(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一方の部材に突設された被締め込み側のボルトのねじ部を他方の部材に穿設されたボルト挿通孔に通し、当該ボルト挿通孔を通された被締め込み側のボルトのねじ部に締め込み側のナットを締結して、一方の部材に他方の部材を取り付けるボルト、ナットによる複数の部材間の取付構造にナットに代えて用いる簡易式ナットであって、
両端に開口を有する筒状の部材からなり、内周面の一端側に一端の開口に連続して全周又は全周の一部の断面形状を他端方向に漸次拡大して形成されるテーパ形状部と、内周面の他端側の全周又は全周の一部に前記テーパ形状部の拡大された端部に連続して形成される拡張部とを有する外筒と、
両端に開口を有し、前記両端の開口間にボルトのねじ部を挿通可能な軸挿通部を有する筒状の部材からなり、外周面の一端側に全周又は全周の一部を他端方向に漸次拡大して形成され、前記外筒のテーパ形状部に嵌合可能なテーパ部と、前記テーパ部の外周面と内周面との間に貫通して形成され、前記筒状の部材の軸方向に対して直交する方向に延びるロック孔、及び前記ロック孔に嵌合され、一端にボルトのねじ部に係合可能な係合部を形成され、他端が前記テーパ部の外周面と同じ高さに表出されるロック部材とを有し、前記外筒の前記両端の開口間に挿通される内筒と、
前記外筒内で前記外筒の他端と前記内筒のテーパ形状部との間に介設され、常態として、前記内筒を前記外筒の一端方向に押圧して、前記内筒の一端を前記外筒の一端の開口から突出し、前記内筒のテーパ部を前記外筒のテーパ形状部に嵌合させて前記テーパ形状部で前記ロック孔内の前記ロック部材を押えるばね部材と、
前記外筒と前記内筒との間に介装され、前記外筒を前記内筒の外周面上で前記内筒の一端側に向けて押圧しスライドさせることにより、前記内筒の一端が前記外筒の一端の開口内に没入し、前記内筒のテーパ部が前記外筒のテーパ形状部の拡大された端部側に相対移動されて、前記外筒のテーパ形状部による前記ロック部材の押えを解除し、前記外筒の押圧を解除することにより、前記外筒が前記ばね部材により前記内筒の外周面上を元の位置に弾性復帰されて、前記外筒のテーパ形状部で前記ロック部材を押えるロック部材ロック機構と、
を備え、
ボルトのねじ部に締結する際は、前記外筒を摘んで持ち、前記内筒の一端から前記軸挿通部にボルトのねじ部を挿入し、前記外筒を前記内筒の外周面上で前記内筒の一端側に押圧してスライドさせながら、ボルトのねじ部上で前記外筒とともに前記内筒を送り、ボルトのねじ部上の任意の締結位置で、前記外筒の押圧を解除することにより、ボルトのねじ部上で前記内筒をロックし、
ボルトのねじ部から取り外す際は、前記外筒を摘んで持ち、前記外筒を前記内筒の外周面上で前記内筒の一端側に押すことにより、ボルトのねじ部上の前記内筒のロックを解除し、この状態を保持した状態で、ボルトのねじ部から前記外筒とともに前記内筒を引き抜く、
ことを特徴とする簡易式ナット。
ロック部材は一端に係合部としてボルトのねじ部に係合可能な係止部を有し、他端に外筒のテーパ形状部の受け部を有する小プレートからなり、ロック孔が前記小プレートからなるロック部材を嵌合可能に、かつ前記小プレート一端の前記係止部が内筒の内周面から突出可能に、前記小プレート他端の前記受け部が前記内筒のテーパ部の外周面に表出可能に形成されて、前記ロック孔に嵌合装着される請求項1又は2に記載の簡易式ナット。
ロック部材はボルトのねじ部に係合可能な小ボールからなり、ロック孔が前記小ボールからなるロック部材を嵌合可能に、かつ前記小ボールの球面の一部が一端の係合部として内筒の内周面から突出可能に、その反対側の球面の一部が他端として前記内筒のテーパ部の外周面に表出可能に形成されて、前記ロック孔に嵌合装着される請求項1又は2に記載の簡易式ナット。
ロック部材は一端に係合部としてボルトのねじ部に係合可能な突起を有し、他端に外筒のテーパ形状部の受け部を有する小ピンからなり、ロック孔が前記小ピンからなるロック部材を嵌合可能に、かつ前記小ピン一端の前記突起が内筒の内周面から突出可能に、前記小ピン他端の前記受け部が前記内筒のテーパ部の外周面に表出可能に形成されて、前記ロック孔に嵌合装着される請求項1又は2に記載の簡易式ナット。
一方の部材に突設された被締め込み側のボルトのねじ部を他方の部材に穿設されたボルト挿通孔に通し、当該ボルト挿通孔を通された被締め込み側のボルトのねじ部に締め込み側のナットを締結して、一方の部材に他方の部材を取り付けるボルト、ナットによる複数の部材間の取付構造にボルト、ナットに代えて用いる簡易式ファスナーであって、
請求項1乃至4のいずれかに記載の簡易式ナットと、
内筒の軸挿通部に挿通可能にピン状に形成され、その外周面にロック部材の係合部に係合可能な被係合部を有する取付ピンと、
からなり、
前記取付ピンに前記簡易式ナットを取り付ける際は、前記外筒を摘んで持ち、前記内筒の一端から前記軸挿通部に前記取付ピンを挿入し、前記外筒を前記内筒の外周面上で前記内筒の一端側に押圧してスライドさせながら、前記取付ピン上で前記外筒とともに前記内筒を送り、前記取付ピンの前記被係合部で、前記外筒の押圧を解除することにより、前記取付ピン上で前記内筒をロックし、
前記取付ピンから前記簡易式ナットを取り外す際は、前記外筒を摘んで持ち、前記外筒を前記内筒の外周面上で前記内筒の一端側に押すことにより、前記取付ピン上の前記内筒のロックを解除し、この状態を保持した状態で、前記取付ピンから前記外筒とともに前記内筒を引き抜く、
ことを特徴とする簡易式ナットを用いた簡易式ファスナー。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のナットでは、ナットをボルトから取り外す場合に、ナットの各ナットセグメントがボルトのねじ部に係合(螺合)している状態から、ナットの操作環を引張ることにより筒体の係合部で各ナットセグメントをナットのテーパ孔の小径部から大径部に移動させるため、操作環の引き始めに強い力が必要で操作性が良好とは言い難く、また、ナットに係合されるボルトのねじ部が摩耗するおそれがある、という問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来の問題を解決するもので、ナットをボルトのねじ部に取り付けたりねじ部から取り外したりする作業を、ナットとボルトのねじ部との係合を確実に解除したうえで、ナットを回転させることなく抜き差しで行え、操作性の向上を図り、ボルトのねじ部の摩耗を防止することのできる簡易式ナット、及びこれを用いた簡易式ファスナーを提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、
一方の部材に突設された被締め込み側のボルトのねじ部を他方の部材に穿設されたボルト挿通孔に通し、当該ボルト挿通孔を通された被締め込み側のボルトのねじ部に締め込み側のナットを締結して、一方の部材に他方の部材を取り付けるボルト、ナットによる複数の部材間の取付構造にナットに代えて用いる簡易式ナットであって、
両端に開口を有する筒状の部材からなり、内周面の一端側に一端の開口に連続して全周又は全周の一部の断面形状を他端方向に漸次拡大して形成されるテーパ形状部と、内周面の他端側の全周又は全周の一部に前記テーパ形状部の拡大された端部に連続して形成される拡張部とを有する外筒と、
