(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本発明の実施形態>
まず、本発明の実施形態を列記して説明する。
本発明の一実施形態に係る反射防止構造体は、黒色の色料を含有する原料からなる本体と、前記本体の外面に形成された反射防止構造とを含み、前記反射防止構造は、前記外面に対して凹んで形成された複数の凹部と、隣り合う前記凹部の境界部を形成し、かつ前記外面において頂部を有するベース部とを含み、前記凹部の深さ方向における前記ベース部の断面曲線は、曲線状に形成された前記頂部を含み、前記曲線状の前記頂部の一部を円弧として含む仮想円は、50μm以下の直径φを有している。
【0011】
本発明の一実施形態に係る反射防止構造体では、前記仮想円の直径φは、1.0μm〜50μmであってもよい。
本発明の一実施形態に係る反射防止構造体では、前記本体は、前記外面を含む第1面および前記第1面の反対側の第2面を有する層状に形成されていてもよい。
本発明の一実施形態に係る反射防止構造体では、前記凹部の深さDは、前記層状の前記本体の厚さTの1/2未満の大きさであってもよい。
【0012】
本発明の一実施形態に係る反射防止構造体では、前記層状の前記本体の厚さTは、0.01mm〜5mmであり、前記凹部の深さDは、0.005mm〜2.5mmであってもよい。
本発明の一実施形態に係る反射防止構造体では、前記凹部は、前記凹部の深さ方向における断面視において、互いに交差する一対の傾斜面を有しており、前記一対の傾斜面の間の角度θは、90°以下であってもよい。
本発明の一実施形態に係る反射防止構造体では、前記一対の傾斜面の間の角度θは、5°〜90°であってもよい。
【0013】
<本発明の実施形態の詳細な説明>
次に、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る反射防止構造フィルム1の模式的な斜視図である。
本発明の反射防止構造体の一例としての反射防止構造フィルム1は、第1面3および第1面3の反対側の第2面4を有するフィルム本体2と、フィルム本体2の第1面3に形成された反射防止構造5とを含む。
【0014】
フィルム本体2は、例えば、長方形状に形成されている。反射防止構造フィルム1は、可撓性を有するフィルム状であれば、長方形状でなくてもよい。例えば、反射防止構造フィルム1は、正方形状であってもよいし、円形状であってもよい。また、フィルム本体2の厚さTは、例えば、0.01mm〜5mmであってもよい。なお、フィルム本体2は、層状に形成されていれば別の名前(例えば、シート本体)で定義されてもよい。例えば、厚さTが0.25mm以下の場合にフィルム本体と称し、厚さTが0.25mmを超える場合にシート本体と称してもよい。
【0015】
フィルム本体2のベース原料としては、特に制限されず、例えば、天然ゴム、合成ゴム、(合成)樹脂等が挙げられ、好ましくは、合成樹脂が使用される。合成樹脂としては、例えば、スチレン樹脂、PP樹脂、PE樹脂、PVC樹脂、PET樹脂、PTFE樹脂、PEEK樹脂、PPS樹脂、COP樹脂、LCP樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらのうち、より好ましくは、ポリカーボネート樹脂が使用される。なお、上記したベース原料は、それぞれ単独使用または併用することができる。
【0016】
つまり、フィルム本体2は、上記複数のベース原料の混合物を単層で成形したフィルムであってもよいし、上記複数のベース原料を別々の層で成形し、当該複数の層が積層された複数層のフィルムであってもよい。後者の場合、1つの層が比較的大きな厚さを有し、フィルム本体2に強度を付与する第2面4側の基材フィルム(基材層)であって、当該基材フィルムに積層された残りの層は、反射防止構造5が形成され、フィルム本体2に反射防止機能を付与する第1面3側の機能層であってもよい。
【0017】
