(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。なお、図面において、同一又は類似の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省く場合がある。また、図面における要素の形状及び大きさ等はより明確な説明のために誇張されることがある。
【0011】
明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」、「有する」や「備える」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0012】
以下、実施形態の判定装置3を、図面を参照して説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。
図1は、判定装置3を含む判定システム1の構成図である。
図1に示すように、判定システム1は、センサ部2と判定装置3とを備える。判定システム1は、地震後の大空間施設5(
図2参照)の健全性を判定する。
大空間施設5とは、劇場、講堂、体育館、あるいはドーム形状の屋根を有する競技場など広い空間を備える建築構造物である。大空間施設5は、「空間構造物」の一例である。
【0014】
判定システム1においては、大空間施設5の健全性が判定される。健全性の判定には「安全」、「要注意」、「危険」の3種類の判定が用いられる。「安全」判定とは、例えば、大空間施設5に使用されている建築部材は、地震の振動に対して損傷するような衝撃を受けていないという判定である。ユーザは、判定システム1からの「安全」判定に基づき、例えば、内部にいる施設利用者を避難誘導する必要はないと判断する。「要注意」判定とは、例えば、大空間施設5に使用されている建築部材の一部が損傷するような衝撃を受けているという判定である。ユーザは、判定システム1からの「要注意」判定に基づき、例えば、内部にいる施設利用者に対して、危険な箇所には立ち入らないように警告する必要があると判断する。「危険」判定とは、例えば、大空間施設5に使用されている建築部材は、地震の振動に対して損傷するほどの衝撃を受けているという判定である。ユーザは、判定システム1からの「危険」判定に基づき、例えば、内部にいる利用者を避難誘導する必要があると判断する。このように、判定システム1においては、大空間施設5の健全性が判定され、ユーザは、判定結果に応じて大空間施設5の施設利用者を適切に誘導することができる。
【0015】
センサ部2は、建物センサ20−1〜20−N(総称して、建物センサ20という)と、地盤センサ21と、を備える。ここでNは、自然数である。
【0016】
ここでは、センサ部2が設置される場所について、
図2を用いて説明する。
図2は、センサ部2が大空間施設5に設置された場合の一例を示す図である。
図2は、大空間施設5を垂直方向と平行な断面からみた形状を表す図である。
【0017】
図2に示すように、大空間施設5は、地盤6上に建設され、例えば、屋根部50と、屋根部50を支える下部構造51とを備え、大空間52を形成する。屋根部50は、大空間施設5の上部を覆う構造物である。屋根部50は、例えば、屋根面500と、天井面501などで構成される。屋根部50は、例えばトラス構造である。トラス構造は、木材・鋼材などを三角形に組み合わせた構造物の集合体により構成する構造様式である。トラス構造は構造的な安定度が高いため、ドームなど大空間施設5の建設に用いられる。下部構造51は、例えば、柱510、511などの構造躯体と、間仕切り壁512や天井板513などの非構造部材で構成される。なお、
図2に示す例では、大空間施設5の内部に判定装置3が置かれているが、判定装置3は大空間施設5の外部に置かれていてもよいし、判定装置3は大空間施設5から遠く離れた場所に置かれていてもよい。
【0018】
建物センサ20は、大空間施設5の床や柱、天井などの建物を構成する複数の部材に対応する箇所に設置される。
図2の例においては、建物センサ20−1は屋根部50の屋根面500の一方の側に、建物センサ20−2は屋根面500の中心に、建物センサ20−3は屋根面500の他方の側に、それぞれ設置される。また、建物センサ20−4は柱510の上部に、建物センサ20−5は大空間施設5の床514の中心部分にそれぞれ設置される。
【0019】
建物センサ20は、地震の振動に伴い大空間施設5に生じる変位に関する情報を計測する。ここでいう大空間施設5に生じる変位とは、例えば地震の作用を受けた柱などが水平方向に変位した距離である。変位に関する情報とは、例えば、変位、速度、加速度、歪などを示す情報である。
