【文献】
Computational Biology and Chemistry,2016年 1月25日,vol.61,p.210-220
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0004】
本発明は、一部の実施形態では、脂質機能障害によって特徴づけられる代謝障害の治療のために使用できる新しい治療薬及び/または治療レジメンを特定し開発するための改善されたインビボシステムを許容する非ヒト動物を設計することが望ましいという認識を包含する。本発明は、心血管性の疾患、障害、または状態を治療するために使用できる新しい治療薬を特定し開発するための改善されたインビボシステムを許容する非ヒト動物を設計することが望ましいという認識も包含する。さらに、本発明は、非ヒト動物が操作されたアンジオポエチン様タンパク質8(Angptl8)遺伝子を有すること、及び/または他の方法で、ヒトまたはヒト化アンジオポエチン様タンパク質8ポリペプチドを発現し、(例えば、血中に)含有し、または産生することが、例えば、高トリグリセリド血症の治療のために使用されうる治療薬を同定及び開発する際に使用するために望ましいという認識も包含する。
【0005】
一部の実施形態では、操作されたAngptl8遺伝子を含むゲノムを有する非ヒト動物が提供され、該操作されたAngptl8遺伝子は、二つの異なる種(例えば、ヒトおよび非ヒト)からの遺伝物質を含む。一部の実施形態では、当該操作されたAngptl8遺伝子は、ヒトANGPTL8ポリペプチドのコイルドコイル・ドメインを1つ以上コードする遺伝物質を含む。一部の実施形態では、当該操作されたAngptl8遺伝子は、ヒトANGPTL8ポリペプチドのN末端領域の全部または一部をコードする遺伝物質含む。従って、一部の実施形態では、本明細書に記載されるとおり、非ヒト動物の操作されたAngptl8遺伝子は、全てまたは実質的に全ヒトである配列を有するAngptl8ポリペプチドをコードする。様々な実施形態では、本明細書に記載されるとおり、非ヒト動物によって発現するAngptl8ポリペプチドは、非ヒトプロモーター(例えば、非ヒトAngptl8プロモーター)の制御の下に発現する。
【0006】
一部の実施形態では、非ヒト動物が提供され、そのゲノムが内因性部分およびヒト部分を含むAngptl8遺伝子を含み、内因性部分およびヒト部分は非ヒトAngptl8調節エレメントと動作可能に連結している。
【0007】
一部の実施形態では、非ヒト動物が提供され、それは非ヒトAngptl8調節エレメントの制御の下、ヒトANGPTL8ポリペプチドを発現する。
【0008】
一部の実施形態では、Angptl8遺伝子の内因性部分は、内因性非ヒトAngptl8プロモーターを含むか備える。一部の実施形態では、Angptl8遺伝子の内因性部分は、内因性非ヒトAngptl8座位で、内因性非ヒトAngptl8遺伝子の3’非翻訳領域のすぐ下流にある3’領域または配列を含むか備える。
【0009】
一部の実施形態では、Angptl8遺伝子の内因性部分は、5’及び/または3’非翻訳領域(UTRs)を含むか備える。一部の実施形態では、Angptl8遺伝子の内因性部分は、5’及び/または3’非翻訳領域(UTR)を含み、さらに内因性Angptl8ATG開始コドンを含む。一部の実施形態では、内因性Angptl8遺伝子の5’及び3’UTRはそれぞれが、齧歯類Angptl8遺伝子に存在する、対応する5’及び3’UTRに対し、実質的に同一、または同一の配列を有する。一部の実施形態では、内因性Angptl8遺伝子の5’及び3’UTRはそれぞれが、配列番号1または配列番号3に存在する対応する5’及び3’UTRに対し、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%同一である配列を有する。
【0010】
一部の実施形態では、本明細書に記載される通り、Angptl8遺伝子は、配列番号6または配列番号8と少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%同一である配列を有するポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、本明細書に記載される通り、Angptl8遺伝子は、配列番号6または配列番号8と実質的に同一、または同一の配列を有するポリペプチドをコードする。
【0011】
一部の実施形態では、ヒト部分は、全部または部分において、ヒトANGPTL8遺伝子のエクソン1〜4を含むか備える。一部の実施形態では、全部または部分において、ヒトANGPTL8遺伝子のエクソン1〜4は、配列番号5のヒトANGPTL8mRNA配列に存在する、全部または部分において、対応するエクソン1〜4に対し、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%同一である。一部の実施形態では、全部または部分において、ヒトANGPTL8遺伝子のエクソン1〜4は、配列番号5のヒトANGPTL8mRNA配列に存在する、対応するエクソン1〜4に対し実質的に同一、または同一である。一部の実施形態では、ヒト部分は、ヒトANGPTL8遺伝子の3’UTRをさらに含む。一部の実施形態では、ヒト部分は、非ヒト動物における発現にコドン最適化された配列を含む。
【0012】
一部の実施形態では、ヒトANGPTL8ポリペプチドは、配列番号6または配列番号8のアミノ酸残基22〜198に対し、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含むか備える。一部の実施形態では、ヒトANGPTL8ポリペプチドは、配列番号6または配列番号8のアミノ酸残基22〜198に対し、実質的に同一または同一のアミノ酸配列を含むか備える。
【0013】
一部の実施形態では、ヒトANGPTL8ポリペプチドは、配列番号9に対し、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%同一である配列によってコードされる。一部の実施形態では、ヒトANGPTL8ポリペプチドは、配列番号9と実質的に同一、または同一の配列によってコードされる。一部の実施形態では、ヒトANGPTL8ポリペプチドは、コドン最適化された配列によってコードされる。
【0014】
一部の実施形態では、ヒトANGPTL8ポリペプチドは、バリアントヒトANGPTL8ポリペプチドである。一部の実施形態では、バリアントヒトANGPTL8ポリペプチドは、R59Wアミノ酸置換によって特徴づけられる。一部の実施形態では、バリアントヒトANGPTL8ポリペプチドは、Q121Xアミノ酸置換によって特徴づけられる。一部の実施形態では、バリアントヒトANGPTL8ポリペプチドは、より低い血漿低比重リポタンパク質(LDL)コレステロール及び/または高比重リポタンパク質(HDL)コレステロールレベルに特徴づけられ、または関連づけられる。一部の実施形態では、バリアントヒトANGPTL8ポリペプチドは、増加したトリグリセリドレベルに特徴づけられ、または関連づけられる。一部の実施形態では、ヒトANGPTL8ポリペプチドは、内因性非ヒトAngptl8座位に配置された核酸配列によってコードされる。
【0015】
一部の実施形態では、単離された非ヒト細胞または組織が提供され、そのゲノムは、本明細書に記載されるAngptl8遺伝子を含む。一部の実施形態では、細胞はリンパ球である。一部の実施形態では、細胞は、B細胞、樹状細胞、マクロファージ、単球、及びT細胞から選択される。一部の実施形態では、組織は、脂肪、膀胱、脳、乳房、骨髄、目、心臓、腸、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、筋肉、膵臓、血漿、血清、皮膚、脾臓、胃、胸腺、精巣、卵子、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0016】
一部の実施形態では、本明細書に記載される単離された非ヒト細胞から作製される、生成される、または産生される不死化細胞が提供される。
【0017】
一部の実施形態では、非ヒト胚性幹(ES)細胞が提供され、そのゲノムは、本明細書に記載されるAngptl8遺伝子を含む。一部の実施形態では、非ヒト胚性幹細胞は、齧歯類の胚性幹細胞である。一部のある実施形態では、齧歯類の胚性幹細胞はマウス胚性幹細胞であり、129系、C57BL系またはこれらの混合物からのものである。一部のある実施形態では、齧歯類の胚性幹細胞はマウス胚性幹細胞であり、129系およびC57BL系の混合物である。
【0018】
一部の実施形態では、非ヒト動物を作るための本明細書に記載された非ヒト胚性幹細胞の利用法が提供される。一部のある実施形態では、非ヒト胚性幹細胞はマウス胚性幹細胞であり、本明細書に記載されたAngptl8遺伝子(または座位)を含むマウスを作るために使用される。一部のある実施形態では、非ヒト胚性幹細胞はラット胚性幹細胞であり、本明細書に記載されたAngptl8遺伝子(または座位)を含むラットを作るために使用される。
【0019】
一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト胚性幹細胞を含む、それから作られる、それから得られる、またはそれから生成される非ヒト胚が提供される。一部のある実施形態では、非ヒト胚は齧歯類胚であり、一部の実施形態ではマウス胚、一部の実施形態ではラット胎芽である。
【0020】
一部の実施形態では、非ヒト動物を作るための本明細書に記載された非ヒト胚の利用法を提供する。一部のある実施形態では、非ヒト胚はマウス胚であり、本明細書に記載されるAngptl8遺伝子(または座位)を含むマウスを作るために使用される。一部のある実施形態では、非ヒト胚はラット胚であり、本明細書に記載されるAngptl8遺伝子(または座位)を含むラットを作るために使用される。
【0021】
一部の実施形態では、本明細書に記載される単離された非ヒト細胞もしくは組織、本明細書に記載される不死化細胞、本明細書に記載される非ヒト胚性幹細胞、本明細書に記載される非ヒト胚、または本明細書に記載される非ヒト動物を含むキットが提供される。
【0022】
一部の実施形態では、治療または診断のための薬剤(例えば、抗体またはその抗原結合断片)の製造及び/または開発における使用のための、本明細書に記載されるキットが提供される。
【0023】
一部の実施形態では、疾患、障害もしくは状態の治療、予防、または改善のための薬剤(例えば、抗体またはその抗原結合断片)の製造及び/または開発における使用のための、本明細書に記載されるキットが提供される。
【0024】
一部の実施形態では、本明細書に記載される導入遺伝子、核酸構築物、DNA構築物、または標的化ベクターが提供される。一部のある実施形態では、導入遺伝子、核酸構築物、DNA構築物、または標的化ベクターは、本明細書に記載されるAngptl8遺伝子(または座位)の全部または一部を含む。一部のある実施形態では、導入遺伝子、核酸構築物、DNA構築物、または標的化ベクターは、本明細書に記載されるAngptl8遺伝子(または座位)の全部または一部を含むDNA断片を含む。一部のある実施形態では、導入遺伝子、核酸構築物、DNA構築物、または標的化ベクターは、配列番号9、配列番号10、配列番号15、配列番号16、及び配列番号17のいずれか1つを含むAngptl8遺伝子(または座位)を含む。一部のある実施形態では、導入遺伝子、核酸構築物、DNA構築物、または標的化ベクターは、配列番号15、配列番号16、及び配列番号17を含む、Angptl8遺伝子(または座位)を含む。一部のある実施形態では、導入遺伝子、核酸構築物、DNA構築物、または標的化ベクターは、一つ以上の選択マーカーをさらに含む。一部のある実施形態では、導入遺伝子、核酸構築物、DNA構築物、または標的化ベクターは、1つ以上の部位特異的組み換え部位(例えば、loxP、Frt、またはそれらの組み合わせ)をさらに含む。一部のある実施形態では、導入遺伝子、核酸構築物、DNA構築物、または標的化ベクターは、
図3に図示されている。
【0025】
一部の実施形態では、非ヒト胚性幹細胞、非ヒト細胞、非ヒト胚、及び/または非ヒト動物を作製するための、本明細書に記載される導入遺伝子、核酸構築物、DNA構築物、または標的化ベクターの利用法が提供される。
【0026】
一部の実施形態では、内因性Angptl8遺伝子からヒトANGPTL8ポリペプチドを発現する非ヒト動物を作製する方法が提供され、当該方法は、(a)ゲノム断片を、非ヒト胚性幹細胞の内因性Angptl8遺伝子に配置することであって、前記ゲノム断片は、ヒトANGPTL8ポリペプチドの全部または一部をコードするヌクレオチド配列を含む、配置すること;(b)(a)で生成された非ヒト胚性幹細胞を取得すること;及び(c)(b)の非ヒト胚性幹細胞を使用して非ヒト動物を作ること、とを含む。
【0027】
一部の実施形態では、ヌクレオチド配列はヒトANGPTL8遺伝子のエクソン1〜4の全部または一部をさらに備える。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列はヒトANGPTL8遺伝子の3’UTRをさらに含む。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、ヒトANGPTL8ポリペプチドの成熟型(すなわち、シグナルペプチドを有さない)をコードする。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、ヒトANGPTL8ポリペプチドのアミノ酸22〜60、77〜134、156〜193、または22〜198をコードする。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は一つ以上の選択マーカーを含む。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は一つ以上の部位特異的組み換え部位を含む。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、リコンビナーゼ遺伝子と、リコンビナーゼ認識部位に隣接した選択マーカーを備えており、そのリコンビナーゼ認識部位は、除去を導くよう方向づけられる。一部の実施形態では、リコンビナーゼ遺伝子は、分化細胞においてリコンビナーゼ遺伝子の発現を誘導するが、未分化細胞ではリコンビナーゼ遺伝子の発現を誘導しないプロモーターに動作可能に連結される。一部の実施形態では、リコンビナーゼ遺伝子は、転写によって能力を有し、発生的に制御されるプロモーターに動作可能に連結される。一部の実施形態では、転写によって能力を有し、発生的に制御されるプロモーターは、配列番号12、配列番号13、または配列番号14であるか、これらを含み、一部の実施形態では、転写によって能力を有し、発生的に制御されるプロモーターは、配列番号12であるか、これを含む。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、非ヒト動物における発現にコドン最適化された1つ以上の配列を含む。内因性Angptl8遺伝子からヒトANGPTL8ポリペプチドを発現する非ヒト動物を作る方法の一部の実施形態では、該方法が、(c)において生成される齧歯類を繁殖させるステップをさらに含み、内因性Angptl8遺伝子からヒトANGPTL8ポリペプチドを発現するためにホモ接合性齧歯類が作られるようにする。
【0028】
一部の実施形態では、ヒトANGPTL8ポリペプチドをコードする、Angptl8遺伝子を含むゲノムを持つ非ヒト動物を作る方法が提供され、該方法は非ヒト動物のゲノムを改変し、それが非ヒト動物Angptl8調節配列の制御の下、ヒトANGPTL8ポリペプチドをコードするAngptl8遺伝子を含むようにし、それによって該非ヒト動物を作る。
【0029】
一部の実施形態では、Angptl8遺伝子が、ヒトANGPTL8遺伝子のエクソン1〜4の全部または一部を含むよう改変される。一部の実施形態では、Angptl8遺伝子が、ANGPTL8遺伝子のエクソン1〜4の全部または一部を含むよう改変され、ヒトANGPTL8遺伝子の3’UTRをさらに含むよう改変される。
【0030】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法のいずれか1つにより取得可能な(作製される、取得される、または生成される)非ヒト動物が提供される。
【0031】
一部の実施形態では、ヒトANGPTL8を標的とする薬剤のトリグリセリド低減有効性を評価する方法が提供され、該方法は、本明細書に記載される非ヒト動物に薬剤を投与するステップ、及びヒトANGPTL8を標的とする薬剤の一つ以上のトリグリセリド低減特性を決定するためのアッセイを行うステップ、を含む。
【0032】
一部の実施形態では、ヒトANGPTL8を標的とする薬剤の薬物動態特性を評価する方法が提供され、該方法は、本明細書に記載される非ヒト動物に薬剤を投与するステップ、及びヒトANGPTL8を標的とする薬剤の一つ以上の薬物動態特性を決定するためのアッセイを行うステップ、を含む。
【0033】
一部の実施形態では、ヒトANGPTL8を標的とする薬剤はANGPTL8拮抗薬である。一部の実施形態では、ヒトANGPTL8を標的とする薬剤はANGPTL8作動薬である。一部の実施形態では、ヒトANGPTL8を標的とする薬剤は抗ANGPTL8抗体である。一部の実施形態では、ヒトANGPTL8を標的とする薬剤は、齧歯類の静脈内、腹腔内、または皮下に投与される。
【0034】
一部の実施形態では、非ヒト動物が提供され、そのゲノムは、内因性Angptl8遺伝子の5’UTRを含む内因性部分と、ヒトANGPTL8遺伝子の3’UTRのエクソン1〜4の全部または一部を含むヒト部分とを含む、操作されたAngptl8遺伝子を含み、該ヒト部分は内因性非ヒトAngptl8ATG開始コドンに動作可能に連結され、内因性非ヒトAngptl8プロモーターに動作可能に連結され、非ヒト動物はその血清内にヒトANGPTL8ポリペプチドを発現する。操作されたAngptl8遺伝子はまた、内因性Angptl8遺伝子の3’UTR、及び/または内因性Angptl8座位で内因性Angptl8遺伝子の3’UTRのすぐ下流にある3’配列を、含んでも、連結しても、続いてもよい。
【0035】
一部の実施形態では、高トリグリセリド血症の非ヒト動物モデルが提供され、当該非ヒト動物は、本明細書に記載されるヒトANGPTL8ポリペプチドを発現する。
【0036】
一部の実施形態では、高トリグリセリド血症の非ヒト動物モデルが提供され、当該非ヒト動物は、本明細書に記載されるAngptl8遺伝子を含むゲノムを有する。
【0037】
一部の実施形態では、治療または診断のための薬剤の製造及び/または開発における使用のための、本明細書に記載の非ヒト動物または細胞が提供される。
【0038】
一部の実施形態では、薬品としての使用など医療で使用するための薬剤またはワクチンの製造及び/または開発における、本明細書に記載の非ヒト動物または細胞の利用法が提供される。
【0039】
一部の実施形態では、疾患、障害、または状態の治療、予防または改善のための医薬の製造における使用のための、本明細書に記載の非ヒト動物または細胞が提供される。一部の実施形態では、疾患、障害、または状態は、高トリグリセリド血症である。一部の実施形態では、疾患、障害、または状態は、心血管性の疾患、障害、または状態である。
【0040】
一部の実施形態では、脂質機能障害によって特徴づけられる疾患、障害または状態の治療のための医薬の製造における、本明細書に記載の非ヒト動物または細胞の利用法が提供される。
【0041】
一部の実施形態では、ヒトANGPTL8に結合する抗体の製造及び/または開発における、本明細書に記載の非ヒト動物または細胞の利用法が提供される。
【0042】
様々な実施形態では、非ヒトAngptl8調節エレメントは、非ヒトAngptl8プロモーターを含み、一部の実施形態では、内因性非ヒトAngptl8プロモーターを含む。
【0043】
様々な実施形態では、本明細書に記載のAngptl8遺伝子は、ヒト化Angptl8遺伝子である。
【0044】
様々な実施形態では、Angptl8遺伝子のヒト部分は、特に脂質結合またはANGPTL3を結合するのに関与する、ヒトANGPTL8ポリペプチドのアミノ酸配列をコードする、アミノ酸配列をコードする。
【0045】
様々な実施形態では、Angptl8ポリペプチドのヒト部分は、コイルドコイル・ドメインのアミノ酸配列、またはヒトANGPTL8ポリペプチドのN末端領域を含む。
【0046】
様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物は、非ヒト動物の血清内に検出可能なヒトANGPTL8ポリペプチドを発現する。様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物は、非ヒト動物の血清内に内因性Angptl8ポリペプチドを、検出可能に発現しない。
【0047】
様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物は、配列番号9または配列番号11を含む、Angptl8遺伝子(または座位)を含む。様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物は、配列番号15及び配列番号18を含む、Angptl8遺伝子(または座位)を含む。
【0048】
様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物は齧歯類であり、一部の実施形態ではマウスであり、一部の実施形態ではラットである。一部の実施形態では、本明細書に記載のマウスは、129系、BALB/C系、C57BL/6系、及び混合129xC57BL/6系から成る群から選択され、一部のある実施形態ではC57BL/6系である。
【0049】
本明細書で使用される場合、「約」及び「およそ」という用語は同意義として使用される。約/およその有無に関わらず、本明細書で使用される任意の数字は、当業者によって理解される任意の正常変動を網羅することが意図される。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
そのゲノムが内因性部分及びヒト部分を含む統合Angptl8遺伝子を含む齧歯類であって、前記内因性及びヒト部分が齧歯類またはヒトAngptl8調節エレメントと動作可能に連結した、齧歯類。
(項目2)
前記齧歯類Angptl8調節エレメントが、齧歯類Angptl8プロモーターを含む、項目1に記載の齧歯類。
(項目3)
前記齧歯類Angptl8プロモーターが、内因性齧歯類Angptl8プロモーターである、項目2に記載の齧歯類。
(項目4)
前記Angptl8遺伝子の前記内因性部分が、内因性5’及び/または3’非翻訳領域(UTR)を含む、項目1〜3のいずれか一項に記載の齧歯類。
(項目5)
前記ヒトAngptl8調節エレメントが、ヒトAngptl8プロモーターを含む、項目1に記載の齧歯類。
(項目6)
前記内因性Angptl8遺伝子の前記5’及び3’UTRはそれぞれが、齧歯類 Angptl8遺伝子に存在する、対応する5’及び3’UTRに対し、実質的に同一、または同一の配列を有する、項目4に記載の齧歯類。
(項目7)
前記Angptl8遺伝子が、配列番号6に対して少なくとも95%同一である配列を有するポリペプチドをコードする、項目1〜6のいずれか一項に記載の齧歯類。
(項目8)
前記ヒト部分が、ヒトANGPTL8遺伝子のエクソン1〜4の全部または一部を含む、項目1〜7のいずれか一項に記載の齧歯類。
(項目9)
ヒトANGPTL8遺伝子のエクソン1〜4の全部または一部は、配列番号5のヒトANGPTL8mRNA配列に存在する、対応するエクソン1〜4の全部または一部に対して少なくとも95%同一である、項目8に記載の齧歯類。
(項目10)
前記ヒト部分が、前記齧歯類における発現のためにコドン最適化された配列を含む、項目8に記載の齧歯類。
(項目11)
齧歯類Angptl8調節エレメントの制御下で、ヒトANGPTL8ポリペプチドを発現する齧歯類。
(項目12)
前記齧歯類Angptl8調節エレメントが、齧歯類Angptl8プロモーターを含む、項目11に記載の齧歯類。
(項目13)
前記齧歯類Angptl8プロモーターが、内因性齧歯類 Angptl8プロモーターである、項目12に記載の齧歯類。
(項目14)
