(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電池用缶を製造する場合、プレめっき鋼板から所定形状のブランク材を打ち抜き、このブランク材をプレス絞り加工して電池用缶を得る。ここで、当該ブランク材は、両面にニッケルめっきが施されているものの、打ち抜き加工された際に生じた端面にはめっき層は存在していないので、得られた電池用缶の開口縁の先端部にはめっき層が存在していない状態となっている。このため、電池用缶の開口縁の先端部は耐食性が低く、この先端部が腐食されてしまうという不具合が生じることがある。
【0007】
このようなプレめっき鋼板の不具合を回避するために、めっきされていない鋼板を電池用缶の形状にプレス絞り加工した後、めっき処理を施す後めっき法が知られている。この後めっき法によれば、電池用缶の開口縁の先端部にもめっきが施されるので、この先端部が腐食されてしまうことを抑えることができる。
【0008】
しかしながら、この後めっき法では、電池用缶の外面や開口縁の先端部のめっきは良好に行えるものの、電池用缶の内部、特に底部においては、めっき層の付きが悪く、良好な状態のめっき層を形成することができない。電池用缶の内部において、めっき層が部分的に存在しない場合、又は、めっき層が薄い場合、得られた電池を長期間放置すると、電池用缶の母材から鉄がアルカリ電解液中に溶出することがある。このように、鉄がアルカリ電解液中に溶出すると、電池の容量低下を早めるなどの問題が起こる可能性がある。
【0009】
また、電池の外表面については、美しい外観を得ることが望まれるとともに、電池の製造過程やユーザーの使用に際し、擦れ傷が付き難いようにすることが望まれている。このような要望に応えるため、ニッケルめっきとしては、高硬度の光沢めっきを採用することが行われる。
【0010】
しかしながら、光沢めっきは、脆いため、電池の製造過程における加工、例えば、溝入れ加工やかしめ加工を行う際にクラックが生じることがある。つまり、電池においては、環状溝部やかしめられる開口縁の屈曲部のめっき層にクラックが入り易く、これらの部分の耐食性の低下が懸念される。
【0011】
本発明は、上記の事情に基づいてなされたものであり、その目的とするところは、傷が付き難く外観が美しいとともに、耐食性に優れる電池を得ることができる電池用缶の製造方法、この製造方法により得られた電池用缶、この電池用缶を備えた電池及びこの電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明によれば、鋼板に無光沢のニッケルめっきを施し、ニッケルめっき鋼板を形成する第1のめっき処理工程と、前記ニッケルめっき鋼板に打ち抜き加工を施し、ブランク材を形成する打ち抜き工程と、前記ブランク材にプレス絞り加工を施し、前記ブランク材を有底筒状に加工して電池用缶の中間製品を製造するプレス絞り工程と、前記中間製品に半光沢のニッケルめっきを施す第2のめっき処理工程と、を備えている、電池用缶の製造方法が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、上記した電池用缶の製造方法により製造された電池用缶であって、一端が閉塞されており、他端が開放されて開口となっている筒状の本体と、前記本体の全面のうち、前記開口の縁部の先端面を除いた部分を覆う第1めっき層と、前記先端面及び前記第1めっき層の全体を覆う第2めっき層と、を備え、前記第1めっき層は、無光沢のニッケルめっきにより形成されており、前記第2めっき層は、半光沢のニッケルめっきにより形成されている、電池用缶が提供される。
【0014】
また、本発明によれば、上端に開口を有する容器と、前記容器の中に電解液とともに収容された電極群と、前記容器の開口を封止している封口体と、を備え、前記容器は、上記した電池用缶である、電池が提供される。
【0015】
