(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
試験液としてpH6.8のリン酸塩緩衝液を用いて37℃、毎分75回転のパドル法による溶出試験を行った場合に、90分後の前記医薬有効成分の溶出率が65%以上である、請求項1に記載の錠剤。
前記水溶性高分子物質がヒプロメロースフタル酸エステル、ヒドロキシプロピルセルロース及びポリエチレングリコールからなる群より選択される1種又は2種以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の錠剤。
打錠して260N以上の錠剤硬度を有する錠剤を製造し、試験液としてpH6.8のリン酸塩緩衝液を用いて37℃、毎分75回転のパドル法による溶出試験を前記錠剤について行った場合に、90分後の前記医薬有効成分の溶出率が65%以上である、請求項6に記載の固体分散体顆粒。
前記水溶性高分子物質がヒプロメロースフタル酸エステル、ヒドロキシプロピルセルロース及びポリエチレングリコールからなる群より選択される1種又は2種以上である、請求項6〜8のいずれか一項に記載の固体分散体顆粒。
粒度分布において、D90/D10が4以上であるメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを主成分として含有する粉末と、水溶性高分子物質及び医薬有効成分を含有する結合液とを混合し、撹拌造粒機で造粒する工程を備え、
前記水溶性高分子物質が、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロースフタル酸エステル及びポリエチレングリコールからなる群より選択される1種又は2種以上であり、前記医薬有効成分がシルニジピン又はその薬学的に許容される塩である、
固体分散体顆粒の製造方法。
前記水溶性高分子物質がヒプロメロースフタル酸エステル、ヒドロキシプロピルセルロース及びポリエチレングリコールからなる群より選択される1種又は2種以上である、請求項10に記載の固体分散体顆粒の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと、水溶性高分子物質と、医薬有効成分とを含有する固体分散体を含む錠剤は、医薬有効成分の溶出速度向上の点で改良の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと、水溶性高分子物質と、医薬有効成分とを含有する固体分散体を含むにもかかわらず、医薬有効成分の溶出速度が速い錠剤を提供することを目的とする。本発明はまた、上記錠剤の材料となる固体分散体及びその製造方法、並びに、上記錠剤又は上記固体分散体の材料となるメタケイ酸アルミン酸マグネシウム及びその評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の通りである。
[1]粒度分布において、D90/D10が4以上であるメタケイ酸アルミン酸マグネシウムと、水溶性高分子物質と、医薬有効成分とを含有する固体分散体を含む、錠剤。
[2]試験液としてpH6.8のリン酸塩緩衝液を用いて37℃、毎分75回転のパドル法による溶出試験を行った場合に、90分後の前記医薬有効成分の溶出率が65%以上である、[1]に記載の錠剤。
[3]錠剤硬度が260N以上である、[1]又は[2]に記載の錠剤。
[4]前記水溶性高分子物質がヒプロメロースフタル酸エステルである、[1]〜[3]のいずれかに記載の錠剤。
[5]前記医薬有効成分がシルニジピン又はその薬学的に許容される塩である、[1]〜[4]のいずれかに記載の錠剤。
[6]前記医薬有効成分の含有量が1錠あたり5mg以上である、[1]〜[5]のいずれかに記載の錠剤。
[7]粒度分布において、D90/D10が4以上であるメタケイ酸アルミン酸マグネシウムと、水溶性高分子物質と、医薬有効成分とを含有する固体分散体。
[8]打錠して260N以上の錠剤硬度を有する錠剤を製造し、試験液としてpH6.8のリン酸塩緩衝液を用いて37℃、毎分75回転のパドル法による溶出試験を前記錠剤について行った場合に、90分後の前記医薬有効成分の溶出率が65%以上である、[7]に記載の固体分散体。
[9]前記医薬有効成分の含有量が前記錠剤1錠あたり5mg以上である、[8]に記載の固体分散体。
[10]前記水溶性高分子物質がヒプロメロースフタル酸エステルである、[7]〜[9]のいずれかに記載の固体分散体。
[11]前記医薬有効成分がシルニジピン又はその薬学的に許容される塩である、[7]〜[10]のいずれかに記載の固体分散体。
[12]粒度分布において、D90/D10が4以上であるメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを主成分として含有する粉末と、水溶性高分子物質及び医薬有効成分を含有する結合液とを混合し、撹拌造粒機で造粒する工程を備える、固体分散体の製造方法。
[13]粒度分布において、D90/D10が下記式(3)を満たす、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム。
D90/D10=(L−63.5)/K (3)