前記ヒトANGPTL8ポリペプチドが、配列番号6のアミノ酸残基22〜198に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、項目11〜13のいずれか一項に記載の齧歯類。
(項目15)
前記ヒトANGPTL8ポリペプチドが、配列番号9に対して少なくとも95%同一である配列によってコードされる、項目11〜14のいずれか一項に記載の齧歯類。
(項目16)
前記ヒトANGPTL8ポリペプチドが、コドン最適化された配列によってコードされる、項目11〜14のいずれか一項に記載の齧歯類。
(項目17)
前記ヒトANGPTL8ポリペプチドが、バリアントヒトANGPTL8ポリペプチドである、項目11〜14のいずれか一項に記載の齧歯類。
(項目18)
前記バリアントヒトANGPTL8ポリペプチドが、R59Wアミノ酸置換によって特徴づけられる、項目17に記載の齧歯類。
(項目19)
前記バリアントヒトANGPTL8ポリペプチドが、Q121Xアミノ酸置換によって特徴づけられる、項目17に記載の齧歯類。
(項目20)
前記ヒトANGPTL8ポリペプチドが、内因性Angptl8座位に配置された核酸配列によりコードされる、項目7〜19のいずれか一項に記載の齧歯類。
(項目21)
前記齧歯類がラットまたはマウスである、項目1〜20のいずれか一項に記載の齧歯類。
(項目22)
そのゲノムが内因性部分及びヒト部分を含むAngptl8遺伝子を含む単離された齧歯類細胞または組織であって、前記内因性及びヒト部分が齧歯類Angptl8調節エレメントと動作可能に連結した、単離された齧歯類細胞または組織。
(項目23)
そのゲノムが内因性部分及びヒト部分を含むAngptl8遺伝子を含む齧歯類胚性幹細胞であって、前記内因性及びヒト部分が齧歯類Angptl8調節エレメントと動作可能に連結した、齧歯類胚性幹細胞。
(項目24)
項目23に記載の胚性幹細胞から生成される齧歯類胚。
(項目25)
内因性Angptl8遺伝子からヒトANGPTL8ポリペプチドを発現する、齧歯類の作製方法であって、
(a) 齧歯類胚性幹細胞の内因性Angptl8遺伝子にゲノム断片を配置することであって、前記ゲノム断片が、ヒトANGPTL8ポリペプチドの全部または一部をコードするヌクレオチド配列を含む、配置することと、
(b) (a)で生成された齧歯類胚性幹細胞を得ることと、
(c) (b)の齧歯類胚性幹細胞を使用して齧歯類を作製すること、とを含む、方法。
(項目26)
前記ヒトANGPTL8ポリペプチドが、配列番号6のアミノ酸残基22〜198に対して少なくとも95%同一である配列を含む、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記ヌクレオチド配列が、ヒトANGPTL8遺伝子のエクソン1〜4の全部または一部を含む、項目25または26に記載の方法。
(項目28)
前記ヌクレオチド配列が、ヒトANGPTL8遺伝子の3’UTRをさらに含む、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記ヌクレオチド配列が、一つ以上の選択マーカーを含む、項目25〜28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記ヌクレオチド配列が、一つ以上の部位特異的組み換え部位を含む、項目25〜2
9のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記核酸配列が、リコンビナーゼ認識部位に隣接したリコンビナーゼ遺伝子と選択マーカーを含み、前記リコンビナーゼ認識部位は、除去を誘導するよう方向づけられる、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記リコンビナーゼ遺伝子が、分化細胞において前記リコンビナーゼ遺伝子の発現を誘導するが、未分化細胞では前記リコンビナーゼ遺伝子の発現を誘導しないプロモーターに動作可能に連結される、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記リコンビナーゼ遺伝子は、転写によって能力を有し、発生的に制御されるプロモーターに動作可能に連結される、項目31に記載の方法。
(項目34)
前記プロモーターが、配列番号12、配列番号13、または配列番号14であるか、またはこれを含む、項目32または33に記載の方法。
(項目35)
前記プロモーターが、配列番号12であるか、またはこれを含む、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記ヌクレオチド配列が、齧歯類において発現するためにコドン最適化された1つ以上の配列を含む、項目25〜35のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記方法は、(c)で生成された前記齧歯類を交配させるステップをさらに含み、これにより内因性Angptl8遺伝子からヒトANGPTL8ポリペプチドを発現するためのホモ接合性齧歯類が作製される、項目25〜36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
そのゲノムが、ヒトANGPTL8ポリペプチドをコードするAngptl8遺伝子を含む齧歯類の作製方法であって、齧歯類Angptl8調節配列の制御下で、ヒトANGPTL8ポリペプチドをコードするAngptl8遺伝子を含むように、齧歯類のゲノムを改変することを含み、これにより前記齧歯類を作製することを含む、方法。
(項目39)
前記齧歯類Angptl8調節配列が、齧歯類Angptl8プロモーターを含む、項目38に記載の齧歯類。
(項目40)
前記齧歯類Angptl8プロモーターが、内因性齧歯類Angptl8プロモーターである、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記ヒトANGPTL8ポリペプチドが、配列番号6のアミノ酸残基22〜198に対して少なくとも95%同一である配列を含む、項目38〜40のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記ヒトANGPTL8ポリペプチドが、バリアントヒトANGPTL8ポリペプチドである、項目38〜40のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記バリアントヒトANGPTL8ポリペプチドが、R59Wアミノ酸置換によって特徴づけられる、項目42に記載の齧歯類。
(項目44)
前記バリアントヒトANGPTL8ポリペプチドが、Q121Xアミノ酸置換によって特徴づけられる、項目42に記載の齧歯類。
(項目45)
前記Angptl8遺伝子が、ヒトANGPTL8遺伝子のエクソン1〜4の全部または一部を含むように改変される、項目38〜44のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
前記Angptl8遺伝子が、ヒトANGPTL8遺伝子の3’UTRをさらに含むよう改変される、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記齧歯類がマウスまたはラットである、項目25〜46のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
項目25〜47のいずれか一項に記載の方法から得られる齧歯類。
(項目49)
ヒトANGPTL8を標的とする薬剤のトリグリセリド低減有効性を評価する方法であって、前記方法が、
そのゲノムが内因性部分及びヒト部分を含むAngptl8遺伝子を含む齧歯類に、前記薬剤を投与するステップであって、前記内因性部分及びヒト部分は齧歯類Angptl8調節エレメントに動作可能に連結する、投与するステップと、
ヒトANGPTL8を標的とする前記薬剤の1つ以上のトリグリセリド低減特性を決定するアッセイを実施するステップと、を含む、方法。
(項目50)
ヒトANGPTL8を標的とする薬剤の薬物動態特性を評価する方法であって、前記方法が、
そのゲノムが内因性部分及びヒト部分を含むAngptl8遺伝子を含む齧歯類に、前記薬剤を投与するステップであって、前記内因性部分及びヒト部分は齧歯類Angptl8調節エレメントに動作可能に連結する、投与するステップと、
ヒトANGPTL8を標的とする前記薬剤の一つ以上の薬物動態特性を決定するためにアッセイを実施するステップと、を含む、方法。
(項目51)
前記ヒト部分が、ヒトANGPTL8遺伝子のエクソン1〜4の全部または一部を含む、項目49または50に記載の方法。
(項目52)
前記ヒト部分が、ヒトANGPTL8遺伝子の3’UTRをさらに含む、項目51に記載の方法。
(項目53)
ヒトANGPTL8を標的とする前記薬剤がANGPTL8拮抗薬である、項目49〜52のいずれか一項に記載の方法。
(項目54)
ヒトANGPTL8を標的とする前記薬剤が、ANGPTL8作動薬である、項目50〜52のいずれか一項に記載の方法。
(項目55)
ヒトANGPTL8を標的とする前記薬剤が抗ANGPTL8抗体である、項目49〜52のいずれか一項に記載の方法。
(項目56)
ヒトANGPTL8を標的とする前記薬剤が、前記齧歯類に静脈内投与される、項目49〜55のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
ヒトANGPTL8を標的とする前記薬剤が、前記齧歯類に腹腔内投与される、項目49〜55のいずれか一項に記載の方法。
(項目58)
ヒトANGPTL8を標的とする前記薬剤が、前記齧歯類に皮下投与される、項目49〜55のいずれか一項に記載の方法。
(項目59)
前記齧歯類Angptl8調節エレメントが、齧歯類Angptl8プロモーターを含む、項目49〜58のいずれか一項に記載の方法。
(項目60)
前記齧歯類Angptl8プロモーターが、内因性齧歯類Angptl8プロモーターである、項目59に記載の方法。
(項目61)
前記齧歯類がマウスまたはラットである、項目49〜60のいずれか一項に記載の方法。
(項目62)
そのゲノムが、Angptl8遺伝子を含む齧歯類であって、前記遺伝子が、
内因性Angptl8遺伝子の5’及び3’UTRを含む内因性部分と、
ヒトANGPTL8遺伝子のエクソン1〜4の全部または一部を含むヒト部分と、を含み、
前記ヒト部分は、内因性齧歯類Angptl8プロモーターに動作可能に連結し、前記齧歯類はその血清内にヒトANGPTL8ポリペプチドを発現する、齧歯類。
(項目63)
前記齧歯類により発現されるヒトANGPTL8ポリペプチドが、配列番号6に存在するアミノ酸残基22〜198に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、項目62に記載の齧歯類。
(項目64)
前記ヒトANGPTL8ポリペプチドが、バリアントヒトANGPTL8ポリペプチドである、項目62または63に記載の方法。
(項目65)
前記バリアントヒトANGPTL8ポリペプチドが、R59Wアミノ酸置換によって特徴づけられる、項目64に記載の齧歯類。
(項目66)
前記バリアントヒトANGPTL8ポリペプチドが、Q121Xアミノ酸置換によって特徴づけられる、項目64に記載の齧歯類。
(項目67)
前記ヒト部分が、前記齧歯類における発現のためにコドン最適化された配列を含む、項目62〜66のいずれか一項に記載の齧歯類。
(項目68)
前記齧歯類が、マウスまたはラットである、項目62〜67のいずれか一項に記載の齧歯類。
【発明を実施するための形態】
【0063】
[用語の定義]
本発明は本明細書に記載された特定の方法および実験条件に限定されないが、それはこのような方法および条件は変化する場合があるからである。本発明の範囲は請求項によって定義されるので、本明細書に使用される用語は、特定の実施形態のみを記載する目的で使用されており、限定を意図しないことも理解される。
【0064】
別段の定めがない限り、本明細書に使用されるすべての用語および語句は、そうでないことが明確に示されている、あるいは用語または語句が使用されている文脈から明らかに明白な場合を除き、その用語および語句が当技術分野で獲得された意味を含む。本明細書で記載したものと類似または同等な任意の方法および材料も、本発明の実施または試験に使用できるが、特定の方法および材料をこれから記載する。本明細書で言及されたすべての特許および非特許出版物は参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
本明細書で一つ以上の対象の値に適用される場合、「およそ」は指定された参照値と類似の値を指す。特定の実施形態では、「およそ」または「約」という用語は、別段定めがない限り、または文脈からそうでないことが明らかな場合(このような数字が可能な値の100%を超える場合を除く)を除いて、指定された参照値のいずれかの方向に25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%またはそれ未満以内の範囲の値を指す。
【0066】
「生物学的に活性」は、本明細書で使用される場合、生物系、インビトロまたはインビボ(例えば、生物中)で活性を持つ任意の薬剤の特徴を示す。例えば、生物内に存在する時、その生物内で生物学的効果を持つ薬剤は生物学的に活性であるとみなされる。特定の実施形態では、タンパク質またはポリペプチドが生物学的に活性な場合、タンパク質またはポリペプチドの少なくとも一つの生物学的活性を共有するそのタンパク質またはポリペプチドの一部は、「生物学的に活性」な部分と典型的に呼ばれる。
【0067】
「同等」は、本明細書で使用される場合、お互いに同一ではない場合があるが、それらの間の比較を許容するのに十分類似しており、従って観察された差または類似性に基づいて合理的に結論を出すことができる、二つ以上の薬剤、実在物、状況、状態のセットなどを示す。当業者であれば、文脈内において、同等とみなされるために二つ以上のこのような薬剤、実体、状況、状況のセットなどに対して、ある所定の状況でどの程度の同一性が必要かを理解するであろう。
【0068】
「保存的」は、本明細書で使用される場合、保存的アミノ酸置換を記載する例を指し、類似の化学特性(例えば、電荷または疎水性)を伴う側鎖R基を有する別のアミノ酸残基によるアミノ酸残基の置換を含む。一般的に、保存的アミノ酸置換は、対象のタンパク質の機能特性、例えば、リガンドに結合する受容体の能力などを実質的に変化させない。類似の化学特性を伴う側鎖を有するアミノ酸群の例には以下が挙げられる:例えばグリシン(Gly、G)、アラニン(Ala、A)、バリン(Val、V)、ロイシン(Leu、L)、及びイソロイシン(Ile、I)などの脂肪族側鎖;例えばセリン(Ser、S)及びスレオニン(Thr、T)などの脂肪族−ヒドロキシル側鎖;例えばアスパラギン(Asn、N)及びグルタミン(Gln、Q)などのアミド含有側鎖;例えばフェニルアラニン(Phe、F)、チロシン(Tyr、Y)、及びトリプトファン(Trp、W)などの芳香族側鎖;例えばリシン(Lys、K)、アルギニン(Arg、R)、及びヒスチジン(His、H)などの塩基性側鎖;例えばアスパラギン酸(Asp、D)及びグルタミン酸(Glu、E)などの酸性側鎖;ならびに例えばシステイン(Cys、C)及びメチオニン(Met、M)などの硫黄含有側鎖。保存的アミノ酸置換基には、例えば、バリン/ロイシン/イソロイシン(Val/Leu/Ile、V/L/I)、フェニルアラニン/チロシン(Phe/Tyr、F/Y)、リシン/アルギニン(Lys/Arg、K/R)、アラニン/バリン(Ala/Val、A/V)、グルタミン酸/アスパラギン酸(Glu/Asp、E/D)、及びアスパラギン/グルタミン(Asn/Gln、N/Q)が含まれる。一部の実施形態では、保存的アミノ酸置換は、例えばアラニンスキャニング変異誘導などで使用される、アラニンを含むタンパク質の任意の未変性残基の置換である可能性がある。一部の実施形態では、Gonnet,G.H.et al.,1992,Science 256:1443−1445に開示されるPAM250対数尤度マトリクスにおいて正の値を有する保存的置換が行われる。一部の実施形態では、置換は、中等度に保存的な置換であり、この場合において当該置換は、PAM250対数尤度マトリクスで負ではない値を有する。
【0069】
「対照」は、本明細書において使用される場合、結果が比較される基準である「対照」という当技術分野の意味を指す。典型的に、対照は、このような変数についての結論を出すために、変数を分離することによって実験の完全性を増加させるために使用される。一部の実施形態では、対照は、コンパレーターを提供するために、試験反応またはアッセイと同時に実施される反応またはアッセイである。本明細書で使用される場合、「対照」とは、「対照動物」を指す場合がある。「対照動物」は本明細書に記載された改変を有するか、本明細書に記載されたものとは異なる改変を有するか、または未改変(すなわち、野生型動物)である場合がある。一つの実験では、「試験」(すなわち、試験されている変数)が適用される。第二の実験では、「対照」(すなわち、試験されている変数)は適用されない。一部の実施形態では、対照は歴史的対照(すなわち、以前に実施された試験またはアッセイの、または以前に知られた量または結果)である。一部の実施形態では、対照は印刷されたかまたはそれ以外の方法で保存された記録であるか、またはそれを含む。対照は、陽性対照または陰性対照である場合がある。
【0070】
「破壊」は、本明細書において使用される場合、(例えば、遺伝子または座位などの内因性相同配列を有する)DNA分子との相同組み換え事象の結果を指す。一部の実施形態では、破壊は、DNA配列の挿入、欠失、置換、交換、ミスセンス変異、もしくはフレームシフト、またはこれらの任意の組み合わせを達成または示す場合がある。挿入は、遺伝子全体または遺伝子の断片(例えば、エクソン)の挿入を含む場合があり、これは内因性配列以外の起源のもの(例えば、異種配列)であってもよい。一部の実施形態では、破壊は遺伝子または遺伝子産物の(例えば、遺伝子によってコードされたタンパク質の)発現及び/または活性を増加する場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子または遺伝子産物の発現及び/または活性を減少する場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子またはコードされた遺伝子産物(例えば、コードされたタンパク質)の配列を変える場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子またはコードされた遺伝子産物(例えば、コードされたタンパク質)を切断または断片化する場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子またはコードされた遺伝子産物を延長する場合があり、一部の実施形態では、破壊は融合タンパク質の組立てを達成する場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子または遺伝子産物のレベルに影響するが活性には影響しない場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子または遺伝子産物の活性に影響するがレベルには影響しない場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子または遺伝子産物のレベルに対して顕著な効果を持たない場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子または遺伝子産物の活性に対して顕著な効果を持たない場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子または遺伝子産物のレベルまたは活性のいずれに対しても顕著な効果を持たない場合がある。
【0071】
「決定する」、「測定する」、「査定する」、「評価する」、「検査する」及び「分析する」は、本明細書において相互交換可能に使用され、任意の形態の測定結果を指し、要素が存在するかどうかの決定を含む。これらの用語は、定量的及び/または定性的決定の両方を含む。アッセイは相対的または絶対的である場合がある。「の存在をアッセイする」ことは、存在する何かの量を決定する及び/またはそれが存在するか不在かを決定することである可能性がある。
【0072】
「内因性座位」または「内因性遺伝子」は、本明細書において用いられる場合、本明細書に記載される変更、破壊、欠失、挿入、改変、交換、または置換の導入前に、親または指標生物において存在する座位を指す。一部の実施形態では、内因性座位は自然界で見られる配列を有する。一部の実施形態では、内因性座位は野生型座位である。一部の実施形態では、指標生物は野生型生物である。一部の実施形態では、指標生物は操作された生物である。一部の実施形態では、指標生物は実験室で繁殖された生物(野生型または操作された)である。
【0073】
「内因性プロモーター」は、本明細書で使用される場合、例えば、野生型生物で、内因性遺伝子と自然に関連するプロモーターを指す。
【0074】
「操作された(Engineered)」は、本明細書において使用される場合、概して、ヒトの手により操作された態様を指す。例えば一部の実施形態では、自然界での順序では一緒に連結されていない2つ以上の配列がヒトの手により操作され、操作ポリヌクレオチド中で互いに直接連結された場合に、ポリヌクレオチドが「操作された」とみなされ得る。一部の特定のかかる実施形態において、操作されたポリヌクレオチドは、自然界で第一のコード配列と作動的に関連しているが、第二のコード配列とは作動的に関連せずに存在し、ヒトの手により連結されて第二のコード配列と作動的に関連した調節配列を含んでいてもよい。あるいは、またはさらに、一部の実施形態では、各々、自然界では互いに連結されていないポリペプチド要素またはドメインをコードしている第一及び第二の核酸配列が、1つの操作されたポリヌクレオチドにおいて互いに連結されていてもよい。同様に、一部の実施形態では、細胞または生物体が操作され、それによりその遺伝情報が変更された(例えば、従前には存在していなかった新たな遺伝物質が導入されたり、または従前には存在していた遺伝物質が変更もしくは除去された)場合に、「操作された」とみなされ得る。一般的なことであり、当技術分野の当業者に理解されているとおり、操作されたポリヌクレオチドまたは細胞の子孫物も典型的に、実際の操作は過去の実体に対して行われていたのだとしても、「操作された」とみなされる。さらに、当技術分野の当業者により認識されているように、様々な技法が利用可能であり、それらを介して、本明細書に記載される「操作」を行うことができる。例えば、一部の実施形態では、「操作」には、分析または比較を行うようプログラムされた、または推奨された配列及び/もしくは選択された配列を別手段などにより分析するようプログラムされた、コンピューターシステムの使用を介して(例えば核酸配列、ポリペプチド配列、細胞、組織及び/または生物体の)選択または設計を行うことを含んでもよい。あるいは、またはさらに、一部の実施形態では「操作」には、インビトロ化学合成技術の使用、及び/または組み換え核酸技術、例えば(例えばポリメラーゼ鎖反応などを介した)核酸増幅、ハイブリダイゼーション、突然変異誘導、形質転換、トランスフェクションなどの使用を含んでもよく、及び/または様々な任意の制御交配法の使用を含んでもよい。当技術分野の当業者に認識されているように、様々な確立されているかかる技術(例えば組み換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織培養及び形質転換(例えばエレクトロポレーション法、リポフェクション法など))が当技術分野に公知であり、様々な概説および詳説の参照文献中に記載されており、それらは本明細書全体を通じ引用及び/または検討されている。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual (2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989)を参照のこと。
【0075】
