(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843988
(24)【登録日】2021年2月26日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】排気測定装置用凝縮水排出システム
(51)【国際特許分類】
G01N 1/22 20060101AFI20210315BHJP
F16T 1/20 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
G01N1/22 P
F16T1/20 Z
【請求項の数】12
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-524027(P2019-524027)
(86)(22)【出願日】2017年11月3日
(65)【公表番号】特表2019-537719(P2019-537719A)
(43)【公表日】2019年12月26日
(86)【国際出願番号】EP2017078168
(87)【国際公開番号】WO2018087003
(87)【国際公開日】20180517
【審査請求日】2019年6月5日
(31)【優先権主張番号】102016121441.8
(32)【優先日】2016年11月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511236970
【氏名又は名称】エイヴィエル エミッション テスト システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】AVL Emission Test Systems GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トアステン ボアネマン
(72)【発明者】
【氏名】ディアク ヴォイキ
【審査官】
北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−185778(JP,A)
【文献】
米国特許第03348564(US,A)
【文献】
独国特許発明第102004060352(DE,B3)
【文献】
特開平11−337458(JP,A)
【文献】
特開2012−145524(JP,A)
【文献】
実公昭49−044154(JP,Y1)
【文献】
特開2011−137646(JP,A)
【文献】
特開2001−004503(JP,A)
【文献】
特開2007−092947(JP,A)
【文献】
特開平10−061888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00〜1/44
F16T 1/00
F16T 1/20〜1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝縮水分離器(18)と、内部を大気圧が支配している流出導管(56)と、を備えた、排気測定装置(20)用凝縮水排出システム(16)において、
前記凝縮水分離器(18)内では過剰圧力が支配的であり、該凝縮水分離器(18)と前記流出導管(56)との間に、過剰圧力が支配的な中間蓄え器(40)が配置されており、該中間蓄え器(40)は、接続導管(38)を介して前記凝縮水分離器(18)に直接に接続されており、前記中間蓄え器(40)内に、凝縮水を前記流出導管(56)内へ導出可能なフロート弁(42)が配置されており、前記流出導管(56)は、凝縮水タンク(58)内へ開口しており、該凝縮水タンク(58)の下部領域からは、内部に排出弁(60)が配置された排出導管(59)が延びており、前記凝縮水タンク(58)の上部領域には、空気抜き開口(61)が形成されており、これにより、前記凝縮水タンク(58)内で大気圧が維持されるようになっていることを特徴とする、排気測定装置(20)用凝縮水排出システム(16)。
【請求項2】
前記中間蓄え器(40)の下部容積(50)は、凝縮水で満たされており、凝縮水は、前記下部容積(50)に配置された凝縮水出口(44)を介して導出可能であり、上部容積(48)はガスで満たされており、ガスは、前記上部容積(48)に配置されたガス出口(52)を介して排出可能である、請求項1記載の排気測定装置(20)用凝縮水排出システム(16)。
【請求項3】
前記中間蓄え器(40)の前記ガス出口(52)は、流れ抵抗導管に接続されている、請求項2記載の排気測定装置(20)用凝縮水排出システム(16)。
【請求項4】
前記流れ抵抗導管は、毛管(54)またはノズルである、請求項3記載の排気測定装置(20)用凝縮水排出システム(16)。
【請求項5】