両端に開口を有し、前記両端の開口間にボルトのねじ部を挿通可能な軸挿通部を有する筒状の部材からなり、外周面の一端側に全周又は全周の一部を他端方向に漸次拡大して形成され、前記外筒のテーパ形状部に嵌合可能なテーパ部と、前記テーパ部の外周面と内周面との間に貫通して形成され、前記筒状の部材の軸方向に対して直交する方向に延びるロック孔、及び前記ロック孔に嵌合され、一端にボルトのねじ部に係合可能な係合部を形成され、他端が前記テーパ部の外周面と同じ高さに表出されるロック部材とを有し、前記外筒の前記両端の開口間に挿通される内筒と、
前記外筒内で前記外筒の他端と前記内筒のテーパ形状部との間に介設され、常態として、前記内筒を前記外筒の一端方向に押圧して、前記内筒の一端を前記外筒の一端の開口から突出し、前記内筒のテーパ部を前記外筒のテーパ形状部に嵌合させて前記テーパ形状部で前記ロック孔内の前記ロック部材を押えるばね部材と、
前記外筒と前記内筒との間に介装され、前記外筒を前記内筒の外周面上で前記内筒の一端側に向けて押圧しスライドさせることにより、前記内筒の一端が前記外筒の一端の開口内に没入し、前記内筒のテーパ部が前記外筒のテーパ形状部の拡大された端部側に相対移動されて、前記外筒のテーパ形状部による前記ロック部材の押えを解除し、前記外筒の押圧を解除することにより、前記外筒が前記ばね部材により前記内筒の外周面上を元の位置に弾性復帰されて、前記外筒のテーパ形状部で前記ロック部材を押えるロック部材ロック機構と、
を備え、
ボルトのねじ部に締結する際は、前記外筒を摘んで持ち、前記内筒の一端から前記軸挿通部にボルトのねじ部を挿入し、前記外筒を前記内筒の外周面上で前記内筒の一端側に押圧してスライドさせながら、ボルトのねじ部上で前記外筒とともに前記内筒を送り、ボルトのねじ部上の任意の締結位置で、前記外筒の押圧を解除することにより、ボルトのねじ部上で前記内筒をロックし、
ボルトのねじ部から取り外す際は、前記外筒を摘んで持ち、前記外筒を前記内筒の外周面上で前記内筒の一端側に押すことにより、ボルトのねじ部上の前記内筒のロックを解除し、この状態を保持した状態で、ボルトのねじ部から前記外筒とともに前記内筒を引き抜く、
ことを要旨とする。
また、この簡易式ナットは各部が次のように構成されることが好ましい。
(1)外筒の他端の開口から突出される内筒の他端に外側に向けて張り出される摘みを有する。
(2)ロック部材は一端に係合部としてボルトのねじ部に係合可能な係止部を有し、他端に外筒のテーパ形状部の受け部を有する小プレートからなり、ロック孔が前記小プレートからなるロック部材を嵌合可能に、かつ前記小プレート一端の前記係止部が内筒の内周面から突出可能に、前記小プレート他端の前記受け部が前記内筒のテーパ部の外周面に表出可能に形成されて、前記ロック孔に嵌合装着される。
(3)ロック部材はボルトのねじ部に係合可能な小ボールからなり、ロック孔が前記小ボールからなるロック部材を嵌合可能に、かつ前記小ボールの球面の一部が一端の係合部として内筒の内周面から突出可能に、その反対側の球面の一部が他端として前記内筒のテーパ部の外周面に表出可能に形成されて、前記ロック孔に嵌合装着される。
(4)ロック部材は一端に係合部としてボルトのねじ部に係合可能な突起を有し、他端に外筒のテーパ形状部の受け部を有する小ピンからなり、ロック孔が前記小ピンからなるロック部材を嵌合可能に、かつ前記小ピン一端の前記突起が内筒の内周面から突出可能に、前記小ピン他端の前記受け部が前記内筒のテーパ部の外周面に表出可能に形成されて、前記ロック孔に嵌合装着される。
【0008】
また、上記目的を達成するために、本発明は、
一方の部材に突設された被締め込み側のボルトのねじ部を他方の部材に穿設されたボルト挿通孔に通し、当該ボルト挿通孔を通された被締め込み側のボルトのねじ部に締め込み側のナットを締結して、一方の部材に他方の部材を取り付けるボルト、ナットによる複数の部材間の取付構造にボルト、ナットに代えて用いる簡易式ファスナーであって、
上記の簡易式ナットと、
内筒の軸挿通部に挿通可能にピン状に形成され、その外周面にロック部材の係合部に係合可能な被係合部を有する取付ピンと、
からなり、
前記取付ピンに前記簡易式ナットを取り付ける際は、前記外筒を摘んで持ち、前記内筒の一端から前記軸挿通部に前記取付ピンを挿入し、前記外筒を前記内筒の外周面上で前記内筒の一端側に押圧してスライドさせながら、前記取付ピン上で前記外筒とともに前記内筒を送り、前記取付ピンの前記被係合部で、前記外筒の押圧を解除することにより、前記取付ピン上で前記内筒をロックし、
前記取付ピンから前記簡易式ナットを取り外す際は、前記外筒を摘んで持ち、前記外筒を前記内筒の外周面上で前記内筒の一端側に押すことにより、前記取付ピン上の前記内筒のロックを解除し、この状態を保持した状態で、前記取付ピンから前記外筒とともに前記内筒を引き抜く、
ことを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
(1)本発明の簡易式ナットによれば、上記の構成により、簡易式ナットをボルトのねじ部に締結する際は、外筒を摘んで持ち、内筒の一端から軸挿通部にボルトのねじ部を挿入し、外筒を内筒の外周面上で内筒の一端側に押圧してスライドさせながら、ボルトのねじ部上で外筒とともに内筒を送り、ボルトのねじ部上の任意の締結位置で、外筒の押圧を解除することにより、ボルトのねじ部上で内筒をロックし、ボルトのねじ部から取り外す際は、外筒を摘んで持ち、外筒を内筒の外周面上で内筒の一端側に押すことにより、ボルトのねじ部上の内筒のロックを解除し、この状態を保持した状態で、ボルトのねじ部から外筒とともに内筒を引き抜くようにしたので、簡易式ナットをボルトのねじ部に取り付けたりねじ部から取り外したりする作業を、簡易式ナットとボルトのねじ部との係合を確実に解除したうえで、簡易式ナットを回転させることなく抜き差しにより行え、操作性の向上を図ることができ、ボルトのねじ部の摩耗を防止することができる、という格別な効果を奏する。
(2)本発明の簡易式ファスナーによれば、上記の構成により、取付ピンに簡易式ナットを取り付ける際は、外筒を摘んで持ち、内筒の一端から軸挿通部に取付ピンを挿入し、外筒を内筒の外周面上で内筒の一端側に押圧してスライドさせながら、取付ピン上で外筒とともに内筒を送り、取付ピンの被係合部で、外筒の押圧を解除することにより、取付ピン上で内筒をロックし、取付ピンから簡易式ナットを取り外す際は、外筒を摘んで持ち、外筒を内筒の外周面上で内筒の一端側に押すことにより、取付ピン上の内筒のロックを解除し、この状態を保持した状態で、取付ピンから外筒とともに内筒を引き抜くようにしたので、簡易式ナットを取付ピンに取り付けたり取り外したりする作業を、簡易式ナットと取付ピンとの係合を確実に解除したうえで、簡易式ナットを回転させることなく抜き差しにより行え、操作性の向上を図ることができる、という格別な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、この発明の実施の形態について図を用いて説明する。
図1、
図2に簡易式ナットの第1の実施の形態を示している。
図1、
