(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
取り外し可能なゲルキャップを更に含み、前記ゲルキャップは、ゲルパッドおよび前記ゲルパッドに結合されたキャップリングを有し、前記キャップリングは、前記外側リングに係合可能である、請求項1記載の外科用アクセスポートシステム。
前記カップ状のフランジと前記外側リングとの間の距離は約0.1インチ(2.54mm)から0.5インチ(12.7mm)であり、前記カップ状のフランジと前記外側リングの間に圧縮力を生成する、
請求項1記載の外科用アクセスポートシステム。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図全体を通じて、同じコンポーネントには同じ参照符号が付けられている。
【0018】
外科器械アクセス器具システムの実施形態は、例えば、単一切開創、単一ポートおよび/または制限されたポートを用いる腹腔鏡下外科的処置または手技、例えば腹部手技(
図1)、経膣手技(
図2)、経口手技(
図3)および経肛門手技(
図4)に有用である。種々の外科用器械アクセス器具が2009年1月22日に出願された米国特許出願公開第2009/0187079号明細書(発明の名称:SURGICAL INSTRUMENT ACCESS DEVICE )および米国特許第7,727,146号明細書(発明の名称:WOUND RETRACTOR WITH GEL CAP)に記載されており、これら両方の特許文献を参照により引用し、これらの記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0019】
図5Aは、レトラクタ6100、あたかも身体開口内に配置可能であるようにレトラクタ内に挿入された状態で示されている導入器6400、キャップ6200、1つまたは2つ以上のポート6310および単一ポートおよび/または制限ポート手技でいうような栓塞子6600を含むアクセス器具システムの実施形態を示している。レトラクタ6100は、外科的切開創または身体開口を拡大し、再形成するとともに/あるいは隔離するために外科的切開創および/または身体開口中に、これらを横切るとともに/あるいはこれらを通って配置されるとともに/あるいは位置決めされる。キャップ6200は、人工体壁を提供し、器械は、かかる人工体壁を貫通してポート6310を通って患者の体の内部、例えば体腔に接近する。レトラクタ6100は、導入器6400を用いて開口部中に導入されるのが良く、ポート6310は、栓塞子6600を用いてゲルキャップを貫通して配置されるのが良い。アクセス器具のコンポーネントは、任意適当な生物学的に適合性のある材料から成る。
【0020】
ゲルキャップ6200がレトラクタ6100に取り付けられた状態で、アクセス器具システムにより、ユーザは、開口、例えば膣管にガス注入することができる。ガス注入により生じた膣管の拡張は、解剖学的構造の視覚化を向上させる(例えば伝統的な膣式子宮摘出術と比較して)とともに軟組織への損傷を生じさせる場合のある剛性の機械的レトラクタの使用の必要性をなくす。ゲルキャップは、検体取り出しを可能にするよう外科的処置中に任意の時点で取り外し可能である。
【0021】
レトラクタ6100は、半柔軟性の熱可塑性エラストマーまたは熱硬化性ポリマーで作られる。膣手技で使用するためには約4cm〜7cmの長さおよび約3cm〜5cmの直径がある範囲の解剖学的構造に適するであろう。レトラクタは、膣をレトラクトしたり閉塞したりする。近位端6152のところに設けられた縫合糸結び目6160および/または管状本体に沿って設けられたフランジ6110が、レトラクタがいったん配置されると外れるのを阻止するのを可能にする。ゲルキャップ6200は、レバー6135の助けにより取り付けられるのが良く、レバー6135は、レトラクタ6100の近位リング6120の下にロックする。これにより、圧力抵抗性シールが作られ、ゲルキャップに設けられているガス注入ポート6145を通ってガス注入が可能である。ガス注入に用いられていないポートを通って煙の排出が可能である。種々の腹腔鏡的器械の使用を可能にするよう器械ポート6310をゲルキャップ6200内に配置されるのが良い。次に、ゲルキャップを取り外すのが良く、そしてレトラクタ6100を通って検体を取り出すのが良い。
【0022】
図5Bを参照すると、外側リング6120は、漏斗区分6140の近位側に位置している。図示の実施形態では、外側リング6120は、実質的に円形のフットプリントを有する。本明細書において更に説明するように、外側リング6120は、これに設けられたキャップまたは他のアクセス器具に密封的に結合するような寸法形状のものであるのが良い。幾つかの実施形態では、1つまたは2つ以上の縫合糸箇所6160を外側リング6120に隣接してレトラクタ6100に設けるのが良い。2つの縫合糸箇所6160は、外側リング6120の全体として円形のプロフィールに対して全体として直径方向反対側に位置している。他の実施形態では、レトラクタは、外側リング6120に対する種々の場所に設けられた3つ以上または1つの縫合糸箇所を有するのが良い。
【0023】
引き続き
図5Bを参照すると、管状本体6130は、全体として円筒形の通路6150を定める全体として円形のプロフィールを有する。全体として円筒形の通路は、望ましくは、これを貫通して2つ以上の腹腔鏡的器械を受け入れるのに十分大きく、従って、単一の生まれつきの開口アクセス器具を用いて体腔内の多数の外科用器械への接近を可能にすることができる。さらに、全体として円筒形の通路は、望ましくは、これを貫通して位置決めされた多数の外科用器械を互いに対して並進させまたは回動させることができるほど大きく、それにより、外科医は、外科的処置中、所望に応じて器械を操作することができる。全体として円筒形の通路は、外側リング6120に隣接して位置するレトラクタ6100の近位端6152とフランジ6110に隣接して位置するレトラクタ6100の遠位端6154との間に延びている。
図5Aおよび
図5Bでは、管状本体6130は、円形の断面を有する。他の実施形態では、管状本体6130は、関心のある生まれつきの開口に適当であることができるように別の形状、例えば長円形断面、八角形断面または多の形状を有する。管状本体6130の幾つかの実施形態は、追加の機能、例えば抗菌コーティングを提供する1つまたは2つ以上のコーティングを有する。
【0024】
図示の実施形態では、漏斗セグメント6140は、アクセス器具、例えばキャップに取り外し可能に結合されるような寸法形状の外側リング6120の比較的大きな直径と、生まれつきの開口の最小拡張状態で生まれつきの開口内に嵌まり込むような寸法の通路6150の比較的小さな直径との間で直径の減少をもたらす。漏斗セグメント6140は、レトラクタ6100を体腔中に前進させるために用いられる栓塞子または導入器のための支承面となることができる内面を有する。幾つかの実施形態では、漏斗セグメントは、内面が切頭円錐形セグメントであるように比較的大きな直径と比較的小さな直径との間に実質的に直線状のテーパを有するのが良い。他の実施形態では、漏斗セグメント5は、比較的大きな直径と比較的小さな直径との間に湾曲したプロフィールを有するのが良い。幾つかの実施形態では、管状本体が直接外側リングに結合している場合のように漏斗区分が全く設けられていない。
【0025】
外側リング6120は、レトラクタ6100の比較的可撓性の管状本体6130と比較して比較的剛性であり、その結果、外側リング6120がアクセス器具、例えばキャップに密封的に係合することができるようになっていることが望ましい場合がある。
図5Bを参照すると、外側リング6120が部分的に切除された状態でレトラクタの斜視図が示されている。図示の実施形態では、外側リング6120には環状溝6122が形成され、補強部材6124がこの環状溝6122内に設けられている。幾つかの実施形態では、補強部材6124は、リングの形に形成された金属製の部材、例えばワイヤから成るのが良い。例えば、幾つかの実施形態では、補強部材6124は、レトラクタ6100の製造中、溝6122内に配置されるステンレス鋼製のリングから成るのが良い。他の実施形態では、補強部材6124は、射出可能な非金属製部材から成っていても良い。例えば、幾つかの実施形態では、ガラス繊維入りポリマーまたはポリカーボネート材料をレトラクタ6100の製造中、溝6122中に射出するのが良い。
【0026】
レトラクタ6100の図示の実施形態は、外側リング6120の剛性を高めるために補強部材を有しているが、他の実施形態では、レトラクタ6100をマルチプルショット成形プロセスで形成しても良い。例えば、幾つかの実施形態では、管状本体6130および内側リング6110で構成されたレトラクタの内側セグメントは、一成形作業で軟質材料から作られ、漏斗セグメント6140および外側リング6120で構成されるレトラクタ6100の外側セグメントは、別の成形作業で比較的硬質の材料、例えばポリカーボネート材料または他の適当な材料から作られる。
【0027】
引き続き
図5Bを参照すると、図示の実施形態は、連続した全体として環状の溝を有する。他の実施形態では、複数個の連続して並んではいない凹部が各々、複数個の補強部材の各々をそれぞれ受け入れることができる。さらに、幾つかの実施形態では、外側リングは、各々が対応の補強部材を受け入れる2つまたは3つ以上の同心状の全体として環状の溝を有するのが良い。
【0028】
種々の形式のフランジを用いて身体開口内にレトラクタを固定するのを助けることができる。
図6Aに示されている生まれつきの開口アクセス器具レトラクタ6100の一実施形態は、経膣外科的手技に使用できるよう構成されているのが良い。レトラクタ6100は、閉塞フランジ6111、外側または近位リング6120、ならびに閉塞フランジ6111と外側リング6120との間に延びていてこれらに結合された管状本体6130および漏斗セグメント6140を有する。閉塞フランジ6111は、半剛性であり、直径が約2インチ(5.08cm)〜4インチ(10.16cm)である。開口、例えば膣内に挿入されると、フランジは、膣管の壁からの圧迫を受け、それによりガス注入の維持を助けるシールを作る。幾つかの実施形態では、閉塞フランジは、「カップ状」であり、円形隆起条6109がチャネル6107を包囲しており、それによりフランジ6111が撓んで種々の解剖学的構造に対応する一方で、依然とシールを保持することができるのに十分な可撓性が提供される。
【0029】
図6Cを参照すると、異なるフランジ実施形態を備えた生まれつきの開口アクセス器具システムに使用されるレトラクタ6100の側面図が示されている。この実施形態では、レトラクタ6100は、圧縮フランジ6112を備えた状態で示されている。圧縮フランジ6112は、直径が約2インチ(5.08cm)〜4インチ(10.16cm)であり、外側または近位リング6120の遠位側でレトラクタの周りに設けられている。圧縮フランジと外側リングとの間の距離は、生まれつきの開口を有する組織の厚さよりも小さいように設計されている。膣開口の場合、この距離は、約0.1インチ(0.254cm)〜0.5インチ(1.27cm)である。これにより、レトラクタのフランジと外側リングとの間の組織に加わる圧縮力が生じる。この力およびフランジの「カップ状」幾何学的形状(
図6D参照)は、膣を閉塞するとともに脱落を阻止するのに役立つ。縫合糸結び目6160を用いて脱落傾向を軽減するのが良い。
【0030】
