特許第6843954号(P6843954)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843954
(24)【登録日】2021年2月26日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】トリアセトンアミンの改良製造法
(51)【国際特許分類】
   C07D 211/74 20060101AFI20210308BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20210308BHJP
【FI】
   C07D211/74
   !C07B61/00 300
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-221126(P2019-221126)
(22)【出願日】2019年12月6日
(65)【公開番号】特開2020-90492(P2020-90492A)
(43)【公開日】2020年6月11日
【審査請求日】2020年1月15日
(31)【優先権主張番号】18210919.9
(32)【優先日】2018年12月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】カタリーナ ミンケ
(72)【発明者】
【氏名】ユリア リープ
(72)【発明者】
【氏名】マンフレート ノイマン
【審査官】 布川 莉奈
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第108383704(CN,A)
【文献】 特開昭55−073658(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第108484482(CN,A)
【文献】 特開昭50−036474(JP,A)
【文献】 特開昭50−036472(JP,A)
【文献】 Danko, P. 他,The effect of water on synthesis of triacetonamine from acetonine in acetone,Chemical Papers,1985年,39(6),,775-782
【文献】 Gliozzi, Gherardo 他,Journal of Molecular Catalysis A: Chemical ,2014年,393,,325-332
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリアセトンアミンを製造する方法であって、次の工程:
(a)アセトン及びアンモニアを触媒K1の存在下で反応させて、トリアセトンアミンと、アセトンと、メシチルオキシドと、ジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン、ホロン、イソホロンからなる群から選択される少なくとも1種の副生物とを含む、粗生成物RP1を得る工程、
(b)RP1からアセトン及び/又はメシチルオキシドを少なくとも部分的に蒸留により除去する工程、
(c)アンモニア及び任意にさらなるアセトンを、工程(b)においてRP1から除去されたアセトン及び/又はメシチルオキシドに添加し、かつ添加されたアンモニアを、アセトン及び/又はメシチルオキシドと触媒K2の存在下で少なくとも部分的に反応させてTAAを得て、その結果としてトリアセトンアミンを含む粗生成物RP2を得る工程
を含み、前記方法が、
(d)工程(b)において生じるRP1からのアセトン及び/又はメシチルオキシドの蒸留による除去の前及び/又は最中に、水を、RP1に添加し、かつジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン、ホロン、イソホロンからなる群から選択される、RP1中の副生物のうち少なくとも1種を、水と少なくとも部分的に反応させて、RP1中の前記副生物のうち少なくとも1種を、少なくとも部分的にメシチルオキシド及び/又はアセトンへ開裂させる
ことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
工程(d)において、工程(b)において生じるRP1からのアセトン及び/又はメシチルオキシドの蒸留による除去中に、水を、RP1に添加し、かつジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン、ホロン、イソホロンからなる群から選択される、RP1中の副生物のうち少なくとも1種を、水と少なくとも部分的に反応させて、RP1中の前記副生物のうち少なくとも1種を、少なくとも部分的にメシチルオキシド及び/又はアセトンへ開裂させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(b)において生じるRP1からのアセトン及び/又はメシチルオキシドの少なくとも部分的な蒸留による除去を、蒸留塔中で行う、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(b)における蒸留において使用される温度範囲が、トリアセトンアミンの沸点を下回る、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程a)を、20℃〜180℃の温度で実施する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程(a)において使用されるアセトンの、工程(a)において使用されるアンモニアに対するモル比が、3:1〜20:1である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
K1が、不均一系触媒である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程(d)において添加される水の量が、RP1中に含まれるホロン、ジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン及びイソホロンの質量の合計を基準として、0.1質量%以上である、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(c)における反応を、20℃〜180℃の温度で実施する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
K2が、不均一系触媒である、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程(c)において、アンモニアを、工程(c)において使用されるアセトンの各1モルに対して、アンモニア0.05〜0.33molが添加され、かつアセトンのために添加されるこのアンモニアに加えて、工程(c)において使用されるメシチルオキシドの各1モルに対して、アンモニア0.1〜0.66molが添加されるような全体量で、添加する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリアセトンアミンの改良製造法に関する。この方法は、トリアセトンアミン製造からの粗生成物を処理することを包含し、このことがアンモニアと容易に反応する化合物の含量の増加をもたらす。この方法は、トリアセトンアミンの合成において形成される副生物の効率的なリサイクルを可能にする。
【背景技術】
【0002】
トリアセトンアミン(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノン;CAS番号:826−36−8;以下、“TAA”)は、多数の誘導体生成物、例えば光安定剤(ヒンダードアミン系光安定剤;[HALS])、酸化剤及び重合抑制剤(例えばニトロキシルラジカル)の合成に使用される、重要な化学中間体である。
【0003】
