(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スクリュの形状によって、その後方から前方にかけて可塑化シリンダ内に、樹脂が圧縮されるようになっている圧縮ゾーンと、樹脂の圧力が低下するようになっている飢餓ゾーンと、樹脂が圧縮されるようになっている再圧縮ゾーンとが形成され、前記飢餓ゾーンに物理発泡剤が注入されるようになっている、射出成形装置のスクリュであって、
前記スクリュには、
前記圧縮ゾーンと前記飢餓ゾーンとの間に、樹脂の逆流を防止するシール機構と、
該シール機構の下流側に該シール機構に隣接して、樹脂を減圧する減圧部及び樹脂を圧縮する圧縮部を有する流動速度調整ゾーンと、が設けられていることを特徴とする射出成形装置のスクリュ。
前記スクリュの前記流動速度調整ゾーンにおいて、前記圧縮部のスクリュフライト深さが前記減圧部のスクリュフライト深さより浅いことを特徴とする請求項1に記載の射出成形装置のスクリュ。
前記スクリュの前記流動速度調整ゾーンにおいて、前記減圧部のスクリュの軸の直径は、前記圧縮ゾーンに位置する部分のスクリュの軸の直径の最大値よりも小さく、前記圧縮部のスクリュの軸の直径は、前記減圧部のスクリュの軸の直径の最小値よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の射出成形装置のスクリュ。
前記スクリュは、前記流動速度調整ゾーンに、複数の前記減圧部及び複数の前記圧縮部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の射出成形装置のスクリュ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜3の物理発泡剤を用いた射出発泡成形方法では、溶融樹脂中の物理発泡剤の濃度が高いと、溶融樹脂と物理発泡剤が相分離する虞がある。このため、物理発泡剤の濃度を飽和溶解度の1/5〜1/10程度に下げる必要があった。そして、このように溶融樹脂中の物理発泡剤の濃度を飽和溶解度に対して低い割合としながらも、金型への射出充填時に多くの発泡核を形成するために、可塑化シリンダへ導入する物理発泡剤を高圧力に設定し導入量を正確に計量する必要があった。これは、物理発泡剤の供給機構を複雑化し、装置のイニシャルコストを高める要因となっていた。
【0008】
一方、特許文献4の物理発泡剤を用いた射出発泡成形方法では、上述の混練装置の採用により、物理発泡剤の一部排気後に、溶融樹脂中の物理発泡剤濃度を飽和溶解度(飽和濃度)近くまで高めることが可能であり、比較的低い圧力の物理発泡剤を用いて多くの発泡核を形成できる。しかし、特許文献4の射出発泡成形方法は、減圧ゾーンの圧力を一定に保持するために、スクリュを逆回転することで減圧ゾーンを他のゾーンから遮断するシール機構を有する。そのため、スクリュが長くなる、スクリュを逆回転するため可塑化計量時間が長くなる等の課題を有していた。
【0009】
特許文献5及び6の射出発泡成形方法は、圧力制御により物理発泡剤を可塑化シリンダに導入するため、物理発泡剤の導入量を正確に計量する必要はない。また、引用文献4に開示されるようなシール機構を必ずしも設ける必要はない。しかし、本発明者らの検討によれば、特許文献5及び6に開示されるように可塑化シリンダ内の飢餓ゾーンへの物理発泡剤の導入を間欠的に行った場合、飢餓ゾーンにおける圧力が変動し、この結果、物理発泡剤の溶融樹脂に対する溶解量(浸透量)を精密に制御できない虞がある。
【0010】
この主原因は、物理発泡剤を間欠的に可塑化シリンダに導入するため、物理発泡剤の導入量が不十分であるためと推測される。しかし、上述したように、導入される物理発泡剤と溶融樹脂との温度差の問題や、溶融樹脂逆流の問題が存在するため、特許文献5及び6に開示される構造の装置を用いて、物理発泡剤の導入量を増加させて安定化を図ることは困難であった。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するものであり、物理発泡剤の複雑な制御装置を省略又は簡略化でき、更に物理発泡剤の溶融樹脂に対する溶解量(浸透量)を単純な機構により安定化できる発泡成形体を製造可能な射出成形装置、及び該射出成形装置のスクリュを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様に従えば、スクリュの形状によって、その後方から前方にかけて可塑化シリンダ内に、樹脂が圧縮されるようになっている圧縮ゾーンと、樹脂の圧力が低下するようになっている飢餓ゾーンと、樹脂が圧縮されるようになっている再圧縮ゾーンとが形成され、前記飢餓ゾーンに物理発泡剤が注入されるようになっている、射出成形装置のスクリュであって、前記スクリュには、前記圧縮ゾーンと前記飢餓ゾーンとの間に、樹脂の逆流を防止す
るシール
機構と、該シール
機構の下流側に該シール
機構に隣接して、樹脂を減圧する減圧部及び樹脂を圧縮する圧縮部を有する流動速度調整ゾーンと、が設けられていることを特徴とする射出成形装置のスクリュが提供される。
【0013】
第1の態様において、前記スクリュの前記流動速度調整ゾーンにおいて、前記圧縮部のスクリュフライト深さが前記減圧部のスクリュフライト深さより浅くてもよい。前記スクリュの前記流動速度調整ゾーンにおいて、前記減圧部のスクリュの軸の直径は、前記圧縮ゾーンに位置する部分のスクリュの軸の直径の最大値よりも小さく、前記圧縮部のスクリュの軸の直径は、前記減圧部のスクリュの軸の直径の最小値よりも大きくてもよい。前記スクリュは、前記流動速度調整ゾーンに、複数の前記減圧部及び複数の前記圧縮部を有してもよい。
【0014】
本発明の第2の態様に従えば、可塑化シリンダと、前記可塑化シリンダに物理発泡剤を供給する物理発泡剤供給機構と、前記可塑
化シリンダ内部に回転自在に設けられた第1の態様の前記スクリュと、を備えた発泡成形体を製造する射出成形装置であって、前記可塑化シリンダには、前記飢餓ゾーンに前記物理発泡剤供給機構からの物理発泡剤を導入するための導入口が形成されていることを特徴とする射出成形装置が提供される。
【0015】
第2の態様において、前記飢餓ゾーンに一定圧力の前記物理発泡剤を含む加圧流体を導入し、前記飢餓ゾーンを前記一定圧力に保持し、前記飢餓ゾーンを前記一定圧力に保持した状態で、前記飢餓ゾーンにおいて、飢餓状態の前
記樹脂と前記一定圧力の物理発泡剤を含む加圧流体とを接触させ、前記物理発泡剤を含む加圧流体を接触させた前
記樹脂を発泡成形体に成形してもよい。
【0016】
本発明の第1の参考態様に従えば、発泡成形体の製造方法であって、上流から順に、可塑化ゾーンと、流動速度調整ゾーンと、飢餓ゾーンとを有し、前記飢餓ゾーンに物理発泡剤を導入するための導入口が形成された可塑化シリンダを用い、前記製造方法は、前記可塑化ゾーンにおいて、熱可塑性樹脂を可塑化溶融して溶融樹脂とすることと、前記流動速度調整ゾーンにおいて、前記溶融樹脂の流動速度を調整することと、前記飢餓ゾーンにおいて、前記流動速度調整ゾーンで流動速度を調整した前記溶融樹脂を飢餓状態とすることと、前記飢餓ゾーンに一定圧力の前記物理発泡剤を含む加圧流体を導入し、前記飢餓ゾーンを前記一定圧力に保持することと、前記飢餓ゾーンを前記一定圧力に保持した状態で、前記飢餓ゾーンにおいて、前記飢餓状態の溶融樹脂と前記一定圧力の物理発泡剤を含む加圧流体とを接触させることと、前記物理発泡剤を含む加圧流体を接触させた前記溶融樹脂を発泡成形体に成形することとを含む製造方法が提供される。
【0017】
