特許第6844003号(P6844003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6844003低温靭性及び降伏強度に優れた高マンガン鋼及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6844003
(24)【登録日】2021年2月26日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】低温靭性及び降伏強度に優れた高マンガン鋼及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20210308BHJP
   C22C 38/58 20060101ALI20210308BHJP
   C21D 8/02 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   C22C38/00 302A
   C22C38/58
   C21D8/02 D
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-533606(P2019-533606)
(86)(22)【出願日】2017年12月21日
(65)【公表番号】特表2020-509207(P2020-509207A)
(43)【公表日】2020年3月26日
(86)【国際出願番号】KR2017015290
(87)【国際公開番号】WO2018117712
(87)【国際公開日】20180628
【審査請求日】2019年8月9日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0176297
(32)【優先日】2016年12月22日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ペ、 ジン−ホ
【審査官】 浅野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−084529(JP,A)
【文献】 特開2016−196703(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2016−0078664(KR,A)
【文献】 特開2020−002465(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2015−0075305(KR,A)
【文献】 特表2018−503742(JP,A)
【文献】 特表2017−507249(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/122237(WO,A1)
【文献】 特開2006−299398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00〜38/60
C21D 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、C:0.3〜0.6%、Mn:20〜25%、Mo:0.01〜0.3%、Al:3%以下(0%を含む)、Cu:0.1〜3%、P:0.06%以下(0%を含む)及びS:0.005%以下(0%を含む)を含み、Cr:8%以下(0%を含む)及びNi:0.1〜3%から選択された1種以上を含み、その他の不可避不純物及び残部Feからなり、前記Mo及びPが下記関係式(1)を満たし、
[関係式1]
1.5≦2*(Mo/93)/(P/31)≦9
微細組織は、50μm以下の結晶粒サイズを有するオーステナイトからなる、
低温靭性及び降伏強度に優れた高マンガン鋼。
【請求項2】
前記高マンガン鋼は、−196度(℃)でのシャルピー衝撃試験で測定された衝撃靭性値が100J以上である、請求項1に記載の低温靭性及び降伏強度に優れた高マンガン鋼。
【請求項3】
前記高マンガン鋼の常温降伏強度は380MPa以上である、請求項1に記載の低温靭性及び降伏強度に優れた高マンガン鋼。
【請求項4】
低温靭性及び降伏強度に優れた高マンガン鋼の製造方法であって、
重量%で、C:0.3〜0.6%、Mn:20〜25%、Mo:0.01〜0.3%、Al:3%以下(0%を含む)、Cu:0.1〜3%、P:0.06%以下(0%を含む)及びS:0.005%以下(0%を含む)を含み、Cr:8%以下(0%を含む)及びNi:0.1〜3%から選択された1種以上を含み、その他の不可避不純物及び残部Feからなり、前記Mo及びPが下記関係式(1)を満たす鋼スラブを1000〜1250℃の温度で再加熱するスラブ再加熱段階と、
