特許第6843713号(P6843713)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843713
(24)【登録日】2021年2月26日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】缶成形装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 51/26 20060101AFI20210308BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20210308BHJP
   B23D 79/00 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   B21D51/26 K
   B23Q11/00 M
   B23D79/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-160417(P2017-160417)
(22)【出願日】2017年8月23日
(65)【公開番号】特開2019-37998(P2019-37998A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2020年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】ユニバーサル製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】松尾 昭二
(72)【発明者】
【氏名】大瀬 徹也
【審査官】 石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−329423(JP,A)
【文献】 特開2007−307622(JP,A)
【文献】 特開平6−71539(JP,A)
【文献】 特開2010−110873(JP,A)
【文献】 実開昭55−66720(JP,U)
【文献】 特開2009−148834(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/346154(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 51/26
B23D 79/00
B23Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶体を着脱可能に保持する多数の缶体保持部を一面側に円環状に配列してなり、中心軸回りで回動可能なターンテーブルと、該ターンテーブルに対向するように配され、缶体を成形する成形具を一面側に円環状に配列してなり、前記中心軸の軸線方向に沿って往復動可能なダイテーブルと、前記缶体の前記成形具による加工で生じた切削片を吸引除去する吸引機構と、を備えた缶成形装置であって、
前記吸引機構は、吸引装置と、一端が前記吸引装置に接続されるメインバキュームダクトと、前記メインバキュームダクトから分岐し、前記ダイテーブルの往復動に追従可能な伸縮部を備えた第1サブバキュームダクトと、を有し、
前記第1サブバキュームダクトは、前記成形具のうち前記缶体の開口端を切削する切削加工具まで延び、かつ、少なくとも2つ以上の分割体に分割可能にするジョイント部を備えていることを特徴とする缶成形装置。
【請求項2】
前記メインバキュームダクトは、前記ダイテーブルの近傍において上下方向に延びるように配されていることを特徴とする請求項1記載の缶成形装置。
【請求項3】
前記メインバキュームダクトから分岐し、前記成形具に向けて延びる1つないし複数の第2サブバキュームダクトを備えたことを特徴とする請求項1または2記載の缶成形装置。
【請求項4】
前記切削加工具は、前記ダイテーブルの鉛直方向の下部に配され、前記第1サブバキュームダクトは、前記ダイテーブルよりも下側から前記切削加工具に向けて上方に屈曲して延びる屈曲部を有することを特徴とする請求項1ないし3いずれか一項記載の缶成形装置。
【請求項5】
前記ジョイント部は前記第1サブバキュームダクトの2か所に形成され、前記第1サブバキュームダクトは3つの前記分割体に分割可能にされることを特徴とする請求項1ないし4いずれか一項記載の缶成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、缶成形装置において成形時に生じる切削片の除去に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲料等の内容物が充填、密封される缶体として、缶胴(ウォール)と缶底(ボトム)を有する有底筒状の缶体と、該缶体の開口端部にネジキャップが螺着されたボトル缶が知られている。こうしたボトル缶の缶体は、上部がくびれるように斜めに絞られ、開口端部側にはネジキャップを螺着するためのネジ溝が設けられている。
