(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、内側に部材を挿入して使用する円筒状の樹脂製薄膜チューブが知られている。このような樹脂製薄膜チューブの内側に部材を挿入することにより、部材の表面に樹脂製薄膜チューブが備える物性を付与することができる。
【0003】
例えば、フッ素樹脂などにより形成された円筒状の樹脂製薄膜チューブは、耐熱性、耐薬品性、非粘着性などに優れている。このため、例えば、複写機、プリンターなどにおいて、トナーの加熱定着を行うために用いられる定着用加圧ローラの被覆材として、このような円筒状のフッ素樹脂製薄膜チューブが使用されている。フッ素樹脂製薄膜チューブにおいては、内側に挿入されるローラ本体との接着性を向上させることなどを目的として、フッ素樹脂製薄膜チューブの内面を処理液で処理することが行われている。処理液による処理後は、当該チューブの内面を水などで洗浄し、その後に乾燥させてから、チューブの内側にローラ本体を挿入する。
【0004】
樹脂製薄膜チューブの内面を連続的に処理液で処理する方法として、例えば、特許文献1には、樹脂製薄膜チューブの2カ所をピンチロールにより閉塞して処理帯域を形成し、その中に金属ナトリウム錯体溶液などの処理液を封入し、該チューブを走行させながらチューブ内面を処理する方法が知られている。また、例えば特許文献2には、肉厚が0.03〜0.10mmのフッ素樹脂チューブを、閉塞部材により2カ所で閉塞して処理帯域を形成し、該処理帯域のチューブ内に、アルカリ金属を液体アンモニアに溶解してなる処理液を封入して該チューブを走行させると共に、該チューブの供給側閉塞部材にガス抜きのための溝を設け、該チューブの供給側端部にて排出したガスを吸気手段により吸気処理することにより、発生するガスを除去しながら、該チューブ内面を処理することを特徴とするフッ素樹脂チューブの連続内面処理方法が開示されている。
【0005】
上記特許文献1及び特許文献2のいずれの方法によっても、樹脂製薄膜チューブの内面を処理液で連続的に処理することができる。また、これらの方法によれば、処理液による処理工程の後に、連続的に洗浄工程を設けて処理液を直ちに洗浄することもでき、洗浄後にチューブを所望の長さに切断し、内面を乾燥させることにより、定着用加圧ローラの被覆材などとすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような樹脂製薄膜チューブは、肉厚が薄いため、樹脂製薄膜チューブをピンチローラで閉塞しながらチューブを走行させると、例えば
図1の模式図に示されるように、チューブ100の径方向の端部において、2つの線状の折目100a,100bがチューブ100の長手方向に形成される。このような2つの折目100a,100bが形成された樹脂製薄膜チューブの内面101を処理液によって処理すると、チューブ100の内面101の互いに対向する面同士が、処理液を介して密着し、チューブ100が偏平形状になる。偏平形状となった樹脂製薄膜チューブにおいては、処理液の表面張力によってチューブの内側が閉じた状態であるため、チューブの内側に送風することなどによって、乾燥させることが非常に困難になるという問題がある。また、チューブの内側の乾燥が難しくなると、チューブの内側の乾燥が不十分となりやすく、チューブの内側に部材を挿入しようとする際にブロッキングが生じやすくなる。
【0008】
特に、本発明者が検討したところ、肉厚が50μm以下程度と非常に薄いフッ素樹脂製薄膜チューブの内面が処理液により脱フッ素処理された場合などには、チューブの内面が特に密着しやすくなっているため、処理後にチューブの内部を乾燥させることが困難であるだけでなく、乾燥後においても、内面が密着しやすいため、チューブの内側に部材を挿入することが極めて困難であるという問題が見出された。
【0009】
