【実施例1】
【0033】
本発明は、供給部が対象構造体の複数の本打ち部に間欠的に移動しながら流動性の剤料を規定された量で供給する剤料供給方法である。
【0034】
具体的には、一例として、磁気ヘッド近傍にマイクロアクチュエーター素子を並べて配置した並設(Co-located)タイプのヘッドサスペンションに適用し、一対のマイクロアクチュエーター素子の接着に関する剤料供給方法である。但し、本発明の剤料供給方法は、その他の部材の接着、例えばベースプレートとロードビームとの間のマイクロアクチュエーター素子の接着、或は、特許文献2〜6に記載の他の技術にも矛盾しない限り適用することができる。
【0035】
ここで、剤料供給方法の説明の前に、並設(Co-located)タイプのヘッドサスペンションについてアクチュエーター搭載部周辺の概要を
図1〜
図4の類似構造を用いて説明する。
【0036】
[ヘッドサスペンション]
図1は、ヘッドサスペンションを反スライダースライダー側から見た斜視図である。
図2は、ヘッドサスペンションのアクチュエーター搭載部をスライダー側から見た斜視図である。
【0037】
図1のヘッドサスペンション1は、ベースプレート3と、ロードビーム5と、配線付きフレキシャー(flexure with conductors)7と、アクチュエーター搭載部9等を備えている。
【0038】
ベースプレート3は、キャリッジのアームに固定される構成となっている。ベースプレート3には、アームに形成された孔に挿入されるボス部3aが形成されている。
【0039】
図1に矢印Xで示す方向がロードビーム5の長手方向すなわちヘッドサスペンション1の長手方向(前後方向)である。矢印Yの旋回方向がスウェイ方向である。スウェイ方向に対する接線方向がスライダー11の幅方向である。ロードビーム5の基部(後端部)には、ばね部13が形成されている。フレキシャー7はロードビーム5に沿って配置されている。
【0040】
図2のように、磁気ヘッドをなすスライダー11の端部には、例えばMR素子のように磁気信号と電気信号とを変換可能な素子15が設けられている。これらの素子15によって、ディスクに対するデータの書込みあるいは読取り等のアクセスが行なわれる。スライダー11と、ロードビーム5と、フレキシャー7などによって、ヘッドジンバルアセンブリ(head gimbal assembly)が構成されている。
【0041】
アクチュエーター搭載部9は、ジンバル部17と、一対のマイクロアクチュエーター素子19、21とを含んでいる。ジンバル部17は、フレキシャー7の先端部に形成されている。一対のマイクロアクチュエーター素子19、21は、ジンバル部17においてスライダー11の幅方向の両側に配置されている。
【0042】
マイクロアクチュエーター素子19、21は、それぞれPZT等の板状の圧電体からなり、スライダー11をスウェイ方向に回動させて位置決める機能を有している。
【0043】
図3は、アクチュエーター搭載部を反スライダー側から見た斜視図である。
図4は、マイクロアクチュエーター素子の接着剤による固定を示す要部断面図である。
図4の断面は、一方のマイクロアクチュエーター素子19を
図1のX方向(以下、X方向は
図1のX方向を意味する。)の面で切断して示すものである。なお、他方のマイクロアクチュエーター素子21も基本的には同一構成であり、その説明はマイクロアクチュエーター素子19を代表する。
【0044】
図1〜
図4のように、ジンバル部17は、タング部23を備えている。タング部23に、スライダー11が搭載されている。タング部23は、固定側23aと可動側23bとで構成されている。固定側23aと可動側23bとは、ヒンジ部23cで結合され、可動側23bが固定側23aに対し、スウェイ方向に動作可能となっている。
【0045】
タング部23の固定側23aには、アクチュエーター素子19の第1の支持部25が形成されている。また、タング部23の固定側23aには、基準孔30が備えられている。基準孔30は、タング部23にアクチュエーター素子19を搭載する際の画像処理において用いられる。
【0046】
タング部23の可動側23bには、マイクロアクチュエーター素子19の第2の支持部27が形成されている。可動側23bには、スライダー11に接続される配線部29の端子29aが形成されている。これらの端子29aは、配線部29の書込側29bと読取側29cとの導体に分けて導通されている。
【0047】
アクチュエーター搭載部9を備えたフレキシャー7は、薄い金属箔からなるメタルベース31を有している。メタルベース31に沿って前記配線部29が配置されている。メタルベース31の材料である金属箔の一例は、オーステナイト系ステンレス鋼であり、厚さの一例は18μm(12〜25μm)である。メタルベース31は、レーザー溶接などによってロードビーム5に固定されている。フレキシャー7の後部はベースプレート3の後方に延びている。