また、本発明によれば、上記した電池用缶の製造方法により製造された電池用缶を準備する電池用缶準備工程と、正極、負極及びセパレータを含む電極群を前記電池用缶に収容する電極群収容工程と、前記電極群を収容した前記電池用缶の内部に電解液を注入する電解液注入工程と、前記電池用缶の開口の部分に、正極端子を含む封口体を配置した後、前記開口の縁部をかしめ加工し、前記封口体を前記開口の部分に固定して、前記開口を封止する封口工程と、を備えている、電池の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る電池用缶の製造方法は、鋼板に無光沢のニッケルめっきを施し、ニッケルめっき鋼板を形成する第1のめっき処理工程と、前記ニッケルめっき鋼板に打ち抜き加工を施し、ブランク材を形成する打ち抜き工程と、前記ブランク材にプレス絞り加工を施し、電池用缶の中間製品を製造するプレス絞り工程と、前記中間製品に半光沢のニッケルめっきを施す第2のめっき処理工程と、を備えており、得られる電池用缶は、無光沢のニッケルめっきにより形成されている第1めっき層と、第1めっき層を覆う半光沢のニッケルめっきにより形成されている第2めっき層とを備えている。半光沢のニッケルめっきは外観が美しく、硬いので傷が付き難い。無光沢のニッケルめっきは展延性に優れており、母材としての鋼板の変形に追従し易く、母材にまで到達するクラックが入り難い。このため、傷が付き難く外観が美しいとともに、耐食性に優れる電池を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る電池用缶について、例えば、AAサイズの円筒形のニッケル水素二次電池(以下、電池という)1に適用した場合を例に図面を参照して説明する。
【0019】
図1に示すように、電池1は、上端が開口した有底円筒形状をなす電池用缶2を備えている。この電池用缶2は導電性を有し、その底壁5は負極端子として機能する。電池用缶2の開口3には、封口体14が固定されている。この封口体14は、蓋板16及び正極端子22を含み、電池用缶2を封口する。蓋板16は、導電性を有する円板形状の部材である。電池用缶2の開口内には、蓋板16及びこの蓋板16を囲むリング形状の絶縁パッキン18が配置され、絶縁パッキン18は電池用缶2の開口縁部17をかしめ加工することにより電池用缶2の開口3に固定されている。即ち、蓋板16及び絶縁パッキン18は互いに協働して電池用缶2の開口3を気密に閉塞している。
【0020】
ここで、蓋板16は中央に中央貫通孔19を有し、蓋板16の外面上には中央貫通孔19を塞ぐゴム製の弁体20が配置されている。更に、蓋板16の外面上には、弁体20を覆うようにしてフランジ付き円筒形状をなす金属製の正極端子22が電気的に接続されている。この正極端子22は弁体20を蓋板16に向けて押圧している。なお、正極端子22の側面には、ガス抜き孔23が設けられている。
【0021】
通常時、中央貫通孔19は弁体20によって気密に閉じられている。一方、電池用缶2内にガスが発生し、その内圧が高まれば、弁体20は内圧によって圧縮され、中央貫通孔19を開き、その結果、電池用缶2内から中央貫通孔19及び正極端子20のガス抜き孔23を介して外部にガスが放出される。つまり、中央貫通孔19、弁体20及び正極端子22は電池1のための安全弁を形成している。
【0022】
電池用缶2には、電極群4が収容されている。この電極群4は、それぞれ帯状の正極6、負極8及びセパレータ10を含んでいる。これら、正極6、負極8及びセパレータ10としては、一般的なニッケル水素二次電池に用いられるものが用いられる。
【0023】
電極群4は、セパレータ10を間に挟んだ状態で重ね合わされた正極6及び負極8が渦巻状に巻回されて製造される。つまり、電極群4は、セパレータ10を介して正極6及び負極8が互いに重ね合わされている。
【0024】
ここで、電極群4の最外周は負極8の一部(最外周部)により形成され、電池用缶2の内周壁と接触している。即ち、負極8と電池用缶2とは互いに電気的に接続されている。