[式(3)中、Lは前記メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと、水溶性高分子物質と、医薬有効成分とを含有する固体分散体を含み、260N以上の錠剤硬度を有する錠剤を製造し、試験液としてpH6.8のリン酸塩緩衝液を用いて37℃、毎分75回転のパドル法による溶出試験を前記錠剤について行った場合の90分後の前記医薬有効成分の溶出率(%)を示し、Kは0.47〜4.7の実数を示す。]
[14]前記D90/D10が4以上である、[13]に記載のメタケイ酸アルミン酸マグネシウム。
[15]前記水溶性高分子物質がヒプロメロースフタル酸エステルである、[13]又は[14]に記載のメタケイ酸アルミン酸マグネシウム。
[16][1]〜[6]のいずれかに記載の錠剤又は[7]〜[11]のいずれかに記載の固体分散体の製造用である、[13]〜[15]のいずれかに記載のメタケイ酸アルミン酸マグネシウム。
[17]メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの粒度分布を測定する工程と、前記メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと、水溶性高分子物質と、医薬有効成分とを含有する固体分散体を含む錠剤の溶出試験を行う工程と、を備える、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの評価方法。
[18]メタケイ酸アルミン酸マグネシウムをトルクメーター付撹拌造粒機で撹拌し、所定時間撹拌後の主軸最大電流値を測定する測定工程と、前記主軸最大電流値に基づいて、前記メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを評価する工程と、を備える、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの評価方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと、水溶性高分子物質と、医薬有効成分とを含有する固体分散体を含むにもかかわらず、医薬有効成分の溶出速度が速い錠剤を提供することができる。また、上記錠剤の材料となる固体分散体及びその製造方法、並びに、上記錠剤又は上記固体分散体の材料となるメタケイ酸アルミン酸マグネシウム及びその評価方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[錠剤]
1実施形態において、本発明は、粒度分布において、D90/D10が4以上であるメタケイ酸アルミン酸マグネシウムと、水溶性高分子物質と、医薬有効成分とを含有する固体分散体を含む錠剤を提供する。本実施形態の錠剤は、試験液としてpH6.8のリン酸塩緩衝液を用いて37℃、毎分75回転のパドル法による溶出試験を行った場合に、90分後の前記医薬有効成分の溶出率が65%以上であってもよい。また、本実施形態の錠剤は、錠剤硬度が260N以上であってもよい。
【0010】
本実施形態の錠剤によれば、錠剤硬度を高く設定することにより、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと、水溶性高分子物質と、医薬有効成分とを含有する固体分散体顆粒を含むにもかかわらず、医薬有効成分の溶出速度が速い錠剤を提供することができる。
【0011】
従来、錠剤硬度が高くなると医薬有効成分の溶出速度が遅くなると考えられていた。これに対し、本実施形態の錠剤は、錠剤硬度が高いにもかかわらず医薬有効成分の溶出速度が速い。
【0012】
ここで、溶出速度が速いとは、より具体的には、試験液としてpH6.8のリン酸塩緩衝液を用いて37℃、毎分75回転のパドル法による溶出試験を行った場合に、90分後の医薬有効成分の溶出率が65%以上、例えば70%以上、例えば75%以上、例えば80%以上であることを意味する。
【0013】
溶出試験は、第十六改正日本薬局方に記載された溶出試験法(パドル法)にしたがって実施することができる。
【0014】
メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、以下の化学式(F1)で表される化合物であってもよい。化学式(F1)で表される化合物は、明確な構造を有していないため、構造式で表すことができない。無定形構造を有しており、多孔質で比表面積が大きく、吸油性に優れる物質であることが知られている。
Al
2O
3・MgO・1.7SiO
2・7H
2O (F1)
【0015】
水溶性高分子物質としては、メチルセルロース、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(ヒプロメロースフタル酸エステル)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボシキメチルエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース等のセルロース類及びその誘導体;ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリルコポリマーRS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS、カルボキシルビニルポリマー等の合成高分子;アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、寒天、ゼラチン、トラガント、キサンタンガム等の天然高分子;及び糖類等が挙げられる。水溶性高分子物質は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
