(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記抗体は抗体断片であり、該抗体断片は、(a)Fab、Fab´、Fab´−SH,F(ab´)2 若しくはFv断片、又は(b)二重特異性抗体であってもよいことを特徴とする請求項4、7又は8に記載のインビトロの方法。
前記CD47発現哺乳類標的細胞は、カルシノーマ、膠腫、肉腫、黒皮腫、骨髄腫、白血病、又はリンパ腫の細胞であることを特徴とする請求項1から請求項10までのいずれか一つに記載のインビトロの方法。
前記CD47発現哺乳類標的細胞は、AML、CML、ALL、NHL又は多発性骨髄腫の細胞であることを特徴とする請求項1から請求項11までのいずれか一つに記載のインビトロの方法。
前記CD47発現哺乳類標的細胞は、乳癌、結腸癌、前立腺癌、膀胱癌、膠腫、又は肉腫の細胞のような固形腫瘍細胞であることを特徴とする請求項1から請求項11までのいずれか一つに記載のインビトロの方法。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】マクロファージが、抗CD47B6H12抗体の存在下で効率的に癌細胞を貪食する様子を示す図である。RFP+マクロファージは、IgG、又は抗CD47mAbB6H12(ブロッキング)、又は抗CD47mAb2D3(ノンブロッキング)の存在下で、DLD1−cOVA−GFP癌細胞と共培養された。貪食のパーセンテージは、RFP
+ マクロファージの細胞のゲート中のGFP
+ のパーセンテージにより判断された。
【
図1B】マクロファージが、抗CD47B6H12抗体の存在下で効率的に癌細胞を貪食する様子を示す図である。樹状細胞と対比されるRFP
+ マクロファージは、IgG、抗CD47B6H12mAb、又は抗CD472D3mAbの存在下で、DLD1−cOVA−GFP癌細胞と共培養された。実験は、三度実行され、同様の結果であった。
【
図2A】マクロファージが、抗CD47B6H12抗体による癌細胞の貪食の後、増殖のためにCD8
+ T細胞に効果的に抗原刺激を与える様子を示す図である。RFP+マクロファージは、IgG、抗CD47B6H12(ブロッキング)、又は抗CD472D3(ノンブロッキング)mAbの存在下で、ヒトのDLD1−cOVA−GFP癌細胞と共培養された。翌日、CD8
+ T細胞は、OTIトランスジェニックマウスから磁気的に濃縮され、CFSE(0.5μM)で標識された。分析は3日目に実行され、増殖性細胞のパーセンテージが判断された。マクロファージは、ポジティブコントロールとして、OT−Iペプチド(SIINFEKL)、OVA257−264で瞬間標識された。実験は三度実行され、同様の結果であった。
【
図2B】マクロファージが、抗CD47B6H12抗体による癌細胞の貪食の後、増殖のためにCD8
+ T細胞に効果的に抗原刺激を与える様子を示す図である。RFP
+ マクロファージは、DLD1−cOVA−GFP癌細胞又はcOVAを発現していないDLD1−GFP癌細胞と共培養された。(左)貪食は、RFP
+ マクロファージの細胞のゲート中のGFP
+ のパーセンテージにより判断された。(右)CFSEで標識されたOT−Iマウス由来のCD8+T細胞が培地に加えられ、増殖性細胞のパーセンテージが判断された。
【
図3A】抗CD47による癌細胞の貪食の後、マクロファージが、増殖のためにCD4
+ T細胞に抗原刺激を与えていない様子を示す図である。RFP
+ マクロファージは、IgG、抗CD47B6H12(ブロッキング)mAb、又は抗CD472D3(ノンブロッキング)mAbの存在下で、DLD1−cOVA−GFP癌細胞と共培養された。翌日、CD4
+ T細胞は、OT−IIトランスジェニックマウスから分離され、CFSE(0.5μm)で標識された。分析は、4日目に実行され、増殖性細胞のパーセンテージが判断された。マクロファージは、ポジティブコントロールとしてOVAペプチド323−329で瞬間標識された。
【
図3B】抗CD47による癌細胞の貪食の後、マクロファージが、増殖のためにCD4
+ T細胞に抗原刺激を与えていない様子を示す図である。RFP
+ マクロファージは、MHCIIレベルを上方制御するようにIFN−γを用いて刺激された。貪食及びOT−IICD4
+ 細胞への抗原刺激の付与は抗CD47mAbの存在下で判断された。
【
図4】Foxp3
+ 調節性T細胞での減少は、抗CD47B6H12を介したマクロファージによる癌細胞の貪食の後に生じる。RFP
+ マクロファージは、IgG、抗CD47mAbB6H12(ブロッキング)、又は2D3(ノンブロッキング)mAbの存在下で、DLD1−cOVA−GFP癌細胞と共培養された。翌日、CD4
+ T細胞はOT−II/Foxp3−GFP
+ トランスジェニックマウスから磁気的に濃縮され、培地に加えられた。CD4
+ Foxp3−GFP
+ 細胞のパーセンテージは、4日目に定量化された。
【
図5A】抗CD47を介した癌細胞の貪食の後、マクロファージが、インビボでCD8
+ T細胞に抗原刺激を与える様子を示す図である。実験機構を示す。
【
図5B】抗CD47を介した癌細胞の貪食の後、マクロファージが、インビボでCD8
+ T細胞に抗原刺激を与える様子を示す図である。養子性に移送されたCFSE
+ OT−IT細胞は、排出リンパ節でCD45.2
+ 細胞をゲートすることにより分析された。増殖性細胞のパーセンテージは、CFSE低密度をゲートすることにより判断された。各グループN=5のマウス。
【
図6A】抗CD47を介した癌細胞の貪食の後、マクロファージが、インビボで抗腫瘍のCD8
+ T細胞応答に抗原刺激を与える様子を示す図である。抗CD47を介した癌細胞の貪食の後、マクロファージは、エフェクタ細胞傷害性T細胞に抗原刺激を与える。CD8
+ T細胞は、OT−Iトランスジェニックマウスから分離され、レシピエントのマウスの静脈内に移された。マクロファージは、IgG又はブロッキング抗CD47B6H12mAbの存在下で、インビトロで、DLD1−cOVA−GFP腫瘍と共培養された。マクロファージは、磁気分離により分離され、そして翌日皮下に移された。4日後、標的細胞(CD45.1脾細胞)は、高く(10μm)又は低く(1μm)CFSEで標識された。CFSEが高い細胞は、1μMのOVAクラスI制限ペプチド(SIINFEKL)で瞬間標識され、それらにOT−I細胞傷害性T細胞の機能を標的とさせた。CFSEの高い(ペプチドに瞬間標識された)細胞及びCFSEの低い(瞬間標識されていない)細胞は、1:1の比率で混合され、静脈内に移された。排出リンパ節は、CFSEの低い細胞に対するCFSEの高い細胞のパーセンテージを判断するために16時間後に分析された。細胞致死のパーセンテージは、材料及び方法に従って判断された。N=10のマウスである。
【
図6B】抗CD47を介した癌細胞の貪食の後、マクロファージが、インビボで抗腫瘍のCD8
+ T細胞応答に抗原刺激を与える様子を示す図である。抗CD47を介した腫瘍の貪食の後、マクロファージは、抗腫瘍のCD8T細胞応答に抗原刺激を与える。OT−ICD8
+ T細胞は、レシピエントのマウスに対して静脈内に移された。マクロファージは、IgG又は抗CD47B6H12mAbの存在下において、インビトロで、DLD1−cOVA−GFP癌細胞と共培養され、その後、マクロファージは、1日目及び10日目にサブQで移送された。動物は、14日目にEG.7癌細胞に挑まれ、腫瘍の成長が経時的に監視された。各グループN=5のマウス。
【
図7A】DLD1−cOVA−GFP結腸癌細胞株の生成を示す図である。IC−21マクロファージ細胞株は、細胞質オボアルブミンを発現しているレンチウイルス及びEF−1プロモータ由来のGFPと共に遺伝子導入された。マクロファージは、SIINFEKL−H2kbの発現のためにプロファイルされた。
【
図7B】DLD1−cOVA−GFP結腸癌細胞株の生成を示す図である。DLD1細胞株は、GFPのみ又は細胞質オボアルブミン及びGFPを発現しているレンチウイルスと共に遺伝子導入された。オボアルブミンタンパク質の発現は、ウェスタンブロットにより確認された。
【
図7C】DLD1−cOVA−GFP結腸癌細胞株の生成を示す図である。抗CD47mAbのクローンB6H12(ブロッキング)及び2D3(ノンブロッキング)の両方は、DLD1−cOVA−GFP癌細胞の細胞表面に結合している。
【
図8A】抗CD47B6H12mAbは、マクロファージによる癌の貪食を媒介する様子を示す図である。野生型C57BL/6マウスから生成されたマクロファージ、及びC57BL/KaRosa26−mRFP1トランスジェニックマウスから生成されたRFPマクロファージは、同様のレベルで抗CD47B6H12の存在下において、腫瘍を貪食する。
【
図8B】抗CD47B6H12mAbは、マクロファージによる癌の貪食を媒介する様子を示す図である。抗CD47抗体の存在下での代表的なマクロファージの腫瘍の貪食は、ライト−ギムザ染色を用いて示されている。
【
図9】抗CD47B6H12を介した貪食の後、マクロファージが炎症誘発サイトカインの増加量を分泌する様子を示す図である。RFP
+ マクロファージは、IgG、又は抗CD47mAbB6H12(ブロッキング)、又は2D3(ノンブロッキング)の存在下で、DLD1−cOVA−GFP癌細胞(M
+ 腫瘍と名付けられた)と共培養された。更に、RFP
+ マクロファージは、マクロファージのmAbの刺激により放出されたサイトカインに対してマクロファージの貪食のために放出されたサイトカインを識別するためにB6H12mAb(M、B6H12のみ)の環境において単独での培養もされた。培養液の上澄みは、ルミネックス分析によるサイトカインレベルの分析のために回収された。
【
図10A】インビトロ由来のマクロファージ及び樹状細胞の特性評価を示す図である。マクロファージ及び樹状細胞の形態が、ライト−ギムザ染色を用いて示されている
【
図10B】インビトロ由来のマクロファージ及び樹状細胞の特性評価を示す図である。マクロファージは、主としてMac1
+ F4/80
+ である。樹状細胞は主としてCD11c
+ である。
【
図10C】インビトロ由来のマクロファージ及び樹状細胞の特性評価を示す図である。樹状細胞は、マクロファージよりも高レベルの同時刺激分子CD80及びCD86を発現する。
【
図10D】インビトロ由来のマクロファージ及び樹状細胞の特性評価を示す図である。マクロファージは、高レベルでSIRPαを発現し、一方で、樹状細胞は低レベルでSIRPαを発現する。
【
図11A】抗CD47抗体による腫瘍の貪食の後、マクロファージが、MHCII及び同時刺激の分子CD86を上方制御する様子を示す図である。抗CD47抗体による腫瘍の貪食の後、マクロファージは、MHCII(I−Ab)の発現レベルを上方制御する。
【
図11B】抗CD47抗体による腫瘍の貪食の後、マクロファージが、MHCII及び同時刺激の分子CD86を情報制御する様子を示す図である。抗CD47抗体による腫瘍の貪食の後、マクロファージは、同時抑制分子B7−H1を除く同時刺激分子CD86のレベルを増加する。
【
図12A】OT−II/Foxp3−GFP二重トランスジェニックマウスの検証を示す図である。左:OT−II/Foxp3−GFPは、末梢血におけるCD4+CD25+ゲート内でGFPを発現する。右:OT−II/Foxp3−GFPマウスは、頻度の増加したVα2制限TCRを発現する。
【
図12B】OT−II/Foxp3−GFP二重トランスジェニックマウスの検証を示す図である。CD4+T細胞は、OT−II/Foxp3−GFPマウス末消リンパ節から濃縮され、RFPマクロファージの存在下で共培養された。Foxp3−GFP+細胞は、TGF−β(20ng/mL)及び全トランス型レチノイン酸(RA)(1nM)の存在下で誘導された。
【
図13】マクロファージが、樹状細胞と比較して標的を貪食することにおいてより効果的であることを示す図である。マクロファージ及び樹状細胞は、標的を貪食する能力において並べて比較された。抗CD47を介したDLD1−cOVA−GFP結腸癌細胞の貪食は、オボアルブミンでコーティングされた黄緑ラテックスビーズと一緒に試験された。
【
図14】抗CD47を介した貪食の後、マクロファージ及び樹状細胞が、CD8+T細胞応答に抗原刺激を与える様子を示す図である。マクロファージ及び樹状細胞は、標的(DLD1−cOVA−GFP結腸癌細胞又はオボアルブミンでコーティングされたラテックスビーズ)と共培養され、CD8+T細胞への抗原刺激の付与は、OT−I(CD8+)T細胞の増殖のパーセンテージにより測定された。
【
図15】抗CD47を介した貪食の後、マクロファージ及び樹状細胞が、CD4+T細胞応答に抗原刺激を与えない様子を示す図である。マクロファージ及び樹状細胞は、標的(DLD1−cOVA−GFP結腸癌細胞又はオボアルブミンにコーティングされたラテックスビーズ)と共培養され、CD4+T細胞への抗原刺激の付与は、OT−II(CD4+)T細胞の増殖のパーセンテージにより測定された。