本発明は、これらの従来技術の欠点を解消するものである。すなわち、本発明は、樹脂製薄膜チューブの内面の乾燥が容易であり、当該樹脂製薄膜チューブの内側に部材を容易に挿入できる樹脂製薄膜チューブを提供すること、及び当該樹脂製薄膜チューブの製造方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の従来技術の課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、長手方向に3つ以上の線状の折り目を設け、径方向における断面形状を多角形状とした樹脂製薄膜チューブによれば、樹脂製薄膜チューブの内面を乾燥させやすく、当該樹脂製薄膜チューブの内側に部材を容易に挿入できることを見出した。さらに、このような樹脂製薄膜チューブにおいては、例えば肉厚が50μm以下と極めて薄いフッ素樹脂製薄膜チューブの内面が処理液により脱フッ素処理された場合においても、樹脂製薄膜チューブの内面を乾燥させやすく、当該樹脂製薄膜チューブの内側に部材を容易に挿入できることを見出した。また、このような樹脂製薄膜チューブは、樹脂製薄膜チューブの長手方向に3つ以上の線状の折り目が形成されるように、円筒形状の樹脂製薄膜チューブに張力をかけながら樹脂製薄膜チューブを長手方向に走行させる折目形成工程を備える樹脂製薄膜チューブの製造方法によって、簡便に製造し得ることも見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 長手方向に3つ以上の線状の折り目を有し、径方向における断面形状が多角形状である、樹脂製薄膜チューブ。
項2. 肉厚が50μm以下である、項1に記載の樹脂製薄膜チューブ。
項3. フッ素樹脂により形成されてなる、項1または2に記載の樹脂製薄膜チューブ。
項4. 前記樹脂製薄膜チューブの内面が脱フッ素処理されてなる、項3に記載の樹脂製薄膜チューブ。
項5. 前記長手方向における線状の折り目の数が4つであり、前記径方向における断面形状が略四角形である、項1〜4のいずれかに記載の樹脂製薄膜チューブ。
項6. 樹脂製薄膜チューブの長手方向に3つ以上の線状の折り目が形成されるように、円筒形状の樹脂製薄膜チューブに張力をかけながら前記樹脂製薄膜チューブを長手方向に走行させる折目形成工程を備える、樹脂製薄膜チューブの製造方法。
項7. 前記折目形成工程が、前記樹脂製薄膜チューブの長手方向に2つの線状の折り目が形成されるように、円筒形状の樹脂製薄膜チューブに張力をかけながら前記樹脂製薄膜チューブを長手方向に走行させる第1工程と、
前記2つの線状の折目が形成された樹脂製薄膜チューブを径方向において10〜90°回転させた後、前記樹脂製薄膜チューブの長手方向に2つの線状の折り目が形成されるように、前記樹脂製薄膜チューブに張力をかけながら前記樹脂製薄膜チューブを長手方向に走行させる第2工程と、
を備える、項6に記載の樹脂製薄膜チューブの製造方法。
項8. 前記折目形成工程及び前記折目形成工程後の少なくとも一方において、前記樹脂製薄膜チューブの内面を処理液で処理する液体処理工程を備える、項6または7に記載の樹脂製薄膜チューブの製造方法。
項9. 前記液体処理工程の後に、前記樹脂製薄膜チューブの内面を乾燥させる乾燥工程を備える、項6〜8のいずれかに記載の樹脂製薄膜チューブの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の樹脂製薄膜チューブによれば、樹脂製薄膜チューブの内面の乾燥が容易であり、当該樹脂製薄膜チューブの内側に部材を容易に挿入できる。また、本発明の樹脂製薄膜チューブの製造方法によれば、本発明の樹脂製薄膜チューブを簡便に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の樹脂製薄膜チューブは、長手方向に3つ以上の線状の折り目を有し、径方向における断面形状が多角形状であることを特徴とする。本発明の樹脂製薄膜チューブにおいては、長手方向に3つ以上の線状の折目が形成されていることにより、径方向における断面形状が多角形状となるため、多角形状が保持されやすく、チューブの内面が互いに密着し難い。このため、樹脂製薄膜チューブを処理液で処理した後においても、内面を乾燥させやすく、乾燥後に当該樹脂製薄膜チューブの内側に部材を容易に挿入することができる。以下、本発明の樹脂製薄膜チューブ、及びその製造方法について詳述する。
【0015】
1.樹脂製薄膜チューブ
