(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
パワー系の半導体装置(パワーモジュール)は、半導体素子(以下、半導体チップまたは単にチップとも言う)と絶縁基板、もしくは絶縁基板と放熱用金属板をはんだ等で接合した構造となっているものが多い。
【0003】
これまで、高耐熱性が要求される半導体装置、特に自動車や建機、鉄道、情報機器分野等に用いられる半導体装置の接続部材としては鉛(Pb)入りはんだが使用されてきたが、環境負荷低減のため、鉛フリーの接続部材を使用した機器も広く使用されている。
【0004】
近年、高温動作が可能で、かつ機器の小型軽量化が可能なSiCやGaN等のワイドギャップ半導体の開発が推し進められている。一般的にSi(シリコン)の半導体素子は動作温度の上限が150〜175℃であるのに対し、SiC(シリコンカーバイト)の半導体素子は175℃以上での使用が可能である。
【0005】
ただし、使用温度が高温になると、パワーモジュールを代表とする半導体装置に使用される各種部材についても175℃以上の耐熱性が要求される。また、コスト低減のため、高効率で安定な接合プロセスの要求も高まっている。
【0006】
上記のようにパワーモジュールでは、製造コストを低減するため安定的で耐熱性の高い接合構造が要求されている。
【0007】
特許文献1(特開2001−185664号公報)には、「セラミックス基板1上に金属回路板2aを接合し、この金属回路板2aに半導体ペレット3をハンダ4により接合するものにおいて、金属回路板2aの半導体ペレット3搭載面のうちハンダ4が塗布されない部位に、ソルダーレジスト層7を設ける。(要約参照)」が開示されている。
【0008】
特許文献2(米国特許出願公開第11/337687号明細書)には、「金属ベース13上にダム材15を溶射してダム部を形成することにより、複数の回路基板11を金属ベース13上へ接合する際に用いる半田14の流動を制限する。
【0009】
このようなダム部を金属ベース13上に形成することで、半田の流動を制限でき、エポキシ樹脂などの有機物からなるソルダレジストとして用いた場合のように、半田付け時のアウトガスを発生させることがない。これにより、半田付け時において、半田付け性が阻害させることがなく、装置汚染も回避できる。(要約参照)」が開示されている。
【0010】
特許文献3(特開2013−58542号公報)には、「リードフレーム10は、金属製のダイパッド11と、ダイパッド11の周囲に設けられたリード部12とを備えている。ダイパッド11は、半導体素子21が搭載される搭載領域15と、搭載領域15を帯状に囲む半田流出防止用の半田流出防止領域16とを含んでいる。半田流出防止領域16は、搭載領域15に対して粗面化されているので、半田部22の流れを半田流出防止領域16で止めることができる。(要約参照)」が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。異なる図に記載される同一の符号であっても、他の図で説明した同一の符号は、原則として同一の構成であるため、説明を省略する場合がある。また、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0029】
図1は本発明の実施の形態の半導体装置(パワーモジュールとも呼ぶ)20の構造の一例を示す断面図である。また、
図2は半導体装置20を上面から観察した様子を示す。
【0030】
本実施の形態の半導体装置は、例えば、鉄道の車両や自動車の車体等に搭載される半導体装置(パワーモジュール)である。したがって、複数のパワー系の半導体チップ(半導体素子)1を備えており、はんだ流れ対策が必要な半導体装置である。
なお、半導体チップ1は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor )やMOS、Diode等であるが、ただしこれに限定されるものではない。
【0031】
図1と
図2に示すパワーモジュール20の構成について説明する。パワーモジュール20は、半導体チップ1を支持するセラミック基板(配線基板)3と、半導体チップ1の上面(主面)1aの電極1cとセラミック基板3の上面3aの配線3cbとを電気的に接続する導電性のワイヤ6と、セラミック基板3の配線3cbと電気的に接続し、外部に引き出される端子(リード)7とを有している。
【0032】
ワイヤ6は、例えばAl線またはCu線等である。また、端子7は、その一端である底面部が、セラミック基板3に配置された電極3cbに接合されている。また、図では省略するが端子7の他端がケース8の外部に引き出されている。
【0033】