【0025】
そして、電池用缶2内には、電極群4と蓋板16との間に正極リード30が配置されている。詳しくは、正極リード30は、その一端が正極6の所定位置に接続され、その他端が蓋板16の内面の所定位置に接続されている。従って、正極端子22と正極6とは、正極リード30及び蓋板16を介して互いに電気的に接続されている。なお、蓋板16と電極群4との間には円形の上部絶縁部材28が配置され、正極リード30は上部絶縁部材28に設けられたスリット32の部分を通されて延びている。また、電極群4と電池用缶2の底部との間にも円形の下部絶縁部材34が配置されている。
【0026】
更に、電池用缶2内には、所定量のアルカリ電解液(図示せず)が注入されている。注入されたアルカリ電解液の大部分は電極群4に保持されており、正極6と負極8との間での電気化学反応(充放電反応)を進行させる。アルカリ電解液としては、一般的なニッケル水素二次電池に用いられるものが用いられる。例えば、水酸化ナトリウム水溶液を用いることが好ましい。
【0027】
次に、電池1の製造の手順について以下に説明する。
【0028】
まず、電池用缶2を準備する。この電池用缶2は、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0029】
まず、
図2の(1)に示すような、矩形状の鋼板40を準備する。この鋼板40としては、特に限定されるものではなく、電池用缶2の材料として一般的に用いられているもので構わない。
【0030】
そして、
図2の(2)に示すように、準備した鋼板40に無光沢のニッケルめっきを施し、無光沢のニッケルめっき鋼板42を製造する。本発明において無光沢のニッケルめっきとは、硫黄の含有量が0.001%未満のニッケルめっきをいう。無光沢のニッケルめっきの表面状態は、梨地状である。無光沢のニッケルめっきは、硫黄の含有量が極めて少ないので耐食性に優れている。また、無光沢のニッケルめっきは、硬度が130〜200Hvであり、延性が20〜30%であり、比較的柔らかく展延性に優れている。このため、無光沢のニッケルめっきは、母材の鋼板40が変形した場合でも、その変形に十分追従することができる。
【0031】
次に、得られたニッケルめっき鋼板42の所定箇所を所定寸法の円形状に打ち抜く。例えば、
図2の(3)に示すように、打ち抜き予定箇所44を打ち抜き、所定寸法の円形状のブランク材46を製造する。得られたブランク材46は
図3に示した。そして、
図3の円A内には、ブランク材46の周端面の状態を拡大して示した。このブランク材46は、
図3の円A内に概略的に示すように、母材である鋼板40の表面40a及び裏面40bの両方に無光沢のニッケルめっき層48を備えている。一方、打ち抜き加工の際に生じた周端面40cにはニッケルめっき層は存在しておらず、母材(鋼板40)が露出している。
【0032】
次に、プレス絞り加工により、ブランク材46を有底円筒形状に成形し、
図4に示すような、電池用缶2の中間製品50を製造する。なお、この
図4においては、理解を助けるために、鋼板40及び無光沢のニッケルめっき層48の厚さを誇張して表現している。この中間製品50においては、開口縁52の先端部における母材(鋼板40)の端面52aにニッケルめっき層は存在していないが、それ以外の部分、すなわち、母材(鋼板40)の周壁54の内面54a及び外面54b、底壁56の内面56a及び外面56bは無光沢のニッケルめっき層48で覆われている。
【0033】
次に、電池用缶2の中間製品50に半光沢のニッケルめっきを施し、中間製品50の全体を半光沢のニッケルめっきで覆う。これにより、
図5に示すような、無光沢のニッケルめっき層48の上に半光沢のニッケルめっき層60が設けられている電池用缶2が製造される。なお、この
図5においては、理解を助けるために、鋼板40、無光沢のニッケルめっき層48及び半光沢のニッケルめっき層60の厚さを誇張して表現している。
【0034】
