(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電場補正板における前記試料が前記遮蔽板から突出する方向を向く一面は、前記遮蔽板における前記試料が前記遮蔽板から突出する方向を向く一面と同一平面上に配置される
請求項1に記載のイオンミリング装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のイオンミリング装置及び試料ホルダーの実施の形態例について、
図1〜
図15を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0012】
1.第1の実施の形態例
1−1.イオンミリング装置の構成
まず、本発明の第1の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかるイオンミリング装置について
図1を参照して説明する。
図1は、本例のイオンミリング装置を示す概略構成図である。
【0013】
図1に示す装置は、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等の電子顕微鏡で観察される試料を作製するイオンミリング装置である。イオンミリング装置1は、試料37にイオンビームを照射してエッチングを行い、試料をSEMやTEMによる観察に適した形状に加工する装置である。
【0014】
図1に示すように、イオンミリング装置1は、真空チャンバー2と、試料ステージ引出機構3と、イオン照射源4と、試料ステージ5と、回転機構6と、排気部7と、不活性ガス供給部8と、真空排気駆動部9と、位置合わせカメラ10と、制御部15とを備えている。また、イオンミリング装置1は、電圧電源18と、回転機構駆動部19と、表示装置20とを備えている。
【0015】
真空チャンバー2は、中空の容器状に形成されている。真空チャンバー2の一面には、開口部2aが形成されている。真空チャンバー2には、排気部7が接続されている。排気部7は、真空排気駆動部9により駆動する。排気部7が駆動することで、真空チャンバー2の内部空間の空気が排気される。
【0016】
真空チャンバー2の上部には、イオン照射源4が設けられている。イオン照射源4としては、例えばアルゴンガスを放電によりイオン化させてアルゴンイオン(イオンビームL1)を放出されるガスイオン銃が用いられる。そして、イオン照射源4は、真空チャンバー2の内部空間に向けてイオンビームL1を照射する(
図8参照)。
【0017】
以下、イオンビームL1の光軸と直交する方向を第1の方向X1及び第2の方向Y1とする。また、試料ホルダー30に保持された試料37が遮蔽板34から突出する方向を第2の方向Y1とし、この第2の方向Y1と直交する方向を第1の方向X1とする。そして、第1の方向X1及び第2の方向Y1と直交し、イオンビームL1の光軸と平行をなす方向を第3の方向Z1とする。
【0018】
イオン照射源4には、電圧電源18が接続されている。電圧電源18は、イオン照射源4に電圧を印加する。また、電圧電源18は、制御部15に設けたイオン照射源制御部16により制御される。
【0019】
また、制御部15には、回転機構制御部17が設けられている。回転機構制御部17には、回転機構駆動部19に接続されている。そして、回転機構制御部17は、回転機構駆動部19を制御することで、回転機構6の駆動を制御している。
【0020】
真空チャンバー2における開口部2aと対向する位置に壁面には、不活性ガス供給部8が設けられている。不活性ガス供給部8は、真空チャンバー2の内部空間に不活性ガスを供給する。
【0021】
また、真空チャンバー2には、連結部材3aを介して試料ステージ引出機構3が移動可能に取り付けられている。試料ステージ引出機構3は、真空チャンバー2に対して第2の方向Y1に沿って移動可能に支持されている。そして、試料ステージ引出機構3は、真空チャンバー2に接近することで、真空チャンバー2の開口部2aを塞ぐ。また、試料ステージ引出機構3には、試料ステージ5と、回転機構6と、カバー部材着脱部13が設けられている。
【0022】
試料ステージ5は、回転機構6に回動可能に支持される。回転機構6は、回転機構駆動部19により傾斜駆動する。そして、試料ステージ5は、真空チャンバー2の内部空間に収容される。また、試料ステージ5には、試料37を保持した試料ホルダー30が着脱可能に装着される。なお、試料ホルダー30の詳細な構成について後述する。
【0023】
回転機構6の回転軸には、試料ステージ5が設けられている。そして、回転機構6の回転軸の回転中心は、第2の方向Y1と平行に配置され、イオンビームL1の光軸及び第1の方向X1と直交する。
【0024】
