【課題を解決するための手段】
【0004】
第一の形態に従い、本発明は、車の前方向直進移動に相応する中央位置を有するステアリングハンドルを車の車輪に作用可能に接続するステアリング機構と、ステアリング機構と作用可能に接続された電気モータと、ステアリング機構の一部分により伝達されるトルクを表示するトルク信号を発生させ得るようにしたトルク信号生成器と、ステアリングハンドル又はステアリングコラムの角度位置を表示するコラムの位置信号を発生させるコラムの位置信号生成器と、感知手段により発生された信号を受け取ると共に、モータによりステアリング機構に加えるべきトルクを表すトルク要求信号を発生させ得るようにした信号処理装置とを備える電力支援式ステアリングシステムであって、信号処理手段は、トルク信号に依存する入力信号を受け取ると共に、支援トルク信号を出力する第一の信号処理回路であって、該第一の信号処理回路の入力と出力との間の関係はブースト曲線により規定される、前記第一の信号処理回路と、
使用時、ステアリングハンドルが中央位置から離れる移動動作の期間の後、車のステアリングハンドルが中央位置に向けて移動復帰する事象のとき、第一の処理回路の入力信号と出力信号との少なくとも一方に対して追加的なオフセットトルクを提供する第二の信号処理回路であって、ステアリングハンドルが中央位置から離れる事象のとき、追加的なオフセットトルクが減少し又は加えられないようにした、前記第二の信号処理回路と、
支援トルク信号を処理して、トルク要求信号を発生させ得るようにしたトルク要求信号生成回路とを含む、上記の電力支援式ステアリングシステムを提供する。
【0005】
このため、本発明は、ステアリングハンドルの規定された動作に相応してモータからの追加的な支援トルクの量を加える。当該出願人は、かかる規定された範囲は、運転者が一
定半径の曲がりに差し掛かったことの確実なインジケータであることを知見した。中央位置から離れる最初の動作は、曲がりに差し掛かったときのステアリングハンドルの負荷増加に相応し、中央に向けて移動復帰する動作は、ステアリングの負荷増加を感じて、運転者がステアリングハンドルに加える力を弱めるときに生ずる。実際上、この戻りは、コラム角度の1又は2度又はそれ以下の非常に小さい角度であるが、一定のカーブにて運転するとき、ほぼすべての運転者にて、運転者が明確には認識しないものの生ずる。
【0006】
追加的なオフセットトルク又は「ホールディング」トルクは、運転者がカーブの走行状態を保つことを助け、カーブを曲がるときの車の動作からステアリングに加わるねじれ力に対抗するため加える必要のあるトルク量を軽減する。実際上、運転者がカーブに入った(運転者が加えるステアリング角度を僅かに小さくすることにより表示される)後、この力を加えることにより、運転者はほぼ気付かずに進むであろう。このため、カーブに差し掛かるとき、ステアリング負荷の増加の感触を損なうことなく、運転者に要求される労力を軽減し、しかも、良好なステアリング感触を保つ。
【0007】
該信号処理手段は、中央に向けて移動復帰するステアリング移動から、中央から離れる移動動作への移行を検出し、また、ステアリングが中央から離れる移動動作のとき、オフセットトルクが零に達する迄、そのオフセットを小さくし、その後、ステアリングが中央から更に移動するとき、零オフセットトルクを加え得るようにすることができる。
【0008】
オフセットトルクは、直線的に(linearly)に小さくすることができる。
【0009】
信号処理は、ステアリングが中央から離れる移動動作から中央に向けて移動復帰する動作への移行を検出し得るようにすることができ、また、ステアリングが中央に向けて移動復帰するとき、オフセットトルクが予定したオフセットトルク値に達する迄、そのオフセットトルクを直線的に増加させ、その後、ステアリングが中央に向けて更に移動復帰するとき、トルクマップに従うようにすることができる。
【0010】
オフセットトルクは、直線的に増加させることができる。オフセットトルクは、ステアリングが中央から移動復帰するとき、減少する率と等しい率にて、また、その逆の率にて増大させることができる。
【0011】
ステアリングが中央に移動復帰するとき、マップに達するよう、又はオフセットトルクが零に到達するのに十分にステアリングコラムが動かないならば、ステアリングが移動するとき迄、勾配を付けて規定されたオフセットトルクの使用が続けられよう。