【0003】
このようなボトル缶を製造する際には、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金製の金属板をカップ形状に絞り加工(Drawing)したもの(缶基材)を、缶成形装置を用いて再絞りと側壁を数段階のしごき加工(Ironing)で引き伸ばす。こうして得られた缶体の高さをトリミング加工により整えた後、缶体の周面にプリントを行う。その後、缶体の開口端側の絞り加工を行うネッキング工程を経て、ボトル缶が製造される。
【0004】
こうしたボトル缶の製造において、ネッキング工程に用いられる缶成形装置であるボトルネッカーは、缶体の底部側を支持する缶体保持部を多数、円環状に配列させたターンテーブルを回転させる。そして、それぞれの缶体保持部に対向するように、ダイテーブルに円環状に多数配列されたネッキング金型を、缶体保持部に保持された缶体の開口端側に順番に押し付けて、段階的に絞り加工を行うものである(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
このようなボトルネッカーでは、缶体の開口端側の絞り加工を行った後、絞り加工によって缶軸方向の高さが不揃いとなった開口端をトリミングツールによってカットし、一定の高さにする。その後、トリミングした開口端を外方に丸めたカール部を形成してボトル缶の缶体が完成する。
【0006】
従来、ボトルネッカーにおいて缶体の開口端のトリミングを行う際には、切削によって生じた切削片の飛散を防止するために、バキューム装置などによって切削片を吸引、除去している。例えば、特許文献2には、吸引流路に接続され、切削バイトを覆う吸引ダクトを備えたトリミング装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−126266号公報
【特許文献2】特開2009−148834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のトリミングツール(切削加工具)を備えたボトルネッカーは、吸引手段からダイテーブルに配されたトリミングツールに向けて延びる吸引ダクトによって、トリミングツールの前段側に配置された成形具が塞がれた状態になっていた。このため、例えば、頻繁にメンテナンスを行う必要のあるネジ形成ツールなど、トリミングツールの前段側にある成形具が、吸引ダクトに塞がれてメンテナンス性が大きく低下するという課題があった。また、この吸引ダクトは、全体が一続きで一体に形成されていたために大変重く、その着脱には複数の作業者が必要になるなど、作業性が悪いという課題があった。
【0009】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、ダイテーブルに配された成形具のうち、切削片を吸引するバキュームダクトに接続された切削加工具の前段側に配置された成形具のメンテナンス性を高めることが可能な缶成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の缶成形装置は、缶体を着脱可能に保持する多数の缶体保持部を一面側に円環状に配列してなり、中心軸回りで回動可能なターンテーブルと、該ターンテーブルに対向するように配され、缶体を成形する成形具を一面側に円環状に配列してなり、前記中心軸の軸線方向に沿って往復動可能なダイテーブルと、前記缶体の前記成形具による加工で生じた切削片を吸引除去する吸引機構と、を備えた缶成形装置であって、前記吸引機構は、吸引装置と、一端が前記吸引装置に接続されるメインバキュームダクトと、前記メインバキュームダクトから分岐し、前記ダイテーブルの往復動に追従可能な伸縮部を備えた第1サブバキュームダクトと、を有し、前記第1サブバキュームダクトは、前記成形具のうち前記缶体の開口端を切削する切削加工具まで延び、かつ、少なくとも2つ以上の分割体に分割可能にするジョイント部を備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明の缶成形装置によれば、吸引機構を構成する第1サブバキュームダクトにジョイント部を形成して複数の分割体に分割可能にすることによって、成形具のメンテナンス時に第1サブバキュームダクトを分割して取り除き、ダイテーブルの下側を広く空けることができる。これにより、例えば高頻度にメンテナンスを必要とする、切削加工具の前段側にある成形具に対して、作業者がダイテーブルの外側から第1サブバキュームダクトに煩わされることなく容易にメンテナンス作業を行うことが可能になる。
【0012】