また、フィルム本体2のベース原料は、フィルム本体に黒色を付与するための黒色の色料を含有していてもよい。黒色の色料としては、特に制限されず、例えば、カーボンブラック、グラファイト、チタンブラック等が挙げられる。また、ベース原料に対する黒色の色料の含有割合の一例としては、例えば、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、カーボンブラックが0.1〜15質量部である。黒色の色料の含有割合は、フィルム本体2の用途に合わせて適宜変更すればよい。
【0018】
また、フィルム本体2のベース原料は、必要に応じて、ガラス繊維、炭素繊維、マイクロファイバー、カーボンナノチューブ、セルロースナノファイバー等のフィラーを含有していてもよい。
フィルム本体2の第1面3は、反射防止構造フィルム1において反射防止構造5が形成された面である。フィルム本体2の第1面3は、反射防止構造フィルム1を貼り付け対象構造物(図示せず)に貼り付けたときの表面側であることから、フィルム本体2の表面と称してもよい。
【0019】
一方、フィルム本体2の第2面4は、反射防止構造フィルム1において反射防止構造5が形成されていない平滑面である。フィルム本体2の第2面4は、反射防止構造フィルム1を貼り付け対象構造物(図示せず)に対する貼り付け面であることから、フィルム本体2の裏面と称してもよい。また、フィルム本体2の第2面4には、貼り付け対象構造物との接着のための接着層(図示せず)が形成されていてもよい。
【0020】
図2は、
図1の反射防止構造5の要部拡大図である。
図3は、
図2のIII−III線に沿って反射防止構造5を切断したときに現われる断面図である。
図2では、明瞭化のため、透視して見える凹部6の傾斜面11や先端部10は、一部の凹部6のみに示している。
図2および
図3を参照して、反射防止構造5は、複数の凹部6と、隣り合う凹部6の境界部を形成し、各凹部6を取り囲むベース部7とを含む。
【0021】
各凹部6は、ベース部7の頂部8の高さ位置に設定されたベース表面9から、フィルム本体2の厚さ方向内部に向かって凹んで形成されている。つまり、各凹部6は、フィルム本体2の内部に配置された点状の頂部としての先端部10を中心に、ベース表面9へ向かって広がる傾斜面11を有する錐形の中空空間からなる凹部である。また、各凹部6は、ベース部7によって、隣り合う凹部6から独立して設けられている。
【0022】
各凹部6は、四角形(正方形)の開口部12を有している。凹部6は、当該開口部12の各辺から先端部10に向かって傾斜し、先端部10で1つに合流する第1傾斜面11A、第2傾斜面11B、第3傾斜面11Cおよび第4傾斜面11Dを有する四角錐形凹部を構成している。したがって、凹部6は、
図3に示すように、フィルム本体2の厚さ方向の断面において、互いに交差する一対の傾斜面11を有している。なお、
図3では、互いに対向する傾斜面11Aと傾斜面11Dとが示されている。また、
図2および
図3では、明瞭化のため、一つの凹部6にのみ、第1傾斜面11A、第2傾斜面11B、第3傾斜面11Cおよび第4傾斜面11Dを示している。
【0023】
図3を参照して、各凹部6において、互いに対向する傾斜面11の間の角度θは、例えば、90°以下、好ましくは、5°〜90°であり、さらに好ましくは、5°〜60°であってもよい。
また、各凹部6の深さD(ベース表面9から先端部10までの距離)は、フィルム本体2の厚さTの1/2以下の大きさであることが好ましく、例えば、0.005mm〜2.5mmであってもよい。D≦1/2Tとすることによって、フィルム本体2に、凹部6のような中空部分が形成されていない部分を比較的厚く確保できるので、フィルム本体2に適度な強度を付与することができる。
【0024】
また、互いに隣り合う凹部6のピッチP(先端部10同士の距離)は、0.01mm〜1mmであってもよい。
なお、凹部6の開口部12の径(幅)Wは、例えば、傾斜面11間の角度θ、凹部6の深さDおよび凹部6のピッチPを定めることによって定めることができる。開口部12の幅Wの具体的な範囲としては、例えば、0.01mm〜1mmであってもよい。
