特許第6843892号(P6843892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブレインラブ アーゲーの特許一覧

特許6843892解剖学的または生理学的状態データのクラスタリング
<>
  • 特許6843892-解剖学的または生理学的状態データのクラスタリング 図000002
  • 特許6843892-解剖学的または生理学的状態データのクラスタリング 図000003
  • 特許6843892-解剖学的または生理学的状態データのクラスタリング 図000004
  • 特許6843892-解剖学的または生理学的状態データのクラスタリング 図000005
  • 特許6843892-解剖学的または生理学的状態データのクラスタリング 図000006
  • 特許6843892-解剖学的または生理学的状態データのクラスタリング 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843892
(24)【登録日】2021年2月26日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】解剖学的または生理学的状態データのクラスタリング
(51)【国際特許分類】
   G16H 30/00 20180101AFI20210308BHJP
   A61N 5/10 20060101ALI20210308BHJP
   A61B 34/32 20160101ALI20210308BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   G16H30/00
   A61N5/10 P
   A61B34/32
   A61B5/00 G
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-563857(P2018-563857)
(86)(22)【出願日】2017年9月22日
(65)【公表番号】特表2019-535046(P2019-535046A)
(43)【公表日】2019年12月5日
(86)【国際出願番号】EP2017074066
(87)【国際公開番号】WO2019057295
(87)【国際公開日】20190328
【審査請求日】2018年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】514130426
【氏名又は名称】ブレインラボ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,クリス
(72)【発明者】
【氏名】ディウバンコフ,オレクシー
(72)【発明者】
【氏名】クレナー,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】モウリキ,ニコレタ
(72)【発明者】
【氏名】デーゲンハルト,マリオ
【審査官】 加舎 理紅子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2017−502439(JP,A)
【文献】 特開2003−323491(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0004267(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0122705(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0188507(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0196407(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 − 80/00
A61B 5/00
A61B 34/32
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが実行する医学的な患者データの処理方法であって、
a)患者に関する医療情報を記述する患者データが取得されるステップ(S11)を含み前記医療情報は、
−医療画像情報、及び
−医療画像情報の部分集合を定めるボクセルオブジェクト、
のうちの少なくとも1つを含んでおり、さらに、
b)前記患者データをクラスタリングするための少なくとも1つのクラスタリング規則を記述するクラスタ規則データが取得されるステップを含み、前記少なくとも1つのクラスタリング規則は、前記医療情報が生成された時点及び解剖学的または生理学的状態に基づいて前記医療情報をクラスタリングするための少なくとも1つの規則を含んでおり、
前記解剖学的または生理学的状態には、患者の病理を考慮した、特定の時点における患者の状態の特徴付けが含まれ、前記病理には、腫瘍が含まれ、前記解剖学的または生理学的状態は、腫瘍のサイズまたは転移の広がりのうちの少なくとも1つによって定められ、さらに、
c)患者の解剖学的身体部位の画像に基づくモデルを記述する地図データが取得されるステップと、
前記クラスタ規則データ、前記患者データ、及び前記地図データに基づいてクラスタデータが定められるステップ(S12)と、を含み、前記クラスタデータは、患者の前記解剖学的状態または前記生理学的状態の少なくとも一方に対する前記医療情報のクラスタリングを定める少なくとも1つのクラスタを記述し、さらに、
)前記クラスタデータによって記述される少なくとも1つの前記クラスタに対する、前記医療情報のクラスタリングの結果が定められるステップ(S13)を含み、該結果は、前記医療情報が医療環境で使用されるべきかどうかに関する指標を記述前記医療環境での使用は、前記クラスタリングの結果に基づいて医療装置を制御することを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
それぞれの前記クラスタは、前記医療情報の少なくとも1つの部分集合、例えば真部分集合、と1つの前記解剖学的または生理学的状態との関連性を記述することを特徴する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記クラスタリングの結果に基づいて前記医療装置を制御することは、
○放射線治療装置のビーム源または患者支持ユニット、
○放射線治療装置の(三次元走査装置またはサーマルカメラのうちの少なくとも1つ等の)撮像ユニット、
○医療処置を実行するためのロボット、
○前記医療情報を表示するための、画像誘導ナビゲーションシステムの表示装置、及び、
○脳深部刺激法用の電極または経頭蓋磁気刺激法用の装置
のうちの少なくとも1つの動作を制御することを含む、ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つのコンピュータの少なくとも1つのプロセッサで実行されたとき、または、少なくとも1つのコンピュータのメモリーにロードされたとき、請求項1からのいずれか1項に記載の方法を前記少なくとも1つのコンピュータに実行させる、コンピュータプログラム。
【請求項5】
請求項に記載のプログラムが保存されたコンピュータ可読なプログラムストレージ媒体。
【請求項6】
少なくとも1つのプロセッサ及びメモリーを含み、請求項に記載のプログラムが前記少なくとも1つのプロセッサ上で実行されるかもしくは前記メモリーにロードされて前記少なくとも1つのプロセッサ上で実行される、または、請求項に記載のプログラムストレージ媒体を含み、前記プログラムストレージ媒体に保存されたプログラムが前記少なくとも1つのプロセッサ上で実行される、少なくとも1つのコンピュータ。
【請求項7】
医療システム(1)であって、
a)請求項に記載の少なくとも1つのコンピュータ(2)、
b)少なくとも患者データを保存する少なくとも1つの電子データストレージ装置(3)、及び、
c)患者に対して医療処置を実施するための医療装置(4)、を含み、
前記少なくとも1つのコンピュータは、
−少なくとも1つのデータストレージ装置から少なくとも前記患者データを取得するための前記少なくとも1つの電子データストレージ装置に、並びに
求項からのいずれか1項に記載の方法を実行した結果に基づいて、前記医療装置の動作を制御するための制御信号を前記医療装置に対して発行するために、前記医療装置に、
動作可能に結合される、ことを特徴とする医療システム(1)。
【請求項8】
前記医療装置は、
治療用ビーム源及び患者支持ユニットを含む放射線治療装置を含み、
前記少なくとも1つのコンピュータは、請求項からのいずれか1項に記載の方法を実行した結果に基づいて、
−前記治療用ビーム源の動作、または、
−前記患者支持ユニットの位置、
のうちの少なくとも一方を制御するための制御信号を前記放射線治療装置に対して発行するために、前記放射線治療装置に動作可能に結合される、ことを特徴とする請求項に記載のシステム。
【請求項9】
前記医療装置は、
医療処置を実行するためのロボットを含み、