「遺伝子」は、本明細書において使用される場合、産物(例えばRNA産物及び/またはポリペプチド産物)をコードする、染色体中のDNA配列を指す。一部の実施形態では、遺伝子は、コード配列(すなわち、特定の産物をコードする配列)を含む。一部の実施形態では、遺伝子は、非コード配列を含む。一部の特定の実施形態では、遺伝子は、コード配列(例えばエクソン配列)と非コード配列(例えばイントロン配列)の両方を含んでもよい。一部の実施形態では、遺伝子は、1つ以上の調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)を含んでもよく、及び/または例えば遺伝子発現(例えば、細胞型特異的発現、誘導発現、など)の1つ以上の態様を制御することができる、もしくは影響を与えることができるイントロン配列を含んでもよい。明白性を目的として、本発明者らは以下のことを記載する。本明細書において使用される場合、「遺伝子」という用語は、概して、ポリペプチドをコードする核酸の一部を指す;当該用語は、任意で、調節配列を包含する場合があり、これは当技術分野の当業者には、文脈から明白であろう。この定義は、「遺伝子」という用語が、非タンパク質をコードする発現単位に適用されることを除外する意図はなく、本明細書に使用される当該用語は、多くの場合においてはポリペプチドをコードする核酸を指すことを明白にすることを意図する。
【0076】
「異種」は、本明細書において用いられる場合、異なる起源からの主体または実体を指す。例えば、特定の細胞もしくは生物に存在するポリペプチド、遺伝子、または遺伝子産物に関連して使用される場合、該用語は、関連ポリペプチド、遺伝子または遺伝子産物が、1)ヒトの手により操作されていること、2)ヒトの手を介して(例えば、遺伝子操作を介して)細胞または生物(またはその前駆体)に導入されていること、及び/または3)当該関連細胞もしくは生物(例えば関連細胞型または生物型)中に自然状態では産生されない、または存在しないこと、を明らかにする。
【0077】
「宿主細胞」は、本明細書において用いられる場合、その中に異種(例えば、外来性)核酸またはタンパク質が導入された細胞を指す。当業者が本開示を読めば、このような用語が特定の主題細胞を指すだけでなく、このような細胞の子孫を指すためにも使用されることを理解するであろう。特定の改変は突然変異または環境の影響のいずれかにより後続世代にも起こる場合があり、このような子孫は、実際は、親細胞と同一でない場合があるが、それでも本明細書において用いられる場合、それらは「宿主細胞」という用語の範囲内に含まれる。一部の実施形態では、宿主細胞は原核細胞または真核細胞であるかそれを含む。一般的に、宿主細胞は、細胞が指定される種に関わらず、異種核酸またはポリペプチドの受け入れ及び/または生産に適した任意の細胞である。細胞の例としては、原核生物及び真核生物(単細胞または多細胞)の細胞、細菌細胞(例えば、大腸菌、バチルス属、ストレプトマイセス属などの株)、マイコバクテリア細胞、真菌細胞、酵母細胞(例えば、出芽酵母、分裂酵母、ピヒア メタノリカなど)、植物細胞、昆虫細胞(例えば、SF−9、SF−21、バキュロウイルス感染昆虫細胞、イラクサギンウワバなど)、非ヒト動物細胞、ヒト細胞、または例えば、ハイブリドーマもしくはクアドローマなどの細胞融合が挙げられる。一部の実施形態では、細胞はヒト、サル、類人猿、ハムスター、ラット、またはマウス細胞である。一部の実施形態では、細胞は原核であり以下の細胞から選択される:CHO(例えば、CHO K1、DXB−11 CHO、Veggie−CHO)、COS(例えば、COS−7)、網膜細胞、Vero、CV1、腎臓(例えば、HEK293、293 EBNA、MSR 293、MDCK、HaK、BHK)、HeLa、HepG2、WI38、MRC 5、Colo205、HB 8065、HL−60、(例えば、BHK21)、Jurkat、Daudi、A431(表皮)、CV−1、U937、3T3、L細胞、C127細胞、SP2/0、NS−0、MMT 060562、セルトリ細胞、BRL 3A細胞、HT1080細胞、骨髄腫細胞、腫瘍細胞、及び前述細胞に由来する細胞株。一部の実施形態では、細胞は一つ以上のウイルス遺伝子、例えば、ウイルス遺伝子を発現する網膜細胞(例えば、PER.C6(商標)細胞)を含む。一部の実施形態では、宿主細胞は単離細胞であるかそれを含む。一部の実施形態では、宿主細胞は組織の一部である。一部の実施形態では、宿主細胞は生物の一部である。
【0078】
「ヒト化」は、本明細書において当分野で理解されている意味で使用される場合、その構造(すなわち、ヌクレオチドまたはアミノ酸の配列)が、非ヒト動物に自然に存在する特定の遺伝子またはポリペプチドの構造と実質的にまたは全く同一に対応する部分を含み、また、関連する特定の非ヒト遺伝子またはタンパク質において存在するものとは異なり、その代わりに対応するヒト遺伝子またはポリペプチドにおいて存在する同等の構造とより近接に対応する部分も含む核酸またはポリペプチドを指す。一部の実施形態では、「ヒト化」遺伝子は、実質的にヒトポリペプチド(例えば、ヒトタンパク質またはその一部―例えば、その特性的部分)のもののようなアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする遺伝子である。例えば、膜受容体の場合、「ヒト化」遺伝子は、ヒト細胞外部分のもののようなアミノ酸配列及び非ヒト(例えば、マウス)ポリペプチドのもののような残りの配列を有し、細胞外部分の全部または一部を有するポリペプチドをコードしてもよい。分泌されたタンパク質の場合、「ヒト化」遺伝子は、ヒト成熟ペプチドのもののような配列及び非ヒト(例えば、マウス)ペプチドのもののようなシグナル配列を有し、成熟ペプチドの全部または一部を有するポリペプチドをコードしてもよい。一部の実施形態では、ヒト化遺伝子は、ヒト遺伝子のDNA配列の少なくとも一部分を含む。一部の実施形態では、ヒト化遺伝子は、ヒト遺伝子のDNA配列のすべて、または成熟ヒトペプチドもしくはポリペプチドに対応する成熟ペプチドまたはポリペプチドをコードするヒト遺伝子のDNA配列を含む。一部の実施形態では、ヒト化ポリペプチドは、ヒトポリペプチドに見られる一部分を有する配列を含む。一部の実施形態では、ヒト化ポリペプチドは、ヒトポリペプチドの配列全体を含み、ヒト遺伝子のホモログまたはオルソログに対応する非ヒト動物の内因性座位から発現される。
【0079】
「同一性」は、配列の比較と関連して本明細書において用いられる場合、ヌクレオチド及び/またはアミノ酸配列の同一性を測定するために使用できる当技術分野において公知の多くの異なるアルゴリズムによって決定される同一性を指す。一部の実施形態では、本明細書に記載された同一性は、10.0のギャップ開始ペナルティ、0.1のギャップ延長ペナルティを用い、Gonnet類似性マトリックス(MACVECTOR(商標)10.0.2、MacVector Inc.、2008年)を使用したClustalW v.1.83(slow)アラインメントを使用して決定される。
【0080】
「インビトロ」は、本明細書で使用する場合、多細胞生物体内ではなく、例えば試験管または反応容器などの人工的環境、細胞培養などにおいて発生する事象を指す。
【0081】
「インビボ」は、本明細書で使用される場合、例えばヒト及び非ヒト動物などの多細胞生物体内で発生する事象を指す。細胞系のシステムの文脈において、当該用語を使用して、(例えばインビトロシステムとは対照的に)、生きた細胞内で発生する事象を指すのに使用される場合もある。
【0082】
「単離された」は、本明細書において使用される場合、(1)(天然環境及び/もしくは実験環境のいずれかで)最初に産生された時にそれが関連していた成分の少なくとも一部から分離された物質ならびに/または実体、ならびに/あるいは(2)ヒトの手によって設計、産生、調製、及び/もしくは製造された物質ならびに/または実体を指す。単離された物質及び/または実体は、それらが最初に関連していたその他の成分の約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%超から分離される場合がある。一部の実施形態では、単離された薬剤は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%を超えて純粋である。本明細書において用いられる場合、物質は、その他の成分が実質的に含まれない場合、「純粋」である。一部の実施形態では、当業者であれば理解するように、例えば、一つ以上の担体または賦形剤(例えば、緩衝剤、溶媒、水など)などの特定のその他の成分と組み合わされた後でも、物質はまだ「単離された」または「純粋」とさえもみなされる場合があり、このような実施形態では、物質の単離または純度のパーセントはこのような担体または賦形剤を含めることなく計算される。一例を挙げると、一部の実施形態では、自然界に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの生体高分子は、a)導出の起源またはソースが、自然界の天然状態でそれに付随する成分の一部またはすべてと関連していない時、b)それが、自然界でそれを産生する種と同じ種のその他のポリペプチドまたは核酸を実質的に含まない時、またはc)自然界でそれを産生する種ではない細胞またはその他の発現系によって発現されるか、またはそうでなければそれからの成分と関連している時、「単離された」とみなされる。ゆえに、例えば、一部の実施形態では、化学的に合成された、または自然界でそれを産生するものとは異なる細胞系で合成されたポリペプチドは、「単離された」ポリペプチドとみなされる。あるいはまたは追加的に、一部の実施形態では、一つ以上の精製技術を受けたポリペプチドは、それが、a)それが自然界で関連している、及び/またはb)最初に産生された時にそれが関連していたその他の成分から分離されている限りは「単離された」ポリペプチドとみなされることができる。
【0083】
「座位」は、本明細書において使用される場合、遺伝子(または重要な配列)、DNA配列、ポリペプチドをコードする配列、または生物ゲノムの染色体上の位置の特定の場所を含む。例えば、「Angptl8座位」は、Angptl8遺伝子、Angptl8DNA配列、Angptl8をコードする配列、またはかかる配列が存在する位置について特定される生物体のゲノムの染色体上のAngptl8の位置の特定の場所を指す場合がある。「Angptl8座位」は、限定されないが、エンハンサー、プロモーター、5’及び/もしくは3’UTR、またはそれらの組み合わせを含む、Angptl8遺伝子の調節エレメントを含んでもよい。当技術分野の当業者には、一部の実施形態において、染色体が、数百、さらには数千の遺伝子を含有し得ること、及び異なる種の間で比較した場合に、類似した座位の物理的な共局在を示し得ることが理解されるであろう。そのような座位は、シンテニーを共有したと記載される場合がある。
【0084】
「非ヒト動物」は、本明細書で使用される場合、ヒトではない任意の脊椎動物を指す。一部の実施形態では、非ヒト動物は、円口類、硬骨魚、軟骨魚(例えば、サメまたはエイ)、両生類、は虫類、哺乳類、及び鳥類である。一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物は、哺乳類である。一部の実施形態では、非ヒト哺乳類は、霊長類、ヤギ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ウシ、または齧歯類である。一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物は、例えばトビネズミ上科またはネズミ上科の小さな哺乳類である。一部の実施形態では、本明細書に記載される遺伝的に改変された動物は、齧歯類である。一部の実施形態では、本明細書に記載される齧歯類はマウス、ラット、ハムスターから選択される。一部の実施形態では、本明細書に記載される齧歯類はネズミ上科から選択される。一部の実施形態では、本明細書に記載される遺伝子改変動物は、ヨルマウス科(例えば、マウス様のハムスター)、キヌゲネズミ科(例えば、ハムスター、New Worldラット及びマウス、ハタネズミ)、ネズミ科(純種のマウス及びラット、アレチネズミ、トゲマウス、タテガミネズミ)、アシナガマウス科(キノボリマウス、ロックマウス、オジロラット、マダガスカルラット及びマウス)、トゲヤマネ科(例えば、トゲヤマネ)、及びメクラネズミ科(例えば、メクラネズミ、タケネズミ、及び高原モグラネズミ)から選択された科からのものである。一部のある実施形態では、本明細書に記載される遺伝子改変齧歯類は、純種のマウスまたはラット(ネズミ科)、アレチネズミ、トゲマウス、及びタテガミネズミから選択される。一部のある実施形態では、本明細書に記載される遺伝子改変マウスは、ネズミ科のメンバーからのものである。一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物は、齧歯類である。一部のある実施形態では、本明細書に記載される齧歯類は、マウスおよびラットから選択される。一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物は、マウスである。
【0085】
一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物は、C57BL/A、C57BL/An、C57BL/GrFa、C57BL/KaLwN、C57BL/6、C57BL/6J、C57BL/6ByJ、C57BL/6NJ、C57BL/10、C57BL/10ScSn、C57BL/10Cr、及びC57BL/Olaから選択されるC57BL系のマウスである齧歯類である。一部のある実施形態では、本明細書に記載されるマウスは、129P1、129P2、129P3、129X1、129S1(例えば、129S1/SV、129S1/SvIm)、129S2、129S4、129S5、129S9/SvEvH、129/SvJae、129S6(129/SvEvTac)、129S7、129S8、129T1、129T2である系から成る群から選択される129系である(例えば、Festing et al.,1999,Mammalian Genome 10:836;Auerbach,W. et al.,2000,Biotech.29(5):1024−1028,1030,1032を参照)。一部のある実施形態では、本明細書に記載される遺伝子改変マウスは、前述の129系と前述のC57BL/6系との混合である。一部のある実施形態では、本明細書に記載されるマウスは、前述の129系の混合、または前述のBL/6系の混合である。一部のある実施形態では、本明細書に記載された混合の129系は、129S6(129/SvEvTac)系である。一部の実施形態では、本明細書に記載されるマウスは、BALB系(例えばBALB/c系)である。一部の実施形態では、本明細書に記載されるマウスは、BALB系統及び前述の別系統の混合である。
【0086】
一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物は、ラットである。一部のある実施形態では、本明細書に記載されるラットは、ウィスターラット、LEA系統、Sprague Dawley系統、フィッシャー系統、F344、F6、及びDark Agoutiから選択される。一部のある実施形態では、本明細書に記載されたラット系は、ウィスター、LEA、Sprague Dawley、フィッシャー、F344、F6、及びDark Agoutiから成る群から選択される二つ以上の系の混合である。
【0087】
「核酸」は、本明細書において用いられる場合、そのもっとも広い意味で、オリゴヌクレオチド鎖であるか、もしくはオリゴヌクレオチド鎖に組み込むことができる任意の化合物及び/または物質を指す。一部の実施形態では、「核酸」とはオリゴヌクレオチド鎖であるか、またはホスホジエステル結合でオリゴヌクレオチド鎖に組み込むことができる化合物及び/または物質である。文脈から明らかであるように、一部の実施形態では、「核酸」とは個別の核酸残基(例えば、ヌクレオチド及び/またはヌクレオシド)を指し、一部の実施形態では、「核酸」とは個別の核酸残基を含むオリゴヌクレオチド鎖を指す。一部の実施形態では、「核酸」はRNAであるかまたはそれを含み、一部の実施形態では、「核酸」はDNAであるかまたはそれを含む。一部の実施形態では、「核酸」は一つ以上の天然核酸残基であるか、それらを含むか、またはそれらから成る。一部の実施形態では、「核酸」は一つ以上の核酸類似体であるか、それらを含むか、またはそれらから成る。一部の実施形態では、核酸類似体は、ホスホジエステル骨格を利用しないという点で「核酸」とは異なる。例えば、一部の実施形態では、「核酸」は、当技術分野では知られており、骨格にホスホジエステル結合の代わりにペプチド結合を有する、一つ以上の「ペプチド核酸」であるか、それらを含むか、またはそれらから成り、それらは本発明の範囲内であるとみなされる。あるいはまたはさらに、一部の実施形態では、「核酸」は、ホスホジエステル結合ではなく、一つ以上のホスホロチオエート及び/または5’−N−ホスホラミダイト結合を有する。一部の実施形態では、「核酸」は一つ以上の天然ヌクレオシド(例えば、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、及びデオキシシチジン)であるか、それらを含むか、またはそれらから成る。一部の実施形態では、「核酸」は、一つ以上のヌクレオシド類似体(例えば、2−アミノアデノシン、2−チオチミジン、イノシン、ピロロ−ピリミジン、3−メチルアデノシン、5−メチルシチジン、C−5プロピニル−シチジン、C−5プロピニル−ウリジン、2−アミノアデノシン、C5−ブロモウリジン、C5−フルオロウリジン、C5−ヨードウリジン、C5−プロピニル−ウリジン、C5−プロピニル−シチジン、C5−メチルシチジン、2−アミノアデノシン、7−デアザアデノシン、7−デアザグアノシン、8−オキソアデノシン、8−オキソグアノシン、O(6)−メチルグアニン、2−チオシチジン、メチル化塩基、インターカレート塩基、及びそれらの組み合わせ)であるか、それらを含むか、またはそれらから成る。一部の実施形態では、「核酸」は、天然核酸のものと比べて、一つ以上の改変された糖(例えば、2’−フルオロリボース、リボース、2’−デオキシリボース、アラビノース、及びヘキソース)を含む。一部の実施形態では、「核酸」は、RNAまたはタンパク質などの機能的遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を有する。一部の実施形態では、「核酸」は、一つ以上のイントロンを含む。一部の実施形態では、「核酸」は、天然起源物からの単離、相補的鋳型に基づく重合による酵素合成(インビボまたはインビトロ)、組み換え細胞または系での複製、及び化学合成の一つ以上によって調製される。一部の実施形態では、「核酸」は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、20、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000またはそれを超える残基の長さである。一部の実施形態では、「核酸」は一本鎖であり、一部の実施形態では、「核酸」は二重鎖である。一部の実施形態では、「核酸」はポリペプチドをコードするか、またはポリペプチドをコードする配列の補体である少なくとも一つの要素を含むヌクレオチド配列を有する。一部の実施形態では、「核酸」は酵素活性を有する。
【0088】
「動作可能に連結された」は、本明細書において使用される場合、記載される構成要素が、それらが意図された様式で機能することができるような関係にある並置を指す。コード配列に「動作可能に連結した」制御配列は、制御配列に適合する条件下でコード配列の発現が達成されるように連結される。「動作可能に連結した」配列は、対象の遺伝子と近接する発現制御配列と、トランスでまたは離れて作用して対象の遺伝子を制御する発現制御配列との両方を含む。「発現制御配列」という用語は、本明細書において使用される場合、それらが連結されているコード配列の発現及びプロセッシングを引き起こすために必要なポリヌクレオチド配列を指す。「発現制御配列」には、適切な転写開始、終結、プロモーター及びエンハンサー配列、スプライシング及びポリアデニル化シグナルなどの効率的RNAプロセッシングシグナル、細胞質mRNAを安定化する配列、翻訳効率を強化する配列(すなわち、コザック配列)、タンパク質安定性を強化する配列、及び望ましい場合、タンパク質分泌を強化する配列を含む。このような制御配列の性質は、宿主生物によって異なる。例えば、原核生物では、このような制御配列は一般的に、プロモーター、リボソーム結合部位、及び転写終結配列を含む一方、真核生物では、典型的に、このような制御配列はプロモーター及び転写終結配列を含む。「制御配列」という用語は、その存在が発現及びプロセッシングのために必須である要素を含むことを意図しており、その存在が有利である追加的要素、例えば、リーダー配列及び融合パートナー配列も含むことができる。
【0089】
「患者」または「対象」は、本明細書で使用される場合、例えば、実験、診断、予防、美容、及び/または治療目的で、それに対して提供された組成物が投与されるまたは投与される場合がある任意の生物を指す。一般的な患者には動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、及び/またはヒトなどの哺乳類)を含む。一部の実施形態では、患者は非ヒト動物である。一部の実施形態では、患者または対象(例えば、非ヒト動物患者)は、本明細書に記載された改変を有するか、本明細書に記載されたものとは異なる改変を有するか、または改変を有しない(すなわち、野生型非ヒト動物患者)場合がある。一部の実施形態では、非ヒト動物は、一つ以上の障害または状態を患っているかまたはそれらにかかりやすい。一部の実施形態では、非ヒト動物は、疾患、障害、または状態のうち1つ以上のの症状を示す。一部の実施形態では、非ヒト動物は、一つ以上の疾患、障害または状態と診断されている。
【0090】
「ポリペプチド」は、本明細書において使用される場合、アミノ酸の任意のポリマー鎖を指す。一部の実施形態では、ポリペプチドは、自然界に生じるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、ポリペプチドは、自然界に生じないアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、ポリペプチドは、互いに別々に自然界に生じる部分を含有するアミノ酸配列を有する(すなわち、例えば、ヒトおよび非ヒト部分など、二つ以上の異なる生物からのもの)。一部の実施形態では、ポリペプチドは、それがヒトの手の作用を通して、設計及び/または産生されるという点で、操作されたアミノ酸配列を有する。
【0091】
「プロモーターまたはプロモーター配列」は、本明細書で使用される場合、細胞(例えば、直接または他のプロモーター結合ポリペプチドまたは物質を介して)中のRNAポリメラーゼによって結合し、及びコード配列の転写を開始することのできる、DNA調節領域を指す。プロモーター配列は、一般に、転写開始部位が、その3’末端に結合し、上流(5’方向)に伸びて、任意のレベルで転写を開始するために必要な最低数の塩基または要素を含む。プロモーターは、エンハンサー及びリプレッサー配列を含む、発現制御配列に動作可能に関連付けられるか、動作可能に連結されるか、または発現するべき対象の核酸に関連付けられてもよい。一部の実施形態では、プロモーターは誘導性でもよい。一部の実施形態では、誘導性プロモーターは一方向性または双方向性でもよい。一部の実施形態では、プロモーターは構造性プロモーターでもよい。一部の実施形態では、プロモーターはハイブリッドプロモーターでもよく、ハイブリッドプロモーターにおいては、転写調節領域を含有する配列は一つのソースから得て、転写開始領域を含有する配列は第2のソースから得る。導入遺伝子内で制御要素をコード配列に連結させるのためのシステムは、当技術分野で公知である。例えば、一般的な分子生物学的技術及び組み換えDNA技術は、Principles of Gene Manipulationに記載されている。An Introduction to Genetic Manipulation,5
th Ed.,ed.By Old,R.W.and S.B.Primrose,Blackwell Science,Inc.,1994;Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2
nd Ed.,ed.by Sambrook,J.et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press:1989.
