特許第6843953号(P6843953)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843953
(24)【登録日】2021年2月26日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】動物モデル及び治療用分子
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/027 20060101AFI20210308BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20210308BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20210308BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20210308BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20210308BHJP
   C07K 16/40 20060101ALI20210308BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20210308BHJP
   A61P 3/06 20060101ALN20210308BHJP
   A61P 19/02 20060101ALN20210308BHJP
   A61P 11/06 20060101ALN20210308BHJP
【FI】
   A01K67/027ZNA
   C12P21/08
   C12N15/13
   C12N5/10
   C07K16/28
   C07K16/40
   A61K39/395 B
   A61K39/395 J
   A61K39/395 D
   A61K39/395 N
   !A61P3/06
   !A61P19/02
   !A61P11/06
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】169
(21)【出願番号】特願2019-220440(P2019-220440)
(22)【出願日】2019年12月5日
(62)【分割の表示】特願2016-548441(P2016-548441)の分割
【原出願日】2014年10月1日
(65)【公開番号】特開2020-36618(P2020-36618A)
(43)【公開日】2020年3月12日
【審査請求日】2019年12月23日
(31)【優先権主張番号】FR1359518
(32)【優先日】2013年10月1日
(33)【優先権主張国】FR
(31)【優先権主張番号】1317410.7
(32)【優先日】2013年10月1日
(33)【優先権主張国】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512006066
【氏名又は名称】カイマブ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イー−チアン・リー
(72)【発明者】
【氏名】ジャスパー・クリューブ
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ブラッドリー
【審査官】 藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/041846(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/088313(WO,A1)
【文献】 特表2004−524841(JP,A)
【文献】 特表2013−518597(JP,A)
【文献】 特表2005−510253(JP,A)
【文献】 特表2013−508287(JP,A)
【文献】 BMC Biotechnology (2012) Vol.12, No.87, pp.1-15
【文献】 Immunogenetics (2008) Vol.60, pp.669-676
【文献】 Arthritis Research & Therapy (2003) Vol.5, pp.R114-R121
【文献】 Immunology and Cell Biology (2008) Vol.86, pp.111-115
【文献】 Molecular Immunology (2009) Vol.46, pp.917-926
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 67/027
C12N 15/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体を生成する方法であって、
(i)(a)非ヒト脊椎動物から抗原に結合する抗体をコードするB細胞を単離する工程、
(b)抗体のVHドメインをコードするB細胞のヌクレオチド配列を同定若しくはコピーする工程及び/又は抗体のVLドメインをコードするB細胞のヌクレオチド配列を同定若しくはコピーする工程、並びに
(c)前記配列を使用してVH及び/又はVLドメインを含む単離された抗体を生成する工程を含み、或いは、
(ii)非ヒト脊椎動物を抗原で免疫化する工程、及び抗体を回収する工程を含み、
(i)及び(ii)の脊椎動物のゲノムが、内因性重鎖遺伝子座で定常領域の上流に、以下の表:
【表1】
に示される全てのVH、D及びJH遺伝子セグメント、並びに、軽鎖遺伝子座で定常領域の上流に、以下の表のうちのいずれか一方の表:
【表2A】
【表2B】
に示される全てのVκ及びJκ遺伝子セグメントを含み、
各遺伝子座中の前記遺伝子セグメントが、前記脊椎動物が抗体重鎖及び抗体軽鎖を生成することができるようにその定常領域に作動可能に連結され、
非ヒト脊椎動物が、マウス又はラットである、
方法。
【請求項2】
単離された抗体が、ヒト定常領域を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(ii)の後に、単離された抗体がヒト定常領域を含むように改変する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
抗体を希釈剤、担体、賦形剤又は薬物と共に製剤化して、ヒトにおける医学的使用のための医薬組成物を生成する工程を更に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法を実施する工程、及び抗体を希釈剤、担体、賦形剤又は薬物と共に製剤化して、ヒトにおける医学的使用のための医薬組成物を生成する工程を含む、医薬組成物を生成する方法。
【請求項6】
抗体がヒト化されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
医薬組成物を生成する方法であって、
非ヒト脊椎動物から単離したB細胞から抗体を単離する工程、抗体がヒト定常領域を含むように改変する工程、抗体を希釈剤、担体、賦形剤又は薬物と共に製剤化して、ヒトにおける医学的使用のための医薬組成物を生成する工程を含み、
前記脊椎動物のゲノムが、内因性重鎖遺伝子座で定常領域の上流に、以下の表:
【表3】
に示される全てのVH、D及びJH遺伝子セグメント、並びに、軽鎖遺伝子座で定常領域の上流に、以下の表のうちのいずれか一方の表:
【表4A】
【表4B】
に示される全てのVκ及びJκ遺伝子セグメントを含み、
各遺伝子座中の前記遺伝子セグメントが、前記脊椎動物が抗体重鎖及び抗体軽鎖を生成することができるようにその定常領域に作動可能に連結され、
非ヒト脊椎動物が、マウス又はラットである、
方法。
【請求項8】
滅菌容器中に医薬組成物をパッケージングする工程を更に含む、請求項4、5及び7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
パッケージを、ヒトにおける医学的使用のための医薬組成物の使用を指示するラベル又は説明書と組み合わせて含むキットを製造する工程を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ラベル又は説明書が医薬品バッチ番号及び/又は製造承認番号を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
抗体が、唯一の治療剤である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
医薬組成物又はキットが、更に、さらなる治療剤、例えば、抗-高コレステロール血症薬を含む、請求項4〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
単離された抗体又はキット若しくは医薬組成物が、ヒトの治療用であり、治療が、ウイルス、又は、ヒトサイトカイン、増殖因子、ホルモン、酵素及び血清タンパク質から選択される抗原に特異的に結合する抗体の有効量を送達することを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
抗体が、CHO、HEK293、Cos又は酵母から選択される宿主細胞からの発現により生成される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
抗原が、IL-4受容体、PCSK9又はIL-6受容体から選択される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はとりわけ、外来性DNA、例として、ヒト免疫グロブリン遺伝子のDNAを含有するように工学的に作製した非ヒトの動物及び細胞、医学及び疾患の研究におけるそれらの使用、非ヒト動物及び細胞を生成するための方法、更に、そのような動物により生成された抗体及び抗体鎖並びにそれらの誘導体にも関する。
【背景技術】
【0002】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】US2012/0204278
【特許文献2】PCT/GB2013/050682
【特許文献3】WO2013041844
【特許文献4】WO03047336
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】World Wide Web(www) genome.ucsc.edu
【非特許文献2】World Wide Web(www) genome.ucsc.edu/FAQ/FAQreleases.html
【非特許文献3】World Wide Web(www) imgt.org/IMGTrepertoire/index.php?section=LocusGenes&repertoire=locus&species=human&group=IGL
【非特許文献4】Loder Fら、「B cell development in the spleen takes place in discrete steps and is determined by the quality of B cell receptor-derived signals」、J Exp Med. 1999年7月5日;190(1):75〜89頁
【非特許文献5】J Exp Med. 1991年5月1日;173(5):1213〜25;「Resolution and characterization of pro-B and pre-pro-B cell stages in normal mouse bone marrow」、Hardy RRら
【非特許文献6】http://www.tecniplast.it/us/product/mouse-loft.html
【非特許文献7】Hamers-Casterman C、Atarhouch T、Muyldermans S、Robinson G、Hamers C、Songa EB、Bendahman N、Hamers R; Naturally occurring antibodies devoid of light chains; Nature. 1993年6月3日;363(6428):446〜8頁
【非特許文献8】World Wide Web(www) kabatdatabase.com
【非特許文献9】Kabat, E. A.、Wu, T. T.、Perry, H.、Gottesman, K.、及びFoeller, C. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、NIH Publication No. 91-3242、Bethesda、MD
【非特許文献10】World Wide Web(www) bioinf.org.uk/abs/simkab.html
【非特許文献11】World Wide Web(www) imgt.cines.fr
【非特許文献12】World Wide Web(www) mrc-cpe.cam.ac.uk/vbase
【非特許文献13】World Wide Web(www) bioinf.org.uk/abs
【非特許文献14】World Wide Web(www) unizh.ch/〜antibody
【非特許文献15】World Wide Web(www) antibody.bath.ac.uk
【非特許文献16】World Wide Web(www) path.cam.ac.uk/〜mrc7/mikeimages.html
【非特許文献17】World Wide Web(www) antibodyresource.com
【非特許文献18】World Wide Web(www) people.cryst.bbk.ac.uk/〜ubcg07s
【非特許文献19】World Wide Web(www) blogsua.com/pdf/antibody-engineering-methods-and-protocolsantibody-engineering-methods-and-protocols.pdf
【非特許文献20】J Mol Biol.、1997年4月25日、268(1):69〜77頁、「The creation of diversity in the human immunoglobulin V(lambda) repertoire」、Ignatovich Oら
【非特許文献21】Cell、2002年4月、109、補遺:S45〜55頁、「The mechanism and regulation of chromosomal V(D)J recombination」、Bassing CH、Swat W、Alt FW
【発明の概要】
【0005】
マウスについての全てのヌクレオチド座標は、他に規定がない限り、マウスC57BL/6J系統についてのNCBI m37、例えば、2007年4月ENSEMBL Release 55.37h、例えば、NCBI37 2007年7月(NCBI build 37) (例えば、UCSC version mm9、World Wide Web(www) genome.ucsc.edu及びWorld Wide Web(www) genome.ucsc.edu/FAQ/FAQreleases.htmlを参照)に対応するものである。ヒトヌクレオチド座標は、他に規定がない限り、GRCh37 (例えば、UCSC version hg 19、World Wide Web(www) genome.ucsc.edu/FAQ/FAQreleases.html)、2009年2月ENSEMBL Release 55.37に対応するものであり、又はNCBI36、Ensemble release 54に対応するものである。ラットヌクレオチドは、他に規定がない限り、RGSC 3.4 2004年12月ENSEMBL release 55.34w、又はBaylor College of Medicine HGSC v3.4 2004年11月(例えば、UCSC rn4、World Wide Web(www) genome.ucsc.edu及びWorld Wide Web(www) genome.ucsc.edu/FAQ/FAQreleases.html参照)に対応するものである。
【0006】
本明細書におけるマウスでの研究への言及は、例としてのみであり、本開示から他のことが明らかでない限り、マウスへの言及は、全ての非ヒト哺乳動物への言及を含むものと解釈されるべきであり、マウスは、非ヒト哺乳動物として好ましい。
【0007】
US2012/0204278及びPCT/GB2013/050682の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。US2012/0204278及びPCT/GB2013/050682に開示された全ての定義は、具体的かつ明示的に本明細書に開示される。
【0008】
本明細書におけるヒト遺伝子セグメントに対する言及は、生殖系列ヒト遺伝子セグメント配列又は生殖系列ヒト遺伝子セグメント配列と比較して1つ又は複数の突然変異を含んでもよい組換え形態の遺伝子セグメント、例えば、IMGTデータベース及び1000 Genomesデータベース、並びにWO2013041844に開示された対立遺伝子の両方を包含する(そのような対立遺伝子及びその配列は参照により本明細書に明示的に組み込まれる)。
【0009】
本明細書で言及される全ての遺伝子セグメントは、場合によりIMGT又は1000 Genomesデータベース等の公共配列データベースに対する参照による、ヒト生殖遺伝子セグメント配列との比較による標準的な配列分析を用いて同定することができる。
【0010】
一態様では、本発明は、ゲノムが重鎖遺伝子座の定常領域の上流のヒトVH、D及びJH遺伝子セグメント並びに/又は軽鎖遺伝子座の定常領域の上流のヒトVL及びJL遺伝子セグメントを含む非ヒト脊椎動物(例えば、マウス若しくはラット)又は細胞であって、脊椎動物若しくは細胞が、それぞれ、ヒトVH及びVLドメインを含む免疫グロブリン重鎖及び/若しくは軽鎖を発現することができるように遺伝子セグメントがその定常領域に作動可能に連結され、重鎖遺伝子座が、ヒトD及びJH遺伝子セグメントと組み換わってVHドメインを生成することができるヒト01対立遺伝子VH遺伝子セグメントを含み、軽鎖遺伝子座が、ヒトJL遺伝子セグメントと組み換わってVLドメインを生成することができるヒト01対立遺伝子VL遺伝子セグメントを含むか、又は細胞が前記重鎖及び/若しくは軽鎖を発現する脊椎動物に発生することができる、非ヒト脊椎動物又は細胞に関する。
【0011】
下記の実施例において更に説明されているように、本発明者らは、驚くべきことに、ヒト01対立遺伝子を用いて抗原特異的結合部位を生成し、これらのものが非ヒト脊椎動物において適切に組み換えられて、接合突然変異及び体細胞突然変異を示し、適切に発現させ、単離することができることを示した。
【0012】
別の態様では、本発明は、ゲノムが、(a)重鎖遺伝子座の定常領域の上流のヒトJH2*01及び/若しくはヒトJH6*01若しくはJH6*02及び/若しくはJH3*02、1つ若しくは複数のヒトVH遺伝子セグメント及び1つ若しくは複数のヒトD遺伝子セグメント並びに/又は(b)軽鎖遺伝子座の定常領域の上流のヒトJκ2*01及び/若しくはヒトJκ4*01及び1つ若しくは複数のヒトVκ遺伝子セグメントを含む非ヒト脊椎動物又は細胞(例えば、マウス細胞若しくはラット細胞)であって、脊椎動物若しくは細胞が抗体重鎖及び抗体軽鎖を生成することができるように各遺伝子座中の遺伝子セグメントがその定常領域に作動可能に連結されるか、又は細胞が抗体重鎖及び抗体軽鎖を発現する脊椎動物に発生することができ、重鎖がヒトJH2*01及び/若しくはJH6*01若しくはJH6*02セグメント及び/若しくはJH3*02と、Dセグメント及びVHセグメントとの組換えにより生成され、軽鎖がヒトJκ2*01及び/若しくはJκ4*01セグメントと、Vκセグメントとの組換えにより生成される、非ヒト脊椎動物又は細胞に関する。例において、ゲノムはヒトJH2*01を含む。例において、ゲノムはヒトJH2*01及びJH6*01を含む。例において、ゲノムはヒトJH2*01、JH6*01及びJH3*02を含む。例において、ゲノムはヒトJH6*01を含む。例において、ゲノムはヒトJH6*01及びJH3*02を含む。例において、ゲノムはヒトJH3*02を含む。例において、重鎖はヒトJH2*01セグメントとDセグメント及びVHセグメントとの組換えにより生成される。例において、重鎖はヒトJH6*01セグメントとDセグメント及びVHセグメントとの組換えにより生成される。例において、重鎖はヒトJH6*02セグメントとDセグメント及びVHセグメントとの組換えにより生成される。例において、重鎖はヒトJH3*02セグメントとDセグメント及びVHセグメントとの組換えにより生成される。
【0013】
別の態様では、本発明は、ゲノムが、(i)重鎖遺伝子座の定常領域の上流のヒトJH1*01、JH2*01、JH3*02、JH4*02、JH5*02及び/若しくはJH6*01若しくはJH6*02、1つ若しくは複数のヒトVH遺伝子セグメント及び1つ若しくは複数のヒトD遺伝子セグメント並びに/又は(ii)軽鎖遺伝子座の定常領域の上流のヒトJκ1*01、Jκ2*01、Jκ3*01、Jκ4*01及び/若しくはJκ5*01及び1つ若しくは複数のヒトVκ遺伝子セグメントを含む非ヒト脊椎動物であって、脊椎動物若しくは細胞が抗体重鎖及び抗体軽鎖を生成することができるように各遺伝子座中の遺伝子セグメントがその定常領域に作動可能に連結されるか、又は細胞が抗体重鎖及び/若しくは抗体軽鎖を発現する脊椎動物に発生することができ、重鎖がヒトJH1*01、JH2*01、JH3*02、JH4*02、JH5*02及び/若しくはJH6*01若しくはJH6*02セグメントと、Dセグメント及びVHセグメントとの組換えにより生成され、軽鎖がヒトJκ1*01、Jκ2*01、Jκ3*01、Jκ4*01及び/若しくはJκ5*01セグメントとVκセグメントとの組換えにより生成される、非ヒト脊椎動物に関する。例において、ゲノムはヒトJH1*01、JH2*01、JH3*02、JH4*02、JH5*02及びJH6*01を含む。例において、ゲノムはヒトJH1*01、JH2*01、JH3*02、JH4*02、JH5*02及びJH6*02を含む。例において、重鎖はヒトJH2*01セグメントとDセグメント及びVHセグメントとの組換えにより生成される。例において、重鎖はヒトJH6*01セグメントとDセグメント及びVHセグメントとの組換えにより生成される。例において、重鎖はヒトJH6*02セグメントとDセグメント及びVHセグメントとの組換えにより生成される。例において、重鎖はヒトJH3*02セグメントとDセグメント及びVHセグメントとの組換えにより生成される。これらの重鎖の例に対して更に、又は或いは、例において、軽鎖はヒトJκ2*01セグメントとVκセグメントとの組換えにより生成される。
【0014】
一実施形態において、非ヒト脊椎動物は更に、Table 7(表7)からの1つ若しくは複数のVH遺伝子セグメント及び/若しくは1つ若しくは複数のD遺伝子セグメント並びに/又はTable 12(表12)からの1つ若しくは複数のVκ遺伝子セグメントを含む。さらなる実施形態において、非ヒト脊椎動物は更に、Table 3(表3)からのVH遺伝子セグメント及びD遺伝子セグメント並びに/又はTable 10(表10)若しくはTable 11(表11)からのVκ遺伝子セグメントを含む。
【0015】
本明細書に記載されるセグメントは、多様なヒト民族集団にわたって広く高度に用いられ、したがって、一般にヒトにおける抗体生成及び効能にとって広く許容されるものとして本発明者らによって同定された。
【0016】
さらなる実施形態において、本発明は、ゲノムが、重鎖遺伝子座の定常領域の上流の1つ若しくは複数のヒトVH遺伝子セグメント、1つ若しくは複数のヒトJH遺伝子セグメント及び1つ若しくは複数のヒトD遺伝子セグメント並びに軽鎖遺伝子座の定常領域の上流の1つ若しくは複数のヒトJL遺伝子セグメント及び1つ若しくは複数のヒトVL遺伝子セグメントを含む非ヒト脊椎動物又は脊椎動物細胞(例えば、マウス細胞若しくはラット細胞)であって、脊椎動物若しくは細胞が抗体重鎖及び抗体軽鎖を生成することができるように各遺伝子座中の遺伝子セグメントがその定常領域に作動可能に連結されるか、又は細胞が抗体重鎖及び抗体軽鎖を発現する脊椎動物に発生することができ、重鎖遺伝子座の前記1つ若しくは複数のヒトVH遺伝子セグメントが、VH3-23*04、VH7-4-1*01、VH4-4*02、VH1-3*01、VH3-13*01、VH3-7*01、VH3-20*d01及びVH3-9*01からなる群から選択される1つ、複数又は全部のヒトVH遺伝子セグメントを含むか、又はそれからなる、非ヒト脊椎動物又は脊椎動物細胞に関する。
【0017】
さらなる実施形態において、本発明は、ゲノムが、重鎖遺伝子座の定常領域の上流の1つ若しくは複数のヒトVH遺伝子セグメント、1つ若しくは複数のヒトJH遺伝子セグメント及び1つ若しくは複数のヒトD遺伝子セグメント並びに軽鎖遺伝子座の定常領域の上流の1つ若しくは複数のヒトJκ遺伝子セグメント及び1つ若しくは複数のヒトVκ遺伝子セグメントを含む非ヒト脊椎動物又は脊椎動物細胞(例えば、マウス細胞若しくはラット細胞)であって、脊椎動物若しくは細胞が抗体重鎖及び抗体軽鎖を生成することができるように各遺伝子座中の遺伝子セグメントがその定常領域に作動可能に連結されるか、又は細胞が抗体重鎖及び抗体軽鎖を発現する脊椎動物に発生することができ、前記1つ若しくは複数のヒトVκ遺伝子セグメントが、Vκ4-1*01、Vκ2-28*01、Vκ1D-13*d01、Vκ1-12*01、Vκ1D-12*02、Vκ3-20*01、Vκ1-17*01、Vκ1D-39*01、Vκ3-11*01、Vκ1D-16*01及びVκ1-9*d01からなる群から選択される1つ、複数又は全部のヒトVκ遺伝子セグメントを含むか、又はそれからなる、非ヒト脊椎動物又は脊椎動物細胞に関する。
【0018】
別の実施形態において、本発明は、ゲノムが、重鎖遺伝子座の定常領域の上流のヒトJH2*01及び/若しくはヒトJH6*02、1つ若しくは複数のヒトVH遺伝子セグメント及び1つ若しくは複数のヒトD遺伝子セグメント並びに/又は軽鎖遺伝子座の定常領域の上流のヒトJκ2*01及び/若しくはヒトJκ4*01及び1つ若しくは複数のヒトVκ遺伝子セグメントを含む非ヒト脊椎動物又は脊椎動物細胞(例えば、マウス細胞若しくはラット細胞)であって、細胞若しくは脊椎動物が抗体重鎖及び抗体軽鎖を生成することができるように各遺伝子座中の遺伝子セグメントがその定常領域に作動可能に連結されるか、又は細胞が抗体重鎖及び抗体軽鎖を発現する脊椎動物に発生することができ、重鎖がヒトJH2*01及び/若しくはJH6*02セグメントとDセグメント及びVHセグメントとの組換えにより生成され、及び/又は軽鎖がヒトJκ2*01及び/若しくはJκ4*01セグメントとVκセグメントとの組換えにより生成され、
重鎖遺伝子座の前記1つ若しくは複数のヒトVH遺伝子セグメントが、VH3-23*04、VH7-4-1*01、VH4-4*02、VH1-3*01、VH3-13*01、VH3-7*01及びVH3-20*d01からなる群から選択される1つ、複数若しくは全部のヒトVH遺伝子セグメントを含むか、若しくはそれからなる、並びに/又は
前記1つ若しくは複数のヒトVκ遺伝子セグメントが、Vκ4-1*01、Vκ2-28*01、Vκ1D-13*d01、Vκ1-12*01、Vκ1D-12*02、Vκ3-20*01、Vκ1-17*01、Vκ1D-39*01、Vκ3-11*01、Vκ1D-16*01及びVκ1-9*d01からなる群から選択される1つ、複数若しくは全部のヒトVH遺伝子セグメントを含むか、若しくはそれからなる、
前記非ヒト脊椎動物又は脊椎動物細胞に関する。
【0019】
場合により、本明細書におけるヒト遺伝子セグメントに対する言及は、組換え形態の遺伝子セグメントである。
【0020】
下記の実施例において更に説明されているように、本発明者らは、驚くべきことに、本発明にしたがって生成される重鎖及び/又は軽鎖を用いて抗原特異的結合部位を生成し、これらのものが非ヒト脊椎動物において適切に組み換えられて、接合突然変異及び体細胞突然変異を示し、適切に発現させ、単離することができることを示した。
【0021】
別の態様では、本発明は、ゲノムが、ヒトIg遺伝子セグメントの1つ又は複数の内因性Ig遺伝子座への標的挿入により生成されるIg遺伝子セグメントレパートリーを含み、ゲノムが定常領域の上流のヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントを含む非ヒト脊椎動物(例えば、マウス若しくはラット)又は細胞であって、ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントが、Table 18(表18)の1つ、複数若しくは全部のセグメントから選択され、脊椎動物若しくは細胞の内因性軽鎖遺伝子座への挿入により提供されたものであり、脊椎動物がラムダ可変領域を含む免疫グロブリン軽鎖(ラムダ軽鎖)を含むか、又は細胞が前記免疫グロブリン軽鎖を発現する脊椎動物に発生することができ、ラムダ軽鎖がTable 18(表18)のヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントの1つ、複数若しくは全部のラムダ可変領域組換え体を含む免疫グロブリン軽鎖を含む、非ヒト脊椎動物又は細胞に関する。
【0022】
トランスジェニック非ヒト脊椎動物及び細胞における内因性軽鎖不活性化及びヒトラムダ可変領域の高発現
下記の実施例において更に説明されているように、本発明者らは、驚くべきことに、ヒトラムダ遺伝子セグメントの内因性非ヒト脊椎動物軽鎖遺伝子座へのターゲッティング挿入により生じたトランスジェニック軽鎖遺伝子座からの、ヒトラムダ可変領域(少なくとも70%又は80%ヒトVラムダ)を含む軽鎖の非常に高い発現レベルを観察している。これは、脊椎動物ゲノム内における内因性非ヒト脊椎動物V及びJ遺伝子セグメントの存在下でさえも可能である。また、驚くべき高レベルの発現は、ヒトラムダ遺伝子セグメントの挿入が内因性カッパ又はラムダ遺伝子座内である場合、達成される。ターゲッティング挿入によるそのような高レベルは、これまで当技術分野において発表されたことはない。
【0023】
本発明者らはまた、驚くべきことに、実施例において更に説明されているように、内因性カッパ鎖発現が、ヒトラムダ遺伝子配列の内因性カッパ遺伝子座へのターゲッティング挿入により完全に不活性化され得ることを観察した。
【0024】
ヒト遺伝子セグメントの内因性Ig遺伝子座へのターゲッティング挿入は、内因性Ig定常領域、並びに、例えばエンハンサー及び他の遺伝子座調節領域等の内因性調節領域に関して、挿入されるヒトIg配列の操作可能な位置をそれが可能にするため、有利である。したがって、ターゲッティング挿入は、Ig遺伝子セグメントの組換え、対立遺伝子排除、親和性成熟、クラススイッチ、Ig発現のレベル及びB細胞コンパートメントの望ましい発生のうちの1つ又は複数において重要な内因性調節を利用することを可能にする。それとして、ターゲッティング挿入は、トランスジェニックIg遺伝子座及び発現を生じさせようとする当技術分野における初期の試み(その試みは、ヒトIg遺伝子セグメントを有するYAC等のベクターの非ヒト脊椎動物細胞への導入に依存した)より優れている。YACは、脊椎動物細胞ゲノムへランダムに組み込まれるため、ターゲッティング挿入により提供される調節、及び内因性調節機構を利用することに関してもたらされる同時的利益を達成することが困難である。加えて、ランダム挿入は、異種性調節エレメントの調節下に入る挿入されたヒトIg遺伝子セグメント、並びに/又はメチル化及び染色質構造等のエピジェネティックな染色体改変を生じる場合が多く、それらのいずれも、適切なIg遺伝子セグメントの組換え、対立遺伝子排除、親和性成熟、クラススイッチ、Ig発現のレベル及びB細胞コンパートメントの望ましい発生に有害であり得る。ランダム挿入は、典型的には、染色体不安定を引き起こし得る2コピー以上の導入されたトランスジーンを生じ、それゆえに、適切なIg遺伝子セグメントの組換え、対立遺伝子排除、親和性成熟、クラススイッチ、Ig発現のレベル及びB細胞コンパートメントの望ましい発生への有害な効果に加えて、動物の繁殖能力の低下を生じる。したがって、ランダム挿入を使用する先行技術の試みは、B細胞発生の低下、相対的に小さいB細胞コンパートメント、及びIg発現の減少、及び所望の特性を有する抗体を単離することにおける付随する困難をもたらす傾向にあった。
【0025】
したがって、本発明は以下の態様を提供する:
【0026】
ヒトラムダ可変領域の発現
本明細書に開示される本発明の全ての実施形態を、Table 18(表18)に開示される特定のラムダ対立遺伝子、又はその任意の組合せを用いて実施することができる。遺伝子セグメントが特定の対立遺伝子を参照することなく本明細書で言及される場合、これらのものは場合によりTable 1(表1)〜Table 18(表18)のいずれか1つに開示される特定の対立遺伝子であってもよい。
【0027】
1. ゲノムが、1つ又は複数の内因性Ig遺伝子座へのヒトIg遺伝子セグメントのターゲット化挿入によって生成されたIg遺伝子セグメントレパートリーを含む、非ヒト脊椎動物(例えば、マウス又はラット)であって、ゲノムが、定常領域の上流にヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントを含み、ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントが、脊椎動物の内因性軽鎖遺伝子座への挿入によって供給されており、脊椎動物が、ラムダ可変領域(ラムダ軽鎖)を含む免疫グロブリン軽鎖を発現し、ラムダ軽鎖が、ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントの再組合せに由来したラムダ可変領域を含む免疫グロブリン軽鎖を含む、非ヒト脊椎動物。
【0028】
ゲノムが、1つ又は複数の内因性Ig遺伝子座へのヒトIg遺伝子セグメントのターゲッティング挿入によって生成されたIg遺伝子セグメントレパートリーを含む、非ヒト脊椎動物(例えば、マウス又はラット)であって、ゲノムが、定常領域の上流にヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントを含み、ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントが、脊椎動物の内因性軽鎖遺伝子座への挿入によって供給されており、脊椎動物が、ラムダ可変領域(ラムダ軽鎖)を含む免疫グロブリン軽鎖を発現し、かつ脊椎動物によって発現したラムダ軽鎖の可変領域の少なくとも70%又は80%が、ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントの組換えに由来する、非ヒト脊椎動物。これは、下記の実施例において実証されている。
【0029】
例えば、脊椎動物によって発現したラムダ軽鎖の可変領域の少なくとも70%、75%、80%、84%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%、又は100%は、ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントの組換えに由来する。これは、下記の実施例において実証されている。
【0030】
実施形態において、以下が提供される:
【0031】
ゲノムが、1つ又は複数の内因性Ig遺伝子座へのヒトIg遺伝子セグメントのターゲット化挿入によって生成されたIg遺伝子セグメントレパートリーを含む、非ヒト脊椎動物ES細胞(例えば、マウスES細胞又はラットES細胞)であって、ゲノムが、定常領域の上流にヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントを含み、ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントが、脊椎動物細胞の内因性軽鎖遺伝子座への挿入によって供給されており、細胞が、ラムダ可変領域(ラムダ軽鎖)を含む免疫グロブリン軽鎖を発現する脊椎動物へ発生することができ、ラムダ軽鎖が、ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントの再組合せに由来したラムダ可変領域を含む免疫グロブリン軽鎖を含む、非ヒト脊椎動物ES細胞。
【0032】
ゲノムが、1つ又は複数の内因性Ig遺伝子座へのヒトIg遺伝子セグメントのターゲッティング挿入によって生成されたIg遺伝子セグメントレパートリーを含む、非ヒト脊椎動物ES細胞(例えば、マウスES細胞又はラットES細胞)であって、ゲノムが、定常領域の上流にヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントを含み、ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントが、脊椎動物細胞の内因性軽鎖遺伝子座への挿入によって供給されており、細胞が、ラムダ可変領域(ラムダ軽鎖)を含む免疫グロブリン軽鎖を発現する脊椎動物に発生することができ、かつ脊椎動物によって発現したラムダ軽鎖の可変領域の少なくとも70%又は80%(例えば、少なくとも70%、75%、80%、84%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%、又は100%)が、ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントの組換えに由来する、非ヒト脊椎動物ES細胞。
【0033】
一例において、驚くべきことに、ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントの組換えに由来するラムダ可変領域を含む免疫グロブリン軽鎖の発現は、ゲノムが、内因性非ヒト脊椎動物ラムダ可変領域遺伝子セグメント(例えば、内因性Vλ及び/又はJλ遺伝子セグメント、場合により、Vλ及びJλ遺伝子セグメントの完全な内因性レパートリー)を含む場合でさえも達成される。したがって、例において、ゲノムは、内因性非ヒト脊椎動物ラムダ可変領域遺伝子セグメント(例えば、内因性Vλ及び/又はJλ遺伝子セグメント、場合により、Vλ及びJλ遺伝子セグメントの完全な内因性レパートリー)を含む。別の例において、そのような内因性遺伝子セグメントは、ゲノムに含まれない。
【0034】
2. 場合により、ヒトVλ及びJλ挿入が、Vλ2-18からCλ7までのヒトラムダ鎖Ig遺伝子座によって含まれる少なくとも機能的ヒトV及びJ遺伝子セグメント(場合により、ヒトCλも)を含む、態様1の脊椎動物又は細胞。一例において、挿入はまた、ラムダの遺伝子セグメント間配列も含む。これらはヒト配列であり、又はそれらは、非ヒト脊椎動物種の配列であり得る(例えば、脊椎動物がマウスである場合、対応するマウスラムダ遺伝子セグメントの間の配列が使用され得る)。
【0035】
一実施形態において、V及びJ遺伝子セグメントは、Table 18(表18)の対立遺伝子である。さらなる実施形態において、Cλ遺伝子セグメントはTable 18(表18)に開示される対立遺伝子である。
【0036】
3. 場合により、ゲノムが、ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメント挿入についてホモ接合であり、かつ前記脊椎動物における内因性カッパ鎖発現が実質的に、又は完全に不活性である、態様1又は2の脊椎動物又は細胞。一例において、軽鎖の10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満又は0.5%未満が、内因性カッパ鎖(すなわち、可変領域が非ヒト脊椎動物Vκ及びJκ遺伝子セグメントの組換えに由来するカッパ鎖)によって供給される。
【0037】
4. 場合により、内因性遺伝子座が内因性カッパ遺伝子座である、態様1〜3のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。
【0038】
5. 場合により、内因性遺伝子座が内因性カッパ遺伝子座である、態様1〜4のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。
【0039】
全軽鎖の≧60%はヒトラムダV領域を有する。
【0040】
6. ゲノムが、1つ又は複数の内因性Ig遺伝子座へのヒトIg遺伝子セグメントのターゲッティング挿入によって生成されたIg遺伝子セグメントレパートリーを含む、非ヒト脊椎動物(例えば、マウス又はラット)であって、ゲノムが、(i)定常領域の上流にヒトVλ及びJλ遺伝子セグメント(ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントが、その脊椎動物の内因性軽鎖遺伝子座への挿入によって供給されている)並びに(ii)定常領域の上流にカッパV遺伝子セグメントを含み、脊椎動物が、ヒトラムダ可変領域(ヒトラムダ軽鎖)を含む免疫グロブリン軽鎖を発現し、かつ脊椎動物によって発現した軽鎖の少なくとも60%が、前記ヒトラムダ軽鎖によって供給される、非ヒト脊椎動物。これは、下記の実施例において実証されている。
【0041】
例えば、脊椎動物によって発現した軽鎖の少なくとも65%、70%、80%、84%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%、又は100%は、前記ヒトラムダ軽鎖によって供給される。例えば、脊椎動物によって発現した軽鎖の少なくとも84%が、前記ヒトラムダ軽鎖によって供給される。例えば、脊椎動物によって発現した軽鎖の少なくとも95%が、前記ヒトラムダ軽鎖によって供給される。これは、下記の実施例において実証されている。
【0042】
一実施形態において、ゲノムが、1つ又は複数の内因性Ig遺伝子座へのヒトIg遺伝子セグメントのターゲッティング挿入によって生成されたIg遺伝子セグメントレパートリーを含む、非ヒト脊椎動物ES細胞(例えば、マウスES細胞又はラットES細胞)であって、ゲノムが、(i)定常領域の上流にヒトVλ及びJλ遺伝子セグメント(ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントが、脊椎動物の内因性軽鎖遺伝子座への挿入によって供給されている)並びに(ii)定常領域の上流にカッパV遺伝子セグメントを含み、細胞が、ヒトラムダ可変領域(ヒトラムダ軽鎖)を含む免疫グロブリン軽鎖を発現する脊椎動物に発生することができ、かつ脊椎動物によって発現した軽鎖の少なくとも60%が、前記ヒトラムダ軽鎖によって供給される、非ヒト脊椎動物ES細胞が提供される。
【0043】
7. ゲノムが、1つ又は複数の内因性Ig遺伝子座へのヒトIg遺伝子セグメントのターゲッティング挿入によって生成されたIg遺伝子セグメントレパートリーを含む、非ヒト脊椎動物又は非ヒト脊椎動物細胞(例えば、マウス、ラット、マウス細胞又はラット細胞)であって、ゲノムが、ヒトラムダ可変領域を含む軽鎖の発現のために、内因性VL及びJL遺伝子セグメントの下流に内因性非ヒト脊椎動物軽鎖カッパ鎖又はラムダ鎖遺伝子座へのヒト免疫グロブリンVλ及びJλ遺伝子セグメントのターゲッティング挿入を含み、ヒトVλ及びJλ挿入が、Vλ2-18からCλ7までのヒトラムダ鎖Ig遺伝子座によって含まれる少なくとも機能的ヒトV及びJ(及び場合により、機能的ヒトCλも)遺伝子セグメントを含む、非ヒト脊椎動物又は非ヒト脊椎動物細胞。
【0044】
実施例において実証されているように、前記遺伝子座からの内因性軽鎖発現は不活性化され、また、ヒトラムダ可変領域発現は、内因性ラムダ可変領域発現を凌駕する。
【0045】
「下流」とは、同じ染色体上の遺伝子セグメントの3'側を意味する。一例において、内因性V及びJ遺伝子セグメントは、ヒト遺伝子セグメントに対して反転しており、場合により、内因性軽鎖遺伝子座から移動されている。一例において、ヒト遺伝子セグメントは、前記カッパ又はラムダ遺伝子座の内因性V及びJセグメントの全部の下流にある。内因性V-J配列及び遺伝子間配列を保持する可能性は、脊椎動物において望ましくあり得る、埋め込まれた調節領域及び/又は遺伝子が保持されるため、有利である。
