特許第6843441号(P6843441)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6843441コンタクトレンズ用途のための新規なポリマー材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843441
(24)【登録日】2021年2月26日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】コンタクトレンズ用途のための新規なポリマー材料
(51)【国際特許分類】
   C08F 293/00 20060101AFI20210308BHJP
   C08F 220/36 20060101ALI20210308BHJP
   G02C 7/04 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   C08F293/00
   C08F220/36
   G02C7/04
【請求項の数】19
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2018-513760(P2018-513760)
(86)(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公表番号】特表2018-532835(P2018-532835A)
(43)【公表日】2018年11月8日
(86)【国際出願番号】EP2016073407
(87)【国際公開番号】WO2017055536
(87)【国際公開日】20170406
【審査請求日】2019年7月11日
(31)【優先権主張番号】62/284,527
(32)【優先日】2015年10月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518084626
【氏名又は名称】シーアイエス ファーマ アクツィエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】CIS Pharma AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ジェラス,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー,ロルフ
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−222133(JP,A)
【文献】 特表2008−545832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F220/36、220/60
293/00
G02C7/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸基を含む疎水性ブロックと親水性ブロックを含むブロックコポリマーであって、前記ブロックコポリマーは、
(a)以下の(1)〜(4)を含む反応混合物の、疎水性コポリマーが得られる重合、
(1)アミノ酸基を含まない1又は複数の重合性主要モノマー、
(2)YおよびZの少なくとも1つはHではない下記式Iおよび/又は式IIの1又は複数の共主要モノマーであって、

式中:Rは、−H、−CH、−CH−CH、−(CH−CHであり;Xは、−NH(CH−、−NH(CH−、−O−C−CH−、−O−CH−、−O−CH(CH)−、−S−CH−、−NH−C−CH−であり;Yは、H、−CO−C2n+1、−CO−C2m−1、−CO−C2p−3、−CO−C2q−5(ここで、n=4〜22、m=11〜22、p=18〜22、q=18〜22)、又は−CO−コレステンであり;Zは、H、−C2n+1、−C2m−1、−C2p−3、−C2q−5(ここで、n=4〜22、m=11〜22、p=18〜22、q=18〜22)であり;及びAは、−O−又は−NH−である、共主要モノマー、
(3)フリーラジカル開始剤、並びに
(4)所望に応じて、連鎖移動剤(CTA)、
(b)以下の(1)〜(4)を含む反応混合物の、親水性ポリマー又はコポリマーが得られる重合、
(1)前記式I及び/又は式IIであるが、但しY及びZはHであり、Aは−O−である1又は複数の共主要モノマー、
(2)フリーラジカル開始剤、
(3)所望に応じて、アミノ酸基を含まない1又は複数の重合性主要モノマー、及び/または
(4)所望に応じて、連鎖移動剤(CTA)、
によって作製され、
前記2つの重合は、順次に行われ、前記後者の重合の前記反応混合物は、さらに、前記前者の重合から得られた前記ポリマー又はコポリマーを含むブロックコポリマー。
【請求項2】
式I及び/又は式IIのモノマーの総量が、前記ブロックコポリマー中に含まれるすべてのモノマーの1%から49.9%(モル)の範囲内である、請求項1に記載のブロックコポリマー。
【請求項3】
式I及び/又は式IIのモノマーの総量が、前記ブロックコポリマー中に含まれるすべてのモノマーの5%から35%(モル)の範囲内である、請求項2に記載のブロックコポリマー。
【請求項4】
前記ブロックコポリマーが、3から8個の直鎖状のブロックコポリマー鎖を有するマルチアームブロックコポリマーである、請求項1に記載のブロックコポリマー。
【請求項5】
前記ブロックコポリマーが、8から32個の直鎖状のブロックコポリマー鎖が結合されたデンドロン化構造を有する、請求項1に記載のブロックコポリマー。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の浸出性ブロックコポリマーでコーティングされたか、又は請求項1から5のいずれか一項に記載の浸出性ブロックコポリマーを含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項7】
前記浸出性ブロックコポリマーが、最大60日間のレンズ装用中に前記レンズ表面から溶出する、請求項6に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記浸出性ブロックコポリマーが、12〜24時間のレンズ装用中に前記レンズ表面から溶出する、請求項7に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記浸出性ブロックコポリマーが、少なくとも7日間のレンズ装用中に前記レンズ表面から溶出する、請求項7に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項10】
前記浸出性ブロックコポリマーが、5000ダルトンから120000ダルトンの重量平均分子量を有する、請求項6に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項11】
前記浸出性ブロックコポリマーが、前記水和されたレンズ中に含有されるすべてのポリマー材料の0.1%から20%(重量)の量で存在する、請求項6に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の浸出性ブロックコポリマーでコーティングされたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを作製するための方法であって、
(a)前記ブロックコポリマーを作製する工程、及び
(b)シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、工程(a)の前記ブロックコポリマーを含む水性組成物に、前記ブロックコポリマーが前記レンズ中に浸透する条件下で曝露する工程
を含む方法。
【請求項13】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のブロックコポリマーを含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを作製するための方法であって、
(a)前記ブロックコポリマーを作製する工程、及び
(b)工程(a)の前記ブロックコポリマーの存在下で、シリコーンヒドロゲルレンズ形成材料を重合する工程
を含む方法。
【請求項14】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、前記ブロックコポリマーを含む水溶液に、110〜134℃の温度で10〜30分間にわたって曝露される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記水溶液が、0.25〜10%(重量/体積)の濃度で前記ブロックコポリマーを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
装用後の請求項6に記載の前記ブロックコポリマーでコーティングされたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを再生するための方法であって、前記レンズが元々コーティングされていた前記ブロックコポリマーを含むレンズケア溶液中で前記コンタクトレンズをインキュベートすることを含む方法。
【請求項17】
前記レンズケア溶液が、0.15%(重量/体積)から1.5%(重量/体積)のブロックコポリマーを含有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ブロックコポリマーが、すべてのモノマー、マクロマー、及びポリマーの20%(重量)を超えない量で重合中に存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記主要モノマーは、N,N−ジメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、N−ビニル−2−ピロリドンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のブロックコポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿潤剤及び潤滑剤として働く浸出性ポリマー又はコポリマーを含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに関する。このポリマー又はコポリマーは、遊離のアルファ−アミノ基及びアルファ−カルボキシル基を有する側鎖に結合したアミノ酸を有するモノマーを含む。さらに、本発明は、非官能化側鎖結合アミノ酸である親水性モノマー、さらには官能化側鎖結合アミノ酸である疎水性モノマーを含有するコポリマー、好ましくは、ブロックコポリマーに関する。後者のモノマーでは、アミノ酸のアルファ−アミノ基及び/又はアルファ−カルボキシル基が、脂質構造を模倣するために、アルキル又はコレステン残基で官能化されている。前記ブロックコポリマーは、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの表面の湿潤性及び潤滑性を改善し、並びに涙液からの有害な脂質析出物からコンタクトレンズを保護するはずである。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズ表面上に安定で均一な涙膜があることは、良好な視界のための重要な要素である。良好な湿潤特性を有しないコンタクトレンズは、レンズの涙膜をすぐに分裂させ、その結果としての視界の低下を引き起こす。安定なレンズの涙膜はまた、潤滑効果も提供し、レンズ表面上での心地良い瞼の動きをもたらす。湿潤性コンタクトレンズはまた、レンズ表面と角膜との間の連続的な涙膜を安定化する。コンタクトレンズ表面の特性は、生体適合性に影響を与える。湿潤性が悪い又は潤滑性が悪いコンタクトレンズは、特にレンズ表面の一部が乾燥した場合、涙膜の析出物発生を加速させる[1、2]。このような析出物は、涙膜中に存在するタンパク質及び脂質を含み、前記タンパク質及び脂質は、シリコーン及びシリコーン−ヒドロゲルレンズ材料と特に強く結合する傾向にあり、装用時の心地良さ及び視界の低下に繋がる[3][及びその中の参考文献]。
【0003】
摩擦とは、物体の一方が他方の物体上を移動する場合に接触する表面間に発現される抵抗である。摩擦係数は、2つの表面間の摩擦とそれらを押し付ける力との比である。潤滑性は、摩擦の逆である。
【0004】
摩擦係数の高いレンズは、自己免疫反応、眼瞼結膜及び他の眼組織の物理的刺激、並びに場合によっては、著しい不快感を引き起こす。重篤な結果は、コンタクトレンズ乳頭結膜炎(CLPC)の発症である[4、5]。使い捨てレンズの開発により、このような問題は大きく低減された。
【0005】
CLPCの発生は、第一世代のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズで見られた。シリコーンヒドロゲルレンズは、レンズを通しての酸素の輸送を、水ではなくケイ素に依存している。
【0006】
現在、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズにケイ素を提供するために化学者が用いる材料の2つの大きな種類が存在し、それはTRIS[(トリメチルシロキシシリル)プロピルビニルカルバメート]及びシロキシマクロマーである。これまでに、化学を用いて3つの世代のシリコンヒドロゲルレンズが開発された。
【0007】
第一世代シリコーンヒドロゲルレンズは、TRIS分子のいくつかの形態を用い、シロキシマクロマーを含む場合もある。Balafilcon A材料は、99バーラー(barrers)のDk(酸素透過係数、酸素透過性の尺度)を有し、TRISをベースとする手法を利用してケイ素部分を提供している。Bausch&Lombは、TRISの酸化が親水性のガラス質シリケートアイランドを生成することから、レンズ表面のプラズマ酸化時に、TRIS分子を利用した可能性がある。Lotrafilcon Aは、TRISベースのバックボーンに加えて、シロキシマクロマーを用いている。これは、シリコーンヒドロゲル材料の中で最も高いDk(140バーラー)を有し、及び最も高い弾性率も有する。Lotrafilcon Aは、TRIS及び他の親水性モノマーを利用して、独立して段階的に行い、製造業者が共連続相と称する水相及びゲル相の2つの別個の相を有する材料を製造した。これにより、高い酸素透過性、並びに高い水及びナトリウム透過性が可能となる。
【0008】
第二世代レンズは、Tanakaモノマーをベースとしており、元の特許(米国特許第4,235,985号)の期限が切れた後にVistakonが改良したものである。Galyfilcon Aは、Tanakaモノマー、シロキシマクロマー、並びに親水性モノマーである2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)及びN,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)の混合物である。このレンズは、60バーラーというすべてのシリコーンヒドロゲルレンズの中で最も低いDkを有するが、47重量%という非常に高い含水率を有する。Vistakonは、類似のポリマーSenofilcon AをそのAcuvue Oasysレンズに用いている。