本実施形態の錠剤は、医薬有効成分がシルニジピン又はその薬学的に許容される塩であってもよい。シルニジピンは、(±)−2−メトキシエチル 3−フェニル−2(E)−プロペニル 1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチル−4−(3−ニトロフェニル)−3,5−ピリジンカルボキシレートであり、その薬学的に許容される塩としては、酸付加塩(例えば塩酸塩)等が挙げられる。
【0017】
本実施形態の錠剤は、医薬有効成分として複数の成分を含有していてもよい。すなわち、本実施形態の錠剤は合剤であってもよい。シルニジピン又はその薬学的に許容される塩以外の医薬有効成分としては、例えば、ロサルタン、バルサルタン、カンデサルタン・シレキセチル、テルミサルタン、オルメサルタン メドキソミル、イルベサルタン、アジルサルタン及びこれらの薬学的に許容される塩等が挙げられる。
【0018】
上記の医薬有効成分の含有量は1錠あたり5mg以上であってもよく、10mg以上であってもよく、20mg以上であってもよい。錠剤中の医薬有効成分の含有量が多いと、医薬有効成分の溶出速度が遅くなる傾向にある。しかしながら、本実施形態の錠剤によれば、医薬有効成分の含有量が上記の量であっても十分な溶出速度を達成することができる。
【0019】
ここで、十分な溶出速度とは、試験液としてpH6.8のリン酸塩緩衝液を用いて37℃、毎分75回転のパドル法による溶出試験を行った場合に、90分後の医薬有効成分の溶出率が65%以上、例えば70%以上、例えば75%以上、例えば80%以上であることを意味する。
【0020】
本明細書において、粒度分布は、動的光散乱法、レーザー回折・散乱法、画像イメージング法等のいずれの方法によって測定してもよい。例えば、乾式レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置で測定してもよい。
【0021】
本実施形態の錠剤は、医薬有効成分、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、水溶性高分子物質以外にも、薬学上許容される適当な賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を含んでいてもよい。
【0022】
賦形剤としては、例えば、乳糖、マンニトール、ショ糖、ブドウ糖等の糖類、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン、部分α化デンプン等のデンプン類、沈降炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、塩化ナトリウム等の無機塩類、結晶セルロース等が挙げられる。
【0023】
結合剤としては、例えば、部分けん化ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、プルラン、メチルセルロース、アラビアゴム、デンプン類等が挙げられる。
【0024】
崩壊剤としては、例えば、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、部分α化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等が挙げられる。
【0025】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、滑石、水素添加植物油、タルク等が挙げられる。
【0026】
滑沢剤は、医薬有効成分、賦形剤等中に予め添加しておき、医薬有効成分、賦形剤等と滑沢剤との混練物を打錠するようにしてもよく(このような錠剤の製造方法は、内部滑沢法と称される)、また、医薬有効成分、賦形剤等中には添加せずに、杵や臼の表面に滑沢剤を噴霧して、表面に滑沢剤層を有する杵や臼を用いて、医薬有効成分、賦形剤等の混練物を打錠するようにしてもよい(このような錠剤の製造方法は、外部滑沢法と称される)。また、コーティング法としては、慣用のコーティング法であれば、種々のコーティング法を用いることができ、例えば、パン(あるいはドラム)コーティング法や流動コーティング法等を用いることができる。このようなコーティングの膜厚は、例えば10〜150μm程度であってもよい。
【0027】
[固体分散体]
1実施形態において、本発明は、粒度分布において、D90/D10が4以上であるメタケイ酸アルミン酸マグネシウムと、水溶性高分子物質と、医薬有効成分とを含有する固体分散体を提供する。本実施形態の固体分散体は、打錠して260N以上の錠剤硬度を有する錠剤を製造し、試験液としてpH6.8のリン酸塩緩衝液を用いて37℃、毎分75回転のパドル法による溶出試験を前記錠剤について行った場合に、90分後の前記医薬有効成分の溶出率が65%以上であってもよい。また、本明細書において、固体分散体は固体分散体顆粒であってもよい。また、水溶性高分子物質としては上述したものと同様のものが挙げられる。
