(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
PE(ポリエチレン)のうちの少なくとも1つが、以下のポリマー:高密度ポリエチレン(HDPE);線状低密度ポリエチレン(LLDPE);超低密度ポリエチレンコポリマー(VLDPE);超低密度(ULDPE)ポリエチレンコポリマー;高圧、フリーラジカル重合エチレンホモポリマー(LDPE);エチレンと、酢酸ビニル、アクリラート(メチル−、エチル−、および/またはブチル−アクリラート)、酸コモノマー(アクリル酸、およびメタクリル酸)との高圧、フリーラジカル重合コポリマー;ならびにエチレン−酸コポリマーの部分的に中和されたまたは中和されたアイオノマーのうちの1つまたは複数を含む、請求項1または2に記載の積層パッケージング構造物。
最内部ヒートシール層、任意選択による少なくとも1つのポリマーバリア層、および最外部ポリマー層を含む共押出ししたフィルムである、請求項2に記載の積層パッケージング構造物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[006] 食品用軟質プラスチックパッケージの主要な機能は、供給業者から消費者の間の流通サイクル中のその保護である。しかし、食品に隣接するプラスチック層は、フレーバー収着に対する適切なバリアが得られるように適切に設計されていない場合、食品フレーバー成分を吸収し、フレーバー経験を変化させ、それによって消費者に対する製品の品質を低下させる可能性がある。さらに、軟質プラスチックパッケージ中の食品接触層は、ヒートシールが可能であることがしばしば要求され、それゆえ、パッケージを、酸素ガス、水分損失、および環境汚染物の吸収への曝露から食品を防護するために密封することができる。しかし、食品接触層を含むために熱可塑性材料を選択する場合、ヒートシール性および低いフレーバー吸収は、相反する検討事項である。
【0007】
[007] 例えば、食品接触層として、結晶性領域はフレーバー成分の拡散および取込みに対するバリアをもたらすので、半結晶性ポリマーが使用され得る。しかし、このような結晶性ポリマーは、合わせたフィルムの界面全域の連鎖移動度が制限されるために、ヒートシールすることが困難であり得る。これは、ポリビニルアルコールおよびエチレン−ビニルアルコールコポリマー等の半結晶性の水素結合したバリアポリマーではとりわけ当てはまる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[008] 一態様によれば、本開示は、ポリマーのブレンドアプローチまたは方策を使用することを記載しており、ポリマーのブレンドは、エチレンビニルアルコール(EVA)コポリマー中に、ヒートシール可能なポリオレフィンベースの樹脂または樹脂ブレンドを分配し、分散することが見出されている。通常、エチレンビニルアルコール(EVA)コポリマーのエチレン含量は、約1mol%〜約90mol%;あるいは約10mol%〜約75mol%;あるいは約20mol%〜約60mol%;または、あるいは約24mol%〜約48mol%であってもよい。他の態様において、ヒートシール性樹脂は、主成分のEVOHマトリックスと、その共連続性のレベル(理論に基づくとΦ
副成分≦0.19、しかし、該副成分相の体積分率は50%以上もの多さであり得る)以下の体積分率において副成分としてブレンドすることができる。
【0009】
[009] さらに、一態様において、相の安定性は、通常主成分のEVOHマトリックスとブレンドする前のエチレンベースの副成分相樹脂に、反応性、界面相溶化ポリマーを添加することによって保護され得る。いかなる理論にも拘泥するものではないが、反応性相溶化ポリマーは、ポリオレフィン−EVOHの界面まで拡散し、EVOH樹脂のヒドロキシル官能基と反応することができ、それによって、相構造を安定化し、新規な界面領域が生成されるので、加工およびヒートシールの間に増強された界面強度の発生をもたらすものと考えられる。
【0010】
[0010] したがって、本開示は、飲料ベース、成分、または成分濃縮物を入れるために製造されるパウチの新規な構造物および化学組成物を含めた、飲料成分パウチ、バッグ、またはカートリッジ用に使用される新規なヒートシール可能な、バリア積層パッケージング構造物を提供する。バリア積層パッケージングに使用されるこれらの構造物および組成物は、フレーバースカルピング、酸素透過性、および/または望ましくない水分の進入または退出に関する性能を向上させながら、改良されたヒートシール性を提供することができる。これらの特性は、それがパウチまたはカートリッジおよびその内容物の安定性および耐用年数に影響を及ぼす。
【0011】
[0011] 一般に、バリア積層パッケージング構造物は、パッケージ性能を増強し、保証するために、様々な機能性層を含むことができる。例えば、積層材の最外部層は、最内部のヒートシール層より高い融解ピーク温度を有してもよい。公知のバリア積層構造物の例示的およびやや典型的な実施形態を表1に例示する。
【0012】
【表1】
【0013】
[0012] 上記表の例示的なバリア積層構造物において、PA(ポリアミド)層は、一般に構造物に対して、限定されたガスバリア機能を付与するが、穿刺に対する抵抗性を提供する。EVOH(エチレンビニルアルコールコポリマー)層は、一般に酸素ガス進入に対するバリアを付与し、PE(ポリエチレンベースのポリマーまたはコポリマー)およびPET−Ox(PET上の無機酸化物コーティング)は、構造物に水分バリアを付与し、PET−Oxは水分の進入または退出に対して最大のバリアを付与する。三菱樹脂株式会社に譲渡されたHachisukaらの米国特許第7,678,448号、およびE.I.Dupont de Nemours and Companyに譲渡されたKurlanらの米国特許第6,902,802号には、低ヒートシール開始温度を有する、様々なヒートシール性樹脂および非吸着性樹脂が記載されている。
【0014】
[0013] 可能な積層構造物の範囲ならびに意図するパッケージング機能および性能にもかかわらず、すべてのバリア積層構造物は、第1の密閉においてそれ自体に対して、および充填後の第2のヒートシール操作において、それ自体および/または調合備品に対してヒートシール可能であるシーラント層を有して、最終パッケージを形成する。ほとんどのヒートシール層は、ポリオレフィンベースのポリマーおよびコポリマーを含む。ポリオレフィンベースのポリマーおよびコポリマーの典型的な例には、チーグラー−ナッタまたはメタロセン触媒ポリエチレンホモポリマー、およびα−オレフィンコポリマー、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−アクリル酸およびエチレン−メタクリル酸コポリマー、および部分的に中和されたこれらの変形体が含まれる。
