特許第6843585号(P6843585)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6843585走査型画像計測装置及び走査型画像計測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843585
(24)【登録日】2021年2月26日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】走査型画像計測装置及び走査型画像計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/17 20060101AFI20210308BHJP
【FI】
   G01N21/17 630
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-211201(P2016-211201)
(22)【出願日】2016年10月28日
(65)【公開番号】特開2018-72122(P2018-72122A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】501009849
【氏名又は名称】株式会社日立エルジーデータストレージ
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】木村 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】冨田 大輔
【審査官】 伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−174744(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0126858(US,A1)
【文献】 特開平07−235070(JP,A)
【文献】 特開2014−044265(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/043360(WO,A1)
【文献】 特開2003−151156(JP,A)
【文献】 特開2009−264752(JP,A)
【文献】 特開2012−255756(JP,A)
【文献】 特開2013−225118(JP,A)
【文献】 特開2014−160057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズと、前記対物レンズを搭載するホルダと、駆動力を発生させるコイルと、前記対物レンズと前記ホルダと前記コイルで構成される可動物体を前記対物レンズを変位可能に支持する支持部材を有し、前記対物レンズを所定の走査周波数で走査しながら測定対象に光を照射して画像計測する走査型画像計測装置において、前記対物レンズは、第一の方向と、前記第一の方向に略直交する第二の方向に走査されるものであり、前記対物レンズを含む可動物体の質量前記支持部材の弾性体的性質で定まる共振周波数に関して、前記第一の方向の共振周波数よりも前記第二の方向の共振周波数が高く、前記第二の方向の共振周波数よりも前記第二の方向への前記対物レンズの走査周波数が高いことを特徴とする走査型画像計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の走査型画像計測装置において、前記第一の方向は前記対物レンズの光軸方向であることを特徴とする走査型画像計測装置。
【請求項3】
請求項1に記載の走査型画像計測装置において、前記第一の方向と前記第二の方向のうち、前記対物レンズを動作させる量が大きい方向が前記第二の方向であることを特徴とする走査型画像計測装置。
【請求項4】
請求項1に記載の走査型画像計測装置において、前記対物レンズを含む可動部を支持する支持部材の、前記第一の方向と前記第二の方向を含む平面に平行な断面形状は、前記第二の方向の寸法が前記第一の方向の寸法より大きい矩形であることを特徴とする走査型画像計測装置。
【請求項5】
請求項1に記載の走査型画像計測装置において、前記第一の方向への前記対物レンズの走査周波数が前記第一の方向の共振周波数よりも低いことを特徴とする走査型画像計測装置。
【請求項6】
