特許第6843910号(P6843910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843910
(24)【登録日】2021年2月26日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】金属加工用基油
(51)【国際特許分類】
   C10M 173/02 20060101AFI20210308BHJP
   C10M 107/34 20060101ALN20210308BHJP
   C10M 129/26 20060101ALN20210308BHJP
   C10N 10/02 20060101ALN20210308BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20210308BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20210308BHJP
   C10N 30/08 20060101ALN20210308BHJP
   C10N 30/18 20060101ALN20210308BHJP
   C10N 40/20 20060101ALN20210308BHJP
   C10N 40/22 20060101ALN20210308BHJP
   C10N 40/24 20060101ALN20210308BHJP
【FI】
   C10M173/02
   !C10M107/34
   !C10M129/26
   C10N10:02
   C10N20:04
   C10N30:06
   C10N30:08
   C10N30:18
   C10N40:20
   C10N40:22
   C10N40:24
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-56279(P2019-56279)
(22)【出願日】2019年3月25日
(65)【公開番号】特開2019-183132(P2019-183132A)
(43)【公開日】2019年10月24日
【審査請求日】2019年9月11日
(31)【優先権主張番号】特願2018-73522(P2018-73522)
(32)【優先日】2018年4月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】勝川 吉隆
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 翔平
(72)【発明者】
【氏名】嘉村 光真
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−047319(JP,A)
【文献】 特開2004−043794(JP,A)
【文献】 特開2005−179630(JP,A)
【文献】 特開2002−226879(JP,A)
【文献】 特開2011−256376(JP,A)
【文献】 特開2006−111728(JP,A)
【文献】 特開2012−214706(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/025910(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 107/34
C10M 129/26
C10M 173/02
C10N 10/02
C10N 20/04
C10N 30/06
C10N 30/08
C10N 30/18
C10N 40/20
C10N 40/22
C10N 40/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(I)〜(III)を満たすポリエーテル(A)と、カルボン酸のアルカリ金属塩(B)とを含有してなる基油であって、前記カルボン酸のアルカリ金属塩(B)が乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムおよび酢酸セシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記ポリエーテル(A)の重量に基づいてカルボン酸のアルカリ金属塩(B)の含有量が0.05〜5重量%である金属加工用基油(X)。
