(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
石油精製時の回収等で生産される硫黄は、硫酸等の工業製品、ゴム等の添加剤、肥料等の多岐にわたる用途に使用される。しかし、これらの用途で消費される硫黄の量は、硫黄の生産量を下回っており、余剰の硫黄の保管が問題となっている。そこで、硫黄の新たな用途が検討され、硫黄が二次電池の正極の材料として利用されるようになった。硫黄の理論電池容量は、リチウム二次電池の正極活物質として通常使用されているLiCoO
2の理論電池容量より大きい。そのため、リチウム又はナトリウムが負極の材料とされ、硫黄が正極活物質とされる二次電池が数多く報告されている。このうち、ナトリウム−硫黄電池は実用化されているが、硫黄正極の活性が高められるよう、その動作温度が300℃と高温になる必要があり、電池デバイス自体の大きさとも相俟って、通常の環境下で使用され難い。更に、硫黄正極を備える二次電池の充放電が繰り返されると、硫黄が電解液中に溶出して電池を構成する金属と化学反応し金属硫化物を生成するため、電池容量が低下し、二次電池の寿命は短かった。
【0003】
そこで、含硫黄ポリマーの、金属硫化物の電解液への溶出が抑制された正極活物質としての使用が提案され、分子状硫黄(S
8)とビニル化合物とのラジカル重合(逆加硫)によって合成された含硫黄ポリマーが検討された(例えば、非特許文献1参照)。更に、特定のジアリル化合物又は炭素数5〜20のアルキル基を有する特定のモノアリル化合物と分子状硫黄(S
8)が混合され加熱されて得られる含硫黄ポリマーが正極の材料として使用される二次電池(例えば、特許文献1参照)、イオン性基を有する特定のモノアリル化合物と分子状硫黄(S
8)が混合され加熱されて得られる含硫黄ポリマーが正極の材料として使用される二次電池(例えば、特許文献2参照)が検討された。
【0004】
近年、二次電池の正極として利用可能な含硫黄ポリマーの硫黄含有量の更なる増大と、含硫黄ポリマーを含有する正極を備える二次電池のサイクル性(充放電が繰り返されても、電池容量が低下しないという性能)の更なる向上が期待されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされており、本発明が解決しようとする課題は、硫黄含有量が大きな、二次電池の正極活物質として利用可能な含硫黄ポリマーの提供である。更に、本発明が解決しようとする別の課題は、当該含硫黄ポリマーを含有する正極を備え、サイクル性が高い二次電池の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のアルケニル化合物と分子状硫黄(S
8)を反応させて得られる含硫黄ポリマーの硫黄含有量は大きく、当該含硫黄ポリマーは二次電池の正極活物質として利用可能であり、当該含硫黄ポリマーを含有する正極を備える二次電池のサイクル性は高いことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
[1] 以下の式(1)
【化1】
(式中、R
1は置換若しくは非置換の直鎖又は分岐の炭素数1〜20のアルキル基、主鎖中に−O−を1以上有する置換若しくは非置換の直鎖又は分岐の炭素数1〜20のアルコキシ基及び−Clからなる群より選ばれるいずれかの基を表す。各R
1は、同一であっても異なっていてもよい。R
2は置換又は非置換の芳香族基、置換又は非置換の直鎖又は分岐の炭素数1〜20のアルキレン基、−COO−を有する置換又は非置換の直鎖又は分岐の炭素数1〜20のアルキレン基及び−COO−からなる群より選ばれるいずれか1つを表す。R
3は置換若しくは非置換の直鎖又は分岐の炭素数1〜20のアルキル基若しくは−Hを表す。Xは1以上の正の整数を表し、各単位中のXの数は異なっていてよい。nは0又は1である。)で表される繰り返し単位を有する含硫黄ポリマー、
[2]R
1は−CH
3、−OCH
3又は−OCH
2CH
2OCH
3であり、R
2は1,4−フェニレン基、−CH
2−、−(CH
2)
6−又は−COO−(CH
2)
3−であり、R
3は−CH
3又は−Hである、[1]に記載されている含硫黄ポリマー、
[3]含硫黄ポリマーに対する硫黄含有量が50〜95質量%である、請求項1又は2に記載されている含硫黄ポリマー、
[4][1]〜[3]のいずれかに記載されている含硫黄ポリマーを含有する二次電池用正極、
[5][4]に記載されている二次電池用正極を備える二次電池に関する。
【0010】
また、本発明は、
[6]以下の式(2)
H
2C=CR
3(R
2)
n−Si(R
1)
3 (2)
(式中、R
1は置換若しくは非置換の直鎖又は分岐の炭素数1〜20のアルキル基、主鎖中に−O−を1以上有する置換若しくは非置換の直鎖又は分岐の炭素数1〜20のアルコキシ基及び−Clからなる群より選ばれるいずれかの基を表す。各R
1は、同一であっても異なっていてもよい。R
