(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843711
(24)【登録日】2021年2月26日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】ラジアルタービンロータおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
F02B 39/00 20060101AFI20210308BHJP
F04D 29/28 20060101ALI20210308BHJP
F01D 5/04 20060101ALI20210308BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20210308BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20210308BHJP
F04D 25/04 20060101ALI20210308BHJP
F04D 17/10 20060101ALN20210308BHJP
【FI】
F02B39/00 Q
F04D29/28 R
F01D5/04
F02C7/00 D
F01D25/00 X
F01D25/00 F
F04D25/04
!F04D17/10
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-139762(P2017-139762)
(22)【出願日】2017年7月19日
(65)【公開番号】特開2018-13127(P2018-13127A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2019年12月18日
(31)【優先権主張番号】10 2016 213 238.5
(32)【優先日】2016年7月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー
【氏名又は名称原語表記】MAN ENERGY SOLUTIONS SE
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クラウディウス・ヴルム
【審査官】
家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−349296(JP,A)
【文献】
特開2016−037901(JP,A)
【文献】
特開昭56−020705(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第103567384(CN,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0072404(US,A1)
【文献】
特開昭61−215401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 39/00
F01D 5/02
F02C 7/00
F04D 29/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータベース本体(11)と、
該ロータベース本体(11)と一体に形成されたブレード(12)と、
を具備したラジアルタービンロータ(10)において、
前記ロータベース本体(11)は、キャビティ構造(13)を備えており、
2μm〜10μmの間にある所定の平均粗さ(Ra)が、前記キャビティ構造(13)の内面(19)に設定されており、前記ブレード(12)の流れ誘導面の平均粗さとは異なっていることを特徴とするラジアルタービンロータ。
【請求項2】
前記キャビティ構造(13)は、1つ以上のキャビティを備えていることを特徴とする請求項1に記載のラジアルタービンロータ。
【請求項3】
前記キャビティ構造(13)は、少なくとも1つのウェブ(14)により補強されていることを特徴とする請求項1または2に記載のラジアルタービンロータ。
【請求項4】
開口部(17、18)が、流れ誘導面の外側の前記ロータベース本体(11)の前側(15)および/または後側(16)に形成され、前記開口部を通じて、前記キャビティ構造(13)は外部からアクセス可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のラジアルタービンロータ。
【請求項5】
前記ラジアルタービンロータは、付加製造方法を利用した単体部品として製造されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のラジアルタービンロータ(10)を製造するための方法。
【請求項6】
前記付加製造方法の際に生じた残留物は、開口部(17、18)を通じて前記キャビティ構造(13)から排出されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
所定の平均粗さ(Ra)は、前記キャビティ構造(13)の内面(19)において開口部(17、18)を利用して設定されていることを特徴とする請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記所定の平均粗さ(Ra)は、機械的方法および/または物理化学的方法を利用して設定されていることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジアルタービンロータおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、先行技術より公知のラジアルタービンロータ1の断面を示している。ラジアルタービンロータ1は、ロータベース本体2、およびロータベース本体2に一体的に形成された複数のブレード3を備えている。ブレード3は、吸引側および圧力側として形成された面を備え、これらの面は流れの誘導に寄与している。技術的に公知のラジアルタービンロータにおいては、ラジアルタービンロータ1のロータベース本体2は、中実の部品として実施されている。一体的に形成されたブレード3を備えたそのようなロータベース本体2は鋳造により、特に精密鋳造法により好適に製造されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここから進んで、本発明は新規のラジアルタービンロータおよびその製造方法を提供する課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、請求項1によるラジアルタービンロータにより解決されている。本発明によれば、ロータベース本体はキャビティ構造を備えている。
【0005】
本発明によるラジアルタービンロータのロータベース本体は、中空構造である。そのような中空構造のために、ラジアルタービンロータの重量は、従来技術より公知のラジアルタービンロータと比較して、減少されることが可能である。
【0006】