【0028】
本実施形態の固体分散体は、打錠して高い錠剤硬度を有する錠剤を製造した場合に、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと、水溶性高分子物質と、医薬有効成分とを含有する固体分散体を含むにもかかわらず、医薬有効成分の溶出速度が速い錠剤を提供することができる。上記の錠剤は、医薬有効成分の含有量が1錠あたり5mg以上であるものであってもよい。また、上記の錠剤が含有する医薬有効成分の上限としては、例えば1錠あたり20mgが挙げられる。
【0029】
本実施形態の固体分散体は、医薬有効成分がシルニジピン又はその薬学的に許容される塩であってもよい。また、本実施形態の錠剤は、医薬有効成分として複数の成分を含有していてもよい。本実施形態の固体分散体が含有する医薬有効成分としては、上述したものと同様のものを挙げることができる。
【0030】
[固体分散体の製造方法]
1実施形態において、本発明は、粒度分布において、D90/D10が4以上であるメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを主成分として含有する粉末と、水溶性高分子物質及び医薬有効成分を含有する結合液とを混合し、撹拌造粒機で造粒する工程を備える、固体分散体の製造方法を提供する。なお、本明細書において、D10とは、粒度分布において、粒径が小さい側からの体積累積が10%に相当する粒径を意味する。同様に、D90とは、粒度分布において、粒径が小さい側からの体積累積が90%に相当する粒径を意味する。水溶性高分子物質としては上述したものと同様のものが挙げられる。
【0031】
別の実施形態において、本発明は、粒度分布において、D50/D10が2以上であるメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを主成分として含有する粉末と、水溶性高分子物質及び医薬有効成分を含有する結合液とを混合し、撹拌造粒機で造粒する工程を備える、固体分散体の製造方法を提供する。なお、本明細書において、D50とは、粒度分布において、粒径が小さい側からの体積累積が50%に相当する粒径を意味する。水溶性高分子物質としては上述したものと同様のものが挙げられる。
【0032】
上記実施形態の製造方法によれば、錠剤を製造した場合に医薬有効成分の溶出速度が速い、固体分散体を製造することができる。上記の錠剤は、医薬有効成分の含有量が1錠あたり5mg以上であるものであってもよい。
【0033】
本実施形態の製造方法において、医薬有効成分は、シルニジピン又はその薬学的に許容される塩であってもよい。固体分散体に含有させる医薬有効成分としては、上述したものと同様のものを挙げることができる。
【0034】
[メタケイ酸アルミン酸マグネシウム]
1実施形態において、本発明は、粒度分布において、D90/D10が下記式(3)を満たす、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを提供する。式(3)中、Lは前記メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと、水溶性高分子物質と、医薬有効成分とを含有する固体分散体を含み、260N以上の錠剤硬度を有する錠剤を製造し、試験液としてpH6.8のリン酸塩緩衝液を用いて37℃、毎分75回転のパドル法による溶出試験を前記錠剤について行った場合の90分後の前記医薬有効成分の溶出率(%)を示し、Kは0.47〜4.7の実数を示す。水溶性高分子物質としては上述したものと同様のものが挙げられる。
D90/D10=(L−63.9)/K (3)
【0035】
本実施形態のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、錠剤を製造した場合の医薬有効成分の溶出速度が式(3)を満たす。したがって、本実施形態のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを材料に用いることにより、所望の範囲の医薬有効成分の溶出速度を示す錠剤を製造することができる。
【0036】
上記のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムのD90/D10は4以上であってもよい。D90/D10が4以上であるメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを材料に用いることにより、医薬有効成分の溶出速度が速い錠剤を製造することができる。
【0037】