カバー部材着脱部13は、シャフト部14aと、屈曲部14bと、接続部14cと、把持部14dとを有している。シャフト部14aは、カバー部材着脱部13に回転可能及び第2の方向Y1に移動可能に支持されている。シャフト部14aは、試料ステージ引出機構3を第2の方向Y1に沿って貫通している。そして、シャフト部14aの一端部は、試料ステージ引出機構3よりも第2の方向Y1の一側に配置され、シャフト部14aの他端部は、試料ステージ引出機構3よりも第2の方向Y1の他側に配置される。
【0025】
シャフト部14aの一端部には、屈曲部14bが連続している。屈曲部14bは、シャフト部14aから略垂直に屈曲している。また、屈曲部14bには、接続部14cが設けられている。接続部14cは、後述する試料ホルダー30のカバー部材33に着脱可能に接続される。
【0026】
シャフト部14aの他端部には、把持部14dが設けられている。把持部14dは、使用者によって把持され、カバー部材着脱部13が操作される。
【0027】
試料ステージ引出機構3における上端部には、カメラ回動機構12を介して位置合わせカメラ10が設けられている。位置合わせカメラ10は、カメラ回動機構12により試料ステージ引出機構3の上部に回動可能に支持されている。カメラ回動機構12が回動すると、位置合わせカメラ10は、試料ステージ5に装着された試料ホルダー30と第3の方向Z1で対向する。
【0028】
位置合わせカメラ10は、試料ホルダー30に保持された試料37と遮蔽板34を撮影する。また、位置合わせカメラ10は、表示装置20に接続されている。この表示装置20には、位置合わせカメラ10が撮影した画像が表示される。これにより、試料37における遮蔽板34からの突出量を視認することができる。
【0029】
また、カメラ回動機構12には、カメラ位置調整機構11が設けられている。カメラ位置調整機構11は、位置合わせカメラ10の位置を調整する。
【0030】
1−2.試料ホルダーの構成
次に、
図2〜
図5を参照して試料ホルダー30の構成について説明する。
図2は、試料ホルダー30を示す正面図、
図3は、試料ホルダー30を
図2に示すA−A線で切断した分解断面図である。
【0031】
図2及び
図3に示すように、試料ホルダー30は、ホルダー本体40と、カバー部材33とを有している。ホルダー本体40は、ベース部31と、試料保持部32と、遮蔽板34と、電場補正板35と、加工位置調整機構51とを有している。
【0032】
[ベース部]
ベース部31は、略円柱状に形成されている。ベース部31における第2の方向Y1の一端部には、取付部31cが形成されている。取付部31cは、ベース部31における第2の方向Y1の一端部の一面から第2の方向Y1の他端に向けて凹んだ凹部である。この取付部31cには、試料保持部32が取り付けられる。
【0033】
図2に示すように、ベース部31における第2の方向Y1の他端部には、ホルダー側装着部31bが形成されている。ホルダー側装着部31bは、試料ステージ5に着脱可能に装着される。また、ホルダー側装着部31bは、イオンミリング装置1の試料ステージ5だけではなく、装着部の一例を示す電子顕微鏡100の試料台107(
図9参照)や、光学顕微鏡200のホルダースタンド207(
図12参照)に着脱可能に装着される。
【0034】
また、ベース部31の外周面には、フランジ部31aが形成されている。フランジ部31aは、ベース部31の外周面において周方向に沿って連続して形成されている。また、フランジ部31aは、ベース部31の外周面から略垂直に突出している。
【0035】
さらに、フランジ部31aには、ガイドピン53が設けられている。ガイドピン53は、フランジ部31aから第2の方向Y1の一端部に向けて突出している。さらに、ベース部31の外周面には、Oリング54が取り付けられている。Oリング54は、ベース部31の外周面においてフランジ部31aよりも第2の方向Y1の一端部側に取り付けられている。そして、ベース部31における第2の方向Y1の一端部には、カバー部材33が装着される。
【0036】
[試料保持部]
図4は、試料保持部32を示す斜視図である。
図3及び
図4に示すように、試料保持部32の第2の方向Y1の一端部は、試料37を保持する。また、
図4に示すように、試料保持部32における取付部31cから露出する部分、すなわち第2の方向Y1の一端部には、補正板固定部55と、遮蔽板固定部56が設けられている。遮蔽板固定部56には、固定ピン56aによって遮蔽板34が固定され、補正板固定部55には、電場補正板35が固定されている。
【0037】
[加工位置調整機構]
加工位置調整機構51は、試料保持部32に第2の方向Y1に沿って移動可能に支持されている。この加工位置調整機構51は、試料保持部32に保持された試料37を第2の方向Y1に沿って移動可能させる。