(I)3価の脂肪族アルコール(a)の炭素数2〜4のアルキレンオキシド(s)18〜54モル付加物に、炭素数2〜4のアルキレンオキシド(t)を9〜36モル付加した構造を有し、前記アルキレンオキシド(t)は1,2−プロピレンオキシドである
(II)複数ある前記炭素数2〜4のアルキレンオキシド(t)は同一である。
(III)複数ある前記炭素数2〜4のアルキレンオキシド(s)は、同一であっても異なっていてもよいが、同一である場合、アルキレンオキシド(s)とアルキレンオキシド(t)とは異なる。
【請求項2】
前記ポリエーテル(A)の数平均分子量(Mn)が1,000〜5,000である請求項1記載の金属加工用基油(X)。
【請求項3】
前記ポリエーテル(A)中のアルキレンオキシ単位の合計重量に基づいて、エチレンオキシ単位の重量が、5〜70重量%である請求項1または2記載の金属加工用基油(X)。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載の金属加工用基油(X)と、水とを含有してなる水性金属加工油(Y)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属加工用基油に関する。
【背景技術】
【0002】
金属加工用基油は、切削油、圧延油、プレス油、鍛造油、アルミディスクおよびシリコンウエハの研磨・切断などの金属加工用の基油として用いられる。このような用途には、特定のポリエーテル系潤滑剤が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−226879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術であっても、加工性については十分に満足できるとは言えず、さらなる向上が求められていた。本発明は、加工性に優れる金属加工用基油を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、下記(I)〜(III)を満たすポリエーテル(A)と、カルボン酸のアルカリ金属塩(B)とを含有してなる基油であって、前記カルボン酸のアルカリ金属塩(B)が乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムおよび酢酸セシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記ポリエーテル(A)の重量に基づいてカルボン酸のアルカリ金属塩(B)の含有量が0.05〜5重量%である金属加工用基油(X)である。
(I)3価の脂肪族アルコール(a)の炭素数2〜4のアルキレンオキシド(s)18〜54モル付加物に、炭素数2〜4のアルキレンオキシド(t)を9〜36モル付加した構造を有し、前記アルキレンオキシド(t)は1,2−プロピレンオキシドである
(II)複数ある前記炭素数2〜4のアルキレンオキシド(t)は同一である。
(III)複数ある前記炭素数2〜4のアルキレンオキシド(s)は、同一であっても異なっていてもよいが、同一である場合、アルキレンオキシド(s)とアルキレンオキシド(t)とは異なる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の金属加工用基油(X)は、以下の効果を奏する。
(1)低温安定性(低温保存安定性)に優れる。
(2)低泡性(泡立ちが小)に優れる。
(3)加工性(金属加工の耐久性)に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<ポリエーテル(A)>
本発明におけるポリエーテル(A)は、以下の(I)〜(III)を満たす。
(I)3価の脂肪族アルコール(a)の炭素数2〜4のアルキレンオキシド(s)6〜60モル付加物に、炭素数2〜4のアルキレンオキシド(t)を9〜36モル付加した構造を有する。
(II)複数ある前記炭素数2〜4のアルキレンオキシド(t)は同一である。
(III)複数ある前記炭素数2〜4のアルキレンオキシド(s)は、同一であっても異なっていてもよいが、同一である場合、アルキレンオキシド(s)とアルキレンオキシド(t)とは異なる。
なお、ポリエーテル(A)は、アルキレンオキシド(s)とアルキレンオキシド(t)とがどのように重合しているかや、ポリエーテル(A)におけるアルキレンオキシド(s)とアルキレンオキシド(t)との境目を明確に判別することは困難である。すなわち、ポリエーテル(A)をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、またはおよそ実際的ではないという事情(不可能・非実際的事情)が存在する。