アセトンとアンモニアとからのトリアセトンアミンの製造は、多様な方法の形で文献に記載されている。これは、次の製造方法を含む:TAAのその反応物からの直接(1段)合成、例えば独国特許出願公開第2429937号明細書(DE 24 29 937 A1)、米国特許第4536581号明細書(US 4,536,581 A)、特開昭54−88275号公報(JPS54-88275 A)又はZeitschrift fuer Naturforschung 1976, 328-337及び338-345に記載された方法、並びにアセトニン(2,2,4,4,6−ペンタメチル−1,2,5,6−テトラヒドロピリミジン)を経る間接(2段)合成、例えば独国特許出願公開第2429935号明細書(DE 24 29 935 A1)又は独国特許出願公開第2429936号明細書(DE 24 29 936 A1)に記載された方法、又はホロン(2,6−ジメチル−2,5−ヘプタジエン−4−オン)を経る間接(2段)合成、例えば独国特許出願公開第2352127号明細書(DE 2 352 127 A1)に記載された方法。アセトニンを経る2段TAA合成において、アセトニンは、アセトン及びアンモニアからまず最初に形成され、ついで続く工程において、アンモニア1当量の開裂を伴いさらに反応して、TAAが得られる。しかしながら、アセトニンを経る合成方法の場合に、双方の種(TAA及びアセトニン)は、常に同時に形成されるが、それにもかかわらず、アセトニン形成は、TAA形成よりも速度論的に極めて有利である。前記“1段”TAA合成において、アセトニンは、単離されないだけである。
【0004】
TAAの製造は、原則的に、均一系触媒によって(主にアンモニウム塩によって)も、又は不均一系触媒によって(例えば酸性イオン交換体上で)も、同様に可能である。
【0005】
従来技術からの大抵の文献は、均一系触媒による反応に関する。この場合に最も普通に挙げられるのは、塩化カルシウム(例えばChemical Industries 2003, 89, 559-564;Zeitschrift fuer Naturforschung 1976, 328-337及び338-345において)、塩化アンモニウム(例えば特開2003−206277号公報(JP 2003-206277 A);特開2001−31651号公報(JP 2001-31651 A);特開平4−154762号公報(JPH4-154762 A)において)及びヒドラジン誘導体(例えば特開昭54−88275号公報(JPS54-88275 A)、特開昭54−112873号公報(JPS54-112873 A)において)である。しかしながら、これらの触媒を使用する場合に問題が起こる。したがって、例えば、塩化カルシウムの使用は、極めてゆっくりとした反応が行われるという欠点を有する。塩化アンモニウムの場合に、その反応速度はより高いが、しかし、使用される塩化アンモニウムは、鋼に対して極めて高い腐食性を示す。他方では、ヒドラジン誘導体は、極めて高い毒性を示す。
【0006】
対照的に、不均一系触媒上の反応は、例えば独国特許出願公開第2807172号明細書(DE 28 07 172 A1)及び中国特許出願公開第103224465号明細書(CN 103224465 A)にも、記載されている。
【0007】
TAAは、一般に、アセトンが大過剰量で存在し、かつ反応相手及び溶剤の双方として利用されるマトリックス中で、製造される。したがって、該反応の終了時に、TAAの他に、大きな割合のアセトンと、未反応のアンモニアと、縮合により形成される水と、均一系触媒法において該触媒とを含有する、粗生成物が生じる。加えて、さらなる副成分、例えば非環状縮合生成物(例えばジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、メシチルオキシド、ホロン等)、環状縮合生成物[例えばアセトニン、2,2,4,6−テトラメチル−2,3−ジヒドロピリジン(以下、“TMDHピリジン”)]又はより高分子量の縮合生成物(“高沸成分”)が、存在する。
【0008】
一部の非環状の付加及び縮合の生成物(例えばジアセトンアルコール[4−ヒドロキシ−4−メチルペンタン−2−オン]、ジアセトンアミン[4−アミノ−4−メチルペンタン−2−オン]、メシチルオキシド[4−メチルペンタ−3−エン−2−オン]、ホロン等)は、それらに関しては、反応物としてのアセトンの代わりにアンモニアと反応してTAAを得ることができ、該TAAは、例えば、プロセス内部の再循環流を用いる方法において利用される(独国特許出願公開第2807172号明細書(DE 28 07 172 A1))。
【0009】
加えて、従来技術には、アセトンあるいはまたこれらのアセトン縮合生成物から出発する、TAA合成が記載されている。
【0010】
中国特許出願公開第108383704号明細書(CN 108383704 A)には、TAAの合成において形成される副生物を回分式で使用してのアセトンの製造が記載されており、ついでこのアセトンを今度は出発物質として使用することができる。この場合に、水は、副生物混合物に触媒の存在下で添加され、かつ副生物は開裂される。
【0011】
中国特許出願公開第108484483号明細書(CN 108484483 A)には、蒸留及び結晶化を組み合わせる、TAAを精製する方法が記載されている。
【0012】
中国特許出願公開第108383776号明細書(CN 108383776 A)には、TAAの合成において形成された副生物の除去及び続いてTAA合成工程における再使用が記載されている。
【0013】
しかしながら、出発物質としてのこれらの副生物の使用は、一部の問題を必然的に伴う。まず最初に、それらの副生物は、アセトンよりも低い反応性を有し、かつ一部には、はるかにずっとゆっくりと反応する。メシチルオキシドのみが、アセトンに匹敵する反応性を有する。したがって、さらなるTAAの合成のための出発物質としてのこれらの化合物の使用は、大規模な工業的方法においてまさに不利である。
【0014】
第二に、TAA合成のための従来の方法のさらなる欠点は、記載された副生物が、過剰のアセトン及び所望の生成物TAAから除去するのに費用がかかることである。典型的な副生物の沸点、ジアセトンアルコール(CAS番号123−42−2;標準圧力での沸点:166℃)、アセトニン(CAS番号556−72−9;沸点:約170℃)、ジアセトンアミン(CAS番号625−04−7、沸点 約180℃)、ホロン(CAS番号504−20−1;標準圧力での沸点:197℃)の沸点は、アセトン(CAS番号67−64−1;標準圧力での沸点:56℃)又はメシチルオキシド(CAS番号141−79−7;標準圧力での沸点:130℃)及びTAA(標準圧力での沸点:205℃)の沸点の間にあり、かつイソホロン(CAS番号78−59−1;標準圧力での沸点:215℃)の場合には、これらよりもいっそう高い。
【0015】
結果として、得られる反応混合物からのTAAの精製は煩雑である。蒸留による精製において、所望の生成物TAAをできる限り純粋な形で、かつ副生物からできる限り完全に除去するために、多くの蒸留段が必要である。そしてまた、これは、高価な蒸留装置、例えば、高い理論段数を有するカラムを必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】独国特許出願公開第2429937号明細書
【特許文献2】米国特許第4536581号明細書
【特許文献3】特開昭54−88275号公報
【特許文献4】独国特許出願公開第2429935号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第2429936号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第2352127号明細書
【特許文献7】特開2003−206277号公報
【特許文献8】特開2001−31651号公報
【特許文献9】特開平4−154762号公報
【特許文献10】特開昭54−112873号公報
【特許文献11】独国特許出願公開第2807172号明細書
【特許文献12】中国特許出願公開第103224465号明細書
【特許文献13】中国特許出願公開第108383704号明細書
【特許文献14】中国特許出願公開第108484483号明細書
【特許文献15】中国特許出願公開第108383776号明細書