2は置換又は非置換の芳香族基、置換又は非置換の直鎖又は分岐の炭素数1〜20のアルキレン基、−COO−を有する置換又は非置換の直鎖又は分岐の炭素数1〜20のアルキレン基及び−COO−からなる群より選ばれるいずれか1つを表す。R
3は置換若しくは非置換の直鎖又は分岐の炭素数1〜20のアルキル基若しくは−Hを表す。nは0又は1である。)で表される骨格を有するアルケニル化合物と分子状硫黄(S
8)を反応させる、以下の式(1)で表される繰り返し単位を有する含硫黄ポリマーの製造方法に関する。
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、R
1、R
2、R
3及びnは前記されるとおりであり、Xは1以上の正の整数を表し、各単位中のXの数は異なっていてよい。)
【発明の効果】
【0013】
本発明の含硫黄ポリマーは、融解された分子状硫黄(S
8)と上記アルケニル化合物の1段階の反応で合成される。本発明の含硫黄ポリマーの硫黄含有量は大きく、二次電池の正極活物質として利用可能である。更に、本発明の含硫黄ポリマーを含有する正極を備える本発明の二次電池のサイクル性は高い。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の含硫黄ポリマーは、以下の式(2)
H
2C=CR
3(R
2)
n−Si(R
1)
3 (2)
(式中、R
1は置換若しくは非置換の直鎖又は分岐の炭素数1〜20のアルキル基、主鎖中に−O−を1以上有する置換若しくは非置換の直鎖又は分岐の炭素数1〜20のアルコキシ基及び−Clからなる群より選ばれるいずれかの基を表す。各R
1は、同一であっても異なっていてもよい。R
2は置換又は非置換の芳香族基、置換又は非置換の直鎖又は分岐の炭素数1〜20のアルキレン基、−COO−を有する置換又は非置換の直鎖又は分岐の炭素数1〜20のアルキレン基及び−COO−からなる群より選ばれるいずれか1つを表す。R
3は置換若しくは非置換の直鎖又は分岐の炭素数1〜20のアルキル基若しくは−Hを表す。nは0又は1である。)で表される骨格を有するアルケニル化合物と分子状硫黄(S
8)を反応させて製造される。
【0016】
上記R
1及びR
3の「置換若しくは非置換の直鎖又は分岐の炭素数1〜20のアルキル基」の「直鎖又は分岐の炭素数1〜20のアルキル基」の具体例は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、3−ペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブタン−2−イル基、2,3−ジメチルブタン−2−イル基、3−ヘキシル基、2−エチルペンチル基、2−メチルペンタン−3−イル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等である。
【0017】
上記R
1及びR
3の「置換若しくは非置換の直鎖又は分岐の炭素数1〜20のアルキル基」の置換基は、水酸基、フッ素原子、下記に示す芳香族基、ジアルキルアミノ基、アルキルオキシカルボニル基、アルコキシ基、含窒素ヘテロ環基等である。上記ジアルキルアミノ基、アルキルオキシカルボニル基及びアルコキシ基におけるアルキルは、直鎖又は分岐の炭素数1〜4のアルキルであり、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチルである。上記含窒素ヘテロ環基は、具体的には、ピロリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、オキサゾリジン、イソオキサゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン等である。
【0018】
上記R
1の「主鎖中に−O−を1以上有する置換若しくは非置換の直鎖又は分岐の炭素数1〜20のアルコキシ基」として、具体的には、メチル−O−、エチル−O−、プロピル−O−、n−ブチル−O−、s−ブチル−O−、t−ブチル−O−、n−ペンチル−O−、1-メチルブチル−O−、2-メチルブチル−O−、3-メチルブチル−O−、1,1-ジメチルプロピル−O−、1,2-ジメチルプロピル−O−、2,2-ジメチルプロピル−O−、3−ペンチル−O−、n−ヘキシル−O−、1-メチルヘプチル−O−、2-メチルヘプチル−O−、3-メチルヘプチル−O−、4-メチルヘプチル−O−、1,1-ジメチルブチル−O−、1,2-ジメチルブチル−O−、1,3-ジメチルブチル−O−、2,2-ジメチルブチル−O−、2,3-ジメチルブチル−O−、3,3-ジメチルブチル−O−、3,3-ジメチルブタン−2−イル−O−、2,3-ジメチルブタン−2−イル−O−、3−ヘキシル−O−、2-エチルペンチル−O−、2-メチルペンタン−3−イル−O−、ヘプチル−O−、オクチル−O−、ノニル−O−、デシル−O−、ウンデシル−O−、ドデシル−O−、トリデシル−O−、テトラデシル−O−、ペンタデシル−O−、ヘキサデシル−O−