請求項1に記載の走査型画像計測装置において、前記第二の方向に前記対物レンズを1回走査する間は、前記第一の方向における前記対物レンズの位置を固定し、前記第二の方向に前記対物レンズを1回走査した後に、前記対物レンズを前記第一の方向に所定の量だけ移動させることを特徴とする走査型画像計測装置。
【請求項7】
請求項1に記載の走査型画像計測装置において、前記対物レンズは、前記第一の方向と前記第二の方向と共に、前記第一の方向と前記第二の方向に対して略垂直な第三の方向に走査されるものであり、前記第一の方向の共振周波数および前記第三の方向の共振周波数よりも前記第二の方向の共振周波数が高く、前記第二の方向の共振周波数よりも前記第二の方向への前記対物レンズの走査周波数が高いことを特徴とする走査型画像計測装置。
【請求項8】
請求項7に記載の走査型画像計測装置において、前記第一の方向と前記第二の方向と前記第三の方向のうち、前記対物レンズを動作させる量が大きい方向が前記第二の方向であることを特徴とする走査型画像計測装置。
【請求項9】
請求項7に記載の走査型画像計測装置において、前記第一の方向への前記対物レンズの走査周波数が前記第一の方向の共振周波数よりも低く、前記第三の方向への前記対物レンズの走査周波数が前記第三の方向の共振周波数よりも低いことを特徴とする走査型画像計測装置。
【請求項10】
対物レンズと、前記対物レンズを搭載するホルダと、駆動力を発生させるコイルと、前記対物レンズと前記ホルダと前記コイルで構成される可動物体を前記対物レンズを変位可能に支持する支持部材を有し、前記対物レンズを所定の走査周波数で走査しながら測定対象に光を照射して画像計測する走査型画像計測方法であって、前記対物レンズを含んで可動となっている可動物体の質量前記支持部材の弾性体的性質で定まる共振周波数に関して、第一の方向の共振周波数よりも前記第一の方向に略直交する第二の方向の共振周波数が高く、前記第二の方向の共振周波数よりも前記第二の方向への前記対物レンズの走査周波数を高く設定して、前記対物レンズを前記第一の方向と前記第一の方向に略直交する第二の方向に走査して画像計測する走査型画像計測方法。
【請求項11】
請求項7から9に記載の1つの走査型画像計測装置であって、
前記支持部材の弾性体的性質は前記第1の方向<第3の方向<第2の方向となる大小関係を有し、前記各共振周波数は前記第1の方向<第3の方向<第2の方向となる大小関係を有し、
前記第3の方向の走査周波数は、前記第1の方向の共振周波数よりも低くすることを特徴とする走査型画像計測方装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型画像計測装置及び走査型画像計測方法に係り、特に、光を走査して生体等の断層画像を計測するのに好適な走査型画像計測装置及び走査型画像計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光を用いて測定対象の表面構造や内部構造を反映した画像を取得する光計測装置が知られている。この装置は、光源から出射された光を光束として用い、この光束をレンズにより測定対象に集光して照射し、測定対象によって反射もしくは散乱された信号光を検出し、検出信号を処理することで計測する。測定時に、走査部を用いて、レンズによる光束の集光位置をz軸方向(レンズの軸方向)とx方向(レンズの軸と垂直方向)に走査して画像計測する。
【0003】
走査部を構成するレンズアクチュエータを制御してレンズをz方向に繰り返し走査しつつ、レンズが折り返し位置に到達する度にx方向に所定の量だけレンズを移動させることにより、測定対象の2次元像を得る。このような技術は、例えば、特開2014−160057号公報に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−160057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術は、対物レンズを2方向に走査することで測定対象の画像を取得する光計測装置が記載されている。対物レンズを走査するレンズアクチュエータを用いることによって、波長走査型光源や分光器を用いる必要がないため、小型で安価な装置を提供することができる。ただし、対物レンズを機械的に走査するので、測定対象の画像を取得する撮像時間が長いことが問題であった。
【0006】