【特許文献16】欧州特許出願公開第2706056号明細書
【特許文献17】独国特許出願公開第102010062804号明細書
【特許文献18】カナダ国特許発明第772201号明細書
【特許文献19】米国特許第4831146号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Zeitschrift fuer Naturforschung 1976, 328-337及び338-345
【非特許文献2】Chemical Industries 2003, 89, 559-564
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、上記の問題を有しておらず、特に、できる限り純粋であるTAA生成物を提供する一方で、同時にそのTAA合成において得られる副生物の効率的な再利用を可能にする、TAAを合成する効率的な方法への需要があった。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題は、本発明によって達成される。特に、驚くべきことに、TAAを製造するのに特に効率的な方法が、アセトン及びアンモニアからのTAAの製造において得られる副生物を、水と反応させ、それによりその粗生成物を、さらにTAAを得るためのアンモニアとの反応において特に反応性である種で豊富化させることによって、可能になることが確かめられた。さらに、驚くべきことに、こうして処理された粗生成物からのアセトン及びその他の豊富化した種、例えばメシチルオキシドの蒸留による除去が、はるかにより効率的に実施することができ、ひいてはこれらを、より良好にリサイクルすることができることが証明された。
【0020】
これは、いっそう驚くべきことであった、それというのも、TAAを得るためのアンモニアとアセトンとの反応からの粗生成物は、水を含むからである。しかしながら、本発明の有利な効果を実現するためには、付加的な水の添加が必要である。
【0021】
それに応じて、本発明の方法は、トリアセトンアミンを製造する方法であって、次の工程:
(a)アセトン及びアンモニアを触媒K1の存在下で反応させて、トリアセトンアミンと、アセトンと、メシチルオキシドと、ジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン、ホロン、イソホロンからなる群から選択される少なくとも1種の副生物とを含む、粗生成物RP1を得る工程、
(b)RP1からアセトン及び/又はメシチルオキシドを少なくとも部分的に蒸留により除去する工程、
(c)アンモニア及び任意にさらなるアセトンを、工程(b)においてRP1から除去されたアセトン及び/又はメシチルオキシドに添加し、かつ添加されたアンモニアを、アセトン及び/又はメシチルオキシドと触媒K2の存在下で少なくとも部分的に反応させてTAAを得て、その結果としてトリアセトンアミンを含む粗生成物RP2を得る工程
を含み、前記方法は、
(d)工程(b)において生じるRP1からのアセトン及び/又はメシチルオキシドの蒸留による除去の前及び/又は最中に、水を、工程(b)におけるRP1に添加し、かつジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン、ホロン、イソホロンからなる群から選択される、RP1中の副生物のうち少なくとも1種を、水と少なくとも部分的に反応させて、RP1中の該副生物のうち少なくとも1種を、少なくとも部分的にメシチルオキシド及び/又はアセトンへ開裂させる
ことによって特徴付けられる。
【0022】
1.工程(a)
本発明の方法の工程(a)において、アセトン及びアンモニアは、触媒K1の存在下で反応される。
【0023】
この反応は、トリアセトンアミンを含む粗生成物RP1を与える。この粗生成物は、所望の生成物TAAに加えて、未反応のアセトン並びに副生物としてのメシチルオキシドも含む。メシチルオキシドは、アンモニア及びアセトンを反応させてTAAを得る際に、アセトン2分子のアルドール縮合により少なくとも少量で常に形成される、最も単純な縮合生成物である。アセトンとそれ自体又はアンモニアとのより高分子量の縮合生成物も、工程(a)における反応において形成され、したがって、該粗生成物RP1中に含まれる。これらは主に、ジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン、ホロン、イソホロンからなる群から選択される、好ましくはジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン及びイソホロンからなる群から選択される、副生物である。
【0024】
工程(a)における反応は、本発明の方法全体のように、連続的に又は回分式操作において実施することができる。
【0025】
回分式操作の場合に、全ての反応物は、好ましくは一緒に添加され、ついでその反応混合物が加熱される。この場合に、常用のあらゆるタイプの反応器、例えば撹拌型反応器、ループ型反応器、又は内部熱交換器を備えた反応器が、反応器として適している。
【0026】
連続操作において、全ての化学物質は、好ましくは、同時にその反応温度で配量される。連続的な反応において、当業者に公知のあらゆる反応器、例えば、連続流管、連続撹拌槽、撹拌槽カスケード、並びにこれらの個々の要素の可能な組み合わせを使用することができる。この場合に好ましいのは、1つ以上の反応器と、内部又は外部の回路との組み合わせ、ついで流管特性を有する下流の反応器を使用することである。
【0027】
回分式操作における工程(a)における反応時間は、1〜15時間の範囲内、好ましくは3〜9時間の範囲内、特に好ましくは5〜7時間の範囲内である。連続的な方法操作のための反応時間は、該反応器中の反応物の全滞留時間により得られ、かつ回分式操作のために挙げた範囲内である。
【0028】
連続操作におけるアンモニアについての“体積空間速度”は、工程(a)において、殊に0.01〜124.20h−1、好ましくは0.03〜5.25h−1、最も好ましくは0.06h−1である(これは、この反応器を、1時間あたりかつ該反応器の体積あたり流れるアンモニアの体積に相当し、“LHSV”と略称される)。
【0029】
連続操作におけるアセトンについての“体積空間速度”は、工程(a)において、殊に0.15〜1.33h−1、好ましくは0.66〜1.17h−1である(これは、この反応器を、1時間あたりかつ該反応器の体積あたり流れるアセトンの体積に相当する)。
【0030】
工程(a)における反応は、さらなる溶剤の存在下で又は単にアセトン中で、すなわちさらなる溶剤を添加せずに、行うことができる。溶剤が工程(a)において使用される場合に、該反応を妨げないあらゆる溶剤を使用することができる。特に、可能な溶剤は、脂肪族溶剤、好ましくはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、テトラメチルシラン;芳香族溶剤、好ましくはベンゼン、トルエン、キシレン;エーテル化合物、好ましくはジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル;ハロゲン化溶剤、好ましくはジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン;アルコール、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert−ブタノール;エステル、好ましくは酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルである。特に好ましくは、工程(a)における反応は、アセトン中で、さらなる溶剤を添加せずに行われる。
【0031】
工程(a)における反応は、好ましくは、高められた温度で、殊に20℃〜180℃の範囲内、好ましくは40℃〜100℃の範囲内、より好ましくは55℃〜90℃の範囲内、よりいっそう好ましくは60℃〜90℃の範囲内の温度で、最も好ましくは75℃で、実施される。
【0032】