【0009】
Comfilcon A(Biofinity、CooperVision)は、最初の第三世代ポリマーであった。TRISベースの誘導体は含まず、この材料の化学に添加されるケイ素はすべて、シロキシマクロマーをベースとしており、これは、レンズのシリコーン及び水の特性を組み合わせる独特の方法である。この材料は、サイズの異なる2つのシロキシマクロマーを用いており、これらは、組み合わせて用いられると、非常に高い酸素透過性を発生させる。このレンズのDkは、128である。Enfilcon A(Avaira,CooperVision)は、元々湿潤性である別の第三世代材料である。Enfilcon A材料は、46%の水を有する。このレンズは、0.5MPaという低い弾性率、及び100のDkを有する。
【0010】
より新しいシリコーンヒドロゲルレンズほど、CLPCの頻度が低下しており、それは、含水率の増加及び表面水分を保持するための方法の導入によって実現される改善された潤滑性に起因するものと見なされる。シリコーンヒドロゲルレンズの導入後に報告される病状としては、眼表面を拭く動きをする上眼瞼縁結膜の組織が帯状に影響を受ける上眼瞼縁結膜の上皮症(lid-wiper epitheliopathy)(LWE)が挙げられる[6]。下眼瞼縁の上にありこれと平行である眼球結膜の無症状の襞である瞼と平行な結膜襞(LIPCOF)は、やはりレンズの最適以下の潤滑性と相関していると思われる関連病状である[7]。
【0011】
潤滑性の増加を実現するために、レンズの湿潤性及び装用中に水分を保持するレンズの能力を高める取り組みが行われた。1つの手法は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、又はヒアルロン酸などの湿潤剤を含めることであった[8]。別の手法は、水分勾配シリコーンヒドロゲルレンズ(water-gradient silicone hydrogel lens)であるDelefilcon Aによって例示される[9、10]。このレンズは、コア部の33%から表面の約80%までの範囲内の含水率を有する。最小限に架橋された薄い親水性ゲル層が、シリコーンヒドロゲルレンズの表面に段階的に存在する。この結果、非常に低い摩擦係数を有する表面が得られる[10]。
【0012】
市販されているコンタクトレンズの中で、Lotrafilcon A及びBレンズの湿潤性は、高い屈折率を有する恒久的な超薄連続親水性プラズマコーティングの形成によって改善された。Balafilcon Aでは、酸化プラズマ処理によって、レンズ表面に親水性シリケートの膜が作られた。Asmofilcon Aの表面処理は、ナノガラス技術を利用するものであった。Delefilcon A(例:Dailies Total 1(登録商標)、DT−1(登録商標)、Alcon)レンズは、2つのヒドロゲル材料から作られており、そのうちの一方は、コアに存在して、含水率は相対的に低いが、高い酸素透過係数を有するシリコーンヒドロゲルであり、他方は、コア材料の表面を覆っている含水率が非常に高いシリコーン非含有ヒドロゲルである。後者の親水性ヒドロゲル層は、これらのレンズの装用時の心地良さを劇的に改善する。Comfilcon A及びEnfilcon Aレンズは、レンズ表面に拡散することによって潤滑効果を有する親水性モノマーを含むシリコーンヒドロゲルから作られている。Galyfilcon A、Senofilcon A、並びにNarafilcon A及びBレンズでは、ポリビニルピロリドンをベースとする長鎖高分子量剤が、内部湿潤剤として作用している。外部湿潤剤は、OptiFree RepleniSH、BioTrue、RevitaLens、又はClearCareを例とする界面活性剤を含有するレンズのケア溶液によって導入される。湿潤性は、保存溶液中に、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、又はポリビニルピロリドンを添加することによっても改善され得る[8、11、12]。上記で述べた外部湿潤剤は、レンズを眼に装用した後1時間足らずでレンズ表面から失われる。
【0013】
上記で概説したように、シリコーンヒドロゲルレンズの潤滑性を高め得る複数の手法が開示されてきたが、これらの手法のほとんどは、例えば、複数工程の非標準的なレンズ製造が必要であること、レンズの加熱殺菌ができないこと、又は低い生体適合性を引き起こすモノマー若しくはポリマーを導入することなどの望ましくない特徴も含んでいる。本発明は、シリコンヒドロゲルレンズのレンズ潤滑性、生体適合性、心地良さ、及び製造を改善し、さらには脂質の析出を効果的に防止するものと考えられる新規な浸出性ポリマー及びコポリマーの種類について記載する。
【発明の概要】
【0014】
本開示の官能化及び非官能化共主要モノマーは、式I及び式IIによって定められ、
【0015】
【0016】
式中、Rは、−H、−CH、−CH−CH、−(CH−CHであり;Xは、−NH(CH−、−NH(CH−、−O−C−CH−、−O−CH−、−O−CH(CH)−、−S−CH−、−NH−C−CH−であり;Yは、H、−CO−C2n+1、−CO−C2m−1、−CO−C2p−3、−CO−C2q−5(ここで、n=1〜22、m=3〜22、p=9〜22、q=15〜22)、又は−CO−コレステンであり;Zは、H、−C2n+1、−C2m−1、−C2p−3、−C2q−5(ここで、n=1〜22、m=3〜22、p=9〜22、q=15〜22)であり;及びAは、−O−又は−NH−である。
【0017】
本開示は、(a)少なくとも1つのビニル系基を有し、アミノ酸残基を含まないことを特徴とする1又は複数の重合性主要モノマー、(b)Y及びZ(式I)、又はZ(式II)がHであり、Aが−O−である式I及び/又は式IIの1又は複数の非官能化共主要モノマー、(c)Y及びZの両方がHというわけではないか(式I)若しくはZがHではない(式II)式I及び/又は式IIの1又は複数の官能化共主要モノマー、(d)フリーラジカル開始剤、並びに所望に応じて(e)連鎖移動剤を含む重合混合物から作製されたコポリマーに関する。
【0018】
本開示の特定の実施形態は、アミノ酸基を含む疎水性及び親水性ブロックを含むブロックコポリマーに関し、このブロックコポリマーは、
(a)アミノ酸残基を含まない1又は複数の重合性主要モノマー、式I及び/又は式IIであるが、但しY及びZのうちの少なくとも1つはHではない1又は複数の共主要モノマー、フリーラジカル開始剤、並びに所望に応じて連鎖移動剤(CTA)を含む反応混合物を重合して疎水性コポリマーを得ること、並びに
(b)式I及び/又は式IIであるが、但しY及びZはHであり、Aは−O−である1又は複数の共主要モノマー、フリーラジカル開始剤、並びに所望に応じて、アミノ酸基を含まない1又は複数の重合性主要モノマー、及び連鎖移動剤(CTA)を含む反応混合物を重合して親水性ポリマー又はコポリマーを得ること、
によって作製され、この2つの重合は、順次に行われ、後者の重合の反応混合物は、さらに、前者の重合から得られたポリマー又はコポリマーを含む。
【0019】
本開示のコポリマー及びブロックポリマー中の式I及び/又は式IIのモノマーの合計量は、コポリマー又はブロックポリマー中に含まれるすべてのモノマーの1%から49.9%(モル)の範囲内である。好ましくは、後者のコポリマー及びブロックポリマー中の式I及び/又は式IIのモノマーの合計量は、コポリマー又はブロックポリマー中に含まれるすべてのモノマーの5%から35%(モル)の範囲内である。最も好ましくは、後者のコポリマー及びブロックポリマー中の式I及び/又は式IIのモノマーの合計量は、すべてのモノマーの5%から20%(モル)の範囲内である。
【0020】
典型的には、本開示のコポリマーは、0.75〜44.9%(モル)の非官能化共主要モノマー、及び0.25〜5%(モル)の官能化共主要モノマーを含む。好ましくは、これらは、4.5〜32%(モル)の非官能化共主要モノマー、及び0.5〜3%(モル)の官能化共主要モノマーを含む。最も好ましくは、これらは、4.75〜17.75%(モル)の非官能化共主要モノマー、及び1.25〜2.25%(モル)の官能化共主要モノマーを含む。本開示の官能化共主要モノマーの非官能化共主要モノマーに対するモル比は、通常、1:2から1:180の範囲内である。好ましくは、本開示の官能化共主要モノマーの非官能化共主要モノマーに対するモル比は、1:4から1:50の範囲内である。最も好ましくは、本開示の官能化共主要モノマーの非官能化共主要モノマーに対するモル比は、1:5から1:10の範囲内である。
【0021】
本開示のコポリマー又はブロックコポリマーは、3〜8個の直鎖状のポリマー鎖、コポリマー鎖、又はブロックコポリマー鎖を有するマルチアームコポリマー又はブロックコポリマーであってよい。コポリマー又はブロックコポリマーはまた、8から32個の直鎖状のポリマー鎖、コポリマー鎖、又はブロックコポリマー鎖が結合されたデンドロン化構造を有していてもよい。
【0022】
本開示のコポリマー及びブロックコポリマーの特定の実施形態では、主要モノマーは、アルファ−、ベータ−不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル又はN−置換若しくは無置換であってよいアミド、N−ビニルラクタム、又は2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸であってよい。
【0023】
他の実施形態では、主要モノマーは、アルキル、シクロアルキル、若しくはアリールのアクリレート又はメタクリレート、一置換若しくは二置換イタコネート、スチレン若しくはスチレン誘導体、アクリロニトリル、ビニルエステル、ビニルエーテル、アリルエステル、又はフッ素若しくはケイ素含有のアクリレート又はメタクリレートである疎水性モノマーであってよい。
【0024】
本開示のコポリマー及びブロックコポリマーのさらなる実施形態では、主要モノマーは、ヒドロゲルを形成することができる2つのモノマーの組み合わせであり、モノマーの組み合わせは、ヒドロキシエチルメタクリレートとメチルメタクリレート、ビニルピロリドンとヒドロキシエチルメタクリレート、ビニルピロリドンとメチルメタクリレート、グリセラールメタクリレート(glyceral methacrylate)とメチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート又はジアセトンアシルアミドとヒドロキシアルキルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート又はジアセトンアシルアミドと2から6個の炭素原子を有するアルキル基によるアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート又はジアセトンアシルアミドとビニルヒドロキシアセテート、ヒドロキシエチルメタクリレート又はジアセトンアシルアミドとビニルヒドロキシプロピオネート、ヒドロキシエチルメタクリレート又はジアセトンアシルアミドとビニルヒドロキシブチレート、ヒドロキシエチルメタクリレート又はジアセトンアシルアミドとN−ビニルラクタム、ヒドロキシエチルメタクリレート又はジアセトンアシルアミドとアミノエチル、1から2個の炭素原子を有するアルキル基によるN−アルキルアミノエチル、又はN,Nジアルキルアミノエチルのメタクリレート及びアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート又はジアセトンアシルアミドと2から4個の炭素原子を有するアルキル基によるヒドロキシアルキルビニルエーテル、ヒドロキシエチルメタクリレート又はジアセトンアシルアミドと1−ビニルオキシ2−ヒドロキシエチレン、ヒドロキシエチルメタクリレート又はジアセトンアシルアミドと1−ビニルオキシ5−ヒドロキシ3−オキサペンタン、ヒドロキシエチルメタクリレート又はジアセトンアシルアミドと1−ビニルオキシ8−ヒドロキシ3,6−ジオキサオクタン、ヒドロキシエチルメタクリレート又はジアセトンアシルアミドと1−ビニルオキシ14−ヒドロキシ3,6,9,12テトラオキサテトラデクタン(tetraoxatetradectane)、ヒドロキシエチルメタクリレート又はジアセトンアシルアミドとN−ビニルモルホリン;ヒドロキシエチルメタクリレート又はジアセトンアシルアミドとアクリルアミド、1から2個の炭素原子を有するアルキル基によるN−アルキルアクリルアミド、又はN,Nジアルキルアクリルアミド;ヒドロキシエチルメタクリレート又はジアセトンアシルアミドと1から2個の炭素原子を有するアルキル基によるアルキルビニルケトン、ヒドロキシエチルメタクリレート又はジアセトンアシルアミドとN−ビニルスクシンイミド又はN−ビニルグルタルイミド、ヒドロキシエチルメタクリレート又はジアセトンアシルアミドとN−ビニルイミダゾール、並びにヒドロキシエチルメタクリレート又はジアセトンアシルアミドとN−ビニル3−モルホリノンから成る群より選択される。
【0025】
他の特定の実施形態では、主要モノマーは、式IVの化合物であってもよく、
【0026】
【0027】
式中:
Rは、H、CH、CH−CH、CH−(CHであり;mは、0〜10であり;Xは、存在しないか、O、S、又はNYであり、ここで、Yは、H、CH、C2n+1(n=1〜10)、イソ−C、C、又はCHであり;Arは、無置換、又はH、CH、C、n−C、イソ−C、OCH、C11、Cl、Br、C、若しくはCHで置換されていてもよいいずれかの芳香族環である。
【0028】
