(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843742
(24)【登録日】2021年2月26日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】自動遮光溶接ヘルメットの電動濾過式呼吸用保護具のためのロック可能な嵌込構造
(51)【国際特許分類】
A62B 23/02 20060101AFI20210308BHJP
A42B 3/04 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
A62B23/02
A42B3/04
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-512736(P2017-512736)
(86)(22)【出願日】2015年9月1日
(65)【公表番号】特表2018-512894(P2018-512894A)
(43)【公表日】2018年5月24日
(86)【国際出願番号】CN2015088743
(87)【国際公開番号】WO2016169181
(87)【国際公開日】20161027
【審査請求日】2018年3月5日
【審判番号】不服2019-15907(P2019-15907/J1)
【審判請求日】2019年11月26日
(31)【優先権主張番号】201510194247.6
(32)【優先日】2015年4月22日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517030712
【氏名又は名称】テックメン エレクトロニクス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ウー、ジキアン
【合議体】
【審判長】
金澤 俊郎
【審判官】
谷治 和文
【審判官】
鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】
特開平1−230355(JP,A)
【文献】
特開昭63−88749(JP,A)
【文献】
特表2008−546445(JP,A)
【文献】
特開2000−243361(JP,A)
【文献】
特開平10−144274(JP,A)
【文献】
特開平5−344042(JP,A)
【文献】
特開2008−257872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B23/02
A42B3/04
H01M2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動濾過式呼吸用保護具及び自動遮光溶接ヘルメットからなるアセンブリであって、前記自動遮光溶接ヘルメットは接続ホースを介して前記電動濾過式呼吸用保護具に接続され、前記電動濾過式呼吸用保護具は、バッテリーホルダが形成されたハウジングとバッテリー装置とを含み、ロック可能な嵌込構造により前記バッテリー装置を前記バッテリーホルダに取外し可能に取り付けることができ、
前記ロック可能な嵌込構造は、前記バッテリー装置および前記バッテリーホルダにそれぞれ形成された少なくとも4対のスライド接合構造と、前記バッテリー装置に設けられたロック構造とを含み、
各対の前記スライド接合構造は、互いに対して相対的にスライドさせることによって互いに係合離脱可能であり、
前記ロック構造は、ボタンと、該ボタンによって作動させることができる舌状部材とを含み、
前記舌状部材は、前記スライド接合構造のスライド方向に略垂直な方向に沿って移動可能であり、
前記対のスライド接合構造を互いに対して相対的に所定の位置に移動させた後、前記舌状部材が、前記バッテリーホルダの停止側面に当接して前記対のスライド接合構造をロックし、
前記ロック構造が、前記バッテリー装置ケーシングに移動可能に取り付けられた力付与部品と、前記舌状部材と前記バッテリー装置ケーシングとの間で作用可能なばねとをさらに含み、
前記力付与部品は、駆動力を前記ボタンと前記舌状部材との間で90°の角度の離反によって伝達できるように、前記ボタンと前記舌状部材との両方に対して作用可能にされており、
