を示すグラフである。
【
図6】閾値から入力信号までの距離の無次元パラメータDがD<0であるときのシミュレーション結果を示す図である。
【
図7】閾値から入力信号までの距離の無次元パラメータDがD<0であるときのシミュレーション結果を示す図である。
【
図8】閾値から入力信号までの距離の無次元パラメータDがD=0であるときのシミュレーション結果を示す図である。
【
図9】閾値から入力信号までの距離の無次元パラメータDがD>0であるときのシミュレーション結果を示す図である。
【
図10】実験における有機電界効果トランジスタの入出力特性を示すグラフである。
【
図11】実験結果における外部ノイズの強度の変化に対する入出力相関係数の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0014】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る有機電界効果トランジスタ10は、ボトムコンタクト−トップゲート型構造の半導体素子である。ソース・ドレイン電極24のギャップ間に埋まるように半導体層26が形成され、その上に絶縁層28、ゲート電極30の順に積層した構造となっている。
【0015】
図2に示すように、有機電界効果トランジスタ10は、機能的には、非線形応答システム12を備え、非線形応答システム12の出力に内部ノイズを加算して出力する。
【0016】
内部ノイズは、一定強度を有し、有機電界効果トランジスタ10は、非線形応答システム12の出力信号に内部ノイズを加算して、内部ノイズを出力信号に付加する。内部ノイズが付加された出力信号が、有機電界効果トランジスタ10の出力となる。
【0017】
図3に示すように、有機電界効果トランジスタ10は、アナログ信号を伝達するドレイン接地増幅回路であり、有機電界効果トランジスタ10のゲート端子には、入力信号とノイズを足し合わされた電圧V
signal+noiseが入力され、ドレイン端子にバイアス電圧V
DDが印加される。ソース端子には負荷抵抗22が接続され、負荷抵抗22を介して接地され、ソース端子の電圧が、出力信号V
outputとして出力される。
【0018】
次に、本実施の形態に係る有機電界効果トランジスタ10の動作について説明する。
【0019】
まず、外部ノイズが付加された入力信号が、有機電界効果トランジスタ10に入力されると、非線形応答システム12によって、入力信号に対して非線形応答特性を有する出力信号を出力する。
【0020】
また、非線形応答システム12からの出力信号に、一定強度を有する内部ノイズが加算され、有機電界効果トランジスタ10から出力される。
【0021】
例えば、バイアス電圧V
DD=-15Vとし、負荷抵抗22を4.4kΩとしたときに、
図4に示すような入出力特性が得られる。入力信号に対して非線形応答を示し、また内部ノイズがみられる。
【0022】
また、入力信号と同時に外部ノイズを加えたときには、
図5に示すような信号伝達のパフォーマンスが得られる。
図5では、外部ノイズの強度を変えたときの信号伝達のパフォーマンスの変化を示している。信号伝達のパフォーマンスの指標として、ここでは、入力信号と出力信号との間の相関係数を用いている。有機電界効果トランジスタ10では緩やかな確率共鳴が起こり、外部ノイズ強度が増加しても入出力相関係数はほぼ一定であり、入力に含まれるノイズに関わらずほぼ一定のパフォーマンスで信号伝達が可能であり、ノイズロバスト効果が得られる。
【0023】
<実施例>
まず、ノイズロバスト効果を評価することについて説明する。ここで、ノイズロバスト効果とは、外部ノイズによる信号伝達能の変動を小さくすることであり、信号伝達能とは、入出力信号間の相関係数Cのことである。
【0024】
外部ノイズによる信号伝達能の変動の大きさの指標を評価量とし、例えば、回帰分析による相関比η
2を、評価量として用いる。これにより、η
2が小さい条件を探せばよいことになる。
【0026】
ただし、x
ijは、各条件及び各試行における要因(例えば、外部ノイズ強度)を表し、T
jは、条件jにおける要因の平均を表し、Gは、要因の全平均を表す。
【0028】
また、外部ノイズ強度V
noise、内部ノイズ強度σ、入力信号強度V
signal、入力dcバイアスV
bias、入出力特性の傾きA、入出力特性の閾値V
thの各パラメータの無次元化を行う。
【0029】
ただし、入出力特性を、以下の式で表わしたとき、
【0031】
内部ノイズ強度σは、以下の式で表わされる。
【0033】
外部ノイズ強度の無次元パラメータEは、以下の式で表わされる。
【0035】
内部ノイズ強度の無次元パラメータIは、以下の式で表わされる。
【0037】
閾値から入力信号までの距離の無次元パラメータDは、以下の式で表わされる。
【0039】
入出力特性の傾きの無次元パラメータA’は、以下の式で表わされる。
【0041】
次に、ノイズロバスト効果が有効な条件について説明する。
【0042】
ノイズロバスト効果が有効な条件としては、以下の条件1と、条件2−1又は条件2−2とを有する条件が適する。
【0043】