本発明の樹脂製薄膜チューブは、樹脂によって形成された薄膜のチューブである。当該チューブは、長手方向に3つ以上の線状の折り目を有し、径方向における断面形状が多角形状である。本発明の樹脂製薄膜チューブにおいて、長手方向に形成された折目の数としては、径方向における断面形状が多角形状となれば特に制限されないが、好ましくは3〜6つ、より好ましくは3〜4つ、特に好ましくは4つが挙げられる。すなわち、本発明の樹脂製薄膜チューブにおいて、径方向における断面形状としては、三角形以上、好ましくは三角形〜六角形、より好ましくは三角形〜四角形、特に好ましくは四角形が挙げられる。本発明の樹脂製薄膜チューブの具体例を示した
図2〜5を用いて、本発明の樹脂製薄膜チューブの例について説明する。
【0016】
図2は、樹脂製薄膜チューブ1が長手方向に4つの折目1a,1b,1c,1dを有する場合における、当該チューブ1の径方向(長手方向と垂直な方向)の略図的断面図である。樹脂製薄膜チューブ1において、4つの折目1a,1b,1c,1dは、それぞれ、チューブ1の外側から内側に向かって折られており、長手方向に線状に形成されている。樹脂製薄膜チューブ1においては、折目1a,1b,1c,1dのうち互いに隣り合う折目は、径方向におけるチューブ1の中心を基準として、それぞれ90°離れて形成されており、樹脂製薄膜チューブ1の径方向における断面形状は、略正方形である。すなわち、
図2において、折目1aと折目1b(折目1aに隣接する一の折目)との距離xは、折目1aと折目1d(折目1aに隣接する他の折目)との距離yと同じであり、距離x=距離yの関係にある。
【0017】
また、
図3は、
図2における樹脂製薄膜チューブ1において、径方向における断面形状が略長方形である場合についての具体例である。
図3においては、チューブ1の径方向における断面形状が略長方形であるため、距離x>距離yの関係にある。
【0018】
図4は、樹脂製薄膜チューブ1が3つの折目1a,1b,1cを有する場合における、当該チューブ1の径方向の略図的断面図である。樹脂製薄膜チューブ1において、3つの折目1a,1b,1cは、それぞれ、チューブの外側から内側に向かって折られており、長手方向に線状に形成されている。樹脂製薄膜チューブ1の径方向における断面形状は、略正三角形である。すなわち、
図4において、折目1aと折目1b(折目1aに隣接する一の折目)との距離xは、折目1aと折目1c(折目1aに隣接する他の折目)との距離yと同じであり、距離x=距離yの関係にある。
【0019】
図5は、本発明の樹脂製薄膜チューブ1が6つの折目1a,1b,1c,1d,1e,1fを有する場合における、当該チューブ1の径方向の略図的断面図である。樹脂製薄膜チューブ1において、6つの折目1a,1b,1c,1d,1e,1fは、それぞれ、チューブの外側から内側に向かって折られており、長手方向に線状に形成されている。樹脂製薄膜チューブ1の径方向における断面形状は、略正六角形である。すなわち、
図5において、折目1aと折目1b(折目1aに隣接する一の折目)との距離xは、折目1aと折目1f(折目1aに隣接する他の折目)との距離yと同じであり、距離x=距離yの関係にある。
【0020】
本発明の樹脂製薄膜チューブにおいて、1つの折目と、この折目と隣り合う2つの折目のうち一方との距離x、及び他方との距離yは、1:1〜1:6の範囲にあることが好ましく、1:1〜1:3の範囲にあることがより好ましい。距離xと距離yとが、このような範囲にあることにより、チューブの径方向の多角形状において、対抗する内面間の距離が大きくなり、内面が互いに密着し難くなる。このため、樹脂製薄膜チューブの内面の乾燥が容易となり、当該樹脂製薄膜チューブの内側に部材を容易に挿入できる。
【0021】
本発明の樹脂製薄膜チューブにおいて、肉厚としては、特に制限されないが、例えば50μm以下である場合にも、本発明の樹脂製薄膜チューブにおいては上記のような折目が形成されているため、内径方向における断面形状が多角形となり、チューブの内面が互いに密着し難い。このため、樹脂製薄膜チューブの内面を乾燥させやすく、樹脂製薄膜チューブの内側に部材を容易に挿入することができる。当該肉厚の具体例としては、好ましくは10〜50μm程度、より好ましくは10〜30μm程度、さらに好ましくは10〜20μm程度が挙げられる。
【0022】
本発明の樹脂製薄膜チューブの内径は、チューブの内側に挿入する部材の大きさ(外径)に応じて適宜設定すればよいが、好ましくはφ10〜φ80mm程度、より好ましくはφ10〜φ40mm程度である。なお、本発明において、樹脂製薄膜チューブの内径とは、上記の断面形状が多角形である樹脂製薄膜チューブの断面形状を円形に変形させた際の円の直径をいう。