【0015】
[0014] バリア積層構造物用シーラントポリマーの例が、米国特許第7,678,448号に提供されている。これらのポリオレフィンベースのシーラント層の多くは、低ヒートシール開始温度において容易にヒートシール可能であり、高ヒートシール強度を有するが、パッケージされた製品中のフレーバー成分の有意の取込みをこうむりがちである。この望ましくない、パッケージされた製品中のフレーバー成分の取込みは、本明細書では、「フレーバースカルピング」と称される。様々なフレーバー成分が、シーラントポリマーマトリックス中で拡散し、分配する傾向は、パッケージ製品を元のフレーバー品質、芳香および食味プロファイルが枯渇した状態にする。
【0016】
[0015] したがって、一態様において、本開示はフレーバースカルピングに対する必要な抵抗性を付与するために、特別に配合された極性バリアポリマーを使用することによってこの問題に対処し、同時に優れたヒートシール性を提供する。従来のシーラント層とは逆に、本開示によるシーラント層は、これらの機能を与えるために、特別に配合されたEVOH等の極性バリアポリマーを含むことができ、または選択することができる。
【0017】
[0016] 一般に、EVOHコポリマーは、その高結晶化度および高い融解ピーク温度のために、そのヒートシール性が良いことは知られていない。本開示は、特別に必要性に応じたEVOHコポリマー、および増強された性能を付与するための特定の「バランスのとれた」ポリマーブレンド配合物の設計における予想外の成功を説明する。即ち、特定のバランスのとれたポリマーブレンドは、適切なヒートシール性および改良されたフレーバースカルピング性能の両方を確保する。
【0018】
[0017] したがって、一態様によれば、本開示は、飲料ベース、成分、または成分濃縮物を入れるために製造されるパウチの新規な構造物および化学組成物を含めた、飲料成分パウチまたはカートリッジ用に使用される新規なヒートシール可能な、バリア積層パッケージング構造物を提供する。本開示において説明される様々なバランスのとれたポリマーブレンド、パウチおよびカートリッジ、および方法は、その構造にかかわらず、バリア積層構造物に一般におよび広範に適用することができる。即ち、開示されているポリマーブレンド、パウチおよびカートリッジは、該積層構造物のヒートシール性を犠牲にすることなく、フレーバースカルピングを軽減する直接ドロップイン(drop-in)技術を提供する。
【0019】
[0018] 一態様において、本開示は、飲料成分パウチ用積層パッケージング構造物であって、
a)
約1mol%〜約90mol%のエチレン含量を有するEVOH(エチレンビニルアルコール)コポリマー;および/または
ブレンド中の総エチレン含量が約1mol%〜約90mol%である、EVOHコポリマーおよびPE(ポリエチレン)のブレンド
のうちの少なくとも1つを含む最内部ヒートシール層
を含む積層パッケージング構造物を提供する。
典型的には、飲料成分パウチ用積層パッケージング構造物は、
b)任意選択により、最内部ヒートシール層と相溶性があり、それと隣接する少なくとも1つのポリマーバリア層;および
c)存在する場合の少なくとも1つの任意選択のバリア層と、相溶性があり、それと隣接する、または少なくとも1つの任意選択のバリア層が存在しない場合は、最内部ヒートシール層と相溶性があり、それと隣接する最外部ポリマー層
をさらに含むことができる。上記およびその他の態様において、エチレンビニルアルコール(EVOH)コポリマーのエチレン含量は、約1mol%〜約90mol%;あるいは約10mol%〜約75mol%;あるいは約20mol%〜約60mol%;または、あるいは約24mol%〜約48mol%であってもよい。
【0020】
[0019] 一般に、EVOHおよびエチレンベースのホモポリマーまたはコポリマーブレンドは、EVOH相をエチレンコポリマーブレンドベースの相と界面全域で結合することができるヒドロキシル反応性相溶化剤を含有することができる。相溶化剤の例には、限定するものではないが、無水物をグラフト化したポリエチレンの変形体、EVOHのヒドロキシル官能基と反応により結合することが可能なエポキシ修飾(グリシジル)樹脂(例えばグリシジルメタクリラート修飾樹脂)、および/またはヒドロキシル官能基との反応が可能な反応性官能基を有する任意の樹脂が含まれる。
【0021】
[0020] 他の態様において、本開示はまた、飲料成分パウチ用バリア積層パッケージング構造物中のフレーバースカルピングを低減する方法であって、
a)
約1mol%〜約90mol%のエチレン含量を有するEVOH(エチレンビニルアルコール)コポリマー;および/または
ブレンド中の総エチレン含量が約1mol%〜約90mol%である、EVOHコポリマーおよびPE(ポリエチレン)のブレンド
のうちの少なくとも1つを含む最内部ヒートシール層を有する飲料成分パウチを用意する工程と;
b)飲料成分を飲料成分パウチ中にある期間、貯蔵する工程と
を含む、方法を記載する。
さらに、フレーバースカルピングを低減する本方法は、直前に説明した最内部ヒートシール層を含み、
最内部ヒートシール層と相溶性があり、それと隣接する少なくとも1つの任意選択のポリマーバリア層;および/または
存在する場合の少なくとも1つの任意選択のバリア層と相溶性があり、それと隣接する、または少なくとも1つの任意選択のバリア層が存在しない場合、最内部ヒートシール層と相溶性があり、それと隣接する最外部ポリマー層
をさらに含む、飲料パウチ用に使用される共押出しされた積層パッケージング構造物を含むことができる。
【0022】
[0021] したがって、本開示のさらなる態様は、ヒートシール可能な積層パッケージング構造物フィルムを製造する方法であって、
a)
約1mol%〜約90mol%のエチレン含量を有するEVOH(エチレンビニルアルコール)コポリマー;および/または
ブレンド中の総エチレン含量が約1mol%〜約90mol%である、EVOHコポリマーおよびPE(ポリエチレン)のブレンド
のうちの少なくとも1つを含む最内部ヒートシール層
b)任意選択により、最内部ヒートシール層と相溶性があり、それと隣接する少なくとも1つのポリマーバリア層;および