【
図16】抗CD47抗体、セツキシマブ(抗EGFR)、及び抗Epcam抗体は、マクロファージによるインビトロでの癌細胞の貪食を誘導する様子を示す図である。RFP+マクロファージは、IgG、抗CD47B6H12(ブロッキング)、又は抗CD472D3(ノンブロッキング)と、抗EGFRと、抗EpcammAbとの存在下で、DLD1−cOVA−GFP癌細胞と共培養された。
【
図17】EGFR又は抗Epcamではなく、抗CD47を通したマクロファージによる癌細胞の貪食が、CD8+T細胞への抗原刺激の付与の増加を導く様子を示す図である。RFP+マクロファージは、IgG、抗CD47B6H12(ブロッキング)、又は抗CD472D3(ノンブロッキング)と、抗EGFRと、抗EpcammAbとの存在下で、DLD1−cOVA−GFP癌細胞と共培養された。翌日、CD8+T細胞は、OT−Iトランスジェニックマウスから磁気的に濃縮され、CFSE(0.5μM)で標識された。分析は3日目に実行され、増殖性細胞のパーセンテージが判断された。この結果は、抗CD47を介した貪食は、細胞傷害性T細胞応答に抗原刺激を与えるための特有の経路を提供することを証明している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本方法及び本構成を説明する前に、本発明は、言うまでも無くそれ自体が変わり得るように、説明された特定の方法及び構成に限定されないことを理解すべきである。更に、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書で使用されている用語は単に特定の実施形態を説明するために用いられており、限定することを意図していないことを理解すべきである。
【0016】
ある範囲の値が与えられる場合、その範囲の上限及び下限の間の、文脈が別段に明示しない限りは下限の単位の10分の1までの各介在値もまた具体的に開示される。その記載された範囲内の任意の記載された値又は介在する値と、その記載された範囲内の任意の他の記載された値又は介在する値との間のより小さい範囲夫々が本発明の範囲内に包含される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、より小さい範囲内に独立して含まれても又は除外されていてもよく、範囲夫々では、より小さい範囲内において上限及び下限の両方、いずれか一方が含まれ、又はいずれも含まれておらず、記載された範囲内の任意の具体的に除外された限度を条件として本発明の範囲内に更に包含される。記載された範囲が限度のうちの一方又は両方を含む場合、これらの含まれた限度の一方又は両方を除外した範囲も本発明に更に包含される。
【0017】
特に定義されていない限り、本明細書で使用されている全ての技術的用語及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって共通して理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様又は同等である全ての方法及び材料を、本発明の実施又は試験に使用することができるが、いくつかの可能性のある好ましい方法及び材料を本明細書に記載している。本明細書で言及されている全ての刊行物は、刊行物の引用に関連する方法及び/又は材料を開示して記載すべく、参照によって本明細書に組み込まれる。本開示は、矛盾がある程度に組み込まれた刊行物の任意の開示に取って代わると理解される。
【0018】
当業者が本開示を読むと明らかであるように、本明細書に説明され例示された個々の実施形態は夫々、別々の構成要素及び特徴を有しており、別々の構成要素及び特徴は、本発明の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他の複数の実施形態のいずれかの特徴から容易に分離されてもよく、又はいずれかの特徴と容易に組み合わされてもよい。全ての記載された方法は、記載された事象の順序で、又は論理的に可能な任意の他の順序で実行され得る。
【0019】
単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」が、本明細書及び添付の特許請求の範囲に用いられている場合、文脈が別段に明示しない限り、複数の指示対象を含むことを留意しなければならない。これにより、例えば、「1つの細胞」(「a cell」)との言及は複数のそのような細胞を含み、「1つのペプチド」(「a peptide」)との言及は1以上のペプチド及び当業者に知られたその同等物、例えばポリペプチド等が含まれる。
【0020】
本明細書中で考察された刊行物は、本出願の出願日前のその開示の目的のみに提供される。本明細書中においては、先行発明を理由として、本発明がそのような刊行物に先行する権限がないことを認めるものであるとみなされるべきものはない。更に、提供される刊行物の日付は、実際の公開日とは異なる場合があり、個別に確認する必要があるかもしれない。
【0021】
定義
抗CD47因子。本明細書中において、「抗CD47因子」という用語は、CD47(例えば、標的細胞上の)のSIRPα(例えば、食細胞)の結合を減少させる任意の因子を指している。適当な抗CD47試薬の限定的でない例としては、限定的でなく高親和性のSIRPαポリペプチドを含むSIRPα試薬、抗SIRPα抗体、可溶性のCD47ポリペプチド及び抗CD47抗体、抗体断片、ペプチド、低分子、ペプチド模倣薬等がある。いくつかの実施形態においては、適当な抗CD47因子(例えば、抗CD47抗体、SIRPα試薬等)は、CD47のSIRPαへの結合を減少するようにCD47に特異的に結合する。いくつかの実施形態においては、適当な抗CD47因子(例えば、抗SIRPα抗体、可溶性のCD47ポリペプチド等)は、CD47のSIRPαに対する結合を減少するようにSIRPαに特異的に結合する。SIRPαに結合する適当な抗CD47因子は、(例えば、SIRPαを発現している食細胞中において)SIRPαを活性化しない。
【0022】
適当な抗CD47因子の効能は、因子を分析することにより評価され得る。代表的な分析においては、標的細胞は、候補因子の存在下又は不存在下で培養される。本発明で使用する因子は、該因子の不存在下に比べて、貪食及びその後のT細胞の活性化を少なくとも10%(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも120%、少なくとも140%、少なくとも160%、少なくとも180%、又は少なくとも200%)まで上方制御する。同様に、SIRPαのチロシンリン酸化のレベルのインビトロでの分析は、候補因子の不存在下で観察されるリン酸化に比べて、少なくとも5%(例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも100%)までリン酸化の減少を示す。
【0023】
いくつかの実施形態において、抗CD47因子は、結合においてCD47を活性化しない。CD47が活性化された場合、アポトーシス(即ち、計画された細胞の死)に類似の作用が生じ得る(Manna 及び Frazier著(2004)「Cancer Research 」, 64, p.1026 -1036)。したがって、いくつかの実施形態において、抗CD47因子は、CD47を発現している細胞の細胞死を直接には誘導しない。
【0024】
いくつかの病原体(例えば、ポックスウイルス、粘液腫ウイルス、シカポックスウイルス、ブタ痘ウイルス、ヤギ痘ウイルス、ヒツジ痘ウイルス等)は、感染を可能にさせる毒性因子として作用するCD47類似体(即ち、CD47ミミック)(例えば、M128Lタンパク質)を発現し(Cameron 他著(2005年 1月20日)「Virology」, 337(1), p.55 -67)、いくつかの病原体は、宿主細胞中における内因性のCD47の発現を誘導する。それゆえ、CD47類似体を発現する病原体に感染した細胞は、排他的又は内因性のCD47との組み合わせのいずれかで病原体が提供したCD47類似体を発現してもよい。この機構により、病原体は、内因性のCD47のレベルを増加し、又は増加せずに、感染した細胞中においてCD47の発現を(CD47類似体の発現を経て)増加することができる。いくつかの実施形態においては、抗CD47因子(例えば、抗CD47抗体、SIRPα試薬、SIRPα抗体、可溶性のCD47ポリペプチド等)は、CD47類似体(即ち、CD47ミミック)のSIRPαへの結合を減少させ得る。いくつかの場合においては、適当な抗CD47因子(例えば、SIRPα試薬、抗CD47抗体等)は、CD47類似体のSIRPαへの結合を減少するように、CD47類似体(即ち、CD47ミミック)に結合し得る。いくつかの場合においては、適当な抗CD47因子(例えば、抗SIRPα抗体、可溶性のCD47ポリペプチド等)は、SIRPαに結合し得る。SIRPαに結合する適当な抗CD47因子は、SIRPαを活性化しない(例えば、SIRPαを発現している食細胞中において)。抗CD47因子は、病原体がCD47類似体を提供する病原体である場合、本明細書中で提供される方法のいくつかにおいて使用され得る。即ち、「CD47」という語は、本明細書中で使用される場合、CD47と、CD47類似体(即ち、CD47ミミック)とを包含する。
【0025】
SIRPα試薬。SIRPα試薬は、通常シグナル配列及び膜貫通ドメインの間に位置し、認識可能な親和性でCD47に結合するのに十分なSIRPαの部位、又は結合活性を維持したその断片を備える。適当なSIRPα試薬は、天然タンパク質のSIRPα及びCD47の間の相互作用を減少(例えば、ブロック、防止等)する。SIRPα試薬は、通常少なくともSIRPαのd1ドメインを備える。いくつかの実施形態において、SIRPα試薬は、例えば第2ポリペプチドとインフレームで融合した、融合タンパク質である。いくつかの実施形態においては、第2ポリペプチドは、融合タンパク質の大きさを増大させることができ、例えば、これにより、融合タンパク質が血液循環から急速に取り除かれることはない。いくつかの実施形態において、第2ポリペプチドは、免疫グロブリンのFc領域の一部又は全体である。Fc領域は、「eat me」シグナルを提供することにより貪食を援助し、高親和性のSIRPα試薬により提供される「don’t eat me」シグナルのブロックを強化する。他の実施形態においては、第2ポリペプチドは、実質的にFcと同様、例えば、増大した大きさ、多量体化ドメイン、及び/又はIg分子との付加的な結合又は相互作用を提供する任意の適当なポリペプチドである。
【0026】
いくつかの実施形態において、対象の抗CD47因子は、SIRPα由来のポリペプチド及びその類似体を誘導する「高親和性のSIRPα試薬」である。高親和性のSIRPα試薬は、国際出願PCT/US13/21937号に記載されており、これは、参照によって具体的に本明細書に組み込まれる。高親和性のSIRPα試薬は、天然のSIRPαタンパク質の異型である。いくつかの実施形態において、高親和性のSIRPα試薬は、可溶性であり、そのポリペプチドは、SIRPα膜貫通ドメインを欠き、野生型のSIRPαの配列と比べて少なくとも一つのアミノ酸変化を備え、アミノ酸変化は、例えば少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、又はそれ以上までオフレートを減少することにより、CD47に結合するSIRPαポリペプチドの親和性を増大する。
【0027】
高親和性のSIRPα試薬は、通常シグナル配列及び膜貫通ドメインの間に位置し、認識可能な親和性で、例えば高親和性でCD47に結合するのに十分なSIRPαの部位、又は結合活性を維持したその断片を備える。高親和性のSIRPα試薬は、通常、親和性を増加するように修正されたアミノ酸残基を備えるSIRPαのd1ドメインを少なくとも備える。いくつかの実施形態において、本発明に係るSIRPαの異型は、例えば第2ポリペプチドとインフレームで融合した、融合タンパク質である。いくつかの実施形態においては、第2ポリペプチドは、融合タンパク質の大きさを増大させることができ、例えば、これにより、融合タンパク質は、血液循環から急速に取り除かれない。いくつかの実施形態において、第2ポリペプチドは、免疫グロブリンのFc領域の一部又は全体である。Fc領域は、「eat me」シグナルを供給することにより貪食を援助し、高親和性のSIRPα試薬により供給される「don’t eat me」シグナルのブロックを強化する。他の実施形態においては、第2ポリペプチドは、実質的にFcと同様、例えば、増大した大きさ、多量体化ドメイン、及び/又はIg分子との付加的な結合又は相互作用を提供する任意の適当なポリペプチドである。親和性の増大を提供するアミノ酸変化はd1ドメインに局在化され、これにより、高親和性のSIRPα試薬は、d1ドメイン中の野生型の配列に比べて少なくとも一つのアミノ酸変化を有するヒトのSIRPαのd1ドメインを備える。そのような高親和性のSIRPα試薬は、任意で付加的なアミノ酸配列を備え、例えば、抗体Fc配列と、限定的でなく天然タンパク質又はその断片(通常、d1ドメインに隣接する断片)のアミノ酸残基150から374を含む、d1ドメイン以外の野生型ヒトSIRPαタンパク質の部位と、これらの類似物とを備える。高親和性のSIRPα試薬は、単量体又は多量体、即ち、二量体、三量体、四量体等であってもよい。