本発明において半光沢のニッケルめっきとは、硫黄の含有量が0.001%以上、0.03%未満のニッケルめっきをいう。半光沢のニッケルめっきは、無光沢のニッケルめっきに比べて硫黄の含有量が多いので耐食性は劣る。半光沢のニッケルめっきの表面状態は、鏡面に近い状態である。また、半光沢のニッケルめっきは、硬度が200〜500Hvであり、延性が10%以下であり、無光沢のニッケルめっきよりも硬度が高いが展延性は低い。つまり、半光沢のニッケルめっきは、耐食性及び展延性は無光沢のニッケルめっきに比べて多少低いが、外観が美しいとともに、硬いので傷が付き難い。
【0035】
電池用缶2では、開口縁62において、母材(鋼板40)の端面52aを含め、中間製品50の全体が半光沢のニッケルめっき層60で覆われている。
【0036】
次に、上記のようにして得られた電池用缶2の中に、電極群4を収容する。
【0037】
電極群4としては、一般的なニッケル水素二次電池に用いられるものが準備される。この電極群4においては、正極6の所定位置に帯状の正極リード30の一端が予め溶接されている。
【0038】
電極群4においては、
図6に示すように、上側に上部絶縁部材28が配置され、下側に下部絶縁部材34が配置される。そして、電極群4は、これら上部絶縁部材28及び下部絶縁部材34とともに電池用缶2の中へ挿入される。ここで、
図6から明らかなように、上部絶縁部材28には、所定位置にスリット32が設けられており、このスリット32に正極リード30が通されている。このようにして、
図7に示すように、電池用缶2内に上部絶縁部材28、電極群4及び下部絶縁部材34が収容される。
【0039】
次に、電極群4等を収容した電池用缶2には、溝入れ加工を施すことが好ましい。この溝入れ加工が施されると、
図8に示すように、電池用缶2の外周面に環状の凹溝70が設けられる。この凹溝70は、電池用缶2の開口縁62よりも下側で、電極群4の上の上部絶縁部材28よりも上側の所定位置に設けられる。溝入れ加工には、溝入れ加工機が用いられる。具体的には、溝入れ加工機に含まれる所定形状の型を電池用缶2の軸線Xに向かう方向(
図8中の矢印B及びCの方向)へ押し付け、電池用缶2の周壁を内側に屈曲させる。これにより、凹溝70を形成する。この凹溝70の裏側は、電池用缶2内において、電極群4上に位置する上部絶縁部材28の上に延びる突起部72となり、上部絶縁部材28の周縁を上からおさえる。
【0040】
次に、
図9に示すように、正極リード30の他端と封口体14の蓋板16とを溶接する。その後、蓋板16の周縁に円環状の絶縁パッキン18を配設する。
【0041】
次に、電池用缶2内にアルカリ電解液を所定量注入した後、
図10に示すように、絶縁パッキン18と組み合わされた封口体14を突起部72の上に載置し、電池用缶2の開口3の部分に配置する。その後、電池用缶2の開口縁部17を電池用缶2の内側方向(
図10中の矢印D、Fで示す方向)に折り曲げてかしめ加工して、封口体14を電池用缶2の開口3に固定する。その後、必要に応じて、電池用缶2の外周部に外径絞り加工機を用いて外径絞り加工を施す。このようにして、
図1に示す電池1が得られる。
【0042】
本発明の電池用缶2においては、母材(鋼板40)の表面に無光沢のニッケルめっき層48が形成されており、この無光沢のニッケルめっき層48の全体及び母材(鋼板40)が露出している端面52aが半光沢のニッケルめっき層60で覆われている。このように、最外部に外観が美しく、硬い半光沢のニッケルめっき層60が存在し、それよりも内側に展延性に優れる無光沢のニッケルめっき層48が存在していると、電池用缶2においては、外観が美しく、傷が付き難い。そして、電池用缶2に対して、溝入れ加工、かしめ加工、外径絞り加工等が施されても、展延性に優れる無光沢のニッケルめっき層48がこれらの加工にともなう変形に追従するので、無光沢のニッケルめっき層48にはクラックが入り難い。