特許第6843969号(P6843969)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843969
(24)【登録日】2021年2月26日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】外科的固定システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/04 20060101AFI20210308BHJP
   A61B 17/56 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   A61B17/04
   A61B17/56
【請求項の数】15
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2019-510600(P2019-510600)
(86)(22)【出願日】2017年8月25日
(65)【公表番号】特表2019-528120(P2019-528120A)
(43)【公表日】2019年10月10日
(86)【国際出願番号】US2017048579
(87)【国際公開番号】WO2018039542
(87)【国際公開日】20180301
【審査請求日】2020年8月24日
(31)【優先権主張番号】62/379,370
(32)【優先日】2016年8月25日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/470,573
(32)【優先日】2017年3月13日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597117606
【氏名又は名称】アースレックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】バッハマイアー、 サムエル
(72)【発明者】
【氏名】ウェディクス、 コーエン
(72)【発明者】
【氏名】クルップ、 シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン、 エイドリアン
(72)【発明者】
【氏名】スミス、 パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ジョリー、 ジェイコブ
【審査官】 山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0256677(US,A1)
【文献】 米国特許第06267767(US,B1)
【文献】 米国特許第06833005(US,B1)
【文献】 特開2011−251141(JP,A)
【文献】 特開2014−171896(JP,A)
【文献】 特開2015−112490(JP,A)
【文献】 特表2015−507952(JP,A)
【文献】 特表2015−512701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/04
A61B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科的固定システムであって、
ボタンと、
前記ボタンに接続されている固定ループ又は調整可能なループと、
移植片と、
前記ボタンに接続されているが前記移植片に取り付けられていない補強材と
を含み、
前記移植片及び前記補強材は、前記外科的固定システムを用いて第1の骨の骨トンネル内に固定されるように構成され、
前記移植片及び前記補強材は、互いに独立して別々に張力をかけられるように構成され、
前記移植片及び前記補強材は、張力をかけた後、第2の骨に固定されるように構成され、
前記移植片は、前記第2の骨に固定されると所定の歪み閾値までの関節歪み荷重に反応するように構成され、
前記補強材は、前記第2の骨に固定されると前記所定の歪み閾値を超える関節歪み荷重に反応するように構成される、システム
【請求項2】
前記固定ループ又は調整可能なループは、第1の調整可能なアイスプライスと、前記第1の調整可能なアイスプライスと相互に接続されている第2の調整可能なアイスプライスとを含む調整可能なループである、請求項に記載のシステム
【請求項3】
前記移植片は前記固定ループ又は調整可能なループに接続されている、請求項に記載のシステム
【請求項4】
前記移植片は前記固定ループ又は調整可能なループに掛け回され、前記補強材は前記ボタンの開口部に通される、請求項に記載のシステム
【請求項5】
前記移植片とは異なる量のたるみ前記補強材に残される、請求項1に記載のシステム
【請求項6】
前記移植片よりも多量のたるみが前記補強材に残される、請求項に記載のシステム
【請求項7】
前記移植片及び前記補強材が前記第2の骨に固定されると前記移植片とは異なる量の張力前記補強材に残される、請求項1に記載のシステム
【請求項8】
前記移植片に比べて少量の張力が前記補強材に残される、請求項に記載のシステム
【請求項9】
前記移植片及び前記補強材前記第1の骨に対して前記ボタンで固定され
前記移植片前記第2の骨に対して第1のスクリュー又は第1の縫合糸アンカーで固定され
前記補強材前記第2の骨に対して第2のスクリュー又は第2の縫合糸アンカーで固定される、請求項1に記載のシステム
【請求項10】
前記第2のスクリュー又は前記第2の縫合糸アンカーは、前記第1のスクリュー又は前記第1の縫合糸アンカーとは別の骨孔内に配置される、請求項に記載のシステム
【請求項11】
前記補強材は、前記第2の骨に固定されると前記移植片を応力遮蔽しない、請求項1に記載のシステム