【0028】
抗CD47抗体。いくつかの実施形態において、対象の抗CD47因子は、CD47に特異的に結合する抗体(即ち、抗CD47抗体)であり、一の細胞(例えば、感染した細胞)上のCD47と、他の細胞(例えば、食細胞)上のSIRPαとの相互作用を減少する。いくつかの実施形態において、適当な抗CD47抗体は、結合においてCD47を活性化しない。適当な抗体の非限定的な例としては、クローンB6H12、5F9、8B6、及びC3(例えば、国際公開第 2011/143624号パンフレットに記載されており、参照によって具体的に本明細書に組み込まれる)がある。適当な抗CD47抗体は、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、そのような抗体のキメラ抗体を含む。ヒト化抗体(例えば、hu5F9−G4)は、その低い抗原性のため、ヒトにおけるインビボでの適用において特に有用である。同様に、イヌ化、ネコ化抗体等は、イヌ、ネコにおける適用において特に有用であり、他の種においても夫々同様である。対象の抗体は、ヒト化抗体、イヌ化抗体、ネコ化抗体、ウマ化抗体、ウシ化抗体、ブタ化抗体等及びその異型を含む。
【0029】
抗SIRPα抗体。いくつかの実施形態において、対象の抗CD47因子は、SIRPαに特異的に結合する抗体(即ち、抗SIRPα抗体)であり、一の細胞上のCD47及び他の細胞上のSIRPαの間の相互作用を減少する。適当な抗SIRPα抗体は、SIRPαの活性化が貪食を抑制するので、SIRPαを通してシグナルを出すことを活性化又は刺激することなくSIRPαに結合し得る。代わりに、適当な抗SIRPα抗体は、標的細胞の貪食を促進する。これにより、適当な抗SIRPα抗体は、SIRPαに特異的に結合し(貪食を抑制するためにシグナル応答を十分に活性化/刺激することなく)、SIRPα及びCD47の間の相互作用をブロックする。適当な抗SIRPα抗体は、完全ヒト抗体、ヒト化抗体又はそのような抗体のキメラ抗体を含む。同様に、イヌ化、ネコ化抗体等は、イヌ、ネコにおける適用において特に有用であり、他の種においても夫々同様である。対象の抗体は、ヒト化抗体、イヌ化抗体、ネコ化抗体、ウマ化抗体、ウシ化抗体、ブタ化抗体等及びその異型を含む。
【0030】
可溶性のCD47ポリペプチド。いくつかの実施形態においては、対象の抗CD47因子は、SIRPαに特異的に結合する可溶性のCD47ポリペプチドであり、一の細胞上のCD47及び他の細胞上のSIRPα間の相互作用を減少する。適当な可溶性CD47ポリペプチドは、SIRPαを通してシグナルを出すことを活性化又は刺激することなくSIRPαに結合し得る。適当な可溶性CD47ポリペプチドは、標的細胞の貪食を促進する。これにより、適当な可溶性CD47ポリペプチドは、貪食を抑制するためにシグナル応答を十分に活性化/刺激することなく、SIRPαに特異的に結合する。
【0031】
いくつかの場合において、適当な可溶性のCD47ポリペプチドは、融合タンパク質であり得る(これは、例えば、米国特許出願公開第 2010/0239579 号明細書に、構造的に記載されており、参照によって具体的に本明細書に組み込まれる)。しかしながら、SIRPαを活性化/刺激しない融合タンパク質のみが本明細書中で提供される方法に適している。適当な可溶性のCD47ポリペプチドは、SIRPαに特異的に結合することができ、貪食を抑制するのに十分なSIRPαの活性を刺激することなく、CD47及びSIRPα間の相互作用を抑制することができる変異体又は自然に存在するCD47配列(例えば、細胞外ドメイン配列又は細胞外ドメイン変異体)を備える任意のペプチド又はペプチド断片もまた含む。
【0032】
ある実施形態においては、可溶性のCD47ポリペプチドは、CD47の細胞外ドメインは、典型的には、142アミノ酸長であり、SEQ ID NO: 3で定められたアミノ酸配列を有するように、シグナルペプチド(SEQ ID NO: 2)を含むCD47の細胞外ドメインを備える。本明細書中で記載された可溶性のCD47ポリペプチドは、少なくとも65%〜75%、75%〜80%、80%〜85%、85%〜90%又は95%〜99%(又は65%から100%の間で具体的に列挙しない任意の同一性パーセント)のアミノ酸配列を備え、SIRPαがシグナルを出すことを刺激することなくSIRPαに結合する能力を維持するCD47細胞外ドメイン変異体もまた含む。
【0033】
ある実施形態においては、シグナルペプチドのアミノ酸配列は、他のポリペプチド(例えば、免疫グロブリン又はCTLA4)由来のシグナルペプチドのアミノ酸配列に代替され得る。例えば、外側の細胞膜を横断する細胞表面ポリペプチドである全長CD47とは異なり、可溶性のCD47ポリペプチドは、分泌される。したがって、可溶性のCD47ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、通常細胞から分泌されるポリペプチドに関連するシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでもよい。
【0034】
他の実施形態においては、可溶性のCD47ポリペプチドは、シグナルペプチドを欠くCD47の細胞外ドメインを備える。例示的な実施形態において、シグナルペプチドを欠くCD47細胞外ドメインは、SEQ ID NO: 1(124アミノ酸)で定められたアミノ酸配列を有する。本明細書中で述べるように、シグナルペプチドは、タンパク質の移行の間分離されるか、又は外側の細胞膜に係留されたままであるか(このようなペプチドはシグナルアンカーとも称される)のいずれかであるため、シグナルペプチドは分泌した又は膜貫通のタンパク質に係る細胞表面に晒されていない。CD47のシグナルペプチド配列は、インビボで前駆体CD47ポリペプチドから分離されると考えられている。
【0035】
他の実施形態においては、可溶性のCD47ポリペプチドは、CD47細胞外ドメイン変異体を備える。このような可溶性のCD47ポリペプチドは、SIRPαがシグナルを出すことを刺激することなく、SIRPαと結合する能力を維持している。CD47細胞外ドメイン変異体は、SEQ ID NO: 1と少なくとも65%〜75%、75%〜80%、80%〜85%、85%〜90%又は95%〜99%同一(記載した範囲のいずれか一つ内での任意の同一性パーセントを含む)であるアミノ酸配列を有し得る。
【0036】
貪食抗原提示細胞。「貪食細胞」及び「食細胞」という語は、貪食、即ち、例えば、直径約0.1μmから直径約2mm又は約1mm、直径約0.5μmから直径約1mm等で、特に哺乳類の細胞、例えば腫瘍細胞の大きさまで含む大きさの大きな微粒子のかたまりを飲み込むことが可能な細胞を指すように、本明細書中では、互換的に使用される。本文脈において、エフェクタ細胞膜で囲むことによって細胞、病原体及び様々な微粒子を取り囲むことにより定義される。
【0037】
食細胞のいくつかの分類があり、マクロファージ、単核細胞(組織球及び単球)、多形核白血球(好中球)、及び樹状細胞がある。マクロファージは特に対象となる。貪食関連細胞応答は、炎症誘発及び消炎性のメディエータの発生及び放出のような免疫調節性の応答を含み、呼吸バースト、脱顆粒による毒及び殺菌性の分子の放出のような破壊的な性質の細胞応答もまた含む。プロフェッショナルの食細胞は、広い範囲の貪食の標的を認識することができ、非貪食の細胞よりも高いレートでそれらを摂食できる。
【0038】
好中球及びマクロファージは、十分に分化した食細胞の代表である。骨髄から離れた好中球は十分に分化している一方で、マクロファージは、血管外の組織において循環する単球から分化する。単球は、好中球及びマクロファージに比べて、より低い貪食反応を示し、最適な貪食能力を達成するために活性及び分化シグナルに応答しなければならない。単球からのマクロファージの分化の過程は、特性がよく明らかにされており、インビトロ又はインビボで実行され得る。
【0039】
樹状細胞(DC)は、リンパ系又は非リンパ系の組織でみられる形態学的に同様の細胞のタイプの多様な群における任意のメンバーに言及している。DCは、「プロフェッショナル」の抗原提示細胞とされており、MHC制限T細胞を感作する高い能力を有している。DCは、機能により、表現型により、及び/又は遺伝子発現パターンにより、特に細胞表面の表現型により認識され得る。これらの細胞は、特色ある形態、高レベルの表面MHCクラスII発現並びにCD4
+ 及び/又はCD8
+ T細胞、特に天然のT細胞に抗原提示する能力により特徴づけられている(Steinman他著(1991)「Annual Review of Immunology 」, 9:271 、そのような細胞の記載については参照により本明細書に組み込まれる)。
【0040】
未熟なDCは、低レベルのMHCクラスIIを発現するが、抗原タンパク質を貪食し、MHCクラスII分子との複合体中での提示のためにそれらを処理することができる。活性化されたDCは、高レベルのMHCクラスII、ICAM1及びCD86を発現し、例えば混合白血球反応(MLR)において、天然のアロジェネイックT細胞の増殖を刺激することができる。機能的に、DCは抗原提示の判断のための任意の適当な分析により、見分けられ得る。そのような分析は、抗体刺激されたかつ/又は天然のT細胞を刺激する能力を、T細胞増殖の判断の後の試験抗原の提示、IL2の放出等により試験することを含み得る。
【0041】
インビトロでの単球からのマクロファージ又は樹状細胞の分化についての典型的なプロトコルは、例えばDavies及びGordon著「Methods in Molecular Biology」第 290巻「Basic Cell Culture Protocols」第3版 、Zhang 他著(2008)「Current Protocols in Immunology November」に記載されており、夫々参照によって具体的に本明細書に組み込まれる。このような方法は、一般的に末梢血単核球(PBMC)を利用し、これは、単球マーカを生む細胞を選別することにより濃縮され得るか、又はそのような濃縮が要求されないとしても、例えば培養皿への接着により濃縮され得る。マクロファージのためのマーカは、F4/80、CD11b及びCD68を含む。そのような方法は、通常、培養において骨髄又は末梢血由来のマクロファージ前駆体細胞から、インビトロでの活性化刺激に応答する比較的静止した状態におけるマクロファージの同種の群を生む成熟したマクロファージを見分けるためにマクロファージコロニー刺激要素(M−CSF)及び/又はIL−4の使用を利用する。
【0042】
例えば、骨髄細胞又は末梢血細胞はM−CSFを含む培地において回収され培養される。培養において7日後、汚染された非接着性の細胞は除去され、接着性の細胞は分析のため回収される。骨髄由来又は末梢血由来の接着性のマクロファージは、通常90%よりも高い純度である。あるいは、単球は造血幹細胞、ES細胞、iPS細胞等、より原始的な前駆体由来であり得る。
【0043】
特定化された抗原提示細胞(APC)は、外部のタンパク質を取り込み、それらのタンパク質を消化して短いペプチドにし、MHC分子、例えばクラスI又はクラスIIのHLAに結合するペプチドを提示する。T細胞は、調和するTCRがある場合には、APCの表面に提示されたペプチドMHC複合体と結合する。様々な同時刺激分子、例えばCD80及びCD86、及び/又はAPCにより発現したICOS−Lが関連してもよい。T細胞、特に天然のT細胞により、抗原特異的な応答を刺激することは、APCの特徴である。
【0044】
ある実施形態においては、phAPC又はその前駆体は、使用前、液体窒素(又は同等物)中で冷凍されている。例えば、組織供給源(例えば、骨髄、末梢血)は回収され、冷凍され、必要となるまで、貯蔵され得る。同様に、インビトロの前駆体由来のphAPCは冷凍され、使用されるまで貯蔵され得る。冷凍される場合、細胞は、通常、液体窒素中における10%DMSO、50%FCS、40%RPMIの1640培地で貯蔵される。
【0045】
