特許第6843704号(P6843704)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843704
(24)【登録日】2021年2月26日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】内視鏡におけるワイヤの固定構造
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/008 20060101AFI20210308BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20210308BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   A61B1/008 512
   A61B1/00 717
   G02B23/24 A
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-101809(P2017-101809)
(22)【出願日】2017年5月23日
(65)【公開番号】特開2018-196492(P2018-196492A)
(43)【公開日】2018年12月13日
【審査請求日】2020年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】金子 充
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平5-42098(JP,A)
【文献】 特開2009-213508(JP,A)
【文献】 特開2010-29488(JP,A)
【文献】 特開2016-34352(JP,A)
【文献】 特開2016-116807(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/190011(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00
G02B 23/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内に挿入される挿入部の一部を構成するリング状部材と、
前記リング状部材に形成され、前記リング状部材の周方向に所定の幅を有して前記リング状部材の軸方向に延びる貫通孔と、
前記挿入部の長手方向に延伸されたワイヤと、
前記ワイヤの先端に外嵌されて固定され、前記リング状部材の前記貫通孔における前記幅と略等しい幅を前記周方向に有し、少なくとも一部が前記貫通孔に嵌入され、該貫通孔の内面に溶接される筒状の接続部材と、
前記貫通孔における前記ワイヤが延伸する側の端部に設けられ、前記貫通孔の前記幅及び前記ワイヤの揺動範囲より前記周方向に大きく設定された逃げ溝と、
を具備することを特徴とする内視鏡におけるワイヤの固定構造。
【請求項2】
前記接続部材は、前記リング状部材の内周面側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡におけるワイヤの固定構造。
【請求項3】
前記接続部材は、前記ワイヤの外周に嵌合されてスウェージング加工されることにより前記ワイヤの前記先端に固定されることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡におけるワイヤの固定構造。
【請求項4】
前記接続部材は、前記ワイヤの外周に嵌合される筒状部位がカシメ加工されることにより前記ワイヤの前記先端に固定されることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡におけるワイヤの固定構造。
【請求項5】
前記リング状部材は、前記挿入部における先端近傍に設けられる湾曲部を構成する節輪であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡におけるワイヤの固定構造。
【請求項6】
前記逃げ溝は、前記貫通孔に前記接続部材が溶接された状態において、前記ワイヤが非接触となる大きさに前記周方向に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡におけるワイヤの固定構造。
【請求項7】
