(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843695
(24)【登録日】2021年2月26日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】橋梁用支承部装置
(51)【国際特許分類】
E01D 19/04 20060101AFI20210308BHJP
【FI】
E01D19/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-89165(P2017-89165)
(22)【出願日】2017年4月28日
(65)【公開番号】特開2018-178678(P2018-178678A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年3月9日
(31)【優先権主張番号】特願2017-73674(P2017-73674)
(32)【優先日】2017年4月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503121088
【氏名又は名称】株式会社ビー・ビー・エム
(73)【特許権者】
【識別番号】391051256
【氏名又は名称】株式会社美和テック
(73)【特許権者】
【識別番号】503121077
【氏名又は名称】株式会社カイモン
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(72)【発明者】
【氏名】合田 裕一
【審査官】
湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】
特許第6091695(JP,B1)
【文献】
特開2011−153483(JP,A)
【文献】
特開2006−207119(JP,A)
【文献】
特開2007−332665(JP,A)
【文献】
特開平08−239808(JP,A)
【文献】
米国特許第04692981(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/04
E01D 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造と下部構造との間に配置される橋梁用支承部装置において、
下部構造に埋設されたアンカーボルトと連結され雌ネジ孔を形成した第1カプラーと、
第1カプラーの上に配置され雌ネジ孔を形成し上端に回転工具係合部を有する第2カプラーと、
支承を固定し固定ボルト用孔を形成したベースプレートと、
ベースプレートに形成した固定ボルト用孔に挿入され第1カプラー及び第2カプラーの雌ネジ孔に螺着される雄ネジが形成されベースプレートと第2カプラーの接合部に対応する位置にレベル2の地震動には耐えそれ以上の地震動で破断するように設定されたノッチを形成した固定ボルトと、
下部構造とベースプレートの一方に固定されるピンと他方に形成されピンの外径より大きな内径を有する空所と、
を備え、
固定ボルト破断後、水平方向の変位に対してピンと空所間の間隙内で下部構造表面とベースプレート下面を移動面として全水平方向に移動可能にすることを特徴とする。橋梁用支承部装置。
【請求項2】
ベースプレートの固定ボルト用孔に第3のカプラーを配置することを特徴とする請求項1に記載の橋梁用支承部装置。
【請求項3】
橋梁用支承部装置を、金属系又はゴム系支承とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の橋梁用支承部装置。
【請求項4】
橋梁用支承部装置が可動支承の場合、ピンと空所間の間隙の距離を、可動支承の移動可能距離より大きく設定することを特徴とする請求項3に記載の橋梁用支承部装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋脚等の下部構造と主桁等の上部構造との間に配置される橋梁用支承部装置に関し、特に、レベル2以上の地震動で下部構造と支承部装置を含む上部構造を分離し、レベル2以上の地震動による下部構造と支承部装置を含む上部構造の損害を軽減し、地震後の橋梁用支承部装置の機能を素早く復元することが可能な橋梁用支承部装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の橋梁用支承部装置は、橋脚等の下部構造と主桁等の上部構造の間に配置され、レベル2の地震動に耐える耐震性能を備えるように設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−216086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の橋梁用支承部装置においては、レベル2以上の地震動が負荷された場合、下部構造及び支承部装置を含む上部構造の双方が大きく損傷し、復元に多くの日数がかかるという問題を有していた。
【0005】