c)存在する場合の少なくとも1つの任意選択のバリア層と相溶性があり、それと隣接する、または少なくとも1つの任意選択のバリア層が存在しない場合、最内部ヒートシール層と相溶性があり、それと隣接する最外部ポリマー層
を共押出しする工程を含む、方法を提供する。
【0023】
[0022] これらの比較的正攻法の多層包装用フィルム、パウチ、および方法は、飲料成分混合物に一般的に見られる幅広いフレーバー分子に対する優れたバリア性を提供するために使用される。多層構造は、パッケージの最初のいくつかの内部層中で様々な溶解度および拡散速度を有し得る分子のフレーバースカルピングにいくつかの限界をもたらすことがある。例えば、ある種のフレーバー分子は、低い溶解度によって第1の(最内部)層中に保持され得て、一方、他の分子は第1の(最内部)層には可溶性であるが、第2の層には可溶性でないことがある。
【0024】
[0023] このようにして、本開示は、EVOHおよびエチレンベースのホモポリマーまたはコポリマーブレンドが、ヒドロキシル反応性相溶化剤と共に、EVOH相をエチレンコポリマーブレンドベース相と界面全域で結合させることができることを想定している。理論に拘泥するものではないが、このことは、一般に2つの目的を実現することができる:(1)ブレンドされた層が全面的に一体化され強くなるために界面を強化すること、および(2)自己相互拡散して、ヒートシール層としてEVOH単独で達成されるものを上回る改良されたヒートシール強度を得ることができる、フィルム表面におけるヒートシール可能なエチレンコポリマー領域を提供すること。したがって、本態様は、通常、反応性相溶化ポリマーがエチレンベースのホモポリマーまたはコポリマーブレンド層のみに添加される理由を説明する。反応性ポリマーがEVOH層に添加される場合、その存在がEVOHを過度に架橋させ、該層をヒートシールが不可能にすることになる。したがって、反応性の相溶化ポリマーが、非反応性のブレンドされたエチレンベースのホモポリマーおよび/またはコポリマーに添加された場合、該相は、絡み合わされるが架橋はされない。反応性相溶化ポリマーがEVOHの界面まで拡散し、EVOHのヒドロキシル官能基と反応するとき、該界面は、共有結合で結合されるようになることができると考えられる。
【0025】
[0024] 本開示の上記およびその他の態様、特徴、および実施形態は、本明細書に提供される図、特許請求の範囲、および詳細な開示を参照することによって理解されよう。
【0026】
[0025] 本開示の様々な態様および実施形態を、本明細書に提供された図面に以下の通り図示する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[0029] 特に、本開示は、飲料成分パウチ、バッグ、またはカートリッジのために特に有用である、ヒートシール可能なバリア積層材パッケージングに関連する新規な組成物、パッケージング構造物、および方法を提供する。飲料ベース、成分、または成分濃縮物を収納するために製造されるパウチの新規な構造物および化学組成物が提供され、構造物および化学組成物は、フレーバースカルピング、酸素透過性、および/または望ましくない水分の進入または退出に対する性能を向上させながら、改良されたヒートシール性を提供することができる。これらの特性は、今度は、パウチまたはカートリッジおよびその内容物の安定性および耐用年数に影響を及ぼす。
【0029】
[0030] 一態様において、大部分の飲料フレーバー成分は、約100g/mol〜約250g/molの範囲の分子量を有する。有用なフレーバー成分および分子は、極性、ならびに化学的および物理的特性を変化させる広範な化学的官能性部分を含む。炭酸清涼飲料の多くのフレーバー成分は、カンキツ類ベースである。例えば、オレンジジュース用の選択された飲料フレーバー成分のリストを表2に示すが、飲料フレーバー成分を表においてモル体積として表示した、フレーバー成分の分子量および分子サイズの間の関係を例示する。カンキツ類芳香/フレーバー化合物の包括的な分析は、Hognadottirら「Identification of Aroma Active Compounds in Orange Essence Oil Using Gas Chromatography−Olfactory and Gas Chromatography−Mass Spectometry」,J.Chrom.A,998(2003)201−211に示されている。
【0032】
[0031] 表2が示すように、典型的なフレーバー成分に対する、比較的狭い範囲の分子量およびモル体積に依存する運動直径は、ポリマー中の拡散速度およびポリマーによる取込み(溶解度)の起こる程度が、主に、シーラント樹脂の範囲(厚さ)および分子構造および組成によるものであることを示している。本開示は、飲料成分パウチ等の製造におけるその使用のための新規な組成物および方法を提供する。
【0033】
[0032] ヒルデブラント溶解度パラメーターの方法論等の、溶解度パラメーターに基づくアプローチは、シーラントポリマー−フレーバー成分の相互作用、またはヒルデブラント溶解度パラメーターが決定され得る、任意の2つの分子または物質の間の相互作用を説明するまたは特徴付けるために使用することができる。これらのアプローチにおいて、シーラントポリマーおよび所与のフレーバー成分の間の相互作用(分散(D)、極性(P)、および水素結合(H))の固有の分子力が相互作用する程度の相対的なランキングを、この特定のシーラント層−フレーバー成分の組合せのフレーバースカルピング性能を予測するのに使用することができる。
【0034】
[0033] 例えば、ヒルデブラント溶解度パラメーターδ等の溶解度パラメーターは、物質の凝集エネルギー密度の平方根として表され、凝集エネルギー密度の平方根は、以下の関係則(式2)に従って、そのモル体積Vで除算した物質のモル蒸発熱Eである。
【0035】
【数2】
溶解度パラメーターの単位は、(エネルギー/体積)
1/2である。エネルギー密度の単位は、圧力の単位と等価であるので、通常、MPa
1/2等の、(圧力)
1/2の単位で表された溶解度パラメーターに出会う。
【0036】
[0034] 同様に、ハンセン溶解度パラメーターは、同一の単位で表される。ハンセン溶解度パラメーター(HSP)アプローチは、物質の総凝集エネルギーが蒸発熱に等しいと仮定する。さらに、蒸発熱は原子の、分散力δ
D、永久双極子力δ
P、および水素結合力δ
Hからの寄与に分割される。これらの寄与は、全体的なハンセン溶解度パラメーターを得るための独立したベクトルと仮定されている:
【0038】