【0046】
場合により、挿入はまた、ラムダ遺伝子セグメント間配列も含む。これらは、ヒト配列であり、又は非ヒト脊椎動物種の配列であり得る(例えば、脊椎動物がマウスである場合、対応するマウスラムダ遺伝子セグメント間の配列が使用され得る)。
【0047】
VJCλラムダ鎖の発現
8. ゲノムが、1つ又は複数の内因性Ig遺伝子座へのヒトIg遺伝子セグメントのターゲッティング挿入によって生成されたIg遺伝子セグメントレパートリーを含む、非ヒト脊椎動物又は非ヒト脊椎動物細胞(例えば、マウス、ラット、マウス細胞又はラット細胞)であって、ゲノムが、ヒトVJC軽鎖の発現のために、内因性非ヒト脊椎動物カッパ又はラムダ定常領域の上流に内因性非ヒト脊椎動物カッパ又はラムダ軽鎖遺伝子座へのヒト免疫グロブリンVλ、Jλ及びCλ遺伝子のターゲッティング挿入を含み、場合により、ヒトVJC挿入が、Vλ3-1からCλ7までのヒトラムダ鎖Ig遺伝子座によって含まれる(例えば、2-18からCλ7までのヒトラムダ鎖Ig遺伝子座によって含まれる)少なくとも機能的ヒトV、J、C遺伝子セグメントを含む、非ヒト脊椎動物又は非ヒト脊椎動物細胞。
【0048】
一実施形態において、V及びJ遺伝子セグメントは、Table 18(表18)の対立遺伝子である。さらなる実施形態において、Cλ遺伝子セグメントはTable 18(表18)に開示される対立遺伝子である。
【0049】
実施例において実証されているように、ヒトラムダ可変領域発現は、内因性カッパ可変領域発現を凌駕する。内因性遺伝子座由来の内因性カッパ鎖発現は、不活性化することができる。
【0050】
場合により、挿入はまた、ラムダ遺伝子セグメント間配列も含む。これらは、ヒト配列であり、又は非ヒト脊椎動物種の配列であり得る(例えば、脊椎動物がマウスである場合、対応するマウスラムダ遺伝子セグメント間の配列が使用され得る)。
【0051】
9. ゲノムが、1つ又は複数の内因性Ig遺伝子座へのヒトIg遺伝子セグメントのターゲッティング挿入によって生成されたIg遺伝子セグメントレパートリーを含む、非ヒト脊椎動物又は非ヒト脊椎動物細胞(例えば、マウス、ラット、マウス細胞又はラット細胞)であって、ゲノムが、ヒトラムダ可変領域を含む軽鎖の発現のために、マウスVκ及びJκ遺伝子セグメントの下流に内因性非ヒト脊椎動物カッパ軽鎖遺伝子座へのVλ3-1からCλ7まで(場合により、Vλ2-18からCλ7まで、更に場合によりTable 18(表18)の特定の対立遺伝子)のヒトラムダ鎖Ig遺伝子座によって含まれる少なくとも機能的ヒトVλ及びJλ(及び場合により、ヒト機能的Cλ)遺伝子セグメントのターゲッティング挿入を含み、前記挿入の存在下で、前記マウスVκ及びJκ遺伝子セグメント由来の内因性カッパ軽鎖の発現が実質的に、又は完全に不活性化されている、非ヒト脊椎動物又は非ヒト脊椎動物細胞。
【0052】
一例において、軽鎖の10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満又は0.5%未満が、内因性カッパ鎖(すなわち、可変領域が非ヒト脊椎動物Vκ及びJκ遺伝子セグメントの組換えに由来する、カッパ鎖)によって供給される。
【0053】
場合により、挿入はまた、ラムダ遺伝子セグメント間配列も含む。これらは、ヒト配列であり、又は非ヒト脊椎動物種の配列であり得る(例えば、脊椎動物がマウスである場合、対応するマウスラムダ遺伝子セグメント間の配列が使用され得る)。
【0054】
10. ゲノムにおいて、マウスIgK-VJがマウスEκエンハンサーから離されており、それにより、内因性IgK-VJ領域を不活性化する、非ヒト脊椎動物又は非ヒト脊椎動物細胞(例えば、マウス、ラット、マウス細胞又はラット細胞)。これは実施例において実証されている。
【0055】
11. 場合により、ヒトVL及びJL遺伝子セグメントのマウスIgK-VJとEκエンハンサーとの間での挿入により、IgK-VJがマウスEκエンハンサーから離されており、場合により、挿入が、任意の先行する態様1〜9において列挙されているような挿入、又はヒトVκ及びJκ遺伝子セグメントの挿入である、態様10の脊椎動物又は細胞。
【0056】
12. 場合により、ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントが、内因性非ヒト脊椎動物軽鎖エンハンサーの100kb、75kb、50kb、40kb、30kb、20kb、15kb、10kb又は5kb以内に挿入されている、態様1〜11のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。一例において、挿入が内因性ラムダ遺伝子座への挿入である場合、エンハンサーはラムダエンハンサー(例えば、マウスEλ2-4、Eλ4-10又はEλ3-1)である。一例において、挿入が内因性カッパ遺伝子座への挿入である場合、エンハンサーはカッパエンハンサー(例えば、iEκ又は3'Eκ)である。
【0057】
13. 場合により、軽鎖遺伝子座の内因性非ヒト脊椎動物軽鎖定常領域の上流でのヒトJλ遺伝子セグメントと共の少なくとも10個のヒトVλ遺伝子セグメントのターゲッティング挿入によりゲノムにおいてヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントが供給される、態様1〜12のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。例えば、ヒト遺伝子セグメントは、Vλ2-18からVλ3-1までのヒトIgラムダ鎖遺伝子座の少なくとも一部;又はJλ1、Jλ2、Jλ3、Jλ6及びJλ7と共に挿入されたVλ2-18からVλ3-1までのヒトIgラムダ鎖遺伝子座の少なくとも一部;又はVλ2-18からCλ7まで(場合により、Jλ4Cλ4及び/又はJλ5Cλ5を排除する)のヒトIgラムダ鎖遺伝子座の少なくとも一部の挿入により供給される。
【0058】
場合により、少なくとも2個、3個、4個又は5個のヒトJλが挿入される。一実施形態において、挿入されるJλはお互いに異なる。例えば、ヒトJλ1、Jλ2、Jλ3、Jλ6及びJλ7が、場合によりそれぞれJλCλクラスターの部分として、挿入される。
【0059】
場合により、ヒト軽鎖エンハンサー、例えば、Eλが挿入される。例えば、ヒトJλセグメントと内因性定常領域との間;又はヒトCλ遺伝子セグメント(これらが挿入された場合)と内因性定常領域との間のヒトEλの挿入。
【0060】
14. ラムダ軽鎖が、前記軽鎖遺伝子座へのターゲッティング挿入によりゲノムにおいて供給されている、ヒトVλ遺伝子セグメントVλ3-1、並びに場合により、Vλ2-18、Vλ3-16、V2-14、Vλ3-12、Vλ2-11、Vλ3-10、Vλ3-9、Vλ2-8及びVλ4-3のうちの1つ又は複数に由来するヒトラムダ可変領域のレパートリーを供給する、態様1〜13のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。
【0061】
これは、Vλ3-1がヒトにおいて高度に使用されるラムダ遺伝子セグメントであるため(図59; Ignatovichら、1997)、有用であり、したがって、抗原に対する選択にとって、特にヒトに使用する抗体治療用物質の開発にとって、本発明の細胞及び脊椎動物が、この遺伝子セグメントに基づいたラムダ可変領域の包含をもたらすことは望ましい。
【0062】
15. 場合により、ラムダ軽鎖が、前記軽鎖遺伝子座へのターゲッティング挿入によりゲノムにおいて供給されている、ヒトVλ遺伝子セグメントVλ2-14、並びにVλ2-18、Vλ3-16、Vλ3-12、Vλ2-11、Vλ3-10、Vλ3-9、Vλ2-8、Vλ4-3及びVλ3-1のうちの1つ又は複数に由来するヒトラムダ可変領域のレパートリーを供給する、態様1〜14のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。
【0063】
これは、Vλ2-14がヒトにおいて高度に使用されるラムダ遺伝子セグメントであるため、有用であり、したがって、抗原に対する選択にとって、特にヒトに使用する抗体治療用物質の開発にとって、本発明の細胞及び脊椎動物が、この遺伝子セグメントに基づいたラムダ可変領域の包含をもたらすことは望ましい。
【0064】
場合により、ラムダ軽鎖が、前記軽鎖遺伝子座へのターゲッティング挿入によりゲノムにおいて供給されている、ヒトVλ遺伝子セグメントVλ2-8、並びにVλ2-18、Vλ3-16、V2-14、Vλ3-12、Vλ2-11、Vλ3-10、Vλ3-9、Vλ2-8、Vλ4-3及びVλ3-1のうちの1つ又は複数に由来するヒトラムダ可変領域のレパートリーを供給する、前記態様のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。
【0065】
これは、Vλ2-8がヒトにおいて高度に使用されるラムダ遺伝子セグメントであるため、有用であり、したがって、抗原に対する選択にとって、特にヒトに使用する抗体治療用物質の開発にとって、本発明の細胞及び脊椎動物が、この遺伝子セグメントに基づいたラムダ可変領域の包含をもたらすことは望ましい。
【0066】
場合により、ラムダ軽鎖が、前記軽鎖遺伝子座へのターゲッティング挿入によりゲノムにおいて供給されている、ヒトVλ遺伝子セグメントVλ3-10、並びにVλ2-18、Vλ3-16、V2-14、Vλ3-12、Vλ2-11、Vλ2-14、Vλ3-9、Vλ2-8、Vλ4-3及びVλ3-1のうちの1つ又は複数に由来するヒトラムダ可変領域のレパートリーを供給する、前記態様のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。
【0067】
これは、Vλ3-10がヒトにおいて高度に使用するラムダ遺伝子セグメントであるため、有用であり、したがって、抗原に対する選択にとって、特にヒトに使用する抗体治療用物質の開発にとって、本発明の細胞及び脊椎動物が、この遺伝子セグメントに基づいたラムダ可変領域の包含をもたらすことは望ましい。
【0068】
16. ヒトVλ遺伝子セグメントが、Vλ2-18からVλ3-1までのヒトラムダ鎖Ig遺伝子座により含まれる機能的Vλを含む、前記態様のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。
【0069】
例えば、ヒトVλ遺伝子セグメントは、少なくともヒトV遺伝子セグメントVλ3-1、又は少なくともセグメントVλ2-18、Vλ3-16、V2-14、Vλ3-12、Vλ2-11、Vλ3-10、Vλ3-9、Vλ2-8、Vλ4-3及びVλ3-1を含む。
【0070】
17. 場合により、脊椎動物がカッパ鎖より多いラムダ鎖を発現する、前記態様のいずれか1つの脊椎動物。ラムダ鎖は、(例えば、ラムダ定常領域と共に発現する)、Vλ及びJλ遺伝子セグメントの組換えに由来する可変領域を含む。カッパ鎖は、(例えば、カッパ定常領域と共に発現する)、Vκ及びJκ遺伝子セグメントの組換えに由来する可変領域を含む。
【0071】
18. 場合により、脊椎動物が内因性カッパ鎖を発現しない、前記態様のいずれか1つの脊椎動物。例えば、内因性カッパ鎖発現は、内因性カッパVJ領域の全部若しくは部分の反転による、又は内因性カッパ遺伝子座(本発明によるヒトラムダ遺伝子セグメントを含まない遺伝子座)におけるマーカー(例えば、neo)若しくは他の干渉配列の挿入による等の本明細書に記載された手段のいずれかにより不活性化することができる。
【0072】
19. カッパ鎖発現が前記脊椎動物において実質的に、又は完全に不活性である、前記態様のいずれか1つの脊椎動物。一例において、軽鎖の10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満又は0.5%未満がカッパ鎖によって供給される。
【0073】
20. 場合により、ヒトEλエンハンサーが前記内因性非ヒト脊椎動物遺伝子座において挿入されている、前記態様のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。例えば、生殖系列配置でヒト5' MAR及びヒトEλ(及び場合により、ヒト3' MAR)が挿入されている。例えば、ヒトJλ7-Cλ7のすぐ3'側に、ヒトラムダイントロン領域に対応し、かつ少なくともヒトEλ(及び場合によりまた、ヒト3' MAR)を含む(場合により、ヒトEλの3'側に少なくとも30kbのイントロン領域を含む)配列が挿入されている。
【0074】
21. 場合により、少なくともヒトJC遺伝子セグメントJλ1-Cλ1、Jλ2-Cλ2、Jλ3-Cλ3、Jλ6-Cλ6及びJλ7-Cλ7が他のヒト遺伝子セグメントに加えて挿入されている、前記態様のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。
【0075】
22. 場合により、挿入されたヒト遺伝子セグメントが、場合によりヒト遺伝子セグメント間配列又は対応する内因性非ヒト脊椎動物遺伝子セグメント間配列と共に、生殖系列配置である、前記態様のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。
【0076】
23. 場合により、内因性非ヒト脊椎動物軽鎖エンハンサーが内因性遺伝子座において、場合により生殖系列配置で、維持されている、前記態様のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。例えば、内因性遺伝子座がカッパ遺伝子座である場合、内因性カッパエンハンサーが維持される。これは、場合により内因性軽鎖定常領域に関して生殖系列配置での、iEκ及び/又は3'Eκであり得る。これは、非ヒト脊椎動物又は細胞における軽鎖発現の調節を助けるのに有用であり得る。
【0077】
24. 場合により、ゲノムが、内因性遺伝子座におけるヒトラムダ挿入についてヘテロ接合である、前記態様のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。例えば、内因性カッパ(例えば、マウス又はラットカッパ)遺伝子座におけるヒトVJ又はVJC挿入についてヘテロ接合。これは、他の内因性遺伝子座(例えば、他のカッパ遺伝子座)を、異なるトランスジェニックIg遺伝子座(例えば、内因性マウスカッパ定常領域の上流か又はヒトカッパ定常領域の上流のいずれかにヒトカッパV及びJ遺伝子セグメントを含むトランスジェニックカッパ遺伝子座)を提供するために使用することができるため、脊椎動物の育種を助け、かつ単純化する。この場合、カッパエンハンサー(iEκ及び/又は3'Eκ)は、そのカッパ遺伝子座において維持されて、内因性調節機構を使用することにより脊椎動物において発現を助けることができる。
【0078】
別の実施形態において、
(a)内因性遺伝子座が、(例えば、マウスにおける)内因性ラムダ遺伝子座であり、ゲノムがラムダ遺伝子座における挿入についてヘテロ接合であり、したがって、ラムダ遺伝子座の1つの対立遺伝子が上記のようなヒトVλ及びJλ遺伝子セグメント挿入を(場合により、ヒトCλ遺伝子セグメント挿入と共に;場合により、ヒトEλ挿入と共に)含み;
(b)他方の内因性ラムダ対立遺伝子が、定常領域(例えば、前記非ヒト脊椎動物種のカッパ定常領域;ヒトカッパ定常領域;内因性ラムダ定常領域;又はヒトラムダ定常領域)の上流に複数のヒトVκ遺伝子セグメント及び1つ又は複数のヒトJκ遺伝子セグメントを、場合により1つ又は複数のカッパエンハンサー(例えば前記非ヒト脊椎動物種の、例えば、iEκ及び/又は3'Eκ)と共に、含み;並びに
(c)内因性ラムダ及びカッパ鎖発現が不活性化されている、
前記態様のいずれか1つの非ヒト脊椎動物又は細胞が提供される。
【0079】
したがって、内因性V及びJ領域の組換えに由来する可変領域を含む軽鎖の発現はないが、内因性ラムダ遺伝子座における対立遺伝子由来のヒトラムダ及びヒトカッパ軽鎖の発現がある。これは、設計が、内因性ラムダ及びカッパ遺伝子座の両方においてトランスジェニック遺伝子座を提供する必要性を避けることにより、脊椎動物の構築及び育種を大いに助けるため、有益である。内因性カッパ遺伝子座(及びしたがって、内因性カッパ鎖発現)が、カッパ遺伝子セグメント(例えば、内因性V及び/又はJ及び/又はCカッパ)の反転、欠失により、及び/又はマーカー(例えば、neo)等の割り込み配列の内因性カッパ遺伝子座への挿入により、不活性化することができる。
【0080】
内因性ラムダへのヒトカッパセグメント挿入は、例えば、生殖系列配置で、全ての機能的ヒトVκ及びJκ(すなわち、場合により、偽遺伝子及びORFを排除する;IMGTデータベースを参照)、並びに場合によりまた、ヒトiEκを含むヒトカッパ遺伝子座の部分に対応する配列を挿入することにより、実行することができる。
【0081】
25. 場合により、ゲノムが、1つの内因性非ヒト脊椎動物カッパ遺伝子座対立遺伝子において前記ヒトラムダ遺伝子セグメント挿入を含み、他方の内因性カッパ遺伝子座対立遺伝子が、内因性非ヒト脊椎動物カッパ定常領域の上流にヒトカッパ免疫グロブリンV及びJ遺伝子の挿入を含み、場合により内因性カッパ軽鎖エンハンサーが、一方又は両方のカッパ遺伝子座において、場合により生殖系列配置で、維持されている、態様24の脊椎動物又は細胞。
【0082】
場合により、ゲノムが、1つの内因性非ヒト脊椎動物ラムダ遺伝子座対立遺伝子において前記ヒトラムダ遺伝子セグメント挿入を含み、他方の内因性ラムダ遺伝子座対立遺伝子が、内因性非ヒト脊椎動物カッパ定常領域の上流にヒトカッパ免疫グロブリンV及びJ遺伝子の挿入を含み、場合により内因性ラムダ軽鎖エンハンサーが、一方又は両方のラムダ遺伝子座において、場合により生殖系列配置で、維持されている、態様24の脊椎動物又は細胞。
【0083】
26. 場合により、ゲノムが、1つの内因性非ヒト脊椎動物ラムダ遺伝子座対立遺伝子において前記ヒトラムダ遺伝子セグメント挿入を含み、他方の内因性ラムダ遺伝子座対立遺伝子が、内因性非ヒト脊椎動物カッパ定常領域の上流にヒトカッパ免疫グロブリンV及びJ遺伝子の挿入を含み、場合により内因性ラムダ軽鎖エンハンサーが、一方又は両方のカッパ遺伝子座において、場合により生殖系列配置で、維持されている、態様24の脊椎動物又は細胞。
【0084】
27. 場合により、ゲノムが、内因性非ヒト脊椎動物遺伝子座におけるヒトラムダ挿入についてホモ接合である、態様1〜23のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。
【0085】
28. 場合により、ゲノムが、内因性非ヒト脊椎動物カッパ及びラムダ遺伝子座におけるヒトラムダ遺伝子セグメント挿入についてホモ接合である、態様1〜23のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。
【0086】
29. 場合により、ゲノムが、内因性非ヒト脊椎動物ラムダ遺伝子座におけるヒトラムダ遺伝子セグメント挿入についてホモ接合であり、1つの内因性カッパ遺伝子座対立遺伝子が、ヒトラムダ遺伝子セグメント挿入を含み、他方の内因性カッパ遺伝子座対立遺伝子が、ヒトカッパ可変領域を含むカッパ軽鎖の発現のためにCκ領域の上流に複数のヒトVκ及びJκ遺伝子セグメントの挿入を含む、態様1〜23及び28のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。ヒトカッパ可変領域は、ヒトVκ及びJκの組換えに由来する。
【0087】
30. 場合により、カッパ及びラムダ遺伝子座におけるヒトラムダ遺伝子セグメント挿入が、ヒトラムダ遺伝子セグメントの同じレパートリーの挿入である、態様27又は28の脊椎動物又は細胞。
【0088】
31. 場合により、カッパ遺伝子座におけるヒトラムダ遺伝子セグメント挿入が、ラムダ遺伝子座におけるヒトラムダ遺伝子セグメント挿入とは異なる、態様27又は28の脊椎動物又は細胞。これは、その後の抗原に対する選択について、可変領域の可能性のあるレパートリーを広げるのに有用である。
【0089】
32.ゲノムが、1つ又は複数の内因性Ig遺伝子座へのヒトIg遺伝子セグメントのターゲット化挿入によって生成されたIg遺伝子セグメントレパートリーを含み、ゲノムが以下の軽鎖遺伝子座構成を含む、非ヒト脊椎動物又は非ヒト脊椎動物細胞(例えば、マウス、ラット、マウス細胞又はラット細胞):
(a)一方の内因性カッパ鎖対立遺伝子におけるL、及び他方の内因性カッパ鎖対立遺伝子におけるK;又は
(b)一方の内因性ラムダ鎖対立遺伝子におけるL、及び他方の内因性ラムダ鎖対立遺伝子におけるK;又は
(c)両方の内因性カッパ鎖対立遺伝子におけるL;
(d)両方の内因性ラムダ鎖対立遺伝子におけるL;
(e)一方の内因性カッパ鎖対立遺伝子におけるL、及び他方の内因性カッパ鎖対立遺伝子が不活性化されている;又は
(f)一方の内因性ラムダ鎖対立遺伝子におけるL、及び他方の内因性ラムダ鎖対立遺伝子が不活性化されている;
ただし、Lは、Vλ3-1からCλ7(例えば、2-18からCλ7までのヒトラムダ鎖Ig遺伝子座によって包含される)までのヒトラムダ鎖Ig遺伝子座によって包含される少なくとも機能的ヒトVλ及びJλ(場合により、Cλ遺伝子セグメントも)のヒトラムダ遺伝子セグメント挿入を表し;及び
Kは、ヒトVκ及びJκ挿入を表し;
ゲノムにおいて、ヒト遺伝子セグメントが、ヒトV及びJ遺伝子セグメントの再組合せに由来した可変領域を含む軽鎖の発現のために、定常領域の上流に挿入されている。
【0090】
33. 場合により、ゲノムが以下の構成を含む、態様32の脊椎動物又は細胞:
(a)及び一方若しくは両方の内因性ラムダ鎖対立遺伝子におけるL;又は
(a)及び一方若しくは両方の内因性ラムダ鎖対立遺伝子におけるK;又は
(a)及び一方の内因性ラムダ鎖対立遺伝子におけるL及び他方の内因性ラムダ鎖対立遺伝子におけるK;又は
(b)及び一方若しくは両方の内因性カッパ鎖対立遺伝子におけるL;又は
(b)及び一方若しくは両方の内因性カッパ鎖対立遺伝子におけるK;又は
(b)及び一方の内因性カッパ鎖対立遺伝子におけるL及び他方の内因性カッパ鎖対立遺伝子におけるK;又は
(c)及び一方若しくは両方の内因性ラムダ鎖対立遺伝子におけるK;又は
(c)及び一方若しくは両方の内因性ラムダ鎖対立遺伝子におけるL;又は
(c)及び一方の内因性ラムダ鎖対立遺伝子におけるL及び他方の内因性ラムダ鎖対立遺伝子におけるK;又は
(c)及び両方の内因性ラムダ鎖対立遺伝子が不活性化されている;又は
(d)及び一方若しくは両方の内因性カッパ鎖対立遺伝子におけるL;又は
(d)及び一方若しくは両方の内因性カッパ鎖対立遺伝子におけるK;又は
(d)及び一方の内因性カッパ鎖対立遺伝子におけるL及び他方の内因性カッパ鎖対立遺伝子におけるK;又は
(d)及び両方の内因性カッパ鎖対立遺伝子が不活性化されている。
【0091】
34. 場合により、内因性カッパ鎖発現が、実質的に、又は完全に不活性化されている、態様32又は33の脊椎動物又は細胞。内因性カッパ鎖が、内因性(非ヒト脊椎動物)Vκ及びJκ遺伝子セグメントの組換えに由来する可変領域を含むカッパ軽鎖である。
【0092】
35. 場合により、内因性ラムダ鎖発現が、実質的に、又は完全に不活性である、態様32、33又は34の脊椎動物又は細胞。内因性ラムダ鎖が、内因性(非ヒト脊椎動物)Vλ及びJλ遺伝子セグメントの組換えに由来する可変領域を含むラムダ軽鎖である。
【0093】
36. 場合により、各L挿入が内因性ラムダ又はカッパ定常領域の上流である、態様32〜35のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。
【0094】
37. 場合により、ラムダ遺伝子座への各L挿入が、内因性ラムダ定常領域の上流である、態様32〜36のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。
【0095】
38. 場合により、カッパ遺伝子座への各L挿入が、内因性カッパ定常領域の上流である、態様32〜36のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。
【0096】
39. 場合により、ラムダ遺伝子座への各L挿入が、ヒトラムダ定常領域の上流である、態様32〜35のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。
【0097】
40. 場合により、カッパ遺伝子座への各L挿入が、ヒトカッパ定常領域の上流である、態様32〜35のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。
【0098】
41. 場合により、各K挿入が、内因性ラムダ又はカッパ定常領域の上流である、態様32〜40のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。
【0099】
42. 場合により、ラムダ遺伝子座への各K挿入が、内因性ラムダ定常領域の上流である、態様32〜41のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。
【0100】
43. 場合により、カッパ遺伝子座への各K挿入が、内因性カッパ定常領域の上流である、態様32〜42のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。
【0101】
44. 場合により、ラムダ遺伝子座への各K挿入が、ヒトラムダ定常領域の上流である、態様32〜40のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。
【0102】
45. 場合により、カッパ遺伝子座への各K挿入が、ヒトカッパ定常領域の上流である、態様32〜40及び44のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。
【0103】
46. 場合により、挿入が、態様1〜9、11〜16及び20〜31のいずれか1つによる、態様32〜45のいずれか1つに記載の脊椎動物又は細胞。
【0104】
47. 場合により、各ヒトラムダ挿入が、態様1〜9、11〜16及び20〜31のいずれか1つによる、態様32〜46のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。
【0105】
48. 場合により、各ヒトカッパ挿入が、態様1〜9、11〜16及び20〜31のいずれか1つによる、態様32〜47のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。
【0106】
49. 場合により、各ヒトラムダ挿入が、ヒトVλ及びJλ(及び場合により、Cλ)遺伝子セグメントのレパートリーを含む、態様32〜48のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。
【0107】
50. 場合により、第1及び第2(及び場合により、第3)のヒトラムダ挿入が行われ、挿入が、ヒトVλ及びJλ(及び場合により、Cλ)遺伝子セグメントの異なるレパートリーを含む、態様32〜48のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。
【0108】
51. 場合により、各ヒトカッパ挿入が、ヒトVκ及びJκ(及び場合により、Cκ)遺伝子セグメントのレパートリーを含む、態様32〜50のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。
【0109】
52. 場合により、第1及び第2(及び場合により、第3)のヒトカッパ挿入が行われ、その挿入が、ヒトVκ及びJκ(及び場合により、Cκ)遺伝子セグメントの異なるレパートリーを含む、態様32〜50のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。
【0110】
53. 場合により、ゲノムが、ヒトVH遺伝子セグメントを含む免疫グロブリン重鎖遺伝子座、例えば、ヒトV、D及びJ遺伝子セグメントを含む本明細書に記載されているような重鎖遺伝子座を含む、前記態様のいずれか1つの脊椎動物又は細胞。
【0111】
54. 所望の抗原に特異的なラムダ可変領域を含む抗体又は軽鎖を生成するための方法であって、任意の前記態様による脊椎動物を所望の抗原で免疫化する工程、及び抗体若しくは軽鎖を回収し、又は抗体若しくは軽鎖を産生する細胞を回収する工程を含む、方法。
【0112】
55. 態様54の方法を実行して、ラムダ鎖非ヒト脊椎動物定常領域を含む抗体又は軽鎖を得る工程、及び非ヒト脊椎動物定常領域をヒト定常領域と、場合により抗体又は軽鎖をコードする核酸の操作により、置換する工程を含む、完全ヒト化抗体又は抗体軽鎖を生成するための方法。
【0113】
56. 場合により医学に使用される、態様54に従って生成されたヒト化抗体若しくは抗体軽鎖、又はその誘導体。
【0114】
57. 医学における、態様54に従って生成されたヒト化抗体若しくは鎖、又はその誘導体の使用。
【0115】
58.非ヒト脊椎動物又は非ヒト脊椎動物細胞(例えば、マウス、ラット、マウス細胞又はラット細胞)のゲノムにおける内因性Ig-VJ領域を不活性化する方法であって、ゲノムにおいて内因性Ig-VJと内因性エンハンサー又は内因性定常領域との間にヒト免疫グロブリン遺伝子セグメント(例えば、V及びJ遺伝子セグメント)を挿入して、内因性Ig-VJをエンハンサー又は定常領域から離し、それにより、内因性Ig-VJ領域を不活性化する工程を含む、方法。
【0116】
一実施形態において、内因性Ig-VJは重鎖遺伝子セグメントであり、エンハンサーは内因性重鎖エンハンサーであり、定常領域は内因性重鎖定常領域であり、ヒトIg遺伝子セグメントはヒトVH、DH及びJH遺伝子セグメントを含む。
【0117】
一実施形態において、内因性Ig-VJはラムダ軽鎖遺伝子セグメントであり、エンハンサーは内因性ラムダ鎖エンハンサーであり、定常領域は内因性ラムダ鎖定常領域であり、ヒトIg遺伝子セグメントはヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントを含む。
【0118】
一実施形態において、内因性Ig-VJはカッパ軽鎖遺伝子セグメントであり、エンハンサーは内因性カッパ鎖エンハンサーであり、定常領域は内因性カッパ鎖定常領域であり、ヒトIg遺伝子セグメントはヒトVκ及びJκ遺伝子セグメントを含む。
【0119】
非ヒト脊椎動物又は非ヒト脊椎動物細胞(例えば、マウス、ラット、マウス細胞又はラット細胞)のゲノムにおける内因性IgK-VJ領域を不活性化する方法であって、ゲノムにおいて内因性IgK-VJとEκエンハンサーとの間にヒト免疫グロブリン遺伝子セグメントを挿入して、IgK-VJをEκエンハンサーから離し、それにより、内因性IgK-VJ領域を不活性化する工程を含む、方法。
【0120】
59. 場合により、ヒト遺伝子セグメントがヒトVL及びJL遺伝子セグメントを含み、場合により、挿入が、態様1〜9、11〜16及び20〜31のいずれか1つに列挙されているような挿入、又はヒトVκ及びJκ遺伝子セグメントの挿入である、態様58の方法。
【0121】
60. 非ヒト脊椎動物細胞(例えば、マウス又はラット)において免疫グロブリン軽鎖を発現する方法であって、軽鎖がラムダ可変領域(ラムダ軽鎖)を含み、脊椎動物によって発現するラムダ軽鎖の可変領域の少なくとも70%又は80%(例えば、少なくとも70%、75%、80%、84%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%)が、ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントの組換えに由来し、方法が、1つ又は複数の内因性Ig遺伝子座へのヒトIg遺伝子セグメントのターゲッティング挿入により生成されたIg遺伝子セグメントレパートリーを脊椎動物のゲノムにおいて準備する工程を含み、ゲノムが、定常領域の上流にヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントを含み、方法が、Vλ2-18からCλ7までのヒトラムダ鎖Ig遺伝子座により含まれる少なくとも機能的ヒトVλ及びJλ(場合により、ヒトCλも)遺伝子セグメント(及び場合により、遺伝子セグメント間配列)を脊椎動物の内因性軽鎖遺伝子座へ挿入する工程を含み、脊椎動物によって発現するラムダ軽鎖の可変領域の少なくとも70%又は80%(例えば、少なくとも70%、75%、80%、84%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%)が、ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントの組換えに由来し、方法が、脊椎動物において前記軽鎖を発現する工程、及び場合により、前記軽鎖の1つ又は複数を(例えば、4鎖抗体の部分として)単離する工程を含む、方法。
【0122】
一実施形態において、方法は、ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントの組換えに由来する可変領域を含むラムダ軽鎖を脊椎動物から単離する工程を更に含む。例において、方法は、ラムダ軽鎖を単離する工程の前に、マウスを抗原(例えば、ヒト抗原)で免疫化する工程を含む。例において、軽鎖は、抗体、例えば、その抗原を特異的に結合する抗体、の部分である。
【0123】
一実施形態において、使用は、マウスから脾臓組織(例えば、脾臓)を単離する工程、場合により、その後、その組織から少なくとも1つの抗原特異的B細胞を単離する工程であって、B細胞が前記ラムダ軽鎖を発現する、工程を更に含む。例えば、前記ラムダ軽鎖は、所定の抗原(例えば、ヒト抗原)を特異的に結合する抗体によって供給される。一例において、使用は、脾臓組織又はラムダ軽鎖を単離する工程の前に、マウスを抗原(例えば、ヒト抗原)で免疫化する工程を含む。例において、使用は、B細胞によって(又はB細胞のミエローマ細胞との融合により生じたハイブリドーマによって)産生されるラムダ軽鎖を単離する工程を含む。例において、使用は、脾臓組織から単離されたB細胞からハイブリドーマを作製する工程であって、ハイブリドーマが前記ラムダ軽鎖又はその誘導体を発現する、工程を含む。場合により、使用は、単離された抗体又はラムダ軽鎖の誘導体を作製する工程を含む。(本明細書における任意の態様による)抗体誘導体の例は、(例えば、抗原結合親和性を向上させるために、及び/又はFc機能を増強若しくは不活性化するために、)単離された抗体と比較して1つ又は複数の突然変異を有する抗体である。そのような突然変異体は、その抗原を特異的に結合する。誘導体を生じ得る突然変異又は適応には、例えば、Fc増強又は不活性化を生じ得る突然変異が挙げられる。誘導体は、毒性ペイロード又はレポーター又は標識又は他の活性部分へのコンジュゲーション後の抗体であり得る。別の例において、本発明の脊椎動物の細胞から単離されたキメラ抗体鎖又は抗体は、その1つ又は全部のヒト定常領域を、対応するヒト定常領域と置換することにより改変される。例えば、そのような細胞又は脊椎動物から単離された抗体の全部の定常領域が、ヒト定常領域で置換されて、完全ヒト抗体(すなわち、ヒト可変領域及び定常領域を含む)を生じる。そのような抗体は、ヒト患者への投与について、患者による抗抗体反応を低下させるために有用である。
【0124】
61. 非ヒト脊椎動物細胞(例えば、マウス又はラット)において免疫グロブリン軽鎖を発現する方法であって、脊椎動物によって発現される軽鎖の少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、80%、84%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%)がヒトラムダ軽鎖によって準備され、方法が、1つ又は複数の内因性Ig遺伝子座へのヒトIg遺伝子セグメントのターゲッティング挿入によって生成されたIg遺伝子セグメントレパートリーを脊椎動物のゲノムにおいて準備する工程を含み、ゲノムが、(i)定常領域の上流にヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントであって、Vλ2-18からCλ7までのヒトラムダ鎖Ig遺伝子座によって含まれる少なくとも機能的ヒトVλ及びJλ(場合により、ヒトCλも)遺伝子セグメント(及び場合により、遺伝子セグメント間配列)を脊椎動物の内因性軽鎖遺伝子座へ挿入することによって準備される、ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントを、並びに(ii)定常領域の上流にカッパV遺伝子セグメントであって、脊椎動物が、ヒトラムダ可変領域(ヒトラムダ軽鎖)を含む免疫グロブリン軽鎖を発現し、かつ脊椎動物によって発現した軽鎖の少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、80%、84%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%)が前記ヒトラムダ軽鎖によって供給される、カッパV遺伝子セグメントを含み、方法が、脊椎動物において前記軽鎖を発現する工程、及び場合により、前記軽鎖の1つ又は複数を(例えば、4鎖抗体の部分として)単離する工程を含む、方法。
【0125】
一実施形態において、方法は、ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントの組換えに由来する可変領域を含むラムダ軽鎖を脊椎動物から単離する工程を更に含む。例において、方法は、ラムダ軽鎖を単離する工程の前に、マウスを抗原(例えば、ヒト抗原)で免疫化する工程を含む。例において、軽鎖は、抗体、例えば、その抗原を特異的に結合する抗体、の部分である。
【0126】
一実施形態において、使用は、マウスから脾臓組織(例えば、脾臓)を単離する工程、場合により、その後、その組織から少なくとも1つの抗原特異的B細胞を単離する工程であって、B細胞が前記ラムダ軽鎖を発現する、工程を更に含む。例えば、前記ラムダ軽鎖は、所定の抗原(例えば、ヒト抗原)を特異的に結合する抗体によって供給される。一例において、使用は、脾臓組織又はラムダ軽鎖を単離する工程の前に、マウスを抗原(例えば、ヒト抗原)で免疫化する工程を含む。例において、使用は、B細胞によって(又はB細胞のミエローマ細胞との融合により生じたハイブリドーマによって)産生されるラムダ軽鎖を単離する工程を含む。例において、使用は、脾臓組織から単離されたB細胞からハイブリドーマを作製する工程であって、ハイブリドーマが前記ラムダ軽鎖又はその誘導体を発現する、工程を含む。場合により、使用は、単離された抗体又はラムダ軽鎖の誘導体を作製する工程を含む。(本明細書における任意の態様による)抗体誘導体の例は、(例えば、抗原結合親和性を向上させるために、及び/又はFc機能を増強若しくは不活性化するために、)単離された抗体と比較して1つ又は複数の突然変異を有する抗体である。そのような突然変異体は、前記抗原を特異的に結合する。
【0127】
62. 非ヒト脊椎動物(例えば、マウス又はラット)においてヒト免疫グロブリンVJC軽鎖を発現する方法であって、方法が、1つ又は複数の内因性Ig遺伝子座へのヒトIg遺伝子セグメントのターゲッティング挿入により生成されたIg遺伝子セグメントレパートリーを脊椎動物のゲノムにおいて準備する工程を含み、方法が、ヒトVJC軽鎖の発現のために内因性非ヒト脊椎動物カッパ定常領域の上流の内因性非ヒト脊椎動物カッパ軽鎖遺伝子座へVλ3-1からCλ7までのヒトラムダ鎖Ig遺伝子座によって含まれる(例えば、2-18からCλ7までのヒトラムダ鎖Ig遺伝子座によって含まれる)少なくとも機能的ヒトVλ、Jλ、及びCλ遺伝子セグメント(及び場合により、遺伝子セグメント間配列)を挿入する工程を含み、方法が、脊椎動物において前記軽鎖を発現する工程、及び場合により、前記軽鎖の1つ又は複数を(例えば、4鎖抗体の部分として)単離する工程を含む、方法。
【0128】
一実施形態において、方法は、ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントの組換えに由来する可変領域を含むラムダ軽鎖を脊椎動物から単離する工程を更に含む。例において、方法は、ラムダ軽鎖を単離する工程の前に、マウスを抗原(例えば、ヒト抗原)で免疫化する工程を含む。例において、軽鎖は、抗体、例えば、抗原を特異的に結合する抗体、の部分である。
【0129】
一実施形態において、使用は、マウスから脾臓組織(例えば、脾臓)を単離する工程、場合により、その後、組織から少なくとも1つの抗原特異的B細胞を単離する工程であって、B細胞が前記ラムダ軽鎖を発現する、工程を更に含む。例えば、前記ラムダ軽鎖は、所定の抗原(例えば、ヒト抗原)を特異的に結合する抗体によって供給される。一例において、使用は、脾臓組織又はラムダ軽鎖を単離する工程の前に、マウスを抗原(例えば、ヒト抗原)で免疫化する工程を含む。例において、使用は、B細胞によって(又はB細胞のミエローマ細胞との融合により生じたハイブリドーマによって)産生されるラムダ軽鎖を単離する工程を含む。例において、使用は、脾臓組織から単離されたB細胞からハイブリドーマを作製する工程であって、ハイブリドーマが前記ラムダ軽鎖又はその誘導体を発現する、工程を含む。場合により、使用は、単離された抗体又はラムダ軽鎖の誘導体を作製する工程を含む。(本明細書における任意の態様による)抗体誘導体の例は、(例えば、抗原結合親和性を向上させるために、及び/又はFc機能を増強若しくは不活性化するために、)単離された抗体と比較して1つ又は複数の突然変異を有する抗体である。そのような突然変異体は、その抗原を特異的に結合する。
【0130】
63. 場合により、脊椎動物が他の態様のいずれか1つによるものである、態様38〜40のいずれか1つの方法。
【0131】
64. 場合により医学に使用される、態様58〜63のいずれか1つの方法に従って単離された抗体軽鎖、又はその誘導体、又はそのような軽鎖若しくは誘導体を含む抗体。
【0132】
65. 医学における、態様58〜63のいずれか1つの方法に従って単離された抗体軽鎖又はその誘導体(又はそのような軽鎖若しくは誘導体を含む抗体)の使用。
【0133】
66. ラムダ可変領域を含む軽鎖(ラムダ軽鎖)を発現するための、態様1〜53のいずれか1つによる非ヒト脊椎動物(例えば、マウス又はラット)であって、脊椎動物によって発現したラムダ軽鎖の可変領域の少なくとも70%又は80%(例えば、少なくとも70%、75%、80%、84%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%、又は100%)が、ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントの組換えに由来する、非ヒト脊椎動物。
【0134】
ラムダ可変領域を含む軽鎖(ラムダ軽鎖)を発現する、態様1〜53のいずれか1つによる非ヒト脊椎動物(例えば、マウス又はラット)であって、脊椎動物によって発現したラムダ軽鎖の可変領域の少なくとも70%又は80%(例えば、少なくとも70%、75%、80%、84%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%又は100%)が、ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントの組換えに由来する、非ヒト脊椎動物。
【0135】
67. 軽鎖を発現するための、態様1〜53のいずれか1つによる非ヒト脊椎動物(例えば、マウス又はラット)であって、脊椎動物によって発現した軽鎖の少なくとも60%(例えば、65%より多く、70%より多く、80%より多く、84%より多く、85%より多く、90%より多く、95%より多く、96%より多く、97%より多く、98%より多く又は99%より多く又は100%)が、ヒトラムダ軽鎖によって供給される、非ヒト脊椎動物。
【0136】
