(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843987
(24)【登録日】2021年2月26日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】音響チャネル付きバックレストスピーカ
(51)【国際特許分類】
H04R 1/02 20060101AFI20210308BHJP
H04R 1/32 20060101ALI20210308BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20210308BHJP
B60N 2/879 20180101ALI20210308BHJP
【FI】
H04R1/02 102B
H04R1/32 310A
B60R11/02 S
B60N2/879
【請求項の数】23
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-523809(P2019-523809)
(86)(22)【出願日】2017年10月25日
(65)【公表番号】特表2019-536352(P2019-536352A)
(43)【公表日】2019年12月12日
(86)【国際出願番号】US2017058186
(87)【国際公開番号】WO2018081199
(87)【国際公開日】20180503
【審査請求日】2019年6月20日
(31)【優先権主張番号】62/414,438
(32)【優先日】2016年10月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591009509
【氏名又は名称】ボーズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・オズワルド
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドフォード・カイル・スバット
(72)【発明者】
【氏名】トーブ・ゼット・バークスデイル
(72)【発明者】
【氏名】ムハンマド・ハリス・ウスマニ
【審査官】
中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭57−098092(JP,U)
【文献】
特開2004−097654(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0219492(US,A1)
【文献】
特開2007−221485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00− 3/14
H04S 1/00− 7/00
A47C 7/00− 7/74
B60N 2/00− 2/90
B60R 9/00−11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両シートであって、
乗員の頭部を支持するためのシートヘッドレスト部分と、
着座した前記乗員の背中を支持するためのシートバックレスト部分であって、音響変換器の少なくとも一部分を受容するための筐体を具備する前記シートバックレスト部分と、
前記音響変換器のドライバの周りに音響的に密閉された構成で装着されるように構成されている第1の端部と、前記第1の端部に対して反対側に、且つ、前記シートバックレスト部分より前記シートヘッドレスト部分に近接した位置に配設されている第2の端部と、を有している音響チャネルであって、前記音響変換器から前記第2の端部を通じて音響エネルギーを放射するように構成されている前記音響チャネルと、
を備えており、
前記車両シートの外層が、前記音響チャネルの少なくとも一部分及び前記シートバックレスト部分を囲むように、前記音響チャネルを覆って配設されていることを特徴とする車両シート。
【請求項2】
前記シートヘッドレスト部分が、前記シートバックレスト部分の上部に取り外し可能な構成で配設されていることを特徴とする請求項1に記載の車両シート。
【請求項3】
前記シートヘッドレスト部分と前記シートバックレスト部分とが、一体構造体の一部とされることを特徴とする請求項1に記載の車両シート。
【請求項4】
前記シートバックレスト部分が、上面を含んでおり、
前記筐体の外側開口部が、前記上面に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の車両シート。
