特許第6843392号(P6843392)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6843392ドレス良否判定装置およびドレス良否判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843392
(24)【登録日】2021年2月26日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】ドレス良否判定装置およびドレス良否判定方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/24 20060101AFI20210308BHJP
   B23K 11/25 20060101ALI20210308BHJP
   B23K 11/30 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   B23K11/24 336
   B23K11/25 512
   B23K11/30 350
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-222523(P2017-222523)
(22)【出願日】2017年11月20日
(65)【公開番号】特開2019-93391(P2019-93391A)
(43)【公開日】2019年6月20日
【審査請求日】2019年8月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151070
【氏名又は名称】電元社トーア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岩本 善昭
(72)【発明者】
【氏名】小町 実
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−104848(JP,A)
【文献】 特開昭61−147981(JP,A)
【文献】 特開2000−102879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/24
B23K 11/25
B23K 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板を挟んだ電極間の電圧を検出する電圧検出部と、
前記鋼板を挟んだ前記電極間に流れる電流を検出する電流検出部と、
検出された前記電圧と前記電流とから前記電極間の抵抗値を演算する抵抗値演算部と、
演算された前記抵抗値のピーク値を検出するピーク値検出部と、
前記鋼板に通電されてから前記ピーク値が検出されるまでの時間を計測する時間計測部と、
計測された前記時間が許容範囲内にあれば前記電極のドレスは良好であると判定し、前記許容範囲内になければ前記電極の前記ドレスは不良であると判定する判定部と、
を有する、ドレス良否判定装置。
【請求項2】
前記鋼板は、単一の鋼板である、請求項に記載のドレス良否判定装置。
【請求項3】
前記鋼板を挟んだ前記電極間に流す電流は、ドレスの良否を判定するために設定された電流である、請求項に記載のドレス良否判定装置。
【請求項4】
鋼板を挟んだ電極間の電圧と電流とを検出する段階と、
検出された前記電圧と前記電流とから前記電極間の抵抗値を演算する段階と、
演算された前記抵抗値のピーク値を検出する段階と、
前記鋼板に通電されてから前記ピーク値が検出されるまでの時間を計測する段階と、
計測された前記時間が許容範囲内にあれば前記電極のドレスは良好であると判定し、前記許容範囲内になければ前記電極の前記ドレスは不良であると判定する段階と、
を含む、ドレス良否判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗溶接機で用いられる電極のドレスの良否を判定できるドレス良否判定装置およびドレス良否判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抵抗溶接機は鋼板同士を溶接するために用いられる。鋼板同士を溶接する場合、一対の電極間に鋼板を複数枚配置し、それらの鋼板の表裏面を電極で挟持し加圧しながら電流を流す。鋼板を流れる電流は鋼板を溶融させ、これによって鋼板同士が溶接される。
【0003】
この溶接を何度も繰り返すと、電極の先端が摩耗、変形し、溶接不良を引き起こす。このため、通常、電極の先端形状を修正するためのドレスが行われる。
【0004】