前記少なくとも1つのコンピュータは、請求項からのいずれか1項に記載の方法を実行した結果に基づいて、前記ロボットの動作を制御するための制御信号を前記ロボットに対して発行するために、前記ロボットに動作可能に結合される、ことを特徴とする請求項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者データを処理するためにコンピュータが実行する方法、これに対応するコンピュータプログラム、このプログラムを保存する非一時的プログラムストレージ媒体、このプログラムを実行するコンピュータ、並びに、電子データのストレージ装置及び上記コンピュータを含む医療システムに関連する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、画像セット及び他の治療関連データ(例えば、計画された対象、軌跡)のような利用可能な患者データをクラスタリングすることに関する。このクラスタリングは、データのそれぞれのクラスタが、患者の1つの特定の解剖学的または生理学的状態を記述し、かつその範囲内でユーザに最も関連のあるデータが自動的に検出されるように行われる。既知の方法では、利用可能なデータは、各患者に対して作成日またはそのデータを作成した装置(例えば、磁気共鳴スキャナー)に従って順序付けされる。画像セットは、それらが同じ調査に属するため、作成時点に従ってグループ化される場合もある。データのクラスタリングは、データを、そのデータが明確に関連付けられ、かつ他のデータから分離されるように、グループ化する方法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、治療計画、医療装置及び/または治療の制御のための患者データの効率的な選択を可能にすることを目的とする。
【0004】
本発明は、例えば画像誘導放射線治療のためのシステムとの関連において治療処置または外科的処置を容易にする構造化データを提供するために使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下に、本発明の態様、例及び例示的なステップ、並びにそれらの実施形態が開示される。本発明の様々な例示的な特徴は、技術的に有利かつ実行可能である限り、本発明に従って組み合わせることができる。
【0006】
(本発明の例の簡単な説明)
次に、本発明の特定の特徴を簡単に説明する。この説明は、本発明を、この節において説明される1つの特徴または複数の特徴の組み合わせのみに限定するものではない。
【0007】
開示される方法は、患者データの処理を含む。患者データは、画像データと非画像データの少なくとも一方を含むものであってもよい。この処理は、特定の時点における患者の状態を定める患者の解剖学的状態または生理学的状態の少なくとも一方に従って、患者データをクラスタリングするステップを含む。一例において、患者データは、病理学的データも含むものであってもよい。次いで、クラスタリングされたデータ(例えば、それぞれのクラスタ)は、例えばクラスタに含まれる患者データの少なくとも一部が、(特に、そのクラスタから、及び/または、さらに処理されるデータから)、除去されるべきかどうか判別するために、フィルタリングされる。これは、例えば、データ量を削減するため、及び/または、(例えば、医療処置の計画というフレームワークにおいて)ユーザに対して出力される適切なデータを抽出するために使用されるものであってもよい。フィルタリングの手順に、患者データに対して(例えば、患者データの種類に対して)適用可能なフィルタが含まれない場合、データのフィルタリングは停止される。
【0008】
(本発明の一般的な説明)
この節では、例えば、本発明の可能な実施形態を参照することによって、本発明の一般的な特徴を説明する。
【0009】
一般に、本発明は、第1の態様においては、コンピュータが実行する患者データの処理の医学的方法を提供することにより、上述した目的を達成するものである。この方法には、(例えばナビゲーションシステムの一部である)少なくとも1つのコンピュータの少なくとも1つのプロセッサが、少なくとも1つのプロセッサによって実行される次の例示的なステップを実行することが含まれる。
【0010】
1つの(例えば、第1の)例示的なステップにおいて、例えばDICOMサーバまたはPACS(画像保存通信システム:Picture Archiving and Communication System)から、患者データが取得される。患者データは、患者に関する医療情報を記述するものである。第1の態様に従う方法の一例において、医療情報は、ここでまたは上記で定義されるように、次の医療データセットのうちの少なくとも1つを含むか、または少なくとも1つから構成される。
−電子的に生成及び/または保存されたスクリーンショットまたはビデオクリップ。
−DICOMフォーマットで表された医療画像情報(例として、例えば患者の解剖学的身体部位を記述する、コンピュータX線断層画像、磁気共鳴断層画像、超音波画像、または放射線透過画像のうちの少なくとも1つのような医療画像)。
−例えば身体部位の領域(例えば医療画像情報の部分集合(例えば、真部分集合)を定めるボクセルオブジェクト)を表す医療非画像情報。
−例えば放射線治療または手術において使用可能な治療計画情報。
−装置を患者の身体に対して配置するための軌跡を記述する軌跡情報。
−患者の医療状況を記述する患者文書。
−点(例えば、注釈点またはランドマーク)。
−融合(すなわち、画像融合)または照合(すなわち、画像照合)。
−さらなる非DICOMデータ。
【0011】
1つの(例えば、第2の)例示的なステップにおいて、患者データに基づいてクラスタデータが定められる。クラスタデータは、患者の解剖学的状態または生理学的状態の少なくとも一方に対する医療情報のクラスタリングを定める少なくとも1つのクラスタを記述する。一例において、それぞれのクラスタは、医療情報の少なくとも1つの部分集合(例えば、真部分集合)と少なくとも1つの(例えば、唯一の)解剖学的または生理学的状態との関連性を記述する。2つのクラスタが同一の解剖学的または生理学的状態を記述こともあり得る。例えば、後述する時間的間隔の規則を適用する場合、2つのクラスタが存在するのは、それらが2つの異なる解剖学的または生理学的状態を記述すると想定されるからである。例えば、解剖学的または生理学的状態には、例えば患者の解剖学的状態(例えば、腫瘍または脳偏位があるか否か)または患者の生理学的状態(例えば、患者のECG、EEG、少なくとも1つの血液検査値、血圧、体温、少なくとも1つの特定のホルモンのレベル、または、少なくとも1つの免疫機能、のうちの少なくとも1つのような生理学的指標)のうちの少なくとも1つに関する、患者の病理を考慮した、特定の時点における患者の状態の特徴付けが含まれる。病理には、例えば、腫瘍が含まれ、解剖学的または病理学的状態は、例えば、腫瘍のサイズまたは転移の広がりの少なくとも一方によって定められる。
【0012】
1つの(例えば、第3の)例示的なステップにおいて、クラスタデータに基づいてフィルタリングされたデータが定められる。フィルタリングされたデータは、クラスタデータによって記述される少なくとも1つのクラスタの医療情報に対してフィルタ規則を適用した結果を記述する。この結果は、次のうちの少なくとも1つを記述する。
−医療情報に対してフィルタ規則が適用され得るかどうかに関する指標。
−医療情報がクラスタから除去されるべきかどうかに関する指標。
−医療情報が医療環境で使用されるべきかどうかに関する指標。
【0013】
医療環境において医療情報を使用することには、例えば、次のうちの少なくとも1つが含まれる。
−医療情報の表示装置への出力、
−(例えば、脳深部刺激または経頭蓋磁気刺激による解剖学的または生理学的状態の時間発展を定めるため、)脳深部刺激法または経頭蓋磁気刺激法、または、
−例えば次の装置のうちの少なくとも1つの動作を制御することを含む、フィルタ規則を適用した結果に基づく医療装置の制御。
○放射線治療装置のビーム源または患者支持ユニット
○放射線治療装置の撮像ユニット(例えば、三次元走査装置またはサーマルカメラ)
○医療処置を実行するためのロボット
○医療情報(例えば、医療画像情報)を表示するための、画像誘導ナビゲーションシステムの表示装置(画像誘導ナビゲーションシステムは、少なくとも1つの反射型または電磁共鳴型のマーカー装置の位置追跡の原理に基づいて動作するものであってもよい)
○脳深部刺激法用の電極または経頭蓋磁気刺激法用の装置
【0014】
第1の態様に従う方法の一例において、患者データをクラスタリングするための少なくとも1つのクラスタリング規則を記述するクラスタ規則データが取得され、クラスタデータは、クラスタ規則データに基づいて定められる。クラスタリングは、例えば、患者データの一部を、その患者データの一部が明確に関連付けられ、かつ患者データの別の一部から分離されるように、グループ化することを意味する。少なくとも1つのクラスタリング規則は、次の判定基準のうちの少なくとも1つに基づく(例えば、従う)医療情報のクラスタリングのための少なくとも1つの規則を含むものであってもよい。