半導体チップ1の上面3a側には、例えばゲート用の電極1cが形成されており、配線3caとワイヤ6を介して電気的に接続されている。
【0034】
被接合部材である半導体チップ1は、接合部材であるはんだ2(接合材、はんだ合金とも呼ぶ)を介して他方の被接合部材であるセラミック基板3に接合されている。
【0035】
また、セラミック基板3とはんだ2との間には、配線3cb、めっき9が配置されている。また、めっき9の側面部には境界領域10が配置されている。めっき9と境界領域10は厳密に接している必要はない。
【0036】
はんだ2は、Snを主成分とするはんだ合金もしくはPbを主成分とするはんだ合金であり、例えば、Pb−Sn、Sn−Cu、Sn−Cu−Sn、Sn−Sb、Sn−Ag−Cu、Sn−In等である。他には、Zn−Al、Au−Ge、Au−Si等の接合材でもよい。
【0037】
セラミック基板3の上面3a側には、端子7が搭載されている。下面3b側には、配線3ccが設けられている。配線3ccは、接合部材であるはんだ(接合材、はんだ合金とも呼ぶ)5を介してベース板(金属板)4に搭載されている。
【0038】
すなわち、一方の被接合部材であるベース板4は、接合部材であるはんだ5を介して、他方の被接合部としてセラミック基板配線3に設けられた配線3ccと接合されている。
これにより、ベース板4はセラミック基板3を支持している。ベース板4は、放熱板である。配線3ccははんだ5を介してベース板4と電気的に接続されている。
【0039】
ここで、はんだ5の部材は、はんだ2と同様の部材を用いることができ、同一の部材でも異なる部材でもよい。例えば、はんだ2は半導体チップ1の耐熱性を考慮しZn−Al系とし、はんだ5はリフローで接合することを考慮しSn−Cu系とするとよい。
【0040】
セラミック基板3に配置される構成について説明する。セラミック基板3の上面3aと下面3bに配置される配線3ca,3cb,3ccの部材は、例えば、CuやAlである。他には、セラミック基板3に接合できる金属であればよい。
【0041】
セラミック基板3に配線3ca等を配置する方法は、銀ろう等によって接合するとよい。なお、配線3ca等の部材にAl配線を用いる場合には、酸化膜が形成されはんだ2がぬれにくく接合が困難となるが、めっき9を施すと接合性が向上する。
【0042】
さらに、上面3aには、配線3caのはんだ2が接続される部分にはめっき9が形成されており、めっき9と配線3caとの間に構成される境界部分には境界領域10が設けられている。めっき9の部材はNi、Cu、Au、Sn等が用いられる。
【0043】
このめっき9は必須構成ではなく、はんだ2との接合性を向上させることが可能となるため、配線3caがCuで構成される場合には、めっき9を配置しなくともよい。
【0044】
この境界領域10は、一例として、金属粒子が付着している領域であり、粒子径が大きくなると単位体積当たりの表面積が小さくなるため、平均粒子径は望ましくは20um以下である。
【0045】
平均粒子径が20um以下の場合の境界領域10の幅は、溶融したはんだが流れる方向に対して100um以下の幅で十分な効果が得られるが、100umより太くても実施できる。また、金属粒子が配線3cb上に配置されていることから、表面が粗くなり、封止樹脂との接合性が向上するという効果も生じる。
【0046】
また、境界領域10は配線3cbの幅方向に対して、一方の端部から他方の端部まで配置されることが望ましい。幅方向に対して両端部間の領域に配置することではんだ流れの経路を塞ぐことができるからである。
【0047】
なお、幅方向の一部に境界領域10を設けなくとも、つまり、境界領域10を複数配置した場合であっても、金属粒子または部材間ではんだ流れを止めることができるため、厳密に幅方向全体に境界領域を設けなくとも実施可能である。
【0048】
これらの金属粒子は、例えばエアロゾルデポジション法であればサブミクロンオーダーの金属粒子を配置することができる。
【0049】
また。配線3ca上にめっき9を広く施し、境界領域10とめっき9にマスクをし、不要な部分をエッチングすることで、めっき9と共に金属粒子を配置することができる。
【0050】
金属粒子の材質は、例えば、Ni粒子、Ag粒子、Cu粒子またAl粒子などであれば実施できる。ただし、はんだ2、はんだ5は主成分がSnであることから、Sn粒子を用いた場合には、溶融したはんだに吸収されてしまうため、上記の金属粒子が望ましい。
【0051】
本願明細書においては、主成分とはその部材が有する元素のうち最も多い元素であることを意味する。例えば、Sn−3Ag−0.5Cuであれば、Sn成分が主成分である。
【0052】