【0092】
「組み換え」は、本明細書で使用される場合、組み換え手段によって設計、操作、調製、発現、生成または単離されたポリペプチドを指すことが意図されており、例えば、宿主細胞中にトランスフェクトされた組み換え発現ベクターを使用して発現されたポリペプチド、組み換えコンビナトリアルヒトポリペプチドライブラリから単離されたポリペプチド(Hoogenboom H.R.,1997,TIB Tech.15:62−70;Azzazy H.,and Highsmith W.E.,2002 Clin.Biochem.35:425−45;Gavilondo J.V.,and Larrick J.W.2002,BioTech.29:128−45;Hoogenboom H.,and Chames P.,2000,Immunology Today 21:371−8)、ヒト免疫グロブリン遺伝子に対しトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylor,L.D.,et al.,1992,Nucl.Acids Res.20:6287−95;Kellermann S−A.,and Green L.L.,2002,Curr.Opin.Biotechnol.13:593−7;Little M.et al.,2000,Immunol.Today 21:364−370;Murphy,A.J.,et al.,2014,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.111(14):5153−8を参照)または選択された配列要素の相互スプライスを伴うその他の任意の手段によって調製、発現、生成または単離されたポリペプチドを指す。一部の実施形態では、このような選択された配列要素の一つ以上は自然界に存在する。一部の実施形態では、このような選択された配列要素の一つ以上はインシリコで設計される。一部の実施形態では、一つ以上のこのような選択配列要素は、例えば、天然または合成起源の既知の配列要素の変異誘導(例えば、インビボまたはインビトロ)から生じる。例えば、一部の実施形態では、組み換えポリペプチドは、対象のソース生物(例えば、ヒト、マウスなど)のゲノムに見られる配列から成る。一部の実施形態では、組み換えポリペプチドは、変異誘導(例えば、非ヒト動物での、インビトロまたはインビボ)から生じるアミノ酸配列を有し、従って、組み換えポリペプチドのアミノ酸配列は、ポリペプチド配列から由来するが、インビボで非ヒト動物のゲノム内に自然には存在しない場合がある。
【0093】
「置換」は、本明細書に記載される場合、それを通して(例えば、ゲノムの)宿主座位に見られる「置換された」核酸配列(例えば、遺伝子)がその座位から取り除かれ、異なる「置換」用核酸がその場所に配置されるプロセスを指す。一部の実施形態では、置換された核酸配列及び置換用核酸配列は、例えば、それらがお互いに相同である、及び/または対応する要素(例えば、タンパク質コード要素、調節エレメントなど)を含有するという点でお互いに同等である。一部の実施形態では、置換された核酸配列は、プロモーター、エンハンサー、スプライス供与部位、スプライスアクセプター部位、イントロン、エクソン、非翻訳領域(UTR)のうち一つ以上を含み、一部の実施形態では、置換用核酸配列は、一つ以上のコード配列を含む。一部の実施形態では、置換された核酸配列は置換された核酸配列のホモログである。一部の実施形態では、置換用核酸配列は置換された配列のオルソログである。一部の実施形態では、置換用核酸配列はヒト核酸配列であるかまたはそれを含む。一部の実施形態では、置換用核酸配列は操作された核酸配列であるかまたはそれを含む。一部の実施形態では、置換用核酸配列がヒト核酸配列であるかまたはそれを含む場合を含め、置換された核酸配列は齧歯類配列(例えば、マウスまたはラット配列)であるかまたはそれを含む。そのように配置された核酸配列は、そのように配置された配列を得るために使用されるソース核酸配列の一部である一つ以上の調節配列を含む場合がある(例えば、プロモーター、エンハンサー、5’−または3’−非翻訳領域など)。例えば、様々な実施形態で、置換は、そのように配置された核酸配列(異種配列を含む)からの遺伝子産物の産生を生じる異種配列を伴う内因性配列の代替であるが、内因性配列の発現の代替ではない。置換は、内因性配列によってコードされるポリペプチドと類似の機能を有するポリペプチドをコードする核酸配列を持つ内因性ゲノム配列のものである(例えば、全てまたは一部において、内因性ゲノム配列はAngptl8ポリペプチドをコードし、DNA断片は一つ以上のヒトAngptl8ポリペプチドをコードする)。様々な実施形態で、内因性遺伝子またはその断片は、対応するヒト遺伝子またはその断片で置換される。対応するヒト遺伝子もしくはその断片は、ヒト遺伝子もしくはそのオルソログである断片であるか、または置換される内因性遺伝子もしくはその断片と、構造及び/もしくは機能において、実質的に類似しているかもしくは同じである。
【0094】
「参照」は、本明細書で使用される場合、対象の剤、動物、コホート、個人、集団、サンプル、配列または値が比較される、標準または対照の剤、コホート、個人、集団、サンプル、配列または値を記載する。一部の実施形態では、参照薬剤、コホート、個人、集団、サンプル、配列または値は、対象の薬剤、コホート、個人、集団、サンプル、配列または値の試験または決定と実質的に同時に試験され及び/または決定される。一部の実施形態では、参照薬剤、コホート、個人、集団、サンプル、配列または値は、随意に有形媒体で具現化された歴史的参照である。一部の実施形態では、参照は対照を指す場合がある。本明細書で使用される場合、「参照」は「参照動物」を指す場合がある。「参照動物」は本明細書に記載された改変を有するか、本明細書に記載されたものとは異なる改変を有するか、または未改変(すなわち、野生型動物)である場合がある。典型的には、当業者には理解されるように、参照薬剤、動物、コホート、個人、集団、サンプル、配列または値は、対象の薬剤、動物(例えば、哺乳類)、コホート、個人、集団、サンプル、配列もしくは値を決定または特徴付けるために利用されるものと同等の条件下で決定または特徴付けられる。
【0095】
「実質的に」は、本明細書で使用される場合、対象の特徴または特性のすべてのまたはほぼすべての範囲または程度を示す定性的状態を指す。生物学分野の当業者であれば、生物学的および化学的な現象はあったとしても、完了まで進む、及び/または完全な状態まで進行する、または絶対的な結果を達成または避けることは稀であることを理解するであろう。従って「実質的に」という用語は、本明細書では、多くの生物学的および化学的現象に固有の完全性の欠如の可能性をとらえるために使用される。
【0096】
「実質的な相同性」は、本明細書で使用される場合、アミノ酸配列間または核酸配列間の比較を指す。当業者であれば理解するように、二つの配列はそれらが対応する位置に相同な残基を含有する場合、「実質的に相同」であると一般的にみなされる。相同残基は同一の残基である場合がある。あるいは、相同残基は、適切に類似の構造及び/または機能的特徴を持つ非同一残基である場合がある。例えば、当業者には公知のように、特定のアミノ酸は「疎水性」または「親水性」アミノ酸、及び/または「極性」または「非極性」側鎖を有するものとして典型的に分類される。一つのアミノ酸の同じタイプの別のアミノ酸での置換は、「相同」置換とみなされる場合がよくある。一般的なアミノ酸分類が下記に要約される。
【表1A】
【表2】
【0097】
当技術分野で公知のように、アミノ酸または核酸配列は、ヌクレオチド配列に対するBLASTN及びBLASTP、gapped BLAST、ならびにアミノ酸配列に対するPSI−BLASTなどの市販のコンピュータプログラムで利用可能なものを含む、様々なアルゴリズムの任意のものを使用して比較することができる。このようなプログラムの例は、Altschul et al.,1990,Basic local alignment search tool,J.Mol.Biol.,215(3):403−410;Altschul et al.,1996,Methods Enzymol.266:160−80;Altschul et al.,1997,Nucleic Acids Res.25:3389−3402;Baxevanis et al.,1998 Bioinformatics:A Practical Guide to the Analysis of Genes and Proteins,Wiley;and Misener et al.(eds.)(1999)Bioinformatics Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology,Vol.132),Humana Press.に記載される。相同配列を特定することに加えて、上述のプログラムは相同性の程度の指標を典型的に提供する。一部の実施形態では、二つの配列は、残基の関連する区間に渡って、その対応残基の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上が相同の場合、実質的に相同であるとみなされる。一部の実施形態では、関連する区間は完全配列である。一部の実施形態では、関連する区間は少なくとも9、10、11、12、13、14、15、16、17またはそれ以上の残基である。一部の実施形態では、関連する区間は完全配列に沿った隣接残基を含む。一部の実施形態では、関連する区間は完全配列に沿った不連続残基を含む。一部の実施形態では、関連する区間は少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50またはそれ以上の残基である。
【0098】
「実質的な同一性」は、本明細書で使用される場合、アミノ酸配列間または核酸配列間の比較を指す。当業者であれば理解するように、二つの配列はそれらが対応する位置に同一な残基を含有する場合、「実質的に同一」であると一般的にみなされる。当技術分野で公知のように、アミノ酸配列または核酸配列は、ヌクレオチド配列に対するBLASTN及びBLASTP、gapped BLAST、ならびにアミノ酸配列に対するPSI−BLASTなどの市販のコンピュータプログラムで利用可能なものを含む、様々なアルゴリズムの任意のものを使用して比較することができる。このようなプログラムの例は、Altschul et al.,1990,Basic local alignment search tool,J.Mol.Biol.,215(3):403−410;Altschul et al.,1996,Methods Enzymol.266:160−80;Altschul et al.,1997,Nucleic Acids Res.25:3389−3402;Baxevanis et al.,1998,Bioinformatics:A Practical Guide to the Analysis of Genes and Proteins,Wiley;Misener et al.,(eds.)(1999)Bioinformatics Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology,Vol.132),Humana Press.に記載される。同一配列の特定に加え、上述のプログラムは、同一性の程度の指標を典型的に提供する。一部の実施形態では、二つの配列は、残基の関連する区間に渡って、その対応残基の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上が同一の場合、実質的に同一であるとみなされる。一部の実施形態では、関連する区間は完全配列である。一部の実施形態では、関連する区間は少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50またはそれ以上の残基である。
【0099】
「標的化ベクター」または「標的化構築物」は、本明細書で使用される場合、標的化領域を備えるポリヌクレオチド分子を指す。標的化領域は、標的の細胞、組織または動物の配列と同一または実質的に同一の配列を備え、相同組み換えにより、標的化構築物を、その細胞、組織または動物のゲノム内の位置に統合する。部位特異的リコンビナーゼ認識部位(例えば、loxP及び/またはFrt部位)を使用して標的にする標的化領域も含まれる。一部の実施形態では、標的化構築物は、特に関心のある核酸配列または遺伝子、選択可能マーカー、制御及びまたは調節配列、ならびにこのような配列が関与する組み換えを支援または促進するタンパク質の外からの追加を通して媒介される組み換えを許容するその他の核酸配列をさらに含む。一部の実施形態では、標的化構築物は対象の遺伝子の全部または一部をさらに含み、対象の遺伝子は、内因性配列によってコードされるポリペプチドと類似の機能を有するポリペプチドの全部または一部をコードする異種遺伝子である。一部の実施形態では、標的化構築物は対象のヒト化遺伝子の全部または一部をさらに含み、対象のヒト化遺伝子は、内因性配列によってコードされるポリペプチドと類似の機能を有するポリペプチドの全部または一部をコードする。一部の実施形態では、標的化構築物は対象の操作された遺伝子の全部または一部をさらに含み、対象の操作された遺伝子は、内因性配列によってコードされるポリペプチドと類似の機能を有するポリペプチドの全部または一部をコードする。
【0100】
「バリアント」は、本明細書で使用される場合、参照実体とかなりの構造的同一性を示すが、参照実体と比較して、一つ以上の化学的部分の存在またはレベルにおいて、参照実体とは構造的に異なる実体を指す。多くの実施形態では、「バリアント」は、その参照実体とは機能的にも異なる。一般的に、特定の実体が、参照実体の「バリアント」と正しくみなされるかどうかは、参照実体とのその構造同一性の程度に基づく。当業者であれば理解するように、任意の生物学的または化学的参照実体は特定の特徴的構造要素を有する。「バリアント」は、定義によると、一つ以上のこのような特徴的構造要素を共有する別個の化学的実体である。いくつかの例を挙げると、小分子は特徴的なコア構造要素(例えば、マクロサイクルコア)及び/または一つ以上の特徴的懸垂部分を有する場合があり、従って小分子のバリアントは、コア構造要素及び特徴的懸垂部分を共有するが、その他の懸垂部分及び/またはコア内に存在する結合のタイプ(単に対する二重、Eに対するZなど)が異なるものであり、ポリペプチドは、直線または三次元空間でお互いに対して指定された位置を有する及び/または特定の生物学的機能に寄与する複数のアミノ酸から成る特徴的配列要素を有する場合があり、核酸は、直線または三次元空間でお互いに対して指定された位置を有する複数のヌクレオチド残基から成る特徴的配列要素を有する場合がある。例えば、「バリアントポリペプチド」は、アミノ酸配列の一つ以上の差異及び/またはポリペプチド骨格に共有結合した化学的部分(例えば、炭化水素、脂質など)の一つ以上の差異の結果として、参照ポリペプチドとは異なる場合がある。一部の実施形態では、「バリアントポリペプチド」は、参照ポリペプチドと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、または99%の全体的配列同一性を示す。あるいはまたはさらに、一部の実施形態では、「バリアントポリペプチド」は、少なくとも一つの特徴的配列要素を参照ポリペプチドと共有しない。一部の実施形態では、参照ポリペプチドは一つ以上の生物活性を有する。一部の実施形態では、「バリアントポリペプチド」は参照ポリペプチドの生物活性の一つ以上を共有する。一部の実施形態では、「バリアントポリペプチド」は参照ポリペプチドの生物活性の一つ以上を欠く。一部の実施形態では、「バリアントポリペプチド」は参照ポリペプチドと比べて一つ以上の生物活性のレベル減少を示す。多くの実施形態で、特定位置での少数の配列変更がなければ対象のポリペプチドが親のものと同一のアミノ酸配列を有する場合、対象のポリペプチドは親または参照ポリペプチドの「バリアント」であるとみなされる。典型的に、親と比べて、バリアントの残基の20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満が置換される。一部の実施形態では、「バリアント」は親と比べて、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1個の置換残基を有する。しばしば、「バリアント」は、非常に少数の(例えば、5、4、3、2、または1未満)の置換された機能残基(すなわち、特定の生物活性に関与する残基)を有する。さらに、「バリアント」は典型的には5、4、3、2、または1以下の付加または欠失を有し、親と比べて付加または欠失を有さないことがよくある。さらに、任意の付加または欠失は典型的には、約25、約20、約19、約18、約17、約16、約15、約14、約13、約10、約9、約8、約7、約6未満であり、通常は約5、約4、約3、または約2残基である。一部の実施形態では、親または参照ポリペプチドは自然界に見られるものである。当業者であれば理解するように、特に対象のポリペプチドが感染因子ペプチドである時、対象の特定ポリペプチドの複数のバリアントは、通常は自然界に見られる場合がある。
【0101】
「ベクター」は、本明細書で使用される場合、それが関連している別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。一部の実施形態では、ベクターは、染色体外複製及び/または、真核及び/または原核細胞などの宿主細胞中でそれらが連結する核酸の発現能力がある。動作可能に連結された遺伝子の発現を方向付けることができるベクターは、本明細書では「発現ベクター」と称される。
【0102】
「野生型」は、本明細書で使用される場合、(変異体、病的、変更などと対照をなす)「正常」な状態または状況で自然界に存在する構造及び/または活性を有する実体を指す、当技術分野に理解されている意味を有する。当分野の当業者であれば、野生型の遺伝子及びポリペプチドはしばしば複数の異なる形態(例えば、アレル)で存在することを理解するであろう。
【0103】