図6Eを参照すると、更に別のフランジ実施形態を備えた生まれつきの開口アクセス器具システムに用いられるレトラクタ6100の斜視図が示されている。この実施形態では、レトラクタ6100は、ボルスタコーン6113を備えた状態で示されている。軟質熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性エラストマー製のボルスタコーン(膣に用いることができるよう約2インチ(5.08cm)〜4インチ(10.16cm)の最大直径を備えた状態でテーパしている)をレトラクタに追加するのが良い。使用にあたり、レトラクタを身体開口、例えば膣中に前進させ、その間、ボルスタコーンは、膣を外部から閉塞するためのストップとしての役目を果たす。ボルスタコーンは、レトラクタ6100の管状本体6130に沿って固定されても良くまたは可動状態であっても良い。縫合糸結び目6160は、レトラクタが脱落するのを阻止するとともに開口に対するボルスタコーンの圧迫状態を維持する。この設計は、オプションとして、本明細書において説明する他のものに類似したフランジを含むのが良い。
【0031】
図6Fおよび
図6Gを参照すると、異なるフランジ実施形態を備えた生まれつきの開口アクセス器具システムに用いられるレトラクタの側面図が示されている。この実施形態では、レトラクタは、機械的拡張特徴部(「機械式バルーン」)6114を備えた状態で示されている。機械式バルーンは、チャネル6130の周りに円周方向に延びる一連のアーム6105を有し、これらアームは、第1のリング6103および第2のリング6101に取り付けられている。第1のリングは、チャネルの長さに沿って動くことができ、第2のリングは、チャネルの遠位端のところでまたはその近くで固定されている。第1のリングの近位側で管状チャネル周りに設けられた摺動式の第3のリング6102をチャネルの遠位端に向かって前進させるのが良く、それによりアームをアームが外方にラッパ状に広がって
図6Gに示されているバルーン状の形状をとるようにする荷重下に置く。これらアームは、生まれつきの開口の解剖学的構造に力を及ぼし、それにより周囲組織を損傷させないでレトラクタを定位置に定着させる。
【0032】
幾つかの実施形態では、摺動式の第3のリングにはその内面に沿ってねじ山が設けられており、この第3のリングは、チャネル周りに設けられたねじ山に係合するようになっている。これについては、
図6Gを参照されたい。他の実施形態では、ラチェット駆動機構体を用いて摺動式の第3のリングをチャネルに沿って動かすのが良い。
【0033】
この摺動式のリングは、任意の剛性または半剛性の材料、プラスチックまたは金属から成るのが良く、アームは、荷重を受けて外方にラッパ状に広がるほど十分可撓性の半合成金属またはプラスチックから成るのが良い。変形例として、アームは、剛性材料で構成されても良く、この場合、関節式継手が各アームをほぼ中間長さのところに設けられ、類似のラッパ状広がりが容易になる。
【0034】
機械式バルーンは、約2インチ(5.08cm)〜約4インチ(10.16cm)の直径を有し、この機械式バルーンは、レトラクタの遠位端のところで管状本体周りに設けられている。機械式バルーンは、拡張時に閉塞を可能にするとともに脱落を阻止する非孔質の柔軟性材料で被覆されても良く、あるいは、固定を可能にするためにのみ働くよう被覆されていなくても良い。拡張量は、互いに異なる解剖学的構造に対応するよう可変であるのが良い。この特徴は、容易な挿入に合わせて当初非拡張状態であり、次に、必要に応じて拡張される。
【0035】
幾つかの実施形態では、機械式バルーンを
図6Cに示されているように圧縮フランジと組み合わせて使用できる。この実施形態では、圧縮フランジは、機械式バルーンの近位側で管状本体周りに設けられ、この圧縮フランジは、レトラクタを生まれつきの開口内に封止するのを助ける。変形実施形態では、機械式バルーンは、
図6Eに示されているようにボルスタコーンと組み合わせて使用できる。ボルスタコーンは、機械式バルーンがレトラクタを定着させるのを助けた状態でレトラクタを開口内に封止するよう作用する。
【0036】
図6H〜
図6Jに示されている他の実施形態では、フランジは、挿入およびトリダスのためのデフレートさせた比較的小さな直径の状態と体腔内での保持のためにインフレートさせた比較的大きな直径の状態との間で選択的にインフレートさせたりデフレートさせたりすることができるインフレート可能な部材6132、例えばガスまたは流体源に結合された環状バルーンを有するのが良い。レトラクタの漏斗部分6140に取り付けられたインフレーションポート6134、例えば逆止弁が管状本体6130の壁内に設けられたチャネル6136を通ってインフレート可能部材6132に連結されている。インフレーションポートを通って導入された流体またはガスがチャネルを通ってインフレート可能部材中に流れ、それによりインフレート可能部材をインフレートさせる。
【0037】
チャネル6136は、管状本体の長手方向軸線に全体として平行に管状本体を通って延び、このチャネルは、インフレーションポート6134と相互作用する近位開口部およびインフレート可能部材のところで管状本体の外面中に開口した遠位開口部6139を備える。一観点では、インフレーションポート6134は、ばね押しプランジャを備えた常閉の逆止弁を有するのが良い。別の観点では、逆止弁は、ルアーロックを含むのが良い。当該技術分野において周知である他のインフレーションポートを用いることができるということが想定される。
【0038】
この実施形態では、管状本体6130は、好ましくは、比較的硬質の材料、例えばポリカーボネートで構成されている。管状本体は、遠位端のところに位置したインフレート可能な部材を有し、このインフレート可能部材は、管状本体の外部周りに設けられた熱収縮性のポリオレフィン管によって作られるのが良い。次に、本体/管組立体の遠位端を約30〜40秒間加熱し、次にモールド(金型)内に配置し、そしてこれに空気を注入し、モールドの形状に応じて、インフレート可能部材に
図6Hに示されている環状バルーン形状または任意他の所望の形状を与える。インフレート可能部材6132は、インフレーションガスまたは流体がインフレート可能部材の壁を透過するのを実質的に阻止するのに十分な不透過性を有するべきである。
【0039】
一実施形態では、インフレート可能部材6132は、インフレーション時に実質的にドーナツ形の形状(
図6H参照)を有するのが良い。別の実施形態では、インフレート可能部材は、インフレーション時に円板の形状を有するのが良い。別の実施形態では、インフレート可能部材6132は、ひだ付きバルーンであるのが良い。さらに別の実施形態では、インフレート可能部材は、
図6Iに示されているように鞍形のバルーン6116である。膣手術に用いられるため、鞍形バルーンは、この実施形態では、約2インチ(5.08cm)〜約4インチ(10.16cm)の最大直径を備えた状態でテーパしている。バルーンを当初、膣中に入りやすくするようデフレートさせ、次にレトラクトの近位端に設けられたインフレーションポート6134を通る流体によってインフレートさせるのが良い。膣開口は、鞍の低い箇所内に嵌まり込んでバルーンをインフレートさせるときに鞍の山部相互間で圧迫される。これにより、膣が内部と外部の両方から閉塞されて脱落が阻止される。バルーンはまた、手技中に加えられた力を広い領域にわたって分散させ、それにより組織への損傷の恐れを減少させる。縫合糸結び目もまた、脱落傾向を軽減するよう使用できる。次に、手技の完了時にバルーンをデフレートさせて容易な取り出しが行われるようにする。当業者であれば、特定の生まれつきの開口に適した他の形状を想定するであろう。
【0040】
使用にあたり、レトラクタを生まれつきの開口内に配置した後、注射器またはシリンジを管状本体内(
図6K参照)のチャネルの近位端6138のところに配置された弁6134中に挿入することによってインフレート可能部材をインフレートさせるのが良い。
図6Jおよび
図6Kに示されているように、ポートは、チャネル6136に通じ、それによりシリンジからの流体またはガスがインフレート可能部材6132まで移動することができる。変形例として、バルブポンプ(bulb pump )またはガスもしくは流体の他の源を用いてインフレート可能部材をインフレートさせても良い。
【0041】
さらに別の実施形態では、本明細書において説明するボルスタコーンを
図6Lに示されているようにインフレート可能部材と組み合わせることができる。この実施形態では、レトラクタは、遠位端のところに設けられたバルーン6132およびチャネル中間のところに設けられたボルスタコーン6113を有する。膣手技で用いられるため、バルーンは、約2インチ(5.08cm)〜約4インチ(10.16cm)の直径を有し、ボルスタコーンは、約2インチ(5.08cm)〜約4インチ(10.16cm)の最大直径を備えた状態でテーパしている。膣中への入り込みを容易にするためにバルーン6132を当初デフレートさせ、次にレトラクタの近位端に設けられたポート6134を通ってこれをインフレートさせるのが良い。インフレーション量は、互いに異なる解剖学的構造に対応するよう可変であるのが良い。バルーンは、インフレート時に膣を閉塞し、レトラクタが脱落するのを阻止し、他方、膣開口に対するボルスタコーンの圧迫を生じさせて更に閉塞させる。ボルスタコーンは、手技中に加えられる力を広い領域にわたって分布させ、それにより組織に対する損傷の可能性を軽減する。縫合糸結び目もまた、脱落傾向を軽減するために使用できる。その際、バルーンを手技の完了時にデフレートさせて取り外しを容易にする。
【0042】
注入用ガスを用いないでレトラクションおよびアクセスを可能にするよう構成された生まれつきの開口アクセス器具システムの別の実施形態が
図6M〜
図6Pに示されている。幾つかの生まれつきの開口、例えば膣内では、標準型のガス注入器からの圧力は、ガス注入器からのサージによって生じる漏れおよび大きなうねりに起因して目に見える安定した手術作業空間を維持するのには不十分な場合がある。この実施形態では、レトラクタ6100は、近位リング6120および管状本体6130を有し、管状本体は、保持スリーブ6143に係合するようになっている。保持スリーブは、近位端のところに設けられたリップ6144および遠位端のところに設けられた少なくとも2本の引っ込みアーム6146を有する。引っ込みアームは、関節式ヒンジ6147により保持スリーブに連結されており、この関節式ヒンジにより、アームは、アームの遠位端が互いに近接する閉じ位置(
図6P)とアームの遠位端が互いに遠ざけられた開き位置(
図6M、
図6N)との間で動くことができる。オプションとして、引っ込みアームは、ヒンジ6147の近くに設けられた傾斜リード6148を有するのが良い。
【0043】
図6M〜
図6Pの実施形態では、管状本体は、管状本体の外部に巻き付けられた雄ねじ6149を有し、この雄ねじ6149は、保持スリーブ6143の内部ルーメンの表面の周りに設けられた雌ねじ6151に係合するようになっている。これについては
図6Oを参照されたい。
【0044】
変形実施形態では、歯6153および一連の爪6155を含むラチェット駆動機構体が雌ねじおよび雄ねじに代えて用いられても良い(
図6Q参照)。ラチェット駆動機構体により、レトラクタは、保持スリーブのルーメン中を比較的容易に前進することができ、他方、レトラクタの管状本体の側部が手動で押し下げられてラチェット駆動機構体を解除するまで、後方運動に抵抗することができる。
【0045】
使用にあたり、レトラクタ6100の管状本体6130を保持スリーブ6143のルーメンを通って前方に前進させ、ついには、引っ込みアーム6146との接触が行われる。引っ込みアームに設けられた傾斜リード6148により、開きが様々な解剖学的構造に対応するよう小刻みなレートで起こることができる。保持スリーブに設けられたリップ6144は、ルーメンの近位端が開口に入ることがないようにし、そしてレトラクタの前身中に保持箇所を提供する。
図6Mおよび
図6Nで理解されるように、完全に前進させたチャネルが、引っ込みアームに圧力を加え、それにより、引っ込みアームは、外方にラッパ状に広がって膣管を開き状態に保持する。膣管の組織をレトラクトした状態で、子宮頸および周りの組織への直接的なアクセスが可能である。
図6Pでは、レトラクタを引き戻し、引っ込みアームを外してこれらが互いに折りたためる。この状態は、開口からの出し入れを容易にする。
【0046】
幾つかの実施形態では、生まれつきの開口用アクセスシステムは、レトラクタ6100およびオプションとしての栓塞子6400(
図7Aおよび
図7B)を含むのが良い。栓塞子は、漏斗セグメント6140の内面6142に当接するような寸法形状の近位支承面6410およびレトラクタ6100を通過させることができるよう生まれつきの開口を拡張するような寸法・形状の遠位拡開面6420を有するのが良い。かくして、生まれつきの開口中へのレトラクタ6100の挿入中、拡開面6420は、体腔内の手術部位への経路を拡張し、その間、栓塞子は、漏斗セグメント6140の内面6142に当接し、それにより、レトラクタ6100を手術部位の所定の位置に前進させる。さらに、幾つかの実施形態では、栓塞子は、その近位端のところに設けられていて、挿入中、栓塞子の長手方向軸線回りの栓塞子の選択的な捩りまたは回転を容易にするようになったハンドル6430を有するのが良い。
【0047】
図7Cに示された変形実施形態では、栓塞子6405は、遠位拡開面6420と近位支承面6410との間に位置していて、レトラクタの挿入に先立って生まれつきの開口の拡開を容易にする真っ直ぐなシャフト部品6425を有する。次に、
図7Dに示されているように、この栓塞子をレトラクタ6100と組み合わせて容易な挿入を助けるのが良い。
【0048】
インフレート可能部材がレトラクタに設けられている実施形態では、オプションとしての栓塞子6400は、
図7Eに示されているようにインフレーションポートのための隙間を提供するよう凹み6139が設けられた状態に改造されるのが良い。
【0049】
図8Aを参照すると、レトラクタ6100に取り外し可能に結合されたキャップ6200を有する生まれつきの開口用アクセス器具の側面図が示されている。図示の実施形態では、キャップ6200は、本明細書において更に詳細に説明するように封止可能なアクセス表面6210、例えばゲルパッド表面を有している。ある特定の実施形態では、キャップ6200は、少なくとも1つのガスまたは流体ポート6220,6230を更に有するのが良い。図示の実施形態では、キャップ6200は、2つのガスまたは流体ポート6220,6230を有し、従って、例えばアクセス器具を介して電気手術を実施する場合、一方のポートをガス注入に用いることができ、他方のポートを通気に使用することができる。ある特定の実施形態では、ガスまたは流体ポート6220,6230のうちの少なくとも一方は、これを通る流体の流量を選択的に制御するために弁、例えばストップコック弁を有する。
【0050】
図8Bを参照すると、生まれつきの開口用アクセス器具の平面図が示されている。封止可能なアクセス表面6210は、環状フレーム6240、例えばクランプ6250を有する割り型リングによって包囲されるとともに拘束されるのが良い。クランプ6250は、キャップ6200がレトラクタ6100から選択的に取り外し可能である開き形態と、キャップ6200をレトラクタ6100に固定することができるクランプ形態との間で動くことができるのが良い。例えば、クランプ6250が開き形態にある状態で環状フレーム6240を外側リング6120周りに周囲方向に位置決めすることができ、そしてクランプをクランプ形態に動かすと、キャップ6200をレトラクタ6100に密封的に固定することができる。したがって、キャップ6200は、レトラクタ6100を通って手術部位からの切除組織の取り出しを容易にするよう外科的処置中、容易に取り外せる。
【0051】
図8Cを参照すると、生まれつきの開口アクセス器具の斜視図が示されている。図示の実施形態では、クランプ6250は、クランプがクランプ形態にあるときにレトラクタの外側リング6120とインターフェースするよう位置決めされた遠位フランジ6252を有するのが良い。図示のように、クランプ6250は、レトラクタ6100の外側リング6120の遠位表面に係合する。幾つかの実施形態では、環状フレーム6240は、レトラクタとインターフェースするよう寸法決めされるとともに位置決めされた少なくとも1つの遠位フランジを更に有するのが良い。図示の実施形態では、環状フレーム6240は、レトラクタの外側リング6120の遠位表面に係合するよう位置決めされた遠位フランジ6260を有する。図示のように、フランジ6260は、クランプ6250の遠位フランジに対して全体として直径方向反対側に位置している。他の実施形態では、環状フレーム6240は、環状フレーム6240の周囲に沿ってぐるりと実質的に等間隔を置きまたは環状フレームの周囲に沿ってぐるりと不規則に間隔を置いて位置決めされた2つ以上の遠位フランジを有するのが良い。
【0052】
図9Aを参照すると、キャップ6300がレトラクタ6100に取り外し可能に結合された状態の生まれつきの開口用アクセス器具の別の実施形態が示されている。図示の実施形態では、キャップ6300は、そのアクセス表面6320を貫通して設けられた多数のポート6310を有する。有利には、多数のポート6310は,単一の生まれつきの開口を通って手術部位内への多数の腹腔鏡的器械の容易な配置および操作を可能にする。
【0053】
図9Aの図示の実施形態では、ポート6310は、比較的低いプロフィールを有し、即ち、アクセス表面6320の上方にかつ/あるいはキャップ6300の遠位表面の下に最小限にわたって突き出ている。したがって、ポート6310は、典型的なトロカールの長さよりも短く、かかるポートは、アクセス表面6320の上方に配置されたシール組立体およびキャップ6300のゲルパッドを貫通して延びるカニューレを有している。ポート6310の長さを減少させることにより、これを貫通して延びる器械のための角度または回動運動を増大させることができ、しかも湾曲したかつ/あるいは角度のついた器械の使用が可能になる。
【0054】
図9Bは、ポート6310の一実施形態およびアクセス器具システムの幾つかの実施形態のコンポーネントであるオプションとしての栓塞子6600の分解組立て図である。図示の実施形態では、栓塞子6600は、尖った穴あけ先端部6610を有する。
【0055】
ポート6310は、近位端部、遠位端部および長手方向軸線を有する。ポート6310は、長手方向軸線に沿って延びるカニューレ6620を有する。シール6630がハウジング6640内に収納された状態でカニューレ6620の近位端部のところに設けられている。リテーナ6650がカニューレ6620の遠位端部または先端部のところに設けられている。
【0056】
カニューレ6620は、1つまたは複数の器械を挿通状態で受け入れるよう寸法決めされた管状本体を有する。図示の実施形態では、カニューレ6620は、実質的に円筒形の管であり、このカニューレは、使用中、キャップ6300を貫通する。図示の実施形態では、カニューレ6620は、比較的短い。というのは、カニューレは、体壁ではなく、既知かつ一貫した厚さを有するキャップ6300(
図9A)を横切って延びる必要があるに過ぎないからである。したがって、カニューレ6620の幾つかの実施形態は、ゲルパッドの厚さよりも約2倍以下長く、約1.5倍以下長く、約1.2倍以下長くまたは約1.1倍以下長い。幾つかの実施形態では、カニューレ6620は、ゲルパッドの厚さよりも約20mm未満短く、約10mm未満短くまたは約5mm未満短い。幾つかの実施形態では、カニューレ6620は、ゲルパッドの厚さ寸法とほぼ同じ長さ寸法のものである。他の実施形態では、カニューレ6620は、異なる長さ、例えば、体壁を横切るために用いられるカニューレにとって典型的な長さを有する。長さの短いカニューレにより、これを挿通する器械にとって角度に関する自由度を増大させることができる。短いカニューレの実施形態は又、湾曲した器械の使用を許容する。カニューレ6620は、任意適当な生体適合性材料から成る。幾つかの実施形態では、カニューレ6620は、軟質または可撓性材料から成る。
【0057】
図示のシール6630は、器械または隔膜シール6660およびゼロシール6670を有する。オプションとして、シールド6680が器械シール6660内に設けられるのが良い。器械シール6660は、これを通る器械を封止し、それにより体腔内の加圧状態、例えば、気腹状態または後腹腔気腹状態を維持する。ゼロシール6670は、器械がシール6630を通っていない場合にシールとなる。器械シール6660およびゼロシール6670は、カニューレ6620の近位端部のところに設けられたハウジング6640内に受け入れられてシールカバー6690によってこの中に固定される。
【0058】
リテーナ6650は、カニューレ6620の遠位端部のところにまたはその近くに設けられている。幾つかの実施形態では、リテーナ6650とカニューレ6620は一体化され、他方、他の実施形態では、リテーナ6650とカニューレ6620は、一体化されない。図示の実施形態では、リテーナ6650の近位端部は、全体として平坦でありかつ長手方向軸線に垂直なフランジ6655を有し、遠位端部は、テーパしており、カニューレ6620の遠位端部に向かって細くなっている。フランジ6655は、キャップからのポート6310の偶発的または不用意な取り外しの恐れを減少させる。フランジ6655の近位側フェースの幾つかの実施形態は、キャップ6300の遠位側フェースに穿刺しまたは食い込むよう構成された追加の固定特徴部、例えば刺、スパイク、突条、表面模様などを有する。幾つかの実施形態では、フランジ6655の直径は、カニューレ6620の外径よりも約1.2〜約2.5倍大きくまたは約1.5〜約2.0倍大きい。ポート6310の幾つかの実施形態は、5mmトロカールであり、この場合、カニューレ6620の外径は、約7mm〜約8mmである。
【0059】
リテーナ6650のテーパ付き端部は、キャップ中へのポート6310のそれ自体の挿入かポート6310を貫通した栓塞子6600との組立て時にキャップ中へのポート6310の挿入かのいずれかを容易にする。例えば、幾つかの実施形態では、リテーナ6650は、キャップ6300に予備形成された開口部中に挿入される。
【0060】
リテーナ6650とカニューレ6620が一体化されておらず、即ち、別々のコンポーネントである幾つかの実施形態では、リテーナ6650は、カニューレ6620をキャップ中に通して挿入した後にカニューレ6620に固定される。幾つかの実施形態では、カニューレ6620とリテーナ6650は、機械的に、例えば、ラッチ、ねじ山、クリップ、ロックリング、ラチェットなどを用いて固定される。幾つかの実施形態では、カニューレ6620とリテーナ6650は、接着により固定される。幾つかの実施形態では、リテーナ6650の位置は、例えば互いに異なる厚さのキャップに対応するよう調節可能である。幾つかの実施形態では、カニューレ6620および/またはリテーナ6650は、例えば接着によりキャップに固定される。
【0061】
図10Aは、キャップまたはカバー10500の実施形態を斜視図で示しており、これは、体腔と体腔の外部に位置する領域との間の開口部を封止する一方で、体腔の外部から体腔内への接近を可能にする外科用アクセス器具である。具体的に説明すると、図示のキャップ10500は、外科的創レトラクタの外側リング6120(
図5)に解除可能にかつ密封的に結合する。キャップ10500は、外科的創レトラクタの外側リング6120に結合可能な寸法形状のキャップリングを10510およびキャップリング10510に結合されたパッド10530を有する。キャップ10500の実施形態は、生まれつきの体壁と比較して一貫した特性、例えば厚さ、応従性、剛性、一様性などを備えた人工体壁となる。
【0062】