軽鎖を発現する、態様1〜53のいずれか1つによる非ヒト脊椎動物(例えば、マウス又はラット)であって、脊椎動物によって発現した軽鎖の少なくとも60%(例えば、65%より多く、70%より多く、80%より多く、84%より多く、85%より多く、90%より多く、95%より多く、96%より多く、97%より多く、98%より多く又は99%より多く又は100%)が、ヒトラムダ軽鎖によって供給される、非ヒト脊椎動物。
【0137】
68. ラムダ可変領域を含む軽鎖(ラムダ軽鎖)を発現するための、態様7による非ヒト脊椎動物(例えば、マウス又はラット)であって、ヒトラムダ可変領域を含むラムダ軽鎖の発現が、内因性非ヒト脊椎動物ラムダ可変領域を含むラムダ軽鎖の発現を凌駕し、場合により、内因性軽鎖遺伝子座からの内因性非ヒト脊椎動物ラムダ可変領域の発現を不活性化するための、非ヒト脊椎動物。
【0138】
ラムダ可変領域を含む軽鎖(ラムダ軽鎖)を発現する、態様7による非ヒト脊椎動物(例えば、マウス又はラット)であって、ヒトラムダ可変領域を含むラムダ軽鎖の発現が、内因性非ヒト脊椎動物ラムダ可変領域を含むラムダ軽鎖の発現を凌駕し、場合により、内因性軽鎖遺伝子座からの内因性非ヒト脊椎動物ラムダ可変領域の発現を不活性化するための、非ヒト脊椎動物。
【0139】
69. 内因性軽鎖遺伝子座からの内因性非ヒト脊椎動物ラムダ可変領域の発現を不活性化するための、態様7、8、9又は10による非ヒト脊椎動物(例えば、マウス又はラット)。
【0140】
抗体鎖のパーセンテージ発現又は発現のレベルは、B細胞(例えば、末梢血リンパ球)における軽鎖mRNA転写産物のレベルにおいて決定される。代替として、又は追加として、パーセンテージ発現は、脊椎動物の血清又は血液における抗体軽鎖のレベルにおいて決定される。追加として、又は代替として、発現は、B細胞のFACS(蛍光活性化細胞ソーティング)分析によって決定することができる。例えば、ヒトラムダ可変領域が、マウスCカッパ又はヒトCラムダ領域、それぞれと共に発現する場合、細胞表面上のマウスCカッパ又はヒトCラムダの発現を評価することによる。
【0141】
これらの態様における用語「ラムダ軽鎖」とは、Vλ及びJλ遺伝子セグメントの組換えに由来する(RNA又はアミノ酸レベルにおける)可変領域配列を含む軽鎖を指す。したがって、例えば、「ヒトラムダ可変領域」は、ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントの組換えに由来する可変領域である。定常領域は、カッパ又はラムダ定常領域、例えば、ヒト又はマウス定常領域であり得る。
【0142】
これらの態様における脊椎動物は、例えば、ナイーブである(すなわち、その用語が当技術分野において理解されているように、所定の抗原で免疫化されていない;例えば、研究開発に使用される動物ハウスによって提供されるような比較的無菌の環境で飼育されているそのような脊椎動物)。別の例において、脊椎動物は、所定の抗原、例えば、ヒトエピトープを有する抗原で免疫化されている。
【0143】
「機能的」ヒト遺伝子セグメントへの言及は、ヒトIgラムダ遺伝子座において、いくつかのV遺伝子セグメントが非機能的な偽遺伝子である(例えば、Vλ3-17、Vλ3-15、Vλ3-13、Vλ3-7、Vλ3-6、Vλ2-5、Vλ3-4、Vλ3-2;World Wide Web(www) imgt.org/IMGTrepertoire/index.php?section=LocusGenes&repertoire=locus&species=human&group=IGLにおけるIMGTデータベースを参照)ことを認めている。また、Jλ4-Cλ4及びJλ5-Cλ5は、ヒトにおいて非機能的である。遺伝子セグメントに言及する場合、用語「機能的な」は偽遺伝子を排除する。機能的ヒトVλ遺伝子セグメントの例は、群Vλ2-18、Vλ3-16、V2-14、Vλ3-12、Vλ2-11、Vλ3-10、Vλ3-9、Vλ2-8、Vλ4-3及びVλ3-1である。機能的ヒトJλ遺伝子セグメントの例は、群Jλ1、Jλ2及びJλ3;又はJλ1、Jλ2及びJλ7;又はJλ2、Jλ3及びJλ7;又はJλ1、Jλ2、Jλ3及びJλ7である。機能的ヒトCλ遺伝子セグメントの例は、群Cλ1、Cλ2及びCλ3;又はCλ1、Cλ2及びCλ7;又はCλ2、Cλ3及びCλ7;又はCλ1、Cλ2、Cλ3及びCλ7である。
【0144】
一実施形態において、本発明の細胞又は脊椎動物において発現した重鎖と共のラムダ軽鎖は、抗体を形成する。重鎖は、本明細書に記載されているように、トランスジェニック重鎖遺伝子座から発現することができる。例えば、細胞又は脊椎動物のゲノムは、前記非ヒト種のミュー定常領域の上流に、1つ又は複数のヒトV遺伝子セグメント、1つ又は複数のヒトD遺伝子セグメント及び1つ又は複数のヒトJ遺伝子セグメントを含むキメラ免疫グロブリン重鎖遺伝子座である重鎖遺伝子座を含む;内因性重鎖発現は、実質的に不活性化されている;並びに、重鎖遺伝子座は、前記非ヒト脊椎動物種のEμエンハンサーを含む。
【0145】
脊椎動物又は細胞の一実施形態において、全ての内因性エンハンサーは、ヒト遺伝子セグメントが挿入されている内因性遺伝子座から除去されている。したがって、ヒトエンハンサー(例えば、Eλ)が挿入される場合、これは、他の内因性エンハンサー(例えば、その遺伝子座が内因性カッパエンハンサーである場合には、カッパエンハンサー)の効果の非存在下においてトランスジェニック遺伝子座を調節する。これは、(例えば、マウスにおいて発現をより高い比のラムダ:カッパへと導くために)非ヒト脊椎動物様カッパ:ラムダ発現比を避けるのに有用である場合がある。
【0146】
内因性軽鎖(例えば、カッパ又はラムダ)発現が、本明細書に記載されているように、実質的に不活性であり、又は不活性化されている場合、そのような内因性軽鎖の10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満又は0.5%未満が発現し、又は発現可能である。一例において、そのような軽鎖が発現しておらず、又は発現不可能であるならば、完全不活性化が存在する。
【0147】
場合により、本発明の脊椎動物はナイーブである。したがって、脊椎動物は、所定の抗原で免疫化されていない。
【0148】
例えば、本発明の細胞が、ES細胞又は他のIPS幹細胞又は他の多能性幹細胞である場合、細胞は、本発明の脊椎動物へと発生することができる。例えば、細胞は、乳母由来の胚盤胞へ移植され、標準技術に従って胚及び動物に発生することができる。
【0149】
一実施形態において、ヒトカッパ遺伝子セグメントが挿入される場合、各挿入は、以下のヒトカッパ遺伝子セグメントを含む:
(i)Vκ1-5、Vκ1-6、Vκ1-8及びVκ1-9 (並びに場合により、Vκ5-2及びVκ4-1);又は
(ii)Vκ1-5、Vκ1-6、Vκ1-8、Vκ1-9、Vκ3-11、Vκ1-12、Vκ3-15、Vκ1-16、Vκ1-17、Vκ3-20 (並びに場合により、Vκ2-24及び/又はVκ1-13);又は
(iii)Vκ1-5、Vκ1-6、Vκ1-8、Vκ1-9、Vκ3-11、Vκ1-12、Vκ3-15、Vκ1-16、Vκ1-17、Vκ3-20、Vκ2-24、Vκ1-27、Vκ2-28、Vκ2-30及びVκ1-33(並びに場合により、Vκ2-29及び/又はVκ2-40及び/又はVκ1-39);
並びに場合により、
(iv)Jκ1、Jκ2、Jκ3、Jκ4及びJκ5。
【0150】
一実施形態において、ヒトカッパ挿入はまた、遺伝子座においてヒトJ遺伝子セグメントの下流にヒトiEκ及び/又はヒト3'Eκを含む。
【0151】
本質的にもっぱらヒト重鎖可変領域のみを発現する本発明のトランスジェニックマウスは、正常な脾臓コンパートメント及び骨髄コンパートメント、並びにヒト重鎖可変領域を含む正常なIg発現を発生する。
【0152】
本発明者らは、驚くべきことに、実質的に内因性重鎖及びカッパ鎖発現の非存在下で、ヒト重鎖可変領域を有する抗体を発現する、本発明のトランスジェニックマウスにおいて正常なIgサブタイプ発現及びB細胞発生を観察した。下記の実施例16を参照。
【0153】
本発明者らは、驚くべきことに、ヒト可変領域発現の存在下における内因性重鎖可変領域発現の不活性化が、脾臓コンパートメント(図66)又は骨髄B前駆体コンパートメント(図67)におけるB細胞の比を変化させず、かつ血清における免疫グロブリンレベルが正常であり、かつ正しいIgサブタイプが発現している(図68)ことを観察した。これらのデータは、本発明による挿入されたヒト重鎖遺伝子セグメント(例えば、少なくともヒトVH遺伝子セグメントVH2-5、7-4-1、4-4、1-3、1-2、6-1、並びに全てのヒトD及びJH遺伝子セグメントD1-1、2-2、3-3、4-4、5-5、6-6、1-7、2-8、3-9、5-12、6-13、2-15、3-16、4-17、6-19、1-20、2-21、3-22、6-25、1-26及び7-27;並びにJ1、J2、J3、J4、J5及びJ6、場合により、Table 7(表7)の対立遺伝子の挿入)が、トランスジェニック重鎖遺伝子座からのVDJ遺伝子セグメント再構成、B細胞受容体(BCR)シグナル伝達、及び適切なB細胞成熟のために完全に機能していることを実証している。
【0154】
したがって、本発明は、以下の態様(態様70から始まって番号が付いている)を提供する:
【0155】
70.ヒト可変領域を含む免疫グロブリン重鎖を発現する、又は発現するためのマウスであって、マウスによって発現する重鎖が、本質的にもっぱら、前記ヒト可変領域を含む重鎖のみであり、かつ前記ヒト可変領域を含む重鎖がマウスにおいて血清IgG1、IgG2b及びIgM(及び場合により、IgG2a)抗体の部分として発現し;
マウスが、マウス定常領域(例えば、(5'から3'への方向で)マウスC-ミュー及びマウスC-デルタ及びマウスC-ガンマ等のC-ミュー及び/又はC-デルタ及び/又はC-ガンマ)の上流にヒトVH、DH及びJH遺伝子セグメントを含む免疫グロブリン重鎖遺伝子座を含み、
(a)マウスが、ヒト可変領域を含む免疫グロブリン重鎖を発現する能力があり、マウスによって発現する重鎖が、本質的にもっぱら、前記ヒト可変領域を含む重鎖のみであり;
(b)マウスが、前記重鎖を含む血清IgG1、IgG2b及びIgM(及び場合により、IgG2a)抗体を発現する、
マウス。
【0156】
Igアイソタイプは、例えば、当業者にとってよく精通しているように(及び実施例16に例証されているように)、アイソタイプ適合ツール抗体を使用して、決定することができる。
【0157】
実施形態において、マウスはナイーブである。
【0158】
71. 正常な相対的割合の血清IgG1、IgG2a、IgG2b及びIgM抗体を発現するための態様70のマウス。
【0159】
「正常な」とは、マウス抗体鎖のみを発現するマウス(例えば、ナイーブなマウス)、例えば、ゲノムが野生型機能的Ig重鎖及び軽鎖遺伝子座のみを含むマウス、例えば、野生型マウスにおける発現に匹敵することを意味する。
【0160】
72. 正常な相対的割合の血清IgG1、IgG2a、IgG2b及びIgM抗体を発現する、態様70又は71のマウス。
【0161】
「正常な」とは、マウス抗体鎖のみを発現するマウス(例えば、ナイーブなマウス)、例えば、ゲノムが野生型機能的Ig重鎖及び軽鎖遺伝子座のみを含むマウス、例えば、野生型マウスにおける発現に匹敵することを意味する。
【0162】
73.プレート上でのIg捕獲、続いて、抗マウスアイソタイプ特異的標識抗体とのインキュベーション(例えば、RTで1時間、例えば、20℃で1時間)、及び標識を使用するIgの定量化(例えば、それぞれが、0.1% Tween(商標)を含むPBS中1/10000の比率でコンジュゲートされた西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートされた、抗マウスIgアイソタイプ特異的抗体を使用し、続いて、標識をテトラメチルベンジジン基質(TMB)で、暗闇中、室温(例えば、20℃)、4〜5分間、発色させ、硫酸を加えて標識の発色を停止させ、標識を450nmで読み取る)により決定される場合、
(i)約25〜350μg/mlの濃度の血清IgG1;
(ii)約0〜200μg/mlの濃度の血清IgG2a;
(iii)約30〜800μg/mlの濃度の血清IgG2b;及び
(iv)約50〜300μg/mlの濃度の血清IgM;
又は
(i)約10〜600μg/mlの濃度の血清IgG1;
(ii)約0〜500μg/mlの濃度の血清IgG2a;
(iii)約20〜700μg/mlの濃度の血清IgG2b;及び
(iv)約50〜700μg/mlの濃度の血清IgM
をマウスにおいて発現するための、態様70〜72のいずれか1つのマウス。
【0163】
例えば、プレート上でのIg捕獲、続いて、抗マウスアイソタイプ特異的標識抗体とのインキュベーション(例えば、RTで1時間、例えば、20℃で1時間)、及び標識を使用するIgの定量化(例えば、それぞれが、0.1% Tween(商標)を含むPBS中1/10000の比率でコンジュゲートされた西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートされた、抗マウスIgアイソタイプ特異的抗体を使用し、続いて、標識をテトラメチルベンジジン基質(TMB)で、暗闇中、室温(例えば、20℃)、4〜5分間、発色させ、硫酸を加えて標識の発色を停止させ、標識を450nmで読み取る)により決定される場合、
(i)約25〜150μg/mlの濃度の血清IgG1;
(ii)約0〜200μg/mlの濃度の血清IgG2a;
(iii)約30〜300μg/mlの濃度の血清IgG2b;及び
(iv)約50〜200μg/mlの濃度の血清IgM;
又は
(i)約10〜200μg/mlの濃度の血清IgG1;
(ii)約0〜500μg/mlの濃度の血清IgG2a;
(iii)約20〜400μg/mlの濃度の血清IgG2b;及び
(iv)約50〜700μg/mlの濃度の血清IgM
をマウスにおいて発現するための、態様70〜72のいずれか1つのマウス。
【0164】
プレート上でのIg捕捉、続いて、抗マウスアイソタイプ特異的標識抗体とのインキュベーション(例えば、RTで1時間、例えば、20℃で1時間)、及び標識を使用するIgの定量(例えば、それぞれが、0.1% Tween(商標)を含むPBS中1/10000の比率でコンジュゲートされた西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートされた、抗マウスIgアイソタイプ特異的抗体を使用し、続いて、標識をテトラメチルベンジジン基質(TMB)で、暗闇中、室温(例えば、20℃)、4〜5分間、発色させ、硫酸を加えて標識の発色を停止させ、標識を450nmで読み取る)により決定される場合、
(i)約25〜350μg/mlの濃度の血清IgG1;
(ii)約0〜200μg/mlの濃度の血清IgG2a;
(iii)約30〜800μg/mlの濃度の血清IgG2b;及び
(iv)約50〜300μg/mlの濃度の血清IgM;
又は
(i)約10〜600μg/mlの濃度の血清IgG1;
(ii)約0〜500μg/mlの濃度の血清IgG2a;
(iii)約20〜700μg/mlの濃度の血清IgG2b;及び
(iv)約50〜700μg/mlの濃度の血清IgM
の相対的割合でマウスIgにおいて発現するための、態様70〜72のいずれか1つのマウス。
【0165】
例えば、プレート上でのIg捕獲、続いて、抗マウスアイソタイプ特異的標識抗体とのインキュベーション(例えば、RTで1時間、例えば、20℃で1時間)、及び標識を使用するIgの定量化(例えば、それぞれが、0.1% Tween(商標)を含むPBS中1/10000の比率でコンジュゲートされた西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートされた、抗マウスIgアイソタイプ特異的抗体を使用し、続いて、標識をテトラメチルベンジジン基質(TMB)で、暗闇中、室温(例えば、20℃)、4〜5分間、発色させ、硫酸を加えて標識の発色を停止させ、標識を450nmで読み取る)により決定される場合、
(i)約25〜150μg/mlの濃度の血清IgG1;
(ii)約0〜200μg/mlの濃度の血清IgG2a;
(iii)約30〜300μg/mlの濃度の血清IgG2b;及び
(iv)約50〜200μg/mlの濃度の血清IgM;
又は
(i)約10〜200μg/mlの濃度の血清IgG1;
(ii)約0〜500μg/mlの濃度の血清IgG2a;
(iii)約20〜400μg/mlの濃度の血清IgG2b;及び
(iv)約50〜700μg/mlの濃度の血清IgM
の相対的割合でマウスIgにおいて発現するための、態様70〜72のいずれか1つのマウス。
【0166】
74. マウスが、
プレート上でのIg捕捉、続いて、抗マウスアイソタイプ特異的標識抗体とのインキュベーション(例えば、RTで1時間、例えば、20℃で1時間)、及び前記標識を使用するIgの定量(例えば、それぞれが、0.1% Tween(商標)を含むPBS中1/10000の比率でコンジュゲートされた西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートされた、抗マウスIgアイソタイプ特異的抗体を使用し、続いて、標識をテトラメチルベンジジン基質(TMB)で、暗闇中、室温(例えば、20℃)、4〜5分間、発色させ、硫酸を加えて標識の発色を停止させ、標識を450nmで読み取る)により決定される場合、
(i)約25〜350μg/mlの濃度の血清IgG1;
(ii)約0〜200μg/mlの濃度の血清IgG2a;
(iii)約30〜800μg/mlの濃度の血清IgG2b;及び
(iv)約50〜300μg/mlの濃度の血清IgM;
又は
(i)約10〜600μg/mlの濃度の血清IgG1;
(ii)約0〜500μg/mlの濃度の血清IgG2a;
(iii)約20〜700μg/mlの濃度の血清IgG2b;及び
(iv)約50〜700μg/mlの濃度の血清IgM
を発現する、態様70〜73のいずれか1つのマウス。
【0167】
例えば、マウスが、
プレート上でのIg捕獲、続いて、抗マウスアイソタイプ特異的標識抗体とのインキュベーション(例えば、RTで1時間、例えば、20℃で1時間)、及び前記標識を使用するIgの定量化(例えば、それぞれが、0.1% Tween(商標)を含むPBS中1/10000の比率でコンジュゲートされた西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートされた、抗マウスIgアイソタイプ特異的抗体を使用し、続いて、標識をテトラメチルベンジジン基質(TMB)で、暗闇中、室温(例えば、20℃)、4〜5分間、発色させ、硫酸を加えて標識の発色を停止させ、標識を450nmで読み取る)により決定される場合、
(i)約25〜150μg/mlの濃度の血清IgG1;
(ii)約0〜200μg/mlの濃度の血清IgG2a;
(iii)約30〜300μg/mlの濃度の血清IgG2b;及び
(iv)約50〜200μg/mlの濃度の血清IgM;
又は
(i)約10〜200μg/mlの濃度の血清IgG1;
(ii)約0〜500μg/mlの濃度の血清IgG2a;
(iii)約20〜400μg/mlの濃度の血清IgG2b;及び
(iv)約50〜700μg/mlの濃度の血清IgM
を発現する、態様70〜72のいずれか1つのマウス。
【0168】
マウスが、
プレート上でのIg捕獲、続いて、抗マウスアイソタイプ特異的標識抗体とのインキュベーション(例えば、RTで1時間、例えば、20℃で1時間)、及び前記標識を使用するIgの定量化(例えば、それぞれが、0.1% Tween(商標)を含むPBS中1/10000の比率でコンジュゲートされた西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートされた、抗マウスIgアイソタイプ特異的抗体を使用し、続いて、標識をテトラメチルベンジジン基質(TMB)で、暗闇中、室温(例えば、20℃)、4〜5分間、発色させ、硫酸を加えて標識の発色を停止させ、標識を450nmで読み取る)により決定される場合、
(i)約25〜350μg/mlの濃度の血清IgG1;
(ii)約0〜200μg/mlの濃度の血清IgG2a;
(iii)約30〜800μg/mlの濃度の血清IgG2b;及び
(iv)約50〜300μg/mlの濃度の血清IgM;
又は
(i)約10〜600μg/mlの濃度の血清IgG1;
(ii)約0〜500μg/mlの濃度の血清IgG2a;
(iii)約20〜700μg/mlの濃度の血清IgG2b;及び
(iv)約50〜700μg/mlの濃度の血清IgM
の相対的割合でIgを発現する、態様70〜73のいずれか1つのマウス。
【0169】
例えば、
プレート上でのIg捕捉、続いて、抗マウスアイソタイプ特異的標識抗体とのインキュベーション(例えば、RTで1時間、例えば、20℃で1時間)、及び前記標識を使用するIgの定量(例えば、それぞれが、0.1% Tween(商標)を含むPBS中1/10000の比率でコンジュゲートされた西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートされた、抗マウスIgアイソタイプ特異的抗体を使用し、続いて、標識をテトラメチルベンジジン基質(TMB)で、暗闇中、室温(例えば、20℃)、4〜5分間、発色させ、硫酸を加えて標識の発色を停止させ、標識を450nmで読み取る)により決定される場合、
(i)約25〜150μg/mlの濃度の血清IgG1;
(ii)約0〜200μg/mlの濃度の血清IgG2a;
(iii)約30〜300μg/mlの濃度の血清IgG2b;及び
(iv)約50〜200μg/mlの濃度の血清IgM;
又は
(i)約10〜200μg/mlの濃度の血清IgG1;
(ii)約0〜500μg/mlの濃度の血清IgG2a;
(iii)約20〜400μg/mlの濃度の血清IgG2b;及び
(iv)約50〜700μg/mlの濃度の血清IgM
の相対的割合でIgを発現する、態様70〜72のいずれか1つのマウス。
【0170】
75. 例えばFACSによって決定される場合、正常な割合又はパーセンテージの成熟脾臓B細胞を産生するマウスにおいて脾臓B細胞から前記重鎖を発現するための、態様70〜74のいずれか1つのマウス。
【0171】
「正常な」とは、マウス抗体鎖のみを発現するマウス(例えば、ナイーブなマウス)、例えば、ゲノムが野生型機能的Ig重鎖及び軽鎖遺伝子座のみを含むマウス、例えば、野生型マウスにおける成熟脾臓B細胞産生に匹敵することを意味する。
【0172】
例えば、本発明のマウスによって産生される総脾臓B細胞の少なくとも40%、50%、60%又は70%が成熟B細胞である。脾臓B細胞はB220+であり、当業者が知っているように、相対的に高いレベルでB220を発現する。当業者によって知られているように、成熟脾臓B細胞は、B220及びIgDの両方を相対的に高いレベルで発現する。IgM発現は、この場合もやはり当技術分野において知られているように、成熟脾臓B細胞において相対的に低い。例えば、J Exp Med. 1999年7月5日;190(1):75〜89頁;「B cell development in the spleen takes place in discrete steps and is determined by the quality of B cell receptor-derived signals」、Loder Fら、参照。
【0173】
場合により、マウスは、例えば、FACSによって決定される場合、正常な比率のT1、T2及び成熟脾臓B細胞を産生する。例えば、本発明のマウスは、約40〜70%の成熟脾臓B細胞、15〜35%の脾臓T1細胞及び5〜10%の脾臓T2細胞を産生する(総脾臓B220陽性(高)集団に関してのパーセンテージ)。例えば、約40〜60%の成熟脾臓B細胞、15〜30% の脾臓T1細胞及び5〜10%の脾臓T2細胞。「正常な」とは、マウス抗体鎖のみを発現するマウス(例えば、ナイーブなマウス)、例えば、ゲノムが野生型機能的Ig重鎖及び軽鎖遺伝子座のみを含むマウス、例えば、野生型マウスにおけるT1/T2/成熟脾臓B細胞集団に匹敵することを意味する。
【0174】
76. マウスが、例えば、FACSによって決定される場合、正常な割合又はパーセンテージの成熟脾臓B細胞を産生する、態様70〜75のいずれか1つのマウス。
【0175】
77. ヒト可変領域を含む免疫グロブリン重鎖を発現し、又は発現するためのマウスであって、マウスによって発現する重鎖が、本質的にもっぱら、前記ヒト可変領域を含む重鎖のみであり、(例えば、FACSによって決定される場合)正常な割合又はパーセンテージの成熟脾臓B細胞を産生するマウスにおいて発現し、マウスが、マウス定常領域(例えば、(例えば5'から3'の方向に)Cミュー及び/又はCデルタ及び/又はCガンマ)の上流にヒトVH、DH及びJH遺伝子セグメントを含む免疫グロブリン重鎖遺伝子座を含み、マウスが、正常な割合又はパーセンテージの成熟脾臓B細胞を産生する、マウス。
【0176】
「正常な」とは、マウス抗体鎖のみを発現するマウス(例えば、ナイーブなマウス)、例えば、ゲノムが野生型機能的Ig重鎖及び軽鎖遺伝子座のみを含むマウス、例えば、野生型マウスにおける成熟脾臓B細胞産生に匹敵することを意味する。例えば、本発明のマウスにより産生される総脾臓B細胞の少なくとも40%、50%、60%又は70%は成熟B細胞である。脾臓B細胞はB220+であり、当業者が知っているように、相対的に高いレベルでB220を発現する。当業者によって知られているように、成熟脾臓B細胞は、B220及びIgDの両方を相対的に高いレベルで発現する。IgM発現は、この場合もやはり当技術分野において知られているように、成熟脾臓B細胞において相対的に低い。例えば、J Exp Med. 1999年7月5日;190(1):75〜89頁;「B cell development in the spleen takes place in discrete steps and is determined by the quality of B cell receptor-derived signals」、Loder Fら、参照。
【0177】
場合により、マウスは、例えば、FACSによって決定される場合、正常な比率のT1、T2及び成熟脾臓B細胞を産生する。例えば、本発明のマウスは、約40〜70%の成熟脾臓B細胞、15〜35%の脾臓T1細胞及び5〜10%の脾臓T2細胞を産生する(総脾臓B220陽性(高)集団に関してのパーセンテージ)。例えば、約40〜60%の成熟脾臓B細胞、15〜30%の脾臓T1細胞及び5〜10%の脾臓T2細胞。「正常な」とは、マウス抗体鎖のみを発現するマウス(例えば、ナイーブなマウス)、例えば、ゲノムが野生型機能的Ig重鎖及び軽鎖遺伝子座のみを含むマウス、例えば、野生型マウスにおけるT1/T2/成熟脾臓B細胞集団に匹敵することを意味する。
【0178】
78. (例えば、FACSによって決定される場合)正常な割合又はパーセンテージの骨髄B細胞前駆細胞を産生するマウスにおいて前記重鎖を発現するための態様70〜77のいずれか1つのマウス。
【0179】
一実施形態において、マウスは、(例えば、FACSによって決定される場合)正常な割合又はパーセンテージの骨髄プレB細胞、プロB細胞及びプレプロB細胞を産生するマウスにおいて前記重鎖を発現するためである。前駆細胞に関するより多くの考察については、J Exp Med. 1991年5月1日;173(5):1213〜25;「Resolution and characterization of pro-B and pre-pro-B cell stages in normal mouse bone marrow」、Hardy RRら参照。
【0180】
「正常な」とは、マウス抗体鎖のみを発現するマウス(例えば、ナイーブなマウス)、例えば、ゲノムが野生型機能的Ig重鎖及び軽鎖遺伝子座のみを含むマウス、例えば、野生型マウスにおける骨髄B細胞産生に匹敵することを意味する。
【0181】
79. マウスが、(例えば、FACSによって決定される場合)正常な割合又はパーセンテージの骨髄B細胞前駆細胞を産生する、態様70〜78のいずれか1つのマウス。
【0182】
一実施形態において、マウスは、(例えば、FACSによって決定される場合)正常な割合又はパーセンテージの骨髄プレB細胞、プロB細胞及びプレプロB細胞を産生する。
【0183】
「正常な」とは、マウス抗体鎖のみを発現するマウス(例えば、ナイーブなマウス)、例えば、ゲノムが野生型機能的Ig重鎖及び軽鎖遺伝子座のみを含むマウス、例えば、野生型マウスにおける骨髄B細胞産生に匹敵することを意味する。
【0184】
80. ヒト可変領域を含む免疫グロブリン重鎖を発現し、又は発現するためのマウスであって、マウスによって発現する重鎖が、本質的にもっぱら、前記ヒト可変領域を含む重鎖のみであり、(例えば、FACSによって決定される場合)正常な割合又はパーセンテージの骨髄B細胞前駆細胞を産生するマウスにおいて発現し、マウスが、マウス定常領域(例えば、(例えば5'から3'の方向に)Cミュー及び/又はCデルタ及び/又はCガンマ)の上流にヒトVH、DH及びJH遺伝子セグメントを含む免疫グロブリン重鎖遺伝子座を含み、マウスが、正常な割合又はパーセンテージの骨髄B細胞前駆細胞を産生する、マウス。
【0185】
一実施形態において、マウスは、(例えば、FACSによって決定される場合)正常な割合又はパーセンテージの骨髄プレB細胞、プロB細胞及びプレプロB細胞を産生するマウスにおいて前記重鎖を発現するためのものである。
【0186】
「正常な」とは、マウス抗体鎖のみを発現するマウス(例えば、ナイーブなマウス)、例えば、ゲノムが野生型機能的Ig重鎖及び軽鎖遺伝子座のみを含むマウス、例えば、野生型マウスにおける骨髄B細胞産生に匹敵することを意味する。
【0187】
81. 重鎖の少なくとも90%が、ヒト可変領域を含む重鎖である、態様70〜80のいずれか1つのマウス。
【0188】
例えば、重鎖の少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は99.5%又は100%が、ヒト可変領域、すなわち、ヒトD及びJH遺伝子セグメントと共のヒトVHの組換えに由来する可変領域を含む。
【0189】
82. マウス定常領域が、マウスCミュー領域、Cデルタ領域及びCガンマ領域を含む、態様70〜81のいずれか1つのマウス。
【0190】
一実施形態において、C領域のそれぞれが、内因性のマウスC領域である。一実施形態において、少なくともCミュー及びCデルタ領域がマウスC領域である。これは、脾臓及び骨髄における様々なB細胞型及び前駆体の発生に関与する内因性調節機構を利用するのに有用である。
【0191】
一実施形態において、Cガンマ領域は、ヒトCガンマ領域である。これは、発現した重鎖の本質的に全部がヒト可変領域及びヒト定常領域を有するマウスにおいて、クラススイッチしたガンマ型重鎖を産生するのに有益である。
【0192】
83. ヒト遺伝子セグメントとマウス定常領域の間にマウス重鎖エンハンサーがある、態様70〜82のいずれか1つのマウス。これは、内因性マウス抗体及びB細胞発生調節機構を利用するのに有用である。
【0193】
84. ヒト遺伝子セグメントとマウス定常領域の間にマウスSミュースイッチがある、態様70〜83のいずれか1つのマウス。
【0194】
85. マウスのゲノムが、ヒト遺伝子セグメントの上流に内因性マウス重鎖遺伝子座V、D及びJ遺伝子セグメントを含む、態様70〜84のいずれか1つのマウス。
【0195】
86. マウスV、D及びJ遺伝子セグメントが内因性遺伝子セグメント間配列と共に存在する、態様85のマウス。
【0196】
87. マウス遺伝子セグメントが逆方向である、態様85又は86のマウス。したがって、それらは、マウスゲノムにおいて野生型方向に対して反転している。したがって、それらは、マウス定常領域の方向に対して反転している。
【0197】
88. マウスが、ヒト可変領域を含む軽鎖(例えば、ヒトカッパ可変領域を含むカッパ軽鎖)を発現する、態様70〜87のいずれか1つのマウス。したがって、ヒト可変領域は、ヒトVL及びJL遺伝子セグメント、例えば、ヒトVκ及びヒトJκの組換えに由来する。
【0198】
89. マウスCL(例えば、内因性Cκ)の上流にヒトVκ及びJκ遺伝子セグメントを含み、場合により、ヒトVκ及びJκ遺伝子セグメントが、Vκ2-24、Vκ3-20、Vκ1-17、Vκ1-16、Vκ3-15、Vκ1-13、Vκ1-12、Vκ3-11、Vκ1-9、Vκ1-8、Vκ1-6、Vκ1-5、Vκ5-2、Vκ4-1、Jκ1、Jκ2、Jκ3、Jκ4及びJκ5を含む、態様88のマウス。場合により、遺伝子セグメントはTable 12(表12)の対立遺伝子である。
【0199】
90. ヒトVH、DH及びJH遺伝子セグメントが、ヒトVH遺伝子セグメントVH2-5、7-4-1、4-4、1-3、1-2、6-1、並びに全てのヒトD及びJH遺伝子セグメントD1-1、2-2、3-3、4-4、5-5、6-6、1-7、2-8、3-9、5-12、6-13、2-15、3-16、4-17、6-19、1-20、2-21、3-22、6-25、1-26及び7-27、並びにJ1、J2、J3、J4、J5及びJ6を含む、態様70〜89のいずれか1つのマウス。例えば、ヒトVH、DH及びJH遺伝子セグメントは、ヒトVH遺伝子セグメントVH2-5、7-4-1、4-4、1-3、1-2、6-1、並びに全てのヒトD及びJH遺伝子セグメントD1-1、2-2、3-3、4-4、5-5、6-6、1-7、2-8、3-9、3-10、4-11、5-12、6-13、1-14、2-15、3-16、4-17、5-18、6-19、1-20、2-21、3-22、4-23、5-24、6-25、1-26及び7-27、並びにJ1、J2、J3、J4、J5及びJ6を含む。場合により、遺伝子セグメントはTable 7(表7)の対立遺伝子である。
【0200】
91. ヒト可変領域を含む免疫グロブリン重鎖を発現するための態様70〜90のいずれか1つのマウスの使用であって、マウスによって発現した重鎖が、本質的にもっぱら、前記ヒト可変領域を含む重鎖のみであり、前記ヒト可変領域を含む重鎖が、マウスにおいて血清IgG1、IgG2b及びIgM(及び場合により、IgG2a)抗体の部分として発現する、使用。使用は、非治療的、非診断的及び非外科的使用である。
【0201】
一実施形態において、使用は、マウスを抗原(例えば、ヒト抗原)で免疫化する工程、及びその抗原を特異的に結合するIgG1抗体を単離する工程を含む。
【0202】
一実施形態において、使用は、マウスを抗原(例えば、ヒト抗原)で免疫化する工程、及びその抗原を特異的に結合するIgG2a抗体を単離する工程を含む。
【0203】
一実施形態において、使用は、マウスを抗原(例えば、ヒト抗原)で免疫化する工程、及びその抗原を特異的に結合するIgG2b抗体を単離する工程を含む。場合により、使用は、単離された抗体の誘導体を作製する工程を含む。(本明細書における任意の態様による)抗体誘導体の例は、(例えば、抗原結合親和性を向上させるために、及び/又はFc機能を増強若しくは不活性化するために、)単離された抗体と比較して、1つ又は複数の突然変異を有する抗体である。そのような突然変異体は、その抗原を特異的に結合する。
【0204】
92. ヒト可変領域を含む免疫グロブリン重鎖を発現するための態様70〜90のいずれか1つのマウスの使用であって、マウスによって発現した重鎖が、本質的にもっぱら、前記ヒト可変領域を含む重鎖のみであり、かつ正常な割合又はパーセンテージの成熟脾臓B細胞を産生するマウスにおいて発現する、使用。使用は、非治療的、非診断的及び非外科的使用である。
【0205】
一実施形態において、使用は更に、マウスから脾臓組織(例えば、脾臓)を単離する工程、場合により、その後、その組織から少なくとも1つの抗原特異的B細胞を単離する工程であって、B細胞が、所定の抗原を特異的に結合する抗体を発現する、工程を含む。一例において、使用は、脾臓組織を単離する工程の前に、マウスをその抗原で免疫化する工程を含む。例において、使用は、B細胞によって(又はB細胞のミエローマ細胞との融合により生じたハイブリドーマによって)産生される抗体を単離する工程を含む。場合により、使用は、単離された抗体の誘導体を作製する工程を含む。(本明細書における任意の態様による)抗体誘導体の例は、(例えば、抗原結合親和性を向上させるために、及び/又はFc機能を増強若しくは不活性化するために、)単離された抗体と比較して1つ又は複数の突然変異を有する抗体である。そのような突然変異体は、その抗原を特異的に結合する。
【0206】
93. ヒト可変領域を含む免疫グロブリン重鎖を発現するための態様70〜90のいずれか1つのマウスの使用であって、マウスによって発現した重鎖が、本質的にもっぱら、前記ヒト可変領域を含む重鎖のみであり、かつ正常な割合又はパーセンテージの骨髄B細胞前駆細胞を産生するマウスにおいて発現する、使用。使用は、非治療的、非診断的及び非外科的使用である。
【0207】
94. 態様70、71、73、75及び78の1つ又は複数において述べられた目的のための態様70〜90のいずれか1つのマウスの使用。
【0208】
Igの発現(例えば、パーセンテージ発現又は発現割合若しくはレベル)は、B細胞(例えば、末梢血リンパ球)における抗体鎖mRNA転写産物のレベルにおいて決定することができる。代替として、又は追加として、パーセンテージ発現は、脊椎動物の血清又は血液における抗体のレベルにおいて決定される。追加として、又は代替として、発現は、B細胞のFACS分析によって決定することができる。
【0209】
これらの態様において、「ヒト可変領域を含む重鎖」は、ヒトVH、D及びJH遺伝子セグメントの組換えに由来する可変領域を意味する。
【0210】
「本質的にもっぱら」、発現した重鎖がヒト可変領域を含むとは、すなわち、相対的に非常に少量だけの内因性マウス重鎖可変領域発現があり、又は更に、全くそれが存在しない。例えば、重鎖の少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は99.5%又は100%が、ヒト可変領域を含む重鎖である。一実施形態において、重鎖の少なくとも90%が、ヒト可変領域を含む重鎖である。パーセンテージ発現は、B細胞(例えば、末梢血リンパ球)における重鎖mRNA転写産物のレベルにおいて決定することができる。代替として、又は追加として、パーセンテージ発現は、マウスの血清又は血液における重鎖又は抗体のレベルにおいて決定される。追加として、又は代替として、発現は、B細胞のFACS分析によって決定することができる。
【0211】
本明細書に記載されているように、マウスは、ヒトV、D及びJ遺伝子セグメントが存在する、任意の内因性重鎖遺伝子座を含むことができる。一例において、マウスゲノムは、少なくともVH遺伝子セグメントVH2-5、7-4-1、4-4、1-3、1-2、6-1、並びに全てのヒトD及びJH遺伝子セグメントD1-1、2-2、3-3、4-4、5-5、6-6、1-7、2-8、3-9、5-12、6-13、2-15、3-16、4-17、6-19、1-20、2-21、3-22、6-25、1-26及び7-27;並びにJ1、J2、J3、J4、J5及びJ6がマウス定常領域の上流にある、マウス重鎖遺伝子座を含む。
【0212】
これらの態様における脊椎動物は、例えば、ナイーブである(すなわち、その用語が当技術分野において理解されているように、所定の抗原で免疫化されていない;例えば、研究開発に使用される動物ハウスによって提供されるような比較的無菌の環境で飼育されているそのような脊椎動物)。別の例において、脊椎動物は、所定の抗原、例えば、ヒトエピトープを有する抗原で免疫化されている。
【0213】
一実施形態において、本発明のマウスにおいて軽鎖と共に発現した重鎖は、抗体(Ig)を形成する。軽鎖は、本明細書に記載されているように、任意のトランスジェニック軽鎖遺伝子座から発現することができる。例えば、マウスのゲノムは、前記非ヒト種のミュー定常領域の上流に、1つ又は複数のヒトV遺伝子セグメント、1つ又は複数のヒトD遺伝子セグメント、及び1つ又は複数のヒトJ遺伝子セグメントを含むキメラ免疫グロブリン重鎖遺伝子座である重鎖遺伝子座を含む;内因性重鎖発現は、実質的に不活性化されている;重鎖遺伝子座は前記非ヒト脊椎動物種のEμエンハンサーを含む。
【0214】
任意の態様の一実施形態において、内因性軽鎖(例えば、カッパ及び/又はラムダ)発現は、例えば、本明細書に記載されているような方法を使用して、実質的に不活性であり、又は不活性化されている。この場合、そのような内因性ラムダ軽鎖の10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満又は0.5%未満は、発現され、又は発現可能である。追加として、又は代替として、そのような内因性カッパ軽鎖の10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満又は0.5%未満は、発現され、又は発現可能である。一例において、そのような軽鎖が発現しておらず、又は発現不可能であるならば、内因性カッパ及び/又はラムダ発現の完全不活性化が存在する。
【0215】
一実施形態において、マウスのゲノムは、ヒトカッパ遺伝子セグメント[場合により、Table 12(表12)の対立遺伝子]
(i)Vκ1-5、Vκ1-6、Vκ1-8及びVκ1-9 (並びに場合により、Vκ5-2及びVκ4-1);又は
(ii)Vκ1-5、Vκ1-6、Vκ1-8、Vκ1-9、Vκ3-11、Vκ1-12、Vκ3-15、Vκ1-16、Vκ1-17、Vκ3-20 (並びに場合により、Vκ2-24及び/又はVκ1-13);又は
(iii)Vκ1-5、Vκ1-6、Vκ1-8、Vκ1-9、Vκ3-11、Vκ1-12、Vκ3-15、Vκ1-16、Vκ1-17、Vκ3-20、Vκ2-24、Vκ1-27、Vκ2-28、Vκ2-30及びVκ1-33(並びに場合により、Vκ2-29及び/又はVκ2-40及び/又はVκ1-39);
並びに場合により、
(iv)Jκ1、Jκ2、Jκ3、Jκ4及びJκ5
を含む。
【0216】
一実施形態において、ゲノムはまた、(i)少なくともヒトVH遺伝子セグメントVH2-5、7-4-1、4-4、1-3、1-2、6-1、並びに全てのヒトD及びJH遺伝子セグメントD1-1、2-2、3-3、4-4、5-5、6-6、1-7、2-8、3-9、5-12、6-13、2-15、3-16、4-17、6-19、1-20、2-21、3-22、6-25、1-26及び7-27;並びにJ1、J2、J3、J4、J5及びJ6[場合により、Table 7(表7)の対立遺伝子]、並びに(ii)少なくともヒト遺伝子セグメントVκ2-24、Vκ3-20、Vκ1-17、Vκ1-16、Vκ3-15、Vκ1-13、Vκ1-12、Vκ3-11、Vκ1-9、Vκ1-8、Vκ1-6、Vκ1-5、Vκ5-2、Vκ4-1、Jκ1、Jκ2、Jκ3、Jκ4及びJκ5[場合により、Table 12(表12)の対立遺伝子]を含む。実施例16に実証されているように、そのようなマウスは、再構成、BCRシグナル伝達、及びB細胞成熟の側面において完全に機能し得る。マウスによって発現した抗体の90%より多くは、ヒト重鎖可変領域及びヒトカッパ軽鎖可変領域を含んだ。したがって、これらのマウスは、マウスのヒト抗原での免疫化後、そのようなヒト抗原を特異的に結合するヒト可変領域を有する抗体の選択に非常に有用である。そのような抗体の単離後、当業者は、通常の技術を使用して、マウス定常領域をヒト定常領域と置換し、(場合により、例えばFc増強若しくは不活性化を有する、さらなる誘導体を生じる突然変異若しくは適応後、又は毒性ペイロード若しくはレポーター若しくは他の活性部分へのコンジュゲーション後)、ヒトへの投与用の薬物候補として有用である完全なヒト抗体にたどり着くことができる。
【0217】
一実施形態において、ゲノムはまた、その遺伝子座においてヒトJ遺伝子セグメントの下流にヒトiEκ及び/又はヒト3'Eκを含む。
【0218】
本発明はまた、以下の条項を含む:
条項1. ヒト可変領域を含有する免疫グロブリン重鎖を発現するマウスであって、
マウスが、マウス定常領域の下流に位置するヒトVH、DH及びJH遺伝子セグメントを含む免疫グロブリン重鎖遺伝子座を含むゲノムを含み;