より軽量なラジアルタービンロータは、際立ってより急速に加速および減速されることが可能である。これにより、ラジアルタービンロータまたはラジアルタービンロータを備えた個々のタービンの動力学は、際立って改善され得る。ラジアルタービンロータが排気ガスターボ過給機の構成部品である場合に、このことは有利である。より軽量なラジアルタービンロータは、ラジアルタービンロータの軸受の、より有益に精密なデザインをさらに許容する。さらに、タービンの所謂汚染保護が目的とされており、ラジアルタービンロータの爆発の場合、その破片が周囲環境に到達することを防止することが、問題をより少なくしている。より軽量なラジアルタービンロータにより、その爆発の場合に、緩和されるべきエネルギはより少なくなり、それにより汚染保護は、より単純に且つより有益なコストで実施され得る。
【0007】
本発明のさらなる有利な発展によれば、キャビティ構造は少なくとも1つのウェブを用いて補強されている。これにより、重量の減少にかかわらず、最適に適合されたラジアルタービンロータの剛性が提供され得る。
【0008】
本発明のさらなる有利な発展によれば、流れ誘導面の外側のロータベース本体の前側および/または後側には、開口部が形成されており、この開口部を通じて、キャビティ構造は外部からアクセス可能である。これらの開口部は、一方ではラジアルタービンロータの簡素な製造性を保証し、さらにこれらの開口部は、キャビティの内面の所定の粗さの設定に寄与している。
【0009】
本発明のさらなる有利な発展によれば、所定の平均粗さRaは、キャビティ構造の内面に設定され、この粗さは2
μm〜10
μmの間である。キャビティ構造の内面のこの平均粗さRaは、ブレードの流れ誘導面の平均粗さRaとは異なっており、ラジアルタービンロータに最適な実運転特性を与えることに関して特に好適である。
【0010】
本発明によるラジアルタービンロータの製造方法は、請求項6に定義されている。
【0011】
本発明の好適なさらなる発展は、従属請求項おおよび以下の記載から明確になるだろう。本発明の例示的実施形態は、本願に、制限されることなく図を用いてさらに詳細に説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】先行技術によるラジアルタービンロータの断面を示した図である。
【
図2】本発明による第1ラジアルタービンロータの断面を示した図である。
【
図3】本発明による第2ラジアルタービンロータの断面を示した図である。
【
図4】本発明による第3ラジアルタービンロータの断面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明はラジアルタービンロータ、特にターボ過給機のためのラジアルタービンロータに関する。本発明はさらに、そのようなラジアルタービンロータの製造方法に関する。
【0014】
図2は、本発明によるラジアルタービンロータ10の断面を示している。ラジアルタービンロータ10は、ロータベース本体11、およびロータベース本体11に一体的に形成された複数のブレード12を備えている。ここに示された発明の意向においては、キャビティ構造13がラジアルタービンロータ10のロータベース本体11に導入されている。このキャビティ構造13は単一キャビティによって、またはウェブもしくは分割壁により互いに離間された複数のキャビティによって形成され得る。
【0015】
図3は、本発明によるさらなるラジアルタービンロータ10の断面を示しており、
図3においては、キャビティ構造13は、軸方向に延びたウェブ14により補強されている。このウェブ14は、
図3においては、本発明によるラジアルタービンロータ10のロータベース本体11の前側15と後側16との間で、軸方向に延びている。
【0016】
追加的にまたは代替的に、ウェブ14は軸方向に延び、さらにウェブはキャビティ構造13を補強しており、キャビティ構造は横方向に、特にウェブ14に直交して展開することが可能である。
【0017】
図4の例示的実施形態においては、ラジアルタービンロータ10が図示されており、ロータベース本体11の前側15の領域および後側16の領域において、非流れ誘導面に開口部17、18が形成されており、したがって、非流れ誘導面の外側に、キャビティ構造13は開口部を介して内部からアクセス可能である。そのような開口部17、18は、本発明によるラジアルタービンロータ10の製造または個々の生産に関連して利点を備えている。
【0018】
本発明の好適な実施形態によれば、所定の粗さがキャビティ構造13の内面19に設定されており、平均粗さRaは2
μm〜10
μmの間である。
【0019】
本発明はさらに、そのようなラジアルタービンロータ10の製造方法に関する。ロータベース本体11は、ロータベース本体11と一体的に形成されたブレード12およびキャビティ構造13の構成と一体に製造されており、
図4においては、モノリシック部品としての生成的製造方法(generative manufacturing method)を介して開口部17、18の構成と共に製造されており、生成的製造方法は、付加的製造方法(additive manufacturing method)としても指定されている。
【0020】
生成的製造方法において生じた残留物、例えば粉体層の残留粒子は、生成的製造方法の間にキャビティ構造13内に収集され、開口部17、18を介してキャビティ構造13から排出されることが可能である。開口部17、18は、材料特性を試験するためのまたは個々に品質管理を実行するための、検査開口部として使用されることも可能である。開口部17、18は、検査の後に再度閉じられることも可能である。
【0021】
さらに、開口部17、18は、キャビティ構造13の内面19の所定の平均粗さRaを引き続き設定することに適している。したがって、粗さは機械的方法を利用して、例えばスライド研削を通じて設定されることが可能であり、そのとき、研磨体は開口部17、18を介してキャビティ構造13の内部および外部に誘導される。さらに、粗さは物理化学的方法を利用して設定されることが可能であり、その方法においては、キャビティ構造13の内面19の平均粗さを設定するために、液状媒体が開口部17を介してキャビティ構造13内に誘導され、且つそこから外部に誘導される。
【0022】
したがって本発明はラジアルタービンロータ10を提案しており、そのロータベース本体11はキャビティ構造13を備えている。ここで、キャビティ構造13は、少なくとも1つのウェブ14を利用して補強されることが可能である。ラジアルタービンロータ10の非流れ誘導面の開口部17、18は、ここを介してキャビティ構造13が外部からアクセス可能とされており、それらの開口部は残留物の排除に、およびキャビティ構造13の内面の所定の粗さを設定に寄与している。
【符号の説明】
【0023】
1 ・・・ラジアルタービンロータ
2 ・・・ロータベース本体
3 ・・・ブレード
10 ・・・ラジアルタービンロータ
11 ・・・ロータベース本体
12 ・・・ブレード
13 ・・・キャビティ構造
14 ・・・ウェブ
15 ・・・前側
16 ・・・後側
17 ・・・開口部
18 ・・・開口部
19 ・・・内面