特に、主要モノマーは、2−エチルフェノキシアクリレート、2−エチルフェノキシメタクリレート、2−エチルチオフェニルアクリレート、2−エチルチオフェニルメタクリレート、2−エチルアミノフェニルアクリレート、2−エチルアミノフェニルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、2−フェニルエチルアクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、3−フェニルプロピルアクリレート、3−フェニルプロピルメタクリレート、3−プロピルフェノキシアクリレート、3−プロピルフェノキシメタクリレート、4−ブチルフェノキシアクリレート、4−ブチルフェノキシメタクリレート、4−フェニルブチルアクリレート、4−フェニルブチルメタクリレート、4−メチルフェニルアクリレート、4−メチルフェニルメタクリレート、4−メチルベンジルアクリレート、4−メチルベンジルメタクリレート、2−2−メチルフェニルエチルアクリレート、2−2−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−3−メチルフェニルエチルアクリレート、2−3−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−4−メチルフェニルエチルアクリレート、2−4−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−(4−プロピルフェニル)エチルアクリレート、2−(4−プロピルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルアクリレート、2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルメタクリレート、2−(4−メトキシフェニル)エチルアクリレート、2−(4−メトキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルアクリレート、2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルメタクリレート、2−(2−クロロフェニル)エチルアクリレート、2−(2−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−クロロフェニル)エチルアクリレート、2−(3−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−クロロフェニル)エチルアクリレート、2−(4−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ブロモフェニル)エチルアクリレート、2−(4−ブロモフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−フェニルフェニル)エチルアクリレート、2−(3−フェニルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−フェニルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−フェニルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ベンジルフェニル)エチルアクリレート、又は2−(4−ベンジルフェニル)エチルメタクリレートであってよい。さらに、第一の主要モノマーは、式IVの化合物であってよく、第二の主要モノマーは、親水性モノマーであってよい。後者の実施形態では、第二の主要モノマーは、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−N−エチルアクリレートピロリドン、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート、2−N−ビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド:200モノメチルエーテルモノメタクリレート、ポリエチレンオキシド:200モノメタクリレート、又はポリエチレンオキシド:1000ジメタクリレートであってよい。
【0029】
本開示は、さらに、本明細書で述べるコポリマー又はブロックコポリマーでコーティングされたか、又は前記コポリマー又はブロックコポリマーを含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズにも関する。コポリマー又はブロックコポリマーは、シリコンヒドロゲルレンズ材料と共有結合しておらず、レンズ装用中にレンズから浸出して、レンズ表面を潤滑することができる。具体的な実施形態では、レンズ表面は、最大60日間までにわたって潤滑される。他の具体的な実施形態では、レンズ表面は、少なくとも7日間にわたって潤滑される。なお他の具体的な実施形態では、レンズは、ワンデーレンズであり、コポリマー又はブロックコポリマーは、12〜24時間の間にレンズ表面から溶出する。特定の実施形態では、シリコンヒドロゲルレンズは、5000ダルトンから120000ダルトンの平均分子量を有する本開示のコポリマー又はブロックコポリマーでコーティングされているか、又は前記コポリマー又はブロックコポリマーを含む。他の特定の実施形態では、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの中又は上に存在するコポリマー又はブロックコポリマー分子の少なくとも80%(重量)は、5000ダルトンから120000ダルトンの平均分子量を有する。本開示のコポリマー又はブロックコポリマーでコーティングされたか、又は前記コポリマー又はブロックコポリマーを含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのなお他の特定の実施形態では、コポリマー又はブロックコポリマーは、水和されたレンズ中に含有されるすべてのポリマー材料の0.1%から20%(重量)の範囲内の量で存在する。
【0030】
本開示はまた、本明細書で述べる浸出性コポリマー又はブロックコポリマーでコーティングされたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを作製するための方法も包含する。この方法は、(a)コポリマー又はブロックコポリマーを作製する工程、及び(b)コポリマー又はブロックコポリマーがレンズ中に浸透する条件下で、工程(a)のコポリマー又はブロックコポリマーを含む水性組成物にシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを曝露する工程を含む。この方法の具体的な実施形態では、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、110〜134℃の温度で10〜30分間にわたって、コポリマー又はブロックコポリマーを含む水溶液に曝露される。典型的には、後者の水溶液は、0.25〜10%(重量/体積)の濃度でコポリマー又はブロックコポリマーを含む。本開示のコポリマー又はブロックコポリマーがレンズ全体に分布されるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを作製するための方法は、(a)コポリマー又はブロックコポリマーを作製する工程、及び(b)工程(a)のコポリマー又はブロックコポリマーの存在下で、シリコーンヒドロゲルレンズ形成材料を重合する工程を含む。典型的には、コポリマー又はブロックコポリマーは、すべてのモノマー、マクロマー、及びポリマーの20%(重量)を超えない量で、工程(b)の重合反応中に存在する。
【0031】
また、長時間にわたる装用後のコポリマー又はブロックコポリマーでコーティングされたシリコンヒドロゲルコンタクトレンズを再生するための、レンズが元々コーティングされていたコポリマー又はブロックコポリマーを含むレンズケア溶液中でコンタクトレンズをインキュベートすることを含む方法も包含される。典型的には、レンズケア溶液は、0.15%(重量/体積)から1.5%(重量/体積)のコポリマー又はブロックコポリマーを含有する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】脂質様構造を有するCellophilブロックコポリマー。構造の例が、パネルA及びBに示される。パネルCは、Cellophilブロックコポリマーとシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズとの提案される相互作用の概略を示す。
図2】A:RAFT試薬の一般式。チオカルボニルチオ系連鎖移動剤の主要な4つの種類が、1〜4に示される。B:RAFT重合によって合成された異なる平均分子量(Mw)を有するN,N−ジメチルアクリルアミド/アクリロイル−L−リジン(DMA/AK)コポリマーのゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)測定。
図3】Cellophilコポリマーのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズとの相互作用試験。A:レンズからの異なるCellophilの溶出。異なるCellophilコポリマーでコーティングされたHEMAベースのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズからのコポリマーの放出の経時変化の視覚的表示。コポリマーは、ニンヒドリンで染色されている。B〜D:HEMAベースのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ断面のニンヒドリン染色。Bのレンズは、コーティングされておらず、C及びDのレンズは、それぞれ、Cellophil(HEMA)コポリマー及びCellophil(NIPAAm)コポリマーでコーティングされたものであった。
図4】Cellophilブロックコポリマーでコーティングされたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ(Narafilcon A)の接触角測定。A:未コーティングのままのコンタクトレンズ、又は異なる分子サイズのCellophilブロックコポリマーでコーティングされたコンタクトレンズの接触角。データは、4個のコンタクトレンズについての平均及びSDを示す。B:結果の視覚的表示。
図5】未コーティングのままの、又はCellophilブロックコポリマーMH03、MH04、若しくはMH06でコーティングされたLotrafilcon Bシリコーンヒドロゲルレンズ(Air Optix Aqua(登録商標)、Alcon)の接触角測定。包装溶液から取り出したばかりのDaily total 1(登録商標)(DT−1、Alcon)をレファレンスとして用いた。データは、5個のコンタクトレンズについての平均及びSDを示す。
図6】疑似コーティングされた、又はCellophilブロックコポリマーMH04でコーティングされたLotrafilcon Bシリコーンヒドロゲルレンズ(Air Optix Aqua(登録商標)、Alcon)の摩擦係数のマイクロトライボロジー測定。包装溶液から取り出したばかりのDaily total 1(登録商標)(DT−1、Alcon)及びAir Optix Aquaレンズをレファレンスとして含めた。データは、10個のコンタクトレンズについての平均及びSDを示す。両側t検定によって有意差あり(p=2.97×10−5);**両側t検定によって有意差なし(p=0.06)。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書で用いられる場合、「シリコーンヒドロゲル」又は「シリコーンヒドロゲル材料」の用語は、少なくとも1つのシリコーン含有ビニル系モノマー、シリコーン含有マクロマー、又は架橋性シリコーン含有プレポリマーを含む重合性組成物の共重合によって得られるシリコーン含有ヒドロゲルを意味する。
【0034】
「マクロマー」とは、さらなる重合及び/又は架橋反応を起こすことができる官能基を有する中及び高分子量の化合物又はポリマーを意味する。中及び高分子量とは、典型的には、700ダルトン超の平均分子量を意味する。好ましくは、マクロマーは、エチレン性不飽和基を有し、熱重合又は光重合可能である。
【0035】
「プレポリマー」とは、放射線硬化、熱硬化、又は化学硬化(例:架橋及び/又は重合)して、出発ポリマーよりも高い分子量を有する架橋及び/又は重合ポリマーを得ることができる出発ポリマーを意味する。
【0036】
「モノマー」とは、重合することができる低分子量化合物を意味する。本明細書で用いられる場合、「ビニル系モノマー」とは、エチレン性不飽和基を有する低分子量化合物を意味し、放射線又は熱によって重合することができる。低分子量は、典型的には、800ダルトン未満の分子量を意味する。ポリマーに関して言及される場合、「モノマー」の用語は、ポリマーの最も小さいビルディングブロックを意味する。
【0037】
「ヒドロゲル」とは、水和後に少なくとも10重量パーセントの水を吸収することができるポリマー材料を意味する。
【0038】
本開示の状況において、「浸出性」の用語は、レンズ中に非共有結合的に存在するポリマー又はコポリマーが、レンズ材料からレンズと涙液との間の界面に拡散する能力を表すために用いられる。
【0039】
「コーティング」の用語は、レンズ表面上に、レンズ材料との共有結合による相互作用なしにポリマー又はコポリマーが吸着するプロセスを意味する。ポリマーのサイズ、組成、及び例えば曝露時間、温度、圧力などのコーティングプロセスの条件に応じて、コンタクトレンズ中へのある程度深い浸透が実現され得る。したがって、「コーティング」の用語は、本開示の状況で用いられる場合、吸着だけではなく、含浸のプロセスも含む。
【0040】
「側鎖結合アミノ酸」の用語は、アミノ酸が、側鎖を通して(例:エステル又はアミド結合を通して)アクリロイル基を有する部分と共有結合している分子を意味する。
【0041】
「主要モノマー」及び「共主要モノマー」の用語は、主として、本発明の記述を容易とするために用いられる。主要モノマーとは、アミノ酸基を含まないモノマーを意味し、共主要モノマーとは、アミノ酸基を有するモノマーを意味する(以下で説明されるように、官能化又は非官能化)。さらに、主要モノマー(又は単一の主要モノマー)は、典型的には、本発明のコポリマー中に支配的に存在するモノマーである(存在するすべてのモノマーの50%(モル)以上を占める)。共主要モノマー(又は単一の共主要モノマー)は、典型的には、本発明のポリマー又はコポリマー中に支配的ではなく存在するモノマーである(存在するすべてのモノマーの50%(モル)未満を占める)。
【0042】
「シリコーンヒドロゲルレンズ形成材料」とは、熱硬化、放射線硬化、又は化学硬化(すなわち、重合及び/又は架橋)して、シリコーン含有ポリマーを得ることができる重合性組成物を意味する。レンズ形成材料は、当業者に公知である。本開示において、シリコーンヒドロゲルレンズ形成材料は、少なくとも1つのケイ素含有モノマー又はマクロマーを含む。例示的なシリコンヒドロゲルレンズ形成材料としては、限定されないが、lotrafilcon A、lotrafilcon B、etafilcon A、genfilcon A、lenefilcon A、polymacon、acquafilcon A、balafilcon、senofilcon A、及びcomfilcon Aの反応混合物/製剤が挙げられる。シリコンヒドロゲルレンズ形成材料は、一般的に、重合を開始するための開始剤(例:アセトフェノン型の光開始剤、又はアンモニウムペルオキシド型の熱開始剤)を含み、さらに、視認性着色剤(visibility tinting agent)、UV遮断剤、又は光増感剤などの他の成分を含んでいてもよい。
【0043】
