特許第6843448号(P6843448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843448
(24)【登録日】2021年2月26日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】量子ドット組成物
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20210308BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20210308BHJP
   C09K 11/70 20060101ALI20210308BHJP
   C09K 11/56 20060101ALI20210308BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20210308BHJP
【FI】
   G02B5/20ZNM
   C09K11/08 G
   C09K11/70
   C09K11/56
   H01L33/50
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-155442(P2019-155442)
(22)【出願日】2019年8月28日
(62)【分割の表示】特願2017-501523(P2017-501523)の分割
【原出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2020-21077(P2020-21077A)
(43)【公開日】2020年2月6日
【審査請求日】2019年9月25日
(31)【優先権主張番号】61/972,092
(32)【優先日】2014年3月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/460,237
(32)【優先日】2014年8月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509295262
【氏名又は名称】ナノコ テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボー,コン−ドゥアン
(72)【発明者】
【氏名】ナーサニ,イマド
(72)【発明者】
【氏名】ナライネン,アミルカー ピレイ
【審査官】 酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−505346(JP,A)
【文献】 TALEB MOKARI; HANAN SERTCHOOK; ASSAF AHARONI; YUVAL EBENSTEIN; DAVID AVNIR; URI BANIN,NANO@MICRO: GENERAL METHOD FOR ENTRAPMENT OF NANOCRYSTALS IN SOL-GEL-DERIVED COMPOSITE HYDROPHOBIC SILICA SPHERES,CHEMISTRY OF MATERIALS,AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,2004年12月21日,VOL:17, NR:2,PAGE(S):258 - 263,URL,http://dx.doi.org/10.1021/cm048477n
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
C09K 11/08
H01L 33/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次発光素子と、
一次発光素子と光学的に繋がっている量子ドット(QD)を含む2相組成物と、
を備えており、
2相組成物は、
脂肪酸エステル及びエーテル、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、フェニルパルミテート、フェニルミリステート、天然及び合成油フッ素化炭化水素、ジブチルセバケート、並びにジフェニルエーテルから選択される疎水性溶媒を含む疎水性の内側相と、
内側相に分散したQDの集団と、
エポキシ樹脂を含む親水性の外側相と、
を含んでいる、発光デバイス。
【請求項2】
QDを含む2相組成物は膜の形態である、請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項3】
膜が2つのガスバリア層の間に配置される、請求項2に記載の発光デバイス。
【請求項4】
2相組成物の内側相は、ヒュームドシリカ又はヒュームドアルミナを更に含む、請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項5】
2相組成物の内側相疎水性ポリマー、多孔質ポリマービーズ、又は、親油性架橋デキストランゲルを更に含む、請求項4に記載の発光デバイス。
【請求項6】
エポキシ樹脂は、ビスフェノールA−エポキシ樹脂である、請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項7】
エポキシ樹脂は、エポキシ−アクリレート樹脂であり外側相は、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、2−カルボキシエチルアクリレートオリゴマー(CEAO)、アクリル酸(AA)、又はカルボン酸メタクリレートの1又は複数とを更に含む、請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項8】
カルボン酸メタクリレートは、2−カルボキシエチルメタクリレートオリゴマー(CEMAO)又はメタクリル酸(MMA)である、請求項に記載の発光デバイス。