[関係式1]
1.5≦2*(Mo/93)/(P/31)≦9
再加熱されたスラブを1次熱間圧延し、980〜1050℃の温度で1次熱間圧延を終了した後に未再結晶域で3%以下の圧延率で2次熱間圧延し、800〜960℃の温度で2次熱間圧延を終了して熱延鋼板を得る熱間圧延段階と、
前記熱延鋼板を350〜600℃の冷却終了温度まで水冷する冷却段階と、
冷却された熱延鋼板を巻取る巻取り段階と、
を含
前記高マンガン鋼の微細組織は、50μm以下の結晶粒サイズを有するオーステナイトからなる、
低温靭性及び降伏強度に優れた高マンガン鋼の製造方法。
【請求項5】
前記高マンガン鋼は、−196度(℃)でのシャルピー衝撃試験で測定された衝撃靭性値が100J以上である、請求項に記載の低温靭性及び降伏強度に優れた高マンガン鋼の製造方法。
【請求項6】
前記高マンガン鋼の常温降伏強度は380MPa以上である、請求項に記載の低温靭性及び降伏強度に優れた高マンガン鋼の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LNG燃料車両、LNG運搬用船舶の様々な部位に用いられる高強度・高靭性鋼材及びその製造方法に関するものであり、より詳細には、低温靭性及び降伏強度に優れた高マンガン鋼及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石油などの従来エネルギーの枯渇により、LNGなどのエネルギーへの関心が高まっている。−100℃以下の極低温液体状態で運搬される天然ガスのような燃料の需要が増加するにつれて、そのような燃料を貯蔵し、輸送するための機器の製作及び材料に対する需要が増加している。
【0003】
このような極低温では、一般炭素鋼の場合、材料の靭性が急激に低下して外部の小さな衝撃にも材料が破断するという問題が発生することがある。このような問題を克服すべく、低温でも衝撃靭性に優れた材料が用いられており、代表的な材料としては、アルミニウム合金、オーステナイト系ステンレス鋼、35%のインバー鋼、9%のNi鋼などがある。
【0004】
しかし、このような材料のほとんどは、ニッケルの添加量が多くて価格が高いという問題がある。したがって、製造コストが低く、且つ低温靭性に優れた鋼材の開発が必要である。
【0005】
従来の炭素鋼製品は、使用温度が低くなると、降伏強度が急激に上昇して靭性が大きく低下する欠点があるため、使用に制限がある。また、靭性に優れた代表的な材料であるステンレス鋼は、降伏強度が低くて構造部材としての使用に適さない。
【0006】
一方、高い低温靭性を有する材料を製造するためには、低温で安定したオーステナイト組織を有するようにする方法がある。フェライト組織は、低温で延性−脆性遷移現象が現れて低温の脆性区間で靭性が急激に低下する。しかし、オーステナイト組織は、極低温でも延性−脆性遷移現象が現れず、高い低温靭性を有する。これは、フェライトとは異なり、低温での降伏強度が低くて塑性変形が起こりやすく、外部変形による衝撃を吸収することができるためである。
【0007】
低温でのオーステナイト安定度を増大させる代表的な元素はニッケルであるが、価格が高いという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭60−077962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の好ましい一側面は、低温靭性及び降伏強度に優れた高マンガン鋼を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の好ましい他の一側面は、低温靭性及び降伏強度に優れた高マンガン鋼の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の好ましい一側面によると、重量%で、C:0.3〜0.6%、Mn:20〜25%、Mo:0.01〜0.3%、Al:3%以下(0%を含む)、Cu:0.1〜3%、P:0.06%以下(0%を含む)及びS:0.005%以下(0%を含む)を含み、Cr:8%以下(0%を含む)及びNi:0.1〜3%から選択された1種以上を含み、その他の不可避不純物及び残部Feを含み、上記Mo及びPが下記関係式(1)を満たし、
[関係式1]
1.5≦2*(Mo/93)/(P/31)≦9
微細組織は、50μm以下の結晶粒サイズを有するオーステナイトからなる、低温靭性及び降伏強度に優れた高マンガン鋼が提供される。
【0012】