−医療情報が生成された時点。
−医療情報の複数の部分集合(例えば、真部分集合または選言的部分集合の少なくとも一方)が生成された時点の間の時間的間隔。
−クラスタ範囲を定めるためのユーザによる手動入力。
−医療情報の種類。
−医療情報が関連する解剖学的領域。
−例えば病理の、解剖学的及び生理学的状態(これは、例えば地図(アトラス)を使用して、例えば医療情報に含まれる医療画像情報の自動画像分析によって、定められるものであってもよい)。
−(医療情報を使用するものであってもよく、または使用しないものであってもよい)他のプログラムによって生成されたデータ。
【0015】
第1の態様に従う方法のさらなる例示的なステップにおいて、地図(アトラス)データが取得される。地図データは、患者の解剖学的身体部位の画像に基づく一般モデル(すなわち、地図)を記述する。地図は、患者に特有のものであってもよく、または患者に特有のものでなくともよい。地図データは、例えば、患者データ(例えば、患者データに含まれる解剖学的身体部位の画像を記述する医療画像情報)と比較され、医療画像情報によって記述される解剖学的身体部位の画像と地図データによって記述される解剖学的身体部位の画像に基づく記述との間の偏差を定めることによって、例えば解剖学的または生理学的状態が定められる。このような偏差は、例えば、脳偏位または腫瘍のような病理の存在を定めるために使用されるものであってもよい。その代わりにまたはそれに追加して、地図データは、医療画像情報によって定められる医療画像中の解剖学的身体部位の位置を定めるために医療画像情報と比較されるものであってもよい。このようにして定められた位置は、例えば、少なくともこの位置によって定められる解剖学的または生理学的状態に従って患者データをクラスタリングするために、クラスタデータを定めるための基礎として使用することができる。
【0016】
患者データ(特に、医療画像情報)と地図データは、剛体画像融合アルゴリズムまたは弾性画像融合アルゴリズムのような画像融合アルゴリズムを医療画像情報及び地図データに適用することによって比較されるものであってもよい。地図は、一例において、解剖学的身体部位の少なくとも1つの領域の少なくとも1つの感度または機能を記述する電気生理学的地図であってもよい。この少なくとも1つの領域は、さらに具体的な例では、脳の機能領域であってもよい。これによって、地図データと医療画像情報との比較を、脳深部刺激法のための電極または経頭蓋磁気刺激法のための刺激装置の電極が、機能領域を刺激するために配置されるべき位置を定めるために使用することができる。このようにして定められた位置は、例えば、少なくともこの位置によって定められる解剖学的または生理学的状態に従って患者データをクラスタリングするために、クラスタデータを定めるための基礎として使用することができる。
【0017】
第1の態様に従う方法の一例において、クラスタデータまたは患者データの少なくとも一方をフィルタリングするための少なくとも1つのフィルタ規則を記述するフィルタ規則データが取得される。このフィルタ規則データに基づいて、フィルタリングされたデータが定められる。例えば、少なくとも1つのフィルタ規則は、次の判定基準のうちの少なくとも1つに基づいて(例えば、従って)医療情報をフィルタリングするための少なくとも1つの規則を含む。
−医療情報が生成された時点
−患者の解剖学的または生理学的状態(例えば、病理)
−患者を対象とする臨床的ワークフロー
−医療情報が関連する解剖学的領域
−医療情報が関連する、または医療情報が生成された医療用撮像モダリティ
−医療情報を含むデジタルデータセット(例えば、電子データセット)のサイズ(例えば、画像総数またはピクセル寸法の少なくとも一方)
−ユーザによる手動入力(例えば、データセットは、ユーザによって重要または関連なしのように評価され、これによってクラスタ中のデータセットの表示または非表示が生じるものであってもよい)
−手動入力の自動検証
【0018】
第1の態様に従う方法の一例において、フィルタリングされたデータに基づいて選択物データが定められる。選択物データは、例えば医療環境での使用のためにクラスタデータによって記述される少なくとも1つのクラスタにクラスタリングされた医療情報の選択物を記述する。例えば、クラスタデータによって記述される少なくとも1つのクラスタにクラスタリングされた医療情報の選択物を選択するための少なくとも1つの選択規則を記述する選択規則データが取得される。次いで、選択物データが、例えば選択規則データに基づいて定められる。一例において、選択規則は、フィルタ規則が適用された医療情報を選択するための少なくとも1つの規則を含む。選択規則は、次の判定基準のうちの少なくとも1つに基づいて(例えば、従って)医療情報を選択するために適したものであってもよい。
−医療情報の種類(例えば、治療計画)
−クラスタが関連付けられる時点(例えば、どのクラスタが最近の及び/または最新の時点に関連付けられているかを示す指標)
−患者に対して実施される予定の想定医療処置(例えば、放射線治療または手術)
【0019】
次いで、選択物データは、一例において、任意選択で(例えば、外部の)データ管理アプリケーションに転送され、後の使用のために保存される。後の使用には、例えば、医療情報を上述したように使用すること(特に、選択物データに基づいて使用すること)が含まれる。他の例において、医療情報は、選択物データをデータ管理アプリケーションに転送することなく、選択物データに基づいて使用されるものであってもよい。
【0020】
第1の態様に従う方法の一例において、少なくとも1つのクラスタリング規則、少なくとも1つのフィルタ規則、及び少なくとも1つの選択規則、のうちの少なくとも1つは、例えば医療情報について実行される機械学習によって生成される。
【0021】
第2の態様において、本発明は、少なくとも1つのコンピュータ(例えば、1つのコンピュータ)の少なくとも1つのプロセッサ(例えば、1つのプロセッサ)で実行されたとき、または、少なくとも1つのコンピュータ(例えば、1つのコンピュータ)の少なくとも1つのメモリー(例えば、1つのメモリー)にロードされたとき、第1の態様に従う上述した方法を少なくとも1つのコンピュータに実行させる、コンピュータプログラムに関する。その代わりに、またはそれに追加して、本発明は、例えば第1の態様に従う方法の任意のまたは全てのステップを実行するために適したコード手段を含むプログラム、例えば上述したプログラム、を表す情報を担う(物理的な、例えば電気的な、例えば工学的に生成された)信号波、例えばデジタル信号波、に関する。
【0022】
第3の態様において、本発明は、第4の態様に従うプログラムが保存された非一時的かつコンピュータ可読なプログラムストレージ媒体に関する。
【0023】
第4の態様において、本発明は、少なくとも1つのプロセッサ(例えば、1つのプロセッサ)及び少なくとも1つのメモリー(例えば、1つのメモリー)を含む、少なくとも1つのコンピュータ(例えば、1つのコンピュータ)に関し、第4の態様に従うプログラムは、このプロセッサ上で実行されるかまたはこのメモリーにロードされ、または、この少なくとも1つのコンピュータは、第5の態様に従うプログラムストレージ媒体を含んでいる。
【0024】
第5の態様において、本発明は、医療システムに関する。この医療システムは、
a)第4の態様に従う少なくとも1つのコンピュータ、
b)少なくとも患者データを保存する少なくとも1つの電子データストレージ装置、及び、
c)患者に対して医療処置を実施するための医療装置、を含み、
少なくとも1つのコンピュータは、
−少なくとも1つのデータストレージ装置から少なくとも患者データを取得するための少なくとも1つの電子データストレージ装置に、並びに
−医療情報に対してフィルタ規則を適用した結果、及び、プログラムがこの少なくとも1つのコンピュータに選択物データを定めさせる限り、選択された医療画像情報に基づいて、医療装置の動作を制御するため医療装置に対して制御信号を発行するために、医療装置に、
動作可能に結合される。
【0025】
第5の態様に従うシステムの一例において、医療装置は、治療用ビーム源及び患者支持ユニット(例えば、患者用寝台またはヘッドレストの少なくとも一方)を含む放射線治療装置を含む。そして、少なくとも1つのコンピュータは、医療情報に対してフィルタ規則を適用した結果、及び、プログラムがこの少なくとも1つのコンピュータに選択物データを定めさせる限り、選択された医療情報に基づいて、治療用ビーム源の動作または患者支持ユニットの位置の少なくとも一方を制御するため放射線治療装置に対して制御信号を発行するために、放射線治療装置に動作可能に結合される。
【0026】