【請求項9】
一次発光素子と、
一次発光素子と光学的に繋がっている量子ドット(QD)を含む2相組成物と、
を備えており、
2相組成物は、
脂肪酸エステル及びエーテル、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、フェニルパルミテート、フェニルミリステート、天然及び合成油、フッ素化炭化水素、ジブチルセバケート、並びにジフェニルエーテルから選択される疎水性溶媒を含む疎水性の内側相と、
内側相に分散したQDの集団と、
エポキシ−アクリレート樹脂と、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、2−カルボキシエチルアクリレートオリゴマー(CEAO)、アクリル酸(AA)、又はカルボン酸メタクリレートの1又は複数とを含む親水性の外側相と、
を含んでいる、発光デバイス。
【請求項10】
QDを含む2相組成物は膜の形態である、請求項に記載の発光デバイス。
【請求項11】
膜が2つのガスバリア層の間に配置される、請求項10に記載の発光デバイス。
【請求項12】
2相組成物の内側相は、ヒュームドシリカ、ヒュームドアルミナ、疎水性ポリマー、多孔質ポリマービーズ、又は、親油性架橋デキストランゲルを更に含む、請求項に記載の発光デバイス。
【請求項13】
カルボン酸メタクリレートは、2−カルボキシエチルメタクリレートオリゴマー(CEMAO)又はメタクリル酸(MMA)である、請求項に記載の発光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発光ダイオード(LED)は、現代の日常生活においてますます重要になっており、それらは、自動車照明、交通信号、一般照明、液晶ディスプレイ(LCD)のバックライト、ディスプレイスクリーンのような多数の照明形態において主に用いられるものの一つになると予想される。現在、LEDデバイスは、典型的には無機ソリッドステート化合物半導体から作られている。LEDを作るために使用される材料は、LEDで生じる光の色を決定する。各材料は、特定の波長のスペクトルで光を放射する。即ち、光には、特定の混合による色がある。一般的な材料には、AlGaAs(赤)、AlGaInP(オレンジ−黄−緑)やAlGaInN(緑−青)がある。
【背景技術】
【0002】
基本色(即ち、赤、緑及び青)の混合である白色光を生じるLED、又は、通常のLED半導体材料を用いることでは得られない光を生じるLEDは、多くの用途で必要とされている。現在のところ、白色のような所望の色を生成する色混合における最も一般的な方法は、ソリッドステートLEDの上に配置される蛍光材料の組合せを用いている。これによって、LEDからの光(「一次光」)は、蛍光材料で吸収されて、その後、異なる周波数で再放射される(「二次光」)。つまり、蛍光材料が、一次光の一部を「ダウンコンバート」する。
【0003】
ダウンコンバージョン用途に使用される現在の蛍光材料は、通常、UV光又は青色光を吸収して、それを、赤色光又は緑色光のようなより長い波長を有する光に変換する。青色発光LEDのような青色一次光源を有する発光デバイスは、赤色光及び緑色光を放射する二次蛍光体と組み合わされて、白色光を生成するのに使用できる。
【0004】
一般的な蛍光材料の大半は、現在、三価希土類がドープされた酸化物又はハロリン酸塩のようなソリッドステート半導体材料である。SrGa:Eu2+のような緑色蛍光体及びSrSiNi:Eu2+のような赤色蛍光体と青色発光LEDを組み合わせることで、或いは、Sr:Eu2+;Mn2+のような黄色蛍光体及び青緑蛍光体とUV発光LEDなどを組み合わせることで白色光を得ることができる。白色LEDはまた、黄色蛍光体と青色LEDを組み合わせることで作られる。
【0005】
幾つかの問題が、ソリッドステートダウンコンバージョン蛍光体に関係している。色彩管理と演色が不十分となり得るので(つまり、演色評価数(CRI)<75)、多くの状況下で光が好ましくないものになる。また、放射された光の色合いを調節することが困難である。なぜならば、特定の蛍光体で放射された特有の色は、蛍光体を作る材料の作用であるからである。適切な材料が存在しない場合、幾つかの色合いは、全く利用できないかも知れない。故に、当該分野において、現在入手できる蛍光体よりも柔軟性が高く、演色が良好なダウンコンバージョン蛍光体への要求が存在している。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の形態によれば、疎水性ホスト相と、当該ホスト相に分散した量子ドット(QD)と、親水性の外側相とを含む2相溶液を含んでおり、ホスト相は、硬化したポリマーではない組成物がもたらされる。ホスト相は、疎水性溶媒を含んでよい。ホスト相は、足場材料(scaffolding material)を更に含んでよい。足場材料は例えば、ヒュームドシリカ、ヒュームドアルミナ、疎水性ポリマー、ポリイソプレン、セルロースエステル、ポリエステル、ポリスチレン、多孔質ポリマービーズ、又は、親油性セファデックスである。ホスト相は、脂肪酸エステル及びエーテル、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、フェニルパルミテート、フェニルミリステート、天然及び合成油、熱伝達液体、フッ素化炭化水素、ジブチルセバケート、及びジフェニルエーテルから選択されてよい。外側相は、ビスフェノールA−エポキシ樹脂のようなエポキシ樹脂であってよい。外側相は、約50℃又はそれを超えるガラス転移温度を有するポリマーを含んでよい。外側相は、エポキシ−アクリレート樹脂と、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、或いは、2−カルボキシエチルメタクリレートオリゴマー(CEAO又はCEMAO)、アクリル酸(AA)、又はメタクリル酸(MMA)のようなカルボン酸メタクリレートの1又は複数とを含んでよい。
