特許第6843414号(P6843414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6843414黒鉛化基窒素錯体化のFe(III)−Fe▲0▼触媒の調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6843414
(24)【登録日】2021年2月26日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】黒鉛化基窒素錯体化のFe(III)−Fe▲0▼触媒の調製方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/04 20060101AFI20210308BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20210308BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20210308BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20210308BHJP
   C01G 49/00 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   B01J37/04 102
   B01J37/08
   B01J37/10
   B01J31/22 M
   C01G49/00
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-150766(P2020-150766)
(22)【出願日】2020年9月8日
【審査請求日】2020年9月8日
(31)【優先権主張番号】202010562502.9
(32)【優先日】2020年6月18日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519295166
【氏名又は名称】▲広▼州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】胡 春
(72)【発明者】
【氏名】王 裕猛
(72)【発明者】
【氏名】呂 来
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2020−006328(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第110918073(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第109675632(CN,A)
【文献】 F. PANG et al.,Controlled Synthesis of Fe3O4/ZIF-8 Nanoparticles for Magnetically Separable Nanocatalysts,Chem. Eur. J.,2015年,21,6879-6887.,DOI: 10.1002/chem.201405921
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
C02F1/00−1/78
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒鉛化基窒素錯体化のFe(III)-Fe0触媒の調製方法であって、
(1)ナノ四酸化三鉄をメタノールに加えて分散液Aを形成するステップと、
(2)2-メチルイミダゾールと分散液Aをメタノールに加えて溶液Aを形成するステップと、
(3)亜鉛塩とポリビニルピロリドンをメタノール-酸化グラフェン溶液に溶かして溶液Bを形成するステップと、
(4)溶液Aと溶液Bを混合し、均一に攪拌して室温で老化させるステップと、
(5)ステップ(4)で得られた老化させた後の混合溶液を遠心分離して固体生成物Aが得られ、固体生成物Aをエタノールで洗浄した後に乾燥させるステップと、
(6)乾燥された固体生成物Aを管式炉中にてN 2雰囲気下で焙焼し、自然冷却してから前記黒鉛化基窒素錯体化のFe(III)-Fe0触媒を得るステップとを含むことを特徴とする黒鉛化基窒素錯体化のFe(III)-Fe0触媒の調製方法。
【請求項2】
ステップ(2)では、前記2-メチルイミダゾールの添加量は0.0243〜0.0487 molであり、前記分散液Aの添加量は5〜30 mlであり、かつ、分散液A 中のナノ四酸化三鉄濃度は0.0183〜0.110 g/mlであり、前記メタノールの添加量は40〜80 mlであることを特徴とする請求項1に記載の黒鉛化基窒素錯体化のFe(III)-Fe0触媒の調製方法。
【請求項3】
前記ナノ四酸化三鉄の調製方法であって、