本発明の好ましい他の一側面によると、重量%で、C:0.3〜0.6%、Mn:20〜25%、Mo:0.01〜0.3%、Al:3%以下(0%を含む)、Cu:0.1〜3%、P:0.06%以下(0%を含む)及びS:0.005%以下(0%を含む)を含み、Cr:8%以下(0%を含む)及びNi:0.1〜3%から選択された1種以上を含み、その他の不可避不純物及び残部Feを含み、上記Mo及びPが下記関係式(1)を満たす鋼スラブを1000〜1250℃の温度で再加熱するスラブ再加熱段階と、
[関係式1]
1.5≦2*(Mo/93)/(P/31)≦9
再加熱されたスラブを1次熱間圧延し、980〜1050℃の温度で1次熱間圧延を終了した後に未再結晶域で3%以下の圧延率で2次熱間圧延し、800〜960℃の温度で2次熱間圧延を終了して熱延鋼板を得る熱間圧延段階と、
上記熱延鋼板を350〜600℃の冷却終了温度まで水冷する冷却段階と、
冷却された熱延鋼板を巻取る巻取り段階と、を含む、低温靭性及び降伏強度に優れた高マンガン鋼の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、−196度でのシャルピー衝撃試験で測定された衝撃靭性値が100J以上であり、常温降伏強度は380MPa以上である、高マンガン鋼を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明は、低温靭性及び降伏強度に優れた高マンガン鋼について研究と実験を通じて得られた結果に基づいてなされたものであり、主要概念は次の通りである。
【0016】
1)鋼組成のうち、特にマンガンと炭素の量を制御する。
これにより、均一で安定度の高いオーステナイト相を確保することができる。
【0017】
2)鋼組成のうち、特に鋼炭窒化物形成元素として知られているCr(選択的に添加)と固溶強化元素であるCu及びAlなどを適量添加する。
これにより、降伏強度を増加させることができる。
【0018】
3)製造条件のうち、特に熱間圧延条件を適切に制御する。
これにより、強度及び衝撃靭性を増加させることができる。
【0019】
以下、本発明の好ましい一側面による極低温用オーステナイト系高マンガンについて説明する。
【0020】
本発明の好ましい一側面による低温靭性及び降伏強度に優れた高マンガン鋼は、重量%で、C:0.3〜0.6%、Mn:20〜25%、Mo:0.01〜0.3%、Al:3%以下(0%を含む)、Cu:0.1〜3%、P:0.06%以下(0%を含む)及びS:0.005%以下(0%を含む)を含み、Cr:8%以下(0%を含む)及びNi:0.1〜3%から選択された1種以上を含み、その他の不可避不純物及び残部Feを含み、上記Mo及びPが下記関係式(1)を満たし、
[関係式1]
1.5≦2*(Mo/93)/(P/31)≦9
微細組織は、50μm以下の結晶粒サイズを有するオーステナイトからなる。
【0021】
まず、鋼成分及び成分範囲について説明する。
【0022】
炭素(C):0.3〜0.6重量%(以下、「%」という)
Cは、鋼中のオーステナイトを安定化させ、固溶して強度を確保するのに必要な元素である。しかし、その含有量が0.3%未満であると、オーステナイト安定度が不足してフェライトまたはマルテンサイトが形成されて低温靭性が低下する。一方、その含有量が0.6%を超えると、炭化物が形成されて表面欠陥が発生し、靭性が低下するため、Cの含有量は0.3〜0.6%に制限することが好ましい。
【0023】
より好ましいCの含有量は0.35〜0.55%であり、さらに好ましいCの含有量は0.4〜0.5%である。
【0024】
マンガン(Mn):20〜25%
Mnは、オーステナイト組織を安定化させる役割を果たす重要な元素であり、低温靭性を確保するためには、フェライトの形成を防止し、オーステナイト安定度を増加させなければならない。したがって、本発明では、少なくともMnを20%以上添加する必要がある。Mnを20%未満添加すると、α’−マルテンサイト相が形成されて低温靭性が低下する。一方、その含有量が25%を超えると、製造コストが大きく増加し、工程上、熱間圧延段階における加熱時に内部酸化が過度に起こり、表面品質が悪くなるという問題が発生する。したがって、Mnの含有量は20〜25%に制限することが好ましい。
【0025】
より好ましいMnの含有量は21〜24%であり、さらに好ましいMnの含有量は22〜24%である。
【0026】
モリブデン(Mo):0.01〜0.3%