ドレスが行われ、ドレス後の電極の先端形状が、新品の電極の先端形状に近くなっているかを判定すること、換言すれば、ドレスが正常に行われたか否かを判定することは、品質の高い溶接をするためには非常に重要である。
【0005】
従来では、たとえば、特許文献1に開示されているような検査方法が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−104848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載されている従来の検査方法では、電極品質の判定を、単に電極間の電気抵抗値を基準値と比較することによって行っている。電極間の電気抵抗値はある時間内の平均的な値となるため、電極品質の判定の許容値は大きくなる。このため、電極品質の判定に時間を要し、また、その判定は正確性に欠ける。つまり、従来の検査方法では、電極のドレスが正常に行われたか否かの判定を、極めて短時間で正確に行うことは困難である。
【0008】
本発明は、このような従来の検査方法の問題を解消するために成されたものであり、極めて短時間で正確に電極のドレスの良否を判定できる、ドレス良否判定装置およびドレス良否判定方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達するための本発明に係るドレス良否判定装置は、鋼板を挟んだ電極間の電圧を検出する電圧検出部と、鋼板を挟んだ電極間に流れる電流を検出する電流検出部と、検出された電圧と電流とから電極間の抵抗値を演算する抵抗値演算部と、演算された抵抗値のピーク値を検出するピーク値検出部と、鋼板に通電されてからピーク値が検出されるまでの時間を計測する時間計測部と、計測された時間が許容範囲内にあれば電極のドレスは良好であると判定し、許容範囲内になければ電極のドレスは不良であると判定する判定部と、を有する。
【0011】
上記目的を達するための本発明に係るドレス良否判定方法は、鋼板を挟んだ電極間の電圧と電流とを検出する段階と、検出された電圧と電流とから電極間の抵抗値を演算する段階と、演算された抵抗値のピーク値を検出する段階と、鋼板に通電されてからピーク値が検出されるまでの時間を計測する段階と、計測された時間が許容範囲内にあれば電極のドレスは良好であると判定し、許容範囲内になければ電極のドレスは不良であると判定する段階と、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るドレス良否判定装置およびドレス良否判定方法によれば、極めて短時間で正確に電極のドレスの良否を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態1に係るドレス良否判定装置の構成図である。
図2】ドレス良否判定の原理説明に供する図である。
図3】実施形態1に係るドレス良否判定装置の動作フローチャートである。
図4】実施形態1に係るドレス良否判定装置の動作説明に供する図である。
図5】実施形態2に係るドレス良否判定装置の構成図である。
図6】実施形態2に係るドレス良否判定装置の動作フローチャートである。
図7】実施形態2に係るドレス良否判定装置の動作説明に供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係るドレス良否判定装置およびドレス良否判定方法の実施形態を、[実施形態1]と[実施形態2]とに分けて説明する。
【0016】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係るドレス良否判定装置の構成図である。ドレス良否判定装置100は、抵抗溶接機200で用いられる電極230A、230Bのドレスの良否を判定する。
【0017】
図示するように、ドレス良否判定装置100は、電圧検出部110、一次電流センサ122、一次電流検出部124または二次電流センサ126、二次電流検出部128から構成される電流検出部120、抵抗値演算部130、ピーク値検出部140、時間計測部150、判定部160を有する。
【0018】
抵抗溶接機200は、加圧装置210、電極ホルダ220A、220B、電極230A、230B、溶接制御部250、変圧器260を有する。加圧装置210は電極ホルダ220Aを図示するように上下方向に移動させる。電極ホルダ220Aには電極230Aが取り付けられている。一方、電極ホルダ220Bは固定されている。電極ホルダ220Bには電極230Bが取り付けられている。電極230A、230Bには変圧器260の二次側が接続される。変圧器260はドレスの良否を判定する場合、板厚が厚めの単一の鋼板240を挟んだ電極230A、230B間にドレスの良否を判定するために設定された電流を流す。この電流は定電流制御によって供給される。この電流を直流インバータで供給する場合には、定パルス幅制御を行うことによって供給しても良い。また、この電流を交流から供給する場合には、一定の点弧角制御を行うことによって供給しても良い。溶接制御部250は加圧装置210および変圧器260の動作を制御する。
