特許第6843674号(P6843674)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843674
(24)【登録日】2021年2月26日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】排ガス後処理システム及び内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/08 20100101AFI20210308BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20210308BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20210308BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   F01N13/08 A
   F01N3/08 B
   F01N3/24 T
   B01D53/94 222
   B01D53/94ZAB
   B01D53/94 400
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-67171(P2017-67171)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-187036(P2017-187036A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2019年9月11日
(31)【優先権主張番号】10 2016 003 740.7
(32)【優先日】2016年3月31日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー
【氏名又は名称原語表記】MAN ENERGY SOLUTIONS SE
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】プラーメン・トシェフ
(72)【発明者】
【氏名】フランシス・ナナ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・デリング
【審査官】 菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−066219(JP,A)
【文献】 特開2008−063958(JP,A)
【文献】 特開平10−266844(JP,A)
【文献】 実開平07−038810(JP,U)
【文献】 特開2012−184713(JP,A)
【文献】 特開2013−170533(JP,A)
【文献】 特開2003−172136(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0076814(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/153257(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SCR触媒コンバータ(9)と、前記SCR触媒コンバータ(9)に通じている排ガス供給導管(8)と、前記SCR触媒コンバータ(9)から延在する排ガス排出導管(11)と、前記排ガス供給導管(8)に配設された、特にアンモニア又はアンモニア前駆物質といった還元剤を排ガスに導入するための導入装置(16)と、前記SCR触媒コンバータ(9)の上流において前記排ガスを前記還元剤と混合するための、前記排ガス供給導管(8)によって、前記導入装置(16)の下流に供給された混合区間(18)と、を有する内燃機関の排ガス後処理システム(3)、すなわち内燃機関のSCR排ガス後処理システムにおいて、
前記排ガス供給導管(8)、及び/又は、前記SCR触媒コンバータ(9)を受容する反応チャンバ(10)、及び/又は、前記排ガス排出導管(11)は、少なくとも二重壁を有するように構成されており、