撮像時間を短縮するためには、対物レンズの走査周波数を高めることが有効である。しかし、駆動周波数を高くするだけでは、一定の駆動電圧に対する走査振幅が小さくなってしまう。この場合に所定の走査振幅を得るためには駆動電圧を大きくする必要があり、消費電力の増加につながる問題があった。
【0007】
また、2方向に走査する機構においては、一般に、一方には高速で走査し、他方には低速で動作させる。高速に走査する方向の走査振幅の拡大効果を得るためには、共振周波数と走査周波数を近づけることが考えられる。しかし、2方向共に共振周波数を高めると、低速で動作させる方向の変位が小さくなり、この場合、低速動作時の消費電力の増加を招くおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、消費電力の増加を抑えて、撮像時間の短縮が可能な走査型画像計測装置及び走査型画像計測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、対物レンズと、前記対物レンズを変位可能に支持する支持部材を有し、前記対物レンズを所定の走査周波数で走査しながら測定対象に光を照射して画像計測するものにおいて、前記対物レンズは、第一の方向と、前記第一の方向に略直交する第二の方向に走査されるものであり、前記対物レンズを含んで可動となっている可動物体の質量と、前記支持部材の弾性体的性質で共振周波数が定まるものであり、前記第一の方向の共振周波数よりも前記第二の方向の共振周波数が高く、前記第二の方向の共振周波数よりも前記第二の方向への前記対物レンズの走査周波数が高いように構成した。
【0010】
具体的には、対物レンズを、第一の方向と、前記第一の方向に直交する第二の方向に動作させる対物レンズ走査機構を備え、前記対物レンズを含む可動部を支持する支持部材のばね定数と前記可動部の質量が関連した共振周波数について、前記第一の方向の共振周波数よりも前記第二の方向の共振周波数が高く、前記第二の方向の共振周波数よりも前記第二の方向への前記対物レンズの走査周波数が高い走査型画像計測装置とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、対物レンズの走査振幅の拡大効果によって消費電力の増加を抑えて、かつ、撮像時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1にかかわる走査型画像計測装置を示す図である。
図2】本発明の実施例1にかかわる走査型画像計測装置の光学系の構成例を示す図である。
図3】本発明の実施例1にかかわる走査型画像計測装置の対物レンズ走査機構を示す図である。
図4】本発明の実施例1にかかわる走査型画像計測装置の対物レンズ走査機構の分解斜視図である。
図5】本発明の実施例1にかかわる走査型画像計測装置の対物レンズ走査機構の周波数応答特性を示す図である。
図6】本発明の実施例1にかかわる走査型画像計測装置の対物レンズ走査機構における第二の方向と第一の方向の振幅比を示す図である。
図7】本発明の実施例1にかかわる走査型画像計測装置の対物レンズ走査機構における第一の方向への走査周波数を説明する図である。
図8】本発明の実施例1にかかわる走査型画像計測装置の移動機構における第三の方向への走査周波数を説明する図である。
図9】本発明の実施例2にかかわる走査型画像計測装置を示す図である。
図10】本発明の実施例2にかかわる走査型画像計測装置の対物レンズ走査機構を示す図である。
図11】本発明の実施例2にかかわる走査型画像計測装置の対物レンズ走査機構の上面図である。
図12】本発明の実施例2にかかわる走査型画像計測装置の対物レンズ走査機構の周波数応答特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明の実施例1にかかわる走査型画像計測装置1を示す図である。走査型画像計測装置1は、測定対象に光を集束する対物レンズ11を動作させる対物レンズ走査機構2と、対物レンズ走査機構2を移動させる移動機構3と、光学系を搭載する筐体4で構成される。本実施例では、対物レンズ11の光軸方向をz方向とし、z方向に直交する二つの方向をx方向、y方向とする。
【0015】