【0007】
本発明の第2の形態は、量子ドット(QD)含有膜を作製する方法であり、当該方法は、硬化したポリマーではないホスト相にQDを分散させる工程と、外側相樹脂の溶液にホスト相を加えて2相混合物を作る工程と、2相混合物の膜を形成する工程とを含んでいる。ホスト相は、疎水性溶媒であってよい。ホスト相は、足場材料を更に含んでよい。足場材料は例えば、ヒュームドシリカ、ヒュームドアルミナ、疎水性ポリマー、ポリイソプレン、セルロースエステル、ポリエステル、ポリスチレン、多孔質ポリマービーズ、又は、親油性セファデックスである。ホスト相は、脂肪酸エステル及びエーテル、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、フェニルパルミテート、フェニルミリステート、天然及び合成油、熱伝達液体、フッ素化炭化水素、ジブチルセバケート、及びジフェニルエーテルから選択されてよい。外側相は、ビスフェノールA−エポキシ樹脂のようなエポキシ樹脂であってよい。外側相は、約50℃又はそれを超えるガラス転移温度を有するポリマーを含んでよい。外側相は、エポキシ−アクリレート樹脂と、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、或いは、2−カルボキシエチルメタクリレートオリゴマー(CEAO又はCEMAO)、アクリル酸(AA)、又はメタクリル酸(MMA)のようなカルボン酸メタクリレートの1又は複数とを含んでよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、QD含有膜が透明な基板にコーティングされた従来技術のシステムを示す。
【0009】
図2図2は、ガスバリアシートがコーティングされたQD含有膜を示す。
【0010】
図3図3は、ホスト相としてIPMを、外側相としてエポキシ(OG142)を用いたQD膜についてQY対時間を示す。
【0011】
図4】最終的に生じたQD膜の端での侵入について、CN104配合物中の様々な定着剤の効果を示す。
【0012】
図5図5は、20%HEAを入れたCN104樹脂を用いた2相QD膜の安定性を示す。
【0013】
図6図6は、20%MAA/CN104外側相樹脂を用いた2相QD膜の安定性を示す。
【0014】
図7図7は、IPM/ポリイソプレン内側相とCN104/20%HEA外側相樹脂を用いた2相QD膜の安定性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
量子ドット(QD)又はナノ結晶としばしば称される、粒子の大きさが2乃至50nm程度である化合物半導体を活用することに相当な関心が持たれている。これらの材料への商業的な関心は、サイズ調節可能な(size-tunable)電子特性によって非常に高くなっており、当該特性は、非常に多くの商業的用途に活用することができる。
【0016】
最も研究されている半導体材料には、カルコゲニドII−VI材料、具体的には、ZnS、ZnSe、CdS、CdSe及びCdTeがある。CdSeは、スペクトルの可視領域にわたるその調節可能性から、最も注目されている。これらの材料を大規模生産するための再現可能な方法は、「ボトムアップ(bottom up)」技術から発展してきた。当該技術では、粒子は、「湿式(wet)」化学的手法を用いて、アトムバイアトム(atom-by-atom)で、即ち、分子からクラスタ、さらには粒子へと調製される。
【0017】
両方とも個々の半導体ナノ粒子のサイズに関係している2つの基本的な因子が、それらの特有な特性の原因となっている。第1の因子は、大きな表面積対体積比(surface-to-volume ratio)である。粒子が小さくなるほど、内部における原子数に対する表面の原子数の比は増加する。これによって、表面特性が、材料の全般的な特性において重要な役割を果たすことになる。第2の因子は、材料のサイズは非常に小さくなると材料の電子特性が変化することである。極端に小さいサイズでは、量子閉じ込め効果が起こって、粒子のサイズが減少するにつれて、バンドギャップは徐々に大きくなる。この効果は、所謂「箱への電子(electron in a box)」の閉じ込めの結果であり、これは、対応するバルク半導体材料で観察されるような連続的なバンドではなく、原子と分子で観察されるものと似た離散的なエネルギーレベルを生じさせる。故に、電磁放射の吸収で生じる「電子と正孔」は、対応するマクロ結晶材料中よりも互いにより接近する。これにより、ナノ粒子材料の粒子サイズ及び組成に依存した、バンド幅が狭い放射が引き起こされる。故に、QDは、対応するマクロ結晶材料よりも高い運動エネルギーを有しており、結果として、第1励起子遷移(バンドギャップ)のエネルギーは、粒子の直径が減少すると増加する。
【0018】
単一の半導体材料のQDナノ粒子では、量子効率が比較的低い傾向がある。これは、電子−正孔再結合が、ナノ粒子表面にある欠陥とダングリングボンドにて起こるからである。欠陥とダングリングボンドは、非放射的電子−正孔再結合を引き起こし得る。QDの無機表面のこのような欠陥とダングリングボンドを除去する方法の一つは、コアの材料よりもバンドギャップが広く、格子不整合が小さい第2の無機材料をコア粒子の表面でエピタキシャルに成長させて、「コア−シェル」粒子を生成することである。コア−シェルナノ粒子は、さもなければ非放射的再結合中心として作用していたであろう表面状態からコアに閉じ込められたキャリアを引き離す。一例としては、CdSeコアの表面に成長したZnSシェルがある。