【0019】
電圧検出部110は、鋼板240を挟んだ電極230A、230B間の電圧を検出する。ドレスの良否を判定する場合には、加圧装置210が電極ホルダ220Aを下降させ、電極230Aと電極230Bとで鋼板240を一定の圧力で加圧する。その状態で変圧器260から電極230A、230B間にドレスの良否を判定するために設定された電流が供給される。電圧検出部110は、その設定された電流が供給されている間の電極230A、230B間の電圧変化を検出する。
【0020】
電流検出部120は、鋼板240を挟んだ電極230A、230B間に流れる電流を検出する。ドレスの良否を判定する場合には、変圧器260から電極230A、230B間にドレスの良否を判定するために設定された電流が供給される。電流検出部120は、この電流を検出する。この電流は、変圧器260の一次側または二次側で検出することができる。変圧器260の一次側でこの電流を検出する場合には、一次電流センサ122と一次電流検出部124とで検出する。また、変圧器260の二次側でこの電流を検出する場合には、二次電流センサ126と二次電流検出部128とで検出する。
【0021】
抵抗値演算部130は、電圧検出部110によって検出された電極230A、230B間の電圧と電流検出部120によって検出された電極230A、230B間を流れる電流とから電極230A、230B間の抵抗値を演算する。
【0022】
ピーク値検出部140は、抵抗値演算部130によって演算された抵抗値のピーク値を検出する。鋼板240に通電が開始されてから終了するまでの間は、電極230A、230Bと接触している部分の鋼板240の溶融状態が刻々と変化する。そのため、電極230A、230B間の抵抗値は、後述するように、時間の経過とともに二次曲線を描くように変化する。したがって、鋼板240に通電されている間に抵抗値のピークが現れる。
【0023】
時間計測部150は、鋼板240に通電してからピーク値検出部140がピーク値を検出するまでの時間を計測する。時間計測部150は、鋼板240の通電が開始されたことを電流検出部120が検出する電流値の急激な増加によって認識する。時間計測部150は、電流値の急激な増加を認識すると時間の計測を開始し、ピーク値検出部140が抵抗値のピーク値を検出した時点で時間の計測を終了する。
【0024】
判定部160は、時間計測部150によって計測された時間が許容範囲内にあれば電極230A、230Bのドレスは良好であると判定し、計測された時間が許容範囲内になければ電極230A、230Bのドレスは不良であると判定する。
【0025】
次に、上記のような構成のドレス良否判定装置によってなぜドレスの良否を判定できるのかについて説明する。図2は、ドレス良否判定の原理説明に供する図である。
【0026】
図2は、溶接回数(打点数)が新品である0打点の場合、500打点使用した後の場合、1500打点使用した後の場合のそれぞれの場合において、鋼板240を電極230A、230Bで挟み、電極230A、230B間に、設定された電流を流した場合の、電極230A、230B間の抵抗値の変化曲線を示す。
【0027】
いずれの打点数の場合も、電極230A、230Bの先端が湾曲しているため、通電初期の抵抗値は高くなる。したがって、電極230A、230B間に通電が開始されてから少しの間、電極230A、230B間の抵抗値は上昇する。
【0028】
次に、鋼板240が軟化してくると、電極230A、230Bの先端と鋼板240との接触面積が広がり、電極230A、230B間の抵抗値にピークを迎え、その後は電極230A、230B間の抵抗値が徐々に低下する。
【0029】
打点数が0、500、1500の場合の抵抗値の変化曲線を比較すると、新品である0打点の場合にはピークの抵抗値はR1、500打点の場合にはピークの抵抗値はR2、1500打点の場合にはピークの抵抗値はR3である。また、ピークの抵抗値に至るまでの時間は、新品である0打点の場合には電極間の通電を開始してからT1、500打点の場合にはT2、1500打点の場合にはT3である。
【0030】