図示のキャップまたはカバー10500は、実質的に円形である。他の実施形態では、ゲルキャップ10500は、別の形状またはフットプリント、例えば長円形、楕円形、放物面、正方形、長方形または別の適当な湾曲し若しくは多角形の形状を有する。幾つかの実施形態では、レトラクタの外側リング6120とキャップのキャップリング10510は、同一の全体的形状またはフットプリントを有するのが良い。他の実施形態では、レトラクタの外側リング6120とキャップのキャップリング10510は、実質的に互いに異なる形状を有し、例えば、これらは、それぞれ、全体として円形の外側リング6120および長円形キャップリング10510である。これら実施形態では、外側リング6120は、例えば外側リング6120の互いに反対側の側部を圧縮することによってキャップリング10510に結合可能に歪められまたは再付形される。例えば、スペースが限られている手技については、非円形の形状が有用である。上述したように、長円形または細長いレトラクタを用いて長い真っ直ぐな切開創を拡張するには、円形レトラクタを用いた同様な手技よりも力が小さくてすむ。
【0063】
幾つかの実施形態では、パッド10530は、ゲルから成る。かかる実施形態では、パッド10530を「ゲルパッド」と呼び、キャップ10500を「ゲルキャップ」と呼ぶ。ゲルパッドおよびゲルキャップの説明は、全体として、別段の指定がなければパッド10530がゲルから成っていない実施形態に当てはまる。幾つかの実施形態では、ゲルパッド10530中には例えば器械アクセスのための予備成型アクセスチャネルは設けられていない。器械を直接ゲルパッド10530に通して挿入してゲルパッド10530を穿通するのが良く、それによりゲルパッド10530中にアクセスチャネルまたは部分を形成する。各アクセス部分は、これに通して挿入された器械が存在している場合には器械シールを形成し、これに通して器械が挿入されていない場合にはゼロシールを形成する。ゲルは、アクセスチャネルを通って挿入された種々の形状および寸法の器械の周りに気密シールをもたらす。ゲルパッド10530の幾つかの実施形態は又、これを直接介するトロカールアクセスを可能にし、それにより体腔内への器械のアクセスも又可能になる。ゲルパッド10530の実施形態は、器械および/またはトロカールを挿入させることができるゲルパッド10530の一部分の直径である約40mm〜約120mmの作業直径を有する。ゲルキャップ10500の実施形態は、代表的には、作業直径よりも約10mm〜50mm幅広である。
【0064】
したがって、ゲルキャップ10500の実施形態は、多数回の器械交換中、体腔内の加圧状態、例えば気腹状態または後腹腔気腹状態を維持するとともに加圧状態の不用意な低減を実質的に阻止する。ゲルキャップ10500の実施形態は又、外科手術中、実質的に連続したアクセスおよび視認性をもたらす。ゲルキャップ10500の実施形態は、手術スペースが限られた状態で手技において使用可能な小さなプロフィールを有する。
【0065】
幾つかの実施形態では、ゲルは、ウルトラゲルであり、ウルトラゲルは、極限伸び率が約1000パーセント以上であり、ジュロメータが約5以下のショアAスケール硬度であることを特徴としている。KRATON(登録商標)および鉱物油を含むウルトラゲルの幾つかの実施形態では、約1500パーセントを超える極限伸び率および向上した封止特性、例えば、他のシール材料よりも広いサイズ範囲の器械との封止状態を呈する。幾つかの実施形態では、ウルトラゲルから成るシールは又、器械がこれから取り外された場合にゼロシールを形成する。したがって、ウルトラゲルから成るシールの幾つかの実施形態では、単一のシールは、器械シールとゼロシールの両方として働く。
【0066】
キャップリング10510の幾つかの実施形態は、近位部分、遠位部分および近位部分から遠位部分まで延びる長手方向軸線を備えた実質的に円筒形のリングを有する。他の実施形態では、キャップリング10510は、別の形状またはフットプリント、例えば長円形のものである。キャップリング10510の低面図である
図10Bで最も良く理解されるように、図示の実施形態では、キャップリング10510の近位部分は、その周囲に沿って分布して配置された複数個の孔10512を有する。孔10512は、キャップリングの近位部分のところに位置する壁10514を貫通して延びている。他の実施形態では、孔10512は、キャップリングの壁10514から長手方向内方にまたは長手方向外方に延びた少なくとも1つの部材に設けられている。ゲルパッド10530は、図示の実施形態では、キャップリング10510の近位部分のところに設けられ、ゲルパッド10530の幾つかの部分は、孔10512を貫通し、それによりキャップリング10510とゲルパッド10530との間にインターロック構造体を形成し、それによりキャップリング10510とゲルパッド10530を互いに機械的にロックする。
【0067】
キャップリング10510の遠位部分は、図示の実施形態では、実質的に円筒形であり、この遠位部分は、外科的創レトラクタの外側リング6120(
図5)を受け入れるような寸法形状のものである。キャップリング10510は、キャップリング10510を外側リング6120に取り外し可能に結合するラッチ機構体10516を有する。当業者であれば理解されるように、他の機構体も又、キャップリング10510を外科的創レトラクタの外側リング6120に結合するのに有用であり、他の機構体は、例えば、突出唇部、レバー、クリップ、ラッチ、舌部、溝、ねじ山、差し込み型マウント、ねじ、摩擦嵌め、圧縮嵌め、スナップキャップなどである。図示の実施形態では、外科的創レトラクタの外側リング6120がキャップリング10510の遠位部分内に受け入れられると、外科的創レトラクタの外側リング6120は、キャップリング10510の遠位部分のところに設けられたゲルパッド10530の一部分に接触してこの中に埋まり込み、それによりゲルの一部分を変位させて、ゲルパッド10530と外科的創レトラクタの外側リング6120および管状本体6130との間にシールを形成する。かくして、ゲルパッド10530の遠位部分は、切開創または体の開口と並置状態にある。他の実施形態では、キャップリング10510は、外側リング6120に永続的に結合されまたは固定される。
【0068】
キャップリング10510は、幾つかの実施形態では、ポリマーから成る。適当なポリマーの例としては、ポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリカーボネート、熱可塑性エラストマー(ジー・エル・エス・コーポレーション(GLS Co.)製のDYNAFLEX(登録商標)、クレイトン・ポリマーズ(Kraton Polymers)社製のKRATON(登録商標))、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリスチレンなどが挙げられる。キャップリングのポリマーコンポーネントは、任意適当な方法によって製作され、かかる方法としては、射出成形、メルト注型(流し込み成形)、吹き込み成形などが挙げられる。
【0069】
ゲルパッド10530をキャップリング10510内に注型するプロセスの幾つかの実施形態は、約130℃を超える温度で数時間、例えば約3〜約4時間にわたって実施されるステップを含む。したがって、これら実施形態のうちの幾つかにおいて、キャップリング10510は、これらの条件下では変形しない。
【0070】
ゲルパッド10530の幾つかの実施形態は、エラストマーゲルから成る。かかるゲルの例は、2003年3月20日に出願された米国特許出願第10/381,220号明細書に記載されており、この米国特許出願を参照により引用し、その開示内容全体を本明細書の一部とする。ゲルの実施例は、少なくとも1つのトリブロックコポリマーを溶剤と混合することによって調製され、溶剤は、トリブロックコポリマーの中間ブロックを溶解させる。混合物は、代表的には、スラリである。端ブロックは、代表的には、熱可塑性物質、例えばスチレンを含み、中間ブロックは、代表的には、熱硬化性エラストマー、例えばエチレン/ブチレン、イソプレンまたはブタジエンを含む。トリブロックコポリマーの例としては、スチレン‐エチレン/ブチレン‐スチレン(SEBS)、スチレン‐イソプレン‐スチレン(SIS)およびスチレン‐ブタジエン‐スチレン(SBS)が挙げられる。幾つかの実施形態では、溶剤は、油、例えば鉱物油である。トリブロックコポリマーの混合物またはスラリを加熱すると、中間ブロックは、鉱物油中で溶け、それにより不溶性端ブロックの網状構造が生じる。結果として生じる網状構造は、親子ポリマーと比較して高められたエラストマー特性を有する。幾つかの実施形態では、用いられるトリブロックコポリマーは、KRATON(登録商標)G1651であり、これは、33/67のスチレンとゴムの比を有する。いったん形成されると、ゲルは、実質的に永続的であり、そして、端ブロックの性状により、混合熱可塑性エラストマーとして処理可能である。混合物またはスラリは、これがゲルになる最低温度を有し、これを最低ゲル化温度(MGT)と呼ぶ。この温度は、代表的には、熱可塑性端ブロックのガラス転移温度に数度加えた温度に一致している。例えば、KRATON(登録商標)G1651と鉱物油の混合物に関するMGTは、約120℃である。スラリがMGTに達してゲル状態への転移が生じると、ゲルは、一層透明になり、それによりゲル状態へのスラリの完全な転移を確認する視覚的指標が得られ、その後、ゲルを冷却するのが良い。ゲルの幾つかの実施形態は、トリブロックコポリマーに代えてまたはこれに加えてジブロックコポリマーを含む。ジブロックコポリマーの実施形態は、熱可塑性の第1の端ブロック、例えばスチレンおよび熱硬化性エラストマーの第2の端ブロック、例えばエチレン/ブチレン、イソプレンまたはブタジエンを含む。適当なジブロックコポリマーの一例は、スチレン‐エチレン/ブチレン(SEB)である。
【0071】
完全なゲルを形成するスラリの質量が所与の場合、スラリの質量全てをMGTまでまたは超える温度まで加熱し、そして端ブロックが相互連結の網状構造またはマトリックスを形成するのに十分な時間の間、MGTにまたはこれを超える温度に保持する。スラリは、MGTとスラリ/ゲルの成分が分解および/または酸化し始める温度との間の温度でゲルを形成し続けることになる。例えば、スラリ/ゲルを、250℃を超える温度で加熱すると、スラリ/ゲル中の鉱物油は、揮発し始めて酸化することになる。酸化により、ゲルは、茶色に変わって油状になる場合がある。
【0072】
所与の量のスラリがゲルを形成する速度は、スラリの質量減退がMGTに達する速度で決まる。また、MGTゲルの高い温度では、端ブロック網状構造は、迅速に分散して生じ、それによりゲル形成が早められる。
【0073】
種々のベースゲル配合物を互いに混合しまたは合金化すると、種々の中間特性を備えたゲルが得られる。例えば、KRATON(登録商標)G1701Xは、70%SEBと30%SEBSの混合物であり、全体的なスチレンとゴムの比は、28/72である。当業者であれば理解されるように、ほぼ無制限の数の組み合わせ、合金およびスチレンとゴムの比を処方することができ、各処方は、1つまたは2つ以上の利点、例えば低いジュロメータ、高い伸び率および良好な引裂強さを呈する実施形態をもたらす。
【0074】
ゲル材料の幾つかの実施形態は、発泡剤と一緒になって、ゲルの封止特性を向上させるポリマー、例えばシリコーン、軟質ウレタンおよび硬質のプラスチックを更に含む。適当なシリコーンの例としては、電子カプセル封入に用いられるシリコーンが挙げられる。適当な硬質プラスチックの例としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、イソプレン、KRATON(登録商標)ニートおよび他のKRATON(登録商標)/油混合物が挙げられる。KRATON(登録商標)/油混合物では、適当な油としては、野菜油、石油およびシリコーン油ならびに鉱物油が挙げられる。
【0075】
ゲルの幾つかの実施形態は、1つまたは2つ以上の望ましい特性、例えば、減摩性の向上、外観の向上および創傷の保護のうちの少なくとも1つを提供する1種類または2種類以上の添加物を含む。添加物は、ゲル中に直接混ぜ込まれるとともに/あるいは表面処理剤として加えられる。幾つかの実施形態では、他の化合物をゲルに追加してその物理的性質を変更するとともに/あるいは結合部位および/または表面電荷を提供することにより表面の次の改質を助ける。加うるに、油を主成分とする着色剤がスラリに添加され、それにより幾つかの実施形態では、互いに異なる色のゲルが得られる。