【0048】
フレキシャー7のメタルベース31には、アクチュエーター搭載部9においてアウトリガー部33が構成されている。アウトリガー部33は、スライダー11を弾性的に支持する。
【0049】
アクチュエーター搭載部9において配線部29の両側には、マイクロアクチュエーター素子19用の端子部35が設けられている。端子部35は、第1の支持部25に配置されている。第2の支持部27には、グランド側の端子部37が配置されている。グランド側の端子部37はメタルベース31に導通している。
【0050】
配線部29の層構造又は断面構造として、絶縁層39、書込側29b及び読取側29cの導体、カバー層41を含んでいる。絶縁層39は、ポリイミド等の電気絶縁性の樹脂からなる。書込側29b及び読取側29cの導体は、銅箔などの配線パターンで形成されている。カバー層41は、ポリイミド等の電気絶縁性の樹脂からなる。
【0051】
絶縁層39の厚さの一例は10μm(5〜20μm)、書込側29b及び読取側29cの導体の厚さの一例は9μm(4〜15μm)、カバー層41の厚さの一例は5μm(2〜10μm)である。メタルベース31の厚さは例えば12〜25μmであり、ロードビーム5の厚さ(例えば30μm)よりも小さい。
【0052】
マイクロアクチュエーター素子19は、X方向の両端部が第1、第2の支持部25,27に電気絶縁性の第1の接着剤43により固定されている。
【0053】
マイクロアクチュエーター素子19は、両電極が、第1、第2の支持部25、27上の端子部35、37に導電性の第2の接着剤45により導通接続されている。
【0054】
第2の接着剤45の一例は銀ペーストである。銀ペーストは、有機物バインダとして機能する樹脂基材と、樹脂基材中に混入された多量の導電粒子(銀の粒子)とを有している。未硬化の銀ペーストが常温あるいは加熱により硬化すると、導電粒子(銀の粒子)が互いに電気的に接触する。なお、第2の接着剤45が半田ペーストであってもよい。
【0055】
ロードビーム5の先端付近にディンプル47が形成されている(
図1)。ディンプル47は、フレキシャー7のジンバル部17に向かって突出する凸側の面を有している。この凸側の面の頂部がタング部23のヒンジ部23cに当接している(
図3)。ジンバル部17は、ディンプル47の先端とヒンジ部23cとの接点P1を中心として、ロードビーム5に対して揺動可能に支持されている。
【0056】
従って、ポジショニング用モーターによってキャリッジの旋回を介し、ヘッドサスペンション1がディスクの径方向に旋回すると、磁気ヘッドのスライダー11がディスクの記録面の所望トラックまで移動する。
【0057】
このとき、マイクロアクチュエーター素子19、21に電圧をかけることにより、その一方が縮み、他方が伸び、タング部23をスウェイ方向へ微小動作させ、スライダー11の素子15をスウェイ方向で高速かつ高精度に位置決めることができる。
【0058】
[剤料供給方法の概要]
図5は、剤料供給装置の外観を示す平面図である。
図6は、供給ヘッドを示す側面図である。
図7は、連鎖シートの斜視図である。
図8は、
図7の連鎖シートのIIX部の要部拡大平面図である。
【0059】
ヘッドサスペンション1のマイクロアクチュエーター素子19、21を第1、第2の支持部25、27に接着剤により取り付ける場合に、第1、第2の支持部25、27に流動性の剤料として未硬化の接着剤を本発明実施例の剤料供給方法により液滴状に供給する。
【0060】
使用する供給部としては、一例として
図5、
図6で示す剤料供給装置1のディスペンサー49及び供給ヘッド51が構成している。対象構造体は、一例として
図7、
図8で示すフレキシャー要素53の連鎖シート55である。なお、フレキシャー要素53とは、部品取り付け中に係るフレキシャーの半製品である。
【0061】
本実施例の剤料供給方法は、連鎖シート55の各フレキシャー要素53にマイクロアクチュエーター素子19、21を組み付けるための未硬化の接着剤の本打ちを行うものであり、最初のフレキシャー要素53の本打ち時に、本打ち部に対して規定された量と同一の量を連鎖シート55上の捨て打ち部へ捨て打ちしてから行なうものである。
【0062】
[剤料供給装置]
図5、
図6のように、実施例に係る剤料供給装置56は、ディスペンサー49及び供給ヘッド51の他に、XY軸アーム機構部57、Z軸駆動機構部59、コンベア61、本打ちステージ63、及びタッチセンサー65を備えている。
【0063】
XY軸アーム機構部57は、X軸アーム57aと、Y軸アーム57bと、X軸駆動モーター57cと、Y軸駆動モーター57dとを有する。