本参考態様においては、前記飢餓ゾーンにおいて、前記物理発泡剤を含む加圧流体で前記溶融樹脂を加圧してもよい。また、前記発泡成形体の製造中、常時、前記飢餓ゾーンを前記一定圧力に保持してもよい。本参考態様においては、前記導入口の内径が、前記可塑化シリンダの内径の20%〜100%であってもよい。また、前記導入口を常時、開放していてもよい。本参考態様においては、前記可塑化シリンダは、前記導入口に接続する導入速度調整容器を有し、前記製造方法は、前記物理発泡剤を含む加圧流体を前記導入速度調整容器に供給することを更に含み、前記導入速度調整容器から、前記飢餓ゾーンに前記一定圧力の物理発泡剤を含む加圧流体を導入してもよい。前記導入速度調整容器の容積が、5mL〜10Lであってもよい。
【0018】
本参考態様においては、更に、前記導入口から前記溶融樹脂が膨出することを検出することと、前記導入口から前記溶融樹脂が膨出することを検出したとき、前記可塑化シリンダの駆動を停止することを含んでもよい。また、化学発泡剤が、前記熱可塑性樹脂中に0.1重量%〜3重量%含まれていてもよい。本参考態様においては、前記流動速度調整ゾーンにおいて、前記溶融樹脂の減圧及び圧縮を行うことにより、前記溶融樹脂の流動速度を調整してもよいし、前記流動速度調整ゾーンにおいて、前記溶融樹脂の流動方向に沿って、前記溶融樹脂の流動速度を徐々に上昇させることにより、前記溶融樹脂の流動速度を調整してもよい。また、前記流動速度調整ゾーンにおいて、前記溶融樹脂の流動方向に沿って、前記溶融樹脂の圧力を徐々に下げることにより、前記溶融樹脂の流動速度を調整してもよい。
【0019】
本発明の第2の参考態様に従えば、発泡成形体を製造する製造装置であって、内部に回転自在に設けられた可塑化スクリュを備え、熱可塑性樹脂が可塑化溶融されて溶融樹脂となる可塑化ゾーンと、前記溶融樹脂の流動速度を調整する流動速度調整ゾーンと、前記溶融樹脂が飢餓状態となる飢餓ゾーンとを有し、前記飢餓ゾーンに物理発泡剤を導入するための導入口が形成された可塑化シリンダと、前記導入口に接続する導入速度調整容器と、前記導入速度調整容器に接続し、前記導入速度調整容器を介して前記可塑化シリンダに物理発泡剤を供給する物理発泡剤供給機構とを有し、前記飢餓ゾーンに一定圧力の前記物理発泡剤を含む加圧流体を導入し、前記飢餓ゾーンを前記一定圧力に保持し、前記飢餓ゾーンを前記一定圧力に保持した状態で、前記飢餓ゾーンにおいて、前記飢餓状態の溶融樹脂と前記一定圧力の物理発泡剤を含む加圧流体とを接触させ、前記物理発泡剤を含む加圧流体を接触させた前記溶融樹脂を発泡成形体に成形することを特徴とする製造装置が提供される。
【0020】
本参考態様においては、前記導入口の内径が、前記可塑化シリンダの内径の20%〜100%であり、前記導入速度調整容器の容積が、5mL〜10Lであってもよく、前記導入口が、常時、開放されている導入口であってもよい。また、前記導入速度調整容器が、前記導入口から前記溶融樹脂が膨出することを検出する膨出検出機構を備えていてもよい。本参考態様においては、前記可塑化シリンダは、前記流動速度調整ゾーンの上流に前記溶融樹脂を圧縮する圧縮ゾーンを更に有し、前記可塑化スクリュは、前記流動速度調整ゾーンに位置する部分に減圧部及び圧縮部を有し、前記減圧部のスクリュの軸の直径は、前記圧縮ゾーンに位置する部分のスクリュの軸の直径の最大値よりも小さく、前記圧縮部のスクリュの軸の直径は、前記減圧部のスクリュの軸の直径の最小値よりも大きくてもよい。また、前記可塑化スクリュは、前記流動速度調整ゾーンに位置する部分に切欠きが形成されたスクリュフライトを有してもよい。また、流動速度調整ゾーンにおいて、前記可塑化スクリュの軸の直径が上流から下流に向って連続的に小さくなっていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のスクリュを備える射出成形装置によって実施可能な発泡成形体の製造方法は、物理発泡剤の溶融樹脂への導入量、導入時間等を制御する必要が無い。よって、本発明のスクリュを備える射出成形装置は、複雑な制御装置を省略又は簡略化でき、装置コストを削減できる。更に、本発明のスクリュを備える射出成形装置は、物理発泡剤の溶融樹脂に対する溶解量(浸透量)を単純な機構により安定化できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示すフローチャートを参照しながら、本実施形態の発泡成形体の製造方法について説明する。
【0024】
(1)発泡成形体の製造装置
まず、本実施形態で用いる発泡成形体を製造する製造装置について説明する。本実施形態では、
図2に示す製造装置(射出成形装置)1000を用いて発泡成形体を製造する。製造装置1000は、主に、スクリュ(可塑化スクリュ)20が回転自在に内設された可塑化シリンダ210と、物理発泡剤を可塑化シリンダ210に供給する物理発泡剤供給機構であるボンベ100と、金型251が設けられた型締めユニット250と、可塑化シリンダ210及び型締めユニット250を動作制御するための制御装置(不図示)を備える。可塑化シリンダ210内において可塑化溶融された溶融樹脂は、
図2における右手から左手に向かって流動する。したがって本実施形態の可塑化シリンダ210内部においては
図2における右手を「上流」または「後方」、左手を「下流」または「前方」と定義する。
【0025】
可塑化シリンダは、上流側から順に、熱可塑性樹脂を可塑化溶融して溶融樹脂とする可塑化ゾーン21、溶融樹脂を圧縮する圧縮ゾーン22、溶融樹脂の流動速度を調整する流動速度調整ゾーン25及び溶融樹脂を飢餓状態とする飢餓ゾーン23とを有する。
【0026】
「飢餓状態」とは、溶融樹脂が飢餓ゾーン23内に充満せずに未充満となる状態である。したがって、飢餓ゾーン23内には、溶融樹脂の占有部分以外の空間が存在する。また、飢餓ゾーン23に物理発泡剤を導入するための導入口202が形成されており、導入口202には、導入速度調整容器300が接続している。ボンベ100は、導入速度調整容器300を介して可塑化シリンダ210に物理発泡剤を供給する。
【0027】
尚、製造装置1000は、流動速度調整ゾーン25及び飢餓ゾーン23を1つしか有していないが、本実施形態に用いられる製造装置は、これに限定されない。例えば、溶融樹脂への物理発泡剤の浸透を促進するために、流動速度調整ゾーン25及び飢餓ゾーン23、更に飢餓ゾーン23に形成される導入口202を複数有し、複数の導入口202から物理発泡剤を可塑化シリンダ210に導入する構造であってもよい。また、製造装置1000は射出成形装置であるが、本実施形態に用いられる製造装置は、これに限定されず、例えば、押出成形装置であってもよい。
【0028】
(2)発泡成形体の製造方法
まず、可塑化シリンダ210の可塑化ゾーン21において、熱可塑性樹脂を可塑化溶融して溶融樹脂とする(
図1のステップS1)。熱可塑性樹脂としては、目的とする成形体の種類に応じて種々の樹脂を使用できる。具体的には、例えば、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂)、ポリフェニレンスルファイド、ポリアミドイミド、ポリ乳酸、ポリカプロラクトンなどの熱可塑性樹脂、及びこれらの複合材料を用いることができる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いても、二種類以上を混合して用いてもよい。また、これらの熱可塑性樹脂にガラス繊維、タルク、カーボン繊維、セルロースナノファイバーなどの各種有機又は無機フィラーを混練したものを用いることもできる。熱可塑性樹脂には、発泡核剤として機能する無機フィラーや溶融張力を高める添加剤を混合することが好ましい。これらを混合することで、発泡セルを微細化できる。本実施形態の熱可塑性樹脂は、必要に応じてその他の汎用の各種添加剤を含んでもよい。
【0029】