【請求項5】
前記音響変換器が、前記音響変換器の前記ドライバの外側端部が前記筐体の前記外側開口部を覆うように装着される構成で、前記筐体の内部に配設されていることを特徴とする請求項4に記載の車両シート。
【請求項6】
前記音響変換器の一部分が、前記筐体の外側に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の車両シート。
【請求項7】
前記音響チャネルの前記第2の端部の断面が、前記第1の端部の断面より大きいことを特徴とする請求項1に記載の車両シート。
【請求項8】
i)前記音響チャネルの形状、及びii)前記音響変換器のアーティキュレーションのうち少なくとも1つが、前記音響変換器によって放射される前記音響エネルギーの目標分布パターンに従って構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両シート。
【請求項9】
前記目標分布パターンが、i)両耳間分布特性、及びii)シート間分布特性のうち1つ以上の特性を備えていることを特徴とする請求項8に記載の車両シート。
【請求項10】
前記車両シートの外層が、前記音響チャネルの少なくとも一部分及び前記シートヘッドレスト部分を囲むように、前記音響チャネルを覆って配設されていることを特徴とする請求項1に記載の車両シート。
【請求項11】
音響透過性材料が、前記音響チャネルの前記第2の端部を覆って配設されていることを特徴とする請求項1に記載の車両シート。
【請求項12】
前記音響透過性材料が、スピーカグリルの一部分とされることを特徴とする請求項11に記載の車両シート。
【請求項13】
前記音響チャネルが、前記第1の端部と前記第2の端部との間に調整可能な長さを有していることを特徴とする請求項1に記載の車両シート。
【請求項14】
車両シートであって、
着座した乗員の背中を支持するように構成されている支持構造体と、
前記支持構造体の内部に配設されている筐体であって、前記支持構造体の外面に配設されている開口部を有しており、音響変換器の少なくとも一部分を受容するように構成されている前記筐体と、
前記開口部の周りに音響的に密閉された構成で装着されるように構成されている第1の端部と、前記第1の端部に対して反対側に、且つ、垂直方向において前記第1の端部より高い位置に配設されている第2の端部と、を有している音響チャネルであって、前記第2の端部を通じて音響エネルギーを放射するように構成されている前記音響チャネルと、
を備えており、
前記車両シートの外層が、前記音響チャネルの少なくとも一部分を前記支持構造体と共に囲むように、前記音響チャネルを覆って配設されていることを特徴とする車両シート。
【請求項15】
前記開口部が、前記車両シートの前記乗員の肩に隣接する前記支持構造体の位置において、前記支持構造体の前記外面に配設されていることを特徴とする請求項14に記載の車両シート。
【請求項16】
前記開口部が、前記筐体の内部に配設されている前記音響変換器が前記車両シートの前記乗員の耳に向かって音響エネルギーを放射するように、前記支持構造体の前記外面に配設されていることを特徴とする請求項14に記載の車両シート。
【請求項17】
前記音響変換器の一部分が、前記筐体の外側に配設されていることを特徴とする請求項14に記載の車両シート。
【請求項18】
前記音響チャネルの前記第2の端部の断面が、前記第1の端部の断面より大きいことを特徴とする請求項14に記載の車両シート。
【請求項19】
i)前記音響チャネルの形状、及びii)前記音響変換器のアーティキュレーションのうち少なくとも1つが、前記音響変換器によって放射される前記音響エネルギーの目標分布パターンに従って構成されていることを特徴とする請求項14に記載の車両シート。
【請求項20】
前記目標分布パターンが、i)両耳間分布特性、及びii)シート間分布特性のうち1つ以上の特性を備えていることを特徴とする請求項19に記載の車両シート。
【請求項21】
音響透過性材料が、前記音響チャネルの前記第2の端部を覆って配設されていることを特徴とする請求項14に記載の車両シート。
【請求項22】
前記音響透過性材料が、スピーカグリルの一部分とされることを特徴とする請求項21に記載の車両シート。
【請求項23】