図2に示すように、この簡易式ナットN1(以下、単にナットN1という場合がある。)は、一方の部材に突設された被締め込み側のボルトのねじ部を他方の部材に穿設されたボルト挿通孔に通し、当該ボルト挿通孔を通された被締め込み側のボルトのねじ部に締め込み側のナットを締結して、一方の部材に他方の部材を取り付けるボルト、ナットによる複数の部材間の取付構造にナットに代えて用いるもので、外筒1と、外筒1に挿通される内筒2と、外筒1内で外筒1と内筒2との間に介設されるばね部材3と、外筒1と内筒2との間に介装されるロック部材ロック機構4と、を備えて構成される。
【0012】
外筒1は、両端に開口11、12を有する筒状の部材10からなり、内周面の一端側に一端の開口11に連続して全周又は全周の一部の断面形状を一端から他端方向に漸次拡大して形成されるテーパ形状部13と、内周面の他端側の全周又は全周の一部にテーパ形状部13の拡大された端部13Eに連続して形成される拡張部14とを有する。
【0013】
この外筒1の場合、全体が略円筒状に形成され、内周面の一端側に一端の開口11に連続して全周の一部の断面形状を一端から他端方向に漸次拡大して形成される。この場合、外筒1の内周面の一端側で相互に対向する位置(全周の一部)にそれぞれ、内周面と外周面との間を一端から他端方向に漸次肉厚に形成されてテーパ状の凸状部131を有し、これらの凸状部131の内周面側に一端から他端方向に漸次高さ(又は深さ)を拡大された溝132が形成されて、これら溝の底面となる面がテーパ形状部13となっている。なお、この場合、凸状部131それ自体をテーパ状に形成したが、この凸状部131は外筒1の軸心と平行なストレート状のものであってもよい。
このように外筒1の内周面の一端側に一端の開口11に連続して全周の一部の断面形状を一端から他端方向に漸次拡大して形成されたことで、拡張部14は外筒1の内周面の他端側の全周の一部にテーパ形状部13の拡大された端部13Eに連続して形成される。この場合、外筒1の内周面の他端側でテーパ状の凸状部131に連続する相互に対向する位置にそれぞれ、内周面と外周面との間を一定の肉厚に形成されてテーパ状の凸状部131に連続するストレート状の凸状部141を有し、これらの凸状部141の内周面側に一端側の溝132の高さ(又は深さ)を拡大された端部に連続して同じ高さ(又は深さ)、幅の溝142が形成されて、これら溝142の底面となる面が拡張部14になっている。
また、この外筒1の場合、一端は開口され、他端は開口されてこの他端の開口12内に中央に開口150を有する閉塞部材15が嵌め込まれ、外筒1の外周面と閉塞部材15との間にスプリングピン16が挿着されて固定され、他端はこの閉塞部材15の開口150により開口される。
【0014】
内筒2は、両端に開口21、22を有し、両端の開口21、22間にボルトのねじ部を挿通可能な軸挿通部23を有する筒状の部材20からなり、外周面の一端側に全周又は全周の一部を一端から他端方向に漸次拡大して形成され、外筒1のテーパ形状部13に嵌合可能なテーパ部24と、テーパ部24の外周面と内周面との間に貫通して形成され、筒状の部材20の軸方向に対して直交する方向に延びるロック孔25、及びロック孔25に嵌合され、一端にボルトのねじ部に係合可能な係合部26を形成され、他端がテーパ部24の外周面と同じ高さに表出されるロック部材28とを有し、外筒1の両端の開口11、12間に挿通され、内筒2の両端が外筒1の両端の開口11、12から外方に突出される。
また、この内筒2においては、外筒1の他端の開口12から突出される内筒2の他端に外側に向けて張り出される摘み29を有し、ロック部材27は一端に係合部26としてボルトのねじ部に係合可能な係止部(以下、係止部26という。)を有し、他端に外筒1のテーパ形状部13の受け部27を有する小プレートからなり、ロック孔25が小プレートからなるロック部材28を嵌合可能に、かつ小プレート一端の係止部26が内筒2の内周面から突出可能に、小プレート他端の受け部27が内筒2のテーパ部24の外周面に表出可能に形成されて、ロック孔25に嵌合装着される。
【0015】
この内筒2の場合、全体が略円筒状に形成され、外周面の一端側に全周の一部の断面形状が一端から他端方向に漸次拡大して形成される。この場合、内筒2の外周面の一端で相互に対向する位置にそれぞれ、外筒1の内周面の一端側の各溝132の一端に嵌合可能に、かつ各溝132の一端から外方に突出可能に、内周面と外周面との間を一端から他端方向に肉厚に形成されてストレート状の凸状部241を有し、これらの凸状部241に連続して内筒2の外周面の一端側で相互に対向する位置(全周の一部)にそれぞれ、外筒1の一端側の各溝132に嵌合可能に、内周面と外周面との間を一端から他端方向に漸次拡大してテーパ状の凸状部242が形成され、これら凸状部242の外周面がテーパ部24となっている。各テーパ部24には幅方向中央にロック孔25が一つテーパ部24の外周面と内周面との間に貫通して形成される。この場合、ロック孔25はそれぞれ、後述するロック部材28の形状に合わせて、内筒2の軸方向に長い幅狭の平面視矩形状に形成され、また、テーパ部24の外周面側の端部が軸方向にさらに少し長く形成されてロック部材28の受け溝251になっている。また、この場合、各ロック孔25は、一方のロック孔25に対して他方のロック孔25が取付先のボルトのねじ部に合わせて半ピッチだけ内筒2の軸方向に位置をずらして形成される。
そして、これらのロック孔25に装着される各ロック部材28は共通で、それぞれ、厚さの薄い小プレートからなり、一端側が横に長い略矩形状を呈し、一端の係止部26はボルトのねじ部に係合可能に鋸歯状(ギザギザ)に形成され、一端側と他端側との間の中間部に横方向に突出される張り出し部281を有し、他端の縁部は内筒2のテーパ部24の傾斜と同じ角度に斜めに形成されて外筒1のテーパ形状部13の受け部27になっている。また、この場合、各ロック部材28の係止部26、つまり、鋸歯状(ギザギザ)の各山は各ロック部材28の一端縁部において一端縁部の長さ方向に対して直角方向に延びるように形成される。このようにして各ロック部材28は各ロック孔25に、各ロック部材28の張り出し部281が各ロック孔25の受け溝251に支持されて、嵌合装着される。各ロック部材28は各ロック孔25に半ピッチずらして配置されること、各ロック部材28の係止部26の鋸歯状(ギザギザ)の各山が各ロック部材28の一端縁部においてこの端縁部の長さ方向に対して直角方向に向けて形成されることで、偏心構造を取っている。
この内筒2の他端は外筒1の他端の開口12から突出され、この他端に外側に向けて張り出される摘み29を有する。この場合、摘み29は内筒2の他端に一体に、外筒1の拡張部14の外径よりも少し小さい円板状に形成される。
【0016】
ばね部材3は、外筒1内で外筒1の他端と内筒2のテーパ部24との間に介設され、常態として、内筒2を外筒1の一端方向に押圧して、内筒2の一端を外筒1の一端の開口11から突出し、内筒2のテーパ部24を外筒1のテーパ形状部13に嵌合させてテーパ形状部13でロック孔25内のロック部材28を押える。
【0017】
この場合、ばね部材3は内筒2の他端側に巻装可能なコイルスプリング(以下、コイルスプリング3という。)で、コイルスプリング3が内筒2の他端側に巻き付けられて、一端が内筒2のテーパ部24の他端面に係止され、他端が外筒1他端の閉塞部材15の内面(開口150の周囲)に係止されて、外筒1内で内筒2のテーパ部24の他端面と外筒1他端の閉塞部材15との間に圧縮して配置される。