前記毛管(54)またはノズルは加熱されている、請求項4記載の排気測定装置(20)用凝縮水排出システム(16)。
【請求項6】
前記凝縮水分離器(18)の上流側に圧送ポンプ(13)が配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の排気測定装置(20)用凝縮水排出システム(16)。
【請求項7】
前記凝縮水分離器(18)は、冷却媒体冷却型の凝縮水分離器(18)である、請求項1から6までのいずれか1項記載の排気測定装置(20)用凝縮水排出システム(16)。
【請求項8】
前記冷却媒体は、ペルチェ式クーラ(33)により冷却される固形の冷却体(29)である、請求項7記載の排気測定装置(20)用凝縮水排出システム(16)。
【請求項9】
前記凝縮水分離器(18)は、内部に試料ガス流を導入するための、冷却された流入導管(24)が配置されたケーシング(22)と、ガス流を導出するための出口開口(34)と、前記凝縮水分離器(18)と前記中間蓄え器(40)との間の前記接続導管(38)内に開口する、凝縮水を導出するための流出開口(30)とを有している、請求項1から8までのいずれか1項記載の排気測定装置(20)用凝縮水排出システム(16)。
【請求項10】
前記凝縮水分離器(18)の出口開口(34)は、試料ガス導管(36)に接続されており、該試料ガス導管(36)は排気測定装置(20)内で開口しており、該排気測定装置(20)の運転温度は周辺温度〜70℃である、請求項9記載の排気測定装置(20)用凝縮水排出システム(16)。
【請求項11】
前記冷却された流入導管(24)は、らせん形に延在しておりかつ接線方向において分離室(26)内へ開口しており、該分離室(26)の下側に、前記流出開口(30)内へ開口する漏斗部(28)が形成されており、前記分離室(26)の上側に、前記出口開口(34)において開口するガス出口接続管片(32)が形成されている、請求項9記載の排気測定装置(20)用凝縮水排出システム(16)。
【請求項12】
前記凝縮水タンク(58)は、前記中間蓄え器(40)の上側に配置されている、請求項1から11までのいずれか1項記載の排気測定装置(20)用凝縮水排出システム(16)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝縮水分離器と、内部を大気圧が支配している流出導管とを備えた、排気測定装置用凝縮水排出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
このような凝縮水排出システムは複数の用途から周知であり、流体から水を分離するため、特に後続ユニットに凝縮による損傷を招く恐れのある、ガス中に存在する水蒸気を排出するために用いられる。
【0003】
排気測定装置では、水または水蒸気を有する排気を含む試料ガス流から水を分離する、凝縮水分離器が使用される。燃料が燃焼すると、排気流中に成分として含まれた水蒸気が形成され、この場合、流体は露点においてまさに水蒸気で飽和した状態にある。流体の温度が露点未満に低下すると水蒸気は凝縮し、凝縮物は液相で生じる。一方では、測定装置におけるこのような凝縮により、例えば分光器的に働く測定装置が誤った結果をもたらすことになり、他方では、排気装置のユニットが汚染され、例えば腐食によって測定装置の耐用年数が減らされることになる。
【0004】
特に重要なのは、冷間で、つまり排気混合物の露点未満の温度で働く測定装置における水蒸気の凝縮を防ぐことである。なぜなら、ここでは特に、試料ガスからの水蒸気の凝縮を考慮せねばならないからである。この場合は例えば、ガス流中の酸素濃度を測定するために酸素の磁気特性を利用する常磁性検出器を用いた酸素濃度測定、または非分散型赤外線センサを用いた一酸化炭素、二酸化炭素または炭化水素の分光測定が挙げられる。
【0005】
したがって、試料ガスを乾燥させるために排気中の水蒸気の含有量を的確に減少させると共に、測定装置の上流で凝縮水を分離するために、流体温度の露点未満への低下が利用される。このために試料ガスは、冷却器を介して凝縮水分離器内へ案内され、凝縮水分離器内では流体から凝縮水が分離され、分離された凝縮水は凝縮水タンク内へ案内され、凝縮水タンクからは排出弁を介して、時間的に間隔をおいてまたは連続的に凝縮水を排出することができる。
【0006】