前記ばねは、前記舌状部材に対して付勢力を提供し、該付勢力によって、前記舌状部材は前記バッテリー装置ケーシングから突出することが可能である、電動濾過式呼吸用保護具及び自動遮光溶接ヘルメットからなるアセンブリ。
【請求項2】
前記バッテリー装置が、前記スライド接合構造と前記ロック構造とが設けられたケーシングを含む、請求項1に記載の電動濾過式呼吸用保護具及び自動遮光溶接ヘルメットからなるアセンブリ。
【請求項3】
前記バッテリー装置ケーシングと前記電動濾過式呼吸用保護具ハウジングとの間に少なくとも1つのスライド案内構造が設けられ、前記スライド案内構造の案内方向は前記スライド接合構造のスライド方向と略平行である、請求項2に記載の電動濾過式呼吸用保護具及び自動遮光溶接ヘルメットからなるアセンブリ。
【請求項4】
前記スライド案内構造が、前記バッテリー装置ケーシングに設けられた直線溝と、前記電動濾過式呼吸用保護具ハウジングに設けられた直線リブとを含み、前記直線リブが、前記直線溝に移動可能に収容される、請求項3に記載の電動濾過式呼吸用保護具及び自動遮光溶接ヘルメットからなるアセンブリ。
【請求項5】
前記スライド接合構造が7対を含み、そのうちの少なくとも1対が、前記バッテリー装置ケーシングに設けられた溝と、前記電動濾過式呼吸用保護具ハウジングに設けられ、前記溝に挿入可能な突起とを含む、請求項2に記載の電動濾過式呼吸用保護具及び自動遮光溶接ヘルメットからなるアセンブリ。
【請求項6】
少なくとも1対の前記スライド接合構造が、2つのL字形突起を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の電動濾過式呼吸用保護具及び自動遮光溶接ヘルメットからなるアセンブリ。
【請求項7】
前記力付与部品は、回動可能な回動部品であり、
前記回動部品は、前記ボタンおよび前記舌状部材のそれぞれに当接する、互いに垂直な2つの部分を有する、請求項1に記載の電動濾過式呼吸用保護具及び自動遮光溶接ヘルメットからなるアセンブリ。
【請求項8】
前記ロック構造は、2対の前記スライド接合構造の間に位置している、請求項1から5のいずれか一項に記載の電動濾過式呼吸用保護具及び自動遮光溶接ヘルメットからなるアセンブリ。
【請求項9】
前記ボタンを、前記スライド接合構造のスライド方向と略平行な方向に沿って作動させることができる、請求項1から5のいずれか一項に記載の電動濾過式呼吸用保護具及び自動遮光溶接ヘルメットからなるアセンブリ。
【請求項10】
使用者が前記電動濾過式呼吸用保護具を着用した後は、前記ボタンの作動方向が、前記使用者の身長方向に略垂直である、請求項9に記載の電動濾過式呼吸用保護具及び自動遮光溶接ヘルメットからなるアセンブリ。
【請求項11】
前記停止側面は、前記スライド接合構造のスライド方向に略垂直である、請求項1から5のいずれか一項に記載の電動濾過式呼吸用保護具及び自動遮光溶接ヘルメットからなるアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、概して、溶接ヘルメット、特に自動遮光溶接ヘルメットの電動濾過式呼吸用保護具のバッテリーのためのロック可能な嵌込構造に関する。
【背景技術】
【0002】
安全のために、溶接ヘルメット、特に自動遮光溶接ヘルメットが溶接現場において広く使われている。自動遮光溶接ヘルメットは一般的に自動遮光フィルタを装備している。自動遮光フィルタは、主に液晶パネルを備えていることによって機能し得る。液晶パネルは、溶接アークの非起動時は透明である。液晶パネルは、溶接アーク起動開始直前に、作業者の眼が保護されるように不透明な状態に切り替えられる。自動遮光溶接ヘルメットは、通常、調節可能なつまみまたはボタンを備えている。作業者は、溶接ヘルメットを着用する前に、感度(SENSITIVITY)、遅延時間(DELAY TIME)、遮光度(SHADE)、および溶接モード(WELD MODE)などのような自動遮光フィルタの動作パラメータをつまみまたはボタンによって設定しなければならない。その後、作業者は、溶接ヘルメットを着用し、溶接作業を行うことができる。
【0003】