図2は走査型画像計測装置1の光学系の構成例を示す図である。光源101から出射した光は、コリメートレンズ102によって平行光に変換され、2分の1波長板103を透過し、偏光ビームスプリッタ104によって信号光と参照光に分岐する。偏光ビームスプリッタ104で反射した信号光は、4分の1波長板105を透過し、対物レンズ11によって集光され測定対象100に照射される。測定対象100で反射した信号光は、再び4分の1波長板105を透過して偏光方向を変え、偏光ビームスプリッタ104を透過する。一方、光源101から出射して偏光ビームスプリッタ104を透過した参照光は、4分の1波長板106を透過し、固定ミラー107で反射して、再び4分の1波長板106を透過して偏光方向を変え、偏光ビームスプリッタ104で反射する。
【0016】
信号光と参照光は偏光ビームスプリッタ104で合波され、合成光はビームスプリッタ108で2分割される。ビームスプリッタ108を透過した合成光は、2分の1波長板109を透過して、偏光ビームスプリッタ110で2分割され、集光レンズ111、113で集光されて光検出器112、114に入射する。ビームスプリッタ108で反射した合成光は、4分の1波長板115、2分の1波長板116を透過して、偏光ビームスプリッタ117で2分割され、集光レンズ118、120で集光されて光検出器119、121に入射する。
【0017】
光検出器112の出力と光検出器114の出力の差動検出によって第一の検出信号122が得られ、光検出器119の出力と光検出器121の出力の差動検出によって第二の検出信号123が得られる。第一の検出信号122と第二の検出信号123は信号処理部124で演算され、測定対象100に応じた画像信号125が得られる。
【0018】
測定対象100に集光する信号光の走査は、x、y、zの3方向に行う。このうち、対物レンズ11の光軸方向であるz方向と、z方向に直交する一つの方向であるx方向には、対物レンズ走査機構2によって対物レンズ11の位置を動作させる。残りのy方向には、直動モータ等の移動機構3によって対物レンズ走査機構2を移動させる。ここで、z方向を第一の方向、x方向を第二の方向、y方向を第三の方向とする。
【0019】
図3は対物レンズ走査機構2の構成例を示す図であり、図4はその分解斜視図である。対物レンズ11はホルダ12の上面に搭載される。第一の方向への駆動力を発生させる2個の第一のコイル13がホルダ12に取り付けられる。第二の方向への駆動力を発生させる第二のコイル14が、ホルダ12の二つの側面にそれぞれ2個取り付けられる。対物レンズ11とホルダ12と第一のコイル13と第二のコイル14によって可動部15が構成される。
【0020】
可動部15は支持部材16によって固定部17に対して支持される。支持部材16は第三の方向(y方向)を長手方向として配置される。これによって、可動部15は固定部17に対して第一の方向および第二の方向に変位可能である。支持部材16のzx面に平行な断面形状は、第二の方向の寸法(Dx)が第一の方向の寸法(Dz)よりも大きい矩形である。こうすることで、可動部15の変位に対する第二の方向のばね定数は第一の方向のばね定数より大きくなる。
【0021】
第一のコイル13と第二のコイル14に磁束密度を作用させるマグネット20a〜20fが、第二のコイル14が取り付けられたホルダ12の二つの側面に対向して配置される。マグネット20a〜20fは、磁性体であるヨーク18に取り付けられる。第一のコイル13の内側の空間に、ヨーク18から延びるインナーヨーク19が配置される。ホルダ12の二つの側面に対向して配置されたマグネット20a〜20fは、それぞれ3個のマグネット20a〜20c、20d〜20fが隣接している。3個ずつのマグネット20a〜20c、20d〜20fは、第二のコイル14の第一の方向(z方向)に平行な辺に、異なる磁極が対向するように配置される。
【0022】
このように構成した対物レンズ走査機構2において、第一のコイル13に電流を流すと、マグネット20a、20c、20d、20fからの磁束密度との電磁作用によって第一の方向の駆動力が発生し、可動部15が第一の方向に動作する。また、第二のコイル14に電流を流すと、マグネット20a〜20fからの磁束密度との電磁作用によって第二の方向の駆動力が発生し、可動部が第二の方向に動作する。
