特許第6843968号(P6843968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6843968多軸ロボットビルドシステムを用いて3D部品を印刷する方法及び部品のオーブン外3D印刷の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843968
(24)【登録日】2021年2月26日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】多軸ロボットビルドシステムを用いて3D部品を印刷する方法及び部品のオーブン外3D印刷の方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/118 20170101AFI20210308BHJP
   B29C 64/321 20170101ALI20210308BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20210308BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20210308BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20210308BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20210308BHJP
【FI】
   B29C64/118
   B29C64/321
   B29C64/209
   B33Y10/00
   B33Y30/00
   B33Y80/00
【請求項の数】11
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2019-510595(P2019-510595)
(86)(22)【出願日】2017年8月22日
(65)【公表番号】特表2019-524512(P2019-524512A)
(43)【公表日】2019年9月5日
(86)【国際出願番号】US2017048056
(87)【国際公開番号】WO2018039260
(87)【国際公開日】20180301
【審査請求日】2019年5月16日
(31)【優先権主張番号】62/378,024
(32)【優先日】2016年8月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509113977
【氏名又は名称】ストラタシス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニューウェル クリント
【審査官】 正 知晃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−335380(JP,A)
【文献】 特開2016−141142(JP,A)
【文献】 特許第5937249(JP,B2)
【文献】 特表2002−500584(JP,A)
【文献】 米国特許第06274839(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00−64/40
B33Y 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多軸ロボットビルドシステムを用いて3D部品を印刷する方法であって、
可動なロボットアームに取り付けられた押し出し機を用いて、単一の連続した第1の3D工具経路に沿って押し出された熱可塑性プラスチック材料によって、ビルドプラットフォーム上で前記部品の第1の部分を印刷することと、
前記ロボットアームの動作とは別個に、前記印刷されている部品の幾何形状に基づいて印刷中に前記ビルドプラットフォームを動作させることによって前記部品の向きを定めることと、
を含み、
前記ビルドプラットフォームが2つの自由度で可動であると共に前記ロボットアームが6つの自由度で可動であり、前記ビルドプラットフォームの動作及び前記ロボットアームの動作は、支持構造体を用いずに前記部品を印刷するように同期されており、
前記方法は、前記部品の前記第1の部分の表面で、第2の3D工具経路に沿って以前に押し出された熱可塑性プラスチック材料を局所的に予熱すること、を更に含み、
前記局所的に予熱することは、前記部品の第2の部分を印刷するために押し出された熱可塑性プラスチック材料が以前に押し出された熱可塑性プラスチック材料に付着する温度に予熱することを含み、
前記方法は、前記第2の3D工具経路の前記予熱された部分に沿って熱可塑性プラスチック材料を押し出すことで、前記部品の前記第2の部分をコンフォーマルに印刷すること、を更に含み、
前記部品の前記第2の部分は、前記予熱することにより、前記部品の前記第1の部分に対する付着力を高める、
方法。
【請求項2】
前記方法は、ネット部品又はニアネット部品を印刷することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
部品の幾何形状、前記ロボットアームの速度、前記ビルドプラットフォームの速度又はそれらの組み合わせに基づいて、前記押し出し機の押し出しレートを変化させることを更に含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記部品の前記第2の部分は、前記部品の前記第1の部分を印刷するのに用いられた熱可塑性プラスチック材料とは異なる熱可塑性プラスチック材料から印刷される、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記単一の連続した第1の3D工具経路は螺旋工具経路である、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記単一の連続した第1の3D工具経路は螺旋工具経路であり、前記部品の前記第1の部分は、管状部材又はドーム状部材である、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記部品の前記第1の部分は管状部材又はドーム状部材であり、前記部品の前記第2の部分はフィンを含み、前記第2の3D工具経路は、前記部品の前記第2の部分の接触エッジを形成している、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
平面工具経路に沿って前記部品の第3の部分を印刷することを更に含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
部品のオーブン外3D印刷の方法であって、
6つの自由度で可動なロボットアームに押し出し機を設けることと、
2つの自由度で可動なビルドプラットフォームを設けることと、
第1の3D工具経路に沿って、前記部品の第1の部分を押し出すことと、
第2の3D工具経路に沿って、前記部品の前記第1の部分の表面にコンフォーマルに前記部品の第2の部分の接触エッジを押し出すことと、
を含み、
前記部品の第2の部分の接触エッジを押し出すことは、前記部品の前記第1の部分の一部分を、前記第2の3D工具経路に沿って、前記部品の前記第1の部分のその部分に押し出しを行う前に局所的に予熱することを含む、
方法。
【請求項10】
前記事前に予熱された第2の工具経路に沿って、前記押し出された材料を能動的に冷却することを更に含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の部分の前記材料は、前記第2の部分の前記材料とは異なる、
請求項9に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、包括的には、付加製造に関し、より具体的には、多軸ロボットビルドシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
付加製造又は3D印刷は、一般に、3次元(3D)物体が物体のコンピューターモデルを利用してビルドされる付加製造プロセスである。通常の動作は、3次元コンピューターモデルを薄い断面にスライスすることと、その結果物を2次元位置データに変換することと、このデータを供給して、1つ以上の付加製造技法を用いて層ごとに3次元構造体を製造するプリンターを制御することとからなる。付加製造は、溶融堆積モデリングプロセス、インクジェットプロセス、選択的レーザー焼結プロセス、粉体/接合剤ジェットプロセス、電子ビーム溶解プロセス、電子写真撮像プロセス、及びステレオリソグラフィープロセスを含む製作方法の多くの異なる手法を必要とする。
【0003】
付加製造技術は、雛形作製(長年用いられてきた)に用いることができ、また、最終使用生産部品にも用いることができる。最終使用部品生産の場合、ネットシェイプ部品又はニアネットシェイプ部品(すなわち、ソースデータファイルとして提供されるデジタル画像に非常によく一致し、したがって、部品のサイズ及び形状について所望の公差を達成する事後印刷処理をほとんど又は全く必要としない部品)を印刷することが望ましい。
【0004】