1実施形態において、本発明は、粒度分布において、D50/D10が下記式(4)を満たす、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを提供する。式(4)中、Lは前記メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと、水溶性高分子物質と、医薬有効成分とを含有する固体分散体を含み、260N以上の錠剤硬度を有する錠剤を製造し、試験液としてpH6.8のリン酸塩緩衝液を用いて37℃、毎分75回転のパドル法による溶出試験を前記錠剤について行った場合の90分後の前記医薬有効成分の溶出率(%)を示し、K’は1.0〜4.7の実数を示す。水溶性高分子物質としては上述したものと同様のものが挙げられる。
D50/D10=(L−64.3)/K’ (4)
【0038】
本実施形態のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、錠剤を製造した場合の医薬有効成分の溶出速度が式(4)を満たす。したがって、本実施形態のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを材料に用いることにより、所望の範囲の医薬有効成分の溶出速度を示す錠剤を製造することができる。
【0039】
上記のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムのD50/D10は2以上であってもよい。D50/D10が2以上であるメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを材料に用いることにより、医薬有効成分の溶出速度が速い錠剤を製造することができる。
【0040】
上記のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、上述した錠剤又は固体分散体の製造用であるということもできる。
【0041】
[メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの評価方法]
1実施形態において、本発明は、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの粒度分布を測定する工程と、前記メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと、水溶性高分子物質と、医薬有効成分とを含有する固体分散体を含む錠剤の溶出試験を行う工程と、を備える、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの評価方法を提供する。本実施形態の評価方法は、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの粒度分布を測定する工程と、前記粒度分布において、D90/D10が4以上であった場合に、前記メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと、水溶性高分子物質と、医薬有効成分とを含有する固体分散体を含み、260N以上の錠剤硬度を有する錠剤は、試験液としてpH6.8のリン酸塩緩衝液を用いて37℃、毎分75回転のパドル法による溶出試験を行った場合に、90分後の前記医薬有効成分の溶出率が65%以上になると判断する工程と、を備える、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの評価方法であってもよい。水溶性高分子物質としては上述したものと同様のものが挙げられる。
【0042】
別の実施形態において、本発明は、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの粒度分布を測定する工程と、前記粒度分布において、D50/D10が2以上であった場合に、前記メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと、水溶性高分子物質と、医薬有効成分とを含有する固体分散体を含み、260N以上の錠剤硬度を有する錠剤は、試験液としてpH6.8のリン酸塩緩衝液を用いて37℃、毎分75回転のパドル法による溶出試験を行った場合に、90分後の前記医薬有効成分の溶出率が65%以上になると判断する工程と、を備える、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの評価方法を提供する。水溶性高分子物質としては上述したものと同様のものが挙げられる。
【0043】
本実施形態の評価方法によれば、対象のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを用いて錠剤を製造した場合に、医薬有効成分の溶出速度が所定の値を達成できるか否かを、実際に錠剤を製造することなく予測することができる。
【0044】