【請求項12】
前記補強材は、縫合テープ、生物学的構築物、又は超弾性材料を含む、請求項1に記載のシステム
【請求項13】
前記移植片は、第1の張力で前記移植片に張力をかけることで所定の歪み閾値までの関節歪み荷重に反応するように構成され
前記補強材は、第2の張力で前記補強材に張力をかけることで前記所定の歪み閾値を超える関節歪み荷重に反応するように構成され
前記ループ及び前記補強材は、前記ボタンに形成された共通の開口部のセットにより受け入れられる、請求項1に記載のシステム
【請求項14】
前記移植片及び前記補強材前記第1の骨に対して前記ボタンで固定され
前記移植片及び前記補強材前記第2の骨に対して第2のボタンで固定される、請求項13に記載のシステム
【請求項15】
前記ボタンは、第1の開口部と第2の開口部とを含
前記ループは、前記ボタンの前記第1の開口部及び前記第2の開口部を通
前記移植片は、前記ループのクレードルに掛け回さ
前記補強材は、前記ボタンの前記第1の開口部及び前記第2の開口部に接続さ
前記補強材は前記ループ取り付けられていない、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、骨トンネル内に移植片を固定するための外科的固定システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年8月25日に出願された米国仮出願第62/379,370号及び2017年3月13日に出願された米国仮出願第62/470,573号の優先権を主張するものであり、上記米国仮出願の全開示は参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0003】
前十字靭帯(ACL)再建及び後十字靭帯(PCL)再建などの組織再建術は、一般的に、骨を通るトンネルの穿孔、代用移植片の骨トンネルへの配置、及びボタン、スクリューなどの固定デバイスを用いた骨トンネル内への移植片の固定を含む。代用移植片は、外科的固定システムに補強材を加えることによって補強することができる。
欧州特許第2238944号明細書には、組織再建用の調整可能なボタン/ループ構造体の例が記載されている。柔軟で調整可能なループを備えたボタン/ループ構造体は、組織(例えば、移植片、靭帯、又は腱)に接続される。調整可能なループは、固定デバイス又は移植片支持デバイスと一体化することができる。移植片又は靭帯は、構造体のボタンを骨孔/トンネルに通し、ボタンを裏返して骨の外側に配置することにより、骨孔/トンネルに固定される。次いで、移植片又は靭帯を骨孔/トンネル内に固定するために柔軟で調整可能なループの長さが調整される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、外科的固定システム及び方法に関する。外科的固定システムは、固定デバイスと、固定デバイスに接続されているループと、ループによって支持されている移植片と、補強材とを含む。外科的固定システムは、ACL及びPCL再建を含むがこれらに限定されない様々な組織再建処置に使用することができる。
【0005】
本開示の例示的な態様による外科的方法は、特に、外科的固定システムを用いて骨トンネル内に移植片を固定することを含む。外科的固定システムは、ボタンと、ボタンに接続されているループと、ボタンに接続されているが移植片に取り付けられていない補強材とを含むことができる。この方法は、移植片及び補強材に互いに別々に張力をかけ、独立した張力付与をもたらすことをさらに含むことができる。
【0006】
本開示の他の例示的な態様による外科的方法は、特に、ボタンと、ボタンに接続されているループと、ボタンに接続されているが移植片に取り付けられていない補強材とを含む外科的固定システムを用いて骨トンネル内に移植片を固定することと、移植片が所定の歪み閾値までの関節歪み荷重に反応するように第1の張力で移植片に張力をかけることと、補強材が所定の歪み閾値を超える関節歪み荷重にのみ反応するように、第2の独立した張力で補強材に張力をかけることとを含む。
【0007】
本開示の例示的な態様による外科的固定システムは、特に、固定デバイスと、固定デバイスに接続されているループと、ループによって支持されている移植片と、ボタンに接続されかつ移植片又は調整可能なループのいずれにも取り付けられていない補強材とを含む。補強材は移植片とは別に張力をかけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
詳細な説明に付随する図面は、以下のように簡単に説明することができる。
図1】組織再建処置を行うための外科的固定システムを示す。
図2図1の外科的固定システムの調整可能なループを形成するための方法を概略的に示す。
図3図1の外科的固定システムの調整可能なループを形成するための方法を概略的に示す。
図4図1の外科的固定システムの調整可能なループを形成するための方法を概略的に示す。
図5図1の外科的固定システムの調整可能なループを形成するための方法を概略的に示す。
図6図1の外科的固定システムの調整可能なループを形成するための方法を概略的に示す。
図7図1の外科的固定システムの調整可能なループを形成するための方法を概略的に示す。
図8図1の外科的固定システムの調整可能なループを形成するための方法を概略的に示す。
図9】組織再建処置の一部としての図1の外科的固定システムの使用を概略的に示す。
図10図9の組織再建処置の一部としての補強材及び移植片の例示的な固定を示す。
図11図9の組織再建処置の一部としての補強材及び移植片の他の例示的な固定を示す。