マウスによって発現した免疫グロブリン重鎖の少なくとも90%がヒト可変領域を含むことを特徴とする、免疫グロブリン重鎖をマウスが発現し;及び、
マウスが、前記ヒト可変領域を含有する重鎖を含む血清IgG1、IgG2b及びIgM抗体を発現する、マウス。
条項2. ヒト可変領域を含有する免疫グロブリン重鎖を発現するマウスであって、
マウスが、マウス定常領域の上流に位置するヒトVH、DH及びJH遺伝子セグメントを含む免疫グロブリン重鎖遺伝子座を含むゲノムを含み;
マウスによって発現した免疫グロブリン重鎖の少なくとも90%がヒト可変領域を含むことを特徴とする、免疫グロブリン重鎖をマウスが発現し;及び、
マウスが、正常な割合の成熟脾臓B細胞を産生し;
前記正常な割合が、マウス可変領域を含有する免疫グロブリン重鎖を発現し、かつヒト可変領域を含有する免疫グロブリン重鎖を発現しないマウスによって産生される成熟脾臓B細胞の割合である、マウス。
条項3. ヒト可変領域を含有する免疫グロブリン重鎖を発現するマウスであって、
マウスが、マウス定常領域の上流に位置するヒトVH、DH及びJH遺伝子セグメントを含む免疫グロブリン重鎖遺伝子座を含むゲノムを含み;
マウスによって発現した免疫グロブリン重鎖の少なくとも90%がヒト可変領域を含むことを特徴とする、免疫グロブリン重鎖をマウスが発現し;及び、
マウスが、正常な割合の骨髄B細胞前駆細胞を産生し;
正常な割合が、マウス可変領域を含有する免疫グロブリン重鎖を発現し、かつヒト可変領域を含有する免疫グロブリン重鎖を発現しないマウスによって産生される骨髄B細胞前駆細胞の割合である、マウス。
条項4. マウスが、マウスから得られる血清の試料において正常な割合のIgG1、IgG2b及びIgMを発現し、
正常な割合が、マウス可変領域を含有する免疫グロブリン重鎖を発現し、かつヒト可変領域を含有する免疫グロブリン重鎖を発現しないマウスによって産生される場合である、
前記条項のいずれか1つのマウス。
条項5. マウス定常領域がCミュー、Cデルタ及び/又はCガンマである、前記条項のいずれか1つのマウス。
条項6. マウス定常領域が少なくともCミュー、Cデルタ及びCガンマである、条項5のマウス。
条項7. マウス定常領域が内因性マウスC領域である、前記条項のいずれか1つのマウス。
条項8. マウスがヒトCガンマ領域を発現する、前記条項のいずれか1つのマウス。
条項9. マウスがナイーブマウスである、前記条項のいずれか1つのマウス。
条項10. マウスが、前記ヒト可変領域を含有する重鎖を含む血清IgG2aを発現する、条項1のマウス。
条項11. プレート上での免疫グロブリン捕捉、続いて、それぞれが標識を含む抗マウスアイソタイプ特異的抗体とのインキュベーション、及び各標識のレベルに基づいた各免疫グロブリンの定量により決定される場合、
(i)約25〜350μg/mlの濃度の血清IgG1;
(ii)約0〜200μg/mlの濃度の血清IgG2a;
(iii)約30〜800μg/mlの濃度の血清IgG2b;及び
(iv)約50〜300μg/mlの濃度の血清IgM;
又は
(i)約10〜600μg/mlの濃度の血清IgG1;
(ii)約0〜500μg/mlの濃度の血清IgG2a;
(iii)約20〜700μg/mlの濃度の血清IgG2b;及び
(iv)約50〜700μg/mlの濃度の血清IgM
の相対的割合でIgサブタイプを発現する、前記条項のいずれか1つのマウス。
条項12. プレート上での免疫グロブリン捕捉、続いて、それぞれが標識を含む抗マウスアイソタイプ特異的抗体とのインキュベーション、及び各標識のレベルに基づいた各免疫グロブリンの定量により決定される場合、
(i)約200〜2500μg/mlの濃度の総血清IgG及びIgM;並びに
(ii)約100〜800μg/mlの濃度の血清IgM
の相対的割合でIgサブタイプを発現する、前記条項のいずれか1つのマウス。
条項13. マウスが脾臓B細胞から前記免疫グロブリン重鎖を発現し、かつマウスが、成熟B細胞、並びに脾臓T1及びT2細胞を含む総脾臓細胞において正常な割合の成熟脾臓B細胞を産生する、前記条項のいずれか1つのマウス。
条項14. マウスによって発現する免疫グロブリン重鎖の少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は99.5%が、ヒト可変領域を含む免疫グロブリン重鎖である、条項1〜3のいずれか1つのマウス。
条項15. マウス免疫グロブリン重鎖エンハンサーが、前記マウス重鎖免疫グロブリン遺伝子座においてヒトVH、DH及びJH遺伝子セグメントとマウス定常領域との間に位置する、前記条項のいずれか1つのマウス。
条項16. マウスSミュースイッチが、前記マウス重鎖免疫グロブリン遺伝子座においてヒトVH、DH及びJH遺伝子セグメントとマウス定常領域との間に位置する、前記条項のいずれか1つのマウス。
条項17. 内因性マウス免疫グロブリン重鎖V、D及びJ遺伝子セグメントが、前記マウス重鎖免疫グロブリン遺伝子座においてヒトVH、DH及びJH遺伝子セグメントの上流に位置する、前記条項のいずれか1つのマウス。
条項18. マウス免疫グロブリン重鎖V、D及びJ遺伝子セグメントが、内因性遺伝子セグメント間配列と共に、前記マウス重鎖免疫グロブリン遺伝子座内に存在する、条項17のマウス。
条項19. マウス免疫グロブリン重鎖V、D及びJ遺伝子セグメントが、前記マウス重鎖免疫グロブリン遺伝子座において、それの天然の内因性方向に対して反転している方向に位置する、条項17又は18のマウス。
条項20. マウスが、ヒトカッパ可変領域を含有する軽鎖を発現する、前記条項のいずれか1つのマウス。
条項21. マウスが、VκのヒトJκとの組換えに由来する免疫グロブリン軽鎖を発現する、条項20のマウス。
条項22. マウスが、ヒトラムダ可変領域を含有する軽鎖を発現する、前記条項のいずれか1つのマウス。
条項23. マウスが、VλのヒトJλとの組換えに由来する免疫グロブリン軽鎖を発現する、条項22のマウス。
条項24. 前記マウス重鎖免疫グロブリン遺伝子座においてマウスCLの上流に位置するヒトVκ及びJκ遺伝子セグメントを含むゲノムを含む、条項21のマウス。
条項25. マウスCLが内因性Cκである、条項24のマウス。
条項26. ヒトVκ及びJκ遺伝子セグメントが、Vκ2-24、Vκ3-20、Vκ1-17、Vκ1-16、Vκ3-15、Vκ1-13、Vκ1-12、Vκ3-11、Vκ1-9、Vκ1-8、Vκ1-6、Vκ1-5、Vκ5-2、Vκ4-1、Jκ1、Jκ2、Jκ3、Jκ4及びJκ5を含む、条項24又は25のマウス。
条項27. ヒトVH、DH及びJH遺伝子セグメントが
ヒトVH遺伝子セグメント: VH2-5、7-4-1、4-4、1-3、1-2、6-1;
ヒトDH遺伝子セグメント: D1-1、2-2、3-3、4-4、5-5、6-6、1-7、2-8、3-9、5-12、6-13、2-15、3-16、4-17、6-19、1-20、2-21、3-22、6-25、1-26及び7-27;並びに
ヒトJH遺伝子セグメント: J1、J2、J3、J4、J5及びJ6
を含有する、前記条項のいずれか1つのマウス。
条項28. 前記条項のいずれか1つのマウスを準備する工程、及び1つ又は複数の免疫グロブリン重鎖を単離する工程を含む、ヒト可変領域を含有する1つ又は複数の免疫グロブリン重鎖を得るための方法。
条項29. 各免疫グロブリン重鎖が抗体に含まれている、条項28の方法。
条項30. 前記重鎖及び/又は前記重鎖を含有する前記抗体が前記単離工程後に改変される、条項29の方法。
条項31. マウスを抗原で免疫化する工程が、免疫グロブリン重鎖を単離する工程の前に実施される、条項28の方法。
条項31a. 抗原がヒト抗原である、条項30の方法。
条項32. 免疫グロブリン重鎖が、抗原を特異的に結合するIgG1抗体、抗体断片又は抗体誘導体内に含まれる、条項30、31又は31aの方法。
条項33. 免疫グロブリン重鎖が、抗原を特異的に結合するIgG2a抗体、抗体断片又は抗体誘導体内に含まれる、条項30、31又は31aの方法。
条項34. 免疫グロブリン重鎖が、抗原を特異的に結合するIgG2b抗体、抗体断片又は抗体誘導体内に含まれる、条項30、31又は31aの方法。
条項35. 免疫グロブリン重鎖が、抗原を特異的に結合するIgM抗体、抗体断片又は抗体誘導体内に含まれる、条項30、31又は31aの方法。
条項36. 条項28〜35のいずれか1つの方法において単離された抗体若しくは免疫グロブリン重鎖、又は抗体若しくは重鎖の抗原結合断片若しくは誘導体。
条項37. 条項36の抗体、抗体断片又は抗体誘導体、及び薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含む医薬組成物。
条項38. 条項1〜27のいずれか1つのマウスを準備する工程、
マウスから脾臓又はその部分を収集する工程、及び
脾臓又は部分から組織を得る工程
を含む、脾臓組織を単離するための方法。
条項39. 脾臓組織から少なくとも1つの抗原特異的B細胞を単離する工程であって、B細胞が、ヒト可変領域を含有する重鎖を発現する、工程を更に含む、条項38の方法。
条項40. マウスを抗原で免疫化する工程が、マウスから脾臓を収集する工程の前に実施される、条項38又は39の方法。
条項41. 抗原がヒト抗原である、条項40の方法。
条項42. 少なくとも1つの抗原特異的B細胞が、前記重鎖を含むIgG1、IgG2a、IgG2b又はIgM抗体を産生し、抗体が抗原を特異的に結合する、条項40又は41の方法。
条項43. 前記重鎖を産生する少なくとも1つの抗原特異的B細胞が、不死性ミエローマ細胞と融合して、ハイブリドーマ細胞を生じる、条項38〜42の方法。
条項44. B細胞又はハイブリドーマ細胞から免疫グロブリン重鎖を単離する工程を更に含む、条項38〜43の方法。
条項45. 条項44の方法において単離された抗体若しくは免疫グロブリン重鎖、又はその抗体若しくは重鎖の抗原結合断片若しくは誘導体。
条項46. 条項45の抗体、抗体断片又は抗体誘導体、及び薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含む医薬組成物。
条項47. ヒト可変領域を含有する免疫グロブリン重鎖を発現するマウスを選択する工程であって、
マウスが、マウス定常領域の上流に位置するヒトVH、DH及びJH遺伝子セグメントを含む免疫グロブリン重鎖遺伝子座を含むゲノムを含み、
マウスによって発現した免疫グロブリン重鎖の少なくとも90%が、ヒト可変領域を含有する免疫グロブリン重鎖であることを特徴とする、免疫グロブリン重鎖をマウスが発現し、
マウスが、前記ヒト可変領域を含有する重鎖を含む血清IgG1、IgG2b及びIgM抗体を発現し、
マウスが、正常な割合の成熟脾臓B細胞を産生し、
マウスが、正常な割合の骨髄B細胞前駆細胞を産生し、
マウスが、マウスから得られた血清の試料において正常な割合のIgG1、IgG2a、IgG2b及びIgMを発現し、並びに
それぞれの前記正常な割合が、マウス可変領域を含有する免疫グロブリン重鎖を発現し、かつヒト可変領域を含有する免疫グロブリン重鎖を発現しないマウスによって産生される割合である、工程と;
前記マウスから血清を収集する工程と;
血清から、IgG1、IgG2b及びIgM抗体を含むヒト化抗体のプールを得る工程と
を含む、ヒト化抗体を得るための方法。
条項48. 前記マウスから血清を収集する工程の前に、マウスを抗原で免疫化する工程を含む、条項47の方法。
条項49. 前記ヒト化抗体のプールを前記抗原と接触させる工程;
前記ヒト化抗体のプールにおけるヒト化抗体で前記抗原を結合させる工程;及び
前記抗原に結合するヒト化抗体を単離する工程
を更に含む、条項48の方法。
条項50. 前記抗原に結合するヒト化抗体をアイソタイプ特異的抗体と接触させる工程であって、アイソタイプ特異的抗体が、IgG1、IgG2a、IgG2b又はIgMを認識する工程;及び
前記アイソタイプ特異的抗体に結合するヒト化抗体を単離する工程
を更に含む、条項49の方法。
条項51. 前記マウスから脾臓又はその組織を収集する工程、
脾臓組織からB細胞を単離する工程、
前記B細胞を不死性ミエローマ細胞と融合させて、血清由来のIgG抗体を含むヒト化抗体のプールを発現するハイブリドーマ細胞を生じる工程であって、その抗体のプールが条項48の方法に使用される工程
を更に含む、条項48の方法。
条項52. 前記選択されたマウスが、前記マウス重鎖免疫グロブリン遺伝子座において、それの天然の内因性方向に対して反転している方向に位置するマウス免疫グロブリン重鎖V、D及びJ遺伝子セグメントを含む、条項47〜51のいずれか1つの方法。
条項53. マウスが、
プレート上での免疫グロブリン捕捉、続いて、それぞれが標識を含む抗マウスアイソタイプ特異的抗体とのインキュベーション、及び各標識のレベルに基づいた各免疫グロブリンの定量により決定される場合、
(i)約25〜350μg/mlの濃度の血清IgG1;
(ii)約0〜200μg/mlの濃度の血清IgG2a;
(iii)約30〜800μg/mlの濃度の血清IgG2b;及び
(iv)約50〜300μg/mlの濃度の血清IgM;
又は
(i)約10〜600μg/mlの濃度の血清IgG1;
(ii)約0〜500μg/mlの濃度の血清IgG2a;
(iii)約20〜700μg/mlの濃度の血清IgG2b;及び
(iv)約50〜700μg/mlの濃度の血清IgM
の相対的割合でIgサブタイプを発現する、条項47〜52のいずれか1つの方法。
条項54. マウスによって発現する免疫グロブリン重鎖の少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は99.5%が、ヒト可変領域を含む免疫グロブリン重鎖である、条項47〜53のいずれか1つの方法。
条項55. マウス免疫グロブリン重鎖エンハンサーが、前記マウス重鎖免疫グロブリン遺伝子座においてヒトVH、DH及びJH遺伝子セグメントとマウス定常領域との間に位置する、条項47〜54のいずれか1つの方法。
条項56. マウスSミュースイッチが、前記マウス重鎖免疫グロブリン遺伝子座においてヒトVH、DH及びJH遺伝子セグメントとマウス定常領域との間に位置する、条項47〜55のいずれか1つの方法。
条項57. 内因性マウス免疫グロブリン重鎖V、D及びJ遺伝子セグメントが、前記マウス重鎖免疫グロブリン遺伝子座においてヒトVH、DH及びJH遺伝子セグメントの上流に位置する、条項47〜56のいずれか1つの方法。
条項58. マウス免疫グロブリン重鎖V、D及びJ遺伝子セグメントが、前記マウス重鎖免疫グロブリン遺伝子座において内因性遺伝子セグメント間配列と共に存在する、条項57の方法。
条項59. マウス免疫グロブリン重鎖V、D及びJ遺伝子セグメントが、前記マウス重鎖免疫グロブリン遺伝子座において、それの天然の内因性方向に対して反転している方向で位置する、条項57又は58の方法。
条項60. マウスが、ヒトカッパ可変領域を含有する軽鎖を発現する、条項47〜59のいずれか1つの方法。
条項61. マウスが、ヒトJκを含有する免疫グロブリン軽鎖を発現する、条項60の方法。
条項62. マウスが、ヒトラムダ可変領域を含有する軽鎖を発現する、条項47〜51のいずれか1つの方法。
条項63. マウスが、ヒトJλを含有する免疫グロブリン軽鎖を発現する、条項62の方法。
条項64. 前記マウス重鎖免疫グロブリン遺伝子座においてマウスCLの上流に位置するヒトVκ及びJκ遺伝子セグメントを含むゲノムを含む、条項61の方法。
条項65. マウスCLが内因性Cκである、条項64のマウス。
条項66. ヒトVκ及びJκ遺伝子セグメントが、Vκ2-24、Vκ3-20、Vκ1-17、Vκ1-16、Vκ3-15、Vκ1-13、Vκ1-12、Vκ3-11、Vκ1-9、Vκ1-8、Vκ1-6、Vκ1-5、Vκ5-2、Vκ4-1、Jκ1、Jκ2、Jκ3、Jκ4及びJκ5を含む、条項64又は65のマウス。
条項67. ヒトVH、DH及びJH遺伝子セグメントが
ヒトVH遺伝子セグメント: VH2-5、7-4-1、4-4、1-3、1-2、6-1;
ヒトDH遺伝子セグメント: D1-1、2-2、3-3、4-4、5-5、6-6、1-7、2-8、3-9、5-12、6-13、2-15、3-16、4-17、6-19、1-20、2-21、3-22、6-25、1-26及び7-27;並びに
ヒトJH遺伝子セグメント: J1、J2、J3、J4、J5及びJ6
を含有する、条項47〜51のいずれか1つの方法。
【0219】
カッパ及びラムダ可変領域を発現する非ヒト脊椎動物
(i)ヒト様比率で産生されるK鎖及びL鎖
本発明のこの態様は、非ヒト様比率に偏っていない軽鎖を産生するのに有用である。例えば、マウスにおいて、カッパ型軽鎖は、ラムダ型軽鎖によりはるかに優位を占める(典型的には、野生型マウスにおいて95%カッパ軽鎖:5%ラムダ軽鎖のオーダー)。他方、ヒトは、典型的には、約60%カッパ:約40%ラムダを示す。したがって、ラムダ発現は、マウスにおいて見出されるものよりずっと高い。より高い割合のラムダ型軽鎖が発現することができるマウス又はラット等の非ヒト脊椎動物を提供することが望ましい。これは、脊椎動物が、ヒトラムダ可変領域を有する軽鎖、及びヒトカッパ可変領域を有する他の軽鎖を発現する場合、有用である。この目的を達成するために、本発明者らは、上昇したラムダ軽鎖を発現するそのような脊椎動物を初めて、実証しており、このように、本発明は、以下を提供する:
ヒトIg遺伝子セグメントの1つ又は複数の内因性Ig遺伝子座へのターゲッティング挿入により生成されたIg遺伝子セグメントレパートリーをゲノムが含む非ヒト脊椎動物(例えば、マウス又はラット)であって、ゲノムが、定常領域の上流での脊椎動物の内因性軽鎖遺伝子座への挿入により供給されるヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントを含み、ゲノムが、定常領域の上流での脊椎動物の内因性軽鎖遺伝子座への挿入により供給されるヒトVκ及びJκ遺伝子セグメントを含み、脊椎動物が、カッパ軽鎖可変領域を含む免疫グロブリン軽鎖、及びラムダ軽鎖可変領域を含む免疫グロブリン軽鎖を発現し、(脾臓B細胞のFACSによって決定される場合)脊椎動物によって発現する軽鎖の20%より多くが、ラムダ可変領域を含む、非ヒト脊椎動物。
【0220】
残りの軽鎖はカッパ可変領域を発現する。
【0221】
WO03047336は、ヒト様のカッパ:ラムダ比を生じる望ましさを教示するが、これは、これを達成するための方法の使用可能な、又は説得力のある開示を提供していない。
【0222】
(ii)正常なB細胞コンパートメントで産生されるK鎖及びL鎖
本発明者らは、正常な(すなわち、野生型脊椎動物に匹敵する)B細胞コンパートメントによってヒトラムダ可変領域を含む軽鎖の発現を可能にする、ヒトV及びJラムダ遺伝子セグメントのターゲッティング挿入を含有する非ヒト脊椎動物を作製するのに成功している。したがって、本発明者らは、良いレパートリーを有するそのような軽鎖であり、かつ低下したサイズ及び成熟度の、実際、ヒトラムダ可変領域を有する軽鎖を産生することさえもできない、含まれるB細胞コンパートメントを示す先行技術のトランスジェニック非ヒト脊椎動物より信頼ができる、そのような軽鎖を有用に産生することができるような脊椎動物を提供している。したがって、本発明は、以下を提供する:
ヒトIg遺伝子セグメントの1つ又は複数の内因性Ig遺伝子座へのターゲッティング挿入により生成されたIg遺伝子セグメントレパートリーをゲノムが含む非ヒト脊椎動物(例えば、マウス又はラット)であって、ゲノムが、定常領域の上流での脊椎動物の内因性軽鎖遺伝子座への挿入により供給されるヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントを含み、ゲノムが、定常領域の上流での脊椎動物の内因性軽鎖遺伝子座への挿入により供給されるヒトVκ及びJκ遺伝子セグメントを含み、脊椎動物が、カッパ軽鎖可変領域を含む免疫グロブリン軽鎖、及びラムダ軽鎖可変領域を含む免疫グロブリン軽鎖を発現し、脊椎動物が、(脾臓B細胞のFACSによって決定される場合)正常な割合又はパーセンテージの成熟脾臓B細胞を産生する、非ヒト脊椎動物。
【0223】
非ヒト脊椎動物(i)及び(ii)に関して、以下の実施形態が企図される(特に特定されない限り、各実施形態は(i)又は(ii)に適用する):
【0224】
実施形態において、ヒトVλ及びJλ挿入は、Vλ3-27からCλ7までのヒトラムダ鎖Ig遺伝子座によって含まれる少なくとも機能的ヒトV及びJ遺伝子セグメントを含む。
【0225】
一実施形態において、ヒトVλ及びJλ挿入は、少なくともヒトV遺伝子セグメントVλ3-27、Vλ3-25、Vλ2-23、Vλ3-22、Vλ3-21、Vλ3-19、Vλ2-18、Vλ3-16、Vλ2-14、Vλ3-12、Vλ2-11、Vλ3-10、Vλ3-9、Vλ2-8、Vλ4-3及びVλ3-1、場合により、Table 18(表18)の対立遺伝子を含む。
【0226】
一実施形態において、ヒトVλ及びJλ挿入は、ヒトJセグメントJλ1、Jλ2、Jλ3、Jλ6及びJλ7の1つ、複数又は全部を含む。
【0227】
一実施形態において、ヒトVλ及びJλ挿入は、ヒトJλ-Cλクラスターの挿入を含み、そのクラスターは、Jλ1からCλ7までのJ及びC遺伝子セグメントを含む。
【0228】
一実施形態において、ヒトVλ及びJλ挿入は、ヒトEλエンハンサーの挿入を含む。例えば、Eλエンハンサーは、同様にその挿入によって含まれるヒトJλ7に対して生殖系列配置で提供される。例えば、Eλエンハンサーは、同様にその挿入によって含まれるヒトJλ-Cλクラスターに対して生殖系列配置で提供され、そのクラスターは、Jλ1〜Cλ7をヒト生殖系列配置で含む。ヒト生殖系列配置において、Eλエンハンサーは、Jλ-Cλクラスターの3'側である。
【0229】
一実施形態又は脊椎動物(i)若しくは(ii)において、ヒトVλ及びJλ挿入は、ヒト22番染色体の座標22886217〜23327884に対応する配列の挿入によって提供される。
【0230】
一実施形態又は脊椎動物(ii)において、ヒトVλ及びJλ挿入は、ヒト22番染色体の座標23064876〜23327884に対応する配列の挿入によって提供される。
【0231】
一実施形態において、ヒトVκ及びJκ挿入は、Vκ1-33からJκ5までのヒトカッパ鎖Ig遺伝子座によって含まれる少なくとも機能的ヒトV及びJ遺伝子セグメントを含む。
【0232】
一実施形態において、ヒトVκ及びJκ挿入は、少なくともヒトV遺伝子セグメントVκ1-33、Vκ2-30、Vκ2-29、Vκ2-28、Vκ1-27、Vκ2-24、Vκ3-20、Vκ1-17、Vκ1-16、Vκ3-15、Vκ1-13、Vκ1-12、Vκ3-11、Vκ1-9、Vκ1-8、Vκ1-6、Vκ1-5、Vκ5-2及びVκ4-1、場合により、Table 12(表12)の対立遺伝子を含む。
【0233】
実施形態において、ヒトVκ及びJκ挿入は、ヒトJ遺伝子セグメントJκ1、Jκ2、Jκ3、Jκ4及びJκ5の1つ、複数又は全部、場合により、Table 12(表12)の対立遺伝子を含む。
【0234】
一実施形態において、脊椎動物によって発現した軽鎖の30%、35%、40%、45%又は50%がラムダ可変領域を含む。
【0235】
一実施形態において、脊椎動物によって発現した軽鎖の20%〜40%、20%〜45%又は20%〜50%が、ラムダ可変領域を含む。実施形態において、脊椎動物によって発現した軽鎖の30%〜40%、30%〜45%又は30%〜50%が、ラムダ可変領域を含む。
【0236】
一実施形態において、前記カッパ軽鎖可変領域が、ヒトカッパ軽鎖可変領域である。
【0237】
一実施形態において、ヒトVκ及びJκ遺伝子セグメントは、脊椎動物の内因性カッパ軽鎖遺伝子座内のカッパ定常領域の上流にある。
【0238】
一実施形態において、ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントは、脊椎動物の内因性カッパ軽鎖遺伝子座内にある。
【0239】
一実施形態において、ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントは、脊椎動物の内因性ラムダ軽鎖遺伝子座内にある。
【0240】
一実施形態において、脊椎動物は、ヒトカッパ可変領域を含む軽鎖を発現し、かつヒトラムダ可変領域を含む軽鎖を発現する。例において、内因性(非ヒト脊椎動物)カッパ鎖発現は、実質的に不活性であり、若しくは不活性であり、及び/又は内因性(非ヒト脊椎動物)ラムダ鎖発現は、実質的に不活性であり、若しくは不活性である。脊椎動物がマウスである場合、マウスラムダ鎖発現は、典型的には非常に低く(約5%以下)、この場合、内因性ラムダ鎖発現を更に不活性化するためにマウスゲノムを操作する必要はない可能性がある。したがって、脊椎動物がマウスである場合、内因性カッパ鎖発現は実質的に不活性であり、又は不活性であり、マウスラムダ鎖発現は、総軽鎖発現の5%以下である。
【0241】
一実施形態において、脊椎動物は、正常な割合又はパーセンテージの成熟脾臓B細胞を産生する。例えば、これは、脊椎動物から単離された脾臓B細胞のFACSによって決定することができる。
【0242】
一実施形態において、脊椎動物は、正常な比率のT1、T2、及び成熟脾臓B細胞を産生する。例えば、これは、脊椎動物から単離された脾臓B細胞のFACSによって決定することができる。
【0243】
一実施形態において、脊椎動物によって産生される総脾臓B細胞の少なくとも40%、50%、60%又は70%は、成熟B細胞である。例えば、これは、脊椎動物から単離された脾臓B細胞のFACSによって決定することができる。
【0244】
本発明のさらなる記述
一実施形態において、本発明は、以下に関する。
【0245】
ゲノムが、重鎖遺伝子座の定常領域のヒトVH、D及びJH遺伝子セグメント並びに/又は軽鎖遺伝子座の定常領域の上流のヒトVL及びJL遺伝子セグメントを含む非ヒト脊椎動物(例えば、マウス若しくはラット)又は脊椎動物細胞であって、脊椎動物若しくは細胞がそれぞれ、ヒトVH及びVLドメインを含む免疫グロブリン重鎖及び/若しくは軽鎖を発現することができるように遺伝子セグメントがその定常領域に作動可能に連結され、重鎖遺伝子座がヒトD及びJH遺伝子セグメントと組み換わってVHドメインを生成することができるヒトVH遺伝子セグメントを含み、軽鎖遺伝子座がヒトJL遺伝子セグメントと組み換わってVLドメインを生成することができるヒトVL遺伝子セグメントを含むか、又は細胞が前記重鎖及び軽鎖可変ドメインを発現する脊椎動物に発生することができる、非ヒト脊椎動物又は脊椎動物細胞。
【0246】
ゲノムが、重鎖遺伝子座の定常領域の上流のヒトVH、D及びJH遺伝子セグメントを含む非ヒト脊椎動物(例えば、マウス若しくはラット)又は脊椎動物細胞であって、脊椎動物若しくは細胞がヒトVHドメインを含む免疫グロブリン重鎖を発現することができるように遺伝子セグメントがその定常領域に作動可能に連結され、重鎖遺伝子座がヒトD及びJH遺伝子セグメントと組み換わってVHドメインを生成することができるヒト01対立遺伝子VH遺伝子セグメントを含むか、又は細胞が前記重鎖可変ドメインを発現する脊椎動物に発生することができる、非ヒト脊椎動物又は脊椎動物細胞。
【0247】
ゲノムが、軽鎖遺伝子座の定常領域の上流のVL及びJL遺伝子セグメントを含む非ヒト脊椎動物(例えば、マウス若しくはラット)又は脊椎動物細胞であって、脊椎動物若しくは細胞がヒトVLドメインを含む免疫グロブリン軽鎖を発現することができるように遺伝子セグメントがその定常領域に作動可能に連結され、軽鎖遺伝子座がヒトJL遺伝子セグメントと組み換わってVLドメインを生成することができるヒト01対立遺伝子VL遺伝子セグメントを含むか、又は細胞が前記軽鎖可変ドメインを発現する脊椎動物に発生することができる、非ヒト脊椎動物又は脊椎動物細胞。
【0248】
場合により、脊椎動物又は細胞は、上記に定義された重鎖遺伝子座及び軽鎖遺伝子座を含むゲノムを有し、したがって、ヒトD及びJH遺伝子セグメントと組み換わってVHドメインを生成することができるヒト01対立遺伝子VH遺伝子セグメントを含む重鎖遺伝子座並びにヒトJL遺伝子セグメントと組み換わってVLドメインを生成することができるヒト01対立遺伝子VL遺伝子セグメントを含む軽鎖遺伝子座を含む。
【0249】
代替的な実施形態において、本発明は、ゲノムが、重鎖の定常領域の上流の1つ若しくは複数のヒトVH遺伝子セグメント、1つ若しくは複数のヒトJH遺伝子セグメント及び1つ若しくは複数のヒトD遺伝子セグメントを含む非ヒト脊椎動物又は脊椎動物細胞(例えば、マウス細胞若しくはラット細胞)であって、細胞若しくは脊椎動物が抗体重鎖を生成することができるように遺伝子セグメントがその定常領域に作動可能に連結されるか、又は細胞が抗体重鎖を発現する脊椎動物に発生することができ、重鎖遺伝子座の前記1つ若しくは複数のヒトVH遺伝子セグメントが、VH3-23*04、VH7-4-1*01、VH4-4*02、VH1-3*01、VH3-13*01、VH3-7*01、VH3-20*d01及びVH3-9*01からなる群から選択される1つ、複数若しくは全部のヒトVH遺伝子セグメントを含むか、若しくはそれからなる、非ヒト脊椎動物又は脊椎動物細胞に関する。
【0250】
本発明の実施形態において、VH遺伝子セグメントは、VH3-23*04、VH7-4-1*01、VH4-4*02、VH1-3*01、VH3-13*01、VH3-7*01及びVH3-20*d01からなる群から選択される。
【0251】
例えば、ヒト重鎖遺伝子セグメントのみを定義する本発明の実施形態において、軽鎖遺伝子座は、再構成されたか、又は再構成されていないVL及びJL遺伝子セグメント、例えば、単一の再構成VL(単一の再構成Vκ1-39/J等)を含んでもよい。更に、又は或いは、軽鎖遺伝子座を、無作為に組み込むことができる。別の実施形態においては、VL及びJLセグメントは、内因性定常軽鎖遺伝子セグメントの上流にある。
【0252】
さらなる代替的実施形態において、本発明は、ゲノムが、軽鎖遺伝子座の定常領域の上流の1つ若しくは複数のヒトJκ遺伝子セグメント及び1つ若しくは複数のヒトVκ遺伝子セグメントを含む非ヒト脊椎動物又は脊椎動物細胞(例えば、マウス細胞若しくはラット細胞)であって、細胞若しくは脊椎動物が抗体軽鎖を生成することができるように遺伝子セグメントがその定常領域に作動可能に連結されるか、又は細胞が抗体軽鎖を発現する脊椎動物に発生することができ、前記1つ若しくは複数のヒトVκ遺伝子セグメントが、Vκ4-1*01、Vκ2-28*01、Vκ1D-13*d01、Vκ1-12*01、Vκ1D-12*02、Vκ3-20*01、Vκ1-17*01、Vκ1D-39*01、Vκ3-11*01、Vκ1D-16*01及びVκ1-9*d01からなる群から選択される1つ、複数若しくは全部のヒトVκ遺伝子セグメントを含むか、若しくはそれからなる、非ヒト脊椎動物又は脊椎動物細胞に関する。
【0253】
代替的実施形態において、本発明は、ゲノムが、重鎖遺伝子座の定常領域の上流のヒトVH、D及びJH遺伝子セグメントを含む非ヒト脊椎動物(例えば、マウス若しくはラット)又は脊椎動物細胞であって、JH遺伝子セグメントがJH1*01、JH2*01、JH3*02、JH4*02、JH5*02及び/若しくはJH6*01若しくはJH6*02を含み、脊椎動物若しくは細胞がヒトVHドメインを含む免疫グロブリン重鎖を発現することができるように遺伝子セグメントがその定常領域に作動可能に連結され、重鎖遺伝子座がヒトD及び前記JH遺伝子セグメントの1つと組み換わってVHドメインを生成することができるヒトVH遺伝子セグメントを含むか、又は細胞が前記重鎖可変ドメインを発現する脊椎動物に発生することができる、非ヒト脊椎動物又は脊椎動物細胞に関する。
【0254】
好ましい実施形態において、JH遺伝子セグメントは、JH1*01、JH2*01、JH3*02、JH4*02、JH5*02及びJH6*02である。別の実施形態において、JH遺伝子セグメントは、JH1*01、JH2*01、JH3*02、JH4*02、JH5*02及びJH6*01である。
【0255】
一実施形態において、非ヒト脊椎動物は更に、Table 7(表7)からの1つ若しくは複数のVH遺伝子セグメント及び/又は1つ若しくは複数のD遺伝子セグメントを含む。さらなる実施形態において、非ヒト脊椎動物は更に、Table 3(表3)からのVH遺伝子セグメント及びD遺伝子セグメントを含む。
【0256】
ゲノムが、軽鎖遺伝子座の定常領域の上流のVL及びJL遺伝子セグメントを含む非ヒト脊椎動物(例えば、マウス若しくはラット)又は脊椎動物細胞であって、JL遺伝子セグメントがJκ1*01、Jκ2*01、Jκ3*01、Jκ4*01及び/若しくはJκ5*01を含み、脊椎動物若しくは細胞がヒトVLドメインを含む免疫グロブリン軽鎖を発現することができるように遺伝子セグメントがその定常領域に作動可能に連結され、軽鎖遺伝子座が、前記ヒトJL遺伝子セグメントの1つと組み換わってVLドメインを生成することができるヒトVL遺伝子セグメントを含むか、又は細胞が前記軽鎖可変ドメインを発現する脊椎動物に発生することができる前記非ヒト脊椎動物又は脊椎動物細胞。
【0257】
一実施形態において、非ヒト脊椎動物は更に、Table 12(表12)からの1つ又は複数又は全部のVκ遺伝子セグメントを含む。さらなる実施形態において、非ヒト脊椎動物は更に、Table 10(表10)又はTable 11(表11)からのVκ遺伝子セグメントを含む。
【0258】
場合により、脊椎動物又は細胞は、上記で定義された重鎖遺伝子座及び軽鎖遺伝子座を含むゲノムを有し、したがって、ヒトD及び前記JH遺伝子セグメントの1つと組み換わってVHドメインを生成することができるヒトVH遺伝子セグメントを含む重鎖遺伝子座並びに前記ヒトJL遺伝子セグメントの1つと組み換わってVLドメインを生成することができるヒトVL遺伝子セグメントを含む軽鎖遺伝子座を含む。
【0259】
本発明の全ての実施形態において、本発明による細胞又は脊椎動物のゲノムは、1つ、複数又は全部のヒト遺伝子セグメントの第2のヒト対立遺伝子を含まなくてもよいと想定される。
【0260】
本発明の全ての実施形態において、ヒトJH遺伝子セグメント、D遺伝子セグメント及びVH遺伝子セグメントは、内因性重鎖遺伝子座の定常領域の上流にあってもよく、並びに/又はヒトJκ遺伝子セグメント及びVκ遺伝子セグメントは、内因性軽鎖遺伝子座の定常領域の上流にあってもよい。
【0261】
一実施形態において、内因性軽鎖遺伝子座は内因性カッパ遺伝子座であり、別の実施形態において、それは内因性ラムダ遺伝子座である。
【0262】
対立遺伝子の組合せ
一実施形態において、遺伝子セグメントの対立遺伝子はd01対立遺伝子、場合により、Table 7(表7)、Table 12(表12)又はTable 18(表18)に開示されるd01対立遺伝子である。
【0263】
一実施形態においては、脊椎動物又は細胞は、Table 7(表7)、Table 12(表12)又はTable 18(表18)に開示される02、03、04、05、10、12、18又はd03対立遺伝子を更に含むゲノムを有する。
【0264】
本発明の好ましい対立遺伝子は以下のようなTable 1(表1)〜Table 18(表18)に記載される。
【0265】
【表1A】
【表1B】
【0266】
代替的なTable 1(表1)において、JH6対立遺伝子はJH6*01であってもよい。
【0267】
【表2A】
【表2B】
【表2C】
【0268】
代替的なTable 2(表2)において、JH6対立遺伝子はJH6*01であってもよい。
【0269】
【表3A】
【表3B】
【表3C】
【0270】
代替的なTable 3(表3)において、JH6対立遺伝子はJH6*01であってもよい。
【0271】
【表4A】
【表4B】
【表4C】
【0272】
代替的なTable 4(表4)において、JH6対立遺伝子はJH6*01であってもよい。
【0273】
【表5A】
【表5B】
【表5C】
【表5D】
【0274】
代替的なTable 5(表5)において、JH6対立遺伝子はJH6*01であってもよい。
【0275】
【表6A】
【表6B】
【表6C】
【表6D】
【0276】
代替的なTable 6(表6)において、JH6対立遺伝子はJH6*01であってもよい。
【0277】
【表7A】
【表7B】
【表7C】
【表7D】
【0278】
代替的なTable 7(表7)において、JH6対立遺伝子はJH6*01であってもよい。
【0279】
【表8】
【0280】
【表9A】
【表9B】
【0281】
【表10A】
【表10B】
【0282】
【表11A】
【表11B】
【表11C】
【0283】
【表12A】
【表12B】
【表12C】
【0284】
Table 12(表12)の一態様では、ゲノム中にVκ1D-39遺伝子セグメントは存在しない。
【0285】
疑いを避けるために、特許請求の範囲中を含む、本明細書のTable 12(表12)に対する任意の言及は、Table 12(表12)の一態様において、ゲノム中にVκ1D-39遺伝子セグメントが存在しないという限定あり又はなしで読むことができる。
【0286】
代替的なTable 12(表12)において、Vκ2D-26対立遺伝子はVκ2D-26*d02である。
【0287】
【表13】
【0288】
【表14A】
【表14B】
【0289】
【表15A】
【表15B】
【0290】
【表16A】
【表16B】
【0291】
【表17A】
【表17B】
【表17C】
【0292】
【表18A】
【表18B】
【表18C】
【0293】
Table 18(表18)に関して、一態様では、ゲノム中にCλ6又はJλ6遺伝子セグメントは存在しない。別の態様では、更に、又は或いは、Vλ3-22及び/又はVλ5-39及び/又はVλ10-54遺伝子セグメントは存在しない。
【0294】
疑いを避けるために、特許請求の範囲におけるものを含む、本明細書のTable 18(表18)に対する任意の言及は、Table 18(表18)の一態様において、Cλ6又はJλ6が存在しないという限定あり又はなしで、また、Vλ3-22及び/又はVλ5-39及び/又はVλ10-54遺伝子セグメントが存在しないという限定あり又はなしで読むことができる。
【0295】
WO2013/041844の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。WO2013/041844における遺伝子セグメントの例は、本発明に関する可能な遺伝子セグメントとして、また、本明細書の1つ又は複数の請求項への可能な含有のために、あたかも本明細書に具体的かつ明示的に開示されるかのように具体的に本明細書に組み込まれる。
【0296】
本明細書に記載のそれぞれの態様、実施形態、条項又は規定を、WO2013/041844に開示される、及び/若しくは本明細書に記載される1つ若しくは複数のヒト遺伝子セグメント又は必要に応じて、WO2013/041844に開示される、及び/若しくは本明細書に記載される1つ若しくは複数のヒト遺伝子セグメントの組換えの生成物である結合部位若しくは抗体を発現することができる非ヒト脊椎動物において組み合わせることができる。
【0297】
WO2013/041844のTable 1(表1)〜Table 7(表7)に開示される遺伝子セグメントは、本発明に関する可能な遺伝子セグメント配列として、及び本明細書の1つ又は複数の請求項への可能な含有のために本明細書に具体的かつ明示的に開示される。配列は、その出願と共に提出された配列表に記載されている。
【0298】
本発明の文脈における使用のための遺伝子セグメントの配列のさらなる例は、本明細書の終わりに含まれる配列中に記載される。
【0299】
好ましい実施形態において、本発明の脊椎動物又は細胞のゲノムは、Table 1(表1)〜Table 18(表18)のいずれか1つに由来する1つ又は複数の遺伝子セグメントを含む。更に好ましい実施形態において、本発明の脊椎動物又は細胞のゲノムは、Table 1(表1)〜Table 18(表18)のいずれか1つに由来するいずれか2つの遺伝子セグメントの組合せを含む。更に好ましい実施形態において、本発明の脊椎動物又は細胞のゲノムは、Table 1(表1)〜Table 18(表18)のいずれか1つに由来するいずれか3つの遺伝子セグメントの組合せを含む。
【0300】
最も好ましい実施形態において、本発明の脊椎動物又は細胞のゲノムは、Table 1(表1)〜Table 18(表18)のいずれか1つに由来するいずれか4つの遺伝子セグメントの組合せを含む。好ましくは、VH及びJH重鎖セグメントはTable 7(表7)から選択され、VL及びJL軽鎖セグメントはTable 12(表12)又はTable 18(表18)から選択される。場合により、D重鎖セグメントは、Table 7(表7)から選択される。
【0301】
本発明は更に、ゲノムが、内因性軽鎖遺伝子座の定常領域の上流のヒトVL及びJL遺伝子セグメントを含む非ヒト脊椎動物(例えば、マウス若しくはラット)又は細胞であって、脊椎動物若しくは細胞がヒト可変領域を含む免疫グロブリン軽鎖を発現するか、又は細胞が前記軽鎖を発現する脊椎動物に発生することができ、前記免疫グロブリン軽鎖が(i)Table 8(表8)〜Table 12(表12)のいずれか1つのVκ及びJκ遺伝子セグメントからなる群から選択されるヒトVκ及びJκ遺伝子セグメント又は(ii)Table 12(表12)〜Table 18(表18)のいずれか1つのVλ及びJλ遺伝子セグメントからなる群から選択されるヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントの組換えから誘導されるヒト可変領域を含む軽鎖を含む、非ヒト脊椎動物又は細胞に関する。
【0302】
一実施形態において、本発明の脊椎動物又は細胞は、ヒトラムダ可変領域を含む軽鎖を発現し、そのような軽鎖の可変領域の少なくとも60%、70%、80%、85%、90%又は95%はヒトVλとJλ遺伝子セグメントの組換えから誘導される。
【0303】
場合により、軽鎖はIgG抗体、例えば、IgG1又はIgG2b、場合により、IgG2aとして発現される。
【0304】
定常領域は、カッパ又はラムダ定常領域、場合により、ヒト、マウス又はラット定常領域であってもよい。前記内因性軽鎖遺伝子座は、場合により、ゲノムが内因性軽鎖遺伝子座、例えば、カッパ遺伝子座にTable 8(表8)の少なくともV及びJ遺伝子セグメント並びに/又は内因性軽鎖遺伝子座、例えば、ラムダ若しくはカッパ遺伝子座にTable 13(表13)の少なくともV及びJ遺伝子セグメントを含む、カッパ又はラムダ遺伝子座であってもよい。
【0305】
前記軽鎖は、(ii)の組換えから誘導されるヒト可変領域を含む免疫グロブリン軽鎖を含んでもよく、それぞれのそのような可変領域は、Table 18(表18)のCλ遺伝子セグメントからなる群から選択されるCλ遺伝子セグメントによりコードされる定常領域と共に発現される。
【0306】
本発明のこの実施形態において、脊椎動物又は細胞は、ヒトラムダ可変領域を含む軽鎖を発現することができ、そのような軽鎖の可変領域の少なくとも60%、70%又は80%を、ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメント、例えば、Table 18(表18)に列挙されるV及びJセグメントの組換えから誘導することができる。本発明はまた、ゲノムが、内因性重鎖遺伝子座の定常領域の上流のヒトVH、D及びJH遺伝子セグメントを含む非ヒト脊椎動物(例えば、マウス若しくはラット)又は細胞であって、脊椎動物若しくは細胞がヒト可変領域を含む免疫グロブリン重鎖を発現するか、又は細胞が前記重鎖を発現する脊椎動物に発生することができるか、又は細胞がヒト可変領域を含む免疫グロブリン重鎖を発現することができ、前記免疫グロブリン重鎖が(iii)Table 7(表7)のVH、D及びJH遺伝子セグメントからなる群から選択されるヒトVH、D及びJH遺伝子セグメントの組換えから誘導されるヒト可変領域を含む重鎖を含む、非ヒト脊椎動物又は細胞に関する。
【0307】
一実施形態において、前記軽鎖は、前記重鎖と同時発現され、抗体、例えば、IgG抗体を形成する。