【0025】
次に、
図4を参照して、凹部6の先端部10およびベース部7の頂部8の形状について説明する。
図4は、ベース部7の断面曲線30を示す図である。
図4に示す断面曲線30は、ベース部7の断面形状を表している。断面曲線30は、例えば、レーザ顕微鏡等を用いて作成することができる。例えば、フィルム本体2の第1面3に沿う方向をX/Y方向とし、当該X/Y方向に直交する凹部6の深さ方向をZ方向とし、X/Yそれぞれの方向にレーザ顕微鏡のレーザ機構を二次元走査する。これにより、各傾斜面11で反射したレーザ光がレーザ顕微鏡の受光素子に入光する。そして、当該反射光の光量およびレーザ顕微鏡のレンズの高さ等に基づいて、ベース部7の断面曲線30(断面形状)が得られる。
【0026】
各凹部6の先端部10は、
図4に示すように、フィルム本体2の厚さ方向の断面において、曲線状(弧状)に形成されている。そして、この曲線状の先端部10の一部を円弧として含む仮想円6Cは、例えば、50μm以下の直径φ
2を有している。直径φ
2は、好ましくは、1.0μm〜50μmであり、さらに好ましくは、1.0μm〜20μmであってもよい。
【0027】
この実施形態では、
図2に示すように、ベース部7が格子状に形成されており、各格子窓の部分に凹部6が1つずつ形成されている。これにより、複数の凹部6が格子パターンに配列されている。したがって、ベース部7の頂部8は、隣り合う凹部6の稜線部として形成されている。
また、ベース部7の頂部8は、
図4に示すように、フィルム本体2の厚さ方向の断面において、曲線状(弧状)に形成されている。そして、この曲線状の頂部8の一部を円弧として含む仮想円7Cは、例えば、50μm以下の直径φを有している。直径φは、好ましくは、1.0μm〜50μmであり、さらに好ましくは、1.0μm〜20μmであってもよい。
【0028】
そして、この反射防止構造5において、ベース表面9(頂部8)および凹部6の傾斜面11は、フィルム本体2の原料が露出した状態で仕上げられていてもよい。つまり、ベース表面9および凹部6の傾斜面11が、フィルム本体2の原料とは異なる原料からなる薄膜等で覆われておらず、また、凹部6が、他の樹脂材料等で埋め戻されているわけでもなく中空状態で維持されている。
【0029】
図5は、反射防止構造フィルム1の製造工程を説明するための図である。
図6は、一対のピンチロール15の拡大断面図である。
反射防止構造フィルム1を製造するには、例えば、前述のベース原料、および必要により添加された添加剤(例えば、色料、フィラー等)が押出機(図示せず)に投入され、押出機から押し出し成形される。これにより、フィルム本体2が成形される。押し出し成形工程では、例えば、押出機に備えたTダイ13からベース原料を押し出すことによって、原料をフィルム状にすればよい。また、フィルム本体2を複数層とする場合には、複数の原料を共押出しすることによって複数層を備えるフィルム本体2を形成してもよい。押し出されたフィルム本体2は、冷却ロール14によって固化する。
【0030】
次に、縦延伸機47を通過することによって、フィルム本体2が縦軸方向(フィルム本体2の進行方向)に引き伸ばされ、その後、横延伸機48を通過することによって、縦軸方向に延ばされたフィルム本体2が、さらに、横軸方向(前記進行方向と直交する方向)に引き伸ばされる。これにより、縦軸方向および横軸方向の2軸において延伸されたフィルム本体2(二軸延伸フィルム)が得られる。
【0031】
次の工程は、フィルム本体2に反射防止構造5を形成する転写工程である。転写工程では、二軸延伸されたフィルム本体2が、例えば、上下一対のピンチロール15の間にフィルム本体2が挟み込まれる。
図6に示すように、一対のピンチロール15の一方には、転写パターン16が設けられている。
【0032】