【0076】
ゲルパッド10530の幾つかの実施形態は、少なくとも1つの表面上のポリエチレンの層を有する。ポリエチレンは、鉱物油中に溶け、溶液は、ゲルパッド10530の1つまたは2つ以上の表面に塗布される。鉱物油は、蒸発せず、これとは異なり、経時的にゲルパッド中に吸い込まれ、ゲルパッドの表面上の層としてポリエチレンが後に残される。
【0077】
幾つかの実施形態では、ゲルパッド10530を製造するために用いられるトリブロックコポリマー/溶剤混合物/スラリは、約90重量%の鉱物油および約10重量%のKRATON(登録商標)G1651 を含む。熱力学的観点から、この混合物は、鉱物油と同様に挙動する。鉱物油は、比較的高い熱容量を有しているので、0.45kg(1ポンド)のスラリを約130℃で均質のゲルに変換するには、約3時間〜約4時間を要する場合がある。いったん形成されると、ゲルに対する見かけの悪影響を及ぼさないでできるだけ迅速に冷却するのが良い。幾つかの実施形態では、冷水浸漬によってゲルを冷却させる。他の実施形態では、ゲルを空冷する。当業者であれば認識されるように、他の実施形態では他の冷却技術が用いられる。
【0078】
KRATON(登録商標)/油ゲルのある特定の特性は、コンポーネントの重量比につれて変化することになる。一般に、鉱物油の比率が高ければ、その結果としてゲルが軟らかくなり、KRATON(登録商標)の比率が高いと、ゲルが硬くなる。軟らかすぎるゲルは、患者の体腔にガス注入すると、手術中、ゲルキャップ10500の過度のテンティング(テントのようになる)またはドーミング(ドームのようになる)を呈する。軟らかすぎるゲルの幾つかの実施形態は又、適度な器械シールおよび/またはゼロシールをもたらす。しかしながら、ゲルは、器械が存在していようと存在していまいと適度なシールをもたらすほど十分軟質である必要がある。
【0079】
長時間または長期間にわたって座っているとまたは立っていると、スラリ中のコポリマー、例えばKRATON(登録商標)と溶剤、例えば鉱物油は、分離する場合がある。スラリを例えば高剪断ミキサにより高い均質性が得られるよう混合するのが良い。しかしながら、スラリの混合により、空気がスラリに導入されまたは加えられる場合がある。空気をスラリから除去するため、スラリをガス抜きするのが良い。幾つかの実施形態では、スラリを真空下で、例えば真空チャンバ内でガス抜きする。幾つかの実施形態では、加えられる真空は、約0.79メートル(約29.9インチ)の水銀柱または約1気圧である。オプションとして、スラリを真空下で攪拌しまたは混合することにより、空気の除去が容易になる。真空下におけるガス抜き中、スラリは、代表的には、膨張し次に泡立ち、そして次に減容する。泡立ちが実質的に終わると、代表的には真空を中断する。真空下でスラリをガス抜きすることにより、スラリの体積が約10%だけ減少する。また、スラリをガス抜きすることにより、幾つかの実施形態では、完成状態のゲルの酸化が減少する。
【0080】
スラリのガス抜きは、結果として硬いゲルを生じさせる傾向がある。約91.6重量%の鉱物油と約8.4重量%のKRATON(登録商標)G1651 を11対1の比で含むガス抜きスラリで作られたゲルは、ガス抜きされておらず、約90重量%の鉱物油と約10重量%のKRATON(登録商標)G1651を9対1の比で含むスラリで作られたゲルとほぼ同じ硬さを有する。
【0081】
鉱物油は、典型的には、KRATON(登録商標)よりも密度が低いので、2つの成分は、混合後分離することになり、密度の低い鉱物油は、容器の頂部まで上昇する。この相分離は、典型的には、静止状態のスラリを数時間かけてゲルの状態に変換するときに起こる。その結果、結果として得られるゲルは、非均質であり、高い濃度の鉱物油は、頂部に位置し、低い濃度の鉱物油は、底部に位置する。分離速度は、加熱されているスラリの深さまたはヘッド高さの関数である。ゲルの相対的均質性に関する要因としては、スラリの質量、ヘッド高さ、ゲルが硬化する温度およびゲルへのエネルギーの伝達速度が挙げられる。
【0082】
ゲルパッド10530またはゲルキャップ10500は、幾つかの実施形態では、ガンマ線滅菌され、ガンマ線滅菌法は、他の滅菌プロセス、例えば酸化エチレンと比較して適格と判断するのが相対的にかつ/あるいは比較的簡単である。しかしながら、ガンマ線滅菌により、大きな泡がゲルパッド中に生じる場合があり、これら大きな泡は、滅菌装置において見かけ上のかつ/あるいは美観上の問題である。泡は、代表的には、99%を超える室内空気を含んでいるので、溶解した空気は、有利には、ゲルへのスラリの変換に先立ってスラリから除去される。例えば、スラリを上述したように真空下でガス抜きするのが良く、次に加熱によりゲル化するのが良い。幾分かの泡がガンマ線滅菌中、依然としてゲル中に生じる場合があるが、代表的には、約24時間〜約72時間の期間にわたって消失する。代表的には、鉱物油は室温では、約10%の溶解ガスを含む。上述したように、空気をゲルから除去することにより、ゲルが硬くなる。しかしながら、この作用効果は、ガンマ線滅菌中、ガンマ線によるゲルの軟質化によって打ち消される。
【0083】
ゲルパッド10530をガンマ線滅菌する幾つかの実施形態では、ゲルは、約90重量%の鉱物油および約10重量%のKRATON(登録商標)を含む。上述したように、スラリをガス抜きすることにより、ゲルが硬くなる。しかしながら、ガンマ線による打ち消し作用を有する軟質化の結果として、ガス抜きされておらず、そしてガス抜きもガンマ線滅菌もされていない約90重量%の鉱物油および約10重量%のKRATON(登録商標)を含むゲルと実質的に同一の硬さを備えたゲルが得られる。
【0084】
幾つかの実施形態では、ゲルパッド10530は、キャップリング10510と管状本体6130(
図5)との間に気密シールを提供するようキャップリング10510に結合され、取り付けられ、これと一緒に形成されまたはこれと一体化される。ゲルパッド10530は、キャップリング10510に設けられた開口部全体を覆うとともに封止し、しかも、開口部としての創傷または開口全体を覆う。上述したように、ゲルパッド10530は、これに通して挿入された種々の形状寸法の器械周りに気密シールをもたらす。
【0085】
キャップリング10510のゲルパッド支持構造体が熱可塑性エラストマー、例えばDYNAFLEX(登録商標)またはKRATON(登録商標)を含み、ゲルパッド10530が同様な熱可塑性エラストマー、例えばKRATON(登録商標)を含む実施形態は、ゲルパッド10530とキャップリング10510との向上した付着性を示す。ゲルパッド10530中のKRATON(登録商標)のポリスチレンコンポーネントは、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリスチレンおよび他の類似のポリマーとの接着性を向上させる。
【0086】
キャップリング10510がポリカーボネートから成る幾つかの実施形態では、キャップリング10510のポリカーボネートコンポーネントは、130℃ではゲルパッド10530と結合せず、この温度は、KRATON(登録商標)から成るゲルパッド10530にとって代表的な製造温度である。しかしながら、注型中、温度を数分間かけて約150℃まで上げることにより、ゲルパッド10530がキャップリング10510に結合される。ゲルパッド10530およびキャップリング10510をゲルのポリスチレンコンポーネントとポリカーボネートの両方が同時にこれらの融点を超える温度まで加熱することにより、結合部がこれら相互間に生じることができると考えられる。他の実施形態では、未硬化ゲルおよびキャップリング10510をキャップリング10510中のポリカーボネートのガラス転移温度またはその近くの温度まで加熱し、それによりゲルパッド10530をキャップリング10510に結合する。
【0087】
幾つかの実施形態では、ゲルは、鉱物油を含み、キャップリング10510は、製造条件下において鉱物油中に溶けるポリマー、例えば、ポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含む。一例としてポリエチレン(PE)を用いると、PEは、鉱物油よりも高い分子量を有し、ゲルパッド10530を注型するために用いられる温度で鉱物油中に溶ける。したがって、キャップリング10510中のPEの一部分が処理温度、例えば約130℃を超える温度でゲルパッド10530中の鉱物油中に溶けるので、キャップリング10510中のPEとゲルパッド10530との結合部が作られる。
【0088】
ゲルキャップを製造する方法の実施形態では、キャップリング10510をモールド内に配置し、このモールドは、キャップリング10510と一緒になって、ゲルパッドの所望の形状のネガの空間を有し、未硬化ゲルをモールドに添加する。次に、十分な未硬化状態のゲルをモールドに追加して孔10512を覆うとともに充填する。未硬化ゲルは、孔を通って流れ、これらを満たし、そしてこれら孔内に留まる。また、幾つかの実施形態では、モールドにキャップリング10510の遠位部分中に延びるのに十分な未硬化ゲルを充填する。ゲルが硬化した後、孔内のゲルは、各孔10512の第1の側上のゲルに繋がってこれを孔の第2の側上のゲルに結合し、それによりゲルパッド10530をキャップリング10510に機械的にロックする。
【0089】
幾つかの実施形態は、上述の機械的なインターロックに加えてまたはこれに代えてゲルパッド10530をキャップリング10510に結合する別の方法を含む。かかる方法は、例えば、別々に形成されたゲルパッドまたはゲルスラグ10530とキャップリング10510を結合する上で有用である。幾つかの実施形態は、グルーまたは接着剤、例えばシアノアクリレート(SUPERGLUE(登録商標)またはKRAZY GLUE(登録商標))を用いてゲルパッド10530をキャップリング10510に結合する。グルーは、ゴムまたはトリブロックコポリマーのスチレン成分に結合することが考えられ、結合部は、ゲル材料それ自体よりも強固である場合が多い。幾つかの実施形態は、溶剤がキャップリング10510中のプラスチックを溶解させるとともにゲルパッド10530中のポリスチレンを溶解させる溶着(溶剤接着)を利用する。溶剤を任意適当な方法、例えば吹き付けおよび/または浸漬によってゲルパッド10530およびキャップリング10510に塗布する。実際には、溶剤は、キャップリング10510のプラスチックとゲルパッド10530中のポリスチレンを溶解させ、それによりこれら2つ相互の結合部を形成し、この結合部は、溶剤が蒸発した後もそのままである。
【0090】
ゲルキャップ10500を製造する実施形態では、ゲルパッド10530をキャップリング10510中に注型してゲルキャップ10500を形成する。キャップリング10510を注型用モールドのモールドキャビティ内に位置決めしまたは配置する。モールドキャビティの実施形態は、キャップリング10510の環状壁のための支持体を含む。モールドの実施形態は、十分な熱消散特性を備えた材料、例えばアルミニウム、銅および黄銅のうちの少なくとも1つから成る。当業者であれば認識されるように、熱消散特性の低い他のモールド材料は、幾つかの実施形態では、許容可能な部品を生じさせる。さらに、モールドの幾つかの実施形態は、能動的冷却要素、例えば冷却剤をポンプ送りするチャネルを含む。
【0091】
次に、モールドキャビティとキャップリング10510の組立体に所望量のトリブロックコポリマー/鉱物油スラリを充填してスラリがキャップリング10510に接触するようにする。幾つかの実施形態では、スラリを例えば約52℃(125°F)まで予熱し、それによりスラリによるモールドキャビティの完全な充填を容易にし、それによりゲル中のボイドの発生の確率を減少させる。スラリをMGTよりも低い温度まで予熱することにより、スラリの粘度が減少してスラリが容易に流れることができる。上述したように、スラリの幾つかの実施形態は、注型前に真空内でガス抜きされる。幾つかの実施形態では、スラリは、これをモールドキャビティ内に充填した後でもガス抜きし、それによりモールドキャビティの充填中に導入される場合のある空気を除去するとともにモールド中のボイドへのスラリの流入を容易にする。モールド、キャップリングおよびスラリを例えばオーブン内で加熱し、ついには、スラリが約150℃の温度に達するようにする。上述したように、スラリは、約120℃でゲルになるが、150℃では、ゲルは、ポリカーボネート製のキャップリング10510に結合する。キャップリング10510で用いられている材料に応じて、結合は、約150℃以外の温度で起こる場合がある。キャップリング10510がMGT、例えば120℃よりも低い融点を有する材料から成る実施形態では、ゲルパッド10530をゲルスラグとして別個に成形し、次に、かかるゲルスラグを上述したようにキャップリング10510に結合する。
【0092】
ゲルへのスラリの変換が完了すると、例えば、ゲルパッドの温度が約150℃に達すると、ゲルキャップ10500を例えば空冷、冷水浸漬または別の適当な方法によって冷却する。150℃では、ゲルパッド10530は、軟らかくかつ容易に変形する。冷却中に起こるゲルパッド10530中の変形状態は、冷却後に固まる。したがって、幾つかの実施形態では、ゲルキャップ10500をモールド内で冷却し、それによりゲルパッド10530の変形の恐れを減少させる。冷却時間に影響を及ぼす要因としては、モールドの寸法および形状、ゲルの量、冷却媒体の温度および量、冷却媒体の特性およびモールド材料が挙げられる。一例として、特定のゲルキャップ10500に関する冷却時間は、空冷については約2時間であるのが良く、水冷については約15分であるのが良い。空気で冷却するにせよ水で冷却するにせよいずれにせよ、ゲルの最終特性は、実質的に同一である。ゲルキャップ10500は、代表的には、ほぼ周囲室温まで冷却されるが、所望ならばこれよりも低い温度まで冷却される場合がある。約0℃では、ゲルは、硬化し、これは、例えば二次作業において、例えば、別々に製造されたゲルパッド10530とキャップリング10510を互いに結合する場合に有用である。ゲルキャップ10500をゲルが硬化した後において任意の時点でモールドから取り出すことができる。
【0093】
モールドから取り出すと、ゲルパッド10530は、代表的には、粘着性の表面を有する。ゲルパッド10530を粉末、例えばコーンスターチで被覆することにより、硬化後のゲルパッド10530の粘着性が実質的に減少しまたはゼロになる。
【0094】
上述したように、幾つかの実施形態では、ゲルパッド10530をキャップリング10510とは別個に成形し、二次作業、例えば結合によりこれをキャップリング10510に結合する。幾つかの実施形態では、ゲルパッド10530をキャップリング10510の内側円筒形壁の周長よりも小さい外側周長およびキャップリング10510の高さよりも高い高さを備えたゲルスラグとして成形する。ゲルパッド10530がキャップリング10510とは別個に成形されるので、スラリをMGT、例えば約120℃まで加熱する必要があるだけであり、それによりゲルへのスラリの変換を完了させ、その後、ゲルは、実質的に透明になる。上述したように、ゲルスラグを例えば約0℃まで冷却するのが良く、次にキャップリング10510の内側円筒形壁内に配置するのが良い。
【0095】
幾つかの実施形態では、ゲルスラグを圧縮成形によりキャップリング10510に結合し、圧縮成形では、ゲルスラグを長手方向に圧縮し、それによりゲルスラグの外周部を拡張させるとともにゲルスラグをキャップリング10510の内側円筒形壁に圧接させる。圧縮されたゲルスラグおよびキャップリング10510を次に、ゲル中のポリスチレンおよびキャップリング10510のポリマーがこれら相互間に結合部を形成するのに十分な温度まで加熱する。ゲルスラグをキャップリング10510とは別個に成形し、次にゲルスラグをキャップリングに結合することは、キャップリング10510がゲルのMGTよりも低い融点を有する材料から成る実施形態では特に有用である。かかる状況では、ゲルスラグを別個に成形し、そしてキャップリング10510を溶解させないで、これをキャップリング10510に熱結合するのが良い。
【0096】
レトラクタ6100を用いて切開創または体の開口を拡張する方法の実施形態について上記において詳細に説明した。この方法の結果として、レトラクタの外側リング6120は、体壁の外面と実質的に接触状態にある。次に、ゲルキャップ10500をレトラクタの外側リング6120に結合し、それにより体腔と体腔の外部の領域との間の開口部を封止し、すると、外科医は、体腔にガス注入することができる。
【0097】
上述したように、ゲルキャップ10500の実施形態は、ゲルパッド10530中に予備成形されたアクセスチャネルを備えていない。使用にあたり、器械を直接ゲルパッド10530に通して挿入するのが良く、それによりゲルパッド10530を通るアクセスチャネルが形成される。ゲルキャップ中に作られた各アクセスチャネルは、これを通る器械が存在する場合には器械シールを形成する。というのは、ゲルは、種々の形状寸法の器械の周りに気密シールをもたらすからである。器械をゲルパッド10530から除去すると、器械によりゲルパッド中に作られたチャネルは、閉じてゼロシールを形成する。
【0098】
キャップの幾つかの実施形態は、特にアクセスチャネルが器械の操作の繰り返し、例えば挿入、除去、前進、拡張、回転および/または他の操作の繰り返しを受ける場合、器械アクセスのためにゲルパッド10530中に挿入されたアクセス器具、例えばトロカールを用いる。ゲルパッド10530中に挿入された各トロカールは、これを通る器械の導入、除去および/または操作の繰り返しを可能にする。
【0099】
幾つかの実施形態では、ゲルキャップ10500は、当初、アクセスチャネルを備えておらず、外科医は、これを通る器械の配置を自由に決定することができる。さらに、外科医は、ゲルキャップ10500の領域内のポートの配置および再位置決めならびに種々の臨床的手技について互いに異なるトロカールサイズを選択するオプションに関して制約を受けない融通性を有する。取り外し可能であるので、ゲルキャップ10500により、大きな検体の除去が可能である。いったん除去されると、ゲルキャップ10500をレトラクタの外側リング6120に再び結合することができ、それによりシールを回復させ、すると、外科医は、体腔に再びガス注入することができる。
【0100】
さらに、ゲルの実施形態は、物理的健全性を失うことなく、変形可能であり、他方、実質的に気密の器械シールを器械がこれらを貫通した状態に維持するとともにアクセスチャネルのための気密ゼロシールを器械がこれらを貫通しなくても維持する。したがって、ゲルキャップ10500の実施形態は、ゲルパッド10530を通る器械について並進的または位置的と角度的または回動的「浮動」または自由度の実現を可能にする。この浮動は、キャップリング10510と他の器械の両方に対する器械の運動を可能にする。これとは対照的に、他の単一または制限されたポートシステムは、器械について並進的または角度的浮動のうちの一方または両方を可能にしない。
【0101】
図11Aは、ゲルパッド内に設けられた複数個のアクセスポート、シールまたは封止弁を有するゲルキャップ11500の実施形態の平面図である。
図11Bは、レトラクタに取り付けられたゲルキャップ11500の上から見た斜視図である。
図11Cは、レトラクタに取り付けられたゲルキャップ11500の下から見た斜視図である。ゲルキャップ11500は、キャップリング11510およびゲルパッド11530を有し、これらは、上述の実施形態のキャップリングおよびゲルパッドと全体として同一である。
【0102】
ゲルキャップ11500は、複数個のアクセスポート11540を更に有し、これらアクセスポートの少なくとも一部分は、ゲルパッド11530内に設けられまたは埋め込まれている。図示の実施形態では、アクセスポート11540は、低プロフィールを有し(薄型であり)、即ち、ゲルパッド11530の近位表面の上方にかつ/あるいはゲルパッド11530の遠位表面の下に突き出ておらずまたは突き出ていたとしても最小限である。したがって、アクセスポート11540の長さは、ゲルパッド11530内に挿入された典型的なトロカールの長さよりも短いゲルパッド11530の厚さとほぼ同じであり、かかるトロカールは、ゲルパッド11530の上方に配置されたシール組立体およびゲルパッド11530を貫通したカニューレを有している。アクセスポート11540の長さの減少により、これを貫通した器械に関する角度的または回動的運動が増大するとともに湾曲するとともに/あるいは角度の付いた器械の使用が可能である。図示の実施形態では、アクセスポート11540は、ゲルキャップ11500を用いる条件下において実質的に永続的でありまたは取り外しできない。また、追加のポートが所望ならば、トロカールをゲルパッド11530に通して挿入するのが良い。
【0103】
各ポート11540は、ゲルパッド11530の近位側から遠位側に延びる長手方向軸線、ゲルパッド11530の近位側に設けられた第1のシール11542および第1のシール11542の近位側に設けられた第2のシール11544を有している。ポートまたはシール11540の各々を見ると、ゲルパッド11530を貫通した孔が設けられているのが分かり、この視線は、長手方向軸線と一致している。図示の実施形態では、第1のシール11542は、器械がこれを貫通した状態で器械シールを形成し、第2のシール11544は、これを貫通した器械が存在しない場合ゼロシールを形成する。
【0104】
図示の実施形態では、第1のシール11542は、隔膜シールを有する。各隔膜シールを貫通して孔11546が設けられ、この孔は、これを通って挿入されるべき最も小型の器械の断面よりも僅かに小さい。隔膜シールの孔11546は、ゲルパッドを貫通して設けられた孔およびポート11540の長手方向軸線と実質的に整列している。器械が隔膜シールの孔11546を通って挿入されると、孔11546は、拡張して器械の外面に係合し、それによりこの外面とシールを形成する。隔膜シールは、これを通って挿入された器械に孔を押し付けるエラストマー材料から成っている。当業者であれば理解されるように、他形式の器械シールが他の実施形態で用いられる。
【0105】
図示の実施形態では、第2のシール11544は、二重ダックビル弁を有し、かかる二重ダックビル弁は、これを通って挿入される器械が存在しない場合ゼロシールとなるゼロクロージャシールとして機能する。当業者であれば理解されるように、第2のシールは、他形式のシール、例えばダックビル弁、フラップ弁などを有しても良い。二重ダックビル弁は、エラストマー材料から成る。幾つかの実施形態では、第1のシール11542および第2のシール11544の各々は、別個独立に、エラストマー材料、例えば、ゴム、合成ゴム、シリコーン、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、エチレン‐プロピレンコポリマー(EPゴム)、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリウレタン、スチレン‐ブタジエン、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリクロロプレン(NEOPRENE(登録商標))、ペルフルオロエラストマー(KALREZ(登録商標))などのうちの少なくとも1つを含む。
【0106】