【0064】
X軸駆動モーター57cによって、Y軸アーム57bをX軸アーム57aに沿って往復移動させることができる。また、Y軸駆動モーター57dによって、Z軸駆動機構部59をY軸アーム57bに沿って往復移動させることができる。
【0065】
XY軸アーム機構部57では、制御装置からの駆動制御信号が、駆動回路に与えられると、X軸駆動モーター57c及びY軸駆動モーター57dが駆動される。この駆動によりXY軸アーム機構部57が動作して、供給ヘッド51がXY軸方向の指令位置まで移動する。
【0066】
Z軸駆動機構部59は、基部59a、ロッド59b、中間支持部59c、ロッド59d、及び係止部59eを有する。
【0067】
基部59aは、Y軸アーム57bに対して往復移動可能に支持されている。この基部59aには、ロッド59bをZ軸方向に往復移動させるZ軸駆動モーター59a1が備えられている。
【0068】
ロッド59bは、Z軸駆動モーター59a1の駆動動作を中間支持部59c及びロッド59dに伝達する機能を有する。
【0069】
Z軸駆動機構部59では、制御装置からの駆動制御信号が駆動回路に与えられると、Z軸駆動モーター59a1が作動するように構成されている。この作動によりZ軸駆動機構部59が動作して、供給ヘッド51がZ軸方向の指令位置まで移動するように構成されている。
【0070】
供給ヘッド51は、待機位置から本打ちステージ63に対して移動可能に備えられ、未硬化の接着剤の本打ち動作又は捨て打ち動作を行う機能を有する。
【0071】
図6のように、供給ヘッド51は、略円筒形状のシリンジ51a、シリンジ51aの下端側に設けたノズル51b、シリンジ51aの上端側に設けた蓋部51c、及びチューブ51dを備えてなる。供給ヘッド51は、ロッド59dを介して先端側の係止部59eによって垂直(Z軸)方向に係止固定されている。
【0072】
シリンジ51aには、供給が予定される接着剤43の未硬化の剤料が収容されている。接着剤43の未硬化の剤料として同符号を用いると、剤料43は、ディスペンサー49からシリンジ51a内に送り込まれた圧縮空気によってノズル51bの先端から吐出されるようになっている。剤料43には、例えば、熱硬化性又は紫外線硬化性のなどのものを採用することができる。
【0073】
ノズル51bは、供給部の内の剤料を吐出する部分であり、本実施例ではマルチノズルが採用されている。マルチノズルは、後述する本打ち部の供給箇所の数に応じた供給口を備えたものである。このノズル51bによってアクチュエーター搭載部9の後述する本打ち部の4箇所に剤料43を一度に液滴状に供給する。マルチノズルの供給口の数は、供給箇所の数に応じて適宜変更することができる。
【0074】
なお、ノズル51bとしてシングルノズルを採用することもできる。シングルノズルでは、本打ち部の4箇所に順に剤料を供給することになる。
【0075】
蓋部51cには、シリンジ51a内に圧縮空気を送り込むためのチューブ51dが備えられている。このチューブ51dの他側には、ディスペンサー49が接続されている。
【0076】
本打ちステージ63は、コンベア61上に設けられている。
【0077】
タッチセンサー65は、供給ヘッド51のZ軸方向における原点位置決めを行う際に用いられる。
【0078】
本実施例において、本打ちステージ63には、
図7の連鎖シート55が載置されている。
【0079】
[連鎖シート]
図7の連鎖シート55は、フレキシャーの製造過程で使用される。連鎖シート55は、複数のフレームユニット69a、69b、69c、69dを含んでいる。これらフレームユニット69a〜69dは、フレーム部71に各半製品部73を備えている。
【0080】
フレーム部71は、各半製品部73に部品を組み付けた後、切り離しによる分離が予定されている。
【0081】
フレーム部71は、外縦枠部74、75と外横枠部77、78と複数の中横枠部79とを備えている。外縦枠部74、75は、第1の位置決め孔81等を備え、外横枠部77は、第2の位置決め孔83等を備えている。中横枠部79は、外縦枠部74、75及び外横枠部77、78の内側をフレームユニット69a〜69d毎に区画する。
【0082】
半製品部73は、各フレームユニット69a〜69dに形成されている。半製品部73は、複数の対象物としてフレキシャー要素53が並んで連鎖状態をなしている。フレキシャー要素53の連鎖の数は、例えば数十〜数百個である。
【0083】
各フレームユニット69a〜69dのフレキシャー要素53の連鎖は、横方向に2グループに分けられている。グループ間は、フレキシャー要素53の連鎖のピッチよりも大きな間隔を有している。この間隔は、剤料の性状変化に影響を及ぼさない程度となっている。