着用者の顔が溶接ヘルメットによって完全に隠されているときに着用者が普通に呼吸できることを確実にし、かつ/または、溶接作業を行っている着用者を厳しい作業環境下、例えば粉塵の多い環境下で保護できることを確実にするために、溶接ヘルメット、特に自動遮光溶接ヘルメットは、通常、電動濾過式呼吸用保護具を備える。この電動濾過式呼吸用保護具は、ホースによって溶接ヘルメットに接続される。着用者がきれいな空気を吸えるように、周囲空気が、呼吸用保護具によって浄化され、呼吸用保護具の空気ポンプによってヘルメットの中へ送られる。
【0004】
電動濾過式呼吸用保護具の空気ポンプは、充電式バッテリーを動力源とする。充電式バッテリーは、電動濾過式呼吸用保護具のバッテリーホルダに着脱自在に取り付けられる。従来、充電式バッテリーのバッテリーホルダへの連結箇所が少なく、そのことにより、溶接作業中にバッテリーが不意にホルダから離脱する恐れがある。不運にもこのような事例が起こると、着用者は、呼吸ができなくなるか、自身に害を与える有害な空気を吸い込んでしまう。さらに、電動濾過式呼吸用保護具は、通常、着用者の腰に装着される。動作要件により、着用者が呼吸用保護具を着用中に充電式バッテリーを取り外して新しいものに取り替えることが必要になる場合もある。したがって、充電式バッテリーを溶接現場で容易に取外し・再取付けできるように設計することができれば、着用者の作業効率が大幅に高められることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の問題に関して、本出願は、自動遮光溶接ヘルメットの電動濾過式呼吸用保護具の充電式バッテリーとバッテリーホルダとの間で用いられる改良されたロック可能な嵌込構造を提案し、それにより、充電式バッテリーをより確実にロックすることができるようにし、かつ、使用者が充電式バッテリーを組み付けたり分離するのに便利であるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願の一態様によると、自動遮光溶接ヘルメットの電動濾過式呼吸用保護具に用いられる、ロック可能な嵌込構造が提供される。上記電動濾過式呼吸用保護具はハウジングとバッテリー装置とを含み、上記ハウジングにバッテリーホルダが形成され、上記バッテリー装置を上記バッテリーホルダに、上記ロック可能な嵌込構造によって取外し可能に取り付けることができる。上記ロック可能な嵌込構造は、上記バッテリー装置および上記バッテリーホルダにそれぞれ形成された少なくとも4対のスライド接合構造と、上記バッテリー装置に設けられたロック構造とを含む。各対の上記スライド接合構造は、互いに対して相対的にスライドさせることによって互いに係合及び離脱が可能である。上記ロック構造は、ボタンと、該ボタンによって作動させることができる舌状部材とを含む。上記舌状部材は、上記スライド接合構造のスライド方向に略垂直な方向に沿って移動可能である。上記スライド接合構造を互いに対して相対的に所定の位置に移動させた後、上記舌状部材が、上記バッテリーホルダの停止側面に当接して上記対のスライド接合構造をロックする。
【0007】
上記バッテリー装置が、上記スライド接合構造と上記ロック構造とが設けられたケーシングを含んでいてもよい。
【0008】
上記バッテリー装置ケーシングと上記電動濾過式呼吸用保護具ハウジングとの間に少なくとも1つのスライド案内構造が設けられ、上記スライド案内構造の案内方向は上記スライド接合構造のスライド方向と略平行であってもよい。
【0009】
上記スライド案内構造が、上記バッテリー装置ケーシングに設けられた直線溝と、上記電動濾過式呼吸用保護具ハウジングに設けられた直線リブとを含み、上記直線リブが、上記直線溝に移動可能に収容されてもよい。
【0010】
上記スライド接合構造を7対含み、そのうちの少なくとも1対が、上記バッテリー装置ケーシングに設けられた溝と、上記電動濾過式呼吸用保護具ハウジングに設けられ、上記溝に挿入可能な突起とを含んでいてもよい。
【0011】
少なくとも1対の上記スライド接合構造が、2つのL字形突起を含んでいてもよい。
【0012】