【0012】
勾配を付けた変化は、車の速度と無関係であり、また、コラムのトルクと無関係とすることができる。また、加えられたオフセットトルクの量は、トルクセンサが測定したコラムのトルクと無関係にすることもできる。
【0013】
このため、信号処理回路は、ステアリング角度の関数として、オフセットトルクを徐々に勾配を付けて増加及び減少させることができる。このことは、ステアリングに対して極めて反復可能な感触を与える。
【0014】
信号処理手段は、ステアリング移動の方向の変化を検出し、また、規定された時間間隔にてステアリング位置の値を保存し、かつ、現在の値を従前の値と比較することにより、検出することができる。
【0015】
第一の信号処理手段は、また、所望の支援トルクを入力信号値に対してマッピングするステップを備え、利得は入力信号値の増加と共に直線的に又は非直線的に増大するブース
ト曲線を使用することができる。入力信号の値は、典型的に、コラムトルクとし、又は適当な場合、コラムトルクに追加的なトルク量をブラスした値に等しくする。装置によって発生された支援トルクは、ブースト曲線からの出力値とし、又はブースト曲線の出力に加えた任意の追加的なオフセットトルクをその値にプラスした値の何れかであろう。勿論、最終的な支援トルク値を得るため、信号の更なる処理を行うことができる。
【0016】
ブースト曲線の前に追加的な量の保持トルク又はオフセットトルクが加えられた場合、このトルクは、ブースト曲線に加えられる入力信号の値を増大させ、この場合、その増大した入力信号は、ブースト曲線によりブーストされよう。効果として、ブースト曲線は、実際に存在するよりも「大きいコラムトルクを感得し」、次に、実際に加えた値よりも大きいトルクを運転者がコラムに加えたかのようにブースト曲線は機能し、より大きい支援力を提供する。
【0017】
追加的なオフセットトルクがブースト曲線の後に加えられたとき、追加的なトルクは、ブースト曲線からの信号の出力値を増大させ、モータトルクの要求信号を発生させるために使用される改変した支援トルク信号を発生する。各場合にて、真の効果は、運転者により加えられた所定のトルクに対してモータするにより加えられたトルクの値を増加させ、従って、カーブにてステアリングハンドルを保持するために運転者が加える必要のあるトルクの量を軽減することである。
【0018】
また、第二の処理手段は、ある量のオフセットトルクを入力信号又は出力信号若しくはその双方に加え得るようにすることができ、各場合にて、加えられる量は、角度位置信号の値の関数とすることができる。このことにより、我々は、この量はコラムの位置と共に変化すると考える。このことは、ブースト曲線に対する入力及びブースト曲線からの出力信号に対して異なる量のオフセットトルクを加えることができることである。各場合にて、オフセットは、トルク信号に追加的に加えることができる。
【0019】
第二の信号処理は、追加的なオフセットトルクを入力信号にのみ、出力信号にのみ、又は入力信号及び出力信号の双方に加えることができる。
【0020】
このトルクがブースト曲線の入力信号及び出力信号に加えられる場合、その各々に加えられる、追加的なトルクの量は、車が低速度のとき、比較的より多くのオフセットトルクが入力信号に加えられ、出力信号に加えられるトルクは少なく、支援トルクの所定の増加を実現し、また、より高速度のとき、比較的より多くのオフセットトルクが出力信号に加えられ、入力信号に加えられるトルクは少なく、支援トルクにて所定の同一の増加を実現するようにマッピングされよう。
【0021】
このため、該装置は、車の速度を表示する出力を発生する車の速度センサを含むことができ、また、第二の信号処理回路は、車の信号を受け取りかつ追加的なブースト力を車の速度信号の関数である入力又は出力及び又はその双方に加え得るように配置することができる。
【0022】
第二の処理手段は、閾値速度以下のとき、追加的な保持トルクをブースト曲線の入力に加えるが、ブースト曲線の出力には加えず、また、閾値以上のとき、追加的な保持トルクをブースト曲線の出力に加えるが、閾値以上のとき、入力には加えない。
【0023】