溶融堆積モデリングシステムでは、3Dプリンターが、部品のデジタル表現から生成される工具経路に沿って流動性のある部品材料を押し出すことによって層単位で3D印刷部品を作製する。この部品材料は、システムの印刷ヘッドによって保持される押し出し先端を通って押し出される。押し出された部品材料は、これまでに堆積された部品材料と融合し、温度が下がると固化する。通常のプリンターでは、材料は、ビルド平面を画定する基板上にビルドされたロードシーケンスとして平面層に堆積される。基板に対する印刷ヘッドの位置は、その後、印刷軸(ビルド平面に垂直な軸)に沿ってインクリメントされ、このプロセスは、その後、デジタル表現に類似した印刷部品を形成するように繰り返される。
【0005】
部品材料の層を堆積させることによって印刷部品を作製するとき、サポート層又は構造は、通常、構築中の印刷部品の(部品材料自体によって支持されない)オーバハング部分の下に又は印刷部品のキャビティ内に構築される。サポート構造は、部品材料を堆積するのと同じ堆積技法を利用して構築することができる。ホストコンピューターは、形成される印刷部品のオーバハング又は自由空間セグメント用のサポート構造として働く更なる幾何形状を生成する。次いで、サポート材は、プリントプロセスの間に生成される幾何形状に応じて堆積される。サポート材は、作製中に部品材料に付着することができ、プリントプロセスが終了したときに完成した印刷部品から除去可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
任意選択の支持構造体とともに層単位の印刷を用いると、その結果、部品は、長いビルド時間、余分な事後処理を必要とするとともに、大量の支持材料を必要とする可能性がある。さらに、層単位の印刷を用いてビルドされる部品には、少なくとも幾つかの産業界における使用に十分な品質及び強度の部品を引き続き提供しつつ印刷することができる幾何形状に制限がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの態様は、6つの自由度に可動なロボットアームを備える多軸ロボット付加製造システムを含む。本システムは、少なくとも2つの自由度に可動であり、ロボットアームの動作から独立して、部品幾何形状に基づいて重力の効果を打ち消すようにビルドされている部品を位置決めするビルドプラットフォームを備える。本システムは、ロボットアームの端部に取り付けられた押し出し機を備える。この押し出し機は、少なくとも部品材料を複数の流量を用いて押し出すように構成され、ロボットアーム及びビルドプラットフォームの動作は、3D部品をビルドするように押し出される材料の流量と同期される。
【0008】
本開示の別の態様は、多軸ロボットビルドシステムを用いて3D部品を印刷する方法に関する。本方法は、6つの自由度に動作するロボットアームに取り付けられた押し出し機を用いて、3D工具経路に沿ってビルドプラットフォーム上で部品の少なくとも一部分を印刷することを含む。本方法は、ロボットアームの動作とは別個に、印刷されている部品の幾何形状に基づいて印刷中にビルドプラットフォームを動作させることによって部品の向きを定めることを更に含み、ビルドプラットフォームの動作及びロボットアームの動作は、支持構造体を用いずに部品を印刷するように同期されている。
【0009】
本開示の別の態様は、オーブン外印刷環境において3D部品を印刷する方法に関する。本方法は、6つの自由度を有するロボットアームに押し出し機を設けることと、少なくとも2つの回転軸において可動なビルドプラットフォームを設けることとを含む。本方法は、第1の3D工具経路に沿って、部品の第1の部分の少なくとも第1のセグメントを押し出すことと、第2の3D工具経路に沿って、部品の第1の部分の表面にコンフォーマルに部品の第2の部分の少なくとも第2のセグメントを押し出すこととを含む。部品の第2の部分を押し出すことは、第1の部分の一部分を、部品の第2の部分の第2の3D工具経路に沿って、工具経路のその部分に押し出しを行う前に局所的に予熱することを含む。
【0010】
定義
特段の記載が無い限り、本明細書で使用される以下の用語は、以下で規定される意味を有する。
【0011】
用語「好ましい(preferred)」、「好ましくは(preferably)」、「例(example)」及び「例示的な(exemplary)」は、一定の状況下で一定の利益を与えることができる本発明の実施形態を指す。しかし、他の実施形態もまた、同じか又は他の状況下で好ましい又は例示的である場合がある。さらに、1つ以上の好ましい又は例示的な実施形態の列挙は、他の実施形態が有用でないことを示唆せず、また、本開示の範囲から他の実施形態を排除することを意図されない。
【0012】
「の上(above)」、「の下(below)」、「上部(top)」、「下部(bottom)」、及び同様なもの等の方向に関する位置特定は、3D部品の層プリント方向を参照して行われる。以下に示す実施形態において、層プリント方向は、垂直なz軸に沿って上方向である。これらの実施形態において、用語「の上」、「の下」、「上部」、「下部」、及び同様なものは、垂直なz軸に基づく。しかし、3D部品の層が、水平なx軸又はy軸等の異なる軸に沿って印刷される実施形態において、用語「の上」、「の下」、「上部」、「下部」、及び同様なものは、所与の軸を基準にする。
【0013】
「材料を提供する(providing a material)」等の用語「提供する(providing)」は、特許請求項において述べられるとき、提供されるアイテムの任意の特定の供給又は受取りを必要とすることを意図されない。むしろ、用語「提供する」は、明確にしかつ読み易くするために、特許請求項(複数の場合もある)の後続の要素において言及されることになるアイテムを挙げるために使用されるだけである。
【0014】
別途指定されない限り、本明細書で言及される温度は、大気圧(すなわち、一気圧)に基づく。
【0015】
用語「約(about)」及び「実質的に(substantially)」は、当業者に知られている予想される変動(例えば、測定における制限及び変動性)のために、測定可能な値及び範囲に関して本明細書で使用される。
【0016】
「ニアネット部品(near-net part)」という用語は、初期印刷後にその最終形状に非常に近くなるように印刷される部品を指す。ニアネット部品は、ソースデータファイルとして提供されるデジタル画像に密接に一致し、したがって、部品のサイズ及び形状についての所望の公差を達成するのに事後印刷処理をほとんど又は全く必要としない。
【0017】
「オーブン外(out of oven)」という用語は、温度制御された環境チャンバー内に密閉されておらず、環境チャンバーの領域外において使用及び動作されるビルド環境を指す。
【0018】
全ての引用された特許及び本明細書において参照される印刷された特許出願は、引用することによってそれらの全内容が本明細書の一部をなすものとする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示の一実施形態による多軸ロボットビルドシステムの斜視図である。
図2図1のシステムの拡大斜視図である。
図3図1のシステムにおいて印刷されている部品の斜視図である。
図4】本開示の一実施形態による、図1のシステムにおいて、傾斜したビルドプラットフォームを用いて印刷されている図3の部品の斜視図である。
図5】本開示の一実施形態を用いて印刷された部品の斜視図である。
図6図5の部品の一部分のクローズアップ斜視図である。
図7A】本開示の一実施形態を用いて印刷された別の部品の斜視図である。
図7B】平面層単位で印刷された追加の部分を有する図7Aの部品の斜視図である。
図8図7Aの部品の一部分のクローズアップ斜視図である。
図9】従来技術の印刷方法による部品及び支持構造体の断面図である。
図10図9に示すような部品を印刷する本開示の一実施形態の斜視図である。
図11】本開示の実施形態に従って印刷された部品を含む一連の部品の強度及び弱点を示す図である。
図12】本開示の一実施形態による部品及び2点間支持構造体の立面図である。
図13】本開示の一実施形態による方法のフローチャートである。
図14】本開示の別の実施形態による方法のフローチャートである。
図15】本開示の別の実施形態による方法のフローチャートである。
図16】本開示の別の実施形態による方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示のシステム実施形態は、6つの軸におけるロボットアームの運動と、2つの軸におけるビルドプラットフォームの運動とを用いて、溶融堆積モデリング部品の印刷の向きを、支持構造体を必要とすることなく、この部品の幾何形状に基づいて求めることを可能にする。部品の幾何形状に基づいて印刷の向きを定めることによって、複合印刷材料における繊維の強度及び方向性等の部品特性に対する改善された制御が可能になるとともに、必要とされる事後印刷処理がより少ないより短い時間量でより高い品質の部品の印刷が可能になる。
【0021】
本開示の実施形態は、層による印刷動作を変更し、押し出された材料の真の3次元印刷を可能にして、追加の仕上げステップを必要とすることなく付加製造をニアネット部品構造体に適用することを可能にする自動化された部品生産を提供する。幾つかの場合には、部品は単一の材料から印刷される。他の場合には、部品は2つ以上の材料を用いて印刷され、その結果、高い商品価値を有することができる複合部品が得られる。他の場合には、様々な部品特性を得るために、材料組成をブレンドすることもできるし、部品のビルドの端から端まで変化させることもできる。
【0022】