また、本実施形態の熱可塑性樹脂は、汎用の化学発泡剤を含んでもよい。化学発泡剤を少量含有することで、発泡性能を補完することができる。化学発泡剤としては、熱可塑性樹脂が可塑化溶融する温度で分解し、発泡ガスを発生するものであれば特に限定されず、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、トリヒドラジノトリアジン及びアゾビスイソブチロニトリルなどの有機発泡剤;クエン酸、シュウ酸、フマル酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、ショウノウ酸、エチレンジアミン四酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸及びニトリロ酸などのポリカルボン酸と、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウムアルミニウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム及び炭酸アンモニウムなどの無機炭酸化合物との混合物;クエン酸ニ水素ナトリウム及びシュウ酸カリウムなどのポリカルボン酸の塩を用いることができる。これらの化学発泡剤は、単独で用いても、二種類以上を混合して用いてもよい。分解時に発生する副生成物の観点からは、炭酸水素塩などの無機系発泡剤が好ましく、特に炭酸水素ナトリウムが好ましい。炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素塩の分解時の副生成物は、主に二酸化炭素と水であり、製造装置や金型を汚染する虞が少ない。
【0030】
化学発泡剤は、熱可塑性樹脂中に、0.1重量%〜3重量%含まれることが好ましく、0.1重量%〜1重量%含まれることがより好ましく、0.1重量%〜0.5重量%含まれることが更により好ましい。樹脂材料中の化学発泡剤の含有量が0.1重量%以上であれば十分に発泡性能を補完することができ、3重量%以下であれば、化学発泡剤の副生成物に起因する汚染物(コンタミネーション)が金型や押出ダイ等に付着する虞もない。
【0031】
本実施形態では、
図2に示すスクリュ20が内設された可塑化シリンダ210内で熱可塑性樹脂を可塑化溶融する。可塑化シリンダ210の外壁面にはバンドヒータ(図示せず)が配設されており、これにより可塑化シリンダ210が加熱され、更にスクリュ20の回転による剪断発熱も加わり、熱可塑性樹脂が可塑化溶融される。
【0032】
次に、飢餓ゾーン23に一定圧力の物理発泡剤を導入し、飢餓ゾーン23を前記一定圧力に保持する(
図1のステップS2)。
【0033】
物理発泡剤としては、加圧流体を用いる。本実施形態において「流体」とは、液体、気体、超臨界流体のいずれかを意味する。また、物理発泡剤は、コストや環境負荷の観点から、二酸化炭素、窒素等が好ましい。本実施形態の物理発泡剤の圧力は比較的低圧であるため、例えば、窒素ボンベ、二酸化炭素ボンベ、空気ボンベ等の流体が貯蔵されたボンベから、減圧弁により一定圧力に減圧して取り出した流体を用いることができる。この場合、昇圧装置が不要となるので、製造装置全体のコストを低減できる。また、必要であれば所定の圧力まで昇圧した流体を物理発泡剤として用いてもよい。例えば、物理発泡剤として窒素を使用する場合、以下の方法で物理発泡剤を生成できる。まず、大気中の空気をコンプレッサーで圧縮しながら窒素分離膜を通して窒素を精製する。次に、精製した窒素をブースターポンプやシリンジポンプ等を用いて所定圧力まで昇圧し、物理発泡剤を生成する。
【0034】
飢餓ゾーン23に導入する物理発泡剤の圧力は一定であり、導入される物理発泡剤と同一の一定圧力に飢餓ゾーン23の圧力は保持される。この物発泡剤の圧力は、1MPa〜15MPaであることが好ましく、2MPa〜10MPaであることがより好ましく、2MPa〜8MPaであることが更により好ましい。溶融樹脂の種類により最適な圧力は異なるが、物理発泡剤の圧力を1MPa以上とすることで、発泡させるのに必要な量の物理発泡剤を溶融樹脂内に浸透させることができ、15MPa以下とすることで、装置負荷を低減できる。尚、溶融樹脂を加圧する物理発泡剤の圧力が「一定である」とは、所定圧力に対する圧力の変動幅が、好ましくは±10%以内、より好ましくは±5%以内であることを意味する。飢餓ゾーンの圧力は、例えば、可塑化シリンダ210の導入口202に対向する位置に設けられた圧力センサ(不図示)により測定される。
【0035】
本実施形態では、
図2に示すように、ボンベ100から導入速度調整容器300を介し、導入口202から飢餓ゾーン23へ物理発泡剤を供給する。物理発泡剤は、減圧弁151を用いて所定の圧力に減圧された後、昇圧装置等を経ることなく、導入口202から飢餓ゾーン23で導入される。本実施形態では、可塑化シリンダ210に導入する物理発泡剤の導入量、導入時間等を制御しない。そのため、それらを制御する機構、例えば、逆止弁や電磁弁等を用いた駆動弁は不要であり、導入口202は、駆動弁を有さず、常に開放されている。本実施形態では、ボンベ100から供給される物理発泡剤により、減圧弁151から、導入速度調整容器300を経て、可塑化シリンダ210内の飢餓ゾーン23まで、一定の物理発泡剤の圧力に保持される。
【0036】
物理発泡剤の導入口202は、従来の製造装置の物理発泡剤の導入口と比較して内径が大きい。このため、比較的低圧の物理発泡剤であっても、可塑化シリンダ210内に効率良く導入できる。また、溶融樹脂の一部が導入口202に接触して固化した場合であっても、内径が大きいため、完全に塞がることなく導入口として機能できる。一方、導入口202の内径が大き過ぎると、溶融樹脂の滞留が発生して成形不良の原因となり、また、導入口202に接続する導入速度調整容器300が大型化して装置全体のコストが上昇する。具体的には、導入口202の内径は、可塑化シリンダ210の内径の20%〜100%であることが好ましく、30%〜80%であることがより好ましい。または、可塑化シリンダ210の内径に依存せず、導入口202の内径は、3mm〜100mmが好ましく、5mm〜50mmがより好ましい。
【0037】
導入口202に接続する導入速度調整容器300は、一定以上の容積を有することで、可塑化シリンダ210へ導入される物理発泡剤の流速を緩やかにし、導入速度調整容器300内に物理発泡剤が滞留できる時間を確保できる。加熱させた可塑化シリンダ210の近傍に滞留することで、物理発泡剤は加温され、物理発泡剤と溶融樹脂との温度差が小さくなり、物理発泡剤の溶融樹脂への溶解量(浸透量)を安定化できる。即ち、導入速度調整容器300は、バッファー容器として機能する。一方で、導入速度調整容器300は、その容積が大きすぎると、装置全体のコストが上昇する。導入速度調整容器300の容積は、飢餓ゾーン23に存在する溶融樹脂の量にも依存するが、5mL〜10Lであることが好ましく、10mL〜1Lがより好ましい。導入速度調整容器300の容積をこの範囲とすることで、コストを考慮しながら物理発泡剤が滞留できる時間を確保できる。
【0038】
また、後述するように物理発泡剤は溶融樹脂に接触して浸透することにより、可塑化シリンダ210内で消費される。飢餓ゾーン23の圧力を一定に保持するために、消費された分の物理発泡剤が導入速度調整容器300から飢餓ゾーン23へ導入される。導入速度調整容器300の容積が小さすぎると、物理発泡剤の置換頻度が高くなるため、物理発泡剤の温度が不安定となり、その結果、物理発泡剤の供給が不安定になる虞がある。したがって、導入速度調整容器300は、1〜10分間に可塑化シリンダにおいて消費される量の物理発泡剤が滞留できる容積を有することが好ましい。
【0039】
尚、導入速度調整容器300は、可塑化シリンダ210と別個体の容器であってもよいし、可塑化シリンダ210と一体に形成され、可塑化シリンダ210の一部を構成してもよい。また、本実施形態では、飢餓ゾーン23に物理発泡剤のみを導入するが、本発明の効果に影響を与えない程度に、物理発泡剤以外の他の加圧流体を同時に飢餓ゾーン23に導入してもよい。この場合、飢餓ゾーン23に導入される物理発泡剤を含む加圧流体は、上述の一定圧力を有する。
【0040】