前記排ガス供給導管(8)の第1の壁(24)、及び/又は、前記反応チャンバ(10)の第1の壁(25)、及び/又は、前記排ガス排出導管(11)の第1の壁(26)は、前記排ガス供給導管(8)及び/又は前記反応チャンバ(10)及び/又は前記排ガス排出導管(11)内で支配的な圧力において、それぞれの前記第1の壁がそれぞれの圧力に耐えるように設計された厚さを有しており、それぞれの前記第1の壁(24、25、26)の排ガスの流れに対向する面には、第2の壁(30、31、32)が配置され、前記第2の壁の厚さは、それぞれの前記第1の壁(24、25、26)の厚さよりも小さく、
それぞれの前記第1の壁(24、25、26)の排ガスの流れに背向する面に、第3の壁(33、34、35)が配置されており、前記第3の壁の厚さは、それぞれの前記第1の壁(24、25、26)の厚さよりも大きい、
ことを特徴とする排ガス後処理システム。
【請求項2】
それぞれの前記第1の壁(24、25、26)と、それぞれの前記第2の壁(30、31、32)との間には、空隙(27、28、29)が形成されていることを特徴とする、請求項に記載の排ガス後処理システム。
【請求項3】
それぞれの前記第1の壁の厚さと、それぞれの前記第2の壁の厚さとの比は、少なくとも10:3であることを特徴とする、請求項又はに記載の排ガス後処理システム。
【請求項4】
それぞれの前記第1の壁(24、25、26)の厚さと、それぞれの前記第2の壁(30、31、32)の厚さとの比は、少なくとも10:2であることを特徴とする、請求項に記載の排ガス後処理システム。
【請求項5】
それぞれの前記第1の壁(24、25、26)の厚さと、それぞれの前記第2の壁(30、31、32)の厚さとの比は、少なくとも10:1であることを特徴とする、請求項に記載の排ガス後処理システム。
【請求項6】
それぞれの前記第1の壁(24、25、26)の質量と熱容量との積は、それぞれの前記第2の壁(30、31、32)の対応する積よりも大きいことを特徴とする、請求項からのいずれか一項に記載の排ガス後処理システム。
【請求項7】
それぞれの前記第1の壁(24、25、26)の厚さと、それぞれの前記第3の壁(33、34、35)の厚さとの比は、少なくとも1:5であることを特徴とする、請求項に記載の排ガス後処理システム。
【請求項8】
それぞれの前記第1の壁(24、25、26)の厚さと、それぞれの前記第3の壁(33、34、35)の厚さとの比は、少なくとも1:7であることを特徴とする、請求項に記載の排ガス後処理システム。
【請求項9】
それぞれの前記第1の壁(24、25、26)の厚さと、それぞれの前記第3の壁(33、34、35)の厚さとの比は、少なくとも1:10であることを特徴とする、請求項に記載の排ガス後処理システム。
【請求項10】
それぞれの前記第1の壁(24、25、26)の質量と熱容量との積は、それぞれの前記第3の壁(33、34、35)の対応する積よりも小さいことを特徴とする、請求項からのいずれか一項に記載の排ガス後処理システム。
【請求項11】
前記第1の壁(24、25、26)と、前記第2の壁(30、31、32)との間の空隙(27、28、29)の厚さ、及び/又は、前記第1の壁(24、25、26)と、前記第3の壁(33、34、35)との間の空隙(36、37、38)の厚さは、少なくとも2mm、好ましくは少なくとも4mm、特に好ましくは少なくとも6mmであることを特徴とする、請求項から10のいずれか一項に記載の排ガス後処理システム。
【請求項12】
前記第2の壁(30、31、32)の熱伝導率と、前記第3の壁(33、34、35)の熱伝導率との比は、少なくとも10:1、好ましくは少なくとも80:1、最も好ましくは、少なくとも150:1であることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の排ガス後処理システム。
【請求項13】
前記排ガス排出導管(11)は、排ガス供給導管(8)を、前記反応チャンバ(10)に隣接して、部分的に外側で、実質的に同心に包囲している、請求項1から12のいずれか一項に記載の排ガス後処理システム。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか一項に記載の排ガス後処理システム(3)を有している内燃機関(1)であって、特にディーゼル燃料又は重油燃料で動作する内燃機関(1)。
【請求項15】