、ヘプタデシル−O−、オクタデシル−O−、ノナデシル−O−、イコシル−O−、メチル−O−エチレン−O−、エチル−O−エチレン−O−、エチル−O−プロピレン−O−、エチル−O−ブチレン−O−、エチル−O−ペンチレン−O−、エチル−O−へキシレン−O−、エチル−O−ヘプチレン−O−、エチル−O−オクチレン−O−、エチル−O−ノニレン−O−、エチル−O−デシレン−O−、エチル−O−エチレン−O−エチレン−O−、エチル−O−プロピレン−O−エチレン−O−、エチル−O−プロピレン−O−プロピレン−O−、エチル−O−プロピレン−O−ブチレン−O−、エチル−O−プロピレン−O−ペンチレン−O−、エチル−O−プロピレン−O−ヘキシレン−O−、エチル−O−プロピレン−O−ヘプチレン−O−、エチル−O−ブチレン−O−エチレン−O−、エチル−O−ペンチレン−O−エチレン−O−、エチル−O−ブチレン−O−プロピレン−O−、エチル−O−ブチレン−O−ブチレン−O−、エチル−O−ブチレン−O−ペンチレン−O−、エチル−O−ブチレン−O−ヘキシレン−O−、エチル−O−ペンチレン−O−エチレン−O−、エチル−O−ペンチレン−O−プロピレン−O−、エチル−O−ペンチレン−O−ブチレン−O−、エチル−O−ペンチレン−O−ペンチレン−O−、エチル−O−ヘキシレン−O−エチレン−O−、エチル−O−ヘキシレン−O−プロピレン−O−、エチル−O−ヘキシレン−O−ブチレン−O−、エチル−O−ヘプチレン−O−エチレン−O−、エチル−O−ヘプチレン−O−プロピレン−O−、エチル−O−オクチレン−O−エチレン−O−、エチル−O−エチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−、エチル−O−エチレン−O−エチレン−O−プロピレン−O−、エチル−O−エチレン−O−エチレン−O−ブチレン−O−、エチル−O−エチレン−O−エチレン−O−ペンチレン−O−、エチル−O−エチレン−O−プロピレン−O−エチレン−O−、エチル−O−エチレン−O−プロピレン−O−プロピレン−O−、エチル−O−エチレン−O−プロピレン−O−ブチレン−O−、エチル−O−エチレン−O−プロピレン−O−ペンチレン−O−、エチル−O−エチレン−O−ブチレン−O−エチレン−O−、エチル−O−エチレン−O−ブチレン−O−プロピレン−O−、エチル−O−エチレン−O−ブチレン−O−ブチレン−O−、エチル−O−エチレン−O−ペンチレン−O−エチレン−O−、エチル−O−エチレン−O−ペンチレン−O−プロピレン−O−、エチル−O−エチレン−O−ヘキシレン−O−エチレン−O−、エチル−O−プロピレン−O−エチレン−O−プロピレン−O−、エチル−O−プロピレン−O−エチレン−O−ブチレン−O−、エチル−O−プロピレン−O−エチレン−O−ペンチレン−O−、エチル−O−プロピレン−O−プロピレン−O−エチレン−O−、エチル−O−プロピレン−O−ブチレン−O−エチレン−O−、エチル−O−プロピレン−O−ペンチレン−O−エチレン−O−、エチル−O−ブチレン−O−エチレン−O−プロピレン−O−、エチル−O−ブチレン−O−エチレン−O−ブチレン−O−、エチル−O−エチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−、エチル−O−エチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−プロピレン−O−、エチル−O−エチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−ブチレン−O−、エチル−O−エチレン−O−エチレン−O−プロピレン−O−エチレン−O−、エチル−O−エチレン−O−エチレン−O−ブチレン−O−エチレン−O−、エチル−O−エチレン−O−プロピレン−O−エチレン−O−エチレン−O−、エチル−O−エチレン−O−ブチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−、エチル−O−エチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−、エチル−O−エチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−、エチル−O−エチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−、エチル−O−エチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−、エチル−O−エチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−エチレン−O−、プロピル−O−ブチレン−O−、プロピル−O−ペンチレン−O−、プロピル−O−プロピレン−O−へキシレン−O−、プロピル−O−へキシレン−O−、プロピル−O−プロピレン−O−ヘプチレン−O−、プロピル−O−ヘプチレン−O−、プロピル−O−ノニレン−O−、プロピル−O−エチレン−O−プロピレン−O−、プロピル−O−エチレン−O−ブチレン−O−、プロピル−O−エチレン−O−ペンチレン−O−、プロピル−O−エチレン−O−ヘキシレン−O−、プロピル−O−エチレン−O−ヘプチレン−O−、プロピル−O−プロピレン−O−プロピレン−O−、プロピル−O−プロピレン−O−ブチレン−O−、プロピル−O−プロピレン−O−ペンチレン−O−、プロピル−O−プロピレン−O−ヘキシレン−O−、プロピル−O−ブチレン−O−プロピレン−O−、プロピル−O−ブチレン−O−ブチレン−O−、プロピル−O−ブチレン−O−ペンチレン−O−、プロピル−O−ペンチレン−O−プロピレン−O−、プロピル−O−ペンチレン−O−ブチレン−O−、プロピル−O−ヘキシレン−O−プロピレン−O−、プロピル−O−プロピレン−O−プロピレン−O−プロピレン−O−、プロピル−O−プロピレン−O−プロピレン−O−プロピレン−O−プロピレン−O−、プロピル−O−プロピレン−O−プロピレン−O−プロピレン−O−プロピレン−O−プロピレン−O−、ブチル−O−ブチレン−O−、ブチル−O−ペンチレン−O−、ブチル−O−ヘキシレン−、ブチル−O−ヘプチレン−O−、ブチル−O−オクチレン−O−、ブチル−O−エチレン−O−ブチレン−O−、ブチル−O−プロピレン−O−ブチレン−O−、ブチル−O−ブチレン−O−ブチレン−O−、ブチル−O−ブチレン−O−ブチレン−O−ブチレン−O−、ブチル−O−ブチレン−O−ブチレン−O−ブチレン−O−ブチレン−O−、ペンチル−O−ペンチレン−O−、ペンチル−O−へキシレン−O−、ペンチル−O−へキシレン−O−、ペンチル−O−ヘプチレン−O−、ペンチル−O−エチレン−O−ペンチレン−O−、ペンチル−O−ペンチレン−O−ペンチレン−O−、ペンチル−O−ペンチレン−O−ペンチレン−O−ペンチレン−O−、へキシル−O−へキシレン−O−、へキシル−O−へキシレン−O−へキシレン−O−、ヘプチル−O−ヘプチレン−O−、オクチル−O−オクチレン−O−、ノニル−O−ノニレン−O−、デシル−O−デシレン−O−等が挙げられる。
【0019】
上記R
1の「主鎖中に−O−を1以上有する置換若しくは非置換の直鎖又は分岐の炭素数1〜20のアルキコキシ基」の置換基は、上記R
1及びR
3の「置換又は非置換の直鎖の炭素数1〜20のアルキル基」の置換基と同様である。
【0020】
上記R
2の「置換又は非置換の芳香族基」の「芳香族基」は、二価の芳香族環である。芳香族環は、単環又は多環の炭素数6−10のアリール基、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を1〜4個有する5〜7員の単環又は多環のヘテロアリール基、及び、ベンゼン環とヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を1〜4個有する5〜7員の複素環が縮合した縮合環からなるヘテロアリール基を包含する。
【0021】
芳香族環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アズレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、フェナントレン、ピレン、ピロール、フラン、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、インドール、イソインドール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾイソキサゾール、ベンズイソチアゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンズチアジアゾール、ピロロピリジン、ピロロピラジン、プリン、キノリン、イソキノリン、シノリン、キナゾリン、キノキサリン等が挙げられる。
【0022】
上記R
2の「置換又は非置換の直鎖又は分岐の炭素数1〜20のアルキレン基」及び「−COO−を有する置換又は非置換の直鎖又は分岐の炭素数1〜20のアルキレン基」の「直鎖又は分岐の炭素数1〜20のアルキレン基」の具体例は、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、s−ブチレン基、n−ペンチレン基、1−メチルブチレン基、2−メチルブチレン基、3−メチルブチレン基、n−ペンチレン基、1,1−ジメチルプロピレン基、1,2−ジメチルプロピレン基、2,2−ジメチルプロピレン基、1,3−ジメチルプロピレン基、n−ヘキシレン基、1−メチルヘプチレン基、2−メチルヘプチレン基、3−メチルヘプチレン基、1,1−ジメチルブチレン基、1,2−ジメチルブチレン基、1,3−ジメチルブチレン基、2,2−ジメチルブチレン基、2,3−ジメチルブチレン基、3,3−ジメチルブチレン基、3,3−ジメチルブタン−2−イレン基、2,3−ジメチルブタン−2−イレン基、3−ヘキシレン基、2−エチルペンチレン基、2−メチルペンタン−3−イレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、イコシレン基等である。