前記貫通孔は、該貫通孔に前記接続部材が溶接された状態において、前記ワイヤが延伸する側の端部に前記ワイヤが非接触となる大きさに前記軸方向に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡におけるワイヤの固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体内に挿入される挿入部の一部を構成するリング状部材に形成された貫通孔の内面に、ワイヤの先端に固定された接続部材が溶接された内視鏡におけるワイヤの固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内視鏡は、医療分野及び工業用分野において広く利用されている。内視鏡は、細長い挿入部を被検体内に挿入することにより、被検体内の被検部位の観察や処置等を行うことができる。
【0003】
また、内視鏡の挿入部における先端側に、例えば複数方向に湾曲自在な湾曲部が設けられた構成が周知である。
【0004】
湾曲部は、管路内の屈曲部における挿入部の進行性を向上させる他、挿入部において、湾曲部よりも前方に位置する先端部に設けられた観察光学系の観察方向を可変させる。
【0005】
また、湾曲部は、それぞれ挿入部の長手方向に沿って所定の長さを有するとともに環状の肉部を有する複数のリング状部材である節輪、即ち湾曲駒から構成されている。
【0006】
さらに、挿入部内には、複数の湾曲駒の軸方向に平行な中心軸を挟んで対向するよう長手方向の前後に移動自在であるとともに、複数の湾曲駒の内、最も先端側に位置する第1湾曲駒に先端が固定された1対または2対、即ち2本または4本のワイヤが挿通されている。
【0007】
2本または4本のワイヤのいずれかが内視鏡の操作部から牽引操作されることにより、湾曲部は上下または左右のいずれかの方向、あるいは上下左右のいずれかの方向に湾曲自在となっている。
【0008】
ここで、特許文献1には、ワイヤの先端が、湾曲駒の内周面に直接ロウ付け固定された内視鏡の構成や、レーザー溶接された内視鏡の構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−149307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、湾曲駒の内周面にワイヤの先端を直接ロウ付けやレーザー溶接する手法は、ワイヤの先端の位置決めが難しく、固定作業が難しいといった問題があった。
【0011】
そこで、ワイヤの先端の外周に、接続部材である筒状のパイプをスウェージング等により嵌合し、湾曲駒の環状の肉部に形成された矩形状の貫通孔にパイプの少なくとも一部を嵌入させた状態でレーザー溶接することにより、容易にワイヤの先端を湾曲駒の内周面に位置精度良く固定する手法、構成も周知である。
【0012】
しかしながら、この構成では、パイプをレーザー溶接する際に、ワイヤが貫通孔の後方端部に接触してしまうと、接触に伴う反力により貫通孔に対するパイプの位置がずれてしまい溶接作業が行い難い。
【0013】
さらに、ワイヤを牽引した際、ワイヤの一部が、貫通孔の軸方向に沿った後方端部に接触してしまい、ワイヤが損傷してしまう可能性があった。
【0014】
よって、貫通孔の後方端部を後方に伸ばして、即ち貫通孔を軸方向に長く形成することにより、後方端部に対するワイヤの接触を防ぐ構成も考えられる。
【0015】
ここで、第1湾曲駒の内周面に対する湾曲駒の周方向におけるワイヤの先端の固定位置は、第1湾曲駒よりも後方に位置する第2湾曲駒に設けられるとともにワイヤが挿通される既知のワイヤ受けに対して、第1湾曲駒の内蔵物の配置位置により、周方向にずれて位置している場合が多い。また、長手方向において、第1湾曲駒に固定されたワイヤの先端は、第2湾曲駒に設けられたワイヤ受けから前方に離間して位置している。
【0016】
その結果、ワイヤは、先端が固定された状態においてワイヤの牽引、弛緩に伴いワイヤの先端からワイヤ受けまでの領域が貫通孔に対して揺動してしまう場合がある。
【0017】
このことから、単に貫通孔の後方端部を後方に伸ばしただけでは、ワイヤのこの領域が貫通孔の軸方向に沿った両側端部に接触して擦れてしまい、ワイヤが損傷してしまう可能性があった。