上記ロック構造が、上記バッテリー装置ケーシングに移動可能に取り付けられた力付与部品と、上記舌状部材と上記バッテリー装置ケーシングとの間で作用可能なばねとをさらに含み、上記力付与部品は、駆動力を上記ボタンと上記舌状部材との間で90°の角度の離反によって伝達できるように、上記ボタンと上記舌状部材との両方に対して作用可能にされており、上記ばねは、上記舌状部材に対して付勢力を提供し、該付勢力によって、上記舌状部材は上記バッテリー装置ケーシングから突出することが可能であってもよい。
【0013】
上記力付与部品は、回動可能な回動部品であり、上記回動部品は互いに垂直な2つの部分を有し、上記2つの部分は、上記ボタンおよび上記舌状部材のそれぞれに当接してもよい。
【0014】
上記ロック構造は、2対の上記スライド接合構造の間に位置していてもよい。
【0015】
上記ボタンを、上記スライド接合構造のスライド方向と略平行な方向に沿って作動させることができてもよい。
【0016】
使用者が上記電動濾過式呼吸用保護具を着用した後は、上記ボタンの作動方向が、上記使用者の身体方向に略垂直であってもよい。
【0017】
上記停止側面は、上記スライド接合構造のスライド方向に略垂直であってもよい。
【0018】
本出願の別の態様によると、上記のロック可能な嵌込構造を備える、自動遮光溶接ヘルメットのための電動濾過式呼吸用保護具が提供される。
【0019】
本出願の技術的手段によって、バッテリー装置をバッテリーホルダによりしっかりとロックして不意の離脱を回避することができる。また、電動濾過式呼吸用保護具を着用中の使用者が手動でバッテリー装置を分離するときに、当該使用者が分離の過程を見るのに便利であり、そのため、現場の使用者の作業効率を現場で高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本出願の上記およびその他の特徴は、以下の説明および図面によって、よく理解されるであろう。尚、図面は異なる比率で示されていることもあるが、それらは本出願の理解に影響するものではない。図面において、
【
図1】
図1aおよび
図1bはそれぞれ、本出願の一実施形態にかかる電動濾過式呼吸用保護具を概略的に示す斜視図および側面図である。
【
図2】
図2は、電動濾過式呼吸用保護具のバッテリー装置がバッテリーホルダから分離されたことを概略的に示す斜視分解図である。
【
図3】
図3は、本出願にかかるバッテリー装置とバッテリーホルダとの間のロック可能な嵌込構造を概略的に示す図である。
【
図4a】
図4aは、バッテリー装置とバッテリーホルダとの間のロック可能な嵌込構造の一部を概略的に示す図であり、各円はそれぞれ拡大斜視図および断面図を表す。
【
図4b】
図4bは、バッテリー装置をスライドさせてバッテリーホルダに嵌め込む方法を概略的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、バッテリー装置を概略的に示す分解図である。
【
図6】
図6a、
図6b、
図6c、および
図6dは、バッテリー装置をバッテリーホルダに対して相対移動させてロック状態からロック解除状態にする方法をそれぞれ示す、
図1bのB−B矢視の拡大詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本出願の図面において、同じ構成または同様の機能を有する特徴については、同じ参照符号で表す。
【0022】
図1aおよび
図1bは、本出願の一実施形態にかかる電動濾過式呼吸用保護具を示す。この電動濾過式呼吸用保護具は、ハウジング10とバッテリー装置とを含む。バッテリー装置は、ハウジング10に取外し可能に連結して用いられるケーシング20を含む。電動ポンプや空気清浄装置や関連制御回路などのような構成要素(図示せず)が、ハウジング10の内部に取り付けられる。バッテリーモジュール(図示せず)が、ケーシング20の内部に取り付けられ、電動ポンプ用の電力を供給するために用いられる。
【0023】
ハウジング10の一端側に接続口11が形成され、ハウジング10内の空気清浄装置と連通するために用いられる。この接続口11は、清浄空気を電動ポンプの作用下でヘルメットに供給できるように、接続ホース(図示せず)によって溶接ヘルメット、特に自動遮光溶接ヘルメットに接続可能である。ハウジング10およびケーシング20はどちらもプラスチックからなる。