可動部15は、梁として機能する支持部材16に支えられている。よって、第一のコイル13の通流電流で発生する駆動力により、支持部材16の断面形状(具体的には断面2次モーメント、特に第一の方向の寸法(Dz)に影響を受ける)、長さ、弾性係数に応じて、可動部15は第一の方向に変位する。同様に、第二のコイル14の通流電流で発生する駆動力により、支持部材16の断面形状(特に第二の方向の寸法(Dx))、長さ、弾性係数に応じて、第二の方向に可動部15は変位する。
【0023】
本実施例では、支持部材16の断面形状、長さに応じて決まる定数をばね定数と称する。また、本実施例では、支持部材16の駆動力に対する変位に影響を与える因子を弾性体的性質と称する。
【0024】
また、機構3では、対物レンズ走査機構2(可動部15、構成される固定部17、ヨーク18、インナーヨーク19、マグネット20a〜20fから構成される部材)を一体的構成物として扱い、対物レンズ走査機構2を一体的に変位可能に動作させる。機構3の具体的構成(外部ヨークや外部マグネットなど)は例えば直動モータ等である。なお、この場合、対物レンズ走査機構2全体が質量に相当し、対物レンズ走査機構2の移動に対する摩擦抵抗等による抵抗がばね定数に相当する。
【0025】
測定対象100の画像は、対物レンズ11を第二の方向に走査周波数fs2で走査しつつ、対物レンズ11を第一の方向に走査周波数fs1で走査させることで、zx面内の画像を取得する。その後、移動機構3によって対物レンズ走査機構2を所定の量だけ第三の方向に移動させて、対物レンズ走査機構2によって対物レンズ11を走査して次のzx面内の画像を取得する手順を繰り返すことで、測定対象100の3次元画像を取得することができる。
【0026】
なお、上記では第一の方向への対物レンズ11の走査を、走査周波数fs1による連続的な変化として表したが、対物レンズ11を第二の方向に1列走査している間は第一の方向の位置を固定しておき、第二の方向に1列走査した後、対物レンズ11を第一の方向に所定の量だけ移動させる方法としてもよい。
【0027】
また、上記では第三の方向への対物レンズ走査機構2の移動を、所定の量だけ移動させる方法として表したが、第三の方向に走査周波数fs3で連続的に移動させる方法としてもよい。
【0028】
また、上記では、対物レンズ11の走査によってzx面内の画像を取得した後、対物レンズ走査機構2を第三の方向に移動させる方法として表したが、対物レンズ11を第二の方向に走査周波数fs2で走査しつつ、第三の方向に対物レンズ走査機構2を移動させてxy面内の画像を取得した後、対物レンズ走査機構2によって対物レンズ11を第一の方向に移動させることで3次元画像を取得する方法としてもよい。
【0029】
いずれの場合でも、第二の方向への対物レンズ11の走査は、第一の方向および第三の方向への対物レンズ11の走査あるいは移動よりも高速に行われる。第一の方向および第三の方向には、対物レンズ11は低速での走査か、あるいは所定量の静的な移動でよい。したがって、測定対象の画像を取得する撮像時間は、第二の方向への対物レンズ11の走査によって律速される。
【0030】
撮像時間を短縮するためには、第二の方向への対物レンズ11の走査周波数を高めることが有効である。しかし、対物レンズ走査機構2の周波数応答特性において、支持部材16のばね定数と可動部15の質量に関連した共振周波数よりも高域側では、周波数の増加に応じて走査振幅が小さくなるので、共振周波数が一定の状態で、単に走査周波数を高めるだけでは、同じ走査振幅を得るためにより大きな電流あるいは電圧を印加する必要がある。これは消費電力の増加につながる。
【0031】
ここで、共振周波数は、可動部15の質量、支持部材16の断面形状(具体的には断面2次モーメント、長さ、弾性係数に応じて一義的に決まる。梁の方程式を解くことによっても得られ、また、実機を実験して求めても良い。
【0032】
一定の電流あるいは電圧に対する走査振幅を拡大するためには、支持部材16のばね定数と可動部15の質量に関連した共振周波数を走査周波数に近づけ、共振周波数近傍での振幅の増大効果を利用することが考えられる。しかし、対物レンズ走査機構2においては第一の方向と第二の方向の2方向の動作方向があり、2方向共に共振周波数を高めることは、低速走査あるいは所定量の静的な移動でよい第一の方向の変位に対するばね定数も大きくすることになり、第一の方向への動作時の消費電力の増加につながる。
【0033】
図5は本実施例の対物レンズ走査機構2の周波数応答特性の例を示す図である。図5(a)は位相、図5(b)は振幅の周波数応答特性である。第一の方向、第二の方向共に一定の電流あるいは一定の電圧に対する応答を示している。