本発明は、従来技術の課題を解決する構造が簡単でレベル2以上の地震動による下部構造と支承部装置を含む上部構造の損害を軽減し、地震後の橋梁用支承部装置の機能を素早く復元することが可能な橋梁用支承部装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の橋梁用支承部装置は、前記課題を解決するために、上部構造と下部構造との間に配置される橋梁用支承部装置において、下部構造に埋設されたアンカーボルトと連結され雌ネジ孔を形成した第1カプラーと、第1カプラーの上に配置され雌ネジ孔を形成し上端に回転工具係合部を有する第2カプラーと、支承を固定し固定ボルト用孔を形成したベースプレートと、ベースプレートに形成した固定ボルト用孔に挿入され第1カプラー及び第2カプラーの雌ネジ孔に螺着される雄ネジが形成されベースプレートと第2カプラーの接合部に対応する位置にレベル2の地震動には耐えそれ以上の地震動で破断するように設定されたノッチを形成した固定ボルトと、下部構造とベースプレートの一方に固定されるピンと他方に形成されピンの外径より大きな内径を有する空所と、を備え、固定ボルト破断後、水平方向の変位に対してピンと空所間の間隙内で下部構造表面とベースプレート下面を移動面として全水平方向に移動可能とすることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の橋梁用支承部装置は、ベースプレートの固定ボルト用孔に第3のカプラーを配置することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の橋梁用支承部装置は、橋梁用支承部装置を、金属系又はゴム系支承とすることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の橋梁用支承部装置は、橋梁用支承部装置が可動の場合、ピンと空所間の間隙の距離を、可動の移動可能距離より大きく設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上部構造と下部構造との間に配置される橋梁用支承部装置において、下部構造に埋設されたアンカーボルトと連結され雌ネジ孔を形成した第1カプラーと、第1カプラーの上に配置され雌ネジ孔を形成し上端に回転工具係合部を有する第2カプラーと、支承を固定し固定ボルト用孔を形成したベースプレートと、ベースプレートに形成した固定ボルト用孔に挿入され第1カプラー及び第2カプラーの雌ネジ孔に螺着される雄ネジが形成されベースプレートと第2カプラーの接合部に対応する位置にレベル2の地震動には耐えそれ以上の地震動で破断するように設定されたノッチを形成した固定ボルトと、下部構造とベースプレートの一方に固定されるピンと他方に形成されピンの外径より大きな内径を有する空所と、を備え、固定ボルト破断後、水平方向の変位に対してピンと空所間の間隙内で下部構造表面とベースプレート下面を移動面として全水平方向に移動可能にすることで、レベル2以上の地震動に対して下部構造及び支承部装置を含む上部構造に過度の負荷を与えることなく分離し、分離後も水平方向の変位に対して移動可能として摩擦減衰により地震エネルギーを吸収し地震動による被害を軽減することが可能となる。
固定ボルト破断後、第2カプラーの回転工具係合部に回転工具を係合して回転させ、第2カプラーと破断した固定ボルトを回収し、金属系、ゴム系支承を載置したベースプレートを新しい第2カプラーと新しい固定ボルトで下部構造に固定することで素早く機能を復元することが可能となる。
ベースプレートの固定ボルト用孔に第3のカプラーを配置することで、固定ボルトのベースプレート部分の耐震性能が向上する。
橋梁用支承部装置を、金属系又はゴム系支承とすることで、どのような形式の橋梁用支承にも適用することが可能となる。
橋梁用支承部装置が可動支承の場合、ピンと空所間の間隙の距離を、可動支承の移動可能距離より大きく設定することで、固定ボルト破断後の大きな水平変位に対して大きくスライドによる摩擦減衰で地震エネルギーを吸収し被害を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)(b)本発明の実施形態を示す図である。
【
図5】(a)(b)本発明の実施形態を示す図である。
【
図6】(a)(b)本発明の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を図により説明する。
図1(a)(b)は、本発明の橋梁用支承部装置1の一実施形態を示す図である。
【0013】
橋梁用支承部装置1は、橋脚等の下部構造2と主桁等の上部構造3との間に設置される。橋梁用支承部装置1は、下部構造2に固定されるベースプレート4にゴム系又は金属系の各種支承が載置される。
図1(a)(b)に示される実施形態では支承をゴム系固定支承5とした場合で説明する。下端をベースプレート4に固定されたせん断拘束部材6が積層ゴム体を貫通して上方に伸びている。
【0014】
せん断拘束部材6の上端には大径部6aが形成され、大径部6aが上部取付部材7に係合し上揚力をストップする。上部取付部材7がセットボルト8で上部構造3に連結される。
【0015】
下部構造2に空所14が形成される。この実施形態では、せん断拘束部材下部のピン17が下部構造2に形成された空所14まで伸びるように形成される。空所14は、
図1(b)に示されるように円形で、円形の空所14の中央にピン17が位置し、ピン17と円形の空所14間には全方向に一定の間隙が形成される。
【0016】
ベースプレート4には、固定ボルト用孔4aが複数形成される。ベースプレート4に形成された固定ボルト用孔4aに対応する下部構造2中に埋設されたアンカーボルト9の上端が第1カプラー10に連結される。
図5(a)(b)に示されるように第1カプラー10には雌ネジ孔10aが形成される。
【0017】
第1カプラー10の上に第2カプラー11をその上端面が下部構造2の表面位置と一致するように設置する。
図6(a)(b)に示されるように第2カプラー11には、第1カプラー10の雌ネジ孔10aの内径と同じ内径の雌ネジ孔11aが形成される。また、第2カプラー11の上端には複数の回転工具係合部11bが形成される。
【0018】
ベースプレート4に形成した固定ボルト用孔4aから固定ボルト12を挿入する。