【0024】
ハウジング10の反対端側にはバッテリーホルダが形成され、バッテリー装置ケーシング20を受け入れるために用いられる。本出願によると、バッテリーホルダとバッテリー装置ケーシング20との間にロック可能な嵌込構造が設けられ、このロック可能な嵌込構造によって、バッテリー装置を電動空気清浄装置のハウジング10に容易にしっかりと組み付けることができる。さらに、溶接ヘルメットを頭部に着用している着用者がバッテリー装置を分離するのに便利である。
【0025】
図2は、バッテリー装置がバッテリーホルダから離されたことを概略的に示す。
図3は、バッテリー装置とバッテリーホルダとの間のロック可能な嵌込構造の係合箇所を概略的に示す。また、
図3は、バッテリー装置ケーシング20のバッテリーホルダに嵌め込み可能な側も示す。
【0026】
具体的には、
図3に示すように、電動濾過式呼吸用保護具のバッテリー装置ケーシング20とハウジング10、特にバッテリーホルダとの間のロック可能な嵌込構造は、それらの間の掛止を達成することができるように、本図において7つの両矢印で示すように、7つの係合箇所を備える。
【0027】
ハウジング10において、1対の突起31および32が互いに反対方向を向くように形成される。上記1対の突起は、バッテリー装置ケーシング20に形成された受け口50に差し込むことができる。互いに対向する1対の突起41および42が、受け口50の2つの対向する側壁に形成される。受け口50は、ケーシング20をハウジング10に嵌め込むことが必要な場合に、まず、上記1対の突起31および322を、上記1対の突起41および42からわずかにずれた位置で受け口50に収容させ、その後、受け口50の突起41および42を突起31および32の方へスライドさせることができるように、設計されている。したがって、所定の位置にスライドさせた後、突起41および42は、ケーシング20がハウジング10に対して相対的に外側へさらに移動することを防止するために、突起31および32に当接可能である。
【0028】
図4aに示すように、特に、
図4aの2つの上側の円部分によって示すように、1対の突起33および34と1対の突起35および36とが、上記1対の突起31および32の左右両側にそれぞれ形成される。また、2つの下側の円部分(これらは、ケーシング20のC−C矢視およびC’−C’矢視の部分断面図である)に示すように、1対の突起43および44と1対の突起45および46とが、バッテリー装置ケーシング20において上記突起33〜36に対応する位置に形成される。断面方向から見ると、上記各突起33、34、35、36および43、44、45、46は、略L字形である。さらに、ケーシングまたはハウジングにおける各L字形突起は、同じ方向に曲げられている。
【0029】
バッテリー装置ケーシング20のハウジング10への嵌め込み方法を説明するために、さらに
図4bに示すように、上記1対のL字形突起33および34と、それらと嵌合させるために用いられる上記1対のL字形突起43および44とを例にとる。
図4bは、
図1aのA−A矢視の部分拡大断面図である。突起33、34、43、および44のそれぞれは、収容ポケットを画定する。各収容ポケットは開口を有する。開口は、1つの突起を別の対応する突起の収容ポケットに、これら2つの突起が互いに接近・離間する方向に沿って収容させることができるような寸法に形成される。例えば、
図4bに示すように、バッテリー装置ケーシング20をハウジング10に嵌め込むことが必要な場合、まず、突起43および44がそれぞれ突起33および34によって画定された収容ポケットに入る(言い換えれば、突起33および34が突起43および44によって画定された収容ポケットに入る)ようにケーシング20をハウジング10に向かって矢印で示すように移動させ、次いで、L字形突起33および34がそれぞれL字形突起43および44からずれているようにケーシング20をハウジング10に当接させ、その後、ケーシング20を、ハウジングに対して相対的にスライドさせることができるようにハウジング10に対して相対的に押し、これにより、突起33および34がそれぞれ突起43および44のL字形のカンチレバーに当接して、ケーシング20がハウジング10に対して相対的に外側へさらに移動することを防止する。