【0008】
本発明におけるポリエーテル(A)は、例えば、3価の脂肪族アルコール(a)に、必要により触媒(水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等)の存在下で、アルキレンオキシド(s)に対応するアルキレンオキシドを付加反応し、さらにアルキレンオキシド(t)に対応するアルキレンオキシドを付加反応することで製造できる。
【0009】
前記3価の脂肪族アルコール(a)としては、例えばグリセリンおよびトリメチロールプロパンが挙げられる。
上記3価の脂肪族アルコール(a)のうち、加工性および工業上の観点から、好ましいのはグリセリンである。
ポリエーテル(A)が2個の水酸基からなる場合、例えばプルロニック系界面活性剤、リバースプルロニック系活性剤では、加工性が不十分となる。
【0010】
前記炭素数2〜4のアルキレンオキシド(t)の付加モル数は、9〜36である。低泡性および加工性の観点から、好ましくは10〜30、さらに好ましくは12〜24である。
【0011】
前記炭素数2〜4のアルキレンオキシド(t)としては、エチレンオキシド(以下、EOと略記)、1,2−プロピレンオキシド(以下、POと略記)および1,2−ブチレンオキシドが挙げられ、複数あるアルキレンオキシド(t)は同一である。アルキレンオキシド(t)のうち、低泡性の観点から、好ましいのはPOである。
【0012】
前記炭素数2〜4のアルキレンオキシド(s)の付加モル数は、6〜60である。加工性および取り扱いの観点から、好ましくは12〜57、さらに好ましくは18〜54である。
【0013】
前記炭素数2〜4のアルキレンオキシド(s)としては、EO、POおよび1,2−ブチレンオキシドが挙げられる。複数あるアルキレンオキシド(s)は、同一であっても異なっていても良いが、同一である場合、アルキレンオキシド(s)とアルキレンオキシド(t)とは異なる。
また、アルキレンオキシド(s)が2種以上の場合、それぞれのアルキレンオキシド(s)の順序は任意であり、付加形式はランダム付加でも、ブロック付加でもよい。
上記アルキレンオキシド(s)のうち、加工性および低泡性の観点から、好ましいのはEO、PO、EOとPOとの併用であり、さらに好ましいのはEOとPOとの併用である。
【0014】
ポリエーテル(A)の数平均分子量[Mnと略する場合がある]は、加工性および低温安定性の観点から、好ましくは1,000〜5,000、さらに好ましくは1,500〜4,500、とくに好ましくは2,000〜4,000、最も好ましくは2,000〜3,500である。
なお、ポリエーテル(A)の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、以下の条件で測定する。
<(A)の分子量の測定条件>
装置 :「Alliance」[日本ウオーターズ(株)製]
カラム :「TSK gel Super H4000」1本
「TSK gel Super H3000」1本
「TSK gel Super H2000」1本
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.5重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:200μl
検出装置 :屈折率検出器
標準 :POLYETHYLENE OXIDE
【0015】
また、ポリエーテル(A)中のアルキレンオキシド(s)とアルキレンオキシド(t)の合計重量に基づいて、エチレンオキシド単位の重量[以下、EO単位の重量と略記]は、水への溶解性および加工性の観点から、好ましくは5〜70重量%、さらに好ましくは10〜60重量%、とくに好ましくは15〜50重量%、最も好ましくは20〜40重量%である。
上記は、アルキレンオキシド(s)及びアルキレンオキシド(t)の種類、重量により調整できる。また、H−NMRにより測定、算出できる。
【0016】
<カルボン酸のアルカリ金属塩(B)>
本発明におけるカルボン酸のアルカリ金属塩(B)は、カルボン酸とアルカリ金属とから構成される塩である。