したがって、ドレスが良好であるか、不良であるかは、電極230A、230B間のピークの抵抗値がR1±αの間に入っているかどうかを見ることによって判定できる。実施形態1では、電極230A、230B間のピークの抵抗値を見てドレスの良否を判定している。また、ドレスが良好であるか、不良であるかは、電極230A、230B間の抵抗値がピークに至るまでの時間が、T1±αの間に入っているかどうかを見ることによっても判定できる。後述する実施形態2では、電極230A、230B間の抵抗値がピークに至るまでの時間を見てドレスの良否を判定している。
【0031】
図3は、実施形態1に係るドレス良否判定装置の動作フローチャートである。なお、この動作フローチャートは、実施形態1に係るドレス良否判定方法の各段階を示すものでもある。図4は、実施形態1に係るドレス良否判定装置の動作説明に供する図である。以下、実施形態1に係るドレス良否判定装置100の動作を説明する。
【0032】
まず、抵抗溶接機200は、加圧装置210によって電極ホルダ220Aを下降させ、電極230A、230B間の鋼板240を所定の加圧力で加圧する(S100)。
【0033】
次に、溶接制御部250は、通電開始を指示し、電極230A、230Bを介して鋼板240に通電する(S110)。通電開始が指示されると、変圧器260が電極230A、230B間にドレスの良否を判定するために設定された電流を流す。この電流が流されると、図4に示すように、電極230A、230Bが鋼板240と接触している接触部の温度(接触部温度)が急激に上昇する。また、電極230A、230Bが鋼板240と接触している接触部の面積(接触面積)が少しずつ上昇する。また、電極230A、230Bの変位(電極変位)は、鋼板240が次第に溶融していくので、少しずつ少なくなっていく。
【0034】
抵抗値演算部130は、電圧検出部110が検出する電極230A、230B間の電圧と、電流検出部120が検出する電極230A、230B間を流れる電流に基づいて、電極230A、230B間の抵抗値を演算する。ピーク値検出部140は、抵抗値演算部130が演算した電極間抵抗値を監視する(S120)。
【0035】
ピーク値検出部140は、電極間抵抗値のピーク値を検出する(S130)。抵抗値演算部130によって演算される電極230A、230B間の抵抗値(電極間抵抗値)は、図4に示すように、通電開始とともに急激に上昇し、ピークを迎えた後に、急激に減少する。ピーク値検出部140は、このピーク値を検出する。
【0036】
時間計測部150は、通電が開始されてから、電極間抵抗値がピーク値に至るまでの時間を計測する(S140)。図4に示すように、通電が開始されてから電極間抵抗値がピークに至るまでの時間Tを計測する。
【0037】
判定部160は電極品質を判定する(S150)判定部160は、図4に示すように、時間計測部150によって計測された時間Tが、許容範囲として設定されているt2とt1との間にあれば、電極230A、230Bのドレスは良好であると判定する。一方、時間計測部150によって計測された時間Tが、t2とt1との間になければ電極230A、230Bのドレスは不良であると判定する。
【0038】
以上のように、実施形態1では、電極230A、230Bのドレス後に、抵抗溶接機200により鋼板240に電流を流し、電極230A、230B間の抵抗値が、通電を開始してからピーク値に至るまでの時間Tを計測し、計測された時間Tが許容値として設定されているt1≦T≦t2であれば、電極230A、230Bのドレスは良好であると判断している。なお、時間範囲t1≦T≦t2は、図2の打点数が0の場合の時間T±αの時間範囲に整合する。この時間範囲にあれば、ドレス後の電極230A、230Bの先端形状はほぼ新品と同じ状態にまで修正されている。
【0039】
電極230A、230Bのドレスの良否の判断は、電極230A、230B間の抵抗値がピーク値に至るまでの時間Tを計測するだけで良いので、極めて短時間で正確に電極230A、230Bのドレスの良否を判定できる。
【0040】
[実施形態2]
図5は、実施形態2に係るドレス良否判定装置の構成図である。なお、実施形態2に係る抵抗溶接機200の構成は、図1に示した実施形態1に係る抵抗溶接機200の構成と同一である。また、実施形態2に係るドレス良否判定装置100−2の構成は、図1に示した実施形態1に係るドレス良否判定装置100と比較して、ピーク値検出部140が存在しないことと、実施形態1に係る判定部160の判定の方法とは異なる方法でドレスの良否を判定する判定部160−2が存在することとが異なっている。
【0041】