図1は、3次元(3D)部品をビルドするのに用いることができる多軸ロボットビルドシステム100の斜視図である。システム100は、1つの実施形態では、6つの軸に沿った動きが可能なロボットアーム102を備える。一例示的なロボットアームは、独国アウクスブルクのKUKA Robotics社によって製造された産業ロボットである。静止した基部からのロボットアーム102の6つの運動軸が論述されるが、追加の軸又は他の動きも、本開示から逸脱することなく、本開示の実施形態とともに用いられるように適用可能であることが理解されよう。例えば、ロボットアーム102は、追加の自由度を提供するためにレール又はガントリー上を移動するように取り付けることができる。
【0023】
ロボットアーム102は、限定ではなく単なる例として、フィラメントフィードストック、粉体フィードストック又はペレットフィードストック等から部品を印刷する押し出しヘッド104等の印刷ヘッド104を保持する。幾つかの場合には、フィードストックは、ガラス繊維又はカーボン繊維等の2次材料及び耐衝撃性改良剤とともに任意選択で装填することができるポリマー又はコポリマーである。ただし、本開示は、ポリマー材料を用いた部品の印刷に限定されるものではない。本開示に従って印刷することができる消耗材料には、限定ではなく単なる例として、有機材料、無機材料及び複合材料が含まれる。本開示の実施形態とともに用いるのに適用可能な複合材料には、限定ではなく例として、炭素繊維充填ナイロン、繊維強化熱可塑性プラスチック、ガラス繊維強化熱可塑性プラスチック、細断複合繊維又は連続複合繊維等が含まれる。印刷ヘッド104は、押し出し型印刷ヘッドとすることができ、この押し出し型印刷ヘッドには、限定ではなく単なる例として、Bosveld他の米国特許第8,955,558号に開示されているようなスクリュー押し出し機、米国特許第6,004,124号に開示されているような粘性ポンプ液化機、Batchelder他の米国特許第8,439,665号に開示されているようなリボン液化機、又はHjelsand他の国際公開第2016/014543号に開示されているようなギアポンプ液化機を利用する印刷ヘッドが含まれる。幾つかの代表的な消耗材料は、同一所有者のBatchelder他の米国特許第7,122,246号、Mikulak他の米国特許第8,801,990号及び第8,920,697号、Bosveld他の米国特許第8,955,558号、並びにBatchelder他の米国特許第8,221,669号に開示されている。
【0024】
1つの実施形態では、2つの回転軸に沿って可動、すなわち、z軸の回りの回転及びx軸の回りの傾動(回転)が可能なビルドプラットフォーム106が提供される。これらに限定されるものではないが、y軸における傾動(回転)及び様々な並進等の更なる回転軸を異なるビルドプラットフォーム106に設けることができる。さらに、異なる運動軸を有する異なるビルドプラットフォームも、本開示から逸脱することなく、本開示の実施形態とともに用いることができる。ビルドプラットフォーム106には、1つの実施形態では、ビルドプラットフォーム106に近接したロボットアーム102及び印刷ヘッド104のより多くの動きの自由を提供するために、延長部110が設けられる。ビルドプラットフォーム106は、2軸の動きを有する固定ユニットの代わりに6軸の動きも提供する追加のロボットアームも備えることができる。
【0025】
コントローラー108は、ロボットアーム102及びビルドプラットフォーム106の運動と、印刷ヘッド104の印刷動作とを制御するソフトウェア及びハードウェアを含む。
【0026】
押し出し機104が位置決めされたロボットアーム102は、本開示の1つの実施形態では、ビルドプラットフォーム106と組み合わせて用いられる。システム100の8つ(又はそれよりも多く)の運動軸は、例えば、平面内に印刷を行う溶融堆積モデリングシステムを用いるとこれまで印刷することができなかった複雑な幾何形状、又は、支持構造体を用いなければ印刷することができなかった複雑な幾何形状を有する部品の作製及び印刷を可能にする。静止した基部からのロボットアーム102の6つの運動軸が論述されるが、レール、可動プラットフォーム等にロボットアーム又はビルドプラットフォームを取り付けることによってより広い若しくはより長い印刷能力又は拡張された運動範囲を提供する等の追加の動きも、本開示から逸脱することなく、本開示の実施形態とともに用いるのに適用可能であることが理解されよう。例えば、ロボットアーム102は、レール又はガントリー上を移動して追加の運動範囲を提供するように取り付けることができる。さらに、異なる運動プラットフォームを有する異なるテーブルも、本開示から逸脱することなく、本開示の実施形態とともに用いることができる。そのような追加の運動プラットフォームの例には、限定ではなく単なる例として、トラニオンテーブル、クレードル、レール又はガントリーが取り付けられた運動プラットフォーム等が含まれる。
【0027】
ビルドされている部品の異なる部分に異なる材料を用いて印刷する場合又は新たな工具が必要とされるとき、自動化された工具交換を用いることができる。そのような自動化された工具交換によって、追加の動作が可能になる。このような追加の動作には、限定ではなく例として、部品の更なる付加製造、除去製造、仕上げ、検査、及び組み立てが含まれる。工具交換ラックが、図1の122に概略的に示され、例として、Comb他の米国特許第8,926,484号に開示されているように構成することができる。ラック122等の工具交換ラックは、追加の工具、押し出し機、除去素子(subtractive elements)等を保持することができる。例示的な除去素子は、Batchelderの米国特許出願公開第20150076739号に開示されているようなエキシマーレーザーデバイス等の放射線放出デバイスを含むことができるが、これに限定されるものではない。工具交換ラック122は、1つの位置に示されているが、本開示の範囲から逸脱することなく、ロボットアームにアクセス可能であれば、他の箇所に位置決めされてもよいことが理解されよう。
【0028】
生成された工具経路が、ロボットアーム102の運動を制御するのに利用される。一方、押し出しヘッドの制御も、生成された工具経路に沿って材料を正確に堆積させるのに用いられる。例えば、本開示の1つの実施形態は、印刷ヘッド104を有するロボットアーム102の運動のタイミングを印刷ヘッド104からの押し出しと同期させる。本開示の実施形態は、生成された工具経路及びロボットアーム102の運動に基づいて、ロボットの動き、先端クリーニング、先端交換、及び印刷ヘッド104の他の動作とともに押し出しレートを変更して、印刷の高速化又は低速化を提供する。一例として、印刷ヘッド104からの押し出しは、Comb他の米国特許第6,054,077号並びにCombの米国特許第6,814,907号、第6,547,995号、及び第6,814,907号によって教示された方法でロボットアーム102の運動と同期させることができる。
【0029】
例えば、部品のコーナー周辺を印刷するとき、ロボットアーム102の速度及び押し出し流量を減少させて、部品の正確な堆積を提供することができる。一方、直線的な工具経路に沿って印刷するとき、印刷されている部品の寸法精度を維持しながら、ロボットアーム102の速度及び押し出し流量を増加させることができる。加えて、材料は、部品の印刷品質に影響を与えない3D押し出し部品容積の内部エリア内により速いレートでより大きなビードで押し出すことができる。したがって、中空の3D部品、疎充填(sparse-filled)内部容積を有する3D部品、及び/又は中実の3D部品を、印刷されている3D部品(複数の場合もある)の品質に影響を与えることなく、増加した速度及び押し出し流量で印刷することができる。疎充填内部容積は、薄肉構造体に所望の剛性を付加するために印刷することができる充填パターン(infill patterns)を含む。充填パターンは、部品全体を通じて均一とすることもできるし、部品の層又は領域内で変化させることもできる。(1)短い平行線分を用いて外側部品輪郭の内部を充填する方向平行充填(direction-parallel infills)と、(2)外側部品輪郭を連続的にオフセットして内部を充填する輪郭充填との2つのタイプの充填パターンが、平面工具経路を用いた溶融堆積モデリング3D印刷において一般的であり、3D工具経路を印刷する際にも利用することができる。材料の密度は、これらの線分の間の空間を変化させることによって変更することができ、したがって、疎から中程度、十分に緻密の範囲を有することができる充填を生み出すことができる。
【0030】
ロボットアーム102及びビルドプラットフォーム106の複数の運動軸によって、向きが定められた部品の印刷が可能になるのは単一のビルド平面だけではない。印刷中に変化するビルド平面を用いることによって、印刷されている3D部品は、必要に応じて重力を支持に利用することが可能になる。重力を利用して3D部品を印刷することによって、支持構造体が重力の効果を考慮及び補償する必要性が低減されるか又はなくなる。これによって、部品をビルドする時間が削減され、部品の事後処理時間が削減される。ロボットアーム102及び印刷ヘッド104を用いることによって、ビルド基板の向きが変化すると、上下反対に印刷することも可能になり、印刷ヘッド押し出しがビルドプロセスの少なくとも幾つかの部分の間に重力に対抗することができる。