【0084】
フレキシャー要素53は、部品が組み付けられてヘッドサスペンションに用いるフレキシャーとして切り離される。
【0085】
以下、フレキシャー要素53の説明では、概ね対応するフレキシャー7の各部に対応する構成部分に当該各部に付した符号を用い、重複した説明を省略する。また、本打ち部に関する基本的な説明は、マイクロアクチュエーター素子19側について行い、マイクロアクチュエーター素子21については、適宜付随的に行なう。
【0086】
フレーム部71と半製品部73のフレキシャー要素53とは、1枚の金属箔(例えばステンレス鋼の箔)をエッチングしてなる共通のメタルベース85を備えている。メタルベース85は、フレキシャー要素53において、フレキシャー7のメタルベース31に対応している。
【0087】
フレキシャー要素53は、メタルベース85上に形成された配線部29を有している。
【0088】
図9は、アクチュエーター搭載部を示すフレキシャー要素の要部拡大平面図である。
図10は、アクチュエーター搭載部の本打ち部を示す要部拡大平面図である。
【0089】
図7〜
図10のように、フレキシャー要素53は、アクチュエーター搭載部9を備えている。アクチュエーター搭載部9は、タング部23、第1、第2の支持部25、27、端子部35、37、及びアウトリガー部33等を備えている。
【0090】
また、タング部23の固定側23aには、基準孔84が備えられている。基準孔84は、タング部23にマイクロアクチュエーター素子19を搭載する際の画像処理において用いられる。
【0091】
第1、第2の支持部25、27には、剤料の本打ち部86が備えられている。本打ち部86は、第1、第2の接着剤43、45の未硬化の剤料を本打ちする領域である。剤料は、第1の接着剤43が未硬化の非導電性の接着剤であり、第2の接着剤45が未硬化の銀ペーストなどの導電性の接着剤である。
【0092】
本打ち部86は、一対のマイクロアクチュエーター素子19、21のそれぞれに対応して、X方向の前後にそれぞれ第1、第2の本打ち部87、89を備えている。
【0093】
図10で示す第1の本打ち部87は、X方向両側の一方の本打ち部87a、他方の本打ち部87bを備えている。第1の本打ち部87a、87bは、マイクロアクチュエーター素子19を固定するために未硬化の非導電性の剤料を供給する領域である。
【0094】
第1の本打ち部87a、87bは、アクチュエーター搭載部9上で一対のマイクロアクチュエーター素子19、21に合わせて4箇所に備えられている。この第1の本打ち部87a、87bの4箇所には、マルチノズルのノズル51bにより剤料43が一度に供給される。
【0095】
図10で示す第2の本打ち部89は、第1の本打ち部87にX方向で隣接している。第2の本打ち部89は、X方向両側の端子部35、37を含めて一方の本打ち部89a及び他方の本打ち部89bを備えている。第2の本打ち部89a、89bは、マイクロアクチュエーター素子19を端子部35、37に導通接続するためにペースト状の導電性の剤料を供給する領域である。
【0096】
第2の本打ち部89a、89bは、アクチュエーター搭載部9上で合わせて4箇所に備えられている。この4箇所の第2の本打ち部89a、89bには、第2の本打ち部89a、89b用のマルチノズルにより剤料が一度に供給される。
【0097】
一方、
図8のように、フレーム部71の外縦枠部75には、捨て打ち部91が備えられている。捨て打ち部91は、各フレームユニット69a〜69dにそれぞれ備えられている。
【0098】
捨て打ち部91は、本打ち部86と同一の形態とされている。つまり、捨て打ち部91の表面性状は、本打ち部86の表面性状と同一に設定されている。表面性状には、表面の平面形状、表面の段差を含めた断面形状、表面の粗さ等を含む。
【0099】
但し、1本打ち部86とその多少の周辺形状に対応させ、捨て打ち部91の周辺には、多少の周辺形状が合わせて形成されている。
【0100】
捨て打ち部91を、周辺の形状を除いて設定することもできる。
【0101】
また、捨て打ち部91は、フレーム部71の外縦枠部75に隣接する本打ち部86との位置的な関係が、各本打ち部86相互間の位置的な関係と同一に設定されている。
【0102】
図11(A)は、X方向での本打ち部を示す要部拡大断面図、(B)は、対応する捨て打ち部を示す要部拡大断面図である。
【0103】
図8、
図11のように、捨て打ち部91は、フレキシャー要素53の端子部35、37に対応した捨て打ち用の擬似端子部93、95を備えている。断面形状等については後述する。
【0104】
捨て打ち部91には、第1、第2の捨て打ち部97、99と捨て打ち用の擬似基準孔100とが備えられている。
【0105】