シリコーン含有モノマーの例としては、限定されないが、メタクリロキシアルキルシロキサン、3−メタクリロキシプロピルペンタメチルジシロキサン、ビス(メタクリロキシプロピル)テトラメチル−ジシロキサン、モノメタクリル化ポリジメチルシロキサン、メルカプト末端ポリジメチルシロキサン、N−[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル]アクリルアミド、N−[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル]メタクリルアミド、トリス(ペンタメチルジシロキサニル)−3−メタクリラートプロピルシラン(T2)、及びトリストリメチルシリルオキシシリルプロピルメタクリレート(TRIS)が挙げられる。好ましいシロキサン含有モノマーは、3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランを意味するTRISであり、CAS番号17096−07−0で表される。「TRIS」の用語は、3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランの二量体も含む。
【0044】
ケイ素含有モノマー、開始剤、並びに視認性着色剤、UV遮断剤、及び光増感剤を含む他の所望に応じて含まれてよい成分に加えて、シリコーンヒドロゲルレンズ形成材料は、典型的には、親水性ビニル系モノマーも含む。中でも、好ましい親水性モノマーは、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、トリメチルアンモニウム2−ヒドロキシプロピルメタクリレート塩酸塩、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アリルアルコール、ビニルピリジン、グリセロールメタクリレート、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)、アクリル酸、及びメタクリル酸である。
【0045】
シリコーンヒドロゲルレンズ形成材料はまた、さらなる疎水性モノマー(ケイ素含有モノマーに加えて)も含んでよい。さらなる疎水性ビニル系モノマーを重合性液体組成物に組み込むことによって、得られるポリマーの機械的特性(例:弾性率)が改善され得る。シリコーンヒドロゲルレンズ形成材料は、さらに、浸出性湿潤剤も含んでよい。「浸出性湿潤剤」は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのポリマーマトリックスと共有結合しておらず、レンズと涙液との間の界面に拡散することができる湿潤材料を表す。
【0046】
本開示は、非官能化側鎖結合アミノ酸(遊離アルファ−アミノ基及びアルファ−カルボキシル基を有するアミノ酸)を有するモノマー、さらには脂質構造を模倣するためにアルファ−アミノ基がアルキル残基又はコレステリル残基(又は、アミノアルキル残基若しくはアミノコレステリル残基)で官能化された、及び/又はアルファ−カルボキシル基がアルキル残基(又は、アミノアルキル残基)で官能化された側鎖結合アミノ酸(官能化側鎖結合アミノ酸)を有するモノマーを含む浸出性コポリマーを含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに関する。より具体的な実施形態では、本発明は、非官能化側鎖結合アミノ酸を含む親水性ブロック、さらには官能化側鎖結合アミノ酸を含む疎水性ブロックを有する浸出性ブロックコポリマーを含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに関する。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、装用中に涙膜からタンパク質及び脂質を結合する傾向を有する[3]。後者の官能化側鎖結合アミノ酸は、シリコーンレンズ材料と相互作用することが期待され、その結果、レンズ表面の飽和をもたらし、そして脂質の堆積が防止される。ブロックコポリマーの親水性ブロック中に存在する非官能化側鎖結合アミノ酸は、レンズ表面とは反対側に向くことが期待され、その水分子を結合する高い能力によって、レンズの湿潤性及び潤滑性が高められる。そうして形成された水性層は、レンズの潤滑性を改善し、脂質堆積に対する追加のバリアとして機能する。この原理の説明は、図1に見出すことができる。
【0047】
後者のコポリマー又はブロックコポリマーは、一般名としてCellophilコポリマー又はブロックコポリマーとも称され、修飾語「Cellophil」は、その物質中に側鎖結合アミノ酸が存在することを示す役割を有する。側鎖結合アミノ酸のアミノ酸としては、リジン(K)、チロシン(Y)、セリン(S)、スレオニン(T)、システイン(C)、4−ヒドロキシプロリン(HO−P)、オルニチン(ORN)、及び4−アミノ−フェニルアラニン(HOX)が挙げられる。アミノ酸は、L型若しくはD型、又はラセミ混合物であってもよい。コポリマー又はブロックコポリマーにおいて、単一種類の側鎖結合アミノ酸、又は複数種類の側鎖結合アミノ酸が存在してもよい。例えば、コポリマーは、アクリロイル−L−リジン(AK)及びアクリロイル−L−スレオニン(AT)の両方を含んでいてもよい。アミノ酸含有コポリマー又はブロックコポリマーは、レンズのシリコーンヒドロゲル材料と共有結合せず、レンズ全体か、又はレンズの表面近傍領域内に分散されており、レンズから浸出することができる。
【0048】
典型的には、本開示のアミノ酸含有コポリマー又はブロックコポリマーは、少なくとも1つのビニル系基を有する(及びアミノ酸残基を含まない)ことを特徴とする1又は複数の重合性主要モノマー、式I又は式II(Y及びZは、Hであり、Aは、−O−である)の1又は複数の非官能化共主要モノマー、及び式I又は式II(Y及びZは、両方がHというわけではなく(式I)、又はZは、Hではない(式II))の1又は複数の官能化共主要モノマーを含む。
【0049】
【0050】
式中、Rは、−H、−CH、−CH−CH、−(CH−CHであり;Xは、−NH(CH−、−NH(CH−、−O−C−CH−、−O−CH−、−O−CH(CH)−、−S−CH−、−NH−C−CH−であり;Yは、H、−CO−C2n+1、−CO−C2m−1、−CO−C2p−3、−CO−C2q−5(ここで、n=1〜22、m=3〜22、p=9〜22、q=15〜22)、又は−CO−コレステンであり、並びにZは、H、−C2n+1、−C2m−1、−C2p−3、−C2q−5(ここで、n=1〜22、m=3〜22、p=9〜22、q=15〜22)であり7;並びにAは、−O−又は−NH−である。
【0051】
【0052】
式中、Rは、−H、−CH、−CH−CH、−(CH−CHであり;Zは、H(AがOである場合)、−C2n+1、−C2m−1、−C2p−3、−C2q−5(ここで、n=1〜22、m=3〜22、p=9〜22、q=15〜22)であり;及びAは、−O−又は−NH−である。
【0053】
典型的には、共主要モノマーは、全モノマーの1%(モル)から49.9%(モル)、より好ましくは、5%(モル)から35%(モル)、最も好ましくは、5%(モル)から20%(モル)の量で重合混合物中に存在する。
【0054】
非官能化側鎖結合アミノ酸の合成は、既に報告されている[13]。そのようなモノマーは、リジン、チロシン、セリン、スレオニン、システイン、又は4−ヒドロキシプロリンのアミノ酸銅複合体と、塩化アクリロイル、塩化メタクリロイル、塩化エチル−アクリロイル、又は塩化プロピル−アクリロイルのいずれかとの反応、及びそれに続く硫化水素ガス流又は硫化ナトリウムの酸性溶液による処理によって脱保護モノマーを得ることによって作製することができる。スレオニン、セリン、オルニチン、及びチロシンの場合、最適化された合成プロトコルは、本発明の開発過程で作られた。さらに、非標準的側鎖活性化アミノ酸(4−アミノ−フェニルアラニンを含む)の合成のための新規な経路も確立された。プロトコルはすべて、実施例に開示される。官能化側鎖結合アミノ酸の合成についても、実施例に記載される。
【0055】
2つ以上の種類の式I及び/又は式IIの共主要モノマー、並びに1又は複数種類の主要モノマーを含むコポリマーは、典型的には、適切な溶媒中で作製され、溶媒の選択は、対応するモノマーの溶解性に依存する。主要モノマー及び共主要モノマー、並びにフリーラジカル開始剤を含む重合混合物は、制御されたラジカル重合技術が用いられる場合、連鎖移動剤(CTA)も含む。この混合物は、次に、適切な容器又は金型中に注ぎ入れられ、そこで重合が誘発される。開始剤は、熱開始剤、レドックス開始剤、又は光開始剤であってよい。典型的な熱フリーラジカル開始剤としては、ベンゾフェノンペルオキシドなどのペルオキシド、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートなどのペルオキシカーボネート、又はアゾビスイソブチロニトリルなどのアゾニトリルが挙げられる。好ましい熱開始剤は、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートである。水溶液中での重合に適するレドックス開始剤は、過硫酸アンモニウムを例とするペルオキシドであり、これは、テトラメチルエチレンジアミン(TMDEA又はTEMED)を例とする触媒との反応によって不安定化される。別の選択肢として、モノマーは、アクリル系モノマーの重合を開始することができる波長の放射線に対して透過性である容器又は金型中で光重合されてもよい。ベンゾフェノン型光開始剤を例とする光開始剤化合物が、重合を促進するために導入されてもよい。より長い波長の使用を可能とするために、光増感剤も導入されてよい。用いられる開始剤化合物に応じて、重合は、加熱、放射線、又は触媒の添加によって開始される。
【0056】
ある実施形態では、例えば、強い求核剤が重合方法又はその後のポリマー誘導体修飾に干渉する場合、アミノ酸のアルファ−アミノ基を、対応する側鎖結合アミノ酸の合成の過程で保護することが必要であり得る。これらの実施形態の状況における「ポリマー誘導体修飾」の用語は、元のポリマーの重合度を変化させることなく特定の化学官能基を変換するためにポリマー鎖に沿って行われる反応を意味する。保護基の除去も、ポリマー誘導体修飾として理解される。
【0057】
好ましい保護基は、フルオレニルメトキシカルボニル(FMOC)及びtert−ブチルオキシカルボニル(BOC)であり、これらの基は、重合後、ジメチルホルムアミド、及びそれぞれピペリジン(8:1)[FMOC]又はトリフロロ酢酸(TFA)[BOC]中での脱保護によって除去することができる。これらの実施形態における共主要モノマーのα−アミノ基に対する他の適切な保護基としては、限定されないが、(Cbz)[カルボキシベンジル]、Moz[p−メトキシベンジルカルボニル]、Bsmoc[1,1−ジオキソベンゾ[b]チオフェン−2−メトキシカルボニル]が挙げられる。
【0058】
本開示のコポリマーは、コンタクトレンズに導入されることを意図していることから、一般的には、重合後にコポリマーを精製することが好ましい。この工程は、そうでなければコポリマー含有レンズからレンズ装用者の眼及び周囲組織中へ浸出する可能性のある残留開始剤、モノマー、又は触媒を含む有害な可能性のある成分を除去する。本発明のコポリマーに対する好ましい精製法は、透析、キャピラリー限外ろ過(capillary ultrafiltration)、又は純溶媒中での沈澱及び続いての溶解の繰り返しである。
【0059】
コンタクトレンズからの放出の速度が、コポリマー又はブロックコポリマーのサイズに依存することから、本開示のコポリマー又はブロックコポリマーは、狭いサイズ分布を有することが重要である。狭いサイズ分布を得るためには、重合プロセス中のフリーラジカルの数を制御する必要がある。これは、原子移動ラジカル重合(ATRP)、ニトロキシド媒介重合(NMP)、又は可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT重合)を含む重合技術を用いることによって実現することができる。RAFTは、広範囲のモノマー、特にアクリル系との適合性を有し、水性系で行うことができることから、本明細書で述べるコポリマーにおいて最も好ましい技術である。さらに、RAFT重合は、ブロックコポリマーの作製に用いることができる。RAFT技術は、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の研究グループによって1998年に発明された[14]。重合の制御は、成長ポリマー鎖から連鎖移動剤への連鎖移動反応を介して実現される。このいわゆるRAFT剤は、中間体を形成し、成長鎖上のラジカルと別のRAFT剤とに開裂することができる。その結果、ラジカルの数が限定され、すべての成長ポリマー鎖が類似の成長の可能性を有し、狭いサイズ分布のコポリマーが得られることになる。RAFT重合で得られる典型的な多分散指数(PDI)[D=M/M、Mは、ポリマーの重量平均モル質量であり、Mは、ポリマーの数平均モル質量である]は、1.05から1.4の範囲内である。
【0060】
本明細書で開示されるコポリマーのRAFT重合における適切な連鎖移動剤は、チオカルボニルチオ化合物である。チオカルボニルチオ化合物は、4つの主要な種類、すなわち、ジチオベンゾエート、トリチオカーボネート、ジチオカルバメート、及びキサンテートに分けられ得る(図2)。RAFT重合は、本発明の明確に定められたブロックコポリマーの合成に特に有用である。反応混合物中のすべてのモノマーが消費された後、各ポリマー鎖は、依然として活性な連鎖移動剤(CTA)基を有する。これらの活性ポリマー鎖は、したがって、マクロ−CTAと定義され得る。新しいモノマー及び開始剤が反応混合物に添加されると、重合が再度開始され、第二のポリマーブロックが付加される結果となる。この段階的なプロセスが、所望されるポリマー構造が得られるまで繰り返されてよい。典型的には、前に行われた重合反応の副生物が、次の重合プロセスに干渉する可能性があることから、反応混合物は、第二のモノマー種(又は第二セットのモノマー種)が添加される前に精製される。コポリマー/マクロ−CTAに対する一般的な精製法は、限定されないが、透析、キャピラリー限外ろ過、沈澱、及び分取用ゲル浸透クロマトグラフィが挙げられる。
【0061】
意図する用途に応じて、本開示のコポリマーは、異なる構造を有していてよく、例えば、それらは、直鎖状コポリマー(統計的共重合又はブロック共重合による)、又はマルチアームコポリマーであってよい。単一の分岐点から複数の直鎖状ポリマー/コポリマー鎖又はアームがそれぞれ生ずるこれらのマルチアーム又は星形Cellophilコポリマーは、同じサイズの直鎖状コポリマーとは異なる粘弾性を有する(例:多くの場合、低い粘度を有する)。コア構造に応じて、直鎖状ポリマー/コポリマーアームの数は、通常は3から8の範囲内である。デントロン化(Dentronized)コポリマー又はデントリマー(dentrimers)は、はるかに多い数のアームを有し得る。これらのコポリマー構造は、2つの異なる合成経路によって得ることができ、直鎖状Cellophilコポリマーがまず合成され、続いてコア構造に結合されるアームファースト手法(arm-first approach)、又は直鎖状ポリマー/コポリマー鎖を、RAFT剤が結合されたコアを例とする前駆体構造上に直接成長させるコアファースト手法(core-first approach)である。
【0062】