【0031】
有利には、ロボットアーム102及びビルドプラットフォーム106の複数の運動軸は、部品全体に達する単一の連続した3D工具経路を含む、3D部品を印刷する複雑な工具経路を利用することができる。本実施形態の多軸システム100とともに利用可能な3D工具経路等の単一の3D工具経路は、階段ステッピング(stair-stepping)(層エイリアシング(layer aliasing))、継ぎ目(seams)、支持の要件等の従来の付加製造型印刷に関する問題を低減するのに役立つ。さらに、ビルドされる部品を、全て同じ平面内に印刷される複数の層にスライスする必要なく、部品の幾何形状を用いて、印刷の向きを求めることができる。したがって、部品の強度及び硬度が改善され、より効率的で連続した工具経路に起因してビルド時間が短縮される。部品は、「ニアネット」印刷としても知られている更なるフライス加工も製作も必要としない十分な精度で印刷することができる。連続した工具経路は、押し出し機を通る溶融樹脂フローの粘稠度及び精度を改善するのにも役立つ。なぜならば、押し出し機は始動及び停止する必要がないからである。
【0032】
幾つかの部品は、単一の連続した3D工具経路を利用して印刷することができるが、多軸システムは、平面工具経路を利用した3D部品の印刷と、3D工具経路と平面工具経路又は2D工具経路との組み合わせを利用した3D部品の印刷とに利用することもできる。さらに、システム100は、中空部品、疎充填部品及び中実部品を印刷することができる。平面ビルド経路又は2Dビルド経路を利用すると、印刷されている3D部品の部分の周囲における継ぎ目は、Hopkins他の米国特許第8,349,239号、第8,974,715号及び第9,724,866号に開示されている工具経路及び方法を利用して最小にすることができる。本システム100は、向上した押し出し流量と、削減されたビルド時間と、通常の押し出しベースの付加製造システムよりも大きなビルドエンベロープ(build envelopes)とを用いて、多種多様な3D部品を印刷する必要な能力及び柔軟性を提供する。
【0033】
本開示の実施形態は、工具経路に沿った印刷に熱管理を用いる。1つの実施形態では、印刷ヘッドの前方の工具経路の局所予熱が利用される。局所予熱操作を用いることによって、制御されたサーマルチャンバー環境をなくすこと又はビルド環境内の温度を下げることが可能になる。局所予熱は、1つの実施形態では、予熱器120を用いて行われる。1つの実施形態では、予熱器120は、印刷ヘッドの前方にある3D部品の以前に印刷された部分の工具経路の局所的予熱を提供するために、印刷ヘッド104上、その前方又はその近傍に位置決めされる。別の実施形態では、予熱器120は、印刷エリアを考慮して、印刷ヘッドから離れたフレーム上の位置等に位置決めされる。3D部品の以前に印刷された部分の工具経路に沿った局所予熱は、適した予熱装置を用いた予熱器を用いて行うことができる。この適した予熱装置には、限定ではなく例として、レーザー予熱、高温ガス予熱、誘導予熱、マイクロ波予熱、及び超音波予熱が含まれる。予熱器120は、本開示の範囲から逸脱することなく、印刷ヘッド及び工具経路を考慮して、例えば、第2のロボットアーム上のような他の箇所に位置決めすることができることが理解されよう。材料が既存の材料に良好に付着するのに十分な予熱は、新たな材料が(第1の部分又は第1の部分上の第2のコンフォーマルに(conformally)印刷された部分のいずれかの単一の工具経路等に沿って)印刷される中間的な部品表面を加熱するのに役立つ。部品強度は、そのような多層加熱処置を用いて操作することができる。予熱は、部品の第1の部分及び第2の部分を含む、ビルドされている部品の任意の部分に対して行うことができる。
【0034】
押し出されているビードのサイズ及びロボットアーム102における印刷ヘッドの速度に応じて、予熱器120によって与えられる熱量及び部品内への熱浸透の深さは変化し得る。例えば、より小さなビードを用いて比較的高速に移動しているとき、熱は、以前に印刷された層内に大きく浸透することなく部品の表面に与えられる。部品内への熱の浸透が最小にされているとき、押し出されたばかりの材料の冷却は必要な場合もあるし、必要でない場合もある。一方、より大きなビードをより低速で押し出すとき、熱は、印刷されている部品内に浸透する傾向がある。時間が経過しても、熱が、印刷されている部品から除去されない場合、熱は蓄積して、部品を熱的に不安定にし、変形させる。
【0035】
堆積後の急速冷却は、局所エリアに以前に供給された熱エネルギー量を(急速に冷却することができない高温の大きなビードからも、局所予熱からも)除去し、局所領域温度を予熱前のその元の温度に戻すようにカスタマイズすることができ、本質的には、部品の変形を回避するために局所的な熱エネルギー入力を急速に「再平衡」させる。局所冷却は、本発明では、冷却流体を利用して提供することができる。冷却流体には、冷却気体又は気体に相転移する冷却液体が含まれ、この冷却液体は、液体窒素等であるが、これに限定されるものではない。一実施形態では、印刷ヘッドに近接して取り付けられた冷却ファン130によって、印刷されたばかりの部品材料にわたって周囲空気を移動させる。幾つかの工具経路に沿った幾つかの実施形態でも、単一の工具経路は、印刷ヘッドがこの工具経路の以前の部分をもう一度通過する前に、自然に冷却する十分な時間がない部品300のエリアを横断するので、局所冷却を用いることができる。1つの実施形態における局所冷却は、既知の工具経路及び幾何形状に基づいている。なぜならば、幾つかの幾何形状は、工具経路が復帰する前に、十分冷却しない可能性がより高いからである。新たなビード又はロードの堆積の直前に行われる以前のロードの局所予熱と、後冷(post-cooling)を用いたその予熱エネルギーのその後の除去とを高速サイクルで行うことによって、部品の変形を増加させずに、z方向における層の付着を大幅に高めることが可能になる。
【0036】
印刷する方法は、第1の既存の部品部分の上部に部品の追加の部分を、幾つかの実施形態では異なる軸に沿って印刷することを含む。例えば、z軸等の印刷軸を、既存の層に対してコンフォーマルに印刷される中実材料層と交差させることによって、強い構造体を作製することが可能になる。
【0037】
オーブン外環境の代わりに、制御されたビルド環境を本開示の実施形態とともに用いることができることが理解されよう。一方、熱管理を提供する局所的加熱及び局所的冷却は、多くの印刷用途において受け入れられる。押し出し量及び製造構成が大きくなるにつれて、制御されたチャンバー冷却は、常に実現可能であるとは限らない。
【0038】
本開示の実施形態は、複合印刷材料とともに用いるのに適用可能である。様々な産業界において複合物の使用が増加している。なぜならば、複合物は、金属又は他の材料を上回る非常に多くの利点を提供することができるからである。複合物は、通常、鋼鉄等から作製された従来の部品よりも軽量である。幾つかの産業界、限定ではなく例えば、運輸業界、石油ガス業界、及び医療業界では、複合材料を用いて、丈夫であるが軽量の構造体を作製することができる。しかしながら、以前の付加製造システムは、労働集約型のプロセス及び幾何学的な制限によって制約を受けている。
【0039】
本開示の実施形態によって提供されるような複合材料を用いた印刷によって、燃料消費の削減、動作コストの削減等に直接転換される部品重量の軽量化が提供される。複合部品の印刷によって、高価な設備更新を伴わないカスタマイゼーション、組み立ての整理統合、トポロジー改良、工具費用(tooling expense)及びスクラップの削減による全体的な部品コストの削減、在庫用の寿命部品購入(lifetime part buys)の排除等が可能になる。印刷に用いられる複合物の特性によって、カール(curl)の量が減少し、強度が増した印刷が可能になる。本発明の実施形態による3D印刷を、熱可塑性プラスチックを用いて行うと、本開示の範囲から逸脱することなく、温度制御を介したカール補償を用いることができる。カール制御については、本明細書においてこれ以上論述しない。
【0040】
複合物は、押し出し前又は押し出し中に熱可塑性プラスチック材料に組み込まれた細断繊維、短い長さの連続繊維、中程度の長さの連続繊維、及び標準の長さの連続繊維等の複合物内の繊維成分を用いて、強化された部品を印刷する機能も提供する。複合材料及び提供された多軸ロボットビルドシステム100を用いると、真のニアネット3D印刷を実現することができる。例えば、印刷は、単一の工具経路に沿った制御された押し出しを用いて、印刷ヘッド104のほぼあらゆる向きに行うことができる。さらに、部品の種々の部分又は部品の種々の下部構造について繊維の向きを構成することができるので、印刷は、更なる強度を部品に提供するように構成することができる。
【0041】
ロボットの動きについてCADシステムによって生成される工具経路の統合は、1つの実施形態では、生成される運動経路の押し出しプロトコルに変換される。すなわち、ロボット運動経路が生成されると、生成された連続した工具経路に沿って適切に印刷するように印刷パラメーターを調整するために押し出し制御が用いられる。そのようなパラメーターには、限定ではなく単なる例として、印刷速度、押し出しレート等が含まれる。
【0042】