第5の態様に従うシステムの一例において、医療装置は、医療処置を実行するためのロボットを含む。そして、少なくとも1つのコンピュータは、医療情報に対してフィルタ規則を適用した結果、及び、プログラムがこの少なくとも1つのコンピュータに選択物データを定めさせる限り、選択された医療情報に基づいて、ロボットの動作を制御するためロボットに対して制御信号を発行するために、ロボットに動作可能に結合される。
【0027】
(定義)
この節では、本開示の一部として、本開示で使用される特有の用語の定義が提供される。
【0028】
本発明に従う方法は、例えば、コンピュータが実行する方法である。コンピュータ(例えば、少なくとも1つのコンピュータ)は、例えば、本発明に従う方法の全てのステップまたは幾つかのステップ(すなわち、全てのステップよりも少数のステップ)を実行することができる。コンピュータが実行する方法の一実施形態は、データ処理方法を実行するためにコンピュータを使用することである。コンピュータが実行する方法の実施形態は、コンピュータが実行するデータ処理方法である。コンピュータが実行する方法の実施形態は、コンピュータが本方法の1つ、複数の、または全てのステップを実行するようなコンピュータの動作に関する方法である。
【0029】
コンピュータは、例えば電子工学的及び/または光学的に、データを(工学的に)処理するために、例えば、少なくとも1つの処理装置(プロセッサ)と例えば少なくとも1つの記憶装置(メモリー)とを含んでいる。処理装置は、例えば、半導体である物質または混合物、例えば少なくとも部分的にn型及び/またはp型の半導体からなる。この半導体は、例えばII族、III族、IV族、V族、VI族の半導体材料のうちの少なくとも1つであり、例えば(ドープされた)ケイ素及び/またはガリウム・ヒ素である。上述した算出(計算)ステップは、例えば、コンピュータが実行する。算出(計算)するステップ、または決定する(特定する、定める、判別する)ステップは、例えば、技術的方法のフレームワーク、例えばプログラムのフレームワーク、においてデータを決定する(特定する、定める、判別する)ステップである。コンピュータは、例えば、任意の種類のデータ処理装置であり、例えば電子データ処理装置である。コンピュータは、例えば、デスクトップ型パーソナルコンピュータ、ノートブック型パーソナルコンピュータ、ネットブック型パーソナルコンピュータ等の、一般的にコンピュータと見なされる装置であってもよい。但し、コンピュータは、例えば携帯電話機または埋め込み型プロセッサ等の、任意のプログラム可能な装置であってもよい。
【0030】
コンピュータは、例えば、複数の「下位コンピュータ」のシステム(ネットワーク)を含むものであってもよい。ここで、各下位コンピュータは、それ自体がコンピュータに相当する。「コンピュータ」という用語は、クラウドコンピュータ、例えばクラウドサーバを含む。「クラウドコンピュータ」という用語は、クラウドコンピュータシステムを含む。クラウドコンピュータシステムは、例えば、少なくとも1つのクラウドコンピュータからなるシステムを含み、例えばサーバファームのように、動作可能に相互接続された複数のクラウドコンピュータを含む。好ましくは、クラウドコンピュータは、ワールドワイドウェブ(WWW)のような広域ネットワークに接続される。このようなクラウドコンピュータは、全てワールドワイドウェブに接続された複数のコンピュータからなるいわゆるクラウド中に存在する。このような基盤構造は、「クラウドコンピューティング」に使用される。クラウドコンピューティングには、特定のサービスを提供するコンピュータの物理的位置及び/または構成についてエンドユーザが知る必要のない計算、ソフトウェア、データのアクセス及びストレージサービスが含まれる。この点において「クラウド」という用語は、例えば、インターネット(ワールドワイドウェブ)の暗喩として使用される。例えば、クラウドは、サービスの1つとして計算の基盤構造を提供する(IaaS)。クラウドコンピュータは、本発明に係る方法を実行するために使用されるオペレーティングシステム及び/またはデータ処理アプリケーションの仮想ホストとして機能するものであってもよい。クラウドコンピュータは、例えば、Amazon Web Services(登録商標)によって提供される Elastic Compute Cloud(EC2)である。
【0031】
コンピュータは、例えば、データの入出力及び/またはアナログ−デジタル変換を実行するためのインタフェースを含む。このデータは、例えば、物理的特性を表すデータ及び/または工学的信号から生成されたデータである。工学的信号は、特に、(工学的)検出装置(例えば、マーカーデバイスを検出するための装置)及び/または(工学的)分析装置(例えば、画像化の方法を実行する装置)であり、この場合、工学的信号は、例えば、電気信号または光信号である。工学的信号は、例えば、コンピュータにより受信または出力されたデータを表す。
【0032】
コンピュータは、好ましくは、表示装置に動作可能に結合される。表示装置は、コンピュータによって出力された情報を、例えばユーザに対して、表示することを可能にする。表示装置の一例は、拡張現実デバイス(拡張現実メガネとも呼ばれる)であり、これをナビゲーションのための「ゴーグル」として使用することができる。このような拡張現実メガネの特定の例は、グーグル社製のグーグル・グラス(登録商標)である。拡張現実デバイスは、ユーザ相互作用による情報のコンピュータへの入力と、コンピュータによって出力された情報の表示の両方に使用することができる。表示装置の別の例は、標準的なコンピュータ用モニターである。このモニターには、例えば、表示装置上に画像情報のコンテンツを表示するために使用される信号を生成するためのコンピュータからの表示制御データを受信するために、コンピュータと動作可能に結合される液晶ディスプレイが含まれる。このようなコンピュータ用モニターの特定の実施形態は、デジタル・ライトボックスである。このようなデジタル・ライトボックスの一例は、ブレインラボ社の製品であるBuzz(登録商標)である。モニターは、例えば携帯型の、可搬型のデバイスであってもよく、例えば、スマートホン、またはパーソナル・デジタル・アシスタント、または、デジタル・メディア・プレーヤーであってもよい。
【0033】
本発明のフレームワークにおいて、コンピュータプログラム要素は、ハードウェア及び/または(ファームウェア、常駐型ソフトウェア、マイクロコード等を含む)ソフトウェアによって実現される。本発明のフレームワークにおいて、コンピュータプログラム要素は、コンピュータプログラム製品の形をとるものであってもよい。コンピュータプログラム製品は、コンピュータが使用可能な、例えばコンピュータが読み取り可能な、データストレージ媒体として実現されるものであってもよい。このデータストレージ媒体には、指令実行システム上でまたは指令実行システムと関連して使用するために、このデータストレージ媒体内に具体的に表されている、コンピュータが使用可能な、特にコンピュータが読み取り可能なプログラム指令、「コード」、または「コンピュータプログラム」が含まれる。このような指令実行システムは、コンピュータであってもよい。コンピュータは、本発明に従うコンピュータプログラム要素及び/またはプログラムを実行するための手段を含むデータ処理装置、特に、コンピュータプログラム要素を実行するためのデジタルプロセッサ(中央処理装置またはCPU)を含み、さらに、任意選択で、コンピュータプログラム要素を実行するために使用されるデータ、及び/または、コンピュータプログラム要素を実行することによって生成されたデータを保存するための揮発性記憶装置(特に、ランダムアクセスメモリーまたはRAM)を含むデータ処理装置である。
【0034】
本発明のフレームワークにおいて、コンピュータが使用可能な、例えばコンピュータが読み取り可能な、データストレージ媒体は、指令実行システム、指令実行装置、または指令実行デバイス上で、または、これらのシステム、装置、デバイスと関連して使用するためのプログラムについて、それを含む、それを保存する、それと通信する、それを伝搬させる、またはそれを輸送することが可能な任意のデータストレージ媒体とすることができる。コンピュータが使用可能な、例えばコンピュータが読み取り可能な、データストレージ媒体は、例えば、電子的、磁気的、光学的、電磁的、赤外線、または半導体のシステム、装置、またはデバイスであってもよく、もしくは、例えばインターネットのような伝搬媒体であってもよいが、これらに限定されるものではない。コンピュータが使用可能なまたはコンピュータが読み取り可能なデータストレージ媒体は、プログラムが印刷された紙または他の適切な媒体ですらあってもよい。それは、例えば、紙または他の適切な媒体を光学的にスキャンすることによりプログラムを電子的に取り込み、次いで、適切な手段によりコンパイル、インタープリット、または、他の処理をすることが可能であるからである。好ましくは、データストレージ媒体は、不揮発性のデータストレージ媒体である。
【0035】
