特許第6843690号(P6843690)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843690
(24)【登録日】2021年2月26日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】合成樹脂成形体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/02 20060101AFI20210308BHJP
【FI】
   B29C65/02
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-84934(P2017-84934)
(22)【出願日】2017年4月24日
(65)【公開番号】特開2018-183880(P2018-183880A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2020年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108498
【氏名又は名称】タイガースポリマー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】廣井 清文
【審査官】 山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−008728(JP,A)
【文献】 特開2006−088669(JP,A)
【文献】 特開昭63−260427(JP,A)
【文献】 特開2000−093395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00−65/82
B65D 53/00−53/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部を有する合成樹脂成形体であって、
筒状部は環状の端面を有し、
筒状部の端面には、端面を覆うようにシート状素材が溶着されており、
筒状部とシート状素材は、端面の幅方向略中央に位置する環状の溶着部において溶着されており、
前記端面は、溶着部よりも内周側が、溶着部よりも外周側に対して、筒状部の奥側から端面に向かう方向に突出するように形成されている
合成樹脂成形体。
【請求項2】
前記端面が、筒状部の中心軸と直交する平面に対し傾斜した錐面とされた
請求項1に記載の合成樹脂成形体。
【請求項3】
前記端面が、外周側と内周側の間に段差を有するよう形成された
請求項1に記載の合成樹脂成形体。
【請求項4】
請求項1に記載の合成樹脂成形体を製造する方法であって、
筒状部を有する予備成形体を形成する工程、
筒状部の端面を覆う形状のシート状素材を準備する工程、及び
予備成形体の筒状部の端面にシート状素材を溶着する工程、を有し、
予備成形体の筒状部は環状の端面を有すると共に、
予備成形体の筒状部端面の幅方向略中央には、筒状部の中心軸方向に突出する環状の突条が形成されており、
予備成形体の筒状部端面は、前記突条よりも内周側が、前記突条よりも外周側に対して、筒状部の奥側から端面に向かう方向に突出するように形成されており、
溶着工程においては、前記突条を加熱して溶融状態として、シート状素材と密着させ、筒状部の中心軸方向に押圧して溶着する
合成樹脂成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状部を有する合成樹脂成形体およびその製造方法に関する。特に、筒状部の端面にシート状素材が一体化された合成樹脂成形体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂成形体に筒状部を設けておいて、筒状部の端面に種々のシート状素材を一体化する技術が実用化されている。例えば、容器を合成樹脂により成形しておいて、容器に食品等の内容物を入れたのちに、容器の入り口の筒状部の開放端部をフィルム素材で覆ってふたをする技術が実用化されている。あるいは、筒状の合成樹脂成形体の端面に、メッシュ素材を溶着し、メッシュ付きの合成樹脂成形体とする技術が実用化されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、特定の金型を用いてフランジ付容器を形成する技術が開示されており、容器の製造と同時にフランジの天面に特定形状の突起が形成される。このフランジ付容器は、フィルム素材(ふた材)をフランジに溶着することにより、いわゆるヒートシールによってふたができる。フィルム素材を溶着する際には、前記突起がヒートシールの溶着部となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−88669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