【0023】
本発明の樹脂製薄膜チューブの内面によって形成された空間には、種々の部材を挿入することができる。本発明の樹脂製薄膜チューブの内側に挿入される部材の形状としては、特に制限されないが、例えば、円柱状(ロール状)が挙げられる。本発明の樹脂製薄膜チューブの内側に、当該チューブの内径と略同一の外径を有する円柱状の部材が挿入されると、当該チューブの内径における断面形状が多角形状から円形に変形し、部材の表面に本発明の樹脂製薄膜チューブによる被膜を形成させることができる。
【0024】
本発明の樹脂製薄膜チューブの長さとしては、チューブの内側に挿入する部材の長さに応じて適宜設定すればよいが、好ましくは20〜120cm程度、より好ましくは20〜60cm程度が挙げられる。
【0025】
本発明の樹脂製薄膜チューブを構成する樹脂としては、特に制限されず、当該チューブの用途に応じて適宜選択することができる。樹脂の具体例としては、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。例えば、本発明の樹脂製薄膜チューブを複写機、プリンターなどの定着用加圧ローラの被覆材として用いる場合には、これらの中でも、フッ素樹脂が好ましい。フッ素樹脂の中でも、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)などは、耐熱性、耐薬品性、非粘着特性などに優れているため、特に好ましい。
【0026】
本発明の樹脂製薄膜チューブの内面は、処理液などで処理されていてもよい。例えば、内面を洗浄処理する場合には、処理液(洗浄液)としては、水、アルコール、アセトン、ジエチルエーテルなどが挙げられる。
【0027】
また、本発明の樹脂製薄膜チューブがフッ素樹脂により形成されている場合、樹脂製薄膜チューブの内面は脱フッ素処理されていてもよい。樹脂製薄膜チューブの内面を脱フッ素処理することにより、樹脂製薄膜チューブの内面と、上記の定着用加圧ローラなどのチューブ内部に挿入される部材との密着性を高めることが可能となる。樹脂製薄膜チューブの内面の脱フッ素処理は、公知の処理液(脱フッ素処理液)を用いて行うことができる。脱フッ素処理液としては、特に制限されず、例えば、金属ナトリウム溶液などが挙げられる。本発明の樹脂製薄膜チューブの内面を脱フッ素処理した後、アルコール、水などの洗浄液で洗浄処理することが好ましい。
【0028】
上記の通り、本発明者が検討したところ、肉厚が50μm以下のフッ素樹脂製薄膜チューブの内面が脱フッ素処理液によって脱フッ素処理された場合などには、チューブの内面の密着性が非常に高くなっているため、処理後にチューブの内部を乾燥させることが困難であるだけでなく、乾燥後においても、内面が密着しやすいため、チューブの内側に部材を挿入することが極めて困難である。これに対して、本発明の樹脂製薄膜チューブにおいては、長手方向に3つ以上の線状の折り目を有し、径方向における断面形状が多角形状であるため、チューブの内面によって形成される径方向における多角形状が保持されやすく、チューブの内面が密着し難い。このため、チューブの内面を処理液で処理した後においても、チューブの内面を乾燥させやすく、当該チューブの内側に部材を容易に挿入することができる。
【0029】
本発明の樹脂製薄膜チューブは、円筒形状の樹脂製薄膜チューブの長手方向に線状の折目が形成されて、径方向における断面形状が多角形に変形されている。このため、上記の通り、本発明の樹脂製薄膜チューブの内側に、チューブの内径と略同一の外径を有する円柱状の部材を挿入することにより、本発明の樹脂製薄膜チューブの当該断面形状は円形に変形する。したがって、本発明の樹脂製薄膜チューブは、円柱状の部材を挿入して、当該部材の被覆材として好適に使用することができる。特に、本発明の樹脂製薄膜チューブが上記のような耐熱性、耐薬品性、非粘着特性などに優れたフッ素樹脂により形成されている場合には、定着用加圧ローラの被覆材として特に好適に使用することができる。
【0030】
上記のような本発明の樹脂製薄膜チューブは、例えば下記の製造方法によって簡便に製造することができる。
【0031】
2.樹脂製薄膜チューブの製造方法