前記音響チャネルが、前記第1の端部と前記第2の端部との間に調整可能な長さを有していることを特徴とする請求項14に記載の車両シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、スピーカなどの音響出力デバイスを含むシートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両シートは、バックレスト部分の内部に配設されたスピーカを含むことができる。幾つかの場合には、スピーカは、シートの乗員の肩の位置付近に配設され、ショルダスピーカと呼ばれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一態様では、本文献は、乗員の頭部を支持するためのシートヘッドレスト部分と、着座した乗員の背中を支持するためのシートバックレスト部分とを含む、車両シートを特徴とする。バックレスト部は、音響変換器の少なくとも一部分を受容するための筐体を含む。車両シートは、音響変換器のドライバの周りに音響的に密閉された構成で装着されるように構成されている第1の端部、及び第2の端部を有する、音響チャネルも含む。第2の端部は、第1の端部とは反対側にあり、シートバックレスト部分よりシートヘッドレスト部分に近い位置に配設される。音響チャネルは、音響変換器から第2の端部を通じて音響エネルギーを放射するように構成される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
別の態様では、本文献は、着座した乗員の背中を支持するように構成された支持構造体と、支持構造体内に配設された筐体とを含む、車両シートを特徴とする。筐体は、支持構造体の外面上に配設された開口部を有し、音響変換器の少なくとも一部分を受容するように構成される。車両シートは、開口部の周りに音響的に密閉された構成で装着されるように構成されている第1の端部、及び第1の端部とは反対側にあり、第1の端部に比べて垂直方向に高い位置に配設された第2の端部を有する、音響チャネルも含む。音響チャネルは、第2の端部を通じて音響エネルギーを放射するように構成される。
【0005】
上記の態様は、以下の特徴のうち1つ以上の特徴を含んでいる。
【0006】
シートヘッドレスト部分が、シートバックレスト部分の上部に、取り外し可能な構成で配設されてよい。シートヘッドレスト部分及びシートバックレスト部分が、一体構造体の一部であってよい。シートバックレスト部分が上面を含んでよく、この上面には、筐体の外側開口部が配設されている。音響変換器は、筐体内に、音響変換器のドライバの外側端部が筐体の外側開口部を覆うように装着される構成で配設されてよい。音響変換器の一部分が、筐体の外側に配設されてよい。音響チャネルの第2の端部の断面が、第1の端部の断面より大きい。i)音響チャネルの形状、及びii)音響変換器のアーティキュレーションのうち少なくとも1つが、音響変換器によって放射される音響エネルギーの目標分布パターンに従って構成されてよい。目標分布パターンが、i)両耳間分布特性、及びii)シート間分布特性のうち1つ以上の特性を含んでよい。車両シートの外層が、音響チャネルの少なくとも一部分及びシートバックレストを取り囲むように音響チャネルの上に配設されてよい。車両シートの外層が、音響チャネルの少なくとも一部分及びシートヘッドレストを取り囲むように音響チャネルの上に配設されてよい。音響透過性材料が、音響チャネルの第2の端部を覆って配設されてよい。音響透過性材料が、スピーカグリルの一部分を含んでよい。音響チャネルが、第1の端部と第2の端部との間に調整可能な長さを有してよい。
【0007】
開口部が、支持構造体の外面上の、車両シートの乗員の肩に隣接する支持構造体の位置に配設されてよい。開口部が、筐体内に配設された音響変換器が音響エネルギーを車両シートの乗員の耳に向かって放射するように、支持構造体の外面上に配設されてよい。
【0008】