【0020】
また、
図2の例に示すように、地盤センサ21は地盤6(「空間構造物の外部の地盤」の一例)に設けられる。地盤6は、近傍に大空間施設5を支持する杭などの構造物がない地盤(自由地盤ともいう)である。地盤センサ21は、地震の振動に伴い地盤6に生じる変位を計測する。ここでいう地盤6に生じる変位とは、地震の作用を受けた地盤が水平方向に変位した距離である。なお、地盤センサ21が設置される場所は、上述したような、近傍に大空間施設5を支持する杭などの構造物がないという条件を満たした上で、大空間施設5の近傍であることが好ましい。本実施形態の判定システム1は、地盤センサ21からの計測情報に基づいて取得される情報を、大空間施設5の健全性の判定に用いるためである。地盤センサ21からの計測情報に基づいて取得される情報については、後で説明する。
【0021】
以下の説明においては、建物センサ20、および地盤センサ21は、それぞれが設けられた箇所に生じた加速度を計測する加速度センサである。しかし、これに限定されることはなく、建物センサ20、および地盤センサ21は、変位を計測するトータルステーションであってもよいし、歪を計測するひずみゲージや光ファイバであってもよい。
【0022】
建物センサ20、および地盤センサ21は、それぞれが計測した加速度信号を判定装置3に出力する。建物センサ20、および地盤センサ21のそれぞれは、加速度信号を、ケーブルを介して判定装置3に出力してもよいし、無線LANや特定小電力等の無線通信方式を用いて、加速度信号を送信してもよい。また、センサ部2は、ネットワークを介して、判定装置3に加速度信号を送信してもよい。
【0023】
図1に戻り、判定装置3は、取得部30と、制御部32(「算出部」、および「判定部」の一例)と、表示部34と、記憶部36と、を備える。
取得部30は、建物センサ20からの加速度信号を取得する。取得部30は、取得した加速度信号を制御部32に出力する。制御部32は、取得部30と、表示部34と、記憶部36と、を制御する。
【0024】
制御部32は、取得部30からの加速度信号に基づいて、地震の振動に伴う大空間施設5の応答を算出する。大空間施設5の応答とは、例えば、変位応答、速度応答、および加速度応答である。以下の説明においては、制御部32が取得部30からの加速度信号に基づいて算出する応答が、加速度応答である場合について説明する。つまり、制御部32は、取得部30からの加速度信号に基づいて、振動に伴う大空間施設5の加速度応答を算出する。
【0025】
また、制御部32は、取得部30からの加速度信号に基づいて、地盤センサ21からの加速度信号を用いて地震の振動に伴う地盤6の応答を算出する。ここで、地盤6の応答とは、地震の振動に伴う地盤6の平均速度応答である。つまり、制御部32は、地盤センサ21からの加速度信号に基づいて、地盤6の平均速度応答を算出する。平均速度応答の算出については、後で詳しく説明する。また、以下の説明では、「地震動指標」として「平均速度応答」を用いる。
【0026】
また、制御部32は、算出した算出結果に基づいて、大空間施設5の健全性を判定する。制御部32は、屋根部と下部構造のそれぞれを、「安全」、「要注意」、「危険」の3種類で判定し、最も健全性がない判定結果をその大空間施設5の判定結果とする。具体的には、制御部32は、例えば、まず、大空間施設5における屋根部と下部構造のそれぞれについて、健全性を判定する。そして制御部32は、屋根部と下部構造の両方を「安全」と判定した場合、大空間施設5が「安全」であると判定する。また、制御部32は、屋根部と下部構造の一方を「安全」と判定したが、他方を「要注意」と判定した場合、または屋根部と下部構造の両方を「要注意」と判定した場合、大空間施設5が「要注意」であると判定する。また、制御部32は、屋根部と下部構造の一方を「安全」又は「要注意」と判定したが、他方を「危険」と判定した場合、または屋根部と下部構造の両方を「危険」と判定した場合、大空間施設5が「危険」であると判定する。
【0027】
表示部34は、制御部32が判定した大空間施設5の健全性を判定した判定結果を表示する。表示部34は、例えば、色彩を表示するランプを備え、制御部32が安全と判定した場合は緑色、制御部32が要注意と判定した場合は黄色、制御部32が危険と判定した場合は赤色のランプをそれぞれ表示させる。また、表示部34は、上述した色彩を黄色や赤色に表示させるとともに、「避難誘導が必要です」などの警告を示すメッセージ(文字)やマーク(図形)を表示してもよい。また、判定装置3は、図示しないスピーカ部を備え、当該スピーカ部により、判定結果に応じてサイレンや音声メッセージを出力させてもよい。