工程(a)における反応は、殊に、それらの成分の自生圧又は高められた圧力でのいずれかで実施される。したがって、工程(a)における反応は、好ましくは、1〜16barの範囲内の圧力、より好ましくは1〜15barの範囲内の圧力で、よりいっそう好ましくは7〜14barの範囲内の圧力で、さらによりいっそう好ましくは12barで、実施される。
【0033】
アンモニアは、好ましくは、本発明の方法の工程(a)において純物質として、すなわちガスとして、配量され、殊に、該反応中にアセトン中に溶解して又はその反応混合物中に溶解して存在する。
【0034】
アセトンは、好ましくは、工程(a)において純物質として配量される。あるいは、本発明の方法の先行するサイクルの工程(b)において除去され、それによりリサイクルされるアセトンを使用することができる。そうすると、該アセトンとそれ自体又はアンモニアとの縮合生成物が、工程(a)における反応溶液中にアセトン及びアンモニアと一緒に存在しうることは言うまでもない。これらの縮合生成物は、アンモニア及びアセトンを反応させてTAAを得る、先行する工程に由来していてよい。
【0035】
本発明の方法の工程(a)は、触媒K1の存在下で実施される。このタイプの反応のために従来技術において挙げられたあらゆる触媒が、触媒K1として適している。この場合に、該触媒K1は、均一系又は不均一系であってよいが、しかし、好ましくは不均一系である。
【0036】
このタイプの反応のために従来技術に記載されるあらゆる均一系触媒、例えば、欧州特許出願公開第2706056号明細書(EP 2 706 056 A1)に記載されるような、ブレンステッド酸、これらの酸の塩又はルイス酸が、均一系触媒K1として適している。
【0037】
本発明の文脈での“ブレンステッド酸”という用語は、殊に塩酸、硫酸、硝酸、有機酸(RCOOH)又はスルホン酸(RSOH)を包含し、ここで、Rは、飽和、不飽和、分岐状、非分岐状、閉環、開鎖の脂肪族、芳香族、置換又は非置換の炭化水素基からなる群から選択される。本発明の文脈での置換の炭化水素基は、ヘテロ原子で置換された炭化水素基、殊に1個以上の−OH、−NH、−CN、アルコキシ及び/又はハロゲン基で置換された、好ましくは1個以上のハロゲン基で置換された、特に好ましくはF、Cl、Br及びIから選択される1個以上の基で置換された、最も特に好ましくはF及びClから選択される1個以上の基で置換された、炭化水素基である。
【0038】
本発明の文脈での“ブレンステッド酸の塩”は、殊に、アンモニウム塩(すなわちアンモニア、アミン、ヒドラジン類、ヒドロキシルアミンとの塩)又はホスホニウム塩(すなわちホスファンとの塩)である。本発明の文脈でのルイス酸は、殊に周期表の第4族又は第13族からの化合物、好ましくはハロゲン化物(AlCl、BF、TiCl)、アルコキシド[Al(OR、B(OR、Ti(OR]又はアルキル化合物(例えばAlR)であり、ここで、Rは、飽和、不飽和、分岐状、非分岐状、閉環、開鎖の脂肪族、芳香族、置換又は非置換の炭化水素基からなる群から選択される。
【0039】
本発明の文脈でのルイス酸は、ルイス酸性のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩(例えばCaCl、MgCl、LiCl)でもある。
【0040】
K1が均一系触媒である場合に好ましいのは、前記触媒が、アンモニウム塩の群、殊に、アンモニアと、強ブレンステッド酸[例えば塩酸、硫酸、硝酸、有機酸(R**COOH)又はスルホン酸(R**SOH)、ここで、R**は、飽和、不飽和、分岐状、非分岐状、閉環、開鎖の脂肪族、芳香族、置換又は非置換の炭化水素基からなる群から選択される]との塩を含む群から、選択されることである。
【0041】
K1が均一系触媒である場合に好ましいのは、前記触媒が硝酸アンモニウムであることである。硝酸アンモニウムは、安価で、非毒性で、ハロゲン化物フリーで、したがってより腐食性でない利点を有する。
【0042】
しかしながら、触媒K1として、好ましいのは、不均一系触媒、殊に、例えば独国特許出願公開第2807172号明細書(DE 28 07 172 A1)、中国特許出願公開第103224465号明細書(CN 103224465 A)又は独国特許出願公開第102010062804号明細書(DE 10 2010 062 804 A1)に記載されるような、固体酸触媒を使用することである。これらは、その反応媒体中にほとんど溶けない触媒である。このためには、好ましいのは、無機又は有機であり、かつ活性酸基、好ましくはスルホン酸エステル基又はリン酸エステル基を有する触媒を使用することである。
【0043】
それに応じて、K1は、殊に、ベントナイト及び/又はモンモリロナイト型のアルミニウムヒドロシリケート、ゼオライト型、モルデナイト型、エリオナイト型のケイ酸アルミニウムをベースとする無機イオン交換体又はカナダ国特許発明第772201号明細書(CA 772 201)に記載されたような、リン酸で700〜1100℃で処理されたけいそう土からなる群から選択される。
【0044】
K1にとって特に好ましい不均一系触媒は、イオン交換樹脂、殊にカチオン交換樹脂である。これらは、好ましくは酸性のものである。
【0045】
K1のためのイオン交換樹脂は、殊に、無機系(例えば二酸化ケイ素)又は有機系(例えばポリスチレン又はポリスチレンコポリマー、例えばスチレン−ジビニルベンゼンコポリマー)、好ましくはプロトン酸基、殊にアルキルスルホン酸エステル基、スルホン酸エステル基(−SO)、リン酸エステル基、殊にスルホン酸エステル基を有する有機系のものを包含する。
【0046】
K1にとって特に好ましい不均一系触媒は、次の群から選択される:
− ポリマー樹脂、殊にポリスチレン又はスチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、好ましくはポリスチレン、及び官能基としてプロトン酸、殊に−SO基を有する触媒(Amberlyst(登録商標) 15、Amberlite(登録商標) 200、Lewatit(登録商標) SP 120又はLewatit(登録商標) K2621として商業的に入手可能);これと一緒にCAS番号:28210−41−5を有するポリスチレンスルホネートを使用してもよい;
− プロトン酸、殊に高分子型のスルホン酸を有し、かつペルフルオロ化されていてよい触媒(独国特許出願公開第102010062804号明細書(DE 10 2010 062 804 A1)、米国特許第4831146号明細書(US 4,831,146)に記載される)。これは、例えば、スルホン化テトラフルオロエチレン(CAS番号:31175−20−9)又はキャリヤー材料として二酸化ケイ素を有する高分子型の固体担持ペルフルオロ化スルホン酸であってよい。そのような触媒は、とりわけ、商品名Nafion(登録商標)、Aciplex(登録商標) F、Femion(登録商標)、Neosepta(登録商標)、Fumion(登録商標) Fで入手可能である。好ましい触媒は、Nafion(登録商標) SAC-13である。Nafion(登録商標) SAC-13は、多孔質二酸化ケイ素粒子上にNafion(登録商標)が約13質量%の担持量で吸着されているものである;
− ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)、LubrizolによりPolyAMPS(登録商標)として販売されている。
【0047】
最も好ましくは、K1として、ポリマー樹脂、殊にポリスチレン又はスチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、好ましくはポリスチレン、及び官能基としてプロトン酸、殊に−SO基を有する不均一系触媒が使用される(Amberlyst(登録商標) 15、Amberlite(登録商標) 200、Lewatit(登録商標) SP 120又はLewatit(登録商標) K2621として商業的に入手可能)。
【0048】