【0030】
ケーシング20には突起37が形成され、この突起は、突起33、34と突起35、36との間に、突起31、32と略対向して位置している。バッテリー装置ケーシング20をハウジング10上でスライドさせると、突起37を、ケーシング20の溝47(
図2には図示せず、
図6cおよび
図6dにのみ示す)に収容させることができる。このようにして、ケーシング20をハウジング10に対して相対的に一方向に沿って所定の位置にスライドさせると、突起31と41、突起32と42、突起33と43、突起34と44、突起35と45、突起36と46、および突起37と溝47が、ハウジング10とケーシング20との間で、ロック可能な嵌込構造の上記7つの係合箇所をそれぞれ形成する。このため、これらの係合箇所をスライド接合構造とも呼ぶ。
【0031】
ケーシング20をハウジング10上でスライドさせる際に、確実に、それぞれの突起を互いに位置合わせし、または、突起と溝とを互いに位置合わせすることができるようにするために、2つの直線溝71および72が、互いに略平行となるようにケーシング20に形成され、また、2つの直線リブ61および62が、互いに平行となるようにハウジング10において上記直線溝に対応する2つの位置に形成される。このようにすることで、ケーシング20をハウジング10に付けたときに、直線リブ61および62がそれぞれ直線溝71および72によって正確に収容および案内される。上記直線リブは、スライド案内構造を形成するように上記直線溝と嵌合可能である。
【0032】
さらに、
図3に示すように、端子81が、ハウジング10内の電動ポンプと関連制御回路とに接続されるようにハウジング10に形成され、これに挿抜可能な端子91が、ケーシング20内のバッテリーモジュールに接続されるようにケーシング20に形成される。したがって、ケーシング20をハウジング10上で所定の位置にスライドさせると、バッテリーモジュールが電動ポンプおよび関連制御回路に電力を供給できるように端子81が端子91に係合する。
【0033】
図5は、バッテリー装置ケーシング20をさらに説明する分解斜視図である。図示するように、ケーシング20は、基部201とカバー202とを含み、これらの双方は、バッテリーモジュールと関連電気装置とを収容するために双方の間に空洞を画定できるように、スナップ嵌めまたはねじ留めなどの適切な方法で、互いに取外し可能に連結することができる。バッテリー装置ケーシング20がハウジング10に嵌め込まれると、カバー202は、ハウジング10に面し、これに当接する。
【0034】
再び
図2および
図3に示すように、ハウジング10の端側に、突出した周縁が形成される。突起31、32、33、34、35、36、および37の全ては、バッテリー装置ケーシング20を受け入れ可能なバッテリーホルダを形成するために、上記周縁から径方向内側に向けて一体形成される。さらに、直線リブ61および62も、上記周縁によって囲まれた内部領域に形成される。
【0035】
図5に示すように、カバー202の外方に面する側にボスが形成される。突起41、42、43、44、45、46と、受け口50と、溝47とは、上記ボスの周囲に形成される。さらに、上記ボスの投影面積は、ケーシング20がハウジング10に付けられた後にある程度スライド可能なように、上記バッテリーホルダの周縁によって囲まれた内部領域の投影面積よりも小さい。
【0036】
受け口50の底に開口51が設けられる。基部201には凹部が形成され、この凹部にボタン80が直線的に移動可能に取り付けられる。上記凹部に、舌状部材85が直線的に移動可能に支持される。舌状部材85はボタン80の移動方向に略垂直な方向に移動可能である。上記凹部に回動部品81が回動可能に取り付けられ、1対のばね86も上記凹部に設けられる。ばね力が舌状部材85に常時付与され、それにより当該舌状部材が基部201に対して相対的に外側へ移動することを可能にするように、ばね86の一端が基部201に固定的に収容され、他端が舌状部材85に固定的に収容される。