【0019】
QDを用いた初期の発光デバイスは、コロイド状に生成されたQDを、光学的に明澄なLED封入媒体、典型的にはシリコーン又はアクリレートに埋め込んで、その後、それをソリッドステートLEDの上に置くことで作製されてきた。QDの使用は、より一般的な蛍光体を使用する場合よりも幾つかの顕著な利点を有している。そのような利点には、放射波長を調節できること、強い吸収特性、低散乱がある。
【0020】
次世代発光デバイスにおけるQDの商業的用途では、QDは、LED封入材料に含められる一方で、できるだけ十分に単分散したままであり、量子効率が大きく損なわれないことが好ましい。今日までに開発された方法は、とりわけ現在のLED封入剤の性質が理由で問題がある。QDは、現在のLED封入剤中に配合されると凝集して、それによって、QDの光学的性能が低下してしまう。更に、QDがLED封入剤に含められると、酸素が封入剤を通って、QDの表面に移動し得る。これは、光酸化を引き起こして、その結果、量子収量(QY)が低下する。
【0021】
QDへの酸素の移動の問題に対処する方法の一つは、酸素透過性が低い媒体にQDを混ぜ合わせてビーズを形成することであった、媒体は、ビーズ中に分散したQDを含む。QD含有ビーズは、その後、LED封入剤中に分散できる。このようなシステムの例は、2010年9月23日に出願された米国特許出願第12/888,982号(米国特許出願第2011/0068322号公報)及び2009年11月19日に出願された米国特許出願第12/622,012号(米国特許出願第2010/0123155号公報)に記載されている。これらの出願の内容の全体は、引用を以て本明細書の一部となる。
【0022】
QDを含む膜が本明細書にて説明される。図1は、従来技術の実施形態100を示している。QD含有膜101は、透明基板102に配置されている。このような基板は、一次光源からの一次光103を吸収して二次光105を放射することで、一次光103をダウンコンバートする。一次光の一部106は、膜及び基板を通って伝搬して、膜及び基板から放射される光全体は、一次光と二次光を混合したものとなる。
【0023】
図1の膜101のようなQD含有膜は、ポリマー樹脂材料にQDを分散させて、通常は、当該分野で知られているポリマー膜を調製する任意の方法を用いることで形成できる。QDは、一般的に、エポキシのような親水性の樹脂と比較して、アクリレートのような疎水性樹脂に対してより高い親和性を有することが分かっている。故に、QDが分散したアクリレートで作られたポリマー膜は、エポキシ樹脂のような親水性樹脂を用いたQD膜よりも、初期量子収量(QY)が高い傾向がある。しかしながら、アクリレートは、酸素に対して透過性がある一方で、エポキシ樹脂ポリマーや同様な親水性ポリマーは、酸素を排除するのに優れている傾向がある。
【0024】
QD含有疎水性膜について高いQYを得る一方で、経時的なQDの安定性も維持する代替的な方法の一つは、図2に示すようにガスバリアシートで膜を挟むことで、酸素から膜を遮断することである。図2は、ガスバリアシート202及びガスバリアシート203の間に含まれたポリマー膜201を有するパネル200を示している。ポリマー膜201は、その中に分散したQDを含んでいる。ガスバリアシート202及びガスバリアシート203は、分散したQDに酸素が接触することを防止する。しかしながら、図2に示したような実施形態においても、酸素は、端204にて膜に入り込んで、その結果、膜のQYが低下する。
【0025】
この問題の解決策の一つは、酸素バリアで端204をシールすることである。しかしながら、そのようにすると、パネル200の製造にコストが付加される。別の選択肢は、酸素の透過性が低いポリマー201を使用することである。しかしながら、上述したように、QDは一般的に、このようなポリマー樹脂との親和性が低く、それ故に、このようなポリマーを用いたデバイスの光学特性は、理想よりも低くなる。
【0026】
別の選択肢は、アクレートのような疎水性ポリマーにQDが懸濁しており、疎水性ポリマーは、エポキシのような、酸素をより透過しない材料で囲われているようなマルチ相システムを使用することである。例えば、QDがアクリレートに懸濁したビーズが、エポキシ樹脂で覆われてよい。通常、QDは、ラウリルメタクリレートのようなアクレートポリマーと、トリメチロールプロパントリメタクリレート(trimethylopropane tri(meth)acrylate)のような架橋剤とに懸濁される。その後、ポリマー材料は、例えば、(典型的には、イルガキュアのような光開始剤を用いた)光硬化を用いて硬化される。
【0027】
アクリレートマトリックスにQDを懸濁させることで、放射スペクトルが顕著に赤方偏移することが分かった。これは、通常は望ましくない。この赤方偏移は、2つの原因から生じると考えられている。第1には、アクレートポリマーが通常、QDの表面に付されたリガンドよりも疎水性が低いということである。その僅かな不親和性が赤方偏移を引き起こす。また、アクレートポリマーを硬化すると、放射は、更に赤方偏移する傾向がある。本明細書に開示したプロセスは、このような赤方偏移を起こさない。
【0028】
開示されている組成物及びプロセスは、QD表面との親和性が高い疎水性環境にてQDができるだけ分散しているような、QD用のホストマトリックスを生成することを基礎としている。適切なホストマトリックスの一例には、イソプロピルミリステート(IPM)がある。IPMに似た構造を有する疎水性化合物が、ホスト相として使用されてよい。その他の例には、脂肪酸エステル及びエーテル、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、フェニルパルミテート、フェニルミリステート、天然及び合成油、熱伝達液体、フッ素化炭化水素、ジブチルセバケート、及びジフェニルエーテルがある。