第1、第2の捨て打ち部97、99は、第1、第2の本打ち部87、89に対応し、捨て打ち用の擬似基準孔100は、本打ち用の基準孔84に対応している。
【0106】
第1の捨て打ち部97は、X方向両側の一方の捨て打ち部97a、他方の捨て打ち部97bを備えている。
【0107】
第1の捨て打ち部97a、97bは、第1の本打ち部87a、87bと同一の表面性状に設定され、同一の平面形状、断面形状、表面粗さである。但し、ノズル51bに残る剤料の量に影響を与えない範囲で、平面形状、断面形状、表面粗さは、何れか、或いは全てが若干異なることもあり、そのような場合も同一の表面性状に含まれる。
【0108】
第1の捨て打ち部97a、97bは、最初のフレキシャー要素53の第1の本打ち部87a、87bに本打ちする前に未硬化の非導電性の剤料43を捨て打ちする領域である。
【0109】
第1の捨て打ち部97a、97bは、第1の本打ち部87a、87bに対応し合わせて4箇所に備えられている。この4箇所の一方の捨て打ち部97a及び他方の捨て打ち部97bには、本打ち部87に用いるノズル51b(マルチノズル)により剤料が一度に捨て打ちされる。
【0110】
第2の捨て打ち部99は、第1の捨て打ち部97にX方向で隣接している。第2の捨て打ち部99は、X方向両側の捨て打ち用の端子部93、95を含めて一方の捨て打ち部99a及び他方の捨て打ち部99bを備えている。第2の捨て打ち部99a、99bは、第2の本打ち部89a、89bと同一の表面性状に設定され、同一の平面形状、断面形状、表面粗さである。但し、平面形状、断面形状、表面粗さは、ノズル51bに残る剤料の量に影響を与えない範囲で、何れか、或いは全てが若干異なることもあり、そのような場合も同一の表面性状に含まれる。
【0111】
第2の捨て打ち部99a、99bは、最初のフレキシャー要素53の第2の本打ち部89a、89bに本打ちする前に未硬化の導電性の剤料を捨て打ちする領域である。
【0112】
第2の捨て打ち部99a、99bは、第2の本打ち部89a、89bに対応し合わせて4箇所に備えられている。この4箇所の第2の捨て打ち部99a、99bには、第2の本打ち部89a、89bに用いるマルチノズルにより剤料が一度に捨て打ちされる。
【0113】
図8の連鎖シート55上の縦方向(フレームユニットの並び方向)及び横方向(フレキシャー要素の並び方向)において、第1の捨て打ち部97a、97b及び第2の捨て打ち部99a、99bの各4箇所の相互位置関係は、第1の本打ち部87a、87b及び第2の本打ち部89a、89bの各4箇所の相互位置関係に一致している。
【0114】
捨て打ち部91と隣接するフレキシャー要素53の本打ち部86との間のピッチは、各フレキシャー要素53の本打ち部86間のピッチに一致している。
【0115】
つまり、捨て打ち部91と本打ち部86との間でのノズルの移動ピッチが一致する。
【0116】
連鎖シート55上の縦方向及び横方向において捨て打ち用の擬似基準孔100の位置は、本打ち用の基準孔84の位置に一致している。
【0117】
つまり、擬似基準孔100を基準孔84と同様に画像処理に用いることができる。
【0118】
図12(A)は、X方向での第1の捨て打ち部の一方を示す要部拡大断面図、(B)は、同要部拡大平面図である。
図13(A)は、X方向での第1の捨て打ち部の他方を主に示す要部拡大断面図、(B)は、同要部拡大平面図である。
【0119】
図10、11(A)の本打ち部86の第1の本打ち部87の平面形状、断面形状に対し、
図11(B)、
図12(A)、(B)、
図13(A)、(B)の捨て打ち部91の第1の捨て打ち部97の平面形状、断面形状が同一となっている。
【0120】
なお、本打ち部86において第1、第2の支持部25、27間にメタルベース85が存在しないのに対し、捨て打ち部91において第1、第2の擬似支持部25A、27A間にメタルベース85が連続している。このメタルベース85の連続は、捨て打ち部91の平面形状、断面形状には影響しない。
【0121】
その他、本打ち部86側の絶縁層39、カバー層41に対応して捨て打ち部91は、同一形状で絶縁層39A、カバー層41Aを備えている。
【0122】
本打ち部86において、カバー層41の端縁から第1、第2の支持部25、27の各端縁までの距離はL1とする。カバー層41の端縁から距離L1内に形成される第1の本打ち部87a、87bの範囲はL2とする。メタルベース85からカバー層41表面までの高さはH1とする。第1の本打ち部87a、87bの幅はW1とする。
【0123】
範囲L2は、距離L1よりも若干小さく設定されている。マイクロアクチュエーター素子19を載せたときに剤料43が第1、第2の支持部25、27から極力はみ出ないようにするためである。但し、範囲L2を距離L1に一致させることもできる。