本明細書において説明するさまざまな実施形態は、以下の利点のうち1つ以上の利点をもたらすことができる。シートバックレスト内に配設されたスピーカ(例えばショルダスピーカ)の音響性能が、そのようなスピーカの出力をシートの乗員の耳付近に放射する音響チャネルを設けることによって、著しく改善され得る。幾つかの場合には、この結果、バイノーラル制御、両耳間分離、及び/又はシート間分離が改善し得る。したがって、バックレストにスピーカを組み込むことの機械的利点を、ヘッドレスト内に配設されるスピーカなどの近距離場スピーカの音響性能を少なくともある程度保ちながら、利用することができる。幾つかの場合には、(ヘッドレストスピーカの性能に匹敵する性能を有する)高性能シートスピーカを、スピーカをその中に収容することの不可能な薄くあまり嵩張らないヘッドレストを有するシートのバックレストに組み込むことができる。音響チャネル自体を、幾つかの場合には、シートの美観を向上させるために使用することができ、それにより、工業デザインと音響要件との間のより良好な同時性が潜在的に可能になる。例えば車両シートに未来的外観を与えるために、音響チャネルの外側開口部をスポーツカーの吸気経路に似せるように位置付け、構成することができる。
【0009】
本概要セクションにおいて説明したものを含めて、本開示において説明する特徴のうち2つ以上の特徴を組み合わせて、本明細書において具体的に説明しない実施形態を形成することができる。
【0010】
1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面及び以下の説明内に記載される。他の特徴、目的、及び利点が、説明及び図面から、また特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】車両シートのバックレスト内に配設されたショルダスピーカの例を示す図である。
【
図1B】車両シートのバックレスト内に配設されたショルダスピーカの例を示す図である。
【
図1C】車両シートのバックレスト内に配設されたショルダスピーカの例を示す図である。
【
図2A】スピーカの少なくとも一部分がバックレストの外側に配設される音響チャネル付きバックレストスピーカの一例示的な実施形態の図である。
【
図2B】スピーカの少なくとも一部分がバックレストの外側に配設される音響チャネル付きバックレストスピーカの一例示的な実施形態の図である。
【
図2C】スピーカの少なくとも一部分がバックレストの外側に配設される音響チャネル付きバックレストスピーカの一例示的な実施形態の図である。
【
図2D】スピーカの少なくとも一部分がバックレストの外側に配設される音響チャネル付きバックレストスピーカの一例示的な実施形態の図である。
【
図3】バックレストスピーカがバックレストに取り囲まれている一例示的な実施形態を示す図である。
【
図4】シートヘッドレストに開いた凹所内に音響チャネルが配設されている一例示的な実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
車両シート(例えば車、トラック、バス、列車、航空機、ボート、又は他の車両に使用されるシート)に、近距離場音響体験を提供するための音響変換器又はスピーカを装着することができる。幾つかの場合には、スピーカは、没入型の、場合によっては個人専用の音響体験をもたらすために、シートの乗員の耳にスピーカが近接するようにシートに装着される。スピーカは、車両シートのさまざまな位置に組み込むことができる。幾つかの場合には、スピーカは、シートヘッドレスト又はヘッドレストウィングに組み込まれる。そのようなヘッドレストスピーカは、シート乗員の耳の近くにあることにより、(例えばバイノーラル制御及び/又はシート間分離を可能にするという点で)優れた音響性能をもたらすことができる。しかし、一部の車両シートの場合、ヘッドレストスピーカは最良の選択ではないことがある。例えば幾つかの場合には、ヘッドレストスピーカは、高位置の質量中心を有するため(且つ、それにより場合によっては追加のシート補強材を必要とするため)、機械的な組込み上の課題を課すことがある。加えて、ヘッドレストスピーカをヘッドレストコネクタを通じて配線することも、一部の車両シートにとって困難となることがある。また、一部のヘッドレストは、薄くあまり嵩張らないように設計されており、ヘッドレストスピーカを収容するのに十分な容積を有していないことがある。
【0013】
シートスピーカは、少なくとも一部には、車両シートのバックレストに組み込まれることもある。例えばショルダスピーカを、バックレストの上面上に配設し、上方に乗員の耳に向かって音響エネルギーを放射するように構成することができる。そのようなショルダスピーカの例が、
図1A〜