転写パターン16には、反射防止構造5の凹部6に対応する凸部17と、この凸部17を取り囲む格子状であり、反射防止構造5のベース部7に対応する凹部18が形成されている。つまり、転写パターン16は、反射防止構造5の反対パターンで形成されている。したがって、凸部17の先端部(図示せず)は、先端部10の仮想円6Cの直径φ
2と同じ直径を有する弧状に形成されており、凹部18の頂部(図示せず)は、頂部8の仮想円7Cの直径φと同じ直径を有する弧状に形成されている。このような転写パターン16は、例えば、ピンチロール15の表面をダイヤモンドバイト等で精密に加工することによって形成することができる。また、ピンチロール15の表面に対して、めっき加工、レーザ加工等を施すことによっても転写パターン16を形成することができる。
【0033】
そして、フィルム本体2が一対のピンチロール15の間を通過する際に、転写パターン16がフィルム本体2の第1面3に転写されることによって、フィルム本体2の第1面3がエンボス加工される。これにより、フィルム本体2の第1面3に反射防止構造5が形成される。その後、このフィルム本体2が巻き取りロール49で巻き取られることによって、反射防止構造フィルム1が得られる。
【0034】
なお、
図5では、フィルム本体2を押し出して巻き取るまでの一連工程の途中に転写工程が設けられているが、転写工程は他の方法であってもよい。例えば、押し出し後のフィルム本体2の第1面3に、転写パターン16と同じパターンを有するプレス板を押し付けることによって、フィルム本体2に転写パターンをプレス転写してもよい。
以上、この実施形態の反射防止構造フィルム1によれば、反射防止構造5のベース部7の頂部8の仮想円7Cの直径φが50μm以下であるため、フィルム本体2の第1面3(ベース表面9)に入射した光の反射を抑えることができる。その結果、優れた反射防止機能を発現することができる。また、反射防止構造5のベース部7の頂部8が格子状であり、独立した鋭利な形状ではないため、フィルム本体2の第1面3に何らかの接触が生じても、頂部8の一部が破損することを抑制することができる。これにより、不要なパーティクルの発生を防止できると共に、頂部8の形状変化を防止できるので、反射防止構造5の反射防止機能を維持することができる。
【0035】
また、この実施形態では、反射防止構造5において、四角錐の凹部6が、互いに直交する縦方向および横方向に沿って規則正しく配列されているので、ベース表面9における光の反射を均等に抑制することができる。
さらに、反射防止構造体が反射防止構造フィルム1であるため、製品自体の内外面に反射防止加工を行うことが難しい場合(例えば、製品の内外面が曲面である場合)にも、当該内外面に反射防止構造フィルム1を貼ることによって、製品の内外面に反射防止機能を付与することができる。
【0036】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
例えば、前述の実施形態では、反射防止構造5の凹部6の開口部12は正方形状であったが、
図7に示すように、長方形状であってもよい。より具体的には、開口部12は、互いに対向する第1辺19Aおよび第2辺19Bと、互いに対向する第3辺19Cおよび第4辺19Dとを有している。この凹部6では、第1辺19Aおよび第2辺19Bからそれぞれ延びる第1傾斜面20Aおよび第2傾斜面20Bが、線状の頂部21を形成している。一方、第3辺19Cおよび第4辺19Dからそれぞれ延びる第3傾斜面20Cおよび第4傾斜面20Dは、線状の頂部21の各端部において、第1傾斜面20Aおよび第2傾斜面20Bとの間に点状の頂部22を形成している。
【0037】
また、前述の実施形態では、凹部6は、四角錐の凹部6として形成されていたが、例えば、
図8に示すように、円錐形の凹部6であってもよいし、
図9に示すように、三角錐の形凹部6であってもよい。三角錐の凹部6の場合、複数の三角錐の凹部6をトラス状に配列することによって、頂部8を稜線部として形成することができる。
また、前述の実施形態では、反射防止構造5の加工プロセスとして、押出し成形(二軸延伸)およびロールパターン転写を一例として示したが、その他、ラミネートUV、エンボス加工、スクリーン印刷、射出成形等の加工プロセスを採用することもできる。