このようにしてコイルスプリング3は常態として、内筒2を外筒1の一端方向に押圧して、内筒2のストレート状の凸状部241を有する一端を外筒1の一端の開口11から突出し、内筒2の各テーパ部24を外筒1の各テーパ形状部13に圧接嵌合させて外筒1の各テーパ形状部13で各ロック孔25内の各ロック部材28を押え保持する。
【0018】
ロック部材ロック機構4は、外筒1、内筒2及びコイルスプリング3により構成されて、外筒1と内筒2との間に介装され、外筒1を内筒2の外周面上で内筒2の一端側に向けて押圧しスライドさせることにより、内筒2の一端が外筒1の一端の開口11内に没入し、内筒2のテーパ部24が外筒1のテーパ形状部13の拡大された端部13E側に相対移動されて、外筒1のテーパ形状部13によるロック部材25の押えを解除し、外筒1の押圧を解除することにより、外筒1がコイルスプリング3により内筒2の外周面上を元の位置に弾性復帰されて、外筒1のテーパ形状部13でロック部材28を押える構造になっている。
【0019】
簡易式ナットN1はかかる構成からなり、このナットN1をボルトのねじ部に締結する際は、外筒1を摘んで持ち、内筒2の一端から軸挿通部23にボルトのねじ部を挿入し、外筒1を内筒2の外周面上で内筒2の一端側に押圧してスライドさせながら、ボルトのねじ部上で外筒1とともに内筒2を送り、ボルトのねじ部上の任意の締結位置で、外筒1の押圧を解除することにより、ボルトのねじ部上で内筒2をロックし、このナットN1をボルトのねじ部から取り外す際は、外筒1を摘んで持ち、外筒1を内筒2の外周面上で内筒1の一端側に押すことにより、ボルトのねじ部上の内筒2のロックを解除し、この状態を保持した状態で、ボルトのねじ部から外筒1とともに内筒2を引き抜くようになっている。
【0020】
図3に一方の部材に突設された被締め込み側のボルトを他方の部材に穿設されたボルト挿通孔に通し、当該ボルト挿通孔に通された被締め込み側のボルトに簡易式ナットを締結して、一方の部材に他方の部材を取り付けるボルト、簡易式ナットによる2部材間の取付構造を例示している。
図3において、一方の部材A1から突設され、他方の部材A2のボルト挿通孔0に通された被締め込み側のボルトBに簡易式ナットN1を締結する場合、
図3(1)に示すように、まず、簡易式ナットN1を外筒1を摘んで持ち、内筒2の一端から軸挿通部23にボルトBのねじ部bを挿入する。そして、
図3(2)を参照すると、外筒1を内筒2の外側で(コイルスプリング3の付勢力に抗して)内筒2の一端側に押圧してスライドさせながら、この簡易式ナットN1を2部材A1、A2に向けて押し込むと、これと同時に、内筒2の一端が外筒1の一端の開口11内に没入し、内筒2の各テーパ部24が外筒1の各テーパ形状部13の一端から他端へ、つまり、拡大された端部13E側に相対移動されて、外筒1の各テーパ形状部13による各ロック部材28の押えが解除されることにより、各ロック孔25の各ロック部材28のロックが解除され、内筒2の軸挿通部23に挿入されたボルトBのねじ部bは、各ロック部材28を各ロック孔25に押し戻しながら(つまり、各ロック孔25の各ロック部材28はボルトBの各ねじ山に押される毎に、各ロック部材28一端の係止部26は、鋸歯状の山がボルトBの各ねじ山の斜面に沿って各ねじ山に乗り上げて、各ロック孔25内に引込み、他端は受け部27が内筒2の各ロック孔25から内筒2のテーパ部24の外周面上に突出して、各ロック孔25の内周面側、外周面側で出没しながら)、内筒2の軸挿通部23の奥まで円滑に挿通される。そして、このナットN1をボルトBのねじ部bの任意の締結位置まで送ったところで、外筒1の押圧を解除すると、これと同時に、外筒1がコイルスプリング3により内筒2の外周面上を元の位置に弾性復帰されて、外筒1の各テーパ形状部13で各ロック孔25の各ロック部材28が押えロックされる。かくして、簡易式ナットN1はボルトBのねじ部bの任意の締結位置でロックされる。なお、この場合、各ロック孔25の各ロック部材28は相互に半ピッチずれており、各ロック部材28一端の係止部26、すなわち、各ロック部材28の一端縁部のギザギサの各山が各ロック部材28の一端縁部においてこの端縁部の長さ方向に対して直角方向に向けられているので、各ロック部材28のギザギサの各山がボルトBのねじ部bにきつく食い込み、ナットN1はボルトBのねじ部b上に確実に固定される。このナットN1の場合、ナットN1を引張れば引張るほど、各ロック部材28のギザギサの各山がボルトBのねじ部bに食い付くので、ナットN1はボルトBのねじ部b上に高い強度でロックされる。
また反対に、被締め込み側のボルトBに締結された簡易式ナットN1を取り外す場合は、
図3(2)を参照すると、まず、簡易式ナットN1を外筒1を摘んで持ち、外筒1を内筒2の外側で(コイルスプリング3の付勢力に抗して)内筒2の一端側に押圧してスライドさせると、これと同時に、内筒2の一端が外筒1の一端の開口11内に没入し、内筒2の各テーパ部24が外筒1の各テーパ形状部13の一端から他端へ、つまり、拡大された端部13E側に相対移動されて、外筒1の各テーパ形状部13による各ロック部材28の押えが解除されることにより、各ロック孔25の各ロック部材28のロックが解除される。そして、この状態の外筒1を保持して、この場合、内筒2の一端側に押した外筒1と内筒2の他端の摘み29を合せて摘んで、簡易式ナットN1をボルトBのねじ部bから引き抜けばよい。このようにナットN1を取り外すときは、外筒1を押しスライドさせる、つまり、このワンアクションを入れるようにしたことで、ナットN1の脱落事故を防止することができる。
なお、被締め込み側のボルトBに簡易式ナットN1を取り付ける場合でも、このナットN1を取り外す場合と同様に、あらかじめ外筒1を内筒2の外側で内筒2の一端側に押圧してスライドさせ、各ロック孔25の各ロック部材28のロックを解除して、これを保持した状態から、すなわち、内筒2の一端側に押した外筒1と内筒2の他端の摘み29を合せて摘んだ状態にして、内筒2の軸挿通部23にボルトBのねじ部bを差し通すようにしてもよい。
【0021】
また、このナットN1は、内筒2の他端(開口22)から軸挿通部23にボルトBのねじ部bを挿入することもできる。この場合も、ナットN1を取り外す場合と同様に、あらかじめ外筒1を内筒2の外側で内筒1の一端側に押圧してスライドさせ、各ロック孔25の各ロック部材28のロックを解除して、これを保持した状態から、内筒2の軸挿通部23に他端からボルトBのねじ部bを差し通せばよい。
【0022】
以上説明したように、この簡易式ナットN1によれば、このナットN1をボルトのねじ部に締結する際は、外筒1を摘んで持ち、内筒2の一端から軸挿通部23にボルトのねじ部を挿入し、外筒1を内筒2の外周面上で内筒2の一端側に押圧してスライドさせながら、ボルトのねじ部上で外筒1とともに内筒2を送り、ボルトのねじ部上の任意の締結位置で、外筒1の押圧を解除することにより、ボルトのねじ部上で内筒2をロックし、このナットN1をボルトのねじ部から取り外す際は、外筒1を摘んで持ち、外筒1を内筒2の外周面上で内筒2の一端側に押すことにより、ボルトのねじ部上の内筒2のロックを解除し、この状態を保持した状態で、ボルトのねじ部から外筒1とともに内筒2を引き抜くようにしたので、簡易式ナットN1をボルトのねじ部に取り付けたりねじ部から取り外したりする作業を、簡易式ナットN1とボルトのねじ部との係合を確実に解除したうえで、簡易式ナットN1を回転させることなく抜き差しで行え、操作性の向上を図ることができ、ボルトのねじ部の摩耗を防止することができる。