[0035] 溶解度パラメーターアプローチは、それぞれの溶解度パラメーターの二乗の間の差異が考えられる場合、物質の間の「類似」を評価する定量的な方法を提供する。例えば、HSP理論は、溶解度パラメーター「距離」(R
a)を提供する。例えば、ポリマーおよびフレーバー分子等の、2つの分子の任意の組合せに対するハンセンパラメーターの間の「距離」(R
a)は、以下の通り計算される。上記に例示したように、それぞれの分子またはポリマーは、以下:
δ
D(MPa
1/2)は、分子間の分散力からのエネルギーであり;
δ
P(MPa
1/2)は、分子間の双極子分子間力からのエネルギーであり;
δ
H(MPa
1/2)は、分子間の水素結合からのエネルギーである
の3種のハンセンパラメーターを有し、それぞれが単位(MPa
1/2)を有する。
総エネルギーに対応するδ
T(MPa
1/2)に対する計算値も存在する。これらのハンセンパラメーターを用いて、ポリマーおよびフレーバー分子等の、2つの分子の任意の組合せに対するハンセンパラメーターの間の「距離」(R
a)(同様にMPa
1/2単位)が、以下の式に従って計算される。これらの式において、δパラメーターが、分子1および分子2に対して示される。
(R
a)
2=4(δ
D,2−δ
D,1)
2+(δ
P,2−δ
P,1)
2+(δ
H,2−δ
H,1)
2 (4)
【0039】
【数4】
分子または物質の任意の対の間の「距離」がより近い、即ち、R
a値がより小さいほど、一方が他方中により可溶性であり、シーラント層ポリマーおよびフレーバー分子の一般的に望ましくない組合せを指し示している。
【0040】
[0036] これらの式(式4および式5)において、無理式中の第1項の前の4の係数は、より良好なデータの近似を達成するために式に経験的に加えたものである。HSP距離R
aは、これらの分子の相互作用の総相対寄与に関係する、2つの物質の間の分子の相溶性の相対評価をもたらす。距離R
aは、実験的に決定された物質の溶解球半径R
0に比較して、重要性が高い。HSP理論によれば、比R
a/R
0<1の場合、混和性が示され、この比は、HSP解析のRED数と称される。
【0041】
[0037] 本開示の表3は、予測されるフレーバースカルピング性能という点における、潜在的なシーラント層組成物のランキングを提供するための、HSPアプローチを用いたフレーバースカルピングに関するHSP解析を例示する。この解析のために、特に、5種のフレーバーマーカー化合物:d−リモネン、オイゲノール、オクタナール、ノナナール、およびデカナールを試験した。これらの5種のフレーバー分子を使用して、特定のシーラントポリマー−フレーバー化合物の組合せに対するHSPスクリーニング距離(R
a)を評価した。
【0043】
[0038] 表3を参照すると、最初の5行は、多数の商業的なフレーバーのある飲料製品に一般的な、5種の選択されたフレーバーマーカー化合物に対する成分および総ハンセン溶解度パラメーターを要約する。次の5行は、これらの5種のフレーバーマーカー化合物の間のHSP距離を示す。該データは、5種の化合物の中の最大距離は、以下に図示されているd−リモネンおよびオイゲノールの間で見出されることを示す。
【0044】
【化1】
したがって、表3のデータは、最大HSP距離の対は、d−リモネンおよびオイゲノール(R
a=10.56)であり、一方、最小HSP距離の対は、ノナナールおよびデカナール(R
a=0.53)であることを示唆する。
【0045】
[0039] このデータは、d−リモネンは分散的な相互作用を介して最も強く相互作用し、オイゲノール、チョウジ油から抽出した芳香族アルコールは、他の4種の選択されたフレーバーマーカー化合物と比較して、強い分散、極性およびとりわけ水素結合の相互作用を示すことの認識によって説明することができる。これらの個々の分子構造は、示されたように、いかにして、分子構造、構造上の対称性、および化学的官能性がハンセン溶解度パラメーターの差異に寄与するかを例示する。同様に、ノナナールおよびデカナールの最小HSP距離の対は、オクタナール、ノナナール、およびデカナールは、一連のC8からC10までの同族体のアルキルアルデヒドを意味し、配列中のそれぞれの連続的なアルデヒドは、単一のメチレン単位のみによって相異していることの認識によって説明することができる。
【0046】
[0040] 表3のデータは、すべてのフレーバー化合物に対する吸着を軽減するために、単一のポリマーの食品接触層を選択することは困難であることをさらに例示する。例えば、d−リモネンのような非極性化合物から大きなHSP距離を有するポリマーは、d−リモネンの取込みを制限し得るが、これらのポリマーは、アルデヒドまたは水素結合相互作用に関与するフレーバー化合物等の中等範囲の極性化合物から実質的に十分遠くへ離れて移動され得ない。しかし、該ポリマーが、3つの分子相互作用軸に沿って、即ち、分散、極性、および水素結合軸のそれぞれに沿って、距離が最大になるように設計され得るまたは選択され得る場合、ポリマーHSPの値は、フレーバースカルピングが効果的に最小限に抑えられる、最大HSP値を有するフレーバー成分から十分遠くへ離れて移動され得る。この概念は、例えば、
図1に、および表4を含むその計算において例示されており、この場合、
図1のデータに基づいて、75%のフレーバー成分の損失に対して、スクリーニング距離は6.25MPa
1/2であると解釈される。
【0047】
[0041] 特定のシーラントポリマー−フレーバー化合物の組合せに対するHSPスクリーニング距離(Ra)を評価するのに使用したフレーバーマーカー分子を、表4に例示する特定のシーラントポリマーに対するHSPパラメーターを用いて試験した。このようにして、表4は、6.25MPa
1/2のスクリーニング距離および75.0%の芳香化合物損失に対して提供されるHSP解析を提供する(
図1を参照されたい)。
【0048】
[0042] この解析に基づき、PVOH(ポリ(ビニルアルコール))、PVP(ポリビニルピロリドン)、およびセロハン等の高極性ポリマーは、計算したHSP距離が、フレーバースカルピングを最小にするのに有用であると考えられる閾値を超える程度まで、有意に極性であることが判明した。ポリビニルピロリドン(PVP、1−エテニルピロリジン−2−オンとも命名される)およびセロハンは、実質的に水溶性であり、水性飲料成分の水性パッケージング用途における、これらの使用がシール強度を著しく損なう程度まで水の存在下で膨潤し得る。しかし、EVOH(エチレンビニルアルコール)コポリマーは、PVOHおよび低密度ポリエチレン(LDPE)のもの中間のヒートシール性およびフレーバースカルピング挙動を示す。EVOHは、LDPEと類似の鎖構造を有するフリーラジカル重合エチレン−酢酸ビニルコポリマーを加水分解することによって形成される。