よって、仮に半光沢のニッケルめっき層60にクラックが入っても、無光沢のニッケルめっき層48にまでクラックは入ることは抑制される。このため、母材(鋼板40)が露出するという不具合の発生は抑制できる。このように母材(鋼板40)が露出してしまうことを抑制できるので、本発明の電池用缶2は、耐食性に優れている。また、予め無光沢のニッケルめっきを施した鋼板40を電池用缶2の中間製品50に加工した後に、中間製品50の全体に半光沢のニッケルめっきを施しているので、電池用缶2の内部は2つのめっき層で十分に覆われている。このため、電池を長期間放置しても、母材から鉄がアルカリ電解液中に溶出することは十分に抑制でき、電池の容量低下を早める問題の発生を抑えることができる。また、半光沢のニッケルめっき層60は、中間製品50の段階で露出している母材(鋼板40)の端面52aの部分も覆う。この部分は、かしめ加工の際に大きな力は加えられないので、クラックは生じ難く、母材(鋼板40)が露出することはない。よって、電池用缶2の開口3の先端部が腐食することも十分に抑制することができる。
【0046】
炭素の含有量が0.04質量%の鋼により形成された厚さが0.30mmの薄板(鋼板40)に、無光沢のニッケルめっきを施し、無光沢のニッケルめっき鋼板42を製造した。この無光沢のニッケルめっき層は、厚さが2μmであり、硫黄の含有量が0.001%未満である。
【0047】
この無光沢のニッケルめっき鋼板42に、打ち抜き加工を施し、
図3に示すような円形のブランク材46を製造した。
【0048】
得られたブランク材46にプレス絞り加工を施し、有底円筒形状に成形し、
図4に示すような電池用缶の中間製品50を製造した。
【0049】
次に、電池用缶の中間製品50に半光沢のニッケルめっきを施し、
図5に示すような全体が半光沢のニッケルめっきで覆われたAAサイズの電池用缶2を製造した。ここで、半光沢のニッケルめっき層は、厚さが2μmであり、硫黄の含有量が0.005%である。
【0050】
以上の手順で、電池用缶2を10個製造した。
【0051】
(2)AAサイズの円筒形のニッケル水素二次電池の組み立て
【0052】
次に、一般的なAAサイズのニッケル水素二次電池に用いられる正極6及び負極8をこれらの間にポリプロピレン繊維製不織布から成るセパレータ10を挟んだ状態で渦巻状に巻回し、電極群4を製造した。なお、電極群4の正極6の所定位置には、正極リード30が溶接されている。
【0053】
図6、7に示すように、得られた電極群4を上部絶縁部材28及び下部絶縁部材34とともにAAサイズ用の有底円筒形状の電池用缶2内に収容した。このとき、上部絶縁部材28のスリット32に正極リード30が通されている。
【0054】
次に、電極群4等を収容した電池用缶2を溝入れ加工機にセットし、
図8に示すように電池用缶2に溝入れ加工を施した。この溝入れ加工により、電池用缶2の周壁に環状の凹溝70を形成した。この凹溝70の裏側は、電池用缶2内に延びる突起部72となっており、この突起部72により、電極群4上の上部絶縁部材28の周縁がおさえられた状態となる。これにより、電極群4は電池用缶2内で固定される。
【0055】
次に、一般的なAAサイズのニッケル水素二次電池に用いられる封口体14を準備し、
図9に示すように、この封口体14の蓋板16と正極リード30とを溶接した。そして、蓋板16の周縁に円環状の絶縁パッキン18を配設した。
【0056】
次に、電池用缶2内にアルカリ電解液として水酸化ナトリウム水溶液を所定量注入した。その後、
図10に示すように、絶縁パッキン18と組み合わされた封口体14を電池用缶2の開口3の部分に配設した。
【0057】
次に、電池用缶2の開口縁部17をかしめ加工して封口体14を電池用缶2の開口3に固定した。その後、電池用缶2の外周部に外径絞り加工機を用いて外径絞り加工を施した。
【0058】
以上の手順を繰り返し、
図1に示すような電池1を10個製造した。
【0060】