【0038】
また、加工位置調整機構51は、加工位置調整ピン52を有している。加工位置調整ピン52は、加工位置調整機構51に連結されて、第2の方向Y1に沿って配置されている。加工位置調整ピン52が回転することで加工位置調整機構51は、第2の方向Y1に沿って移動する。すなわち、加工位置調整ピン52によって加工位置調整機構51が操作される。そして、加工位置調整機構51と共に試料保持部32が第2の方向Y1に沿って移動する。これにより、試料37の加工位置、すなわち遮蔽板34からの突出量が調整される。
【0039】
また、加工位置調整ピン52の第2の方向Y1の一端部には、本体側連結部52aが設けられている。本体側連結部52aは、ベース部31及び試料保持部32から第2の方向Y1の一端部側に向けて突出している。この本体側連結部52aには、後述する第2カバー側連結部46bが着脱可能に連結される。
【0040】
[遮蔽板]
遮蔽板34は、略平板状に形成されている。遮蔽板34は、遮蔽板固定部56に固定されて試料37よりも第3の方向Z1の一側、すなわちイオンビームL1の光軸の上流側に配置される。そして、遮蔽板34の一面34aは、第2の方向Y1の一端部側を向く。遮蔽板34は、試料37よりもイオンビームL1に対する強度が高い材質で形成されている。そして、遮蔽板34は、イオン照射源4から照射されるイオンビームL1を遮蔽する。
【0041】
また、遮蔽板34は、試料保持部32に保持された試料37の一部を覆う。そして、試料37における遮蔽板34によって覆われた箇所は、イオンビームL1によってエッチングされずに残る。さらに、試料37における遮蔽板34から第2の方向Y1の一側に向けて突出した領域がイオンビームL1によりエッチングが行われ、除去される。
【0042】
[電場補正板]
電場補正板35は、遮蔽板34と同様に、略平板状に形成されている。電場補正板35は、補正板固定部55に固定されて遮蔽板34よりも第3の方向Z1の他側、すなわちイオンビームL1の光軸の下流側に配置される。そして、電場補正板35の一面35aは、第2の方向Y1の一端部側を向く。また、電場補正板35の一面35aは、遮蔽板34の一面34aと第2の方向Y1での位置が同じ位置に配置される。すなわち、電場補正板35の一面35aと遮蔽板34の一面34aは、同一平面上に配置される。
【0043】
また、電場補正板35には、2つの挿通孔35bと、切り欠き部35cが形成されている。2つの挿通孔35b、35bのうち一方の挿通孔35bは、加工位置調整ピン52の本体側連結部52aを臨む。
【0044】
切り欠き部35cは、電場補正板35における第3の方向Z1の一端部において、第1の方向X1の中間部に形成されている。そして、切り欠き部35cは、電場補正板35の第3の方向Z1の一端部を第3の方向Z1の他側に向けて、試料37の第3の方向Z1の長さ分だけ切り欠くことで形成されている。この切り欠き部35cには、試料保持部32に保持された試料37が配置される。そのため、試料37における第3の方向Z1の一側には遮蔽板34が配置され、試料37における第3の方向Z1の他側及び第1の方向X1の両側には、電場補正板35が配置される。
【0045】
そして、ホルダー本体40を構成するベース部31、試料保持部32、遮蔽板34、電場補正板35及び加工位置調整機構51は、非磁性材料で形成されている。
【0046】
[カバー部材]
次に、カバー部材33について説明する。
図2及び
図3に示すように、カバー部材33は、ベース部31における第2の方向Y1の一端部に着脱可能に装着される。そして、カバー部材33は、ホルダー本体40の一部、具体的には、試料保持部32に保持された試料37、遮蔽板34及び電場補正板35を覆う。カバー部材33は、第2の方向Y1の一端部が閉塞され、第2の方向Y1の他端部が開口した略円筒状に形成されている。そして、カバー部材33は、主面部41と、側面部42とを有している。
【0047】
主面部41は、略円板状に形成されている。主面部41には、排気用弁43と、接続穴44が設けられている。排気用弁43が開放されていない状態では、カバー部材33によって覆われたた内部は、密閉される。
【0048】
接続穴44は、主面部41における半径方向の略中心に形成されている。接続穴44の内壁面には、雌ねじが形成される。そして、接続穴44は、カバー部材着脱部13の接続部14c(
図1参照)が螺合される。これにより、カバー部材33は、カバー部材着脱部13に接続される。
【0049】
また、主面部41には、カバー側連結ピン46が設けられている。カバー側連結ピン46は、主面部41に設けた装着孔41aに回転可能に挿入されている。そして、カバー側連結ピン46は、主面部41を第2の方向Y1に沿って貫通している。また、カバー側連結ピン46の外周面には、Oリング47が設けられている。Oリング47は、装着孔41aの内壁に密着する。