合成樹脂成形体の筒状部にシート状素材を一体化する際には、合成樹脂成形体となる予備成形体をあらかじめ作成しておいて、後工程で、シート状素材を予備成形体の筒状部端面に溶着するようにすると、生産効率も高くてよい。
【0006】
しかしながら、筒状部の端面にシート状素材を溶着すると、溶着後にシート状素材にしわが生ずることがある。しわが生ずると、製品の外観上の不良となる場合もあり、溶着を行う際にシート状素材にしわが生じない溶着技術が求められている。
【0007】
本発明の目的は、合成樹脂成形体の筒状部にシート状素材を溶着する際に、しわの発生を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者は、鋭意検討の結果、シート状素材が溶着される筒状部の端面を特定の形状とすると、シート状素材にしわが発生しにくくなることを知見し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、筒状部を有する合成樹脂成形体であって、筒状部は環状の端面を有し、筒状部の端面には、端面を覆うようにシート状素材が溶着されており、筒状部とシート状素材は、端面の幅方向略中央に位置する環状の溶着部において溶着されており、前記端面は、溶着部よりも内周側が、溶着部よりも外周側に対して、筒状部の奥側から端面に向かう方向に突出するように形成されている合成樹脂成形体である(第1発明)。
【0010】
第1発明において、好ましくは、前記端面が、筒状部の中心軸と直交する平面に対し傾斜した錐面とされる(第2発明)。また、第1発明において、好ましくは、前記端面が、外周側と内周側の間に段差を有するよう形成される(第3発明)。
【0011】
また、本発明は、第1発明の合成樹脂成形体を製造する方法であって、筒状部を有する予備成形体を形成する工程、筒状部の端面を覆う形状のシート状素材を準備する工程、及び
予備成形体の筒状部の端面にシート状素材を溶着する工程、を有し、予備成形体の筒状部は環状の端面を有すると共に、予備成形体の筒状部端面の幅方向略中央には、筒状部の中心軸方向に突出する環状の突条が形成されており、予備成形体の筒状部端面は、前記突条よりも内周側が、前記突条よりも外周側に対して、筒状部の奥から端面に向かう方向に突出するように形成されており、溶着工程においては、前記突条を加熱して溶融状態として、シート状素材と密着させ、筒状部の中心軸方向に押圧して溶着する合成樹脂成形体の製造方法である(第4発明)。
【発明の効果】
【0012】
本発明の合成樹脂成形体(第1発明)や本発明の合成樹脂成形体の製造方法(第4発明)によれば、シート状素材を溶着する際のしわの発生を抑制できる。
さらに、第2発明や第3発明のようにすれば、より効果的に、しわの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態の合成樹脂成形体の構造を示す正面図及び断面図である。
図2】第1実施形態における予備成形体の形状を示す正面図及び断面図である。
図3】第1実施形態における溶着工程を示す断面模式図である。
図4】第2実施形態における予備成形体の形状を示す正面図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面を参照しながら、通気性を有する樹脂製キャップを例として、発明の実施形態について説明する。発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。
【0015】
図1は、第1実施形態の合成樹脂成形体である樹脂製キャップ1の構造を示す正面図及び断面図である。合成樹脂成形体1は筒状部2を有する。本実施形態の樹脂製キャップにおいては、合成樹脂成形体の全体が筒状部2となっている。合成樹脂成形体は筒状部2以外の部分(例えば取付ステーなど)を有するものであってもよい。
本実施形態の筒状部2は、円筒状であるが、筒状部の具体的形状は特に限定されず、角筒状や、テーパを有する筒状であってもよい。また、適宜シール溝等を筒状部の外周に設けてもよい。
【0016】
筒状部2は環状の端面21を有している。本実施形態では、端面21は円形のリング状であり、筒状部2の中心軸mに直行する平面におおむね沿うように設けられている。
【0017】
筒状部2の端面21には、端面21を覆うようにシート状素材3が溶着されている。本実施形態においては、シート状素材3は、ポリアミド樹脂繊維製の織布であり、通気性を有している。筒状部2の端面21に、シート状素材3が溶着されることにより、筒状部2の一端がシート状素材により閉じられる。本実施形態においては、シート状素材3が通気性を有するので、筒状部2とシート状素材3により、通気性を有するキャップ部材が得られる。このキャップ部材は、可撓性チューブの末端部に取り付けて用いることができ、チューブの端部の通気性を維持しながら、チューブ内にごみが入ることを抑制する用途に使用できる。