かくして、使用中、隔膜シールは、これを通って挿入された器械が存在している場合には器械シールとなり、ダックビル弁は、これを通って挿入される器械が存在しない場合にはゼロシールとなる。図示の実施形態は、互いに異なるサイズのゲルパッドに設けられたポートまたはシール11540を有する。ポート11540の各サイズは、これを通って挿入される異なる器械サイズ範囲に封止可能に対応する。ポートのサイズは、典型的には、ポートが受け入れる最も大型の器械の直径、例えば5mm、11mmまたは12mmとして与えられる。
図11D、
図11Eおよび
図11Fは、
図11A〜
図11Cに示されたゲルキャップ11500の実施形態の小さなポート11540aおよび大きなポート11540bをそれぞれ通って挿入された薄手の器械11550aおよび厚手の器械11550bの上から見た斜視図、下から見た斜視図および側面図である。
【0107】
図11Gは、例えばカメラまたは腹腔鏡のための固定されたポート位置を更に有するゲルキャップ11500の実施形態の上から見た斜視図である。固定ポート11560は、これを通って挿入されたカメラまたは腹腔鏡の位置を維持するロック機構体11562を有する。幾つかの実施形態では、ポート11540のうちの1つは、体腔をガス注入し、減圧するとともに/あるいはガス抜きするためのガス入口ポートおよび/またはガス出口ポートとして用いられるストップコックおよび/またはガス取り付け具を更に有する。幾つかの実施形態では、ガス入口/出口ポートがキャップリング11510に設けられる。
【0108】
図12は、上述したレトラクタおよびゲルキャップの実施形態とほぼ同じレトラクタ12100およびキャップまたはカバー12500を含むアクセス器具システム12000の実施形態の切除斜視図である。レトラクタ12100は、内側リング12110、外側リング12120および内側リング12110と外側リング12120との間に延びるスリーブ12130を有している。図示の実施形態では、キャップ12500は、近位側部、遠位側部、キャップリング12510およびゲルパッド12530を有するゲルキャップである。図示の実施形態では、キャップリング12510は、レトラクタの外側リング12120を収納状態で受け入れるよう寸法決めされた管状リングを有する。キャップリング12510の遠位側部は、環状スロット12520を有し、この環状スロットは、外側リング12120がこの環状スロットを可逆的に通過するのに十分に半径方向に変形可能である。したがって、キャップリング12510の図示の実施形態は、スナップ嵌めまたは摩擦嵌めによりキャップ12500を外側リング12120に固定する。
【0109】
図13は、トロカール13800およびアクセス器具システムの幾つかの実施形態のうちの一コンポーネントであるオプションとしての栓塞子13900の実施形態の分解組立て図である。図示の実施形態では、栓塞子13900は、尖った穿刺先端部13910を有している。トロカール13800および栓塞子13900が体壁ではなくゲルパッド10530を通って挿入される実施形態では、先端部13910との接触による下に位置する組織の潜在的な損傷が減少する。というのは、ゲルパッド10530は、上述したように下に位置する組織から間隔を置いて位置した人工の体壁として役立つからである。他の実施形態では、栓塞子先端部13910は、別の形状、例えば尖っていないかつ/あるいはブレードなしの形状を有し、かかる形状により、例えば、アクセスシステムの他のコンポーネント、例えばレトラクタの拡張シースの損傷の恐れが減少する。
【0110】
トロカール13800は、近位端部、遠位端部および長手方向軸線を有している。トロカール13800は、長手方向軸線に沿って延びるカニューレ13810を有する。トロカールシール13820がカニューレ13810の近位端部のところに設けられている。リテーナ13830がカニューレ13810の遠位端部または先端部のところに設けられている。図示の実施形態では、カニューレ13810の遠位端部または先端部は、角度が付けられていない、即ち、斜めになっていない。他の実施形態は、カニューレ13810の角度のついたまたは斜めの遠位端部または先端部を有する。トロカール13800の図示の実施形態は、注入ガス入口を備えていない。その結果、トロカール13800は、代表的には、体腔にガス注入しない手技またはガス注入が別の器具を介して行われる手技で用いられる。トロカールの他の実施形態が2007年2月22日に出願された米国特許出願第11/677,994号明細書に開示されており、この米国特許出願を参照により引用し、その開示内容を本明細書の一部とする。
【0111】
カニューレ13810は、これを通って受け入れられた1つまたは複数の器械に対応するよう寸法決めされた細長い管状のカニューレ本体13812を有している。カニューレ本体13812は、実質的に円筒形の管であり、使用の際、ゲルパッド10530を貫通する。図示の実施形態では、カニューレ本体13812は、トロカールシール13820が結合されるカニューレ13810の近位端部から延びており、この近位端部は、カニューレ本体13812よりも大きな外径を有する。
【0112】
幾つかの実施形態では、カニューレ13810は、比較的短い。というのは、カニューレ本体13812は、体壁ではなく既知かつ一貫した厚さを有するゲルパッド10530(
図10A)を横切る必要があるに過ぎないからである。したがって、カニューレ本体13812の幾つかの実施形態は、ゲルパッドの厚さの約2倍以下長く、約1.5倍以下長く、約1.2倍以下長くまたは約1.1倍以下長い。幾つかの実施形態では、カニューレ本体13812は、ゲルパッドの厚さよりも約20mm以下長く、約10mm以下長くまたは約5mm以下長い。幾つかの実施形態では、カニューレ本体13812は、ゲルパッドの厚さとほぼ同じ長さのものである。他の実施形態では、カニューレ本体13812は、異なる長さ、例えば、体壁を横切るために用いられるカニューレについて代表的な長さを有する。長さの短いカニューレ本体は、これを通過する器械にとって角度の自由度の増大を可能にする。短いカニューレ本体の実施形態は又、湾曲した器械に対応する。カニューレ13810は、任意適当な生体適合性材料から成る。幾つかの実施形態では、カニューレ13810は、軟質材料から成る。
【0113】
図示のトロカールシール13820は、器械または隔膜シール13822およびゼロシール13824を有する。器械シール13822は、これを通る器械を封止し、それにより体腔内の加圧状態、例えば、気腹状態または後腹腔気腹状態を維持する。ゼロシール13824は、器械がトロカールシール13820を通っていない場合にシールとなる。器械シール13822およびゼロシール13824は、カニューレ13810の近位端部のところに設けられたハウジング13826内に受け入れられてシールカバー13828によってこの中に固定される。
【0114】
リテーナ13830は、カニューレ13810の遠位端部のところにまたはその近くに設けられている。図示の実施形態では、カニューレ13810の遠位端部は、その長手方向軸線に全体として垂直でありまたは傾斜していない。他の実施形態は、角度のついたまたは斜めの遠位端部または先端部を有する。幾つかの実施形態では、リテーナ13830とカニューレ13810は一体化され、他方、他の実施形態では、リテーナ13830とカニューレ13810は、一体化されない。図示の実施形態では、リテーナ13830の近位端部は、全体として平坦でありかつ長手方向軸線に垂直なフランジ13832を有し、遠位端部は、テーパしており、カニューレ13810の遠位端部に向かって細くなっている。フランジ13832は、キャップからのトロカール13800の偶発的または不用意な取り外しの恐れを減少させる。フランジ13832の近位側フェースの幾つかの実施形態は、ゲルパッド10530の遠位側フェースに穿刺しまたは食い込むよう構成された追加の固定特徴部、例えば刺、スパイク、突条、表面模様などのうちの少なくとも一つを有する。幾つかの実施形態では、フランジ13832の直径は、カニューレ本体13812の外径よりも約1.5〜約2.5倍大きくまたは約2.0〜約2.2倍大きい。トロカール13800の幾つかの実施形態は、5mmトロカールであり、この場合、カニューレ本体13812の外径は、約7mm〜約8mmである。
【0115】
リテーナ13830のテーパ付き端部は、ゲルパッド中へのトロカール13800のそれ自体の挿入かトロカール13800を貫通した栓塞子13900との組立て時にゲルパッド中へのトロカール13800の挿入かのいずれかを容易にする。例えば、幾つかの実施形態では、リテーナ13830は、ゲルパッド10530に予備形成された開口部中に挿入される。ゲルパッド10530のゲル材料の実施形態は、上述したように伸び率について高い値を有しているので、リテーナ13830は、ゲルパッド10530に設けられた比較的小さな開口部を通って挿入可能であり、しかも、上述したように不用意な抜け出しに抵抗する。
【0116】
リテーナ13830とカニューレ13810が一体化されておらず、即ち、別々のコンポーネントである幾つかの実施形態では、リテーナ13830は、カニューレ13810をキャップ中に通して挿入した後にカニューレ13810に固定される。幾つかの実施形態では、カニューレ13810とリテーナ13830は、機械的に、例えば、ラッチ、ねじ山、クリップ、ロックリング、ラチェットなどを用いて固定される。幾つかの実施形態では、カニューレ13810とリテーナ13830は、接着により固定される。幾つかの実施形態では、リテーナ13830の位置は、例えば互いに異なる厚さのキャップに対応するよう調節可能である。幾つかの実施形態では、カニューレ13810および/またはリテーナ13830は、例えば接着によりキャップに固定される。
【0117】
図14Aは、上述した単一ポート外科用アクセスシステムの一コンポーネントして適したトロカール14800の別の実施形態の側面図であり、このトロカールは、例えば、ゲルパッド10530およびレトラクタを有する。アクセスシステムの幾つかの実施形態は、複数個のトロカール14800を含む。トロカール14800は、上述したトロカール13800と全体として同一であり、トロカール14800は、カニューレ14810、トロカールシール組立体14820およびリテーナ14830を有し、これらは、上述の対応の特徴部と全体として同じである。トロカール14800の図示の実施形態は、ボルスタ14840およびロックコンポーネント14850を更に有している。カニューレ14810の図示の実施形態を以下の説明から明らかになるように「固定用カニューレ」ともいう。
【0118】
図示の実施形態では、ボルスタ14840は、トーラスまたはドーナツの形をしている。カニューレ本体14812がボルスタ14840に設けられた開口部を貫通している。ボルスタ14840の開口部の直径は、カニューレ本体14812に沿う自由運動を可能にするほど十分カニューレ本体14812の外径よりも大きい。ボルスタ14840の図示の実施形態は、以下に詳細に説明するように変形可能な材料、例えばポリマー樹脂および/またはエラストマーから成る。適当な材料の例としては、ゴム、天然ゴム、合成ゴム、ポリイソプレン、スチレン‐ブタジエンゴム、シリコーンゴム、エチレン‐プロピレンコポリマー、エチレン‐プロピレン‐ジエンモノマーゴム、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリウレタンなどが挙げられる。ボルスタ14840の幾つかの実施形態は、カニューレ14810に接触する領域または区域に設けられた減摩性層または被膜を有し、これは、カニューレ14810に沿う運動を容易にする。
【0119】