他の金属粒子として、Cu−Sn化合物、Ni−Sn化合物、Al−Ni化合物等の金属間化合物でも実施でき、これらの場合は、純粋な金属粒子よりも融点が高いため、溶融したはんだに吸収されることはない。
【0053】
特にCu−Sn化合物は融点が600℃を超えるため、Zn−Al系はんだの接合温度380℃超であっても、溶融したはんだに吸収されることはなく、はんだ流れを止めることができる。
【0054】
境界領域10を構成する金属部材は、金属粒子以外に、金属の所定の大きさの塊でもよい。この場合は、立体的な構造となることで、表面積を大きくすることができる。立体とする場合には、球状や立方体や直方体であってもよい。
球形状とする場合は、直径が100umより小さいことが望ましい。なお、ラグビーボールのような楕円形状でもよい。
【0055】
また、立方体や直方体等の立体形状の断面で最も長い辺である長辺が100umより小さいことが望ましい。直径または長辺が100um以上の大きさでも実施することができるが、小さい方がより多くの粒子を配置できることが望ましい。表面積に対して密度が小さい方が有効だからである。
【0056】
また、境界領域10の金属部材は、Ni、Cu、AlまたはAg等のポーラス構造とすることもできる。
【0057】
ポーラス構造とは多孔質構造であり、金属中に連続気孔または独立気孔を有するものであり、多孔質金属のことをいう。焼結法、不活性ガス注入、発泡樹脂等を使用した気孔形成法、スペーサ等によって製造することができる。
【0058】
このような配線3cbの部材と異なる金属粒子等またはポーラス構造の金属部材を境界領域10に設けることによって、はんだ2が溶融の際に流れた場合に、境界領域10ではんだ流れを止めることができる。
【0059】
これは、めっき9と配線部3cbでは、異なる金属が表面に形成されているためはんだのぬれ性が異なることおよび、境界領域10ではんだのぬれる表面積が大きくなるため、はんだ流れを境界領域10で抑制することができる。
【0060】
すなわち、境界領域10は、配線3caを構成する金属部材と異なる金属部材によって構成され、めっき9の領域または配線3caの領域に比べて表面積が大きく密度が低くなっていることから、ぬれ性の異なる金属に接触することにより配線3caと境界領域10との間に金属間で張力が生じ、はんだが流れることができなくなると考えられる。
【0061】
このように、はんだ流れを抑制することで、半導体チップ1とめっき9との間のはんだ2が流出しないため、はんだ2が薄くなることを防止できる。ひいては、半導体装置において重要な半導体チップ1とセラミック基板3の接合信頼性を向上し、半導体装置全体の高品質化を実現することができる。
【0062】
さらに、めっき9を施した場合には、はんだ2がめっき9から配線3caへと異なる金属に接触するため、はんだ流れ防止の効果を高めることができる。
【0063】
次に、
図3にCuの配線3cd上にNiめっき9aと境界領域10aを設けた様子を電子顕微鏡により観察した状態を示す。
【0064】
図3の中央付近に境界領域10aには、Niの金属粒子が点在しており、その左側の領域はめっき9aが配置されている。また、これらの母材としてCu配線3cdが構成されている。また、境界領域10aのNi金属粒子は、直径が1から10um程度で構成されている。また、境界領域10aの幅は150um程度で構成されている。
【0065】
また、境界領域10aは、金属部材の面積が配線部の母材であるCuよりも広い面積の領域である。金属部材がCuより小さい面積であっても実施できるが、はんだ流れには、できるだけ金属部材の面積を広く構成することが望ましい。配線の母材よりも金属部材を広く構成することが好ましい。
【0066】
次に、
図4と
図5を用いて、本願発明の境界領域を
図3と同様に複数箇所に設けて実際にはんだ接合した状態について説明する。
【0067】
図4には、はんだ2aと第1の境界領域10bと第2の境界領域10cが示される。また、これらの部材は母材であるCu配線3ce上に構成されている。また、溶融した際にはんだ2aは図の左上から右下へ向かって流れ、その後冷えて固まった様子が示される。
【0068】
第1の境界領域10bと第2の境界領域10cの周辺をそれぞれ破線で示し、金属部材は、Ni粒子を
図3と同様に配置した。境界領域10bは横方向400um程度、縦方向に100um程度配置し、境界領域10cは長辺方向に600um程度短辺方向に150um程度配置した。
【0069】
第1の境界領域10bの上部は、第1の境界領域10bと略平行にはんだ2aの流れが止まっている様子が確認できる。また、第1の境界領域10bの左側面部には、Niの金属粒子が配置されていない。そのため、その金属部材を回り込むようにはんだ2aが流れている様子が確認できる。