【0034】
本実施例では、支持部材16のzx面に平行な断面における第二の方向の寸法を、第一の方向の寸法よりも大きくすることで、支持部材16の第二の方向のばね定数を第一の方向のばね定数よりも大きくしている。これによって、第二の方向の共振周波数fr2を、第一の方向の共振周波数fr1よりも高くすることができる。図5では例として、第二の方向の共振周波数fr2が、第一の方向の共振周波数fr1の3倍で、減衰比がいずれも0.1の場合を示している。
【0035】
本実施例では、第二の方向の共振周波数fr2を第一の方向の共振周波数fr1よりも高めた上で、第二の方向への対物レンズ11の走査周波数fs2を、第二の方向の共振周波数fr2よりも高く設定している。これによって、第一の方向への動作に対する消費電力の増加を抑えた上で、第二の方向への走査振幅の拡大と走査時間の短縮が可能となることについて、以下説明する。
【0036】
図6は、図5における第一の方向の振幅Zに対する第二の方向の振幅Xの比を示す図である。図6の横軸は、第二の方向の共振周波数fr2に対する周波数の比としている。振幅Zに対する振幅Xの比は、共振周波数fr2の近傍で最大となる。振幅の拡大効果を得るだけであれば、第二の方向への対物レンズ11の走査周波数fs2を第二の方向の共振周波数fr2と一致させればよい。しかし、図5(a)に示したように、共振周波数付近では位相の変化が急峻なため、走査周波数や共振周波数のわずかな誤差に対して位相ずれが生じてしまう。
【0037】
そこで本実施例では、第二の方向への対物レンズ11の走査周波数fs2を第二の方向の共振周波数fr2よりも高くしている。走査周波数を共振周波数からずらすことで、走査周波数や共振周波数のわずかな誤差に対する位相ずれの影響を低減できる。そして、第二の方向の走査周波数fs2を第二の方向の共振周波数fr2よりも高域側に設定することで、撮像
時間の短縮を図ることができる。
【0038】
例えば、図6において、第二の方向の走査周波数fs2を第二の方向の共振周波数fr2の1.3倍とした場合、第二の方向の共振周波数fr2で走査するよりも走査時間を1/1.3倍に短縮することができ、第一の方向の振幅に対して第二の方向の振幅を約2倍に拡大することができる。
【0039】
図7は本実施例の対物レンズ走査機構2における第一の方向への対物レンズ11の走査周波数fs1を説明する図である。第一の方向への対物レンズ11の走査は、第二の方向よりも低速でよいので、第一の方向への対物レンズ11の走査周波数fs1を、第一の方向の共振周波数fr1よりも低くしている。
【0040】
本実施例では、支持部材16の断面形状を第一の方向よりも第二の方向に大きい矩形とすることで、第一の方向のばね定数を必要以上に大きくしていない。したがって、第一の方向の共振周波数fr1よりも低域側における振幅を確保でき、第一の方向に対物レンズ11を走査するときの消費電力を抑えることができる。
【0041】
また、第一の方向への対物レンズ11の走査周波数fs1を、第一の方向の共振周波数fr1よりも低くすることで、第一の方向の走査周波数fs1を第二の方向の共振周波数fr2から十分に離すことができ、第一の方向の走査周波数fs1で対物レンズ11を走査したときの第二の方向への影響を小さくすることができる。
【0042】
なお、ここでは第一の方向に対物レンズ11を走査周波数fs1で走査する場合を示したが、対物レンズ11を第二の方向に1列走査している間は第一の方向の位置を固定しておき、第二の方向に1列走査した後、対物レンズ11を第一の方向に所定の量だけ移動させる方法としてもよい。この場合は、第一の方向への対物レンズ11の走査周波数fs1が周波数ゼロに相当すると考えればよく、第一の方向に対物レンズ11を移動させるときの消費電力を抑えられる効果は同様に得られる。
【0043】
なお、第一の方向と第二の方向のうち、対物レンズ11を移動させる量が大きい方向を、より高速に走査する第二の方向とすることで、対物レンズ11の走査時間の短縮に、より効果がある。
【0044】
図8は本実施例の移動機構3における第三の方向への対物レンズ走査機構2の走査周波数fs3を説明する図である。第三の方向への対物レンズ走査機構2の走査は、第一の方向への対物レンズ11の走査よりも低速でよいので、第三の方向への対物レンズ走査機構2の走査周波数fs3を、第一の方向への対物レンズ11の走査周波数fs1よりも低くしている。