本明細書に記載されたコンピュータプログラム製品、並びに、任意のソフトウェア及び/またはハードウェアは、例示的な実施形態において、本発明の機能を実施するための様々な形をとるものである。コンピュータ及び/またはデータ処理装置は、特に、ガイダンス情報を出力するための手段を含むガイダンス情報装置を含むものであってもよい。ガイダンス情報は、例えば、視覚的指示手段(例えば、モニター及び/またはランプ)による視覚的な方法、及び/または、聴覚的指示手段(例えば、スピーカー及び/またはデジタル音声出力装置)による聴覚的な方法、及び/または、触覚的指示手段(例えば、振動要素または機器に組み込まれた振動要素)による触覚的な方法により、例えばユーザに対して、出力されるものであってもよい。本明細の目的に対して、コンピュータは工学的コンピュータであり、例えば工学的な(例えば触知可能な)構成要素、例えば機械的な構成要素、及び/または、電子的な構成要素を含むものである。本明細書にこのように記載された任意の装置は、工学的かつ例えば触知可能な装置である。
【0036】
「データの取得」という語句には、例えば、(コンピュータが実行する方法のフレームワークにおいて)コンピュータが実行する方法またはプログラムによってデータが決定されることが含まれる。データの決定には、例えば、物理量を測定し、その測定値を、例えばデジタルデータのような、データに変換すること、及び/または、そのデータをコンピュータにより計算すること、特に、本発明に従う方法のフレームワークにおいてデータを計算することが含まれる。例えば、「データの取得」の意味には、コンピュータが実行する方法またはプログラムが、例えば別のプログラム、該方法の先行するステップ、またはデータストレージ媒体からのデータを、例えばコンピュータが実行する方法またはプログラムによる後の処理のために、受け取ることまたは取り出すことも含まれる。本発明に従う方法において、取得されるデータの生成は、データの取得の一部であってもよいが、そうである必要はない。したがって、「データの取得」は、例えば、データを受け取るために待機すること及び/またはそのデータを受け取ることを意味する場合もある。受け取られたデータは、例えば、インタフェースを介して入力されるものであってもよい。「データの取得」は、コンピュータが実行する方法またはプログラムが、例えばデータストレージ媒体(例えば、ROM、RAM、データベース、ハードドライブ等)のようなデータ源から、または(例えば、別のコンピュータまたはネットワークから)インタフェースを介して、データを(能動的に)受け取るまたは取り出すためのステップを実行することを意味する場合もある。
【0037】
開示される方法または装置のそれぞれによって取得されるデータは、データストレージ装置中にあるデータベースから取得されるものであってもよい。このデータストレージ装置は、データベースとコンピュータとの間の、例えばデータベースからコンピュータへの、データ転送のために、コンピュータに動作可能に結合されるものである。コンピュータは、データを決定するステップのための入力として使用するためにデータを取得する。決定されたデータは、今度は、同じまたは別のデータベースに出力され、後の使用のために保存されるものであってもよい。このデータベースもしくは開示される方法を実行するために使用されるデータベースは、ネットワークデータストレージ装置またはネットワークサーバ(例えば、クラウドデータストレージ装置またはクラウドサーバ)、あるいはローカルデータストレージ装置(例えば、開示される方法を実行する少なくとも1つのコンピュータに動作可能に結合された大容量ストレージ装置)上に存在するものであってもよい。データは、取得ステップに先行する追加のステップを実行することによって、「使用のために準備される」ものであってもよい。データは、この追加のステップに従って、取得されるために生成されるものであってもよい。例えば、データは、(例えば、分析装置によって)検出またはキャプチャーされるものであってもよい。
【0038】
その代わりに、または、それに追加して、データは、追加のステップに従って、例えばインタフェースを介して入力されるものである。例えば、生成されたデータは、(例えばコンピュータに)入力されるものであってもよい。データは、(取得ステップに先行する)追加のステップに従って、本発明に従う方法またはプログラムのフレームワークにおいてそのデータが利用可能となるようにデータストレージ媒体(例えば、ROM、RAM、CD、及び/または、ハードドライブ)にデータを保存する追加のステップを実行することにより、準備されるものであってもよい。したがって、「データの取得」には、取得されるべきデータを取得するように及び/または準備するように、装置に指令することも含まれ得る。
【0039】
特に、取得ステップには、侵襲的手順は含まれない。この侵襲的手順は、身体に対する実質的な物理的干渉を意味し、医療の専門家によって実施されることを要するともともに、必要とされる専門的配慮と技能をもって実施された場合でも、健康に対する実質的な危険性を伴うものである。特に、データを取得すること、例えばデータを決定することには、外科的処置は含まれておらず、かつ、特に、人間または動物の身体を手術または治療を用いて処置するステップは含まれていない。本発明に係る方法によって使用される様々なデータを区別するために、データは、「XYデータ」等のように記載(または、参照)され、このデータが記述する情報(好ましくは、「XY情報」等と呼ばれる)の観点から定義される。
【0040】
医学分野において、撮像法(撮像モダリティ及び/または医療撮像モダリティとも呼ばれる)は、人の身体の解剖学的構造物(例えば、柔組織、骨、臓器等)の画像データ(例えば、二次元画像データまたは三次元画像データ)を生成するために使用される。「医療撮像法」という用語は、(有利には装置に基づく)撮像法(所謂、医療撮像モダリティ及び/または放射線撮像法)を意味するものとして理解されている。それらは、例えば、コンピュータトモグラフィー(CT)及びコーンビーム・コンピュータトモグラフィー(CBCT、例えばボリューメトリックCBCT)、X線トモグラフィー、磁気共鳴トモグラフィー(MRTまたはMRI)、従来のX線、ソノグラフィー及び/または超音波検査、並びに、陽電子放出トモグラフィーである。例えば、医療撮像法は、分析装置によって実行される。医療撮像法に適用される医療撮像モダリティの例は、Wikipediaで言及されているように、X線撮像法、磁気共鳴撮像法、医療用超音波診断法または超音波内視鏡検査法、弾性率測定法、触覚イメージング、サーモグラフィー、医療撮影、及び、陽電子放出トモグラフィー(PET)及び単一光子放射トモグラフィー(SPECT)のような核医学機能イメージングである。
【0041】
このようにして生成された画像データは、「医療画像データ」とも呼ばれる。分析装置は、例えば、装置に基づく撮像法において、画像データを生成するために使用される。撮像法は、特に医療診断のために使用され、画像データによって記述される画像を生成するために解剖学的身体を分析するものである。撮像法は、特に、人の身体中の病変を検出するために使用される。しかし、解剖学的構造物中の変化(例えば、構造物(組織)中の病変)の幾つかは、検出可能ではない可能性があり、したがって、撮像法によって生成された画像中で視認できない可能性がある。例えば、腫瘍は、解剖学的構造中の病変の例に相当する。腫瘍が成長すると、膨張した解剖学的構造物を示すといわれる。この膨張した解剖学的構造物は、検出可能ではない(例えば、膨張した解剖学的構造物の一部のみが検出可能である)可能性がある。例えば、原発脳腫瘍または悪性度の高い脳腫瘍は、造影剤が腫瘍に浸透するように使用された場合、通常、MRI走査で見ることができる。MRI走査は、撮像法の一例に相当する。このような脳腫瘍のMRI走査の場合、MRI画像中の(造影剤が腫瘍に浸透したことによる)信号強調部が、固形腫瘍塊を示すものと考えられる。したがって、この腫瘍は検出可能であり、特に、撮像法によって生成された画像で識別可能である。これらの「増感」腫瘍と呼ばれる腫瘍に加えて、脳腫瘍の約10%は走査で識別可能ではなく、例えば、撮像法によって生成された画像でユーザが見た時に視認可能ではないと考えられている。
【0042】
画像融合は、弾性画像融合または剛体画像融合であり得る。剛体画像融合の場合、二次元画像のピクセル及び/または三次元画像のボクセル間の相対位置は固定されている。一方、弾性画像融合の場合、相対位置は変化することができる。
【0043】
本出願において、「弾性画像融合」という用語の代わりに、「画像モーフィング(image morphing)」という用語も使用されるが、両者は同じ意味である。
【0044】
弾性画像変換(例えば、弾性画像融合の変換)は、例えば、1つのデータセット(例えば、例えば第1の画像のような、第1のデータセット)から別のデータセット(例えば、例えば第2の画像のような、第2のデータセット)への継ぎ目のない遷移が可能となるように設計される。この変換は、例えば、第1及び第2のデータセット(画像)のうちの一方が、例えば第1及び第2の画像のうちの他方における同じ場所に対応する構造物(例えば、対応する画像要素)が配置されるように、変形されるものである。第1及び第2の画像のうちの一方から変換された変形(変換)画像は、例えば、第1及び第2の画像のうちの他方と可能な限り類似する。好ましくは、最適な類似度が得られる変換を見つけるために、(数値的)最適化アルゴリズムが適用される。この類似度は、好ましくは、類似性の尺度(以下では、「類似尺度」ともいう)によって測られる。