また、本発明では、前記メインバキュームダクトは、前記ダイテーブルの近傍において上下方向に延びるように配されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明では、前記メインバキュームダクトから分岐し、前記成形具に向けて延びる1つないし複数の第2サブバキュームダクトを備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明では、前記切削加工具は、前記ダイテーブルの鉛直方向の下部に配され、前記第1サブバキュームダクトは、前記ダイテーブルよりも下側から前記切削加工具に向けて上方に屈曲して延びる屈曲部を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明では、前記ジョイント部は前記第1サブバキュームダクトの2か所に形成され、前記第1サブバキュームダクトは3つの前記分割体に分割可能にされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ダイテーブルに配された成形具のうち、切削片を吸引するバキュームダクトに接続された切削加工具の前段側に配置された成形具のメンテナンス性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ボトル缶の製造工程を段階的に示したフローチャートである。
図2】各工程における缶体形状の変化を示す模式図である。
図3】缶成形装置(ボトルネッカー)を示す外観斜視図である。
図4】缶成形装置(ボトルネッカー)を示す平面図である。
図5】ダイテーブルおよび吸引機構の要部を示す要部拡大平面図である。
図6】成形具の一例であるトリミングツール(切削加工具)を示す要部拡大断面図である。
図7】ダイテーブルおよび吸引機構の要部を示す要部拡大平面図である。
図8】第1サブバキュームダクトに形成された伸縮部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態の缶成形装置について説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0019】
まず最初に、缶体の一例であるボトル缶の製造工程の一連の流れを説明する。
図1は、ボトル缶の製造工程の一例を段階的に示したフローチャートである。図2は、各工程における缶体形状の変化を示す模式図である。
ボトル缶は、板材打ち抜き工程S1、カッピング工程(絞り工程)S2、絞りしごき工程S3、第1トリミング工程S4、印刷・塗装(缶外面)工程S5、塗装(缶内面)工程S6、ネッキング工程S7、ネジ成形工程S8、第2トリミング工程S9、カール工程S10をこの順に経て、製缶される。
【0020】
板材打ち抜き工程S1では、例えば、Al合金材料からなる圧延材を打ち抜いて、図2(a)に示されるような、円板状の板材(ブランク)Wを成形する(打ち抜き加工する)。カッピング工程(絞り工程)S2では、図2(b)に示されるように、板材Wをカッピングプレスによって絞り加工(カッピング加工)して、カップ状体(缶基材)W1に成形する。絞りしごき工程S3では、絞りしごき加工装置によって、図2(c)に示されるように、カップ状体W1に再絞りしごき加工を施して、缶胴11と缶底9とが一体の有底筒状の缶体W2を成形する。
【0021】
第1トリミング工程S4では、缶体W2の開口端部11aの高さが不均一であるため、トリミング装置を用いて開口端部11aのトリミング加工を行ない、図2(d)に示すような、缶胴11の開口端部11aの高さが全周にわたって均等に揃えられた、トリミング加工後の缶体W3を成形する。
【0022】
この後、缶体W3を洗浄して潤滑油等を除去した後に、表面処理を施して乾燥し、次いで、図2(e)に示すように、缶体W3の外面側の印刷および塗装を行い(印刷・塗装(缶外面)工程S5)、その後、缶体W3の内面側の塗装を行う(塗装(缶内面)工程S6)。
【0023】
次に、ボトルネッカーのネック成形金型を用いて、缶胴11の開口端部11a側に、滑らかに傾斜するようにくびれた形状をなすネック部12を成形する(ネッキング工程S7)。更に、ネック部12の開口端部に、回転加工ツール(成形具)を用いて、キャップの形状に合わせたネジ溝13(図2(g)を参照)がネック部12に設けられる(ネジ成形工程S8)。そして、トリミングツール(成形具)を用いて、ネジ成形などで生じた高さの不均一な開口端部11bのトリミング加工を行ない(第2トリミング工程S9)、高さが全周にわたって均等に揃えられた開口端部11cを形成する(図2(h)を参照)。その後、このトリミングを行った開口端部11cをカール金型(成形具)で外方にカールさせる(カール工程S10)。こうした工程を経て、缶胴11の一方に、くびれたネック部12を有する缶体(ボトル缶)10が製造される。
以下の実施形態の缶成形装置は、こうしたネッキング工程S7からカール工程S10に至る各工程を成形具によって行うボトルネッカー(ネッキング加工装置)である。
【0024】