【0038】
例えば、
図10および
図11に示すラミネートプロセスによってフィルム本体2を形成し、当該フィルム本体2にロールパターン転写を行ってもよい。
図10の工程は、具体的には、押出しラミネート工程を示す図である。つまり、塗布部51においてアンカーコート(接着補助材)が基材50に塗布され、その後、乾燥部52に送られる。乾燥された基材50に対して、別途押出された溶融状態のフィルム状樹脂53が積層(ラミネート)され、冷却ロール54で圧着されることによって固化して、フィルム本体2が得られる。そして、このフィルム本体2が一対のピンチロール15を通過することによって、フィルム本体2に反射防止構造5が形成される。
【0039】
一方、
図11の工程は、具体的には、ドライラミネート工程を示す図である。つまり、塗布部56においてアンカーコート(接着補助材)が基材55に塗布され、その後、乾燥部57に送られる。乾燥された基材55に対して、別途準備されたフィルム58が積層(ラミネート)され、一対のスチールロール59で熱圧着する、フィルム本体2が得られる。そして、このフィルム本体2が一対のピンチロール15を通過することによって、フィルム本体2に反射防止構造5が形成される。
【0040】
本発明の反射防止構造フィルムは、例えば、自動車の内装材(インストルメントパネル等)、自動車の外装材(ヘッドライト、テールランプ等)、カメラレンズの鏡筒、HUD(ヘッドアップディスプレイ)向けの反射防止構造、光学センサ向けの反射防止構造、腕時計の意匠性を高める構造、その他各種工業製品の外面に貼り付けるフィルムとして好適に使用することができる。
【0041】
また、前述の実施形態では、本発明の実施形態の一例として反射防止構造フィルムの構成を説明したが、本発明は、フィルムに限らず、各種形状の工業製品に適用することができる。例えば、前述の反射防止構造5を備える反射防止構造成形体であってもよい。
図12および
図13は、反射防止構造成形体の一例としてのレンズバレル31である。
本発明の反射防止構造体の一例としてのレンズバレル31は、レンズ(図示せず)を収容するための中空の内部空間の一例としてのレンズ収容部32を区画する筒状部33を本体部として備えている。
【0042】
筒状部33は、相対的に径が大きい第1部分34と、第1部分34よりも径が小さい第2部分35とが連結された二段構造を有しており、これらの境界部に、筒状部33の全周にわたって段差部36が形成されている。第1部分34の内径は、例えば、3.0mm〜5.0mmであり、第2部分35の内径は、例えば、3.0mm〜5.0mmであってもよい。また、筒状部33の軸方向の高さは、例えば、0.50mm〜5.0mmであってもよい。
【0043】
筒状部33において第2部分35側の端部(一端部)には、環状頂部37が設けられている。環状頂部37は、レンズ収容部32に光を取り入れるための開口38を中央部に有する円環板状に形成されている。環状頂部37のレンズ収容部32の反対側の表面(外面9)は、開口38を取り囲む円形領域を構成しており、この円形領域の全体にわたって反射防止構造5が形成されている。一方、環状頂部37のレンズ収容部32側の表面(内面40)は、反射防止構造5が形成されていない平滑面となっている。
【0044】
環状頂部37の開口38は、環状頂部37を厚さ方向に貫通しており、当該厚さ方向においてレンズ収容部32の反対側に向かって径が広がるテーパー状の周面41を有する円形に形成されている。環状頂部37の開口38の径(最大径)は、例えば、環状頂部37の外径(例えば、4.0mm〜7.0mm)に対して、1.0mm〜3.0mmである。
また、筒状部33において第1部分34側の端部(他端部)は、第1部分34の内径寸法で開放されている。
【0045】
そして、このレンズバレル31は、筒状部33および環状頂部37が一体となった成形品で形成されている。
レンズバレル31を製造するには、