(特定の実施形態の詳細な説明)
本発明は、特に、代謝障害の治療のためのANGPTL8調節物質(例えば、抗ANGPTL8抗体)の治療有効性を決定するためのアンジオポエチン様タンパク質8(ANGPTL8)をコードする異種遺伝物質を有する、改良された及び/または操作された非ヒト動物、ならびに脂質(例えば、トリグリセリド)代謝、グルコースホメオスタシス、体重、組成、及びエネルギー消費の様々な影響を測定するアッセイを提供する。このような非ヒト動物は、ANGPTL8調節因子の治療有効性及びそれらのANGPTL8阻害能力の決定における改善を提供することが考えられる。従って、本発明は、トリグリセリド機能不全、グルコース不耐性、及び脂質異常症(Zhang and Abou−Samra,Cardiovascular Diabetology 2014,13:133)を含む様々な代謝障害から生じる、またはこれらによって特徴づけられる、疾患、障害、または状態の治療のための抗ANGPTL8治療法の開発のために特に有用である。特に、本発明は、非ヒト動物の血清中のヒトANGPTL8ポリペプチドの発現をもたらす非ヒト(例えばマウス)Angptl8遺伝子の操作を包含する。このような非ヒト動物は、代謝障害ならびに/または心血管性の疾患、障害、及び/または状態の治療において、抗ANGPTL8治療法の有効性を決定するためのインビボ動物モデルを提供するための能力を有する。一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物は、野生型非ヒト動物に比較して、増加したトリグリセリドレベルを示す。一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物は、リポタンパク質代謝のためのインビボ動物を提供する。一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物は、高トリグリセリド血症のためのインビボ動物を提供する。
【0104】
一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物によって発現された(または分泌された)Angptl8ポリペプチドは、ヒトANGPTL8ポリペプチドのアミノ酸22〜60、77〜134、156〜193、または22〜198に対応する配列を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物のゲノム内の遺伝物質によってコードされるAngptl8ポリペプチドは、シグナルペプチドマウスAngptl8ポリペプチドに対応する配列を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物は、内因性Angptl8座位に、非ヒト動物及び異種の種(例えば、ヒト)からの遺伝物質を含有するAngptl8遺伝子を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物は、ヒトANGPTL8遺伝子のエクソン1〜4の全部または一部を含む、操作されたAngptl8遺伝子を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物は、ヒトANGPTL8遺伝子のエクソン1及びエクソン2〜4のコード部分を含む、操作されたAngptl8遺伝子を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物は、ヒトANGPTL8遺伝子のエクソン1(または開始コドンを除くエクソン1のコード部分)、エクソン2、エクソン3、及びエクソン4(3’UTRを含む)のコード部分を含む、操作されたAngptl8遺伝子を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物は、ヒトANGPTL8遺伝子の3’UTR(例えば、〜256bp)を含む、開始コドンの直後から始まるエクソン1〜エクソン4までのコード部分に対応する、ヒトANGPTL8遺伝子の〜2,383bpを含む、操作されたAngptl8遺伝子を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物は、内因性Angptl8座位で操作されたAngptl8遺伝子を含み、その操作されたAngptl8遺伝子は、内因性Angptl8遺伝子の5’UTR、内因性Angptl8プロモーターに動作可能に連結した、ヒトANGPTL8遺伝子のエクソン1、エクソン2、エクソン3、及びエクソン4(3’UTRを含む)のコード部分を含み、一部の実施形態では、このような操作されたAngptl8遺伝子を作るのに、該内因性Angptl8座位で、内因性Angptl8遺伝子のエクソン1、エクソン2〜3のコード部分、及びエクソン4のコード部分が除去された。様々な実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物は、内因性Angptl8ポリペプチドの全部または一部を検出可能な程度には発現しない。
【0105】
本発明の様々な態様が以下のセクションに詳細に記載される。セクションの使用は本発明を限定することを意図しない。各セクションは本発明の任意の態様に適用することができる。本明細書では、特に指定のない限り、「または」の使用は「及び/または」を意味する。
【0106】
アンジオポエチン様タンパク質8(ANGPTL8)
ANGPTL8(TD26、RIFL、Lipasin、C19orf80及びベータトロフィンとも呼称される)は、トリグリセリド及びグルコース代謝の両方において示唆されている、新たに認識されたANGPTLファミリーメンバーである。系統発生解析は、ANGPTL8が、ANGPTL3及びANGPTL4と密接に関連すると明らかにした(Fu,Z.et.al.,2013,Biochem.Biophys.Res.Commun.430:1126−31;Quagliarini F.et al;2012,PNAS 109:19751−19756).。ANGPTL8は、主に肝臓及び脂肪組織に発現する分泌されたポリペプチドであり、関連するファミリーメンバーのANGPTL3及びANGPTL4とは違って、C末端フィブリノーゲン様ドメインを欠くが、他のANGPTLファミリーメンバーのように、N末端コイルドコイル・ドメインを含有する(Mattijssen F.,and Kersten S,Biochim Biophys Acta 1821,2012:782−789)。
【0107】
ANGPTL8の肝過剰発現は、高トリグリセリド血症に関連付けられるが、一方でAngptl8の不活性化は、血漿中のトリグリセリドレベルの減少を引き起こす(Quagliarini,F.et.al.,2012,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 109(48):19751−6;Wang,Y.et.al.,2013,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 110:16109−14)。ANGPTL8が脂質の調節に関わるとの報告にもかかわらず、関与するメカニズムはまだ議論中である。一例を挙げると、一つのメカニズムは、ANGPTL8がリポタンパク質リパーゼの活性を阻害し、低減したトリグリセリド加水分解及びクリアランスをもたらすと推論する(Zhang,R.et.al.,2012,Biochem.Biophys.Res.Commun.424:786−92)。ANGPTL8はまた、インスリン抵抗性がインスリン受容体拮抗薬S961(Yi,P.et.al.2013,Cell 153:747−58)によって誘発されたマウスにおいて、β細胞増殖及びβ細胞量において役割を果たすことが報告されている。しかし、その後の研究で、ANGPTL8が、インスリン抵抗性に応答してβ細胞機能またはβ細胞成長のために必要ではないことが明らかになった。さらに、ANGPTL8の過剰発現は、β細胞領域を増加させず、血糖コントロールを改善もしない(Gusarova,V.et.al.,2014,Cell 159:691−6)。ANGPTL8の肝過剰発現が高トリグリセリド血症に関連付けられ、Angptl8の不活性化が血漿中のトリグリセリドレベルを低減させるため、ANGPTL8の阻害剤または拮抗薬は、これに限定するものではないが、高トリグリセリド血症などの上昇したトリグリセリドレベルに部分的に特徴づけられる疾患を治療するのに有効であると証明できる。野生型マウスを用いた一つの報告によれば、リパシン(lipasin)に対するモノクローナル抗体は、腹腔内に駐車された場合、血清トリグリセリドレベルを減少させた(Zhang,R.,2015,Endocrine Society’s 97th Annual Meeting,Presentation No.OR13−6,March 5−8,San Diego,CA)。
【0108】
ANGPTL8介在性の機能及び脂質代謝におけるANGPTL8経路、グルコースホメオスタシス、体重、体組成、エネルギー消費及び心血管性機能への影響の、より徹底した詳細な理解は、上昇したトリグリセリド及び脂質レベルに特徴づけられる高トリグリセリド血症、及び他の疾患、障害、または状態を患うヒト患者の将来的な治療のための実用的な標的治療法を開発するために必要である。
【0109】
ANGPTL8配列
ANGPTL8(TD26、RIFL、Lipasin、C19orf80及びベータトロフィンとも呼称される)は、タンパク質のアンジオポエチンファミリーのメンバーである。「ANGPTL8」は、本明細書で使用される場合、ヒトANGPTL8ポリペプチドを指し、一部の実施形態では、シグナルペプチド(例えば、配列番号6の22〜198に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド)を伴わないヒトANGPTL8ポリペプチドを指す。ヒトANGPTL8アミノ酸(シングルペプチドを含む)及びmRNA配列の例は、GenBank accession numbers NP_061157.3(配列番号6)及びNM_018687.6(配列番号5)にそれぞれ見ることができる(
図8D及び8E参照)。ヒトANGPTL8のN末端コイルドコイル・ドメインは、配列番号6のアミノ酸残基〜77〜134及び156〜193に及ぶ。
【0110】
齧歯類(例えば、ラット及びマウス)、ヒト及び操作されたAngptl8配列の例は、
図8A〜8Hに記載される。本明細書に記載される非ヒトAngptl8遺伝子を操作するための合成DNA断片の例も、
図8Iに記載される。mRNA配列については、太字はコード配列及び連続的エクソンを示し、示される場合、交互の下線文字で分けられている。操作されたmRNA配列については、ヒト配列は括弧に入っている。アミノ酸配列については、シグナル配列が下線文字で示されている。
【0111】
ヒト化ANGPTL8遺伝子を有する非ヒト動物のDNA構築物及び産生
典型的に、Angptl8遺伝子(例えば、異種または操作されたAngptl8遺伝子)の全部、または一部を含有するポリヌクレオチド分子はベクター、好ましくはDNAベクターに挿入され、適切な宿主細胞中でそのポリヌクレオチド分子が複製される。
【0112】
サイズに応じて、Angptl8遺伝子またはAngptl8をコードする配列は、業者により入手可能なcDNA源から直接クローニングされてもよく、またはGenBankから入手可能な公開配列に基づいてin silicoで設計されてもよい。あるいは、細菌人工染色体(BAC)ライブラリーが、対象遺伝子からの異種Angptl8配列を提供してもよい(例えば、異種Angptl8遺伝子)。BACライブラリーは、100〜150kbの平均インサートサイズを含み、300kbの大きさのインサートを保有することができる(Shizuya,H.et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.89:8794−7;Swiatek,P.J.and T.Gridley,1993,Genes Dev.7:2071−84;Kim,U.J.et al.,1996,Genomics 34:213−8、参照により本明細書に援用される)。例えばヒト及びマウスのゲノムBACライブラリーが構築されており、市販されている(例えば、Invitrogen社、カールスバッド、カリフォルニア州)。ゲノムBACライブラリーは、異種のAngptl8配列ならびに転写制御領域の源として利用することもできる。
【0113】
あるいは、異種Angptl8配列は、酵母人工染色体(YAC)から単離、クローニング、及び/または移転させてもよい。完全な異種遺伝子または座位をクローニングし、1個または数個のYAC内に含有させてもよい。複数のYACが使用され、重複相同性の領域を含有する場合、それらを酵母宿主株内で再結合させて、完全な座位を提示する1つの構築物を生成してもよい。哺乳類選択カセットを用いた改良によりYACのアームをさらに改変し、当技術分野に公知の方法及び/または本明細書に記載される方法により、構築物を胚性幹細胞または胚に導入することを補助してもよい。
【0114】
非ヒト動物におけるヒト化Angptl8遺伝子の構築における使用のためのmRNA及びアミノ酸配列の例を、上記にに提示する。他の異種Angptl8配列もまた、GenBankデータベースまたはその他の当技術分野に公知の配列データベースに見出すことができる。
【0115】
本明細書に記載されAngptl8配列を含有するDNA構築物は、一部の実施形態では、トランスジェニック非ヒト動物における発現のために、非ヒト調節配列(例えば齧歯類のプロモーター)に動作可能に連結された、ヒトANGPTL8ポリペプチドの少なくともアミノ酸22〜60、77〜134、156〜193または22〜198をコードするヒトのANGPTL8ゲノム(またはcDNA)配列を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載されるAngptl8配列を含有するDNA構造物は、非ヒトAngptl8プロモーター及び1つ以上の非ヒトAngptl8非翻訳領域(例えば、5’及び/または3’UTR)に動作可能に連結するヒトANGPTL8ポリペプチドの少なくともアミノ酸22〜60、77〜134、156〜193または22〜198をコードするヒトのANGPTL8ゲノム(またはcDNA)配列を含む。本明細書に記載されるDNA構築物中に含まれるヒト及び/または非ヒトのAngptl8配列は、自然界で存在する(例えばゲノム)ヒト及び/または非ヒトのAngptl8配列と同一、または実質的に同一であってもよく、人工(例えば合成)であってもよく、またはヒトの手により操作されていてもよい。一部の実施形態では、Angptl8配列は、合成起源であり、自然界に存在するヒトANGPTL8遺伝子中に存在する配列を含む。例えば、DNA構築物は、ヒトANGPTL8遺伝子のエクソン1〜4に対応し、及びヒトANGPTL8ポリペプチドの少なくともアミノ酸22〜60、77〜134、156〜193または22〜198をコードし、それらは非ヒトAngptl8制御性配列(例えばプロモーター)及び非コード配列(例えば1つ以上の非ヒトUTR)に動作可能に連結されており、それによって、すべてまたは実質的にすべてヒトである配列を有する、Angptl8ポリペプチドが、得られたDNA構築物によりコードされる。あるいは、DNA構造物は、非ヒトAngptl8制御性配列(例えばプロモーター)及びコード配列(例えば1つ以上の非ヒトエクソン)に動作可能に連結される、ヒトANGPTL8ポリペプチド(例えば、1つ以上のコイルドコイル・ドメイン、N末端領域)の機能性部分をコードする、遺伝物質に対応する合成DNAを含んでもよく、ヒト及び非ヒト部分を有するAngptl8ポリペプチドは、得られたDNA構築物によってコードされる。一部の実施形態では、Angptl8配列は、異種Angptl8遺伝子(例えば、ヒトANGPTL8遺伝子)と自然に関連している配列を含む。一部の実施形態では、Angptl8配列は、異種Angptl8遺伝子と自然に関連していない配列を含む。一部の実施形態では、Angptl8配列は、非ヒト動物における発現に最適化された配列を含む。一部の実施形態では、非ヒトAngptl8配列に動作可能に連結された異種Angptl8配列は各々、自然界では別個のポリペプチド中に存在するAngptl8ポリペプチドの一部をコードする。もし異種Angptl8配列の発現の最適化に追加的配列が有用である場合、かかる配列を、既存の配列をプローブとして使用してクローニングしてもよい。異種Angptl8遺伝子または異種Angptl8コード配列の発現を最大化するために必要な追加的配列は、ゲノム配列、または所望される結果に応じて他の源から取得することができる。
【0116】
DNA構築物は、当技術分野に公知の方法を使用して調製することができる。例えば、DNA構築物は、より大きなプラスミドの一部として調製することができる。そのような調製により、当技術分野で公知のように、効率的な方法で正しい構築物のクローニング及び選択が可能となる。本明細書に記載されるヌクレオチドコード配列を1つ以上含有するDNA断片は、プラスミド上の便利な制限酵素部位の間に位置づけることができ、それによって、所望される動物への組み込みのために、残りのプラスミド配列からそれらを簡便に単離することができる。
【0117】
プラスミド、及びプラスミドを含有する宿主生物体の調製に使用される様々な方法が当技術分野に公知である。原核細胞及び真核細胞の両方に適した他の発現システム、ならびに一般的な組み換え法に関しては、Principles of Gene Manipulationを参照のこと:An Introduction to Genetic Manipulation,5
th Ed.,ed.By Old,R.W.and S.B.Primrose,Blackwell Science,Inc.,1994;Molecular Cloning: A Laboratory Manual,2
nd Ed.,ed.by Sambrook,J.et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press: 1989.