したがって、このナットN1によると、ナットN1を脱着式にしたことで、ナットN1の取り付け個数が多い場合でも、ナットN1をボルトの所定位置まで締め付けたり、締め付けられたナットN1をボルトから取り外したりするのに、従来のような煩雑な手間がかからず、誰もがナットN1をボルトのねじ部に同じように締結することができ、ナットN1を締め忘れることもない。
【0023】
また、このナットN1では、内筒2の軸挿通部23が内筒2の両端間を貫通して形成され、ロック部材28がナットN1の一端側に設けられているので、ナットN1をボルトに取り付ける場合に、短いボルトの場合は、ねじ部を一端の開口11から軸挿通部23内に収容して取り付け、長いボルトの場合は、ねじ部を一端の開口21から軸挿通部23に通し他端の開口22から突き出して取り付けることができ、短いボルトでも長いボルトでも同様に使用することができる。
【0024】
なお、この実施の形態では、外筒1は、両端に開口11、12を有する筒状の部材10からなり、内周面の一端側に一端の開口11に連続して全周の一部の断面形状を一端から他端方向に漸次拡大して形成されるテーパ形状部13と、内周面の他端側の全周の一部にテーパ形状部13の拡大された端部13Eに連続して形成される拡張部14とを有し、内筒2は、両端に開口21、22を有し、両端の開口21、22間にボルトのねじ部を挿通可能な軸挿通部23を有する筒状の部材20からなり、外周面の一端側に全周の一部を一端から他端方向に漸次拡大して形成され、外筒1のテーパ形状部13に嵌合可能なテーパ部24と、テーパ部24の外周面と内周面との間に貫通して形成され、筒状の部材20の軸方向に対して直交する方向に延びるロック孔25、及びロック孔25に嵌合され、一端にボルトのねじ部に係合可能な係止部26を形成され、他端がテーパ部24の外周面と同じ高さに表出されるロック部材28とを有するものとしたが、外筒1は、両端に開口を有する筒状の部材からなり、内周面の一端側に一端の開口に連続して全周の断面形状を一端から他端方向に漸次拡大して形成されるテーパ形状部と、内周面の他端側の全周にテーパ形状部の拡大された端部に連続して形成される拡張部とを有し、内筒2は、両端に開口を有し、両端の開口間にボルトのねじ部を挿通可能な軸挿通部を有する筒状の部材からなり、外周面の一端側に全周を一端から他端方向に漸次拡大して形成され、外筒のテーパ形状部に嵌合可能なテーパ部と、テーパ部の外周面と内周面との間に貫通して形成され、筒状の部材の軸方向に対して直交する方向に延びるロック孔、及びロック孔に嵌合され、一端にボルトのねじ部に係合可能な係合部を形成され、他端がテーパ部の外周面と同じ高さに表出されるロック部材とを有するものとしてもよい。
このようにしても上記実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
また、この実施の形態では、ロック部材28は一端に係合部26としてボルトのねじ部に係合可能な係止部を有し、他端に外筒1のテーパ形状部13の受け部27を有する小プレートからなり、ロック孔25が小プレートからなるロック部材28を嵌合可能に、かつ小プレート一端の係止部26が内筒2の内周面から突出可能に、小プレート他端の受け部が内筒2のテーパ部24の外周面に表出可能に形成されて、ロック孔25に嵌合装着されるものとしたが、ロック部材28はボルトのねじ部に係合可能な小ボールからなり、ロック孔25が小ボールからなるロック部材を嵌合可能に、かつ小ボールの球面の一部が一端の係合部として内筒の内周面から突出可能に、その反対側の球面の一部が他端として内筒のテーパ部の外周面に表出可能に形成されて、ロック孔に嵌合装着されるものとしてもよく(
図5参照)、さらに、ロック部材28は一端に係合部としてボルトのねじ部に係合可能な突起を有し、他端に外筒のテーパ形状部の受け部を有する小ピンからなり、ロック孔25が小ピンからなるロック部材を嵌合可能に、かつ小ピン一端の突起が内筒の内周面から突出可能に、小ピン他端の受け部が内筒のテーパ部の外周面に表出可能に形成されて、ロック孔に嵌合装着されるようにしてもよい。
このようにしても上記実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
さらに、この実施の形態では、内筒2にロック孔25、ロック部材28が2つずつ設けられているが、内筒2にロック孔25、ロック部材28が3つずつ以上設けられてもよく、また、1つずつ設けられてもよい。
このようにしても上記実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0025】
図4、
図5に簡易式ナットの第2の実施の形態を示している。
図4、
図5に示すように、この簡易式ナットN2(以下、単にナットN2という場合がある。)は、一方の部材に突設された被締め込み側のボルトのねじ部を他方の部材に穿設されたボルト挿通孔に通し、当該ボルト挿通孔を通された被締め込み側のボルトのねじ部に締め込み側のナットを締結して、一方の部材に他方の部材を取り付けるボルト、ナットによる複数の部材間の取付構造にナットに代えて用いるもので、外筒1と、外筒1に挿通される内筒2と、外筒1内で外筒1と内筒2との間に介設されるばね部材3と、外筒1と内筒2との間に介装されるロック部材ロック機構4と、を備えて構成される。
【0026】
外筒1は、両端に開口11、12を有する筒状の部材10からなり、内周面の一端側に一端の開口11に連続して全周又は全周の一部の断面形状を一端から他端方向に漸次拡大して形成されるテーパ形状部13と、内周面の他端側の全周又は全周の一部にテーパ形状部13の拡大された端部13Eに連続して形成される拡張部14を有する。
【0027】
この外筒1の場合、全体が略円筒状に形成され、内周面の一端側に一端の開口11に連続して全周の断面形状を一端から他端方向に漸次拡大して形成される。この場合、外筒1の内周面の一端側が一端から他端方向に漸次拡開形成されて、一端側の内周面全体がテーパ形状部13となっている。なお、この場合、外周面1の一端側もまたテーパ状に形成したが、この外周面の一端側はこの外筒1の軸心と平行なストレート状のものであってもよい。
このように外筒1の内周面の一端側に一端の開口11に連続して全周の断面形状を一端から他端方向に漸次拡大して形成されたことで、拡張部14は外筒1の内周面の他端側の全周にテーパ形状部13の拡大された端部13Eに連続して形成される。この場合、外筒1の内周面の他端側がテーパ形状部13に連続してストレート状に形成されて、他端側の内周面全体が円筒状の拡張部14になっている。
また、この外筒1の場合、一端は開口され、他端は開口されてこの他端の開口12内に中央に開口150を有する閉塞部材15が嵌め込まれ、外筒1の外周面と閉塞部材15との間にスプリングピン16が挿着されて固定され、他端はこの閉塞部材15の開口150により開口される。
【0028】