【0037】
回動部品81は、能動面82および突出部83と一体形成される。能動面82は突出部83に略垂直である。
図5に示した実施形態において、能動面82は2つの能動面を含み、突出部83は2つの突出部を含む。しかしながら、それらの数は必要に応じて設定することができると考えられる。例えば、能動面または突出部を1つだけ設けることもでき、複数の能動面または複数の突出部を設けることもできる。舌状部材85には段差面87が一体形成される。この段差面は、回動部品81の突出部83に当接するために用いられ、1つまたは複数の段差面が設けられ得る。段差面の数は、突出部の数に応じて設定することができる。したがって、
図5に示す実施形態においては、段差面87の数も2つである。ボタン80の一部、例えば隆起部88(
図6aに示す)が、回動部品81の能動面82に当接可能である。したがって、回動部品81は、ボタン80および舌状部材85の両方に当接可能である。ボタン80を作動させて回動部品81をその回動軸周りにある角度だけ回動するように駆動することにより、舌状部材85をある程度移動させることができる。
【0038】
カバー202を基部201に組み付けると、舌状部材85の一端が、開口51を貫通でき、外側に突出する。
図6aに示すように、ハウジング10、特にバッテリーホルダに、ボス101が形成される。例えば、このボスは、上記2つの突起31および32の間に位置している。ボス101は、傾斜面102と、鉛直な停止側面103とを有する。舌状部材85の突出端には傾斜面85’が形成される。ケーシング20を
図4aに示すようにバッテリーホルダに対して相対的にスライドさせる際、最初に、舌状部材85の傾斜面85’はボス101の傾斜面102に当接し、舌状部材85が押圧され、それによりその先端が開口51を通ってケーシング20内に移動する。その後、傾斜面102が当該先端を乗り越えると、当該先端は、ばね86によって付勢されて、開口51から再び突出する。したがって、舌状部材85は、
図6aに示すように、ボス101の鉛直な停止側面103に当接してロック状態となり、ハウジング10とケーシング20との間のロック可能な嵌込構造の不意の離脱を回避する。舌状部材85の移動方向はケーシング20のスライド方向に略垂直である、言い換えれば、ボタン80の移動方向はケーシング20のスライド方向と一致することが分かる。本出願によると、バッテリー装置ケーシング20をバッテリーホルダに対して相対的にスライドさせる方向に略垂直な方向において舌状部材85をロックすることができ、これにより、ケーシング20を所定の位置により確実にロックすることができる。
【0039】
ボス101の傾斜面102および舌状部材85の傾斜面85’は、ケーシング20をバッテリーホルダ内へより円滑にスライドさせることができ、かつ、その間に、ばね86の作用下で、傾斜面102が乗り越えた後の傾斜面85’の迅速な跳ね返りにより「カッパ(kappa)」という音が鳴るように、設計される。このようにすることで、使用者に舌状部材85が所定の位置にロックされたことを知らせる。
【0040】
図6a〜
図6dは、バッテリー装置ケーシング20をハウジング10から分離する方法を示す。まず、回動部品81をその回動軸周りに角度αだけ回動させることができるように、指を使ってボタン80を内側へ押し込む。これにより、舌状部材85の上記傾斜面を有する端が、開口51の下へ引っ込む。次いで、ボタン80を押し込んだ状態で、ケーシング20を引っ張るかまたは押すことにより、ケーシング20をバッテリーホルダに対して相対的に外側へスライドさせる。最後に、バッテリー装置ケーシング20を外す。
【0041】
図1a、
図1b、および