鋼板40に無光沢のニッケルめっきを施さず、めっき層を有していない鋼板40により製造した中間製品に、厚さが3μmとなるように半光沢のニッケルめっきを施したことを除いて、実施例1と同様にして、電池を10個製造した。
【0062】
鋼板40に無光沢のニッケルめっきを施さず、めっき層を有していない鋼板40により製造した中間製品に、厚さが3μmとなるように無光沢のニッケルめっきを施したことを除いて、実施例1と同様にして、電池を10個製造した。
【0064】
鋼板40に、厚さが3μmとなうように半光沢のニッケルめっきを施し、半光沢のニッケルめっき鋼板を製造し、この半光沢のニッケルめっき鋼板を用いて円形のブランク材を製造し、このブランク材にプレス絞り加工を施して電池用缶を製造し、プレス絞り加工後に半光沢のニッケルめっきを行わなかったことを除いて、実施例1と同様にして、電池を10個製造した。
【0066】
鋼板40に、厚さが3μmとなうように無光沢のニッケルめっきを施し、無光沢のニッケルめっき鋼板を製造し、この無光沢のニッケルめっき鋼板を用いて円形のブランク材を製造し、このブランク材にプレス絞り加工を施して電池用缶を製造し、プレス絞り加工後に半光沢のニッケルめっきを行わなかったことを除いて、実施例1と同様にして、電池を10個製造した。
【0068】
鋼板40に無光沢のニッケルめっきを施す代わりに、厚さが2μmとなるように半光沢のニッケルめっきを施したことを除いて、実施例1と同様にして、電池を10個製造した。
【0071】
得られた電池について、かしめ加工が施された部分の状態の観察を行った。そして、かしめ加工の際に発生しためっきクラックの有無を確認し、めっきクラックが発生していた電池の個数を数えた。その結果をクラック発生数として表1に示した。
【0073】
得られた電池を、温度が60℃、相対湿度が93%の環境下に置き、2週間放置した。その後、電池の外観検査を行い、錆の発生の有無を確認した。そして、錆が発生していた電池の個数を数えた。その結果を錆の発生数として表1に示した。なお、錆が発生していた電池については、どの部分に錆が発生していたかも表1に併せて示した。
【0075】
(3)考察
表1より、実施例1の電池の電池用缶においては、10個中1個の電池についてクラックが発生していた。クラックの発生率としては10%である。しかしながら、電池を高温高湿の環境下に2週間放置した後であっても、錆は発生していなかった。実施例1においては、最外部に位置する半光沢のニッケルめっき層は、展延性が比較的低いことから、かしめ加工の際に加えられた力によりクラックが発生したものと考えられる。しかしながら、半光沢のニッケルめっき層の下には、展延性に優れる無光沢のニッケルめっき層が存在するので、半光沢のニッケルめっき層で発生したクラックは、この無光沢のニッケルめっき層までは進行していないと考えられる。このため、母材の鋼板40が露出することが抑制でき、錆の発生を防止できたものと考えられる。
【0076】
比較例1の電池の電池用缶においては、10個中1個の電池についてクラックが発生していた。クラックの発生率としては10%である。また、10個中1個の電池について錆が発生していた。錆の発生率としては10%である。そして、錆はクラック部分で発生していた。比較例1においては、めっき層を有していない鋼板40を有底円筒形状にプレス絞り加工した後に半光沢のニッケルめっきを施している。半光沢のニッケルめっきは、展延性が比較的低いことから、かしめ加工の際に加えられた力によりクラックが発生したものと考えられる。この半光沢のニッケルめっきの下は、直に母材の鋼板40が存在するので、半光沢のニッケルめっきにクラックが生じると、鋼板40が露出することになる。このため、クラック部分で錆が発生したものと考えられる。
【0077】