本発明の樹脂製薄膜チューブの製造方法は、樹脂製薄膜チューブの長手方向に3つ以上の線状の折り目が形成されるように、円筒形状の樹脂製薄膜チューブに張力をかけながら樹脂製薄膜チューブを長手方向に走行させる折目形成工程を備えることを特徴とする。本発明の樹脂製薄膜チューブの製造方法においては、このような折目形成工程を備えていることにより、長手方向に3つ以上の線状の折り目を有し、径方向における断面形状が多角形状である樹脂製薄膜チューブを簡便に製造することが可能である。
【0032】
本発明の樹脂製薄膜チューブの製造方法における折目形成工程について、
図6及び
図7の模式図を参酌しながら説明する。
図6に示すように、折目形成工程においては、円筒形状の樹脂製薄膜チューブ1に張力をかけながら樹脂製薄膜チューブを長手方向に走行させる。
図6においては、ローラ2aからローラ2bに向かって張力をかけながら樹脂製薄膜チューブ1を走行させる。このとき、まず、円筒形のチューブ1がローラ2aに押しつけられることにより、チューブ1の径方向における端部において2つの折目1a,1cが形成される。さらに、ローラ2aからローラ2bへ走行される間に、チューブ1の径方向において長手方向の回転軸zに沿って90°回転させた後、チューブ1に張力をかけながらローラ2bを通過させる。このとき、2つの折目1a,1cを有するチューブ1がローラ2bに押しつけられることによって、チューブ1の径方向における端部においてさらに2つの折目1b,1dが形成される。
【0033】
したがって、
図6の模式図に示されるような折目形成工程を有する製造方法により形成された樹脂製薄膜チューブは、
図2に示されるように、長手方向に4つの線状の折目1a,1b,1c,1dが形成されており、径方向における断面形状は、略正方形となる。
図7は、
図6の折目形成工程を90°倒した状態で行う例を示している。
図7に示される折目形成工程においても、
図6における場合と同様の樹脂製薄膜チューブが得られる。
【0034】
折目を形成する方法としては、特に制限されず、例えば、
図6または
図7に示されるように、ローラを用いて、樹脂製薄膜チューブに張力をかけながらチューブの端部に径方向の圧力をかけることにより容易に形成することができる。チューブの端部に径方向の圧力をかける際には、複数のローラでチューブを挟持して行ってもよいし、1つのローラにチューブを押しつけて行ってもよい。また、チューブの内側と外側に磁石を配し、内側と外側の磁石でチューブの肉厚方向に圧力をかけながらチューブを長手方向に走行させることによっても、所望の折目を形成することができる。
【0035】
本発明の樹脂製薄膜チューブにおいて、チューブの長手方向に線状の折目を4つ形成する場合、折目形成工程が、次の第1工程と第2工程とを備えることが好ましい。
第1工程
樹脂製薄膜チューブの長手方向に2つの線状の折り目が形成されるように、円筒形状の樹脂製薄膜チューブに張力をかけながら樹脂製薄膜チューブを長手方向に走行させる。
第2工程
上記2つの線状の折目が形成された樹脂製薄膜チューブを径方向において10〜90°回転させた後、樹脂製薄膜チューブの長手方向に2つの線状の折り目が形成されるように、樹脂製薄膜チューブに張力をかけながら樹脂製薄膜チューブを長手方向に走行させる。
【0036】
本発明において、上記の脱フッ素処理、洗浄処理などの処理液によるチューブの内面の液体処理工程は、折目形成工程及び折目形成工程後の少なくとも一方において行うことができる。液体処理工程で使用される処理液としては、上記で例示したものを用いることができる。例えば、
図6に示される折目形成工程では、ローラ2aとローラ2bとの間において、チューブ1の内側に上記の処理液3が入れられている。
【0037】
本発明の製造方法において、液体処理工程を行った場合には、液体処理工程の後に、樹脂製薄膜チューブの内面を乾燥させる乾燥工程を行う。乾燥工程においては、樹脂製薄膜チューブの内側に対して空気を送風し、処理液を蒸発させて樹脂製薄膜チューブの内側を乾燥させる。送風する空気の温度としては、特に制限されないが、例えば20〜60℃程度が挙げられる。乾燥時間としては、特に制限されないが、例えば20〜60秒間程度が挙げられる。
【0038】