前記内燃機関が、高圧タービン(6)を含む第1の排ガスターボチャージャ(4)と、低圧タービン(7)を含む第2の排ガスターボチャージャ(5)とを備えた多段排ガス過給システム(2)を有しており、前記排ガス後処理システム(3)は、前記高圧タービン(6)と前記低圧タービン(7)との間に接続されていることを特徴とする請求項14に記載の内燃機関。
【請求項16】
前記排ガス後処理システム(3)が、排ガスタービンの上流に取り付けられていることを特徴とする請求項14又は15に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排ガス後処理システムに関する。さらに、本発明は、排ガス後処理システムを有する内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば発電所において用いられるような定置された内燃機関における燃焼プロセス、及び、例えば船舶において用いられるような定置されていない内燃機関における燃焼プロセスでは、窒素酸化物が発生し、これらの窒素酸化物は、典型的には、石炭、瀝青炭、褐炭、石油、重油、又は、ディーゼル燃料のような硫黄を含有する、化石燃料の燃焼に際して発生する。従って、このような内燃機関には、内燃機関から排出される排ガスの浄化、特に脱窒に用いられる排ガス後処理システムが配設されている。
【0003】
排ガス中の窒素酸化物を還元するために、実践から知られた排ガス後処理システムでは、まず、いわゆるSCR触媒コンバータが使用される。SCR触媒コンバータでは、窒素酸化物の選択的接触還元が行われ、窒素酸化物の還元のために、還元剤としてアンモニア(NH)が必要とされる。このために、アンモニア又はアンモニア前駆物質である尿素等は、SCR触媒コンバータの上流で、液体の形状において排ガスに導入され、アンモニア又はアンモニア前駆物質は、SCR触媒コンバータの上流において、排ガスと混合される。このために、実践によると、アンモニア又はアンモニア前駆物質の導入部とSCR触媒コンバータとの間に、混合区間が設けられている。
【0004】
SCR触媒コンバータを含む、実践から知られた排ガス後処理システムを用いて、排ガス後処理、特に窒素酸化物の還元が、すでに成功裏に実施可能ではあるが、排ガス後処理システムをさらに改善する必要性が存在する。特に、このような排ガス後処理システムの構造を小型化した場合に、効果的な排ガス後処理と、排ガス後処理システムを有する内燃機関の効果的な運転とを可能にする必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような必要性を基点にして、本発明の課題は、新型の内燃機関の排ガス後処理システムと、このような排ガス後処理システムを有する内燃機関とを創出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本課題は、請求項1に記載の内燃機関の排ガス後処理システムによって解決される。本発明によると、排ガス供給導管、及び/又は、SCR触媒コンバータを受容する反応チャンバ、及び/又は、排ガス排出導管は、少なくとも二重壁を有するように形成されている。それによって、排ガスの多すぎる熱エネルギーが、排ガス供給導管及び/又は反応チャンバ及び/又は排ガス排出導管によって吸収され、温度低下につながることを防止できる。当該熱エネルギーは、排ガス内に残存している。これは、効果的な排ガス後処理と、排ガス後処理システムを有する内燃機関の効果的な運転とを可能にするためには有利である。
【0007】
有利なさらなる発展形態によると、排ガス供給導管の第1の壁、及び/又は、反応チャンバの第1の壁、及び/又は、排ガス排出導管の第1の壁は、排ガス供給導管及び/又は反応チャンバ及び/又は排ガス排出導管内で支配的な圧力において、それぞれの壁がそれぞれの圧力に耐えるように設計された厚さを有している。それぞれの第1の壁の排ガスの流れに対向する面には、好ましくは第2の壁が配置され、空隙を形成しており、第2の壁の厚さは、それぞれの第1の壁の厚さよりも小さい。好ましくは、それぞれの第1の壁の排ガスの流れに背向する面には、第3の壁が付加的に配置されており、第3の壁の厚さは、それぞれの第1の壁の厚さよりも大きい。それによって、効果的な排ガス後処理と、排ガス後処理システムを有する内燃機関の効果的な運転とが保証され得る。
【0008】