【0028】
記憶部36は、制御部32が大空間施設5の健全性を判定する場合に用いる判定基準情報360を記憶する。ここで、制御部32が大空間施設5の健全性を判定する場合に用いる指標は、例えば、最大層間変形角、最大加速度応答、および地震動指標である。これらの指標(層間変形角、加速度応答、および地震動指標)が示す内容については後で詳しく説明する。
判定基準情報360には、最大層間変形角に対する判定閾値(層間変形角判定閾値360−1(
図3参照))が記憶される。最大層間変形角に対する判定閾値には、例えば安全判定閾値と、危険判定閾値とが含まれる。安全判定閾値は、建物が安全であると判定する場合の最大層間変形角の上限の閾値を示す。危険判定閾値は、建物が危険であると判定する場合の最大層間変形角の下限の閾値を示す。
また、判定基準情報360には、最大加速度応答に対する判定閾値(加速度応答判定閾値360−2(
図3参照))が記憶される。最大加速度応答に対する判定閾値には、例えば安全判定閾値と、危険判定閾値とが含まれる。安全判定閾値は、建物が安全であると判定する場合の最大加速度応答の上限の閾値を示す。危険判定閾値は、建物が危険であると判定する場合の最大加速度応答の下限の閾値を示す。
また、判定基準情報360には、地震動指標に対する判定閾値(地震動指標判定閾値360−3(
図3参照))が記憶される。地震動指標に対する判定閾値には、例えば安全判定閾値と、危険判定閾値とが含まれる。安全判定閾値は、建物が安全であると判定する場合の地震動指標の上限の閾値を示す。危険判定閾値は、建物が危険であると判定する場合の地震動指標の下限の閾値を示す。
【0029】
ここでは、制御部32の構成について
図3を用いて説明する。
図3は、制御部32と判定基準情報360の構成を示す構成図である。制御部32は、層間変形角算出部320と、加速度応答算出部322と、地震動指標算出部324と、下部構造判定部326と、屋根部判定部328と、を備える。判定基準情報360には、層間変形角判定閾値360−1と、加速度応答判定閾値360−2と、地震動指標判定閾値360−3とが記憶される。
【0030】
層間変形角算出部320は、下部構造51の層間変形角を算出する。層間変形角は、地震等の振動に伴う層間変位を高さで割った値である。
まず、層間変形角算出部320は、建物センサ20−4、20−5それぞれからの計測情報に基づいて、下部構造51の水平方向の変位を求める。具体的には、層間変形角算出部320は、建物センサ20−4、20−5のそれぞれが計測した水平方向の加速度を2回積分することにより、柱510、床514のそれぞれの水平方向の変位を算出する。そして、層間変形角算出部320は、柱510の水平方向の変位量から、床514の水平方向の変位量を減算することにより、下部構造51の水平方向の変位を求める。
次に、層間変形角算出部320は、下部構造51の水平方向の変位を階高で割った値を層間変形角として算出する。階高とは、建物のひとつの階の高さであり、
図2の例では、階高は、床514から天井面501までの高さ、つまり建物センサ20−4が設置された位置の高さに相当する。具体的には、層間変形角算出部320は、下部構造51の水平方向の変位を建物センサ20−4が設置された位置の高さで除算した結果を、層間変形角として算出する。層間変形角算出部320は、算出した層間変形角のうちの最大値(最大層間変形角)を、下部構造判定部326に出力する。
【0031】
加速度応答算出部322は、屋根部50および下部構造51の加速度応答を算出する。加速度応答は、地震等の振動に伴って建築構造部材に生じた加速度を算出したものである。加速度応答算出部322は、建物センサ20−1〜20−5それぞれからの計測情報に基づいて、それぞれの建物センサ20が設置された部材の加速度応答を算出する。
加速度応答算出部322は、屋根部50に設置された建物センサ20−1〜20−3からの加速度信号に基づいて、屋根部50の建物センサ20−1〜20−3がそれぞれ設置された箇所における加速度応答を算出する。また、加速度応答算出部322は、建物センサ20−1〜20−3からの加速度信号に基づいて算出したそれぞれの加速度応答のうちのそれぞれの最大値(最大加速度応答)を、屋根部判定部328に出力する。