図14Aに示すように、成形用の金型(例えば、凹型42および凸型43)が準備される。凹型42の内面(内部底面)には、環状頂部37の開口38に対応する凸部44と、この凸部44を取り囲むように多数配列された複数の錐形凸部45が形成されている。錐形凸部45は、レンズバレル31の凹部6の反対パターンで形成されている。そして、凹型42および凸型43を合わせることで、型締め工程が行われる。
【0046】
次に、
図14Bに示すように、型締めされた状態の凹型42と凸型43との間に、溶融した状態のベース原料46が注入される。ベース原料46としては、前述のベース原料が使用される。また、ベース原料46がフィラーや添加剤を含有する場合には、金型への注入に先立ってベース原料46にフィラーを混合しておけばよい。このときの樹脂温度は、例えば、280℃〜350℃であり、充填圧力は、例えば、50MPa〜230MPaであり、射出速度は、例えば、50mm/s〜220mm/sであってもよい。
【0047】
次に、注入されたベース原料46が保圧、冷却される。このときの保持圧力は、例えば、50MPa〜140MPaであってもよい。また、充填時間と保圧時間とを合わせた射出時間は、例えば、1秒〜10秒であってもよい。冷却後、型開きが行われ、前述の反射防止構造5を有するレンズバレル31が得られる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【実施例】
【0048】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
<実施例1〜6>
(1)フィルムの製造
カーボンブラックが配合されたポリカーボネート樹脂(帝人株式会社製 「パンライト(登録商標)」)のペレットを使用して、
図5の工程に倣ってフィルムを押出し成形し、所定の反射防止構造パターンを転写することによって、反射防止構造5を有するフィルム1を得た(フィルム厚さT=0.3mm)。得られた反射防止構造フィルム1に関して、反射防止構造5の頂部8の仮想円7Cの直径φ、凹部6のピッチPおよび凹部6の深さDは、以下に示す表1の通りであった。
(2)反射率の測定
反射率の測定は、
図15に示す測定装置23を用いて行った。具体的には、積分半球24上の測定位置(スリット部25)に、実施例1〜6のそれぞれで得られたサンプル26を配置し、光源27から照射した光を反射させた。反射光は、周囲の積分半球24で散乱され、平均化した光を検出器28で検出することによって、全反射率(正反射率+拡散反射率)を求めた(測定波長範囲:200nm〜800nm)。拡散反射率は、正反射光を除外するため、光源27と対象位置にある蓋29を外した状態で測定した。結果を、表1および
図16に示す。また、参考のために、反射防止構造5の頂部8の直径φと反射率との関係を
図17に示す。なお、表1および
図17では、測定された反射率のうち、測定波長が435nm、546nmおよび700nmにおける反射率を一例として示す。
【0049】
【表1】
【0050】
(3)評価
表1および
図16の結果から、実施例1〜6であれば、可視光線の波長範囲のほぼ全域において5%未満という低い反射率を実現できることを確認できた。また、
図17から、概ね、反射防止構造5の頂部8の直径φが20μm以下であれば、可視光線の波長範囲のほぼ全域において2.5%未満という低い反射率を実現できるであろうことを確認できた。
【0051】
<実施例7>
(1)フィルムの製造
カーボンブラックが配合されたポリカーボネート樹脂(帝人株式会社製 「パンライト(登録商標)」)のペレットを使用して、
図5の工程に倣ってフィルムを押出し成形し、所定の反射防止構造パターンを転写することによって、反射防止構造5を有するフィルム1を得た(フィルム厚さT=0.3mm)。得られた反射防止構造フィルム1に関して、反射防止構造5の頂部8の仮想円7Cの直径φ、凹部6のピッチPおよび凹部6の深さDは、以下に示す表2の通りであった。表2では、参考として実施例1の反射防止構造の仕様も示す。