【0018】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、ワイヤの先端を位置精度良く容易にリング状部材に固定できるとともにワイヤの耐久性が向上された構成を具備する内視鏡におけるワイヤの固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため本発明の一態様による内視鏡におけるワイヤの固定構造は、被検体内に挿入される挿入部の一部を構成するリング状部材と、前記リング状部材に形成され、前記リング状部材の周方向に所定の幅を有して前記リング状部材の軸方向に延びる貫通孔と、前記挿入部の長手方向に延伸されたワイヤと、前記ワイヤの先端に外嵌されて固定され、前記リング状部材の前記貫通孔における前記幅と略等しい幅を前記周方向に有し、少なくとも一部が前記貫通孔に嵌入され、該貫通孔の内面に溶接される筒状の接続部材と、前記貫通孔における前記ワイヤが延伸する側の端部に設けられ、前記貫通孔の前記幅及び前記ワイヤの揺動範囲より前記周方向に大きく設定された逃げ溝と、を具備する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ワイヤの先端を位置精度良く容易にリング状部材に固定できるとともにワイヤの耐久性が向上された構成を具備する内視鏡におけるワイヤの固定構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施の形態のワイヤの固定構造を有する内視鏡の部分斜視図
図2図1中のII-II線に沿う内視鏡の挿入部の先端側の部分断面図
図3図2のワイヤ及びワイヤの先端に外嵌された接続部材を拡大して示す部分斜視図
図4図2の第1湾曲駒を、図2中のIV方向からみた平面図
図5図4の第1湾曲駒に形成された貫通孔に、図3の接続部材が溶接された状態を示す平面図
図6図5中のVI-VI線に沿う第1湾曲駒、ワイヤ及び接続部材の部分断面図
図7図5中のVII-VII線に沿う第1湾曲駒、ワイヤ及び接続部材の部分断面図
図8図5のワイヤが周方向に揺動している状態を示す平面図
図9図8の逃げ溝の平面形状が台形状に形成された変形例を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
図1は、本実施の形態のワイヤの固定構造を有する内視鏡の部分斜視図、図2は、図1中のII-II線に沿う内視鏡の挿入部の先端側の部分断面図、図3は、図2のワイヤ及びワイヤの先端に外嵌された接続部材を拡大して示す部分斜視図である。
【0024】
また、図4は、図2の第1湾曲駒を、図2中のIV方向からみた平面図、図5は、図4の第1湾曲駒に形成された貫通孔に、図3の接続部材が溶接された状態を示す平面図、図6は、図5中のVI-VI線に沿う第1湾曲駒、ワイヤ及び接続部材の部分断面図である。
【0025】
さらに、図7は、図5中のVII-VII線に沿う第1湾曲駒、ワイヤ及び接続部材の部分断面図、図8は、図5のワイヤが周方向に揺動している状態を示す平面図である。
【0026】
図1に示すように、内視鏡1は、被検体内に挿入される挿入部2と、該挿入部2の基端に連設された操作部3と、該操作部3から延出されたユニバーサルコード4と、該ユニバーサルコード4の延出端に設けられた図示しないコネクタとを具備して主要部が構成されている。
【0027】
挿入部2は、先端側から順に、先端部2aと、湾曲部2bと、可撓性を有する可撓管部2cとを具備している。
【0028】
操作部3に、例えばL字形状の湾曲操作レバー5と、処置具挿入口等の開口部6と、複数のスイッチ7等が設けられている。
【0029】
湾曲操作レバー5は、操作部3に対して回動自在に軸支されている。湾曲操作レバー5は、湾曲部2bを湾曲操作するために操作者によって回動操作されるものである。
【0030】
湾曲操作レバー5の回動操作に伴い、後述する2本のワイヤ17(図2参照)が牽引弛緩されることにより、本実施の形態においては、湾曲部2bは、上下いずれかの方向に湾曲するよう構成されている。
【0031】
尚、湾曲部2bは、左右いずれかの方向に湾曲するよう構成されていても構わない。また、湾曲部2bは、4本のワイヤを用いて上下左右いずれかの方向に湾曲するよう構成されていても構わない
【0032】
図2に示すように、先端部2aに先端硬質部材10が設けられている。また、先端硬質部材10に、撮像装置8が設けられた第1の貫通孔11と、処置具チャンネルチューブ9が接続された接続パイプ9pが設けられた第2の貫通孔12等が形成されている。撮像装置8からは、信号ケーブル8cが、挿入部2の長手方向Nの後方に延出されている。
【0033】
湾曲部2bは、複数のリング状部材である節輪(以下、湾曲駒と称す)13と、該湾曲駒13の外周を被覆するカバー14とを具備して主要部が構成されている。
