特許第6844015号(P6844015)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6844015
(24)【登録日】2021年2月26日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】放送制御システム及び放送制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 27/00 20060101AFI20210308BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20210308BHJP
   G10K 11/178 20060101ALI20210308BHJP
   B61D 49/00 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   H04R27/00 D
   H04R27/00 H
   H04R3/00 310
   G10K11/178
   B61D49/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-542908(P2019-542908)
(86)(22)【出願日】2017年9月22日
(86)【国際出願番号】JP2017034291
(87)【国際公開番号】WO2019058502
(87)【国際公開日】20190328
【審査請求日】2020年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 亮太
【審査官】 堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−153743(JP,A)
【文献】 特開2013−062609(JP,A)
【文献】 特開2016−007868(JP,A)
【文献】 特開2004−216971(JP,A)
【文献】 特開平11−020697(JP,A)
【文献】 特開平04−248709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 27/00
B61D 49/00
G10K 11/178
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車の車内放送を制御する放送制御システムにおいて、
過去の列車走行中に測定された騒音量を示す騒音情報とその測定位置を示す位置情報とを対応付けて記憶するデータ記憶部と、
列車の現在位置を取得する位置取得部と、
現在の騒音量を測定する騒音測定部と、
前記位置取得部により取得された現在位置に後続する区間内の位置情報に対応付けて前記データ記憶部に記憶されている騒音情報に基づいて、前記騒音測定部により測定された騒音量と、その測定時に前記位置取得部により取得された現在位置に対応する過去の騒音量との比率を算出し、前記比率を用いて車内放送の音量を算出する音量算出部とを備えたことを特徴とする放送制御システム。
【請求項2】
請求項に記載の放送制御システムにおいて、
前記騒音測定部を車両毎に備え、
前記音量算出部は、各車両の前記騒音測定部により測定された騒音量に基づいて車両毎に前記比率を算出し、各車両の前記比率を用いて音量の算出を車両毎に行うことを特徴とする放送制御システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の放送制御システムにおいて、
列車の走行速度を取得する速度取得部を備え、
前記音量算出部は、前記速度取得部により取得された走行速度を更に用いて音量の算出を行うことを特徴とする放送制御システム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の放送制御システムにおいて、
前記データ記憶部は、前記騒音情報として、騒音そのものを表す騒音信号を記憶しており、
前記データ記憶部に記憶された騒音信号及び位置情報に基づいて、過去の騒音に対して逆位相の音を発生させる騒音キャンセル部を更に備えたことを特徴とする放送制御システム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の放送制御システムにおいて、
過去の騒音量の変動幅が閾値以上となる変動点がある場合に、前記変動点を示す情報を通知する通知部を更に備えたことを特徴とする放送制御システム。
【請求項6】
列車の車内放送を制御する放送制御方法において、
去の列車走行中に測定した騒音量を示す騒音情報とその測定位置を示す位置情報とを対応付けて記憶するステップと
車の現在位置及び現在の騒音量を取得するステップと
した現在位置に後続する区間内の位置情報に対応付けて記憶した騒音情報に基づいて、取得した現在の騒音量と、その測定時に取得した現在位置に対応する過去の騒音量との比率を算出し、前記比率を用いて車内放送の音量を算出するステップと、を含むことを特徴とする放送制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車の車内放送を制御する放送制御システム及び放送制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、列車内の乗客に対して車内放送により各種の情報を提供することが行われている。列車がトンネルや鉄橋等の特定区間を走行する状況下では、騒音が発生する場合があり、騒音の程度によっては乗客が放送を聞き取りにくくなる。この解決策として、騒音環境下では放送音量を自動的に増加させることが検討されている。