【0049】
[0043] 商業的なEVOHコポリマーは、一般に、そのモルエチレン含量、即ち、コポリマー中のエチレンのモル百分率(mol%)に従って特定される。表5は、いくつかのEVOHポリマーの熱データを提供し、低いフレーバースカルピングを有し、優れたヒートシール性を付与することが可能である組成物の範囲を特定するために、熱データをPVOH、EVOHおよびLDPE特性と比較した。
図2も表5のデータのグラフによる比較を提供し、0mol%エチレン含量におけるPVOH(ポリ(ビニルアルコール))、100mol%エチレン含量におけるLDPE(低密度ポリエチレン)、および様々な量のエチレン含量を有する選択されたEVOH(エチレンビニルアルコール)コポリマーに対する、本開示のいくつかの態様による様々な熱的および結晶化度特性を示す。プロットされたものは、PVOH、選択されたEVOHコポリマーおよびLDPEに対するガラス転移温度、融解ピーク温度、および質量ベースの結晶化度である。
【0052】
[0044] 本開示の原理に基づくこのデータの解析は、優れた熱的性能および優れたフレーバースカルピング性能のバランスのとれた組成物は、約40mol%から80mol%までの間のエチレン含量の範囲で実現される可能性があることを示す。表5および
図2を参照されたい。最も高いエチレン含量を有する商業的に知られているEVOHコポリマーは、約48mol%のエチレンを含む。したがって、これから最大約80mol%までのより高いエチレン含量を有するEVOHコポリマーが、バランスのとれた、改良された熱的性能およびフレーバースカルピング性能に適していることが見出されている。即ち、本開示は、ヒートシール層ポリマーは、約40≦エチレンmol%≦約80%であるEVOHコポリマーであるべきであり、それを含む、またはそれから選択されるべきであることを示す。
【0053】
[0045] さらに、本開示の原理によるこのデータの解析は、高い化学的極性と、優れたヒートシール性を確保するための低い結晶化度とのバランスをとったシーラント層組成物を実現するために、エチレンベースのヒートシーラント樹脂とEVOHのブレンドを提供することができ、このブレンドは、約1mol%〜約90mol%の範囲の有効なエチレンモル百分率をもたらすが、通常、約40mol%から約80mol%までの間の範囲内で使用することができることをさらに示している。例えば、EVOHは、以下のエチレンベースのホモポリマーおよび/またはコポリマーのうちの1つまたは複数とブレンドすることができて、エチレンベースのヒートシーラント樹脂と、EVOH:LDPE;HDPE;LLDPE;VLDPE;ULDPE;酢酸ビニルとのエチレンコポリマー;メチル−、エチル−もしくはブチル−アクリラートとのエチレンコポリマー;アクリル酸、メタクリル酸もしくは部分的にもしくは完全に中和されたこれらのアイオノマーとのエチレン−酸のコポリマー;無水マレイン酸グラフト化エチレンコポリマー;グリシジルメタクリラートもしくはエポキシ修飾されたエチレンコポリマー;またはヒドロキシル反応性官能基を有する任意の他のエチレンベースのコポリマー、等との開示されているブレンドが提供される。
【0054】
[0046] 直前に開示されているもの等のポリマーブレンドは、本開示に示される原理により、優れたヒートシール性と低いフレーバースカルピング性の両方の必要なバランスを実現するシーラント層組成物をもたらす。即ち、本開示は、ヒートシール層ポリマーが、ブレンド中の総エチレン含量が約1mol%〜約90mol%である、EVOHコポリマーおよびPE(ポリエチレン)のブレンドであるべきであり、それを含み、またはそれから選択されるべきであることを示す。有利には、EVOHコポリマーおよびPEのブレンドは、約40≦エチレンmol%≦約80%の総エチレン含量を有することができる。この組成物の範囲において、所望により、該ブレンド中に幾分かのPVOHを含むことも可能である。
【0055】
[0047] したがって、本開示は、a)約1mol%から約90mol%までの間のエチレン含量を有するEVOH(エチレンビニルアルコール)コポリマー;および/または、b)約1mol%から約90mol%までの間のブレンド中の総エチレン含量を有するEVOHコポリマーおよびPE(ポリエチレン)のブレンドのうちの少なくとも1つを含む最内部ヒートシール層を有する飲料成分パウチ等の、積層パッケージング構造物を提供する。他の態様において、EVOHコポリマーは、約1mol%から約80mol%までの間のエチレン含量を有することができ、および/またはEVOHコポリマーおよびPE(ポリエチレン)のブレンドは、約1mol%から約80mol%までの間のブレンド中の総エチレン含量を有することができる。さらに、いずれかのコポリマーの選択肢において、EVOHコポリマー中のエチレンのmol%またはEVOH/PEブレンド中のエチレンのmol%は、約1mol%、2mol%、3mol%、4mol%、5mol%、6mol%、7mol%、8mol%、9mol%、10mol%、12mol%、15mol%、18mol%、20mol%、25mol%、30mol%、35mol%、40mol%、45mol%、50mol%、55mol%、60mol%、65mol%、70mol%、75mol%、80mol%、85mol%、もしくは90mol%、または任意のこれらのモル百分率の間の任意の範囲であることができる。
【0056】
[0048] したがって、他の態様は、約1mol%から約90mol%までの間、約10mol%から約90mol%までの間、約20mol%から約85mol%までの間、約30mol%から約85mol%までの間、または約40mol%から約80mol%までの間のブレンド中の総エチレン含量を有するEVOHコポリマーおよびPE(ポリエチレン)のブレンドを含む最内部ヒートシール層を有する飲料成分パウチ等の積層パッケージング構造物を提供する。本態様によれば、EVOHコポリマーおよびPE(ポリエチレン)のブレンドは、約20mol%、25mol%、30mol%、35mol%、40mol%、45mol%、50mol%、55mol%、60mol%、65mol%、70mol%、75mol%、または80mol%のブレンド中の総エチレン含量を通常有することができる。
【0057】