(1.1)鉄源と炭酸水素ナトリウムを脱イオン水に溶かして溶液Cを形成するステップと、
(1.2)アスコルビン酸を脱イオン水に溶かして溶液Dを形成するステップと、
(1.3)溶液Cと溶液Dを混合して均一に攪拌し、高圧反応釜に移行し、オーブンにて水熱反応を行うステップと、
(1.4)高圧反応釜を取り出し、自然冷却後、得られた固体生成物Bを濾過してメタノールで洗浄した後に、ナノ四酸化三鉄を得るステップとを含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の黒鉛化基窒素錯体化のFe(III)-Fe0触媒の調製方法。
【請求項4】
黒鉛化基窒素錯体化のFe(III)-Fe0触媒の調製方法であって、
(a)前記鉄源は、塩化鉄六水和物、硝酸鉄、硫酸鉄の少なくとも1種であること、
(b)鉄源中の鉄イオンと炭酸水素ナトリウムのモル比は1:5〜1:1.5であること、
(c)前記アスコルビン酸の添加量は0.0005〜0.0015 molであること、
(d)前記水熱反応の温度は100〜180℃であり、水熱反応の時間は4〜10 hであることのうちの(a)〜(d)のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項3記載の黒鉛化基窒素錯体化のFe(III)-Fe0触媒の調製方法。
【請求項5】
ステップ(3)では、前記亜鉛塩の添加量は、0.0025〜0.0041molであり、前記亜鉛塩は、硝酸亜鉛六水和物、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1に記載の黒鉛化基窒素錯体化のFe(III)-Fe0触媒の調製方法。
【請求項6】
黒鉛化基窒素錯体化のFe(III)-Fe0触媒の調製方法であって、
(e)ステップ(4)で、攪拌時間は4〜24 hであり、老化時間は24〜96 hであること、
(f)ステップ(5)で、乾燥温度は40〜80℃であることのうちの(e)〜(f)のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の黒鉛化基窒素錯体化のFe(III)-Fe0触媒の調製方法。
【請求項7】
ステップ(6)では、焙焼温度は600〜900℃であり、焙焼時間は1〜4hであり、昇温速度 は2〜10℃/mであることを特徴とする請求項1に記載の黒鉛化基窒素錯体化のFe(III)-Fe0触媒の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水処理分野に関し、特に黒鉛化基窒素錯体化のFe(III)-Fe0触媒、その調製方法及び応用に関する。
【背景技術】
【0002】
都市化と工業化の加速発展に伴い、有毒物質が絶えず水体に排出されることによる環境汚染問題はすでに世界の焦点問題になってしまった。工業染料、薬品及び農薬化学品などの汚染物質は、廃水、河川と地下水に広く存在し、直接或いは間接的に動物、甚だしきに至っては人類の健康に影響を与えるおそれがある。これらの新型有機汚染物質の成分は、複雑で、難分解性、持続性及び毒性を有するため、伝統的な汚水処理技術を用いて有効に除去することは困難である。
【0003】
フェントン触媒酸化、過硫酸塩活性化、光触媒、触媒オゾン化などの高級の酸化技術は、新興の汚水処理技術として酸化剤(過酸化水素、過硫酸塩、オゾンなど)を活性化して強い酸化性を有する活性酸素ラジカルを発生させ、汚水処理分野において顕著な効果を得ることにより注目・研究され、水体中の難生分解有機汚染物質を除去する最も強力な手段だと認められた。しかしながら、これらの酸化剤を活性化するために、光補助、音声補助、電気補助などの方式がしばしば必要であり、大量の外部エネルギーの消費および当量比よりも大きい酸化剤の消費をもたらす欠点もある。フェントン触媒酸化技術を例として説明すると、汚水処理に用いるために、H2O2の全世界生産量は220万トン/年を超え、4%の増加率で持続的に増加し、このように、汚水処理のコストが大幅に増加させ、高級の酸化汚水処理技術の実用化を阻害していることが明らかになった。
【0004】
近年、触媒表面マイクロ電界を構築して分極中心を形成することにより、汚染物質の電子を有効に利用して酸化剤を配向還元にして強い酸化性を有するヒドロキシラジカルを発生させることができ、汚水処理効率を大きく向上させるだけでなく、酸化剤の過剰消費も減少することが明らかになった。この分極二重反応体系では、汚染物質は電子供与体とし、酸化剤は電子受容体として電子を絶えず捕獲して消費し、反応体系の全体の電子循環及び汚染物質の分解過程を促進することができ、電子捕獲ということは、反応の進行の重要なステップになる。これらの研究からヒントを得て、本発明は金属と有機物との巧みな配位化により、黒鉛化基窒素錯体化のFe(III)-Fe0触媒を調製し、金属と有機物の化学配位により汚水処理における汚染物質の分解に必要なエネルギー消費を極めて低減するだけでなく、常温で優れた分解効果を得ることができる。また、反応体系に酸化剤を追加投与する必要がなく、酸素の電子捕獲能力を利用するだけで、体系全体の電子循環を推進することができ、有機汚染物のエネルギーで有機汚染物を徹底的に鉱化して除去することを真の意味で実現し、汚水処理コストを大幅に低下させ、これは汚水処理技術の発展及び工業化応用に対して重大な実質的な参考意義を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許出願公開第105562053号明細書