本発明の製造方法によれば、樹脂製薄膜チューブの長手方向に線状の折目が3つ以上形成されるため、径方向における断面形状が多角形状となる。このため、樹脂製薄膜チューブの内面における処理液を介した密着が抑制され、乾燥工程においてチューブの内側を容易に乾燥させることができる。また、本発明の製造方法において、フッ素樹脂製薄膜チューブの内面を脱フッ素処理した場合にも、樹脂製薄膜チューブの内面における処理液を介した密着が抑制され、乾燥工程においてチューブの内側を容易に乾燥させることができる。
【0039】
本発明の製造方法によって製造された樹脂製薄膜チューブは、所望の長さにカットして用いることができる。上記の乾燥工程をより簡便に行う観点からは、樹脂製薄膜チューブを所望の長さにカットしてから乾燥工程を行うことが好ましい。
【0040】
本発明の樹脂製薄膜チューブの製造方法によれば、樹脂製薄膜チューブの内面の乾燥が容易であり、当該樹脂製薄膜チューブの内側に部材を容易に挿入できる本発明の上記樹脂製薄膜チューブを簡便に製造することができる。
【実施例】
【0041】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0042】
(実施例1)
図6に示されたような折目形成工程を備える製造装置を用いて、円筒形状のフッ素樹脂製薄膜チューブ(PFA樹脂、内径φ20.0、肉厚17μm)を長手方向に走行させ、長手方向において4つの線状の折目が形成されたフッ素樹脂製薄膜チューブを得た。折目を形成したフッ素樹脂製薄膜チューブの製造にあたり、
図6に示されるように、2つの折目を形成するロール2aと、さらに2つの折目を形成するロール2bとの間において、フッ素樹製薄膜チューブの内側に水を入れて洗浄処理を行った。得られたフッ素樹脂製薄膜チューブにおいては、
図2に示されるように、4つの線状の折目がそれぞれ径方向に90°離れた位置に形成されていた。次に、4つの折目が形成された洗浄後のフッ素樹脂製薄膜チューブを長さ340mmにカットし、合計155本のフッ素樹脂製薄膜チューブとした。次に、カットしたフッ素樹脂製薄膜チューブの内側に50℃の空気を40秒間送風し、チューブの内側を乾燥させた。得られたフッ素樹脂製薄膜チューブの内側に、外径φ20.0、長さ320mmの円柱状のシリコーンゴム製ロール部材を挿入した。このとき、ロール部材を挿入する際に生じたブロッキングしたチューブの本数と、全チューブにおけるブロッキングしたチューブの割合を表1に示す。
【0043】
(比較例1)
図6に記載されたような折目形成工程を備える製造装置から、ロール2bを除去したこと以外は、実施例1と同様にして、円筒形状のフッ素樹脂製薄膜チューブ(PFA樹脂、内径φ20.0、肉厚17μm)を長手方向に走行させ、長手方向において2つの線状の折目が形成されたフッ素樹脂製薄膜チューブを得た。次に、2つ折目が形成された洗浄後のフッ素樹脂製薄膜チューブを長さ340mmにカットし、合計444本のフッ素樹脂製薄膜チューブとした。次に、カットしたフッ素樹脂製薄膜チューブの内側に50℃の空気を40秒間送風し、チューブの内側を乾燥させた。得られフッ素樹脂製薄膜チューブの内側に、外径φ20.0、長さ320mmの円柱状のシリコーンゴム製ロール部材を挿入した。このとき、ロール部材を挿入する際に生じたブロッキングしたチューブの本数と、全チューブにおけるブロッキングしたチューブの割合を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示されるように、フッ素樹脂製薄膜チューブの長手方向において4つの線状の折目を形成した実施例1においては、4つの折目により形成された径方向における多角形状によって、チューブの内面が離れており、送風による乾燥を容易に行うことができた。このため、実施例1のチューブでは、チューブの内面が十分に乾燥しており、肉厚が17μmと極めて薄いにも拘わらず、ロール部材を挿入する際のブロッキングを好適に抑制できることが確認された。
【0046】
一方、フッ素樹脂製薄膜チューブの長手方向において2つの線状の折目を形成した比較例1においては、2つの折目によってチューブが偏平形状となり、内面が水を介して密着し、送風による乾燥を行うことが難しかった。このため、比較例1のチューブでは、乾燥後のチューブの内面に水分が残っており、ロール部材を挿入する際のブロッキングが頻繁に生じることが確認された。