【実施例】
【0035】
次に、本発明の人工毛用樹脂組成物及びその成形体の実施例を、比較例と対比しつつ表を用いて、詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
実施例等で用いた各種原料は以下の通りである。
【0037】
<ポリエステル(A)>
ポリエチレンテレフタレート(自社製、溶融粘度65Pa・s)
ポリエチレンテレフタレート(三井化学製、J125S、溶融粘度145Pa・s)
ポリエチレンテレフタレート(自社製、溶融粘度280Pa・s)
ポリエチレンテレフタレート(三井化学製、J055、溶融粘度450Pa・s)
ポリブチレンテレフタレート(デュポン製、S600F20、溶融粘度118Pa・s)
ポリトリメチレンテレフタレート(デュポン製、ソロナEP3301NC010、溶融粘度132Pa・s)
【0038】
<臭素含有難燃剤(B)>
ポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)(ICL JAPAN製、FR−1025)
臭素化フェノール樹脂(ケムチュラ・ジャパン製、Emerald1000)
ポリジブロモフェニレンオキシド(第一工業製薬製、ピロガードSR−460B)
【0039】
<臭素含有難燃剤(C)>
臭素化ポリスチレン(マナック製、PS1200)
エチレンビステトラブロモフタルイミド(UNIBROM製、EcoFlameB−951)
ビス(ペンタブロモフェニル)エタン(アルベマール日本製、SAYTEX8010)
臭素化エポキシ樹脂(阪本薬品工業製、SR−T20000)
臭素化フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学製、YPB−43C)
【0040】
<難燃助剤(D)>
三酸化アンチモン(日本精鉱製、PATOX−KF、平均粒子径0.8μm)
三酸化アンチモン(日本精鉱製、PATOX−K、平均粒子径1.2μm)
三酸化アンチモン(日本精鉱製、PATOX−P、平均粒子径3.0μm)
アンチモン酸ナトリウム(日本精鉱製、SA−A平均粒子径2.0μm)
【0041】
<実施例1>
吸湿率が100ppm未満になる様に乾燥したポリエステル(A)であるポリエチレンテレフタレート(三井化学製、J125S、溶融粘度145Pa・s)100質量部及び臭素含有難燃剤(B)であるポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)(ICL JAPAN製、FR−1025)7質量部をブレンドした後、φ30mm二軸押出機を用いて混練し、紡糸用の原料ペレットを得た。
【0042】
ついで、吸水率が100ppm以下になる様に原料ペレットを除湿乾燥した後、φ40mm単軸溶融紡糸機を用いて270℃で溶融紡糸し、穴径0.5mm/本のダイスから排出した溶融樹脂を、約30℃の水槽を通して冷却しながら、吐出量と巻き取り速度を調整し、設定繊度の未延伸糸を作製した。
【0043】
得られた未延伸糸を85℃で延伸し、その後、150℃でアニールを行い、所定
繊度の人工毛用繊維を得た。延伸倍率は3倍、アニール時の弛緩率は3%にて行った。アニール時の弛緩率とは、(アニール時の巻き取りローラの回転速度)/(アニール時の送り出しローラの回転速度)で算出される値である。
【0044】
得られた人工毛用樹脂組成物の繊維状成形体について、後述する評価方法及び基準に従って、難燃性、透明性、触感、櫛通り性及び光沢の評価を行った。
【0045】
<実施例2〜24>
配合を表1に示すように設定した以外は実施例1と同様にして、実施例2〜24に係る人工毛用樹脂組成物の繊維状成形体を作製し、評価した。
【0046】
<比較例1>
ポリエステル(A)としてポリエチレンテレフタレート(自社製、溶融粘度65Pa・s)を使用した以外は、実施例2と同様にして作製した。その結果、櫛通り性が悪くなった。ポリエステル(A)の溶融粘度が低いため十分なせん断がかからず、臭素含有難燃剤の分散性が不良となったためと考えられる。
【0047】
<比較例2>
ポリエステル(A)としてポリエチレンテレフタレート(三井化学製、J055、溶融粘度450Pa・s)を使用した以外は、実施例2と同様にして作製した。その結果、櫛通り性が悪くなった。ポリエステル(A)の溶融粘度が高いためポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)との粘度差が大きくなり、ポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)の分散性が不良になったためと考えられる。
【0048】
<比較例3>
ポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)(ICL JAPAN製、FR−1025)の配合量を3質量部とした以外は、実施例1と同様にして作製した。その結果、難燃性が得られなかった。
【0049】
<比較例4>
ポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)(ICL JAPAN製、FR−1025)の配合量を45質量部とした以外は、実施例1と同様にして作製した。その結果、触感が悪くなった。
【0050】
<比較例5>
臭素含有難燃剤(B)を配合せず、臭素化ポリスチレン(マナック製、PS1200)の配合量を2
0質量部とした以外は、実施例1と同様にして作製した。その結果、透明性と櫛通り性が悪くなった。
【0051】
<比較例6>
臭素含有難燃剤(B)を配合せず、臭素化エポキシ樹脂(阪本薬品工業製、SR−T20000)の配合量を2
0質量部とした以外は、実施例1と同様にして作製した。その結果、透明性と櫛通り性が悪くなった。
【0052】
評価結果を表1〜4に示す。
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
表1〜4中の各評価項目についての評価方法とその基準は、以下の通りである。
【0057】
<難燃性>
難燃性は、実施例・比較例の人工毛用樹脂組成物の繊維状成形体を長さ300mm、重量2gに束ね、この繊維束の一端を固定して垂直にたらし、その下端に長さ20mmの炎を5秒間接触させた後、離した後の延焼時間を測定して、次の評価基準で評価した。結果は、10回測定した結果の平均値を使用した。
◎:延焼時間が1秒未満
○:延焼時間が1秒以上7秒未満
×:延焼時間が7秒以上
【0058】
<透明性>
透明性は、人工毛用樹脂組成物の繊維状成形体を長さ250mm、重量20gに束ね、人工毛髪用繊維処理技術者(実務経験5年以上)が目視により人毛と比較評価を行い、次の評価基準で評価した。
◎:人毛と同様、または概ね人毛に近い透明性を有する。
○:細かく比較すると人毛よりも若干の白濁が認められるが、概ね人工毛髪用繊維としての使用に耐えうる透明性を有する。
×:一見して、明らかに白濁しており、人毛との差異が認められる。
【0059】
<触感>
触感は、人工毛用樹脂組成物の繊維状成形体を長さ250mm、重量20gに束ね、人工毛髪用繊維処理技術者(実務経験5年以上)10人の手触りによる判定で、次の評価基準で評価した。
◎:技術者9人以上が、触感が良いと評価したもの
○:技術者の7人又は8人が、触感が良いと評価したもの
×:技術者の6人以下が、触感が良いと評価したもの
【0060】
<櫛通り性>
櫛通り性は、人工毛用樹脂組成物の繊維状成形体を長さ300mm、重量2gに束ね、この繊維束に櫛を通した時の、抵抗や繊維の絡まりを評価した。
◎: 抵抗がなく、繊維が絡まない
○:やや抵抗があるが、繊維が絡まない
×: 抵抗がある、または繊維が絡まる
【0061】
<光沢>
光沢は、人工毛用樹脂組成物の繊維状成形体を長さ250mm、重量20gに束ね、人工毛髪用繊維処理技術者(実務経験5年以上)が太陽光の下で観察し、目視により人毛と比較評価を行い、次の評価基準で評価した。
◎:人毛と同様な光沢感を有する
○:人毛と比較すると差異が認められるが、概ね人毛に近い光沢を有する
【0062】
上記実施例及び比較例に示すように、ポリアルキレンテレフタレートまたはポリアルキレンテレフタレートを主体とした共重合ポリエステルの1種以上からなるポリエステル(A)100質量部と、ポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)、臭素化フェノール樹脂及びポリジブロモフェニレンオキシドより選択される少なくとも1種を含む臭素含有難燃剤(B)5〜40質量部とを含み、前記ポリエステル(A)の溶融粘度が80〜300Pa・sであることを特徴とする難燃性人工毛用樹脂組成物を用いることで、難燃性、透明性、および櫛通り性に優れた人工毛用樹脂組成物を含む繊維状成形体が得られることがわかった。
さらに、臭素化ポリスチレン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、臭素化エポキシ樹脂および、臭素化フェノキシ樹脂から選択される臭素含有難燃剤(C)を0.1〜15質量部配合する事で、光沢を人毛に一層近づけることができることが分かった。
さらに、ポリエステル(A)について、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートまたはポリトリメチレンテレフタレートを混合した樹脂とすることで、触感を人毛に一層近づけることができることが分かった。