1実施形態において、本発明は、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムをトルクメーター付撹拌造粒機で撹拌し、所定時間撹拌後の主軸最大電流値を測定する測定工程と、前記主軸最大電流値に基づいて、前記メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを評価する工程と、を備える、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの評価方法を提供する。本実施形態の評価方法は、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムをトルクメーター付撹拌造粒機で撹拌し、所定時間撹拌後の主軸最大電流値を測定する測定工程と、前記主軸最大電流値に基づいて、前記メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと、水溶性高分子物質と、医薬有効成分とを含有する固体分散体を含み、260N以上の錠剤硬度を有する錠剤は、試験液としてpH6.8のリン酸塩緩衝液を用いて37℃、毎分75回転のパドル法による溶出試験を行った場合に、90分後の前記医薬有効成分の溶出率が65%以上になるか否かを判断する判断工程と、を備える、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの評価方法を提供する。
【0045】
上記実施形態の評価方法は、測定工程が、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム17.5gをトルクメーター付撹拌造粒機に投入し、前記メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを2分間撹拌し、撹拌後の前記メタケイ酸アルミン酸マグネシウムに、マクロゴール400 3.33質量部、ヒプロメロースフタル酸エステル19.04質量部、メタノール57.8質量部及びジクロルメタン57.8質量部を含有する結合液26gを添加して、更に12分間撹拌後の主軸最大電流値を測定する工程であり、判断工程が、主軸最大電流値が0.048A以上であった場合に、前記メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと、前記ヒプロメロースフタル酸エステルと、前記医薬有効成分とを含有する固体分散体顆粒を含み、260N以上の錠剤硬度を有する錠剤は、試験液としてpH6.8のリン酸塩緩衝液を用いて37℃、毎分75回転のパドル法による溶出試験を行った場合に、90分後の前記医薬有効成分の溶出率が65%以上になると判断する工程であってもよい。
【0046】
測定工程で測定する主軸最大電流値は、0.03A以上であってもよく、0.045A以上であってもよく、0.1A以上であってもよい。トルクメーター付撹拌造粒機としては、例えば、井元製作所社製の商品名「PalmXer」が挙げられる。トルクメーター付撹拌造粒機としてPalmXer(商品名、井元製作所社製)を用いる場合、測定工程で測定する主軸最大電流値は、0.48A以上であってもよく、0.1A以上であってもよく、0.125A以上であってもよい。
【0047】
本実施形態の評価方法によれば、対象のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを用いて錠剤を製造した場合に、医薬有効成分の溶出速度が所定の値を達成できるか否かを、実際に錠剤を製造することなく予測することができる。
【実施例】
【0048】
以下、実験例により本発明を説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
【0049】
<メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの評価>
[D90/D10の測定]
ロット1〜5のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを準備し、乾式レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(型式「LA−950S2」、株式会社堀場製作所製)でそれぞれ粒度分布を測定した。続いて、粒度分布の測定結果に基づいて、D90/D10の値をそれぞれ算出した。結果を表1に示す。
【0050】
[D50/D10の測定]
D90/D10の測定と同様にして、ロット1〜5のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムのD50/D10の値をそれぞれ算出した。結果を表1に示す。
【0051】
[造粒した場合の撹拌造粒機の主軸最大電流値の測定]
続いて、ロット1〜5のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムをトルクメーター付撹拌造粒機(商品名「PalmXer」、井元製作所社製)で造粒し、所定時間撹拌後の主軸最大電流値を測定した。
【0052】
具体的には、まず、各ロットのメタケイ酸アルミン酸マグネシウムそれぞれ17.5gをトルクメーター付撹拌造粒機に投入し、2分間撹拌した。続いて、撹拌後のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムに、マクロゴール400 3.33質量部、ヒプロメロースフタル酸エステル19.04質量部、メタノール57.8質量部及びジクロルメタン57.8質量部を含有する結合液26gを添加して、更に12分間撹拌後の主軸最大電流値を測定した。測定した結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
<錠剤の製造>
[実施例1]
(A顆粒の製造)