【0018】
シート状素材3は、筒状部2に溶着可能な物であれば、特に限定されず、樹脂フィルムや紙、金属箔、各種積層フィルム(樹脂の積層フィルム、金属箔に樹脂層をラミネートしたフィルム等)や、布、多孔質材、メッシュなどの素材が利用できる。用途に応じて求められる特性、例えば、気密性や液密性、通気性、濾過特性、遮光性、透光性、ガス透過性等の特性を備えるシート状素材を用いればよい。例えば、シート状素材3に通気性が求められる場合には、シート状素材3として、布(特に織布や不織布)、紙(特に濾紙)、多孔質材(特に連続気泡構造の樹脂発泡体、多孔質分離膜、多孔質フッ化エチレン膜等)を使用することが好ましい。
【0019】
筒状部2を構成する合成樹脂は、シート状素材3の材質に応じて、両者が溶着可能となるように選択すればよい。本実施形態においては、シート状素材3がポリアミド樹脂繊維製の織布であり、筒状部2はポリアミド樹脂により構成されている。
シート状素材3が溶着される際にシート状素材が損傷しにくいように、シート状素材3の材質が溶着時には溶融しない材料とされることや、シート状素材3の材料の融点や分解点よりも、筒状部2を構成する合成樹脂の融点が低くされることが好ましい。
【0020】
図1のA部拡大図に示すように、筒状部2とシート状素材3は、端面21の幅方向略中央に位置する環状の溶着部2aにおいて溶着されている。ここで端面21の幅方向とは、筒状部の径方向のことであり、A部拡大図における左右方向である。必須ではないが、端面21においては、本実施形態のように、溶着部2aよりも内周側21aおよび外周側21bに、それぞれ筒状部端面とシート状素材が溶着されていない部分が残っていることが好ましい。
【0021】
溶着部2aは、筒状部端面21の全周にわたって環状に設けられる。本実施形態においては、溶着部2aは連続した環状に設けられている。筒状部2とシート状素材3の間のシール性を求められないのであれば、環状の溶着部2aは断続的に、例えば破線状に設けられていてもよい。
【0022】
筒状部2の端面21は、溶着部2aよりも内周側21aが、溶着部2aよりも外周側21bに対して、筒状部の中心軸mの方向で筒状部の奥側から端面に向かう方向に突出するように形成されている。すなわち、図1のA部拡大図に示すように、内周側端面21aの方が、外周側端面21bよりも、高くなるように形成されている。さらに換言すれば、端面21は、筒状部の内側から外側に向かう際に、筒状部の端面から奥側に向かうように形成されている。
【0023】
本実施形態においては、端面21全体が、筒状部2の中心軸mと直交する平面に対し傾斜した錐面(特に円錐面)となるように形成されて、内周側端面21aの方が、外周側端面21bよりも、高くなるようにされている。換言すれば、本実施形態の端面21は、筒状部の内側から外側に向かう際に、筒状部の端面から奥側に向かうような円錐面状に形成されている。本実施形態のように、端面21が傾斜した錐面状に設けられる場合の傾斜角α(図2に示す)は、3〜10°であることが好ましい。
【0024】
上記実施形態の合成樹脂成形体(樹脂キャップ)1は、あらかじめ形成しておいた予備成形体(図2、2P)にシート状素材3を溶着して一体化することにより製造される。すなわち、上記実施形態の合成樹脂成形体1は、筒状部2を有する予備成形体2Pを形成する工程、及び、筒状部2の端面21を覆う形状のシート状素材3を準備する工程、及び予備成形体2Pの筒状部2の端面21にシート状素材3を溶着する工程を含む製造方法により製造することができる。
【0025】
筒状部2を有する予備成形体2Pを形成する工程について説明する。この工程では、射出成形法等の公知の合成樹脂成形方法を利用して、図2に示すような予備成形体2Pを製造する。予備成形体2Pは、筒状部2を有しており、筒状部2の部分は溶着後にそのまま、合成樹脂成形体1の一部(筒状部)となる。
【0026】
予備成形体2Pの筒状部2は環状の端面21を有する。そして、予備成形体2Pの筒状部端面21の幅方向略中央には、筒状部21の中心軸m方向に突出する環状の突条22が形成されている。溶着工程において、この突条22が溶けてシート状素材3と一体化することで溶着が行われ、突条22が図1における溶着部2aとなる。したがって、突条22は形成したい溶着部2aの形態に対応した形状に設けられる。
【0027】
そして、予備成形体2Pの筒状部端面21は、前記突条22よりも内周側21aが、前記突条22よりも外周側21bに対して、筒状部22の奥側から端面に向かう方向に突出するように形成されている。
