(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843634
(24)【登録日】2021年2月26日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】クラッチ装置及び自動変速機
(51)【国際特許分類】
F16D 47/04 20060101AFI20210308BHJP
F16D 41/12 20060101ALI20210308BHJP
F16D 41/08 20060101ALI20210308BHJP
F16D 41/064 20060101ALI20210308BHJP
F16D 25/06 20060101ALI20210308BHJP
F16D 28/00 20060101ALI20210308BHJP
F16D 43/26 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
F16D47/04
F16D41/12 A
F16D41/08 A
F16D41/064
F16D25/06
F16D28/00 Z
F16D43/26 C
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-15314(P2017-15314)
(22)【出願日】2017年1月31日
(65)【公開番号】特開2018-123864(P2018-123864A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102784
【氏名又は名称】NSKワーナー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154162
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 浩輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182257
【弁理士】
【氏名又は名称】川内 英主
(74)【代理人】
【識別番号】100202119
【弁理士】
【氏名又は名称】岩附 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】田村 成章
【審査官】
中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2014/0166422(US,A1)
【文献】
特開2014−035068(JP,A)
【文献】
実公昭43−024883(JP,Y1)
【文献】
独国特許出願公開第102014109776(DE,A1)
【文献】
実開昭63−152955(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 41/00−47/06
F16D 11/00−23/14
F16D 25/00−39/00
F16D 48/00−48/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に並設されるワンウェイクラッチ及びメカクラッチから成るクラッチ装置において、前記メカクラッチは前記軸方向に移動可能に保持されており、前記メカクラッチが押圧手段により前記軸方向に移動すると、前記ワンウェイクラッチの内輪の端面に前記メカクラッチが係合し、
前記メカクラッチには、係合部が環状に配置されており、前記ワンウェイクラッチの前記内輪には、前記係合部に係合する被係合部が環状に配置されており、
前記係合部又は前記被係合部は、それぞれ係合凸部又は係合凹部を含み、
前記係合凹部は前記係合凸部に係合し、
前記係合凹部は、截頭錐体の形状をしており、
前記截頭錐体の前記軸方向の角度をθ、前記押圧手段の推力をFa、回転力をFtとして、前記推力、前記係合部の数、前記角度を適宜選定したとき、以下の関係
Fc=Fa/sinθ
Fb=Fc×cosθ
Fc>Ft
が成り立つことを特徴とする、クラッチ装置。
【請求項2】
前記ワンウェイクラッチに前記メカクラッチが係合すると前記ワンウェイクラッチの空転が制動されることを特徴とする、請求項1の記載のクラッチ装置。
【請求項3】
前記ワンウェイクラッチはラチェット型のワンウェイクラッチ又はスプラグ型のワンウェイクラッチ又はローラ型のワンウェイクラッチのいずれかであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のクラッチ装置。
【請求項4】
前記押圧手段はピストンであり、油圧又は電気によるアクチュエータにより駆動されることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のクラッチ装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のクラッチ装置を搭載した車両の自動変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載される自動変速機に利用されるクラッチ装置に係り、詳しくは、2つの係合要素が軸方向に並設されるクラッチ装置
及び当該クラッチ装置を用いる自動変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バックストップ用のワンウェイクラッチ及び当該ワンウェイクラッチに並設する湿式多板クラッチから構成されるクラッチ装置が組み込まれた自動変速機が開示されている。自動変速機の変速時においては、湿式多板クラッチの掴み替えが必要となるが、この掴み替えを制御するためにワンウェイクラッチが用いられている。ワンウェイクラッチと湿式多板クラッチは、共に同一のプラネタリキャリアに連結されており、外周側は自動変速機のミッションケース内部にスプラインで固定されている。
【0003】
このようなクラッチ装置は、例えば特許文献2に開示されているように、ピストンをリターンスプリングに抗して作動させることにより、油圧摩擦要素のインナディスクとアウタディスクとを摩擦係合させ、連結されている変速機構部材を制止させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−199549号公報