【0050】
カバー側連結ピン46における第2の方向Y1の一端部は、主面部41の装着孔41a内に配置される。カバー側連結ピン46の第2の方向Y1の他端部は、主面部41の装着孔41aから第2の方向Y1の他側に向けて突出する。
【0051】
カバー側連結ピン46の一端部には、第1カバー側連結部46aが形成されており、カバー側連結ピン46の他端部には、第2カバー側連結部46bが形成されている。第1カバー側連結部46aは、調整ツール60のツール側連結部60aに着脱可能に連結される。
【0052】
図5は、カバー部材33をベース部31に装着した状態を示す断面図である。
図5に示すように、カバー部材33をベース部31に装着した際に、カバー側連結ピン46の第2カバー側連結部46bは、電場補正板35の挿通孔35bを挿通する。そして、第2カバー側連結部46bは、加工位置調整ピン52の本体側連結部52aに連結される。そのため、加工位置調整ピン52は、カバー側連結ピン46を介して調整ツール60に連結される。そして、使用者が調整ツール60を回転させると、加工位置調整ピン52は、カバー側連結ピン46と共に回転する。これにより、加工位置調整機構51と共に試料37が第2の方向Yに沿って移動し、遮蔽板34に対する試料37の突出量を調整することができる。
【0053】
図3に示すように、側面部42は、主面部41の半径方向外側の外縁部から第2の方向Y1の他端部側に向けて突出している。
図5に示すように、カバー部材33をベース部31に装着した際に、側面部42の第2の方向Y1の他端部は、ベース部31のフランジ部31aに当接する。そして、側面部42の内壁面は、ベース部31に設けたOリング54が密着する。これにより、カバー部材33の内部空間が密閉される。
【0054】
図3に示すように、側面部42には、開口窓42aが形成されている。透明又は半透明な部材で形成された観察窓38が嵌め込まれている。
図2に示すように、観察窓38により、カバー部材33内に密閉された試料37、遮蔽板34及び電場補正板35をカバー部材33の外側から視認することができる。
【0055】
また、側面部42には、ガイド部材45が設けられている。ガイド部材45は、側面部42における第2の方向Y1の他端部に形成されている。
図5に示すように、カバー部材33をベース部31に装着した際に、ガイド部材45には、ベース部31に設けたガイドピン53が挿入される。さらに、ガイドピン53がガイド部材45に挿入されることで、カバー部材33におけるベース部31の周方向への回転が規制される。このガイド部材45とガイドピン53によりガイド機構が構成される。
【0056】
1−3.イオンミリング装置を用いた加工動作例
次に、上述した構成を有するイオンミリング装置1を用いた加工動作例について
図1〜
図8を参照して説明する。
図6は、カバー部材33とカバー部材着脱部13を接続させた状態を示す図、
図7は、試料ホルダー30を真空チャンバー2内に移動させた状態を示す図、
図8は、加工時の状態を示す図である。
【0057】
まず、
図4に示すように、アルゴン等の不活性ガスからなる不活性ガス雰囲気の作業室やグローボックス内で、大気と反応し易い試料37を試料保持部32に装着する。なお、遮蔽板34及び電場補正板35は、試料37を装着する前に試料保持部32に固定してもよく、試料37を装着してから試料保持部32に固定してもよい。次に、
図3に示すように、試料37を装着した試料保持部32を、ベース部31の取付部31cに取り付ける。
【0058】
次に、
図5に示すように、ホルダー本体40にカバー部材33を装着する。このとき、ガイドピン53及びガイド部材45がカバー部材33におけるホルダー本体40に対する装着位置を示すガイドとなる。これにより、ベース部31とカバー部材33との位置決めを容易に行うことができる。さらに、カバー部材33に設けたカバー側連結ピン46が試料37、遮蔽板34や電場補正板35に接触することを防ぐことができる。
【0059】
その結果、
図2及び
図5に示すように、試料37、遮蔽板34及び電場補正板35は、カバー部材33内に収容される。また、ベース部31に設けたOリング54がカバー部材33の側面部42の内壁面に密着し、カバー側連結ピン46に設けたOリング47が装着孔41aの内壁面に密着する。そのため、カバー部材33の内部空間は、密閉され、試料37は、不活性ガス雰囲気の空間に収容される。
【0060】