【0118】
Angptl8ポリペプチドをコードする非ヒト動物の内因性座位(例えば、Angptl8座位)の遺伝子改変から生じる非ヒト動物の血清内に、ヒトANGPTL8ポリペプチドの全部または一部を発現する非ヒト動物が提供される。本明細書に記載された適切な例には齧歯類、特にマウスが含まれる。
【0119】
一部の実施形態では、ヒト化Angptl8遺伝子は、異種の種(例えば、ヒト)からの遺伝物質を含み、ヒト化Angptl8遺伝子は異種の種由来の遺伝物質のコード化部分を含むAngptl8ポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、本明細書に記載されるヒト化Angptl8遺伝子は、非ヒト動物の血清内に発現するAngptl8ポリペプチドをコードする異種の種のゲノムDNAを含み、ここにおいてAngptl8ポリペプチドは、すべてまたは実質的にすべてヒトである配列を有する。該ヒト化Angptl8遺伝子を含む非ヒト動物、非ヒト胚、及び細胞を作製するための非ヒト動物、胚、細胞及び標的化構築物も提供される。
【0120】
一部の実施形態では、内因性Angptl8遺伝子は削除されている。一部の実施形態では、内因性Angptl8は変更されており、内因性Angptl8遺伝子の一部分が異種配列(例えば、ヒトANGPTL8配列の全部または一部)で置換されている。一部の実施形態では、内因性Angptl8遺伝子のすべてまたは実質的にすべてが、異種の遺伝子(例えば、ヒトANGPTL8遺伝子の全部または一部)で置換される。一部の実施形態では、異種Angptl8遺伝子の一部分が、内因性Angptl8座位で、内因性非ヒトAngptl8遺伝子に挿入される。一部の実施形態では、異種遺伝子はヒト遺伝子である。一部の実施形態では、改変またはヒト化は、内因性Angptl8遺伝子の二つの複製のうちの一つに対して行われ、それによりヒト化Angptl8遺伝子に対してヘテロ接合性の非ヒト動物を生じさせる。その他の実施形態では、ヒト化Angptl8遺伝子に対してホモ接合性の非ヒト動物が提供される。
【0121】
一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物は、内因性非ヒトAngptl8座位に、ヒトANGPTL8遺伝子の全部または一部を含有する。一部の実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物は、内因性非ヒトAngptl8座位以外の場所に、ヒトANGPTL8遺伝子の全部または一部を含有する。従って、本明細書に記載の非ヒト動物は、ヒト化または異種Angptl8遺伝子を有するとして特徴づけることができる。内因性Angptl8座位で置換、挿入、改変されたまたは変更されたAngptl8遺伝子、またはこのような遺伝子から発現されたポリペプチドは、例えば、PCR、ウェスタンブロット、サザンブロット、制限酵素断片長多型(RFLP)、または対立遺伝子の獲得または欠失アッセイを含む、様々な方法を使用して検出できる。非ヒト動物ゲノム内に無作為に挿入されたヒト化または異種Angptl8遺伝子は、同じまたは類似の手段によって検出できる。一部の実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物は、本明細書に記載のヒト化または異種Angptl8遺伝子に関して、ヘテロ接合性である。
【0122】
様々な実施形態では、本明細書に記載のヒト化Angptl8遺伝子は、ヒトANGPTL8遺伝子の、エクソン1(ATG開始コドンまたはその直後から開始して、エクソン1の3’末端へ)及びエクソン2〜4ののコード部分を有するAngptl8遺伝子を含む。
【0123】
様々な実施形態では、本明細書に記載のヒト化Angptl8遺伝子は、1番目、2番目、3番目、及び4番目のエクソンを有するAngptl8遺伝子を含み、各エクソンは、配列番号5または配列番号7に存在する1番目、2番目、3番目、及び4番目のエクソンに対し、少なくとも50%(例えば50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一である配列を有する。
【0124】
様々な実施形態において、本明細書に記載のヒト化Angptl8遺伝子は、1番目、2番目、3番目、及び4番目のエクソンを有するAngptl8遺伝子を含み、各エクソンは、配列番号5または配列番号7に存在する1番目、2番目、3番目、及び4番目のエクソンと実質的に同一であるか、または同一である配列を有する。
【0125】
様々な実施形態では、本明細書に記載のヒト化Angptl8遺伝子は、配列番号10または配列番号11に対し、少なくとも50%(例えば50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一である配列を含む。
【0126】
様々な実施形態では、本明細書に記載のヒト化Angptl8遺伝子は、配列番号10または配列番号11と実質的に同一であるか、または同一である配列を含む。
【0127】
様々な実施形態では、本明細書に記載のヒト化Angptl8遺伝子は、配列番号10もしくは配列番号11であるか、または配列番号10もしくは配列番号11を含む。
【0128】
様々な実施形態では、本明細書に記載のヒト化Angptl8遺伝子は、配列番号1もしくは配列番号3に存在する5’非翻訳領域に対し、少なくとも50%(例えば50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一である配列を有する5’非翻訳領域、及び/または配列番号1もしくは配列番号3に存在する3’非翻訳領域に対し、少なくとも50%(例えば50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一である配列を有する3’非翻訳領域を含む。
【0129】
様々な実施形態では、本明細書に記載のヒト化Angptl8遺伝子は、配列番号1もしくは配列番号3に存在する5’非翻訳領域に対し、実質的に同一であるか、または同一である配列を有する5’非翻訳領域、及び/または配列番号1もしくは配列番号3に存在する3’非翻訳領域に対し、実質的に同一であるか、または同一である配列を有する3’非翻訳領域を含む。
【0130】
様々な実施形態では、本明細書に記載のヒト化Angptl8遺伝子は、内因性非ヒトAngptl8遺伝子の5’非翻訳領域に対し、実質的に同一であるか、または同一である配列を有する5’非翻訳領域、及び/またはヒトANGPTL8遺伝子の3’非翻訳領域に対し、実質的に同一であるか、または同一である配列を有する3’非翻訳領域を含む。ある特定の実施形態において、本明細書に記載のヒト化Angptl8遺伝子は、配列番号1もしくは配列番号3に存在する5’非翻訳領域に対し、実質的に同一であるか、または同一である配列を有する5’非翻訳領域、及び/または配列番号5もしくは配列番号7に存在する3’非翻訳領域に対し、実質的に同一であるか、または同一である配列を有する3’非翻訳領域を含む。
【0131】
特定の実施形態では、本明細書に記載のヒト化Angptl8遺伝子は、内因性非ヒト(例えば、マウスまたはラット)Angptl8遺伝子の5’非翻訳領域、ヒトANGPTL8遺伝子のエクソン1のコード部分、及びヒトANGPTL8遺伝子の3’UTRを含む、ヒトANGPTL8遺伝子のエクソン2〜4を含む。
【0132】
様々な実施形態では、本明細書に記載のヒト化Angptl8遺伝子は、配列番号5または配列番号7に存在するヌクレオチドコード化配列と少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一のヌクレオチドコード化配列(例えば、cDNA配列)を含む。
【0133】
様々な実施形態では、本明細書に記載されるヒト化Angptl8遺伝子は、配列番号5または配列番号7に存在するヌクレオチドコード配列に対し、実質的に同一であるか、または同一であるヌクレオチドコード配列(例えばcDNA配列)を含む。
【0134】
様々な実施形態では、本明細書に記載のヒト化Angptl8遺伝子は、ヒトANGPTL8ポリペプチドに対し、同一であるか、または実質的に同一であるAngptl8ポリペプチドをコードする。様々な実施形態では、本明細書に記載のヒト化Angptl8遺伝子は、ヒトANGPTL8遺伝子(ヒトANGPTL8シグナルペプチド、またはヒトANGPTL8全長タンパク質の最初の21個のアミノ酸を含む)から翻訳される全長ヒトANGPTL8タンパク質に対し、同一であるか、または実質的に同一であるAngptl8ポリペプチドをコードする。
【0135】
様々な実施形態では、本明細書に記載のヒト化Angptl8遺伝子は、配列番号6または配列番号8に存在するアミノ酸配列と少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一のアミノ酸配列を有するAngptl8ポリペプチドをコードする。
【0136】
様々な実施形態では、本明細書に記載のヒト化Angptl8遺伝子は、配列番号6または配列番号8に存在するアミノ酸配列に対し、実質的に同一であるか、または同一であるアミノ酸配列を有するAngptl8ポリペプチドをコードする。
【0137】
様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物により産生されるAngptl8ポリペプチドは、配列番号6または配列番号8のアミノ酸残基22〜198に対し、少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一のアミノ酸配列を含む。
【0138】
様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物により産生されるAngptl8ポリペプチドは、配列番号6または配列番号8のアミノ酸残基22〜198に対し、実質的に同一であるか、または同一であるアミノ酸配列を含む。
【0139】
様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物により産生されるAngptl8ポリペプチドは、配列番号6または配列番号8のアミノ酸残基77〜134に対し、少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一のアミノ酸配列を含む。
【0140】
様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物により産生されるAngptl8ポリペプチドは、配列番号6または配列番号8のアミノ酸残基77〜134に対し、実質的に同一であるか、または同一であるアミノ酸配列を含む。
【0141】
様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物により産生されるAngptl8ポリペプチドは、配列番号6または配列番号8のアミノ酸残基156〜193に対し、少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一のアミノ酸配列を含む。
【0142】
様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物により産生されるAngptl8ポリペプチドは、配列番号6または配列番号8のアミノ酸残基156〜193に対し、実質的に同一であるか、または同一であるアミノ酸配列を含む。
【0143】
様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物により産生されるAngptl8ポリペプチドは、配列番号6または配列番号8のアミノ酸残基22〜60に対し、少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一のアミノ酸配列を含む。
【0144】
様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物により産生されるAngptl8ポリペプチドは、配列番号6または配列番号8のアミノ酸残基22〜60に対し、実質的に同一であるか、または同一であるアミノ酸配列を含む。
【0145】
様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物により産生されるAngptl8ポリペプチドは、1つ以上のコイルドコイル・ドメインを含み、該1つ以上のコイルドコイル・ドメインは、配列番号6または配列番号8に存在する1つ以上のコイルドコイル・ドメインに対し、少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一のアミノ酸配列を含む。
【0146】
様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物により産生されるAngptl8ポリペプチドは、1つ以上のコイルドコイル・ドメインを含み、該1つ以上のコイルドコイル・ドメインは、配列番号6または配列番号8に存在する1つ以上のコイルドコイル・ドメインに対し、実質的に同一であるか、または同一であるアミノ酸配列を含む。
【0147】
様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物により産生されるAngptl8ポリペプチドは、N末端領域を有し、そのN末端領域は、配列番号6または配列番号8に存在するN末端領域に対し、少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一のアミノ酸配列を含む。
【0148】
様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物により産生されるAngptl8ポリペプチドは、N末端領域を有し、そのN末端領域は、配列番号6または配列番号8に存在するN末端領域に対し、実質的に同一であるか、または同一であるアミノ酸配列を含む。
【0149】
特定の多型形態、アレルバリアント(例えば、単一のアミノ酸の差)または代替的にスプライスされたイソフォームを含む、ヒトまたはヒト化Angptl8ポリペプチドを発現する非ヒト動物を作製するための組成物及び方法が提供され、これにはこのようなポリペプチドをヒトプロモーター及びヒト調節配列から発現する非ヒト動物を作製するための組成物及び方法を含む。一部の実施形態では、かかるタンパク質を非ヒトプロモーター及び非ヒト調節配列から発現する非ヒト動物を作製するための組成物及び方法も提供される。一部の実施形態では、かかるタンパク質を内因性プロモーター及び内因性調節配列から発現する非ヒト動物を作製するための組成物及び方法も提供される。一部のある実施形態では、内因性プロモーター及び内因性調節配列は、内因性齧歯類プロモーター及び内因性齧歯類調節配列である。該方法は、ヒトANGPTL8ポリペプチドの全部または一部をコードする遺伝物質を、内因性Angptl8遺伝子に対応する非ヒト動物のゲノムの正確な位置に挿入すること、及びそれによって、全部または一部がヒトであるAngptl8ポリペプチドを発現するヒト化Angptl8遺伝子を生成することを含む。一部の実施形態では、方法は、ヒトANGPTL8遺伝子のエクソン1〜4の全部または一部に対応するゲノムDNAを、非ヒト動物の内因性Angptl8遺伝子に挿入すること、それによって、挿入されたエクソンによりコードされるアミノ酸を含有するヒト部分を含有するAngptl8ポリペプチドをコードするヒト化遺伝子を生成することを含む。
【0150】
適切な場合、ヒト(またはヒト化)ANGPTL8ポリペプチドの全部または一部をコードする遺伝物質のコード領域またはポリヌクレオチド配列は、非ヒト動物の細胞からの発現のために最適化されたコドンを含むように改変される場合がある(例えば、米国特許第5,670,356号及び第5,874,304号を参照)。コドン最適化配列は合成配列であり、非コドン最適化親ポリヌクレオチドによってコードされる同一ポリペプチド(または全長ポリペプチドと実質的に同じ活性を有する全長ポリペプチドの生物活性断片)をコードすることが好ましい。一部の実施形態では、ヒト(またはヒト化)ANGPTL8ポリペプチドの全部または一部をコードする遺伝物質のコード領域は、特定の細胞タイプ(例えば、齧歯類細胞)に対してコドン使用頻度を最適化するように変更された配列を含む場合がある。例えば、非ヒト動物(例えば、齧歯類)の内因性Angptl8遺伝子に挿入されるべき、ヒトANGPTL8遺伝子のエクソン1〜4の全部または一部に対応するゲノムDNAのコドンは、非ヒト動物の細胞での発現のために最適化される場合がある。このような配列はコドン最適化配列として記載される場合がある。
【0151】
ノックアウト及びノックインを含むトランスジェニック非ヒト動物を生成する方法は、当技術分野に公知である(例えば、Gene Targeting:A Practical Approach,Joyner,ed.,Oxford University Press,Inc.(2000)を参照のこと)。例えば、トランスジェニック齧歯類の作製は、任意で、1つ以上の内因性齧歯類遺伝子(または遺伝子セグメント)の遺伝座位の破壊、及びその齧歯類のゲノムへの1つ以上の異種遺伝子(またはAngptl8コード配列)の導入を含み、一部の実施形態では、内因性齧歯類遺伝子(または遺伝子セグメント)と同じ位置である。
【0152】
一部の実施形態では、本明細書に記載の異種(例えば、ヒトまたはヒト化)Angptl8遺伝子、または異種Angptl8コード配列は、齧歯類のゲノムに無作為に導入される。かかる実施形態では、無作為に導入された異種(またはヒト化Angptl8遺伝子、または異種Angptl8コード配列)を含む、含有する、または別の手段で保有する齧歯類は、異種Angptl8導入遺伝子または異種Angptl8導入遺伝子構築物を有するとして特徴づけることができる。典型的に、導入遺伝子及び/または導入遺伝子構築物は、特に、本明細書に記載される方法、または別の当技術分野に公知の方法を使用してヒトの手により非ヒト細胞(例えば齧歯類の胚性幹細胞)へと導入された核酸配列(例えば対象ポリペプチドの全部または一部をコードしている)を含む。さらに導入遺伝子は、部分的に、または完全に異種、すなわち、導入される非ヒト動物または細胞に対し、外来性であってもよい。導入遺伝子は、1つ以上の転写調節配列、及び任意の他の核酸、例えばイントロンまたはプロモーター(例えば、構造性、組織特異的など)をさらに含んでもよく、それらは選択された核酸配列の発現に必要な場合がある。一部の実施形態では、本明細書に記載される異種(またはヒト化)Angptl8遺伝子、または異種Angptl8コード配列は、齧歯類のゲノム中の内因性Angptl8遺伝子に導入される;一部のある実施形態では、内因性Angptl8座位は、1つ以上の非ヒトAngptl8配列(または遺伝子断片)に動作可能に連結されたヒトANGPTL8配列(または遺伝子断片)を含有するよう、変更され、改変され、または操作される。
【0153】
本明細書に記載のとおり、異種(またはヒト化)Angptl8遺伝子または異種Angptl8コード配列は、非ヒト動物において、プロモーターが異種(またはヒト化)Angptl8の発現を誘導するように、発現制御配列に動作可能に連結する。一部の実施形態では、かかるプロモーターは、非ヒトAngptl8プロモーター(例えば、齧歯類Angptl8プロモーター)である。当業者であれば、本開示を読めば、他の非ヒトプロモーターが、本明細書に記載の非ヒト動物のゲノム内に挿入された異種Angptl8配列に動作可能に連結する場合があり、それはかかる異種Angptl8配列が内因性非ヒト遺伝子と同じ場所に配置されるか、または非ヒト動物のゲノム内に無作為に統合されるかにかかわらず、なされることを認識するであろう。一部の実施形態では、非ヒトプロモーターは、構造性プロモーターであるか、またはこれを含む。一部の実施形態では、非ヒトプロモーターは、ウイルス性プロモーター(例えば、シミアンウイルスプロモーター、単純ヘルペスウィルスプロモーター、パピローマウイルスプロモーター、アデノウイルスプロモーター、レトロウイルスプロモーター、など)であるか、これを含む。一部の実施形態では、非ヒトプロモーターは、哺乳類プロモーターである。本発明に従って使用されうるプロモーターの適切な例は、これらに限定するものではないが、SRαプロモーター、ヒトまたはマウスCMVプロモーター、EF1αプロモーター、及びSV40前記プロモーター領域が挙げられる。組織特異的な様式で、所望のポリペプチドの発現を制御する他のプロモーターは、当技術分野で公知であり、所望の場合には本明細書に記載の方法で使用することができる。さらに、プロモーターは、発現のための所望の細胞タイプにより、選択されてもよい。プロモーターの例は、例えば、Villa−Komaroff et al.,1978,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.75:3727−31;Benoist et al.,1981,Nature 290:304−10;Wagner et al.,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:1441−5;Brinster et al.,1982,Nature 296:39−42;DeBoer et al.,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.80:21−5;Boshart et al.,1985,Cell 41:521−30;Foecking et al.,1986,Gene 45:101−5;Takebe et al.,1988,Mol.Cell.Bio.8:466−72.に見出すことができる。
【0154】
様々な実施形態で、Angptl8配列のゲノム配列は単一断片中で改変され、それにより必要な調節配列を含むことによって正常な機能が維持されるため、ヒト化Angptl8遺伝子の方法は、相対的に最小限の内因性タンパク質相互作用及びシグナル伝達の改変を用いることにより、非ヒト動物において自然な状態のAngptl8介在性機能及び/または活性を生じさせる。さらに、様々な実施形態では、改変は、血清内の機能Angptl8ポリペプチドの分泌に影響を与えず、様々な脂質(例えば、トリグリセリド)と結合することにより、正常な機能及び/または相互作用を維持する。
【0155】
内因性マウスAngptl8遺伝子及びヒトANGPTL8遺伝子のゲノム構造の略図(正確な縮尺ではない)が
図1に提供される。ヒトANGPTL8遺伝子のエクソン1〜4及び3’UTRを含有するゲノム断片を使用して、内因性マウスAngptl8遺伝子をヒト化するための例示的方法が、
図3に提供される。図示されるように、ヒトANGPTL8遺伝子のエクソン1〜4及び3’UTRに対応する2,383bp合成DNA断片が、標的化構築物との相同組み換えによって内因性マウスAngptl8座位の1,576bp配列の場所に挿入される。2,383bp合成DNA断片は、ヒトDNAから直接クローンを作るか、またはソース配列(例えば、GenBank登録番号NM_018687.6、配列番号5)から合成される場合がある。このゲノムDNAは、脂質結合に関与するヒトANGPTL8ポリペプチドのアミノ酸残基22〜198を少なくともコードする遺伝子の部分を含む。
【0156】