図1Cに示されている。ヘッドレストスピーカに比べて、ショルダスピーカは典型的には、乗員の耳からさらに離れて配設され、したがって、幾つかの場合には、例えば両耳間及びシート間分離の点で、性能の劣化を呈することがある。しかし、例えばショルダスピーカはヘッドレストスピーカより低位置の質量中心を有するので、組込み上の観点から、幾つかの場合にはショルダスピーカのほうがヘッドレストスピーカより好まれることがある。また、シートバックレスト内により多くの利用可能な空間があるため、及び/又はヘッドレストスピーカとは異なり、関連する配線がヘッドレストポストの中を通される必要がないので、ショルダスピーカのほうが、シートへの組込みが容易となり得る。
【0014】
本文献において説明する技術は、ショルダスピーカのこれらの利点を、そのようなスピーカが相対的に遠距離場にあることに付随する欠点を減らしながら、利用できるようにするものである。例えば遠距離場スピーカ(例えばシートバックレスト内に配設されたスピーカ)からシート乗員の耳により近い領域に音響エネルギーを伝達する、注意深く設計された音響チャネルを設けることによって、本技術は、ヘッドレストスピーカに少なくとも匹敵し得る音響性能を生み出しながら、バックレストスピーカの組込み上の利点を融合させる。したがって、幾つかの場合には、本技術は、スピーカの音響性能を何ら著しく損失することなくスピーカのシートへの組込みをより容易にする、解決策を提供することができる。本文献では主として、車両シートヘッドレストの例を使用して、本技術について例示している。しかし、本技術は、他のタイプの音響対応シート、又は本明細書において説明するようにスピーカが取り付けられてよい家具に、適用可能となり得る。例えば本技術は、スピーカが装着されたマッサージチェア、ソファ、リクライニングチェア、テーブル、ゲーミングチェア、シアターシート、又はベッドに使用することができる。
【0015】
図2A〜
図2Dは、音響チャネル付きバックレストスピーカの一例示的な実施形態のさまざまな図を示す。具体的には、
図2Aは、乗員205が車両シートを占有した状態の、車両シートシステム200の正面図を示す。
図2B、
図2C、及び
図2Dはそれぞれ、システム200の上斜視図、側面図、及び上面図を示す。システム200は、シートヘッドレスト部分210と、シートバックレスト部分215とを有する、車両シートを含む。システムは、シートヘッドレスト部分210の両側でシートバックレスト部分215内に配設された、音響変換器220を含む。システム200は、音響変換器220ごとに、対応する音響変換器220から乗員205の耳に近接する領域に音響エネルギーを伝えるように構成された音響チャネル230も含む。音響チャネル230は、音響変換器220のドライバの周りに装着されるように構成された第1の端部235、及び第2の端部240を含む。第2の端部240は、音響チャネル230の、第1の端部235とは反対の側にあり、乗員205の耳に近い領域内に配設される。変換器220からの音響エネルギーが、音響チャネル230から外に第2の端部240を通じて放射される。幾つかの実施形態では、第2の端部240は、シートバックレスト部分215よりシートヘッドレスト部分210に近い空間位置にある。幾つかの実施形態では、第2の端部240は、第1の端部235に比べて垂直方向に高い位置に配設される。
【0016】
シートヘッドレスト部分210はシートバックレスト部分に、さまざまな方法で結合させることができる。幾つかの実施形態では、シートヘッドレスト部分は、シートバックレスト部分の上部に、取り外し可能な構成で配設される。例えばシートヘッドレスト部分210はシートバックレスト部分215に、1つ以上のヘッドレストロッド又はヘッドレストポストを介して接続することができる。そのような場合、シートヘッドレスト部分210は、例えばヘッドレストロッド又はヘッドレストポストを、シートバックレストの上面上に配設された対応する差込み口内に、又はそこから外にスライドさせることによって、シートバックレスト部分215に対してさまざまな高さに調整することができる。幾つかの実施形態では、シートヘッドレスト部分210及びシートバックレスト部分215は、単一の一体型シート構造に一体化される。そのような一体型シート構造はしばしば「マミーシート(mummy seat)」と呼ばれ、しばしば、スポーツカーなどのハイエンド車両に見られる。
【0017】
音響変換器220はシートバックレスト部分215内に、さまざまな方法で配設することができる。シートバックレスト部分215は、音響変換器220の少なくとも一部分を受容するための筐体を含むことができる。