次に、溶融樹脂を可塑化ゾーン21から、圧縮ゾーン22、流動速度調整ゾーン25を経て、飢餓ゾーン23へ流動させる。溶融樹脂は、圧縮ゾーン22において圧縮された後、流動速度調整ゾーン25において流動速度が調整され(
図1のステップS3)、飢餓ゾーン23において飢餓状態となる(
図1のステップS4)。以下に、圧縮ゾーン22、流動速度調整ゾーン25及び飢餓ゾーン23のそれぞれゾーンについて、更に各ゾーンで行う本実施形態の発泡成形体の製造方法の各工程について説明する。
【0041】
まず、圧縮ゾーン22について説明する。本実施形態では、圧縮ゾーン22を飢餓ゾーン23の上流に設けることにより、飢餓ゾーン23において溶融樹脂を飢餓状態とする。飢餓状態は、飢餓ゾーン23の上流から飢餓ゾーン23への溶融樹脂の送り量と、飢餓ゾーン23からその下流への溶融樹脂の送り量とのバランスで決定され、前者の方が少ないと飢餓状態となる。本実施形態では、圧縮ゾーン22を飢餓ゾーン23の上流に設けることにより、この状態を実現する。
【0042】
圧縮ゾーン22には、上流側に位置する可塑化ゾーン21よりもスクリュ20の軸の直径(スクリュ径)を大きく(太く)し、スクリュフライトを段階的に浅くした大径部分20Aを設け、更に、大径部分20Aの下流側の端部にリング26を設ける。リング26は半割り構造であり、それら2分割してスクリュ20に被せて設置する。スクリュの軸の直径を大きくすると、可塑化シリンダ210の内壁とスクリュ20のクリアランスが縮小し、下流に送る樹脂供給量を低減できるため、溶融樹脂の流動抵抗を高められる。また、スクリュ20にリング26を設けることによっても同様に溶融樹脂の流動抵抗を高められる。したがって、本実施形態において、大径部分20A及びリング26は、溶融樹脂の流動抵抗を高める機構である。また、リング26は、上流側への物理発泡剤の逆流も抑制できる。このため、リング26は、圧縮ゾーン22とその下流の流動速度調整ゾーン25との間に設けることが好ましい。
【0043】
圧縮ゾーン22に設けられる溶融樹脂の流動抵抗を高める機構は、圧縮ゾーン22から飢餓ゾーン23へ供給される樹脂流量を制限するために一時的に溶融樹脂が通過する流路面積を縮小させる機構であれば、特に制限されない。本実施形態では、スクリュの大径部分20A及びリング26の両方を用いたが、片方のみ用いてもよい。また、流動抵抗を高める機構として、例えば、飢餓ゾーン23と比較して、スクリュフライトのピッチを狭めた部分、フライトの数を増やした部分、フライトの巻方向を逆にした部分をスクリュ20に設けてもよい。
【0044】
溶融樹脂の流動抵抗を高める機構は、スクリュとは別部材のリング等としてスクリュに設けてもよいし、スクリュの構造の一部としてスクリュと一体に設けてもよい。溶融樹脂の流動抵抗を高める機構は、スクリュとは別部材のリング等として設けると、リングを変更することにより溶融樹脂の流路であるクリアランス部の大きさを変更できるので、容易に溶融樹脂の流動抵抗の大きさを変更できるという利点がある。
【0045】
また、溶融樹脂の流動抵抗を高める機構以外に、溶融樹脂の逆流を防止する逆流防止機構(シール機構)を設けることによっても、飢餓ゾーン23において溶融樹脂を飢餓状態にできる。例えば、物理発泡剤の圧力により上流側に移動可能なリング、鋼球等のシール機構が挙げられる。但し、逆流防止機構は駆動部を必要とするため、樹脂滞留の虞がある。このため、駆動部を有さない流動抵抗を高める機構の方が好ましい。
【0046】
次に、流動速度調整ゾーン25について説明する。本実施形態では、圧縮ゾーン22と飢餓ゾーン23の間に、流動速度調整ゾーン25を設ける。流動速度調整ゾーン25の上流の圧縮ゾーン22における溶融樹脂の流動速度と、下流の飢餓ゾーン23における溶融樹脂の流動速度とを比較すると、飢餓ゾーン23における溶融樹脂の流動速度の方が早い。例えば、
図6に示すスクリュ90を用いた可塑化シリンダでは、圧縮ゾーン22と飢餓ゾーン23とが隣接して配置される。スクリュ90を用いた可塑化シリンダにおいても、飢餓ゾーン23において溶融樹脂を飢餓状態とすることは可能であるが、圧縮ゾーン22から飢餓ゾーン23へ溶融樹脂が流動するとき、流動速度は急激に上昇する。本発明者らは、圧縮ゾーン22と飢餓ゾーン23の間に、緩衝ゾーンとなる流動速度調整ゾーン25を設け、この急激な溶融樹脂の流動速度の変化(上昇)を抑制することにより、製造される発泡成形体の発泡性が向上することを見出した。
【0047】
溶融樹脂の流動速度は、例えば、可塑化スクリュ20の流動速度調整ゾーン25に位置する部分に、溶融樹脂の流動速度を調整する機構を設けることにより、調整することができる。本実施形態では、
図2及び
図4に示す可塑化スクリュ20を用いる。可塑化スクリュ20は、上流から順に、大径部分20Aと、減圧部20Cと、圧縮部20Dと、小径部分20Bとを有する。大径部分20Aは圧縮ゾーン22に位置し、減圧部20C及び圧縮部20Dは流動速度調整ゾーン25に位置し、小径部分20Bは飢餓ゾーン23に位置する。減圧部20C及び圧縮部20Dが、溶融樹脂の流動速度を調整する機構に相当する。減圧部20Cは、上流から下流に向って連続的にスクリュ径(スクリュの軸の直径)が小さく(細く)なり、それに伴いスクリュフライトの深さが連続的に深くなる。圧縮部20Dは、その上流部分及び下流部分と比較して、スクリュ径が大きく、スクリュフライトの深さが浅い。即ち、本実施形態では、減圧部20Cのスクリュ20の軸の直径は、圧縮ゾーン22に位置する部分のスクリュ20の軸の直径の最大値(大径部分20A)よりも小さい。そして、圧縮部20Dのスクリュ20の軸の直径は、減圧部20Cのスクリュ20の軸の直径の最小値よりも大きい。圧縮ゾーン22から流動速度調整ゾーン25に流動してきた溶融樹脂は、スクリュフライトの深さが深い減圧部20Cにおいて減圧された後、スクリュフライトの深さが浅い圧縮部20Dにより再圧縮され、その後、飢餓ゾーン23へ流動する。流動速度調整ゾーン25において、溶融樹脂を減圧及び圧縮(加圧)することで、流動速度調整ゾーン25における溶融樹脂の滞留時間が確保できる。これにより、流動速度調整ゾーン25は緩衝ゾーン又は溶融樹脂滞留ゾーンとして働き、溶融樹脂の流動速度を調整し(
図1のステップS3)、この結果、圧縮ゾーン22から飢餓ゾーン23へ流動する溶融樹脂の急激な流動速度の上昇を抑制できる。
【0048】
尚、本実施形態で用いたスクリュ20は、減圧部20C及び圧縮部20Dを1組しか有さないが、減圧部20C及び圧縮部20Dを複数組有して、複数回、溶融樹脂の減圧及び圧縮を繰り返してもよい。また、スクリュ20において、減圧部20Cのスクリュ径は上流から下流に向って連続的に小さくなるが、この構成に限定されない。減圧部20Cのスクリュ径は大径部分20A及び圧縮部20Dのスクリュ径より小さければ、減圧部20Cにおいて溶融樹脂の減圧は可能である。したがって、例えば、
図5(a)に示すように、減圧部20Cのスクリュ径は、一定の大きさ(太さ)であってもよい。
【0049】
圧縮ゾーン22から飢餓ゾーン23の間に緩衝ゾーンとなる流動速度調整ゾーン25を設けることで、発泡成形体の発泡性が向上する理由の詳細は不明であるが、流動速度調整ゾーン25に溶融樹脂が滞留することにより物理発泡剤と溶融樹脂の接触時間が長くなることが一因ではないかと推測される。物理発泡剤は、飢餓ゾーン23に導入されるが、上流に位置する流動速度調整ゾーン25にも拡散し、そこで溶融樹脂と接触する。これにより、より多くの物理発泡剤が溶融樹脂に溶解する。また、流動速度調整ゾーン25を設けることで、下流の飢餓ゾーン23において溶融樹脂の飢餓状態をより安定に維持し易くなる。これによっても、物理発泡剤と溶融樹脂の接触が促進され、より多くの物理発泡剤が溶融樹脂に溶解する。更に、本実施形態においては、スクリュ20の圧縮部20Dにより溶融樹脂が圧縮されることによっても、物理発泡剤の溶融樹脂への溶解が促進されると推測される。