内因性Angptl8座位にヒト化Angptl8遺伝子を有する非ヒト動物(例えば、マウス)は、当技術分野で公知の任意の方法で作ることができる。例えば、選択可能なマーカー遺伝子とともにヒトANGPTL8遺伝子の全部または一部を導入する標的化ベクターを作ることができる。
図3は、ヒトANGPTL8遺伝子のエクソン1〜4(特に、3’UTRを含むエクソン1、エクソン2、エクソン3、及びエクソン4のコード部分)に対応する2,383bp合成DNA断片の挿入物を含む、マウスゲノムの内因性Angptl8座を含有する標的化ベクターを示す。図示されるように、標的化構築物は、内因性マウスAngptl8遺伝子(約79Kb)のエクソン1(すなわち、ATG開始コドンを含む)の上流の配列を含む5’ホモロジーアームに続く2,383bp合成DNA断片、薬剤選択カセット(例えば、loxP配列の両側に隣接するネオマイシン耐性遺伝子、約5Kb)、及び内因性マウスAngptl8遺伝子(約148kp)の3’UTRを含む3’ホモロジーアームを含む。標的化構築物は、自動削除薬剤選択カセット(例えば、loxP配列に隣接したネオマイシン耐性遺伝子、米国特許第8,697,851号、第8,518,392号、及び第8,354,389号を参照のこと。これらはすべて参照により本明細書に組み込まれる)を含む。胚性幹細胞を電気穿孔すると、内因性野生型Angptl8遺伝子の1,576bpの位置に、ヒトANGPTL8遺伝子の2,383bp(すなわち、3’UTRを含むエクソン1、エクソン2、エクソン3、及びエクソン4のコード部分)を含む改変内因性Angptl8遺伝子が作られ、これは標的化ベクターに含有される。ヒト化Angptl8遺伝子が作られ、2,383bpの合成DNA断片によってコードされるアミノ酸を含有するヒト化Angptl8ポリペプチドを発現する細胞または非ヒト動物が結果として生じる。薬剤選択カセットは発達依存性の様式で除去される、すなわち、その生殖系細胞に上述のヒト化Angptl8遺伝子を含むマウスから派生した子孫は、発達中に分化細胞から選択可能マーカーを脱落させる(
図3の下部を参照)。
【0157】
本明細書に記載の標的化ベクターに含まれる、薬剤選択カセット及び/またはリコンビナーゼ遺伝子に動作可能に連結されうるプロモーターの例が、以下に提供される。本明細書に記載の標的化ベクターに使用されうる追加の適切なプロモーターは、米国特許第8,697,851号、第8,518,392号、及び第8,354,389号に記載のものを含む。これらはすべて参照により本明細書に組み込まれる)。プロモーター配列の例は、プロタミン1(Prm1)プロモーター(配列番号12)、Blimp1プロモーター1kb(配列番号13)、及びBlimp1プロモーター2kb(配列番号14)を含む。
【0158】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるヒト化Angptl8遺伝子を有する非ヒト動物は、そのヒト化Angptl8遺伝子に対しトランスジェニックであるとして特徴付けられ、またはトランスジェニックAngptl8非ヒト動物であってもよい。そのような記載は本明細書において相互交換可能に使用され、任意の非天然非ヒト動物を指し、その非ヒト動物の細胞の1つ以上が、本明細書に記載される異種Angptl8核酸配列及び/もしくはAngptl8コード配列の全部または一部を含有する。一部の実施形態では、異種Angptl8の核酸配列及び/もしくはAngptl8コード配列の全部、または一部は、例えばマイクロインジェクションまたは組み換えウイルスを用いた感染などの慎重な遺伝子操作を介して、前駆細胞へ導入することにより、直接的に、または間接的に細胞内に導入される。かかる実施形態において、遺伝子操作は、伝統的な交配技術を含まず、本明細書に記載される異種Angptl8核酸配列及び/もしくはAngptl8コード配列の全部または一部を含む組み換えDNA分子の導入を目的としたものである。かかる分子は、染色体内に組み込まれてもよく、または染色体外で複製するDNAであってもよい。本明細書において記載される場合、トランスジェニック非ヒト動物とは、本明細書に記載されるように、異種のAngptl8核酸配列及び/もしくはAngptl8コード配列の全部または一部に対し、ヘテロ接合性またはホモ接合性である動物、ならびに/または異種Angptl8核酸配列及び/もしくはAngptl8コード配列の全部または一部を1コピーまたは複数コピー有する動物を含む。
【0159】
トランスジェニック創始非ヒト動物は、そのゲノム中のヒト化Angptl8遺伝子の存在に基づき特定されることができ、及び/またはその非ヒト動物の組織または細胞における、挿入遺伝物質によりコードされたアミノ酸を含有するAngptl8ポリペプチドの発現に基づき特定されることができる。次いでトランスジェニック創始非ヒト動物を使用して、ヒト化Angptl8遺伝子を担持する追加の非ヒト動物と交配させ、それによって各々がヒト化Angptl8遺伝子を1コピー以上担持する一連の非ヒト動物を生成することができる。さらにヒト化Angptl8遺伝子を担持するトランスジェニック非ヒト動物を、所望される他の導入遺伝子(例えばヒトイムノグロブリン遺伝子)を担持する他のトランスジェニック非ヒト動物とさらに交配させてもよい。
【0160】
トランスジェニック非ヒト動物はまた、ヒト化Angptl8遺伝子(またはヒト化Angptl8導入遺伝子)の発現の制御または管理を可能とする選択システムを含有するよう作製されてもよい。システムの例としては、バクテリオファージP1のCre/loxPリコンビナーゼシステム(例えば、Lakso,M.et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:6232−6を参照のこと)及び出芽酵母のFLP/Frtリコンビナーゼシステム(O’Gorman,S.et al,1991,Science 251:1351−5)が挙げられる。そのような動物は、例えば1種は選択された改変(例えばヒト化Angptl8遺伝子または導入遺伝子)を含む導入遺伝子を含有し、他方はリコンビナーゼ(例えばCreリコンビナーゼ)をコードする導入遺伝子を含有する、2種のトランスジェニック動物を交配することにより、「二重の」トランスジェニック動物を構築することにより提供され得る。
【0161】
マウスにおいて、ヒト化Angptl8遺伝子を用いる実施形態(すなわち、ヒト配列を全部または一部有するAngptl8ポリペプチドをコードするAngptl8遺伝子を伴うマウス)が本明細書では広く検討されているが、ヒト化Angptl8遺伝子を含むその他の非ヒト動物も提供される。一部の実施形態では、このような非ヒト動物は、齧歯類Angptl8プロモーターに動作可能に連結したヒト化Angptl8遺伝子を含む。一部の実施形態では、このような非ヒト動物は、内因性Angptl8プロモーターに動作可能に連結したヒト化Angptl8遺伝子を含み、一部の実施形態では、内因性齧歯類Angptl8プロモーターである。一部の実施形態では、かかる非ヒト動物は、内因性座位からヒト化Angptl8ポリペプチドを発現し、この場合において、そのヒト化Angptl8ポリペプチドは、ヒトANGPTL8ポリペプチドの少なくともアミノ酸残基22〜60、77〜134、156〜193、または22〜198を含む。このような非ヒト動物には、本明細書に開示されたAngptl8ポリペプチドを発現するように遺伝子改変された動物のいずれかを含み、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ウシ(例えば、雌牛、未去勢オスウシ、バッファロー)、シカ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ネコ、イヌ、フェレット、霊長類(例えば、マーモセット、アカゲザル)などの哺乳類が含まれる。例えば、好適な遺伝子改変可能ES細胞が直ちに利用可能でない非ヒト動物については、遺伝子改変を含む非ヒト動物を作るために他の方法が採用される。このような方法には、例えば、非ES細胞ゲノム(例えば、線維芽細胞または人工多能性細胞)を改変すること、及び体細胞核移植(SCNT)を利用して好適な細胞、例えば除核卵母細胞、に遺伝子改変されたゲノムを導入すること、及び改変された細胞(例えば、改変された卵母細胞)を胚の形成に好適な条件下で非ヒト動物に懐胎させることが挙げられる。
【0162】
例えば、ラット多能性細胞及び/または分化全能性細胞は、たとえばACIラット系統、Dark Agouti(DA)ラット系統、Wistarラット系統、LEAラット系統、Sprague Dawley(SD)ラット系統、またはたとえばFisher F344もしくはFisher F6などのFischerラット系統をはじめとする任意のラット系統由来であってもよい。ラット多能性細胞及び/または分化全能性細胞は、上記の2つ以上の系統の混合から誘導された系統から取得されたものであってもよい。例えば、ラット多能性細胞及び/または分化全能性細胞は、DA系統またはACI系統由来のものであってもよい。ACIラット系統は、黒色のアグーチを有し、腹部と足は白色で、RT1
av1ハプロタイプであることが特徴である。当該系統は、Harlan Laboratoriesをはじめとする様々な供給源から入手可能である。ACIラット由来のラットES細胞株の例は、ACI.G1ラットES細胞である。Dark Agouti(DA)ラット系統は、アグーチの毛色を有し、RT1
av1ハプロタイプであることが特徴である。当該ラットは、Charles River及びHarlan Laboratoriesをはじめとする様々な供給源から入手可能である。DAラット由来のラットES細胞株の例は、DA.2BラットES細胞株と、DA.2CラットES細胞株である。一部の例では、ラットの多能性細胞及び/または分化全能性細胞は、近交系ラット由来である。例えば、米国特許出願公開2014−0235933A1を参照のこと。当該出願公開は本明細書に参照により組み込まれる。
【0163】
非ヒト動物ゲノム(例えば、ブタ、メスウシ、齧歯類、ニワトリなどのゲノム)の改変方法には、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(transcription activator−like effector nuclease、TALEN)、またはCasタンパク質(すなわち、CRISPR/Casシステム)を用い、ゲノムを改変してヒト化Angptl8遺伝子を含める方法が含まれる。
【0164】
ヒト化ANGPTL8遺伝子を有する非ヒト動物を用いる方法
本発明は、特に、本明細書に記載のヒト化Angptl8遺伝子を用いて、脂質代謝の調節分子を活用するインビボシステムの生成が可能であるという認識に基づくものである。かかるインビボシステムは、ヒト患者において脂質機能不全の影響を改善することに焦点を置いた、治療薬及び/または治療レジメンの開発を可能にする。さらに、かかるインビボシステムはまた、高トリグリセリド血症及び/または心血管性の疾患、障害または状態における、脂質代謝のアンジオポエチン関連の調節を変更することに焦点を置いた、治療薬及び/または治療レジメンの開発のために提供する。
【0165】
本明細書に記載される非ヒト動物は、様々なアッセイに有用なヒト(またはヒト化)ANGPTL8を発現する、改善されたインビボシステム及び生体物質(例えば、細胞)の供給源を提供する。様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物を使用し、ヒトANGPTL8を標的とする、及び/またはヒトANGPTL8のシグナル伝達を調節する(例えば、ANGPTL3などのヒトANGPTL8結合パートナーとの相互作用を妨害する)療法が開発される。様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物を使用して、ヒトANGPTL8とヒトANGPTL3の相互作用を阻害する候補治療薬(例えば、抗体)がスクリーニング及び開発される。様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物を使用して、本明細書に記載された非ヒト動物のヒトANGPTL8の拮抗薬及び/または作動薬の結合プロファイルが決定され、一部の実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物を使用して、ヒトANGPTL8に結合するひとつ以上の候補治療薬抗体のエピトープまたは複数のエピトープが決定される。
【0166】
様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物を使用して、抗ANGPTL8抗体の薬物動態プロフィルが決定される。様々な実施形態では、本明細書に記載の一つ以上の非ヒト動物及びひとつ以上の対照または参照非ヒト動物がそれぞれ、ひとつ以上の候補治療抗ANGPTL8抗体に様々な用量(例えば、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/mg、7.5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、または50mg/kgまたはそれ以上)で曝露される。候補治療薬抗体は、経口および非経口投与経路を含む、任意の望ましい投与経路で投薬される場合がある。非経口経路には、例えば、静脈内、動脈内、門脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、髄腔内、くも膜下腔内、側脳室内、頭蓋内、胸腔内または注入のその他の経路を含む。非注射経路には、例えば、経口、鼻、経皮、肺、直腸、口腔、膣、眼を含む。投与は、連続注入、局所投与、インプラント(ゲル、膜など)からの持続放出、及び/または静脈内注射による場合もある。非ヒト動物(ヒト化及び対照)から血液が様々な時点(例えば、0時間、6時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、または最大30日またはそれ以上の日数)で単離される。本明細書に記載の非ヒト動物から取得されたサンプルを使用して様々なアッセイが行われ、投与された候補治療抗体の、限定されないが総IgG、抗治療抗体反応、凝集などをはじめとする薬物動態プロファイルが決定されてもよい。
【0167】
様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物を使用して、ヒトANGPTL8シグナル伝達阻害または調節の治療効果及び細胞変化の結果としての遺伝子発現への効果が測定される。様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物またはそれから単離された細胞は、非ヒト動物内のヒトANGPTL8ポリペプチド(またはヒトANGPTL8ポリペプチドの一部分)に結合する候補治療薬に曝露され、それに続く期間の後、例えばトリグリセリド代謝、リポタンパク質リパーゼ活性及び様々なリポタンパク質(例えば、低比重リポタンパク質、LDL)の取り込みなど、ANGPTL8依存性プロセスへの効果について分析される。
【0168】
本明細書に記載の非ヒト動物は、ヒト(またはヒト化)ANGPTL8ポリペプチド、従って、細胞、細胞株を発現し、細胞培養物を生成して、例えば、特に拮抗薬または作動薬がヒトANGPTL8配列もしくはエピトープに特異的であるかまたは、代替的に、ANGPTL3と関連するヒトANGPTL8配列またはエピトープに特異的である場合に、ANGPTL8拮抗薬または作動薬の結合または機能をアッセイするための、結合及び機能アッセイに使用するためのヒト化ANGPTL8の供給源としての役割を果たすことができる。様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物から単離された細胞を使用して、候補治療抗体によって結合されたANGPTL8エピトープを決定することができる。様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物によって発現されたヒト(またはヒト化)ANGPTL8ポリペプチドは、バリアントアミノ酸配列を含む場合がある。様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物は、ヒト(またはヒト化)ANGPTL8のバリアントを発現する。様々な実施形態では、バリアントは、リガンド結合と関連するアミノ酸位置の多型である。様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物を使用して、ヒトANGPTL8の多型バリアントとの相互作用を通したリガンド結合の効果が決定される。バリアントヒトANGPTL8ポリペプチドの例としては、R59W(Quagliarini,F.et al.,2012,Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.109(48):19751−6)または Q121X(Clapham et al.,BMC Endocr Disord.2016,16:7)アミノ酸置換によって特徴づけられたバリアントが挙げられる。一部の実施形態では、バリアントヒトANGPTL8ポリペプチドは、より低い血漿低比重リポタンパク質(LDL)コレステロール及び/または高比重リポタンパク質(HDL)コレステロールレベルに関連づけられる。一部の実施形態では、バリアントヒトANGPTL8ポリペプチドは、より低い血漿トリグリセリド及び/またはHDLコレステロールレベルに関連づけられる。
【0169】
本明細書に記載の非ヒト動物からの細胞は、その場限りで単離して使用するか、または多世代にわたって培養物中で維持することができる。様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物からの細胞は(例えば、ウイルスの使用によって)不死化され、培養物中(例えば、連続培養物中)で無期限に維持される。
【0170】
本明細書に記載される非ヒト動物は、薬剤(例えば、ANGPTL8調節物質)の薬物動態特性を評価するためのインビボシステムを提供する。様々な実施形態では、薬剤は、本明細書に記載の一つ以上の非ヒト動物に送達または投与され、その後非ヒト動物(またはそれから単離された細胞)をモニターするか、または一つ以上のアッセイを実施して、非ヒト動物に対する薬剤の効果を決定する場合がある。薬物動態特性には、動物がどのように薬剤を処理して様々な代謝物にするか(または、有毒代謝物を含む一つ以上の薬剤代謝物の有無の検出)、薬剤半減期、投与後の薬剤の循環レベル(例えば、薬剤の血清濃度)、抗薬物反応(例えば、抗薬物抗体)、薬剤の吸収及び分布、投与経路、薬剤の排泄及び/またはクリアランス経路を含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、薬剤の薬物動態及び薬力学特性は、本明細書に記載の非ヒト動物で、またはその使用を通してモニターされる。
【0171】
一部の実施形態では、アッセイを行うことには、薬剤が投与される非ヒト動物の表現型及び/または遺伝子型への効果を決定することを含む。一部の実施形態では、アッセイを行うことには、薬剤のロット間変動を決定することを含む。一部の実施形態では、アッセイを行うことは、本明細書に記載の非ヒト動物に投与された薬剤の効果と、参照非ヒト動物に投与された薬剤の効果の間の差異を決定することを含む。様々な実施形態では、参照非ヒト動物は、本明細書に記載の改変を有するか、本明細書に記載のものとは異なる改変を有するか、または改変を有しない(すなわち、野生型非ヒト動物)場合がある。
【0172】
薬剤の薬物動態特性を評価するために非ヒト動物で(またはそれらから単離された細胞で及び/またはそれらを使用して)測定されうるパラメーターの例には、凝集、オートファジー、細胞分裂、細胞死、補体介在性溶血、DNA完全性、薬物特異抗体力価、薬剤代謝、遺伝子発現アレイ、代謝活性、ミトコンドリア活性、酸化ストレス、食作用、タンパク質生合成、タンパク質分解、タンパク質分泌、ストレス反応、標的組織薬剤濃度、標的外組織薬剤濃度、転写活性などが挙げられるが、これらに限定されない。様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物は、薬剤の薬学的有効量を決定するために使用される。
【0173】
本明細書に記載の非ヒト動物は、薬剤またはワクチンの分析及び検査のためのインビボシステムを提供する。様々な実施形態では、候補薬剤またはワクチンが本明細書に記載される一つ以上の非ヒト動物に投与され、その後非ヒト動物をモニターして、薬剤またはワクチンに対する免疫反応、薬剤またはワクチンの安全性プロファイル、または疾患または状態に対する効果の一つ以上を決定する場合がある。安全性プロファイルを決定するために使用される方法の例は、毒性、最適な用量濃度、薬剤またはワクチンの有効性、及び潜在的リスク因子の測定を含む。このような薬剤またはワクチンは、このような非ヒト動物で改善及び/または開発される場合がある。
【0174】
ワクチンの有効性は、多くの方法で決定することができる。簡潔に述べると、本明細書に記載の非ヒト動物は当分野に公知の方法を使用してワクチン接種され、その後、ワクチンでチャレンジされるか、またはすでに感染した非ヒト動物にワクチンが投与される。ワクチンの有効性を決定するために、ワクチンに対する非ヒト動物の応答が、その非ヒト動物(またはそれらから単離された細胞)のモニタリングを行うことにより、及び/またはそれらに対して1つ以上のアッセイを行うことにより、測定されてもよい。ワクチンに対する非ヒト動物の応答は、その後、当分野に公知の、及び/または本明細書に記載の1つ以上の手段を使用して、対照動物と比較される。
【0175】
ワクチンの有効性は、ウイルス中和アッセイによりさらに決定されてもよい。簡潔に述べると、本明細書に記載の非ヒト動物が免疫化され、免疫後の様々な日に血清が採取される。血清の連続希釈とウイルスを前インキュベートし、その間の時間に、そのウイルスに特異的な血清中の抗体が、ウイルスに結合する。ウイルス/血清の混合物は、その後、許容細胞に添加され、プラークアッセイまたはマイクロ中和アッセイにより感染性が決定される。血清中の抗体がウイルスを中和した場合、対照群と比較して、プラーク数が少ないか、または相対ルシフェラーゼ単位が低い。
【0176】
様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物は、有効性試験に使用され、循環トリグリセリドレベルに対する抗ANGPTL8治療薬(例えば、抗ANGPTL8抗体)のインビボ効果を決定する。例えば、本明細書に記載の非ヒト動物は、候補治療薬または対照の投与前に採血され、所望により様々な治療グループに組織化される。候補治療薬または対照は、望ましい用量で投与され、投与後は連続した日に採血する。トリグリセリド、グルコース、及び/またはインシュリンの血漿レベルを、回収した血清を用いて測定してもよい。候補治療薬のレベルも、所望により測定してもよい。様々な分子の検出に使用されうるアッセイの例は、Wang,Y.et al.,2013,Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.110(40):16109−114;Quagliarini,F.et al.,2012,Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.109(48):19751−6.に記載される、ELISAアッセイ及び他のアッセイである。