図2A〜
図2Dに示す例では、スピーカ又は音響変換器の少なくとも一部分が、シートバックレスト部分215の外側に配設されている。そのような場合、筐体は、変換器220の幾つかの部分(例えば変換器の下方部分、又は変換器のための接続部)を含むことができるが、変換器のドライバコーンは、シートバックレスト215の外側に配設される。幾つかの実施形態では、システム200は、音響変換器220の少なくとも一部分を支持するためのマウンティングブラケット245を含むこともできる。
【0018】
音響変換器220の、シートバックレスト部分215に関する部分は、さまざまな方法で構成することができる。幾つかの実施形態では、音響変換器220は、ショルダスピーカとして配設され、ヘッドレスト部210のすぐ下(例えばバックレスト部215の上面上)且つヘッドレスト部210の両側に配置される。幾つかの実施形態では、音響変換器220のドライバが、対応する耳のほうに向けられる。例えばドライバは、水平軸から10度から40度の間上方に向くように構成することができる。幾つかの実施形態では、これは、例えば乗員の代表的な高さに基づいて決定されてよい。幾つかの場合には、この結果、例えば音響エネルギーを垂直方向に上方に放射するショルダスピーカに比べて、望ましい指向性及び/又はシート間分離ならびに良好な音響性能がもたらされ得る。幾つかの実施形態では、音響チャネルが、音響変換器220の中心と乗員205の耳との間の見通し線を可能にするのに十分短い場合、音響変換器は、音響エネルギーを乗員の耳に向かって(又はその所定の範囲(例えば10度)以内に)放射するように構成することができる。幾つかの場合には、音響変換器のそのような角度調整及び位置調整(変換器のアーティキュレーションとも呼ばれる)は、満足のゆく両耳間及び/又はシート間分離を可能にし、音響変換器220から発する音響エネルギーの目標分布パターンを達成する助けとなることができる。
【0019】
幾つかの実施形態では、バックレスト部215の上部がヘッドレスト部210より広く、結果として、ヘッドレストの両側の2つの音響変換器220間の距離が、ヘッドレスト部210の幅を上回る。音響変換器220間の距離が著しいとき(例えばある特定の例では約29cm)、音響変換器を内向きに(すなわち互いに向かって)角度付けすることができる。幾つかの場合には、こうすることにより、例えば変換器220が高指向性になる高周波数におけるシート間分離が改善し得る。
【0020】
システム200は、対応する音響変換器220からシート乗員205の対応する耳に近い又はそれに近接する領域に音響エネルギーを伝達するための、1つ以上の音響チャネル230を含む。幾つかの実施形態では、変換器220によって放射される音響エネルギーが音響チャネルの第2の端部240を介して外に放射されるまで音響チャネル230内に実質的に閉じ込められるように、音響チャネル230の第1の端部235が、音響変換器220のドライバの周囲に音響的に密閉された構成で装着される。したがって、音響チャネルは、相対的に遠距離場にある変換器220から対応する耳に近い領域に音響エネルギーを伝達するように設計することができる。したがって、そのような音響チャネルは、幾つかの場合には、例えば指向性特性及び/又は分離特性を含む、1つ以上の音響特性を改善することができる。幾つかの実施形態では、そのような音響チャネル230を使用すると、同等のヘッドレストスピーカより良好な受動的分離を可能にすることができる。
【0021】
幾つかの実施形態では、音響チャネル230は、発泡(又は射出成形)樹脂など、剛性であるが軽量の材料から構築することができる。ウィングの構築に使用することのできる他の軽量剛性材料としては、例えばポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)などの、熱可塑性材料がある。幾つかの実施形態では、発泡ポリスチレン(EPS)など、剛性の独立気泡樹脂発泡体を、音響チャネル230の少なくとも一部分を構築する際に使用することができる。幾つかの実施形態では、EPSの使用が、音響分離の改善をもたらすことができる。幾つかの実施形態では、音響チャネル230を、熱可塑性材料から構築し、発泡体を使用して覆うことができる。音響チャネルがヘッドレスト部210に近接して配設されるので、音響チャネルの材料は、音響チャネル230がシートの乗員に如何なる不快も招かないものを選択することができる。