【0045】
なお、ここでは第三の方向に対物レンズ走査機構2を走査周波数fs3で走査する場合を示したが、移動機構3によって対物レンズ走査機構2を所定の量だけ移動させる場合も同様である。
【0046】
以上示したように本実施例によれば、対物レンズ11を、その光軸方向である第一の方向と、第一の方向に直交する第二の方向に動作させる対物レンズ走査機構2を備え、第一の方向の共振周波数fr1よりも第二の方向の共振周波数fr2を高くし、第二の方向の共振周波数fr2よりも第二の方向への対物レンズ11の走査周波数fs2を高くすることで、対物レンズ走査時の消費電力が低く、撮像時間の短縮が可能な走査型画像計測装置を実現できる。
【実施例2】
【0047】
次に、本発明の実施例2にかかわる走査型画像計測装置を説明する。図9は本実施例の走査型画像計測装置51を示す図である。走査型画像計測装置51は、測定対象に光を集束する対物レンズ11を動作させる対物レンズ走査機構21と、光学系を搭載する筐体4で構成される。対物レンズ11の光軸方向をz方向とし、z方向に直交する二つの方向をx方向、y方向とする。また、z方向を第一の方向、x方向を第二の方向、y方向を第三の方向とする。
【0048】
本実施例は、対物レンズ走査機構21によって対物レンズ11を第一の方向、第二の方向、第三の方向の3方向に動作させる点が実施例1と異なる。光学系の構成と測定対象の画像の取得方法は実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0049】
図10は対物レンズ走査機構21の構成例を示す図であり、図11はその上面図である。対物レンズ11はホルダ22の上面に搭載される。第一の方向への駆動力を発生させる第一のコイル23がホルダ22の側面を周回するように取り付けられる。第二の方向への駆動力を発生させる第二のコイル24aが、ホルダ22の第三の方向に垂直な二つの側面にそれぞれ2個取り付けられる。第三の方向への駆動力を発生させる第三のコイル24bが、ホルダ22の第二の方向に垂直な二つの側面にそれぞれ2個取り付けられる。対物レンズ11とホルダ22と第一のコイル23と第二のコイル24aと第三のコイル24bによって可動部25が構成される。
【0050】
可動部25は支持部材26によって固定部27に対して支持される。支持部材26はxy面に平行な面内に配置され、第二の方向と第三の方向に平行な部分を有するL字形状をしており、第二の方向に平行な部分の長さが第三の方向に平行な部分の長さよりも大きい。支持部材26をL字形状とすることで、可動部25は固定部27に対して第一の方向、第二の方向、第三の方向の3方向に変位可能である。
【0051】
可動部25の第一の方向のばね定数に対しては、支持部材26の第二の方向に平行な部分の長さと第三の方向に平行な部分の長さの和が影響する。可動部25の第二の方向のばね定数に対しては、支持部材26の第三の方向に平行な部分の長さが影響する。可動部25の第三の方向のばね定数に対しては、支持部材26の第二の方向に平行な部分の長さが影響する。本実施例では、支持部材26の第二の方向に平行な部分の長さを第三の方向に平行な部分の長さよりも大きくしているので、可動部25の変位に対する支持部材26のばね定数は、第一の方向が最も小さく、第二の方向が最も大きく、第三の方向はその間となる。
【0052】
第一のコイル23と第二のコイル24aと第三のコイル24bに磁束密度を作用させるマグネット30a〜30dが、ホルダ22の四つの側面に対向して配置される。マグネット30a〜30dはヨーク28に取り付けられる。マグネット30a〜30dに対して第二のコイル24aと第三のコイル24bを挟むようにインナーヨーク29が配置される。
【0053】
このように構成した対物レンズ走査機構21において、第一のコイル23に電流を流すと、マグネット30a〜30dからの磁束密度との電磁作用によって第一の方向の駆動力が発生し、可動部25が第一の方向に動作する。また、第二のコイル24aに電流を流すと、マグネット30a、30cからの磁束密度との電磁作用によって第二の方向の駆動力が発生し、可動部25が第二の方向に動作する。また、第三のコイル24bに電流を流すと、マグネット30b、30dからの磁束密度との電磁作用によって第三の方向の駆動力が発生し、可動部25が第三の方向に動作する。