【0006】
本発明は、マクロエアロゲル光触媒材料の調製方法を開示し、シート状の光触媒を脱イオン水に超音波分散させて分散液を形成し、脱イオン水に酸化グラフェンを分散させて混合溶液を形成し、グラフェン水溶液を触媒分散液に徐々に添加し、攪拌及び超音波処理を続けて酸化グラフェン分散液触媒を形成する。酸化グラフェン分散液触媒を急冷により完全に凍結させ、凍結乾燥してから水分を除去し、酸化グラフェンに一体的に担持された一体型エアロゲル光触媒を得る。前記一体型エアロゲル光触媒に対して抱水ヒドラジン、アンモニア、エチレンジアミン等の還元性蒸気還元またはアニール還元を行うと、さらに触媒とグラフェン担持の一体型エアロゲル光触媒を得る。本発明の光触媒は、性能が高く、担体として酸化グラフェンとグラフェンを用いているため、担体が光生成キャリアの分離と電子輸送に有利であり、光触媒効率を大幅に向上させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の第1の目的は、黒鉛化基窒素錯体化のFe(III)-Fe0触媒の調製方法を提供することである。この方法では、グラフェンを基材とし、2-メチルイミダゾールおよび硝酸亜鉛六水和物を金属有機構造体前駆体とし、ナノ四酸化三鉄を鉄源とし、ポリビニルピロリドンをバインダーとして、原位置ドープの焙焼工程により目標触媒を合成することである。
【0008】
本発明の第2の目的は、上記方法により黒鉛化基窒素錯体化のFe(III)-Fe0触媒を得ることである。
【0009】
本発明の第3の目的は、上記の黒鉛化基窒素錯体化のFe(III)-Fe0触媒は、ビスフェノールA、2-クロロフェノール、シプロフロキサシン、ジフェンヒドラミン、ブルフェン、フェニトイン和2,4-ジクロロフェノキシ酢酸などの有機汚染物質の接触分解での応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を実現するために、本発明の用いる技術方案は、以下のとおりである:
【0011】
黒鉛化基窒素錯体化のFe(III)-Fe0触媒の調製方法であって、
(1)ナノ四酸化三鉄をメタノールに加えて分散液Aを形成するステップと、
(2)2-メチルイミダゾールと分散液Aをメタノールに加えて溶液Aを形成するステップと、
(3)亜鉛塩とポリビニルピロリドンをメタノール-酸化グラフェン溶液に溶けて溶液Bを形成するステップと、
(4)溶液Aと溶液Bを混合し、均一に攪拌して室温で老化させるステップと、
(5)ステップ(4)で得られた老化させた後の混合溶液を遠心分離して固体生成物Aが得られ、得られた固体生成物Aをエタノールで洗浄した後に乾燥させるステップと、
(6)乾燥された固体生成物Aを管式炉中にてN2雰囲気下で焙焼し、自然冷却してから前記黒鉛化基窒素錯体化のFe(III)-Fe0触媒を得るステップとを含む。
【0012】
本発明の室温は20〜30℃である。
【0013】
本発明の黒鉛化基窒素錯体化のFe(III)-Fe0触媒の構成では、還元グラフェンと黒鉛化金属有機構造体ZIF-8との間に、Zn-O結合ブリッジが形成され、この複合有機重合体とFe(III)との間に、ピロール窒素により化学配位結合が形成され、ナノゼロ価鉄(Fe0)の表面に担持されている。このように、金属-有機物間のσ−π結合に基づき電子輸送特性は、rGO-黒鉛化ZIF-8ピロール窒素錯体化Fe(III)-Fe0表面にFe0の鉄原子周囲により多くの電子が集中するとともに,rGO-黒鉛化ZIF-8表面に電子低密度領域が形成される。水中の有機汚染物質は、電子低密度領域に化学吸着される。rGO-黒鉛化ZIF-8の電子輸送の作用を利用して、有機物の電子が分子軌道の強い相互作用によりFe0の領域に輸送され、水中の酸素分子またはFe3+に捕獲されることで水中の有機物が分解される。このような触媒体系は、常温条件での有機物を含む廃水の浄化を実現することができる。
2-メチルイミダゾールの添加量の違いは、触媒調製過程の金属有機構造体の形成完成度に影響し、さらに、ステップ(2)では、前記2-メチルイミダゾールの添加量は0.0243〜0.0487 molであり、好ましくは0.0370 molであり、金属有機構造体の形成完成度の向上に有利である。