【0045】
最適化アルゴリズムのパラメータは、通常、最適化パラメータとなるパラメータについての2つのステップの間の変化量を決定する。これらそれぞれのステップの結果は、例えば、変形場のベクトルである。この変形場を画像データに適用することによって、2つの画像の間の類似性が決定される。これらのベクトルは、最適化アルゴリズムによって最大の類似度が生じるように決定される。したがって、最大の類似度は、最適化アルゴリズムに対する条件、特に拘束条件を表す。ベクトルの後端は、例えば変換される第1及び第2の画像のうちの一方のボクセル位置にあり、ベクトルの先端は、変換された画像の対応するボクセル位置にある。好ましくは、これらの複数のベクトルは、例えば画像から全てのデータ点に対して準備される。好ましくは、変換(変形)に対する(他の)複数の拘束条件があり、これは、例えば、異常な変換(例えば、全てのボクセルが同じ位置に移動するような変換)を回避するためである。これらの拘束条件には、例えば、変換が正則であるという条件が含まれる。この拘束条件は、例えば、変形場(例えば、ベクトル場)の行列から計算されるヤコビ行列式が、ゼロよりも大きいことを意味する。また、これらの拘束条件には、変換(変形)された画像が自己交差しないという条件も含まれる。また、拘束条件には、例えば、画像と同時にかつ対応する態様で構造格子が変換される場合、構造格子が、そのどの位置でも折り重ならないという条件が含まれる。
【0046】
最適化問題は、例えば、反復により解かれる。この反復は、例えば最適化アルゴリズム、例えば一階の最適化アルゴリズムによって実行される。一階の最適化アルゴリズムは、例えば勾配降下アルゴリズムである。最適化アルゴリズムの他の例には、滑降シンプレックスアルゴリズムのような、微分を使用しない最適化アルゴリズム、または、広義ニュートン法に基づくアルゴリズムのような、高階の微分を使用するアルゴリズムが含まれる。最適化アルゴリズムは、好ましくは、局所的最適化を実行するものである。但し、複数の局所最適解が存在する場合、例えばシミュレーテッド・アニーリングまたは遺伝的アルゴリズムのような大域的アルゴリズムを使用するものであってもよい。線形最適化問題の場合には、例えばシンプレックス法を使用することができる。
【0047】
最適化アルゴリズムの各ステップにおいて、ボクセルは、例えば、特定の方向に特定の大きさで、類似度が増大するように移動される。この大きさは、好ましくは、所定の限界値よりも小さく(例えば、画像の直径の1/10、または1/100、または1/1000よりも小さい)、また、例えば、隣接するボクセル間の距離に略等しいかまたはそれよりも小さいものである。大きな変形は、例えば(反復の)ステップ数を増大させることにより実行することができる。
【0048】
決定された弾性融合変換は、例えば、第1のデータセット(第1の画像)と第2のデータセット(第2の画像)との間の類似度(または類似尺度。上記参照)を決定するために使用され得る。この目的のため、弾性融合変換の偏差及び恒等変換が決定される。偏差の程度は、例えば、弾性融合変換と恒等変換の行列式の差を決定することによって算出される。偏差が大きくなると、類似度が低下する。したがって、偏差の程度は、類似度を決定するために使用することができる。
【0049】
類似度は、例えば、第1のデータセットと第2のデータセットとの間の決定された相関に基づいて決定されるものであってもよい。
【0050】
本発明は、治療用ビームの制御の分野にも関連する。治療用ビームは、治療されるべき身体部位(以下、「治療部位」ともいう)を治療するものである。これらの身体部位は、例えば患者の身体の一部、すなわち解剖学的身体部位である。
【0051】
電離放射線は、放射線治療装置によって出射される放射線の一例であり、例えば治療の目的のために使用される。例えば、治療用ビームは、電離放射線を含むかまたは電離放射線からなる。電離放射線は、原子または分子から電子を解離させてそれらをイオン化するために十分なエネルギーを有する粒子(例えば、亜原子粒子またはイオン)または電磁波を含むか、またはこのような粒子または電磁波からなる。このような電離放射線の例には、X線、高エネルギー粒子(高エネルギー粒子ビーム)、及び/または、放射性元素から放出される電離放射線が含まれる。治療用放射線、例えば治療用ビームは、例えば腫瘍学の分野において、放射線治療で使用される。特に癌を治療するために、腫瘍のような病理学的構造物または組織を含む身体部位が、電離放射線を使用して治療される。したがって、腫瘍は解剖学的身体部位の例である。
【0052】
一例において、解剖学的身体部位の一般的な三次元形状を記述する(例えば「定義する」、より具体的には「表す」及び/または「である」)地図データが取得される。したがって、この地図データは、解剖学的部位の地図を表す。地図は、典型的には、複数のオブジェクトの一般モデルからなる。複数のオブジェクトの一般モデルは、全体として複雑な構造を構成する。例えば、地図は、複数の人体から(例えば、このような人体の画像を含む医療画像データから)収集された解剖学的情報から生成された、患者の身体(例えば、身体部位)の統計モデルを構成する。したがって、原理的には、地図データは、複数の人体の医療画像データの統計分析の結果を表す。この結果は、画像として出力されるものであってもよく、この場合、地図データは、医療画像データを含むか、または医療画像データと比較可能である。このような比較は、例えば、地図データと医療画像データとの間の画像融合を行う画像融合アルゴリズムを適用することによって実施することができる。この比較の結果は、地図データと医療画像データの類似尺度であってもよい。
【0053】
地図データは、医療画像データに含まれる画像情報(例えば、位置画像情報)と(例えば弾性画像融合アルゴリズムまたは剛体画像融合アルゴリズムを適用することによって)位置合わせ可能な画像情報(例えば、位置画像情報)を含む。これによって、例えば、地図データによって定義される解剖学的構造物に対応する医療画像データ中の解剖学的構造物の位置を決定するために、地図データが医療データと比較される。
【0054】
その解剖学的構造が地図データを生成するための入力として用いられる複数の人体は、有利には、例えば性別、年齢、民族、身体寸法(例えば、大きさ及び/または質量)、及び病態のうちの少なくとも1つのような共通の特徴を共有しているものである。解剖学的情報は、例えば人体の解剖学的構造を記述するものであり、例えば人体に関する医療画像情報から抽出される。例えば、大腿骨の地図は、大腿骨頭、大腿骨頚、大腿骨体、大転子、小転子、及び遠位端をオブジェクトとして含み、これらの全体で完全な構造が構成される。脳の地図は、例えば、終脳、小脳、間脳、脳橋、中脳、及び延髄をオブジェクトとして含み、これらの全体で複雑な構造を構成する。このような地図の1つの応用例は、医療画像の区画化(セグメンテーション)である。区画化において、画像データの点(ピクセルまたはボクセル)に位置合わせされた地図のオブジェクトを割り当て、それによって画像データを複数のオブジェクトに区画化するために、地図は医療画像と位置合わせされ、画像データが位置合わせされた地図と比較される。
【0055】
以下に、本発明の背景的説明を示すとともに特定の実施形態を表す添付図面を参照して、本発明が説明される。但し、本発明の範囲は、図面の文脈において開示される特定の特徴によって限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1図1は、第1の態様に従い方法の基本的フローチャートである。
図2図2は、2つの画像セットの間の時間的間隔を定めるクラスタリング規則を示す図である。
図3図3は、画像セットの手動によるクラスタリングを示す図である。
図4図4は、フィルタリングされたデータを定めるステップの例示的な実施形態を示す図である。
図5図5は、クラスタへのボクセルオブジェクトの追加を示す図である。
図6図6は、第5の態様に従うシステムを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図1は、第1の態様に従う方法の基本的なステップを示す。図1において、ステップS11は、患者データを取得することが含まれ、ステップS12には、クラスタデータを定めることが含まれ、ステップS13には、フィルタリングされたデータを定めることが含まれる。
【0058】