当該出願人は、低速度のとき、追加的なトルクを入力に加えることは、幾つかの場合に有益であり、それは、特に、ブースト曲線が中央位置に近い死帯域を有する場合、ステアリングが中央に移動復帰する能力に与える効果が最小であるからであることを知った。他方、我々は、ブースト力を出力に加えることは、より高速の車の運転のとき、有益であり
、それは、このことは、より高速の車の速度のとき、より重要である、戻り特徴の直線性(linearity)を向上させることができるからであることを知った。
【0024】
第二の処理回路は、オフセットトルクに対するステアリング角度位置の計画したマップに従って入力(又は出力)に追加すべき追加的なオフセットトルクの大きさを決定することができる。
【0025】
第二の信号処理手段は、ステアリングが少なくとも設定した量だけ中央から離れたならば、追加的なトルクのみを加えることができ、ステアリングハンドルの動作方向に関係なく、追加的なトルクが加えられない死帯域を中央位置付近に形成することができる。これと代替的に、この量は、あらかじめ規定した角度範囲にわたって連続するようにしてもよい。このことは、運転者がカーブに差し掛かったこと、及び保持支援力が適正であることのより確実な確証を提供する。
【0026】
支援トルク信号は、信号処理手段による更なる処理を受け、トルク要求信号を発生させるために使用される全体的な支援トルク信号を提供することができる。典型的に、該装置は、支援トルク信号を1つ又はより多くの追加的なトルク成分(例えば、減衰、自動中心決め)と組み合わせることにより、トルク要求信号を生成するであろう。
【0027】
トルク信号生成器は、ステアリングコラム又は該コラムに装着した別の機械的な構成要素と接続された単一のセンサを備えることができる。
【0028】
該装置は、拡大ファクタ又はブースト曲線を規定する関数及び(又は)任意のルックアップテーブルが保存される電子メモリ領域を含むことができる。
【0029】
信号処理装置は、メモリ領域内に保存されたプログラム指令を実行するプロセッサにより具体化することができる。この指令は、プロセッサをして、信号処理装置の異なる補助装置を規定する、多数の個別のステップ又機能を実行させることができる。しかし、デジタル論理ゲート、補助ユニットの各々を形成する論理ゲートグループのような離散型の電子構成要素を使用して信号処理装置を具体化することが可能である。
【0030】
該装置は、トルク要求信号を受け取と共に、モータ駆動ステージに適正な信号を加え、モータが要求されたトルクを出力するようにするモータ駆動回路を含むことができる。該駆動ステージは、典型的に、ブリッジ回路を含むであろう。
【0031】
第二の形態に従って、電力支援式ステアリングシステムを作動させる方法であって、ステアリング機構の一部分により伝達されるトルクを表示するトルク信号を生成するステップと、
ステアリングハンドル又はステアリングコラムの角度位置を表示するコラムの位置信号を発生するステップと、
モータによりステアリング機構に加えるべきトルクを表示するトルク要求信号の1つの成分を含む支援トルク信号を前記信号から発生するステップとを備え、
前記支援トルク信号を発生するステップは、
入力信号と出力信号との間の関係を規定するブースト曲線を用いて、トルク信号に依存して、入力信号を処理するステップと、
ステアリングハンドルが中央位置から離れる移動動作期間に続いて、車のステアリングハンドルが中央位置に向けて移動復帰する事象にて、入力信号及び出力信号の少なくとも一方に対して追加的なオフセットトルクを加えるステップであって、ステアリングがその後に、中央位置から離れるように動き始める事象にて、この追加的なオフセットトルクは減少し又は加えられないようにする前記追加的なオフセットトルクを加えるステップとを
備える、前記電力支援式ステアリング機構を作動させる方法が提供される。
【0032】
該方法は、オフセットトルクを入力信号及び出力信号の双方に加えるステップを備えることができる。このステップは、追加的なトルクを入力信号又は出力信号に追加するステップを備え、又は入力信号又は出力信号を増倍することにより、1.0よりも大きい利得となるようにすることができる。
以下、添付図面を参照しつつ、かつ添付図面に示したように、本発明の三つの異なる実施の形態について単に一例として本発明を説明する。