本発明の方法の工程(a)における反応物の使用比は、幅広い範囲で選択することができ;アセトンは、殊に、アンモニアに対して過剰量で使用される。好ましくは、工程(a)において使用されるアセトンの、工程(a)において使用されるアンモニアに対するモル比は、3:1〜20:1であり、ここで、6:1〜10:1の比が好ましく、かつ7:1の比が特に好ましい。
【0049】
使用される触媒K1の量は、特に限定されず、かつ当業者により決定することができる。典型的に、該触媒が、該ブレンステッド酸、これらの酸の塩又はルイス酸、好ましくはアンモニウム塩の群からの均一系触媒である、よりいっそう好ましくは硝酸アンモニウムである場合には、これらは、アンモニアの、触媒、好ましくは硝酸アンモニウムに対するモル比で、1:0.8〜1:0.02の範囲内で使用することができる。最も特に好ましくは、アセトン:アンモニア:硝酸アンモニウムのモル比は、7〜8:0.9〜1.1:0.085〜0.098の範囲内である。
【0050】
固体の酸性イオン交換体がK1に使用される好ましい実施態様において、これは、固定層として、例えば、工程(a)において使用されるアセトンと、―使用された場合には―該メシチルオキシドとの全量を基準として10〜20体積%の量で使用することができる。
【0051】
本発明の方法の工程(a)の終了時に、所望の生成物トリアセトンアミンと一緒に、当初に使用された反応物アセトン、並びに副生物としてのメシチルオキシドと、ジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン、ホロン、イソホロンからなる群から選択される、好ましくはジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン、ホロン及びイソホロンからなる群から選択される、少なくとも1種の副生物とをさらに含有する、粗生成物RP1が得られる。
【0052】
RP1中のTAA、アセトン、メシチルオキシド、水及び挙げた副生物の割合は、さらに限定されず、かつその化学量論及び特定の反応条件から生じる。それぞれの化合物の割合は、GCにより決定することができる。例えば、該反応後に、混合物は、アセトン55〜60質量%、メシチルオキシド10質量%、TMDHピリジン5〜6質量%、ジアセトンアミンと、アセトンアルコールと、ホロンとの合計4〜6質量%、TAA 14〜16質量%、及びTAAよりも高い沸点の成分(例えばイソホロン)3〜4質量%の含量を含有し、かつ水の割合は7質量%である。
【0053】
2.工程(b)
本発明の方法の工程(b)において、アセトン及び/又はメシチルオキシドは、RP1から少なくとも部分的に除去される。これは、蒸留により、好ましくは蒸留塔中で、実施される。
【0054】
工程(b)の最中又は前、好ましくは前に、該触媒K1も、任意に除去される。これは、塩基の添加により起こりうる。例えば、NaOHは、K1がアンモニウム塩である場合に添加され、ついで沈澱析出する硝酸ナトリウムが続いて除去される。
【0055】
不均一系触媒を使用する場合に、別個の精製工程は、不要であるか、又は少なくとも著しく容易である、それというのも、例えば固定層触媒を使用する場合に、この触媒は、該反応器中に残留するか、又は他の場合に、その反応槽中に残留しうる及び/又はろ過により除去することができるからである。この理由のためにも、K1のために不均一系触媒を使用することが好ましい。
【0056】
3.工程(d)
本発明は目下、工程(b)、すなわちRP1からのアセトン及び/又はメシチルオキシドの蒸留による除去の前及び/又は最中に、水が、RP1に添加され、かつホロン、ジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン、イソホロンからなる群から選択される、好ましくはジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン、イソホロンからなる群から選択される、RP1中の該副生物のうち少なくとも1種が、水と少なくとも部分的に反応されるので、RP1中の該副生物のうち少なくとも1種が、少なくとも部分的にメシチルオキシド及び/又はアセトンへ開裂されるという事実に基づいている。この工程は、以下、“工程(d)”と呼ばれる。
【0057】
本発明の方法の工程(d)は、RP1中のより反応性でない副生物のうち少なくとも1種、すなわち、ジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン、ホロン、イソホロンからなる群から選択される少なくとも1種、好ましくはジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン、イソホロンからなる群から選択される少なくとも1種が反応して、アセトン及び/又はメシチルオキシドを得ることを保証する。これは、これらの中沸点(“メシチルオキシドとTAAの間の沸点の”の意味での)又はより高沸点の(“TAAよりも高い沸点の”の意味での)副生物、例えばイソホロンをもたらして、低沸点のメシチルオキシド及びアセトンに分解され、このことは、殊に該粗生成物RP1からの該TAAの蒸留による精製をかなり単純化させる。
それに加えて、より反応性の種であるアセトン、及びその最も反応性の等価体であるメシチルオキシドは有利に、代わりに中沸点の及びより高沸点の副生物が、続く工程においてアンモニアと反応させてさらなるTAAを得なければならない場合よりも著しく良好に、続く工程において再びアンモニアと反応させてさらなるTAAを得ることができる。
【0058】
工程(d)によれば、水は、工程(b)において行われるRP1からのアセトン及び/又はメシチルオキシドの蒸留による除去の前及び/又は最中に、RP1に添加される。“RP1からのアセトン及び/又はメシチルオキシドの除去の前”の水の添加は、この時点が、工程(a)及び(b)の間にあることを意味することは言うまでもない、それというのも、工程(a)の後でのみ、該粗生成物RP1が得られるからである。
【0059】
この場合に、工程(d)における水の添加は、本発明を実施するのに本質的である、それというのも、結果として、その平衡は、該副生物の側から、該副生物の開裂生成物、すなわち、アセトンと一緒の主にメシチルオキシドの側へ移動されるからである。該平衡の十分な移動を保証するためには、工程(a)における反応から生じ、かつRP1中に少なくとも部分的に依然として存在しうる水では不十分である。むしろ、工程(d)において少なくとも特定の量の追加の水をRP1に添加することが、次の反応における平衡を、所望の生成物アセトン及び/又はメシチルオキシドの側に移動させるために必要である。
【0060】
特に、本発明の方法の工程(d)において、水は、それぞれ、RP1中に含まれるホロン、ジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン及びイソホロンの質量の合計に基づいて、≧0.1質量%、好ましくは≧0.5質量%、より好ましくは≧1質量%、よりいっそう好ましくは≧5質量%、さらにより好ましくは5〜40質量%の範囲内、さらによりいっそう好ましくは10〜20質量%の範囲内の量で添加される。この割合は、当業者により、ガスクロマトグラフィーを使用して決定することができる。RP1の全質量は、連続的な方法においてその流量を決定することにより(質量流量計)、及び回分式の方法において秤量により、決定することができる。
【0061】
あるいは、本発明の方法の工程(d)において、水は、それぞれ、本発明の方法の工程(a)において使用されるアセトンの量の全質量に基づいて、≧1質量%、好ましくは≧3質量%、より好ましくは≧4質量%、よりいっそう好ましくは≧5質量%、さらにより好ましくは5〜40質量%の範囲内、さらによりいっそう好ましくは10〜20質量%の範囲内の量で添加することができる。
【0062】