【0050】
上述のように、
図2に示す装置1000では、
図4に示す可塑化スクリュ20の流動速度調整ゾーン25に位置する部分に、減圧部20C及び圧縮部20Dを設けることによって、即ち、スクリュフライトの深さを変化させることによって、更に換言すれば、スクリュ径の大きさ(太さ)を変化させることによって溶融樹脂の流動速度を調整するが、本実施形態はこれに限定されない。流動速度調整ゾーン25において、溶融樹脂の流動速度を調整できる構成であれば、任意の構成の可塑化スクリュを用いることができる。例えば、飢餓ゾーン23と比較して、スクリュ20のフライトのピッチを狭める、フライトの数を増やす、フライトの巻方向を逆にする等によっても、流動速度調整ゾーン25における溶融樹脂の流動速度を調整できる。
【0051】
また、
図5(b)に示すスクリュ20bは、流動速度調整ゾーン25に位置する部分に、複数の切欠きnが形成されたスクリュフライトFを有する。複数の切欠きnが形成されたスクリュフライトFが、溶融樹脂の流動速度を調整する機構に相当する。スクリュフライトに切欠きが設けられていると溶融樹脂は流動し難いため、流動速度調整ゾーン25に溶融樹脂が滞留する。これにより、流動速度調整ゾーン25は緩衝ゾーン又は溶融樹脂の滞留ゾーンとして働き、溶融樹脂の流動速度を調整し(
図1のステップS3)、この結果、圧縮ゾーン22から飢餓ゾーン23へ流動する溶融樹脂の急激な流動速度の上昇を抑制できる。また、スクリュ20bには、複数の切欠きnが形成されたスクリュフライトにより、所謂、ラビリンス構造が形成されてもよい。この場合、ラビリンス構造が、溶融樹脂の流動速度を調整する機構に相当する。ラビリンス構造により、溶融樹脂は、圧縮ゾーン22から飢餓ゾーン23へ向かって、流動速度を徐々に上げながら流動速度調整ゾーン25を通過する。これにより、流動速度調整ゾーン25は、上流の圧縮ゾーン22の溶融樹脂の流動速度を徐々に速めて、急激な流動速度の変化無しに、下流の飢餓ゾーン23へ溶融樹脂を送ることができる。また、圧縮ゾーン22と飢餓ゾーン23とでは、樹脂圧力にも差ができる。圧縮ゾーン22は樹脂圧力が高く、飢餓ゾーン23は樹脂圧力が低い。溶融樹脂は、圧縮ゾーン22から飢餓ゾーン23へ向かって、圧力を徐々に下げながら流動速度調整ゾーン25を通過する。これにより、流動速度調整ゾーン25は、上流の圧縮ゾーン22の溶融樹脂の圧力を徐々に下げ、急激な樹脂圧力の変化無しに、下流の飢餓ゾーン23へ溶融樹脂を送ることができる。この観点からは、流動速度調整ゾーン25は、溶融樹脂圧力の徐減圧ゾーンでもある。
【0052】
また、
図5(c)に示すスクリュ20cのように、スクリュの流動速度調整ゾーン25に位置する部分は、複数の切欠きnが形成されたスクリュフライトFを有し、更に、スクリュ径が上流から下流に向って連続的に小さくなっていてもよい。
【0053】
本実施形態において、溶融樹脂の流動方向における流動速度調整ゾーン25の長さは、可塑化シリンダ210の内径の1倍〜6倍が好ましく、2倍〜4倍がより好ましい。流動速度調整ゾーン25の長さがこの範囲であれば、十分に、溶融樹脂の速度を調整できる。ここで、流動速度調整ゾーン25の長さとは、例えば、スクリュ20において、リング26の下流側で且つ小径部分20Bの上流側の部分の長さである。
図4に及び
図5(a)に示すスクリュ20及び20aにおいては、流動速度調整ゾーン25の長さは、溶融樹脂の流動方向における減圧部20C及び圧縮部20Dの長さの合計である。
【0054】
次に、飢餓ゾーン23について説明する。上述したように、圧縮ゾーン22から流動速度調整ゾーン25を経て飢餓ゾーン23に供給される樹脂流量が低下し、飢餓ゾーン23においては、溶融樹脂が未充満(飢餓状態)となる(
図1のステップS4)。溶融樹脂の飢餓状態を促進するために、スクリュ20は、圧縮ゾーン22に位置する部分と比較して、即ちリング26の上流側の部分と比較して、飢餓ゾーン23に位置する部分の軸の直径が小さく(細く)、且つスクリュフライトが深い構造(小径部分20B)を有する。
【0055】
本実施形態では、飢餓ゾーン23における溶融樹脂の飢餓状態を安定化させるために、可塑化シリンダ210へ供給する熱可塑性樹脂の供給量を制御してもよい。熱可塑性樹脂の供給量が多すぎると飢餓状態を維持することが困難となるからである。例えば、汎用のフィーダースクリュを用いて、熱可塑性樹脂の供給量を制御する。
【0056】
更に、本実施形態の製造方法は、導入口202から溶融樹脂が膨出することを検出することと、導入口202から溶融樹脂が膨出することを検出したとき、可塑化シリンダ210を含む製造装置1000の駆動を停止することを含んでもよい。飢餓ゾーン23は、スクリュ20のフライトが深く、堆積する樹脂量が少ないため、導入口202の内径が大きくとも、溶融樹脂が導入口202から膨出することは少ない。しかし、以下に述べる理由により、本実施形態の成形装置1000は、導入口202からの溶融樹脂の膨出することを検出する膨出検出機構を備えることが好ましい。飢餓ゾーン23において、溶融樹脂の飢餓状態を維持するためには、圧縮ゾーン22における樹脂の流動性(流れ易さ)と飢餓ゾーン23における流動性に一定以上の差がある必要がある。この流動性の差を得るために、圧縮ゾーン22に供給される溶融樹脂の量、流動抵抗となるリング26の外径、計量条件等の最適化が必要である。一旦、安定な成形条件を見出せば安定した成形が行なえるが、最適な成形条件に到るまでは、導入口202から溶融樹脂が膨出する虞がある。したがって、特に発泡成形体を量産する場合には、量産前に、膨出検出機構を備えた成形機を用いて製造条件を最適化することが好ましい。
【0057】
本実施形態では、導入速度調整容器300に加圧雰囲気においても樹脂の膨出を安定に機械的に検出できる膨出検出機構310を設ける。
図3に示すように、導入速度調整容器300は、下部が導入口202に接続し、内部に物理発泡剤が滞留する空間38を有する円筒状の本体30と、本体30に接続して空間38密閉し、空間38に連通する貫通孔37が形成されている蓋31とを有する。空間38には、配管154によりボンベ100が接続し、配管154を介して物理発泡剤が供給される。物理発泡剤が滞留するため、空間38は常に加圧状態である。加圧状態の空間38を確実に密閉するため、蓋31はシール36を有する。導入速度調整容器300が備える膨出検出機構310は、空間38及び貫通孔37内に配置され、ベントから膨出する溶融樹脂が接触することにより、その位置が上方向に変位する検出ロッド32(移動部材)と、貫通孔37を塞ぐように蓋31の上に配置され、検出ロッド32の位置変位を非接触で高精度に検出する磁気センサ33(検出部)とを有する。磁気センサ33は、信号線34により成形装置1000の制御装置(不図示)に接続する。
【0058】
検出ロッド32は、上部が貫通孔37内に保持され、下部が貫通孔37から空間38内に延び、更に下端部32aは導入口202内に挿入される。また、検出ロッド32は、上端部に永久磁石35を有する。検出ロッド32は、周囲の部品に干渉されずに無負荷で貫通孔37内に保持されているため、加圧雰囲気下においても容易に上方向(磁気センサ33に向かう方向)に移動できる。
【0059】
導入口202から溶融樹脂が膨出しようとした場合、溶融樹脂はロッド32の下端部32aに接触し、検出ロッド32を上方向に押し上げる。これに伴い永久磁石35の位置も上方向に変位する。磁気センサ33は、永久磁石35の僅かな位置変位を非接触で高精度に検出し、信号線34を介して製造装置1000の制御装置(不図示)に信号を送る。これにより制御装置は樹脂の膨出を検出する。そして、制御装置はエラー信号を発信して、可塑化シリンダ210を含む製造装置1000の駆動を停止させる。これにより、導入速度調整容器300の空間38が溶融樹脂で満杯となり、蓋31を本体30から取り外せない等のトラブルを防げる。
【0060】