【0029】
IPMや上述したその他の疎水性材料のようなホストマトリックスには、QDの疎水性表面に対して親和性を有しているという利点がある。また、当該マトリックスは、硬化されない。それらの特徴の両方によって、赤方偏移ができるだけ小さくなる。しかしながら、それらは、硬化したポリマーマトリックスではないので、堅さに欠ける傾向がある。堅さを与えて、ホストマトリックス中のQDを凝集させない(即ち、離間させる)ために、足場又は支持材料が使用されて、ナノ粒子をそこに分散したままに維持してよい。足場又は支持材料は、表面積が広い任意の低極性材料であってよい。足場材料は、ドットと溶媒の両方に害を与えないものであるべきである。好ましい足場又は支持材料の例には、ヒュームドシリカ(エアロジル)、ヒュームドアルミナ、疎水性ポリマー、ポリイソプレン、セルロースエステル、ポリエステル、ポリスチレン、多孔質ポリマービーズ、又は、親油性セファデックスがある。
【0030】
QDは、足場又は支持材料と共に疎水性ホストマトリックスに懸濁されてよい。その後、その懸濁物が使用されて、外側相を伴ったホスト相のエマルジョンを形成することで2相システムが作製されてよい。外側相は通常、エポキシ樹脂のようなより親水性が高く、酸素を透過しない材料である。適切な外側相材料の例には、単一成分で低粘性の市販されているエポキシであるEPO−TEK OG142のようなエポキシ樹脂がある。その他の適切な外側相材料には、サートマーCN104C80(光開始剤及び抑制剤と共にヒドロキシエチルアクリレート(HEA)で希釈されたビスフェノールAを用いたオリゴマー)がある。
【0031】
幾つかの実施形態によれば、ガラス転移温度が高いエポキシ樹脂は、高温にて、酸素バリアに加えて安定な重合膜を促進する。アクリレートを用いたビスフェノールAエポキシ樹脂は、速い硬化速度を示す。2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)のようなヒドロキシメタクリレート、或いは、2−カルボキシエチルメタクリレートオリゴマー(CEAO又はCEMAO)、アクリル酸(AA)、又はメタクリル酸(MMA)のようなカルボン酸メタクリレートが調合物に使用されることで、ビスフェノールAエポキシアクリレートの酸素バリア特性に影響を与えることなく、ガスバリア膜への接着性を改善し、樹脂の粘性を調節することができる。HPA(T=22℃)、HPMA(T=76℃)及びHEMA(T=109℃)のポリマーは、水溶液中にて熱応答性の振る舞いを示し、40℃以上の温度で疎水性になって、湿気に対する膜の反応性が低下する。また、メタクリル酸のポリマーは、CN104を用いたある配合にて高いガラス転移温度(PMAAのT=220℃、PAAのT=70〜106℃)を示し、膜が高温で安定することを保証する点で有利である。
【実施例】
【0032】
Zn及びSで合金化されたInPコアと、ZnSのシェルとを有する赤色及び緑色コア−シェル型QDの両方を、米国特許第7,588,828号に記載されているようにして調製した。当該特許の内容の全体は、引用を以て、本明細書の一部となる。本明細書に記載された方法は、任意のQD材料に使用できることは理解されるであろう。
【0033】
<実施例1:IPMの赤色QD分散物>
3.3ODである、トルエンの赤色QD分散液0.045mLをバイアルに加えた。その後、トルエンを蒸発させて、脱ガスした1mのIMPを加えた。混合物を、窒素中にて2時間300rpmで撹拌して、QDを再分散させた。その後、赤色QDが入ったIMPを窒素中にてキュベットに移した。
【0034】
<実施例2:IPMホスト相を有する2相樹脂>
60ODである、トルエンの緑色QD分散液0.726mLをバイアルに加えて、トルエンを蒸発させた。その後、バイアルを真空下で1時間、40℃の加熱ブロック上で加熱して、残っている溶媒を除去した。1.5mLの脱ガスしたIPMを窒素下で固体残留物に加えて、300rpmで撹拌して、IMPの赤色QD分散液(1)を得た。0.15mLの(1)を、窒素中にて0.5mLのエポキシ(EPO−TEK OG142)に加えた。混合物を300rpmで20分撹拌して、その後、得られた2相QD樹脂を2つのガスバリア層(3M)の間に入れ、窒素中にて水銀灯を用いて1.5分硬化させた。これによって、約100マイクロメートルの厚さのQD膜が得られた。
【0035】
<実施例3:IPM/シリカホスト相を有する2相樹脂>
この実施例の2相樹脂は、ホスト相としてIPMを使用しており、ホスト相は、赤色QDと緑色QDの両方と、(支持として)ヒュームドシリカとを含んでいる。2相樹脂は、外側相としてエポキシを含んでいる。
【0036】
209.5OD@450nmである2mLのトルエンの赤色QD分散液を、バイアルに加えて、溶媒を、真空下で20℃で蒸発させた。その後、バイアルを、真空下で1時間、40℃加熱ブロック上で加熱して、残っている溶媒を除去した。1.7gの脱ガスしたIPMを窒素下で固体残留物に加えて撹拌して、QDを再分散させた。これにより、グラム当たり116.8ODの赤色QD分散物(2)を得た。
【0037】
504.8OD@450nmである8mLのトルエンの緑色QD分散液を、バイアルに加えて、溶媒を、真空下で20℃で蒸発させた。その後、バイアルを、真空下で1時間、40℃加熱ブロック上で加熱して、残っている溶媒を更に除去した。10.12gの脱ガスしたIPMを窒素下で固体残留物に加えて撹拌して、QDを再分散させた。これにより、グラム当たり128.79ODのQDの赤色QD分散物(3)を得た。
【0038】