独国特許出願公開第3706941号明細書には、冷却作動型の凝縮水分離器が開示されている。冷却機は、冷却液で満たされたタンクを有している。冷却液で満たされたタンクを通ってらせん形の流入導管が延在しており、流入導管は分離タンク内で開口しており、流入導管を被冷却流体が通流する。分離タンクは、円筒形の部分と、これに続く截頭円錐形の部分とから構成されており、截頭円錐形の部分は下方に向かって収縮し、凝縮水流出開口において開口している。凝縮水分離器の、凝縮水流出開口とは反対の側に位置する端部において、凝縮水分離器内には、ガス出口接続管片として用いられガス導出導管内へ開口する浸漬管が浸漬されており、乾燥させたガスを、ガス導出導管を介して後続ユニットに供給することができる。ただし、発生する凝縮水を的確に排出することができる方法は記載されていない。
【0007】
独国特許発明第102004060352号明細書から公知の排気試験機は測定装置を有しており、測定装置の上流側に凝縮水分離器が配置されている。発生する凝縮水は、ポンプを介して該ポンプにより負圧を印加されることで、凝縮水分離器から排出される。これは大抵、チューブポンプを介して行われる。なぜなら、チューブポンプは脈動無しで作動し、後続のタンクの、凝縮水分離器からの完全な分離が行われるため、例えば圧力サージによる影響を排除できるからである。このポンプは凝縮水を凝縮水タンク内へ圧送し、凝縮水タンクから、フロート弁を介して凝縮水を排出することができる。凝縮水タンク内へ流入するガスは、チューブを介して排出することができる。
【0008】
このシステムにおける欠点は、一方では凝縮水を圧送し、他方では、特に凝縮水の排出時の圧力サージに基づき分離度合いの低下または測定結果の悪化を招く恐れがある、凝縮水分離器または測定装置への影響を防止するために、摩耗するポンプ、したがって保守整備されるべきポンプを使用する必要がある、という点にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、排気測定装置用凝縮水排出システムを改良して、追加的な圧送手段無しで凝縮水分離が達成され、凝縮水分離に際して、分離器およびとりわけ測定装置に対する、分離度合いまたは測定の悪化を招く恐れのある、例えば凝縮水タンクを空にする際の圧力変動の形態の影響が回避されるようにする、という課題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、主請求項1記載の特徴を有する排気測定装置用凝縮水排出システムにより解決される。
【0011】
凝縮水分離器内では過剰圧力が支配的であり、凝縮水分離器と流出導管との間に、過剰圧力が支配的な中間蓄え器が配置されており、中間蓄え器は、接続導管を介して凝縮水分離器に直接に接続されており、中間蓄え器内に、凝縮水を流出導管内へ導出可能なフロート弁が配置されていることにより、凝縮水分離器の、流出導管からの分離が生じ、これにより、流出導管における圧力サージが、凝縮水分離器ひいては測定装置にも伝達されなくなる。これに対応して、凝縮水分離器は一定の圧力状態で作動することになる。なぜなら、中間蓄え器内の弁により、過剰圧力領域が大気圧領域から隔離されるからである。流出導管と凝縮水分離器との間を空間的にも隔離する、摩耗する追加的な圧送手段を省くことができる。
【0012】
加えて、本発明による配置形式により、凝縮水分離器を特に小型に形成することが可能である。なぜなら、凝縮水分離器内の弁を省くことができるからである。これにより、凝縮水分離器に存在する死容積が最小になることから、周知の構成に比べて応答時間が大幅に短縮されることになる。
【0013】
好適には、中間蓄え器の下部容積が凝縮水で満たされており、凝縮水は、下部容積に配置された凝縮水出口を介して導出可能であり、上部容積はガスで満たされており、ガスは、上部容積に配置されたガス出口を介して排出可能である。つまり、この中間蓄え器から、中間蓄え器内へ流入するガスを排出することができるようになっているので、凝縮水出口を介して専ら凝縮水だけが、凝縮水タンク内へ流入することになる。
【0014】
これに関して別の好適な実施形態では、流出導管は凝縮水タンク内へ開口しており、凝縮水タンクの下部領域からは、内部に排出弁が配置された排出導管が延びており、凝縮水タンクの上部領域には、空気抜き開口が形成されている。この凝縮水タンク内では、ガス排出開口を介して大気圧を維持することができ、空にする際の圧力サージが中間蓄え器に影響を及ぼすことはない。よって、凝縮水排出システムは、排出部に対する常時接続を必要とせず、時間的に間隔をおいて、的確に空にすることができる。
【0015】
好適には、中間蓄え器のガス出口は、特に毛管またはノズルとして形成できる、流れ抵抗導管に接続されている。つまり、中間蓄え器内へ流入するガスを、圧力差を加えることによって排出できるようになっており、逆流を回避することができる。
【0016】
本発明の別の有利な構成では、毛管またはノズルは加熱されているため、未だ存在する水蒸気が凝縮することによって毛管またはノズルが汚染される恐れはない。これに対応して、加熱することにより、毛管における堆積物も回避される。