本実施形態において、溶融樹脂の流動方向における飢餓ゾーン23の長さは、溶融樹脂と物理発泡剤との接触面積や接触時間を確保するために長いほうが好ましいが、長すぎると成形サイクルやスクリュ長さが長くなる弊害生じる。このため、飢餓ゾーンの長さは、可塑化シリンダ210の内径の2倍〜12倍が好ましく、4倍〜10倍がより好ましい。また、飢餓ゾーン23の長さは、射出成形における計量ストーロークの全範囲を賄うことが好ましい。即ち、溶融樹脂の流動方向における飢餓ゾーン23の長さは、射出成形における計量ストーロークの長さ以上であることが好ましい。溶融樹脂の可塑化計量及び射出に伴ってスクリュ20は前方及び後方に移動するが、飢餓ゾーン23の長さを計量ストーロークの長さ以上とすることで、発泡成形体の製造中、常に、導入口202を飢餓ゾーン23内に配置する(形成する)ことができる。換言すれば、発泡成形体の製造中にスクリュ20が前方及び後方に動いても、飢餓ゾーン23以外のゾーンが、導入口202の位置に来ることはない。これにより、導入口202から導入される物理発泡剤は、発泡成形体の製造中、常に、飢餓ゾーン23に導入される。このように十分且つ適当な大きさ(長さ)を有する飢餓ゾーンを設け、そこに一定圧力の物理発泡剤を導入することで、飢餓ゾーン23を一定圧力により保持し易くなる。本実施形態においては、飢餓ゾーン23の長さは、
図2に示すように、スクリュ20において、スクリュ20の軸の直径及びスクリュフライトの深さが一定である部分の長さ、即ち、スクリュ20の小径部分20Bの長さである(
図4参照)。
【0061】
次に、飢餓ゾーン23を一定圧力に保持した状態で、飢餓ゾーン23において飢餓状態の溶融樹脂と一定圧力の前記物理発泡剤とを接触させる(
図1のステップS5)。即ち、飢餓ゾーン23において、溶融樹脂を物理発泡剤により一定圧力で加圧する。飢餓ゾーン23は溶融樹脂が未充満(飢餓状態)であり物理発泡剤が存在できる空間があるため、物理発泡剤と溶融樹脂とを効率的に接触させることができる。溶融樹脂に接触した物理発泡剤は、溶融樹脂に浸透して消費される。物理発泡剤が消費されると、導入速度調整容器300中に滞留している物理発泡剤が飢餓ゾーン23に供給される。これにより、飢餓ゾーン23の圧力は一定圧力に保持され、溶融樹脂は一定圧力の物理発泡剤に接触し続ける。
【0062】
従来の物理発泡剤を用いた発泡成形では、可塑化シリンダに所定量の高圧の物理発泡剤を所定時間内に強制的に導入していた。したがって、物理発泡剤を高圧力に昇圧し、溶融樹脂への導入量、導入時間等を正確に制御する必要があり、物理発泡剤が溶融樹脂に接触するのは、短い導入時間のみであった。これに対して本実施形態では、可塑化シリンダ210に物理発泡剤を強制的に導入するのではなく、飢餓ゾーン23の圧力が一定となるように、一定圧力の物理発泡剤を連続的に可塑化シリンダ内に供給し、連続的に物理発泡剤を溶融樹脂に接触させる。これにより、温度及び圧力により決定される溶融樹脂への物理発泡剤の溶解量(浸透量)が、安定化する。また、本実施形態の物理発泡剤は、常に溶融樹脂に接触しているため、必要十分な量の物理発泡剤が溶融樹脂内に浸透できる。これにより、本実施形態で製造する発泡成形体は、従来の物理発泡剤を用いた成形方法と比較して低圧の物理発泡剤を用いているのにもかかわらず、発泡セルが微細である。
【0063】
また、本実施形態の製造方法は、物理発泡剤の導入量、導入時間等を制御する必要が無いため、逆止弁や電磁弁等の駆動弁、更にこれらを制御する制御機構が不要となり、装置コストを抑えられる。また、本実施形態で用いる物理発泡剤は従来の物理発泡剤よりも低圧であるため装置負荷も小さい。
【0064】
本実施形態では、発泡成形体の製造中、常に、飢餓ゾーン23を一定圧力に保持する。つまり、可塑化シリンダ内で消費された物理発泡剤を補うために、前記一定圧力の物理発泡剤を連続的に供給しながら、発泡成形体の製造方法の全ての工程が実施される。また、本実施形態では、例えば、連続で複数ショットの射出成形を行う場合、射出工程、成形体の冷却工程及び成形体の取出工程が行われている間も、次のショット分の溶融樹脂が可塑化シリンダ内で準備されており、次のショット分の溶融樹脂が物理発泡剤により一定圧力で加圧される。つまり、連続で行う複数ショットの射出成形では、可塑化シリンダ内に、溶融樹脂と一定圧力の物理発泡剤が常に存在して接触している状態、つまり、可塑化シリンダ内で溶融樹脂が物理発泡剤により一定圧力で常時、加圧された状態で、可塑化計量工程、射出工程、成形体の冷却工程、取り出し工程等を含む、射出成形の1サイクルが行われる。同様に、押出成形等の連続成形を行う場合にも、可塑化シリンダ内に、溶融樹脂と一定圧力の物理発泡剤が常に存在して接触している状態、つまり、可塑化シリンダ内で溶融樹脂が物理発泡剤により一定圧力で常時、加圧された状態で成形が行われる。
【0065】
次に、物理発泡剤を接触させた溶融樹脂を発泡成形体に成形する(
図1のステップS6)。本実施形態で用いる可塑化シリンダ210は、飢餓ゾーン23の下流に、飢餓ゾーン23に隣接して配置され、溶融樹脂が圧縮されて圧力が高まる再圧縮ゾーン24を有する。まず、可塑化スクリュ20の回転により、飢餓ゾーン23の溶融樹脂を再圧縮ゾーン24に流動させる。物理発泡剤を含む溶融樹脂は、再圧縮ゾーン24において圧力調整され、可塑化スクリュ20の前方に押し出されて計量される。このとき、可塑化スクリュ20の前方に押し出された溶融樹脂の内圧は、可塑化スクリュ20の後方に接続する油圧モータ又は電動モータ(不図示)により、スクリュ背圧として制御される。本実施形態では、溶融樹脂から物理発泡剤を分離させずに均一相溶させ、樹脂密度を安定化させるため、可塑化スクリュ20の前方に押し出された溶融樹脂の内圧、即ち、スクリュ背圧は、一定に保持されている飢餓ゾーン23の圧力よりも1〜4MPa程度高く制御することが好ましい。尚、本実施形態では、スクリュ20前方の圧縮された樹脂が上流側に逆流しないように、スクリュ20の先端にチェックリング50が設けられる。これにより、計量時、飢餓ゾーン23の圧力は、スクリュ20前方の樹脂圧力に影響されない。
【0066】
発泡成形体の成形方法は、特に限定されず、例えば、射出発泡成形、押出発泡成形、発泡ブロー成形等により成形体を成形できる。本実施形態では、
図2に示す可塑化シリンダ210から、金型251内のキャビティ253に、計量した溶融樹脂を射出充填して射出発泡成形を行う。射出発泡成形としては、金型キャビティ253内に、金型キャビティ容積の75%〜95%の充填容量の溶融樹脂を充填して、気泡が拡大しながら金型キャビティを充填するショートショット法を用いてもよいし、また、金型キャビティ容積100%の充填量の溶融樹脂を充填した後、キャビティ容積を拡大させて発泡させるコアバック法を用いてもよい。得られる発泡成形体は内部に発泡セルを有するため、熱可塑性樹脂の冷却時の収縮が抑制されてヒケやソリが軽減され、低比重の成形体を得られる。
【0067】
以上説明した本実施形態の製造方法では、物理発泡剤の溶融樹脂への導入量、導入時間等を制御する必要がないため、複雑な制御装置を省略又は簡略化でき、装置コストを削減できる。また、本実施形態の発泡成形体の製造方法は、飢餓ゾーン23を一定圧力に保持した状態で、飢餓ゾーン23において、飢餓状態の溶融樹脂と前記一定圧力の物理発泡剤とを接触させる。これにより、物理発泡剤の溶融樹脂に対する溶解量(浸透量)を単純な機構により安定化できる。
【実施例】
【0068】
以下、本発明について実施例を用いて更に説明する。但し、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0069】
[実施例1]
本実施例では、熱可塑性樹脂としてミネラル強化ポリアミド6(PA6)を用い、物理発泡剤として窒素を利用して発泡成形体を製造した。
【0070】
(1)製造装置
本実施例では、上述した実施形態で用いた