アセトン及び/又はメシチルオキシドを得るための、工程(d)において添加される水と、ホロン、ジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン、イソホロンからなる群から選択される、好ましくはジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン、イソホロンからなる群から選択される、RP1中の副生物のうち少なくとも1種との反応は、ついで、当業者に周知の条件下で実施することができる。これは、該副生物を加水分解して、メシチルオキシド及び/又はアセトンを得る。このために使用される温度範囲は、殊に<205℃、好ましくは<204℃であり、より好ましくは30℃〜200℃の範囲内であり、よりいっそう好ましくは70℃〜185℃の範囲内である。
【0063】
好ましくは、本発明の方法の工程(d)によれば、該水が、RP1に添加されるのに対し、工程(b)においてアセトン及び/又はメシチルオキシドは、RP1から少なくとも部分的に除去される。
【0064】
この実施態様は、工程(b)におけるRP1からのアセトン及び/又はメシチルオキシドの少なくとも部分的な蒸留による除去が蒸留塔中で行われる場合に、よりいっそう好ましい。
【0065】
さらによりいっそう好ましくは、アセトン及び/又はメシチルオキシドを得るための、工程(d)において添加される水と、ホロン、ジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン、イソホロンからなる群から選択される、好ましくはジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン、イソホロンからなる群から選択される、RP1中の副生物のうち少なくとも1種との反応は、ついでその気相中で行われる。
【0066】
この場合に、該水は殊に、蒸留による除去中に、該蒸留塔に、該蒸留塔中への水の供給によるか又は該蒸留塔への蒸気の添加によるかのいずれかで供給される。ついで、アセトン及び/又はメシチルオキシドを得るための、ジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン、ホロン、イソホロンの副生物、好ましくはジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン、イソホロンからなる群から選択される副生物のうち少なくとも1種と、水との反応は、該蒸留塔中で行われる。
【0067】
この実施態様は、特に有利であることが判明している、それというのも、この実施態様は、該副成分が、目標とする方法で分解され、かつ該TAAの望ましくない逆反応が抑制されることを特に良好に保証するからである。これは、工程(b)における蒸留において使用される温度範囲が、TAAの沸点を下回る場合に、特に良好に保証され、したがって好ましく、ここで、その圧力は殊に、標準圧力であり、好ましくは標準圧力で<205℃、より好ましくは標準圧力で<204℃、よりいっそう好ましくは標準圧力で30℃〜200℃の範囲内、さらによりいっそう好ましくは標準圧力で70℃〜185℃の範囲内である。
【0068】
4.工程(c)
ついで、本発明の方法の工程(c)において、アンモニア及び任意にアセトンを、工程(b)においてRP1から除去されたアセトン及び/又はメシチルオキシドに添加し、かつアセトン及び/又はメシチルオキシドを、添加されたアンモニアと、触媒K2の存在下で少なくとも部分的に反応させて、TAAを得る。
【0069】
この反応は再び、トリアセトンアミンを含む粗生成物RP2を与える。この粗生成物は、特に、所望の生成物TAAと一緒に、未反応のアセトン並びに副生物としてメシチルオキシド並びにアセトンとそれ自体又はアンモニアとのより高分子量の縮合生成物も含む。これらは主に、ジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン、ホロン、イソホロンからなる群から選択される、好ましくはジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン及びイソホロンからなる群から選択される、副生物である。
【0070】
本発明の方法の工程(c)において、この場合に、特に、アンモニアは、工程(c)において使用されるアセトンの各モルに対して、0.05〜0.33mol、好ましくは0.10〜0.166mol、より好ましくは0.143molのアンモニアが添加されるような量で、添加される。
【0071】
アセトンに対して、特に、工程(c)において使用されるメシチルオキシドの各モルに対して、添加されるこのアンモニアに加えて、0.1〜0.66mol、好ましくは0.25〜0.33mol、より好ましくは0.286molのアンモニアが添加される。
【0072】
工程(c)における反応は、さらなる溶剤の存在下で又は単にアセトン中で、すなわちさらなる溶剤を添加せずに、行うことができる。溶剤が工程(c)において使用される場合に、該反応を妨げないあらゆる溶剤を使用することができる。特に、可能な溶剤は、脂肪族溶剤、好ましくはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、テトラメチルシラン;芳香族溶剤、好ましくはベンゼン、トルエン、キシレン;エーテル化合物、好ましくはジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル;ハロゲン化溶剤、好ましくはジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン;アルコール、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert−ブタノール;エステル、好ましくは酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルである。特に好ましくは、工程(c)における反応は、アセトン中で、さらなる溶剤を添加せずに行われる。
【0073】
連続操作において、全ての化学物質は、好ましくは、同時にその反応温度で配量される。連続的な反応において、当業者に公知のあらゆる反応器、例えば連続流管、連続撹拌槽、撹拌槽カスケード、並びにこれらの個々の要素の可能な組み合わせを使用することができる。この場合に好ましいのは、1つ以上の反応器と、内部又は外部の回路との組み合わせ、ついで流管特性を有する下流の反応器を使用することである。
【0074】
回分式操作における工程(c)における反応時間は、1〜15時間の範囲内、好ましくは3〜9時間の範囲内、特に好ましくは5〜7時間の範囲内である。連続的な方法操作のための反応時間は、該反応器中の反応物の全滞留時間により得られ、かつ回分式操作のために挙げた範囲内である。
【0075】
連続操作におけるアンモニアについての“体積空間速度”は、工程(c)において、殊に0.01〜124.20h−1、好ましくは0.03〜5.25h−1、最も好ましくは0.06h−1である(これは、この反応器を、1時間あたりかつ該反応器の体積あたり流れるアンモニアの体積に相当する)。
【0076】
連続操作におけるアセトンについての“体積空間速度”は、工程(c)において、殊に0.15〜1.33h−1、好ましくは0.66〜1.17h−1である(これは、この反応器を、1時間あたりかつ該反応器の体積あたり流れるアセトンの体積に相当する)。
【0077】
工程(c)における反応は、好ましくは、高められた温度で、殊に20℃〜180℃の範囲内、好ましくは40℃〜100℃の範囲内、特に好ましくは55℃〜90℃の範囲内、よりいっそう好ましくは60℃〜90℃の範囲内の温度で、よりいっそう好ましくは75℃で、実施される。
【0078】
工程(c)における反応は、殊に、それらの成分の自生圧又は高められた圧力のいずれかで実施される。したがって、工程(c)における反応は、好ましくは、1〜16barの範囲内の圧力で、より好ましくは1〜15barの範囲内の圧力で、よりいっそう好ましくは7〜14barの範囲内の圧力で、よりいっそう好ましくは12barで実施される。
【0079】
アンモニアは、好ましくは、本発明の方法の工程(c)において、純物質として、すなわちガスとして、配量され、殊に、該反応中にアセトン中に溶解して又はその反応混合物中に溶解して存在する。
【0080】