図12】組織修復処置の一部としての外科的固定システムの使用を概略的に示す。
図13】組織再建処置に使用されたサンプルの外科的固定システムの試験中の力対変位を示すグラフである。
図14】組織修復処置に使用されたサンプルの外科的固定システムの試験中の力対変位を示すグラフである。
図15】サンプルの外科的固定システムの伸び挙動を示すグラフである。
図16】サンプルの外科的固定システムの伸び挙動を示す他のグラフである。
図17】サンプルの外科的固定システムの引き抜き力を従来技術の外科的固定システム及び本来の前十字靱帯と比較して示す棒グラフである。
図18】サンプルの外科的固定システムの剛性の結果を従来技術の外科的固定システム及び本来の前十字靱帯と比較して示す棒グラフである。
図19】サンプルの外科的固定システムの伸び挙動を示す棒グラフである。
図20】サンプルの外科的固定システムの引張破壊及び剛性試験の結果を示す棒グラフである。
図21】組織再建処置を行うための他の例示的な外科的固定システムを示す。
図22】組織再建処置の一部としての図21の外科的固定システムの使用を概略的に示す。
図23】組織再建処置の一部としての図21の外科的固定システムの使用を概略的に示す。
図24】組織再建処置の一部としての図21の外科的固定システムの使用を概略的に示す。
図25】組織修復処置に使用されたサンプルの外科的固定システムの試験中の力対変位を示すグラフである。
図26】組織再建処置に使用されたサンプルの外科的固定システムの試験中の力対変位を示すグラフである。
図27】サンプルの外科的固定システムの剛性の結果を 従来技術の外科的固定システム及び本来の前十字靱帯と比較して示す棒グラフである。
図28】サンプルの外科的固定システムの引張破壊力を従来技術の外科的固定システム及び本来の前十字靱帯と比較して示す棒グラフである。
図29】ウシモデルでの外科的固定システムの試験を概略的に示す。
図30】ウシモデルでの外科的固定システムの試験を概略的に示す。
図31】ウシモデルでの外科的固定システムの試験を概略的に示す。
図32】ウシモデルでの外科的固定システムの試験を概略的に示す。
図33】ウシモデルでの外科的固定システムの試験を概略的に示す。
図34】ヒトの膝窩腱移植片を含む外科的固定システムの試験を概略的に示す。
図35】ヒトの膝窩腱移植片を含む外科的固定システムの試験を概略的に示す。
図36】ヒトの膝窩腱移植片を含む外科的固定システムの試験を概略的に示す。
図37】ヒトの膝窩腱移植片を含む外科的固定システムの試験を概略的に示す。
図38】ヒトの膝窩腱移植片を含む外科的固定システムの試験を概略的に示す。
図39】骨−腱−骨(BTB)移植片を含む外科的固定システムの試験を概略的に示す。
図40】骨−腱−骨(BTB)移植片を含む外科的固定システムの試験を概略的に示す。
図41】骨−腱−骨(BTB)移植片を含む外科的固定システムの試験を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、外科的固定システム及び方法に関する。外科的固定システムは、固定デバイスと、固定デバイスに接続されているループと、ループによって支持されている移植片と、補強材とを含むことができる。外科的固定システムは、ACL及びPCL再建を含むがこれらに限定されない、様々な組織再建処置に用いることができる。
【0010】
本開示の例示的な態様による外科的方法は、特に、外科的固定システムを用いて移植片を骨トンネル内に固定することと、移植片と外科的固定システムの補強材に互いに別々に張力をかけ、独立した張力付与をもたらすこととを含む。
【0011】
さらなる実施形態において、外科的固定システムは、ボタンと、ボタンに接続されている固定ループ又は調整可能なループと、ボタンに接続されているが移植片に取り付けられていない補強材とを含む。
【0012】
さらなる実施形態において、調整可能なループは、第1の調整可能なアイスプライスと、第1の調整可能なアイスプライスと相互に接続されている第2の調整可能なアイスプライスとを含む。
【0013】
さらなる実施形態において、移植片はループに接続されている。
【0014】
さらなる実施形態において、移植片はループに掛け回され、補強材はボタンの開口部に通される。
【0015】
さらなる実施形態において、固定後に張力付与が生じる。
【0016】
さらなる実施形態において、所定の歪み閾値までの関節歪み荷重は移植片と反応させられ、所定の歪み閾値を超える関節歪み荷重は補強材と反応させられる。
【0017】
さらなる実施形態において、移植片とは異なる量のたるみが補強材に残される。
【0018】
さらなる実施形態において、移植片よりも多量のたるみが補強材に残される。
【0019】
さらなる実施形態において、移植片とは異なる量の張力が補強材に残される。
【0020】
さらなる実施形態において、移植片に比べて少量の張力が補強材に残される。
【0021】
さらなる実施形態において、移植片及び補強材を第1の骨に対してボタンで固定し、移植片を第2の骨に対して第1のスクリュー又は第1の縫合糸アンカーで固定し、補強材を第2の骨に対して第2のスクリュー又は第2の縫合糸アンカーで固定する。
【0022】
さらなる実施形態において、第2のスクリュー又は第2の縫合糸アンカーは、第1のスクリュー又は第1の縫合糸アンカーとは別の骨孔内に配置される。
【0023】