また、カバー部材33をベース部31に装着することで、カバー側連結ピン46の第2カバー側連結部46bが加工位置調整ピン52の本体側連結部52aに連結される。そして、調整ツール60を、カバー側連結ピン46に連結させる。次に、調整ツール60を回転させて、加工位置調整機構51を第2の方向Y1に移動させる。これにより、カバー部材33内に密閉された状態で、カバー部材33の外側から試料37における第2の方向Y1の突出量を調整することができる。
【0061】
次に、試料37が装着された試料ホルダー30を作業室やグローボックスから取り出し、
図1に示すように、試料ホルダー30を試料ステージ引出機構3に設けた試料ステージ5に装着する。上述したように、カバー部材33には、観察窓38が設けられているため、試料ステージ5に装着した状態で、カメラ10を用いて試料37の突出量を調整することができる。
【0062】
次に、
図6に示すように、カバー部材33にカバー部材着脱部13の接続部14cを接続させる。すなわち、接続部14cをカバー部材33に設けた接続穴44(
図5参照)に螺合させる。このとき、カバー部材33は、ガイドピン53とガイド部材45(
図5参照)により、ベース部31の周方向への回転が規制されている。そのため、接続部14cを接続穴44に螺合させる際に、カバー部材33が回転することを防ぐことができる。
【0063】
次に、
図7に示すように、試料ステージ引出機構3を真空チャンバー2内に移動させ、真空チャンバー2の開口部2aを試料ステージ引出機構3によって塞ぐ。これにより、試料ホルダー30は、イオン照射源4と第3の方向Z1で対向する。して、真空排気駆動部9によって排気部7を駆動させて、真空チャンバー2の内部空間の空気を排気させる。これにより、真空チャンバー2の内部空間は、真空あるいは略真空となる。
【0064】
次に、
図8に示すように、カバー部材着脱部13を操作して、ホルダー本体40からカバー部材33を取り外す。真空チャンバー2の内部空間は、真空あるいは略真空となっているため、試料37が大気に晒されることを防ぐことができる。
【0065】
次に、イオン照射源4からイオンビームL1を試料37に向けて照射する。これにより、試料37における遮蔽板34から第2の方向Y1の一端部に向けて突出している箇所が、イオンビームL1によってエッチング加工される。なお、遮蔽板34の一面34aと電場補正板35の一面35a(
図3及び
図5参照)が同一平面上に配置されている。そのため、試料37における第2の方向Y1の一端部側の一面、すなわち加工面37a(
図11B参照)は、遮蔽板34の一面34a及び電場補正板35の一面35aと同一平面上に配置されるように加工される。
【0066】
試料37の加工が終了すると、不活性ガス供給部8からアルゴン等の不活性ガスを真空チャンバー2内に供給する。そして、真空チャンバー2の内部空間は、不活性ガス雰囲気となる。次に、カバー部材着脱部13を用いてカバー部材33を再びベース部31に装着する。これにより、試料37は、カバー部材33内に収容される。すなわち、試料37は、不活性ガス雰囲気の空間に密閉される。
【0067】
なお、不活性ガス供給部8を用いて真空チャンバー2内に不活性ガスを供給する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、不活性ガスの供給を行わずに、真空雰囲気内でカバー部材33をベース部31に装着してもよい。これにより、試料37は、真空雰囲気の空間に密閉される。
【0068】
次に、
図6に示すように、試料ステージ引出機構3を第2の方向Y1の他側に移動させて、真空チャンバー2の開口部2aを開放させる。そして、
図1に示すように、カバー部材33からカバー部材着脱部13を取り外しに、試料ホルダー30を試料ステージ5から取り外す。なお、試料37は、カバー部材33内に密閉されているため、大気に晒されることはない。これにより、イオンミリング装置1を用いた試料37の加工動作が完了する。
【0069】
1−4.試料の観察動作例
1−4−1.電子顕微鏡の構成例
次に、加工が施された試料37を電子顕微鏡100で観察する動作例について
図9〜
図11を参照して説明する。まず、電子顕微鏡100の構成について説明する。
図9は、試料ホルダー30を電子顕微鏡100に導入する状態を示す模式図、
図10は、電子顕微鏡100で試料37を観察する状態を示す模式図である。
【0070】
図9に示す電子顕微鏡100は、電子ビームL2を試料37に照射し、試料37から放出される電子(例えば、二次電子や反射電子)を検出器により検出し、検出した電子から得られる試料像を観察する走査型電子顕微鏡(SEM)である。
図9に示すように、電子顕微鏡100は、電子源101と、観察室102と、試料導入室103と、ガイドレール105と、絶縁台106と、試料台107と、ホルダー操作部108と、カバー部材着脱部109とを有している。また、