グラム当たり@450nmでの5.26ODの赤色QDと36.84ODの緑色QDの濃度にてIPMのQD分散物(4)を作製するために、0.858グラムの(2)と13.284グラムの(3)とを、最初に窒素下で混合して、その後、1.862グラムの脱ガスしたIPMを加えた。その後、コロイド安定剤として0.386グラムのエアロジルR106を7グラムの(4)に加えて、これにより、IPM中に5%のエアロジルR106があるQD分散物(5)を得た。
【0039】
2相樹脂を作製するために、1グラムの(4)を、4グラムの外側相樹脂(20wt%の1,6−ヘキサンジオールジアクリレートと1wt%のイルガキュア819光開始剤を含むサートマー社のエポキシアクリレートCN104B80)に加えた。混合物を、窒素下にて300rpmで30分間撹拌した。その後、得られた2相QD樹脂を、ラミネーターにてガスバリア層の間に重ね合わせて、水銀灯を用いて30秒間硬化させた。これにより約100マイクロメートルの厚さのQD膜が得られた。
【0040】
<実施例4:外側相樹脂の調製>
外側相樹脂は、サートマー社のCN104B80(光開始剤及び抑制剤と共にヒドロキシエチルアクリレート(HEA)で希釈されたビスフェノールAを用いたオリゴマー)であった。CN104を55℃に加熱して、その材料を容易に流し込み得るようにした。室温にて、材料は、500000cpsを十分に超える粘性を有すると推定される(より大きな値には、バレルジャケットを用いて一晩加熱することを要するであろう)。CN104をスコットボトルに注いだ。CN104を少なくとも2時間冷ました(これは、用いた希釈剤(HEA)が熱に敏感なことによる)。HEAをボトルに入れた。SSインペラ(孔付きのアンカー又はパドル)を用いて、比較的一様になるまで材料を手動で混合した。O/H撹拌機を用いて、材料の反転(turnover)をもたらす速度で材料を撹拌した。撹拌を時々停止して、スコットボトルの側部と底部からCN104を手動でスクラッピング(scraping)できるようにした。混合物がほぼ一様になると、光開始剤(イルガキュア819)と抑制剤(4−ヒドロキシ−TEMPO)を加えて撹拌を続けた。十分に一様になると、撹拌を停止して、材料を一晩そのままにして、激しい撹拌により生じた泡を放出させた。材料を高真空(<1mbar)で脱ガスした。泡が完全に壊れると、材料を、少なくとも30分間高真空下で放置した。3回の真空/N2サイクルを実行し、リキャップ又は使用するために材料をグローブボックスに移した。
【0041】
<実施例5:QD分散物と膜の比較>
沸点が高い(340℃)IPMにQDを分散した。表1は、トルエンとIPMに分散した赤色QDの光学性能のまとめである。濃度は、550nmで測定された。
【表1】
【0042】
Zn及びSで合金化されたInPのコアと、ZnSのシェルとを有する緑色コア−シェルQDを、米国特許第7,588,828号に記載されたようにして調製した。緑色QDは通常、内側相(即ち、QDホスト相)としてLMA/TMPTMを用いた2相樹脂/膜にて顕著なPL赤方偏移を示す。例えば、20nm又は23nmのPL赤方偏移が、内側相としてLMA/TMPTMを、外側相としてエポキシ系樹脂(例えば、サートマー社のCN104B80)を用いたグラム当たり7ODの緑色QDの2相樹脂について観察される。PL赤方偏移は、搭載されるQDを多くする可能性を制限して、一般的にはQYと安定性が低い、PL波長が短い緑色QDを必要とする。
【0043】
表2は、内側相としてLMA/TMPTMを、外側相としてサートマー社のCN104B80を用いた2相樹脂中の緑色QDにおける、硬化前と硬化後の光学特性をまとめている。内側相(IP)と外側相(OP)の重量比は、20/80である。2相樹脂中の赤色QD及び緑色QDの濃度は夫々、グラム当たり0.7OD及び7ODである。表2に示すように、2相樹脂中における緑色QDについて、約15nmの赤方偏移が、硬化前でさえも観察される。2相樹脂中のQDのQYは60%であって、LMA/TMPTMの内側相は、QD表面リガンドよりも極性が高いことを示している。硬化した後、更に5nmのPL赤方偏移と10%のQYの低下とがQD膜について観察される。データは、より疎水性/適合性が高いホスト材料と、フリーラジカルへのQDの暴露を小さくすることとが必要であることを明確に示している。
【表2】
【0044】
図3に示すように、内側(ホスト)相としてIMPを、外側相としてエポキシ(OG142)を用いた2相QD膜は、バックライトユニットにて6ヶ月を超えても安定なQYを示す。これは、IPMホスト相の存在下でQDが安定になることを示している。
【0045】
2相樹脂のホスト相に足場又は支持材料を導入することで、2相樹脂システムを改善することができる。表3は、緑色QDを入れたIPMホスト相を用いた膜の光学特性を示しており、当該IPMホスト相は、QDを支持する疎水性ヒュームドシリカを含んでいる。支持材料は、疎水性ヒュームドシリカがオクタメチルシクロテトラシロキサンで処理されたエアロジルR106である。支持材料は、IPM/QD相にチキソトロープ性をもたらす。ホスト相は、剪断力なしでは固体又はペーストであるが、高剪断力下では液体として振る舞う。ホスト相は、外側相としてエポキシ(20%HDDAを有するCN104)を用いて、2相樹脂を作製するのに使用されている。
【表3】
【0046】
表3に示すように、IPMのホスト相と支持材料を有する膜中のQDの赤方偏移は、ほんの約10nmにすぎない。これは、LMA/TMPTM中の緑色QDで観察される赤方偏移に対して改善されている。ホスト相に足場材料を含めることで、ホスト材料樹脂の硬化の必要性が軽減される。表2に示すように、硬化プロセスは赤方偏移を誘発し、これは、足場材料を用いることで逃れられる。更に、QDが、IPMの疎水性環境とより適合することで、更に赤方偏移が小さくなる。
【0047】