本開示の他の例示的な態様による外科的方法は、特に、ボタンと、ボタンに接続されているループと、ボタンに接続されているが移植片に取り付けられていない補強材とを含む外科的固定システムを用いて骨トンネル内に移植片を固定することと、移植片が所定の歪み閾値までの関節歪み荷重に反応するように第1の張力で移植片に張力をかけることと、補強材が所定の歪み閾値を超える関節歪み荷重にのみ反応するように第2の張力で補強材に張力をかけることとを含む。
【0024】
さらなる実施形態において、移植片とは異なる量のたるみが補強材に残される。
【0025】
さらなる実施形態において、移植片よりも多量のたるみが補強材に残される。
【0026】
さらなる実施形態において、移植片とは異なる量の張力が補強材に残される。
【0027】
さらなる実施形態において、移植片に比べて少量の張力が補強材に残される。
【0028】
さらなる実施形態において、移植片及び補強材を第1の骨に対してボタンで固定し、移植片を第2の骨に対して第1のスクリュー又は第1の縫合糸アンカーで固定し、補強材を第2の骨に対して第2のスクリュー又は第2の縫合糸アンカーで固定する。
【0029】
さらなる実施形態において、移植片及び補強材を第1の骨に対してボタンで固定し、第2の骨に対して第2のボタンで固定する。
【0030】
本開示の例示的な態様による外科的固定システムは、特に、固定デバイスと、固定デバイスに接続されているループと、ループによって支持されている移植片と、ボタンに接続されかつ移植片又は調整可能なループのいずれにも取り付けられていない補強材とを含む。補強材は移植片とは別に張力をかけることができ、独立した張力付与をもたらす。
【0031】
図1は、例示的な外科的固定システム10を示す。外科的固定システム10は、様々な組織再建処置を行うのに使用されることができる。組織再建処置は、引き裂かれた組織を修復するために骨トンネル内に代用移植片を配置することが望ましいあらゆる処置を含むことができる。ACL及びPCL再建は、本開示の外科的固定システム10の使用の利益を享受することができる再建処置の2つの非限定的な例にすぎない。
【0032】
外科的固定システム10は、固定デバイス12と、ループ14と、移植片16と、補強材18とを含む。固定デバイス12は、移植片16が骨トンネル内に配置された後に移植片16の皮質骨固定をもたらす。一実施形態において、固定デバイス12はボタンである。しかしながら、他の同様の構成を有する固定デバイスも使用可能である。固定デバイス12は楕円形又は円形であることができ、本開示の範囲内で金属材料又はポリマー材料のいずれかで作られることができる。
【0033】
他の実施形態において、固定デバイス12は、ループ14及び補強材18を受け入れるために固定デバイス12の本体を貫通して形成された1つ以上の開口部20を含む。例えば、図1の実施形態の固定デバイス12は、ループ14及び補強材18を固定デバイス12に接続するための2つの開口部20を含む。図示されていないが、固定デバイス12は、2つを超える追加の開口部又は穴を含むことができる。
【0034】
ループ14は、固定ループ又は調整可能なループであることができる。非限定的な実施形態において、外科的固定システム10のループ14は、可撓性材料で作られ、調整可能な長さ及び周長を含む。ループ14の自由なブレイドストランド22を引っ張って、ループ14のサイズを小さくすることができる。例えば、ループ14は、自由なブレイドストランド22を引っ張ることによって第1の方向に調整されることができるが、加えられた内部引張力のために反対方向に緩むことが防止される。
【0035】
ループ14は、可撓性材料を接合(スプライス)することによって形成される1つ以上の調整可能なアイスプライス24を含むことができ、可撓性材料は、それ自体を通ってループ14を形成するのに使用される。ループ14は、ループ14を完全に形成する前に固定デバイス12に接続されている。ループ14を形成しかつループ14を固定デバイス12に接続する例示的な方法を、図2図8に関して以下でより詳細に説明する。
【0036】
移植片16は、外科的固定システム10の第1の固定位置P1に接続されている。例示的な実施形態において、移植片16はループ14に接続され、したがって第1の固定位置P1はループ14の揺りかご状部にある。例えば、移植片16は、ループ14の一部に掛け回されることができる。移植片16は、組織、腱、靭帯、合成材料、生物材料、骨、又はこのような材料の任意の組み合わせを含むことができる。
【0037】
補強材18は、縫合糸構築物であることができる。例えば、補強材18は、FiberTape(登録商標)などの縫合テープ、コラーゲンで被覆された縫合テープ、生物材料又はコラーゲンで被覆した材料を用いた縫合糸、コラーゲンパッチ、Arthroflex(登録商標)などの生物学的構築物、ニチノールなどの超弾性材料、又は他のあらゆる類似の構築物を含むことができる。
【0038】
補強材18は、外科的固定システム10の第2の固定位置P2に接続されている。第2の固定位置P2は、第1の固定位置P1と異なる位置である。例示的な実施形態において、第2の固定位置P2は固定デバイス12にある。固定デバイス12のサイズは、補強材18の追加に対応するように調整することができる。補強材18は、補強材18を外科的固定システム10に接続するために固定デバイス12の開口部20に通されることができる。したがって、補強材18は移植片16には全く接続されていない。補強材18は、靱帯修復処置を増強するために使用されることができ、移植片16によって提供される一次修復をサポートする補強材として作用する。したがって、補強材18は「安全ベルト」と呼ばれることがある。他の実施形態において、補強材18は、移植中に固定デバイス12の展開(例えば、反転)の触覚フィードバックを提供するために利用されることができる。