内筒2は、両端に開口21、22を有し、両端の開口21、22間にボルトのねじ部を挿通可能な軸挿通部23を有する筒状の部材20からなり、外周面の一端側に全周を一端から他端方向に漸次拡大して形成され、外筒1のテーパ形状部13に嵌合可能なテーパ部24と、テーパ部24の外周面と内周面との間に貫通して形成され、筒状の部材20の軸方向に対して直交する方向に延びるロック孔25、及びロック孔25に嵌合され、一端にボルトのねじ部に係合可能な係合部26を形成され、他端がテーパ部24の外周面と同じ高さに表出されるロック部材28とを有し、外筒1の両端の開口11、12間に挿通され、内筒2の両端が外筒1の両端の開口11、12から外方に突出される。
また、この内筒2においては、外筒1の他端の開口12から突出される内筒2の他端に外側に向けて張り出される摘み29を有し、ロック部材28はボルトのねじ部に係合可能な小ボールからなり、ロック孔25が小ボールからなるロック部材28を嵌合可能に、かつ小ボールの球面の一部が一端の係合部26として内筒2の内周面から突出可能に、その反対側の球面の一部が他端として内筒2のテーパ部24の外周面に表出可能に形成されて、ロック孔25に嵌合装着される。
【0029】
この内筒2の場合、全体が略円筒状に形成され、外周面の一端側に全周の断面形状が一端から他端方向に漸次拡大して形成される。この場合、内筒2の外周面の一端に外筒1の内周面の一端開口11に嵌合可能に円筒部211が設けられ、この円筒部211に連続して内筒2の外周面の一端側の全周に、外筒1の一端側のテーパ形状部13に嵌合可能にテーパ部24が設けられる。このテーパ部24には軸方向中間で同一円周上に等間隔に3つのロック孔25がテーパ部24の外周面と内周面との間に貫通して形成される。この場合、ロック孔25はそれぞれ、後述するロック部材28の形状に合わせて球体を保持可能に形成される。
そして、これらのロック孔25に装着される各ロック部材28は同一の小ボールからなる。これらのロック部材28は、内筒2の各ロック孔25に、各小ボール球面の一部が一端の係合部26として内筒2の内周面から突出可能に、その反対側の球面の一部が他端として内筒2のテーパ部24の外周面と同じ高さに表出されて、嵌合装着される。
この内筒2の他端は外筒1の他端の開口12から突出され、この他端に外側に向けて張り出される摘み29を有する。この場合、摘み部29は外筒1の他端面と略同じ大きさの円板状に形成される。
【0030】
ばね部材3は、外筒1内で外筒1の他端と内筒2のテーパ部24との間に介設され、常態として、内筒2を外筒1の一端方向に押圧して、内筒2の一端を外筒1の一端の開口11から突出し、内筒2のテーパ部24を外筒1のテーパ形状部13に嵌合させてテーパ形状部13でロック孔25内のロック部材28を押える。
【0031】
この場合、ばね部材3は内筒2の他端側に巻装可能なコイルスプリング(以下、コイルスプリング3という。)で、コイルスプリング3が内筒2の他端側に巻き付けられて、一端が内筒2のテーパ部24の他端面に係止され、他端が外筒1他端の閉塞部材15の内面(開口150の周囲)に係止されて、外筒1内で内筒2のテーパ部24の他端面と外筒1他端の閉塞部材15との間に圧縮して配置される。
このようにしてコイルスプリング3は常態として、内筒2を外筒1の一端方向に押圧して、内筒2の一端の円筒部211(の先端部)を外筒1の一端の開口11から突出し、内筒2の各テーパ部24を外筒1の各テーパ形状部13に圧接嵌合させて外筒1の各テーパ形状部13で各ロック孔25内の各ロック部材28を押え保持する。
【0032】
ロック部材ロック機構4は、外筒1、内筒2及びコイルスプリング3により構成されて、外筒1と内筒2との間に介装され、外筒1を内筒2の外周面上で内筒2の一端側に向けて押圧しスライドさせることにより、内筒2の一端が外筒1の一端の開口11内に没入し、内筒2のテーパ部24が外筒1のテーパ形状部13の拡大された端部13E側に相対移動されて、外筒1のテーパ形状部13によるロック部材28の押えを解除し、外筒1の押圧を解除することにより、外筒1がコイルスプリング3により内筒2の外周面上を元の位置に弾性復帰されて、外筒1のテーパ形状部13でロック部材28を押える構造になっている。
【0033】
簡易式ナットN2はかかる構成からなり、このナットN2をボルトのねじ部に締結する際は、外筒1を摘んで持ち、内筒2の一端から軸挿通部23にボルトのねじ部を挿入し、外筒1を内筒2の外周面上で内筒2の一端側に押圧してスライドさせながら、ボルトのねじ部上で外筒1とともに内筒2を送り、ボルトのねじ部上の任意の締結位置で、外筒1の押圧を解除することにより、ボルトのねじ部上で内筒2をロックし、このナットN2をボルトのねじ部から取り外す際は、外筒1を摘んで持ち、外筒1を内筒2の外周面上で内筒2の一端側に押すことにより、ボルトのねじ部上の内筒2のロックを解除し、この状態を保持した状態で、ボルトのねじ部から外筒1とともに内筒2を引き抜くようになっている。
【0034】
図6に一方の部材に突設された被締め込み側のボルトを他方の部材に穿設されたボルト挿通孔に通し、当該ボルト挿通孔に通された被締め込み側のボルトに簡易式ナットを締結して、一方の部材に他方の部材を取り付けるボルト、簡易式ナットによる2部材間の取付構造を例示している。
図6において、一方の部材A1から突設され、他方の部材A2のボルト挿通孔0に通された被締め込み側のボルトBに簡易式ナットN2を締結する場合、まず、簡易式ナットN2を外筒1を摘んで持ち、内筒2の一端から軸挿通部23にボルトBのねじ部bを挿入する。そして、外筒1を内筒2の外側で(コイルスプリング3の付勢力に抗して)内筒2の一端側に押圧してスライドさせながら、この簡易式ナットN2を2部材A1、A2に向けて押し込むと、これと同時に、内筒2の一端が外筒1の一端の開口11内に没入し、内筒2のテーパ部24が外筒1のテーパ形状部13の一端から他端へ、つまり、拡大された端部13E側に相対移動されて、外筒1の各テーパ形状部13による各ロック部材28の押えが解除されることにより、各ロック孔25の各ロック部材28のロックが解除され、内筒2の軸挿通部23に挿入されたボルトBのねじ部bは、各ロック部材28を各ロック孔25に押し戻しながら(つまり、各ロック孔25の各ロック部材28はボルトBの各ねじ山に押される毎に、各ロック部材28の一端はボルトBの各ねじ山に乗り上げて、各ロック孔25内に引込み、他端は内筒2の各ロック孔25から内筒2のテーパ部24の外周面上に突出して、各ロック孔25の内周面側、外周面側で出没しながら)、内筒2の軸挿通部23の奥まで円滑に挿通される。この場合、ロック部材28が小ボールなので、ボルトBのねじ部bは、内筒2の軸挿通部23にするするっと円滑に入る。そして、このナットN2をボルトBのねじ部bの任意の締結位置まで送ったところで、外筒1の押圧を解除すると、これと同時に、外筒1がコイルスプリング3により内筒2の外周面上を元の位置に弾性復帰されて、外筒1の各テーパ形状部13で各ロック孔25の各ロック部材28が押えロックされる。これにより、内筒2の軸挿通部23に通されたボルトBのねじ部bは内筒2のテーパ部24の同一円周上3箇所の各ロック孔25の各ロック部材28により不均等に干渉されて締め込まれる。かくして、簡易式ナットN2はボルトBのねじ部bの任意の締結位置でロックされる。