【0070】
また、第2の境界領域10c周辺は、下方ははんだ2aが流れていないが、上部においては、第2の境界領域10cを避けるようにはんだが流れている様子が確認できる。このような配線3ceと異なる金属により構成される境界領域10b,10cを設けることにより、はんだ流れが抑制できることが確認された。
【0071】
次に、各実施例について
図6を用いて説明する。各実施例、比較例についてはんだ流れを止めることができたものを○とし、はんだ流れを止めることができないものを×と記載した。
【0072】
実施例1から6は母材である配線部をCuとした。また、実施例7から9は、配線部をAlとした。また、めっきのありなし、境界領域の金属部材はNi,Ag,Alとしたが、いずれもはんだ流れを止めることが確認された。
【0073】
溶融したはんだ主成分をPbまたはSnとした場合に、Ag,Ni,Cuの順にぬれやすいため、実施例1から6のように配線をCuとした場合には、Ag、Niの順にはんだ流れを止めやすい。
【0074】
また、実施例7から9のAl配線の場合には、Ag、Ni,Cuの順に止めやすいことが確認された。これは、Al配線とした場合には、境界領域のめっき9を有していないAl部分ではんだがぬれにくいため、はんだ流れをさらに止めやすいため有効である。
【0075】
実施例7から9の変形例として配線部をAlとした場合のめっきなしの状態を記載していないが、Al配線とした場合には、Al表面に酸化膜が形成され、はんだがぬれないから接合が困難となるからである。
なお、例えば、還元雰囲気下ではんだとAl配線が酸化していない状態、または、半導体チップをスクラブ処理によって擦りつけることで、酸化膜を除去することができればAl配線上であっても実施可能である。
【0076】
はんだ流れは金属部材の厚みによって止められるとも考えられるが、めっき9と金属部材はほぼ同様の厚みであることから、厚みよりも金属間のぬれ性によって止められることが支配的であると考えられる。
【0077】
ここで、比較例について説明する。比較例1から8は、配線である母材をCuとし、比較例9はAl配線とした。めっきのありなし、境界領域がないもの、金属部材にSnとAuにより比較を行った。
【0078】
比較例1から6は、はんだ流れを止めることはできなかった。境界領域を設けない場合は、母材である配線部をはんだが流れを止める術がないためはんだの厚みが均一となるまで流れ続けてしまうことが確認された。
【0079】
また、金属部材にSnまたはAuを使用した場合には、溶融したはんだに吸収され溶けてしまうためはんだ流れを防止できない。
【0080】
比較例7,8は、母材であるCu上にCuの金属部材が配置され、境界領域の表面が粗くなっている。しかし、母材と金属部材が同じ金属で構成されるため、金属部材間の隙間からはんだが流れてしまうことが確認された。
上記した各実施例の構成によって、半導体装置の接合構造の高品質化を実現できる。
【0081】
次に、本発明の他の適用例について説明する。
図7と
図8は、半導体装置の平面図および断面図の一例を示す。
図1と同様の符号については詳細な説明を省略する。
【0082】
図1との違いは、
図1で境界領域10がセラミック基板上面3a側に配置されていたのに対して、
図7は下面3b側に配置されていることである。
【0083】
セラミック基板3の下面3bには配線3ccが配置されている。配線3ccのほぼ全域を覆うようにめっき9が施されている。また、めっき9を覆うように境界領域10dが配置されている。
ベース板4とはんだ5を搭載する前の状態として
図8を示すが、めっき9を覆うように境界領域10dが構成される様子が示されている。
【0084】
このようにすることで、セラミック基板4とベース板4間の接合部のはんだ5が領域外への流出することを阻止することができる。
【0085】
<製造方法>
次に、
図1に記載のパワーモジュール20の組立て方法について説明する。
【0086】
図9aから9dは、
図1に示す半導体装置の組立てにおける主要工程の一例を示す断面図である。
図1と同一の符号は同一の構成であるため説明を省略する。
【0087】
パワーモジュール20の組立てでは、まず、
図9aに示すように、セラミック基板3の上面3a側に配線3ca、配線3cbと、下面3b側に配線3ccを配置する。セラミック基板3に銀ろうを用いて接合する。ただし、これに限定されることなく他の方法で接合してもよい。
【0088】
次に、
図9bに示すように、セラミック基板3の配線3cb上にめっき処理を施すことによって、めっき9を配置する。
【0089】