有利なさらなる発展形態によると、それぞれの第1の壁の質量と熱容量との積は、それぞれの第2の壁の対応する積よりも大きい。さらに、好ましくは、それぞれの第1の壁の質量と熱容量との積は、それぞれの第3の壁の対応する積よりも小さい。これは、効果的な排ガス後処理と、排ガス後処理システムを有する内燃機関の効果的な運転とを保証するためには有利である。
【0009】
別の有利なさらなる発展形態によると、それぞれの第1の壁の厚さとそれぞれの第2の壁の厚さとの比は、少なくとも10:3、好ましくは少なくとも10:2、特に好ましくは少なくとも10:1である。これは、効果的な排ガス後処理と、排ガス後処理システムを有する内燃機関の効果的な運転とを保証するためには有利である。
【0010】
別の有利なさらなる発展形態によると、それぞれの第1の壁の厚さとそれぞれの第3の壁の厚さとの比は、少なくとも1:5、好ましくは少なくとも1:7、特に好ましくは少なくとも1:10である。これは、効果的な排ガス後処理と、排ガス後処理システムを有する内燃機関の効果的な運転とを保証するためには有利である。
【0011】
別の有利なさらなる発展形態によると、第1の壁と第2の壁との間の空隙の厚さ、及び/又は、第1の壁と第3の壁との間の空隙の厚さは、少なくとも2mm、好ましくは少なくとも4mm、特に好ましくは少なくとも6mmである。これは、効果的な排ガス後処理と、排ガス後処理システムを有する内燃機関の効果的な運転とを保証するためには有利である。
【0012】
本発明に係る内燃機関は、請求項13に規定されている。
【0013】
特に好ましくは、内燃機関は、高圧タービンを含む第1の排ガスターボチャージャと低圧タービンを含む第2の排ガスターボチャージャとを備えた多段排ガス過給システムを有しており、排ガス後処理システムは、高圧タービンと低圧タービンとの間に接続されている。
【0014】
本発明の好ましいさらなる発展形態は、従属請求項及び以下の説明から明らかになる。本発明の実施例を、図面を用いて詳細に説明するが、それに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る排ガス後処理システムを有する内燃機関の概略的な斜視図である。
図2図1の排ガス後処理システムの詳細を示した図である。
図3図2のIIIを詳細に示した図である。
図4図2のIIIに代わってIVを詳細に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、例えば発電所における定置された内燃機関、又は、船舶において用いられるような定置されていない内燃機関の排ガス後処理システムに関する。特に、排ガス後処理システムは、重油で動作する船舶用ディーゼル内燃機関で用いられる。
【0017】
図1は、排ガス過給システム2と排ガス後処理システム3とを有する内燃機関1から成る配置を示している。内燃機関1は、定置されていない、又は、定置された内燃機関であり、特に定置されずに運転される船舶用内燃機関であり得る。内燃機関1のシリンダから排出される排ガスは、排ガス過給システム2において、排ガスの熱エネルギーから、内燃機関1に供給されるべき過給空気を圧縮するための力学的エネルギーを得るために利用される。
【0018】
図1は、排ガス過給システム2を有する内燃機関1を示しており、排ガス過給システム2は、複数の排ガスターボチャージャを、すなわち第1の高圧側排ガスターボチャージャ4と、第2の低圧側排ガスターボチャージャ5と、を含んでいる。内燃機関1のシリンダから排出される排ガスは、まず第1の排ガスターボチャージャ1の高圧タービン6を通って流れ、高圧タービン6内で膨張し、その際に得られたエネルギーは、第1の排ガスターボチャージャ4の高圧圧縮機内で、過給空気を圧縮するために用いられる。排ガスの流れる方向に見て、第1の排ガスターボチャージャ4の下流には、第2の排ガスターボチャージャ5が配置されており、すでに第1の排ガスターボチャージャ4の高圧タービン6を貫流した排ガスは、第2の排ガスターボチャージャ5を通って、すなわち第2の排ガスターボチャージャ5の低圧タービン7を通るように誘導される。第2の排ガスターボチャージャ5の低圧タービン7内では、排ガスがさらに膨張し、その際に得られたエネルギーは、第2の排ガスターボチャージャ5の低圧圧縮機内で、同じく内燃機関1のシリンダに供給されるべき過給空気を圧縮するために利用される。
【0019】