図2は、画像セット(画像データの集合)1及び画像セット2の2つの画像セットを第1のクラスタ1にクラスタリングし、画像セット3及び画像セット4の2つの(異なる)画像セットを第2のクラスタ2にクラスタリングすることを示す図である。これらの画像セットが生成された時点の間に存在する時間的間隔が、クラスタリング規則として定められている。画像セット1から画像セット4に対してこのような時間的間隔が定められる場合、時間的間隔が存在する2つの画像セットの間のクラスタ境界が定められる。すなわち、複数の画像セットは、この境界を使用してクラスタリングされる。4つの画像セットは、画像セットが生成された時点の間に少なくとも28日の時間的間隔が存在するかどうか、及び、存在する場合には、その時間的間隔がどこに存在するのかについて分析される。このような時間的間隔は、画像セット2が生成された時点と画像セット3が生成された時点との間に存在することが判別される。したがって、これらの4つの画像セットは、クラスタ1とクラスタ2の2つのクラスタにグループ化される。この際、1つのクラスタ(クラスタ1)中の最新の画像セット(画像セット2)と、他のクラスタ(クラスタ2)中の最古の画像セット(画像セット3)との間に、少なくとも28日の時間的間隔、したがってクラスタ境界が定まる。
【0059】
別の方法として、図3に示すように、クラスタ境界は、例えばユーザ入力によって、(例えば、キーボード、マウスもしくは任意の他のポインティングデバイスを使用して)、手動で定められるものであってもよい。
【0060】
クラスタリングのこの手順は、クラスタデータを定めることと同様である。
【0061】
クラスタリングの原理は、一群のクラスタリング規則が定められることである。この際、それぞれのクラスタリング規則は、一群のデータに対してそのデータが患者の同じ解剖学的または生理学的状態に属するのかどうかを定めることが可能なアルゴリズムである。これらの規則は、利用可能な患者データ、ユーザによる手動入力、及び、他のアプリケーション(例えば、ブレインラボ社のアプリケーション)によって提供されるかまたは病院情報システム(Hospital Information System:HIS)のような外部システムから提供されるデータのような他のデータ源を、全て入力として取るものである。一般に、任意の数の規則を適用することができる。
【0062】
クラスタリング規則の例は、次の通りである。
患者データを具現化する画像セットは、次のように、規則によって処理され、クラスタに選り分けられる。
・2つの引き続く画像セットの間の時間差(時間的間隔)が、指定された範囲(例えば、28日等の持続時間のしきい値。これは、固定値を取るものでも、または変動値を取るものであってもよい。この値は、疾病または解剖学的領域等の利用可能な情報に基づいて自動的に定めることができる)を超える場合、複数の画像セットが、異なるクラスタに分離される。この時間的間隔は、それが患者の解剖学的または病理学的状態に変化がもたらされるほど十分に長いという想定の下に、病理学に従って設定することができる。
・ユーザ入力によって、クラスタが分離されるか、または到着する(すなわち、生成される)全ての新規のデータに対する新規のクラスタが作成される。
・(同じ患者データ、例えばDICOMデータ、の集合または部分集合に対して実行される)別のアプリケーションによって、患者の状態の変化を表す医療情報が生成される場合もある。例えば、ナビゲーションソフトウェアは、患者に生じた解剖学的または生理学的状態の変化を示す情報を作成する。
・手術中に新規の画像データが作成され、ブラインラボ社のシステムに送信される。手術中に新規の画像データが作成されるという事実は、解剖学的または生理学的状態の変化を示す指標である。
・引き続く複数の画像セットが患者の様々な身体部位から作成される。他の解剖学的領域は、異なる状態と見なすことができる。
・外部システム(例えば、病院情報システム)からの情報を、患者の解剖学的または生理学的状態の変化が生じたという情報を(例えば、HL7標準に準拠するメッセージを介して)取得するために使用することができる。
・(同じ患者データ、例えばDICOMデータ、の集合または部分集合に対して実行される)別のアプリケーションによって、画像セットの内容が分析され、患者の解剖学的または生理学的状態が変化したことが判別される場合もある。
【0063】
患者データを具現化する非画像データ(例えば、ボクセルオブジェクト、軌跡、治療計画、及びその他のデータ)は、例えば、次のように規則によって処理される。
・データは、適用可能な箇所において画像セットに関連付けられる。例えば、ボクセルオブジェクトのような解剖学的身体部位の少なくとも1つの領域を記述するデータは、それらが区画化される箇所において画像セットに関連付けられる。ボクセルオブジェクトの作成日は考慮されない。データは、それが関連付けられた画像セットのクラスタに入れられる。
・治療計画は、他の一群のデータを参照する。治療計画中で参照される最新の作成日を備えた画像セットは、関連付けられた画像セットと見なされ、治療計画は、この画像セットが入れられるクラスタに入れられる。あるいは、治療計画中で参照される既定の(但し、必ずしも最新ではない)作成日を有する画像セットが、関連付けられた画像セットとみなされる。
・治療計画が、その参照データの全てが取得される前に取得される場合、治療計画が入れられるクラスタについて決定可能となるように全ての参照データがクラスタリングされるまで待つために、取得が保留される。
【0064】
1つのクラスタにグループ化された一群のデータに対して、フィルタ(すなわち、少なくとも1つのフィルタ)が適用される。これは、フィルタリングされたデータを定めることに対応する。フィルタは、そのクラスタ中の個別のデータ項目ごとに、それがユーザに対して表示されるか否か、または、このことがこのフィルタでは定められないかどうかを定める。幾つかのフィルタを続けて適用することもできる。フィルタは、クラスタからのデータを入力として取り、全ての利用可能なデータに対して作用させることができる。
【0065】
クラスタリング後の患者データのフィルタリングは、例えば、次のようにして実行される。
−1つのクラスタ中に結果として生じる全てのデータは、一群のフィルタ規則に従ってフィルタリングされる。
−1つのクラスタ中の一群のデータをフィルタリングし、可視的なデータの量(例えば、表示されるデータの量)を、治療計画または医療装置の制御を続けるためにユーザにとって最も関係する可能性の高いものに低減する。
−1つのフィルタ規則の結果は、クラスタ中にデータを残すか、またはデータを除去するかという決定、若しくは、それがまだ決定できず、別のフィルタ規則によって決定する必要があるという決定である。
−フィルタ規則は、次のうちの少なくとも1つを決定用入力として取るものであってもよい。
○ユーザにより手動で選択された、データの表示または非表示がもたらされる(肯定的または否定的評価の)データ
○クラスタ中の既存のデータに保存された情報を情報テーブルと一致させ、最もよく一致するデータを選択する、情報テーブルに基づく発見的方法(情報テーブルには、例えば画像サイズ、画像数、画像モダリティ、解剖学的領域、疾病情報、及びこれらの全ての間の関係を含めることができる)。
○臨床的目的(ワークフロー):ユーザが現在作業しているワークフローに応じて、画像セットの種類及び様々なボクセルオブジェクトの種類が適切となる。
【0066】
図4には、クラスタに対するフィルタリングの実行の一例が示されている。一群のフィルタ規則(例えば、フィルタ規則1、フィルタ規則2、フィルタ規則3)が取得され、1つのクラスタが取得される。このクラスタは、画像セット1、画像セット2、画像セット3、ボクセルオブジェクト、及び軌跡を含み、さらに医療データセットを含んでいてもよい。それぞれのデータ(すなわち、それぞれのクラスタ)に対して、ステップS21及びS22において、それぞれのクラスタに対してフィルタ規則のうちの1つが既に処理されたかどうかについて、一群のフィルタ規則が分析される。そうであると判別された場合、フィルタリング手順は、ステップS28において停止する。最後のフィルタ規則がそれぞれのクラスタデータに関して処理されてないと判別された場合、ステップS23において、次のフィルタ規則が取得され、ステップS24において、クラスタデータに適用される。次いで、このフィルタ規則が、クラスタデータが決定可能(すなわち、そのクラスタデータに適用可能)かどうかが判別される。フィルタ規則がそれぞれのクラスタデータに適用されない場合、この方法は、次のフィルタ規則を選択して、再びステップS22から実行開始するように復帰する。フィルタ規則がそれぞれのクラスタデータに適用される場合、ステップS26において、フィルタの対象となったデータをクラスタ中に留めるかどうかが判別される。ステップS26において、データにフィルタ規則を適用することによって、このデータをクラスタ中に留めないことが決定された場合、そのデータは、ステップS27において、クラスタから除去される。データをクラスタ中に留めることが決定された場合、フィルタリング手順は、ステップS28において停止する。
【0067】