図2に示す製造装置1000を用いた。製造装置1000の詳細について説明する。上述のように、製造装置1000は射出成形装置であり、可塑化シリンダ210と、物理発泡剤を可塑化シリンダ210に供給する物理発泡剤供給機構であるボンベ100と、金型251が設けられた型締めユニット250と、可塑化シリンダ210及び型締めユニット250を動作制御するための制御装置(不図示)を備える。
【0071】
可塑化シリンダ210のノズル先端29には、エアシリンダの駆動により開閉するシャットオフバルブ28が設けられ、可塑化シリンダ210の内部を高圧に保持できる。ノズル先端29には金型251が密着し、金型251が形成するキャビティ253内にノズル先端29から溶融樹脂が射出充填される。可塑化シリンダ210の上部側面には、上流側から順に、熱可塑性樹脂を可塑化シリンダ210に供給するための樹脂供給口201及び物理発泡剤を可塑化シリンダ210内に導入するための導入口202が形成される。これらの樹脂供給口201及び導入口202にはそれぞれ、樹脂供給用ホッパ211、導入速度調整容器300が配設される。導入速度調整容器300には、ボンベ100が、バッファータンク153、減圧弁151及び圧力計152を介して、配管154により接続する。また、可塑化シリンダ210の導入口202に対向する位置には、圧力をモニターするセンサ(不図示)が設けられている。
【0072】
スクリュ20は、熱可塑性樹脂の可塑化溶融を促進し、溶融樹脂の計量及び射出を行うため、可塑化シリンダ210内において回転及び進退自在に配設されている。スクリュ20は、
図4に示すように、上流側から大径部分20Aと、減圧部20Cと、圧縮部20Dと、小径部分20Bとを有する。また、可塑化シリンダ210内には、上流側から順に、熱可塑性樹脂が可塑化溶融される可塑化ゾーン21、溶融樹脂が圧縮されて圧力が高まる圧縮ゾーン22、溶融樹脂の流動速度を調整する流動速度調整ゾーン25、溶融樹脂が未充満となる飢餓ゾーン23、飢餓ゾーンにおいて減圧された溶融樹脂が再度圧縮される再圧縮ゾーン24が形成される。
【0073】
製造装置1000において、可塑化シリンダ210の内径は35mmであり、導入口202の内径は8mmであった。したがって、導入口202の内径は、可塑化シリンダ210の内径の約23%であった。導入速度調整容器300の容積は、約80mLであった。また、溶融樹脂の流動方向における流動速度調整ゾーン25の長さ(減圧部20C及び圧縮部20Dの長さの合計)は70mmであった。したがって、流動速度調整ゾーン25の長さは、可塑化シリンダ210の内径の2倍であった。また、溶融樹脂の流動方向における飢餓ゾーン23の長さ(小径部分20Bの長さ)は210mmであった。したがって、飢餓ゾーン23の長さは、可塑化シリンダ210の内径の6倍であった。また、本実施例では、キャビティ253の大きさが100mm×200mm×3mmである金型を用いた。
【0074】
(2)発泡成形体の製造
本実施例では、ボンベ100として、窒素が14.5MPaで充填された容積47Lの窒素ボンベを用いた。まず、減圧弁151の値を4MPaに設定し、ボンベ100を開放し、容積0.99Lのバッファー容器153、減圧弁151、圧力計152、更に導入速度調整容器300を介して、可塑化シリンダ210の導入口202から、飢餓ゾーン23へ4MPaの窒素を供給した。成形体の製造中、ボンベ100は常時、開放した状態とした。
【0075】
可塑化シリンダ210において、バンドヒータ(不図示)により、可塑化ゾーン21を220℃、圧縮ゾーン22を240℃、飢餓ゾーン23を220℃、再圧縮ゾーン24を240℃に調整した。そして、樹脂供給用ホッパ211から熱可塑性樹脂の樹脂ペレット(東洋紡製、グラマイドT777−02)を供給し、スクリュ20を正回転させた。これにより、可塑化ゾーン21において、熱可塑性樹脂を加熱、混練し、溶融樹脂とした。スクリュ20を背圧6MPa、回転数100rpmにて正回転することにより、溶融樹脂を可塑化ゾーン21から圧縮ゾーン22に流動させ、更に、流動速度調整ゾーン25及び飢餓ゾーン23に流動させた。
【0076】
溶融樹脂は、スクリュ大径部分20A及びリング26と、可塑化シリンダ210の内壁との隙間から流動速度調整ゾーン25を経て、飢餓ゾーン23へ流動するため、飢餓ゾーン23への溶融樹脂の供給量が制限された。これにより、リング26の上流側の圧縮ゾーン22においては溶融樹脂が圧縮されて圧力が高まり、下流側の飢餓ゾーン23においては、溶融樹脂が未充満(飢餓状態)となった。また、溶融樹脂は、飢餓ゾーン23に流動する手前(上流側)の流動速度調整ゾーン25において、減圧及び圧縮されることで流動速度が調整され、その後、飢餓ゾーン23へ流動した。飢餓ゾーン23では、溶融樹脂が未充満(飢餓状態)であるため、溶融樹脂が存在しない空間に導入口202から導入された物理発泡剤(窒素)が存在し、その物理発泡剤により溶融樹脂は加圧された。
【0077】
更に、溶融樹脂は再圧縮ゾーン24に送られて再圧縮され、可塑化シリンダ210の先端部において1ショット分の溶融樹脂が計量された。その後、シャットオフバルブ28を開放して、キャビティ253内に、キャビティ253の容積の90%の充填率となる様に溶融樹脂を射出充填して平板形状の発泡成形体を成形した(ショートショット法)。成形後、発泡成形体が冷却するのを待って、金型内から発泡成形体を取り出した。冷却時間は、10秒とした。成形サイクルは18秒であり、ソリッド成形体(無発泡の成形体)の成形サイクルと同等の値であった。
【0078】
以上説明した成形体の射出成形を連続して100ショット行い、100個の発泡成形体を得た。100個の発泡成形体の製造中、常時、圧力センサ(不図示)により可塑化シリンダ210内の飢餓ゾーン23の圧力を計測した。その結果、飢餓ゾーン23の圧力は、常に4MPaで一定であった。また、飢餓ゾーン23へ供給される窒素の圧力を示す圧力計152の値も、発泡成形体の製造中、常時、4MPaであった。以上から、可塑化計量工程、射出工程、成形体の冷却工程、取り出し工程等を含む射出成形の1サイクルを通して、飢餓ゾーン23において、4MPaの窒素により溶融樹脂が、常時、加圧されていたこと、及び100個の成形体の連続成形の間、飢餓ゾーン23において、窒素により溶融樹脂が、常時、加圧されていたことが確認できた。また、100個の発泡成形体の製造中、膨出検出機構310は溶融樹脂の膨出を検出せず、飢餓ゾーン23の状態が安定であったことが確認された。
【0079】
得られた100個の発泡成形体の重量ばらつきを標準偏差(σ)を重量平均値(ave.)で割った値(σ/ave.(%))で評価した。その結果、(σ/ave.)=0.21%であった。同様の評価をソリッド成形体(無発泡の成形体)で行ったところ、(σ/ave.)=0.22%で、本実施例と同等の値であった。この結果から、本実施例の発泡成形体の重量安定性は、ソリッド成形体と同等であることがわかった。
【0080】
本実施例では、ソリッド成形体と比較して比重が約10%程度軽く、ソリが矯正された発泡成形体を連続的に安定して製造できた。比重低減率は、物理発泡剤の溶解量(浸透量)に影響を受けると考えられる。この結果から、物理発泡剤の溶融樹脂に対する溶解量(浸透量)が安定化していたことがわかった。また、分離したガスが成形体表面にて転写して表面性を悪化させるスワールマークは、僅かな発生にとどまっていた。更に、得られた発泡成形体断面の発泡セル状態を観察した。この結果、発泡セルの平均セル径は10μmと微細であることがわかった。
【0081】
[実施例2]
本実施例では、物理発泡剤として二酸化炭素用いた。したがって、物理発泡剤供給装置であるボンベ100として、圧力6MPa液体二酸化炭素ボンベを用いた。そして、減圧弁151の値を4.5MPaに設定した。それ以外は、実施例1と同様の方法により、連続して100個の発泡成形体を製造した。
【0082】