【0028】
突条22が筒状部の端面21から突出する高さは特に限定されないが、0.5〜3mm程度であることが好ましい。また、突条22は、典型的には、筒状部の中心軸mに沿う方向に突出するよう形成されるが、突条22が筒状部の内側もしくは外側に向かって少し傾いた方向に突出するようにされていてもよい。
【0029】
また、突条22は、突条の頂部が筒状部2の肉厚方向(端面の幅方向)の略中央に位置するように設けられる。突条22の頂部と筒状部2の内周面との間の距離をL、筒状部の肉厚をTとして、0.2≦L/T≦0.8とされることが好ましく、0.4≦L/T≦0.6とされることが特に好ましい。
また、突条22は、筒状部の内周面や外周面から0.5mm以上離れて設けられることが好ましく、1mm以上離れて設けられることが特に好ましい。
【0030】
シート状素材3の準備工程について説明する。
シート状素材3は、所望の特性を有するものを調達し、筒状部の端面を覆いうるような所期の形状に打ち抜き加工するなどして準備すればよい。
【0031】
予備成形体2Pの筒状部2の端面21に、シート状素材3を溶着する工程について説明する。溶着の手段は、超音波溶着であっても良いし、熱盤溶着や赤外線溶着、レーザー溶着であってもよい。ここでは、超音波溶着によって両者を溶着する工程を、例として説明する。
【0032】
図2の形状で製造された予備成形体2Pの端面21(突条22)に対向するように、シート状素材3を載せた状態で、両者を超音波溶着機にセットする。超音波溶着機の振動ホーンHをシート状素材3に当接させ、シート状素材が突条22に対し密着するように押し付けながら、超音波振動をホーンHにより与える。すると、超音波振動により、突条22の部分が加熱されて溶融状態となる。かかる状態で、溶融状態の突条22とシート状素材3とを密着させ、筒状部の中心軸mの方向に押圧する。
【0033】
すると、図3に示すように、シート状素材3と筒状部2の端面の間で、突条22が扁平につぶれながら、シート状素材に一体化し、一体化された状態で冷却することにより、シート状素材3と筒状部2の溶着が完了する。溶着は、シート状素材の表面に筒状部を構成する樹脂が密着する形態であってもよい。シート状素材が布などの多孔質材である場合には、シート状素材が有する空隙や隙間に、溶融した樹脂が入り込んで一体化されることが好ましい。
【0034】
上記実施形態の合成樹脂成形体及び、合成樹脂成形体の製造方法の作用、効果について説明する。
従来技術においては、シート状素材3のしわは、溶着時に発生しやすいが、上記実施形態の合成樹脂成形体及び、合成樹脂成形体の製造方法によれば、シート状素材にしわが発生することが抑制される。
【0035】
上記実施形態の製造方法によれば、溶着時には、図3に示すように、突条22の部分が加熱され、溶融状態となって、振動ホーンHの押圧方向である筒状部中心軸mの方向に押しつぶされていく。
【0036】
溶融状態の突条22が押しつぶされていく際には、突条22は端面の幅方向(図3の左右方向)に広がろうとするが、筒状部2の端面21は、内周側21aが、外周側21bに対して、筒状部の奥側から端面に向かう方向に突出するように、即ち、端面の内周側21aの方が高くなるように形成されているため、突条22は全体的にみて、より外周側に広がりながらつぶれていこうとする傾向を示す。この溶融樹脂の流れを白抜き矢印で図3に示している。
【0037】
このように、溶着工程において、環状の突条22が押しつぶされる際には、突条22の部分の溶融樹脂は内周側から外周側に向かって、即ち、拡径するように流れようとする。そして、シート状素材3は、この樹脂の流れに引っ張られるようになる。したがって、筒状部端面21の内周側21aと外周側21bの高低差によって、溶着時にシート状素材3を拡径方向に引き伸ばすような張力が働く。この張力により、シート状素材がぴんと張られることになって、溶着時のシート状素材のしわ等の発生が抑制される。
【0038】
また、上記実施形態のように、端面21が、筒状部2の中心軸mと直交する面に対し傾斜した錐面となるようにされることによって、筒状部端面21の内周側と外周側の高低差による溶融樹脂の拡径方向の流れがより効果的に実現され、しわ等の発生がより効果的に抑制される。
【0039】
また、図3には、振動ホーンHの先端面が、ホーンの押圧方向(筒状部の中心軸mの方向)と直交する平面状に設けられた例を示しているが、このようにされていることによっても、しわの発生抑制効果をより高めうる。すなわち、シート状素材3は振動ホーンHの先端面に沿った形状で溶着されることになるが、振動ホーンHの先端面が、ホーンの押圧方向と直交する平面状に設けられていると、シート状素材3と筒状部の端面21の間に生ずる隙間も、内周側の方が外周側に比べて狭くなる。そのため、突条22が溶融し押しつぶされる際には、隙間が比較的大きい外周側へと、溶融した樹脂が流れやすくなって、しわの発生抑制効果が高められる。