図10に示すように、電子顕微鏡100は、電圧印加部110を有している。
【0071】
観察室102は、中空の容器状に形成されている。観察室102は、不図示の排気部により気圧が真空、あるいは略真空となっている。また、観察室102の一面には、開口部2aが形成されている。また、開口部102aには、不図示の開閉扉が設けられている。さらに、観察室102には、不図示の検出器が設けられている。
【0072】
観察室102の上部には、電子源101が設けられている。電子源101は、観察室102の内部空間に向けて電子ビームL2を照射する。以下、電子ビームL2の光軸と直交する方向を第4の方向X2、第5の方向Y2とする。また、観察室102の開口部102aが設けられた方向を第5の方向Y2とし、第5の方向Y2と直交する方向を第4の方向X2とする。そして、電子ビームL2の光軸と直交する方向を第6の方向Z2とする。
【0073】
観察室102の開口部102aには、試料導入室103が接続されている。試料導入室103は、中空の容器状に形成されている。試料導入室103には、不図示の予備排気部が接続されている。そして、試料導入室103は、予備排気部により気圧が真空、あるいは略真空になる。
【0074】
試料導入室103の内部空間と観察室102の内部空間には、ガイドレール105が配置されている。ガイドレール105は、試料導入室103から観察室102にかけて第5の方向Y2に沿って延在している。ガイドレール105には、試料台107が摺動可能に支持されている。試料台107には、試料ホルダー30のベース部31が着脱可能に装着される。
【0075】
また、ガイドレール105における電子源101と対向する箇所には、絶縁台106が配置されている。また、
図10に示すように、絶縁台106まで移動した試料台107は、電圧印加部110に接続される。電圧印加部110は、電源部110bと、スイッチ110aを有している。電圧印加部110は、絶縁台106まで移動した試料ホルダー30に対して試料台107を介してバイアス電圧を印加する。
【0076】
また、試料導入室103には、ホルダー操作部108と、カバー部材着脱部109が設けられている。ホルダー操作部108は、試料導入室103における観察室102とは反対側の壁面に第5の方向Y2に沿って移動可能に支持されている。ホルダー操作部108は、ガイドレール105に沿って試料台107を移動させる。
【0077】
カバー部材着脱部109は、試料導入室103の上部に配置されている。カバー部材着脱部109は、カバー部材33の接続穴44(
図3及び
図5)に螺合されて、カバー部材33に接続される。
【0078】
1−4−2.観察動作例
次に、上述した構成を有する電子顕微鏡100を用いた試料37の観察動作例について説明する。
【0079】
まず、
図9に示すように、加工が行われた試料37を保持する試料ホルダー30を、電子顕微鏡100の試料台107に装着する。このとき、試料37の加工面37a、遮蔽板34の一面34a及び電場補正板35の一面35aが第6の方向Z2を向いた状態で、試料台107に装着される。なお、カバー部材33は、ベース部31に装着されている。そのため、イオンミリング装置1から
図9に示す電子顕微鏡100の試料導入室103まで搬送する際に、試料37が大気に晒されることがない。
【0080】
次に、予備排気部を用いて試料導入室103の内部空間の空気を排気させ、試料導入室103の内部空間を真空、あるいは略真空にする。次に、カバー部材着脱部109をカバー部材33に接続する。そして、カバー部材着脱部109を操作して、カバー部材33をホルダー本体40から取り外す。このとき、試料導入室103の内部空間は、真空あるいは、略真空となっているため、試料37が大気に晒されることを防ぐことができる。
【0081】
次に、観察室102の不図示の開閉扉を開き、観察室102と試料導入室103を連通させる。そして、ホルダー操作部108によって試料台107をガイドレール105に沿って観察室102の絶縁台106まで摺動させる。これにより、試料台107に装着されたホルダー本体40は、電子源101と第6の方向Z2で対向する。
【0082】
次に、電圧印加部110によって試料台107を介して、ホルダー本体40にバイアス電圧を印加する。また、電子源101から電子ビームL2を試料37の加工面37aに向けて照射し、不図示の検出器によって試料37から放出される電子を検出することにより、試料37の加工面37aの像を観察する。これにより、電子顕微鏡100を用いた試料37の観察動作が完了する。
【0083】
1−4−3.試料周辺の電場の状態
次に、バイアス電圧が印加された際に試料37周りの電場の状態について
図11A及び
図11Bを参照して説明する。
図11A及び