【0034】
湾曲駒13は、最も先端側に位置する第1湾曲駒15と、該第1湾曲駒よりも後方に位置する第2湾曲駒16と、該第1湾曲駒よりも後方に位置する複数の湾曲駒16´とが長手方向Nに沿って、該長手方向Nにおいて隣り合う湾曲駒同士が上下(UD)方向に回動自在となるよう接続されて構成されている。
【0035】
挿入部2及び操作部3内に、長手方向Nに延伸されるとともに、先端が第1湾曲駒15に固定され、基端が操作部3内において湾曲操作レバー5の図示しない牽引機構に固定された2本のワイヤ17が、湾曲駒13の周方向Sにおいて略180°ずれて挿通されている。
【0036】
尚、以下、説明を簡略化するため、ワイヤ17と記載するものやワイヤ17に関連するものは、全て2本のワイヤ17に適用されているものとする。
【0037】
第2湾曲駒16、その他の湾曲駒16´に、長手方向Nに延伸されたワイヤ17が挿通されるとともにワイヤ17を保持することによりワイヤ17の周方向Sの位置を規定するワイヤ受け18、18´がそれぞれ設けられている。
【0038】
尚、ワイヤ受け18、18´は、後述する湾曲駒13の中心軸Cと周方向Sの位置が一致する第2湾曲駒16、その他の湾曲駒16´の位置に設けられている。
【0039】
また、図2図3に示すように、ワイヤ17の先端に、筒状の接続部材であるパイプ20が外嵌されて固定されている。尚、パイプ20は、図5に示すように、周方向Sに幅S2を有している。
【0040】
パイプ20は、ワイヤ17の先端に対し、該ワイヤ17の外周17g(図6参照)に嵌合されてスウェージング加工されることにより固定されている。
【0041】
尚、パイプ20は、ワイヤ17の先端に対し、該ワイヤ17に嵌合される筒状部位がカシメ加工されることにより固定されていても構わないし、その他の手法によって固定されていても構わない。
【0042】
また、図4図6に示すように、第1湾曲駒15の外周を構成する環状の肉部に、周方向Sに所定の幅S1を有し、湾曲駒13の軸方向Jに所定の長さJ1延びるよう形成された貫通孔50が、略180°ずれて2つ形成されている。尚、軸方向Jは、長手方向Nと平行である。
【0043】
また、以下、説明を簡略化するため、貫通孔50と記載するものや貫通孔50に関連するものは、全て2つの貫通孔50に適用されているものとする。
【0044】
貫通孔50の幅S1は、パイプ20の幅S2と略等しく形成されている(S1■S2)。また、貫通孔50は、軸方向Jにおいて、図4図7に示すようにJ1の長さに形成されている。尚、長さJ1は、幅S1よりも大きい(J1>S1)ことから、貫通孔50は、平面形状が軸方向Jに長い矩形状に形成されている。
【0045】
さらに、貫通孔50は、図4に示すように、周方向Sにおいて、湾曲駒13の中心軸Cから周方向SにS3だけずれた位置に形成されている。
【0046】
貫通孔50は、図5図6に示すように、パイプ20の少なくとも一部が嵌入されて、第1湾曲駒15の外周面15g側からレーザー光Lが照射されることにより、内面50nにパイプ20が溶接されるものである。尚、パイプ20は、固定後、第1湾曲駒15の内周面15n側に配置される。
【0047】
その結果、貫通孔50にパイプ20が固定されることにより、ワイヤ17の先端は、第1湾曲駒15の内周面15nに固定される。
【0048】
尚、貫通孔50の軸方向Jの長さJ1は、貫通孔50にパイプ20が溶接されて固定された状態において、図7に示すように、ワイヤ17が延伸する側の端部、即ち軸方向Jの後端部50tに、ワイヤ17の後述する部位17wが非接触となる大きさに設定されている。
【0049】
このことにより、貫通孔50にパイプ20を固定する作業の際、ワイヤ17の部位17wが後端部50tに接触することに伴う反力により、パイプ20が貫通孔50からずれてしまうことも防止することができる。
【0050】
また、第1湾曲駒15において、貫通孔50における後端部50tに、貫通孔50よりも周方向Sの幅S4が大きく(S4>S1)、図8に示すように、ワイヤ17の揺動範囲Yよりも大きく設定された逃げ溝51が形成されている。
【0051】
貫通孔50にパイプ20が溶接されて固定された状態において、湾曲部2bを湾曲させるため、湾曲操作レバー5の回動操作によりワイヤ17が牽引弛緩された際、第1湾曲駒15に対するパイプ20の固定位置が、第2湾曲駒16に設けられたワイヤ受け18から長手方向Nの前方に離れて位置していることと、上述したように、貫通孔50が周方向Sにワイヤ受け18、18´が位置する中心軸CからS3だけずれて形成されていることにより、図8に示すように、ワイヤ17のパイプ20〜ワイヤ受け18までの部位17wは、周方向Sに揺動してしまう。