【0308】
定常領域の上流のヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントを含むゲノムが、1つ又は複数の内因性Ig遺伝子座へのヒトIg遺伝子セグメントの標的挿入により生成されるIg遺伝子セグメントレパートリーを含む非ヒト脊椎動物(例えば、マウス若しくはラット)又は細胞であって、ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントが脊椎動物若しくは細胞の内因性軽鎖遺伝子座への挿入により提供されたものであり、脊椎動物がラムダ可変領域を含む免疫グロブリン軽鎖(ラムダ軽鎖)を含むか、又は細胞が前記免疫グロブリン軽鎖を発現する脊椎動物に発生することができ、ラムダ軽鎖がヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントの組換えから誘導されるラムダ可変領域を含む免疫グロブリン軽鎖を含み、脊椎動物により発現されるラムダ軽鎖の可変領域の少なくとも60%、70%、80%若しくは90%がヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントの組換えから誘導され、場合により、脊椎動物又は細胞が本明細書に開示される任意の脊椎動物又は細胞である、非ヒト脊椎動物又は細胞。
【0309】
ヒト遺伝子セグメントの組換えから誘導されるか、又はその結果として生成される可変ドメイン又は領域は、本明細書では前記遺伝子セグメントの組換え体とも呼ばれる。
【0310】
脊椎動物が遺伝子セグメントの組換えにより生成される抗体重鎖又は軽鎖を生成することができるように、重鎖及び/又は軽鎖遺伝子座中の遺伝子セグメントが定常領域に作動可能に連結される。
【0311】
一実施形態において、細胞又は非ヒト脊椎動物は、Table 8(表8)、又はTable 9(表9)又はTable 10(表10)、Table 11(表11)又はTable 12(表12)、又はその任意の組合せのカッパセグメントを含むゲノムを有する。
【0312】
一実施形態において、細胞又は非ヒト脊椎動物は、Table 13(表13)又はTable 14(表14)又はTable 15(表15)又はTable 16(表16)又はTable 17(表17)又はTable 18(表18)、又はその任意の組合せのラムダセグメントを含むゲノムを有する。
【0313】
一実施形態において、細胞又は非ヒト脊椎動物は、Table 1(表1)又はTable 2(表2)又はTable 3(表3)又はTable 4(表4)又はTable 5(表5)又はTable 6(表6)又はTable 7(表7)又はその任意の組合せの重鎖セグメントを含むゲノムを有する。
【0314】
一実施形態において、本発明の細胞又は非ヒト脊椎動物は、(i)Table 8(表8)、又はTable 9(表9)、又はTable 10(表10)、又はTable 11(表11)又はTable 12(表12)、又はその任意の組合せのVκ及びJκ遺伝子セグメントからなる群から選択されるヒトVκ及びJκ遺伝子セグメントの組換え(すなわち、組換え体)から誘導されるヒト可変領域を含む軽鎖を発現することができる。
【0315】
一実施形態において、本発明の細胞又は非ヒト脊椎動物は、(ii)Table 13(表13)又はTable 14(表14)又はTable 15(表15)又はTable 16(表16)又はTable 17(表17)又はTable 18(表18)、又はその任意の組合せのVλ及びJλ遺伝子セグメントからなる群から選択されるヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントの組換え(すなわち、組換え体)から誘導されるヒト可変領域を含む軽鎖を発現することができる。
【0316】
一実施形態において、本発明の細胞又は脊椎動物は、Table 1(表1)又はTable 2(表2)又はTable 3(表3)又はTable 4(表4)又はTable 5(表5)又はTable 6(表6)又はTable 7(表7)又はその任意の組合せのVH、D及びJH遺伝子セグメントからなる群から選択されるヒトVH、D及びJH遺伝子セグメントの組換え(すなわち、組換え体)から誘導されるヒト可変領域を含む重鎖を発現することができる。
【0317】
本発明は更に、以下の規定を含む:
規定1. 本発明の脊椎動物又は細胞はTable 7(表7)中の対立遺伝子番号1〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含むゲノムを有する。
規定2. Table 1(表1)からの対立遺伝子番号1及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号2〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、規定1に記載の脊椎動物又は細胞。
規定3. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号2及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号3〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定4. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号3及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号4〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定5. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号4及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号5〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定6. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号5及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号6〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定7. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号6及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号7〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定8. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号7及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号8〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定9. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号8及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号9〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定10. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号9及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号10〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定11. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号10及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号11〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定12. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号11及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号12〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定13. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号12及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号13〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定14. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号13及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号14〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定15. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号14及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号15〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定16. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号15及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号16〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定17. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号16及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号17〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定18. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号17及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号18〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定19. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号18及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号19〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定20. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号19及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号20〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定21. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号20及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号21〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定22. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号21及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号22〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定23. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号22及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号23〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定24. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号23及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号24〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定25. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号24及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号25〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定26. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号25及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号26〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定27. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号26及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号27〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定28. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号27及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号28〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定29. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号28及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号29〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定30. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号29及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号30〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定31. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号30及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号31〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定32. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号31及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号32〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定33. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号32及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号33〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定34. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号33及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号34〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定35. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号34及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号35〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定36. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号35及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号36〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定37. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号36及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号37〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定38. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号37及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号38〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定39. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号38及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号39〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定40. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号39及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号40〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定41. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号40及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号41〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定42. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号41及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号42〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定43. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号42及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号43〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定44. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号43及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号44〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定45. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号44及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号45〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定46. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号45及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号46〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定47. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号46及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号47〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定48. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号47及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号48〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定49. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号48及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号49〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定50. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号49及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号50〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定51. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号50及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号51〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定52. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号51及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号52〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定53. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号52及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号53〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定54. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号53及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号54〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定55. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号54及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号55〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定56. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号56及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号57〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定57. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号57及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号58〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定58. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号58及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号59〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む前記規定に記載の脊椎動物又は細胞。
規定59. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号59及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号60〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む前記規定に記載の脊椎動物又は細胞。
規定60. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号60及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号61〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定61. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号61及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号62〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定62. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号62及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号63〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定63. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号63及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号64〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定64. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号64及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号65〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれか記載の脊椎動物又は細胞。
規定65. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号65及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号66〜68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定66. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号66及びTable 7(表7)の対立遺伝子番号67又は68から選択される1つ又は複数の対立遺伝子を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
規定67. Table 7(表7)からの対立遺伝子番号67及びTable 7(表7)からの対立遺伝子番号68を含む、前記規定のいずれかに記載の脊椎動物又は細胞。
【0318】
例において、前記規定に記載の脊椎動物又は細胞は、Table 7(表7)からの1つ又は複数又は全部のJH対立遺伝子、例えば、JH2*02及び/又は少なくともJH6*02(実施例に示されるようにヒトの治療用の長いHCDR3 Vドメインを生成するのに有用である)を含む。
【0319】
したがって、Table 7(表7)中の任意の他の対立遺伝子と組み合わせたそれぞれの対立遺伝子が、本明細書に明示的に開示される。同じ構造の組合せが、Table 12(表12)及びTable 18(表18)の対立遺伝子と関連して開示される。したがって、Table 12(表12)又はTable 18(表18)中の任意の他の対立遺伝子と組み合わせたTable 7(表7)中のそれぞれの対立遺伝子が開示され、Table 12(表12)中のそれぞれの対立遺伝子がTable 12(表12)中の全ての他の対立遺伝子と組み合わせて開示され、Table 18(表18)中のそれぞれの対立遺伝子がTable 18(表18)中の全ての他の対立遺伝子と組み合わせて開示される。
【0320】
例において、前記規定に記載の脊椎動物又は細胞は、Table 12(表12)からの1つ又は複数又は全部のJκ対立遺伝子、例えば、少なくともJκ2*01及び/又はJκ4*01(実施例に示されるようにヒトの治療用のVκドメインを生成するのに有用である)を含む。
【0321】
一実施形態において、本発明の細胞又は脊椎動物は、遺伝子セグメントVH3-23*04、JH2*01、VK4-1*01及び/又はJK2*01を含むゲノムを有する。
【0322】
さらなる実施形態において、本発明の細胞又は脊椎動物は、遺伝子セグメントVH3-7*01、JH6*02、VK2-28*01及び/又はJK4*01を含むゲノムを有する。
【0323】
さらなる実施形態において、本発明の細胞又は脊椎動物は、遺伝子セグメントVH7-4-1*01、JH6*02、VK2-28*01及び/又はJK4*01を含むゲノムを有する。場合により、ゲノムはD3-16*02を更に含む。
【0324】
さらなる実施形態において、本発明の細胞又は脊椎動物は、遺伝子セグメントVH4-4-1*02、JH6*02、VK1D-13*01及び/又はJK4*01を含むゲノムを有する。場合により、ゲノムはD3-10*01を更に含む。
【0325】
さらなる実施形態において、本発明の細胞又は脊椎動物は、遺伝子セグメントVH1-3*01、JH6*02、VK1-12*01及び/又はJK4*01を含むゲノムを有する。場合により、ゲノムはD3-10*01を更に含む。
【0326】
さらなる実施形態において、本発明の細胞又は脊椎動物は、遺伝子セグメントVH3-13*01、JH6*02、VK1D-12*02及び/又はJK4*01を含むゲノムを有する。場合により、ゲノムはD3-9*01を更に含む。
【0327】
さらなる実施形態において、本発明の細胞又は脊椎動物は、遺伝子セグメントVH4-4*02、JH6*02、VK1D-13*01及び/又はJK4*01を含むゲノムを有する。場合により、ゲノムはD3-10*01を更に含む。
【0328】
さらなる実施形態において、本発明の細胞又は脊椎動物は、遺伝子セグメントVH3-13*01、JH6*02、VK3-20*01及び/又はJK4*01を含むゲノムを有する。場合により、ゲノムはD3-10*01を更に含む。
【0329】
さらなる実施形態において、本発明の細胞又は脊椎動物は、遺伝子セグメントVH3-23*04、JH6*02、VK1-17*01及び/又はJK4*01を含むゲノムを有する。場合により、ゲノムはD3-22*01を更に含む。
【0330】
さらなる実施形態において、本発明の細胞又は脊椎動物は、遺伝子セグメントVH3-7*01、JH6*02、VK1D-39*01及び/又はJK4*01を含むゲノムを有する。場合により、ゲノムはD3-9*01を更に含む。
【0331】
さらなる実施形態において、本発明の細胞又は脊椎動物は、遺伝子セグメントVH3-13*01、JH6*02、VK1D-39*01及び/又はJK4*01を含むゲノムを有する。場合により、ゲノムはD3-10*01を更に含む。
【0332】
さらなる実施形態において、本発明の細胞又は脊椎動物は、遺伝子セグメントVH3-13*01、JH6*02、VK3-11*01及び/又はJK4*01を含むゲノムを有する。場合により、ゲノムはD3-10*01を更に含む。
【0333】
さらなる実施形態において、本発明の細胞又は脊椎動物は、遺伝子セグメントVH4-4*02、JH6*02、VK1D-16*01及び/又はJK4*01を含むゲノムを有する。場合により、ゲノムはD3-9*01を更に含む。
【0334】
さらなる実施形態において、本発明の細胞又は脊椎動物は、遺伝子セグメントVH3-20*d01、JH6*02、VK1-9*d01及び/又はJK4*01を含むゲノムを有する。場合により、ゲノムはD3-10*01を更に含む。
【0335】
さらなる実施形態において、本発明の細胞又は脊椎動物は、ヒト遺伝子セグメントVH3-23*04を含むゲノムを有する。更に、又は或いは、本発明の抗体の重鎖可変ドメインは、(i)ヒトVH3-23*04、D及びJHセグメントによりコードされる。
【0336】
さらなる実施形態において、本発明の細胞又は脊椎動物は、ヒト遺伝子セグメントVH3-9*01を含むゲノムを有する。更に、又は或いは、本発明の抗体の重鎖可変ドメインは、(i)ヒトVH3-9*01、D及びJHセグメントによりコードされる。
【0337】
さらなる実施形態において、本発明の細胞又は脊椎動物は、ヒト遺伝子セグメントVκ1-12*02又はVκ1D-12*02を含むゲノムを有する。更に、又は或いは、本発明の抗体の軽鎖可変ドメインは、(i)ヒトVκ1-12*02又はVκ1D-12*02及びJκセグメントによりコードされる。
【0338】
さらなる実施形態において、本発明の細胞又は脊椎動物は、ヒト遺伝子セグメントVκ2-28*01を含むゲノムを有する。更に、又は或いは、本発明の抗体の軽鎖可変ドメインは、(i)ヒトVκ2-28*01及びJκセグメントによりコードされる。
【0339】
さらなる実施形態において、本発明の細胞又は脊椎動物は、ヒト遺伝子セグメントVκ4-1*01を含むゲノムを有する。更に、又は或いは、本発明の抗体の軽鎖可変ドメインは、(i)ヒトVκ4-1*01及びJκセグメントによりコードされる。さらなる実施形態において、本発明の細胞又は脊椎動物は、上記の遺伝子セグメントと、JH6*02の代わりにJH6*01との組合せを含むゲノムを有する。
【0340】
本明細書に記載の全ての実施形態において、重鎖V及びJ領域を、場合により、互いに、及び本明細書に定義されるD領域と組み換えて、重鎖可変ドメインを形成させることができる。更に、場合により、軽鎖V及びJ領域を組み換えて、軽鎖可変ドメインを形成させることができる。
【0341】
本発明は、遺伝子セグメントの上記組合せのいずれかの組換えから生成又は誘導されるヒト可変ドメインを含む抗体又は抗原結合断片に拡張される。
【0342】
本発明による抗体又は断片は、in vivoで生成的遺伝子セグメント組換えを生成するのに有用であると実施例において示され、接合突然変異及び体細胞突然変異を示し、良好な結合動力学で抗原に特異的に結合することができるドメインを生成する。
【0343】
本発明は、1つ又は複数のD遺伝子セグメント、1つ又は複数のVH遺伝子セグメント並びに1つ又は複数のヒトVH遺伝子セグメント、JH2*01及びJH6*02の、免疫化後の本発明のマウス、哺乳動物又は脊椎動物におけるin vivoでの組換えにより得られる、又は得ることができる抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0344】
一実施形態において、本発明の細胞又は脊椎動物は、1つ又は複数のD遺伝子セグメント、1つ又は複数のJH遺伝子セグメント並びに1つ又は複数の以下のVH遺伝子セグメントVH3-20*d01、VH1-24*d01及びVH2-26*d01の組換えから誘導されるヒト可変領域を含む重鎖を発現することができる。
【0345】
したがって、本発明は、1つ又は複数のD遺伝子セグメント、1つ又は複数のJH遺伝子セグメント並びに1つ又は複数のヒトVH遺伝子セグメントVH3-20*d01、VH1-24*d01及びVH2-26*d01の、免疫化後の本発明のマウス、哺乳動物又は脊椎動物におけるin vivoでの組換えにより得られるか、又は得ることができる抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0346】
さらなる実施形態において、本発明の細胞又は脊椎動物は、更に、又は或いは、1つ若しくは複数のJκ遺伝子セグメント並びに1つ若しくは複数のヒトVκ遺伝子セグメントVκ5-2*d01、Vκ1-9*d01、Vκ1D-8*d01、Vκ3D-11*d01、Vκ1D-13*d01、Vκ3D-15*d01、Vκ2D-26*d01及びVκ2D-28*d01の組換え又は1つ若しくは複数のJλ遺伝子セグメント並びに1つ若しくは複数のヒトVλ遺伝子セグメントVλ2-22*d01、Vλ2-23*d02、Vλ3-25*d03及びVλ4-60*d03の組換えから誘導されるヒト可変領域を含む軽鎖を発現することができる。
【0347】
したがって、本発明は、1つ若しくは複数のJκ遺伝子セグメント並びに1つ若しくは複数のヒトVκ遺伝子セグメントVκ5-2*d01、Vκ1-9*d01、Vκ1D-8*d01、Vκ3D-11*d01、Vκ2D-26*d01及びVκ2D-28*d01又は1つ若しくは複数のJλ遺伝子セグメント並びに1つ若しくは複数のヒトVλ遺伝子セグメントVλ2-22*d01、Vλ2-23*d02、Vλ3-25*d03及びVλ4-60*d03の、免疫化後の本発明のマウス、哺乳動物又は脊椎動物におけるin vivoでの組換えにより得られるか、又は得ることができる抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0348】
本発明の全ての態様において、細胞は、ハイブリドーマ細胞、B細胞、場合により、不死化B細胞、又は胚性幹細胞であってもよい。
【0349】
一実施形態において、脊椎動物又は細胞は、カッパ又はラムダ定常領域である定常領域、場合により、マウス又はラット定常領域を含む。一実施形態において、定常領域はヒト定常領域であってもよい。
【0350】
一実施形態において、本明細書に開示される脊椎動物又は細胞は、カッパ又はラムダ遺伝子座である内因性軽鎖遺伝子座を含む;場合により、ゲノムは、内因性軽鎖遺伝子座、例えば、カッパ遺伝子座にTable 8(表8)、Table 9(表9)若しくはTable 10(表10)の少なくともV及びJ遺伝子セグメント、並びに/又は内因性軽鎖遺伝子座、例えば、ラムダ若しくはカッパ遺伝子座のいずれかにTable 13(表13)若しくはTable 14(表14)の少なくともV及びJ遺伝子セグメントを含む。
【0351】
一実施形態において、本明細書に開示される脊椎動物又は細胞は、Table 18(表18)のVλ及びJλ遺伝子セグメントからなる群から選択されるヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントの組換えから誘導されるヒト可変領域を含む免疫グロブリン軽鎖を含み、それぞれのそのような可変領域はTable 18(表18)のCλ遺伝子セグメントからなる群から選択されるCλ遺伝子セグメントによりコードされる定常領域と共に発現される。
【0352】
一実施形態において、軽鎖は、Table 18(表18)のVλ及びJλ遺伝子セグメントからなる群から選択されるヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントの組換えから誘導されるヒト可変領域を含む。
【0353】
本発明の全ての実施形態において、VH及びVLドメインは、場合により、抗原結合部位を形成することができる。
【0354】
本発明の任意の態様の細胞は、ハイブリドーマ細胞又はB細胞、場合により、不死化B細胞であってもよい。細胞はまた、ES細胞であってもよい。ES細胞は、少なくとも90、150又は200を超える細胞の集団の一部であってもよい。例において、細胞の集団は、1つ又は複数の多ウェルプレート(例えば、96ウェルプレート)上に含有され、例えば、単一の細胞がプレートの異なるそれぞれのウェルに含まれる選別された集団であってもよい。任意の態様の脊椎動物は、濾過された空気を含む、場合により、空気フィルターを含む容器内に含まれていてもよい。
【0355】
実施形態において、容器内部の環境は、できるだけ標準的な動物用容器、例えば、Techniplast(商標)マウスロフト(http://www.tecniplast.it/us/product/mouse-loft.html)を用いて無菌にする。例において、容器はプラスチック製の本体、例えば、半透明又は透明な本体を有する。
【0356】
脊椎動物を含む容器は、4、3、2又は1m3以下の容量を有してもよい。容器は、複数の脊椎動物、例えば、オスとメス(例えば、繁殖ペア)を含んでもよい。
【0357】
一実施形態において、本発明の脊椎動物は、少なくとも3.5週齢、例えば、4週齢、5週齢、6週齢、7週齢である。
【0358】
特許請求される、特に、Table 1(表1)〜Table 18(表18)に示される遺伝子セグメントの使用は、実施例に見られる利点を提供する。
【0359】
本発明は更に、抗体又はその抗原結合断片を生成する方法であって、本発明の脊椎動物を抗原で免疫化する工程及び抗体若しくは断片を回収する工程又は抗体若しくは断片を生成する細胞を回収する固定、場合により、単離された抗体又は断片がヒト定常領域を含むようにそれを改変する工程を含む、前記方法に関する。
【0360】
本発明はまた、抗体又はその抗原結合断片を生成する方法であって、本発明の細胞から抗体又はその抗原結合断片を単離する工程、及び場合により、単離された抗体又は断片がヒト定常領域を含むようにそれを改変する工程を含む、前記方法を含む。
【0361】
組換えDNA技術を用いて、改変された抗体又は断片をコードする改変ヌクレオチド配列を生成することができる。
【0362】
その方法は、
(a)脊椎動物から、抗原に結合する抗体をコードするB細胞を単離する工程、