式I又はIIの共主要モノマーは、1又は複数の主要モノマーと共重合される。親水性主要モノマーとしては、例えば、アルファ−、ベータ−不飽和カルボン酸のN−置換及びN−無置換のいずれであってもよいヒドロキシアルキルエステル及びアミド(例:N−イソプロピルアクリルアミド)、N−ビニルラクタム、並びに2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が挙げられる。本発明において有用であるアルファ−、ベータ−不飽和酸は、アクリル酸、クロトン酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、又はフマル酸である。ヒドロキシアルキルエステルを形成する多官能性アルコールとしては、グリコール、グリセロール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、及び他の多価アルカノール、2から12個の炭素原子のジアルキレングリコール、並びにポリアルキレングリコールが挙げられる。ポリアルキレングリコールは、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、及びヘキサエチレングリコールに例示される。好ましい親水性モノマーとしては、ヒドロキシアルキルエステル、具体的には、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)が挙げられる。適切な疎水性主要モノマーとしては、シクロアルキルエステル、tert−ブチルスチレン、多環式アクリレート、又はメタクリレート、並びにこれらの混合物が挙げられる。より詳細には、多環式アクリルは、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンタンジエニルアクリレート、ジシクロペンタンジエニルメタクリレート、アダマンチルアクリレート、アダマンチルメタクリレート、イソピノカンフィルアクリレート、イソピノカンフィルメタクリレートなど、並びにこれらの混合物であってよい。シクロアルキルエステルモノマーは、以下の式IIIである(特許第4,668,506号からの式I)。これらのシクロアルキルエステルの実例は、メンチルメタクリレート、メンチルアクリレート、tert−ブチルシクロヘキシルメタクリレート、イソヘキシルシクロペンチルアクリレート、及びメチルイソペンチルシクロオクチルアクリレートである。
【0063】
【0064】
式中、Dは、3から6個の炭素原子の分岐鎖状又はノルマルアルキルであり、Eは、H又はCHであり、Zは、H又はCHであり、nは、3から8の整数である。
【0065】
少なくとも1つのシリコーン又はフッ素原子を組成の一部として有するモノマーを含む他の公知の疎水性モノマーが、本開示のコポリマーの製剤中の主要モノマーとして用いられてもよい。疎水性モノマーとしては、アルキル(2から22個の炭素原子の鎖長)、シクロアルキル、及びアリールのアクリレート及びメタクリレート、並びに一置換又は二置換イタコネート、スチレン及びその誘導体、アクリロニトリル、酢酸ビニル又はペンタセチルグルコン酸ビニルなどのビニルエステル、ビニルブチルエーテルなどのビニルエーテル、酢酸アリル、プロピオン酸アリル、又は酪酸アリルなどのアリルエステル、オクタフルオロペンチルメタクリレートなどのフッ素含有モノマー、並びに1,1,1−トリス(トリメトキシシロキシ)−3−メタクリロキシプロピルシラン又はヘプタメチルトリシロキサニルエチルアクリレートを例とするシリコーン含有モノマーが挙げられる。
【0066】
好ましくは、本開示のアミノ酸含有コポリマーは、それらが中に導入されるか、又はコーティングするシリコーンヒドロゲルレンズ材料よりも高い含水率を有する。より好ましくは、それらの含水率は、30%から90%であり、最も好ましくは、50%から80%である。
【0067】
ヒドロゲルコポリマーを作製するための式I及び/又は式IIの共主要モノマーの存在下で共重合されてよい主要モノマーの適切な組み合わせは、ヒドロキシエチルメタクリレートとメチルメタクリレート、ビニルピロリドンとヒドロキシエチルメタクリレート又はメチルメタクリレート;グリセラールメタクリレートとメチルメタクリレート;ヒドロキシエチルメタクリレート/ジアセトンアシルアミドと2から22個の炭素原子を含むアルキル基によるヒドロキシアルキルメタクリレート、アクリレート;ビニルヒドロキシアセテート、ビニルヒドロキシプロピオネート、ビニルヒドロキシブチレート;N−ビニルラクタム、すなわち、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、及びN−ビニルピペリドン;アミノエチル、1から2個の炭素原子を有するアルキル基によるN−アルキルアミノエチル、又はN,Nジアルキルアミノエチルメタクリレート及びアクリレート;2から4個の炭素原子を有するアルキル基によるヒドロキシアルキルビニルエーテル;1−ビニルオキシ2−ヒドロキシエチレン、1−ビニルオキシ5−ヒドロキシ3−オキサペンタン、1−ビニルオキシ8−ヒドロキシ3,6−ジオキサオクタン、1−ビニルオキシ14−ヒドロキシ3,6,9,12テトラオキサテトラデカン;N−ビニルモルホリン;アクリルアミド、1から2個の炭素原子を有するアルキル基によるN−アルキルアクリルアミド、又はN,Nジアルキルアクリルアミド;1から2個の炭素原子を有するアルキル基によるアルキルビニルケトン;N−ビニルスクシンイミド及びN−ビニルグルタルイミド;N−ビニルイミダゾール;並びにN−ビニル3−モルホリノンを含む。
【0068】
シリコーンヒドロゲルレンズ形成材料中に導入するために、又はそのような材料から形成されたレンズをコーティングするために適するのは、さらに、式I及び/又は式IIのモノマー(このうち、少なくとも1つは、非官能化共主要モノマーであり、別の方は、官能化共主要モノマーである)、並びにヒドロキシエチルメタクリレート及びメチルメタクリレートのコポリマーである。他のコポリマーでは、ヒドロキシエチルメタクリレートとメチルメタクリレートとの組み合わせが、ビニルピロリドンとヒドロキシエチルメタクリレート又はメチルメタクリレート;グリセラールメタクリレートとメチルメタクリレート;ヒドロキシエチルメタクリレート/ジアセトンアシルアミドと、2から6個の炭素原子を有するアルキル基によるヒドロキシアルキルメタクリレート及びアクリレート;ビニルヒドロキシアセテート、ビニルヒドロキシプロピオネート、ビニルヒドロキシブチレート;N−ビニルラクタム、すなわち、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、及びN−ビニルピペリドン;アミノエチル、1から2個の炭素原子を有するアルキル基によるN−アルキルアミノエチル、又はN,Nジアルキルアミノエチルメタクリレート及びアクリレート;2から4個の炭素原子を有するアルキル基によるヒドロキシアルキルビニルエーテル;1−ビニルオキシ2−ヒドロキシエチレン、1−ビニルオキシ5−ヒドロキシ3−オキサペンタン、1−ビニルオキシ8−ヒドロキシ3,6−ジオキサオクタン、1−ビニルオキシ14−ヒドロキシ3,6,9,12テトラオキサテトラデクタン;N−ビニルモルホリン;アクリルアミド、1から2個の炭素原子を有するアルキル基によるN−アルキルアクリルアミド、又はN,Nジアルキルアクリルアミド;1から2個の炭素原子を有するアルキル基によるアルキルビニルケトン;N−ビニルスクシンイミド及びN−ビニルグルタルイミド;N−ビニルイミダゾール;並びにN−ビニル3−モルホリノンなどの様々な他のモノマーとに置き換えられてもよい。
【0069】
本発明の他の(ヒドロゲル)コポリマーは、式I及び/又は式IIの共主要モノマー(このうち、少なくとも1つは、非官能化共主要モノマーであり、別の方は、官能化共主要モノマーである)、並びに1又は複数の式IVの主要モノマーの共重合によって作製することができる。
【0070】
【0071】
式中:
Rは、H、CH、CH−CH、CH−(CHであり;mは、0〜10であり;Xは、存在しないか、O、S、又はNYであり、ここで、Yは、H、CH、C2n+1(n=1〜10)、イソ−C、C、又はCHであり;Arは、無置換、又はH、CH、C、n−C、イソ−C、OCH、C11、Cl、Br、C、若しくはCHで置換されていてもよいベンゼンなどのいずれかの芳香族環である。
【0072】
式IVの適切なモノマーとしては、限定されないが、2−エチルフェノキシメタクリレート、2−エチルチオフェニルメタクリレート、2−エチルアミノフェニルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、3−フェニルプロピルメタクリレート、3−プロピルフェノキシメタクリレート、4−ブチルフェノキシメタクリレート、4−フェニルブチルメタクリレート、4−メチルフェニルメタクリレート、4−メチルベンジルメタクリレート、2−2−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−3−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−4−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−(4−プロピルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルメタクリレート、2−(4−メトキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルメタクリレート、2−(2−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ブロモフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−フェニルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−フェニルフェニル)エチルメタクリレート)、2−(4−ベンジルフェニル)エチルメタクリレート、及び対応するアクリレートが挙げられる。少なくとも2つの式I及び/又は式IIのモノマー(このうち、少なくとも1つは、非官能化共主要モノマーであり、別の方は、官能化共主要モノマーである)、少なくとも1つの式IVのモノマー、及び親水性モノマーを含むコポリマーがより適するものであり得る。適切な親水性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート;2−N−エチルアクリレートピロリドン;2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート;2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート;2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート;2−N−ビニルピロリドン;ポリエチレンオキシド:200モノメチルエーテルモノメタクリレート;ポリエチレンオキシド:200モノメタクリレート;ポリエチレンオキシド:1000ジメタクリレートが挙げられる。本発明での使用が好ましい親水性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート;及びポリエチレンオキシド:1000ジメタクリレートである。
【0073】
本発明のコポリマーの、重合されたシリコーンヒドロゲル材料又はそのような材料から形成されたレンズへの導入は、重合された材料又はレンズを本発明のコポリマーを含有する溶液/懸濁液に曝露させること(コーティング)によって行われてよい。効率を高めるために、後者の曝露は、典型的には、適切な継続時間にわたって高められた温度で行われる。典型的な手順は、110〜134℃での約10〜30分間にわたるオートクレーブ処理を含み、続いて、より低い温度での後インキュベーションが行われても、又は行われなくてもよい。別の選択肢として、本発明のコポリマーは、重合の過程でシリコーンヒドロゲルレンズ形成材料中に導入されてもよく、すなわち、本発明のコポリマー(いかなる反応性結合又は基も含まない)は、シリコーンヒドロゲルレンズ形成反応混合物の成分であってもよい。
【0074】
そのように充填されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、レンズの表面及び裏面をレンズ装用の意図する期間にわたって潤滑された状態で維持する速度で、アミノ酸含有コポリマー(又はブロックコポリマー)を溶出又は浸出させる。本開示のコポリマー又はブロックコポリマーの機能持続期間を延長する目的で、例えば、装用期間が数週間から数か月のレンズの場合、新しいコポリマー又はブロックコポリマーでシリコーンヒドロゲルレンズを再コーティングすることが有用であり得る。これは、少ないパーセントの(例:0.15〜1.5%(重量/体積))本発明のコポリマー又はブロックコポリマーを含有するレンズケア溶液中に、通常は一晩、レンズをインキュベートすることによって実現され得る。
【0075】
潤滑効果、さらには潤滑効果が装用者の眼で維持され得る継続期間の長さは、いくつかの因子に依存し、前記因子としては、アミノ酸含有コポリマーの分子量、レンズ中(又はレンズの領域中)のアミノ酸含有コポリマーの濃度、レンズ中のアミノ酸含有コポリマーの分布、及びアミノ酸含有コポリマーの組成が挙げられる。アミノ酸含有コポリマーの組成に関して、存在する共主要モノマーのレベル及び性質の両方、並びに主要モノマーの性質が重要である。後者のパラメーターは、対象となるレンズに対して最適化される。
【0076】
レンズの意図する装用期間にわたって持続する所望されるレベルの潤滑性に到達するために、所望される結果が得られるまで、上述したパラメーターが系統的に変動される。典型的には、実験用レンズが、まず生体外で試験され、続いて、動物及びヒト対象で試験される。生体外の方法は、湿潤性を測定する方法を含む。湿潤性の尺度は、セシルドロップ法(sessile drop technique)、キャプティブバブル法(captive bubble technique)、又はウィルヘルミーバランス法(Wilhelmy balance method)[1、15]を含むいくつかの方法によって特定することができる接触角である。
【0077】
潤滑性を測定するより直接的な手法は、ヒドロゲルコンタクトレンズの摩擦を評価することを含み、前記摩擦から潤滑性の評価を誘導することができる[16]。ヒドロゲルコンタクトレンズの摩擦及び潤滑性の測定方法は、例えば、[17]に報告された。
【0078】
有用なパラメーター値を定めることは、パラメーターの数が限定的であること、及びいくつかのパラメーター値の好ましい範囲が公知であることの両方から、典型的には、過度な労力を必要としないことには留意されたい。アミノ酸含有コポリマー中の共主要モノマーのレベルは、好ましくは、重合混合物中に存在するすべてのモノマーの5%(モル)から35%(モル)、最も好ましくは、5%(モル)から20%(モル)である。アミノ酸含有コポリマーの平均分子量は、一般的には、5000から120000ダルトン、好ましくは、5000から30000Da、最も好ましくは、5000から12000Daである。