【0022】
音響チャネル230の形状及びサイズは、さまざまな方法で構成することができる。幾つかの実施形態では、音響チャネル230は、第2の端部240の断面積が第1の端部235の断面積より大きい、概して漏斗状又は角状の構造を有することができる。幾つかの実施形態では、第1の端部235の断面積が、第2の端部240の断面積より大きくてよい。さらに他の実施形態では、音響チャネルは、チャネルの長さに沿って第1の端部から第2の端部まで実質的に均一な断面を有することができる。音響チャネルの長さは、例えば乗員の音響体験と快適さに対する干渉との間のトレードオフとして構成することができる。例えば音響チャネル230の長さが長い場合、チャネルは、乗員の耳に近い領域に音響エネルギーを送達することが可能になり得る。しかし、第2の端部240を乗員の耳のあまりにも近くに配置すると、乗員205にとっての不快さが、例えば乗員が彼/彼女の頭部を動かしたときに生じる場合がある。加えて、音響チャネル230が長いほうが、例えばチャネルの長さに沿った吸収のため、音響エネルギーの損失が高くなる場合もある。したがって、音響チャネル230の形状及びサイズは、さまざまな方法で、且つ、例えばターゲット放射パターン、車両パラメータ、所望の分離特性、及び快適さパラメータを含む1つ以上のパラメータに基づいて構成することができる。
【0023】
図2A〜
図2Dに示す例では、音響変換器220の少なくとも一部分がバックレストの外側に配設されている。しかし、音響変換器は、バックレスト部215の筐体内に完全に閉じ込められてもよい。
図3は、バックレストスピーカがバックレスト部215に完全に取り囲まれているシステム300の一例示的な実施形態を示す。そのような場合、音響変換器は、シートバックレスト内に、音響変換器のドライバの外側端部が筐体の外側開口部305の上又は付近に装着されるように配設することができる。そのような場合、音響チャネル230は、音響チャネル230の第1の端部235が外側開口部305の周りに音響的に密閉された構成で装着されるように、筐体の外側開口部305の上に配設することができる。音響チャネル230の第2の端部240は、音響変換器からの音響エネルギーが、乗員の耳に近い位置にある第2の端部240を通じて放射されるように、(第1の端部235に比べて)垂直方向に高い位置に配設することができる。幾つかの実施形態では、筐体の外側開口部305は、支持構造体の外面上の、車両シートの乗員の肩に隣接する支持構造体(例えばバックレスト部215)の位置に配設される。
【0024】
音響チャネル230は、さまざまな設計上及び美観上のパラメータ及び/又は問題に従って構成することができる。幾つかの実施形態では、例えば美観を向上させるために、音響透過性材料を、音響チャネル230の第2の端部240を覆って配設することができる。音響透過性材料は、スピーカグリルの一部分、又は織物を含むことができる。幾つかの実施形態では、車両シートの外層(例えば織物、スエード、人工皮革、又は他の有孔材料)を、音響チャネルの上に、音響チャネルの少なくとも一部分をヘッドレスト部210及び/又はバックレスト部215とともに取り囲むように配設することができる。幾つかの実施形態では、音響チャネル230の外側開口部(例えば第2の端部240)を、1つ以上の設計上の考慮事項に従って、例えばスポーツカーの吸気経路に似せるように位置付け、構成することができる。これは、例えば車両シートの未来的外観を生み出すために行うことができる。
【0025】
図4は、調整可能なシートヘッドレスト210に開いた凹所内に音響チャネル230が配設されている別の例示的な実施形態400を示す。そのような構成にすると、ヘッドレストスピーカの音響性能を厳密に再現するように音響チャネル230を位置付けながら、音響変換器をバックレスト部215の筐体内に配設できるようになる。そのような場合、音響チャネル230は、調整可能なヘッドレスト210がヘッドレストの凹んだ部分を使用して音響チャネルに沿って上下にスライドできるように、構成することができる。
【0026】