また反対に、被締め込み側のボルトBに締結された簡易式ナットN2を取り外す場合は、まず、簡易式ナットN2を外筒1を摘んで持ち、外筒1を内筒2の外側で(コイルスプリング3の付勢力に抗して)内筒2の一端側に押圧してスライドさせると、これと同時に、内筒2の一端が外筒1の一端の開口11内に没入し、内筒2の各テーパ部24が外筒1の各テーパ形状部13の一端から他端へ、つまり、拡大された端部13E側に相対移動されて、外筒1の各テーパ形状部13による各ロック部材28の押えが解除されることにより、各ロック孔25の各ロック部材28のロックが解除される。そして、この状態の外筒1を保持して、この場合、内筒2の一端側に押した外筒1と内筒2の他端の摘み29を合せて摘んで、簡易式ナットN2をボルトBのねじ部bから引き抜けばよい。このようにナットN2を取り外すときは、外筒1を押しスライドさせる、つまり、このワンアクションを入れるようにしたことで、ナットN2の脱落事故を防止することができる。
なお、被締め込み側のボルトBに簡易式ナットN2を取り付ける場合でも、このナットN2を取り外す場合と同様に、あらかじめ外筒1を内筒2の外側で内筒2の一端側に押圧してスライドさせ、各ロック孔25の各ロック部材28のロックを解除して、これを保持した状態から、すなわち、内筒2の一端側に押した外筒1と内筒2の他端の摘み29を合せて摘んだ状態にして、内筒2の軸挿通部23にボルトBのねじ部bを差し通すようにしてもよい。
【0035】
また、このナットN2は、内筒2の他端開口22から軸挿通部23にボルトBのねじ部bを挿入することもできる。この場合も、ナットN2を取り外す場合と同様に、あらかじめ外筒1を内筒2の外側で内筒2の一端側に押圧してスライドさせ、各ロック孔25の各ロック部材28のロックを解除して、これを保持した状態から、内筒2の軸挿通部23に他端からボルトBのねじ部bを差し通せばよい。
【0036】
以上説明したように、この簡易式ナットN2によれば、このナットN2をボルトのねじ部に締結する際は、外筒1を摘んで持ち、内筒2の一端から軸挿通部23にボルトのねじ部を挿入し、外筒1を内筒2の外周面上で内筒2の一端側に押圧してスライドさせながら、ボルトのねじ部上で外筒1とともに内筒2を送り、ボルトのねじ部上の任意の締結位置で、外筒1の押圧を解除することにより、ボルトのねじ部上で内筒2をロックし、このナットN2をボルトのねじ部から取り外す際は、外筒1を摘んで持ち、外筒1を内筒2の外周面上で内筒2の一端側に押すことにより、ボルトのねじ部上の内筒2のロックを解除し、この状態を保持した状態で、ボルトのねじ部から外筒1とともに内筒2を引き抜くようにしたので、簡易式ナットN2をボルトのねじ部に取り付けたりねじ部から取り外したりする作業を、簡易式ナットN2とボルトのねじ部との係合を確実に解除したうえで、簡易式ナットN2を回転させることなく抜き差しで行え、操作性の向上を図ることができ、ボルトのねじ部の摩耗を防止することができる。
したがって、このナットN2によると、ナットN2を脱着式にしたことで、ナットN2の取り付け個数が多い場合でも、ナットN2をボルトの所定位置まで締め付けたり、締め付けられたナットN2をボルトから取り外したりするのに、従来のような煩雑な手間がかからず、誰もがナットN2をボルトのねじ部に同じように締結することができ、ナットN2を締め忘れることもない。
【0037】
また、このナットN2では、内筒2の軸挿通部23が内筒2の両端間を貫通して形成され、ロック部材28がナットN2の一端側に設けられているので、ナットN2をボルトに取り付ける場合に、短いボルトの場合は、ねじ部を一端の開口21から軸挿通部23内に収容して取り付け、長いボルトの場合は、ねじ部を一端の開口21から軸挿通部23に通し他端の開口22から突き出すことで取り付けることができ、短いボルトでも長いボルトでも同様に使用することができる。
【0038】
なお、この実施の形態では、外筒1は、両端に開口11、12を有する筒状の部材10からなり、内周面の一端側に一端の開口11に連続して全周の断面形状を一端から他端方向に漸次拡大して形成されるテーパ形状部13と、内周面の他端側の全周にテーパ形状部13の拡大された端部13Eに連続して形成される拡張部14とを有し、内筒2は、両端に開口21、22を有し、両端の開口21、22間にボルトのねじ部を挿通可能な軸挿通部23を有する筒状の部材20からなり、外周面の一端側に全周を一端から他端方向に漸次拡大して形成され、外筒1のテーパ形状部13に嵌合可能なテーパ部24と、テーパ部24の外周面と内周面との間に貫通して形成され、筒状の部材20の軸方向に対して直交する方向に延びるロック孔25、及びロック孔25に嵌合され、一端にボルトのねじ部に係合可能な係合部26を形成され、他端がテーパ部24の外周面と同じ高さに表出されるロック部材28とを有するものとしたが、外筒1は、両端に開口を有する筒状の部材からなり、内周面の一端側に一端の開口に連続して全周の一部の断面形状を一端から他端方向に漸次拡大して形成されるテーパ形状部と、内周面の他端側の全周の一部にテーパ形状部の拡大された端部に連続して形成される拡張部とを有し、内筒2は、両端に開口を有し、両端の開口間にボルトのねじ部を挿通可能な軸挿通部を有する筒状の部材からなり、外周面の一端側に全周の一部を一端から他端方向に漸次拡大して形成され、外筒のテーパ形状部に嵌合可能なテーパ部と、テーパ部の外周面と内周面との間に貫通して形成され、筒状の部材の軸方向に対して直交する方向に延びるロック孔、及びロック孔に嵌合され、一端にボルトのねじ部に係合可能な係合部を形成され、他端がテーパ部の外周面と同じ高さに表出されるロック部材とを有するものとしてもよい(
図1、
図2参照)。
このようにしても上記実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
また、この実施の形態では、ロック部材28はボルトのねじ部に係合可能な小ボールからなり、ロック孔25が小ボールからなるロック部材28を嵌合可能に、かつ小ボールの球面の一部が一端の係合部として内筒1の内周面から突出可能に、その反対側の球面の一部が他端として内筒2のテーパ部24の外周面に表出可能に形成されて、ロック孔25に嵌合装着されるものとしたが、ロック部材28は一端に係合部としてボルトのねじ部に係合可能な係止部を有し、他端に外筒のテーパ形状部の受け部を有する小プレートからなり、ロック孔25が小プレートからなるロック部材を嵌合可能に、かつ小プレート一端の係止部が内筒の内周面から突出可能に、小プレート他端の受け部が内筒のテーパ部の外周面に表出可能に形成されて、ロック孔に嵌合装着されるものとしてもよく(
図1、
図2参照)、さらに、ロック部材28は一端に係合部としてボルトのねじ部に係合可能な突起を有し、他端に外筒のテーパ形状部の受け部を有する小ピンからなり、ロック孔25が小ピンからなるロック部材を嵌合可能に、かつ小ピン一端の突起が内筒の内周面から突出可能に、小ピン他端の受け部が内筒のテーパ部の外周面に表出可能に形成されて、ロック孔25に嵌合装着されるようにしてもよい。
このようにしても上記実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