(b)抗体のVHドメインをコードするB細胞のヌクレオチド配列を同定若しくはコピーする工程及び/又は抗体のVLドメインをコードするB細胞のヌクレオチド配列を同定若しくはコピーする工程、並びに
(c)場合により、単離された抗体がヒト定常領域を含む、VH及び/又はVLドメインを含む単離された抗体を生成する配列を使用する工程
を含んでもよい。本発明は、好適には、抗体をコードする核酸の工学的操作により、本明細書に開示される脊椎動物を免疫化した後、抗原と特異的に反応する抗体の非ヒト脊椎動物定常領域を、ヒト定常領域と置き換える工程を含む、完全ヒト化抗体を生成するための方法を含む。
【0363】
本発明はまた、本明細書に開示される任意の方法にしたがって生成されるヒト化抗体及び医学におけるそのように生成されたヒト化抗体の使用にも関する。さらなる実施形態において、本発明は、標的抗原に特異的に結合するIgG1、IgG2b及び/又はIgM抗体を単離する工程を含む。
【0364】
本発明の単離された抗体を、CHO、HEK293、Cos又は酵母[例えば、ピチア(Picchia)]細胞から選択される宿主細胞からの発現により生成することができる。好ましい実施形態において、抗体はCHO細胞からの発現により生成される抗体である。
【0365】
さらなる実施形態において、単離された抗体又は断片を、希釈剤、担体、賦形剤又は薬物と共に製剤化して、ヒトにおける医学的使用のための医薬組成物を生成することができる。場合により、製剤化された抗体を、滅菌容器、例えば、バイアル、チューブ、IVバッグ又は注射筒中に包装することができる;更に場合により、パッケージと、ヒトにおける医学的使用のための抗体組成物の使用を指示するラベル又は説明書との組合せを含むキットを製造することができる;場合により、ラベル又は説明書は医薬品バッチ番号及び/又は製造承認番号(marketing authorisation number)、更に場合により、EMA又はFDA製造承認番号を含む。例において、単離された抗体(例えば、CHO細胞により生成される)は、(i)希釈剤、担体、賦形剤又は薬物と共に製剤化され、ヒトにおける医学的使用のための医薬組成物を生成する、(ii)製剤化された抗体は、ヒトにおける医学的使用のための抗体組成物の使用を指示するラベル又は説明書と組み合わせた滅菌容器中に包装される;ラベル又は説明書は、医薬品バッチ番号及び/又は製造承認番号(例えば、EMA若しくはFDA製造承認番号)を含む。そのような例の実施形態において、抗体はヒトPCSK9に特異的に結合し、その使用は、ヒトにおける高脂血症を処置若しくは防止するため、又はコレステロールを減少させるためのものである。そのような例の実施形態において、抗体はヒトIL6Raに特異的に結合し、その使用はヒトにおける炎症状態又は関節リウマチを処置又は防止するためのものである。そのような例の実施形態において、抗体はヒトIL4Raに特異的に結合し、その使用は、ヒトにおけるアトピー疾患、アトピー性皮膚炎又は喘息を処置又は防止するためのものである。
【0366】
本発明は、ヒトにおける医学的使用のための本発明の方法により生成される抗体又は断片及びヒトにおける医学的使用のための医薬品の製造における本発明の方法により生成される単離された抗体又は断片の使用に関する。
【0367】
医薬品は、本明細書に開示される組成物又はキットであってもよい。
【0368】
本発明は、本明細書に開示される遺伝子セグメントの任意の組合せの組換えにより生成されるか、又はそれから誘導されるヒト可変ドメインを含む抗体及びその抗原結合断片であって、場合により、免疫化後の本発明のマウス、哺乳動物又は他の脊椎動物におけるin vivoでの組換えにより得られるか、又は得ることができる前記抗体及び断片を含む。
【0369】
一実施形態において、細胞又は脊椎動物により発現される免疫グロブリン重鎖は、ヒト可変領域を含む前記重鎖を本質的に含まず;ヒト可変領域を含む前記重鎖は、血清IgG抗体、場合により、IgG1、IgG2a若しくはIgG2b、又はIgM抗体の一部として発現される。
【0370】
一実施形態において、本発明の細胞又は脊椎動物は、標的抗原に特異的に結合する、本明細書に定義される重鎖を含むIgG抗体、場合により、IgG1、IgG2a若しくはIgG2b抗体、又はIgM抗体を発現する。
【0371】
本発明は更に、
(a)Table 1(表1)〜Table 7(表7)のいずれか1つのVH、D及びJH遺伝子セグメントからなる群から選択されるヒトVH、D及びJH遺伝子セグメントの組換えから誘導されるヒト重鎖可変ドメイン;並びに
(b)Table 8(表8)〜Table 18(表18)のいずれか1つのV及びJ遺伝子セグメントから両方とも選択されるヒトV及びJ遺伝子セグメントの組換えから誘導されるヒト軽鎖可変ドメイン
を含む、場合により本発明の方法により生成される抗体に関する。
【0372】
場合により、本発明の方法により得られるか、又は得ることができる単離された抗体又はその抗原結合断片であって、抗体又は断片の可変領域が、1つ若しくは複数のマウス若しくはラット活性化誘導デアミナーゼ(AID)パターン体細胞突然変異及び/又はマウス若しくはラット末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)パターン接合突然変異を含む、抗体又はその抗原結合断片。
【0373】
本発明による可変重鎖若しくは軽鎖ドメイン又は領域は、1、2、3、4、5、6、7、8、又は9個等の最大10個の接合突然変異を含んでもよい。
【0374】
さらなる実施形態において、本発明による可変重鎖若しくは軽鎖ドメイン又は領域は、更に、又は或いは、1、2、3、4、5、6、7、又は8個、例えば、1、2、3、4、5、6又は7個等の最大で9個の体細胞突然変異を含んでもよい。
【0375】
さらなる実施形態において、本発明は、ガンマ受容体、及び更に場合によりヒト定常軽鎖に結合する、場合により本発明の方法により得られるか、又は得ることができる単離された抗体又はその抗原結合断片を含む。一実施形態において、Fcは、ヒトガンマ定常ドメイン、例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4定常ドメインを含む。
【0376】
CHO、HEK293、Cos又は酵母(例えば、ピチア)細胞のグリコシル化を含む、場合により本発明の方法により得られるか、又は得ることができる単離された抗体又はその抗原結合断片。
【0377】
本発明の抗体又は断片は、ヒト酵素に特異的に結合することができる。
【0378】
本発明の抗体又は断片は、ヒト標的に特異的に結合することができる:プロタンパク質変換酵素PC9、プロタンパク質変換酵素スブチリシンケキシン-9(PCSK9)、CD126、IL-4、IL-4受容体、IL-6、IL-6受容体、IL-13、IL-18受容体、Erbb3、細胞ASIC1、ANG2、GDF-8、アンギオポエチンリガンド-2、デルタ様タンパク質リガンド4、免疫グロブリンG1、PDGFリガンド、PDGF受容体若しくはNGF受容体、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)の毒素A若しくは毒素B、リラクシン、CD48、Cd20、グルカゴン受容体、プロテアーゼ活性化受容体2、TNF様リガンド1A(TL1A)、アンギオポエチン関連-2(AR-2)、アンギオポエチン様タンパク質4、RANKL、アンギオポエチン様タンパク質3(ANGPTL3)、デルタ様リガンド4(DLL4)、ビッグエンドセリン-1(ET-1)、アクチビンA、受容体チロシンキナーゼ、例えば、ヒトAR-1及びIgを含むチロシンキナーゼ並びにEGFホモロジードメイン(TIE)若しくはTIE-2受容体。例において、標的はPCSK9である。例において、標的はIL-6受容体(例えば、IL6Ra)である。例において、標的はIL-4受容体(例えば、IL4Ra)である。
【0379】
本発明の好ましい態様は、以下を含む。
【0380】
ヒトにおけるIL-4Ra媒介性疾患又は障害を減弱させるか、又は阻害するための使用のための医薬品の製造における抗体又はその断片の使用。本発明のリガンド、抗体又は断片により処置されるIL-4Ra媒介性又は関連性障害としては、例えば、関節炎(敗血症性関節炎を含む)、疱疹状皮膚炎、慢性特発性じんましん、強皮症、肥厚性瘢痕形成、ウィップル病、良性前立腺過形成、軽度、中等度若しくは重度の喘息等の肺障害、炎症性腸疾患等の炎症障害、アレルギー反応、川崎病、鎌状赤血球疾患、チャーグ・ストラウス症候群、グレーブス病、子癇前症、シェーグレン症候群、自己免疫性リンパ球増殖性症候群、自己免疫性溶血性貧血、バレット食道、自己免疫性ブドウ膜炎、結核、及びネフローゼが挙げられる。
【0381】
本発明のリガンド、抗体又は断片により処置されるさらなるIL-4Ra媒介性又は関連性障害としては、例えば、喘息、COPD(例えば、慢性気管支炎、小気道疾患又は肺気腫)、炎症性腸疾患、線維性状態(例えば、全身性硬化症、肺線維症、寄生虫誘導性肝線維症、又は嚢胞性線維症)、アレルギー(例えば、アトピー性皮膚炎、ダニアレルギー、ペットアレルギー又は食物アレルギー)、移植片拒絶を防止するための移植療法、アレルギー免疫療法に対するアジュバントとして、又はワクチンアジュバントとしての、遅延型過敏症又は接触過敏症反応の抑制が挙げられる。
【0382】
本発明により更に包含されるのは、IL-4Ra媒介性又は関連性障害の防止又は処置のための医薬品の製造における抗体又はその断片の使用であり、前記疾患又は状態は炎症疾患若しくは状態、アトピー疾患若しくは状態、呼吸器疾患若しくは状態、IgEの上昇と関連する疾患若しくは状態、又はIL-4及び/若しくはIL-13活性の上昇と関連する疾患若しくは状態である。
【0383】
本発明により更に包含されるのは、IL-4Ra媒介性又は関連性疾患又は状態の防止又は処置のための医薬品の製造における抗体又はその断片の使用であって、前記疾患又は状態が、気道炎症疾患又は状態、慢性閉塞性肺疾患、喘息、肺炎、過敏性肺臓炎、好酸球増加を伴う肺浸潤、環境性肺疾患、肺炎、気管支拡張症、嚢胞性線維症、間質性肺疾患、原発性肺高血圧、肺血栓塞栓症、胸膜障害、縦隔障害、横隔膜障害、低換気、過換気、睡眠時無呼吸、急性呼吸窮迫症候群、中皮腫、肉腫、移植片拒絶、移植片対宿主疾患、肺がん、アレルギー性鼻炎、アレルギー、石綿症、アスペルギルス腫、アスペルギルス症、気管支拡張症、慢性気管支炎、肺気腫、好酸球性肺炎、特発性肺線維症、侵襲性肺炎球菌疾患、インフルエンザ、非結核性抗酸菌、胸水、塵肺、ニューモシスチス症(pneumocytosis)、肺炎、肺放線菌症、肺胞タンパク症、肺炭疽、肺水腫、肺動脈塞栓、肺炎症、肺組織球増殖症X、肺高血圧、肺ノカルジア症、肺結核、肺静脈閉塞疾患、リウマチ性肺疾患、サルコイドーシス、及びヴェグナー肉芽腫症からなる群から選択される、前記使用である。
【0384】
本発明により更に包含されるのは、本明細書に開示される任意の疾患又は障害の防止又は処置のための、本明細書に開示される抗IL-4Ra抗体又はその断片である。
【0385】
本発明により更に包含されるのは、本明細書に開示される疾患又は障害の医学的処置の方法における、抗IL-4Ra又はその断片の使用である。
【0386】
本発明により更に包含されるのは、ヒトにおけるPCSK9媒介性疾患又は障害を減弱させるか、又は阻害するのに使用するための医薬品の製造における本発明のリガンド、抗体又は断片の使用である。そのような疾患又は状態の非限定例としては、例えば、脂質障害、高リポタンパク血症、高脂血症、脂質異常症、高コレステロール血症、心臓発作、脳卒中、冠動脈性心疾患、アテローム性動脈硬化症、末梢血管疾患、跛行、II型糖尿病、高血圧、及び心血管疾患又は状態が挙げられる。
【0387】
本発明により更に包含されるのは、本明細書に開示される任意の疾患又は障害の防止又は処置のための、本明細書に開示される抗PCSK9抗体又はその断片である。
【0388】
本発明により更に包含されるのは、本明細書に開示される疾患又は障害の医学的処置の方法における、抗PCSK9抗体又はその断片の使用である。
【0389】
本発明により更に包含されるのは、ヒトにおけるIL-6Ra媒介性疾患又は障害を減弱させるか、又は阻害するのに使用するための医薬品の製造における本発明のリガンド、抗体又は断片の使用である。
【0390】
前記IL-6Ra媒介性疾患又は状態は、炎症疾患又は状態であってもよい。前記IL-6Ra媒介性疾患又は状態は、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、関節リウマチ、乾癬、細気管支炎、歯肉炎、移植拒絶、同種移植拒絶、移植片対宿主疾患(GvHD)、喘息、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、敗血性ショック、潰瘍性大腸炎、シェーグレン症候群、気道炎症、キャッスルマン病、歯周炎、アトピー性皮膚炎、全身性エリテマトーデス及び冠動脈性心疾患からなる群から選択することができる。
【0391】
本発明により更に包含されるのは、本明細書に開示される任意の疾患又は障害の防止又は処置のための、本明細書に開示される抗IL-6Ra抗体又はその断片である。
【0392】
本発明により更に包含されるのは、本明細書に開示される疾患又は障害の医学的処置の方法における、抗IL-6Ra抗体又はその断片の使用である。
【0393】
さらなる実施形態において、本発明は、以下の態様に関する。
【0394】
1.ゲノムが、内因性重鎖遺伝子座の定常領域の上流のヒトJH2*01及び/若しくはヒトJH6*02、1つ若しくは複数のヒトVH遺伝子セグメント及び1つ若しくは複数のヒトD遺伝子セグメント並びに/又は内因性軽鎖遺伝子座の定常領域の上流のヒトJκ2*01及び/若しくはヒトJκ4*01及び1つ若しくは複数のヒトVκ遺伝子セグメントを含む非ヒト脊椎動物又は脊椎動物細胞(例えば、マウス若しくはラット)であって、細胞若しくは脊椎動物が抗体重鎖及び抗体軽鎖を生成することができるように各遺伝子座中の遺伝子セグメントがその定常領域に作動可能に連結されるか、又は細胞が抗体重鎖及び抗体軽鎖を発現する脊椎動物に発生することができ、重鎖がヒトJH2*01及び/若しくはJH6*02セグメントと、Dセグメント及びVHセグメントとの組換えにより生成され、並びに/又は抗体軽鎖がヒトJκ2*01及び/若しくはJκ4*01セグメントとVκセグメントとの組換えにより生成され、
重鎖遺伝子座の前記1つ若しくは複数のヒトVH遺伝子セグメントが、VH3-23*04、VH7-4-1*01、VH4-4*02、VH1-3*01、VH3-13*01、VH3-7*01及びVH3-20*d01からなる群から選択される1つ、複数若しくは全部のヒトVH遺伝子セグメントを含むか、若しくはからなり、
又は
前記1つ若しくは複数のヒトVκ遺伝子セグメントが、Vκ4-1*01、Vκ2-28*01、Vκ1D-13*d01、Vκ1-12*01、Vκ1D-12*02、Vκ3-20*01、Vκ1-17*01、Vκ1D-39*01、Vκ3-11*01、Vκ1D-16*01及びVκ1-9*d01からなる群から選択される1つ、複数若しくは全部のヒトVH遺伝子セグメントを含むか、若しくはからなる、
前記非ヒト脊椎動物又は脊椎動物細胞。
【0395】
場合により、ヒト遺伝子セグメントは、生殖系列ヒト遺伝子セグメント配列と比較して1つ又は複数の突然変異を含む組換え形態の遺伝子セグメントである。
【0396】
2.ゲノムが、内因性重鎖遺伝子座の定常領域の上流のヒトJH2*01及び/若しくはヒトJH6*02、1つ若しくは複数のヒトVH遺伝子セグメント及び1つ若しくは複数のヒトD遺伝子セグメント又は内因性軽鎖遺伝子座の定常領域の上流のヒトJκ2*01及び/若しくはヒトJκ4*01及び1つ若しくは複数のヒトVκ遺伝子セグメントを含む、態様1の細胞又は脊椎動物。
【0397】
3.重鎖遺伝子座の前記1つ又は複数のヒトVH遺伝子セグメントが、VH3-23*04、VH7-4-1*01、VH4-4*02、VH1-3*01、VH3-13*01、VH3-7*01及びVH3-20*d01からなる群から選択される1つ、複数又は全部のヒトVH遺伝子セグメントを含むか、又はからなり、前記1つ又は複数のヒトVκ遺伝子セグメントが、Vκ4-1*01、Vκ2-28*01、Vκ1D-13*d01、Vκ1-12*01、Vκ1D-12*02、Vκ3-20*01、Vκ1-17*01、Vκ1D-39*01、Vκ3-11*01、Vκ1D-16*01及びVκ1-9*d01からなる群から選択される1つ、複数又は全部のヒトVH遺伝子セグメントを含むか、又はからなる、態様2の細胞又は脊椎動物。
【0398】
4.ゲノムがVH3-23*04を含み、場合により、重鎖がヒトJHセグメントとDセグメント及び前記VHセグメントとの組換えにより生成される、態様1〜3の細胞又は脊椎動物。
【0399】
5.ゲノムがVκ4-1*01を含み、場合により、重鎖がヒトJHセグメントとDセグメント及び前記VHセグメントとの組換えにより生成される、態様1〜4の細胞又は脊椎動物。
【0400】
6.ゲノムがVκ2-28*01を含み、場合により、重鎖がヒトJHセグメントとDセグメント及び前記VHセグメントとの組換えにより生成される、態様1〜5の細胞又は脊椎動物。
【0401】
7.ゲノムがVκ1-12*01を含み、場合により、重鎖がヒトJHセグメントとDセグメント及び前記VHセグメントとの組換えにより生成される、態様1〜6の細胞又は脊椎動物。
【0402】
8.ゲノムがJH2*01及びJκ2*01を含む、態様1〜7の細胞又は脊椎動物。
【0403】
9.ゲノムがJH6*02及びJκ4*01を含む、態様1〜8の細胞又は脊椎動物。
【0404】
10.前記重鎖遺伝子座がJH2*01と組み換えたVH3-23*04、又はJH6*02と組み換えたVH3-7*01を含む、態様1〜9の細胞又は脊椎動物。
【0405】
11.前記軽鎖遺伝子座がJκ2*01と組み換えたVκ4-1*01、又はJκ4*01と組み換えたVκ2-28*01を含む、態様1〜10の細胞又は脊椎動物。
【0406】
12.ゲノムがVH3-23*04、JH2*01(場合により、VH3-23*04と組み換えた)、Vκ4-1*01及びJκ2*01(場合により、Vκ4-1*01と組み換えた)を含む、前記態様のいずれかの細胞又は脊椎動物。
【0407】
13.ゲノムがVH3-7*01、JH6*02(場合により、VH3-7*01と組み換えた)、Vκ2-28*01及びJκ4*01(場合により、Vκ2-28*01と組み換えた)を含む、前記態様のいずれかの細胞又は脊椎動物。
【0408】
14.重鎖遺伝子座がTable 7(表7)からの1つ又は複数のさらなる重鎖遺伝子セグメントを更に含む、前記態様のいずれかの細胞又は脊椎動物。
【0409】
15.重鎖遺伝子座が、Table 1(表1)の遺伝子セグメントの全部、Table 2(表2)の遺伝子セグメントの全部、Table 3(表3)の遺伝子セグメントの全部、Table 4(表4)の遺伝子セグメントの全部、Table 5(表5)の遺伝子セグメントの全部、Table 6(表6)の遺伝子セグメントの全部又はTable 7(表7)の遺伝子セグメントの全部を含む、前記態様のいずれかの細胞又は脊椎動物。
【0410】
16.軽鎖遺伝子座がTable 12(表12)からの1つ又は複数のさらなる軽鎖セグメントを更に含む、前記態様のいずれかの細胞又は脊椎動物。
【0411】
17.軽鎖遺伝子座が、Table 8(表8)の遺伝子セグメントの全部、Table 9(表9)の遺伝子セグメントの全部、Table 10(表10)の遺伝子セグメントの全部、Table 11(表11)の遺伝子セグメントの全部又はTable 12(表12)の遺伝子セグメントの全部を含む、前記態様のいずれかの細胞又は脊椎動物。
【0412】
18.細胞がハイブリドーマ又はB細胞(例えば、不死化B細胞)である、前記態様のいずれかの細胞又は脊椎動物。
【0413】
19.マウスにより発現される免疫グロブリン重鎖が本質的には専らヒト可変領域を含む前記重鎖であり、ヒト可変領域を含む前記重鎖が血清IgG1、IgG2b及びIgM(及び場合によりIgG2a)抗体の一部として発現される、前記態様のいずれかの脊椎動物又は細胞。
【0414】
20.態様1〜19の脊椎動物を抗原で免疫化する工程及び抗体若しくは断片を回収するか、又は抗体若しくは断片を生成する細胞を回収する工程、場合により、生成される抗体若しくは断片がヒト定常領域を含むようにそれを改変する工程を含む、抗体又はその抗原結合断片を生成する方法であって、
前記抗体の可変ドメインが、
ヒトVH遺伝子セグメントがVH3-23*04、VH7-4-1*01、VH4-4*02、VH1-3*01、VH3-13*01、VH3-7*01及びVH3-20*d01からなる群から選択される、ヒト遺伝子セグメントJH2*01又はJH6*02及び1つ又は複数のヒトVH遺伝子セグメント及び1つ又は複数のヒトD遺伝子セグメント、並びに
(b)ヒトVκ遺伝子セグメントがVκ4-1*01、Vκ2-28*01、Vκ1D-13*d01、Vκ1-12*01、Vκ1D-12*02、Vκ3-20*01、Vκ1-17*01、Vκ1D-39*01、Vκ3-11*01、Vκ1D-16*01及びVκ1-9*d01からなる群から選択される、ヒト遺伝子セグメントJκ2*01又はJκ4*01及び1つ又は複数のヒトVκ遺伝子セグメント
によりコードされる、前記方法。
【0415】
21.抗原が、マルチサブユニットヒトタンパク質、細菌細胞毒素又はヒト細胞上で膜貫通タンパク質として発現されるタンパク質である、態様20の方法。
【0416】
22.抗体又はその抗原結合断片を生成する方法であって、態様1〜20のいずれか1つの細胞から抗体又はその抗原結合断片を単離する工程、並びに場合により、単離された抗体又は断片がヒト定常領域を含むようにそれを改変する工程を含む、前記方法。
【0417】
23.(a)抗原に結合する抗体をコードするB細胞を脊椎動物から単離する工程、
(b)抗体のVHドメインをコードするB細胞のヌクレオチド配列を同定若しくはコピーする工程及び/又は抗体のVLドメインをコードするB細胞のヌクレオチド配列を同定若しくはコピーする工程、並びに
(c)その配列を使用してVH及び/又はVLドメインを含む単離された抗体又は断片を生成する工程
を更に含み、場合により、単離された抗体又は断片がヒト定常領域を含む、態様20の方法。
【0418】
24.抗体又は断片がCHO、HEK293、Cos又は酵母(例えば、ピチア)細胞から選択される宿主細胞からの発現により生成される、態様20〜23の方法。
【0419】
25.抗体又は断片がCHO細胞からの発現により生成される、態様24の方法。
【0420】
26.抗体又は断片を希釈剤、担体、賦形剤又は薬物と共に製剤化して、ヒトにおける医学的使用のための医薬組成物を生成する工程を更に含み、場合により、滅菌容器、例えば、バイアル、チューブ、IVバッグ又は注射筒中に前記組成物をパッケージングする工程、更に場合により、パッケージを、ヒトにおける医学的使用のための抗体組成物の使用を指示するラベル又は説明書と組み合わせて含むキットを製造する工程を更に含み、場合により、ラベル又は説明書が医薬品バッチ番号及び/又は製造承認番号、更に場合により、EMA又はFDA製造承認番号を含む、態様20〜25のいずれか1つの方法。
【0421】
27.脊椎動物が態様1〜19のいずれか1つに記載のものであり、方法により生成される抗体又は断片が、
(a)ヒトJH2*01又はヒトJH6*02、1つ又は複数のヒトVH遺伝子セグメント及び1つ又は複数のヒトD遺伝子セグメントの組換え体であるヒト重鎖可変ドメイン;並びに
(b)ヒトJK2*01又はヒトJK4*01及び1つ又は複数のヒトVκ遺伝子セグメントの組換え体である、ヒト軽鎖可変ドメイン
を含む、態様20〜26のいずれか1つの方法。
【0422】
28.方法により生成される抗体又は断片が、VH3-23*04及びJH2*01のヒト重鎖可変ドメイン組換え体並びにVκ4-1*01及びJκ2*01のヒト軽鎖可変ドメイン組換え体を含む、態様27の方法。
【0423】
29.方法により生成される抗体又は断片が、VH3-7*01及びJH6*02のヒト重鎖可変ドメイン組換え体並びにVκ2-28*01及びJκ4*01のヒト軽鎖可変ドメイン組換え体を含む、態様27の方法。
【0424】
30.態様20〜29のいずれか1つの方法により生成される単離された抗体若しくは断片又はキット。
【0425】
31.抗体がヒト化されている、態様20〜29の方法により生成される単離された抗体若しくはその抗原結合断片又はキット。
【0426】
32.抗体又は断片が唯一の治療剤である、態様20〜29の方法により生成される抗体若しくは断片を含む組成物又はキット。
【0427】
33.さらなる治療剤、例えば、抗高コレステロール血症薬を更に含む、態様20〜29の方法により生成される抗体若しくは断片を含む組成物又はキット。
【0428】
34.ヒトにおける医学的使用のための態様20〜29のいずれか1つの方法により生成される単離された抗体若しくは断片又はキット。
【0429】
35.ヒトにおける医学的使用のための医薬品の製造における態様20〜29のいずれか1つの方法により生成される単離された抗体又は断片の使用。
【0430】
36.医薬品が態様26に規定の組成物又はキットにより含まれる、態様35の使用。
【0431】
37.プロタンパク質変換酵素PC9、プロタンパク質変換酵素スブチリシンケキシン-9(PCSK9)、CD126、IL-4、IL-4受容体、IL-6、IL-6受容体、IL-13、IL-18受容体、Erbb3、細胞ASIC1、ANG2、GDF-8、アンギオポエチンリガンド-2、デルタ様タンパク質リガンド4、免疫グロブリンG1、PDGFリガンド、PDGF受容体若しくはNGF受容体、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)の毒素A若しくは毒素B、リラクシン、CD48、Cd20、グルカゴン受容体、プロテアーゼ活性化受容体2、TNF様リガンド1A(TL1A)、アンギオポエチン関連-2(AR-2)、アンギオポエチン様タンパク質4、RANKL、アンギオポエチン様タンパク質3(ANGPTL3)、デルタ様リガンド4(DLL4)、ビッグエンドセリン-1(ET-1)、アクチビンA、受容体チロシンキナーゼ、例えば、ヒトAR-1及びIgを含むチロシンキナーゼ並びにEGFホモロジードメイン(TIE)及びTIE-2受容体から選択されるヒト標的に特異的に結合することができる、態様30〜34の単離された抗体若しくは断片又はキット、又は態様35〜36の使用。
【0432】
38.処置がウイルス又はヒトサイトカイン、増殖因子、ホルモン、酵素及び血清タンパク質から選択される抗原に特異的に結合する有効量の抗体又は断片の送達を含む、それを必要とするヒトの処置における使用のための、態様30〜34の単離された抗体若しくは断片又はキット、又は態様35〜36の使用。
【0433】
39.態様20〜29のいずれか1つの方法により生成される抗体又は断片を発現する宿主細胞、例えば、CHO、HEK293、Cos又は酵母(例えば、ピチア)細胞。
【0434】
上記態様において、JH6*02はJH6*01と置き換えてもよい。
【0435】
さらなる態様において、本発明は、以下の条項を含む。
【0436】
条項
1.ゲノムが、内因性重鎖遺伝子座の定常領域の上流のヒトJH2*01及び/若しくはヒトJH6*02、1つ若しくは複数のヒトVH遺伝子セグメント及び1つ若しくは複数のヒトD遺伝子セグメント並びに内因性軽鎖遺伝子座の定常領域の上流のヒトJκ2*01及び/若しくはヒトJκ4*01及び1つ若しくは複数のヒトVκ遺伝子セグメントを含む非ヒト脊椎動物細胞(例えば、マウス細胞若しくはラット細胞)であって、細胞が抗体重鎖及び抗体軽鎖を生成することができるように各遺伝子座中の遺伝子セグメントがその定常領域に作動可能に連結されるか、又は細胞が抗体重鎖及び抗体軽鎖を発現する脊椎動物に発生することができ、重鎖がヒトJH2*01及び/若しくはJH6*02セグメントとDセグメント及びVHセグメントとの組換えにより生成され、軽鎖がヒトJκ2*01及び/若しくはJκ4*01セグメントとVκセグメントとの組換えにより生成される、非ヒト脊椎動物細胞。
【0437】
2.ゲノムが、内因性重鎖遺伝子座の定常領域の上流のヒトJH2*01及び/若しくはヒトJH6*02、1つ若しくは複数のヒトVH遺伝子セグメント及び1つ若しくは複数のヒトD遺伝子セグメント並びに/又は内因性軽鎖遺伝子座の定常領域の上流のヒトJκ4*01及び1つ若しくは複数のヒトVκ遺伝子セグメントを含む非ヒト脊椎動物(例えば、マウス若しくはラット)であって、脊椎動物が抗体重鎖及び抗体軽鎖を生成することができるように各遺伝子座中の遺伝子セグメントがその定常領域に作動可能に連結され、重鎖がヒトJH2*01及び/若しくはJH6*02セグメントとDセグメント及びVHセグメントとの組換えにより生成され、抗体軽鎖がヒトJκ2*01及び/若しくはJκ4*01セグメントとVκセグメントとの組換えにより生成される、非ヒト脊椎動物。
【0438】
3.ゲノムがJH2*01及びJκ2*01を含む、条項1の細胞又は条項2の脊椎動物。
【0439】
4.ゲノムがJH6*02及びJκ4*01を含む、条項1若しくは3の細胞又は条項2若しくは3の脊椎動物。
【0440】
5.重鎖遺伝子座の前記1つ又は複数のヒトVH遺伝子セグメントがVH3-23*04、VH7-4-1*01、VH4-4*02、VH1-3*01、VH3-13*01、VH3-7*01及びVH3-20*d01からなる群から選択される1つ、複数又は全部のヒトVH遺伝子セグメントを含むか、又はからなる、前記条項のいずれかの細胞又は脊椎動物。
【0441】
6.前記重鎖遺伝子座がJH2*01と組み換えたVH3-23*04、又はJH6*02と組み換えたVH3-7*01を含む、条項5の細胞又は脊椎動物。
【0442】
7.前記1つ又は複数のヒトVκ遺伝子セグメントが、Vκ4-1*01、Vκ2-28*01、Vκ1D-13*d01、Vκ1-12*01、Vκ1D-12*02、Vκ3-20*01、Vκ1-17*01、Vκ1D-39*01、Vκ3-11*01、Vκ1D-16*01及びVκ1-9*d01からなる群から選択される1つ、複数又は全部のヒトVH遺伝子セグメントを含むか、又はからなる、前記条項のいずれかの細胞又は脊椎動物。
【0443】
8.前記軽鎖遺伝子座がJκ2*01と組み換えたVκ4-1*01、又はJκ4*01と組み換えたVκ2-28*01を含む、条項5の細胞又は脊椎動物。
【0444】
9.ゲノムがVH3-23*04、JH2*01(場合により、VH3-23*04と組み換えた)、Vκ4-1*01及びJκ2*01(場合により、Vκ4-1*01と組み換えた)を含む、前記条項のいずれかの細胞又は脊椎動物。
【0445】
10.ゲノムがVH3-7*01、JH6*02(場合により、VH3-7*01と組み換えた)、Vκ2-28*01及びJκ4*01(場合により、Vκ2-28*01と組み換えた)を含む、前記条項のいずれかの細胞又は脊椎動物。
【0446】
11.重鎖遺伝子座がTable 7(表7)からの1つ又は複数のさらなる重鎖遺伝子セグメントを更に含む、前記条項のいずれかの細胞又は脊椎動物。
【0447】
12.重鎖遺伝子座が、Table 1(表1)の遺伝子セグメントの全部、Table 2(表2)の遺伝子セグメントの全部、Table 3(表3)の遺伝子セグメントの全部、Table 4(表4)の遺伝子セグメントの全部、Table 5(表5)の遺伝子セグメントの全部、Table 6(表6)の遺伝子セグメントの全部又はTable 7(表7)の遺伝子セグメントの全部を含む、前記条項のいずれかの細胞又は脊椎動物。
【0448】
13.軽鎖遺伝子座がTable 12(表12)からの1つ又は複数のさらなる軽鎖セグメントを更に含む、前記条項のいずれかの細胞又は脊椎動物。
【0449】
14.軽鎖遺伝子座が、Table 8(表8)の遺伝子セグメントの全部、Table 9(表9)の遺伝子セグメントの全部、Table 10(表10)の遺伝子セグメントの全部、Table 11(表11)の遺伝子セグメントの全部又はTable 12(表12)の遺伝子セグメントの全部を含む、前記条項のいずれかの細胞又は脊椎動物。
【0450】
15.細胞がハイブリドーマ又はB細胞(例えば、不死化B細胞)である、前記条項のいずれかの細胞又は脊椎動物。
【0451】
16.マウスにより発現される免疫グロブリン重鎖が本質的には専らヒト可変領域を含む前記重鎖であり、ヒト可変領域を含む前記重鎖が血清IgG1、IgG2b及びIgM(及び場合によりIgG2a)抗体の一部として発現される、前記条項のいずれかの脊椎動物又は細胞。
【0452】
17.条項2〜16の脊椎動物を抗原で免疫化する工程及び抗体若しくは断片を回収する工程又は抗体若しくは断片を生成する細胞を回収する工程、場合により、生成される抗体又は断片がヒト定常領域を含むようにそれを改変する工程を含む、抗体又はその抗原結合断片を生成する方法。
【0453】
18.抗体又はその抗原結合断片を生成する方法であって、条項1及び3〜16のいずれか1つの細胞から抗体又はその抗原結合断片を単離する工程、並びに場合により、単離された抗体又は断片がヒト定常領域を含むようにそれを改変する工程を含む、前記方法。
【0454】
19.(a)抗原に結合する抗体をコードするB細胞を脊椎動物から単離する工程、
(b)抗体のVHドメインをコードするB細胞のヌクレオチド配列を同定若しくはコピーする工程及び/又は抗体のVLドメインをコードするB細胞のヌクレオチド配列を同定若しくはコピーする工程、並びに
(c)その配列を使用してVH及び/又はVLドメインを含む単離された抗体又は断片を生成する工程
を更に含み、場合により、単離された抗体又は断片がヒト定常領域を含む、条項17又は18の方法。
【0455】
20.抗体又は断片がCHO、HEK293、Cos又は酵母(例えば、ピチア)細胞から選択される宿主細胞からの発現により生成される、条項17〜19のいずれか1つの方法。
【0456】
21.抗体又は断片を希釈剤、担体、賦形剤又は薬物と共に製剤化して、ヒトにおける医学的使用のための医薬組成物を生成する工程を更に含み、場合により、滅菌容器、例えば、バイアル、チューブ、IVバッグ又は注射筒中に前記組成物をパッケージングする工程、更に場合により、パッケージを、ヒトにおける医学的使用のための抗体組成物の使用を指示するラベル又は説明書と組み合わせて含むキットを製造する工程を更に含み、場合により、ラベル又は説明書が医薬品バッチ番号及び/又は製造承認番号、更に場合により、EMA又はFDA製造承認番号を含む、条項17〜20のいずれか1つの方法。
【0457】
22.脊椎動物が条項2〜16のいずれか1つに記載のものであり、方法により生成される抗体又は断片が、
(a)ヒトJH2*01又はヒトJH6*02、1つ又は複数のヒトVH遺伝子セグメント及び1つ又は複数のヒトD遺伝子セグメントの組換え体であるヒト重鎖可変ドメイン;並びに
(b)ヒトJK2*01又はヒトJK4*01及び1つ又は複数のヒトVκ遺伝子セグメントの組換え体である、ヒト軽鎖可変ドメイン
を含む、条項17〜21のいずれか1つの方法。
【0458】
23.方法により生成される抗体又は断片が、VH3-23*04及びJH2*01のヒト重鎖可変ドメイン組換え体並びにVκ4-1*01及びJκ2*01のヒト軽鎖可変ドメイン組換え体を含む、条項22の方法。
【0459】
24.方法により生成される抗体又は断片が、VH3-7*01及びJH6*02のヒト重鎖可変ドメイン組換え体並びにVκ2-28*01及びJκ4*01のヒト軽鎖可変ドメイン組換え体を含む、条項22の方法。
【0460】
25.抗体又は断片の重鎖及び/又は軽鎖可変ドメインが1つ若しくは複数のマウス若しくはラット活性化誘導デアミナーゼ(AID)パターン体細胞突然変異及び/又はマウス若しくはラット末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)パターン接合突然変異を含む、条項17〜24のいずれか1つの方法により得られるか、又は得ることができる単離された抗体又はその抗原結合断片。
【0461】
26.場合により、ガンマ受容体、及び更に場合により、ヒト定常軽鎖に結合するヒト重鎖Fc断片を含む、条項17〜24のいずれか1つの方法により得られるか、若しくは得ることができる単離された抗体若しくはその抗原結合断片、又は条項25に記載の抗体。
【0462】
27.ヒトサイトカイン、増殖因子、ホルモン、酵素及び血清タンパク質から選択されるウイルス又は抗原に特異的に結合することができる抗原結合部位を含む、条項17〜24のいずれか1つの方法により得られるか、若しくは得ることができる単離された抗体若しくはその抗原結合断片、又は条項25若しくは条項26に記載の抗体。
【0463】
28.前記抗体又は断片がグリコシル化されており、場合により、CHO、HEK293、Cos又は酵母(例えば、ピチア)細胞グリコシル化を含む、条項17〜24のいずれか1つの方法により得られるか、若しくは得ることができる単離された抗体若しくはその抗原結合断片、又は条項25〜27のいずれか1つに記載の抗体。
【0464】
29.前記抗体の可変ドメインが、
(a)ヒト遺伝子セグメントJH2*01又はJH6*02及び1つ又は複数のヒトVH遺伝子セグメント及び1つ又は複数のヒトD遺伝子セグメント、並びに
(b)ヒト遺伝子セグメントJκ2*01又はJκ4*01及び1つ又は複数のヒトVκ遺伝子セグメント
によりコードされる、単離された抗体又はその抗原結合断片。
【0465】
30.可変ドメインがヒト遺伝子セグメント(i)VHドメインについてはJH2*01及びV3-23*04及び(ii)VLドメインについてはVκ4-1*01及びJκ2*01によりコードされる、条項29の抗体。
【0466】
31.可変ドメインがヒト遺伝子セグメント(i)VHドメインについてはJH6*02及びV3-7*01及び(ii)VLドメインについてはVκ2-28*01及びJκ4*01によりコードされる、条項29の抗体。
【0467】
32.抗体がヒト化される、条項25〜31のいずれか1つの単離された抗体又はその抗原結合断片。
【0468】
33.抗体又は断片が唯一の治療剤である、条項25〜32のいずれか1つの抗体又は断片を含む組成物。
【0469】
34.さらなる治療剤、例えば、抗高コレステロール血症薬を更に含む、条項25〜32のいずれか1つの抗体又は断片を含む組成物。
【0470】
35.ヒトにおける医学的使用のための条項17〜24のいずれか1つの方法により生成される単離された抗体若しくは断片又は条項25〜24のいずれか1つの単離された抗体若しくは断片。
【0471】
36.ヒトにおける医学的使用のための医薬品の製造における、条項17〜24のいずれか1つの方法により生成される単離された抗体若しくは断片又は条項25〜34のいずれか1つの単離された抗体若しくは断片の使用。
【0472】
37.医薬品が条項21に規定の組成物又はキットにより含まれる、条項36の使用。
【0473】
38.それを必要とするヒトへの有効量の条項25〜34に記載の単離された抗体又はその断片の送達を含む、医学的処置の方法。
【0474】
39.条項25〜34のいずれか1つに定義される抗体又は断片を発現する、宿主細胞、例えば、CHO、HEK293、Cos又は酵母(例えば、ピチア)細胞。
【0475】
上記条項において、JH6*02はJH6*01と置き換えてもよい。
【0476】
さらなる態様において、本発明は、以下の規定を含む。
【0477】
1.ゲノムが、内因性重鎖遺伝子座の定常領域の上流のヒトVH、D及びJH遺伝子セグメント並びに内因性軽鎖遺伝子座の定常領域の上流のヒトVL及びJL遺伝子セグメントを含む非ヒト脊椎動物(例えば、マウス又はラット)細胞であって、細胞がそれぞれヒトVH及びVLドメインを含む免疫グロブリン重鎖及び軽鎖を発現することができるように遺伝子セグメントがその定常領域に作動可能に連結され、重鎖遺伝子座がヒトD及びJH遺伝子セグメントと組み換わってVHドメインを生成することができるヒト01対立遺伝子VH遺伝子セグメントを含み、軽鎖遺伝子座がヒトJL遺伝子セグメントと組み換わってVLドメインを生成することができるヒト01対立遺伝子VL遺伝子セグメントを含むか、又は細胞が前記VH及びVLドメインを発現する脊椎動物に発生することができる、非ヒト脊椎動物細胞。
【0478】
2.ゲノムが、内因性重鎖遺伝子座の定常領域の上流のヒトVH、D及びJH遺伝子セグメント並びに内因性軽鎖遺伝子座の定常領域の上流のヒトVL及びJL遺伝子セグメントを含む非ヒト脊椎動物(例えば、マウス又はラット)であって、脊椎動物がそれぞれヒトVH及びVLドメインを含む免疫グロブリン重鎖及び軽鎖を発現することができるように遺伝子セグメントがその定常領域に作動可能に連結され、重鎖遺伝子座がヒトD及びJH遺伝子セグメントと組み換わってVHドメインを生成することができるヒト01対立遺伝子VH遺伝子セグメントを含み、軽鎖遺伝子座がヒトJL遺伝子セグメントと組み換わってVLドメインを生成することができるヒト01対立遺伝子VL遺伝子セグメントを含む、非ヒト脊椎動物。
【0479】
3.一方又は両方の01対立遺伝子がd01対立遺伝子である、規定1の細胞又は規定2の脊椎動物。
【0480】
4.VH及びVLドメインが抗原結合部位を形成する、前記規定のいずれかの細胞又は脊椎動物。
【0481】
5.重鎖遺伝子座が前記VH遺伝子セグメントの第2のヒト対立遺伝子を含まない、前記規定のいずれかの細胞又は脊椎動物。
【0482】
6.軽鎖遺伝子座が前記VL遺伝子セグメントの第2のヒト対立遺伝子を含まない、前記規定のいずれかの細胞又は脊椎動物。
【0483】
7.重鎖遺伝子座がヒトJH遺伝子セグメント及び前記ヒトVHセグメントと組み換わって前記VHドメインを生成することができるヒト01対立遺伝子D遺伝子セグメントを含み、場合により、重鎖遺伝子座が前記D遺伝子セグメントの第2のヒト対立遺伝子を含まない、前記規定のいずれかの細胞又は脊椎動物。
【0484】
8.重鎖遺伝子座がヒトD遺伝子セグメント及び前記ヒトVHセグメントと組み換わって前記VHドメインを生成することができるヒト02対立遺伝子JH遺伝子セグメント(例えば、JH6*02)を含み、場合により、重鎖遺伝子座が前記JH遺伝子セグメントの第2のヒト対立遺伝子を含まない、前記規定のいずれかの細胞又は脊椎動物。
【0485】
9.軽鎖遺伝子座が前記ヒトVLセグメントと組み換わって前記VLドメインを生成することができるヒト01対立遺伝子JL遺伝子セグメントを含み、場合により、軽鎖遺伝子座が前記JL遺伝子セグメントの第2のヒト対立遺伝子を含まない、前記規定のいずれかの細胞又は脊椎動物。
【0486】
10.ゲノムがVH3-23*04、JH2*01 (場合により、VH3-23*04と組み換えた)、Vκ4-1*01及びJκ2*01(場合により、Vκ4-1*01と組み換えた)を含む、前記規定のいずれかの細胞又は脊椎動物。
【0487】
11.ゲノムがVH3-7*01、JH6*02 (場合により、VH3-7*01と組み換えた)、Vκ2-28*01及びJκ4*01 (場合により、Vκ2-28*01と組み換えた)を含む、前記規定のいずれかの細胞又は脊椎動物。
【0488】
12.前記軽鎖遺伝子座がVκ4-1*01、Vκ2-28*01、Vκ1D-13*d01、Vκ1-12*01、Vκ1D-12*02、Vκ3-20*01、Vκ1-17*01、Vκ1D-39*01、Vκ3-11*01、Vκ1D-16*01及びVκ1-9*d01からなる群から選択される1つ、複数又は全部のヒトVL遺伝子セグメントを含むか、又はからなる、前記規定のいずれかの細胞又は脊椎動物。
【0489】
13.前記軽鎖遺伝子座がJκ4*01及びJκ2*01からなる群から選択される1つ、複数又は全部のVL遺伝子セグメントを含むか、又はからなる、規定1〜9のいずれか1つの細胞又は脊椎動物。
【0490】
14.前記重鎖遺伝子座がVH3-23*04、VH7-4-1*01、VH4-4*02、VH1-3*01、VH3-13*01、VH3-7*01及びVH3-20*d01からなる群から選択される1つ、複数又は全部のヒトVH遺伝子セグメントを含むか、又はからなる、前記規定のいずれかの細胞又は脊椎動物。