時間計測部150は、鋼板240に通電してから一定時間Tが経過するまでの時間を計測する。時間計測部150は、鋼板240の通電が開始されたことを電流検出部120が検出する電流値の急激な増加によって認識する。時間計測部150は、電流値の急激な増加を認識すると時間の計測を開始し、一定時間Tが経過すると、その旨を抵抗値演算部130に出力する。
【0042】
図6は、実施形態2に係るドレス良否判定装置の動作フローチャートである。なお、この動作フローチャートは、実施形態2に係るドレス良否判定方法の各段階を示すものでもある。図7は、実施形態2に係るドレス良否判定装置の動作説明に供する図である。以下、実施形態2に係るドレス良否判定装置100−2の動作を説明する。
【0043】
まず、抵抗溶接機200は、加圧装置210によって電極ホルダ220Aを下降させ、電極230A、230B間の鋼板240を所定の加圧力で加圧する(S200)。
【0044】
次に、溶接制御部250は、通電開始を指示し、電極230A、230Bを介して鋼板240に通電する(S210)。通電開始が指示されると、変圧器260が電極230A、230B間にドレスの良否を判定するために設定された電流を流す。この電流が流されると、図7に示すように、電極230A、230Bが鋼板240と接触している接触部の温度(接触部温度)が急激に上昇する。また、電極230A、230Bが鋼板240と接触している接触部の面積(接触面積)が少しずつ上昇する。また、電極230A、230Bの変位(電極変位)は、鋼板240が次第に溶融していくので、少しずつ少なくなっていく。
【0045】
時間計測部150は、通電が開始されてから一定時間Tが経過するまでの通電時間を監視する(S220)。時間計測部150は、図6に示すように、通電が開始されてから一定時間Tに達したときには、その旨を抵抗値演算部130に出力する。
【0046】
抵抗値演算部130は、電圧検出部110が検出する電極230A、230B間の電圧と、電流検出部120が検出する電極230A、230B間を流れる電流に基づいて、電極230A、230B間の抵抗値を演算する(S230)。時間計測部150から通電が開始されてから一定時間Tに達したことが報知されると、抵抗値演算部130はその時の電極間抵抗値を判定部160−2に出力する。
【0047】
判定部160−2は電極品質を判定する(S240)。判定部160−2は、図7に示すように、通電が開始されてから一定時間Tに達した時点の、抵抗値演算部130が演算した電極230A、230B間の抵抗値R(電極間抵抗値)が、許容範囲として設定されているr1とr2との間にあれば、電極230A、230Bのドレスは良好であると判定する。一方、抵抗値演算部130が演算した電極230A、230B間の抵抗値Rが、r1とr2との間になければ電極230A、230Bのドレスは不良であると判定する。
【0048】
以上のように、実施形態2では、電極230A、230Bのドレス後に、抵抗溶接機200により鋼板240にドレスの良否を判定するために設定された電流を流し、通電を開始してから一定時間Tが経過した時点の、電極230A、230B間の抵抗値Rが、許容値として設定されているr1≦R≦r2であれば、電極230A、230Bのドレスは良好であると判断している。なお、抵抗範囲r1≦R≦r2は、図2の打点数が0の場合の時間R±αの抵抗範囲に整合する。この抵抗範囲にあれば、ドレス後の電極230A、230Bの先端形状はほぼ新品と同じ状態にまで修正されている。
【0049】
電極230A、230Bのドレスの良否の判断は、通電を開始してから一定時間Tが経過した時点の、電極230A、230B間の抵抗値を計測するだけで良いので、極めて短時間で正確に電極230A、230Bのドレスの良否を判定できる。
【0050】
以上、本発明に係るドレス良否判定装置およびドレス良否判定方法を実施形態1および実施形態2に分けて説明した。しかし、本発明に係るドレス良否判定装置およびドレス良否判定方法は、これらの実施形態の記載に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0051】
100、100−2 ドレス良否判定装置、
110 電圧検出部、
120 電流検出部、
122 一次電流センサ、
124 一次電流検出部、
126 二次電流センサ、
128 二次電流検出部、
130 抵抗値演算部、
140 ピーク値検出部、
150 時間計測部、
160、160−2 判定部、
200 抵抗溶接機、
210 加圧装置、
220A、220B 電極ホルダ、
230A、230B 電極、
240 鋼板、
250 溶接制御部、
260 変圧器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7