上記カルボン酸としては、炭素数[以下、Cと略記することがある]2〜6のもの、例えば、酢酸、乳酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸が挙げられる。なお、カルボン酸は1種単独でも、2種以上を併用してもよい。これらのカルボン酸のうち、加工性、低泡性の観点から、好ましいのは酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、さらに好ましいのは乳酸である。
また、上記アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムが挙げられる。なお、アルカリ金属は1種単独でも、2種以上を併用してもよい。これらのアルカリ金属のうち、加工性、低泡性の観点から、好ましいのはナトリウム、カリウムである。
【0017】
カルボン酸のアルカリ金属塩(B)は、市販のものでもよく、また、カルボン酸とアルカリ金属の水酸化物とを中和して製造してもよい。
【0018】
<金属加工用基油(X)>
本発明の金属加工用基油(X)は、前記ポリエーテル(A)とカルボン酸のアルカリ金属塩(B)とを含有してなる。前記ポリエーテル(A)の重量に基づいてカルボン酸のアルカリ金属塩(B)の重量は、0.05〜5重量%であり、加工性、低温安定性、製造コストおよび生産効率の観点から、好ましくは0.1〜4重量%、さらに好ましくは0.2〜3重量%である。
カルボン酸のアルカリ金属塩(B)の重量が0.05重量%未満では、加工性が不十分であるのに加え、工業上の課題(処理コストが高く、低収率)もあり、一方、5重量%を超えると、低温安定性が不十分となる。
上記カルボン酸のアルカリ金属塩(B)の重量は、H−NMR、蛍光X線測定を組み合わせて算出できる。
【0019】
金属加工用基油(X)は、後述の水性金属加工油に使用する基油として好適である。金属加工油の用途としては、種々のもの、例えば、切削油、圧延油、プレス油が挙げられる。
金属加工用基油(X)は、ポリエーテル(A)とカルボン酸のアルカリ金属塩(B)とを混合して製造できるが、工業上の観点からは、ポリエーテル(A)製造時の触媒(水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等)と、カルボン酸とを中和することにより、金属加工用基油(X)を製造することが好ましい。
【0020】
<水性金属加工油(Y)>
本発明の水性金属加工油(Y)は、金属加工用基油(X)と、水とを含有してなる。該水性金属加工油(Y)の重量に基づいて、該金属加工用基油(X)の重量は、用途によっても異なるが、加工性の観点から、好ましくは0.1〜10重量%、さらに好ましくは0.3〜3重量%である。
【0021】
水性金属加工油(Y)には、前記金属加工用基油(X)、水以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要により、添加剤を添加してもよい。該添加剤としては、例えば、酸化防止剤(2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール等)、極圧添加剤(ナフテン酸鉛等)、防錆剤(ノナン酸トリエタノールアミン塩等)、消泡剤(ポリオルガノシロキサン等)が挙げられる。
【0022】
本発明の水性金属加工油(Y)は、金属加工用基油(X)と、水と、必要により上記添加剤とを混合して製造できる。水性金属加工油(Y)は、泡立ちが小であり、金属加工性に優れるため、金属加工用途に好適に使用できる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において、%は重量%、部は重量部を表す。なお、実施例2、6および7は参考例である。
【0024】
<実施例1>
ステンレス製加圧反応装置にグリセリン75部と水酸化カリウム0.91部を仕込み、窒素置換後に、140℃で予め混合しておいたエチレンオキサイド372部とプロピレンオキサイド372部を同時に約6時間で圧入し、同温度でさらに約4時間反応させた後、さらにプロピレンオキサイド999部を約8時間で圧入し、同温度でさらに約8時間反応させた後、温度を80℃以下まで冷却後、乳酸(Porac社製、88%水溶液)1.66部を仕込み、1時間撹拌して、ポリエーテル(A−1)と乳酸カリウム(B−1)とを含有してなる金属加工用基油(X−1)を得た。