【0023】
上記R
2の「−COO−を有する置換又は非置換の直鎖又は分岐の炭素数1〜20のアルキレン基」の「−COO−」は「アルキレン基」の末端にあっても、2つの「アルキレン基」の間にあってもよい。好ましくは、「−COO−」は「アルキレン基」の末端にある。
【0024】
上記R
2の「置換又は非置換の芳香族基」、「置換又は非置換の直鎖又は分岐の炭素数1〜20のアルキレン基」及び「−COO−を有する置換又は非置換の直鎖又は分岐の炭素数1〜20のアルキレン基」の置換基として、上記R
1及びR
3の「置換又は非置換の直鎖の炭素数1〜20のアルキル基」の置換基と同様の置換基が挙げられる。
【0025】
本発明の含硫黄ポリマーの製造方法は特定の方法に限定されない。当該製造方法の具体例は以下のとおりである。
分子状硫黄(S
8)は、有機溶媒に不溶又は溶解しづらいため、本発明の含硫黄ポリマー合成の第一段階は、硫黄の反応容器中での加熱による融解である。硫黄は多くの同素体(S
8、S
6、S
12、S
18、S
20等)を持ち、それぞれが融点を有する。硫黄の最安定な同素体は環状構造をした分子状硫黄(S
8)であり、分子状硫黄(S
8)は3つの結晶形(α硫黄、β硫黄及びγ硫黄)をもち、それらの融点はそれぞれ112.8℃、119.6℃、106.8℃である。そのため、120℃以上の温度での加熱が分子状硫黄(S
8)の融解のために必要である。また、分子状硫黄(S
8)は安定構造のα硫黄から温度の上昇とともにβ硫黄、λ硫黄、μ硫黄へと転移していき、159.4℃以上で環状硫黄のラジカル開裂が進み、2価のラジカルができる。このようにして、分子状硫黄(S
8)は159.4℃以上の温度でラジカルを発生するため、融解温度は上記温度より低く設定する必要がある。分子状硫黄(S
8)の融解温度は、好ましくは120℃〜155℃、より好ましくは135℃〜155℃、更に好ましくは145℃〜155℃、最も好ましくは150℃〜155℃である。
【0026】
次いで、上記式(2)で表されるアルケニル化合物が溶融された分子状硫黄(S
8)に加えられ、上記式(1)で表される本発明の含硫黄ポリマーが1段階で合成される。その際、上記式(2)で表されるアルケニル化合物が溶融された分子状硫黄(S
8)に均一に分散されるよう、反応中、攪拌が行われてよい。
【0027】
上記反応の温度は、分子状硫黄(S
8)がラジカルを発生させる温度範囲であり、好ましくは160℃〜175℃である。
【0030】
で表わされる繰り返し単位を有する。ここで、R
1、R
2、R
3及びnは上記式(2)で表わされるアルケニル化合物におけるR
1、R
2、R
3及びnと同じである。Xの上限値は100である。
【0031】
本発明の含硫黄ポリマーは、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶媒に可溶である。上記方法で合成された本発明の含硫黄ポリマーは通常精製される必要はないが、高純度の含硫黄ポリマーが必要とされる場合、反応生成物が上記有機溶媒に溶解され、ろ過されて、有機溶媒に不溶の硫黄が除かれる。また、ろ過後の溶液が、ゲルろ過クロマトグラフィー等の分子ふるいに供され、ポリマーとモノマーが分離される。
【0032】
本発明の含硫黄ポリマーに対する硫黄含有量は、好ましくは50〜95質量%であり、より好ましくは55〜95質量%であり、更に好ましくは60〜95質量%である。
本発明の含硫黄ポリマーの数平均分子量(Mn)は、好ましくは1000〜20000、更に好ましくは2000〜15000、最も好ましくは5000〜10000である。また、本発明の含硫黄ポリマーの数平均分子量(Mn)は、GPCによって測定され得る。
【0033】
本発明の含硫黄ポリマーにおける、分子状硫黄(S
8)と上記式(2)で表される化合物とのモル比は、好ましくは1:0.01〜1:100であり、より好ましくは、1:0.25〜1:10であり、更に好ましくは1:0.25〜1:5である。
【0034】
本発明の含硫黄ポリマーは、建築、自動車産業等のエラストマー、ゴム材料として利用され得る。
【0035】
更に、本発明の含硫黄ポリマーは上記有機溶媒に溶解され、含硫黄ポリマーの有機溶媒溶液が導電助剤に含浸された後、シランカップリング処理が有機酸の存在下で行われ、含硫黄ポリマーが導電助剤表面に固定された複合材料が得られる。当該複合材料がバインダーと混練され、二次電池用正極に成形される。
【0036】
導電助剤として、具体的には、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber:VGCF)、カーボンブラック(CB)、キャパシタ用活性炭、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン、黒鉛等の炭素粉末;アルミニウム、チタン等の正極電位において安定な金属の微粉末等が挙げられる。好ましいカーボンブラックは、アセチレンブラック(AB、デンカ株式会社製)、ケッチェンブラック(KB、ライオン株式会社)、クノーベル(東洋炭素株式会社製)である。