ボルスタ14840の幾つかの実施形態の外径は、リテーナ14830のフランジ14832の直径の約0.8〜約2倍または約1〜約1.5倍である。ボルスタの厚さは、約3mm(0.12インチ)〜約10mm(0.4インチ)または約4mm(0.16インチ)〜約6mm(0.24インチ)である。幾つかの実施形態では、ボルスタの遠位フェース14844は、凹状であり、それによりゲルパッド10530に加わる追加のクランプまたは固定力をもたらすとともに互いに異なるかつ/あるいは非一様な厚さを有するゲルパッド10530に合致する。ボルスタ14840の特定の寸法は、ボルスタ材料およびゲル材料の特性ならびにカニューレ本体14812、ロックコンポーネント14850およびゲルパッド10530の寸法に基づいて選択される。
【0120】
ロックコンポーネント14850は、リテーナ14830の近位側でカニューレ本体14812に設けられ、このロックコンポーネントは、拡径区分14854の近位側に位置する唇部14852を有している。唇部14852は、ボルスタ14840の開口部の直径よりも大きな直径を備えた状態でカニューレ本体14812から半径方向に延びる。ボルスタ14840のエラストマー材料により、ボルスタ14840を唇部14852上にこれに沿って押してこれを通過させることができる。図示の実施形態では、唇部14852は、ボルスタ14840が遠位側に摺動するのを容易にするとともにボルスタ14840が近位側に摺動するのに抵抗するよう寸法決めされたラチェットを有する。また、図示の実施形態では、唇部14852は、カニューレ本体14812を包囲した連続構造体である。他の実施形態では、唇部14852は、カニューレ本体14812の周りに設けられた複数個の構造体から成る。
【0121】
拡径区分14854は、全体として円筒形であり、ボルスタ14840の開口部の直径とほぼ同一またはこれよりも僅かに大きな直径を有し、それによりボルスタ14840がこの拡径区分に摩擦係合する。図示の実施形態では、拡径区分14854は、ボルスタ14840の厚さ寸法よりも大きな長さ寸法を有する。図示の実施形態では、拡径区分14854は、リテーナ14830のフランジ14832までは延びておらずまたはこれに接触しておらず、それによりフランジ14832の近位フェースの表面積は減少せず、しかもフランジ14832の除去抵抗が高くなる。他の実施形態では、拡径区分14854は、リテーナ14830まで延びている。他の実施形態は、拡径区分を備えない。
【0122】
唇部14852の遠位端とフランジ14832の近位フェースとの間の距離は、ボルスタ14840の厚さとゲルパッド10530の厚さの合計に等しくまたはこれよりも僅かに小さい。幾つかの実施形態では、ゲルパッドは、厚さが約5mm(約0.4インチ)〜約30mm(約1.2インチ)または厚さが約13mm(約0.5インチ)〜約25mm(約1インチ)である。
【0123】
トロカール14800は、少なくとも2つの形態、即ち、
図14Aに示された第1または挿入用の形態および
図14Bに示された第2または固定用の形態を有する。
【0124】
トロカール14800を使用する方法の実施形態では、トロカール14800をボルスタ14840がまず最初にカニューレ本体14812上に配置される挿入用形態に配置する。トロカール14800を人工体壁が患者の体に結合される前にかつ/あるいはこれに結合した後に人工体壁内に配置する。
【0125】
図14Aに示された実施形態では、ボルスタ14840は、カニューレ本体14812の近位端部のところに配置され、この場合、ボルスタ14840は、シール組立体14820が結合されているカニューレ14810の近位端部のところの拡径部分であるカニューレベル14814の遠位部分に摩擦係合する。
【0126】
トロカール14800の遠位端部を人工体壁、例えばゲルパッド10530上に位置決めし、次にリテーナ14830をゲルパッド10530に通して挿入する。幾つかの実施形態では、まず最初に、栓塞子13900(
図13)をトロカールの近位端部のところでシール組立体14820に通して挿入し、このステップの実施前には、先端部13910がトロカールの遠位端部から延びている。他の実施形態では、まず最初に、別の器械を用いて開口部を人工体壁に作る。他の実施形態では、人工体壁を貫通してトロカール14800の遠位端部を押し通し、それによりこのプロセスで開口部を作る。
【0127】
次に、ボルスタ14840をカニューレ本体14812に沿って下方に滑らせてそして唇部14852上でこれに沿って拡径区分14854上に滑らせることによってトロカール14800を
図14Bに示された固定用形態に変換する。図示の形態では、人工体壁がリテーナのフランジ14832とボルスタ14840との間に捕捉されて圧縮される。唇部14852は、ボルスタ14840を定位置にロックしてボルスタが近位側に動くのを阻止し、それによりトロカール14800を人工体壁に固定しまたはロックする。
【0128】
固定用形態では、トロカール14800をこれが係合している人工体壁の局所部分に対して固定する。しかしながら、上述したように、人工体壁の実施形態は、高い伸び率を示す。したがって、人工体壁を変形させると、トロカール14800は、元の位置および向きに対して並進可能であるとともに/あるいは回動可能である。
【0129】
栓塞子13900を用いた実施形態では、栓塞子を抜去する。トロカール14800は、外科的処置中、1つまたは2つ以上の器械のためのアクセスポートとしての役目を果たす。
【0130】
所望ならば、例えばまず最初にボルスタ14840をロックコンポーネント14850から離脱させ、次にリテーナ14830を人工体壁から引き抜くことによってトロカール14800を人工体壁から除去する。幾つかの実施形態では、トロカール14800と人工体壁を離脱させずにユニットとして処分する。幾つかの実施形態では、ボルスタ14840は、ロックコンポーネント14850からは離脱できない。
【0131】
図15は、保持トロカール15800の別の実施形態の側面図であり、このトロカールは、
図14Aおよび
図14Bに示すとともに上述した実施形態と全体として同じである。トロカール15800は、近位端部、遠位端部およびカニューレ本体15812を備えた細長い管状カニューレ15810、カニューレ15810の近位端部に結合されたシール組立体15820、カニューレ15810の遠位端部のところに設けられたリテーナ15830、カニューレ本体15812を挿通させるボルスタ14840およびリテーナ15830の近位側でカニューレ本体に設けられたロックコンポーネント15850を有する。
【0132】
図示の実施形態では、ロックコンポーネント15850は、ねじ山15852が設けられた拡径区分15854を有する。ボルスタ15840は、これと螺合するねじ山を有する。その結果、ボルスタ15840は、ロックコンポーネント15850に螺合可能である。また、螺合により、トロカール15800の固定用形態においてボルスタ15840とリテーナのフランジ15832の相対位置を調節することができ、それにより非一様な厚さの人工体壁および/または種々の厚さの人工体壁への固定が可能である。
【0133】
図16Aは、トロカール16800の別の実施形態の側面図である。
図16Bは、トロカール16800に使用できるボルスタ16840の実施形態の斜視図である。トロカール16800とボルスタ16840の組み合わせは、
図14A、
図14Bおよび
図15に示されたトロカールの実施形態と全体として同じである。トロカール16800は、近位端部、遠位端部およびカニューレ本体16812を備えた細長い管状カニューレ16810、カニューレ16810の近位端部に結合されたシール組立体16820、カニューレ16810の遠位端部のところに設けられたリテーナ16830およびリテーナ16830の近位側でカニューレ本体に設けられたロックコンポーネント16850を有する。
【0134】
図示の実施形態では、ロックコンポーネント16850は、カニューレ本体16812から半径方向に延びる複数個の環状リング16852を備えた拡径区分16854を有し、これら環状リングは、複数個の環状スロット16856を構成している。図示の実施形態では、各リング16856の近位縁部は、斜切されているが、幾つかの実施形態では斜切縁部を備えない。
【0135】
図16Bは、半円形部分を有する切り欠き16844を備えた平べったい本体16842を有するクリップの形態をしたボルスタ16840の実施形態を示している。切り欠き16844は、スロット16856に係合するよう寸法決めされている。また、切り欠き16844のところの本体16842の厚さは、スロット16856に係合するよう寸法決めされている。ボルスタ16840は、本体16842から垂直に延びるグリップ16846を有し、このグリップは、ボルスタ16840を取り付けるとともに/あるいは調節するためのユーザグリップとなる。他の実施形態では、切り欠き16844は、別の形状、例えば多角形、長方形、八角形の一部などの形を有する。
【0136】
使用にあたり、トロカールのリテーナ16830を上述したように人工体壁中に挿入し、そしてボルスタ16840を環状スロット16856内に嵌め込むことによってこの中に固定し、それにより所望の固定力が得られる。異なるスロットを選択することによって固定度が調節可能である。
【0137】
幾つかの実施形態では、ボルスタ切り欠き16844は、複数個のスロットに係合し、それにより固定用形態において追加の安定性をもたらす。他の実施形態は、上述した実施形態と同様、カニューレ本体16812を挿通させるボルスタを有している。これら実施形態のうちの幾つかでは、ロックコンポーネント16850は、ラチェットとしての役目を果たす。ボルスタは、1つまたは2つ以上の爪を有し、これら爪は、オプションとして離脱可能であり、それにより調節性が高められる。
【0138】
図17Aは、固定用カニューレを有するトロカール17800の実施形態の側面図であり、
図17Bは、ボルスタの実施形態の斜視図である。
図17Aおよび
図17Bに示された実施形態は、
図14A〜
図16Bに示すとともに上述したトロカールの実施形態と全体として同じである。
【0139】
トロカール17800は、近位端部、遠位端部およびカニューレ本体17812を備えた細長い管状カニューレ17810、カニューレ17810の近位端部に結合されたシール組立体17820、カニューレ本体17812に設けられたリテーナ17830およびカニューレ17810の遠位端部に設けられたロックコンポーネント17850を有する。トロカール17800の図示の実施形態は、
図16Aに示された実施形態に類似しており、リテーナ17830とロックコンポーネント17850の位置は逆になっている。図示の実施形態では、リテーナのフランジ17832が遠位側に向いている。
【0140】
ロックコンポーネント17850は、カニューレ本体17812から半径方向に延びる複数個の環状リング17852を備えた拡径区分17854を有し、これら環状リングは、複数個の環状スロット17856を構成している。
【0141】
図17Bは、半円形部分を有する切り欠き17844を備えた平べったい本体17842を有するクリップの形態をしたボルスタ17840の実施形態を示している。切り欠き17844は、ロックコンポーネントに設けられたスロット17856に係合するよう寸法決めされている。また、切り欠き17844のところの本体17842の厚さは、スロット17856に係合するよう寸法決めされている。ボルスタの図示の実施形態は、グリップを備えておらず、他の実施形態は、グリップを有する。
【0142】
トロカール17800の実施形態を使用する幾つかの実施形態では、カニューレ17810を人工体壁に固定し、その後人工体壁を患者の体に結合する。例えば、幾つかの実施形態では、1つまたは2つ以上のトロカール17800をゲルキャップ10500のゲルパッド10530(
図10A)に固定し、その後ゲルキャップ10500をレトラクタ6100に結合する。
【0143】
本発明をその例示の実施形態に関して具体的に図示するとともに説明したが、当業者であれば理解されるように、特許請求の範囲に記載された本発明の精神および範囲から逸脱することなくこれら実施形態の形態および細部における種々の変更を行うことができる。