なお、(A−1)の重量に基づく、(B−1)の重量は0.11重量%であった。また、(A−1)の数平均分子量(Mn)は2220、EO単位の重量は21.3重量%であった。
【0025】
<実施例2>
ステンレス製加圧反応装置にグリセリン120部と水酸化カリウム4.45部を仕込み、窒素置換後に、120℃で予め混合しておいたエチレンオキサイド265部とプロピレンオキサイド265部を同時に約5時間で圧入し、同温度でさらに約4時間反応させた後、さらにプロピレンオキサイド1131部を約8時間で圧入し、同温度でさらに約8時間反応させた後、温度を80℃以下まで冷却後、乳酸(Porac社製、88%水溶液)8.13部を仕込み、1時間撹拌して、ポリエーテル(A−2)と乳酸カリウム(B−2)とを含有してなる金属加工用基油(X−2)を得た。
なお、(A−2)の重量に基づく、(B−2)の重量は0.57重量%であった。また、(A−2)の数平均分子量(Mn)は1370、EO単位の重量は16.0重量%であった。
【0026】
<実施例3>
ステンレス製加圧反応装置にグリセリン54部と水酸化カリウム14.26部を仕込み、窒素置換後に、100℃で予め混合しておいたエチレンオキサイド710部とプロピレンオキサイド710部を同時に約6時間で圧入し、同温度でさらに約4時間反応させた後、さらにプロピレンオキサイド308部を約2時間で圧入し、同温度でさらに約4時間反応させた後、温度を80℃以下まで冷却後、乳酸(Porac社製、88%水溶液)26.05部を仕込み、1時間撹拌して、ポリエーテル(A−3)と乳酸カリウム(B−3)とを含有してなる金属加工用基油(X−3)を得た。
なお、(A−3)の重量に基づく、(B−3)の重量は1.8重量%であった。また、(A−3)の数平均分子量(Mn)は3020、EO単位の重量は41.1重量%であった。
【0027】
<実施例4>
ステンレス製加圧反応装置にグリセリン55部と水酸化ナトリウム4.50部を仕込み、窒素置換後に、120℃で予め混合しておいたエチレンオキサイド272部とプロピレンオキサイド272部を同時に約4時間で圧入し、同温度でさらに約4時間反応させた後、さらにエチレンオキサイド600部を約4時間で圧入し、同温度でさらに約4時間反応させた後、さらにプロピレンオキサイド600部を約4時間で圧入し、同温度でさらに約6時間反応させ後、温度を80℃以下まで冷却後、乳酸(Porac社製、88%水溶液)11.51部を仕込み、1時間撹拌して、ポリエーテル(A−4)と乳酸ナトリウム(B−4)とを含有してなる金属加工用基油(X−4)を得た。
なお、(A−4)の重量に基づく、(B−4)の重量は0.70重量%であった。また、(A−4)の数平均分子量(Mn)は3000、EO単位の重量は50.0重量%であった。
【0028】
<実施例5>
ステンレス製加圧反応装置にグリセリン60部と水酸化セシウム4.55部を仕込み、窒素置換後に、100℃でエチレンオキサイド880部を約6時間で圧入し、同温度でさらに約4時間反応させた後、さらにプロピレンオキサイド880部を約9時間で圧入し、同温度でさらに約6時間反応させた後、温度を80℃以下まで冷却後、乳酸(Porac社製、88%水溶液)3.10部を仕込み、1時間撹拌して、ポリエーテル(A−5)と乳酸セシウム(B−5)とを含有してなる金属加工用基油(X−5)を得た。
なお、(A−5)の重量に基づく、(B−5)の重量は0.37重量%であった。また、(A−5)の数平均分子量(Mn)は2800、EO単位の重量は50.0重量%であった。
【0029】
<実施例6>
ステンレス製加圧反応装置にグリセリン55部と水酸化カリウム4.50部を仕込み、窒素置換後に、120℃で予め混合しておいたエチレンオキサイド122部とプロピレンオキサイド122部を同時に約4時間で圧入し、同温度でさらに約2時間反応させた後、さらにプロピレンレンオキサイド750部を約6時間で圧入し、同温度でさらに約4時間反応させた後、さらにエチレンオキサイド750部を約5時間で圧入し、同温度でさらに約4時間反応させ後、温度を80℃以下まで冷却後、乳酸(Porac社製、88%水溶液)8.22部を仕込み、1時間撹拌して、ポリエーテル(A−6)と乳酸カリウム(B−6)とを含有してなる金属加工用基油(X−6)を得た。
なお、(A−6)の重量に基づく、(B−6)の重量は0.57重量%であった。また、(A−6)の数平均分子量(Mn)は3000、EO単位の重量は50.0重量%であった。