抗原提示の対象となるphAPC及びT細胞は、少なくとも一つのMHC抗原を共有するように選択される。主な組織適合性複合体抗原(ヒト白血球抗原、HLAとも呼ばれる)は、細胞の表面に発現したタンパク質分子であり、該タンパク質分子は、前記細胞に独特の抗原の独自性を与える。MHC/HLA抗原は、T細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞により、免疫エフェクタ細胞(「自身」)と同じ細胞の供給源由来であると認識される標的分子である。HLA抗原の二つの主なクラスが認識されている。HLAクラスI及びHLAクラスIIである。HLAクラスI抗原(ヒトにおけるA、B及びC)は、各細胞が「自身」と認識できるようにし、一方で、HLAクラスII抗原(ヒトにおけるDR、DP及びDQ)は、リンパ球及び抗原提示細胞間の反応に関連している。
【0046】
HLA遺伝子システムの重要な面は、その多型性である。各遺伝子、MHCクラスI(A、B及びC)並びにMHCクラスII(DP、DQ及びDR)は、異なる対立因子中に存在する。HLA対立因子は、数字及び添字により示される。例えば、二つの無関係の個体は夫々、クラスIHLA−B、遺伝子B5及びBw41を運び得る。対立遺伝子生成物は、α及び/又はβドメインにおける一以上のアミノ酸において異なる。特定の抗体又は核酸試薬の大パネルは、クラスI及びクラスIIの分子を発現する白血球を用いて、個体のHLAハプロタイプの分類に使用される。HLA分類において最も重要な遺伝子は、6のMHCクラスI及びクラスIIタンパク質、HLA−A、HLA−B及びHLA−DRの夫々に対する二つの対立因子である。
【0047】
ヒト白血球抗原(HLA)遺伝子は、染色体配置6p21上に存在する「スーパー遺伝子座」中で群がり、染色体配置6p21は、6の典型的な移植HLA遺伝子と、免疫システムの規制並びにいくつかの他の基本的な分子及び細胞の処理における重要な役割を有する遺伝子をコードする少なくとも132タンパク質とをコードする。完全な遺伝子座は、少なくとも224遺伝子座を有して概略で3.6Mbである。群がることの一つの効果は、一の親から遺伝する「ハプロタイプ」、即ち、単一の染色体に存在する対立遺伝子のセットが、グループとして遺伝される傾向にあることである。各親から遺伝する対立遺伝子のセットは、ハプロタイプを形成し、いくつかの対立遺伝子は、互いに関連している。患者のハプロタイプを確認することは、いくつかの対立遺伝子及びハプロタイプが、他よりも共通であり、異なる人種及び民族において異なる頻度で分配されているので、調和したドナーを見つける見込みを予測することを助け、探索戦略を立てることを援助する。
【0048】
HLA対立遺伝子については、典型的には様々なレベルの詳細事項が述べられる。ほとんどの名称は、HLA及び遺伝子座の名前で始まり、* 及び対立遺伝子を明示するいくつかの(偶数)のアラビア数字が続く。初めの二つのアラビア数字は対立遺伝子のグループを明示する。より古い型判定方法では、対立遺伝子を完全に区別できないことが多いため、このレベルで終了する。第3及び第4のアラビア数字は、同義の対立遺伝子を明示する。第5から第6のアラビア数字は、遺伝子のコードフレーム中の任意の同義の変異を表示する。第7から第8のアラビア数字は、コード領域の外側の変異を分別する。発現レベル又は対立遺伝子について知られた他の非ゲノムのデータを明示するための対立遺伝子の名称の後にL、N、Q又はSのような文字が続く場合もある。このように、完全に記載された対立遺伝子は、HLA接頭辞及び遺伝子座の表記を含まない9桁までであってもよい。
【0049】
本技術分野において知られた任意の方法は細胞の型判定のため任意に使用される。例えば、HLA型判定を行うために三つの主な処理が現在使用されている。一つ目は、従来の血清学の細胞傷害性に係る方法であり、リンパ球のサンプル(血液又は脾臓から得られる)がテラサキプレートに加えられる。これらのプレートは、夫々異なる特定の抗体(母方の血清又は生産された単一クローン抗体のいずれか由来の)を含むウェルを保持している。クラスIIの型判定において最も良い細胞は、Bリンパ球であり、クラスIの型判定は残りのリンパ球で実行され得る。磁気ビーズが血液又は脾臓から得られた細胞を精製するために使用される。HLA抗体及び特定の抗体が結合し、補体が加えられた場合、そのウェルにおける細胞は殺される。この細胞死を示すウェルのパターンは、根源の組織細胞上に存在するHLA抗原の組み合わせの推論を可能とする。
【0050】
HLA型判定に使用される他の方法は、フローサイトメトリーがあり、特に特定の対立遺伝子を探す場合に使用される。白血球は、対象のHLAの型に特異的であり、探知可能に標識された単一クローン抗体に加えられる。その後、サンプルは、細胞に結合した抗体を判断するためにフローサイトメトリーにより分析される。
【0051】
DNA型判定が、ますますHLA型判定に使用されている。この処理は、細胞からDNAを抽出し、ポリメラーゼ連鎖反応技術を用いてHLAペプチドをコードする遺伝子を増大することに関連する。遺伝子は、IMGT/HLAデータベースを含むいくつかの遺伝子バンクデータベースに貯蔵されている発見された既知のHLAヌクレオチド配列と一致し得る。
【0052】
「治療学的有効量」又は「治療量」は、所望の臨床結果(即ち、治療学上の効能)をもたらすために十分な量である。本発明において、いくつかの目的のため、抗CD47因子の有効量は、例えば少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約100%まで貪食を増大することにより、2倍、3倍又はそれ以上まで微粒子抗原が充填されるようにphAPCの能力を強化する量である。例えば、phAPCは、抗CD47因子を少なくとも0.01μg/ml、少なくとも0.1μg/ml、少なくとも1μg/ml、少なくとも10μg/ml又はそれ以上備える培地において、微粒子抗原と結合され得る。充填されたphAPC群は、APCあたり平均して少なくとも約0.1、0.2、0.5、0.75、1の抗原粒子、例えば腫瘍細胞、ウイルス感染細胞等を貪食し得る。
【0053】
充填されたphAPCの治療学的有効量は、インビボでのT細胞による標的にされた、即ち抗原特異的な応答を増大するのに有効な量である。いくつかの場合において、該応答は、腫瘍特異的、ウイルス特異的、バクテリア特異的等である多様なエピトープに対するものであり得る。これにより、標的細胞を殺すことに関して、量を決定するのにより便宜的になり得る。
【0054】
本発明の目的において、抗CD47因子の治療学的有効量は、T細胞を媒介して標的細胞(例えば、標的細胞)を殺すこと、又は最終的に細胞死を来すようなT細胞を介した傷害を増加することにより、疾病状態(例えば、癌又は慢性感染)の進行を緩和し、改善し、安定させ、逆行させ、防止し、遅らせ又は遅くするのに十分な量である。抗CD47因子の治療学的有効量では、インビボの免疫応答を通して標的細胞群を、充填されたphAPCの群を投与しない場合の効果と比べて少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%又はそれ以上、減少し得る。
【0055】
「処置」「処置している」「処置する」等の語は、本明細書中において、一般的に所望の薬理的な及び/又は生理的な効果を得ることを指すために使用される。その効果は、病気又はその症状を完全に又は部分的に予防するという点では予防的となり得るものであり、かつ/又は、病気及び/又は病気に起因する有害な影響の部分的な又は完全な安定化又は治癒という点からは、治療的となり得る。「処置」という語には、哺乳類、特にヒトの病気の任意の処置を包含し、(a)病気又は症状にかかりやすくなっているかもしれないが、未だそれを有しているとは診断されていない被験体において生じる病気及び/又は症状を予防すること(b)病気及び/又は症状の抑制、即ちそれらの発生の阻止、又は(c)病気の症状の緩和、即ち、病気及び/又は症状の退行をもたらすことが含まれる。処置を必要とする人としては、すでに病気を患っている人(例えば、癌を有する人、感染症に患った人等)、予防が望まれる人(癌の罹患性が増大した人、感染の可能性が増大した人、癌を有している疑いのある人、感染症の疑いがある人等)が含まれる。
【0056】
治療処置は、投与の前に被験体が患っている場合におけるものであり、予防処置は、投薬の前に被験体が患っていない場合におけるものである。いくつかの実施形態において、被験体は、患う可能性が増大しているか、又は、処置の前に患っている疑いがある。いくつかの実施形態において、被験体は、患う可能性が増大している疑いがある。
【0057】
本発明で使用する場合、「エピトープ」という用語は、抗体が結合する、又はT細胞抗原受容体の結合を通じてT細胞応答が向けられる抗原上の任意の抗原決定基を意味する。エピトープの決定基は、通常、アミノ酸又は糖側鎖のような分子の化学的に活性な表面の基から構成され、通常、特異的な三次元構造特性、及び特異的な電荷特性を有する。
【0058】
微粒子抗原。本明細書中において微粒子抗原は、食細胞に貪食することを要求する大きさ(例えば、ラージビーズ等)の抗原である。大部分の実施例において、微粒子抗原は、細胞であり、特に哺乳類の細胞であり、ヒトの細胞及び他の哺乳類の細胞を含む。例えば、細胞は、腫瘍細胞、感染細胞等であって良い。いくつかの実施形態において、細胞は、例えば、腫瘍生検又は感染細胞のサンプル等、レシピエントから得られるか又はレシピエント由来である。T細胞による応答は、細胞に関連したエピトープ、例えば腫瘍特異的なタンパク質又はウイルス特異的なタンパク質に最終的に向けられる。
【0059】
腫瘍細胞の例としては、限定的ではないが、AML、ALL、CML、副腎皮質癌、肛門癌、再生不良性貧血、胆管癌、膀胱癌、骨癌、骨転移、脳癌、中枢神経系(CNS)癌
末梢神経系(PNS)癌、乳癌、子宮頸癌、小児非ホジキンリンパ腫、結腸癌及び直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、ユーイングファミリー腫瘍(例えば、ユーイング肉腫)、眼癌、胆嚢癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、妊娠性絨毛疾患、ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、下喉頭癌、肝癌、肺癌、肺カルチノイド腫瘍、非ホジキンリンパ腫、男性乳癌、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性疾患、鼻腔癌及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞種、口腔癌及び口咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、下垂体腫瘍、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、黒皮腫皮膚癌、非黒皮腫皮膚癌、胃癌、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、子宮癌(例えば、子宮肉腫)、移行上皮癌、膣癌、外陰癌、中皮腫、扁平上皮癌、類表皮癌、気管支線種、絨毛癌、頭頚部癌、奇形癌腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症が含まれる。癌細胞が非癌化細胞に比べてCD47の増加した発現を示す任意の癌が、対象の方法及び構成により処置されることに適した癌である。
【0060】
他の実施形態において、標的細胞は、病原体に感染している。本明細書中においては、「感染」という語は、感染因子(例えば、細胞内病原体感染、例えば慢性の細胞内病原体感染を有する被験体)により感染した有機体(即ち、被験体)の少なくとも一つの細胞における任意の状態を指す。本明細書中においては、「感染因子」という語は、感染した有機体の少なくとも一つの細胞における増加したCD47発現を誘導する外来の生物学的存在(即ち、病原体)を指す。例えば、感染因子は、限定的ではないが、バクテリア、ウイルス、原生動物及び菌類を含む。細胞内病原体は、特に対象となる。感染症は感染因子によって引き起こされる病気である。いくつかの感染因子は、ある状態下において、認識できる症状及び病気を引き起こさないが、変化した状態下で症状及び病気を引き起こす可能性を有する。本方法においては、限定的ではないが、例えば、ウイルス感染症(例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、ヒト乳頭腫ウイルス等)、細胞間の細菌感染症(例えば、マイコバクテリウム、クラミドフィラ、エーリキア、リケッチア、ブルセラ、レジオネラ、フランシセラ、リステリア、コクシェラ、ナイセリア、サルモネラ、エルシニア菌種、ヘリコバクターピロリ等)、及び細胞間病原虫(例えば、プラスモジウム種、トリパノソーマ種、ジアルジア種、トキソプラズマ種、リーシュマニア種等)を含む慢性の病原体感染の処置において使用され得る。