【0039】
他の例示的な実施形態において、移植片16と補強材18は互いに別々に張力をかけ、独立した張力負荷をもたらすことができる。これは、これらの構成要素がそれぞれ外科的固定システム10の別々の固定位置P1、P2に接続されていることにより可能となる。例えば、第1の張力T1を移植片16に加えることができ、一方、外科的固定システム10の移植中に第2の異なる張力T2を補強材18に加えることができる。補強材18に張力をかけた後、移植片16に張力を再び加えることもできる。したがって、関節荷重は、移植片16と補強材18との間で分担され、補強材18は、その相対的な当初の張力付与に従って移植片16と荷重を分担する動的関節安定化装置として作用する。非限定的な実施形態において、補強材は、移植片16の所定の歪み閾値を超える荷重に反応する。
【0040】
図2図8は、図1の外科的固定システム10のループ14を形成する例示的な方法を概略的に示す。図2は、ループ14を構成しかつループ14を固定デバイス12に取り付けるための出発材料を示す。出発材料は、縫合糸ストランドなどの可撓性ストランド26と、針などの縫合糸通し器28と、ボタンなどの固定デバイス12とを含む。
【0041】
次に図3を参照すると、可撓性ストランド26は、半分に折り畳まれて、2つの実質的に等しい長さでかつ平行なブレイドストランドを作り出す。可撓性ストランド26は、その中心点M付近で折り畳まれて、2つの実質的に等しい長さでかつ平行なブレイドストランドを作り出すことができる。定規などの計測器30を用いて、所望のサイズを有するループ14を形成するために可撓性ストランド26の所望の量を選択することができる。
【0042】
図4及び図5は、ループ14の第1の調整可能なアイスプライス24Aの形成を示す。第1の調整可能なアイスプライス24Aは、最初に縫合糸通し器28を可撓性ストランド26に通すことによって作られる(図4参照)。縫合糸通し器28は、可撓性ストランド26が最終的にそれ自体を通って接合される位置に印を付けるように可撓性ストランド26が予め折り畳まれていた中心点Mの近くで可撓性ストランド26に通されることができる。次に、可撓性ストランド26の第1の自由端32が縫合糸通し器28のアイレット34に通される(図5参照)。次に、縫合糸通し器28が矢印36の方向に動かされ(例えば、引っ張られ)、縫合糸通し器28が予め可撓性ストランド26に通された位置で第1の自由端32を可撓性ストランド26の中に戻し通して接合する。これにより、可撓性ストランド26に第1のスプライス部38が形成される。
【0043】
ここで図6を参照すると、可撓性ストランド26の自由なブレイドストランド22が固定デバイス12の開口部20に通されて可撓性ストランド26を固定デバイス12に接続する。固定デバイス12は、それが第1のスプライス部38の上に置かれるまでスライドさせることができる。
【0044】
図7は、ループ14の第2の調整可能なアイスプライス24Bの形成を示す。第2の調整可能なアイスプライス24Bは、縫合糸通し器28を第1のスプライス部38に隣接する位置で可撓性ストランド26に2度目に通すことによって作り出される。次に、可撓性ストランド26の第2の自由端40が第1の調整可能なアイスプライス24Aを通って輪にされ、可撓性ストランド26を通して縫合糸通し器28を引き戻す前に、縫合糸通し器28のアイレット34に通される。これにより、第2の自由端40が可撓性ストランド26に戻し通して接合され、第2のスプライス部56が形成される。
【0045】
図8は完成したループ14を示し、完成したループ14は本実施形態では互いに相互に接続されている2つの調整可能なアイスプライス24A、24Bを含む。固定デバイス12は、組み立て手順を完了する第1の調整可能なアイスプライス24Aと第2の調整可能なアイスプライス24Bとの間の中心に置かれることができる。スプライス部38、56から延びる自由なブレイドストランド22は、固定デバイス12の開口部20内に望み通りに配置することができる。自由なブレイドストランド22を引っ張って、第1及び第2の調整可能なアイスプライス24A、24Bのサイズを収縮させ、ひいてはループ14の全体サイズを変えることができる。
【0046】
図9は、ACL再建処置などの組織再建処置中の図1の外科的固定システム10の例示的な外科的使用を示す。しかしながら、本開示はACL再建処置に限定されず、外科的固定システム10は本開示の範囲内で様々な再建処置に使用されることができることを理解されたい。
【0047】
外科的固定システム10は、引き裂かれた組織(例えば、ACL損傷)を修復するために、関節45(例えば、膝関節)内に移植されることができる。外科的固定システム10を関節45内に配置する前に、第1の骨トンネル42(例えば、受け口)が第1の骨44(例えば大腿骨)に形成され、第2の骨トンネル46(例えば、通路)が第2の骨48(例えば、脛骨)に形成される。第1の骨トンネル42及び第2の骨トンネル46は、外科的固定システム10を収容するために第1及び第2の骨44、48内に空所を作る公知の穿孔技術を用いて形成されることができる。
【0048】
例示的な実施形態において、外科的固定システム10は、固定デバイス12を第1の骨トンネル42及び第2の骨トンネル46に通すことによって移植される。固定デバイス12は、通過する縫合糸(図示せず)を用いて第1及び第2の骨トンネル42、46を通して引っ張られ、通過する縫合糸の張力が解放されると、第1の骨44の皮質上に自動で反転する。
【0049】