図2は、z軸及びx軸の回りのビルドプラットフォーム106の回転をそれぞれ表す矢印202及び204を有する軸マップ200を示すシステム100の一部分のクローズアップ図である。多軸ロボットアーム102及び多軸ビルドプラットフォーム106を用いることによって、少なくとも幾つかの印刷される支持材料の代わりに重力に依拠するように、印刷されている部品の向きを定めることが可能になる。具体的には、多軸ビルドプラットフォーム106を用いると、印刷されている部品は、当該印刷されている部品の特徴部が印刷されるように向きが定められ、支持の欠如に起因した熱ダレ又は障害の可能性を低減することができる。空気流源が、新たに堆積された工具経路領域に向けられているとき、部品はより急速に冷却し、複雑な形状のより高速な製作も可能になる。システム100のようなシステムを用いて印刷された部品の例は以下で説明され、1つ以上の連続した3次元工具経路を用いて印刷された中空部品、すなわち、3D工具経路を用いて印刷された部分と平面工具経路を用いて印刷された別の部分とを有する部品を含むが、これに限定されるものではない。図示された3D部品は、本システム100が中実部品、中空部品、疎充填部品及びそれらの組み合わせを印刷することができる性質上、限定ではなく例示である。通常の溶融堆積モデリング型印刷システムにおいて支持を必要とする幾つかの熱可塑性プラスチックニアネット部品は、重力を考慮した向きを必要とすることさえない場合があるが、ビルドプラットフォーム106を傾動させずに、ロボットアーム102の運動を用いて直接印刷することができる。
【0043】
図3は、部品300のビルド過程にある多軸ロボットビルドシステム100を示している。部品300は、この実施形態では、ビルドプラットフォーム106、拡張部分110、及びビルドシート310においてビルドされる。ビルドシート310は、例としてComb他の米国特許第5,939,008号に開示されているような真空力による付着等によってビルドプラットフォーム106に除去可能に付着される。ビルドシート310は、部品300がビルドされる除去可能な基板を提供する。他の印刷基盤も知られており、シート基板の代わりに用いることができ、例えば、プラスチック、段ボール、又は他の適した材料から製作されるDunn他の米国特許第7,127,309号に開示されているようなトレー基板とすることができ、押し出された材料をビルドプラットフォーム106上に接着するための柔軟なポリマーフィルム若しくはライナー、ペインターのテープ、ポリイミドテープ、又は他の使い捨て品も含むことができるビルド基板である。
【0044】
部品300は、1つの実施形態では、連続した3D工具経路を用いて印刷される。すなわち、部品300の一部分又は全体を、一連のスライスされた層ではなく、単一の工具経路を用いて印刷することができる。例えば、印刷は、高さが徐々に増していく螺旋パターンではあるが、印刷ヘッド104からの材料の単一の連続した押し出しによって印刷することができる。例えば、部品300を印刷するために、ロボットアーム102は移動することができ、ビルドプラットフォーム106は静止しておくことができる。一方で、ビルドプラットフォーム106は、zを徐々に増加させながら、xy平面を回転させることができる。
【0045】
ロボットアーム102及びビルドプラットフォーム106の運動を組み合わせると、通常は支持構造体を用いる部品を含めて、支持構造体を用いることなく、ビルドの向きを変化させることで単数又は複数の部品の印刷を提供することができることが理解されるであろう。部品の幾何形状に基づいて、押し出しレートの変更を、ロボットアーム102若しくはビルドプラットフォーム106又はロボットアーム102及びビルドプラットフォーム106の双方の動きと同期させて、部品ニアネットを正確に印刷することができることも理解される。
【0046】
ビルドプラットフォーム106の複数の軸及びロボットアーム102の運動軸に沿った運動を介して、特定の選ばれた向きに印刷されている部品の向きを定める機能は、互いに垂直であることに限られない種々の方向に向きを定められた軸を含む複数の軸に沿った部品の印刷を可能にする本開示の実施形態を提供する。そのような種々の軸は、連続した繊維又は既知の繊維の配向を有する材料等の複合材料の使用を伴うことで、改善された強度を有するより高い連続性を有する部品の印刷を可能にする。すなわち、本開示の実施形態では、部品の第1の部分は、1つの軸、例えばx軸に沿った印刷材料の向きを用いて印刷することができ、同部品の第2の部分は、第2の軸、例えばz軸に沿った印刷材料の向きを用いて印刷することができる。さらに、本開示の実施形態は、既に付着された材料の上に、異なる軸に沿って材料の層をコンフォーマルに印刷する機能も提供する。
【0047】
図4は、この実施形態ではドーム形状の部分を含む部品300の第1の部分302の印刷後の部品300の更なる印刷を示している。部分302は、この実施形態では、単一の3D工具経路印刷動作を用いて形成される。部分302が印刷される工具経路の端部306は、図5に示されている。部品300の第1の部分302の印刷に続いて、ビルドプラットフォーム106はx軸の回りに回転され、部品300の第2の部分304の印刷が可能になる。第2の部分304は、1つの実施形態では、第1の部分302の印刷方向に実質的に垂直な印刷方向を有する一連のリブである(部品300の更なる図としての図5及び図6参照)。本開示の実施形態は、1つの軸に沿った部品の第1の部分のこのタイプの印刷と、その後に続く、第1の部分302と異なる第2の軸に沿ったこの部品の第2の部分のコンフォーマル印刷とを可能にする。部分302に対する部分304のコンフォーマル印刷は、部分接触エッジ(portion contact edge)308に沿った印刷である。接触エッジ308は、部分304が部分302に対して最初にコンフォーマルに印刷される際に沿うエッジである。
【0048】
当業者であれば、部品の以前にビルドされた部分に付加される部品の第2の部分は一般に温度が異なり、したがって、付着に関する難題も有することを理解するであろう。ビルド空間の温度制御は、一般に、これらの2つの部分の間の強力な付着を可能にするために、本明細書において説明したように用いられる。第1の部分302上に印刷されている第2の工具経路部分304の材料の堆積の前に、局所予熱源(例えば、予熱器120)を用いることによって、第2の部分304の工具経路に沿った表面の予熱又はアニーリングが行われる。予熱から印刷までの幾つかの時間範囲及び/又は距離範囲が本明細書において説明されるが、当業者であれば、異なる材料は異なる温度並びに加熱レート及び冷却レートを有することと、時間範囲の決定は材料に依存することと、そのような決定は本開示の範囲及び当業者の技能の範囲内にあることとを認識するであろう。
【0049】
図5図8は、本開示の装置及び方法の実施形態を用いて印刷された代表的な部品を示している。
【0050】
図5及び図6は、部品300の更なる細部を示している。第1の部分302の工具経路は、1つの実施形態では、単一の工具経路である。第2の部分304の工具経路は、1つの実施形態では、単一の3D工具経路である。通常、付加製造システムにおいて複数のスライスされた層で印刷される必要がある部分を含む部品の一部分の単一の3D工具経路印刷動作では、部分全体が単一の経路において印刷される。例えば、部品300において、部分302が、矢印320によって示される全体軸(general axis)における単一の3D工具経路を用いて印刷される。次に、部分302の印刷に続いて、部分304が、異なる単一の工具経路印刷動作において部分302に対してコンフォーマルに印刷される。部分304は、矢印330によって示される全体軸において印刷される。ただし、それらの部分の幾つかの特定の部分は、同じ軸に沿って印刷することができることに留意されたい。真の3D印刷の性質によって、そのような印刷が可能になる。なぜならば、運動範囲を拡張するためにロボット又はビルドプラットフォームの追加の運動によって補助されるロボットの6つの運動軸によって、部品の既存の部分への部品のコンフォーマル部分の印刷を含む、以前に押し出された材料に対して異なる方向での印刷が可能になるからである。
【0051】
図7A及び図8を参照すると、部品700Aが、ロボットアーム102、印刷ヘッド104、及びビルドプラットフォーム106を用いて、部品300と同様の方法で印刷される。第1の部分702が、螺旋状の単一の3D工具経路を用いて最初に印刷される。部品700Aは、軸マップ710を基準として向きが定められる。第1の部分702の印刷の完了後、第2の部分704が、接触エッジ708から開始して第1の部分702とコンフォーマルに第1の部分702の上に印刷される。部品700Aの第2の部分704は、1つの実施形態では、部品700Aがx軸に沿って傾斜した状態で印刷され、印刷ヘッド104は、部品700Aが元のz軸の回りに回転されている間、回転されたz軸(例えば、軸マップ810に示すようにzoriginal軸からx軸の回りに90度回転されたzrotated軸に一致させるx軸の回りの回転)に沿って螺旋状の単一の工具経路を印刷する。経路の見掛けの端部706に達すると、印刷ヘッド104は、印刷ヘッドの再登録を必要とすることなく元のx軸(現在はz軸)においてインデックス付けされ、上記単一の工具経路上での印刷が、部分704の印刷されたばかりの部分にわたって再度継続する。このように、見掛けの端部706は、工具経路の端部ではなく、印刷が継続している間の工具経路の単に一部分にすぎない。