【0017】
好適な構成では、圧送ポンプは凝縮水分離器の上流側に配置されており、これにより、凝縮水分離器全体が過剰圧力において作動する。つまり、生じる漏れに基づき、ガス流内へ水分が後から侵入することが回避されるようになっている。追加的な圧送ユニットを省くことができる。
【0018】
また、凝縮水分離器が、冷却媒体冷却型の凝縮水分離器である場合も有利である。この凝縮水分離器は、排気流を測定する場合に分離における極めて良好な効率を有しており、これにより、極めて良好な測定結果を得ることができる。
【0019】
これに関して1つの別の実施形態では、冷却媒体は、ペルチェ式クーラにより冷却される固形の冷却体である。これは、効率的な冷却手段であるということが判った。なぜなら、液体を案内する導管が一切必要とされないからである。
【0020】
好適には、凝縮水分離器は、内部に試料ガス流を導入するための、冷却された流入導管が配置されたケーシングと、ガス流を導出するための出口開口と、凝縮水分離器と中間蓄え器との間の接続導管内に開口する、凝縮水を導出するための流出開口と、を有している。つまり、ケーシングは、凝縮水分離器の冷却領域と分離領域の両方を包囲している。
【0021】
加えて、凝縮水分離器の出口開口は、試料ガス導管に接続されており、試料ガス導管は排気測定装置内で開口しており、排気測定装置の作動温度は周辺温度〜70℃であるため、この測定装置には乾燥された試料ガスのみが測定用に提供される。これは、測定結果を改善すると共に、凝縮水による堆積物に基づく測定装置の劣化を低減させる。これらの測定装置は大抵、温度ドリフトを回避するために、周辺温度をかろうじて上回る温度で運転される。
【0022】
また、冷却された流入導管がらせん形に延在しておりかつ接線方向において分離室内へ開口しており、分離室の下側に、凝縮水用の流出開口内へ開口する漏斗部が形成されており、分離室の上側に、出口開口において開口するガス出口接続管片が形成されている場合も有利である。凝縮水分離器の、この円筒形の構成は、極めて良好な分離度合いを可能にする。なぜなら、形状と、形状によって方向付けられる水の導出とに基づき、ガス出口開口の方向での凝縮水滴の連行が回避されるからである。また、同様にガス出口開口へ水を連行する恐れのある飛沫水も回避される。凝縮水はむしろ表面に付着し、分離室の勾配に基づき流出開口に向かって案内される。
【0023】
さらに、凝縮水タンクは中間蓄え器の上側に配置されていると有利であり、これにより、垂直方向において必要とされる構成空間を限定することができる。これは、過剰圧力での運転により可能になる。
【0024】
つまり、測定装置において極めて良好な測定結果が得られると同時に周辺温度での測定も達成される、排気測定装置用凝縮水排出システムが提供される。なぜなら、高い分離度合いが保証されると共に、凝縮水分離器に対する影響が確実に回避されることにより、凝縮水が測定装置の上流側で確実に排出されるからである。よって、システムの連続使用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明による排気測定装置用凝縮水排出システムの1つの実施例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明による排気測定装置用凝縮水排出システムの1つの実施例を図示して説明する。
【0027】
図示の試験台では、車両10から排気が、試料ガス導管12を介して圧送ポンプ13により、圧送ポンプ13の下流側に配置された排気分析ユニット14に供給される。排気分析ユニット14は、凝縮水排出システム16から成り、凝縮水排出システム16の凝縮水分離器18は、周辺温度〜約70℃の作動温度で作動する排気測定装置20、特に非分散型赤外線検出器または常磁性酸素検出器の上流側に配置されている。上流側に接続された凝縮水分離器18を使用しないと、高温の排気中に含まれる水蒸気が赤外線検出器において凝縮する恐れがあり、または、水蒸気濃度が高まることで横感度が高められた結果、測定結果が歪曲される恐れがある。
【0028】
凝縮水分離器18は、らせん形に延在する流入導管24を包囲するケーシング22を有している。流入導管24は冷却体29により包囲されており、冷却体29は特に、良好に熱を伝導する金属から成っていて、ペルチェ式クーラ33の低温側に大面積で当て付けられており、これにより、流入導管24内に流入する流体が冷却されるようになっている。流入導管24は、分離室26内へ接線方向に開口しており、分離室26の上側の円筒形のケーシング部分27は、下側の漏斗部28に移行しており、漏斗部28の下端部には、分離された凝縮水のための流出開口30が形成されており、凝縮水内で支配的なのは、圧送ポンプ13の圧送圧力による過剰圧力である。上側のケーシング部分27の中心にはガス出口接続管片32が突入しており、ガス出口接続管片32を介して、乾燥された試料ガスが凝縮水分離器18の出口開口34に到達し、次いで出口開口に接続された試料ガス導管36を介して排気測定装置20に供給され、排気測定装置20内で、例えば排気中の一酸化炭素、二酸化炭素または炭化水素の濃度が測定される。