【0014】
さらに、前記分散液Aの添加量は5〜30mlであり、かつ、分散液A中のナノ四酸化三鉄濃度は0.0183〜0.110 g/mlである。添加した分散液Aの添加量<10mLの場合、鉄種のドープ量が低すぎ、合成された目標触媒(Fex/GZIF-8-rGO)の触媒活性が悪い。添加した分散液Aの体積>10mLの場合、鉄種のドープ量が高すぎ、合成された目標触媒(Fex/GZIF-8-rGO)がふんわりして、外観もややバリ状になり、触媒活性が低く、反応過程において鉄種が脱落しやすく、溶出が多くなる。添加した分散液Aの体積=10mLの場合、活性鉄種はZIF-8金属有機構造体に均一にドープされて結合することができ、合成された目標触媒(Fex/GZIF-8-rGO)は汚染物質に対する触媒分解活性および適応性は最も優れた。
【0015】
さらに、前記メタノールの添加量は40〜80 mlであり、好ましくは60 mLである。
【0016】
本発明のナノ四酸化三鉄は、市販品を採用してもよいし、以下の方法により調製してもよい。
(1.1)鉄源と炭酸水素ナトリウムを脱イオン水に溶けて溶液Cを形成し、
(1.2)アスコルビン酸を脱イオン水に溶けて溶液Dを形成し、
(1.3)溶液Cと溶液Dを混合して均一に攪拌し、高圧反応釜に移行し、オーブンにて水熱反応を行い、
(1.4)高圧反応釜を取り出し、自然冷却後、得られた固体生成物Bを濾過してメタノールで洗浄した後に、ナノ四酸化三鉄を得る。
【0017】
さらに、前記鉄源は、塩化鉄六水和物、硝酸鉄、硫酸鉄の少なくとも1種である。
【0018】
さらに、鉄源中の鉄イオンと炭酸水素ナトリウムのモル比は1:5〜1:1.5であり、好ましくは1:3である。
【0019】
さらに、前記アスコルビン酸の添加量は0.0005〜0.0015 molであり、好ましくは0.001 molである。
【0020】
さらに、前記水熱反応の温度は100〜180℃であり、好ましくは150℃である。水熱反応の時間は4〜10 hであり、好ましくは8hである。
【0021】
さらに、ステップ(3)では、前記亜鉛塩の添加量は、0.0025〜0.0041molであり、好ましくは0.0027molであり、前記亜鉛塩は、硝酸亜鉛六水和物、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛のうちの少なくとも1種を含み、好ましくは硝酸亜鉛六水和物であり、硝酸亜鉛六水和物を亜鉛源として合成した金属有機構造体の結晶形状は最適である。
【0022】
さらに、ステップ(4)では、攪拌時間は4〜24 hであり、好ましくは6hであり、老化時間は24〜96 hであり、好ましくは48hである。
【0023】
さらに、ステップ(5)では、乾燥温度は40〜80℃であり、好ましくは60℃である。
【0024】
さらに、ステップ(6)では、焙焼温度は600〜900℃であり、焙焼時間は1〜4hであり、昇温速度は2〜10℃/minである。昇温速度が速すぎると、触媒表面Fe種の迅速な凝集を招き、金属有機構造体の炭化速度が速すぎ、得られた触媒完成品の表面活性種の分布が不均一になる。ゆっくり昇温すると、Fex/GZIF-8-rGO固体生成物中の微量吸着水を徐々に除去し、その表面の金属Fe種を分散変性させ、担体骨格に均一にドープし、触媒完成品は柔らかく、均一で、墨黒色を呈している。
【0025】
本発明は、上記調製方法により調製された黒鉛化基窒素錯体化のFe(III)-Fe0触媒をさらに提供する。
【0026】
本発明は、上記黒鉛化基窒素錯体化のFe(III)-Fe0触媒を含む汚水処理剤をさらに提供する。
【0027】
本発明は、上記黒鉛化基窒素錯体化のFe(III)-Fe0触媒が汚水中の有機汚染物質を処理するために使用され、前記有機汚染物質がビスフェノールA、2-クロロフェノール、シプロフロキサシン、ジフェンヒドラミン、フェニトイン、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸、ブルフェンのうちの少なくとも1種を含む黒鉛化基窒素錯体化のFe(III)-Fe0触媒の応用をさらに提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、従来技術に比べて、以下の利点及び有益な効果を有する。
(1)本発明の黒鉛化基窒素錯体化のFe(III)-Fe0触媒は、過酷なpH反応条件(pH=2〜3)を必要とせず、中性の条件下でも難分解性有機汚染物質に対して優れた触媒分解活性を示す。
(2)本発明の触媒は、反応過程において酸化剤を追加投与する必要がなく、有機物が触媒の協調作用により電子を失って有機汚染の分解を実現し、酸化剤の添加による金属イオンの大量溶出などの二次汚染の問題を効果的に回避することができる。