加速度応答算出部322は、下部構造51に設置された建物センサ20−4、20−5からの加速度信号に基づいて、下部構造51の建物センサ20−4、20−5がそれぞれ設置された箇所における加速度応答を算出する。加速度応答算出部322は、建物センサ20−4、20−5からの加速度信号に基づいて算出した加速度応答のうちの最大値(最大加速度応答)を、下部構造判定部326に出力する。
【0032】
地震動指標算出部324は、地盤6に設置された地盤センサ21からの加速度信号に基づいて擬似速度応答スペクトルを算出し、この応答スペクトルに基づいて平均速度応答(地震動指標)を算出する。擬似速度応答スペクトルとは、加速度応答スペクトルから擬似的に算出した速度応答スペクトルのことである。平均速度応答は、擬似速度応答スペクトルを指定した周期範囲で平均した値である。
【0033】
平均速度応答SVaveは、以下の(1)式で表される。ここで、pSv(T)は減衰定数5%の擬似速度応答スペクトル、T1は大空間施設5の1次固有周期を含む主要な周期範囲のうち下限の周期、T2は大空間施設5の1次固有周期を含む主要な周期範囲のうち上限の周期をそれぞれ示す。また、減衰定数とは、エネルギー散逸などによる振動の減衰を考慮するための係数である。なお、T1は、速度応答においては周期が小さくなると減少する傾向にあることから、0.1秒程度であることが望ましい。
【0035】
地震動指標算出部324は、地盤センサ21からの加速度信号に基づいて算出した平均速度応答を、屋根部判定部328に出力する。
【0036】
下部構造判定部326は、層間変形角算出部320からの最大層間変形角と、層間変形角判定閾値360−1に基づいて、下部構造51の健全性を判定する。
例えば、下部構造判定部326は、層間変形角算出部320からの最大層間変形角と最大層間変形角の安全判定閾値とを比較する。そして、最大層間変形角が安全判定閾値を超えない場合、下部構造51は「安全」であると判定する。
一方、下部構造判定部326は、最大層間変形角が安全判定閾値を超えた場合、最大層間変形角と最大層間変形角の危険判定閾値とを比較する。そして、下部構造判定部326は、最大層間変形角が危険判定閾値を超えない場合、下部構造51は「要注意」であると判定する。
また、下部構造判定部326は、最大層間変形角が危険判定閾値を超えた場合、下部構造51は「危険」であると判定する。
下部構造判定部326は、加速度応答算出部322からの最大加速度応答と、加速度応答判定閾値360−2に基づいて、下部構造51の健全性を判定する。下部構造判定部326は、下部構造51の判定を行う場合、最大層間変形角のみに基づく判定を行ってもよいし、最大加速度応答のみに基づく判定を行ってもよいし、最大層間変形角および最大加速度応答の両方に基づいて判定を行ってもよい。最大層間変形角および最大加速度応答の両方に基づいて判定を行う場合、下部構造判定部326は、最大層間変形角に基づく下部構造51の判定結果と、最大加速度応答に基づく下部構造51の判定結果とが異なる判定結果であれば、より安全性の低い判定に基づいて、下部構造51の判定を行う。具体的には、下部構造判定部326は、一方は「安全」であると判定したが、他方は「要注意」であると判定した場合には、下部構造51は「要注意」であると判定する。また、下部構造判定部326は、一方は「要注意」又は「安全」であると判定したが、他方は「危険」であると判定した場合には、下部構造51は「危険」であると判定する。なお、上記においては、下部構造判定部326は、最大層間変形角、及び最大加速度応答に基づいて下部構造51の健全性を判定しているが、これに限定されることはなく、変位応答、歪などに基づいて下部構造51の健全性を判定してもよい。
【0037】
屋根部判定部328は、加速度応答算出部322からの最大加速度応答と、地震動指標算出部324からの地震動指標と加速度応答判定閾値360−2と、地震動指標判定閾値360−3と、に基づいて、屋根部50の健全性を判定する。屋根部判定部328は、屋根部50の健全性を判定するために、最大加速度応答と地震動指標との2つの指標を用いる。具体的には、屋根部判定部328は、最大加速度応答に基づく判定と、地震動指標に基づく判定とをそれぞれ行う。
【0038】
ここで、屋根部判定部328が行う屋根部50の健全性を判定する処理について、
図4を用いて説明する。
図4は、屋根部判定部328が行う屋根部50の健全性を判定する処理について説明するための図である。
図4では、縦軸に最大加速度応答、横軸に地震動指標を示す。