【0124】
第1の本打ち部87の一方の本打ち部87aにおいて、範囲L2では、メタルベース85上に絶縁層39の段差がある。第1の本打ち部87の他方の本打ち部87bにおいて、範囲L2では、第2の支持部27の端縁までメタルベース85上を絶縁層39が覆うから段差が無い。
【0125】
範囲L2、高さH1、及び平面方向から見た第1の本打ち部87a、87bの幅W1に対応させて剤料供給装置56のノズル51b側が設定されている。
【0126】
図11(A)、(B)、
図12(A)、
図13(A)の断面のように、第1の捨て打ち部97a、97bは、範囲L2、高さH1としている。第1の捨て打ち部97の範囲L2、高さH1は、第1の本打ち部87a、87bの範囲L2、高さH1と等しく設定されている。
【0127】
第1の捨て打ち部97の一方の捨て打ち部97aにおいて、範囲L2では、メタルベース85上に絶縁層39の段差を本打ち部87a同様に設定している。第1の捨て打ち部97の他方の捨て打ち部97bにおいて、範囲L2では、本打ち部87b同様に段差を設定しない。
【0128】
図12(B)、
図13(B)の平面のように、第1の捨て打ち部97a、97bは、幅W1としている。第1の捨て打ち部97a、97bの幅W1は、第1の本打ち部87a、87bの幅W1に等しく設定されている。
【0129】
幅W1は、マイクロアクチュエーター素子19の幅よりも若干大きく設定されている。但し幅W1をマイクロアクチュエーター素子19の幅に一致させ、或いは小さく設定することもできる。
【0130】
図14(A)は、マイクロアクチュエーター素子の搭載後におけるX方向での第2の本打ち部を示す要部拡大断面図、(B)は、対応する第2の捨て打ち部を示す要部拡大断面図である。
図15(A)は、マイクロアクチュエーター素子の搭載後におけるX方向での第2の捨て打ち部の一方を示す要部拡大断面図、(B)は、同要部拡大平面図である。
図16(A)は、マイクロアクチュエーター素子の搭載後におけるX方向での第2の捨て打ち部の他方を示す要部拡大断面図、(B)は、同要部拡大平面図である。
【0131】
図10、
図14(A)の本打ち部86の第2の本打ち部89の端子部35、37、マイクロアクチュエーター素子19を含めた平面形状、断面形状に対し、
図14(B)、
図15(A)、(B)、
図16(A)、(B)の捨て打ち部91の第2の捨て打ち部99の擬似端子部93、95、マイクロアクチュエーター素子19を含めた平面形状、断面形状が同一になっている。なお、捨て打ち部91のマイクロアクチュエーター素子19は、擬似的なものでもよい。
【0132】
第2の本打ち部89a、89bにおいて、マイクロアクチュエーター素子19の端縁から端子部35、37を覆う範囲をL3とする。マイクロアクチュエーター素子19の表面からカバー層41の表面までの高さをH2とする。第2の本打ち部89a、89bの幅はW2とする。
【0133】
第2の本打ち部89a、89bにおいて範囲L3では、接着剤43及び端子部35、37とカバー層41との間に段差がある。
【0134】
範囲L3、高さH2、及び平面方向から見た第2の本打ち部89a、89bの幅W2に応じて剤料供給装置56のノズル51b側が設定されている。
【0135】
図14(A)、(B)、
図15(A)、
図16(A)の断面のように、第2の捨て打ち部99a、99bは、範囲L2、高さH2とされている。範囲L2、高さH2は、第2の本打ち部89a、89bの範囲L3、高さH2と等しく設定されている。
【0136】
第2の捨て打ち部99a、99bにおいて範囲L3では、端子部93、95で第2の本打ち部89同様にカバー層41Aによる段差を設定している。範囲L3では、接着剤43Aも段差等を形成している。
【0137】
図15(B)、
図16(B)の平面のように、第2の捨て打ち部99a、99bは、幅をW2としている。幅W2は、マイクロアクチュエーター素子19の幅に対応して同一の幅に設定されている。但し幅W2をマイクロアクチュエーター素子19の幅よりも大きく、或いは小さく設定することもできる。
【0138】
[剤料供給方法]
図5、
図6において、制御装置からの制御信号に従って、供給ヘッド51は、待機位置から本打ちステージ63へそのまま移動する。
【0139】
本打ちステージ63上では、
図8で示すフレーム部71の外縦枠部75上で捨て打ち部91にノズル51bが位置決められる。
【0140】
この位置決めでは、捨て打ち部91が擬似基準孔100を含めて全体としてカメラで撮像される。この撮像により、擬似基準孔100を基準として画像処理によりノズル51bが位置決められる。本打ちステージ63上に位置決めピンを設けて擬似基準孔100に差し込ませることもできる。