【0061】
「レシピエント」「個体」「被験体」「宿主」「患者」という語は、本明細書中において、互換的に使用され、診断、処置又は治療が望まれる任意の哺乳類の被験体、特にヒトを指す。処置の目的における「哺乳類」は、ヒト、イヌ、ウマ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ等のような飼育動物及び家畜、動物園の動物、スポーツに係る動物、ペットを含む哺乳類として分類された任意の動物を指す。好ましくは、哺乳類はヒトである。
【0062】
患者に関して「サンプル」という語は、血液及び生体由来のその他の液体サンプル、生検材料、組織培養、そこから得られた又は分離された細胞及びその子孫のような固体組織サンプルを含む。その定義はまた、得られた後、試薬による処置、洗浄、又は癌細胞のような一定の細胞集団の富化のように、何らかの操作が行われたサンプルを含む。その定義はまた、特定の種の分子、例えば、核酸、ポリペプチド等が富化されたサンプルを含む。
【0063】
「生物学的サンプル」という語は、臨床サンプルを含み、外科切除により得られた組織、生検により得られた組織、培養による細胞、細胞上澄み、細胞ライセート、組織サンプル、臓器、骨髄、血液、血漿、血清等もまた含む。「生物学的サンプル」は、標的細胞又は正常対照細胞を備えるか、又はそのような細胞又はそれら由来の生物学的流体(例えば、癌細胞、感染細胞等)を備えると疑われたサンプル、例えば、そのような細胞(例えば、ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドを備える細胞ライセート又は他の細胞抽出物)から得られたポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドを備えるサンプルを含む。患者から得られた患った細胞を備える生物学的サンプルは、患っていない細胞を含み得る。
【0064】
「抗体」という語は、最も広い意味で使用され、単一クローン抗体(全長の単一クローン抗体を含む)、多クローン性抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、所望の生物活性を示す限度での抗体断片を明確に含む。「抗体」(Abs)及び「免疫グロブリン」(Ig)は、同様の構造的特徴を有する糖タンパク質である。抗体が特定の抗原に結合特異性を示す一方で、免疫グロブリンは、抗体、及び抗原特異性が知られていない他の抗体様分子を含む。後者の種類のポリペプチドは、例えば、リンパ系により低レベルで生産され、骨髄腫により増大したレベルで生産される。
【0065】
「抗体断片」、及びそのすべての文法的変形は、本明細書中において、完全な抗体の一部として定義され、該完全な抗体は、完全な抗体における抗原結合部位又は可変領域を備えており、前記一部は、完全な抗体のFc領域における定常重鎖ドメイン(即ち、抗体のイソタイプによって、CH2、CH3、及びCH4)に対して自由である。抗体断片の例は、Fab、Fab´、Fab´−SH,F(ab´)
2 及びFv断片と、二重特異性抗体と、限定的でなく(1)単鎖Fv(scFv)分子(2)重鎖部分を伴わず、一のみの軽鎖可変ドメインを含む単鎖ポリペプチド又は軽鎖可変ドメインの三つのCDRを含むその断片(3)付随する軽鎖部分を伴わず、一のみの重鎖可変領域を含む単鎖ポリペプチド又は重鎖可変領域の三つのCDRを含むその断片、及び(4)非ヒト種又は他の種の単一ドメイン結合モジュール由来の単一Igドメインを備えるナノボディを含めた、連続したアミノ酸残基の一つの途切れない配列から構成される一次構造を有するポリペプチドである任意の抗体断片(本明細書中では、「単鎖抗体断片」又は「単鎖ポリペプチド」と呼ばれる)と、抗体断片から形成される多重特異性又は多価性の構造とを含む。一以上の重鎖を備える抗体断片においては、重鎖は、完全な抗体の非Fc領域で見られる任意の定常ドメイン配列(例えば、IgGイソタイプにおけるCH1)を含み得る、かつ/又は完全な抗体で見られる任意のヒンジ領域配列を含み得る、かつ/又は、重鎖のヒンジ領域配列又は定常ドメイン配列に融合した又は位置したロイシンジッパー配列を含み得る。
【0066】
T細胞という語は、CD3及び/又はT細胞抗原受容体の発現により特徴づけられ得る哺乳類の免疫エフェクタ細胞を指し、該細胞は、T細胞の部分集合に適したエフェクタ細胞応答のために抗原刺激を与えることにより、phAPCに応答し得る。いくつかの実施形態においては、T細胞は、CD8+T細胞として特徴づけられ得る細胞傷害性T細胞(CTL)である。
【0067】
いくつかの実施形態において、T細胞は、インビボでphAPCと接触する、即ち、phAPCの有効量がレシピエントに注入され、その根源の環境、例えば、リンパ節中でT細胞と相互作用できる。他の実施形態においては、接触はインビトロで行われる。
【0068】
被験体から集められたT細胞は、所望の細胞を濃縮する技術により細胞の混合物から分離され得る。適当な溶液が分散又は懸濁のために使用され得る。そのような溶液は、一般的に平衡塩類溶液、例えば、生理食塩水、PBS、ハンクス平衡塩類溶液等であり、低濃度、一般的に5〜25mMで受容可能なバッファと共にウシ胎児血清又は他の天然起源の要素が適切に補われている。適当なバッファとしては、HEPES、リン酸塩バッファ、乳酸塩バッファ等がある。
【0069】
親和性分離の技術は、抗体で被覆された磁気ビーズを用いた磁気分離、アフィニティクロマトグラフィ、例えば補体及び細胞毒等、単一クローン抗体に結合した又は単一クローン抗体と共に使用される細胞毒薬物、及び固体マトリックス、例えばプレートに付着した抗体を用いた「パニング」、又は他の適当な技術を含み得る。正確な分離を提供する技術は、多様な色チャンネル、低角度及び鈍角の光散乱の検知チャンネル、インピーダンスチャンネル等のように、精巧性の程度を変化し得る蛍光活性化セルソータを含む。細胞は、死細胞に係る色素(例えば、ヨウ化プロピジウム)を用いることにより、死細胞に対して選別される。選別された細胞の生存能力に過度に不利益でない任意の技術が使用され得る。アフィニティ試薬は上記で示した細胞表面分子に対する特定の受容体又はリガンドであり得る。抗体試薬に加えて、ペプチドMHC抗原及びT細胞受容体のペア(ペプチドリガンド及び受容体、エフェクタ及び受容体モジュール等)が使用され得る。
【0070】
分離された細胞は、捕集管の底における血清のクッションを通常有し、細胞の生存能力を維持する適当な培地において収集され得る。dMEM、HBSS、dPBS、RPMI、Iscove培地等を含む様々な培地が市販されており、細胞の性質に従って使用され、しばしば、ウシ胎児血清が補われる。
【0071】
収集され、任意の方法で濃縮された細胞群は、直ちに使用され、又は解凍して再使用ができるように液体窒素温度で冷凍され、貯蔵され得る。細胞は、通常10%DMSO、50%FCS、40%RPMIの1640培地において貯蔵される。
【0072】
T細胞は、細胞が成長に適当な部位を見つけ得る任意の他の適当な部位中にもまた導入され得るが、通常血管投与により任意の生理的受容可能な媒体における被験体に再注入され得る。通常、少なくとも1×10
6 cells/kgで投与され、少なくとも1×10
7 cells/kg、少なくとも1×10
8 cells/kg、少なくとも1×10
9 cells/kg、少なくとも1×10
10cells/kg、又はそれ以上で投与され、通常、収集の間に得られるT細胞の数により限定される。
【0073】
方法
T細胞が媒介する、抗原、特に微粒子抗原、更に特に標的細胞に対する免疫応答を強化する方法が提供される。本方法は、生物学的サンプルから分離され、又は前駆体細胞の源(限定的ではないが血液又は骨髄由来の単球を含む)からインビトロで導出され得る貪食抗原提示細胞を得るステップと、その後抗CD47因子の有効量の存在下で、phAPCを微粒子抗原と接触させるステップとを含む。接触は、任意の適当な培地において実行され得る。phAPCは、微粒子抗原を貪食し、一般的には、約1時間から約4時間が貪食に十分である。充填されたphAPCは、標的細胞由来のタンパク質を処理し、それらを細胞表面に提示する。充填されたphAPCは、インビボ又はインビトロでT細胞の群に接触する。
【0074】
接触がインビトロで行われる場合、分離されたT細胞群は、T細胞を抗原刺激するために十分な量及び期間でphAPCに加えられる。一般的に、APCに対するT細胞の割合は、1:10から10:1までの間のいずれかであり、phAPCの数が限定的でない限り、重要ではない。任意の適当な培地が使用され得る。8日間まで、10日間まで、12日間まで、14日間までの期間が十分であり得る(例えば、Dudley他著(2005)「Journal of clinical Oncology」23(10), p.2346- 2357参照)。このように抗原刺激されたT細胞は、抗原特異性の判断、サイトカインプロファイル等に関連する実験目的及びインビボでの輸送を含む任意の所望の目的で使用され得る。
【0075】
接触がインビボで行われる場合、充填されたphAPCの有効量がレシピエントに投与される。適量及び頻度は抗CD47因子、投与の形式、抗原の性質等によって変わり得る。そのようなガイドラインが個々の環境に対して調節されることが当業者に理解される。適量は、例えば鼻腔内、吸入等の局所的な投与又は例えば、筋肉内注射、腹腔内投与、静脈内注射等の全身投与においても変更され得る。一般的に少なくとも約10
4 phAPC/kgで投与され、少なくとも約10
5 phAPC/kg、約10
6 phAPC/kg、約10
7 phAPC/kg又はそれ以上で投与される。
【0076】
強化された免疫応答は、レシピエント中に存在する標的細胞に対する、例えば、腫瘍細胞、感染細胞の排除、細胞傷害活性の試験のために抗原刺激したT細胞をHLA調和標的に結び付けること、細胞内サイトカインの測定分析等に対するT細胞の細胞溶解応答の増加として顕著に現れ得る。
【0077】
キット
本方法において使用されるキットもまた提供される。本キットは、例えば、剤形(例えば、抗原刺激量剤形)中に、抗CD47因子を含む。いくつかの実施形態において、抗CD47因子は剤形(例えば、治療学上有効剤形)で、任意の適当なパッケージ(スティックパック、ドーズパック等)中の液体形態で又は固体形態で提供される。phAPCの選別又はインビトロでの導出のための試薬、例えば、M−CSF、IL−4、組織培養試薬、微粒子抗原等もまた提供され得る。
【0078】
上述の構成要素に加えて、本キットは(ある実施形態においては)本方法を実施するための使用説明書を更に含んでいてもよい。これらの使用説明書は、様々な形態で本キットに存在し、一以上が本キット中に存在し得る。これらの使用説明書の一つの形態は、キットのパッケージ中、添付文書中等において、適当な媒体又は基材、例えば、情報が印刷された一枚又は複数枚の紙に、印刷された情報として存在してもよい。これらの使用説明書の更なる形態は、情報が記録された、コンピュータが読み取り可能な媒体、例えば、ディスケット、コンパクトディスク(CD)、フラッシュドライブ等である。これらの使用説明書の存在し得る更なる形態は、離れた場所において情報にアクセスできるようにインターネットを経由して使用され得るウェブサイトのアドレスである。
【0079】
有用性。本方法及びキットは、T細胞を介した免疫応答を強化するために使用され得る。いくつかの実施形態において、免疫応答は、標的細胞(例えば、癌細胞、感染細胞等)が、同様のタイプの通常の細胞に比べて増加したCD47の発現を示す状態に向けられる。抗CD47因子がSIRPα(phAPC上の)及び標的細胞(例えば、癌細胞、感染細胞等を含む微粒子抗原)上のCD47間の相互作用を抑制することにより、標的細胞の貪食及び標的細胞からの抗原提示が増加する。
【0080】
いくつかの実施形態において、上記状態は、慢性感染、即ち、1週間、2週間に及ぶ期間等の間に宿主の免疫システムにより除去されない感染である。いくつかの場合において、慢性感染は、例えばレトロウイルス、レンチウイルス、B型肝炎ウイルス等の宿主のゲノムへの病原体遺伝要素の統合を伴い、である。他の場合において、慢性感染は、例えば、ある細胞内バクテリア又は細胞内病原虫が、宿主細胞中に病原体細胞が存在することにより生じる。更に、いくつかの実施形態において、感染は、ヘルペスウイルス又はヒト乳頭腫ウイルスと同様に潜伏期がある。
【0081】