1錠あたり、シルニジピン10.0mg、マクロゴール400 7mg、ヒドロキシプロピルセルロース40.0mgをメタノール−ジクロルメタン混合溶媒180mgに溶解した溶液を、上記ロット1のメタケイ酸アルミン酸マグネシウム110.0mg、適量の乳糖、結晶セルロース31.4mg、クロスカルメロースナトリウム25mgに加え、混合・撹拌し、溶媒を留去して実施例1の固体分散体顆粒(A顆粒)248mgを製造した。
【0055】
(B顆粒の製造)
1錠あたり、シルニジピン10.0mg、マクロゴール400 7mg、ヒプロメロースフタル酸エステル40.0mgをメタノール−ジクロルメタン混合溶媒242mgに溶解した溶液を、上記ロット1のメタケイ酸アルミン酸マグネシウム110.0mg、適量の乳糖、結晶セルロース31.4mg、クロスカルメロースナトリウム25.0mgに加え、混合・撹拌し、溶媒を留去して実施例1の固体分散体顆粒(B顆粒)248mgを製造した。
【0056】
(錠剤の製造)
上記A顆粒及びB顆粒を3:7の質量比で混合し、1錠あたりステアリン酸マグネシウム2mgとタルク2mgを加えて打錠することにより、1錠あたり20mgのシルニジピンを含有する、実施例1の錠剤(素錠)(1錠あたり500mg)を製造した。錠剤の形状は分割するための割線を有する楕円形とした。
【0057】
[実施例2〜4、比較例1]
ロット1のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムの代わりに、それぞれロット2、ロット3、ロット4、ロット5のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを使用した以外は実施例1と同様にして、それぞれ実施例2、実施例3、実施例4、比較例1の固体分散体顆粒(A顆粒)、固体分散体顆粒(B顆粒)及び錠剤を製造した。
【0058】
<錠剤の評価>
上記実施例1〜4、比較例1の錠剤について、錠剤硬度及びシルニジピンの溶出速度を測定した。
【0059】
(錠剤硬度)
錠剤硬度計(岡田精工社製、TS−50N又はTS−75N)を用いて、各錠剤の長軸方向に圧力をかけ、錠剤硬度を測定した。10錠の錠剤について錠剤硬度を測定し、その平均値を錠剤硬度とした。結果を表2に示す。
【0060】
(溶出速度)
第十六改正日本薬局方に記載された溶出試験法(パドル法)にしたがって、シルニジピンの溶出速度を測定した。測定条件は以下の通りとした。結果を表2に示す。
(溶出速度の測定条件)
試験液:0.1%(W/V)ポリソルベート80・pH6.8リン酸緩衝液900mL
パドル回転数:75rpm
試験液温度:37±0.5℃
溶出率(%):90分後のシルニジピンの溶出率を測定
【0061】
【表2】
【0062】
<D90/D10の値と錠剤(20mg錠)の溶出率との関係>
図1は、上記のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムのD90/D10の値と錠剤(20mg錠)の溶出率との関係をプロットしたグラフである。D90/D10の値と錠剤の溶出率との間には正の相関が認められ、溶出率をy、D90/D10をxとした場合に下記式(5)が成り立つことが示された。式(5)において、相関係数(R
2)は0.748であった。
y=0.9726x+63.541 (5)
【0063】
ここで、式(5)で表される直線の傾きをKに、溶出率をLに置き換えて変形すると式(3)が得られる。
D90/D10=(L−63.5)/K (3)
【0064】
D90/D10の値と錠剤(20mg錠)の溶出率との関係について、同様の検討を多数行った結果、式(3)におけるKが0.47〜4.7の範囲にあると、錠剤(20mg錠)の溶出率が65%以上となる傾向が認められた。
【0065】
<D50/D10の値と錠剤(20mg錠)の溶出率との関係>
図2は、上記のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムのD50/D10の値と錠剤(20mg錠)の溶出率との関係をプロットしたグラフである。D50/D10の値と錠剤の溶出率との間には正の相関が認められ、溶出率をy、D50/D10をxとした場合に下記式(6)が成り立つことが示された。式(6)において、相関係数(R2)は0.7383であった。
y=1.7478
x+63.291 (6)
【0066】
ここで、式(6)で表される直線の傾きをK’に、溶出率をLに置き換えて変形すると式(4)が得られる。
D50/D10=(L−63.3)/K’ (4)
【0067】
D50/D10の値と錠剤(20mg錠)の溶出率との関係について、同様の検討を多数行った結果、式(4)におけるK’が1.0〜4.7の範囲にあると、錠剤(20mg錠)の溶出率が65%以上となる傾向が認められた。
【0068】
<主軸最大電流値と錠剤(20mg錠)の溶出率との関係>
図3は、上記の主軸最大電流値と錠剤(20mg錠)の溶出率との関係をプロットしたグラフである。主軸最大電流値と錠剤の溶出率との間には正の相関が認められ、溶出率をy、主軸最大電流値をxとした場合に下記式(7)が成り立つことが示された。式(7)において、相関係数(R
2)は0.7306であった。
y=64.641x+61.922 (7)