固定デバイス12を通して反転させた後、ループ14は第1の骨トンネル42内に配置されている。自由なブレイドストランド22を引っ張ってループ14のサイズを調整し、ループ14を第1の骨トンネル42内に配置するのを助けることができる。ループ14は、第1の骨トンネル42の部分及び第2の骨トンネル46の部分内に移植片16を吊り下げ、固定デバイス12は、補強材18を第1の骨トンネル42の部分及び第2の骨トンネル46の部分内に吊り下げる。
【0050】
図9に示すように、移植片16と補強材18の両方は、第2の骨トンネル46から外に延びることができ、修復を完了する前に別々に張力をかけることができる。例えば、第1の張力T1を移植片16に加えることができ、第2の異なる張力T2を補強材18に加えることができる。これらの構成要素は互いに接続されていないからである。したがって、移植片16は、術中の事前調整の後に再び張力付与することができる。術中の事前調整を用いて、移植片16内の残りのたるみを減らすことができる。従来の外科的固定システムは、移植片16と補強材18に別々に張力をかけることを可能にしなかったので、術中の事前調整は不可能であった。移植片の再張力付与は、その動的伸びを減少させることによって軟組織の機械的安定性を最適化する。増強のための人工材料(例えば、FiberTape(登録商標))は、軟組織材料に比べて増大した剛性を提供し、したがって、動的伸びに対するその耐性は再び張力付与することなく十分に高いことができる。
【0051】
また、移植片16と補強材18は互いに別々に張力をかけることができるので、第2の骨48への固定の際に移植片16とは異なる量のたるみを補強材18に提供することができる。例示的な実施形態において、移植片に比べて多量のたるみが補強材18に残される。他の例示的な実施形態において、移植片16とは異なる量の張力が補強材18に残される。さらなる実施形態において、移植片16に比べて少量の張力が補強材18に残される。これにより、移植片16が所定の歪み閾値まで関節45の歪み荷重に反応するように構成されかつ補強材18が所定の歪み閾値を超える歪み荷重の部分に反応するように構成される、移植片16と補強材18との間の荷重分担環境が形成される。このようにして、補強材18は移植片16を応力遮蔽しない。
【0052】
移植片16及び補強材18の第2の骨48への固定は、様々な方法で達成することができる。図10に示す第1の実施形態において、移植片16は、第1のインターフェアランススクリュー50(又は第1の縫合糸アンカー)を用いて第2の骨トンネル46内に固定されることができ、補強材18は、第2のインターフェアランススクリュー54(又は第2の縫合糸アンカー)を用いて第2の骨48の骨孔52内に固定されることができる。骨孔52は、第2の骨48の第2の骨トンネル46とは別個の穴である。
【0053】
代わりに、図11に示すように、移植片16及び補強材18は、第2の固定デバイス60(例えば、第2のボタン)と第2の固定デバイス60によって支持されている第2の調整可能なループ62とで第2の骨48に対して固定されることができる。
【0054】
図12は、ACL修復処置などの組織修復処置中の外科的固定システム110の例示的な外科的使用を示す。外科的固定システム110は、本来の靭帯(例えば、ACL)を修復する必要があるが完全な再建を必要としない状況に使用することができる。本開示はACL修復処置に限定されず、外科的固定システム110は本開示の範囲内で様々な修復処置に使用され得ることを理解されたい。
【0055】
例示的な外科的固定システム110は、ボタンなどの固定デバイス112と、縫合テープなどの補強材118とを含む。補強材118は固定デバイス112に接続されている。例えば、補強材118は、固定デバイス112の穴を通して輪にされることができる。図1の外科的固定システム10とは異なり、図12の外科的固定システム110は、移植片を用いて完全に再建されるのではなく、本来の靭帯が修復されるだけなので、ループ又は移植片を除いている。
【0056】
例示的な実施形態において、外科的固定システム110は、固定デバイス112を第1の骨144の第1の骨トンネル142及び第2の骨148の第2の骨トンネル146に通すことによって移植される。固定デバイス112は、通過する縫合糸(図示せず)を用いて第1及び第2の骨トンネル142、146を通して引っ張られ、通過する縫合糸の張力が解放されると、第1の骨144の皮質上に自動で反転する。
【0057】
固定デバイス112を通して反転させた後、固定デバイス112は、補強材118を第1の骨トンネル142の部分及び第2の骨トンネル146の部分内に吊り下げる。補強材118は、第2の骨トンネル146からに延びることができ、修復を完了する前に本来の靭帯とは別に張力をかけることができる。本来の靭帯と補強材118は互いに別々に張力をかけることができるので、本来の靭帯とは異なる量の張力が補強材118に残される。これにより、補強材118が本来の靭帯の歪み閾値を増大させるように構成される、本来の靭帯と補強材118との間の荷重分担環境が形成される。
【0058】
第2の骨148への補強材118の固定は、様々な方法で達成することができる。一実施形態において、補強材118は、スクリュー154(又は縫合糸アンカー)を用いて第2の骨148の骨孔152内に固定されることができる。骨孔152は、第2の骨148の第2の骨トンネル146とは別個の穴である。
【0059】
実施例
実施例1:ACL再建処置に使用される外科的固定システムの変位試験