図4において、グレーの部分は「安全」と判定される領域、縦線の部分は「要注意」と判定される領域、斜線の部分は「危険」と判定される領域をそれぞれ示す。
図4に示すように、屋根部判定部328は、縦軸に最大加速度応答、横軸に地震動指標を示す点をプロットする。そして、屋根部判定部328は、プロットされた点が存在する領域に基づいて、屋根部50の健全性を判定する。具体的には、屋根部判定部328は、グレーの「安全」領域に点がプロットされれば、屋根部50は「安全」であると判定する。屋根部判定部328は、縦線の「要注意」領域、または斜線の「危険」領域に点がプロットされれば、それぞれ屋根部50は「要注意」、または「危険」と判定する。
【0039】
ここで、判定装置3が行う屋根部50の健全性を判定する処理の流れについて
図5を用いて説明する。
図5は、制御部32が行う処理の流れを示すフローチャートである。
まず、取得部30は、センサ部2からの加速度信号を取得する(ステップS1)。センサ部2からの加速度信号には、建物センサ20からの加速度信号と地盤センサ21からの加速度信号とが含まれる。加速度応答算出部322は、建物センサ20からの加速度信号に基づいて、加速度応答を算出する(ステップS2)。加速度応答算出部322は、算出した加速度応答から最大加速度応答を屋根部判定部328に出力する。屋根部判定部328は、加速度応答算出部322からの最大加速度応答と、加速度応答判定閾値360−2に基づいて、屋根部50の最大加速度応答に基づく判定を行う(ステップS3)。また、地震動指標算出部324は、地盤センサ21からの加速度信号に基づいて、地震動指標を算出する(ステップS4)。屋根部判定部328は、地震動指標算出部324からの地震動指標と、地震動指標判定閾値360−3に基づいて、屋根部50の地震動指標に基づく判定を行う(ステップS5)。
【0040】
屋根部判定部328は、最大加速度応答に基づく屋根部50の健全性の判定が「安全」である場合(ステップS6、YES)、屋根部50は「安全」であると判定する(ステップS7)。屋根部判定部328は、最大加速度応答に基づく屋根部50の健全性の判定が「安全」でない場合(ステップS6、NO)、地震動指標に基づく屋根部50の健全性の判定が「安全」であれば(ステップS8、YES)、屋根部50は「安全」であると判定する(ステップS7)。一方、屋根部判定部328は、最大加速度応答に基づく屋根部50の健全性の判定が「危険」である場合(ステップS9、YES)、地震動指標に基づく屋根部50の健全性の判定が「危険」なら(ステップS10、YES)、屋根部50は「危険」であると判定する(ステップS11)。一方、屋根部判定部328は、最大加速度応答に基づく屋根部50の健全性の判定が「危険」でない場合(ステップS9、NO)、屋根部50は「要注意」であると判定する(ステップS12)。また、屋根部判定部328は、地震動指標に基づく屋根部50の健全性の判定が「危険」でない場合(ステップS10、NO)、屋根部50は「要注意」であると判定する(ステップS12)。
【0041】
以上説明したように、第1の実施形態の判定装置3は、取得部30(「取得部」の一例)が地震の振動に伴い大空間施設5(「空間構造物」の一例)に生じた加速度応答(「変位に関する情報」の一例)を計測する建物センサ20−1〜20−5からの加速度信号(「第1の計測信号」の一例)を取得する。また取得部30(「取得部」の一例)が地震の振動に伴い地盤6に生じた加速度応答(「変位に関する情報」の一例)を計測する地盤センサ21(「第2のセンサ」の一例)からの加速度信号(「第2の計測信号」の一例)を取得する。また、加速度応答算出部322(「算出部」の一例)が建物センサ20からの加速度信号(「第1の計測信号」の一例)に基づいて、振動に伴う大空間施設5の加速度応答(「空間構造物の応答」の一例)を算出する。また、地震動指標算出部324(「算出部」の一例)が地盤センサ21からの加速度信号(「第2の計測信号」の一例)に基づいて、振動に伴う地盤6の地震動指標(「変位に関する応答」の一例)を算出する。そして、屋根部判定部328(「判定部」の一例)が加速度応答算出部322(「算出部」の一例)、および地震動指標算出部324(「算出部」の一例)が算出した算出結果に基づいて、大空間施設5の健全性を判定する。
【0042】