本発明の方法の工程(c)において、本発明の方法の工程(b)においてRP1から除去されたアセトン及び/又はメシチルオキシドが、反応物として使用される。該反応を該TAAの側に有利にさらに移動させるために、付加的なアセトンは、本発明の方法の工程(c)において添加することができる。
【0081】
本発明の方法の工程(c)は、触媒K2の存在下で実施される。このタイプの反応のために従来技術に挙げられたあらゆる触媒が、触媒K2として適している。この場合に、該触媒K2は、均一系又は不均一系であってよいが、しかし、好ましくは不均一系である。
【0082】
このタイプの反応のために従来技術に記載されるあらゆる均一系触媒、例えば、欧州特許出願公開第2706056号明細書(EP 2 706 056 A1)に記載されるような、ブレンステッド酸、これらの酸の塩又はルイス酸が、均一系触媒K2として適している。
【0083】
K2が均一系触媒である場合に好ましいのは、前記触媒が、アンモニウム塩の群、殊にアンモニアと、強ブレンステッド酸[例えば塩酸、硫酸、硝酸、有機酸(R**COOH)又はスルホン酸(R**SOH)、ここで、R**は、飽和、不飽和、分岐状、非分岐状、閉環、開鎖の脂肪族、芳香族、置換又は非置換の炭化水素基からなる群から選択される]との塩を含む群から選択されることである。
【0084】
K2が均一系触媒である場合に好ましいのは、前記触媒は硝酸アンモニウムであることである。硝酸アンモニウムは、安価で、非毒性で、ハロゲン化物フリーで、したがってより腐食性でない利点を有する。
【0085】
しかしながら、触媒K2として、好ましいのは、不均一系触媒、殊に、例えば独国特許出願公開第2807172号明細書(DE 28 07 172 A1)、中国特許出願公開第103224465号明細書(CN 103224465 A)又は独国特許出願公開第102010062804号明細書(DE 10 2010 062 804 A1)に記載されるような、固体酸触媒を使用することである。これらは、その反応媒体中にほとんど溶けない触媒である。このためには、好ましいのは、無機又は有機であり、かつ活性酸基、好ましくはスルホン酸エステル基又はリン酸エステル基を有する触媒を使用することである。
【0086】
それに応じて、K2は、殊に、ベントナイト及び/又はモンモリロナイト型のアルミニウムヒドロシリケート、ゼオライト型、モルデナイト型、エリオナイト型のケイ酸アルミニウムをベースとする無機イオン交換体又はカナダ国特許発明第772201号明細書(CA 772 201)に記載されたようなリン酸で700〜1100℃で処理されたけいそう土からなる群から選択される。
【0087】
K2にとって特に好ましい不均一系触媒は、イオン交換樹脂、殊にカチオン交換樹脂である。これらは、好ましくは酸性のものである。
【0088】
K2のためのイオン交換樹脂は、殊に、無機系(例えば二酸化ケイ素)又は有機系(例えばポリスチレン又はポリスチレンコポリマー、例えばスチレン−ジビニルベンゼンコポリマー)、好ましくはプロトン酸基、殊にアルキルスルホン酸エステル基、スルホン酸エステル基(−SO)、リン酸エステル基、殊にスルホン酸エステル基を有する有機系のものを包含する。
【0089】
K2にとって特に好ましい不均一系触媒は、次の群から選択される:
− ポリマー樹脂、殊にポリスチレン又はスチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、好ましくはポリスチレン、及び官能基としてプロトン酸、殊に−SO基を有する触媒(Amberlyst(登録商標) 15、Amberlite(登録商標) 200、Lewatit(登録商標) SP 120又はLewatit(登録商標) K2621として商業的に入手可能);これと一緒にCAS番号:28210−41−5を有するポリスチレンスルホネートを使用してもよい;
− プロトン酸、殊に高分子型のスルホン酸を有し、かつペルフルオロ化されていてよい触媒(独国特許出願公開第102010062804号明細書(DE 10 2010 062 804 A1)、米国特許第4831146号明細書(US 4,831,146)に記載される)。これは、例えば、スルホン化テトラフルオロエチレン(CAS番号:31175−20−9)又はキャリヤー材料として二酸化ケイ素を有する高分子型の固体担持ペルフルオロ化スルホン酸であってよい。そのような触媒は、とりわけ、商品名Nafion(登録商標)、Aciplex(登録商標) F、Femion(登録商標)、Neosepta(登録商標)、Fumion(登録商標) Fで入手可能である。好ましい触媒は、Nafion(登録商標) SAC-13である。Nafion(登録商標) SAC-13は、多孔質二酸化ケイ素粒子上にNafion(登録商標)が約13質量%の担持量で吸着されているものである;
− ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)、LubrizolによりPolyAMPS(登録商標)として販売されている。
【0090】
最も好ましくは、K2として、ポリマー樹脂、殊にポリスチレン又はスチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、殊にポリスチレン、及び官能基としてプロトン酸、殊に−SO基を有する不均一系触媒が使用される(Amberlyst(登録商標) 15、Amberlite(登録商標) 200、Lewatit(登録商標) SP 120又はLewatit(登録商標) K2621として商業的に入手可能)。
【0091】
工程(c)において使用される触媒K2の量は、特に限定されず、かつ当業者により決定することができる。典型的に、該触媒が、該ブレンステッド酸、これらの酸の塩又はルイス酸、好ましくはアンモニウム塩の群からの均一系触媒であり、よりいっそう好ましくは硝酸アンモニウムである場合には、これらは、アンモニアの、触媒、好ましくは硝酸アンモニウムに対するモル比で、1:0.8〜1:0.02の範囲内で使用することができる。最も特に好ましくは、アセトン:アンモニア:硝酸アンモニウムのモル比は、7〜8:0.9〜1.1:0.085〜0.098の範囲内である。
【0092】
固体の酸性イオン交換体がK2に使用される好ましい実施態様において、これは、固定層として、例えば、工程(c)において使用されるアセトン及びメシチルオキシドの全量を基準として10〜20体積%の量で、使用することができる。
【0093】
本発明の方法の工程(c)において、所望の生成物トリアセトンアミン及び任意に当初に使用された反応物アセトン及び/又はメシチルオキシド、並びに殊にジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン、ホロン、イソホロンからなる群から選択される、好ましくはジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン及びイソホロンからなる群から選択される、少なくとも1種の副生物を含有する、粗生成物RP2がついで得られる。
【0094】
ついで、RP2は、さらにまた本発明の方法の反応工程(b)に対応する反応工程にかけることができることは言うまでもない。
【0095】
本発明の方法の好ましい実施態様において、工程(a)における触媒K1及び本発明の方法の工程(c)における触媒K2は、互いに独立して、不均一系の、よりいっそう好ましくは固体の、酸触媒であり、より好ましくは上記で定義されたものである。最も好ましくは全ての、K1及びK2は同じである。
【0096】
5.TAAの除去
RP1及び/又はRP2からのTAAの除去は、さもなければ、結晶化、蒸留により、好ましくは蒸留を伴い、さらにより好ましくは下流の蒸留塔中で行われて、実施することができる。
【0097】
次の例は、本発明を説明するためのものであって、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0098】
1.反応