【実施例】
【0079】
注記:側鎖結合アミノ酸の合成に関する例において、名称は、まずUPAC命名法で与えられる。その後、略称が用いられる。表1は、その対応を示す。
【0080】
【0081】
例1:銅複合体を介する(S)−6−アクリルアミド−2−アミノヘキサン酸モノマーの合成
L−リジン(14.62g;100mmol)を、150mlの脱イオン水に溶解し、約80℃に加熱した。炭酸銅(16.6g;75mmol)を、30分間にわたって少しずつ添加した。この反応液を、さらに30分間撹拌した。この高温の深青色懸濁液を、シリカゲルを通してろ過した。フィルターを少量の水で洗浄した。翌日、1つにまとめたリジン銅複合体含有ろ液を、氷浴中で冷却し、100mlのテトラヒドロフラン(THF)を添加した。メチル−tert−ブチルエーテル(TBME)中の塩化アクリロイルの溶液(8.9ml、110mmol)を、1時間にわたって滴下した。pHは、最初、10%水酸化ナトリウム溶液を並行して滴下することで8から10に維持した。塩化アクリロイル溶液の半分を添加した後、生成物が沈澱し始めた。塩化アクリロイルのほとんどを添加した時点で、水酸化ナトリウムの添加速度を落として、pHを約6に低下させ、反応混合物の温度を、室温に到達させた。青色懸濁液を、さらに2時間にわたって撹拌し、次にろ過した。フィルター上に保持された固体物を、水及びアセトンで洗浄し、次に乾燥した。収量6.5gのアクリロイル−L−リジン銅複合体を得た。
【0082】
アクリロイル−L−リジン銅複合体(29.5g)を、300mlの脱イオン水中に懸濁し、氷浴中で冷却した。硫化銅の沈澱が完了するまで、HSガスをこの懸濁液中にバブリングした。3グラムの活性炭を懸濁液に添加した。懸濁液を僅かの間100℃に加熱した。室温に冷却後、500mlのアセトンを懸濁液に添加し、次にこの懸濁液をシリカゲルでろ過した。透明なろ液をロータリーエバポレーターに入れた。溶媒の蒸発後、固体生成物を、200mlの50%アセトン水溶液から再結晶した。収量17.76g(69.76%)の白色粉末を得た。この化合物の構造を、NMR及びLC−MS分光分析で確認した。
【0083】
例2:(2S)−3−(アクリロイルオキシ)−2−アミノプロパン酸の合成
水(50ml)中のL−セリン(5g、47.6mmol)の溶液を80℃に加熱し、固体炭酸銅(5.79g、26.2mmol)を添加した。この溶液を10分間撹拌した。続いて、未溶解の残渣をろ過によって回収し、水(30ml)で洗浄した。1つにまとめたろ液を氷浴中で冷却し、KOH(27.1ml、47.6mmol)をゆっくり添加した。この溶液に、アセトン(30ml)中の塩化アクリロイル(4.52ml、59.5mmol)の混合物を滴下した。次に、この反応混合物を、撹拌しながら4℃で一晩インキュベートした。形成された固体を単離し、水(50ml)/メタノール(50ml)/エチル−tert−ブチルエーテル(50ml)(MTBE)で洗浄し、最後に減圧乾燥して、O−アクリロイル−l−セリン−Cu2+複合体を得た(3.8g、10.01mmol;収率42.1%)。続いて、この複合体中の銅を、例1で述べた手順に類似の手順によって除去した。収量1.43g(45%)のアクリロイル−L−セリンを白色粉末として得た。NMR及びLC−MS分光分析によって化合物の同定を確認した。
【0084】
例3:(2S)−3−(アクリロイルオキシ)−2−アミノブタン酸の合成
6mlのトリフルオロ酢酸(TFA)を入れた反応容器を氷浴で冷却した。続いて、固体L−スレオニン(2.00g、16.79mmol)を添加し、この混合物を5分間撹拌した。トリフルオロメタンスルホン酸(0.18ml、2.0mmol)を、続いて塩化アクリロイル(2.5ml、32.9mmol)を添加し、この反応混合物を室温で2時間インキュベートした。反応の完了後、生成物をメチル−tert−ブチルエーテル(MTBE)で沈澱させた。固体の単離後、生成物をMTBE及びアセトンで洗浄した。最後にO−アクリロイル−L−スレオニン塩酸塩を減圧乾燥して、白色粉末を得た(収率32.4%)。NMR及びLC−MS分光分析によって化合物の構造を確認した。
【0085】
例4:(S)−3−(4−(アクリロイルオキシ)フェニル)−2−アミノプロパン酸の合成
O−アクリロイル−L−チロシン−Cu2+複合体の合成を、例1で述べた手順に従って行った。複合体からの銅の除去は以下の手順で行った:73.15g(140mmol)のO−アクリロイル−L−チロシン−Cu2+複合体を、粉砕皿中で220mlの2N HCLに溶解した。この混合物を、Polytron(登録商標)PT 3000装置を用いてホモジナイズした。続いて、この混合物をろ過し、残渣を、50mlの2N HCLで2回洗浄した。次に、固体化合物を、NaOH上、40℃で減圧乾燥して、O−アクリロイル−L−チロシン塩酸塩を得た(46.96g、収率63%)。
【0086】
例5:(S)−2−(4−アクリルアミドフェニル)−2−アミノ酢酸の合成
Boc−4−アミノ−L−フェニルアラニン(2.50g、8.9mmol、Anaspec、Fremont、CA)を、25mlのクロロホルムに溶解した。トリエチルアミン(2.47ml、17.8mmol)をこの溶液に加え、この混合物を−15℃に冷却した。続いて、クロロホルム中の塩化アクリロイル(0.79ml、9.8mmol)を、撹拌しながらこの混合物に滴下した。塩化アクリロイルの添加完了後、この反応混合物をさらに3時間撹拌した。その後、反応混合物をガラスフィルターに通し、保護された(S)−2−(4−アクリルアミドフェニル)−2−アミノ酢酸をカラムクロマトグラフィで精製し、残留溶媒を蒸発させた。保護された(S)−2−(4−アクリルアミドフェニル)−2−アミノ酢酸(500mg、1.5mmol)を5mlのジクロロメタン(DCM)に溶解した。トリフルオロ酢酸(TFA)(800μl、10.38mmol)を添加し、この溶液を室温で1時間撹拌した。その後、溶媒を減圧除去し、5mlのDCMを添加し、溶媒を再度減圧除去した。この手順を数回繰り返した。最後に、生成物を3mlのDCMに溶解し、メチル−tert−ブチルエーテル(MTBE)で沈澱させた。この固体をガラスフィルターで回収し、真空乾燥して、純粋なアクリロイル−4−アミノ−L−フェニルアラニンを15%の収率で得た。NMRによって化合物の構造を確認した。
【0087】
例6:(2S)−4−(アクリルロイルオキシ)ピロリジン−2−カルボン酸及び(R)−3−(アクリロイルチオ)−2−アミノプロパン酸の合成
これらの化合物の合成を、例1で述べたようにして行った。(2S)−4−(アクリルロイルオキシ)ピロリジン−2−カルボン酸及び(R)−3−(アクリロイルチオ)−2−アミノプロパン酸に対する出発物質は、それぞれ、4−ヒドロキシ−L−プロリン及びL−システインであった。
【0088】
例7:Fmoc−アクリルロイル−リジンの合成
アクリルロイル−L−リジン(10g)を、10%(重量/体積)炭酸ナトリウム水溶液の106mlに溶解し、この溶液を100mlのジオキサンで希釈した。50mlのジオキサンに溶解したFmoc−塩化物(14g)を、15〜25℃で、30分間にわたってこの反応混合物に添加した。この反応混合物を室温で3時間撹拌し、次に、10%のHCl水溶液でpH2に調節した。酢酸エチルで抽出した後、有機相を蒸発乾固させた。得られた透明の黄色がかったオイル(21.4g)を、200gのシリカゲルクッション上に載せ、酢酸エチルで洗浄した。生成物を、3:1(体積/体積)の酢酸エチル/メタノールを用いてシリカゲルから抽出した。溶媒の蒸発後、白色粉末(10.4g、収率50%)を得た。NMRによって化合物の構造を確認した。
【0089】
例8:Fmoc−アクリルロイル−L−セリン、Fmoc−アクリルロイル−L−スレオニン、Fmoc−アクリルロイル−L−チロシン、Fmoc−アクリルロイル−L−オキシプロリン、及びFmoc−アクリルロイル−L−システインの合成
これらの化合物の合成を、例7で述べたようにして行った。
【0090】
例9:アルファ−アミノ保護されたアミノ酸及び脱保護されたアミノ酸のメタクリル/エチルアクリル/プロピルアクリル誘導体の合成
メタクリル/エチルアクリル/プロピルアクリル誘導体の合成を、塩化メタクリロイルを例とする対応する酸塩化物を用い、例1から8で述べた条件下で行った。
【0091】
例10:(S)−6−アクリルアミド−2−パルミトアミドヘキサン酸の合成
以下の手順は、側鎖結合アミノ酸の遊離アルファアミノ基を脂肪酸で官能化するための一般的合成経路を表す。
【0092】
パルミチン酸(5g、19.5mmol)を塩化チオニル(2.12ml、29.2mmol)に溶解した。この反応混合物を、還流下、気体の形成が止まるまで加熱した。続いて、過剰の塩化チオニルを真空除去して、塩化パルミトイルを得た(5.36g、19.50mmol;収率100%;黄色オイル)。次に、塩化パルミトイル(5.36g、19.5mmol)を、水/THF混合物(5/2、70ml)中のアクリロイル−L−リジン(3.90g、19.50mmol)及び炭酸水素ナトリウム(3.1g、29.3mol)の溶液に添加した。この混合物を撹拌しながら一晩インキュベートした。続いて、Nε−アクリロイル−Nα−パルミチル−L−リジンを、エタノール/TBMEからの再結晶によって精製し、化合物の同定をNMR(H、13C)で確認した(収率55%)。
【0093】
例11:(S,E)−6−アクリルアミド−2−オクタデカ−9−エンアミドヘキサン酸の合成
例10と同じ手順を用いて、アクリロイル−L−リジンのα−アミノ基をオレイン酸で官能化し、不飽和脂肪酸鎖を有するモデル化合物を作製した。
【0094】
例12:Nε−アクリロイル−Nα−コレステン−3β−カルボキシル−L−リジンの合成
コレステロールを、[18]に記載の手順によってコレステロール酸に変換した。続いて、コレステロール酸を用い、例10で述べた通りのプロトコルを用いて、アクリロイル−L−リジンのα−アミノ基を官能化した。
【0095】
例13:フリーラジカル重合を用いたHEMA/アクリロイル−L−リジンコポリマーの合成
200mlの反応容器中、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)(2.6g、20mmol)及びアクリロイル−L−リジン(4g、20mmol)を100mlの脱イオン水に溶解した。この溶液を超音波浴で脱気した。過硫酸アンモニウム(APS)(300mg、1.43mmol)及びテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)(0.1ml、0.66mmol)を、脱気した溶液に添加した。室温で4時間重合を行い、反応容器を4℃に冷却することによって重合を停止した。得られたコポリマーを、3.5kDa分子量カットオフ(MWCO)の透析管を用いた脱イオン水に対する充分な透析によって精製した。精製されたコポリマーを凍結乾燥し、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によってその分子量を推定した。この方法の詳細な記述は、例14に提示する。
【0096】
例14:RAFT重合を用いたサイズの異なるDMA/アクリロイル−L−リジンコポリマーの合成
N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)(0.312ml、3.03mmol)及びアクリロイル−L−リジン(67mg、0.336mmol)を、水溶性RAFT剤(2−(エチルチオカルボノチオイルチオ)−2−メチルプロパン酸)(7.62mg、34μmol、RAFT剤対モノマーのモル比:1:100)を含有する脱イオン水15ml中に溶解した。この混合物を超音波浴を用いて脱気した。2,2アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル))二塩酸塩(RAFT剤モル量に対して1/5の開始剤モル量;2.2mg、6.8μmol)を添加し、続いて45℃に加熱することによって重合を開始し、この温度を6時間維持した。得られたコポリマーを、3.5kDa MWCOの透析膜を用いた脱イオン水に対する充分な透析によって精製した。精製されたコポリマーを最終的に凍結乾燥した。このコポリマーの分子サイズが、RAFT剤対モノマーの比の関数であったことには留意されたい。1:100のモル比では、14kDaのコポリマーが、1:250のモル比では、35kDaのコポリマーが、1:600のモル比では、80kDaのコポリマーが得られた。コポリマーの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)で確認した。GPC分析では、3.33mg/mlのコポリマーストック溶液を、溶出緩衝液(0.05%(重量/体積)のNaNを含有する脱イオン水)で作製し、0.45μmのシリンジフィルターでろ過した。続いて、0.4mlのストック溶液を、GPC装置(1260 Infinity LC−System、Agilent、サンタクララ、CA)のポートに注入した。クロマトグラフィを、0.5ml/分の一定流速の溶出緩衝液で行った。コポリマーサンプルを、55℃の外部カラムオーブン中に配置したSuprema 3カラムシステム(プレカラム、1000Å、30Å;5μm粒子サイズ;PSS、マインツ、ドイツ)上で分離した。コポリマーを、RI(屈折率)及びUV検出器によって分析した。検量線(10点)を、プルラン標準を用いて作成した。同定したコポリマーの分子量を、この標準をレファレンスとして推定した。分子量の異なるDMA/アクリロイル−L−リジンコポリマーの混合物の例示的なクロマトグラムを、図2Bに示す。
【0097】
例15:異なるCellophilコポリマーとHEMAベースのシリコーンヒドロゲルレンズとの相互作用
HEMAベースのシリコーンヒドロゲルレンズを様々なCellophilコポリマーでコーティングする過程で、結合挙動に著しい相違が見られた。驚くべきことに、処理されるべきレンズ中にも存在する主要モノマーを含むCellophilコポリマーが、そのような主要モノマーを含まないCellophilコポリマーよりも強くそのレンズに結合することが見出された。例を図3に示す。実験では、HEMAを含む4つのコンタクトレンズを、HEMAを含むCellophilコポリマー(1%(重量/体積)(HEMA(50mol%)/AK(50mol%)、72kDa、PDI 3.1)又はn−イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)を含むCellophil(NIPAAm(50mol%)/AK(50mol%)、75kDa、PDI 2.9)のいずれかと、116℃で20分間インキュベートした。Cellophilコポリマーで処理したレンズは、過剰のPBS(pH7.4)中で、それぞれ3若しくは6時間さらにインキュベートするか、又はそのようなインキュベーションを行わなかった。次に、すべてのレンズを、95℃に加熱したニンヒドリン溶液中で2時間インキュベートした。赤紫色の染色が、アミノ酸含有Cellophilコポリマーの存在を示す。結果から、NIPAAmを含むCellophilコポリマーよりも、HEMAを含むCellophilコポリマーで処理したレンズの染色の方が、より耐久性が高いことが示された(図3A)。本発明者らは、HEMAを含むCellophilコポリマーが、NIPAAmを含むCellophilコポリマーよりも、HEMAを含むレンズ中により効率的に浸透し、及び/又はより良好に保持されたものと結論付けた。