[0049] 他の態様において、本開示は、2つの熱可塑性樹脂表面が熱および圧力の適用によって互いにシールされる、2つの熱可塑性樹脂をヒートシールする方法であって、熱可塑性樹脂のうちの少なくとも1つが、約1mol%から約90mol%までの間のエチレン含量を有するEVOH(エチレンビニルアルコール)コポリマー;および/またはブレンド中の総エチレン含量が約1mol%から約90mol%までの間である、EVOHコポリマーおよびPE(ポリエチレン)のブレンドを含むことを特徴とする方法を提供する。
【0058】
[0050] さらに別の態様によれば、本開示はまた、2つの熱可塑性樹脂表面がヒートシールされている物品であって、熱可塑性樹脂表面のうちの少なくとも1つが、約1mol%から約90mol%までの間のエチレン含量を有するEVOH(エチレンビニルアルコール)コポリマー;および/またはブレンド中の総エチレン含量が約1mol%から約90mol%までの間である、EVOHコポリマーおよびPE(ポリエチレン)のブレンドを含む、物品を提供する。
【0059】
[0051] 一態様において、本開示に対する方策は、改良されたヒートシール性を有するシーラント層を提供するために、EVOHと共にブレンドされ、均質化される副成分として、ポリオレフィンベースのシーラント樹脂の添加を使用することができる。このアプローチは、様々な極性の広範なフレーバー成分に対するEVOHの優れた耐フレーバースカルピング性を予想外に維持することが見出されている。本開示の前には、ヒートシール可能性および非フレーバースカルピング性の両方である潜在的な積層材シーラント組成物に取り組む試みは少数しか存在していない。理論に拘泥することなく、この結果は、これらの特性は一般に相互に排他的であるという知見によるものであり得る。即ち、耐フレーバースカルピング性である大部分のポリマーは、ヒートシールすることが非常に困難である。
【0060】
[0052] したがって、本開示は、積層構造の食品接触層およびヒートシール層を含む、非混和性または部分的に混和性のポリマーブレンドにおける、一般的にポリマーブレンドモルホロジーの安定化の方向に向けられる。以下の本開示の様々な態様の要約は、以下の全般的な指針に関する、シーラント層配合物のための組成物およびブレンド順序に関連する。
(1)積層構造のヒートシーラント−食品接触層用組成物は、少なくとも1種の界面相溶化剤を含む、少なくとも1種のポリオレフィンポリマーまたはコポリマー組成物と混合された、1モル%〜80モル%の範囲、あるいは、1モル%〜90モル%ーセントの範囲のエチレン含量を有するEVOHコポリマーを第1の成分として含んでもよい。
(2)該EVOHコポリマーは、少なくとも10体積%〜最大99体積%のヒートシーラント−食品接触層を含んでもよい。
(3)ポリオレフィン組成物は、以下のリスト:高密度ポリエチレン(HDPE)、様々な不均一系または均一系の遷移金属配位触媒技術によって触媒された、線状低密度(LLDPE)、超低密度(VLDPE)または超低密度(ULDPE)ポリエチレンコポリマー;高圧、フリーラジカル重合エチレンホモポリマー(LDPE);エチレンと、酢酸ビニル、アクリラート(例えば、メチル−、エチル−、および/またはブチル−アクリラート)、酸コモノマー(例えば、アクリル酸、およびメタクリル酸)との高圧、フリーラジカル重合コポリマー;ならびにエチレン−酸コポリマーの部分的に中和されたまたは中和されたアイオノマー;ならびに前述のポリマーの様々なブレンドからの1種または複数のポリマーを含んでもよい。
(4)相溶化剤は、(a)上記指針(3)に列挙されたポリオレフィン樹脂のうちの1つ;上記指針(3)に列挙された前述のポリオレフィン樹脂のうちの1つの無水物でグラフトされた変形体;EVOHヒドロキシル官能基と反応により結合することが可能なエポキシ修飾(グリシジル)樹脂(例えば、グリシジルメタクリラート修飾樹脂);および/またはヒドロキシル官能基との反応が可能な反応性官能基を有する任意の樹脂を含んでもよく、これらから本質的になってもよく、またはこれらからなる群から選択してもよい。
(5)ヒートシーラント−食品接触層に対する配合/ブレンド順序は、一般に以下の通り行われる:
(a)上記指針(3)に列挙されたポリオレフィン樹脂のうちの1つまたは複数の、上記指針(4)に記載された適した相溶化剤との配合。
(b)前述のマスターバッチの、上記指針(1)で定義されたEVOHコポリマーとの配合。
(6)(5)(b)でシーラント層として配合された樹脂の、タイ層接着材の有無における積層材共押出し。
(7)(5)(b)でシーラント層として配合された樹脂の、タイ層接着材の有無における押出しコーティング。
(8)適したタイ層接着材は、限定するものではないが、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−アクリラートコポリマー、エチレン−酸コポリマー、およびグリシジルメタクリラート修飾エチレンコポリマーを含んでもよく、これらから本質的になってもよく、またはこれらからなる群から選択してもよい。
【0061】
[0053] ドロキシル反応性相溶化剤とのEVOHおよびエチレンベースのホモポリマーまたはコポリマーのブレンドは、EVOH相をエチレンコポリマーブレンドベースの相と、その界面の全域で結合することができる。この結合または相溶化機能は、ブレンドされた層が全面的に一体化され、強くなるように界面を強化し、また、自己相互拡散することができて、フィルム界面において、改良されたヒートシール強度をもたらすことができる、ヒートシール可能なエチレン−コポリマー領域を提供する。したがって、反応性相溶化ポリマーは、通常、エチレンベースのホモポリマーまたはコポリマーのブレンド層にのみ添加される。
【0062】
[0054] 本発明の上記およびその他の態様および実施形態を、以下の実施例においてさらに説明する。
【実施例】
【0063】
[0055] 本開示に述べられた方策によれば、表6は、一連の組成物を支配する概念を示す、いくつかの例示的なブレンドを要約する。この表に示すリストは、決してすべての起こり得る実施形態またはほとんどの実施形態を含んではいないが、これらの実施例は、シーラント層組成物および配合物の方策の概念の特徴を例示する。
【0064】
【表6】
【0065】
[0056] 例えば、本明細書に示された実施例において、通常すべての場合、1mol%〜90mol%以上の範囲のエチレン含量を含むEVOHコポリマーは、ポリオレフィン副成分相および反応性相溶化剤と、またはポリオレフィンベースの副成分および反応性(共有結合で結合される、または比較的強い分子間引力を介して)、界面相溶化ポリマーを含む配合されたポリオレフィンマスターバッチと直接または逐次にブレンドされて、50.1%≦φ