図11Bは、試料37周りの電場の状態を示す図であり、
図11Aは電場補正板35を設けていない場合を示し、
図11Bは電場補正板35を設けた場合を示す。
【0084】
図11Aに示すように、電場補正板35を設けない場合、試料37における遮蔽板34と反対側の端部には、試料保持部32との間に段差が形成される。この状態で電圧を印加すると、電場G1の等電位面は、遮蔽板34の一面34a上では、平行となるが、加工面37aから段差にかけて乱れる。この状態で、電子源101から電子ビームL2を照射した場合、電場G1の等電位面が乱れた箇所で、電子ビームL2が曲がる。その結果、観察される像も歪み、試料37の加工面37aを正確に観察することができない。
【0085】
これに対して、本例の試料ホルダー30では、
図11Bに示すように、電場補正板35を設けている。そして、電場補正板35の一面35aは、遮蔽板34の一面34aと同一平面上に位置しており、試料37の加工面37aとも同一平面上に位置している。そのため、遮蔽板34の一面34a、試料37の加工面37a及び電場補正板35の一面35aは、第4の方向X2及び第5の方向Y2で形成される面と平行に配置され、第6の方向Z2に対して直交する。また、遮蔽板34及び電場補正板35だけでなく、ホルダー本体40を構成する全ての部材が非磁性材料で形成されている。
【0086】
そのため、電圧を印加すると、電場G1の等電位面は、遮蔽板34の一面34aから試料37の加工面37aを通り電場補正板35の一面35aまで全て平行となる。すなわち、試料37の加工面37a上の電場G1が、電場補正板35によって歪みなく平行に補正される。
【0087】
そして、電子源101から照射された電子ビームL2は、電場G1によって曲がることなく、試料37の加工面37aに対して垂直に入射する。これにより、試料37の加工面37aを電子顕微鏡100で正確に観察することができる。
【0088】
このように、試料37を試料ホルダー30とは別の保持部材に移し替えることなく、イオンミリング装置1により加工から電子顕微鏡100による観察まで同一の試料ホルダー30を用いることができる。また、試料37がカバー部材33内に収容された状態で、電子顕微鏡100まで搬送され、試料導入室103に導入することができるため、試料37が大気に晒されることを防ぐことができる。
【0089】
1−5.光学顕微鏡での観察例
次に、上述した構成を有する試料ホルダー30を用いて試料37を光学顕微鏡で観察する例について
図12を参照して説明する。
図12は、試料ホルダー30に保持された試料37を光学顕微鏡で観察する状態を示す模式図である。
【0090】
図12に示すように、光学顕微鏡200は、観察部201と、筐体202と、支持部203と、載置台204と、ホルダースタンド207とを有している。支持部203は、筐体202の上端部に配置され、載置台204は、筐体202の下端部に配置されている。
【0091】
支持部203には、観察部201が取り付けられている。観察部201としては、例えば、接眼レンズと対物レンズからなるレンズ鏡筒である。また、観察部201には、観察対象を撮影するカメラを有している。そして、観察部201は、載置台204と対向する。
【0092】
以下、観察部201の対物レンズの光軸L3と直交する方向を第7の方向X3及び第8の方向Y3とし、光軸L3と平行をなし、第7の方向X3及び第8の方向Y3と直交する方向を第9の方向Z3とする。
【0093】
載置台204における観察部201と対向する一面には、ホルダースタンド207が設けられている。ホルダースタンド207は、略L字状に屈曲した部材により構成されている。ホルダースタンド207における第9の方向Z3と平行に立設する部分には、試料ホルダー30が着脱可能に装着される。
【0094】
試料ホルダー30は、ホルダースタンド207に装着された際に、ホルダー本体40は、第8の方向Yに向けて突出する。そして、ホルダー本体40の試料保持部32に保持された試料37は、観察部201の光軸L3と対向する。
【0095】
なお、本例の試料ホルダー30のカバー部材33には、観察窓38が設けられている。そのため、観察窓38を介してカバー部材33の内部空間を視認することができる。これにより、試料ホルダー30を光学顕微鏡200に装着した場合でも、カバー部材33をベース部31から取り外すことなく、試料37を観察部201で観察することができる。上述したように、試料37の突出量の調整は、調整ツール60を用いてカバー部材33に収容された状態で行うことができる。そのため、試料37を大気に晒すことなく、観察部201で観察を行いながら、試料37の突出量の調整を行うことができる。
【0096】
2.第2の実施の形態例
次に、
図13〜