【0040】
また、筒状部2の端面21において、溶着部2aや突条22は、幅方向のほぼ中央に設けられるが、突条22が押しつぶされて溶着部2aとなった際に、筒状部の内周面や外周面に溶融した樹脂がはみ出さないように、突条22の大きさや幅方向の位置、及び溶着時の押し付けの程度が調節されることが好ましい。しわの発生をより確実に抑制する観点からは、特に、溶融した樹脂が筒状部内周面側にはみ出さないようにすることが好ましい。
【0041】
発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその詳細な説明を省略する。また、これら実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施できる。
【0042】
図4には、第2実施形態の予備成形体4Pの形状を示す。この予備成形体4Pも第1実施形態の予備成形体2Pと同様に、筒状部4にシート状素材3を溶着によって一体化することができ、シート状素材3にしわが発生することが抑制できる。
【0043】
第2実施形態の予備成形体4Pでは、筒状部4の端面に突条42が設けられる点等は同様であり、端面は、溶着部(突条42)よりも内周側41aが、溶着部(突条42)よりも外周側41bに対して、筒状部4の奥側から端面に向かう方向に突出するように形成されている点も同様である。本実施形態の予備成形体4Pでは、内周側端面41aと外周側端面41bとが、両者の間に段差を有するよう形成されている点が第1実施形態とは異なる。本実施形態では、内周側端面41aと外周側端面41bとは、それぞれが、中心軸mと直交する平面とほぼ平行に形成されていて、両者の間に段差Sが設けられている。段差Sの大きさは、特に限定されないが、好ましくは、0.05〜0.5mm程度である。
【0044】
第2実施形態の予備成形体4Pを用いて、シート状素材3との溶着工程を行っても、同様に、シート状素材のしわの発生が抑制される。外周側が低くされた段差Sの存在により、溶着工程で突条42が溶融し押しつぶされる際に、突条42を構成していた溶融樹脂が外周側に向かって流れる傾向が生じ、この流れにより、シート状素材3が外周方向に引っ張られてぴんと張ることになるからである。
【0045】
また、上記溶着工程の説明においては、溶着ホーンの先端面(当接面)が、図3に示したように、筒状部の中心軸mの方向と直角をなす平面と平行に設けられていたが、ホーンの先端形状はこれに限定されない。
【0046】
例えば、ホーンの先端部には、筒状部端面の内外周の高低差に合致する方向にテーパ(傾斜)が与えられていてもよい。このようにされていると、溶着後のシート状素材の外周部が、筒状部端面に対し、より密着するようになるので、製品の外観品質上、好ましい。なお、ホーンの先端部にこのようなテーパが施されている場合であっても、筒状部の端面が、溶着部(突条)よりも内周側が、溶着部(突条)よりも外周側に対し、高くなるように形成されていれば、筒状部端面の内外周の高低差や傾斜によって、突条がつぶされる際に溶融樹脂に外周側に向かう流れが生じ、同様のしわ発生の抑制効果が得られる。
【0047】
また、上記実施形態の説明においては、超音波溶着を例として説明したが、他の溶着方法、例えば、熱盤溶着や赤外線溶着、レーザー溶着等であっても、加熱され溶融状態の突条が押しつぶされる際に、同様の樹脂の流れを生じさせることができ、同様に、しわ発生の抑制効果が得られる。
【0048】
筒状部にシート状素材が溶着された合成樹脂成形体の具体的用途は、特に限定されない。通気性を有するシート状素材を用いれば、例えば、通気性を有する樹脂製キャップ部材として利用できる。あるいは、液密性を有するシート状素材を用いれば、例えば、液密性を有する樹脂製キャップ部材として利用できる。あるいは、メッシュ部材をシート状素材として用いれば、例えば、ストレーナ部材として利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
シート状素材が一体化された筒状部を有する合成樹脂成形体は、例えば、通気性のキャップとして使用でき、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0050】
1 合成樹脂成形体
2 筒状部
21 端面
21a 内周側端面
21b 外周側端面
2a 溶着部
2P 予備成形体
22 突条
3 シート状素材
4P 予備成形体
4 筒状部
41a 内周側端面
41b 外周側端面
42 突条
図1
図2
図3
図4