以上のような各工程を経て得られた缶体(ボトル缶)10は、その後、内部に飲料等の内容物が充填され、更にネジ溝13と嵌合してネック部12の開口を覆うキャップが取り付けられ、缶体10の内部が密封される。
【0025】
図3は、本発明の一実施形態の缶成形装置(ボトルネッカー)を示す外観斜視図である。また、図4は、缶成形装置を一方の側面から見た時の平面図である。
缶成形装置(ボトルネッカー)20は、例えば、前述したネッキング工程S7からカール工程S10までの各工程を行うために用いられ、本体部21と、この本体部21のテーブル軸TA回りで回動可能に設けられたターンテーブル23と、このターンテーブル23に対向するように配されたダイテーブル24とを備えている。
また、缶成形装置20には、ダイテーブル24の特定の成形具40で生じた切削片を吸引除去するための吸引機構50が設けられている。
【0026】
本体部21は、ターンテーブル23やダイテーブル24を支持する。この本体部21には、ターンテーブル23をテーブル軸TA回りで回動させる回動機構(図示略)や、ダイテーブル24をテーブル軸TAの軸線に沿って所定幅で往復動させる往復動機構(図示略)が設けられている。
【0027】
ターンテーブル23は、例えばリング状の平板を備えたテーブル本体(基材)23Aの一面側23aに、缶体のボトム部分を保持可能な多数の缶体保持部31が円環状に配列されたものからなる。このターンテーブル23は、本体部21に設けられたインデックス(図示略)によって回動可能に支持され、テーブル軸TA周りを間欠的に回動する。本実施形態では、ターンテーブル23は、図3中の反時計回り方向Qに回動する。
【0028】
ダイテーブル24は、例えばリング状を成すテーブル本体24Aのうち、ターンテーブル23に対向する一面側24aに、多数の成形具40が円環状に配列されたものからなる。
【0029】
ダイテーブル24は、本体部21に設けられた往復動機構(図示略)によって、テーブル軸TAに沿ってターンテーブル23に対して、所定の幅で接近移動と離間移動とを繰り返す。そして、この接近移動と離間移動からなる1ストローク(往復動)完了後の、次の1ストローク開始前に、ターンテーブル23が、周方向に沿って所定量、例えば対向するダイテーブル24の成形具1つ分だけ、反時計回り方向Qに回動する。
【0030】
そして、ダイテーブル24とターンテーブル23とが接近離間する1ストローク毎に、缶体保持部31によってボトム部分が保持された缶体W3の開口端側が成形具40によって形状加工される。
【0031】
図5は、ダイテーブルを示す要部拡大平面図である。
本実施形態において、ダイテーブル24のテーブル本体24Aは、円板状又は円形リング状を成している。詳しくは、ダイテーブル24は、本体部21の連結軸29(図3,4参照)に連結される内リング体41と、内リング体41に対してテーブル径方向の外側に同軸に配置される外リング体42と、これらの内リング体41と外リング体42どうしをテーブル径方向に接続するとともに、テーブル周方向に互いに間隔をあけて配置される複数のリブ43と、を備えている。
【0032】
ダイテーブル24の外リング体42には、成形具40が周方向に沿って複数配設される。こうした成形具40をダイテーブル24に取り付けるために、外リング体42には、取付孔45がテーブル周方向に沿って複数設けられている。複数の成形具40は、缶体への加工順にこれらの取付孔45に取り付け可能とされている。
【0033】
複数の成形具40には、ダイ加工ツール(ネック成形金型)48と、回転加工ツール49と、が含まれている。本実施形態では、ダイテーブル24の複数の取付孔45に、多数のダイ加工ツール48と、複数の回転加工ツール49とが、缶体への加工順に着脱可能に配設されている。なお、複数の取付孔45のうち、いくつかは成形具40が取り付けられない空きスペースとされていてもよい。
【0034】
ダイ加工ツール48は、缶に対して缶軸方向(テーブル軸TAに平行な方向)に移動し、缶体の開口端側を縮径してネック部12を形成する絞り加工や、缶体の周壁を拡径する拡径加工等のダイ加工を施すものである。1つのダイ加工ツール48によって、1種類のダイ加工が缶に対して施される。
【0035】
回転加工ツール49は、缶に対して缶軸回りに移動し、この缶軸回りの回転動作により缶の周壁に、トリミング加工、ねじ成形加工、カール加工、スロットル(カールかしめ)加工等の回転加工を施すものである。1つの回転加工ツール49によって、回転加工が缶体に対して施される。
【0036】
回転加工ツール49は、缶に回転加工を施す成形部と、缶体を回転自在に支持するツールスピンドルと、を有している。また、特に図示していないが、ツールスピンドル(のスピンドル軸部)は、ベルト等の伝達部材を介して、駆動モータに連結されている。駆動モータは、ダイテーブル24に配設されている。ツールスピンドル(のスピンドル軸部)は、駆動モータから伝達される回転駆動力によって回転させられ、この回転力を利用して成形部は、缶体に対して回転加工を施す。