主成分≦99.5%および0.5%≦φ
副成分≦49.9%の体積ベースの組成物を有する多相ポリマーブレンドを得ることができる。
【0066】
[0057] ブレンドの組成物はまた、各成分に対する適当な質量相密度を用いると、重量パーセントのベースで同価に規定される。この態様において、副成分相の体積分率は、副成分ポリオレフィン成分および反応性界面相溶化ポリマーをまとめている。界面相溶化ポリマーの添加は、副成分相ポリオレフィンブレンドの0.01wt%から100wt%までの間の質量分率において一般的に添加することができる。界面相溶化ポリマーの実際の組成は、変数の中でも、一般に、その反応性官能基の濃度、その分子量および分子量分布、ならびに使用されるマスターバッチおよび最終ブレンドの混合強度に依存する。
【0067】
[0058]一態様において、本出願人は理論に拘泥するものではないが、該ブレンドのポリオレフィン副成分相は、界面相溶化ポリマーを貯蔵するための一種のリザーバーの役割を果たしてもよく、同時に、界面相溶化ポリマーのEVOH相への曝露を制御された方法で制限する。この態様において、副成分ポリオレフィン相を固着させながら、EVOH相と反応し、架橋するのに十分な反応性相溶化ポリマーを提供してもよい。したがって、EVOH相内への過剰の反応性相溶化ポリマーは、ヒートシール工程の間にフローおよびコーキングを妨害する過度の架橋を引き起こす可能性がある。
【0068】
[0059] 他の態様によれば、界面相溶化ポリマーには、EVOHヒドロキシル官能基と反応することができる、反応性官能基の手段が望ましくは含まれ得る。適用可能な反応性化学的官能基にはEVOH−ポリオレフィン副成分相界面全域で共有結合を生じさせることが可能である無水物エポキシ(グリシジル)等の基が含まれる。しかし、これらは、例示的な化学的官能基である。なぜなら、十分な界面の安定化および強化は、水素結合、イオン相互作用、極性相互作用、分散力等の様々な特定の相互作用を介して機能する相溶化ポリマーによって実現され得るように、界面結合は共有結合である必要はないからである。このようなポリマーは、例えば、オレフィン−ビニル酸コポリマーおよび関連したアイオノマーを含むことができる。
【0069】
[0060] 本明細書に開示されたように、ポリオレフィン組成物は、以下のポリマー:高密度ポリエチレン(HDPE)、様々な不均一系または均一系の遷移金属配位触媒技術によって触媒された線状低密度(LLDPE)、超低密度(VLDPE)または超低密度(ULDPE)ポリエチレンコポリマー;高圧、フリーラジカル重合エチレンホモポリマー(LDPE);エチレンと、酢酸ビニル、アクリラート(例えば、メチル−、エチル−、および/またはブチル−アクリラート)、酸コモノマー(例えば、アクリル酸、およびメタクリル酸)との高圧、フリーラジカル重合コポリマー;ならびにエチレン−酸コポリマーの部分的に中和された、または中和されたアイオノマー;ならびに前述のポリマーの様々なブレンドのうちの1つまたは複数を含んでもよく、またはそれから選択されてもよい。
【0070】
[0061] 上記の項目(3)に基づくポリオレフィン組成物によるブレンド方策の例は、
(1)LDPE、HDPE、LLDPE、またはVLDPEと共にエチレン−酸コポリマー:界面相溶化剤として、EVAまたはEMAコポリマーを添加、および
(2)LDPE、HDPE、LLDPE、またはVLDPEと共にナトリウムアイオノマー:界面相溶化剤として、EVAまたはEMAと共にエチレン−酸コポリマー
を含み、
(3)上記項目(1)および(2)は、EVOHヒドロキシル官能基と反応することが可能な、少なくとも1種の界面反応性相溶化剤も含むことになる。
ポリマーブレンドは、コポリマー中の隣接する単位が、別のポリマーまたはコポリマーを構成する単位より相互により低い親和性を有するコポリマーを用いて設計される。コポリマー単位の間の相互作用エネルギーが、ブレンドされたポリマー中の相互作用よりプラスの場合、全体的な相互作用エネルギーは低下され、部分的な混和性が起こる。水素結合等の特定の相互作用がポリマーブレンドにおいて効果的に使用されて、界面相溶性および相の間の部分的混和性が促進される。
【0071】
定義
[0062] 本明細書で使用される用語をより明確に定義するために、以下の定義を提供して、本開示の様々な態様をさらに説明し、詳しく述べるが、該定義は本開示それ自体または文脈によって別の指示がなければ、本明細書に適用することができる。参照により本明細書に援用された任意の文献によって提供された任意の定義または用法が、本明細書で提供された定義または用法と矛盾する限り、本明細書に提供された定義または用法が支配する。
【0072】
[0063] 「炭酸清涼飲料(CSD)」びんまたは容器という用語は、対象とする容器の内容物に関しては特定の限定なしに、炭酸化等の加圧下で使用するように設計された本開示の容器を表すために本明細書で使用される。一般に、「容器」という用語は、文脈上別の意味に解すべき場合を除き、「びん」という用語と同義で使用される。
【0073】
[0064] ポリマー「ブレンド」またはポリマーおよび/またはコポリマーのブレンドは、列挙されたポリマーに基づく、当技術分野で認められているクラスの材料である。IUPAC Compendium of Chemical Terminology( ed. A. D. McNaught & A. Wilkinson、Blackwell Science, Cambridge, UK, c. 1997, p.312)によれば、ポリマーブレンドは、2種以上の異なるポリマーの肉眼的に均一な混合物である。ポリマーブレンドは、均一な性質および明確な特性を有する。
【0074】
[0065] 略語「PVOH」は、0mol%のエチレン含量を有するポリ(ビニルアルコール)に対して使用され;「LDPE」は、100mol%エチレン含量を有する低密度ポリエチレンに対して使用され、「EVOH」は、エチレンビニルアルコールコポリマーであり、これは名目上はビニルアルコールおよびエチレンのコポリマーであり、0mol%を超え、100mol%未満のエチレン含量を含む。
【0075】
[0066] 本明細書および添付した特許請求の範囲で使用される、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」には、文脈が明確に別に指示しない限り、複数の指示対象が含まれる。したがって、「1つの光」への言及には、単一の光と、接触が示すまたは許すならば、1つより多くの光の任意の組合せ、例えば、組み合わせて使用される複数のUV光が含まれる。