図1のシステム10と同様の外科的固定システムを用いてACL再建処置を行った。その後、力(ニュートン)対変位(mm)を測定することにより外科的固定システムを試験した。この試験の結果を図13のプロットで示す。
【0060】
実施例2:ACL修復処置に使用される外科的固定システムの変位試験
図12に示すシステム110と同様の外科的固定システムを用いてACL修復処置を行った。その後、力(ニュートン)対変位(mm)を測定することにより外科的固定システムを試験した。この試験の結果を図14のプロットで示す。
【0061】
実施例3:外科的固定システムの伸長試験
図1のシステム10と同様の外科的固定システムを用いてACL再建処置を行った。その後、プーリー試験技術を用いて力(ニュートン)対変位(mm)を測定することによって外科的固定システムを試験した。この試験の結果を図15のプロットで示す。
【0062】
実施例4:他の外科的固定システムの伸長試験
図1のシステム10と同様の外科的固定システムを用いてACL再建処置を行った。その後、スネア試験技術を用いて力(ニュートン)対変位(mm)を測定することによって外科的固定システムを試験した。この試験の結果を図16のプロットで示す。
【0063】
実施例5:引き抜き試験
図1のシステム10と同様の外科的固定システムを用いてACL再建処置を行った。引張破壊力(ニュートン)を測定することによって、外科的固定システムを従来技術の外科的固定システム及び本来のACLの両方に対して試験した。この試験の結果を図17の棒グラフで示す。外科的固定システムは、従来技術の外科的固定システムに比べて、引き抜き強度が40%増加した。
【0064】
実施例6:剛性試験
図1のシステム10と同様の外科的固定システムを用いてACL再建処置を行った。その後、各構築物の剛比(N/mm単位)を測定することによって、外科的固定システムを従来技術の外科的固定システムと本来のACLの両方に対して試験した。この試験の結果を図18の棒グラフで示す。外科的固定システムは、従来技術の外科的固定システムに比べて、剛性が47%増加した。
【0065】
実施例7:動的伸び試験
図1のシステム10と同様の外科的固定システムを用いてACL再建処置を行った。その後、スネア試験技術及びプーリー試験技術の両方を用いて、250N及び400Nの力で動的伸びを測定することによって外科的固定システムを試験した。この試験の結果を図19の棒グラフで示す。
【0066】
実施例8:引張破壊及び剛性試験
図1のシステム10と同様の外科的固定システムを用いてACL再建処置を行った。その後、スネア試験技術及びプーリー試験技術の両方を用いて、引張強度(ニュートン)及び剛性(N/mm)を測定することによって外科的固定システムを試験した。この試験の結果を図20の棒グラフで示す。
【0067】
図21は、他の例示的な外科的固定システム210を示す。外科的固定システム210は、固定デバイス212と、ループ214と、移植片216と、補強材218と、通過ストランド219と、及び反転ストランド221とを含む。固定デバイス212は、移植片216が骨トンネル内に配置された後に移植片216の皮質骨固定をもたらす。他の実施形態において、固定デバイス212は、ループ214、補強材218及び通過ストランド219を受け入れるために固定デバイス212の本体を貫通して形成された1つ以上の開口部220を含む。
【0068】
ループ214は、可撓性材料で作られた調整可能なループであることができ、調整可能な長さ及び周長を含む。ループ214の自由なブレイドストランド222を引っ張って、ループ214のサイズを小さくすることができる。例えば、ループ214は、自由なブレイドストランド222を引っ張ることによって第1の方向に調整されることができるが、加えられた内部引張力のために反対方向に緩むことが防止される。
【0069】
ループ214は、可撓性材料を接合することによって形成される1つ以上の調整可能なアイスプライス224を含むことができ、可撓性材料は、それ自体を通ってループ214を形成するのに使用される。ループ214は、ループ214を完全に形成する前に固定デバイス212に接続されている。
【0070】
移植片216は、外科的固定システム210の第1の固定位置P1に接続されている。例示的な実施形態において、移植片216はループ214に接続され、したがって第1の固定位置P1はループ214の揺りかご状部にある。例えば、移植片216は、ループ214の一部に掛け回されることができる。
【0071】
補強材218は、縫合糸構築物であることができる。補強材218は、外科的固定システム210の第2の固定位置P2に接続されている。第2の固定位置P2は、第1の固定位置P1と異なる位置である。例示的実施形態において、第2の固定位置P2は固定デバイス212にある。固定デバイス12のサイズは、補強材218の追加に対応するように調整することができる。補強材218は、補強材218を外科的固定システム210に接続するために固定デバイス212の開口部220に通されることができる。したがって、補強材18は、移植片216には全く接続されていない。補強材218は、靭帯修復処置を増強するために使用されることができ、移植片216によって提供される一次修復をサポートする補強材として作用する。したがって、補強材218は「安全ベルト」と呼ばれることがある。
【0072】