条件1:ある程度の信号伝達能を持つこと。すなわち、相関係数C≠0でことであり、例えば、C≧0.2であることとする。
【0044】
条件2−1:外部ノイズによる信号伝達能の変動が小さいここと。すわなち、η
2が小さいことであり、例えば、η
2 ≦0.05であることとする。
【0045】
条件2−2:内部ノイズを印加することによって信号伝達能の変動が小さくなること。すわなち、内部ノイズが大きい方がη
2が小さくなること。
【0046】
また、閾値から入力信号までの距離の無次元パラメータDを可変とし、内部ノイズ強度、外部ノイズ強度に対する、入出力信号間の相関係数C及び外部ノイズによる信号伝達能の変動の大きさに関する評価量(相関比)η
2を求めるシミュレーションを行った。
【0047】
図6、
図7に、閾値から入力信号までの距離の無次元パラメータDがD<0であるときのシミュレーション結果を示す。
図6の方が、Dがより小さい場合のシミュレーション結果を示している。
【0048】
上記のシミュレーション結果より、外部ノイズによる信号伝達能の変動の大きさに関する評価量η
2が低く、かつ、入出力信号間の相関係数Cが高い領域は、以下の(1)式で表わされる。
【0049】
E≦20かつE≦I/(−A´D)かつI≦20A´D
2 ・・・(1)
【0050】
また、外部ノイズによる信号伝達能の変動の大きさに関する評価量η
2が高いが、内部ノイズが変動を小さくする領域は、以下の(2)式で表わされる。
【0051】
E≦20かつI≧20A´D
2かつ
E≧20/3−14log
10(3−A´
-0.4×I
0.4) ・・・(2)
【0052】
図8に、閾値から入力信号までの距離の無次元パラメータDがD=0であるときのシミュレーション結果を示し、
図9に、閾値から入力信号までの距離の無次元パラメータDがD>0であるときのシミュレーション結果を示す。
【0053】
上記のシミュレーション結果より、外部ノイズによる信号伝達能の変動の大きさに関する評価量η
2が高いが、内部ノイズが変動を小さくする領域は、以下の(3)式で表わされる。
【0054】
E≦20かつE≧20/3×10
D/3−14log
10(3−A´
-0.4×I
0.4)
・・・(3)
【0055】
以上より、上記(1)式を満たすように有機電界効果トランジスタ10を構成することにより、入力信号に含まれる外部ノイズによる、出力信号の変動が小さくなるように、緩やかな確率共鳴が起こり、外部ノイズ強度が増加しても入出力相関係数はほぼ一定であり、入力に含まれるノイズに関わらずほぼ一定のパフォーマンスで信号伝達が可能となる。
【0056】
また、上記(2)式又は(3)式を満たすように有機電界効果トランジスタ10を構成することにより、内部ノイズが大きいほど、入力信号に含まれる外部ノイズによる、出力信号の変動が小さくなるように、緩やかな確率共鳴が起こり、外部ノイズ強度が増加しても入出力相関係数はほぼ一定であり、入力に含まれるノイズに関わらずほぼ一定のパフォーマンスで信号伝達が可能となる。
【0057】
<実験例>
本発明の実施の形態に係る手法と、従来の確率共鳴を利用した技術とにより、外部ノイズ強度を変化させたときの入出力相関係数を求める実験を行った結果について説明する。
【0058】
ここでは、
図10に示すように、従来のような入力値に対して出力値が一意的に決まるような入出力特性と、そこに更に一定強度のノイズを加え内部ノイズを持たせた入出力特性とを用いた。
【0059】
図11に示すように、従来のような内部ノイズのない入出力特性を用いた技術では、入力される外部ノイズ強度変化に対し入出力相関係数が大きく変化する。入力バイアスが0,2,4Vのとき、変動値はそれぞれ約0.8,0.8,0.3であり、ノイズにより信号伝達能が大きく変化する。特にノイズ強度が0から10V
PPにかけての変化が大きく、0.2以上の変化が見られる。
【0060】
一方、本発明の実施の形態に係る手法では入出力相関係数の変動は最大でも約0.2であり、外部ノイズに対して一定の信号伝達能を持つ。このように有機電界効果トランジスタ10に内部ノイズを持たせることにより、緩やかな確率共鳴効果が得られ、入力ノイズに対するロバスト性(恒常性)が向上する。
【0061】
以上説明したように、本実施の形態に係る有機電界効果トランジスタによれば、入力信号に対して、非線形応答特性を有する出力信号を生成し、内部ノイズを付加して、確率共鳴を生じさせることにより、簡易な構成で、入力信号のノイズに対してロバストな出力信号を生成することができる。また、ヒト由来の微弱な生体信号を検出する検出センサに、本発明の実施の形態を適用した場合には、入力信号のノイズに対してロバストな出力信号を生成することができるため、ヒト由来の微弱な生体信号を精度よく検出することができる。
【0062】
なお、上記の実施の形態では、有機電界効果トランジスタとして、ボトムコンタクト−トップゲート型構造の半導体素子を用いる場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、ノイズロバスト効果が有効な条件を満たす有機電界効果トランジスタであれば、他の構造の半導体素子であってもよい。