両方の排ガスターボチャージャ4及び5を有する排ガス過給システム2に加えて、内燃機関1は、排ガス後処理システム3を含んでおり、排ガス後処理システム3は、SCR排ガス後処理システムである。SCR排ガス後処理システム3は、第1の圧縮機5の高圧タービン6と第2の排ガスターボチャージャ5の低圧タービン7との間に接続されているので、第1の排ガスターボチャージャ4の高圧タービン6から排出される排ガスは、第2の排ガスターボチャージャ5の低圧タービン7の領域に到達する前に、まずSCR排ガス後処理システム3を通るように誘導され得る。
【0020】
図1は、第1の排ガスターボチャージャ4の高圧タービン6から、反応チャンバ10内に配置されたSCR触媒コンバータ9の方向に排ガスを誘導し得る排ガス供給導管8を示している。
【0021】
さらに、図1は、排ガスをSCR触媒コンバータ9から第2の排ガスターボチャージャ5の低圧タービン7の方向に排出するために用いられる排ガス排出導管11を示している。
【0022】
排ガスは、低圧タービン7を始点として、導管21を通り、特に屋外へと流れる。
【0023】
反応チャンバ10、及び、従って反応チャンバ10内に配置されたSCR触媒コンバータ9につながる排ガス供給導管8と、反応チャンバ10、及び、従ってSCR触媒コンバータ9から延びる排ガス排出導管11とは、バイパス12を通じて連結されており、バイパス12には、遮断要素13が組み込まれている。遮断要素13が閉じている場合は、バイパス12は閉鎖されているので、当該バイパスを排ガスが流れることはできない。それに対して、遮断要素13が開かれている場合、バイパス12を通って排ガスが流れ、反応チャンバ10と、従って、反応チャンバ10内に配置されたSCR触媒コンバータ9と、の脇を通過し得る。
【0024】
図2は、矢印14で、バイパス12が遮断要素13によって閉じられている場合の、排ガス後処理システム3を通る排ガスの流れを明示しており、図2からは、排ガス供給導管8が、下流側端部15で反応チャンバ10に開口していることが導出され、当該排ガスの流れに対しては、排ガス供給導管8の当該端部15の領域において、約180°か、又は、略180°の方向転換が行われ、排ガスは、流れの方向転換が行われたのち、SCR触媒コンバータ9を通るように誘導される。
【0025】
排ガス後処理システム3の排ガス供給導管8には、導入装置16が配設されており、導入装置16を通じて、排ガスの流れに、特にアンモニア又はアンモニア前駆物質といった還元剤が導入可能であり、当該還元剤は、SCR触媒コンバータ9の領域において、排ガスの窒素酸化物を選択的に変換するために必要である。排ガス後処理システム3の当該導入装置16は、好ましくは噴射ノズルであり、当該噴射ノズルを通じて、アンモニア又はアンモニア前駆物質が、排ガス供給導管8内の排ガスの流れに注入される。図2は、円錐17で、排ガス供給導管8の領域における排ガスの流れへの還元剤の注入を明示している。排ガスの流れる方向に見て、導入装置16の下流、かつ、SCR触媒コンバータ9の上流に位置する排ガス後処理システム3の区間は、混合区間と呼ばれる。特に、排ガス供給導管8は、導入装置16の下流に混合区間18を設けており、混合区間18では、排ガスは、SCR触媒コンバータ9の上流において、還元剤と混合され得る。
【0026】
排ガス供給導管8は、下流側端部15で、反応チャンバ10に開口している。この排ガス供給導管8の下流側端部15には、バッフル要素19が配設されており、バッフル要素19は、排ガス供給導管8の下流側端部15に対して変位可能である。図示された実施例では、バッフル要素19は、反応チャンバ10に開口する排ガス供給導管8の端部15に対して、直線的に変位可能である。
【0027】
バッフル要素19は、排ガス供給導管8の下流側端部15に対して変位可能であり、それによって、排ガス供給導管8は、下流側端部15において遮断されるか、又は、排ガス供給導管8は、下流側端部15において開放される。従って、バッフル要素19が、排ガス供給導管8を下流側端部15において遮断している場合、好ましくは、バイパス12の遮断要素13が開放され、その結果、排ガスは完全に、SCR触媒コンバータ9の脇、又は、SCR触媒コンバータ9を受容する反応チャンバ10の脇を通過する。
【0028】