例えば、特許文献1には、列車の走行中に騒音信号を取得し、放送音声信号と騒音信号との信号雑音比を算出し、信号雑音比が放送音声の最低可聴音量の指標である目標値となるように、放送音声信号の増幅率を決定する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−62609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、瞬間的に大きな騒音が発生すると、過大な放送音量となる懸念がある。また、トンネルに入る直前など、騒音環境下となる直前に放送音声信号の増幅率を決定すると、その後の騒音環境下では放送を聞き取りにくいという問題もある。
【0005】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、列車の車内放送を適切な音量で行うことを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、上記の目的を達成するために、放送制御システム及び放送制御方法を以下のように構成した。
(1) 列車の車内放送を制御する放送制御システムにおいて、過去の列車走行中に測定された騒音量を示す騒音情報とその測定位置を示す位置情報とを対応付けて記憶するデータ記憶部と、列車の現在位置を取得する位置取得部と、前記位置取得部により取得された現在位置に後続する区間内の位置情報に対応付けて前記データ記憶部に記憶されている騒音情報に基づいて、車内放送の音量を算出する音量算出部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
(2) 上記(1)に記載の放送制御システムにおいて、騒音量を測定する騒音測定部を備え、前記音量算出部は、前記騒音測定部により測定された騒音量と、その測定時に前記位置取得部により取得された現在位置に対応する過去の騒音量との比率を算出し、前記比率を更に用いて音量の算出を行うことを特徴とする。
【0008】
(3) 上記(2)に記載の放送制御システムにおいて、前記騒音測定部を車両毎に備え、前記音量算出部は、各車両の前記騒音測定部により測定された騒音量に基づいて車両毎に前記比率を算出し、各車両の前記比率を用いて音量の算出を車両毎に行うことを特徴とする。
【0009】
(4) 上記(1)〜(3)のいずれかに記載の放送制御システムにおいて、列車の走行速度を取得する速度取得部を備え、前記音量算出部は、前記速度取得部により取得された走行速度を更に用いて音量の算出を行うことを特徴とする。
【0010】
(5) 上記(1)〜(4)のいずれかに記載の放送制御システムにおいて、前記データ記憶部は、前記騒音情報として、騒音そのものを表す騒音信号を記憶しており、前記データ記憶部に記憶された騒音信号及び位置情報に基づいて、過去の騒音に対して逆位相の音を発生させる騒音キャンセル部を更に備えたことを特徴とする。
【0011】
(6) 上記(1)〜(5)のいずれかに記載の放送制御システムにおいて、過去の騒音量の変動幅が閾値以上となる変動点がある場合に、前記変動点を示す情報を通知する通知部を更に備えたことを特徴とする。
【0012】
(7) 列車の車内放送を制御する放送制御システムにより実施される放送制御方法において、前記放送制御システムは、データ記憶部と、位置取得部と、音量算出部とを備え、前記データ記憶部が、過去の列車走行中に測定された騒音量を示す騒音情報とその測定位置を示す位置情報とを対応付けて記憶しており、前記位置取得部が、列車の現在位置を取得し、前記音量算出部が、前記位置取得部により取得された現在位置に後続する区間内の位置情報に対応付けて前記データ記憶部に記憶されている騒音情報に基づいて、車内放送の音量を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、列車の車内放送の音量を過去の同じ区間を走行中に測定された騒音量に応じて調整するので、適切な音量で車内放送を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る放送制御システムの構成例を示す図である。
図2図1の放送制御システムによる通信シーケンスの例を示す図である。
図3図1の放送制御システムにおける音量算出部の動作フローチャートの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る放送制御システムの構成例を示してある。本例の放送制御システムは、車両管理部1、操作卓2、スピーカ3及びスイッチングハブ4を備えた車内放送システムと、騒音センサ6、データ記憶部7、音量算出部8及びスイッチングハブ9を備えた列車テレメトリシステムとを、中継部5で接続して構成されている。中継部5は、車内放送システムと列車テレメトリシステムとの間の通信を中継するサーバである。図1では、車両管理部1及び操作卓2を1両目の車両に配備し、データ記憶部7及び音量算出部8を3両目の車両に配備してあるが、これらを別の車両に配備しても構わない。また、スピーカ3、騒音センサ6及びスイッチングハブ4,9は、各々の車両に配備される。
【0016】
車両管理部1は、列車の位置情報や走行速度などを含む車両情報を管理しており、中継部5を介して各車両の騒音センサ6に車両情報を送信する。本例では、車両管理部1が、GPS(Global Positioning System)を用いて列車の現在位置を示す位置情報を取得する機能を備えているが、外部のシステム(例えば、列車管理システム)から列車の現在位置を示す位置情報を受信する構成としてもよい。
【0017】