めっき処理は、電解めっきや無電解めっき等により行うことができる。特に、他の部品の存在を考慮し、無電解めっきが有効である。無電解めっきは添加材としてリンやホウ素等を添加することでめっき処理が可能である。
さらに、リンを添加した場合には、電解めっきに比べめっき厚が均一にしやすく、耐食性が向上するため有効である。
【0090】
ここで、境界領域10の配置方法について説明する。めっき処理において、境界領域10の領域をマスキングした後に、めっき処理を行うことで、任意の金属部材を配置することができる。
【0091】
この場合は、めっき9と境界領域10を構成する部材がいずれもNiの場合には、製造時においては、めっき9と境界領域10を同じ工程で設けることができる。そのため、別途プロセスを追加する必要がなく、有効である。また、別部材を設けないため、半導体装置の信頼性も向上する。
【0092】
その他、エアロゾルデポジション法やスパッタも利用可能である。エアロゾルデポジション法は、金属粒子の大きさをコントロールが容易である。
【0093】
また、金属粒子だけでなく、任意の形状に境界領域10を構成することが可能である。溶融したはんだはその組成によって流れやすさも異なるため、適宜はんだの組成に応じて境界領域10ではんだが接触する表面積を変化させるとよい。
【0094】
境界領域10にNi以外の金属部材でめっきを施すには、例えば、CuやAgの焼結ペーストを用いることができる。
【0095】
この焼結ペーストを焼結させペーストに含まれる溶剤を揮発させることによって、ポーラス構造を有する金属部材を配置することができる。特に、ポーラス構造とすると境界領域10を高さ方向に設けることができ、ポーラス構造によって表面積を向上させることで溶融したはんだの接着面積が向上する。
これにより、境界領域10の金属粒子を平面的に配置した場合よりはんだ流れを防止することができる。
【0096】
また、これら説明した境界領域10は半導体チップ1の全ての辺を覆わなくても実施できる。例えば、半導体チップ1の接合の際に、半導体チップ1をツールで掴み、前後方向にスクラブ処理を行うことによって接合する場合は、はんだ流れの方向がスクラブ処理を行った前後方向に優先される。
【0097】
そのため、スクラブ処理の前後方向に対向するように境界領域10を設け、前後方向と略平行方向に設けなくともはんだ流れを止めることができる。
また、はんだ溶融時にセラミック基板3を傾けた場合に、低い位置側をU字やV字の境界領域で塞ぐ、または側面2辺と下方の1辺を結ぶように境界領域を構成することでもはんだ流れを止めることができる。
【0098】
この場合は、境界領域10を半導体チップ1等の4辺を覆うよう境界領域を全方位に設ける必要がないため、製造プロセスの簡略化が実現できる。
【0099】
パワーモジュールを代表とする半導体装置は、還元雰囲気内や高い温度で接合することとなるが、本発明の製造方法は、雰囲気や温度に左右されずにパワーモジュールを製造することができる。
【0100】
また、高価な還元雰囲気を用いることなく製造できる。さらに、めっき処理と同様の工程で製造できるため製造装置も簡略化でき、製造コストも低減することが可能となる。
【0101】
<適用例>
図10は
図1に示す半導体装置が搭載された鉄道車両の一例を示す部分側面図、
図11は
図10に示す鉄道車両に設置されたインバータの内部構造の一例を示す平面図である。
【0102】
本適用例では、上記実施の形態のパワーモジュール20を搭載した鉄道車両について説明する。
図10に示す鉄道車両21は、例えば、
図1に示すパワーモジュール20が搭載されたものである。
【0103】
車両本体26と、パワーモジュール20と、パワーモジュール20を支持する実装部材と、集電装置であるパンタグラフ22と、インバータ23とを備えている。そして、パワーモジュール20は、車両本体26の下部に設置されたインバータ23に搭載されている。
【0104】
図11に示すように、インバータ23の内部では、プリント基板(実装部材)25上に複数のパワーモジュール20が搭載され、さらにこれらのパワーモジュール20を冷却する冷却装置24が搭載されている。
図1に示す本実施の形態のパワーモジュール20では、半導体チップ1からの発熱量が多い。したがって、複数のパワーモジュール20を冷却してインバータ23の内部を冷却可能なように冷却装置24が取り付けられている。
【0105】
また、インバータ23が外気と接触する構造であるとなおよい。この場合は、鉄道車両21が移動する際に、外気を取り込むことができ、効果的に冷却ができる。さらに、冷却装置24が外気と直接触れる構成とすることで、冷却効率はさらに向上する。
【0106】
これにより、鉄道車両21において、