【0052】
図7Bを参照すると、部品700Bが、部品700Aに関して説明したのと同様の方法で印刷され、第1の部分702及び第2の部分704が、連続した3D工具経路を利用して構築される。部品700Bは、複数の平面層712から構築された実質的に中実の基部を備える。各層は、基部の周囲に押し出された境界714と、ラスター工具経路716を利用して充填される実質的に中実の内部領域とを備える。印刷されている3D部品の部分の境界714における継ぎ目は、工具経路と、Hopkins他の米国特許第8,349,239号、第8,974,715号及び第9,724,866号に開示されている方法とを利用して最小にすることができる。
【0053】
図7Bは、システム100が、連続した3D工具経路、平面工具経路及びそれらの組み合わせを用いて部品の部分を印刷するのに利用することができることを示している。部品又は部品の部分は、印刷されている部品の幾何形状及び特徴部に応じて中空、疎充填及び/又は中実の場合がある。
【0054】
本開示の一実施形態による部品を印刷する方法は、単一の工具経路に沿った制御された押し出しと、印刷前の工具経路の局所予熱とを用いて、少なくとも2つの軸に動くことが可能なビルドプラットフォーム上で6つの軸に動くことが可能なロボットアームを用いて単一の工具経路に沿って部品を印刷することを含む。部品の第2の部分の印刷は、部品の第1の部分上にコンフォーマルに行われ、第1の軸と異なる第2の軸における印刷を含む。コンフォーマルに印刷することは、第2の部分の少なくとも第1の層が、第1の部分の表面に一致することを意味する。
【0055】
本開示の方法は、工具経路、工具速度、及びパターンに応じた制御された押し出しを用いて、部品の或る部分をビルドする整列された方向と、その後に続く、異なる軸に沿った部品の別の部分をビルドする整列された方向とを含む。
【0056】
一実施形態による印刷は、ビルドされる部品の幾何形状の分析を含み、単一の工具経路又は複数の工具経路に沿ってビルドする幾何形状のこの分析に基づいて印刷する軸が選ばれる。その際、部品を印刷する際に通常用いられる支持が必要でないように、印刷中の部品の向きは、重力に依拠するように制御される。
【0057】
本開示の実施形態によると、印刷は、上下反対を含む任意の向きに印刷ヘッド104を用いて実行することができる。これによって、部品の幾何形状を用いて、印刷中の印刷ヘッドに対するビルドプラットフォームの向きを決定することが可能になる。ビルド中は、上記で説明したようなファン130を用いて冷却のように、近時に押し出された材料の誘導される周囲空気流若しくは冷却された空気(又は他の気体)流又は液体窒素等のプロセス温度において気体に変わる冷却液体等の冷却流体を用いることが有利であり得る。より強い空気流又は外力を加えられた他の気体によって、ビルド中に重力に正常に対抗する形状により急速に固化することが可能になり得る。冷却流体を利用することによって、押し出しレートをより高速化することも可能になる。なぜならば、印刷されている部品は、熱的に安定した温度に維持されるからである。
【0058】
材料の押し出し前に工具経路に沿った予熱を利用することによって、熱が、局所領域において部品内に与えられる。冷却流体を用いることによって、局所的な領域から熱を除去し、部品の印刷を熱的に管理することができる。
【0059】
任意の向きに印刷ヘッド104を用いて印刷することによって、印刷されている部品の幾何形状によって印刷経路を決定することが可能になる。すなわち、部品の印刷に複数のスライスされた層を用いる従来の層単位の印刷は、部品が大量の支持を必要とする状況、又は、層単位の手法の結果、部品がその目的に十分な構造的形態を有することができない状況をもたらす可能性がある。さらに、複雑な部品は、従来の層単位の印刷プロセスでは、適切な支持を提供する支持構造体が可能でないこと、又は、完成部品が品質規格を満たすことができないことによって、印刷することが非常に困難である可能性がある。
【0060】
例えば、図9に断面図で示す部品900等のより複雑な形状のニアネット部品は、従来の層単位の方法を用いて印刷されると、非常に多くの時間を要するとともに支持に依存する。マフラーパイプ又は他の曲線状中空パイプ等の細長い管状部材である部品900を印刷する層単位の方法では、層単位の印刷方法は、層線902に示す複数の層に部品をスライスする。各層について、部品の底部904から始まる実際の部品900の部分は、セクション906に示されている。その後の層の高さにおける部品のその後の部分の支持構造体も堆積させなければならない。支持構造体は、底部904における最初の層のセクション908にクロスハッチングされて示されている。支持構造体908は、セクション910、912、及び914等の、層単位の印刷プロセスにおいて後に印刷される部品900の部分を支持するのに用いられる。支持構造体は、通常、異なる材料を用いて印刷され、そのため、部品900の底部904における最初の層は、セクション906用の部品材料と、セクション908用の支持材料とを用いて印刷される。
【0061】
部品材料と支持材料との間の変更は、通常、支持材料の印刷を開始することができるようになる前に、印刷ヘッドの交換によって行われ、これには、印刷ヘッドを部品から遠ざけることと、印刷ヘッド自体を交換することと、新たな印刷ヘッドから材料を取り除くことと、この新たな印刷ヘッドを部品に位置合わせすることとのうちの1つ以上が必要とされる。各層に対して、印刷ヘッドの少なくとも1回の交換が、全ての付随する動作とともに行われる。部品900のほぼ全ての層について、部品材料及び支持材料の双方を印刷する必要があることを見て取ることができる。これによって、印刷時間、材料コスト、並びに事後処理時間及び費用が増加する。さらに、特に910及び912に示す層では、印刷層は、印刷において最も意味をなす部品900の輪郭に従っていない。すなわち、部分910及び912では、部品材料の層は、その部分における部品900の長手方向軸に実質的に平行である。これによって、部品エッジにおいて階段ステッピング(層エイリアシング)に関する問題は生じる可能性があり、部品900の全体の強度及び品質が低下する可能性がある。
【0062】
付加製造用にスライスされると、平面工具経路を用いてニアネット形式で適切に生産するのが困難である部品900のような部品、例えば、階段ステッピング(層エイリアシング)及び強度に関する問題を有する部品は、例えば、3D連続工具経路を用いて全体を通じて一貫した強度を有するように本開示の実施形態によって印刷することができる。図10は、システム100を用いて部品900を印刷する一実施形態を示している。本開示の実施形態によって、図10に示すように、支持構造体を用いずに同じ部品900の印刷が可能になる。さらに、本開示の実施形態によって可能にされる単一の3D工具経路によって、一貫した長手方向強度を有する部品900のビルドが可能になる。なぜならば、印刷ヘッドの螺旋工具経路が、材料堆積の構造的に安定した向きと一貫して一致することができるからである。図10において、多軸ロボットビルドシステム100は、部品900を、その底部から開始して、部品900の外面をトレースし、管状部品の長手方向軸に沿って一致した単一の螺旋工具経路を用いて印刷する。図10に見られるように、エリア912は、階段ステッピング(層エイリアシング)及び支持体を低減又は除去する印刷ヘッド104の工具経路を用いて印刷されており、それによって、部品900は、より少ない材料を用いて、部品900を一貫性及び強度のあるものにするためにその幾何形状に沿って、より高速に印刷される。本開示の実施形態は、既存の部品の上への異なる配向での押し出しを含む印刷材料における繊維の整列及び配向を用いるとともに層の組成も用い、ほとんどの幾何形状について一様で一貫した強度を提供して、具体的には、ビルドパターン、密度又は組成を変化させることによって部品の複数の部分内の強度又は柔軟性を変化させて、印刷されている部品の強度を変化させるのに用いることができる。
【0063】
本開示の実施形態を用いて容易にビルドされる別の代表的な部品は、例えば、部品の表面に垂直な内部格子構造を有する部品である。本開示の実施形態は、ロボットアームとビルドプラットフォームとの間において8つの運動軸を用いてそのような部品の印刷を可能にする。標準的な溶融堆積モデリング技法及び機械を用いた印刷に適用可能でない本開示の方法及び装置の実施形態を用いて印刷することができる部品の例には、端部が上方に湾曲した部品等の航空機翼の翼端が含まれる。この翼端は、多くの場合に翼の内部構造内にハニカム格子を備え、構造的に強度を有する必要がある。この格子構造は、特に、翼の内部部分に対して適切な向きに整列されている。
【0064】