【0037】
本発明の二次電池用正極が含有する本発明の含硫黄ポリマーと導電助剤の配合割合は、本発明の含硫黄ポリマー:導電助剤(質量比)として好ましくは1〜20:1であり、より好ましくは5〜10:1である。
【0038】
上記シランカップリング処理で使用される有機酸として、具体的には、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。
【0039】
上記バインダーの具体例として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、メタクリル樹脂(PMA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、変性ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、アルギン酸(Alg)等が挙げられる。
【0040】
本発明の二次電池用正極を備える本発明の二次電池の負極の好ましい材料は、リチウム、マグネシウム、アルミニウム、ナトリウム、シリコン及び人造黒鉛などの炭素材料から選ばれるいずれか一つであり、より好ましい当該材料はリチウムである。
【0041】
本発明の二次電池の集電体は、二次電池用正極で一般に用いられる集電体である。本発明の二次電池の集電体として、具体的には、ステンレス箔、ステンレスメッシュ、アルミニウム箔、アルミニウムメッシュ、パンチングアルミニウムシート、アルミニウムエキスパンドシート、ステンレススチール箔、ステンレススチールメッシュ、パンチングステンレススチールシート、ステンレススチールエキスパンドシート、発泡ニッケル、ニッケル不織布、銅箔、銅メッシュ、パンチング銅シート、銅エキスパンドシート、チタン箔、チタンメッシュ、カーボン不織布、カーボン織布等が挙げられる。好ましい集電体はステンレスメッシュである。
【0042】
本発明の二次電池の電解液は、二次電池で一般に用いられる電解液である。本発明の二次電池の電解液の溶媒の具体的は、1,2−ジメトキシエタン、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、3−メトキシプロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチルロラクトン、ジメトキシエタン、ジメチルカーボネート、1,3−ジオキソラン、メチルホルメート、2−メチルテトラハイドロフラン、3−メトキシ−オキサゾリデン−2−オン、スルホラン、テトラハイドロフラン、トリエチレングリコールジメチルエーテ、水等である。これらは単独で又は2種以上混合されて使用される。好ましい溶媒は1,2−ジメトキシエタンと1,3−ジオキソランが1:1(体積比)で混合されている混合物である。
【0043】
本発明の二次電池の電解液の溶媒はイオン液体であってもよい。イオン液体は、有機カチオンとアニオンとを組み合わせたイオンからなる液体である。有機カチオンの具体例は、ジアルキルイミダゾリウムカチオン、トリアルキルイミダゾリウムカチオン等のイミダゾリウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、アルキルピリジニウムイオン、ジアルキルピロリジニウムイオン、ジアルキルピペリジニウムイオン等である。
【0044】
これらの有機カチオンのカウンターイオンとなるアニオンの具体例は、PF
6アニオン、PF
3(C
2F
5)
3アニオン、PF
3(CF
3)
3アニオン、BF
4アニオン、BF
2(CF
3)
2アニオン、BF
3(CF
3)アニオン、ビスオキサレートホウ酸アニオン、Tf(トリフルオロメタンスルホニル)アニオン、Nf(ノナフルオロブタンスルホニル)アニオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドアニオン、ジシアノアミンアニオン等である。
【0045】
本発明の二次電池の電解液の電解質の具体例は、NaPF
6、NaBF
4、NaClO
4、NaCF
3CONSO
2CF
3、NaN(SO
2C
2F
5)
2、NaN(SO
2CF
3)
2、NaCF
3SO
3、NaC(CF
3SO
2)
3等のナトリウム塩;LiCl、LiClO
4、LiAsF
6、LiPF
6、LiBF
4、LiB(C
6H
5)
4、LiCH
3SO
3、LiCF
3SO
3、Li(C
2F
5SO
2)
2N、Li(CF
3SO
2)
2N、LiC(CF
3SO
2)
3、LiBr等のリチウム塩;Mg(ClO
4)
2、Mg(CF
3SO
3)
2等のマグネシウム塩;オルトリン酸、ピロリン酸、次亜リン酸、次二リン酸、亜リン酸、二亜リン酸、ピロ亜リン酸、イソ次リン酸、次リン酸等のリン酸化合物のアルミニウム塩等である。