発泡成形体の製造中、常時、圧力センサ(不図示)により可塑化シリンダ210内の飢餓ゾーン23の圧力を計測した。その結果、飢餓ゾーン23の圧力は、常に4.5MPaで一定であった。また、飢餓ゾーン23へ供給される二酸化炭素の圧力を示す圧力計152の値も、発泡成形体の製造中、常時、4.5MPaであった。以上から、可塑化計量工程、射出工程、成形体の冷却工程、取り出し工程等を含む射出成形の1サイクルを通して、飢餓ゾーン23において、4.5MPaの二酸化炭素により溶融樹脂が、常時、加圧されていたこと、及び100個の成形体の連続成形の間、飢餓ゾーン23において、二酸化炭素により溶融樹脂が、常時、加圧されていたことが確認できた。また、100個の発泡成形体の製造中、膨出検出機構310は溶融樹脂の膨出を検出せず、飢餓ゾーン23の状態が安定であったことが確認された。
【0083】
得られた100個の発泡成形体の重量ばらつきを標準偏差(σ)を重量平均値(ave.)で割った値(σ/ave.(%))で評価した。その結果、(σ/ave.)=0.24%であった。同様の評価をソリッド成形体(無発泡の成形体)で行ったところ、実施例1の場合と同様に、(σ/ave.)=0.22%であり、本実施例と同等の値であった。この結果から、本実施例の発泡成形体の重量安定性は、ソリッド成形体と同等であることがわかった。
【0084】
本実施例では、ソリッド成形体と比較して、比重が約10%程度軽く、ソリが矯正された発泡成形体を連続的に安定して製造できた。この結果から、物理発泡剤の溶融樹脂に対する溶解量(浸透量)が安定化していたことがわかった。更に、得られた発泡成形体断面の発泡セル状態を観察した。この結果、発泡セルの平均セル径は50μmと実施例1と比較して大きかった。本実施例と実施例1との発泡セルの大きさの相違は、物理発泡剤の種類の相違に起因すると推測される。
【0085】
本実施例の結果から、物理発泡剤として二酸化炭素を用いた場合も、飢餓ゾーン23の圧力保持を簡便な方法で行うことができ、物理発泡剤として窒素を用いた実施例1と同様の効果を得られることが分かった。
【0086】
[実施例3]
本実施例では、熱可塑性樹脂として、無機フィラーを含むポリプロピレン(PP)樹脂を用いた。また、減圧弁151の値を8MPaに設定し、発泡体成形方法としてコアバック法を用いた。それ以外は、実施例1と同様の方法により、発泡成形体を製造した。
【0087】
無機フィラーなどの強化材を含まないPP樹脂ペレット(プライムポリマー製、プライムポリプロ J105G)と、無機フィラーとしてタルクを80重量%含むマスターバッチペレット(出光ライオンコンポジット製、MP480)とを重量比率が80:20となるように混合した。実施例1と同様に、樹脂供給用ホッパ211から混合した樹脂材料を樹可塑化シリンダ210内へ供給し、可塑化シリンダ210内で樹脂材料を可塑化計量した。シャットオフバルブ36を開放して、キャビティ253内にキャビティ253の容積の100%の充填率となる様に溶融樹脂を射出充填し、その3秒後に、型締めユニット250を後退駆動させてキャビティ容積が100%から200%に拡大するように金型を開いて発泡成形体を成形した(コアバック法)。成形後、発泡成形体が冷却するのを待って、金型内から発泡成形体を取り出した。冷却時間は、30秒とした。尚、本実施例ではコアバック法を用いたため、ショートショット法を用いた実施例1と比較して、成形体の肉厚が増え断熱効果が高くなるため、冷却時間を実施例1より長くした。
【0088】
以上説明した成形体の射出成形を連続して30ショット行い、30個の発泡成形体を得た。発泡成形体の製造中、常時、圧力センサ(不図示)により可塑化シリンダ210内の飢餓ゾーン23の圧力を計測した。その結果、飢餓ゾーン23の圧力は、常に8MPaで一定であった。また、飢餓ゾーン23へ供給される窒素の圧力を示す圧力計152の値も、発泡成形体の製造中、常時、8MPaであった。以上から、可塑化計量工程、射出工程、成形体の冷却工程、取り出し工程等を含む射出成形の1サイクルを通して、飢餓ゾーン23において、8MPaの窒素により溶融樹脂が、常時、加圧されていたこと、及び30個の成形体の連続成形の間、飢餓ゾーン23において、窒素により溶融樹脂が、常時、加圧されていたことが確認できた。
【0089】
本実施例では、ソリッド成形体と比較して、比重が約48%程度軽く、ソリが矯正された発泡成形体を連続的に安定して製造できた。この結果から、物理発泡剤の溶融樹脂に対する溶解量(浸透量)が安定化していたことがわかった。また、得られた発泡成形体の表面状態を観察した。分離したガスが成形体表面に転写して表面性を悪化させるスワールマークは、僅かな発生にとどまっていた。更に、得られた発泡成形体断面の発泡セル状態を観察した。コア層近傍における発泡セルの平均セル径は20μmと微細であった。
【0090】
[実施例4]
本実施例では、化学発泡剤を含む熱可塑性樹脂を用いた。熱可塑性樹脂としては無機フィラーを含むポリプロピレン(PP)樹脂を用い、化学発泡剤としては炭酸水素ナトリウムを用いた。物理発泡剤として二酸化炭素用いた。物理発泡剤供給装置であるボンベ100として、圧力6MPa液体二酸化炭素ボンベを用い、減圧弁151の値を3MPaに設定した。また、発泡体成形方法としてコアバック法を用いた。それ以外は、実施例1と同様の方法により、発泡成形体を製造した。
【0091】
無機フィラーなどの強化材を含まないPP樹脂ペレット(プライムポリマー製、プライムポリプロ J105G)(ペレットA)と、無機フィラーとしてタルクを80重量%含むマスターバッチペレット(出光ライオンコンポジット製、MP480)(ペレットB)と、炭酸水素ナトリウムの粉末を20重量%含むマスターバッチペレット(三協化成社製、セルマイクマスターバッチ)(ペレットC)とを用い、ペレットAとペレットBとの重量比率が80:20、炭酸水素ナトリウムの含有量が1.0重量%となるように混合した。
【0092】
実施例1と同様に、樹脂供給用ホッパ211から樹脂材料を可塑化シリンダ210内へ供給し、可塑化シリンダ210内で樹脂材料の可塑化計量を行った。シャットオフバルブ36を開放して、キャビティ253内にキャビティ253の内容積の100%の充填率となる様に溶融樹脂を射出充填し、その3秒後に、型締めユニット250を後退駆動させてキャビティ容積が100%から200%に拡大するように金型を開いて発泡成形体を成形した(コアバック法)。成形後、発泡成形体が冷却するのを待って、金型内から発泡成形体を取り出した。冷却時間は、30秒とした。尚、本実施例ではコアバック法を用いたため、ショートショット法を用いた実施例1と比較して、成形体の肉厚が増え断熱効果が高くなるため、冷却時間を実施例1より長くした。
【0093】
以上説明した成形体の射出成形を連続して30ショット行い、30個の発泡成形体を得た。発泡成形体の製造中、常時、圧力センサ(不図示)により可塑化シリンダ210内の飢餓ゾーン23の圧力を計測した。その結果、飢餓ゾーン23の圧力は、常に3MPaで一定であった。また、飢餓ゾーン23供給される二酸化炭素の圧力を示す圧力計152の値も、発泡成形体の製造中、常時、3MPaであった。以上から、可塑化計量工程、射出工程、成形体の冷却工程、取り出し工程等を含む射出成形の1サイクルを通して、飢餓ゾーン23において、3MPaの二酸化炭素により溶融樹脂が、常時、加圧されていたことが確認できた。
【0094】
本実施例では、ソリッド成形体と比較して、比重が約35%程度軽く、ソリが矯正された発泡成形体を連続的に安定して製造できた。この結果から、物理発泡剤の溶融樹脂に対する溶解量(浸透量)が安定化していたことがわかった。また、得られた発泡成形体の表面状態を観察した。分離したガスが成形体表面に転写して表面性を悪化させるスワールマークは、僅かな発生にとどまっていた。更に、得られた発泡成形体断面の発泡セル状態を観察した。発泡セルの平均セル径は80μmであった。