【0037】
図5に示される複数の回転加工ツール49のうち、符号49Aは、ダイ加工ツール48によって形成したネック部12の開口側にネジ溝13(図2(g)参照)を形成するネジ形成ツールである。また、符号49Bは、前段側に位置するネジ形成ツール49Aによって生じた高さの不均一な開口端部11b(図2(g)参照)のトリミング加工を行ない、高さが全周にわたって均等に揃えられた開口端部11cを形成する(図2(h)を参照)トリミングツール(切削加工具)である。また、符号49Cは、前段側に配されたトリミングツール(切削加工具)49Bによって形成された高さの均一な開口端部11c(図2(h)参照)を外方にカールさせるカールツールである。
【0038】
このようなネジ形成ツール49A、トリミングツール(切削加工具)49B、カールツール49Cは、ターンテーブル23から加工完了後の缶体を離脱させる位置の直前部分近傍に対応して、ダイテーブルの鉛直方向の下部に配列されている。
【0039】
図6は、成形具であるトリミングツール(切削加工具)の一例を示す拡大断面図である。
トリミングツール(切削加工具)49Bは、缶体10の高さが不揃いな開口端部11bを切削する切削バイト61と、缶体10の開口端部11cの内側に配置され、この開口端部11cをガイドするガイド部62とを備えている。また、ガイド部62は、トリミング加工時に生じた切削片Pを吸引するための吸引機構50を構成する第1サブバキュームダクト53の一端に形成されたカバー部67に覆われている。
【0040】
また、このトリミングツール(切削加工具)49Bの下方には、缶体10の底部を保持する、ターンテーブル23に形成された缶体保持部31(図3参照)が配設されており、このターンテーブル23が缶体10ごと回動されることにより、缶体10の開口端部11bにガイド部62が挿入され、これにより、缶体10の缶軸をトリミングツール(切削加工具)49Bの回転軸線Oに略一致させるようになっている。
【0041】
ここで、切削バイト61及びガイド部62は、回転軸線O回りに回転可能に支持された本体部64に配設されている。この本体部64は、略円柱多段形状とされ、図6の上部から下部に向って順に大径部64a,中径部64b,及び小径部64cを、回転軸線Oに対して同軸的に備えた構成となっている。
大径部64aは、この上部が、本体部64を回転軸線O回りに回転可能に支持した駆動部65と連結されるとともに、この下端面に切削バイト61の先端部,すなわち刃部が突出した状態で、この内部に切削バイト61が配設された構成となっている。なお、この切削バイト61は、本実施形態においては、回転軸線Oを中心とした同一円周上に3箇所配設されている。
【0042】
また、小径部64cの外周面側にガイド部62が配設され、この小径部64cの外周面とガイド部62の内周面との間にベアリング66が配設されている。すなわち、小径部64cの外周面とベアリング66の内周面とが当接し、ガイド部62の内周面とベアリング66の外周面とが当接しており、従って、駆動部65が駆動すると、本体部64は回転軸線O回りにベアリング66の内周面とともに回転駆動されるが、ガイド部62は略回転駆動されないようになっている。
【0043】
ガイド部62は円筒状に形成されており、本体部64に配設された状態において、ガイド部62の先端部内側は、このガイド部62の先端面に開口する空間部62aとされ、また、このガイド部62の先端部側面に、空間部62aと連通するエア抜き流路62bが形成されている。
【0044】
吸引機構50を構成する第1サブバキュームダクト53の一端には、切削バイト61,及びガイド部62が内部に配設されるカバー部67が形成され、このカバー部67が、第1サブバキュームダクト53を介して吸引機構50の吸引装置51(図1参照)に接続されている。この構成において、切削バイト61,及びガイド部62は、第1サブバキュームダクト53の開口端部53aに面した位置に配設され、これにより、切削バイト61により生成された切削片が第1サブバキュームダクト53を介して良好に吸引されるようになっている。
【0045】
カバー部67の下端面67aには貫通孔である挿脱孔67bが形成されている。この挿脱孔67bから缶体10の開口端部11cがカバー部67内に挿脱される。この挿脱孔67bの開口周縁部は、缶体10の開口端部11cの外周面に向って延在した切削片遮蔽板67cとされている。
【0046】
以上の構成において、ガイド部62は、この先端部が挿脱孔67bからカバー部67の外部に位置するようにカバー部67の内部に配設されており、このガイド部62の先端部に形成されたエア抜き流路62bは、カバー部67の外部に位置したガイド部62の先端部側面に開口している。
【0047】