図2に示すように、ハウジング10の左右両側にバックルが設けられ、ベルトを締めるために用いられる。使用時に、電動濾過式呼吸用保護具ハウジング10は、使用者の腹部または腰にベルトで固定される。このようにすることで、使用者が接続口11およびボタン80を見て操作するのに便利なように、接続口11がバッテリー装置の上方になり、ボタン80が外向きに露出する。使用者がバッテリー装置の取替えまたは点検を行いたいときは、当該使用者は、古いバッテリー装置を取り外して新しいものを再び取り付けることができるように、1本の指でボタン80を自分の身体に向けて押し込めばよい。この全過程において、使用者は、手動による取外し作業を自分の眼で見て監視しやすくするために、頭をわずかに下げればよい。
【0042】
当業者には、直線溝71および72と直線リブ61および62の位置を交換可能であることが理解できる。例えば、代替的な実施形態において、2つの平行な直線リブがケーシング20に形成され、2つの平行な直線溝がハウジング10において上記直線リブのそれぞれと対応する位置に形成される。さらに、直線溝および直線リブの数は、例えば1つまたは複数のように、所望の通りに設定することができる。
【0043】
上記図示した実施形態においては、使用者が電動濾過式呼吸用保護具を着用した後は、ケーシング20を、地面に略垂直で当該使用者の身体の矢状方向と平行な方向に沿って、ハウジング10に対して相対的にスライドさせることができる。代案として、突起の向きを変えることによって、ロック可能な嵌込構造を、ケーシングのスライド方向が地面と身体の冠状方向とに略平行となるように設計することも可能である。
【0044】
上記図示した実施形態においては、バッテリー装置と電動濾過式呼吸用保護具ハウジングのバッテリーホルダとの間のロック可能な嵌込構造が、バッテリーホルダの周囲に配置された7つの係合箇所を有しているが、係合箇所の数または配置方法は必要に応じて変更することができる。例えば、代案として、ロック可能な嵌込構造の係合箇所の数を増減させるために、突起31、32、33、34、35、36および突起41、42、43、44、45、46から1対または複数対の突起を削除することもでき、これらの突起に1対または複数対の突起を追加することもできる。また、代案として、突起37と溝47の位置を交換することもできる。例えば、上記突起をケーシング20に設け、上記溝をハウジング10に設けることもできる。
【0045】
上記図示した実施形態においては、ボタン80と回動部品86と舌状部材85とでロック構造を構成している。上記ロック構造のボタンは、バッテリーホルダに対するバッテリー装置の相対的なスライド方向と略平行な方向に沿って作動させることができる。しかしながら、上記ロック構造の舌状部材を、バッテリーホルダに対するバッテリー装置の相対的なスライド方向に略垂直な方向に沿ってロックすることができる。ロック構造は、上記1対の突起31および41と上記1対の突起32および42との間に位置している。しかしながら、代替の実施形態においては、上記ロック構造を、操作が容易になり得る任意の位置に設けることができる。例えば、上記1対の突起31および41と上記1対の突起33および34との間に設けることもできる。
【0046】
さらに、上記図示した実施形態においては、回動部品81の使用によって、ボタン80を舌状部材85の移動方向に略垂直な方向に沿って押し込み、作動させることを可能にしている。しかしながら、当業者には、力の方向を変えるためのその他の部品を本出願において用いることが可能であることが理解できる。例えば、回動部品81の代わりに、並進運動する楔形ブロックを用いることもできる。この楔形ブロックは、ボタン80に当接するための鉛直な側面と、舌状部材85に当接するための傾斜した側面とを有する。上記の楔形ブロックを用いて、ボタン80からの作動力を、舌状部材85を駆動して当該作動力に応じて移動させることができるように、舌状部材85に垂直に付与することができる。
【0047】
本出願のロック可能な嵌込構造をバッテリー装置とバッテリーホルダとの間で用いて、バッテリー装置を電動濾過式呼吸用保護具ケーシングにしっかりとロックすることができる。さらに、使用者がバッテリー装置を手動で分離するのに便利である。
【0048】
本明細書において本出願のいくつかの具体的な実施形態を説明したが、それらは例示にすぎず、本出願の範囲をいかなる形であっても限定するものではない。本出願の趣旨および範囲を逸脱しない範囲で、いろいろと交替、変更、交替することができる。