【0054】
図12は本実施例の対物レンズ走査機構21の周波数応答特性の例を示す図である。第一の方向、第二の方向、第三の方向共に、一定の電流あるいは一定の電圧に対する振幅の応答を示している。
【0055】
本実施例における支持部材26のばね定数は、第一の方向が最も小さく、次が第三の方向、そして第二の方向が最も大きい。したがって、支持部材26のばね定数と可動部25の質量に関連した共振周波数は、第一の方向の共振周波数fr1が最も低く、次が第三の方向の共振周波数fr3、そして第二の方向の共振周波数fr2が最も高い。
【0056】
測定対象の画像は、対物レンズ11を第二の方向に走査周波数fs2で走査しつつ、対物レンズ11を第三の方向に走査周波数fs3で走査させることで、xy面内の画像を取得する。さらに、対物レンズ11を第一の方向に走査周波数fs1で走査することで、測定対象の3次元画像を取得する。
【0057】
ここで、第二の方向への対物レンズ11の走査周波数fs2を、第二の方向の共振周波数fr2よりも高くすることで、撮像時間の短縮を図ることができる。
【0058】
第一の方向への対物レンズ11の走査と、第三の方向への対物レンズ11の走査は、第二の方向よりも低速でよいので、第一の方向への対物レンズ11の走査周波数fs1は第一の方向の共振周波数fr1よりも低く、第三の方向への対物レンズ11の走査周波数fs3は第三の方向の共振周波数fr3よりも低くしている。これによって、対物レンズ11を第一の方向と第三の方向に走査するときの消費電力を抑えることができる。
【0059】
また、第一の方向への対物レンズ11の走査周波数fs1を、第二の方向の共振周波数fr2および第三の方向の共振周波数fr3から十分に離すことによって、第一の方向に対物レンズ11を走査したときの、第二の方向および第三の方向への影響を小さくすることができる。
【0060】
さらに、第三の方向への対物レンズ11の走査周波数fs3を、第一の方向の共振周波数fr1よりも低くすることで、第三の方向に対物レンズ11を走査したときの、第二の方向および第一の方向への影響を小さくすることができる。
【0061】
なお、第一の方向、第二の方向、第三の方向のうち、対物レンズ11を移動させる量が最も大きい方向を、最も高速に走査する第二の方向とすることで、対物レンズ11の走査時間の短縮に最も効果がある。
【0062】
以上示したように本実施例によれば、対物レンズ11を第一の方向、第二の方向、第三の方向の3方向に動作させる対物レンズ走査機構21とすることで、実施例1で用いていた移動機構3を備える必要が無く、走査型画像計測装置51の小型化を実現できる。
【0063】
なお、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例を含む。例えば、上記の実施例は本発明をわかりやすくするために詳細に説明したものであり、本発明は必ずしも説明したすべての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の実施例の構成を追加・削除・置換することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1・・・走査型画像計測装置、2・・・対物レンズ走査機構、3・・・移動機構、4・・・筐体、11・・・対物レンズ、12・・・ホルダ、13・・・第一のコイル、14・・・第二のコイル、15・・・可動部、16・・・支持部材、17・・・固定部、18・・・ヨーク、19・・・インナーヨーク、20a〜20f・・・マグネット、100・・・測定対象、101・・・光源、102・・・コリメートレンズ、103、109、116・・・2分の1波長板、104、110、117・・・偏光ビームスプリッタ、105、106、115・・・4分の1波長板、107・・・固定ミラー、108・・・ビームスプリッタ、111、113、118、120・・・集光レンズ、112、114、119、121・・・光検出器、122・・・第一の検出信号、123・・・第二の検出信号、124・・・信号処理部、125・・・画像信号、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12