図7に示されるように、固定ボルト12には、第1カプラー10の雌ネジ孔10a、第2カプラー11の雌ネジ孔11aに螺着される雄ネジ12aが形成される。固定ボルト12のヘッド12cからベースプレート4の厚みより若干長めの位置にノッチ12bが形成される。ノッチ12bは、レベル2の地震動に対しては耐えるように設定され、レベル2以上の地震動が負荷されると破断するように設定されている。
【0019】
図8は、ベースプレート4の固定ボルト用孔4aに第3カプラー18を配置し、地震時の変位により大きな応力が付加される固定ボルト12のノッチ12b上の固定ボルト部分の耐震性を向上させた実施形態を示す。
【0020】
橋梁の耐震性能としてレベル2の地震動に対して耐えるように設定されている。しかし、2011年の東日本大震災のようにそれ以上の地震動が橋梁に負荷された場合、上部構造と下部構造の間に設置される支承部装置が耐震性能を超える大きな変位を伝達する手段として機能し、下部構造及び支承部装置を含む上部構造が大きな損傷を受け、橋梁の復旧に多くの時間が必要になる。
【0021】
本発明の橋梁用支承部装置1は、下部構造2に支承を含む上部構造3を固定する固定ボルト12が、レベル2の地震動には耐え、それ以上の地震動が負荷されると固定ボルト12に形成したノッチ12cの部分で破断する。
【0022】
固定ボルト12の破断後、下部構造2と支承を含む上部構造3が分離された状態で地震動による水平変位が付加されると、下部構造2に形成された空所14とピン17との間隙の範囲内で下部構造2と支承を含む上部構造3が下部構造2表面とベースプレート4下面を移動面として全水平方向に移動し、移動による摩擦減衰により地震エネルギーを吸収し,地震動による被害を軽減する。
【0023】
図9、
図10は、固定ボルト12の破断後の工程を示す図である。固定ボルト12のノッチ12bの部分の破断により、破断した固定ボルト12の雄ネジ12aは、第1カプラー10の雌ネジ孔10aと第2カプラー11のネジ孔11aに螺着された状態で残される。固定ボルト12の破断後の固定ボルト12の上部は、ベースプレート4の固定ボルト用孔4aから簡単に除去できる。
【0024】
第1カプラー10の雌ネジ孔10aと第2カプラー11の雌ネジ孔11aに螺着された状態で残された固定ボルト12の雄ネジ12aを除去するため、第2カプラー11の上端面に形成した回転工具係合部11bに回転工具13を係合し、雄ネジ12aを引き上げる方向に回転すると、第2カプラー11に螺着された雄ネジ12aが第1カプラー10の雌ネジ孔10aとの螺着が解除され、第2カプラー11と一緒に除去される。
【0025】
第2カプラー11と破断した雄ネジ12aを除去した後、新しい第2カプラー11を残った第1カプラー10の上に配置し、弾性支承5を固定したベースプレート4の固定ボルト用孔4aから新しい固定ボルト12を挿入し、固定ボルト12の雄ネジ12aを第2カプラー11の雌ネジ孔11aと第1カプラー10の雌ネジ孔10aに螺着し、支承を含む上部構造3を下部構造2に固定する。
【0026】
本発明の橋梁用支承部装置1によれば、レベル2以上の地震動に対して下部構造2及び支承を含む上部構造3に過度の負荷を与えることなく分離し、固定ボルト12破断後、第2カプラー11の回転工具係合部11bに回転工具13を係合して回転させ、第2カプラー11と破断した固定ボルト12を回収し、支承を載置したベースプレート4を新しい第2カプラー11と新しい固定ボルト12で下部構造2に固定することで素早く機能を復元することが可能となる。
【0027】
図2,
図3、
図4は、
図1の支承と異なる支承とした実施形態を示す。
図2は、ベースプレート4と上部構造3との間に鋼製固定支承15を配置した実施形態を示す。他の構成は
図1に示す実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0028】
図3は、ベースプレート4と上部構造3との間に水平力分散ゴム支承19を配置した実施形態を示す。他の構成は
図1に示す実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0029】
図4は、ベースプレート4と上部構造3との間に鋼製可動支承16を配置した実施形態を示す。この実施形態では、空所14をベースプレート4に形成し、ピン17を下部構造2に固定する。鋼製可動支承16のスライド可能距離lと、ベースプレート4に形成した空所14とピン17の間隙(スライド可能距離)Lとの関係をL>lとし、固定ボルト12の破断後の下部構造2表面とベースプレート4下面をスライド面とした全水平方向スライド距離を大きくし、レベル2以上の地震動の地震エネルギーを摩擦減衰により吸収する。他の構成は
図1に示す実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0030】
図示しないが、橋梁用支承部装置1として、積層ゴムに鉛プラグを挿入した免震支承や、高減衰性ゴムを用いた免震支承にも適用可能である。
【0031】
以上のように、本発明の橋梁用支承部装置1によれば、レベル2以上の地震動に対して下部構造及び支承部装置を含む上部構造に過度の負荷を与えることなく分離し、分離後も水平方向の変位に対してスライド可能として摩擦減衰により地震エネルギーを吸収し地震動による被害を軽減することが可能となる。
【符号の説明】
【0032】
1:橋梁用支承部装置、2:下部構造、3:上部構造、4:ベースプレート、4a:固定ボルト用孔、5:弾性固定支承、6:せん断拘束部材、6a:大径部、7:上部取付部材、8:セットボルト、9:アンカーボルト、10:第1カプラー、10a:雌ネジ孔、11:第2カプラー、11a:雌ネジ孔、11b:回転工具係合部、12:固定ボルト、12a:雄ネジ、12b:ノッチ、12c:ヘッド、13:回転工具、14:空所、15:鋼製固定支承、16:鋼製可動支承,17:ピン、18:第3カプラー、19:水平力分散ゴム支承