直列に接続された2つの円筒型反応器に、Lewatit K2621(官能基として−SOを有するポリスチレン触媒、Lanxess製)を、この触媒材料が、スクリーンの上下により区切られて配置されるように充填した。該触媒の床体積は、水で湿った状態でそれぞれ600mlであった。該反応器に、アセトン630g/h及びアンモニア25g/hで連続的に装入した。75℃の温度及び14barの圧力に調節した。その供給は、全体で、アセトン961.83g(16.58mol)であった。そのLHSV(液空間速度、すなわち、該反応器体積に対する、1時間あたりの添加される反応物の体積)は、該アンモニアについては0.03〜0.06h−1及び該アセトンについては0.66〜1.33h−1であった。
【0099】
2.I1:本発明の方法による、すなわち加水分解を伴う、後処理
上記1による試験からの反応器流出物1kgを、上記1で使用されたアセトンの量を基準として、水3〜5質量%と混合し、続いて精留塔上で蒸留により後処理した。蒸留は、ここで、全ての低沸成分(アセトン、メシチルオキシド、ジアセトンアルコール、ジアセトンアミン)が除去されるが;しかしながら、TMDHピリジン及びTAA及び形成されたさらなる高沸成分が、その底部から廃棄物又は有用生成物として除去されるのに十分な時間にわたって実施した。中間沸点成分、例えばアセトニン及びホロンは、できる限り多くの範囲で加水分解して低沸点の成分となり、結果として除去できた。
【0100】
その後、その缶出液中及び留出物中の多様な成分の割合を、GCにより決定した[カラム:HP-50(30m)、温度プログラム:5℃/分で60℃〜130℃、15℃/分で〜270℃、10分]。該反応器流出物中のそれぞれの成分、留出物及び缶出液の相対割合を決定し、かつこれは、次の第1表に列挙されている。次の第1表において、該反応流出物中の成分(水を除く)は、左から右へそれらの沸点に従って列挙されている(“NI”=同定されない(not identified))。
【0101】
最初の3つの行は、GC図における各成分の面積百分率(水を含めて)を与える。
【0102】
最後の行は次のものを与える:
該缶出液(200g)の全質量を基準として、該缶出液中のそれぞれの成分の質量を、該GCにおけるそれぞれの化合物の百分率割合から決定した。該缶出液中のそれぞれの成分のモル量、ひいてはそれぞれの成分に対応するアセトン当量のモル量も、それから計算することができる。
【0103】
この場合に、アセトンは、1アセトン当量に相当する。
この場合に、次の化合物は、2アセトン当量に相当する:メシチルオキシド(及び異性体)、ジアセトンアルコール、ジアセトンアミン。
この場合に、次の化合物は、3アセトン当量に相当する:アセトニン、ホロン、イソホロン。
【0104】
第1表:
【表1】
【0105】
こうして決定された、使用されたアセトン(16.58mol)の割合を基準とした、本発明の手順において失われたアセトン当量の割合は、2.5%であった。
【0106】
3.C1:加水分解なしの比較試験
試験I1を繰り返したが、水を全く添加しなかった。
その反応器流出物、留出物及び缶出液中のそれぞれの成分の対応する含量並びに該缶出液中のアセトン当量のモル量は、I1に記載されたように決定し、かつ次の第2表に列挙されている(NI=同定されない)。
【0107】
第2表:
【表2】
【0108】
その後、使用されたアセトン当量3.9%が、該缶出液中にあり、ひいてはアンモニアとのさらなる反応工程のために失われたことが決定された。
【0109】
4.結果
4.1)I1(留出物:747g;缶出液200g)において及びC1(留出物:750g;缶出液:192g)において、事実上同じ割合の留出物及び缶出液を回収することができた;
4.2)該缶出液中のTAAの含量は、C1よりもI1において高かった、すなわち、TAAの絶対収率は、本発明の手順の場合により良好であった。
4.3)該缶出液へと失われず、ひいては反応することができるアセトン当量の割合は、I1による本発明の手順においてより高い。I1(第1表)において、アセトン、メシチルオキシド及びジアセトンアルコールの割合が、該缶出液中でアセトニン及びイソホロンの同時に低下した割合を伴って依然として見出されたという事実はさらに、本発明の手順において、これらのより高分子量の副生物は、明らかに開裂されてアセトン又はメシチルオキシドが得られたという事実を示すのに対し、これは、従来の手順(C2;第2表)を用いる場合に当てはまらない。C1における該缶出液中のアセトン当量の全含量が、I1における該缶出液中のアセトン当量の全含量よりも高いことが決定的である。
【0110】
本発明の実施態様は次のとおりである:
1. トリアセトンアミンを製造する方法であって、次の工程:
(a)アセトン及びアンモニアを触媒K1の存在下で反応させて、トリアセトンアミンと、アセトンと、メシチルオキシドと、ジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン、ホロン、イソホロンからなる群から選択される少なくとも1種の副生物とを含む、粗生成物RP1を得る工程、
(b)RP1からアセトン及び/又はメシチルオキシドを少なくとも部分的に蒸留により除去する工程、
(c)アンモニア及び任意にさらなるアセトンを、工程(b)においてRP1から除去されたアセトン及び/又はメシチルオキシドに添加し、かつ添加されたアンモニアを、アセトン及び/又はメシチルオキシドと触媒K2の存在下で少なくとも部分的に反応させてTAAを得て、その結果としてトリアセトンアミンを含む粗生成物RP2を得る工程
を含み、前記方法が、
(d)工程(b)において生じるRP1からのアセトン及び/又はメシチルオキシドの蒸留による除去の前及び/又は最中に、水を、RP1に添加し、かつジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン、ホロン、イソホロンからなる群から選択される、RP1中の副生物のうち少なくとも1種を、水と少なくとも部分的に反応させて、RP1中の前記副生物のうち少なくとも1種を、少なくとも部分的にメシチルオキシド及び/又はアセトンへ開裂させる
ことを特徴とする、前記方法。
2. 工程(d)において、工程(b)において生じるRP1からのアセトン及び/又はメシチルオキシドの蒸留による除去中に、水を、RP1に添加し、かつジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン、ホロン、イソホロンからなる群から選択される、RP1中の副生物のうち少なくとも1種を、水と少なくとも部分的に反応させて、RP1中の前記副生物のうち少なくとも1種を、少なくとも部分的にメシチルオキシド及び/又はアセトンへ開裂させる、前記1に記載の方法。
3. 工程(b)において生じるRP1からのアセトン及び/又はメシチルオキシドの少なくとも部分的な蒸留による除去を、蒸留塔中で行う、前記1又は2に記載の方法。
4. 工程(b)における蒸留において使用される温度範囲が、トリアセトンアミンの沸点を下回る、前記3に記載の方法。
5. 工程a)を、20℃〜180℃の温度で実施する、前記1から4までのいずれかに記載の方法。
6. 工程(a)において使用されるアセトンの、工程(a)において使用されるアンモニアに対するモル比が、3:1〜20:1である、前記1から5までのいずれかに記載の方法。
7. K1が、不均一系触媒である、前記1から6までのいずれかに記載の方法。
8. 工程(d)において添加される水の量が、RP1中に含まれるホロン、ジアセトンアルコール、ジアセトンアミン、アセトニン及びイソホロンの質量の合計を基準として、≧0.1質量%である、前記1から7までのいずれかに記載の方法。
9. 工程(c)における反応を、20℃〜180℃の温度で実施する、前記1から8までのいずれかに記載の方法。
10. K2が、不均一系触媒である、前記1から9までのいずれかに記載の方法。
11. 工程(c)において、アンモニアを、工程(c)において使用されるアセトンの各1モルに対して、アンモニア0.05〜0.33molが添加され、かつアセトンのために添加されるこのアンモニアに加えて、工程(c)において使用されるメシチルオキシドの各1モルに対して、アンモニア0.1〜0.66molが添加されるような全体量で、添加する、前記1から10までのいずれかに記載の方法。