(3)本発明の触媒は、各種有機汚染物質に対して強い適合性を示す。
(4)本発明の触媒は、有機汚染物質の除去過程において良好な安定性を有する。
(5)本発明の触媒は、固体触媒であり、水との分離、回収リサイクルを容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施例1により調製されたFex/GZIF-8-rGOのSEM図である。
図2】実施例1により調製されたFex/GZIF-8-rGOのFe 2p XPSスペクトル図である。
図3】実施例1により調製されたFex/GZIF-8-rGOの常温メスバウア・スペクトル図である。
図4】実施例1により調製されたFex/GZIF-8-rGOは、BPA、2-CP、CIP、2,4-D、PHT、DPとIBUに対する分解曲線グラフである。
図5】実施例1により調製されたFex/GZIF-8-rGOは、BPA、2-CP、CIP、2,4-D、PHT、DPとIBUのTOCに対する分解グラフである。
図6】実施例1により調製されたFex/GZIF-8-rGOの反複実験活性評価図である。
図7】実施例1〜6により調製されたFex/GZIF-8-rGO触媒は、BPAに対する触媒分解効果である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の目的、技術方案及び利点についてよく説明するために、以下、発明を実施するための形態を組み合わせて本発明について更に説明する。
【0031】
実施例1
Fex/GZIF-8-rGOの調製方法の一実施例では、
(1)ナノ四酸化三鉄にメタノール20 mLを加えて分散液Aを形成して予備用ものとするステップと、
(2)3g 2-メチルイミダゾールと分散液A10 mLをメタノール60 mLに添加して溶液Aを形成し、分散液A中のナノ四酸化三鉄の濃度は0.0366g/mLであるステップと、
(3)硝酸亜鉛六水和物0.0027 molとポリビニルピロリドン0.9gをメタノール-酸化グラフェン溶液60 mLに溶けて溶液Bを形成するステップと、
(4)溶液Aと溶液Bとを混合し、持続磁気6 h攪拌して室温で48 h老化するステップと、
(5)ステップ(4)で得られた老化させた後の溶液を遠心分離して固体生成物Aが得られ、得られた固体生成物Aをエタノールで洗浄した後、60℃オーブンで乾燥するステップと、
(6)乾燥された固体生成物Aを管式炉中にてN 2雰囲気下で焙焼し、焙焼の昇温速度を5℃/minとし、700℃に昇温してから2h保持し、自然冷却した後に、本発明の黒鉛化基窒素錯体化のFe(III)-Fe0(Fex/GZIF-8-rGO)を得るステップとを含む。
【0032】
ここで、本実施例のナノ四酸化三鉄の調製方法であって、
(1.1)塩化第二鉄六水和物0.0060 molと炭酸水素ナトリウムを脱イオン水に溶けて溶液Cを形成し、
(1.2)アスコルビン酸0.176 gを脱イオン水に溶けて溶液Dを形成し、
(1.3)溶液Cと溶液Dを混合して均一に攪拌し、高圧反応釜に移行し、150℃のオーブンにて水熱反応を8h行い、
(1.4)圧反応釜を取り出し、自然冷却後、得られた固体生成物Bを濾過してメタノールで洗浄した後に、ナノ四酸化三鉄を得る。
【0033】
実施例2
本実施例のFex/GZIF-8-rGOの調製方法は、ステップ(2)では本実施例の分散液Aの添加量が5mLであることを除いて、実施例1と基本的に同様である。
【0034】
実施例3
本実施例のFex/GZIF-8-rGOの調製方法は、ステップ(2)では本実施例の分散液Aの添加量が15mLであることを除いて、実施例1と基本的に同様である。
【0035】
実施例4
本実施例のFex/GZIF-8-rGOの調製方法は、ステップ(2)では本実施例の分散液Aの添加量が20mLであることを除いて、実施例1と基本的に同様である。
【0036】
実施例5
本実施例のFex/GZIF-8-rGOの調製方法は、ステップ(2)では本実施例の分散液Aの添加量が25mLであることを除いて、実施例1と基本的に同様である。
【0037】
実施例6
本実施例のFex/GZIF-8-rGOの調製方法は、ステップ(2)では本実施例の分散液Aの添加量が30mLであることを除いて、実施例1と基本的に同様である。
【0038】
実施例1により調製されたFex/GZIF-8-rGOの構造特徴:
図1」は、実施例1により調製されたFex/GZIF-8-rGOのSEM図である。Fex/GZIF-8-rGOは、図から明らかなように、層状のグラフェン構造を有し、グラフェン上に粒径サイズ100〜300 nm、典型的な六辺体外観を有するZIF-8金属有機構造体を均一に成長した。