【0052】
逃げ溝51は、部位17wの揺動に伴い、この部位17wが貫通孔50の軸方向Jに沿った両側端部50vに非接触となる大きさに、周方向Sに、例えば平面形状が矩形状に形成されている。
【0053】
具体的には、逃げ溝51の幅S4は、上述した貫通孔50のズレ量S3よりも大きく形成されている。
【0054】
尚、逃げ溝51は、上述したように両側端部50vに対する部位17wの接触を防ぐものであることから、貫通孔である必要はなく、内周面15nから外周面15gに向かって凹んで形成されていれば良い。勿論、逃げ溝51も貫通孔から形成されていても構わない。
【0055】
その他の、内視鏡1の構成は、従来と同じであるため、説明は省略する。
【0056】
このように、本実施の形態においては、第1湾曲駒15の外周を構成する環状の肉部に、周方向Sにパイプ20の幅S2と略等しい所定の幅S1を有し、湾曲駒13の軸方向Jに所定の長さJ1延びるよう形成された貫通孔50が形成されていると示した。
【0057】
また、貫通孔50の軸方向Jの長さJ1は、貫通孔50にパイプ20が溶接されて固定された状態において、図7に示すように、貫通孔50の後端部50tに、ワイヤ17の部位17wが非接触となる大きさに設定されていると示した。
【0058】
さらに、第1湾曲駒15において、貫通孔50における後端部50tに、貫通孔50よりも周方向Sの幅S4が大きく(S4>S1)、ワイヤ17の揺動範囲Yよりも大きく設定された平面形状が矩形状の逃げ溝51が形成されていると示した。また、幅S4は、貫通孔50のズレ量S3よりも大きく形成されていると示した。
【0059】
このことによれば、貫通孔50にパイプ20を固定する作業の際、ワイヤ17の部位17wが後端部50tに接触することに伴う反力によりパイプ20が貫通孔50からずれてしまうことを防止することができるため、固定位置がばらつくことなく位置精度良くパイプ20を固定することができる。
【0060】
また、貫通孔50にパイプ20が溶接されて固定された状態において、湾曲部2bを湾曲させるため、湾曲操作レバー5の回動操作によりワイヤ17が牽引弛緩された際、部位17wが後端部50tに接触して損傷してしまうことを防止することができる。
【0061】
さらに、貫通孔50にパイプ20が溶接されて固定された状態において、湾曲部2bを湾曲させるため、湾曲操作レバー5の回動操作によりワイヤ17が牽引弛緩された際、図8に示すように、ワイヤ17のパイプ20〜ワイヤ受け18までの部位17wは、周方向Sに揺動してしまうが、逃げ溝51は、上述した大きさに形成されていることから、揺動範囲Yやズレ量S3を吸収するため、部位17wの揺動に伴い、該部位17wが両側端部50vに接触して擦れて損傷してしまうことを防止することができる。
【0062】
以上から、ワイヤ17の先端を位置精度良く容易に第1湾曲駒15に固定できるとともにワイヤ17の耐久性が向上された構成を具備する内視鏡におけるワイヤの固定構造を提供することができる。
【0063】
尚、以下、変形例を、図9を用いて示す。図9は、図8の逃げ溝の平面形状が台形状に形成された変形例を示す平面図である。
【0064】
図9に示すように、逃げ溝51は、ワイヤ17の揺動範囲Yよりも大きく設定され、両側端部50vにワイヤ17が非接触となる形状であれば、平面形状は、台形に形成されていても構わない。
【0065】
さらには、加工上、形成しやすい形状かつ、ワイヤ17の揺動範囲Yよりも大きく設定され両側端部50vにワイヤ17が非接触となる形状であれば、平面形状はどのような形状であっても構わない。
【符号の説明】
【0066】
1…内視鏡
2…挿入部
2b…湾曲部
13…湾曲駒(節輪)(リング状部材)
15…第1湾曲駒(節輪)(リング状部材)
15n…内周面
16…第2湾曲駒(節輪)(リング状部材)
16´…湾曲駒(節輪)(リング状部材)
17…ワイヤ
17g…ワイヤの外周
20…パイプ(接続部材)
50…貫通孔
50n…内面
50t…後端部(端部)
51…逃げ溝
J…軸方向
N…長手方向
S…周方向
S1…貫通孔の幅
S2…パイプの幅
Y…揺動範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9