【特許文献2】特開2002−39224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、自動変速機におけるトルク容量の増加に伴い、湿式多板クラッチが大型化しているため、クラッチ装置の搭載性が悪化するという問題がある。さらに、クラッチ装置の質量が増加するという問題もある。また、湿式多板クラッチの非締結時(空転時)にクラッチプレート間に介在する潤滑油の攪拌抵抗により、引き摺りトルクが発生し、燃費効率が悪化するという問題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、メカクラッチを採用することにより、コンパクトで軽量なクラッチ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明
は、軸方向に並設されるワンウェイクラッチ及びメカクラッチから成るクラッチ装置において、前記メカクラッチは前記軸方向に移動可能に保持されており、前記メカクラッチが押圧手段により前記軸方向に移動すると、前記ワンウェイクラッチの内輪の端面に前記メカクラッチが係合し、前記メカクラッチには、係合部が環状に配置されており、前記ワンウェイクラッチの前記内輪には、前記係合部に係合する被係合部が環状に配置されており、前記係合部又は前記被係合部は、それぞれ係合凸部又は係合凹部を含み、前記係合凹部は前記係合凸部に係合し、前記係合凹部は、截頭錐体の形状をしており、前記截頭錐体の前記軸方向の角度をθ、前記押圧手段の推力をFa、回転力をFtとし
て、前記推力、前記係合部の数、前記角度を適宜選定したとき、以下の関係
Fc=Fa/sinθ
Fb=Fc×cosθ
Fc>Ft
が成り立つことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、メカクラッチを採用することにより、コンパクトで軽量なクラッチ装置を提供することができる。さらに、湿式多板クラッチを用いていないため、潤滑油の攪拌抵抗による引き摺りトルクの発生を抑制することができ、燃費効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(A)本発明のクラッチ装置1が締結解除している状態の部分断面図である。(B)本発明のクラッチ装置1が締結している状態の部分断面図である。
【
図2】本発明のクラッチ装置1をワンウェイクラッチ10の内輪11側から見た正面図である。
【
図3】本発明のクラッチ装置1の係合機構を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面において同一部材は同一符号で表している。
【0011】
図1(A)は、本発明の実施形態に係るクラッチ装置1を
図2の断面線I(A)、I(B)−I(A)、I(B)において切断して示した部分断面図であって、クラッチ装置1の締結が解除されている状態を示す。
図1(B)は、同じく部分断面図であって、クラッチ装置1の締結がされている状態を示す。
図2は、本発明の実施形態に係るクラッチ装置1をワンウェイクラッチ10の内輪11側から見た正面図であって、メカクラッチ20の一部分を切取って示している。
【0012】
本発明の実施形態に係るクラッチ装置1は、係合要素であるワンウェイクラッチ10とメカクラッチ20とが軸方向に並設されて構成されている。このような2つの係合要素が軸方向に並設されたクラッチ装置1は、例えば車両に搭載される自動変速機に利用されている。自動変速機においては、ワンウェイクラッチ10はバックストップに用いられており、メカクラッチ20はワンウェイクラッチ10と係合することでブレーキとして作動する。
【0013】
まず初めに、
図1(A)を参照してワンウェイクラッチ10の構成について説明する。ワンウェイクラッチ10は、外輪12と、外輪12の内側に外輪12と同軸上に配置される内輪11とを備えた構成をしている。ワンウェイクラッチ10の外輪12の外周側には、外周スプライン13が設けられている。そして、外周スプライン13が不図示のミッションケースの内部に係合することにより、ワンウェイクラッチ10の外輪12が固定される。ワンウェイクラッチ10の内輪11の端面には、後述のメカクラッチ20に係合する被係合部(係合凹部11a)が設けられている。ワンウェイクラッチ10の内輪11の内側には、キャリア2が接続されている。ワンウェイクラッチ10は、例えば時計方向には回転しないが、反時計方向には空転するように作動する。本発明の実施形態に係るクラッチ装置1は、ラチェット型ワンウェイクラッチを用いる形態であるが、以下、ワンウェイクラッチ10と記載する。
【0014】
次に、メカクラッチ20の構成について説明する。メカクラッチ20は、軸方向においてワンウェイクラッチ10に並設されており、ワンウェイクラッチ10の被係合部に機械的に噛み合う係合部(係合凸部20a)を有する。すなわちメカクラッチ20は、従来の湿式多板クラッチとは異なり、摩擦クラッチを用いない機械式の係合機構を有する。メカクラッチ20の外周部21は、ワンウェイクラッチ10の外輪12の内周側に設けられた内周スプライン14に係合されており、メカクラッチ20は軸方向に移動可能に保持されている。
【0015】
ワンウェイクラッチ10とメカクラッチ20との間には、リターンスプリング3が設けられており、リターンスプリング3の一方は、メカクラッチ20の端面に形成されたスプリング座22に当接し、他方は、スプリング受け4に当接する。スプリング受け4は、
図2に示すように環状の形状をしており、ワンウェイクラッチ10の外輪12の内周側に設けられた内周スプライン14に係合している。
【0016】
次に、ワンウェイクラッチ10とメカクラッチ20の係合機構について説明する。
図1(A)に示すように、ワンウェイクラッチ10の内輪11の端面には被係合部が設けられている。また、ワンウェイクラッチ10の内輪11に対向するメカクラッチ20の端面には、係合部が設けられている。そして、メカクラッチ20に当接する押圧手段であるピストン5が