これにより、第1の実施形態の判定装置3においては、建物センサ20からの加速度信号に基づき、振動に対する大空間施設5の加速度応答や変位応答を得ることができる。よって、判定装置3は、大空間施設5の加速度応答に基づいて最大加速度応答を、変位応答に基づいて層間変形角をそれぞれ算出することができる。また、判定装置3は、地盤センサ21からの加速度信号に基づき、振動に対する地盤6の加速度応答を得ることができる。よって、判定装置3は、地盤6の加速度応答から地震動指標を算出することができる。したがって、判定装置3は、最大加速度応答や層間変形角だけでなく、地震動指標を用いて建物の健全性を判定することができるため、大空間施設5の健全性を精度よく判定することができる。
【0043】
また、第1の実施形態の判定装置3では、大空間施設5(「空間構造物」の一例)は、屋根部50(「下部構造に支えられた屋根部」の一例)を含み、取得部30(「取得部」の一例)は、屋根部50に設けられる建物センサ20−1〜20−3(「センサ」の一例)からの加速度信号を取得し、加速度応答算出部322(「算出部」の一例)は、振動に伴う屋根部50の加速度応答を算出し、振動に伴う地盤6(「空間構造物の外部の地盤」の一例)の平均速度応答(地震動指標)を算出する。これにより、第1の実施形態の判定装置3においては、屋根部50の加速度応答を得ることができる。判定装置は、屋根部50の加速度応答から屋根部50の最大加速度応答を算出することができる。したがって、屋根部50の最大加速度応答と地震動指標を用いて、屋根部50の健全性を精度よく判定することができるため、大空間施設5の健全性を精度よく判定することができる。
【0044】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。以下の説明において、第1の実施形態の構成と同じ構成については説明を省略する。第2の実施形態の判定システム1Aにおいては、センサ部2Aが、地盤センサ21を有しない。
【0045】
制御部32は、建物センサ20からの加速度信号を用いて振動に伴う地盤6の応答を算出する。ここで、地盤6の応答とは、振動に伴う地盤6の平均速度応答である。具体的には、制御部32は、例えば、大空間施設5に設けられた複数の建物センサ20のうち、最も地盤6に近い箇所に設置された建物センサ20−5からの加速度信号に基づいて、地盤6の平均速度応答を算出する(
図2参照)。制御部32は、例えば、地盤6と建物センサ20−5との間に有する構造部材である床514の振動に対する応答から地盤6の振動状態を推定する解析モデル(以下、解析モデル)を、予め記憶部36に記憶させる。また、制御部32は、建物センサ20−5からの加速度信号に基づいて、床514の振動に対する加速度応答を取得する。そして、制御部32は、床514の振動に対する加速度応答から、解析モデルを用いて推定される地盤6の加速度応答を算出する。制御部32は、算出した地盤6の加速度応答に基づいて擬似速度応答スペクトルを算出し、この応答スペクトルに基づいて平均速度応答(地震動指標)を算出する。なお、解析モデルとしては、地震の作用を受けた建物の揺れが建物周辺の地盤に作用する相互作用を考慮したモデルが用いられることがより好ましい。
【0046】
以上説明したように、第2の実施形態の判定装置3は、地震動指標算出部324(「算出部」の一例)が建物センサ20からの加速度信号(「第1の計測信号」の一例)に基づいて、振動に伴う地盤6の地震動指標(「空間構造物の外部の地盤の応答」の一例)を算出する。これにより、第2の実施形態の判定装置3においては、地盤センサ21が設けられない場合であっても、第1の実施形態において述べた作用効果と同等の作用効果を得ることができる。
【0047】
また、第2の実施形態の判定装置3は、制御部32(「算出部」の一例)は、下部構造51の加速度応答から地盤6(「空間構造物の外部の地盤」の一例)の振動状態を推定する解析モデルを用いて、振動に伴う地盤6(「空間構造物の外部の地盤」の一例)の平均速度応答を算出する。これにより、第2の実施形態の判定装置3においては、地盤センサ21が設けられない場合であっても、第1の実施形態において述べた作用効果と同等の作用効果を得ることができる他、精度よく地盤6の平均速度応答を算出することができる。
【0048】
上述した実施形態における判定装置3をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0049】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0050】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。