【0141】
この決められた位置で、ディスペンサー49からシリンジ51a内に送り込まれた圧縮空気によってノズル51bの先端から剤料43が吐出される。
【0142】
この吐出により、
図8、
図11〜
図16の第1の捨て打ち部97a、97bの4箇所に、本打ち部86に対して規定された量と同一の量で捨て打ちが行なわれる。
【0143】
この捨て打ちで、待機位置から捨て打ち部91までのノズル51bの移動時にノズル51bの先端に付着して揮発等により性状が変化した剤料が排出され、ノズル51bに新たな剤料が待機する。
【0144】
捨て打ち部91での捨て打ち後は、隣接するフレキシャー要素53の最初の本打ち部86に位置決められる。
【0145】
この位置決めでは、本打ち部86が基準孔84(
図8)を含めて全体としてカメラで撮像される。この撮像により基準孔84を基準として画像処理によりノズル51bが位置決められる。この場合、本打ちステージ63上に位置決めピンを設けて基準孔84に差し込ませることもできる。
【0146】
この決められた位置で、ディスペンサー49からシリンジ51a内に送り込まれた圧縮空気によってノズル51bの先端から剤料43が吐出される。
【0147】
この吐出により、
図8〜
図11の第1の本打ち部87a、87bの4箇所に規定された量で本打ちが行なわれる。
【0148】
本打ち部86及び捨て打ち部91間のピッチは、本打ち部86相互間のピッチと同一である。なお、ノズル51bに残る剤料の粘度等の性状の同一性を確保できる範囲で、本打ち部86及び捨て打ち部91間のピッチを本打ち部86相互間のピッチと異ならせてもよい。
【0149】
このピッチによる間欠動作のタイミングで以下連設された各フレキシャー要素53の本打ち部86の4箇所に同一の量で本打ちが順次行なわれる。
【0150】
つまり、ノズル51bの間欠的な移動による本打ち部86への剤料43の供給の開始動作を、捨て打ち部91へ捨て打ちしてから行なった。ここで、間欠的な移動とは、複数のフレキシャー要素53の本打ち部86間を移動するノズル51bが、本打ち部86へ本打ちするために一旦移動を停止し、その本打ち部86に本打ちした後、次の本打ち部86へ移動し、この次の本打ち部86へ本打ちするために一旦移動を停止するという繰り返しの動作を伴う移動を意味する。
【0151】
次いで、剤料43が供給された捨て打ち部91及び本打ち部86において、
図14のように、マイクロアクチュエーター素子19を搭載する。マイクロアクチュエーター素子19は、接着剤43、43Aにより第1、第2の支持部25、27、第1、第2の擬似支持部25A、27Aにそれぞれ取り付けられる。
【0152】
このとき、他方のマイクロアクチュエーター素子21も同様に搭載される。
【0153】
次に、コンベア61の駆動により本打ちステージ63を移動させる。この移動でステージ63は、剤料を接着剤45、45Aの銀ペーストとする剤料供給装置側へ移動する。剤料供給装置は、ノズルが第2の本打ち部89に応じて備えられている。この剤料供給装置により、第2の本打ち部89において第2の本打ち部89a、89bの4箇所に剤料が供給される。
【0154】
このときの供給も、同様に行なわれ、第2の本打ち部89a、89bへの剤料の供給の開始動作が、第2の捨て打ち部99a、99bの4箇所へ、第2の本打ち部89a、89bに対して規定された量と同一の量で捨て打ちしてから行なわれる。
【0155】
図17(A)は、アクチュエーター搭載部において第1の本打ち部への本打ちの状態を片側で示したフレキシャー要素の要部拡大平面図、(B)は、アクチュエーター搭載部において第2の本打ち部への本打ちの状態を片側で示したフレキシャー要素の要部拡大平面図である。
【0156】
上記のような第1の本打ち部87への本打ちにより、
図17(A)のように剤料43が本打ちされる。図では、説明上片側のみ本打ちされているが、両側の第1の本打ち部87の4箇所に本打ちが行われる。
【0157】
次いで、マイクロアクチュエータ素子19(21)を載せて、上記のような第2の本打ち部89への本打ちにより、
図17(B)のように銀ペーストの剤料45が本打ちされる。図では、説明上片側のみ本打ちされているが、両側の第2の本打ち部89へ本打ちが行われる。
【0158】
かかる
図17の本打ちと同様の状態で
図8、
図11等で示す捨て打ち部91においても剤料の供給が行なわれる。
【0159】
[実施例1の効果]
本発明の実施例の連鎖シート55は、フレキシャー要素53が一定ピッチで並び連鎖状態をなしている。この連鎖シート55は、フレーム部71を備えている。フレーム部71の外縦枠部75上に、液滴状の剤料の捨て打ち部91を含んでいる。捨て打ち部91は、本打ち部86と同一の形状とされている。捨て打ち部91は、ノズル51bが開始動作を行なう最初の本打ち部86との位置的な関係を各本打ち部86相互間の位置的な関係と同一に設定されている。つまり、フレーム部71の縦方向で同一の位置に設定され、同横方向で同一のピッチに設定されている。