このようなトリミングツール(切削加工具)49Bを、トリミング工程の前段、例えばネジ形成ツール49A(図5参照)によるネジ溝加工を行った缶体10に向けて前進駆動する。これにより、缶体10の開口端部11cからガイド部62が挿入され、この開口端部11cの内周面をガイド部62の外周面により案内させることにより、缶体10の缶軸をトリミング装置(切削加工具)49Bの回転軸線Oに略一致させるとともに、缶体10の開口端部11cを切削バイト61の刃先と当接させる。
【0048】
その後、駆動部65を図示しない制御部により駆動させ、本体部64を回転軸線O回りに回転駆動させ、これに伴わせ、本体部64に配設された切削バイト61を回転軸線O回りに回転駆動させ、これにより、切削バイト61により缶体10の開口端部11cが所定の高さで切削される。ここで、ガイド部62は、本体部64にベアリング66を介して配設されているので、回転軸線O回りに回転駆動されず、切削バイト61による切削時,すなわちトリミング加工時における、缶体10の開口端部11cの変形が抑制され、この加工の高精度化が図られることになる。
【0049】
こうしたトリミング加工中は、生成された切削片Pが吸引機構50を構成する第1サブバキュームダクト53の一端から連続的に吸引される一方、切削片Pの形状等に起因して、回転軸線O方向下方に落下しようとした切削片については、挿脱孔67bの周縁部が切削片遮蔽板67cとされているので、第1サブバキュームダクト53からの流出が抑制される。
【0050】
再び図3図5を参照して、吸引機構50は、吸引装置51と、メインバキュームダクト52と、このメインバキュームダクト52から分岐した第1サブバキュームダクト53とを備えている。
吸引装置51は、例えば、フィルタを備えた真空吸引機など、金属の切削片を吸引可能なものであればよい。
メインバキュームダクト52は、一端が吸引装置51に接続されている。本実施形態のメインバキュームダクト52は、例えば、缶成形装置(ボトルネッカー)20のダイテーブル24の近傍において上下方向に延びるように配された、略円筒形の部材である。
【0051】
第1サブバキュームダクト53は、本実施形態では、メインバキュームダクト52から直角に分岐して本体部21のテーブル軸TAに平行に延び、ここからダイテーブル24の鉛直方向の下方に向けて屈曲してダイテーブル24よりも下側に沿って延び、更にダイテーブル24の下側からトリミングツール(切削加工具)49Bに向けて上方に屈曲している。そして、第1サブバキュームダクト53の端部は、トリミングツール(切削加工具)49Bのカバー部67(図6参照)に接続されている。
【0052】
第1サブバキュームダクト53は、ジョイント部54,54によって、複数の分割体53A,53B,53Cに分割可能にされている。本実施形態では、第1サブバキュームダクト53は、2つのジョイント部54,54によって、3つの分割体53A,53B,53Cに分割可能にされている。ジョイント部54,54は、それぞれの分割体どうしを互いに脱着自在に接続する。
【0053】
ジョイント部54,54は、例えば、分割体53Aと分割体53Bとの接合部分および分割体53Bと分割体53Cとの接合部分にそれぞれ形成された拡径部分どうしを係止するリング部材57aと、このリング部材57aを締め付けるネジ57bとを有する。そして、第1サブバキュームダクト53を3つの分割体53A,53B,53Cに分割する際には、ネジ57bを緩めてリング部材57aを取り外すことによって分割することができる。
【0054】
例えば、図7に示すように、第1サブバキュームダクト53の分割体53Aと、分割体53Bと、分割体53Cとをジョイント部54,54から分割することで、ダイテーブル24の下側に配置された成形具40、例えばトリミングツール(切削加工具)49Bの前段側に位置するネジ形成ツール49Aに対して、外部からのアクセスを容易にする。
【0055】
また、第1サブバキュームダクト53の分割体53Cは、ダイテーブル24の周縁部分に固着され、外方に延びるダクト固定板28(図5参照)に固定されている。これにより、第1サブバキュームダクト53のうち、後述する伸縮部55からトリミングツール(切削加工具)49Bに接続される部分までは、ダイテーブル24とともにテーブル軸TAに沿って往復動する。
【0056】
また、分割体53Cは、取付時には、ダイテーブル24の下側からトリミングツール(切削加工具)49Bに向けて上方に屈曲した屈曲部を備え、端部にトリミングツール(切削加工具)49Bのカバー部67(図6参照)に接続可能な接続部56(図7参照)が形成されている。
【0057】
第1サブバキュームダクト53の分割体53Aには、ダイテーブル24のテーブル軸TAに沿った往復動に追従して、分割体53Aの一部とB分割体53B,53Cとをテーブル軸TAに沿って往復動を可能にさせる伸縮部55を備えている。こうした伸縮部55は、図8に示すように、分割体53Aの途中に形成され、大径パイプ55aと、この大径パイプ55aよりも小径の小径パイプ55bと、パッキン55cとを備えている。