バッフル要素19が、排ガス供給導管8の下流側端部15を開放する場合、バイパス12の遮断要素13は、完全に閉鎖されるか、又は、少なくとも部分的に開放されている可能性もある。バッフル要素19が、排ガス供給導管8の下流側端部15を開放する場合、排ガス供給導管8の下流側端部15に対するバッフル要素19の相対位置は、特に、排ガス供給導管8を通る排ガス質量流量、及び/又は、排ガス供給導管8内の排ガス温度、及び/又は、導入装置16を通じて排ガスの流れに導入される還元剤の量に依存する。
【0029】
排ガス供給導管8の下流側の端部15が開放されている場合における、バッフル要素19のさらなる機能は、排ガスの流れの内に場合によっては存在する液状還元剤の液滴がバッフル要素19に到達した場合に、バッフル要素19で回収し、噴霧することによって、このような液状還元剤の液滴が、SCR触媒コンバータ9の領域に到達することを回避することにある。下流側端部15が開放されている場合の、排ガス供給導管8の下流側端部15に対するバッフル要素19の相対位置を通じて、特に、排ガス供給導管8の下流側端部15の領域において、バッフル要素19の領域で方向転換される排ガスが、SCR触媒コンバータ9の径方向内側に位置するセクションの方へ強く誘導又若しくは方向転換されるか、又は、径方向外側に位置するセクションの方へ強く誘導若しくは方向転換されるかを確定することができる。
【0030】
好ましい一態様によると、排ガス供給導管8は、その下流側端部15の領域において、漏斗状に拡大し、ディフューザを形成している。それによって、排ガス供給導管8の流れ横断面は、下流側端部15の領域において拡大し、特に図2から明らかなように、排ガスの流れる方向に見て、排ガス供給導管8の下流側端部15の上流で、その流れ横断面がまず減少することが規定され得る。図2が示すところによると、排ガス供給導管8の流れ横断面は、排ガスの流れる方向に見て、還元剤の導入装置16の下流において、まず略一定であり、次に次第に先細になり、最後に、下流側端部15の領域において拡大する。その際、排ガス供給導管8の下流側端部15における、この流れ横断面の拡大は、好ましくは、排ガス供給導管8が下流側端部15の上流でまず先細になる部分よりも短い排ガス供給導管8の部分に亘って行われる。
【0031】
バッフル要素19は、好ましくは排ガス供給導管8に対向する面20において湾曲し、好ましくは鐘状に湾曲し、排ガスのための流路を形成している。排ガス供給導管8の下流側端部15に対向しているバッフル要素19の面20は、バッフル要素19の径方向内側の部分において、排ガス供給導管8の下流側端部15に対して、径方向外側の部分よりも短い距離を有している。従って、バッフル要素19は、面20の中央で、排ガス供給導管8の下流側端部15の方向において、排ガスの流れる方向に反して引っ込んでいるか、又は、湾曲している。
【0032】
特に図2からわかるように、排ガス供給導管8と排ガス排出導管11とは、反応チャンバ10の共通の第1の面22に接続されているか、若しくは、開口しているか、又は、共通の面22から反応チャンバ10の中へと延在している。
【0033】
その際、排ガス供給導管8は、排ガス供給導管8の下流側端部15が、反応チャンバ10の第1の面22に対向する反応チャンバ10の第2の面23に隣接して位置するように、反応チャンバ10内に延在しているが、それに対して、排ガス排出導管11は、第1の面22において、反応チャンバ10に開口している。従って、排ガス供給導管8を通じて供給された排ガスは、排ガス供給導管8の下流側端部15に対向する反応チャンバ10の第2の面23の領域において、約180°の角度で方向転換された後、SCR触媒コンバータ9を通り、引き続いて下側面22を通り、排ガス排出導管11の領域へと流れる。図2からわかることに、その際、排ガス排出導管11は、排ガス供給導管8を、反応チャンバ10の面22に隣接して、部分的に外側で、好ましくは同心に包囲している。
【0034】
特に効果的な排ガス後処理と、排ガス後処理システム3を有する内燃機関1の特に効果的な運転とを可能にするために、排ガス供給導管8、及び/又は、SCR触媒コンバータ9を受容する反応チャンバ10、及び/又は、排ガス排出導管11は、少なくとも二重壁を有するように構成されている。それによって、排ガスの熱エネルギーが排ガス中に留まり、排ガス供給導管8、反応チャンバ10、及び、排ガス排出導管11の壁に大規模には放出されないことが保証される。高い排ガス温度は、一方では、SCR触媒コンバータ9の領域における効果的な排ガス後処理にとって有利であり、他方では、排ガス後処理装置3に後置された排ガスターボチャージャの効果的な運転にとって有利である。