【0046】
本発明の二次電池の形状は制限されない。本発明の二次電池は、コイン形、ボタン形、シート形、積層形、円筒形、偏平形、角形、電気自動車等に用いる大型二次電池であり得る。
【実施例】
【0047】
以下に、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術範囲は、これらに限定されない。合成された含硫黄ポリマーの分析方法は以下のとおりである。
【0048】
(1)
1H NMR分析及び
13C NMR分析
試料が溶媒である重水素化クロロホルムに濃度0.1Mとなるように溶解され、日本電子(株)製JNM-ECA(
1H NMR、
13C NMR)により、内部標準物質としてトリメチルシランを用いて測定された。
【0049】
(2)ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)分析
Shodex GPC KF-804 L(昭和電工株式会社製)のカラム管が、(株)島津製作所製 Prominence システムに対して取り付けられ、溶離液としてテトラヒドロフラン(THF)が40℃、1.0 ml/minの速度で流された。検量線はポリスチレン標準により作成された。
【0050】
(3)示差走査熱量(DSC)分析
(株)日立ハイテクノロジーズ製DSC7020が使用され、試料が昇温速度10℃/minで加熱され、分析された。
【0051】
(4)熱重量測定
(株)島津製作所製Thermo Plus Evo IIが使用され、試料が昇温速度10℃/minで加熱され、分析された。
【0052】
含硫黄ポリマー製造例1
分子状硫黄(S
8)(キシダ化学(株)製)1質量部とシリルエーテル骨格を有するアルケニル化合物であるトリメトキシ(4-ビニルフェニル)シラン(VphSi)(東京化成工業株式会社(株)製)0.219質量部(分子状硫黄とシリルエーテル骨格を有するアルケニル化合物のモル比=4:1)がサンプル瓶に加えられ、160℃で1時間、次いで170℃で2.5時間攪拌された。その後、反応生成物が室温になるまで放置され、固化されたポリマー[S−VphSi(0.25)]が回収された。VphSi、S−VphSi(0.25)及び分子状硫黄(S
8)が試料とされ、
1H NMR分析、
13C NMR分析、GPC分析、DSC分析及び熱重量測定が行われた。
1H NMRスペクトル、
13C NMRスペクトルが、それぞれ、
図1、
図2に示されている。GPCチャート、DSCチャートがそれぞれ、
図3、
図4に示されている。熱重量測定の結果が
図5及び
図6に示されている。
【0053】
図1及び
図2より、VphSiの二重結合に由来するピーク(
図1及び
図2の上段に示されるスペクトルのa及びb)が、S−VphSi(0.25)のスペクトルから消失していることが分かる。よって、S−VphSi(0.25)は、上記式(1)のR
1がメトキシ基、R
2がベンゼン環、R
3が水素、n=1である含硫黄ポリマーであることが分かる。S−VphSi(0.25)の分子量分布が
図3のGPCチャートに示されている。
図4より、100℃過ぎの斜方硫黄から単斜硫黄の遷移に由来する温度において2℃の差異が観察され、このことより有機硫黄にすることで結晶構造に変化が表れていることが分かる。
図5より、S−VphSi(0.25)の質量が、分子状硫黄の質量と同様、200〜300℃において大幅に減少したことが分かる。よって、S−VphSi(0.25)の主鎖中に−Sx−で示される繰り返し単位(繰り返し単位毎にXの数は異なっていてよい)が存在することが分かる。S−VphSi(0.25)の硫黄の含有量は約89質量%と見積もられた。また、DTA曲線において、硫黄の融点である吸熱ピークが115℃付近に観察されており、DSC測定のデータと相関がみられる。
【0054】
二次電池製造例1
含硫黄ポリマー製造例1で製造されたS−VphSi(0.25)0.08質量部が、4.0質量部のテトラヒドロフランに溶解された。次いで、得られた4.08質量部の溶液が、0.04質量部のカーボンブラック(東洋炭素(株)製クーベル)に含浸された。その後、当該S−VphSi(0.25)で処理されたカーボンブラックが、約13mol/lのトリフルオロ酢酸水溶液に含浸され、シランカップリング処理が行われた。得られた0.09質量部の硫黄−カーボン複合材料及び0.01質量部のPTFE((株)ダイキン製ポリフロンPTFEファインパウダー)が混練され、正極が成形された。リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiTFSA)が1、2−ジメトキシエタン(DME)と1、3−ジオキソラン(DOX)が体積比1:1で混合されている溶媒に溶解されている電解液(濃度1M)と当該正極が使用される、