【0058】
小径パイプ55bの一部は、大径パイプ55aの内部に摺動可能に挿入されている。また、パッキン55cは、大径パイプ55aの端部に形成され、小径パイプ55bの摺動を許容しつつ、大径パイプ55aと小径パイプ55bとの間の外側の隙間を塞ぐ。こうしたパッキン55cは、例えば、ゴムなどの弾性材料から形成されていればよい。
【0059】
このような構成の伸縮部55は、大径パイプ55aに対して小径パイプ55bがテーブル軸TAに沿って摺動可能であり、これによって、ダイテーブル24の往復動に追従して、第1サブバキュームダクト53の分割体53Aをテーブル軸TAに沿って伸縮させることができる。
【0060】
以上のような構成の缶成形装置(ボトルネッカー)20によれば、トリミングツール(切削加工具)49Bによって、缶体10の高さが不揃いな開口端11bのトリミング加工を行った際に生じた切削片Pは、トリミングツール(切削加工具)49Bに接続された第1サブバキュームダクト53から吸引される。そして、例えば、第1サブバキュームダクト53からメインバキュームダクト52に流入した部分(メインバキュームダクト52から第1サブバキュームダクト53が分岐する部分)において、切削片Pはその自重によって、鉛直方向に直立するメインンバキュームダクト52の下方に落ち、回収される。また、箔状などの軽い切削片Pは吸引装置51に達して、この吸引装置51に形成されたフィルタ等に回収される。これにより、トリミングツール(切削加工具)49Bで生じた切削片Pが外部に飛散することを防止する。
【0061】
そして、上述した吸引機構50を構成する第1サブバキュームダクト53にジョイント部54,54を形成して複数の分割体53A,53B,53Cに分割可能にすることによって、メンテナンス時に第1サブバキュームダクト53を分割して取り除き、ダイテーブル24の下側を広く空けることができる(図7参照)。これにより、例えば高頻度にメンテナンスを必要とする、トリミングツール(切削加工具)49Bの前段側に配されたネジ形成ツール49Aに対して、作業者がダイテーブル24の外側から第1サブバキュームダクト53に煩わされることなく容易にメンテナンス作業を行うことが可能になる。
【0062】
また、第1サブバキュームダクト53を複数の分割体53A,53B,53Cに分割可能にすることによって、全体としては重い第1サブバキュームダクト53が、比較的軽い分割体53A,53B,53Cとして取扱い可能になり、トリミングツール(切削加工具)49Bのメンテナンス時に、容易に第1サブバキュームダクト53の取り外し、取り付けを行うことが可能になる。これにより、トリミングツール(切削加工具)49Bに容易にアクセスすることができ、トリミングツール(切削加工具)49Bのメンテナンスが容易になる。
【0063】
また、メインバキュームダクト52に対して第1サブバキュームダクト53以外にも、1つまたは複数の第2サブバキュームダクトを分岐させる構成も好ましい。例えば、図5図7には、メインバキュームダクト52から第1サブバキュームダクト53に加えて更に第2サブバキュームダクト59が分岐している。こうした第2サブバキュームダクト59は、ダイテーブル24に形成された任意の成形具40に向けて延びている。第2サブバキュームダクト59は、例えば加工時に切削片や塗料片などが生じる成形具40(図5図7に示す例では回転加工ツール49)に接続することが好ましい。
【0064】
第2サブバキュームダクト59は、第1サブバキュームダクト53のようにダイテーブル24の往復動に追従する伸縮部を形成せずに、例えば、蛇腹パイプなどの揺動可能なパイプによって構成することもできる。また、第2サブバキュームダクト59は、ダイテーブル24の往復動に追従させずに、例えばダイテーブル24の縮退時のみ第2サブバキュームダクト59の先端を成形具40に接続(接近)させる構成であってもよい。このような第2サブバキュームダクト59についてもジョイント部によって分割可能にすることで、メンテナンス時にダイテーブル24の前面からそれぞれの成形具へのアクセスが容易になる。
【0065】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0066】
10…缶体(ボトル缶)
20…缶成形装置(ボトルネッカー)
21…本体部
23…ターンテーブル
24…ダイテーブル
40…成形具
49A…ネジ形成ツール
49B…トリミングツール(切削加工具)
50…吸引機構
51…吸引装置
52…メインバキュームダクト
53…第1サブバキュームダクト
53A,53B,53C…分割体
54…ジョイント部
55…伸縮部
59…第2サブバキュームダクト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8