図11は、現在の層単位溶融堆積モデリング印刷技法の限界を示している。部品1110は、応力点及び破壊点の周辺の応力要件及び強度要件を有する部品を示している。金属部品は、部品1120に示すように、使用に適した強度性能及び応力性能を提供する。複合ラミネート部品1130も、応力検査及び強度検査に合格する。層単位の押し出しプロセスを用いて印刷される部品1140及び1150は、層が、部品1140では矢印1142に沿って印刷され、部品1150では矢印1152に沿って印刷されているが、応力検査又は強度検査のうちの一方に不合格であり、他の検査に合格する。現在の溶融堆積モデリング印刷システムの層単位の印刷モデルは、単一のビルド平面に限定され、複数の軸又は複数のビルド平面に沿って印刷することによる部品品質又はビルドプロセスの最適化が可能でない。一方、矢印1162によって示されるように全ての方向に進む工具経路を用いて複数の軸に沿って、本開示の実施形態を用いて印刷される部品1160は、本開示の実施形態が、複合物及び印刷の向きを整列させて、要件を満たす強度パラメーター及び応力パラメーターを提供することができるので、強度検査及び応力検査に合格することができる完成した部品を提供する。
【0065】
局所冷却の有無を問わず、複数の自由度で印刷することによって、狭い2点間支持構造体の使用が可能になる。例えば、図12は、部品1200と支持表面1210との間(1202)及び部品上の分離したスポットの間(1204)にそれぞれ取り付けられた支持構造体を示している。1202及び1204等の薄い支持構造体は、層単位の印刷動作が可能でない。そのような薄い支持構造体は、高速に印刷可能であるが、従来の支持構造体と同程度の材料を用いない。1204等の部品間構造体が用いられる場合があり、この構造体は、例えば、ビルド平面上方からビルドされる完全な従来の支持構造体を用いることなく、部品の幾つかの部分の圧縮又は熱ダレを低減するのに用いることができる。
【0066】
本開示の実施形態は、オーブン又は他の加熱された筐体の外部における印刷に適用可能である。図1の実施形態は、オーブン外環境において示されている。オーブン外での印刷のように、オーブンに閉じ込められていない印刷環境では、完成していない部品の平衡温度は環境の温度と概ね同等である。これは、オーブン内(in-oven)印刷と異なり、ウィンドウ(window)を大幅に低減することができ、以前に印刷された材料への新たな材料の付着及び他のビルド特性を達成することができる。
【0067】
一方、工具経路に沿って部品の以前に印刷された部分を局所的に加熱し、その後に、この工具経路に沿って材料を押し出し、材料層の間の接合を高めるような印刷技法は、ビルドチャンバーを含む加熱されたビルド環境において利用することができる。加えて、工具経路に沿って近時に押し出された材料の局所冷却は、印刷されている部品の熱安定性を維持するのに利用することができる。
【0068】
本開示の実施形態は、例えば、レーザーシステム、ガスジェットシステム、又はレーザーシステム及びガスジェットシステムの組み合わせを用いた部品の幾つかの部分の予熱を用いる。図1を再び参照すると、加熱器120は、代替形態では、本明細書において論述したような予熱ガスジェット、レーザー加熱器、又はそれらの組み合わせとすることができる。予熱を用いると、部品印刷に所望されるビルド特性及び付着を向上させることができる。そのような向上によって、オーブン内ビルド品質と同様の又はそれよりも良好な部品のオーブン外のビルドが可能になる。さらに、そのような向上によって、オーブン外での部品ビルドにおいて新たな材料ファミリーの使用が可能になる。
【0069】
予熱が、レーザー予熱器を用いて行われるとき、熱エネルギーが、新たな材料ビードの堆積の直前又は実質的に直前に、以前に印刷された層の小さなエリアに印加される。1つの実施形態では、これは、新たな層と以前の層との間で共有される界面のより低温の側を予熱し、新たな層と以前の層との間の付着を改善する。この予熱によって、予熱がなければオーブン外環境においてあまり又は全く付着しない高温材料の使用も可能になる。
【0070】
1つの実施形態では、レーザー素子のアレイを用いることができる。事前に計算されて既知の工具経路及び層平面形状が用いられる本開示の実施形態では、そのようなレーザー素子のアレイを、単一のレーザー光源の代わりに用いることができる。そのような構成では、全レーザーアレイの個々の素子は、必要な場合にのみレーザー加熱を印加するように係合させることができる。これによって、特に、印刷ヘッドが、通常は完全な冷却が可能でない時間スパン内で部品上のほぼ同じスポットに高速に復帰する密に詰め込められたラスターパターンにおいて、隣接する工具経路の過熱が防止される。さらに、レーザー出力を変化させることによって、予熱から得られる付着の量を制御することができる。レーザーエネルギーは、特定の最大温度によって制限されないので、レーザー予熱は、印刷に用いられるポリマー化合物が、劣化が起こる前に達することができる最大温度によってのみ制限される。
【0071】
予熱がガスジェットを用いて行われるとき、集中的な高速高温の空気流が、例えば、印刷ヘッドのすぐ前方にある堆積経路上に熱を送る。レーザーシステムと同様のエネルギー入力を得ることができる。ただし、最大温度は制限することができる。すなわち、高温の気体は、特定の温度において導入することができ、部品の温度が気体の温度を越える危険性はない。1つの実施形態における気体の選択肢は不活性ガスである。予熱の所望の温度に応じて、空気を用いることもできるし、他の気体を用いることもできる。空気以外の気体、すなわち、1つの実施形態では不活性ガスを用いることによって、不活性環境においてポリマー劣化の可能性が低減されることから、局所的な空気に基づく環境よりも高い温度を達成することができる。
【0072】
さらに、ガスジェット予熱器の設計及び能力に応じて、そのようなジェットは、冷却、事前印刷又は事後印刷を提供するために異なる気体とともに用いることもできるし、異なる温度の同じ気体とともに用いることもできる。方向制御された加熱及び冷却を同時に可能にするガスジェットのアレイも提供することができる。室温又はそれよりも低温の空気/気体を用いたガスジェット又はガスジェットアレイを用いて外力による対流を印加することによって、押し出しの直前又は直後に材料ビードを急速に冷却することができる。他の流体を利用して、以前に堆積された材料を冷却することもできる。この流体には、液体窒素が含まれるが、これに限定されるものではない。後冷によって、例えば、大きなビード直径の押し出しを、部品を印刷するのに必要とされる時間を削減するラスターパターン等の短い復帰時間;増加したブリッジング(bridging:橋渡し)距離;特に、予熱と組み合わされたときの調整適応された付着;及び材料モルフォロジー(material morphology)の制御とともに利用することが可能になる。予冷によって、例えば、部品内の特定のスポットにおける部品内の弱点又は障害点(failure point)の生成が、例えば付着を削減することによって可能になる。
【0073】
1つの実施形態におけるビードの予冷によって、部品内の特定のスポットにおける付着の発生を意図的に阻害する能力を用いて部品を印刷することが可能になる。これは、物体の別のよりクリティカルなエリアの代わりに特定の障害箇所にエネルギーをチャネリングすることによって障害を緩和する必要があるように、例えば、意図的に弱く付着されたゾーンを部品自体に導入するのに用いることができる。また、これは、ビルド後に、その後の孔等のブレイクアウトのための局所領域を対象とするのに用いることができる。さらに、これは、例えば、物体と、支持として用いられるモデルの別のビルドとの間の付着を低減するのに用いることができる。幾つかの構成では、モデル材料は、以前に印刷された材料に十分に付着する。しかしながら、堆積の前に部品の1つの表面を意図的に冷却することによって、共有界面は、良好な付着のための最良の温度を達成しない。これによって、これらのモデルにおける調整された付着の形成は、支持界面としてモデル化することが可能になる。
【0074】
堆積前に部品の一部分又は工具経路の一部分を局所的に予熱することによって、3D印刷動作において複数の異なる材料の使用が可能になる。完成した物体をオーブン内で昇温状態に維持するのではなく、オーブン外環境において短い時間にわたって材料の浅い深さを予熱することによって、複数の材料をともに印刷することができる。これは、1つの実施形態では、2つの材料のうちの一方を、オーブン内で印刷するときに用いられる温度等のオーブン内でなければ使用不能な温度範囲において付着が行われることを可能にする2つの材料のうちの第2のものの互換温度範囲に局所的に予熱することによって可能にされる。同じ部品において1つの熱可塑性プラスチック材料から別のものへの切り替えは、通常、制御された温度のオーブン環境において実現可能でなかった。なぜならば、各材料は、その材料融解特性に関連した特定のビルド温度範囲を必要とするからである。予熱及び/又は予冷を通じて局所ビルド温度制御を利用することによって、材料堆積の切り替えをビルド中に行うことができる。限定ではなく単なる例として、オーブン外の実施形態における局所的予熱によって、構造材料上にエラストマーを印刷することも可能になり、これらの双方は、異なる温度範囲において十分に付着する。温度は局所的に上昇されるので、温度制御は、部品の安定性が維持されるように、短い期間にわたって行うことができる。
【0075】