対象となるウイルス病原体は、限定的ではないが、レトロウイルス病原体、レンチウイルス病原体、例えば、HIV−1、HIV−2、HTLV、FIV、SIV等、B型肝炎ウイルス等を含む。対象の病原菌は、以下のように限定的ではないが、エルシニア種(例えばペスト菌、エルシニア・シュードツベルクローシス、エンテロコリチカ菌)、フランシセラ種、パスツレラ種、ビブリオ種(例えば、コレラ菌、腸炎ビブリオ)、レジオネラ種(レジオネラニューモフィラ)、リステリア種(リステリア・モノサイトゲネス)、マイコプラズマ種(例えば、マイコプラズマ・ホミニス、肺炎マイコプラズマ)、マイコバクテリウム種(例えば、結核菌、ライ菌)、リケッチア種(例えば、リケッチア・リケッチイ、発疹熱リケッチア)、クラミジア種(例えば、トラコーマ病原体、肺炎クラミジア、オウム病クラミジア)、ヘリコバクター種(例えばピロリ菌)等を含む。また、細胞内病原虫は、例えば、プラスモジウム種、トリパノソーマ種、ジアルジア種、トキソプラズマ種、リーシュマニア種等を含む。
【0082】
本発明に係る方法で処置された感染は、概して、ライフサイクルの少なくとも一部が宿主細胞中にある(即ち、細胞内段階を有する)病原体に関わる。本発明に係る方法は、宿主有機体のTエフェクタ細胞により感染した細胞を、処置を行わない場合における除去に比べてより効果的に殺すことを提供し、よって、病原体のライフサイクルの細胞内段階に向けられる。本方法は、更に、処置の効能のために患者を監視することを含み得る。監視は、例えば、熱、白血球数等の感染における臨床の兆候を測定してもよく、かつ/又は病原体の存在を直接監視してもよい。
【0083】
処置は、他の活性因子と組み合わせてもよい。抗生物質の種類としては、ペニシリン(例えば、ペニシリンG、ペニシリンV、メチシリン、オキサシリン、カルベニシリン、ナフシリン、アンピシリン等)、β−ラクタマーゼ阻害剤、セファロスポリン、例えばセファクロル、セファゾリン、セフロキシム、モキサラクタム等と組み合わせられるペニシリン、カルバペネム、モノバクタム、アミノグリコシド、テトラサイクリン、マクロライド、リンコマイシン、ポリミキシン、スルホンアミド、キノロン剤、クロラムフェニコール、メトロニダゾール、スペクチノマイシン、トリメトプリン、バンコマイシン等がある。例えば、インターフェロンγ、腫瘍壊死因子α、インターロイキン12等サイトカインもまた、含まれ得る。例えば、アシクロビル、ガンシクロビル等の抗ウイルス因子もまた処置において使用され得る。
【0084】
いくつかの実施形態において、上記状態は癌である。上記で述べたように、癌細胞が、同様の種の非癌性の細胞に比べて、増加したレベルのCD47を発現する任意の癌が本方法で処置され得る。
【0085】
本明細書中において使用される「癌」という語は、細胞の異常で制御されていない成長によって引き起こされる種々の状態を指している。「癌細胞」と呼ばれる、癌を引き起こすことができる細胞は、制御されていない増殖、不死、転移能、急成長及び急増の割合のような特性及び/又はある典型的な形態上の特徴を有する。癌は、多くの方法のうちの、限定的ではないが、単一の腫瘍又は複数の腫瘍の存在を検知(例えば、臨床又は放射線学の手段により)すること、腫瘍の中又は別の生物学的サンプル由来(例えば、組織生検由来)の細胞を検査すること、癌を示す血液マーカを測定すること、癌を示す遺伝子型を検知することを含むいずれかの方法により検知され得る。しかしながら、一以上の上記検知方法における陰性の結果は、癌の不存在を必ずしも示していない。例えば、癌の処置に対して完全な応答を示す患者が、再発により証明されるように、未だ癌を有しているかもしれない。
【0086】
本明細書中で使用される「癌」という語は、カルシノーマ(元位置のカルシノーマ、浸潤癌、転移性癌)、及び前癌状態、即ち、組織の根源から独立した新形態変化を含む。「癌」という語は、冒された組織又は細胞集合の任意のステージ、悪性度、組織形態学的な特徴、侵襲性、病原力、又は悪性腫瘍に限定されない。特に、ステージ0の癌、ステージIの癌、ステージIIの癌、ステージIIIの癌、ステージIVの癌、悪性度Iの癌、悪性度IIの癌、悪性度IIIの癌、悪性癌及び原発癌が含まれる。
【0087】
処置され得る癌及び癌細胞は、限定的ではないが、白血病、リンパ腫及び骨髄腫を含む血液癌、例えば脳の腫瘍(膠芽腫、髄芽腫、星細胞腫、乏突起膠腫、上衣腫)、カルシノーマ(例えば、肺、肝臓、甲状腺、骨、副腎、脾臓、腎臓、リンパ節、小腸、膵臓、結腸、胃、胸、子宮内膜、前立腺、睾丸、卵巣、皮膚、頭頚部及び食道のカルシノーマ)を含む固形癌を含む。
【0088】
ある実施形態において、癌は、血液癌である。ある実施形態において、血液癌は、白血病である。他の実施形態において、血液癌は、骨髄腫である。ある実施形態においては、血液癌はリンパ腫である。
【0089】
ある実施形態においては、白血病は、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)から選択される。ある実施形態においては、白血病はAMLである。ある実施形態においては、白血病はALLである。ある実施形態においては、白血病はCLLである。更なる実施形態においては、白血病はCMLである。ある実施形態においては、癌細胞は、白血病細胞、例えば、限定的ではないが、AML細胞、ALL細胞、CLL細胞又はCML細胞である。
【0090】
適当な癌は、限定的でなく、白血病、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、転移、微小残存病変、固形腫瘍癌、例えば乳癌、膀胱癌、結腸癌、卵巣癌、膠芽腫、平滑筋肉腫、及び頭頚部扁平上皮癌等を含む。例えば、(i)Willingham他著(2012年 4月24日)「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United states of America 」, 109 (17), p.6662-7, 「The CD47-signal regulatory protein alpha(SIRPα)interaction is a therapeutic target for human solid tumors 」、(ii)Edris 他著(2012年 4月24日)「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United states of America 」, 109 (17), p.6656-61 , 「Antibody therapy targeting the CD47 protein is effective in a model of aggressive metastatic leiomyosarcoma 」、及び(iii)US米国特許出願第 2011/0014119 号明細書参照。また、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0091】
医薬組成物。充填されたphAPC又は抗原提示されたT細胞は、治療用途、例えばヒトの処置に適した医薬組成物において提供され得る。そのような細胞を備える治療用製剤は、冷凍され、又は水溶液という形式で、生理的に受容可能な輸送体、賦形剤、安定剤(Osol, A 編(1980)Remington’s Pharmaceutical Sciences 第16版)と共に行う投与のために準備され得る。細胞は、良い医療と矛盾しない様式で処方され、投薬され、投与される。本状況における考慮のための要素は、処置される特定の病気、処置される特定の哺乳類、各患者の臨床状態、病気の原因、因子の輸送部位、投与の方法、投与のスケジュール、及び医師に知られている他の要素を含む。
【0092】
細胞は、任意の適当な手段、通常、非経口により投与され得る。非経口的注入は、筋肉内投与、静脈内投与(急速投与又は遅い点滴)、動脈内投与、腹腔内投与、脊髄内投与又は皮下投与を含む。
【0093】
好ましい形式は、意図される投与の形式及び治療学的適用による。組成物は、所望の製剤により、動物又はヒトへの投与のために医薬組成物を処方するために通常使用されるビヒクルとして定義される、薬学的に許容可能で、非毒性の輸送体又は希釈剤もまた含み得る。希釈剤は、組み合わせたものの生物学的活性に影響を及ぼさないように選択される。そのような希釈剤の例は、蒸留水、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、ブドウ糖溶液及びハンクス溶液である。更に、医薬組成物又は製剤は、他の輸送体、アジュバント、又は非毒性、非治療的、非免疫原性の安定剤等を含み得る。
【0094】
更に、いくつかの実施形態においては、医薬組成物は、タンパク質、キトサンのような多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸及び共重合体(ラテックス官能基化セファロース(商標)、アガロース、セルロース等のような)、ポリメリックアミノ酸、アミノ酸コポリマー、脂質凝集体(油滴又はリポソームのような)のように、大きく、ゆっくり代謝する高分子を含み得る。
【0095】
受容可能な輸送体、賦形剤又は安定剤は、使用される投薬量、及び濃度において、レシピエントに対して非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸、アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤、防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノールアルコール、ブチルアルコール又はベンジルアルコール、メチルパラベン又はプロピルパラベンのようなアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール及びm−クレゾール等)、低分子量の(約10残基未満の)ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン等のタンパク質、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリシン等のアミノ酸、単糖類、二糖類及びブドウ糖、マンノース又はデキストリンを含む他の炭水化物、EDTA等のキレート剤、ショ糖、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の砂糖、ナトリウム等の塩形成対イオン、金属錯体(例えば、Znタンパク質錯体)等のバッファ、及び/又は、TWEEN(商標)PLURONICS(商標)又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン界面活性剤を含む。インビボでの投与のために使用される製剤は、無菌でなければならない。これは、除菌膜を通したろ過により容易に達成される。
【0096】
一般に、組成物は、溶液又は懸濁液のいずれかとして注射剤として調剤される。注射の前に液体ビヒクル中の溶解液又は懸濁液に適した固体状態でも調剤され得る。調剤はまた、上記で論じたように、ポリラクチド若しくはポリグリコリド等のリポソーム若しくは微小粒子、又は強化したアジュバント効果のための共重合体において、乳化され、又はカプセルに包まれ得る。Langer著(1990)「Science 」第249 巻p.1527、Hanes 著(1997)「Advanced Drug Delivery Reviews」第28巻p.97- 119 。本発明の因子は、活性成分の持続した又は拍動性の放出を許すように処方され得る蓄積注射又は移植調剤という形式で投与され得る。医薬組成物は、一般的に、無菌、実質上等張でかつ米国食品医薬品局の全ての適正製造基準(GMP)の規則を全面順守して、処方される。
【0097】
本発明は十分に記載されたが、当業者にとって、本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、種々の変更及び調整がなされ得ることは明らかである。
【0098】
実験
以下の例は、当業者に、本発明の実現及び使用の方法の完全な開示及び記述を提供するために挙げられており、発明者らが発明とみなした範囲を限定することを意図するものではなく、また、以下の実験が、実施された実験の全て又は唯一であると示すことを意図しているのではない。使用された数値(例えば、量、温度等)に関して正確さを確保するために尽力したが、多少の実験誤差及び偏差を考慮すべきである。特に示していない限り、比率は、重量比率であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、圧力は大気圧又はその近傍値である。
【0099】
本明細書に引用されている全ての刊行物及び特許出願は、個々の刊行物又は特許出願が、具体的に且つ個別に参照によって組み込まれると示されているかのように参照によって本明細書に組み込まれる。
【0100】