【0030】
<実施例7>
ステンレス製加圧反応装置にグリセリン60部と水酸化カリウム4.55部を仕込み、窒素置換後に、120℃でプロピレンオキサイド880部を約10時間で圧入し、同温度でさらに約6時間反応させた後、さらにエチレンオキサイド880部を約6時間で圧入し、同温度でさらに約6時間反応させた後、温度を80℃以下まで冷却後、乳酸(Porac社製、88%水溶液)8.31部を仕込み、1時間撹拌して、ポリエーテル(A−7)と乳酸カリウム(B−7)とを含有してなる金属加工用基油(X−7)を得た。
なお、(A−7)の重量に基づく、(B−7)の重量は0.57重量%であった。また、(A−7)の数平均分子量(Mn)は2800、EO単位の重量は50.0重量%であった。
【0031】
<実施例8>
ステンレス製加圧反応装置にグリセリン45部と水酸化カリウム4.14部を仕込み、窒素置換後に、120℃で予め混合しておいたエチレンオキサイド614部とプロピレンオキサイド614部を同時に約4時間で圧入し、同温度でさらに約3時間反応させた後、さらにプロピレンオキサイド384部を約4時間で圧入し、同温度でさらに約4時間反応させた後、温度を80℃以下まで冷却後、乳酸(Porac社製、88%水溶液)7.57部を仕込み、1時間撹拌して、ポリエーテル(A−8)と乳酸カリウム(B−8)とを含有してなる金属加工用基油(X−8)を得た。
なお、(A−8)の重量に基づく、(B−8)の重量は0.57重量%であった。また、(A−8)の数平均分子量(Mn)は3383、EO単位の重量は38.1重量%であった。
【0032】
<実施例9>
ステンレス製加圧反応装置にグリセリン45部と水酸化カリウム4.46部を仕込み、窒素置換後に、120℃で予め混合しておいたエチレンオキサイド614部とプロピレンオキサイド614部を同時に約4時間で圧入し、同温度でさらに約3時間反応させた後、さらにプロピレンオキサイド512部を約5時間で圧入し、同温度でさらに約4時間反応させた後、温度を80℃以下まで冷却後、乳酸(Porac社製、88%水溶液)8.15部を仕込み、1時間撹拌して、ポリエーテル(A−9)と乳酸カリウム(B−9)とを含有してなる金属加工用基油(X−9)を得た。
なお、(A−9)の重量に基づく、(B−9)の重量は0.57重量%であった。また、(A−9)の数平均分子量(Mn)は3644、EO単位の重量は35.3重量%であった。
【0033】
<実施例10>
ステンレス製加圧反応装置にグリセリン45部と水酸化カリウム4.27部を仕込み、窒素置換後に、120℃で予め混合しておいたエチレンオキサイド639部とプロピレンオキサイド639部を同時に約4時間で圧入し、同温度でさらに約3時間反応させた後、さらにプロピレンオキサイド384部を約4時間で圧入し、同温度でさらに約4時間反応させた後、温度を80℃以下まで冷却後、乳酸(Porac社製、88%水溶液)7.79部を仕込み、1時間撹拌して、ポリエーテル(A−10)と乳酸カリウム(B−10)とを含有してなる金属加工用基油(X−10)を得た。
なお、(A−10)の重量に基づく、(B−10)の重量は0.57重量%であった。また、(A−10)の数平均分子量(Mn)は3483、EO単位の重量は38.5重量%であった。
【0034】
<実施例11>
ステンレス製加圧反応装置にグリセリン40部と水酸化カリウム4.34部を仕込み、窒素置換後に、120℃で予め混合しておいたエチレンオキサイド618部とプロピレンオキサイド618部を同時に約4時間で圧入し、同温度でさらに約3時間反応させた後、さらにプロピレンオキサイド459部を約5時間で圧入し、同温度でさらに約4時間反応させた後、温度を80℃以下まで冷却後、乳酸(Porac社製、88%水溶液)7.92部を仕込み、1時間撹拌して、ポリエーテル(A−11)と乳酸カリウム(B−11)とを含有してなる金属加工用基油(X−11)を得た。
なお、(A−11)の重量に基づく、(B−11)の重量は0.57重量%であった。また、(A−11)の数平均分子量(Mn)は3944、EO単位の重量は36.4重量%であった。
【0035】
<比較例1>