図15を参照して第2の実施の形態例にかかる試料ホルダーについて説明する。
図13〜
図15は、第2の実施の形態例にかかる試料ホルダーを示す断面図である。また、カバー試料ホルダーを分解して示す断面図である。
【0097】
この第2の実施の形態例にかかる試料ホルダーが、第1の実施の形態例にかかる試料ホルダー30と異なる点は、加工位置調整機構の構成である。そのため、ここでは、加工位置調整機構について説明し、第1の実施の形態例にかかる試料ホルダー30と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0098】
図13〜
図15に示すように、試料ホルダー30Bは、ホルダー本体40Bと、カバー部材33Bとを有している。カバー部材33Bは、主面部41Bと、側面部42とを有している。側面部42には、観察窓38が設けられている。主面部41Bには、排気用弁43と、接続穴44が設けられている。なお、第2の実施の形態例にかかる主面部41Bには、装着孔41aが設けられておらず、カバー側連結ピン46が取り付けられていない。
【0099】
ホルダー本体40Bは、ベース部31Bと、試料37を保持する試料保持部32Bと、遮蔽板34と、電場補正板35と、加工位置調整機構51Bとを有している。ベース部31Bには、試料保持部32Bが取り付けられる取付部31cが形成されている。また、ベース部31Bの外周面には、ベース側装着孔31eが形成されている。ベース側装着孔31eは、フランジ部31aよりもカバー部材33Bから離反する位置に形成されている。そして、ベース側装着孔31eは、後述する試料保持部32Bに設けた保持部側装着孔32bに連通する。
【0100】
試料保持部32Bは、加工位置調整機構51Bを移動可能に支持する支持凹部32aを有している。支持凹部32aには、保持部側装着孔32bが形成されている。この保持部側装着孔32bは、ベース側装着孔31eに連通する。この保持部側装着孔32b及びベース側装着孔31eには、後述する加工位置調整機構51Bの加工位置調整ピン72が取り付けられる。
【0101】
加工位置調整機構51Bは、試料保持部32Bの支持凹部32aに取り付けられる。そして、加工位置調整機構51Bにおける支持凹部32aの底面と対向する側の端部には、傾斜面部51aが形成されている。傾斜面部51aは、支持凹部32aに形成した保持部側装着孔32bと対向し、保持部側装着孔32bに近づくにつれて、支持凹部32aの開口に向けて傾斜している。
【0102】
また、加工位置調整機構51Bは、加工位置調整ピン72を有している。加工位置調整ピン72は、ベース側装着孔31e及び保持部側装着孔32bに回転可能に挿入されている。また、加工位置調整ピン72には、ベース側装着孔31eの内壁に密着するOリング77が設けられている。そのため、カバー部材33Bをホルダー本体40Bに装着した際、支持凹部32aは、密閉される。
【0103】
また、加工位置調整ピン72は、本体側連結部72aと、調整部72bとを有している。調整部72bは、取付部31c内に挿入されており、加工位置調整機構51Bの傾斜面部51aに当接する。本体側連結部72aは、ベース側装着孔31eからベース部31の外側に向けて露出している。この本体側連結部72aには、調整ツール60のツール側連結部60aが連結する。
【0104】
そして、本体側連結部72aとツール側連結部60aを連結し、調整ツール60を回転させると、加工位置調整ピン72が回転する。そして、加工位置調整ピン72が回転することで、加工位置調整機構51Bが取付部31cから挿脱する方向に移動する。これにより、試料37をカバー部材33B内に密閉させた状態で遮蔽板34からの突出量を調整することができる。
【0105】
その他の構成は、第1の実施の形態例にかかる試料ホルダー30と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する試料ホルダー30Bによっても、上述した第1の実施の形態例にかかる試料ホルダー30Bと同様の作用効果を得ることができる。
【0106】
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0107】
上述した実施の形態例では、ベース部と試料保持部とを別部材で構成した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ベース部と試料保持部とを一体に形成してもよい。
【0108】
なお、本明細書において、「平行」及び「直交」等の単語を使用したが、これらは厳密な「平行」及び「直交」のみを意味するものではなく、「平行」及び「直交」を含み、さらにその機能を発揮し得る範囲にある、「略平行」や「略直交」の状態であってもよい。