1つの実施形態では、エネルギー源の受容性(acceptance)を変更するために添加物が印刷材料に付加される。添加物には、限定ではなく単なる例として、カーボンブラック及び/又は染料が含まれる。添加物は、1つの実施形態では、幾つかの特定の状況下で幾つかの特定の方法で機能する印刷材料を作製するのに用いられる。添加物を用いることによって、同じ部品において種々の材料を用いることが更に容易になる。この材料調節によって、例えば、幾つかの特定の波長のレーザーエネルギーが異なる材料に対して異なる効果を有することが可能になる。例えば、レーザー光源が、対象の印刷材料がエネルギーを吸収する波長においてエネルギーを放出するとき、この材料は、添加物を有しないその基本材料と異なって反応することができる。
【0076】
1つの実施形態では、レーザー予熱源の放出波長は既知であり、添加剤の使用を通じて、印刷される材料は、添加剤の使用等によって、加熱エネルギー源の異なる範囲の受容性又は拒絶性を有する材料を生み出すように変更される。そのような変更によって、材料は、例えば、特定の波長又は波長の範囲におけるエネルギーを吸収又は拒絶するように調節される。可視波長、赤外波長、紫外波長等への調節は、添加剤を用いることによって行うことができる。様々な波長エネルギーに対する材料の反応は、例えば、様々な物理特性及び化学特性に依存する。異なる材料も、異なる添加物に対して異なる反応を有し、更なる調節を可能にすることができる。添加物は、例えば、印刷材料の吸収性の制御、伝導性の制御、特定の熱容量の制御等に用いることができる。したがって、材料の調節によって、局所的予熱及び局所的予冷の補助を受けて、異なる融解温度及び付着温度を有する材料をオーブン外構成において結合することが可能になる。
【0077】
更なる実施形態は、局所的予熱及び/又は局所的予冷を用いて、部品又はその一部分の部品特性を求める。例えば、部品構造、最小復帰時間、印刷ビードサイズ等に応じて、予熱及び/又は予冷は、残留応力を局所化することができる。例えば、プレストレス点(pre-stress points:元応力点)を組み込むこともできるし、予熱/後熱及び予冷/後冷を用いて、ビードの温度プロファイルを調節して、例えば、小さなビードの冷却時間を長くし、及び/又は、大きなビードの冷却時間を減少させることによって残留応力を削減することもできる。オーブン内ビルドは、これを行うことができない。
【0078】
予熱器及び後熱器並びに予冷器及び後冷器は、幾つかの実施形態では、印刷ヘッドに極めて近接して示されているが、予熱器及び後熱器並びに予冷器及び後冷器の配置は、本開示の範囲内において変更することができることが理解されよう。
【0079】
最小復帰時間は、1つの層上の或る点におけるビードの堆積と、次の層上の同じ点におけるビードの堆積との間の時間である。部品のビルド中、熱は、堆積されたビードから熱伝導及び対流によってそれぞれ以前の層及び環境に伝達される。ビード直径が小さく、部品が十分に大きい場合、新たに堆積されたビードからの熱は、新たな材料がその上に堆積される時刻までに十分遠くに伝達される。
【0080】
最小復帰時間は、小さな特徴部及びニアネット部品の作製の因子になるとともに、樹脂が、次の層が堆積される前に十分なエネルギーをその周囲に伝達する時間を有しない場合及び大きなビードサイズの場合に、製造押し出しレートの増加の因子にもなる。実際に、十分小さな特徴部又は大きなビードサイズの場合、部品内での温度暴走の可能性がある。この場合、以前の層における温度は、堆積が繰り返されるに従い上昇する。この結果、最も新しい層の冷却はますます遅くなり、以前の層は、その堆積後に形状が有効に固定された状態にあるべきであるが、潜在的に動きやすくなる。幾つかのプリンターでは、復帰時間は、以前に堆積された層が新たな層の堆積前に臨界温度を十分下回ることを確保するために意図的に長くされる。
【0081】
しかしながら、これは、小さなビードよりもはるかに大きな熱質量を保持する大きなビードについては実現可能でない場合がある。非常に大きなビード直径の場合、特徴部のサイズを問わず、最小復帰時間は、数十秒から数分に長くなり、これによって、特に小さなサイズから中程度のサイズの特徴部については、総ビルド時間は劇的に増加する。これらの大きな直径のビードは、長い冷却時間を必要とするだけでなく、十分長く可動な状態にある場合もあるので、固化する前にそれら自体の重量に基づいて歪んで撓む場合があり、この場合も同様に失敗につながる。大きな直径のビードの急速冷却は、それらの使用を可能にし、ビード及び特徴部のサイズの範囲を拡大する。
【0082】
本開示の実施形態は、急速な局所冷却を用いて熱の蓄積に対抗する。堆積の直後に熱(1つの実施形態では、特定の熱量)を急速に除去することによって、最小復帰時間が削減され、それによって、小さな特徴部の高速なビルド及び大きな直径のビードの使用の双方が可能になり、最終的には、ビルド時間が削減されるとともに、潜在的な部品の障害が削減されるか又は障害歪みがなくなる。1つの実施形態では、除去される熱量は、部品を、変形しないように冷却するのに十分なものであるが、付着を妨げるほどのものではない。
【0083】
1つの実施形態では、局所冷却が行われる場合に、局所加熱も用いられる。局所加熱は付着を促進し、局所冷却は付着を抑制する。したがって、堆積前の局所的予熱によって、付着を高めることが可能になり、局所急速冷却によって、ビードの形状が固定され、最小復帰時間が削減される。
【0084】
ガスジェットを用いた後冷は、ファンが周囲空気を送風することとは対照的に、支持されていないビード領域又は下部のビード領域のブリッジング距離をオーブン内印刷環境よりも、大きくすることを可能にする。より効果的なガスジェット冷却を用いると、ビードをより急速に固化することができ、ブリッジング距離を更に拡張することができる。ブリッジングについて、ブリッジ結合箇所(bridge union site)における十分な付着を維持するために、次の接合部の予熱が印加される。薄いビードよりも大きな熱質量を有し、したがって、よりゆっくりと冷却する大きな直径のビードを急速に冷却する能力によって、最小復帰時間の削減及び部品の完全性の向上が可能になる。これによって、現在の支持構造体の使用量及びビルド時間を減らすことが可能になるとともに、本明細書において説明したようなタック(tack)支持体等の新たなタイプの支持構造体が可能になる。
【0085】
半結晶ポリマー、又は半結晶ポリマーを組み込んだ合金の場合、相対結晶化度は、温度及び温度変化率の関数である。一般に、低速な冷却プロセスほど、より急速な冷却プロセスよりも大きな相対結晶化度が得られる。1つの後冷の実施形態は、近時に押し出された材料を高速にその結晶化範囲に通し、よりゆっくりと冷却した材料と比較してこの材料を相対的にアモルファスの状態にしておく。逆に、例えば、レーザー予熱器、ガスジェット予熱器、又はそれらの組み合わせ等の予熱器を用いた後熱の場合、材料をより高温により長く保つことができ、より多くのクリスタリットの形成が可能になる。
【0086】
図13は、付加製造システムを用いて3D部品を印刷する方法1300のフローチャートである。方法1300は、ブロック1302において、第1の3D工具経路に沿って部品の第1の部分を印刷することを含む。部品の第2の部分が、ブロック1304において、第2の3D工具経路に沿って部品の第1の部分の表面にコンフォーマルに印刷される。
【0087】
図14は、多軸ロボットビルドシステムを用いて3D部品を印刷する別の方法1400のフローチャートである。方法1400は、ブロック1402において、6つの自由度に動くロボットアームに取り付けられた押し出し機を用いて3D工具経路に沿って部品を印刷することを含む。部品は、ブロック1404において、ロボットアームの動きとは別個に、印刷されている部品の幾何形状に基づいて印刷中に向きが定められる。
【0088】
図15は、3D部品のオーブン外印刷の方法1500のフローチャートである。方法1500は、ブロック1502において、6つの自由度を有するロボットアーム上に押し出し機を設けることと、ブロック1504において、2つの回転軸において可動なビルド平面を設けることとを含む。部品の第1の部分が、ブロック1506において、第1の3次元工具経路に沿って押し出される。部品の第2の部分が、ブロック1508において、第2の3D工具経路に沿って部品の第1の部分の表面にコンフォーマルに押し出される。部品の第2の部分を押し出すことは、部品の第2の部分の第2の3D工具経路の一部分を、工具経路のその部分に押し出す前に、局所的に予熱することを含む。
【0089】
図16は、3D部品を印刷する別の方法1600のフローチャートである。方法1600は、ブロック1602において、3D部品の一部分を押し出すことと、ブロック1604において、3D部品の次の層が印刷される際に沿う工具経路の部分を予熱することとを含む。追加の部品材料が、ブロック1606において、新たに押し出される材料と以前に押し出された材料との間の付着を高めるために予熱された工具経路に沿って押し出される。
【0090】
本開示の実施形態は、多軸印刷システムに関して説明されているが、本開示の実施形態は、付加製造プロセス及び除去製造プロセスの双方とともに用いることもできることが理解されよう。本開示の装置及び方法の実施形態は、部品の既存の以前に印刷された部分上に部品の幾つかの部分をコンフォーマルに印刷することを含み、ロボットをポジショナー、クレードル、ガントリー等と組み合わせたものを用いて、印刷プロセスを、単一工具経路又は複数の単一工具経路に沿って印刷される部品の幾何形状と位置合わせする真の3D印刷プロセスを提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16