【0160】
そして、ノズル51bはピッチにより間欠的な移動を行なう。この移動による本打ち部86への剤料の規定された量での供給の開始動作を、ノズル51bが本打ち部86に対して規定された量と同一の量で捨て打ち部91へ捨て打ちしてから行なう。
【0161】
このため、ノズル51bの先端部に付着して残り、待機位置からの移動で揮発等により性状の変化しいている剤料を除去してから本打ちを開始することができる。
【0162】
なお、捨て打ちの量は、実施例1において、本打ちに対して規定された量と同一の量であるが、同一の量は、ノズル51bに残る剤料の状態を本打ち後のものと同一にできる範囲であれば、捨て打ちの量を本打ちの量に対して増減させたものも含む。
【0163】
捨て打ち部91は、本打ち部86と同一の形状等で捨て打ちすることができる。このため、捨て打ち後に供給部であるディスペンサー49及び供給ヘッド51、特にノズル51bに残る剤料は、本打ち部86後にノズル51bに残る剤料と同一の状況にすることができる。例えば、捨て打ち後及び本打ち後の双方でノズル51bに残る剤料の量をほぼ同一にすることができる。
【0164】
さらに、捨て打ち部91から最初の本打ち部86へ平行移動するピッチが、各本打ち部86相互間の平行移動のピッチと同一であるから、ノズル51bの捨て打ち部91から最初の本打ち部86への移動と各本打ち部86相互間の移動との間でノズル51bに残る剤料を同一の状況に維持させることができる。
【0165】
このため、捨て打ち部91と本打ち部86との間と本打ち部86相互間とでノズル51bに残る剤料の性状、或いは量を安定させることができる。結果的に、開始当初に本打ち部86に供給する剤料の規定された量を安定させることができる。
【0166】
連鎖シート55のフレーム部71は、分離されるので、フレキシャー要素53、ひいてはフレキシャー7が不必要に拡大することもない。
【0167】
本発明の実施例の連鎖シート55は、フレーム部71の外縦枠部75上に、剤料の捨て打ち部91を含んでいる。捨て打ち部91は、本打ち部86と同一の形状とされている。捨て打ち部91は、ノズル51bが開始動作を行なう最初の本打ち部86との位置的な関係を各本打ち部86相互間の位置的な関係と同一に設定されている。
【0168】
従って、連鎖シート55により、本発明実施例の剤料供給方法による捨て打ちを効果的に行わせることができる。
【0169】
[変形例]
捨て打ちは、接着剤43、45の本打ちの何れか一方のみで実行させることもできる。
【0170】
上記実施例では、非導電性接着剤の供給、素子搭載、導電性接着剤の供給の順で組み付け構成したが、製品の構成により順番及び構成を代えることができる。例えば、導電性接着剤の供給、素子搭載、非導電性接着剤の供給の順で組み付け、或いは素子搭載、導電性接着剤の供給、導電性接着剤の供給、非導電性接着剤の供給の順で組み付ける構成などにすることもできる。
【0171】
供給部は、本打ちと捨て打ちができればよく、ノズル51bの形状の設定は自由である。例えば、未硬化の接着剤を液滴状に限らず直線状に供給する形態でもよい。インクジェットノズルなど種々のものも含まれる。
【0172】
対象構造体は、複数の本打ち部を備えればよく、フレキシャー要素53の連鎖シート55に限らず、回路基板等も含まれる。
【0173】
複数の本打ち部は、一定ピッチで連続的に並ぶもの以外に、多少ピッチがずれ、並びもずれるものでもよい。
【0174】
また、各本打ち部は、実施例のように複数個所(第1及び第2の本打ち部87a、87b、97a、97b)に剤料を塗布する必要がある場合に限らず、単一ヵ所に剤料を塗布するものであってもよい。
【0175】
流動性の剤料は、非導電性、導電性の接着剤に限らず、流動性で対象箇所に供給されるものであれば、インク剤等も含まれる。
【0176】
捨て打ち部と本打ち部との同一の形態は、表面形状等の表面性状及び位置的な関係の双方、又は何れか一方を意味する。従って、同一の表面性状であれば、供給部が開始動作を行なう最初の本打ち部と捨て打ち部との位置的な関係は、各本打ち部相互間の位置的な関係と多少ずれてもよい。又、供給部が開始動作を行なう最初の本打ち部との位置的な関係が各本打ち部相互間の位置的な関係と同一に設定されるとき、捨て打ち部は、本打ち部と多少形状等が異なってもよい。フレーム部71に特別な捨て打ち部を備えず、平面状の捨て打ち部とし、例えばマルチノズル等で4箇所に剤量を供給できるものも同一の形態に含まれる。