表4は、支持材料としてエアロジルR106を含むIPM中に赤色QDがある膜のピーク光ルミネッセンス波長を示す。ホスト相は、外側相としてエポキシ(20%HDDAを有するCN104)を用いて、2相樹脂を作製するのに使用されている。
【表4】
【0048】
表4に示すように、ホスト相としてIPM/エアロジルを、外側相としてエポキシを用いた2相システムでは、赤色QDの放射ピークにて膜の赤方偏移がない。
【0049】
IPMに似た構造を有する疎水性化合物が、ホスト相として使用されてよい。例としては、ジブチルセバケート、ジオクチルセバケート、イソプロピルステアレート、及びイソプロピルパルミテートがある。
【0050】
<実施例6:サートマー社CN104及びカルボン酸メタクリレートを用いた樹脂配合物>
【0051】
4.00gの2−カルボキシエチルアクリレートオリゴマー(CEAO)をデュラン社製の琥珀色のボトルに入れた。当該ボトルには、1mLのTHFに予め溶解されており、空気中にて予め混合された0.202gのイルガキュア819が含められていた。その後、16.00gのCN104を加えて、混合物を機械的に100rpmで一晩空気中にて撹拌して、その後、THFを除去して、真空と窒素のサイクルを介して脱ガスして、樹脂1を得た。
【0052】
2相QD樹脂及び膜を作製するため、4.00gの樹脂1を1.00gの内側相に加えた。当該内側相は、イソプロピルミリステートに分散した35ODの緑色QDと、5ODの赤色QDと、5wt%のエアロジルR106とを含んでいた。混合物を、窒素中にて20分間300rpmで撹拌した。2相QD樹脂を、ラミネーターにてDバリア膜の間に挟んで、空気中にて30秒間、水銀灯を用いて硬化させた。
【0053】
<実施例7:サートマー社CN104及びカルボン酸メタクリレートを用いた樹脂配合物>
【0054】
外側相の調製:CN104(14.60g、サートマー社)を100mLの琥珀色ボトルに移した。光開始剤イルガキュア819(0.21g、オールドリッチ社)が溶解したメタクリル酸(MAA)(6.60g、オールドリッチ社)の溶液を調製して、ボトルに加えた。混合物を、オーバーヘッドスターラーを用いて暗所で一晩6期間撹拌して、樹脂2を得た。
【0055】
QD樹脂:赤色QD及び緑色QDを別々に乾燥させて、IPMに溶解させることで、内側相IPM溶液を調製した。3.5OD/gの赤色と35OD/gの緑色とを含む白色内側相溶液を、赤色溶液と、緑色溶液と、IPMと、5w%のエアロジルR106とを混合することで調製した。
【0056】
0.7OD/gの赤色と7OD/gの緑色の最終濃度を与えるように、4.00gの脱ガスした外側相に、脱ガスした白色の内側相溶液1.00gを加えることで、最終的な樹脂を調製した。その樹脂を、ラミネーターにてDバリア膜で挟んで、Hgランプを用いて、空気中にて30秒間硬化させた。
【0057】
<実施例8:サートマー社CN104及びヒドロキシ酸メタクリレートを用いた樹脂配合物>
【0058】
2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を、1.00gのイルガキュア819を含むデュラン社製の琥珀色のボトルに入れて、磁気を用いて300rpmで15分間撹拌し、その後、39.00gのCN104を加えた。一様になるまで、混合物を空気中にて機械的に撹拌し、その後、真空と窒素のサイクルを用いて脱ガスすることで、樹脂3を得た。
【0059】
CN104/HEAを用いており、粘性が異なっている樹脂は、得られるQD膜のBLU安定性に影響を与えることなく(表7)、配合物中のHEAの比を変化させることで得られる(表5)。
【表5】
【0060】
エアロジルR106を用いた2相QD樹脂及び膜:4.00gの樹脂3を1.00gの内側相に加えた。当該内側相は、IPMに分散した35ODの緑色QDと、5ODの赤色QDと、5%又は10wt%のエアロジルR106とを含んでいた。混合物を窒素中にて20分間300rpmで撹拌した。2相QD樹脂を、ラミネーターにてDバリア膜で挟んで、水銀灯を用いて、空気中にて30秒間硬化させた。
【0061】
ポリイソプレンを用いた2相QD樹脂:4.00gの樹脂3を1.00gの内側相に加えた。当該内側相は、35ODの緑色QDと、5ODの赤色QDと、50wt%のポリイソプレン(シス、平均M=40,000g/mol)をIMP中に含んでいた。混合物を窒素中にて20分間300rpmで撹拌した。2相QD樹脂を、ラミネーターにてDバリア膜で挟んで、水銀灯を用いて、空気中にて30秒間硬化させた。
【0062】
<実施例9:サートマー社CN104及びヒドロキシ酸メタクリレートを用いた樹脂配合物>
【0063】
10.00gの2−ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)を、1.02gのイルガキュア819を含むデュラン社製の琥珀色のボトルに入れて、300rpmで15分間撹拌し、その後、40.00gのCN104を加えた。一様になるまで、混合物を空気中にて機械的に撹拌し、その後、真空と窒素のサイクルを用いて脱ガスすることで、樹脂4を得た。
【0064】
エアロジルR106を用いた2相QD樹脂及び膜:4.80gの樹脂4を1.20gの内側相に加えた。当該内側相は、イソプロピルミリステートに分散した35ODの緑色QDと、5ODの赤色QDと、5wt%のエアロジルR106とを含んでいた。混合物を窒素中にて20分間300rpmで撹拌した。2相QD樹脂を、ラミネーターにてDバリア膜で挟んで、水銀灯を用いて、空気中にて30秒間硬化させた。
【0065】
<実施例10:サートマー社CN104及びヒドロキシ酸メタクリレートを用いた樹脂配合物>
【0066】