【0491】
15.軽鎖遺伝子座がJλ2*01を含む、規定1〜9又は14のいずれか1つの細胞又は脊椎動物。
【0492】
16.前記VHドメインがヒトVH、D及びJHセグメントの組換え体であり、VHがTable 7(表7)の1つ、複数若しくは全部の01対立遺伝子VH遺伝子セグメントからなる群から選択され、並びに/又はVLドメインが(i)ヒトVκ及びJκ遺伝子セグメントの組換え体であり、VκがTable 12(表12)の1つ、複数若しくは全部の01対立遺伝子Vκ遺伝子セグメントからなる群から選択されるか、又は(ii)ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントの組換え体であり、VλがTable 18(表18)の1つ、複数若しくは全部の01対立遺伝子Vλ遺伝子セグメントからなる群から選択され、場合により、VH及び/又はVLドメインがIgG抗体として発現される、規定1〜6のいずれか1つの細胞又は脊椎動物。
【0493】
17.前記VHドメインがTable 1(表1)、Table 2(表2)、Table 3(表3)、Table 4(表4)、Table 5(表5)、Table 6(表6)若しくはTable 7(表7)のヒトVH、D及びJHセグメントの組換え体であり、並びに/又はVLドメインが(i)Table 8(表8)、Table 9(表9)、Table 10(表10)、Table 11(表11)若しくはTable 12(表12)のヒトVκ及びJκ遺伝子セグメント、若しくは(ii)Table 13(表13)、Table 14(表14)、Table 15(表15)、Table 16(表16)、Table 17(表17)若しくはTable 18(表18)のヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントの組換え体である、規定1〜6及び16のいずれか1つの細胞又は脊椎動物。
【0494】
18.(a)重鎖遺伝子座がTable 1(表1)、Table 2(表2)、Table 3(表3)、Table 4(表4)、Table 5(表5)、Table 6(表6)及びTable 7(表7)から選択される表のヒトVH、D及びJHセグメントを含む、並びに/又は(b)軽鎖遺伝子座が(i)Table 8(表8)、Table 9(表9)、Table 10(表10)、Table 11(表11)及びTable 12(表12)から選択される表のヒトVκ及びJκ遺伝子セグメント、若しくは(ii)Table 13(表13)、Table 14(表14)、Table 15(表15)、Table 16(表16)、Table 17(表17)及びTable 18(表18)から選択される表のヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントを含み、脊椎動物がそれぞれ(a)の選択された表に由来するヒトVH、D及びJHセグメントの組換え体である1つ若しくは複数のVHドメインを発現する、並びに/又はそれぞれ(b)の選択された表に由来するヒトVL及びJLセグメントの組換え体である1つ若しくは複数のVLドメインを発現し、場合により、そのようなVHドメイン及びVLドメインが抗原結合部位を形成する、規定2〜17のいずれか1つの脊椎動物。
【0495】
19.ゲノムが、内因性重鎖遺伝子座の定常領域の上流のヒトVH、D及びJH遺伝子セグメント並びに内因性軽鎖遺伝子座の定常領域の上流のヒトVL及びJL遺伝子セグメントを含む非ヒト脊椎動物(例えば、マウス又はラット)であって、脊椎動物がそれぞれヒトVH及びVLドメインを含む免疫グロブリン重鎖及び軽鎖を発現することができるように遺伝子セグメントがその定常領域に作動可能に連結され、(a)重鎖遺伝子座がTable 1(表1)、Table 2(表2)、Table 3(表3)、Table 4(表4)、Table 5(表5)、Table 6(表6)及びTable 7(表7)から選択される表のヒトVH、D及びJHセグメントを含む、並びに/又は(b)軽鎖遺伝子座が(i)Table 8(表8)、Table 9(表9)、Table 10(表10)、Table 11(表11)及びTable 12(表12)から選択される表のヒトVκ及びJκ遺伝子セグメント、若しくは(ii)Table 13(表13)、Table 14(表14)、Table 15(表15)、Table 16(表16)、Table 17(表17)及びTable 18(表18)から選択される表のヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントを含み、脊椎動物がそれぞれ(a)の選択された表に由来するヒトVH、D及びJHセグメントの組換え体である1つ若しくは複数のVHドメインを発現する、並びに/又はそれぞれ(b)の選択された表に由来するヒトVL及びJLセグメントの組換え体である1つ若しくは複数のVLドメインを発現し、場合により、そのようなVHドメイン及びVLドメインが抗原結合部位を形成する、非ヒト脊椎動物。
【0496】
20.前記細胞がES細胞、ハイブリドーマ細胞又は不死化B細胞である、前記規定のいずれかの細胞。
【0497】
21.前記脊椎動物が空気フィルターを有する溶液内に含まれる、前記規定のいずれかの脊椎動物。
【0498】
22.前記細胞が規定1〜17、19又は20のいずれか1つに記載のものである、少なくとも90個の細胞の集団。
【0499】
23.前記軽鎖遺伝子座定常領域がカッパ又はラムダ定常領域、場合により、マウス又はラット定常領域である、前記規定のいずれかの細胞、脊椎動物又は集団。
【0500】
24.重鎖遺伝子座がマウス又はラット定常領域(例えば、ガンマ定常遺伝子セグメントを含む)である、前記規定のいずれかの細胞、脊椎動物又は集団。
【0501】
25.前記内因性軽鎖遺伝子座がカッパ又はラムダ遺伝子座であり、場合により、ゲノムが内因性軽鎖遺伝子座にTable 8(表8)の少なくともV及びJ遺伝子セグメント並びに/又は内因性軽鎖遺伝子座にTable 13(表13)の少なくともV及びJ遺伝子セグメントを含む、前記規定のいずれかの細胞、脊椎動物又は集団。
【0502】
26.前記軽鎖がTable 18(表18)のVλ及びJλ遺伝子セグメントからなる群から選択されるヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントの組換えから誘導されるヒト可変領域を含む免疫グロブリン軽鎖を含み、場合により、それぞれのそのような可変領域がTable 18(表18)のCλ遺伝子セグメントからなる群から選択されるCλ遺伝子セグメントによりコードされる定常領域と共に発現される、規定1〜9又は14〜23のいずれか1つの細胞、脊椎動物又は集団。
【0503】
27.脊椎動物がマウスC57Bl/6J、129S5若しくは129Sv系統であるか、又はC57Bl/6Jと129S5若しくは129Sv系統の間の交雑種である、前記規定のいずれかの細胞、脊椎動物又は集団。
【0504】
28.細胞又は脊椎動物により発現される免疫グロブリン重鎖が本質的には専らヒト可変領域を含む前記重鎖であり、ヒト可変領域を含む前記重鎖が血清IgG1、IgG2b及びIgM(及び場合によりIgG2a)抗体の一部として発現される、前記規定のいずれかの細胞、脊椎動物又は集団。
【0505】
29.脊椎動物がヒトラムダ可変領域を含む軽鎖を発現し、そのような軽鎖の可変領域の少なくとも60%、70%又は80%がヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントの組換えから誘導される、前記規定のいずれかの細胞、脊椎動物又は集団。
【0506】
30.ゲノムが、1つ又は複数の内因性Ig遺伝子座へのヒトIg遺伝子セグメントの標的挿入により生成されるIg遺伝子セグメントレパートリーを含み、ゲノムが定常領域の上流のヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントを含む非ヒト脊椎動物(例えば、マウス若しくはラット)又は細胞であって、ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントが脊椎動物又は細胞の内因性軽鎖遺伝子座への挿入により提供されたものであり、脊椎動物がラムダ可変領域を含む免疫グロブリン軽鎖(ラムダ軽鎖)を含むか、又は細胞が前記免疫グロブリン軽鎖を発現する脊椎動物に発生することができ、ラムダ軽鎖がヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントの組換えから誘導されるラムダ可変領域を含む免疫グロブリン軽鎖を含み、脊椎動物により発現されるラムダ軽鎖の可変領域の少なくとも80%がヒトVλ及びJλ遺伝子セグメント組換え体であり、脊椎動物又は細胞が規定1〜9又は14〜29のいずれか1つに記載のものである、非ヒト脊椎動物又は細胞。
【0507】
31.ゲノムが、1つ又は複数の内因性Ig遺伝子座へのヒトIg遺伝子セグメントの標的挿入により生成されるIg遺伝子セグメントレパートリーを含み、ゲノムが定常領域の上流のヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントを含む非ヒト脊椎動物(例えば、マウス若しくはラット)又は細胞であって、ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントがTable 18(表18)のセグメントの1つ、複数又は全部から選択され、脊椎動物又は細胞の内因性軽鎖遺伝子座への挿入により提供されたものであり、脊椎動物がラムダ可変領域を含む免疫グロブリン軽鎖(ラムダ軽鎖)を含むか、又は細胞が前記免疫グロブリン軽鎖を発現する脊椎動物に発生することができ、ラムダ軽鎖が1つ又は複数のヒトVλ及びJλ遺伝子セグメント対のラムダ可変領域組換え体を含む免疫グロブリン軽鎖を含み、各遺伝子セグメントがTable 18(表18)のヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントから選択される、非ヒト脊椎動物又は細胞。
【0508】
32.規定2〜19、21又は23〜31のいずれか1つの脊椎動物を抗原で免疫化する工程及び抗体若しくは断片を回収する工程又は抗体若しくは断片を生成する細胞を回収する工程、場合により、生成される抗体又は断片がヒト定常領域を含むようにそれを改変する工程を含む、抗体又はその抗原結合断片を生成する方法。
【0509】
33.抗体又はその抗原結合断片を生成する方法であって、規定1、3〜17、19及び23〜31のいずれか1つに記載の細胞から抗体又はその抗原結合断片を単離する工程、並びに場合により、単離された抗体又は断片がヒト定常領域を含むようにそれを改変する工程を含む、方法。
【0510】
34.(a)抗原に結合する抗体をコードするB細胞を脊椎動物から単離する工程、
(b)抗体のVHドメインをコードするB細胞のヌクレオチド配列を同定若しくはコピーする工程及び/又は抗体のVLドメインをコードするB細胞のヌクレオチド配列を同定若しくはコピーする工程、並びに
(c)その配列を使用してVH及び/又はVLドメインを含む単離された抗体又は断片を生成する工程
を更に含み、場合により、単離された抗体又は断片がヒト定常領域を含む、規定33の方法。
【0511】
35.抗体又は断片がCHO、HEK293、Cos又は酵母(例えば、ピチア)細胞から選択される宿主細胞からの発現により生成される、規定32〜34のいずれか1つの方法。
【0512】
36.抗体又は断片を希釈剤、担体、賦形剤又は薬物と共に製剤化して、ヒトにおける医学的使用のための医薬組成物を生成する工程を更に含み、場合により、滅菌容器、例えば、バイアル、チューブ、IVバッグ又は注射筒中に前記組成物をパッケージングする工程、更に場合により、パッケージを、ヒトにおける医学的使用のための抗体組成物の使用を指示するラベル又は説明書と組み合わせて含むキットを製造する工程を更に含み、場合により、ラベル又は説明書が医薬品バッチ番号及び/又は製造承認番号、更に場合により、EMA又はFDA製造承認番号を含む、規定32〜35のいずれか1つの方法。
【0513】
37.脊椎動物が前記規定のいずれかに記載のものであり、前記方法により生成される抗体又は断片が、
(a)Table 7(表7)のVH、D及びJH遺伝子セグメントからなる群から選択されるヒトVH、D及びJH遺伝子セグメントのヒト重鎖可変ドメイン組換え体;並びに
(b)Table 12(表12)のV及びJ遺伝子セグメントから選択されるか、又はTable 18(表18)のV及びJ遺伝子セグメントから選択されるヒトV及びJ遺伝子セグメントのヒト軽鎖可変ドメイン組換え体
を含む、規定32〜35のいずれか1つの方法。
【0514】
38.抗体又は断片の重鎖及び/又は軽鎖可変ドメインが1つ若しくは複数のマウス若しくはラット活性化誘導デアミナーゼ(AID)パターン体細胞突然変異及び/又はマウス若しくはラット末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)パターン接合突然変異を含む、規定32〜35のいずれか1つの方法により得られるか、又は得ることができる単離された抗体又はその抗原結合断片。
【0515】
39.場合により、ガンマ受容体、及び更に場合により、ヒト定常軽鎖に結合するヒト重鎖Fc断片を含む、規定32〜35の方法により得られるか、若しくは得ることができる単離された抗体若しくはその抗原結合断片、又は規定38に記載の抗体。
【0516】
40.ヒトサイトカイン、増殖因子、ホルモン、酵素及び血清タンパク質から選択されるウイルス又は抗原に特異的に結合することができる抗原結合部位を含む、規定32〜35のいずれか1つの方法により得られるか、若しくは得ることができる単離された抗体若しくはその抗原結合断片、又は規定38若しくは規定39に記載の抗体。
【0517】
41.前記抗体又は断片がグリコシル化されており、場合により、CHO、HEK293、Cos又は酵母(例えば、ピチア)細胞グリコシル化を含む、規定32〜35のいずれか1つの方法により得られるか、若しくは得ることができる単離された抗体若しくはその抗原結合断片、又は規定38〜40のいずれか1つに記載の抗体。
【0518】
42.前記抗体の可変ドメインが、(i)Table 7(表7)の任意の遺伝子セグメントからなる群から選択されるヒトVH、D及びJHセグメント並びに/又は(i)Table 12(表12)の任意のVκ及びJκ遺伝子セグメントからなる群から選択されるヒトVκ及びJκ遺伝子セグメント又は(ii)Table 18(表18)の任意のVλ及びJλ遺伝子セグメントからなる群から選択されるヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントによりコードされる、単離された抗体又はその抗原結合断片。
【0519】
43.抗体又は断片が、ヒトサイトカイン、増殖因子、ホルモン、酵素及び血清タンパク質から選択されるウイルス又は抗原に特異的に結合する、規定38〜42のいずれか1つの単離された抗体又はその抗原結合断片。
【0520】
44.抗体がヒト化されている、規定38〜43のいずれか1つの単離された抗体又はその抗原結合断片。
【0521】
45.抗体又は断片が唯一の治療剤である、規定38〜44のいずれか1つの抗体又は断片を含む組成物。
【0522】
46.さらなる治療剤、例えば、疾患改変抗リウマチ薬等の抗リウマチ薬、又は抗がん薬又は抗高コレステロール血症薬を更に含む、規定38〜44のいずれか1つの抗体又は断片を含む組成物。
【0523】
47.ヒトにおける医学的使用のための規定32〜35のいずれか1つの方法により生成される単離された抗体若しくは断片又は規定38〜46のいずれか1つの単離された抗体若しくは断片。
【0524】
48.ヒトにおける医学的使用のための医薬品の製造における、規定32〜35のいずれか1つの方法により生成される単離された抗体若しくは断片又は規定38〜46の単離された抗体若しくは断片の使用。
【0525】
49.医薬品が規定36に規定の組成物又はキットにより含まれる、規定48の使用。
【0526】
50.それを必要とするヒトへの有効量の規定38〜46に記載の単離された抗体又はその断片の送達を含む、医学的処置の方法。
【0527】
51.規定38〜43のいずれか1つに定義される抗体又は断片を発現する、宿主細胞、例えば、CHO、HEK293、Cos又は酵母(例えば、ピチア)細胞。
【0528】
上記の規定において、JH6*02はJH6*01と置き換えてもよい。
【0529】
以下の定義は、本発明の任意の形態、態様、条項、規定、例又は実施形態に適用される。
【0530】
「に由来する(derived from)」は、その用語の普通の意味で使用される。例示的な同義語には、「として産生される(produced as)」、「に起因する(resulting from)」、「から受けられる(received from)」、「から得られる(obtained from)」、「の産物(a product of)」、「の結果(consequence of)」、及び「から改変される(modified from)」が挙げられる。例えば、重鎖のヒト可変領域は、ヒトVH、D及びJH遺伝子セグメントの組換えに由来することができ、これは、例えば、任意の付随の突然変異(例えば、接合部突然変異)を有する、本発明によるトランスジェニック重鎖遺伝子座において、これらの遺伝子セグメントのインビボ組換えを反映している。
【0531】
B細胞を得ることができる試料には、血液、血清、脾臓、脾臓組織、骨髄、リンパ、リンパ節、胸腺及び虫垂が挙げられるが、それらに限定されない。
【0532】
抗体及び免疫グロブリン鎖は、前に言及された試料のそれぞれから、及びまた次の非限定的リスト、B細胞、腹水、ハイブリドーマ及び細胞培養物から得ることができる。
【0533】
「複数」は、その用語の普通の意味で用いられ、「少なくとも1つ」又は「1つより多い」ことを意味する。
【0534】
用語「生殖系列配置」は、生殖系列ゲノム配置を指す。例えば、トランスジェニック免疫グロブリン遺伝子座のヒト免疫グロブリン遺伝子セグメントは、遺伝子セグメントの相対的順序が、ヒト生殖系列ゲノムにおける対応する遺伝子セグメントの順序と同じである場合の生殖系列配置にある。例えば、トランスジェニック遺伝子座が、仮説上のヒト免疫グロブリン遺伝子セグメントA、B及びCを含む本発明の重鎖遺伝子座である場合、これらは、ヒト生殖系列ゲノムの対応する遺伝子セグメントが構成5'-A-B-C-3'を含む場合、(遺伝子座において5'から3'へ)この順序で提供されるだろう。例において、ヒト免疫グロブリンのエレメント(例えば、遺伝子セグメント、エンハンサー又は他の制御エレメント)は、本発明によるトランスジェニック免疫グロブリン遺伝子座において供給される場合、その遺伝子セグメントの相対的順序が、ヒト生殖系列ゲノムにおける対応する遺伝子セグメントの順序と同じであり、かつエレメント間のヒト配列が含まれ、これらが、ヒト生殖系列ゲノムにおける対応するエレメント間のそのような配列に対応する場合、ヒトIg遺伝子座エレメントは生殖系列配置にある。したがって、仮説例において、トランスジェニック遺伝子座は、構成5'-A-S1-B-S2-C-S3-3'でヒトエレメントを含み、式中、A、B及びCはヒト免疫グロブリン遺伝子セグメントであり、S1〜S3はヒト遺伝子セグメント間配列であり、対応する構成5'-A-S1-B-S2-C-S3-3'がヒト生殖系列ゲノムに存在する。例えば、これは、本発明のトランスジェニック遺伝子座において、ヒト生殖系列ゲノムにおけるAからCまでのDNA配列に対応するDNA挿入断片(又はAからCまでのDNA配列を含む挿入断片)を供給することにより達成することができる。ヒト生殖系列ゲノム及び免疫グロブリン遺伝子座における構成は、当技術分野において知られている(例えば、World Wide WebにおけるIMGT(上記参照)、Kabat、及び本明細書に参照された他の抗体供給源を参照)。
【0535】
用語「抗体」は、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する完全長抗体を含む)、ポリエピトープ特異性をもつ抗体組成物、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体、ダイアボディ)、及び一本鎖分子、加えて抗体断片(例えば、dAb、Fab、F(ab')2及びFv)を含む。用語「抗体」はまた、重鎖(5'-VH-(任意のヒンジ)-CH2-CH3-3')の二量体を含み、かつ軽鎖を欠くH2抗体(天然のH2抗体に類似;例えば、Nature. 1993年6月3日;363(6428):446〜8; Naturally occurring antibodies devoid of light chains; Hamers-Casterman C、Atarhouch T、Muyldermans S、Robinson G、Hamers C、Songa EB、Bendahman N、Hamers R参照)を含む。したがって、本発明の実施形態において、トランスジェニック重鎖遺伝子座から生じたRNAは、CH1遺伝子セグメントを欠き、かつ機能的抗体軽鎖を含まない重鎖をコードする。例において、トランスジェニック重鎖遺伝子座から生じたRNAは、VH単一可変ドメインをコードする(dAb;ドメイン抗体)。これらは場合により、定常領域を含む。
【0536】
用語「免疫グロブリン」(Ig)は、本明細書において「抗体」と交換可能使用される。
【0537】
「単離された」抗体は、それの産生環境(例えば、天然で又は組換え的に)の成分から同定、分離及び/又は回収されているものである。好ましくは、単離されたポリペプチドは、それの産生環境由来の全ての他の成分との会合を含まず、例えば、その結果、その抗体は、FDA承認できる、又は承認された標準へ単離されている。組換えトランスフェクション化細胞に起因するもの等のそれの産生環境の混入成分は、典型的には、その抗体の研究、診断又は治療の使用に干渉する材料であり、それらには、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性若しくは非タンパク質性溶質を挙げることができる。好ましい実施形態において、そのポリペプチドは、(1)例えば、ローリー法により決定される場合、抗体の95重量%より高くまで、いくつかの実施形態においては、99重量%より高くまで;(2)回転カップシークエネーターの使用により、N末端又は内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに十分な程度まで、又は(3)クーマシーブルー、若しくは好ましくは銀染色を使用する非還元条件若しくは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性まで、精製されるだろう。単離された抗体には、その抗体の天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないゆえに、組換え細胞内のインサイチュの抗体が挙げられる。しかしながら、普通、単離されたポリペプチド又は抗体は、少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0538】
「抗体断片」は、無傷抗体の一部、好ましくは、無傷抗体の抗原結合領域及び/又は可変領域を含む。抗体断片の例には、dAb、Fab、Fab'、F(ab')2及びFv断片;ダイアボディ;線状抗体;抗体断片から形成される一本鎖抗体分子及び多特異性抗体が挙げられる。
【0539】
特定のポリペプチド、抗原又はエピトープ「に特異的に結合する」又は「に特異的」である抗体は、他のポリペプチド、抗原又はエピトープに実質的に結合することなく、その特定のポリペプチド、抗原又はエピトープに結合するものである。例えば、抗原又はエピトープへの結合は、その抗体が100μM以下、10μM以下、1μM以下、100nM以下、例えば、10nM以下、1nM以下、500pM以下、100pM以下又は10pM以下のKDで結合する場合、特異的である。結合親和性(KD)は、当業者によって知られているような標準手順、例えば、ELISAにおける結合及び/又は表面プラズモン共鳴法を使用する親和性決定[例えば、fM親和性に至るまで検出することができるBiacore(商標)又はKinExA(商標)溶液相親和性測定(Sapidyne Instruments、Idaho)]を使用して決定することができる。
【0540】
「薬学的に許容される」は、USA連邦政府若しくは州政府の規制機関によって承認された、若しくは承認できるということ、又はヒトを含む動物用の、U.S.薬局方若しくは他の一般的に認められた薬局方に列挙されているということを指す。「薬学的に許容される担体、賦形剤又はアジュバント」は、作用物質、例えば、本明細書に記載された任意の抗体又は抗体鎖と共に対象に投与することができ、かつその薬理学的活性を破壊せず、その作用物質の治療的量を送達するのに十分な用量で投与される場合、無毒である、担体、賦形剤又はアジュバントを指す。
【図面の簡単な説明】
【0541】
図1】パート1は、マウス内在性軽鎖遺伝子座内への挿入に使用した第1及び第2のBACを例示する図である。それぞれのBAC中のヒトDNAを示す。図1のパート2は、マウス内在性カッパ鎖遺伝子座内へのヒトラムダIg遺伝子座DNAの挿入点を示す図である。図1のパート3は、マウス内在性ラムダ鎖遺伝子座内へのヒトラムダIg遺伝子座DNAの挿入点を示す図である。
図2】野生型マウス(WT)と比較した、P1ホモ接合性マウス(P1/P1)からのB220+脾臓B細胞におけるマウス及びヒトのCλの発現(したがって、対応してマウス及びヒトの可変領域の発現)を決定するためのFACS解析の結果を示す図である。
図3A】野生型マウス(WT)と比較した、P2ホモ接合性マウス(P2/P2)からのB220+脾臓B細胞におけるマウスのCκ及びCλの発現を決定するためのFACS解析の結果を示す図である。検出可能なマウスCκ発現は見られなかった。
図3B】野生型マウス(WT)と比較した、P2ホモ接合性マウス(P2/P2)からのB220+脾臓B細胞におけるヒトCλの発現(したがって、対応してヒト可変領域の発現)を決定するためのFACS解析の結果を示す図である。
図4】P2ホモ接合性マウス(P2/P2)におけるヒトVλの使用量及びヒトにおける典型的なVλの使用量(挿入図)を示す図である。
図5】P2ホモ接合性マウス(P2/P2)におけるヒトJλの使用量及びヒトにおける典型的なJλの使用量(挿入図)を示す図である。
図6】Vλの使用量がP2ホモ接合性マウス(P2/P2)において非常に高いことを示す図である。
図7】P2ホモ接合性マウス(P2/P2)におけるキメラカッパ遺伝子座からのマウスVκ及びヒトVλ遺伝子セグメントの使用量の分布を示す図である。
図8】ラムダ遺伝子座及びカッパ遺伝子座中でのRSS配置を例示する図である。
図9A】ヒトラムダDNAが挿入されておらず、かつ内在性カッパ鎖の発現が不活性化されているマウス(KA/KA)と比較した、内在性カッパ鎖の発現が不活性化されているL2ホモ接合性マウスからのB220+脾臓B細胞におけるマウス及びヒトのCλの発現(したがって、対応してマウス及びヒトの可変領域の発現)(L2/L2、KA/KA)を決定するためのFACS解析の結果を示す図である。マウスVλの使用が排除されるぎりぎりまでの、非常に高いヒトVλの使用量がL2/L2、KA/KAマウスで見られた。
図9B】脾臓B細胞区画の解析の図である。この図は、マウス抗体のみを発現するマウス(KA/KAマウス)からの脾臓B細胞と比較した、トランスジェニックL2/L2、KA/KAマウス(L2ホモ接合体、ヒトラムダ遺伝子セグメントの内在性ラムダ遺伝子座内への挿入についてホモ接合性、内在性カッパ鎖の発現は不活性化されている)からの脾臓B細胞に対するFACS解析の結果を示す。結果は、本発明のマウス中の脾臓B細胞区画が正常である(すなわち、マウス抗体鎖のみを発現するマウスの区画と等価である)ことを示している。
図10】B細胞の発生並びに骨髄及び脾臓区画中のマーカーの図である。
図11A】脾臓B細胞区画の解析の図である。この図は、マウス抗体のみを発現するマウスからの脾臓B細胞と比較した、全てヒトである重鎖可変領域(ただし内在性重鎖の発現が反転によって不活性化されている)を発現する本発明のトランスジェニックS1F/HA、KA/+マウスからの脾臓B細胞に対するFACS解析の結果を示す。結果は、本発明のマウス中の脾臓B細胞区画が正常である(すなわち、マウス抗体鎖のみを発現するマウスの区画と等価である)ことを示している。 S1F/HA、+/KA=(i)S1F-第1の内在性重鎖対立遺伝子が1つのヒト重鎖遺伝子座DNAの挿入を有しており、内在性マウスVDJ領域が反転及び染色体上での上流への移動によって不活性化されている、(ii)HA-第2の内在性重鎖対立遺伝子が不活性化されている(内在性妨害配列の挿入による)、(iii)+-第1の内在性カッパ対立遺伝子が野生型カッパ対立遺伝子である、及び(iv)KA-第2の内在性カッパ対立遺伝子が不活性化されている(内在性妨害配列の挿入による)。この配置は、第1の内在性重鎖対立遺伝子からの重鎖を排他的にコードしている。
図11B】脾臓B細胞区画の解析の図である。この図は、+/HA、K2/KAマウスからの脾臓B細胞と比較した、全てヒトである重鎖可変領域(ただし内在性重鎖の発現が反転によって不活性化されている)及びヒトカッパ鎖可変領域を発現する本発明のトランスジェニックS1F/HA、K2/KAマウスからの脾臓B細胞に対するFACS解析の結果を示す。結果は、本発明のマウス中の脾臓B細胞区画が正常であることを示している。 S1F/HA、K2/KA=(i)K2-第1の内在性カッパ対立遺伝子が最も3'側の内在性JκとマウスCκとの間に2つのカッパ鎖遺伝子座DNAの挿入を有しており、14個のヒトVκ及びJκ1〜Jκ5の挿入を提供する、並びに(ii)KA-第2の内在性カッパ対立遺伝子が不活性化されている(内在性妨害配列の挿入による)。この配置は、第1の内在性カッパ対立遺伝子からの、ヒト可変領域を含む重鎖及び実質的にカッパ軽鎖を排他的にコードしている。 +/HA、K2/KA-この配置は、マウス重鎖及びヒトカッパ鎖をコードしている。
図12A】骨髄B前駆体区画の解析の図である。この図は、マウス抗体のみを発現するマウスからのBM B細胞と比較した、全てヒトである重鎖可変領域(ただし内在性重鎖の発現が反転によって不活性化されている)を発現する本発明のトランスジェニックS1F/HA、KA/+マウスからの骨髄(BM)B細胞に対するFACS解析の結果を示す。結果は、本発明のマウス中のBM B細胞区画が正常である(すなわち、マウス抗体鎖のみを発現するマウスの区画と等価である)ことを示している。
図12B】骨髄B前駆体区画の解析の図である。この図は、+/HA、K2/KAマウスからのBM B細胞と比較した、全てヒトである重鎖可変領域(ただし内在性重鎖の発現が反転によって不活性化されている)及びヒトカッパ鎖可変領域を発現する本発明のトランスジェニックS1F/HA、K2/KAマウスからの骨髄(BM)B細胞に対するFACS解析の結果を示す。結果は、本発明のマウス中のBM B細胞区画が正常であることを示している。
図13】様々なマウスにおけるIgサブタイプの定量及び全Igを示す図である。S1F/HA、KA/+=(i)S1F-第1の内在性重鎖対立遺伝子が1つのヒト重鎖遺伝子座DNAの挿入を有しており、内在性マウスVDJ領域が反転及び染色体上での上流への移動によって不活性化されている、(ii)HA-第2の内在性重鎖対立遺伝子が不活性化されている(内在性妨害配列の挿入による)、(iii)KA-第1の内在性カッパ対立遺伝子が不活性化されている(内在性妨害配列の挿入による)、並びに(iv)+-第2の内在性カッパ対立遺伝子が野生型カッパ対立遺伝子である。この配置は、第1の内在性重鎖対立遺伝子からの重鎖を排他的にコードしている。 S1F/HA、K2/KA=(i)K2-第1の内在性カッパ対立遺伝子が最も3'側の内在性JκとマウスCκとの間に2つのカッパ鎖遺伝子座DNAの挿入を有しており、14個のヒトVκ及びJκ1〜Jκ5の挿入を提供する、並びに(ii)KA-第2の内在性カッパ対立遺伝子が不活性化されている(内在性妨害配列の挿入による)。この配置は、第1の内在性カッパ対立遺伝子からの、ヒト可変領域を含む重鎖及び実質的にカッパ軽鎖を排他的にコードしている。 +/HA、K2/+-この配置は、マウス重鎖並びにマウス及びヒトの両方のカッパ鎖をコードしている。 +/HA、+/KA-この配置は、マウスの重鎖及びカッパ鎖をコードしている。この図中、「Igの合計」とはIgG及びIgMアイソタイプの合計である。
図14】様々なマウスにおけるIgサブタイプの定量及び全Igを示す図である。 S1F/HA、K2/KA(n=15匹)及びマウス抗体鎖のみを発現する12匹のマウス[+/HA、+/KA(n=6匹)及び野生型マウス(WT、n=6匹)]。
【発明を実施するための形態】
【0542】
本明細書に記載する特定の実施形態は、例証の目的で示すのであって、本発明を制限するものではないことが理解されるであろう。本発明の主要な特徴を、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の実施形態において利用することができる。当業者であれば、本明細書に記載する特定の手順に対する多数の均等物を認識するか、又はそれらを日常的な研究を使用するだけで究明することができるであろう。そのような均等物は、本発明の範囲に属するとみなされ、特許請求の範囲により網羅される。本明細書で言及する刊行物及び特許出願は全て、本発明が関係する当業者の技能のレベルを示す。刊行物及び特許出願は全て、それぞれ個々の刊行物又は特許出願が、参照により組み込まれていることを具体的かつ個々に示すのと同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれている。
【0543】
単語「ある(a)」又は「ある(an)」の使用は、用語「含む(comprising)」と併せて使用する場合、特許請求の範囲及び/又は本明細書においては、「1つ(one)」を意味することができるが、またこれは、「1つ又は複数の」、「少なくとも1つの」及び「1つ又は2つ以上」の意味とも一致する。特許請求の範囲における用語「又は(or)」の使用は、選択肢のみを指すか又は選択肢が相いれないことが明確に示されない限り、「及び/また(and/or)」を意味するために使用するが、本開示は、選択肢のみ及び「及び/又は」を指す定義を支持する。本出願全体を通して、用語「約(about)」は、値が、装置、値を決定するために利用した方法について内在する誤差の変動、又は研究対象の間に存在する変動を含むことを示すために使用する。
【0544】
本明細書及び請求項において使用する場合、単語「含む(comprising)」(及びcomprisingの任意の形態、例として、「comprise」及び「comprises」)、「有する(having)」(及びhavingの任意の形態、例として、「have」及び「has」)、「含む(including)」(及びincludingの任意の形態、例として、「includes」及び「include」)、又は「含有する(containing)」(及び、containingの任意の形態、例として、「contains」及び「contain」)は、包括的又は無制限であり、追加の、記載されていない要素及び方法のステップを除外しない。
【0545】
用語「又はそれらの組合せ(or combinations thereof)」は、本明細書で使用する場合、この用語に先行する列挙項目の置換形態及び組合せを全て指す。例えば、「A、B、C、又はそれらの組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BC又はABCのうちの少なくとも1つを含み、特定の文脈において、順番が重要である場合にはまた、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC又はCABも含むことを意図する。この例に続き、1つ又は複数の項又は用語の繰り返し、例として、BB、AAA、MB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABB等を含有する組合せも明確に含む。当業者であれば、典型的には、文脈からそうでないことが明らかでない限り、任意の組合せにおける項目又は用語の数には制限がないことを理解するであろう。
【0546】
抗体遺伝子セグメント配列の源として、当業者はまた、以下の利用可能なデータベース及び供給源(その更新情報を含む)を知っているし、それらの内容は、参照により本明細書に組み入れられている。
【0547】
Kabatデータベース(G. Johnson及びT. T. Wu、2002;World Wide Web(www) kabatdatabase.com)。1996年にE. A. Kabat及びT. T. Wuにより作成され、Kabatデータベースは、抗体、T細胞受容体、主要組織適合複合体(MHC)クラスI及びII分子、並びに免疫学的対象となる他のタンパク質のアラインメントされた配列を公開する。検索可能なインターフェイスはSeqhuntIIツールによって提供され、有用な範囲は、配列アラインメント、配列サブグループ分類、及び可変性プロットの作製に有効である。Kabat, E. A.、Wu, T. T.、Perry, H.、Gottesman, K.、及びFoeller, C. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、NIH Publication No. 91-3242、Bethesda、MDもまた参照されたい。それは、特に、本発明に使用するヒト遺伝子セグメントに関して、参照により本明細書に組み入れられている。
【0548】
KabatMan(A. C. R. Martin、2002;World Wide Web(www) bioinf.org.uk/abs/simkab.html)。これは、Kabat配列データベースへのクエリを簡単にするためのウェブインターフェイスである。
【0549】
IMGT(the International ImMunoGeneTics Information System(登録商標);M.-P. Lefranc、2002;World Wide Web(www) imgt.cines.fr)。IMGTは、全ての脊椎動物種の抗体、T細胞受容体及びMHC分子において特定化する統合情報システムである。それは、ヌクレオチド及びタンパク質配列、オリゴヌクレオチドプライマー、遺伝子地図、遺伝的多型、特異性、並びに2次元(2D)及び3次元(3D)構造を含む標準化データへの共通ポータルを提供する。IMGTは、3つの配列データベース(IMGT/LIGM-DB、IMGT/MHC-DB、IMGT/PRIMERDB)、1つのゲノムデータベース(IMGT/GENE-DB)、1つの3D構造データベース(IMGT/3Dstructure-DB)、並びに様々なウェブ供給源(「IMGT Marie-Paule page」)及び対話型ツールを含む。
【0550】
V-BASE (I. M. Tomlinson、2002;World Wide Web(www) mrc-cpe.cam.ac.uk/vbase)。V-BASEは、1千個より多い公開された配列から編集された全てのヒト抗体生殖系列可変領域配列の包括的なディレクトリーである。それは、再構成された抗体V遺伝子のそれらの最も近い生殖系列遺伝子セグメントへの割り当てを可能にするアラインメントソフトウェアDNAPLOT(Hans-Helmar Althaus及びWerner Mullerによって開発された)のバージョンを含む。
【0551】
抗体 - 構造及び配列(A. C. R. Martin、2002;World Wide Web(www) bioinf.org.uk/abs)。このページは、抗体構造及び配列に関する有用な情報を要約している。それは、Kabat抗体配列データ、抗体に関する一般的な情報、結晶構造へのクエリインターフェイス、及び他の抗体関連情報へのリンクを提供する。それはまた、Protein Databank (PDB)に寄託された全ての抗体構造の自動要約を配布する。特に興味深いことには、抗体可変領域についての様々なナンバリングスキームの徹底的な説明及び比較である。
【0552】
AAAAA (A Ho's Amazing Atlas of Antibody Anatomy; A. Honegger、2001;World Wide Web(www) unizh.ch/〜antibody)。この供給源は、構造分析、モデリング及び操作のためのツールを含む。それは、抗体及びT細胞受容体配列の包括的な構造アラインメントのための統一的スキームを採用し、抗体分析及びグラフ表示のためのExcel macrosを含む。
【0553】
WAM (Web Antibody Modeling; N. Whitelegg及びA. R. Rees、2001;World Wide Web(www) antibody.bath.ac.uk)。Centre for Protein Analysis and Design at the University of Bath、United Kingdomの主催。確立された理論的方法の組合せを使用して抗体Fv配列の3Dモデルを構築するためのAbMパッケージ(以前は、Oxford Molecularにより販売されていた)に基づいて、このサイトはまた、最新の抗体構造情報を含む。
【0554】
Mike's Immunoglobulin Structure/Function Page (M. R. Clark、2001;World Wide Web(www) path.cam.ac.uk/〜mrc7/mikeimages.html)。これらのページは、免疫グロブリン構造及び機能に関する教材を提供し、多数のカラー画像、モデル及びアニメーションにより解説されている。さらなる情報は、抗体ヒト化及びMike Clark's Therapeutic Antibody Human Homology Project(臨床効果及び抗免疫グロブリン応答を治療用抗体の可変領域配列に関連づけることを目指す)に関して入手できる。
【0555】
The Antibody Resource Page (The Antibody Resource Page、2000;World Wide Web(www) antibodyresource.com)。このサイトは、それ自体、「抗体研究及び供給業者の完全ガイド」として記載する。アミノ酸シーケンシングツール、ヌクレオチド抗体シーケンシングツール、及びハイブリドーマ/細胞培養データベースへのリンクが提供されている。
【0556】
Humanization bY Design (J. Saldanha、2000;World Wide Web(www) people.cryst.bbk.ac.uk/〜ubcg07s)。この供給源は、抗体ヒト化テクノロジーに関する概要を提供する。最も有用な特徴は、ヒト化構築物の設計問題点、フレームワーク選択、フレームワーク逆突然変異、及び結合親和性に関する情報を含む40個を超える公開されたヒト化抗体の(配列及びテキストによる)検索可能なデータベースである。
【0557】
Antibody Engineering Methods and Protocols、Benny K C Lo編、Methods in Molecular Biology(商標)、Human Pressもまた参照されたい。また、World Wide Web(www) blogsua.com/pdf/antibody-engineering-methods-and-protocolsantibody-engineering-methods-and-protocols.pdfもまた参照されたい。
【0558】
この開示のいずれの部分も、本内容から他のことが明らかでない限り、本開示の任意の他の部分と組み合わせて読まれてもよい。
【0559】