【0035】
SCR触媒コンバータ9の領域における高い排ガス温度は、特に硫酸アンモニウム及び/又は重硫酸アンモニウムの生成といった、還元剤の望ましくない副反応を回避するために有利である。排ガス温度が低すぎる場合に生じ得る、望ましくない副生成物は、排ガス供給導管8、SCR触媒コンバータ9、反応チャンバ10、及び、排ガス排出導管11を破壊し、従って、排ガス後処理の効率を損なう可能性がある。
【0036】
さらに、すでに述べたように、排ガス後処理装置3の下流における高い排ガス温度は、流れる方向に見て排ガス後処理装置3の下流に配置された排ガスターボチャージャ、特にその低圧タービンを、効果的に運転するためには有利である。
【0037】
すでに述べたように、排ガス供給導管8、及び/又は、反応チャンバ10、及び/又は、排ガス排出導管11は、少なくとも二重壁を有するように構成されているが、同じく、バイパス12も少なくとも二重壁を有するように構成され得る。特に好ましい本発明の態様においては、排ガス供給導管8も、反応チャンバ10も、排ガス排出導管11も、それぞれ少なくとも二重壁を有するように構成されている。しかしながら、これらの部材の内の1つのみ、特に反応チャンバ10が、又は、これらの部材の内の2つのみ、特に排ガス供給導管8及び反応チャンバ10が、少なくとも二重壁を有するように構成されていても良い。
【0038】
以下に、さらなる詳細を、図3及び図4の詳細III及びIVを参照して説明する。図3及び図4は、排ガス供給導管8及び/又は反応チャンバ10及び/又は排ガス排出導管11のそれぞれ代替的な、好ましい態様を示しており、すなわち、図3は、二重壁を有する態様を、図4は、三重壁を有する態様を示している。
【0039】
本発明の第1の有利な態様によると、排ガス供給導管8の第1の壁24、及び/又は、反応チャンバ10の第1の壁25、及び/又は、排ガス排出導管11の第1の壁26は、排ガス供給導管8又は反応チャンバ10又は排ガス排出導管11内で支配的な圧力において、それぞれの壁24又は25又は26がそれぞれの圧力に耐えるように設計された厚さを有するように構成されている。その際、それぞれの圧力は、7barまでであり、好ましくは少なくとも2barである。
【0040】
その際、好ましくは、それぞれの第1の壁24又は25又は26の、排ガスの流れ(図示せず)に対向する面には、第2の壁30又は31又は32が配置され、空隙27又は28又は29を形成しており、第2の壁の厚さは、それぞれの第1の壁24又は25又は26の厚さよりも小さい。図3において、それぞれの第1の壁24又は25又は26の厚さはd1で、それぞれの第2の壁30又は31又は32の厚さはd2で示されており、それぞれの第1の壁24又は25又は26と、それぞれの第2の壁30又は31又は32との間に形成された空隙27又は28又は29の寸法は、l12で示されている。
【0041】
本発明の有利なさらなる発展形態によると、それぞれの第1の壁24又は25又は26の厚さd1と、それぞれの第2の壁30又は31又は32の厚さd2との比は、少なくとも10:3、好ましくは少なくとも10:2、特に好ましくは少なくとも10:1である。それぞれの第1の壁24又は25又は26と、それぞれの第2の壁30又は31又は32との間の空隙の寸法l12は、少なくとも2mm、好ましくは少なくとも4mm、特に好ましくは少なくとも6mmである。その際、それぞれの第1の壁24又は25又は26の質量と熱容量との積は、好ましくは、それぞれの第2の壁30又は31又は32の対応する質量と熱容量との積よりも大きい。
【0042】
それぞれの第1の壁24又は25又は26と、それぞれの第2の壁30又は31又は32とは、両方とも、例えば鋼等の金属材料から形成され得る。それぞれの第1の壁24又は25又は26が金属材料から形成され、それぞれの第2の壁30又は31又は32がセラミック材料から形成されている態様が好ましい。同様に、それぞれの第1の壁24、25、26と、それぞれの第2の壁30、31、32とが、それぞれ金属材料から形成されていることも可能であり、その場合、好ましくは、それぞれの第2の壁30、31、32は、排ガスの流れに対向する面に、セラミックのコーティングを有し得る。