図6に示されるようなコインセル型二次電池が作製された。当該コインセル型二次電池の定電流充放電試験が、電気化学測定システム(北斗電工(株)製HJ1001SD8)が使用され、測定環境25℃においてCレートが0.1C(167.5mAg
−1)として行われた。結果が
図7に示されている。
【0055】
比較例1
S−VphSi(0.25)で処理されたカーボンブラックがトルフルオロ酢酸水溶液に含浸されず、シランカップリング処理が行われなかった以外は、実施例1と同様の操作が行われ、コインセル型二次電池が作製されて、定電流充放電試験が行われた。結果が
図7に示されている。
【0056】
シランカップリング処理が行われていない硫黄−カーボン複合材料を含有する正極を備える二次電池の容量は、硫黄成分の電解液への溶出により低下し、溶出した硫黄成分が充電側で反応して、当該二次電池が過充電された。
【0057】
一方、シランカップリング処理が行われている硫黄−カーボン複合材料を含有する正極を備える二次電池は、初期サイクルにおいて高い放電容量を示し、サイクルの進行による放電容量の低下も小さかった。更に、当該二次電池の過充電は抑制されていた。これらの効果は、シランカップリング処理による硫黄成分のカーボンブラックへの固定により得られたと推認される。
【0058】
含硫黄ポリマー製造例2
VphSi0.219質量部に代えて、アリルクロロジメチルシラン(東京化成工業株式会社(株)製)0.263質量部(分子状硫黄とアリルクロロジメチルシランのモル比=2:1)を使用する以外、含硫黄ポリマー製造例1と同様にして固化されたポリマーが回収された。回収されたポリマーの
1H NMR分析が行われ、
1H NMRスペクトルが
図8に示されている。
【0059】
含硫黄ポリマー製造例3
VphSi0.219質量部に代えて、アリルトリメトキシシラン(東京化成工業株式会社(株)製)0.317質量部(分子状硫黄とアリルクロロジメチルシランのモル比=2:1)を使用する以外、含硫黄ポリマー製造例1と同様にして固化されたポリマーが回収された。回収されたポリマーの
1H NMR分析が行われ、
1H NMRスペクトルが
図9に示されている。
【0060】
含硫黄ポリマー製造例4
VphSi0.219質量部に代えて、トリメトキシ(7−オクテン−1−イル)シラン(東京化成工業株式会社(株)製)0.454質量部(分子状硫黄とアリルクロロジメチルシランのモル比=2:1)を使用する以外、含硫黄ポリマー製造例1と同様にして固化されたポリマーが回収された。回収されたポリマーの
1H NMR分析が行われ、
1H NMRスペクトルが
図10に示されている。
【0061】
含硫黄ポリマー製造例5
VphSi0.219質量部に代えて、アクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル(東京化成工業株式会社(株)製)0.458質量部(分子状硫黄とアリルクロロジメチルシランのモル比=2:1)を使用する以外、含硫黄ポリマー製造例1と同様にして固化されたポリマーが回収された。回収されたポリマーの
1H NMR分析が行われ、
1H NMRスペクトルが
図11に示されている。
【0062】
含硫黄ポリマー製造例6
VphSi0.219質量部に代えて、メタクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル(東京化成工業株式会社(株)製)0.485質量部(分子状硫黄とアリルクロロジメチルシランのモル比=2:1)を使用する以外、含硫黄ポリマー製造例1と同様にして固化されたポリマーが回収された。回収されたポリマーの
1H NMR分析が行われ、
1H NMRスペクトルが
図12に示されている。
【0063】
図8〜
図12より、含硫黄ポリマー製造例2〜6で使用されたアルケニル化合物の二重結合に由来するピーク(
図8〜
図12に示されるスペクトルのa及びb)が、回収された各ポリマーのスペクトルから消失していることが分かる。よって、含硫黄ポリマー製造例2で回収されたポリマーは、上記式(1)のR
1が2つのメチル基と1つのCl、R
2がメチレン基、R
3が水素、n=1である含硫黄ポリマーであること、含硫黄ポリマー製造例3で回収されたポリマーは、上記式(1)のR
1がメトキシ基、R
2がメチレン基、R
3が水素、n=1である含硫黄ポリマーであること、含硫黄ポリマー製造例4で回収されたポリマーは、上記式(1)のR
1がメトキシ基、R
2がn−ヘキシレン基、R
3が水素、n=1である含硫黄ポリマーであること、含硫黄ポリマー製造例5で回収されたポリマーは、上記式(1)のR
1がメトキシ基、R
2が−エステル−n−プロピレン基であってn−プロピレン基とトリメトキシシラン基が結合しており、R
3が水素、n=1である含硫黄ポリマーであること、含硫黄ポリマー製造例6で回収されたポリマーは、上記式(1)のR
1がメトキシ基、R
2が−エステル−n−プロピレン基であってn−プロピレン基とトリメトキシシラン基が結合しており、R
3がメチル基、n=1である含硫黄ポリマーであることが分かる。