【0098】
この効果をより詳細に分析するために、上記で述べたようにしてCellophilコポリマーでコーティングしたHEMAベースのシリコンヒドロゲルレンズを、ニンヒドリンで染色し、手作業で切断し、写真分析によって特性を調べた。HEMAを含むCellophilコポリマーは、コーティング手順の過程でコンタクトレンズ中に浸透することができたが、NIPAAmを含むより疎水性のCellophilコポリマーではそうではなかった(図3C及びD)。このことから、レンズのヒドロゲル部分は、HEMAを含むより親水性のCellophilコポリマーと相互作用を起こし得るが、斥力を受ける可能性があるためにレンズ中に深く浸透することができないNIPAAmを含むより疎水性のCellophilコポリマーとは相互作用を起こさないことが示唆される。これらの驚くべき知見は、特定のレンズ材料にCellophilコポリマーを適合させるために有用であり得るものであり、コーティングプロセスの最適な実施に繋がる。
【0099】
例16:フリーラジカル重合を用いたDMA/アクリロイル−L−リジン/6−アクリルアミド−2−パルミトアミドヘキサン酸トリ−コポリマーの合成
20mlの反応容器中、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)(0.26ml、2.52mmol)、アクリロイル−L−リジン(63mg、0.315mmol)、及びNε−アクリロイル−Nα−パルミチル−L−リジン(27.6mg、0.062mmol)を15mlの脱イオン水に溶解し、TMEDA(0.07ml、0.464mmol)を添加した。この溶液を超音波浴を用いて脱気した。過硫酸アンモニウム(APS)(6.62mg、0.029mmol)を脱気した溶液に添加した。室温で4時間重合反応を行い、反応容器を4℃に冷却することによって反応を停止した。その後、コポリマーを、3.5kDa MWCOの透析管を用いた脱イオン水に対する充分な透析によって精製した。精製されたコポリマーを最終的に凍結乾燥し、その平均分子量(127kDa)及びPDI(2.7)を、GPC)によって推定した。この方法の詳細な記述は、例14に示した。
【0100】
例17:脂質様構造を有するCellophilブロックコポリマー
シリコーン及びシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ材料は、装用中に涙膜からのタンパク質及び脂質と結合する傾向にある。タンパク質及び脂質堆積物の累積は、装用の心地良さ及び視界の低下に繋がる[19、20]。このような望ましくない反応を低減するために、ブロックコポリマーを合成した。レンズ表面にこれらのブロックコポリマーが存在することにより、脂質及びタンパク質のレンズ表面上への堆積が防止されるという仮説を立てた。ブロックコポリマーは、式I又は式IIの親水性非官能化側鎖結合アミノ酸を含む第一のブロック、及びそのアルファ−アミノ基及び/又はカルボキシル基がアルキル又はコレステリル残基で官能化された式I又は式IIの疎水性側鎖結合アミノ酸、並びに他の疎水性モノマーを含む第二のブロックを有する。アルキル又はコレステロール残基は、レンズ表面に有害な堆積物を形成する原因であることが知られているヒト涙膜中に典型的に見出される脂質の構造を模倣するはずである[21〜23]。ブロックコポリマーは、コーティング手順の過程で、コンタクトレンズのシリコーン表面と強く相互作用を起こすものと期待された。シリコーンレンズ表面をブロックコポリマーで飽和させることにより、脂質の堆積が防止されるはずである。ブロックコポリマーの親水性ブロックは、レンズ表面とは反対側に向くことになる。それらは、水分子との高い結合能を有することから、レンズの表面湿潤性及び潤滑性が高められるはずである。形成された水性層は、疎水性の涙液脂質との相互作用に対する効果的なバリアとして機能するはずである。
【0101】
上記で述べた仮説を、アクリロイル−L−リジンモノマーを含む親水性ブロック、並びにアクリル化脂肪アルコール(イソ−デシルアクリレート)及びN,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)を含む疎水性/親油性ブロックを有するブロックコポリマーを用いてまず試験した。親水性ブロック、すなわち、1若しくは複数の式I及び/又は式IIの非官能化側鎖結合アミノ酸モノマーを含むブロック、並びに1若しくは複数の主要モノマーを含む疎水性ブロックを有するブロックコポリマーも、シリコーンヒドロゲルレンズのコーティングにこれらのコポリマーが有用であることから、本発明に包含される。
【0102】
親水性Cellophilポリマー及び脂質様コポリマーを含むブロックコポリマーのRAFT重合を用いた作製
工程A
50mlの丸底フラスコ中、2−(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)−2−メチルプロパン酸(6.13mg、0.017mmol)、N,N−ジメチルアクリルアミド(0.624ml、6.05mmol)、及びイソ−デシルアクリレート(0.163ml、0.673mmol)の10ml DMF中の溶液を、超音波処理を用いて脱気した。続いて、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−4’−モルホリノブチロフェノン(6.40mg、0.017mmol)を添加し、UV光で重合を誘発した。撹拌下での4時間の重合後、反応混合物を、3.5kDa MWCOの膜を用いた脱イオン水に対する充分な透析によって精製した。続いて、この混合物を凍結乾燥した。ブロックコポリマーの平均分子量(12kDa)及びPDI(1.19)を、GPC測定によって確認した。
【0103】
工程B
工程Aで作製し、凍結乾燥したマクロ−CTA(300mg、6.82μmol)を、10mlの脱イオン水中、アクリロイル−L−リジン(100mg、0.499mmol)と混合した。この混合物を超音波処理を用いて脱気した。2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(4.62mg、0.017mmol)をこの混合物に添加した。反応容器中でこの混合物を50℃に加熱することによって重合を誘発した。50℃で4時間の重合後、得られたブロックコポリマーを、3.5kDa MWCOの膜を用いた脱イオン水に対する充分な透析によって精製した。続いて、Cellophilブロックコポリマーを凍結乾燥した。ブロックコポリマーの平均分子量(18kDa)及びPDI(1.25)を、GPC測定によって確認した。工程AでのCTA対モノマー比を、それぞれ、1/100から1/200(32kDA)、及び1/400(58kDa)に低下させることによって、より大きいブロックコポリマー(32kDa、PDI 1.28;58kDa、PDI 1.24)が得られ、一方イソ−デシルアクリレート(7.5mol%)、DMA(63.9mol%)、及びAK(28.6mol%)のモル比は一定に保持された。
【0104】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの湿潤性に対するこれらのCellophilブロックコポリマーの効果を、接触角の測定によって試験した。低い接触角は、良好な表面湿潤性を示す。この実験では、Narafilcon Aベースのレンズを、18kDa、32kDa、又は58kDaのCellophilブロックコポリマーでコーティングした。このコーティングを実現するために、レンズを、Cellophilブロックコポリマーの1%(重量/体積)溶液中、116℃で20分間インキュベートし、次に、ゆっくり室温に冷却した。このコーティング後、レンズを、5mlのPBS中、僅かに撹拌しながら室温で10分間インキュベートして、過剰のブロックコポリマーを除去し、24時間風乾した。続いて、鋭利なナイフを用いて、レンズから長方形の小片(0.5×0.5cm)を切り出した。このレンズ片を、脂肪を含まないスライドガラス上に置いた接着性フィルム上に載せ、このスライドを、液滴プロファイル分析器(drop profile analyzer)(CAM−100、KSV Instruments、ヘルシンキ、フィンランド)に導入した。測定では、小水滴を、細い針を用いて材料上に置いた。液滴の接触角を、CAM2008ソフトウェア(KSV Instruments)を用いた写真分析によって推定した。コーティングされていないレンズから同様にして得た片を、コントロールとして用いた。
【0105】
この実験の結果を、図4Aに示す。データは、4つのレンズに対する平均接触角及び標準偏差を表す。図のBでは、代表的な画像により、異なるコーティングによる接触角の低下が示されている。データは、脂質様ブロックを有するCellophilブロックコポリマーでのコーティングが、接触角を低下させ得ることを示しており、このことは、レンズ表面の湿潤性の増加を示唆している。この効果は、ブロックコポリマーのサイズに依存していた。およそ18kDaの小さいブロックコポリマーでは、湿潤性に対して著しい効果が示されなかったのに対し、より高い分子量(32kDa及び58kDa)のブロックコポリマーでは、著しい改善が見られた。これらの中でも、32kDaのコポリマーの方が、接触角の大きい低下を示した。このことは、湿潤性に対する最良の効果のための最適なブロックコポリマーサイズが、18Kda超であることを示唆している。
【0106】
アクリロイル−L−リジンモノマーを含む親水性ブロックを含む第一のブロック、並びにNε−アクリロイル−Nα−パルミチル−L−リジン(AK−PAL)及びN,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)を含む疎水性/親油性ブロックを有する、式Iの疎水性モノマーの量が異なる他のブロックコポリマーを合成した。この結果、以下のブロックコポリマーが得られる:
MH02[DMA(90.6%mol)/AK−PAL(0.6%mol)/AK(9.9%mol]、PDI 1.26;
MH03[DMA(90.1%mol)/AK−PAL(1.1%mol)/AK(8.8%mol]、PDI 1.26;
MH04;[DMA(89.6%mol)/AK−PAL(1.6%mol)/AK(8.8%mol]、PDI 1.28;
MH05;[DMA(84.0%mol),AK−PAL(0.5%mol)/AK(15.5%mol]、PDI 1.29、
MH06[DMA(83.6%mol),AK−PAL(1.1%mol)/AK(15.4%mol]、PDI 1.25、
MH07[DMA(83.2%mol),AK−PAL(1.5%mol)/AK(15.3%mol]、PDI 1.25
【0107】
上記ブロックコポリマーのサイズは、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)により、約8kDa(8〜10kDa)と特定された。MALDIに関する技術的情報については、Karas,M.and Kruger,R.(2003)Ion formation in MALDI:the cluster ionization mechanism.Chem.Rev.103(2):427−40を参照されたい。
【0108】
これらのブロックコポリマーの結合挙動を、3つの異なる市販のシリコーンヒドロゲルレンズ材料(Air optics aqua(登録商標)/Lotrafilcon B;Pure Vision(登録商標)/Balafilcon A、及びBiofinity(登録商標)/Comfilcon A)をコーティングすることによって試験した。この分析では、レンズを、Cellophilブロックコポリマーの1%(重量/体積)溶液中、116℃で20分間インキュベートし、次に、ゆっくり室温に冷却した。このコーティング後、レンズを、5mlのPBS中、僅かに撹拌しながら室温で10分間インキュベートして、過剰のブロックコポリマーを除去した。コーティングされていないレンズをコントロールとして用いた。続いて、コーティングレンズ及びコントロールレンズを、Cellophilコポリマーの一級アミノ基と反応して黄色の接合体を形成するピクリルスルホン酸の0.01%(重量/体積)水溶液中、37℃で2時間インキュベートした。次に、レンズ表面と結合したCellophilコポリマーの量を、目視検査で推定した。この実験により、Cellophilコポリマーを、コーティングされるべきレンズ材料に関して適合/最適化させる必要があることが確認された。Cellophilコポリマーの3つのレンズ材料との結合は異なっていた。例えば、CellophilコポリマーMH05は、Comfilcon A及びBalafilcon Aのレンズ材料との強い結合を示したが、Lotrafilcon Bのレンズ材料との結合は弱かった。このような相違はあるが、全体として、ブロックコポリマー中における式Iの親水性モノマーの式Iの疎水性モノマーに対する比が低い方が、レンズ表面とのより良好な結合と相関していた。
【0109】
既に述べたように、第一の重合反応でのCTA対モノマー比を低下させることによって、ブロックコポリマーMH04の2つのより長いバージョンを合成した。これらのブロックコポリマーのサイズは、それぞれ、約16kDa及び24kDaと推定された。3つの異なるサイズのMH04ブロックコポリマーの各々でシリコンヒドロゲルレンズをコーティングし、ピクリルスルホン酸で染色し、前述のセクションで考察した通りに分析した。8kDaのMH04ブロックコポリマーが、レンズ中に良好に浸透したのに対し、16kDa及び24kDaのブロックコポリマーでは、非常に少ない染色/浸透が観察された。以下に詳述する実験では、8kDaのブロックコポリマーのみを用いた。
【0110】
CellophilブロックコポリマーMH03、MH04、及びMH06(これらのコポリマーは、Lotrafilcon A(Air optics aqua(登録商標)、Alcon)シリコーンヒドロゲルレンズとの良好な結合を示した)の湿潤性効果を、上記で述べたプロトコルに類似のプロトコルを用いた接触角測定によって特定した。CellophilブロックコポリマーでコーティングしたLotrafilcon Aレンズ及び未コーティングのままとしたLotrafilcon Aレンズの湿潤性を、包装溶液から取り出して測定まで24時間風乾させておいたdaily total one(登録商標)(DT−1)レンズと比較した。DT−1は、市販されているすべてのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの中で最良の表面湿潤性を有することが知られている。眼の環境を模擬的に再現するために、これらの測定を、合成涙液([24]に従うが、脂質混合物は含めない)中で行った。結果を図5に示す。試験したすべてのCellophilコポリマーは、未コーティングのコントロールと比較して、表面湿潤性を大きく改善した。Lotrafilcon AレンズをCellophilブロックコポリマーMH04及びMH06でコーティングすることにより、DT−1で見られる接触角と同等の接触角が得られた。CellophilコポリマーMH04を、さらなる試験用として選択した。