Moは、Fe−Mo−P化合物を形成することでP粒界偏析を防止する効果によって衝撃靭性を向上させる効果があり、そのためには、Moを0.01%以上添加しなければならない。しかし、Moは高価な元素であり、Mo炭窒化物の形成による強度上昇によって衝撃エネルギーが減少することを防止するために、Moの含有量は0.3%以下に制限することが好ましい。
【0027】
アルミニウム(Al):3%以下(0%を含む)
Alは、積層欠陥エネルギーを増大させることにより、低温での転位の移動を円滑にして塑性変形を可能にする効果を奏する。一方、その含有量が3%を超えると、製造コストが大きく増加し、工程上、連続鋳造段階でクラックが発生して表面品質が悪くなるという問題が発生する。したがって、Alの含有量は3%以下(0%を含む)に制限することが好ましい。より好ましいAlの含有量は0〜2%であり、さらに好ましいAlの含有量は0.5〜1.5%である。
【0028】
銅(Cu):0.1〜3%
Cuは、鋼中に固溶して強度を上昇させるのに必要な元素である。
【0029】
その含有量が0.1%未満であると、添加効果を得難く、その含有量が3%を超えると、スラブにクラックが発生しやすくなる。したがって、Cuの含有量は0.1〜3%に制限することが好ましい。
【0030】
より好ましいCuの含有量は0.5〜2.5%であり、さらに好ましいCuの含有量は0.5〜2%である。
【0031】
リン(P):0.06%以下(0%を含む)
Pは、鋼の製造時に不可避に含有される元素であり、リンが添加されると、鋼板の中心部に偏析し、亀裂開始点または進展経路として用いられることがある。理論上、リンの含有量を0%に制限することが有利であるが、製造工程上必然的に不純物として添加される。したがって、上限を管理することが重要であり、本発明では、上記リンの含有量の上限は0.06%に制限することが好ましい。
【0032】
硫黄(S):0.005%以下(0%を含む)
Sは、鋼中に存在する不純物元素であり、Mnなどと結合して非金属介在物を形成する。これにより鋼の靭性を大きく損なうため、できるだけ減少させることが好ましい。したがって、その上限を0.005%に制限することが好ましい。
【0033】
鋼成分のうちMo及びPは下記関係式(1)を満たす。
[関係式1]
1.5≦2*(Mo/93)/(P/31)≦9
【0034】
上記関係式(1)は、Pの粒界偏析を防ぐためのものである。関係式(1)の値が1.5未満であると、Fe−Mo−P化合物の形成によるP粒界偏析防止効果が不十分となり、関係式(1)の値が9を超えると、Mo炭窒化物の形成による強度上昇によって衝撃エネルギーが減少する。
【0035】
Cr:8%以下(0%を含む)及びNi:0.1〜3%から選択された1種以上
上記成分に加えて、Cr:8%以下(0%を含む)及びNi:0.1〜3%から選択された1種以上が添加されることができる。
【0036】
クロム(Cr):8%以下(0%を含む)
Crは、適正な添加量の範囲まではオーステナイトを安定化させて低温での衝撃靭性を向上させ、オーステナイト内に固溶して鋼材の強度を上昇させる役割を果たす。また、Crは、鋼材の耐食性を向上させる元素でもある。但し、Crは炭化物元素であって、特にオーステナイト粒界に炭化物を形成して低温衝撃を減少させる。したがって、本発明で添加されるCrの含有量は、C及びその他の添加元素との関係を考慮して決定することが好ましい。Crの含有量が8%を超えると、オーステナイト粒界における炭化物の生成を効果的に抑制し難いため、低温での衝撃靭性が低下するという問題がある。したがって、Crの含有量は0〜8%に制限することが好ましい。より好ましいCrの含有量は0〜6%であり、さらに好ましいCrの含有量は0〜5%である。
【0037】
ニッケル(Ni):0.1〜3%
Niは、鋼中のオーステナイトを安定化させるために必要な元素である。その含有量が0.1%未満であると、添加効果を得難く、その含有量が3%を超えると、製造コストが増加するという問題がある。
【0038】
したがって、Niの含有量は0.1〜3%に制限することが好ましい。
【0039】
より好ましいNiの含有量は0.5〜2.5%であり、さらに好ましいNiの含有量は0.5〜2%である。
【0040】
本発明の好ましい一側面による高マンガン鋼は、50μm以下の結晶粒サイズを有するオーステナイトからなる微細組織を有する。
【0041】
上記結晶粒サイズが50μmを超えると、降伏強度及び衝撃エネルギーが減少するという問題がある。
【0042】
本発明の好ましい一側面による高マンガン鋼は、好ましくは−196度(℃)でのシャルピー衝撃試験で測定された衝撃靭性値が100J以上であり、常温降伏強度は380MPa以上であることができる。