ステンレス製加圧反応装置にグリセリン75部と水酸化カリウム0.91部を仕込み、窒素置換後に、140℃で予め混合しておいたエチレンオキサイド372部とプロピレンオキサイド372部を同時に約6時間で圧入し、同温度でさらに約4時間反応させた後、さらにプロピレンオキサイド999部を約8時間で圧入し、同温度でさらに約8時間反応させた後、温度を80℃以下まで冷却後、吸着処理剤[キョーワード600、協和化学工業(株)]20部と吸着処理剤[キョーワード1000、協和化学工業(株)]20部を仕込み、1時間撹拌して、さらに吸着剤処理剤をろ過して得られたろ液に、乳酸(Porac社製、88%水溶液)0.149部を仕込み、1時間撹拌して、ポリエーテル(比A−1)と乳酸カリウム(比B−1)とを含有してなる金属加工用基油(比X−1)を得た。
なお、(比A−1)の重量に基づく、(比B−1)の重量は0.01重量%未満であった。また、(比A−1)の数平均分子量(Mn)は2220、EO単位の重量は21.3重量%であった。
【0036】
<比較例2>
ステンレス製加圧反応装置にグリセリン75部と水酸化カリウム9.1部を仕込み、窒素置換後に、140℃で予め混合しておいたエチレンオキサイド372部とプロピレンオキサイド372部を同時に約2時間で圧入し、同温度でさらに約1時間反応させた後、さらにプロピレンオキサイド999部を約2時間で圧入し、同温度でさらに約2時間反応させた後、温度を80℃以下まで冷却後、乳酸(Porac社製、88%水溶液)83部、水酸化カリウム36.4部を仕込み、1時間撹拌して、ポリエーテル(比A−2)と乳酸カリウム(比B−2)とを含有してなる金属加工用基油(比X−2)を得た。
なお、(比A−2)の重量に基づく、(比B−2)の重量は5.7重量%であった。また、(比A−2)の数平均分子量(Mn)は2220、EO単位の重量は21.3重量%であった。
【0037】
<比較例3>
ステンレス製加圧反応装置にエチレングリコール40部と水酸化カリウム4.55部を仕込み、窒素置換後に、120℃でエチレンオキサイド688部を約5時間で圧入し、同温度でさらに約2時間反応させた後、さらにプロピレンオキサイド1092部を約8時間で圧入し、同温度でさらに約4時間反応させた後、温度を80℃以下まで冷却後、乳酸(Porac社製、88%水溶液)8.31部を仕込み、1時間撹拌して、ポリエーテル(比A−3)と乳酸カリウム(比B−3)とを含有してなる金属加工用基油(比X−3)を得た。
なお、(比A−3)の重量に基づく、(比B−3)の重量は0.57重量%であった。また、(比A−3)の数平均分子量(Mn)は2800、EO単位の重量は37.8重量%であった。
【0038】
<比較例4>
ステンレス製加圧反応装置にグリセリン101部と水酸化カリウム4.31部を仕込み、窒素置換後に、140℃で予め混合しておいたエチレンオキサイド142部とプロピレンオキサイド142部を同時に約4時間で圧入し、同温度でさらに約3時間反応させた後、さらにプロピレンオキサイド1340部を約6時間で圧入し、同温度でさらに約4時間反応させた後、温度を80℃以下まで冷却後、乳酸(Porac社製、88%水溶液)7.88部を仕込み、1時間撹拌して、ポリエーテル(比A−4)と乳酸カリウム(比B−4)とを含有してなる金属加工用基油(比X−4)を得た。
なお、(比A−4)の重量に基づく、(比B−4)の重量は0.57重量%であった。また、(比A−4)の数平均分子量(Mn)は1568、EO単位の重量は8.7重量%であった。
【0039】
<比較例5>
ステンレス製加圧反応装置にグリセリン37部と水酸化カリウム4.42部を仕込み、窒素置換後に、140℃で予め混合しておいたエチレンオキサイド622部とプロピレンオキサイド622部を同時に約8時間で圧入し、同温度でさらに約5時間反応させた後、さらにプロピレンオキサイド487部を約6時間で圧入し、同温度でさらに約4時間反応させた後、温度を80℃以下まで冷却後、乳酸(Porac社製、88%水溶液)8.07部を仕込み、1時間撹拌して、ポリエーテル(比A−5)と乳酸カリウム(比B−5)とを含有してなる金属加工用基油(比X−5)を得た。
なお、(比A−5)の重量に基づく、(比B−5)の重量は0.57重量%であった。また、(比A−5)の数平均分子量(Mn)は4418、EO単位の重量は35.9重量%であった。
【0040】
<比較例6>
ステンレス製加圧反応装置にグリセリン110部と水酸化カリウム4.39部を仕込み、窒素置換後に、140℃で予め混合しておいたエチレンオキサイド545部とプロピレンオキサイド545部を同時に約7時間で圧入し、同温度でさらに約5時間反応させた後、さらにプロピレンオキサイド557部を約6時間で圧入し、同温度でさらに約4時間反応させた後、温度を80℃以下まで冷却後、乳酸(Porac社製、88%水溶液)8.02部を仕込み、1時間撹拌して、ポリエーテル(比A−6)と乳酸カリウム(比B−6)とを含有してなる金属加工用基油(比X−6)を得た。