20.00gの2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を、1.36gのイルガキュア819を含むデュラン社製の琥珀色のボトルに入れて、300rpmで15分間撹拌し、その後、46.67gのCN104を加えた。一様になるまで、混合物を空気中にて機械的に撹拌し、その後、真空と窒素のサイクルを用いて脱ガスすることで、樹脂5を得た。
【0067】
エアロジルR106を用いた2相QD樹脂及び膜:4.40gの樹脂5を1.10gの内側相に加えた。当該内側相は、イソプロピルミリステートに分散した35ODの緑色QDと、5ODの赤色QDと、5wt%のエアロジルR106とを含んでいた。混合物を窒素中にて20分間300rpmで撹拌した。2相QD樹脂を、ラミネーターにてDバリア膜で挟んで、水銀灯を用いて、空気中にて30秒間硬化させた。
【0068】
<実施例11:サートマー社CN104及びヒドロキシ酸メタクリレートを用いた樹脂配合物>
【0069】
20.00gの2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)を、1.36gのイルガキュア819を含むデュラン社製の琥珀色のボトルに入れて、300rpmで15分間撹拌し、その後、46.67gのCN104を加えた。一様になるまで、混合物を空気中にて機械的に撹拌し、その後、真空と窒素のサイクルを用いて脱ガスすることで、樹脂6を得た。
【0070】
エアロジルR106を用いた2相QD樹脂及び膜:4.40gの樹脂6を1.10gの内側相に加えた。当該内側相は、イソプロピルミリステートに分散した35ODの緑色QDと、5ODの赤色QDと、5wt%のエアロジルR106とを含んでいた。混合物を窒素中にて20分間300rpmで撹拌した。2相QD樹脂を、ラミネーターにてDバリア膜で挟んで、水銀灯を用いて、空気中にて30秒間硬化させた。
【0071】
<付着評価>
バリア層との封入QD膜の付着を、バリア層を手で引き離すことで評価した。表6は、種々のバリア層との配合物の付着をまとめている。
【表6】
【0072】
CN104と、ヒドロキシ又はカルボン酸メタクリレートとを用いたQD膜は、膜C及び膜Dについて、優れた付着を示している。バリア層に対するQD膜の優れた付着によって、QD膜は、機械的及び熱的に安定になる。
【0073】
表7は、内側相が同じであって、CN104/HEA外側相が様々である配合物から調製されたQD膜から得られた光学性能データをまとめている。膜のQY/EQEと安定性は、外側相におけるHEA比によって影響を受けているようには見えず、このことは、粘性が様々な樹脂を、それらの膜の光学性能及び安定を損なうことなく調合することが可能であることを示唆している。膜は、同じ内側相と、様々なCN104/HEA外側相とから調製された。内側相は、IPMに分散した35OD/gの緑色QDと、5OD/gの赤色QDと、5wt%のエアロジルR106とを含んでいた。内側相に対する外側相の重量比は、1/4であった。QD膜は、空気中にてラミネーターでDバリア層の間に作られて、30秒の樹脂リラクゼーションの後、30秒間硬化された。
【表7】
【0074】
図4は、得られたQD膜の端での侵入について、CN104配合物における様々な定着剤の効果を示している。CN104中における一般的な定着剤PEGジアクリレート(PEGDA、Mn=575g/mol)と1,6ヘキサンジオールジアクリレートは、QD膜の安定性を減少させた。例えば、15%及び30%のPEGDAを用いた膜における端での侵入は、BLU暴露時間と共に増加して、BLUでの200時間後に夫々、0.3mm及び0.6mmに達した。また、20%のHDDAを用いた膜は、およそ0.4mmの端での侵入を示すが、15%及び30%のHEAを用いた膜は、0.3mmの侵入を示し、同じ試験条件下で700時間後でもそのままである。このことは、HEA定着剤の使用は、CN104ビスフェノールAエポキシアクリレートの酸素バリア特性に影響を与えないことを示唆している。
【0075】
図5は、20%HEAが入ったCN104樹脂を用いた2相QD膜の安定性を示している。白色膜の端での侵入は、362時間後0.3mmであり、BLUでの700時間後でも同じままであった。膜の端での侵入の観察は継続されて、膜の硬化に起因したバリア層の剥離や機械的なダメージによって侵入が引き起こされたか否かが確かめられた。図6は、20%MAA/CN104外側相樹脂を用いた2相QD膜の安定性を示す。白色膜の端での侵入は、143時間後0.1mmであり、BLUでの383時間後では0.2mmに維持された。2相QD膜の安定性はまた、内側相の組成の影響を受けることに留意のこと。ジブチルセバケート(DBS)又はC12−C15安息香酸アルキルのようなより極性が高い化合物を加えることは、2相QD膜の安定性に影響を与え得る。これは、恐らく、内側相中のこれらの化合物が、外側相へと拡散して、外側相のガスバリア特性を変化させることによる。それ故に、内側相と外側相の間での相分離が良好であることが好ましい。図7は、IPM/ポリイソプレン内側相と、CN104/20%HEA外側相とを用いた2相QD膜の安定性を示す。白色膜の端での侵入は、BLUでの1122時間中0.1mmで一定であった。
【0076】
好ましい実施形態及びその他の実施形態に関する上記の説明は、出願人が思い付いた発明概念の範囲又は適用可能性を制限又は限定することを意図してはいない。開示されている主題の任意の実施形態又は態様に基づいた上記の特徴は、開示されている主題のその他の任意の実施形態又は態様において、単独で、或いは、その他の開示された任意の特徴と組み合わされて用いられてよいことは、開示されている発明の利益と併せて理解できるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7