本明細書に開示及び主張された組成物及び/又は方法の全部は、本開示に照らせば、過度の実験なしに作製及び実行することができる。本発明の組成物及び方法は、好ましい実施形態に関して記載されているが、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された組成物及び/又は方法に、並びにその方法の工程において、又は工程の順番においてバリエーションが適用され得ることは、当業者には明らかである。当業者に明らかな全てのそのような類似した代替物及び改変物は、添付の特許請求の範囲によって定義されているような本発明の精神、範囲及び概念の範囲内であるとみなされる。
【0560】
以下の実施例は、本発明を作製し、かつ使用する方法の完全な開示及び記載を当業者に提供するために提示され、本発明者らが何を彼らの発明とみなすかの範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0561】
(実施例1)
内在性カッパ遺伝子座内に挿入されたヒトラムダ遺伝子セグメントを含むトランスジェニックマウスにおける、ヒトラムダ可変領域の高発現
第1のIGL BACからのヒトラムダ遺伝子セグメントをマウスAB2.1ES細胞(ベイラー医科大学)のIGK遺伝子座内に挿入して、P1対立遺伝子と表示されるキメラ軽鎖対立遺伝子を作製した(図1)。挿入されたヒト配列はヒト第22染色体の位置23217291〜位置23327884の配列に対応し、機能的ラムダ遺伝子セグメントVλ3-1、Jλ1-Cλ1、Jλ2-Cλ2、Jλ3-Cλ3、Jλ6-Cλ6、及びJλ7-Cλ7[Table 13(表13)の対立遺伝子]を含む。挿入は、図1に示すように、マウスCκ領域及び3'Eκの上流(すなわち、内在性軽鎖エンハンサーの100kb以内)である、マウス第6染色体上の位置70674755と706747756との間で行った。マウスVκ及びJκ遺伝子セグメントは、キメラ遺伝子座中、挿入されたヒトラムダDNAのすぐ上流に保持された。マウスラムダ遺伝子座は無処置のまま残した。キメラP1遺伝子座についてホモ接合性のマウスを、ES細胞から標準的な手順を使用して生成した。
【0562】
BAC1ヒトDNA、その後にBAC2DNAの順次的な挿入によってより多くのヒト機能的Vλ遺伝子セグメントをヒトVλ3-1の上流(5'側)に挿入してP2対立遺伝子[Table 14(表14)の対立遺伝子]を生成した、2種類目のマウスを作製した(P2マウス)。BAC2からの挿入されたヒト配列はヒト第22染色体の位置23064876〜位置23217287の配列に対応し、機能的ラムダ遺伝子セグメントVλ2-18、Vλ3-16、V2-14、Vλ3-12、Vλ2-11、Vλ3-10、Vλ3-9、Vλ2-8、及びVλ4-3を含む。キメラP2遺伝子座についてホモ接合性のマウスを、ES細胞から標準的な手順を使用して生成した。
【0563】
P1及びP2ホモ接合体からの脾臓B細胞のFACS解析を行って、トランスジェニックマウスにおけるラムダ対カッパの発現及びヒトラムダ対マウスラムダの発現を評価した。
【0564】
P2ホモ接合体中の軽鎖遺伝子座からのRNA転写物を解析するために標準的な5'-RACEを実施した。
【0565】
軽鎖の発現及びFACS解析
脾臓から単細胞懸濁液を得るために、脾臓を30μmの細胞濾過器に穏やかに通した。単細胞を、3%熱失活ウシ胎児血清(FCS)を添加したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に再懸濁させた。
【0566】
以下の抗体を染色用に使用した。
【0567】
ラット抗マウスラムダ(mCλ)フィコエリスリン(PE)抗体(Southern Biotech)、ラット抗マウスカッパ(mCκ)(BD Pharmingen、クローン187.1)フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、抗ヒトラムダ(hCλ)(eBioscience、クローン1-155-2)フィコエリスリン(PE)、抗B220/CD45R(eBioscience、クローンRA3-6B2)アロフィコシアニン(APC)。NB:ヒトCλを保有する軽鎖は、挿入されたヒトVλ及びヒトJλの再編成に由来する可変領域を有すると予想された。マウスCλを保有する軽鎖は、内在性ラムダ遺伝子座からのマウスのVλ及びJλの再編成に由来する可変領域を有すると予想された。
【0568】
5×106個の細胞を個々のチューブに加え、過剰の流体を除去するために遠心沈殿させ、新鮮な100μlのPBS+3%FCS中に再懸濁させた。個々のチューブのそれぞれに以下の抗体を加えた。
【0569】
mλ対mκの染色には、1μlのそれぞれの抗体を1μlのB220/CD45R抗体と共に加えた。ヒトラムダ軽鎖を発現するB細胞の検出には、mλ抗体をhλ抗体で置換した。細胞を暗所、6℃で15分間インキュベーションし、続いて、未結合の抗体を除去するために新鮮なPBS+3%FCSで数回洗浄した。細胞を、Miltenyi Biotech社の蛍光活性化細胞分取(FACS)解析機器を使用して解析した。
【0570】
側方散乱(SSC)及び前方散乱(FSC)を使用して生きた脾臓細胞をゲーティングした。SSC及びFSCでゲーティングした集団のうち、APC蛍光色素を使用してB220/CD45R(マウスB細胞)の部分集団を検出した。単一の陽性B220/CD45R集団を、mκ FITC蛍光色素と併せてmλ又はhλ PE蛍光色素のどちらかを保有する細胞へと更に細分した。ゲーティングシステムを使用して各集団のパーセンテージを計算した。
【0571】
驚くべきことに、P1ホモ接合体からの脾臓B細胞のFACS解析は、検出可能なマウスCκ発現を示さず(図2)、これは、BAC1からのヒトラムダ遺伝子座DNAの挿入が内在性IGK鎖の発現を妨害することを示している。
【0572】
これらのマウスにおける、FACS解析によって分類された脾臓B細胞における内在性Cλの強力な発現及びヒトCλの弱い発現(マウスCλ:ヒトCλ=65:32)は、挿入されたヒトIGL配列は、IGK活性を妨害する一方で、内在性IGL遺伝子と完全に競合することができないことを示唆している。
【0573】
ここでも、驚くべきことに、FACS解析はP2ホモ接合体において検出可能なマウスCκ発現を示さなかった(図3A及び図3B)。しかし、FACS解析後に、P2ホモ接合体からマウス又はヒトCλとして分類された発現されたB細胞において、ヒトCλが非常に優勢である(15個のマウスラムダ可変領域:80個のヒトラムダ可変領域の比に対応してマウスCλ:ヒトCλ=15:80、すなわち、分類されたB細胞に対して84%ヒトラムダ可変領域であり、これは全B細胞の80%に対応する)。いかなる理論にも束縛されることを望まないが、本発明者らは、第2のBACからの挿入されたヒトラムダ遺伝子座配列が、内在性ラムダ遺伝子セグメントの再編成又は発現と競合するという一部の利点を提供することを提案する。
【0574】
本発明者らはP2ホモ接合体におけるヒトVλ及びJλの使用量を解析した。P2ホモ接合体におけるヒトVλの使用量を示す図4を参照されたい。観察された使用量はヒトで見られたものに類似していた(J Mol Biol.、1997年4月25日、268(1):69〜77頁、「The creation of diversity in the human immunoglobulin V(lambda) repertoire」、Ignatovich Oらの通り)。更に、ヒトJλの使用量はヒトで見られたものに類似していた(図5)。偏りのない5'-RACE(cDNA末端迅速増幅)PCRクローンのシーケンシングによるヒトCλ転写物のVλ対Vκの使用量の解析は、278個のクローン配列のうち、1つのみがJλ(ヒトJλ)への再編成のためにVκを使用し、全ての他のもの(277個のクローン)はヒトVλを使用していたことを示した(図6及び図7。Vλ2-5がRNA転写物レベルで検出されたが、これは、タンパク質レベルでの使用量によっては通常は拾われない擬似遺伝子である)。いかなる理論にも束縛されることを望まないが、本発明者らは、保持されたマウスVκ遺伝子セグメントは、同じ種類のRSS(組換えシグナル配列、以下の説明を参照)を有しており、再編成に不適合であるため、本質的に、挿入されたヒトJλ遺伝子セグメントと効率的に再編成できないことを提案する(図8)。また、この結果は、IGK遺伝子座のさらなる修飾なしに内在性IGK活性の不活性化及び挿入されたヒトラムダ配列の優勢発現を達成できること、例えば、内在性カッパ遺伝子座の遺伝子セグメントの欠失又は反転が必要ないことも示しており、このことは、ヒトラムダ可変領域(すなわち、ヒトVλ及びJλ遺伝子セグメントの組換えによって生成される可変領域)を保有する軽鎖を発現する有用なトランスジェニックマウスの作製を大いに平易にする。
【0575】
V(D)Jのin vivo組換えを媒介する組換えシグナル配列(RSS)の配置は、例えばCell、2002年4月、109、補遺:S45〜55頁、「The mechanism and regulation of chromosomal V(D)J recombination」、Bassing CH、Swat W、Alt FW(その開示が本明細書中に参考として組み込まれている)で検討されている。2種類のRSSエレメント、すなわち1ターンRSS(12-RSS)及び2ターンRSS(23-RSS)が同定されている。ラムダ軽鎖遺伝子座中の天然のVJ組換えでは、組換えはVラムダの3'側に位置する2ターンRSSとJラムダの5'側に位置する1ターンRSSとの間で生じ、RSSは逆の配向となる。カッパ軽鎖遺伝子座中の天然のVJ組換えでは、組換えはVカッパの3'側に位置する1ターンRSSとJカッパの5'側に位置する2ターンRSSとの間で生じ、RSSは逆の配向となる。したがって、一般に、2ターンRSSは逆の配向で1ターンRSSに適合している。
【0576】
したがって、本発明者らは、(i)ヒトラムダ遺伝子セグメントをカッパ遺伝子座内に挿入することで内在性カッパ鎖の発現を不活性化する方法、並びに(ii)内在性ラムダ及びカッパV遺伝子セグメントの存在下でさえも、非常に高いヒトラムダ可変領域の発現を達成する(したがって標的抗原に対して選択するために有用な軽鎖レパートリーを提供する)方法をどのように行うかを実証した。したがって、本発明者らは、BAC1及び2によって含まれる少なくとも機能的ヒトラムダ遺伝子セグメントを挿入することによって、どのようにV遺伝子セグメントの競合、したがって内在性軽鎖の発現を顕著に除去する(ラムダ)又は完全に除去する(カッパ)かを示した。本実施例では、驚くべきことに、非常に高いレベルのヒトラムダ可変領域の発現が達成された(上述の全ラムダ鎖及び全軽鎖の84%)。
【0577】
(実施例2)
内在性ラムダ遺伝子座内に挿入されたヒトラムダ遺伝子セグメントを含むトランスジェニックマウスにおける、ヒトラムダ可変領域の高発現
第1及び第2のIGL BACからのヒトラムダ遺伝子セグメントをマウスAB2.1ES細胞(ベイラー医科大学)のラムダ遺伝子座内に挿入して、L2対立遺伝子と表示されるラムダ軽鎖対立遺伝子を作製した(図1)。挿入されたヒト配列はヒト第22染色体の位置23064876〜位置23327884の配列に対応し、機能的ラムダ遺伝子セグメントVλ2-18、Vλ3-16、V2-14、Vλ3-12、Vλ2-11、Vλ3-10、Vλ3-9、Vλ2-8、Vλ4-3、Vλ3-1、Jλ1-Cλ1、Jλ2-Cλ2、Jλ3-Cλ3、Jλ6-Cλ6、及びJλ7-Cλ7を含む。挿入は、図1に示すように、マウスCλ領域の上流かつEλ4-10とEλ3-1との間(すなわち、内在性軽鎖エンハンサーの100kb以内)である、マウス第16染色体上の位置19047551と19047556との間で行った。マウスのVλ及びJλ遺伝子セグメントは、遺伝子座中、挿入されたヒトラムダDNAのすぐ上流に保持された。カッパ鎖の発現を防止するために、マウスカッパ遺伝子座は不活性化した。L2遺伝子座についてホモ接合性のマウスを、ES細胞から標準的な手順を使用して生成した。
【0578】
実施例1と類似の方法を使用して、L2ホモ接合体からの脾臓B細胞のFACS解析を行って、トランスジェニックマウスにおけるラムダ対カッパの発現及びヒトラムダ対マウスラムダの発現を評価した。
【0579】
軽鎖の発現及びFACS解析
IGKノックアウト背景下(Vκ及びJκ遺伝子セグメントが保持されている)におけるL2ホモ接合体中の脾臓B細胞のFACS解析は、驚くべきことに、FACS解析後に、マウス又はヒトCλとして分類されたB細胞において、ヒトCλの発現が非常に優勢であることを示し(5個のマウスラムダ可変領域:93個のヒトラムダ可変領域の比に対応してマウスCλ:ヒトCλ=5:93、すなわち、分類されたB細胞に対して95%ヒトラムダ可変領域であり、これは全B細胞の93%に対応する)(図9A)、これは、内在性IGλ遺伝子座内の挿入されたヒトIGλ遺伝子セグメントが、内在性IGλ遺伝子セグメントの再編成又は発現に競合で打ち勝つことができることを実証している。
【0580】
したがって、本発明者らは、内在性ラムダ及びカッパV遺伝子セグメントの存在下でさえも非常に高いヒトラムダ可変領域の発現を達成する(したがって標的抗原に対して選択するために有用な軽鎖レパートリーを提供する)方法をどのように行うかを実証した。したがって、本発明者らは、BAC1及び2によって含まれる少なくとも機能的ヒトラムダ遺伝子セグメントを挿入することによって、どのように内在性ラムダV遺伝子セグメントの競合、したがって内在性ラムダ軽鎖の発現を顕著に除去するかを示した。本実施例では、驚くべきことに、非常に高いレベルのヒトラムダ可変領域の発現が達成された(上述の全ラムダ鎖及び全軽鎖の95%)。
【0581】
これらのデータは、BAC1及びBAC2によって提供される機能的遺伝子セグメントの標的化挿入によって生成されたP(実施例1)又はL(実施例2)対立遺伝子のどちらかを保有するマウスが、成熟B細胞中での再編成及び発現において機能できることを示している。これら2種類の対立遺伝子は、治療用抗体発見のため及び研究ツールとしてのヒトIgラムダ鎖を生成するトランスジェニックマウスを提供するために非常に有用である。
【0582】
ヒトラムダ可変領域を発現する本発明のトランスジェニックマウスは正常な脾臓区画を発生する
脾臓内で、B細胞は、細胞表面マーカーであるIgM及びIgDのレベルに基づいて未成熟(T1及びT2)並びに成熟(M)として特徴づけられる。T1細胞は高いIgM及び低いIgDを有する。T2細胞はどちらも中程度のレベルで有する。M細胞は低いIgMであるが高いIgDを有する(図10)。J Exp Med.、1999年7月5日、190(1):75〜89頁、「B cell development in the spleen takes place in discrete steps and is determined by the quality of B cell receptor-derived signals」、Loder Fらも参照されたい。
【0583】
以下の実施例3に記載のものに類似の方法を使用して、動物からの脾臓B細胞を、FACSを使用して、IgD及びIgMの発現についてスコアづけした。本発明者らは、対照マウスKA/KA(内在性カッパ鎖の発現が不活性化されているが、内在性ラムダ鎖の発現は不活性化されていない)をL2/L2、KA/KAマウス(L2ホモ接合体)と比較した。驚くべきことに、L2ホモ接合体は対照マウスに匹敵する脾臓B細胞区画を示した(図9B)。
【0584】
(実施例3)
本発明のトランスジェニックマウスにおけるB細胞及びIgの発生の評価
本発明者らは、実質的に内在性の重鎖及びカッパ鎖の発現の非存在下でヒト重鎖可変領域を有する抗体を発現する、本発明のトランスジェニックマウスにおける正常なIgサブタイプの発現及びB細胞の発生を観察した。
【0585】
ES細胞及び上述のRMCEゲノム操作方法を使用して、以下のIg遺伝子座対立遺伝子の組合せを用いてマウスを構築した。
【0586】
S1F/HA、+/KA=(i)S1F-第1の内在性重鎖対立遺伝子が1つのヒト重鎖遺伝子座DNAの挿入を有しており、内在性マウスVDJ領域が反転及び染色体上での上流への移動によって不活性化されている(この対立遺伝子をS1inv1と呼ぶ上記説明を参照)、(ii)HA-第2の内在性重鎖対立遺伝子が不活性化されている(内在性妨害配列の挿入による)、(iii)+-第1の内在性カッパ対立遺伝子が野生型カッパ対立遺伝子である、並びに(iv)KA-第2の内在性カッパ対立遺伝子が不活性化されている(内在性妨害配列の挿入による)。この配置は、第1の内在性重鎖対立遺伝子からの重鎖を排他的にコードしている。
【0587】
S1F/HA、K2/KA=(i)K2-第1の内在性カッパ対立遺伝子最も3'側の内在性JκとマウスCκとの間に2つのカッパ鎖遺伝子座DNAの挿入を有しており、14個のヒトVκ及びJκ1〜Jκ5の挿入を提供する、並びに(ii)KA-第2の内在性カッパ対立遺伝子が不活性化されている(内在性妨害配列の挿入による)。この配置は、第1の内在性カッパ対立遺伝子からの、ヒト可変領域を含む重鎖及び実質的にカッパ軽鎖を排他的にコードしている。
【0588】
+/HA、K2/KA-この配置は、マウス重鎖及びヒトカッパ鎖をコードしている。
【0589】
+/HA、+/KA-この配置はマウスの重鎖及びカッパ鎖をコードしており、マウスは、マウスの重鎖及び軽鎖のみを生じる。
【0590】
骨髄中、B前駆体集団はその表面マーカーであるB220及びCD43に基づいて特徴づけられる。プレプロB細胞は生殖系列IGH及びIGK/L立体配置を保有しており、その細胞表面上に低いB220及び高いCD43を有する。プロB細胞はIGH遺伝子座中でVDJの組換えの開始を始め、B220及びCD43をどちらも中程度のレベルで保有する。プレB細胞は再編成されたIGH VDJ遺伝子座を保有し、軽鎖VJ再編成の開始を始め、B220は高いがCD43は低い。脾臓内で、B細胞は、細胞表面マーカーであるIgM及びIgDのレベルに基づいて未成熟(T1及びT2)並びに成熟(M)として特徴づけられる。T1細胞は高いIgM及び低いIgDを有する。T2細胞はどちらも中程度のレベルで有する。M細胞は低いIgMであるが高いIgDを有する(図10)。J Exp Med.、1991年5月1日、173(5):1213〜25頁、「Resolution and characterization of pro-B and pre-pro-B cell stages in normal mouse bone marrow」、Hardy RRら及びJ Exp Med.、1999年7月5日、190(1):75〜89頁、「B cell development in the spleen takes place in discrete steps and is determined by the quality of B cell receptor-derived signals」、Loder Fらも参照されたい。
【0591】
本発明のトランスジェニックマウスは正常な脾臓及びBM区画を発生する
(a)脾臓区画の解析
それぞれのマウスについて、脾臓から単細胞懸濁液を得るために、脾臓を30μmの細胞濾過器に穏やかに通した。単細胞を、3%熱失活ウシ胎児血清(FCS)を添加したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に再懸濁させた。5×106個の細胞を個々のチューブに加え、過剰の流体を除去するために遠心沈殿させ、新鮮な100μlのPBS+3%FCS中に再懸濁させた。個々のチューブのそれぞれに以下の抗体を加えた:抗B220/CD45R(eBioscience、クローンRA3〜6B2)アロフィコシアニン(APC)、フィコエリスリン(PE)とコンジュゲートしたIgD受容体(eBioscience、クローン11〜26)に対する抗体、及びフルオレセインイソチオシアネート(FITC)とコンジュゲートしたIgM受容体(eBioscience、クローン11/41)に対する抗体。
【0592】
IgM対IgDの染色には、5×106個の細胞をそれぞれの染色に使用した。脾細胞を含有する各バイアルに、抗IgD(PE)、抗IgM(FITC)及び抗B220/CD45R(APC)からなる抗体のカクテルを加えた。細胞を6℃で15分間インキュベーションし、過剰の未結合の抗体を除去するために洗浄し、Miltenyi Biotech社の蛍光活性化細胞分取(FACS)解析機器を使用して解析した。B細胞は、T1集団ではB220IgMIgD(すなわちB220+IgM+IgD-)、T2集団ではB220IgMIgD(B220+IgM+IgD+)、M集団ではB220IgMIgD(B220+IgM-IgD+)としてゲーティングした。ゲーティングシステムを使用して細胞のパーセンテージを計算した。本発明者らは、対数スケールを用いてプロット上の細胞集団の部分組を同定及び定義するためにゲートを使用した。ゲートを適用する前に、それぞれの蛍光色素について単一染色抗体を使用して、陽性(高強度の蛍光色素)と陰性(検出可能な強度の蛍光色素なし)の集団を区別する。ゲートは、蛍光色素の強度に基づいて、全ての試料で同じ様式で適用する。単一染色は以下の通りであった。
IgD-PE
IgM-FITC
B220-APC
【0593】
側方散乱(SSC)及び前方散乱(FSC)を使用して生きた脾臓細胞をゲーティングした。SSC及びFSCでゲーティングした集団のうち、APC蛍光色素を使用してB220/CD45R陽性細胞(マウスB細胞)の部分集団を検出した。単一の陽性B220/CD45R集団を、mκ FITC蛍光色素と併せてIgMフルオレセインイソチオシアネート(FITC)又はIgD蛍光色素のどちらかを保有する細胞へと更に細分した。ゲーティングシステムを使用して各集団のパーセンテージを計算した。本発明のマウス中の脾臓B細胞区画は正常である(すなわち、マウス抗体鎖のみを発現するマウスの区画と等価である)。
【0594】
(b)骨髄B前駆体の解析
それぞれのマウスについて骨髄からの単細胞懸濁液を得るために、大腿骨及び脛骨を、3%熱失活ウシ胎児血清(FCS)を添加したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)でフラッシュした。細胞を30μmの細胞濾過器に更に通して骨片又は細胞塊を除去した。細胞を、3%血清を添加した冷PBS中に再懸濁させた。2×106個の細胞を個々のチューブに加え、遠心沈殿させて過剰の緩衝液を除去し、新鮮な100μlのPBS+3%FCS中に再懸濁させた。個々のチューブのそれぞれに以下の抗体を加えた:抗ロイコシアリン(CD43)フルオレセインイソチオシアネート(FITC)(eBioscience、クローンeBioR2/60)、及び抗B220/CD45R(eBioscience、クローンRA3-6B2)アロフィコシアニン(APC)。細胞を暗所、6℃で15分間インキュベーションし、続いて、未結合の抗体を除去するために新鮮なPBS+3%FCSで数回洗浄した。細胞を、Miltenyi Biotech社の蛍光活性化細胞分取(FACS)解析機器を使用して解析した。側方散乱(SSC)及び前方散乱(FSC)を使用して生きた骨髄細胞をゲーティングした。本発明者らは、対数スケールを用いてプロット上の細胞集団の部分組を同定及び定義するためにゲートを使用した。ゲートを適用する前に、それぞれの蛍光色素について単一染色抗体を使用して、陽性(高強度の蛍光色素)と陰性(検出可能な強度の蛍光色素なし)の集団を区別する。ゲートは、蛍光色素の強度に基づいて、全ての試料で同じ様式で適用する。単一染色は以下の通りであった。
B220-APC
CD43-FITC
【0595】
生きた集団内で、B220/CD45R及びCD43陽性細胞の二重の集団をプレB、プロB及びプレプロB細胞と同定した。本発明のマウス中の脾臓B細胞区画は正常である(すなわち、マウス抗体鎖のみを発現するマウスの区画と等価である)。
【0596】
本発明のトランスジェニックマウスは正常なIg発現を発生する
血清IgM及びIgGの定量
最初に、96ウェルNUNCプレートを、補足抗体(ヤギ抗マウスFab抗体、1μg/ml)を用いて終夜、4℃でコーティングした。IgGプレートには抗Fab(M4155、Sigma)を使用し、IgMプレートには抗Fab(OBT1527、AbD Serotec)を使用した。0.1%v/vのTween20を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄した後、プレートを、1%w/vのウシ血清アルブミン(BSA)を含有する200μlのPBSで1時間、室温(RT)で遮断した。プレートを上述のように3回洗浄し、その後、50μlの標準試料(対照マウスアイソタイプ抗体、IgG1(M9269、Sigma)、IgG2a(M9144、Sigma)、IgG2b(M8894、sigma)、IgM(M3795、Sigma))又は0.1%BSAを含むPBSで希釈した血清試料を各ウェルに加え、1時間、RTでインキュベーションした。上述のように3回洗浄した後、100μlの検出抗体(ヤギ抗マウスアイソタイプ特異的抗体-西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲート、PBS中に1/10000、0.1%Tweenを含む)(抗マウスIgG1(STAR132P AbD Serotec)、抗マウスIgG2a(STAR133P AdD Serotec)、抗マウスIgG2b(STAR134P AbD Serotec)、及び抗マウスIgM(ab97230Abcam)を各ウェルに加え、1時間、RTでインキュベーションした。プレートを上述のように3回洗浄し、テトラメチルベンジジン基質(TMB、Sigma)を使用して4〜5分間、暗所、RTで展開した。展開は50μl/ウェルの1M硫酸を加えることによって停止させた。Biotek Synergy HTプレートリーダーを用いて450nmでプレートを読み取った。
【0597】
結論
ヒトIGH BACの挿入後の内在性VH-D-JHの反転は、内在性VHから挿入されたヒトD-JHへの再編成の不活性化をもたらす。しかし、本発明者らは、驚くべきことに、内在性重鎖の発現の不活性化は脾臓区画(図11)又は骨髄B前駆体区画(図12)中のB細胞の比を変化させず、また、血清中の免疫グロブリンレベルは正常であり、正しいIgサブタイプが発現されることを観察した(図13)。このことは、マウス軽鎖を有するヒト重鎖可変領域を発現するマウス(図11A及び図12A)並びにヒト重鎖可変領域及びヒト軽鎖可変領域をどちらも発現するマウス(図11B及び図12B)において示された。これらのデータは、挿入されたヒトIGH遺伝子セグメント(少なくともヒトVH遺伝子セグメントVH2-5、7-4-1、4-4、1-3、1-2、6-1、全てのヒトD及びJH遺伝子セグメントD1-1、2-2、3-3、4-4、5-5、6-6、1-7、2-8、3-9、5-12、6-13、2-15、3-16、4-17、6-19、1-20、2-21、3-22、6-25、1-26、及び7-27、並びにJ1、J2、J3、J4、J5、及びJ6の挿入)が再編成、BCRシグナル伝達及びB細胞成熟の側面において完全に機能的であることを実証している。機能性は、K2対立遺伝子を作製するために使用する挿入に従ってヒト軽鎖VJ遺伝子セグメントを挿入してトランスジェニック軽鎖を提供する場合にも保持される。この挿入は、ヒト遺伝子セグメントVκ2-24、Vκ3-20、Vκ1-17、Vκ1-16、Vκ3-15、Vκ1-13、Vκ1-12、Vκ3-11、Vκ1-9、Vκ1-8、Vκ1-6、Vκ1-5、Vκ5-2、Vκ4-1、Jκ1、Jκ2、Jκ3、Jκ4、及びJκ5を含む挿入である。S1F/HA、K2/KAマウスによって発現される90%を超える抗体がヒト重鎖可変領域及びヒトカッパ軽鎖可変領域を含んでいた。したがって、これらのマウスは、マウスをヒト抗原で免疫化した後に、そのように抗原と特異的に結合するヒト可変領域を有する抗体を選択するために非常に有用である。そのような抗体を単離した後、当業者は、慣用技術を使用してマウス定常領域をヒト定常領域で置き換えて、(任意選択で、例えばFc増強若しくは不活性化を用いて突然変異若しくは適応を行ってさらなる誘導体を生成した後、又は毒性のペイロード若しくはレポーター若しくは標識若しくは他の活性部分とコンジュゲーションさせた後)、ヒトに投与するための薬物候補として有用な完全にヒトである抗体を得ることができる。
【0598】
ヒト重鎖及び軽鎖(カッパ)可変領域を有する抗体を発現する本発明のトランスジェニックマウス(S1F/HA、K2/KAマウス、n=15匹)におけるIgG及びIgMのレベル及び相対割合を評価するために、さらなる実験を実施した。これらを、マウス抗体鎖のみを発現する12匹のマウス[+/HA、+/KA(n=6匹)及び野生型マウス(WT、n=6匹)]に対して比較した。結果を以下に作表し[Table 19(表19)]、図14に示す。
【0599】
本質的に全ての重鎖可変領域がヒト重鎖可変領域である本発明のマウスは正常な割合のIgM及びIgGサブタイプを発現し、また、IgMに対する全IgGも正常であったことを見ることができる。
【0600】
【表19A】
【表19B】
【表19C】
【表19D】
【表19E】
【0601】
(実施例4)
本発明のトランスジェニックマウスにおけるカッパ:ラムダ比及び脾臓B細胞区画の評価
以下のゲノムを含むマウスを得た。
WT/WT=野生型、
KA/KA=それぞれの内在性カッパ対立遺伝子は不活性化されており、内在性ラムダ遺伝子座は無処置のまま残されている、
K3F/K3F=それぞれの内在性カッパ対立遺伝子は、最も3'側の内在性JκとマウスCκとの間に3つのカッパ鎖遺伝子座DNAの挿入を有しており、ヒトV遺伝子セグメントVK2-40、VK1-39、Vκ1-33、Vκ2-30、Vκ2-29、Vκ2-28、Vκ1-27、Vκ2-24、Vκ3-20、Vκ1-17、Vκ1-16、Vκ3-15、Vκ1-13、Vκ1-12、Vκ3-11、Vκ1-9、Vκ1-8、Vκ1-6、Vκ1-5、Vκ5-2、及びVκ4-1、並びにヒトJ遺伝子セグメントJκ1、Jκ2、Jκ3、Jκ4、及びJκ5(ヒトV遺伝子セグメントはヒトJ遺伝子セグメントの5'側である)の挿入を提供しており、それぞれの内在性カッパVJは反転及び染色体上での上流への移動によって不活性化されており、内在性ラムダ遺伝子座は無処置のまま残されている、
L2/L2=実施例2に記載の通りである(ヒトラムダ可変領域DNAが内在性ラムダ遺伝子座内に挿入されており、内在性カッパ遺伝子座は無処置のまま残されているL2ホモ接合体)、
L2/L2、KA/KA=L2/L2と同様であるが、内在性カッパ対立遺伝子は不活性化されている(内在性妨害配列=KAの挿入による)、
L3/L3、KA/KA=L2/L2、KA/KAと同様であるが、内在性ラムダ遺伝子座中の第2のラムダDNAの挿入の5'側に第3のヒトラムダ可変領域DNAの挿入によって補足されて、以下のヒトラムダ遺伝子セグメントが最も3'側の内在性JλとマウスCλとの間に挿入されている:ヒトV遺伝子セグメントVλ3-27、Vλ3-25、Vλ2-23、Vλ3-22、Vλ3-21、Vλ3-19、Vλ2-18、Vλ3-16、Vλ2-14、Vλ3-12、Vλ2-11、Vλ3-10、Vλ3-9、Vλ2-8、Vλ4-3、及びVλ3-1、ヒトJ及びC遺伝子セグメントJλ1-Cλ1、Jλ2-Cλ2、Jλ3-Cλ3、Jλ6-Cλ6、及びJλ7-Cλ7(非機能的セグメントJλ4-Cλ4、Jλ5-Cλ5も含まれていた)、したがって、マウス第16染色体上の位置19047551の直後に挿入された、ヒト第22染色体の座標22886217〜23327884に対応する挿入を提供する、
S3F/HA、KA/KA、L3/L3=第1の内在性重鎖対立遺伝子が最も3'側の内在性JHとEμとの間に3つのヒト重鎖可変領域DNAの挿入を有して、ヒト遺伝子セグメントVH2-26、VH1-24、VH3-23、VH3-21、VH3-20、VH1-18、VH3-15、VH3-13、VH3-11、VH3-9、VH1-8、VH3-7、VH2-5、VH7-4-1、VH4-4、VH1-3、VH1-2、VH6-1、D1-1、D2-2、D3-9、D3-10、D4-11、D5-12、D6-13、D1-14、D2-15、D3-16、D4-17、D5-18、D6-19、D1-20、D2-21、D3-22、D4-23、D5-24、D6-25、D1-26、D7-27、JH1、JH2、JH3、JH4、JH5、及びJH6(ヒトV遺伝子セグメント、ヒトD遺伝子セグメント、及びヒトJ遺伝子セグメントの順)の挿入を提供し、内在性重鎖VDJ配列は反転及び染色体上での上流への移動によって不活性化されており、内在性ラムダ遺伝子座は無処置のまま残されており、第2の内在性重鎖対立遺伝子は不活性化されており(内在性妨害配列=HAの挿入による)、内在性カッパ対立遺伝子は不活性化されており(=KA/KA)、内在性ラムダ対立遺伝子はヒトラムダ可変領域DNAの挿入によって修飾されている(=L3/L3)、
P2/WT=一方の内在性カッパ遺伝子座にP2対立遺伝子(実施例1に記載のヒトラムダ可変領域DNA)があり、他方の内在性カッパ遺伝子座は無処置のまま残されており、どちらの内在性ラムダ遺伝子座も無処置のまま残されている、
P2/P2=実施例14を参照、どちらの内在性ラムダ遺伝子座も無処置のまま残されている、
P2/K2=一方の内在性カッパ遺伝子座にP2対立遺伝子があり、他方の内在性カッパ遺伝子座は、最も3'側の内在性JκとマウスCκとの間に2つのDNAの挿入を有して、ヒトV遺伝子セグメントVκ2-24、Vκ3-20、Vκ1-17、Vκ1-16、Vκ3-15、Vκ1-13、Vκ1-12、Vκ3-11、Vκ1-9、Vκ1-8、Vκ1-6、Vκ1-5、Vκ5-2、及びVκ4-1、並びにヒトJ遺伝子セグメントJκ1、Jκ2、Jκ3、Jκ4、及びJκ5(ヒトV遺伝子セグメントはヒトJ遺伝子セグメントの5'側である)の挿入を提供し、どちらの内在性ラムダ遺伝子座も無処置のまま残されている、
P3/K3F=以下のヒトラムダ遺伝子セグメント間に挿入を有する一方の内在性カッパ遺伝子座は、最も3'側の内在性JκとマウスCκとの間に挿入されて、ヒトV遺伝子セグメントVλ3-27、Vλ3-25、Vλ2-23、Vλ3-22、Vλ3-21、Vλ3-19、Vλ2-18、Vλ3-16、Vλ2-14、Vλ3-12、Vλ2-11、Vλ3-10、Vλ3-9、Vλ2-8、Vλ4-3、及びVλ3-1、ヒトJ及びC遺伝子セグメントJλ1-Cλ1、Jλ2-Cλ2、Jλ3-Cλ3、Jλ6-Cλ6、及びJλ7-Cλ7(非機能的セグメントJλ4-Cλ4、Jλ5-Cλ5も含まれていた)の挿入を提供し、したがって、マウス第6染色体上の位置70674755の直後に挿入されたヒト第22染色体の座標22886217〜23327884に対応する挿入を提供する、他方の内在性カッパ遺伝子座は上述のK3F対立遺伝子(ヒトV及びJカッパ遺伝子セグメントが挿入されている)を有しており、どちらの内在性ラムダ遺伝子座も無処置のまま残されている、
P2/P2、L2/WT=P2/P2と同様であるが、一方の内在性ラムダ遺伝子座はL2対立遺伝子を有しており(ヒトラムダV及びJ遺伝子セグメントが挿入されている)、他方の内在性ラムダ遺伝子座は野生型である、並びに
P2/P2、L2/L2=それぞれ内在性カッパ及びラムダ遺伝子座でP2及びL2対立遺伝子についてホモ接合性である。
【0602】
脾臓B細胞のFACS解析(上述)を実施し、軽鎖の発現の割合を決定した。また、トランスジェニックマウスにおいて正常な脾臓B細胞区画が得られたかどうかを評価するために、本発明者らは、T1、T2及び成熟(M)脾臓B細胞の割合も決定し、野生型マウスと比較した。結果をTable 20(表20)及びTable 21(表 21)に示す。また、本発明者らは、脾臓細胞試料中のB細胞の割合の指標としてB220陽性細胞の割合も評価した。
【0603】
【表20A】
【表20B】
【0604】
【表21A】
【表21B】
【0605】
結論
L2/L2、KA/KA及びL3/L3、KA/KAによって実証されたように、内在性ラムダ遺伝子座(内在性カッパノックアウトを有する)でのヒトラムダ可変領域DNAの挿入は、ヒトラムダ可変領域を保有する軽鎖の優勢発現を表示した(約93%でのCλ陽性鎖の発現によって示される)。驚くべきことに、このことは、内在性マウスラムダ可変領域DNAが依然として存在するにもかかわらず起こり、挿入されたヒトラムダ可変領域DNAは内在性IGλの再編成に競合で打ち勝つことができることを示している。
【0606】
更に、ホモ接合性のL3挿入中にヒトV及びJ遺伝子セグメントが存在するマウスは、野生型に類似の割合でB細胞(B220陽性細胞)を生じ、更に、正常な割合又はパーセンテージの成熟脾臓B細胞(すなわち野生型に類似)を生じる。このことは、L3/L3、KA/KAマウスのみで確認されただけでなく、キメラ(ヒト-マウス)IgH遺伝子座も含むS3F/HA、KA/KA、L3/L3でも観察された。
【0607】
また、本発明者らは、ホモ接合性のK3F挿入中にヒトV及びJ遺伝子セグメントが存在するマウスは、野生型に類似の割合でB細胞(B220陽性細胞)を生じ、更に、正常な割合又はパーセンテージの成熟脾臓B細胞(すなわち野生型に類似)を生じることを観察した。
【0608】
ホモ接合性のP2挿入中、内在性カッパ遺伝子座にヒトV及びJ遺伝子セグメントが存在するマウスは、ヒトラムダ可変領域を含む軽鎖の高い発現を示した(76%の観察された割合によって示される)。内在性カッパ及びラムダ遺伝子座の両方でのヒトラムダV及びJ遺伝子セグメントの挿入を合わせることによって、全体的なパーセンテージを更に高くへと歪める(skew)ことができた(P2/P2、L2/WTの約94%及びP2/P2、L2/L2の約95%を参照)。更に、P2/P2、L2/L2のヒトV及びJ遺伝子セグメントの配置を含むマウスは、正常な割合又はパーセンテージの成熟脾臓B細胞(すなわち野生型に類似)を生じる。
【0609】
ヒトラムダのV及びJ遺伝子セグメントを一方の内在性カッパ遺伝子座に挿入し、他方の内在性カッパ遺伝子座がヒトカッパV及びJ遺伝子セグメントの挿入を含んでいた場合、ラムダ可変領域を含む軽鎖及びカッパ可変領域を含む軽鎖も発現し得るマウスを得ることができた。驚くべきことに、ラムダ可変領域を含む軽鎖の割合を、5%以下の軽鎖のみが典型的にラムダ可変領域を含む野生型マウスで見られるよりも高く上げることができたことが観察された。P2/K2遺伝子型では約22%、P3/K3F遺伝子型では約31%の割合が観察された。後者の遺伝子型で観察された割合は、典型的には軽鎖の約60%がカッパ可変領域を含み、軽鎖の約40%がラムダ可変領域を含むヒトで見られるものに近似している。また、P2/K2及びP3/K3Fの事例では、マウスは野生型マウスと比較して正常な割合のB細胞を生じた。更に、P3/K3FのヒトV及びJ遺伝子セグメントの配置を含むマウスは、正常な割合又はパーセンテージの成熟脾臓B細胞(すなわち野生型と類似)を生じる。
【0610】
(実施例5)
Table 3(表3)に列挙される特異的IgH対立遺伝子、及びTable 10(表10)又はTable 11(表11)に列挙される特異的IgL対立遺伝子を含むマウスを作成した。マウスを標的抗原で免疫化し、抗原特異的抗体を単離した。抗体を、結合特異性、成熟(すなわち、生殖系列遺伝子セグメント配列に対する接合及び体細胞突然変異の程度)及び結合動力学について評価した。また、対応するB細胞も得て、いくつかの場合、選択された抗体を発現するハイブリドーマを生成した。
【0611】
選択された抗体をTable 22(表22)にまとめる。これらのいくつかの結合動力学を以下のように決定した。
【0612】
結合動力学決定
抗マウスIgG捕捉表面を、GE Healthcare抗マウスIgG(BR-1008-38)を用いる第1級アミンカップリングによるGLM Biosensor(商標)チップ上で作出した。Table 22(表22)に記載の試験抗体をこの表面上に捕捉し、それぞれの抗原を示された濃度で捕捉されたAb上に通過させた。バッファーの注入(すなわち、0nMの抗原)を用いて、結合曲線を二重参照し、データをProteOn XPR36(商標)分析ソフトウェアに固有の1:1モデルに対して適合させた。捕捉表面の再生を、10mMグリシン、pH1.7を用いて実行した。アッセイを25℃で、泳動バッファーとしてHBS-EPを用いて実行した。
標的1:マルチサブユニットヒトタンパク質
標的2:細菌細胞毒素
標的3:異なるマルチサブユニットヒトタンパク質
標的4:ヒト細胞上で膜貫通タンパク質として発現されるタンパク質
標的1 mAb1.1
単一濃度の標的1(256nM)、抗マウス捕捉
ka ka KD
3.85E+05 3.22E-05 83pM
(マルチサブユニット標的のため見かけの親和性)
標的2 mAb2.1
256、64、16、4及び1nMでの標的2;3つの実験の結果:
実験1:
ka kd KD
1.40E+04 1.83E-05 1.300nM
実験2:
ka kd KD
2.76E+04 3.23E-05 1.170
実験3:
解離速度(off-rate)を決定することができなかった-検出限界を超える極端に緊密な結合を示す。
標的3 mAb3.1
256、64、16、4及び1nMでの標的3
ka kd KD
4.00E+05 2.34E-04 0.59nM
(マルチサブユニット標的のため見かけの親和性)
標的3 mAb3.2
256、64、16、4及び1nMでの標的3
ka kd KD
3.86E+05 2.57E-04 0.67
(マルチサブユニット標的のため見かけの親和性)
標的3 mAb3.3
256、64、16、4及び1nMでの標的3
ka kd KD
解離速度を決定することができない、極端に緊密な結合
(マルチサブユニット標的のため見かけの親和性)
【0613】
結論として、本発明はin vivo系で発現させることができ、非常に良好な親和性、結合速度及び解離速度で標的抗原に特異的に結合するヒト可変ドメインを有するin vivoでの親和性成熟抗体を提供する。本発明はしたがって、ヒト医学にとって有用である抗体、並びにそのような抗体を生成するための非ヒト脊椎動物、細胞(例えば、B細胞及びハイブリドーマ)を提供する。
【0614】
(実施例6)
実施例におけるデータを作成するのに用いられるS(重鎖)、K(カッパ遺伝子座中のカッパ)、L(ラムダ遺伝子座中のラムダ)及びP(カッパ遺伝子座中のラムダ)系統は、Table 1(表1)〜Table 18(表18)の対立遺伝子を使用し、そのような対立遺伝子の集合が驚くべき結果を示し得ることを証明した(例えば、良好なB細胞区画、高いヒトラムダV領域発現、マウスにおける望ましいラムダ:カッパ比及びIgHアイソタイプの正常なレパートリー)。単離された抗体は全て、上記のTable 1(表1)〜Table 18(表18)に列挙される対立遺伝子に基づくものであった。全て、マウスAID及びTdTパターン突然変異を有するVドメインを有していた。
【0615】
他の実施形態
前述の説明から、本明細書に記載された本発明に、それを様々な利用及び状態に採用するために、バリエーション及び改変がなされ得ることは明らかであろう。そのような実施形態もまた、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。
【0616】
本明細書での変数の任意の定義における要素のリストの列挙は、リストに挙げられた要素の任意の単一の要素又はコンビネーション(又はサブコンビネーション)としてのその変数の定義を含む。本明細書における実施形態の列挙は、任意の単一の実施形態として、又は任意の他の実施形態若しくはその部分との組合せとしてのその実施形態を含む。
【0617】
本明細書において言及された全ての刊行物及び特許出願は、当業者の技術のレベルを示している。全ての刊行物及び特許出願は、各個々の刊行物又は特許出願が具体的かつ個々に示されて、参照により組み入れられているかのようなのと同じ程度で、参照により本明細書に組み入れられている。
【0618】
【表22A】
【表22B】
【表22C】
【表22D】
【表22E】
【0619】
本発明による遺伝子セグメントの例の配列を以下に記載する。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]