(2)反射率の測定
反射率の測定は、
図15に示す測定装置23を用いて行った。測定方法は、前述の通りである。結果を、表2および
図18に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
(3)評価
表2および
図18の結果から、反射防止構造5の頂部8の直径φが同じであれば、凹部6の深さDが浅くなると、それに伴い反射率が高くなることが分かった。しかしながら、実施例7のように直径φが10μm以下であれば、実施例1(深さD=0.130mm)に比べて反射率が高くなるものの、実用上、十分優れた反射防止機能を実現できることが分かった。つまり、実施例7の深さDでも十分な反射防止機能を実現できることから、凹部6の深さDを浅くし、フィルム本体2の中空部分を少なくすることによって、フィルム本体2の強度維持と、優れた反射防止機能とを両立することができる。
【0054】
<実施例8〜16>
次に、傾斜面11間の角度θが反射率にどのように関係するかを実施例8〜16によって示す。実施例8〜16では、角度θおよび反射防止構造5の頂部8の直径φを一定条件とし、当該一定条件に対して凹部6の深さDを変更して評価した。
なお、以下の結果は、凹部6の深さDを変数としたときの評価結果であるが、凹部6のピッチPを変更しても同様の結果となる。つまり、
図19に示すように、傾斜面11間の角度θが一定であれば、凹部6の深さDを深くすると、それに伴い凹部6のピッチPも大きくなる。例えば、深さD
1・ピッチP
1を有する凹部6の深さD
1を破線のように深さD
2とすると、それに伴い、ピッチP
1もピッチP2
へと増加する。したがって、
図20〜
図22で示す評価結果は、凹部6の深さDを変数としたときの評価結果であるが、凹部6のピッチPを変数とした場合も同様の結果となる。
【0055】
(1)成形体の製造
カーボンブラックが配合されたポリカーボネート樹脂(帝人株式会社製 「パンライト(登録商標)」)のペレットを使用して、
図14Aおよび
図14Bの工程に倣って成形体を射出成形した。これにより、反射防止構造5を有する成形体を得た。
成形条件は、例えば、樹脂温度=約320℃、射出圧力(充填圧力=約210MPa、保持圧力=約110MPa)、射出速度=約200mm/s、射出時間(充填時間+保圧時間)=約1.6秒とした。得られた反射防止構造成形体に関して、反射防止構造5の頂部8の直径φ、傾斜面11間の角度θおよび凹部6の深さDは、以下に示す表3の通りであった。
(2)反射率の測定
反射率の測定は、
図15に示す測定装置23を用いて行った。測定方法は、前述の通りである。結果を、表3および
図20〜
図22に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
(3)評価
表3および
図20〜
図22の結果から、実施例8〜16は成形体に係る実施例であるが、可視光線の波長範囲のほぼ全域において5%未満という低い反射率を実現できることを確認できた。また、角度θおよび反射防止構造5の頂部8の直径φを一定条件として凹部6の深さDを変更したいずれの実施例においても、当該低い反射率を実現できた。
【0058】
また、表3および
図20〜
図22の結果から、傾斜面11間の角度θ=50°(実施例8〜10)であれば、角度θ=70°および90°(実施例11〜16)の場合に比べて、低い反射率を実現できることを確認できた。つまり、この結果から、傾斜面11間の角度θは、概ね60°以下であれば優れた反射防止機能を実現できることが分かった。
【解決手段】反射防止構造フィルム1は、第1面3および第2面4を有するフィルム本体2と、フィルム本体2の第1面3に形成された反射防止構造5とを含み、反射防止構造5は、第1面3に対して凹んで形成された複数の凹部6と、隣り合う凹部6の境界部を形成し、かつ第1面3において頂部8を有するベース部7とを含み、フィルム本体2の厚さ方向の断面において、ベース部7の頂部8の仮想円7Cの直径φが50μm以下である。