【0029】
つまり、流入導管24内で試料ガスは露点未満に冷却され、これにより、試料ガス中に含まれる水蒸気の大部分が凝縮する。ガス流と重力とに基づき、凝縮水は試料ガスと共に接線方向で分離室26内へ流入する。この接線方向の流入により、凝縮水はまず、円筒形のケーシング部分27の壁面に沿って循環する。凝縮水滴の、ガスに比べると大きな質量に基づき、凝縮水滴には比較的高い遠心力と重力とが作用し、比較的高い遠心力と重力とにより、試料ガスの体積流によって連行された凝縮水滴は試料ガスから離され、かつ漏斗部28を介して流出開口30に到達する一方で、試料ガス流は、ガス出口接続管片32に向かう方向での圧力差に追従する。ガス流によって連行される恐れのある、凝縮水の表面に滴下する水による飛沫水は、漏斗部28によって防がれる。追加的に、ガス出口接続管片32の入口横断面は、出口横断面よりも大きく選択することができ、これにより、入口横断面における流速ひいてはガス流の牽引力をも低下させる。
【0030】
凝縮水は、本発明に基づき、流出開口30から、支配的な過剰圧力によって第1の接続導管38を介して中間蓄え器40内へ流入し、中間蓄え器40内もやはり、圧送ポンプ13の圧送圧力による過剰圧力が支配的である。中間蓄え器40内にはフロート弁42が配置されており、フロート弁42は水位に応じて、中間蓄え器40の凝縮水出口44を開閉する。フロート弁42はフロート部材46を有しており、フロート部材46は中間蓄え器40の水面上に浮かんでおり、中間蓄え器40を、凝縮水と共に流出開口30を介して凝縮水分離器18から排出されたガスで満たされた上部容積48と、凝縮水で満たされた下部容積50とに分けている。
【0031】
上部容積48にはガス出口52が形成されており、ガス出口52は加熱された毛管54内に通じており、先に凝縮水と共に中間蓄え器40内に流入したガスを、毛管54を介して排出することができる。この場合は、ヒータ55により、ガスに含まれる水蒸気または別の化合物がさらに凝縮することにより、毛管54内に詰まりを生じさせる恐れのある堆積物が形成されることが防止される。
【0032】
中間蓄え器40の凝縮水出口44は、流出導管56を介して凝縮水タンク58に接続されており、凝縮水タンク58内へ凝縮水が排出され、凝縮水タンク58内では大気圧が支配的である。この凝縮水タンク58には、下側の排出導管59が接続されており、排出導管59内には、凝縮水を排気分析ユニット14から排出させることのできる排出弁60が配置されている。この排出弁60は、凝縮水タンク58の完全な充填を回避するために、作業員によって規則的な間隔で操作される。また、自動的または連続的に空にすることも可能である。さらに、上部領域には、大気に接続された空気抜き開口61が形成されており、空気抜き開口61を介して凝縮水タンク58内で圧力補償が行われるため、フロート弁42が開放されても凝縮水タンク58内で増圧が行われる恐れは一切ない。
【0033】
凝縮水排出システム16の上記構成および特に中間蓄え器40の配置は、測定進行中、つまり試料ガスが凝縮水分離器18および排気測定装置20に供給される間、排出弁60を介して、凝縮水タンク58と凝縮水分離器18との間でシステムを空にすることを可能にする。なぜなら、凝縮水分離器18に対する影響が全く懸念されないからである。さもなければ、凝縮水タンク58を空にすることによって生じ得る圧力サージまたは脈動の、凝縮水分離器18への伝達は、中間蓄え器の介在およびその結果生じる、流出導管からの凝縮水分離器の分離ならびに空気抜き開口61を備えた凝縮水タンクの使用により、完全に排除される。凝縮水およびガス流の排出は、上流側に接続された圧送ポンプ13の圧送圧力により行われる。圧送用であると同時に、凝縮水タンク58から凝縮水分離器18を分離するための後続のチューブポンプ等は必要とされず、これにより、凝縮水排出システム16の摩耗を減らすと共に、保守整備間隔を広げることができる。
【0034】
本発明の主請求項の保護範囲が、説明した実施例に限定されるものではないことは明らかである。特に、凝縮水分離器、中間蓄え器または凝縮水タンクの構成形式は変更されてよい。また、このようなシステムは種々様々な測定装置に使用可能である。