本発明は、発明の実施のために好ましい態様を備えるように、本発明者により発見された又は提案された特定の実施形態について説明されている。本開示を考慮すれば、多数の調整及び変更が、例示された特定の実施形態において、本発明の意図する範囲から逸脱することなくなされ得ることが、当業者によって認識される。例えば、コドンの冗長性のために、根底にあるDNA配列において、タンパク質配列に影響を及ぼすことなく変更がなされ得る。更に、生物学的な機能的等価の考慮のために、種類又は量において、生物学上の作用に影響を及ぼすことなく、タンパク質構造における変更がなされ得る。そのような全ての調整は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。
【0101】
実施例
抗CD47抗体介在のマクロファージによる癌の貪食が効果的な抗腫瘍T細胞応答に抗原刺激を与える。
癌に対するT細胞応答の動員は、持続性の治癒を達成する可能性を有する。しかしながら、効果的な抗腫瘍T細胞応答を達成するためにどのように抗原提示細胞を最適に利用するかは知られていない。本研究では、抗CD47抗体を介したマクロファージによる癌の貪食が抗腫瘍T細胞免疫応答を起こしうることが示される。オボアルブミンモデルの抗原システムを使用して、抗CD47抗体を介したマクロファージによる癌細胞の貪食は、OT−IT細胞(CD8
+ )の抗原刺激を増加し、OT−IIT細胞(CD4
+ )を抗原刺激しないという結果となった。CD4+T細胞は、Foxp3
+ 調節性T細胞における減少により特徴づけられた。抗CD47を介した貪食の後、マクロファージはインビボで細胞傷害性の機能を示すためにCD8
+ T細胞を抗原刺激した。この応答は、腫瘍の挑戦から動物を保護する。我々は、抗CD47抗体処置は、マクロファージの癌の貪食を可能とするだけでなく、抗腫瘍細胞傷害性T細胞免疫応答を起こし得ると結論づけられる。
【0102】
本研究では、抗CD47抗体を介した癌細胞の貪食が抗腫瘍T細胞免疫応答を促進し得るか否かを試験した。
【0103】
マクロファージは、抗CD47B6H12抗体の存在下で癌細胞を貪食する。モデルの腫瘍の抗原に対する免疫応答に続いて、ヒトの結腸癌細胞株DLD1が細胞質オボアルブミン及びGFPを発現するレンチウイルスベクターと共に遺伝子導入された(DLD1−cOVA−GFP)(
図7A、
図7B及び
図7C)。DLD1−cOVA−GFP癌細胞は、CD47を発現し、両方の抗ヒトCD47mAb、クローンB6H12及び2D3(
図7、
図7B及び
図7C)により認識され得る。抗CD47B6H12抗体は、CD47及びSIRPα間の相互作用をブロックし、一方、抗CD472D3抗体は、CD47と結合するが、そのSIRPαとの相互作用をブロックしていない。マクロファージは、抗CD47B6H12の存在下でDLD1−cOVA−GFP癌細胞を貪食するが、抗CD472D3mAbの存在下では貪食せず、抗CD47を介した貪食はCD47/SIRPα相互作用のブロックに依存していることが確認される(
図1A及び
図1B、
図8A及び
図8B)。抗CD47B6H12を介した癌細胞の貪食は、マクロファージの炎症誘発サイトカインの放出をもたらす。例えば、IL−12p40、TNFα、RANTES及びMCP−3サイトカインのレベルは、B6H12を介した貪食の後上昇する(
図9)。APC、マクロファージ及び樹状細胞の能力は、抗CD47mAbに対する応答における貪食能において試験された。抗CD47B6H12mAbの存在下におけるDLD1−cOVA−GFP癌細胞の貪食において、マクロファージに比べて、樹状細胞は、効果的でない(
図1A及び
図1B)。この結果と矛盾することなく、SIRPα、CD47に対するリガンドは、マクロファージにおいては高レベルで発現されているが、樹状細胞においてはより低いレベルで発現されている(
図10A、
図10B、
図10C及び
図10D)。
【0104】
マクロファージは、抗CD47B6H12抗体による癌細胞の貪食の後、OT−I(CD8
+ )T細胞を抗原刺激する。マクロファージによる抗CD47を介した貪食に続く、CD8
+ T細胞への抗原提示を評価するために、CFSE希釈検定が、オボアルブミン特異的なCD8
+ T細胞(OT−I)の増殖性の応答を測定するために使用された。RFP
+ マクロファージは、IgG、ブロッキング抗CD47B6H12、又はノンブロッキング抗CD472D3抗体の存在下で、DLD1−cOVA−GFP癌細胞と共培養された。リンパ節が、OT−I(CD8
+ )トランスジェニックマウスから回収され、CFSE(0.5μM)で標識され、CD8
+細胞は、磁気分離により濃縮された。3日目に、増殖性のOT−IT細胞のパーセンテージが、希釈されたCFSE色素(低CFSE)を有していた細胞の割合に基づいて定量化された。増殖性のOT−IT細胞のパーセンテージは、抗CD47B6H12mAb処置に続く貪食された癌細胞を有するマクロファージの存在下で増加した(
図2A)。OT−IT細胞の増殖性の応答は、抗原特異的な応答であったと確かめるために、マクロファージは、CFSEで標識したOT−IT細胞を加える前に、ブロッキング抗CD47B6H12mAbの存在下において、DLD1−cOVAGFP癌細胞をDLD1−GFP癌細胞と対比して(後者はオボアルブミンを発現していない)貪食することを許された。増加したOTIT細胞の増殖は、抗CD47を介したDLD1−cOVA−GFP癌細胞の貪食の後にのみ観察され、DLD1−GFP癌細胞の場合は観察されず、抗原特異性効果が示された(
図2B)。
【0105】
マクロファージは、抗CD47B6H12抗体による癌細胞の貪食の後OT−II(CD4
+ )T細胞に抗原刺激を与えない。抗CD47を介したマクロファージによる貪食に続くCD4
+ T細胞の活性化を評価するために、CFSE希釈検定が、オボアルブミン特異的なCD4
+ T細胞(OT−II)の増殖性の応答を測定するために使用された。マクロファージは、抗CD47B6H12mAbの存在下において、DLD1−cOVA−GFP癌細胞の貪食を許され、CFSEで標識されたOT−II(CD4
+ )T細胞が培地に加えられた。興味深いことには、増殖性のOT−IIT細胞のパーセンテージは、ベースラインのレベルと比較して、ブロッキング抗CD47B6H12mAbの存在下において貪食した癌細胞を有するマクロファージの存在下において、減少した(
図3A)。
【0106】
この結果は、MHCII(I−Ab
+ )の限定された有効性が原因であったかもしれないので、抗CD47B6H12を介した貪食の後、細胞表面上でMHCIIを発現しているマクロファージのパーセンテージを測定した。興味深いことに、I−Ab
+ マクロファージのパーセンテージは、抗CD47B6H12を介した癌細胞の貪食の後、CD4
+ T細胞の活性化の減少にも関わらず、増加した(
図11A及び
図11B)。更に、マクロファージ上のMHCIIの有効性がCD4
+ T細胞の増殖性の応答を制限していたか否かを判断するために、IFN−γが貪食及び抗原提示分析の評価でマクロファージ上の表面MHCIIレベルを上方制御するために使用された。IFN−γは、抗CD47B6H12mAbの存在下において効率的に癌を貪食したマクロファージを刺激し、OT−IICD4
+ T細胞応答は、ベースラインと比べてまだ減少した(
図3B)。
【0107】
Foxp3
+ 調節性T細胞の減少が、抗CD47B6H12を介した癌の貪食を行っているマクロファージにCD4
+ T細胞が出会った後、生じる。CD4
+ 調節性T細胞上の抗CD47B6H12を介した貪食の機能的な効果を分析するために、二重トランスジェニックマウスを生み出すためにOT−IIトランスジェニックマウスをFoxp3−GFPレポーターマウスと交配した(
図12A及び
図12B)。これらのマウスは、CD4
+ CD25
+ 群の中で、25%のFoxp3−GFP
+ 細胞を発現し、Vα2制限を示す(
図12A)。更に、CD4
+ Foxp3−GFP
+ T細胞は、オボアルブミンペプチド323−339に敏感であり、TGF−β及び全トランス型レチノイン酸環境で、分化するために誘導され得る(
図12B)。RFP
+ マクロファージは、IgG、ブロッキング抗CD47B6H12mAb、又はノンブロッキング抗CD472D3mAbの存在下において、DLD1−cOVA−GFP癌細胞と共培養された。翌日、CD4
+ T細胞は、OT−II/Foxp3−GFP
+ 二重トランスジェニックマウスから磁気的に濃縮され、培地に加えられた。4日後、調節性T細胞のパーセンテージは、CD4
+ Foxp3−GFP+細胞のパーセンテージにより定量化された(
図4)。Foxp3
+ 調節性T細胞の減少が、CD4
+ T細胞が抗CD47B6H12mAbの存在下において癌細胞を貪食しているマクロファージに出会った後、観察された。
【0108】
抗CD47を介した癌細胞の貪食の後、マクロファージは、インビボでOT−I(CD8
+ )T細胞に抗原刺激を与える。インビボでCD8
+ T細胞の活性化において抗CD47B6H12を介した貪食の効果を評価するために、OT−I(CD8
+ )T細胞(CD45.2)がCFSEで標識され、CD45.1レシピエントマウスに養子性に移動された(
図5A)。次の日、RFP
+ マクロファージは、IgG又は抗CD47B6H12の存在下で、DLD1−cOVA−GFP腫瘍細胞と共培養された。マクロファージは、磁気的な濃縮により分離され、足蹠の皮下への移動の前に、貪食がFACS分析により確かめられた。4日後、CD45.2
+ ゲート中の増殖性の細胞のパーセンテージ(低CFSE)のために、膝窩のリンパ節が分析された。抗CD47依存の機構により貪食した癌を有するマクロファージを受けているマウス中の増殖性のOT−IT細胞の増加があった。
【0109】
マクロファージは、抗CD47を介した癌細胞の貪食の後、インビボで抗腫瘍CD8T細胞応答に抗原刺激を与える。次に抗CD47を介したマクロファージによる癌細胞の貪食の後、OT−I(CD8
+ )T細胞の機能的な効果を評価した。オボアルブミンペプチド表示標的のCD8
+ T細胞致死の効率を評価するために、CD8
+ T細胞がOT−Iトランスジェニックマウスから分離され、静脈内投与によりレシピエントマウスに移動された(
図6A)。RFP
+ マクロファージは、抗CD47B6H12mAb又はIgGmAbの存在下において、インビトロでDLD1−cOVA−GFP癌細胞と共培養された。2時間の培養の後、マクロファージは分離され、足蹠に注入された。4日後、マウスは、細胞傷害活性を評価するために標的細胞(CD45.1脾細胞)に挑戦された。高CFSEの脾細胞は、OT−I細胞傷害性T細胞の標的とするために1μMのOVAクラスI制限ペプチド(SIINFEKL)で瞬間標識され、その後静脈内への移動の前にペプチドで瞬間標識されていない低CFSEの細胞と1:1の割合で混合された。16時間後の排出リンパ節の分析は、抗CD47B6H12mAbと共に、癌細胞を貪食しているマクロファージを受けているマウスにおけるペプチドで瞬間標識された高CFSEのリンパ球の細胞致死の増加を示した(
図6A)。
【0110】
次に、抗腫瘍免疫応答に抗原刺激するためのCD8
+ エフェクタT細胞の能力が評価された。OT−IマウスからのCD8+T細胞はレシピエントの動物に移動された(
図6B)。マクロファージは、抗CD47B6H12mAb又はIgGmAbの存在下において、インビトロでDLD1−cOVA−GFP癌細胞と共培養され、その後、マクロファージは、1日目及び10日目に足蹠に移動された。動物は、14日目にEG.7(EL4を発現したオボアルブミン)癌細胞に挑戦され、腫瘍の成長が経時的に監視された。抗CD47B6H12mAbと共に癌細胞を貪食しているマクロファージを受けているマウスは、腫瘍の挑戦からの保護を立証した(
図6B)。
【0111】
本発明は、適応性免疫システムのT細胞に対する腫瘍ペプチドの抗原提示における抗CD47が可能にする貪食の役割に係る試験に基づいている。CD47が先天性及び適応性の両方がある免疫のための“不可視のクローク”として機能することが証明された。ブロッキング抗CD47mAbを用いた処置は、適応性T細胞免疫応答を導き、それにより抗CD47抗体のための作用に係る付加的な機構を提供している。
【0112】
オボアルブミン特異的なOT−I(CD8+)及びOTII(CD4+)T細胞クローンは、細胞質オブアルブミンを発現するように設計された癌細胞の抗CD47を介した貪食の後、マクロファージによる抗原提示の結果が続くように使用された。インビトロ及びインビボの分析を使用して、抗原がCD8+T細胞に効果的に提示されることが示された。反対に、充填されたマクロファージに対するOT−IICD4+T細胞の増殖性の応答のレベルは、ベースラインのレベルに比べて減少された。OT−ICD8+増殖及びOT−IICD4+増殖のベースラインのレベルは、おそらく、マクロファージにより形質膜陥入され又は貪飲され、その後MHCI経路及びMHCII経路の両方に対する提示のために処理された癌細胞から放出されたオブアルブミンのために20%であった(