比較例2の電池の電池用缶においては、クラックは発生していない。しかしながら、比較例2の電池においては、10個中10個の電池に錆が発生していた。錆が発生していた部分は、かしめ傷部分である。つまり、かしめ加工を行った際に生じた傷の部分に錆が発生していた。比較例2においては、めっき層を有していない鋼板40を有底円筒形状にプレス絞り加工した後に無光沢のニッケルめっきを施している。無光沢のニッケルめっきは、展延性に優れてはいるものの、硬度は低いので、かしめ加工の際に治具等と接触すると、削られて傷が付く場合がある。この無光沢のニッケルめっきの下は、直に母材の鋼板40が存在するので、無光沢のニッケルめっきに傷が付くと、鋼板40が露出することになる。このため、傷の部分で錆が発生したものと考えられる。
【0078】
比較例3の電池の電池用缶においては、10個中1個の電池についてクラックが発生していた。クラックの発生率としては10%である。一方、錆については、10個中10個の電池について錆が発生していた。錆の発生率は100%である。錆が発生している部分は、先端部分、つまり、電池用缶の開口縁の先端部における端面部分である。比較例3においては、半光沢のニッケルめっきを施した鋼板からブランク材を製造し、このブランク材にプレス絞り加工を行い、電池用缶を製造している。半光沢のニッケルめっきは、展延性が比較的低いので、10%程度の発生率でクラックが発生したものと考えられる。比較例3では、プレス絞り加工後には、めっき処理を施していない。このため、電池用缶の開口縁の先端部における端面部分では、母材の鋼板40が露出した状態である。よって、この部分では100%の発生率で錆が発生したものと考えられる。
【0079】
比較例4の電池の電池用缶においては、クラックは発生していないが、錆については、10個中10個の電池について錆が発生していた。錆の発生率は100%である。錆が発生している部分は、先端部分、つまり、電池用缶の開口縁の先端部における端面部分である。比較例4においては、無光沢のニッケルめっきを施した鋼板からブランク材を製造し、このブランク材にプレス絞り加工を行い、電池用缶を製造している。無光沢のニッケルめっきは、展延性に優れるので、クラックは発生していないものと考えられる。比較例4では、プレス絞り加工後には、めっき処理を施していない。このため、電池用缶の開口縁の先端部における端面部分では、母材の鋼板40が露出した状態である。よって、この部分では100%の発生率で錆が発生したものと考えられる。
【0080】
比較例5の電池の電池用缶においては、10個中1個の電池についてクラックが発生していた。クラックの発生率としては10%である。また、10個中1個の電池について錆が発生していた。錆の発生率としては10%である。そして、錆はクラック部分で発生していた。比較例5においては、半光沢のニッケルめっきを施した鋼板からブランク材を製造し、このブランク材にプレス絞り加工を行い、電池用缶の中間製品を製造し、得られた中間製品に半光沢のニッケルめっきを施して電池用缶を製造している。半光沢のニッケルめっきは、展延性が比較的低いので、かしめ加工の際に加えられた力によりクラックが発生したものと考えられる。この比較例5の電池用缶は、最外部のめっき層だけではなく、母材側のめっき層も展延性が比較的低い半光沢のニッケルめっき層であるので、母材側の半光沢のニッケルめっき層にまでクラックが進行し、斯かるクラックは母材の鋼板40にまで達したものと考えられる。その結果、クラック部分で錆が発生したものと考えられる。
【0081】
以上より、鋼板40に無光沢のニッケルめっきを施し、得られた無光沢のニッケルめっき鋼板を用いて製造したブランク材をプレス絞り加工して電池用缶の中間製品を製造し、更にこの中間製品に半光沢のニッケルめっきを施して得られた電池用缶を含む電池は、外観が美しく耐食性に優れたものとなることがわかる。
【0082】
なお、本発明は上記した一実施形態及び実施例に限定されることはなく、種々の変形が可能であって、例えば、電池の種類は、ニッケル水素二次電池に限定されず、ニッケル−カドミウム二次電池、リチウムイオン二次電池等であってもよい。また、電池の形状は円筒形に限定されず、角形電池であってもよい。