図1に示すモジュールの接合構造が用いられた複数のパワーモジュール20を搭載したインバータ23が設けられていることにより、インバータ23内が高温環境となった場合であっても、インバータ23およびそれが設けられた鉄道車両21の信頼性を高めることができる。
【0107】
すなわち、高温環境下での動作安定性と高電流負荷にも耐え得るパワーモジュール20およびこれを用いたインバータシステムを実現することができる。
【0108】
なお、パワーモジュール20は、複数であることは必須でなく、制御する装置の規模等に応じて単体での使用も可能である。
【0109】
次に、上記実施の形態のパワーモジュール20を搭載した自動車について説明する。
図12は
図1に示す半導体装置が搭載された自動車の一例を示す斜視図である。
【0110】
図12に示す自動車27は、例えば、
図1に示す半導体装置(パワーモジュール)20が搭載されたものであり、車体28と、タイヤ29と、パワーモジュール20と、パワーモジュール20を支持する実装部材である実装ユニット30と、を備えている。
【0111】
なお、
図1に示すパワーモジュール20に限らず、セラミック基板3の下面3b側を冷却用のベース板4とせず、半導体チップ1を搭載したものであってもよい。この場合は、パワーモジュール20の小型化が可能となる。また、セラミック基板3を冷却に用いる部材とすると、冷却効率を向上させることができる。
【0112】
自動車27では、パワーモジュール20は、実装ユニット30に含まれるインバータに搭載されているが、実装ユニット30は、例えば、エンジン制御ユニット等であり、その場合、実装ユニット30はエンジンの近傍に配置されている。この場合には、実装ユニット30は、高温環境下での使用となり、これにより、パワーモジュール20も高温状態となる。
【0113】
このような高温状態下の自動車27において、
図1に示すモジュールの接合構造が用いられた複数のパワーモジュール20を搭載したインバータが設けられていることにより、実装ユニット30が高温環境となった場合であっても、自動車27の信頼性を高めることができる。
【0114】
また、パワーモジュール20が外気を取り込む構造であるとなおよい。この場合は、自動車27が移動する際に、外気を取り込むことができ、効果的に冷却ができる。さらに、パワーモジュール20に冷却器を設けた場合に、冷却器が外気と直接触れる構成とすることで、冷却効率はさらに向上する。
【0115】
つまり、自動車27においても、高温環境下での動作安定性と高電流負荷にも耐え得るパワーモジュール20およびこれを用いたインバータシステムを実現することができる。
【0116】
図1記載のパワーモジュール20や他の適用例である交流発動機等の半導体装置は、上記適用例に記載した鉄道車両や自動車を代表とする移動体のみならず、移動体の一種として、建設機械やエレベータにも適用可能である。本願明細書においては、上記したように車輪等を動作させ自走する手段またはワイヤやモータ等を用いることで駆動する手段を有することで装置自体が移動するものを移動体という。
【0117】
さらに、本願発明の半導体装置は、太陽光発電装置、太陽光発電モジュールや風力発電機、風力発電モジュール等の発電装置の分野にも適用することが可能である。また、ホイストやアクチュエータ、圧縮機等を代表とする産業機械の分野にも適用可能である。
【0118】
また、無停電電源装置、メインフレームや汎用計算機等の計算機の分野にも適用可能である。その他、空調設備等においても、適用可能である。空調設備であれば、パワーモジュールやインバータまたはそれらに接続された冷却器に外気を接触させることで、さらに冷却効率が向上する。
【0119】
これらの例においても、はんだ流れを抑制することによって、半導体装置の信頼性が向上する。上記した半導体装置を用いる分野の装置を総称してエレクトロニクス装置と呼ぶ。
【0120】
これにより、所望のはんだ量を確保することができるため、動作の安定性、高電流負荷に耐えることが可能となる。
以上、本発明者によってなされた発明を発明の実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記発明の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0121】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0122】
また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。なお、図面に記載した各部材や相対的なサイズは、本発明を分かりやすく説明するため簡素化・理想化しており、実装上はより複雑な形状となる。