図2A及び
図2B、
図3A及び
図3B)。
【0113】
合わせて、これらの結果は、抗CD47を介した癌細胞の貪食は、CD4+T細胞に提示されたネガティブシグナル及びCD8+T細胞に提示されたポジティブシグナルをもたらすことを証明する。更に、CD4+T細胞応答は、減少した調節性T細胞により特徴づけられた。これは、ペプチドに応答した調節性T細胞の減少した増殖、又は効果のより低い調節性T細胞の分化が原因であることのいずれかに帰するかもしれない。抗CD47を介した癌の貪食に続くマクロファージによる抗腫瘍T細胞応答へのインビボでの抗原刺激は、マウスを腫瘍の挑戦から保護する。抗CD47mAbは、癌による免疫回避に対する調節性T細胞の寄与に打ち勝ち、かつ効果的な抗腫瘍細胞傷害性T細胞応答を起こす新しい治療学的戦略を示す。
【0114】
本システムにおいてマクロファージは、抗CD47抗体に応答して癌を貪食することについて、樹状細胞よりも効果的である。これは、DCと比べて、マクロファージにおいてSIRPαがより高いレベルで見られるため、又はマクロファージによるより効果的な細胞全体の貪食のためであるかもしれない。樹状細胞の部分集合は、それらのSIRPαの発現のレベルが変化すると報告されているので、他の樹状細胞の部分集合は、インビボでの抗CD47抗体に対する応答において癌をより効果的に貪食するかもしれない。しかしながら、マクロファージ及び樹状細胞の両方が、抗CD47を介した貪食に続くCD8+T細胞応答に抗原刺激を与えることが示される。組織特異的なDC及びマクロファージの詳細な役割は、マウス及びヒトのシステムの両方において更なる調査を認可する。
【0115】
これらの発見は、CD8+T細胞に対する腫瘍抗原の提示及び抗腫瘍免疫の媒介におけるマクロファージの新しい役割を証明している。先天性及び適応性の両方を有する免疫システムの抗CD47抗体の作用に係るメカニズムへの関与は、臨床的意味を有する。抗体の治療学的使用が成功すれば、腫瘍に関連するマクロファージが各癌細胞を貪食することを要求しないかもしれず、マクロファージによって到達できない癌細胞を殺すCD8+T細胞に関連するかもしれない。患者の抗CD47治療を試験するための臨床治験のプロトコルの設計において、T細胞に係る免疫の監視は、処置に対する臨床的応答及び臨床的結果を理解するために重要である。最終的に、T細胞の役割は、抗CD47抗体に関連する併用療法を設計する場合に、注意深く考慮されるべきである。抗CD47mAbは、腫瘍抗原に対する適応免疫応答を強化するために養子性のT細胞治療又は抗体を活性化するT細胞と組み合わせて、癌のワクチン接種として臨床的に使用されることが見出される。
【0116】
抗CD47を介した癌の貪食が、直接的に癌細胞を取り除くように機能するだけでなく、腫瘍を除去する抗腫瘍T細胞応答も起こすという結論が下された。抗CD47治療を受けている患者は、癌に対する先天性及び適応性の両方を有する免疫応答から利益を得ることができる。
【0117】
材料及び方法
マウス。C57BL/Ka(CD45.2)、C57BL/Ka(CD45.1)、C57BL/KaRosa26−mRFP1マウスを含めて、マウスは、実験動物ケア管理委員会(APLAC)に従って、スタンフォード大学研究動物施設(Stanford University Research Animal Facility)で繁殖され、飼育された。動物の全ては、無菌のマイクロインシュレータに収容され、水及びげっ歯類のエサが不断で与えられた。OT−ITCRトランスジェニックマウス、OT−IITCRトランスジェニックマウス及びFoxp3−GFPマウスはジャクソン研究所(Jackson laboratory)から購入された。
【0118】
分子生物学。細胞質オボアルブミンは、pCI−neo−cOVA(プラスミド25097、AddGene )からクローン化され、EcoRI及びBamHI制限部位を使用してレンチウイルスベクタ−、pCDH−EF1−MCS−T2A−copGFPベクター(System Biosciences)に輸送された。レンチウイルスの製造及び濃縮は、標準プロトコルを使用して、達成された。
【0119】
マクロファージ及び樹状細胞の生産。骨髄全体の細胞がC57BL/Ka(CD45.2)マウス又はC57BL/KaRosa26−mRFP1マウスから分離された。マクロファージは、7日間MCSF10ng/mL中で骨髄全体の培養及び接着断片の回収により生産された。樹状細胞は、GM−CSF(1000U/mL)中で生産され、洗浄され、2日目及び4日目に新鮮な培地と交換された。非接着細胞は、6日目に再播種され、7日目に回収された。
【0120】
インビトロでの貪食分析。インビトロでの貪食分析において、ウェルあたり2×10
4 マクロファージ又は樹状細胞が、無血清のRPMI培地中の2×10
4 癌細胞(DLD1−cOVA−GFP)と一緒に、96ウェル超低接着プレート中に蒔かれた。指示された抗体(10μg/mL)が加えられ、37℃で4時間培養された。マクロファージは、繰り返して2度洗浄され、BDLSRフォーテッサアナライザを用いて分析された。貪食のパーセンテージは、RFP+マクロファージ又はF4/80+マクロファージ中のGFP+細胞のパーセンテージとして計算された。インビボでの移動の分析において、5×10
5 マクロファージ及び癌細胞は、制御IgG1又は抗CD47B6H12mAb(10μg/mL)の存在下で共培養され、2時間培養された。その後、マクロファージは、抗Mac−1磁気ビーズ(Miltenyi Biotec )を用いて培地から分離された。
【0121】
抗原提示分析。インビトロでの抗原提示分析において、10
4 マクロファージが、無血清のRPMI培地で一晩中、同数のDLD1−cOVA−GFP癌細胞と共培養された。翌日、同体積のRPMI+20%FCSが培地に加えられた。末梢リンパ節がOT−I又はOT−IITCRトランスジェニックマウスから回収され、0.5mMのCFSE(Molecular Probes)で標識された。T細胞は、ビオチン標識された抗CD8又は抗CD4抗体を使用して分離された後、抗ビオチン磁気ビーズ(ミルテニーバイオテク)を用いて濃縮された。5×10
4 T細胞が培地に加えられ、3日目に(OT−IT細胞のために)又は4日目に(OT−IIT細胞のために)分析された。インビボでの抗原提示分析において、2×10
6 のCFSE標識されたOT−IT細胞(CD45.2)が、レシピエントマウス(CD45.1)に静脈内注射で養子性に移動された。前に述べたように、マクロファージは、癌細胞との共培養から分離され、マウスの足蹠に注入された。膝窩リンパ節がCD45.2+細胞中のCFSE希釈において4日目に分析された。
【0122】
抗体調整、フローサイトメトリー分析及び細胞の分類。マウスの非ヒト抗CD47mAbB6H12(IgG1)がバイオX細胞から得られた。マウスの非ヒト抗CD47mAb2D3(IgG1)及びマウスIgG1抗体が、Ebiosciencesから得た。抗CD47B6H12及び2D3のDLD1−cOVA−GFP癌細胞に対する結合の確認のために、細胞が飽和濃度の1:1の抗CD47抗体で標識された後、PEがロバ抗マウスIgG(H&L)(Ebiosciences)に接合した。データがBDLSRフォーテッサアナライザを使用して得られ、FlowJoソフトウェアを用いて分析された。
【0123】
インビボでの細胞致死分析。要するに、C57BL/Ka(CD45.1)マウス由来の脾細胞が、10μMCFSE(高CFSE)及び1μMCFSE(低CFSE)で標識された。高CFSE脾細胞は、その後6ウェルプレートにおいて、1時間1μMのSIINFEKLペプチドで瞬間標識された。細胞は、静脈内注射の前にペプチド瞬間標識されていない低CFSE細胞と1:1の割合で混合された。ペプチド特異性の溶解がない場合の高CFSE/低CFSEの割合の変化を説明するために、高CFSE脾細胞を受けた制御マウスを、低CFSE脾細胞と1:1の割合での混合及びマウスへの移動前にSIINFEKLペプチドで瞬間標識しなかった。排出リンパ節は、16時間後に分析された。細胞傷害性のパーセントは、SIINFEKLペプチドで瞬間標識されていない脾細胞を受けた制御マウスの割合を基準にして計算された(1−%高CFSE/%低CFSE)。
【0124】
腫瘍の挑戦。1×10
6 CD8濃縮OT−I細胞は、養子性にレシピエントC57BL/Kaマウスに静脈内注射で移動された。同一遺伝子のC57BL/Kaマウス由来のマクロファージが、前に述べたように、DLD1−cOVA−GFP癌細胞と共培養され、その後、磁気的な濃縮により分離され、マウスの足蹠に注入された。腫瘍細胞株E.G7(トリOVAcDNAを発現しているEL.4細胞)がマウスの腫瘍の挑戦のために使用された(ATCC)。1×105E.G7細胞が、レギュラーマトリゲルと1:1の割合でマウスの右後脚に皮下注射で注入された。腫瘍の大きさは、毎日精密な測径器で測定され、長さ* 広さ* 高さ* π/6に基づいて体積が計算された。
【0125】
ルミネックス分析。マクロファージは、無血清のRPMI培地で一晩中、同数のDLD1−cOVAGFP癌細胞と共培養された。翌日、上澄みが回収され、マウス26プレックスルミネックス分析によるサイトカイン分析のためスタンフォードヒト免疫監視コア(Stanford Human Immune Monitoring Core )に提出された。
【0126】
実施例2
ヒト抗原提示細胞の生産
ヒトマクロファージ。PBMC又はロイコフォレーシス単球(新鮮又は冷凍)(ポジティブ又はネガティブ選別、プラスチック接着、パーコール、流動選別、向流遠心エルトリエーションによるCD14+細胞由来)。Harding 他著「Choosing and Preparing Antigen-Presenting Cells 」(2010)「Current Protocols in Immunology 」16.1.1- 16.1.30 に記載されているように、単球由来のマクロファージを生産するための培地単独での分化又は組み換えヒトM−CSF。
【0127】
ヒト樹状細胞。(Merad 他著、「Annual Review of Immunology 」(2013)第31巻、p.563- 604)に記載されているような、ダーマル様CD1a+cDCを生産するためのGM−CSF+IL−4の存在下におけるインビトロでの単球の培養。
【0128】
ヒト樹状細胞。(Merad 他著、「Annual Review of Immunology 」(2013)第31巻、p.563- 604)に記載されているように、pDC、BDCA3+cDC、BDCA1+cDCを生産するためのFIt3L及びトロンボポエチンの存在下でのCD34+造血前駆細胞の培養。あるいは、LC様細胞及びダーマルDC様細胞を生産するためのGM−CSF+TNFアルファの存在下、又はLC様細胞を生産するためのGM−CSF+TNFアルファ+TGFベータ存在下での培養。単球は、LC様細胞を生産するためにGM−CSF+IL−4+TGF−ベータと共に培養され得る。
【0129】
ヒト樹状細胞。PBMC又は白血球濃縮ロイコフォレーシスパケット(新鮮、冷凍でない)は、Harding 他著「Choosing and Preparing Antigen-Presenting Cells 」(2010)「Current Protocols in Immunology 」16.1.1- 16.1.30 に記載されているように、CD1c+(BDCA1+)DCを提供するためにB細胞除去の後、抗CD1cビーズ濃縮キット(市販)を用いて、濃縮され得る。あるいは、CD141+(BDCA3+)DCを生産するための抗CD141ビーズ濃縮キット(市販)、又は単球由来のDCを生産するためのGM−CSF+IL−4(TNFアルファ又はTLRリガンドにより更に活性化され得る)と共に培養。
【0130】
PBMCは、O’Neill 他著「Current Protocols in Immunology 」(2005)「Differentiation of Peripheral Blood Monocytes into Dendritic Cells」、22F4.1-22F4.9 に記載されているように1時間プラスチックに接着され、その後、5日間GM−CSF+IL−4中で培養され得る(更にIL−1b、IL−6、TNFアルファ、PGE2中で成熟され得る)。
【0131】
米国政府の支援
本発明は、国立衛生研究所によって授与された認可番号CA86017、P01CA139490、及びF30CA168059に基づき米国政府の支援によりなされた。米国政府は、本発明について一定の権利を有している。