さらに、この実施の形態では、内筒2にロック孔25、ロック部材28が3つずつ設けられているが、内筒2にロック孔25、ロック部材28がそれぞれ、4つ以上設けられてもよく、また、2つずつ又は1つずつ設けられてもよい。
このようにしても上記実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0039】
図7に簡易式ファスナーの一実施の形態を示している。
図7に示すように、この簡易式ファスナーF(以下、単にファスナーFという場合がある。)は、一方の部材に突設された被締め込み側のボルトのねじ部を他方の部材に穿設されたボルト挿通孔に通し、当該ボルト挿通孔を通された被締め込み側のボルトのねじ部に締め込み側のナットを締結して、一方の部材に他方の部材を取り付けるボルト、ナットによる複数の部材間の取付構造にボルト、ナットに代えて用いるもので、簡易式ナットN2と、取付ピンPとからなる。
【0040】
簡易式ナットN2は既述のとおりである。
なお、この場合、ロック部材28は後述する取付ピンPの被係合部30に係合可能な小ボールからなり、ロック孔25が小ボールからなるロック部材28を嵌合可能に、かつ小ボールの球面の一部が一端の係合部26として内筒2の内周面から突出可能に、その反対側の球面の一部が他端として内筒2のテーパ部24の外周面と同じ高さに表出可能に形成されて、ロック孔25に嵌合装着される。
【0041】
取付ピンPは、簡易式ナットN2の内筒2の軸挿通部23に挿通可能にピン状に形成され、その外周面に各ロック部材28の係合部26に係合可能な被係合部30を有する。
この場合、取付ピンPは内筒2の軸挿通部23に挿通可能に所定の径、長さを有し、その外周面には所定の位置に被係合部30としてロック部材28の小ボールの球面の一部が嵌合可能に断面円弧状の凹部(以下、凹部30という。)が形成される。
【0042】
このようにして簡易式ファスナーFは、取付ピンPに簡易式ナットN2を取り付ける際は、外筒1を摘んで持ち、内筒2の一端から軸挿通部23に取付ピンPを挿入し、内筒2の外周面上で外筒1を内筒2の一端側に押圧してスライドさせながら、取付ピンP上で外筒1とともに内筒2を送り、取付ピンPの凹部30の位置で、外筒1の押圧を解除することにより、取付ピンP上で内筒2がロックされ、取付ピンPから簡易式ナットN2を取り外す際は、外筒1を摘んで持ち、内筒2の外周面上で外筒1を内筒2の一端側に押すことにより、取付ピンP上で内筒2のロックが解除され、この状態を保持した状態で、取付ピンPから外筒1とともに内筒2を引き抜くようになっている。
【0043】
ここでは、特に図示していないが、この簡易式ファスナーFを用いて、一方の部材と他方の部材を締結する場合も、一方の部材に穿設されたピン挿通孔に取付ピンPを通し、この一方の部材から突設された取付ピンPを他方の部材に穿設されたボルト挿通孔に通し、このボルト挿通孔に通された取付ピンPに簡易式ナットN2を締結する。この場合、まず、簡易式ナットN2を外筒1を摘んで持ち、内筒2の一端から軸挿通部23に取付ピンPを挿入する。そして、外筒1を内筒2の外側で(コイルスプリング3の付勢力に抗して)内筒2の一端側に押圧してスライドさせながら、この簡易式ナットN2を2部材に向けて押し込むと、これと同時に、内筒2の一端が外筒1の一端の開口11内に没入し、内筒2の各テーパ部24が外筒1の各テーパ形状部13の一端から他端へ、つまり、拡大された端部13E側に相対移動されて、外筒1の各テーパ形状部13による各ロック部材28の押えが解除されることにより、各ロック孔25の各ロック部材28のロックが解除され、内筒2の軸挿通部23に挿入された取付ピンPは、各ロック部材28を各ロック孔25に押し戻しながら、内筒2の軸挿通部23の奥まで円滑に挿通される。そして、このナットN2を取付ピンPの凹部30の位置まで送ったところで、外筒1の押圧を解除すると、これと同時に、外筒1がコイルスプリング3により内筒2の外周面上を元の位置に弾性復帰されて、外筒1の各テーパ形状部13で各ロック孔25の各ロック部材28が押えロックされる。かくして、簡易式ナットN2は取付ピンPの凹部30の位置でロックされる。
また反対に、被締め込み側の取付ピンPに固定された簡易式ナットN2を取り外す場合は、まず、簡易式ナットN2を外筒1を摘んで持ち、外筒1を内筒2の外側で(コイルスプリング3の付勢力に抗して)内筒2の一端側に押圧してスライドさせると、これと同時に、内筒2の一端が外筒1の一端の開口11内に没入し、内筒2の各テーパ部24が外筒1の各テーパ形状部13の一端から他端へ、つまり、拡大された端部13E側に相対移動されて、外筒1の各テーパ形状部13による各ロック部材28の押えが解除されることにより、各ロック孔25の各ロック部材28のロックが解除される。そして、この状態の外筒1を保持して、この場合、内筒2の一端側に押した外筒1と内筒2の他端の摘み29を合せて摘んで、簡易式ナットN2を取付ピンPから引き抜けばよい。このようにナットN2を取り外すときは、外筒1を押しスライドさせる、つまり、このワンアクションを入れるようにしたことで、ナットN2の脱落事故を防止することができる。
なお、取付ピンPに簡易式ナットN2を取り付ける場合でも、このナットN2を取り外す場合と同様に、あらかじめ外筒1を内筒2の外側で内筒2の一端側に押圧してスライドさせ、各ロック孔25の各ロック部材28のロックを解除して、これを保持した状態から、内筒2の軸挿通部23に取付ピンPを差し通すようにしてもよい。
【0044】
また、このナットN2は、内筒2の他端開口22から軸挿通部23に取付ピンPを挿入することもできる。この場合も、ナットN2を取り外す場合と同様に、あらかじめ外筒1を内筒2の外側で内筒2の一端側に押圧してスライドさせ、各ロック孔25の各ロック部材28のロックを解除して、これを保持した状態から、内筒2の軸挿通部23に他端から取付ピンを差し通せばよい。
【0045】
以上説明したように、この簡易式ファスナーFによれば、簡易式ナットN2を取付ピンPに取り付けたり取り外したりする作業を、簡易式ナットN2と取付ピンPとの係合を確実に解除したうえで、簡易式ナットN2を回転させることなく抜き差しで行え、操作性の向上を図ることができる。
したがって、簡易式ナットN2を用いた簡易式ファスナーFによれば、一方の部材と他方の部材を簡易かつ確実に締結することができる。
【0046】
なお、この実施の形態では、簡易式ナットN2のロック部材28を小ボールとし、取付ピンPの被係合部30を凹部として例示したが、簡易式ナットN2のロック部材28を一端に係止部を有する小プレートとした場合は、取付ピンPの被係合部30を小プレートの係止部が係合可能な鋸歯状(ギザギザ)に形成すればよく(
図1、
図2参照)、簡易式ナットN2のロック部材17を一端に突起を有する小ピンとした場合は、取付ピンPの被係合部30を小ピンの突起が係合可能な溝とすればよい。
このようにしても上記実施の形態と同様の作用効果を奏する。
また、上記実施の形態では、簡易式ナットN2を取付ピンP上で送り、内筒2の各ロック部材28と取付ピンPの被係合部30との係合位置に停止させるため、内筒2及び取付ピンPの双方又は一方にストッパーが設けられてもよい。
このようにすることで、ナットN2を取付ピンPの被係合部30の位置に確実かつ簡単に送ることができる。