【0111】
コーティングプロセスの性能をさらに解明するために、マイクロトライボロジー測定を行って、コーティングされたコンタクトレンズの摩擦係数を分析した。Lotrafilcon Aシリコーンヒドロゲルレンズ(Air optix aqua(登録商標)、Alcon)を、PBS(pH7.4、レンズあたり10ml)中、室温で6時間インキュベートして、元の包装溶液からの存在し得る界面活性剤を除去した。続いて、1.5mlの反応管中(反応管あたり1つのレンズ)のCellophil脂質ブロックコポリマーMH04(PBSの1重量/体積%)の溶液中、又はPBS(pH7.4、=ブランク)中にレンズを入れ、116℃で20分間インキュベートした。その後、溶液を室温までゆっくり冷却した。コーティングされたレンズ及びコーティングされていないレンズを、マイクロトライボメーター(BASALT(登録商標)−MUST Precision Tester、TETRA GmbH、イルメナウ、ドイツ)で分析した。分析されるべきレンズをレンズ容器中に入れた。レンズの裏側をプレシジョンワイプで軽く拭き、レンズを球状サンプルホルダー(r=8.6mm)中に置いた。60秒間でホルダー表面にレンズを密着させた後、ホルダーをトライボメーターに載せた。100μlの合成涙液(上記参照)を、キャピラリーブリッジを形成する球状ホルダーと固定した対向ボディ(fixed counter body)との間の接触領域に配置した。対向ボディとしては、PETフィルムを用いた(Good Fellow、厚さ0.1mm、幅20mm、透明、二軸延伸)。PETフィルムは、顕微鏡用スライドガラス上にシアノアクリレート接着剤で予め固定した。接着剤は、接触領域が不均一になることを避けるために、ストライプの始端部と終端部に塗布した。測定は、30mNの荷重及び30mm/分の速度で、固定した対向ボディ上を10mmの距離にわたってホルダーを移動させることによって行った。10回の往復サイクルを行って測定完了とした。最後の7サイクルをデータ分析に用いた。これらのデータセットは、得られた摩擦係数が動摩擦と静摩擦との平均を表すように、変向点の値を含んでいた。包装溶液から取り出したLotrafilcon A(Air optics aqua(登録商標)、Alcon)及びDaily total one(登録商標)(DT−1)のシリコーンヒドロゲルレンズをレファレンスとして用いた。各条件について10個のレンズを分析した。この実験の結果を、図6にグラフで表す。Cellophilコポリマーのコーティングは、コーティングされていないコンタクトレンズ(ブランク)と比較した場合、有意に(p値=2.97×10−5)摩擦係数を低下させた。具体的には、コーティングは、摩擦の平均値を、0.133 +/−0.039から0.035 +/−0.016に低下させており、包装から取り出したばかりのDT−1コンタクトレンズの値(0.019 +/−0.004)に近い。両側t検定により、これら2つの群の間に統計的有意差がないことが分かった(Cellophilコーティングされたレンズ対DT−1;p値=0.06)。コーティングされていないAir Optixレンズ(ブランク)及び包装から取り出したばかりのAir Optix レンズは、摩擦係数に有意差を示さなかった(p値=0.55)。このことは、この手順(洗浄及びPBSでのオートクレーブ処理)が、コーティングされていないコンタクトレンズの性能を大きく低下させることはなかったことを示している。したがって、摩擦の低下(=潤滑性の上昇)は、Cellophilコポリマーコーティングの直接の結果であった。
【0112】
例18:6−及び4−アームRAFT剤の合成
以下のプロトコルは、マルチアームCellophilコポリマーの作製に有用であるマルチアームRAFT剤の合成のための一般手順について記載するものである。当業者であれば、RAFT前駆体分子又はコア構造の交換を例とする特定の用途に有用であるこれらのマルチアームRAFT剤の変形体を得る目的で、パラメーターを変更することができる。
【0113】
テトラヒドロフラン(30mL)中の2−ブロモプロピオニルブロミド(10.97mL、105.00mmol)の溶液を、窒素下、0℃にて、トリエチルアミン(14.61mL、105.00mmol)及びテトラヒドロフラン(100mL)中のジペンタエリスリトール(4.00g、15.73mmol)の懸濁液に添加した。得られた懸濁液を、室温まで加温し、16時間撹拌した。固体をろ過によって除去し、ろ液の溶媒を減圧蒸発させた。残渣を酢酸エチル(150mL)に溶解し、水(2×50mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(2×50mL)、水(2×50mL)、及び鹹水(50mL)で順に洗浄した。有機相を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空濃縮して、橙色オイルを得た。ジエチルエーテルからの結晶化により、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2−ブロモプロピオネート)(2.00g、12%)を白色固体として得た。
【0114】
ジエチルエーテル(13mL)中の二硫化炭素(0.95mL、15.79mmol)の溶液を、室温で、ジエチルエーテル(40mL)中のナトリウムエタンチオレート(1.11g、13.16mmol)の懸濁液に添加し、この反応混合物を、室温で2時間撹拌した。溶媒を真空除去した。残渣を酢酸エチル(8mL)に溶解し、酢酸エチル(1.5mL)中のジペンタエリスリトールヘキサキス(2−ブロモプロピオネート)(1.00g、0.94mmol)の懸濁液を室温で滴下した。この懸濁液を、室温でさらに4時間撹拌し、鹹水(10mL)で反応停止した。水相を分離し、酢酸エチル(3×15mL)で抽出した。1つにまとめた有機相を、水(2×20mL)、塩酸水溶液(2×15mL)、水(15mL)、及び鹹水(20mL)で洗浄した。有機相を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィ(SiO2、n−ヘキサン/酢酸エチル、4:1、体積/体積)で精製して、6−アームRAFT開始剤(1.00g、76%)を黄色オイルとして得た。
【0115】
ジペンタエリスリトールヘキサキス(2−ブロモプロピオネート)の合成において記載したものと同じ手順を、ペンタエリスリトールテトラキス(2−ブロモプロピオネート)の合成に適用した。ペンタエリスリトール(3.00g、22.04mmol)を、トリエチルアミン(13.22mL、95.00mmol)の存在下で2−ブロモプロピオニルブロミド(9.92mL、95.00mmol)と反応させた。ジエチルエーテルからの結晶化により、ペンタエリスリトールテトラキス(2−ブロモプロピオネート)(5.10g、34%)を白色固体として得た。
【0116】
水(4mL)によるエタンチオール(1.92mL、26.60mmol)の溶液を、0℃で10分間撹拌した。その後、水(1.08mL)による水酸化ナトリウム(1.08g、26.9mmol)の溶液を滴下し、続いて、アセトン(1.5mL)を添加した。この溶液を、室温で30分間撹拌し、再度0℃に冷却した。ジクロロメタン(10mL)中のペンタエリスリトールテトラキス(2−ブロモプロピオネート)(3.00g、4.44mmol)の溶液を添加し、この反応混合物を、室温で48時間撹拌した。この懸濁液をろ過し、ろ液を酢酸エチル(50mL)で希釈した。有機相を分離し、水(2×20mL)、塩酸水溶液(2×15mL)、水(15mL)、及び鹹水(20mL)で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥後、有機相をろ過し、真空濃縮した。カラムクロマトグラフィ(SiO2、n−ヘキサン/酢酸エチル、4:1、体積/体積)で精製して、4−アームRAFT開始剤(3.20g、80%)を黄色オイルとして得た。
【0117】
すべての生成物は、NMR測定によって確認した。合成プロトコルは、参考文献[25〜27]から適合させた。
【0118】
例19:32アームデントリマーRAFT剤の合成
以下のプロトコルは、Cellophilコポリマーのデントリマー誘導体の作製に有用であるデントリマーRAFT剤の合成のための一般手順について記載するものである。
【0119】
50mlの反応容器中、1−クロロ−2−メチル−1−オキソプロパン−2−イルエチルカルボノトリチオエート(0.75g、3.09mmol)を2mlのクロロホルムに溶解した。この溶液に、25mlのクロロホルム中のPEG136−DEOH32(0.458g、0.048mmol;Sigma Aldrich、ブーフス、スイス)を添加し、この混合物を、室温で30分間インキュベートした。続いて、トリエチルアミン(0.215ml、1.544mmol)を添加し、この混合物を、さらに30分間インキュベートした。その後、溶媒を減圧除去し、残渣を水(50ml)で洗浄した。得られたエマルジョンを遠心分離し、上相を除去した。残留物に、tert−ブチルメチルエーテル(tBME)(50ml)を加え、振とうによって混合し、得られたエマルジョンを遠心分離によって分離した。最後に、生成物を、40℃の減圧下、水酸化ナトリウム上で乾燥した(0.2g、0.012mmol;収率25.8%)。生成物をNMR測定によって確認した。
【0120】
例20:6アームCellophil DMA/AK−PAL/AKトリブロックコポリマーの合成
10mlのDMF中の6−アームRAFT剤(例18)(20mg、1.4μmol)及びDMA(1.756ml、17.04mmol)の溶液を、超音波浴で脱気し、AIBN(4.66mg、0.028mmol)を添加して60℃に加熱することによって重合を開始した。6時間後、得られた6−アームポリマーをtBMEで沈澱させ、40℃で減圧乾燥した。
【0121】
続いて、精製したマクロ−RAFT剤(1g、8.33μmol)を、10mlの水中でのNε−アクリロイル−Nα−パルミチル−L−リジン(73mg、167μmol)及び2,2’アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(2.26mg、8.33μmol)との第二の重合に用いた。重合は、45℃に加熱することによって誘発し、6時間継続した。得られた6−アームDMA/AK−PALブロックコポリマーを、3.5 MWCOの膜を用いた透析によって精製し、凍結乾燥した。次に、同じ重合及び精製手順を用いるが、Nε−アクリロイル−Nα−パルミチル−L−リジンをアクリロイル−L−リジンで置き換えて第三の親水性アクリロイル−L−リジンブロックを付加するために、この6−アームDMA/AK−PALブロックコポリマーをマクロ−RAFT剤として用いた。
【0122】
例21:メチル6−アクリルアミド−2−ドデカンアミドヘキサノエートの合成
強力凝縮器(intensive condenser)を備えた二口フラスコ中、AK−Lau(例10に示した手順に従って合成)(1g、2.61mmol)を15mlのDMFに溶解した。この溶液に、炭酸ナトリウム(0.554g、5.24mmol)を加えた。続いて、ヨードメタン(0.654ml、10.46mmol)を、膜(septum)を通して滴下した。この反応液を室温で一晩撹拌し、その後20mlの酢酸エチルを添加した。有機相を、脱イオン水及び鹹水で2回洗浄し、NaSO上で乾燥し、溶媒を乾固するまで真空除去した。次に、固体生成物を酢酸エチルに溶解し、活性炭を通してろ過して残留ヨウ素を除去した。溶媒を真空除去して、純粋なメチル6−アクリルアミド−2−ドデカンアミドヘキサノエート(0.7g、収率67.5%)を得た。生成物をNMR測定によって確認した。
【0123】
本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において特に断りのない限り、その範囲内に含まれる各個別の値を個々に述べる簡潔な方法として用いることを意図しているだけであり、各個別の値は、それが本明細書において個々に列挙されているかのごとく本明細書に組み入れられる。特に断りのない限り、本明細書で提供されるすべての厳密な数値は、対応する近似的値を代表するものである(例:特定の因子又は測定値に関して提供されるすべての厳密な例示的値は、該当する場合、「約」で修飾されて、対応する近似的測定値も提供するものと見なされ得る)。
【0124】
本明細書で提供されるすべての例又は例示的言語(例:「など」)の使用は、本発明をより明らかにすることを意図しているだけであり、特に断りのない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。
【0125】
本明細書における特許文献の引用及び援用は、単に便宜上行うものであり、そのような特許文献の有効性、特許性、及び/又は権利行使性のいかなる見解も反映するものではない。要素に関するなどの用語を用いた本発明のいかなる態様又は実施形態の本明細書における記述も、特に断りのない限り、又は文脈からそうでないことが明らかではない限り、その特定の要素から「成る」、「本質的に成る」、若しくはその特定の要素を「実質的に含む」本発明の類似の態様又は実施形態に対する支持を提供することを意図している(例:特定の要素を含むとして本明細書で記載される組成物は、特に断りのない限り、又は文脈からそうでないことが明らかではない限り、その要素から成る組成物についても記載しているものとして理解されるべきである)。
【0126】
本発明は、該当する法の許す最大限まで、本明細書で提示される態様又は請求項に列挙される主題のすべての改変及び均等物を含む。
【0127】
本明細書で引用されるすべての刊行物及び特許文献は、各個々の刊行物又は特許文献が参照により援用されると具体的に及び個々に示されているかのごとく、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0128】
上述の発明を、理解の明確性を目的とする説明及び例によってある程度詳細に述べてきたが、当業者であれば、本発明の教示事項に照らして、添付の請求項の趣旨又は範囲から逸脱することなく、特定の変更及び改変が本発明に行われてもよいことは容易に明らかである。

図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4
図5
図6