なお、(比A−6)の重量に基づく、(比B−6)の重量は0.57重量%であった。また、(比A−6)の数平均分子量(Mn)は1464、EO単位の重量は33.1重量%であった。
【0041】
<比較例7>
ステンレス製加圧反応装置にグリセリン51部と水酸化カリウム4.49部を仕込み、窒素置換後に、140℃で予め混合しておいたエチレンオキサイド250部とプロピレンオキサイド250部を同時に約6時間で圧入し、同温度でさらに約4時間反応させた後、さらにプロピレンオキサイド1244部を約8時間で圧入し、同温度でさらに約6時間反応させた後、温度を80℃以下まで冷却後、乳酸(Porac社製、88%水溶液)8.19部を仕込み、1時間撹拌して、ポリエーテル(比A−7)と乳酸カリウム(比B−7)とを含有してなる金属加工用基油(比X−7)を得た。
なお、(比A−7)の重量に基づく、(比B−7)の重量は0.57重量%であった。また、(比A−7)の数平均分子量(Mn)は3262、EO単位の重量は14.3重量%であった。
【0042】
得られた各金属加工用基油(X)及び水性金属加工油(Y)について、下記(1)〜(3)の方法で評価を行った。結果を表1〜2に示す。
【0043】
(1)低温安定性[金属加工用基油(X)]
100mLスクリュー菅瓶(高さ9cm)に、各金属加工用基油(X)を70g仕込み、−7℃で14日間保存した。保存後の金属加工用基油(X)の外観を目視により、以下の基準で評価した。
<評価基準>
○:かすみ、沈降物がない
△:かすみ又は沈降物が、わずかに確認できる
×:かすみ又は沈降物が、多い
【0044】
得られた各金属加工用基油(X)0.5部、イオン交換水97.15部、ノナン酸0.65部、トリエタノールアミン1.7部を、容器に仕込み、混合して、各水性金属加工油(Y)を得た。得られた各水性金属加工油(Y)について、下記(2)〜(3)の方法で評価を行った。
【0045】
(2)低泡性[水性金属加工油(Y)]
300mLトールビーカー(高さ13cm)に、水性金属加工油(Y)を200g仕込み、25℃に温度調整したものをバイオミキサー(日本精器社製、BM−2型)で40秒間撹拌(11,500rpm)することで発生させた泡が消失するまでの時間を測定して、以下の基準で評価した。
<評価基準>
◎:200秒未満
○:200秒以上、250秒未満
△:250秒以上、300秒未満
×:300秒以上
【0046】
(3)加工性[水性金属加工油(Y)]
8M転送タップ(OSG社製、VP−NRT)を取り付けた加工試験機(FUNUC社製、Robodrill α−T14iFa)に水性金属加工油(Y)[85℃で10日間熱履歴をかけたもの]を100L投入し、30℃に温度調整した後、被加工金属として取り付けたSUS304(山陽特殊製鋼社製)を10穴加工(加工速度:2.5m/min.)した際の最大トルク負荷の10穴の数平均値を算出し、以下の基準で評価した。
<評価基準>
☆:2,000N・cm未満
◎:2,000N・cm以上、2,100N・cm未満
○:2,100N・cm以上、2,200N・cm未満
□:2,200N・cm以上、2,300N・cm未満
△:2,300N・cm以上、2,400N・cm未満
×:2,400N・cm以上
【0047】
【表1】










【0048】
【表2】
【0049】
なお、表1〜2中、例えばEO/POは、EOとPOとのランダム付加を表す。また、EO/PO−EOは、EOとPOとのランダム付加後、EOブロック付加したことを表し、EO/PO−POは、EOとPOとのランダム付加後、POブロック付加したことを表す。
【0050】
表1〜2の結果から、本発明の金属加工用基油(X)は、比較のものと比べて、低温安定性に優れ、水性金属加工油(Y)に優れた低泡性、優れた加工性を付与することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の金属加工用基油(X)は、低温安定性に優れ、水性金属加工油(Y)に優れた低泡性、優れた加工性を付与するため、種々の金属加工用途、切削油、圧延油、プレス油等に好適に使用できるため極めて有用である。