【0076】
[0067] 本明細書および特許請求の範囲全体にわたり、用語「含む(comprise)」および「含む(comprising)」および「含む(comprises)」等の該用語の変形は、「含めるが限定するものではない(including but not limited to)」を意味し、例えば、他の添加剤、成分、要素、または工程を除外するものではない。組成物および方法は、様々な成分または工程を「含む(comprising)」という用語で説明されているが、該組成物および方法はまた、様々な成分または工程「から本質的になる」または様々な成分または工程「からなる」可能性もある。
【0077】
[0068] 本明細書全体における「一実施形態」「ある実施形態(an embodiment)」または「実施形態(embodiments)」への言及は、該実施形態と関連して説明されている特定の、特徴、構造物、または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書中の様々な場所において「一実施形態において」または「ある実施形態において」という語句の出現は、すべてが必ずしも同じ実施形態に関するとは限らない。さらに、特定の特徴、態様、構造物、または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わされ得る。
【0078】
[0069] 「任意選択の」または「任意選択により」は、引き続いて記述された要素、成分、工程、または状況が、起こるまたは起こらないことがあること、および該記述には、要素、成分、工程、または状況が起こる場合、または起こらない場合が含まれることを意味する。
【0079】
[0070] 本明細書全体において、様々な刊行物が参照され得る。これらの刊行物の開示は、それにより、開示されている主題が関連する最新技術をより完全に説明するために、関連部分について参照により本明細書に援用される。開示された参考文献はまた、該参照が存在する文章中で論じられるものに記載されている素材に対して、個々におよび特定的に参照により本明細書に援用される。参照により本明細書に援用された任意の文献によって提供された任意の定義または用法が、本明細書で適用された定義または用法と矛盾する限り、本明細書で適用された定義または用法が支配する。
【0080】
[0071] 別の指示がなければ、任意のタイプの範囲、例えば、サイズ、数値、百分率等が開示または特許請求された場合、その中に包含される部分的範囲または部分的範囲の任意の組合せを含めた、このような範囲が合理的に包含し得るそれぞれ可能な数を個別に開示または特許請求することが意図される。サイズまたは百分率の範囲を記述する場合、このような範囲が無理なく包含し得るであろう、考えられるすべての数は、例えば、範囲の端点に存在するより大きい1つの有効数字を有する範囲内の値、または状況が示すもしくは許すならば、最上位の数を有する端点と同じ数の有効数字を有する範囲内の値を指す。例えば、85%〜95%等の百分率の範囲を記述する場合、この開示は、開示に包含されるそれぞれ85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、および95%、ならびに任意の範囲、部分的範囲、および部分的範囲の組合せを包含することを意図するものと解される。本出願人らの意図は、範囲を記述するこれらの2つの方法が交換可能なことである。したがって、本出願人らは、何らかの理由で開示の全部の手段より少なく特許請求することを選択した場合、例えば、本出願の時点で本出願人らが気づかない参照事項を説明すること等、群の範囲内の部分的範囲または部分的範囲の任意の組合せを含めた、任意のこのような群の任意の個々のメンバーを排除または除外する権利を留保する。
【0081】
[0072] 値または範囲は、本明細書に「約」として、「約」特定の値からおよび/または「約」別の特定の値までと表されてもよい。このような値または範囲が表される場合、開示された他の実施形態は、1つの特定の値から、および/または他の特定の値までの前掲の特定の値を含む。同様に、値が、先行詞「約」の使用によって近似値として表される場合、特定の値は別の実施形態を形成するものと解される。そこに開示されるいくつかの値が存在すること、および各値はまた、該値それ自体に加えて「約」その特定の値として本明細書に開示されていることがさらに解される。別の態様において、「約」という用語の使用は、提示された値の±20%、提示された値の±15%、提示された値の±10%、提示された値の±5%または提示された値の±3%を意味する。
【0082】
[0073] 米国特許商標庁に先立つ任意の出願において、本出願の任意の要約書が、37 C.F.R.第1.72条の要求事項および37 C.F.R.第1.72条(b)に提示された「米国特許商標庁および国民が、一般的に技術的開示の性質および要点をおおまかな点検から迅速に決定することを可能にする」目的を満たす目的で提供される。したがって、本出願の要約書はまた、特許請求の範囲を解釈するために、または本明細書に開示された主題の範囲を限定するために使用されるものではない。さらに、本明細書に使用される任意の見出しはまた、特許請求の範囲を解釈するために、または本明細書に開示された主題の範囲を限定するために使用されるものではない。さもなければ推定的または仮想的に記述された実施例を説明するのに任意の過去形を使用することは、推定的または仮想的な実施例が実際に行われたことを反映するものではない。
【0083】
[0074] 本明細書に開示された例示的な実施形態において多数の修正が可能であることが、本開示による新規な教示および利点から実質的に逸脱することなく、当業者には容易に理解されよう。したがって、すべてのそのような修正および等価物は、以下の特許請求の範囲において定義される本開示の範囲に包含されるものである。したがって、本明細書の説明を読んだ後、それ自体を当業者に提案し得る、その様々な他の態様、実施形態、修正、および等価物を頼りにするものを、本開示または添付した特許請求の範囲の精神から逸脱することなく有することができるものと理解される。
【0084】
[0075] 本出願人らは、出願人らが気づかない可能性がある先行技術の開示を考慮してあらゆる特許請求の範囲を限定するために、例えば、任意の選択、特徴、範囲、要素、または態様を断定する権利を留保する。