幾つかの実施形態では、音響変換器220の1つ以上のパラメータ(例えばゲイン、イコライゼーションパラメータなど)を、音響チャネルの形状及びサイズに基づいて(例えば関連する音響経路の伝達関数に対する変化を補償するように)調整することができる。幾つかの実施形態では、例えば音響変換器のイコライザ設定値を調整するように構成されたコントローラによるシステムチューニングプロセス中に、これを行うことができる。幾つかの実施形態では、例えば音響チャネルを通る音響経路に対する如何なる変化も補償するように、調整を動的に行うことができる。コントローラの機能性又はその部分、及びそのさまざまな変更形態(以後「機能」)は、少なくとも一部には、コンピュータプログラム製品、例えば1つ以上のデータ処理装置、例えばプログラマブルプロセッサ、コンピュータ、複数のコンピュータ、及び/又はプログラマブル論理コンポーネントによって実行するために、又はその動作を制御するために、1つ以上の非一時的機械可読媒体などの情報キャリア内に有形に具現化されたコンピュータプログラムを通じて、実装されてよい。
【0027】
コンピュータプログラムは、コンパイル型又はインタープリタ型言語を含む、任意の形態のプログラミング言語で記述されてもよく、またそれは、スタンドアロンプログラムとして、又はモジュール、コンポーネント、サブルーチン、若しくはコンピューティング環境において使用するのに適した他のユニットとして、を含めた任意の形態で展開されてもよい。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で、又は1つのサイトにある複数のコンピュータ、若しくは複数のサイトにわたって分散されネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように展開されてよい。
【0028】
機能の全て又は一部を実施することに関連するアクションは、較正プロセスの機能を実施するための1つ又は複数のコンピュータプログラムを実行する1つ又は複数のプログラマブルプロセッサによって実施されてよい。機能の全て又は一部は、専用論理回路、例えばFPGA及び/又はASIC(特定用途向け集積回路)として実装されてよい。
【0029】
コンピュータプログラムを実行するのに適したプロセッサとしては、例として、汎用と専用両方のマイクロプロセッサ、及び任意の種類のデジタルコンピュータのいずれか1つ又は複数のプロセッサがある。一般に、プロセッサは、読出し専用メモリ又はランダムアクセスメモリ又はその両方から命令及びデータを受容する。コンピュータのコンポーネントは、命令を実行するためのプロセッサ、ならびに命令及びデータを記憶するための1つ又は複数のメモリデバイスを含む。
【0030】
本明細書において具体的に説明していない他の実施形態も、添付の特許請求の範囲に記載の範囲に含まれる。
【0031】
例えば幾つかの実施形態では、音響チャネルの長さを調整可能にすることができる。例えば音響チャネルは、音響チャネルを乗員の耳から遠ざけること、及び乗員の耳により近づけることができるように伸縮する、折り畳み式構造を含むことができる。幾つかの実施形態では、そのような折り畳み式構造は、音響チャネルのサイズが縮小されるときに互いに畳み込まれるように構成された、1つ又は複数の伸縮自在区分を含むことができる。幾つかの実施形態では、音響チャネルは、音響チャネルの長さが調整可能になることを可能にするバネ状構造又はベロー状構造を含むことができる。そのような調整可能な音響チャネルは、乗員の音響体験の個人専用化を可能にすることにより、さらなる利点をもたらすことができる。音響チャネルの長さは、手動で調整するか、又は乗員によって制御可能な電気モータを使用して調整することができる。幾つかの実施形態では、音響チャネルの調整された長さに従って対応する変換器の1つ又は複数のイコライゼーションパラメータを動的に更新するように、コントローラを構成することができる。
【0032】
本明細書において説明した異なる実施形態の要素を組み合わせて、上で具体的に記載していない他の実施形態を形成することができる。本明細書において説明した構造から、それらの動作に悪影響を及ぼさない限り要素を省くことができる。さらに、さまざまな別々の要素を組み合わせて、本明細書において説明した機能を実施するための1つ又は複数の個別の要素にすることもできる。
【符号の説明】
【0033】
200 車両シートシステム
205 シート乗員
210 シートヘッドレスト部分、シートヘッドレスト
215 シートバックレスト部分
220 音響変換器
230 音響チャネル
235 第1の端部
240 第2の端部
300 システム
305 外側開口部
400 別の例示的な実施形態