図2」は、実施例1により調製されたFex/GZIF-8-rGOのFe 2p XPSスペクトル図である。Fex/GZIF-8-rGO表面の鉄種は、図から明らかなように、Fe0、Fe2+とFe3+の形式で共存し、ピークフィッティングによりFex/GZIF-8-rGO表面の3種類の価態鉄種の割合は18:45:29と算出された。
図3」は、実施例1により調製されたFex/GZIF-8-rGOの常温メスバウア・スペクトル図である。Fex/GZIF-8-rGO中には、図からさらに明らかなように、α-Fe、γ-Fe、Fe3C、Fe2+xNとFexCyなどの種が含まれ、XPSのテスト結果に対応した。
【表1】
表1にFex/GZIF-8-rGOのFe K階EXAFS振動数値フィッティング結果を示す。Fex/GZIF-8-rGOは、結合長2.53,配位数3.4のFe-Feシェルと結合長2.44,配位数2.0のFe-Oシェルを示し,Fex/GZIF-8-rGOにおける鉄酸化物の存在が確認された。加えて、1つのFe-Nが観測され、その結合長は1.3であり、配位数は3.3であり、FeがZIF-8構造にドープされてFe-N結合が形成されていることが確認された。
【0039】
応用実験:
実施例1により調製されたFex/GZIF-8-rGO試料0.03gを10mg L-1濃度の汚染物水溶液50 mLに投入し、中性を保持している反応条件下で、恒温35°C、空気環境にて、持続磁気撹拌により分解反応を開始させ、異なる時点からサンプリングし、汚染物質の濃度を検出した。
図4図5および図6は、それぞれ実施例1のFex/GZIF-8-rGOが中性条件下で水中の異なる汚染物質に対する分解曲線グラフ、TOC分解グラフおよび反複実験活性評価図である。図4および図5から明らかなように、空気飽和溶液における120分間以内で、Fex/GZIF-8-rGOはビスフェノールA(BPA)と2-クロロフェノール(2-CP)をほぼ全て分解することができ、シプロフロキサシン(CIP)、フェニトイン(PHT)、ブルフェン(IBU)、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)とジフェンヒドラミン(DP)に対する除去率もいずれも40%以上であった。その汚染物質分解過程に対応するTOC除去率も15%〜67%の間にあり、Fex/GZIF-8-rGOは比較的に優れた触媒分解活性と汚染物質への高度適合性を有することを説明した。6回連続運転させた後、図6から明らかなように、Fex/GZIF-8-rGOのビスフェノールAの除去率は85%以上に維持し、かつ、反応過程全体での鉄の放出量は0.18 mg/L未満と少なく、これらの結果は、Fex/GZIF-8-rGOが良好な安定性を有することを十分に説明した。
実施例1〜6により調製されたFex/GZIF-8-rGO試料を10mg L-1のBPA水溶液50 mLに投入し、中性を保持している反応条件下で、恒温35°C、空気飽和条件にて、持続磁気撹拌により分解反応を開始させ、異なる時点からサンプリングし、BPAの濃度を検出した。
図7」は、実施例1〜6により調製されたFex/GZIF-8-rGO触媒は、BPAに対する触媒分解効果である。添加した分散液Aの体積<10mLの場合、鉄種のドープ量が低すぎ、合成されたFex/GZIF-8-rGOの触媒活性が悪い。また、試験結果によると、添加した分散液Aの体積>10mLの場合、鉄種のドープ量が高すぎ、触媒活性が低い。添加した分散液Aの体積=10mLの場合、活性鉄種はZIF-8金属有機構造体に均一にドープされて結合することができ、合成された目標触媒(Fex/GZIF-8-rGO)の汚染物質に対する触媒分解活性および適応性は最も優れたことが分かった。
【0040】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の実施例は、上記実施例により制限されず、本発明の趣旨及び原理を逸脱することなく行われる他の変更、修正、置換、組み合わせや簡略化は、すべて均等な置換方式であり、いずれも本発明の特許範囲に含まれる。
【要約】      (修正有)
【課題】黒鉛化基窒素錯体化のFe(III)-Fe0触媒、その調製方法及び応用の提供。
【解決手段】グラフェンを基材とし、2-メチルイミダゾールおよび亜鉛塩を金属有機構造体前駆体とし、ナノ四酸化三鉄を鉄源とし、ポリビニルピロリドンをバインダーとして、原位置ドープの焙焼工程により目標触媒を合成する。この触媒は常規の条件(空気、室温)にて応用が可能となり、水中のビスフェノールA、2-クロロフェノール、シプロフロキサシン、ジフェンヒドラミン、ブルフェン、フェニトインおよび2,4-ジクロロフェノキシ酢酸などの有機汚染物質に対して接触分解に可能となる。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7