【0177】
様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物を使用し、抗ANGPTL8治療薬(例えば、抗ANGPTL8抗体)で治療後の、リポタンパク質リパーゼ(LPL)活性を決定する。例えば、本明細書に記載の非ヒト動物は、候補治療薬または対照の投与前に採血され、所望により様々な治療グループに入れられる。候補治療薬または対照は、望ましい用量で投与され、投与後は連続した日で採血する。十分な時間の後(例えば、数日)、非ヒト動物は抗凝固剤(例えば、ヘパリン)を投与され、血管内皮表面からLPLが放出され、その後すぐに非ヒト動物から血液を得られるようにする。ヘパリン後の血漿は分画されて、ヘパリンセファロースクロマトグラフィーを用いてLPLを分離し、LPL活性はリパーゼ基質を用いてアッセイされる。例えば、一般的な方法及びアッセイが、Wang,Y.et al.,2013,Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.110(40):16109−114;Quagliarini,F.et al.,2012,Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.109(48):19751−6.に記載される。
【0178】
様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物を脂質耐性試験で使用し、抗ANGPTL8治療薬(例えば、抗ANGPTL8抗体)で治療後の、急性脂肪ローディングによるトリグリセリドクリアランスを決定する。例えば、本明細書に記載の非ヒト動物は、候補治療薬または対照の投与前に採血され、様々な治療グループに入れられる。候補治療薬または対照は、望ましい用量で投与される。数日後、非ヒト動物は、体重に従って脂質エマルジョン(例えば、20%濃度)を投与された後、絶食レジメンを施される。それぞれの治療グループにおいて、非ヒト動物から回収された血液内の血漿トリグリセリドレベルが測定される。例えば、一般的な方法及びアッセイが、Wang,Y.et al.,2013,Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.110(40):16109−114;Quagliarini,F.et al.,2012,Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.109(48):19751−6.に記載される。
【0179】
本明細書に記載された非ヒト動物は、高トリグリセリド血症で使用する候補治療薬の開発及び特徴付けのための、改善されたインビボシステムを提供する。様々な実施形態で、本明細書に記載された非ヒト動物が特定摂食レジメンを施され、その後に、一つ以上の候補治療薬を投与する場合がある。一部の実施形態では、候補治療薬には、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)または抗体カクテルを含む場合があり、一部の実施形態では、候補治療薬は、例えば、連続的または同時に投薬される単一特異性抗体の投与などの併用療法を含む。非ヒト動物は、非ヒト動物内の1つ以上の部位(例えば、レバー及び/または脂肪組織)で、ANGPTL8レベルが高いレベルであるように、十分な時間、摂食レジメンを施される場合がある。トリグリセリド、グルコース、及び/またはインシュリンの血漿レベル、ならびにリポタンパク質リパーゼ活性などは、候補治療薬の投与の前後両方で測定される場合がある。候補治療薬の細胞毒性も、所望により非ヒト動物で測定される場合がある。
【0180】
本明細書に記載の非ヒト動物は、ヒトに影響する疾患、障害または状態を効果的に治療するため、候補治療薬及び/または治療レジメン(例えば、単剤療法、併用療法、用量範囲試験など)を評価または査定するための一つ以上の疾患モデルの開発に使用される場合がある。様々な疾患状態が本明細書に記載の非ヒト動物で確立され、その後、疾患状態での一つ以上の候補分子(例えば、ANGPTL8標的化薬剤)の有効性を決定できるように、一つ以上の候補分子が投与される場合がある。非ヒト動物は、定着疾患の効果的な治療に相関する最適用量または用量範囲を決定できるように、用量によって異なる治療群に配置される場合がある。一部の実施形態では、疾患モデルは、心血管性の疾患、障害、または状態を含む。
【0181】
候補分子は、経口及び非経口投与経路を含む任意の投与方法を使用して、非ヒト動物疾患モデルに投与することができる。非経口経路には、例えば、静脈内、動脈内、門脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、髄腔内、くも膜下腔内、側脳室内、頭蓋内、胸腔内または注入のその他の経路を含む。非注射経路には、例えば、経口、鼻、経皮、肺、直腸、口腔、膣、眼を含む。投与は、連続注入、局所投与、インプラント(ゲル、膜など)からの持続放出、及び/または静脈内注射による場合もある。併用療法を本明細書に記載の非ヒト動物で評価する時、候補分子は、同じ投与経路または異なる投与経路で投与することができる。投与レジメンを本明細書に記載の非ヒト動物で評価する時、候補分子は、一つ以上の疾患モデルが確立されている非ヒト動物で望ましい治療または予防効果を示す投与レジメンを決定するために、2か月毎、毎月、3週間毎、2週間毎、毎週、毎日、可変間隔で、及び/または段階的に増大する濃度で投与される場合がある。
【0182】
キット
本発明はさらに、本明細書に記載の、少なくとも1つの非ヒト動物、非ヒト細胞、DNA断片(または構築物)、及び/または標的化ベクターで満たされた容器を1つ以上含むパックまたはキットを提供する。キットは、任意の適用可能な方法(例えば調査方法)において使用されてもよい。医薬品及び生物製品の製造、使用または販売を規制する政府機関により規定されたフォームの通知書を、任意でかかる容器に関連づけてもよく、その通知書は、(a)ヒト投与に関する製造、使用または販売する当局による承認、(b)使用に関する説明書、またはその両方、または2つ以上の実体の間の物質及び/または生物製品(例えば本明細書に記載の非ヒト動物または非ヒト細胞)の輸送を支配する契約書、を反映している。
【0183】
本発明の他の特徴は、例示のために与えられ、かつその限定を意図しない例示的な実施形態の以下の記載の過程で明らかになるであろう。
【実施例】
【0184】
以下の実施例は、本発明の方法及び組成物をどのように作成し、使用するかを当業者に説明するために提供されており、発明者がその発明として見なすものの範囲を限定することを意図していない。別途示されていない限り、温度は摂氏で示され、圧力は大気圧またはその近くである。
【0185】
実施例1 内因性アンジオポエチン様タンパク質8遺伝子の改変
この実施例は、齧歯類(例えば、マウス)などの非ヒト哺乳類の内因性Angptl8遺伝子を改変し、該内因性Angptl8遺伝子が、ヒトANGPTL8ポリペプチドをコードする方法の例を図示する。この例に記載された方法は、任意のヒト配列(例えば、バリアント)、または所望によりヒト配列(または配列断片)の組み合わせを使用して、非ヒト動物の内因性Angptl8遺伝子を改変するために用いることができる。この例では、GenBank登録番号NM_018687.6(配列番号5)に存在するヒトANGPTL8遺伝子のエクソン1〜4(ATG開始コドンを除く)を含む2,383bpの合成DNA断片が、マウスの内因性Angptl8遺伝子の改変のために用いられる。マウス、ヒト、及び本明細書に記載の齧歯類により発現されたヒトANGPTL8ポリペプチドの例のアライメントを
図2に示す。シグナルペプチドはそれぞれの配列につき四角囲みされている。
図3は、ヒトANGPTL8ポリペプチドをコードするために齧歯類の内因性Angptl8遺伝子を改変するための標的化ベクターを示し、これはVELOCIGENE(登録商標)技術を使用して作製された(米国特許第6,586,251号及びValenzuela et al.,2003,Nature Biotech.21(6):652−659を参照、これらは参照により本明細書に組み込まれる)。
【0186】
簡潔に述べると、マウス細菌人工染色体(BAC)クローンRP23−198h22(Invitrogen)が改変されて、内因性Angptl8 ATG開始コドンのすぐ下流から、終止コドンの9bp先まで(すなわち、5’の11ヌクレオチドを除くエクソン1、エクソン2〜3、及びエクソン4の5’部分から終止コドンの9bp先まで)含有する配列を除去し、ヒトANGPTL8ポリペプチドをコードする、2,383bp合成DNA断片を使用して、ヒトANGPTL8 ATG開始コドンのすぐ下流にヒトANGPTL8 3’UTRを超えるまで(すなわち、ATG開始コドンのすぐ下流から始まるエクソン1からエクソン4までのコード部分)挿入した。5’及び3’非翻訳領域(UTRs)を含有する内因性DNAならびに内因性Angptl8 ATG開始コドンが保持された。従って、ヒトANGPTL8開始コドンを伴わない、ヒトANGPTL8遺伝子のエクソン1〜4は、内因性Angptl8 ATG開始コドンにインフレームで融合された。2,383bpの合成DNA断片(すなわち、ヒトANGPTL8遺伝子のエクソン1〜4に対応する)の配列解析によって、すべてのヒトANGPTL8のエクソン及びスプライシングシグナルが確認された。配列解析で、配列が参照ゲノム及びANGPTL8転写NM_018687.6に一致したことが判明した。
【0187】
2,383bp合成DNA断片はGenescript Inc.(ニュージャージー州、Piscataway)によって合成され、アンピシリン耐性プラスミドベクターにクローン化された。特有の制限酵素認識部位を用いて、リコンビナーゼ認識部位のそばに隣接した約4,996bp自動削除ネオマイシンカセットを結合した(loxP−hUb1−em7−Neo−pA−mPrm1−Crei−loxP、米国特許第8,697,851号、第8,518,392号及び第8,354,389号を参照、これらの全てが参照により本明細書に組み込まれる)。次いで、細菌細胞の選択が、ネオマイシンを含有する寒天培地上にまくことにより実施された。標的化ベクターが直線化され、その後、マウスBACクローンRP23−198H22との相同組み換えが行われた。意図的に、ヒトANGPTL82,383bpフラグメントとマウス下流配列の間の接合部は、ヒトANGPTL8 3’UTR、次いでマウスAngptl8 3‘UTRを含んだ(
図3)。得られた標的化ベクターは、5’から3’に向けて、BACクローンRP23−198h22由来の約79kbのマウスゲノムDNAを含有する5’ホモロジーアーム、2,383bpの合成DNA断片(ヒトANGPTL8遺伝子のエクソン1〜4に対応する)、loxP部位に隣接した自己削除型ネオマイシンカセット、及びBACクローンRP23−198h22由来の約148kbのマウスゲノムDNAを含有した。
【0188】
上述の改変bMQ−400O17 BACクローンは、マウス胚性幹(ES)細胞を電気穿孔して、エクソン1(ATG開始コドンをマイナスして)からヒトANGPTL8 3’UTR(すなわち、内因性Angptl8遺伝子の1,576bpの欠失及びヒトANGPTL8配列の2.383bpの挿入)を含むエクソン4までヒト化された、内因性Angptl8遺伝子を含む改変ES細胞を作るために使用された。改変Angptl8遺伝子を含有する明確に標的化されたES細胞が、ヒトANGPTL8配列(例えば、エクソン1〜4)の存在を検出するアッセイ(Valenzuelaら、上記参照)によって特定され、マウスAngptl8配列(例えば、エクソン1〜4及び/または5’もしくは3’UTR)の欠失及び/または保持を確認した。表1は、上述の内因性Angptl8遺伝子の改変を確認するために使用されたプライマー及びプローブを示す(
図4)。
【0189】
上流の挿入点をまたぐヌクレオチド配列が下記に含まれ、挿入点でヒトANGPTL8ゲノム配列と連続した内因性マウス配列(下の括弧内に太字のATG開始コドンとともに含まれている)を示している:
【化1】
図3も参照のこと。
【0190】
自己削除型ネオマイシンカセットの5’末端をまたぐヌクレオチド配列が下記に含まれ、挿入点の下流のカセット配列(斜体のXhoI部位及び太字のloxP部位とともに下の括弧内に含まれている)と連続したヒトANGPTL8ゲノム配列を示す:
【化2】
図3も参照のこと。
【0191】
自己削除型ネオマイシンカセットの3’末端の下流挿入点をまたぐヌクレオチド配列は、以下を含んだ。それらは、マウスAngptl8ゲノム配列と連続したカセット配列(太字のloxP部位、下線のI−CeuI認識部位、及び斜体のNheI認識部位とともに下の括弧内に含まれている)を示している:
【化3】
図3も参照のこと。
【0192】
ネオマイシンカセット(ヒトANGPTL8 3’UTRとマウスAngptl8 3’UTRとの間に残留する77bp)の削除後の下流挿入点をまたぐヌクレオチド配列は以下を含み、残りのカセット配列(斜体のXhoI及びNheI認識部位、太字のloxP部位、及び下線のI−CeuI制限部位とともに下の括弧内に含まれている)と並置されたヒト及びマウスのゲノム配列を示す。
【化4】
図3も参照のこと。
【0193】
次に陽性ES細胞クローンを使用して、VELOCIMOUSE(登録商標)法(例えば、米国特許第7,294,754号及びPoueymirou et al.,2007,Nature Biotech.25(1):91−99を参照)で雌マウスに移植し、ヒトANGPTL8エクソン1〜4(ヒトANGPTL8 3’UTRを含む)の、マウスの内因性Angptl8座位への挿入を含む一腹の子を作った。内因性Angptl8エクソン1〜4の代わりにヒトANGPTL8エクソン1〜4(すなわち、2,383bpの合成DNA断片)を持つマウスは、ヒトANGPTL8遺伝子配列の存在を検出した上に記載したアッセイ(Valenzuelaら、上記参照)を使用した尾部断片から単離されたDNAの遺伝子型同定によって再び確認・特定された(
図4)。仔は遺伝子型同定され、ヒトANGPTL8配列に対してヘテロ接合性の動物のコホートを、特徴解析のために選択する。
【表1】
【0194】
実施例2 非ヒト動物におけるヒトANGPTL8の発現
本実施例は、非ヒト動物(例えば、齧歯類)が、非ヒト動物の血漿内に検出可能なヒト(またはヒト化)ANGPTL8ポリペプチドを発現する(または分泌する)実施例1に従って、操作されたAngptl8遺伝子を含有することを示す。特に、以下に記載のとおり、操作されたAngptl8遺伝子を有する非ヒト動物は、野生型Angptl8遺伝子を含有する野生型非ヒト動物(例えば、野生型齧歯類)と比較して、トリグリセリドレベルの増大を示す。
【0195】
簡潔に述べると、EDTA試験管内で、後眼窩網状組織からの操作されたAngptl8遺伝子(n=8)のために、野生型(n=9)及びホモ接合性マウスから非絶食状態で、静脈血が採取された。採取した血液を、4000rpmで10分間、遠心分離することにより、血漿が単離された。血漿は、抗ANGPLT8抗体を使用して、ELISAアッセイによりヒトANGPTL8の発現のために分析された。
【0196】
データは、ヒトANGPTL8が、ヒト化Angptl8遺伝子のために、ホモ接合性マウスの血漿内に分泌されたことを示した。特に、ヒトANGPTL8のタンパク質発現は、血液を採取したすべてのヒト化マウスに対し、平均して約400ng/mLであった。従って、実施例1によれば、操作されたAngptl8遺伝子を含有する齧歯類は、その血漿内にヒトANGPTL8を検出可能に発現(及び分泌)する。特に、ヒトANGPTL8のこのような発現(分泌)は、これらの動物において、齧歯類Angptl8調節エレメント(例えば、齧歯類Angptl8プロモーター)の制御下にある。
【0197】
別の実験では、非絶食状態で採取した、操作されたAngptl8遺伝子(上記のとおり)のための野生型及びホモ接合型マウスからの血漿も、血漿脂質レベルを決定するのに使用された。
【0198】
簡潔に述べると、血漿脂質(トリグリセリド、総コレステロール、低比重リポタンパク質[LDL−C]、高比重リポタンパク質[HDL−C])は、製造元の仕様書に従い、血清化学分析計ADVIA(登録商標)1800(Siemens)を用いて測定された。代表的な結果を
図5に記載する。
【0199】
図5に示すとおり、本明細書に記載の操作されたAngptl8遺伝子を有する齧歯類は、野生型齧歯類と比較して、トリグリセリドレベルの増大を示す。
【0200】
実施例3 非ヒト動物におけるヒトANGPTL8の組織発現
本実施例は、非ヒト動物(例えば、齧歯類)が、非ヒト動物の様々な組織内に検出可能なヒト(またはヒト化)ANGPTL8ポリペプチドを発現する(または分泌する)実施例1に従って、操作されたAngptl8遺伝子を含有することを示す。特に、以下に記載のとおり、操作されたAngptl8遺伝子を有する非ヒト動物は、肝臓及び脂肪組織にヒトANGPTL8の発現を示す。
【0201】
簡潔に述べると、RNA調製及びRNAseq読み取りマッピングが、再栄養状態で採取した、実施例1に記載の操作されたAngptl8遺伝子に対するホモ接合性マウス由来の組織を使用して、先に記載したように(Mastaitis,J.etal.,2015,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.112(6):1845−9)実施された。代表的な結果を
図6に記載する。
【0202】
図6に示すとおり、ヒトANGPTL8発現は、ヒト化Anptl8マウスの肝臓及び脂肪組織(例えば、白色脂肪、皮下及び褐色脂肪)を特定した。この実施例は、本明細書に記載のマウスAngptl8遺伝子の操作が、組織特異的な様式でヒトANGPTL8ポリペプチドの発現をもたらし、従ってインビボでトリグリセリドレベルを低減させるための抗ANGPTL8治療薬の有効性を決定するためのインビボ動物モデルを提供することを示す。
【0203】
実施例4 ANGPTL8調節因子のインビボ有効性
この実施例は、実施例1によるヒト化Angptl8遺伝子を含有するために改変された非ヒト動物(例えば、齧歯類)が、そのトリグリセリド低減有効性のためにAngptl8調節因子(例えば、抗ANGPTL8抗体)をスクリーニングするためのインビボアッセイに使用できることを示す。この例では、代表的な抗ANGPTL8抗体が、上昇したトリグリセリドを低減させるためのモノクローナル抗体治療法の有効性を決定するために、ホモ接合性マウスにおいて、ヒト化Angptl8遺伝子に対して、スクリーニングされる。
【0204】
簡潔に述べると、操作されたAngptl8遺伝子(上記のとおり)のためのホモ接合性マウスは、実験の5日前に採血され、トリグリセリドレベルに基づいて治療グループに(治療グループにつきn=5)選別され、それによりそれぞれのグループにわたってトリグリセリドレベルの平均値が等しくなるようにした。抗ANGPTL8抗体または対照(無関係の特異性を持つアイソタイプ一致のヒトIgG4対照)は、試験の0日目に皮下注射により10mg/kg用量で投与された。注射後4日目にマウスは採血され、血清トリグリセリドレベルが、ADVIA(登録商標)1800血清化学分析計(Siemens)により測定された。結果は、それぞれのグループのすべての試験された抗体につき、平均値±SEMとして表された。代表的な結果を
図7に記載する。
【0205】
図7に示す通り、抗ANGPTL8抗体治療法は、対照抗体と比較して、循環トリグリセリドレベルを顕著に減少させた。さらに、これらのデータは、実施例1に記載の操作されたAngptl8遺伝子を含有するマウスが、ヒトANGPTL8を発現し、上昇したトリグリセリドレベルの治療のためのスクリーニング治療薬に使用できると示唆している。まとめると、本開示は、本明細書に提供される非ヒト動物が、抗ANGPTL8抗体のトリグリセリド低減有効性を評価するためのインビボシステムを提供し、一部の実施形態では、高トリグリセリド血症のためのインビボ動物モデルを提供することを示す。
【0206】
均等
本発明の少なくとも一つの実施形態のこのような記載されたいくつかの側面を持つ、様々な変更、改変、及び改善を当業者であれば容易に思いつくことが理解されるはずである。このような変更、改変、及び改善は本開示の一部であることが意図され、本発明の精神及び範囲内であることが意図される。従って、前述の説明及び図面は例示のみとしてのものであり、本発明は以下の請求項によって詳細に記載される。
【0207】
請求項で請求項を改変するための「第一の」、「第二の」、「第三の」などの順序の用語の使用は、それ自体は一つの請求項要素の別の要素に対する優位性、先行、もしくは順序、または方法の行為が実施される時間的順序を暗示せず、特定の名称を持つ一つの請求項要素を(順序の用語の使用以外は)同じ名称を持つ別の要素から区別して請求項要素を区別するための標識としてのみ使用される。
【0208】
本明細書及び請求項で使用される場合、「a」及び「an」という冠詞は、そうでないことが明確に示されない限り、複数参照を含むと理解されるべきである。群の一つ以上の要素の間に「または」を含む請求項または記載は、そうではないことが示されるかまたはそうでなければ文脈から明らかでない限り、一つ、二つ以上、または群のすべての要素が、所定の生成物またはプロセスに存在する、用いられる、またはそうでなければ関連する場合に満たされるとみなされる。本発明は、群の正確に一つの要素が所定の生成物またはプロセスに存在する、用いられる、またはそうでなければ関連する実施形態を含む。本発明は、二つ以上、または群の要素全体が所定の生成物またはプロセスに存在する、用いられる、またはそうでなければ関連する実施形態も含む。さらに、本発明は、別途指定されない限り、または矛盾または不一致が起こることが当業者には明らかでない限り、変形、組み合わせ、及び記載された請求項の一つ以上からの一つ以上の限定、要素、句、記載用語などが、同じ基礎請求項に依存する別の請求項(または関連する任意のその他の請求項)に導入される並べ替えすべてを網羅することを理解すべきである。記載されたような要素が存在する場合(例えば、マーカッシュ群または類似の形式で)、要素の各サブグループも開示され、任意の要素を群から除去することができると理解されるべきである。当然のことながら、一般的に、本発明、または本発明の態様が特定の要素、特徴などを含むとして言及される場合、本発明のある実施形態または本発明の態様は、このような要素、特徴などから成る、または実質的にそれらから成る。簡潔にするために、これらの実施形態はすべての場合において、多くの言葉では本明細書に特に記載されていない。これも当然のことながら、本発明の任意の実施形態または態様は、特定の除外が明細書に列挙されているかどうかにかかわらず、請求項から明示的に除外される可能性がある。
【0209】
当業者であれば、アッセイまたは本明細書に記載されたその他のプロセスで得られた値に起因する一般的な標準偏差または誤差を理解するであろう。本発明の背景を説明し、その実践に関して追加的詳細を提供するための本明細書の出版物、ウェブサイト及びその他の参考資料は、参照により本明細書に組み込まれる。