一例において、選択規則は、一群のデータに対して適用され、そのデータが一時的作業セット中に選択されるかどうかが決定される。これは、選択物データを定めることに相当する。
【0068】
自動選択または手動選択に応じて、クラスタリングされかつフィルタリングされたデータの部分集合は、次のアプリケーションに転送される。次のアプリケーションは、リンクを保存する中央データ管理ソフトウェアまたは医療装置を直接制御するアプリケーションであってもよい。
【0069】
この方法は、次の判定基準のうちの少なくとも1つに従って事前選択する任意選択のステップを含むものであってもよい。
−クラスタリング規則及びフィルタリング規則の出力は、データの部分集合に明確に低減するデータのグループを定める。
−そのデータに対して、特定の一群のデータを一時的作業セット中に選択するフィルタ規則が適用可能である。一時的作業セットは、そのデータについて他のアプリケーションで作業を継続するために使用される。選択規則の例は、次の通りである。
○(日付に基づく)最新のクラスタに自動保存された治療計画が含まれる場合、この治療計画が選択される。
○最新のクラスタに1つの治療計画が含まれる場合、その治療計画が選択される(1より多くの治療計画が含まれる場合、最新の治療計画が選択される)。
○最新のクラスタに現在の治療の種類に一致する特定の種類の治療計画が含まれる場合、この治療計画が選択される。
○クラスタ中の可視的な一群のデータ中に治療計画が存在しない場合、最新のクラスタから全ての可視的なデータが選択される。
【0070】
第1の態様に従う方法の上述した例は、次のように要約し得る。
−クラスタ規則を適用及び結合することによって、患者の同一の解剖学的または生理学的状態に関連すると見なされる一群のデータを定める。1つの解剖学的または生理学的状態に対するデータのそれぞれのクラスタは、1つのクラスタとして表示され得る。
−1つのクラスタの全てのデータから、備えられた一群のフィルタを適用することによって、初期的に、ユーザがさらなる治療計画または医療装置の制御に使用するために最も適切なデータのみが表示され得る。
−一群の表示されるデータは、ユーザに対する提案として、その一群のデータを使用した作業を継続するために一時的作業セット中に選択され得る。
【0071】
患者データは、次のうちの少なくとも1つを含むか、または次のうちの少なくとも1つから構成されるものであってもよい。
−少なくとも1つの画像セット(例えば、CT、MR、X線、PET)、少なくとも1つのスクリーンショット、または少なくとも1つのビデオクリップ。
−画像セットに関連付けられた治療関連データ(例えば、少なくとも1つのボクセルオブジェクト(図5に例示するように、画像セットに追加されるものであってもよい)、少なくとも1つの軌跡、少なくとも1つの点、少なくとも1つの文書、または少なくとも1つの繊維束、のうちの少なくとも1つ)。
−例えば一群のデータを参照する少なくとも1つの治療計画。ユーザは、一群の参照情報を保存するために治療計画を明示的に保存しているものであってもよい。
−自動保存された治療計画。この治療計画は、例えば、(例えば最新の作業セットのように)ユーザによって能動的に作成されることなく、ユーザによって使用された一群のデータのうちの最新の選択物を保存するために同じ一群のデータまたはその部分集合に対して作業する別のアプリケーションによって保存される。
【0072】
全ての特徴を提供するためにシステム上で実行されるアプリケーションは、例えば、次の通りである。
−患者情報に基づいて、例えばブレインラボ社のアプリケーション等のアプリケーションによる要求に応じて、患者データを提供するデータ源、
−データ源によって準備されかつ管理される一時的作業セット。ブレインラボ社のアプリケーション等のアプリケーションは、患者データへの参照情報を他のアプリケーションに通信するために、一時的作業セットにアクセスして患者データの読み取り及び書き込みを実行することができる。
−データ源により供給されるデータに対してクラスタリング規則、フィルタ規則、及び選択規則を実行するプログラム。
【0073】
第1の態様に従う方法及びその方法の上述した例のさらなる特徴は、例えば、次のようなものであってもよい。
−処理されたデータは、一度に利用可能なものでなくともよい。データは、患者データを次々に提供するデータ源からシステムに受け入れられ、システムに受け入れられると直ちに処理される。その順序は任意である。既に利用可能なデータは、データ源から転送され、これには数秒から数分かかる。データは後の任意の時間にシステムに受け入れられるものであってもよい。この場合、データが利用可能となったときにデータ源から取得される。
−画像セット(スクリーンショットを含む)は、作成日付によって順序付けられる。外部からの契機によって、新規のクラスタが作成されるものであってもよい。初期的に、処理された第1の画像セットを使用して作成された1つのクラスタが存在する。
−クラスタは、クラスタ中のデータの開始から終了までの時間範囲を定める時間範囲を有する。複数のクラスタの時間範囲は、重なり合わない。
−事象が特定の時点を記述する。これは、この事象が既にクラスタ中に入れられたデータの間にある時点を有する場合、全ての受け入れられるデータに対して新規の追加されるクラスタが作成されるか、または既存のクラスタが2つに分割されることを意味し得る。
−全てのクラスタリング規則、フィルタ規則、及び選択規則は、固定された集合ではない。利用可能な新規の情報または知識に基づく新規の規則を作成することができる。
−多くの規則は、ロジックを変更するのではなく決定をするために使用される実際の値を変化させるパラメータ(例えば、新規のクラスタを作成するための日にち毎の時間的間隔)に関する挙動が構成され得るように、作成することができる。
−第1の態様に従う方法の全ての部分(例えば、クラスタリング、フィルタリング、及び/または選択/事前選択)は、特徴を記述するパラメータが、自動的に定まり、かつ利用可能な一群のデータ及び以前の使用状況の特徴を分析する(機械学習)ことによって経時的に変化するように、作成することができる。機械学習アルゴリズムは、この方法の結果の品質を定めるために、全ての使用状況の統計データ及びデータの利用可能な情報を使用するように適用することができる。結果の品質は、例えば、ユーザがそのタスクを達成するために必要な時間、またはタスクを達成するために必要な特定のユーザ相互作用の量によって、測ることができる。言い換えれば、パラメータの変更によって、全使用時間の短縮が生じ、データ選択タスクを完了するために必要なクリック数の低減が生じれば、その変更は、品質を改善するものと見なすことができる。
−第1の態様に従う方法は、同じ解剖学的または生理学的状態に関連付けられたデータを発見し、この一群のデータ内の特定のデータをフィルタリング及び選択することを目的とする。解剖学的または生理学的状態は、一群のデータがユーザに対して適切であることを判別するための、現在使用される既知の最良の判定基準である。全体的な目的は、ユーザに対して最も適切な一群のデータを選択することである。
【0074】
一例において、データをクラスタリング、フィルタリング(及び事前選択)する機序の結果は、ワークフローにおける次のステップに対する入力である。次のステップは、例えば、次のように述べることができる。
−ロボットアーム等のロボットのアプリケーションが選択されたデータを使用し、そのデータが軌跡オブジェクトを含むかどうか判別するものであってもよい。ロボットアームは、軌跡の方向に従って自らを位置決めることができる。
−放射線治療のための位置決めシステム(例えば、ExacTrac)は、結果の画像セットを基準画像として使用して、治療のために患者を位置決めするものであってもよい。
−手術用の画像誘導ナビゲーションシステムは、結果データの画像セットを使用し、それらをユーザに対して表示する。
−手術計画/ナビゲーション。
−脳深部刺激法。
−経頭蓋磁気刺激法。
−外部のデータ管理ソフトウェアにおける保存及び/またはリンク作成。
【0075】
第1の態様に従う方法の一態様は、データのクラスタのそれぞれが、患者の1つの特定の解剖学的または生理学的状態を記述するように、利用可能な患者データ(画像セット、及び例えば計画された対象、軌跡等の他の治療関連データ)をクラスタリングすること(すなわち、データが明確に関連付けられ、かつクラスタリングされた他のデータから分離されるように、データをグループ化すること)である。
【0076】
図6は、第5の態様に従う医療システム1を模式的に示す図である。このシステムは、全体として符号1により示されており、コンピュータ2、少なくとも患者データを保存するための電子データストレージ装置(例えば、ハードディスク)3、及び医療装置4(例えば、放射線治療装置)を含む。医療システム1の構成要素は、本開示の第5の態様に関連して上述した機能及び特性を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6