図1(B)に示すように右方向に駆動されると、メカクラッチ20が軸方向(右方向)に押圧される。そして、メカクラッチ20は軸方向(右方向)に移動し、メカクラッチ20の係合部がワンウェイクラッチ10の被係合部に係合する。このようにしてワンウェイクラッチ10とメカクラッチ20とが係合することにより、クラッチ装置1の締結が行われる。
【0017】
また、ピストン5の駆動が解除されると、ワンウェイクラッチ10とメカクラッチ20との間に設けられたリターンスプリング3の反発力によって、メカクラッチ20は、軸方向(左方向)に移動する。そして、ワンウェイクラッチ10とメカクラッチ20との係合が瞬時に解除される。このようにしてワンウェイクラッチ10とメカクラッチ20との係合が解除されることにより、クラッチ装置1の締結が解除される。
【0018】
ワンウェイクラッチ10の内輪11の端面に設けられた被係合部は、
図2に示されるように、環状に複数設けられている。同様に、メカクラッチ20に設けられた係合部も環状に複数設けられている(不図示)。
【0019】
次に、本発明の実施形態に係るクラッチ装置1の基本動作について説明する。
図2において、キャリア2の回転が時計方向(CW)の際は、ワンウェイクラッチ10は回転をロックするように作動する。一方、メカクラッチ20は、ピストン5の作動がOFFのときは、ワンウェイクラッチ10にメカクラッチ20が係合していないので、ワンウェイクラッチ10により回転がロックされたままとなる。他方、ピストン5の作動がONのときも同様に、回転がロックされたままとなる。
【0020】
そして、キャリア2の回転が反時計方向(CCW)の際は、ワンウェイクラッチ10は空転し、回転はロックされない。一方、メカクラッチ20は、ピストン5の作動がOFFのときは、ワンウェイクラッチ10にメカクラッチ20が係合していないので、回転はロックされない。他方、ピストン5の作動がONのときは、メカクラッチ20がワンウェイクラッチ10に係合するので回転がロックされることとなる。
【0021】
上記の基本動作は、自動変速機が1速の際、ワンウェイクラッチ10が作動して回転をロックし、自動変速機が1速又は後退の際、メカクラッチ20がピストン5の駆動により移動し(ON状態)、ワンウェイクラッチ10の空転を制動する。メカクラッチ20はいわゆるブレーキとして作動する。基本動作を以下の表1に示す。
【表1】
【0022】
(実施例)
本発明の実施例について、
図1(B)及び
図3を参照して説明する。
図3は、
図1(B)の断面線III−IIIにおける部分断面図であって、矢印の方向に見たクラッチ装置1の係合機構を示す。メカクラッチ20の係合部は、係合凸部20aであってピン形状をしており、係合凸部20aにはR面取りが施されている。また、ワンウェイクラッチ10の内輪11の端面に設けられた被係合部は、係合凹部11aであって截頭錐体の形状をしている。そして、ピストン5が作動してメカクラッチ20が右方向に動くと、ピン形状の係合凸部20aが截頭錐体の形状の係合凹部11aに嵌合する。しかしながら、R面取りが施されたピン形状の係合凸部20aの頂部は、係合凹部11aの底部には当接しない。
【0023】
ピストン5は、油圧又は電気等により駆動されるアクチュエータにより軸方向に駆動され、ピストン5の推力Faがメカクラッチ20に与えられる。そして、メカクラッチ20が右方向に移動し、係合凸部20aが係合凹部11aに係合すると、係合点Pにおいて、推力Faは軸方向にワンウェイクラッチ10の内輪11に伝えられる。推力Faは、截頭錐体の形状(軸方向の角度θ)により、分力Fbとの合力Fcとして内輪11に作用する。
【0024】
本発明の実施例におけるクラッチ装置1の係合機構は、ピストン5の合力Fcの分力Fbをキャリア2の回転力Ftに対抗させることで、締結機能を成立させることを特徴としている。本発明の実施例におけるクラッチ装置1の締結条件は、以下の関係を満たすことが必要である。
Fc=Fa/sinθ
Fb=Fc×cosθ
Fc>Ft
そして、キャリア2の回転力Ftとピン形状の係合凸部20aの機械的性質とを勘案して、ピストン5の推力Fa、係合凸部20aの数N、係合凹部11aの截頭錐体の形状(軸方向の角度θ)及びリターンスプリング3の反発力を適宜選定する。
【0025】
本発明の実施例におけるクラッチ装置1は、メカクラッチ20を採用することにより、軸方向の寸法を短縮化したコンパクトで軽量な構成となっている。また、湿式多板クラッチを用いていないため、潤滑油の攪拌抵抗による引き摺りトルクの発生を抑制することができ、燃費効率を改善することができる。さらに、凹凸形状の嵌合によりトルク容量を確保することができるという、優れた機能、作用、効果を有する。
【0026】
(変形例)
本発明の実施例では、ワンウェイクラッチ10の被係合部は係合凹部11aの形状をしているが、変形例としては被係合部を凸部とし、メカクラッチ20の係合部を凹部としても良い。また、ピストン5の駆動は、油圧力による駆動でも良いし、電磁力による駆動等でも良い。
【0027】
(適用例)
本発明の実施形態におけるクラッチ装置1では、ラチェット型ワンウェイクラッチを用いているが、例えばスプラグ型又はローラ型のワンウェイクラッチ等を適用することができる。
【0028】
以上、本発明をその好適な実施形態、実施例に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものでは無く、特許請求の範囲の個々の請求項に記載の事項の範囲内で種々に具体的な構成を変更して実施することができるものである。なお、本発明の実施形態、実施例に係るクラッチ装置1を利用する装置等は特に限定されないが、自動変速機に利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 クラッチ装置
5 ピストン(押圧手段)
10 ワンウェイクラッチ
11 内輪
11a 被係合部(係合凹部)
20 メカクラッチ
20a 係合部(係合凸部)