【0043】
図4は、図3の詳細IIIのさらなる発展形態を、詳細IVとして示しており、図4では、付加的に第3の壁33又は34又は35が存在しており、第3の壁は、それぞれの第1の壁24又は25又は26の、排ガスの流れに背向する面に配置されて、さらなる空隙36又は37又は38を形成している。それぞれの第1の壁24、25、26の、排ガスの流れに対向する面に配置された、それぞれの第2の壁30、31、32によって、可能な限り少ない熱エネルギーが、排ガスから、それぞれの第1の壁24又は25又は26に伝達されることが保証され得る。それぞれの第1の壁24、25、26の、排ガスの流れに背向する面に配置された、それぞれの第3の壁33、34、35によって、可能な限り少ない熱エネルギーが、周囲へ放出されることが保証され得る。図4では、それぞれの第3の壁33又は34又は35の厚さはd3で、それぞれの第3の壁33、34、35と、それぞれの第1の壁24、25、26との間に形成された空隙36、37、38の寸法は、l13で示されている。
【0044】
特に、それぞれの第1の壁24、25、26の厚さと、それぞれの第3の壁33又は34又は35の厚さとの比は、少なくとも1:5、好ましくは少なくとも1:7、特に好ましくは少なくとも1:10である。その際、空隙の寸法l13は、好ましくは空隙の寸法l12に一致しており、特に2mm、好ましくは少なくとも4mm、特に好ましくは少なくとも6mmである。その際、それぞれの第1の壁24、25、26の質量と熱容量との積は、好ましくは、それぞれの第3の壁33、34、35の質量と熱容量との対応する積よりも小さい。さらに、好ましくは、第2の壁の熱伝導率と第3の壁の熱伝導率との比は、少なくとも10:1、好ましくは少なくとも80:1、最も好ましくは、少なくとも150:1である。
【0045】
それぞれの第1の壁24、25、26と、それぞれの第3の壁33、34、35との間の空隙は省略することも可能である。この場合、それぞれの第3の壁33又は34又は35は、それぞれの第1の壁24、25、26の、排ガスの流れに背向する面に、直接に貼付される。この場合、l13は0mmである。
【0046】
図1に係る内燃機関1では、排ガス後処理システム3は、直立して、排ガス過給システム2の上側に配置されている。内燃機関1のシリンダへのアクセスは自由であるが、排ガスターボチャージャ4及び5へのアクセスは制限されている。しかしながら、反応チャンバ10は、排ガスターボチャージャ4、6でメンテナンス作業が必要になった場合に、容易に分解することが可能である。
【0047】
図1に示されたような、排ガス後処理システム3が排ガス過給システム2の上側に直立して配置されている場合とは異なり、排ガス後処理システム3を90°回転させて、排ガス過給システム2の横に水平に配置することも可能であるが、このような水平配置では、配置に要する長さが増大する。しかしながら、内燃機関1及び排ガス過給システム2に関しては、反応チャンバ10を解体せずとも、無制限にメンテナンス作業を行うことができる。
【0048】
本発明に係る方法は、単段過給式エンジンでも二段過給式エンジンでも用いることができる。単段過給式エンジンの場合、排ガス後処理システムは、タービンの上流に配置されることが好ましく、二段過給式エンジンの場合、2つのタービンの間に配置されることが好ましい。
【符号の説明】
【0049】
1 内燃機関
2 排ガス過給システム
3 排ガス後処理システム
4 排ガスターボチャージャ
5 排ガスターボチャージャ
6 高圧タービン
7 低圧タービン
8 排ガス供給導管
9 SCR触媒コンバータ
10 反応チャンバ
11 排ガス排出導管
12 バイパス
13 遮断要素
14 排ガスの誘導
15 端部
16 導入装置
17 注入円錐
18 混合区間
19 バッフル要素
20 面
21 導管
22 面
23 面
24 第1の壁
25 第1の壁
26 第1の壁
27 空隙
28 空隙
29 空隙
30 第2の壁
31 第2の壁
32 第2の壁
33 第3の壁
34 第3の壁
35 第3の壁
36 空隙
37 空隙
38 空隙
図1
図2
図3
図4