他の例示的な実施形態において、移植片216と補強材218は互いに別々に張力をかけ、独立した張力負荷をもたらすことができる。これは、これらの構成要素がそれぞれ外科的固定システム210の別々の固定位置P1、P2に接続されていることにより可能となる。例えば、第1の張力T1を移植片216に加えることができ、一方、外科的固定システム210の移植中に第2の異なる張力T2を補強材218に加えることができる。補強材218に張力をかけた後に、移植片216に張力を再び加えることもできる。したがって、関節荷重は、移植片216と補強材218との間で分担され、補強材218は、その相対的な当初の張力付与に従って移植片216と荷重を分担する動的関節安定化装置として作用する。
【0073】
図22図24は、ACL再建処置などの組織再建処置中の図21の外科的固定システム210の例示的な外科的使用を概略的に示す。外科的固定システム210は、引き裂かれた組織(例えば、ACL損傷)を修復するために、関節245(例えば、膝関節)内に移植されることができる。外科的固定システム210を関節245内に配置する前に、第1の骨トンネル242(例えば、受け口)が第1の骨244(例えば、大腿骨)に形成され、第2の骨トンネル246(例えば通路)が形成される。第2の骨248(例えば、脛骨)に形成される。
【0074】
例示的な実施形態において、外科的固定システム10の固定は、固定デバイス212を第1の骨244に通すことによって第1の骨244に対して移植片216を挿入することと、移植片216を第2の骨248に対して挿入することと、構築物を全屈曲範囲にわたってプレサイクルすることと、完全伸展で移植片216の脛骨側に再び張力をかけることと、その後、完全伸展で移植片216の大腿骨側に再び張力をかけることとを含む。
【0075】
移植片216及び補強材218の第2の骨248への固定は、様々な方法で達成することができる。図23に示す第1の実施形態において、移植片216と補強材218の両方は、第2の固定デバイス260(例えば、第2のボタン)を用いて第2の骨トンネル46内に固定されることができる。代わりに、図24に示すように、移植片216は第2の固定デバイス260を用いて固定されることができ、一方、補強材218はスクリュー254を用いて別の骨孔252に固定される。
【0076】
追加の実施例
実施例9:ACL修復処置に使用される外科的固定システムの変位試験
図21に示すシステム210と同様の外科的固定システムを用いてACL修復処置を行った。その後、力(ニュートン)対変位(mm)を測定することにより外科的固定システムを試験した。この試験の結果を図25のプロットで示す。
【0077】
実施例10:ACL再建処置に使用される外科的固定システムの変位試験
図21に示すシステム210と同様の外科的固定システムを用いて、ACL再建処置を行った。その後、力(ニュートン)対変位(mm)を測定することにより外科的固定システムを試験した。この試験の結果を図26のプロットで示す。
【0078】
実施例11:剛性試験
図21のシステム210と同様の外科的固定システムを用いてACL再建処置を行った。その後、各構築物の剛比(N/mm単位)を測定することによって、外科的固定システムを従来技術の外科的固定システムと本来のACLの両方に対して試験した。この試験の結果を図27の棒グラフで示す。外科的固定システムは、従来技術の外科的固定システムに比べて、剛性が47%増加した。
【0079】
実施例12:引張破壊試験
図21のシステム210と同様の外科的固定システムを用いてACL再建処置を行った。引張破壊力(ニュートン)を測定することによって、外科的固定システムを従来技術の外科的固定システム及び本来のACLの両方に対して試験した。この試験の結果を図28の棒グラフで示す。外科的固定システムは、従来技術の外科的固定システムに比べて、引き抜き強度が40%増加した。
【0080】
実施例13:ウシ腱移植片モデル
ウシ腱移植片を用いて図21のシステム210と同様の外科的固定システムを試験した。試験には、変位(図29)、伸び(図30)、剛性対伸び(図31)、力対変位(図32)、及び引張破壊力(図33)を測定することが含まれていた。
【0081】
実施例14:ヒト膝窩腱移植片
ヒト膝窩腱を用いて図21のシステム210と同様の外科的固定システムを試験した。この試験の結果を図34図38に示す。
【0082】
実施例15:BTB移植片
骨−腱−骨移植片を用いて図21のシステム210と同様の外科的固定システムを試験した。この実施例の処置及び試験結果を図39図41に示す。
【0083】
上記の外科的固定システムは、骨トンネル内での移植片固定を強化及び増強するための調整可能な固定システムを提供する。システムの移植片及び補強材の固定点の分離は、移植片及び補強材の独立した張力付与を可能にし、移植片の応力遮蔽を防ぎ、システムの最大破壊荷重を増大する。
【0084】
様々な非限定的な実施形態が特定の構成要素又はステップを有するように示されているが、本開示の実施形態はそれらの特定の組み合わせに限定されない。任意の非限定的な実施形態からの構成要素又は特徴のいくつかを、他の任意の非限定的な実施形態からの特徴又は構成要素と組み合わせて用いることが可能である。
【0085】
いくつかの図面を通して、類似の符号は対応する又は類似の要素を特定することを理解されたい。特定の構成要素の配置がこれらの例示的な実施形態において開示及び図示されているが、他の配置も本開示の教示から利益を得ることができることをさらに理解されたい。
【0086】
前述の説明は例示的なものとして解釈されるべきであり、限定的な意味のものではない。当業者であれば、一部の変更が本開示の範囲内に入り得ることを理解するであろう。これらの理由から、本開示の真の範囲及び内容を判断するために、添付の特許請求の範囲を検討すべきである。
図1
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