【0043】
以下、本発明の好ましい他の一側面による低温靭性及び降伏強度に優れた高マンガン鋼の製造方法について説明する。
【0044】
本発明の好ましい他の一側面による低温靭性及び降伏強度に優れた高マンガン鋼の製造方法は、重量%で、C:0.3〜0.6%、Mn:20〜25%、Mo:0.01〜0.3%、Al:3%以下(0%を含む)、Cu:0.1〜3%、P:0.06%以下(0%を含む)及びS:0.005%以下(0%を含む)を含み、Cr:8%以下(0%を含む)及びNi:0.1〜3%から選択された1種以上を含み、その他の不可避不純物及び残部Feを含み、上記Mo及びPが下記関係式(1)を満たす鋼スラブを1000〜1250℃の温度で再加熱するスラブ再加熱段階と、
[関係式1]
1.5≦2*(Mo/93)/(P/31)≦9
再加熱されたスラブを1次熱間圧延し、980〜1050℃の温度で1次熱間圧延を終了した後に未再結晶域で3%以下の圧延率で2次熱間圧延し、800〜960℃の温度で2次熱間圧延を終了して熱延鋼板を得る熱間圧延段階と、
上記熱延鋼板を350〜600℃の冷却終了温度まで水冷する冷却段階と、
冷却された熱延鋼板を巻取る巻取り段階と、を含む。
【0045】
スラブ再加熱段階
スラブを熱間圧延する前に1000〜1250℃の温度で再加熱する。
【0046】
スラブ再加熱温度は、本発明において重要である。スラブの再加熱工程は、スラブ製造段階で生成される鋳造組織及び偏析、2次相の固溶及び均質化のためのものである。スラブ再加熱温度が1000℃未満であると、均質化が不十分となるか、または加熱温度が低すぎて熱間圧延時の変形抵抗が大きくなるという問題があり、1250℃を超えると、表面品質の劣化が発生することがある。したがって、上記スラブの再加熱温度は1000〜1250℃に制限することが好ましい。
【0047】
熱間圧延段階
上記再加熱されたスラブを1次熱間圧延し、980〜1050℃の温度で1次熱間圧延を終了した後に未再結晶域で3%以下の圧延率で2次熱間圧延し、800〜960℃の温度で2次熱間圧延を終了して熱延鋼板を得る。
【0048】
上記再加熱されたスラブの1次圧延を980〜1050℃の温度で終了し、2次圧延時に未再結晶域で3%以下の圧延を行った後、800〜960℃の温度で終了することが重要である。
【0049】
これは、圧延仕上げ温度が高すぎると、最終組織が粗大化して所望の強度と衝撃靭性を得ることができず、その温度が低すぎると、仕上げ圧延機における設備負荷の問題が発生するためである。また、未再結晶域の圧下量が大きすぎると、衝撃靭性が低下するため、3%以下に制限することが好ましい。
【0050】
冷却段階及び巻取り段階
熱間圧延を仕上げた後、水冷却して350〜600℃の温度で巻取る。冷却終了温度が600℃よりも高いと、表面品質が低下し、粗大な炭化物が形成されて靭性が低下する。一方、その温度が350℃よりも低いと、巻取り時に多くの冷却水が必要となり、巻取り時の荷重が大きく増加する。
【0051】
本発明の好ましい他の一側面による高マンガン鋼の製造方法によって製造された高マンガン鋼は、好ましくは、−196度(℃)でのシャルピー衝撃試験で測定された衝撃靭性値が100J以上であり、常温降伏強度は380MPa以上であることができる。
【0052】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。但し、下記実施例は、本発明を詳細に説明するための例示であり、本発明の権利範囲を限定しない。
【実施例】
【0053】
下記表1のような化学成分を有する発明鋼を連続鋳造法によりスラブに製造した後、それを表2のように熱間圧延して鋼材を製造した。
【0054】
上述のように製造された鋼材の結晶粒サイズ、常温降伏強度及び衝撃エネルギー値を調査し、その結果を下記表2に示した。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
上記表2に示すように、本発明の成分範囲を満たす発明鋼を用いて本発明の製造方法に従って製造された発明材の場合、圧延後に高強度・高靭性鋼材を製造することができることが分かる。
【0058】
本発明において上記実施形態は一つの例示であり、本発明がここに限定されるものではない。本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一の構成を有して同一の作用効果を奏するものは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。