騒音センサ6は、車内の騒音を検出し、その音量である騒音量を示す騒音情報を生成する。騒音情報には、個々の騒音センサ6を識別するセンサ識別子も含まれる。騒音情報は、列車走行中の車内の騒音量を示す情報である。本例では、騒音情報として、騒音そのものを示す騒音信号を用いるが、騒音量を示す数値であってもよく、種々の形式の情報を用いることができる。騒音センサ6は、生成した騒音情報と車両管理部1から受信した車両情報とを対応付けたデータをデータ記憶部7及び音量算出部8に配信する。
【0018】
データ記憶部7は、騒音センサ6から配信されるデータを蓄積する。すなわち、データ記憶部7は、センサ識別子と、騒音情報と、車両情報とを対応付けて記憶する。センサ識別子で識別される騒音センサ6は車両毎に設けられるので、センサ識別子は車両識別子と見做すことができる。このため、データ記憶部7は、各車両を区別して、騒音情報と車両情報を紐付けたデータを蓄積しているとも言える。
【0019】
音量算出部8は、騒音センサ6から配信されるデータとデータ記憶部7に蓄積されているデータとに基づいて、車内放送の音量を算出する。具体的には、騒音センサ6から受信した車両情報中の位置情報に基づいて列車の現在位置を特定し、現在位置に後続する区間(以下、「対象区間」という)を特定し、対象区間内の位置を示す位置情報を含む車両情報に対応付けてデータ記憶部7に記憶されている騒音情報に基づいて、放送音量の算出を行う。音量算出部8は、算出した音量を示す音量情報を、中継部5を介して車両管理部1に送信する。
【0020】
ここで、上記の対象区間は、車内放送の期間中に列車が走行することが想定される区間である。なお、対象区間は、現在位置の直後から開始してもよく、現在位置に対して若干の距離(例えば、5秒の間に列車が走行する距離)を置いて開始してもよい。後者の態様によれば、操作卓2の扱者が車内放送の開始操作を行ってから実際に話し始めるまでのタイムラグを考慮して対象区間を設定することができる。
【0021】
対象区間の長さは、例えば、過去の複数回の車内放送の平均的な時間長と現在の列車の走行速度とに基づいて決定することができる。なお、録音済みの音声を放送する場合には、その放送音声の時間長と現在の列車の走行速度とに基づいて、対象区間を決定すればよい。また、車内放送の時間長と列車の走行速度とによらずに、予め定めた固定長の区間を対象区間としてもよい。
【0022】
対象区間における過去の騒音情報に基づく放送音量の算出は、種々の手法により行うことができる。一例として、対象区間の過去の騒音情報から平均騒音量を算出し、該平均騒音量を所定の演算式に適用して放送音量を算出することができる。別の例として、騒音量と放送音量の対応を設定したテーブルを予め用意しておき、算出した平均騒音量に対応する放送音量を該テーブルから取得するようにしてもよい。
【0023】
対象区間における過去の騒音情報としては、直前の走行時における騒音情報だけを用いてもよいが、直近の複数回(例えば、5回)の走行時における騒音情報を用いることが好ましい。これにより、線路の劣化や季節の変化などの経時的な要因による騒音状態の変動に追従して、車内放送の音量の算出を行える。
【0024】
また、過去の騒音情報から瞬間的な騒音が検出された場合には、瞬間的な騒音を無視して放送音量を算出することが好ましい。これは、瞬間的な騒音が生じても車内放送を聞き取りにくい期間は一瞬であり、瞬間的な騒音を無視することによる影響が少ないためである。逆に瞬間的な騒音を無視せずに放送音量の算出を行うと、適切な音量よりも大きな音量で車内放送が行われる可能性があり、むしろ乗客に不快感を与える可能性すらある。
【0025】
操作卓2は、車内放送を行う際に操作されるボタンやスイッチ、放送音声を入力するためのマイクを備え、運転手や乗務員等の扱者によって使用される。操作卓2のマイクに入力された放送音声は、車両管理部1による制御の下、音量算出部8により算出された音量に調整されて、スピーカ3より拡声出力される。
【0026】
図2には、本例の放送制御システムによる通信シーケンスの例を示してある。
車両管理部1は、所定周期(本例では200ミリ秒周期)で、中継部5に車両情報を通知する。中継部5は、通知された車両情報を騒音センサ6に伝送する。騒音センサ6は、車両情報と騒音情報とを紐付けたデータをデータ記憶部7と音量算出部8に配信する。データ記憶部7は、騒音センサ4から配信されたデータを記録する。音量算出部8は、車両情報の一部である位置情報を元にデータ記憶部7の過去データを参照し、放送音量を算出して中継部5に通知する。中継部5は、通知された放送音量を車両管理部1に送信する。車両管理部1は、受信した放送音量で車内放送が行われるように制御する。
【0027】
図3には、本例の放送制御システムにおける音量算出部8の動作フローチャートの例を示してある。
音量算出部8は、まず、車両情報と騒音情報とが紐付けられたデータを、データ記憶部7から取得する(ステップS101)。なお、データ記憶部7には、過去の列車走行時に収集されたデータが蓄積されている。音量算出部8は、データ記憶部7から過去データを取得した後は、以下のステップS102〜S105の処理を繰り返す。
【0028】
音量算出部8は、騒音センサ4からのデータ配信を待つ(ステップS102)。
音量算出部8は、騒音センサ4からデータ配信を受けると、配信されたデータから位置情報を抽出する(ステップS103)。騒音センサ4から配信されるデータには、現在の車両情報と騒音情報が格納されており、位置情報は、車両情報に含まれている。
音量算出部8は、抽出した位置情報から車両の現在位置を特定し、現在位置に後続する対象区間における過去の騒音情報に基づいて放送音量を算出する(ステップS104)。
音量算出部8は、算出した放送音量を車両管理部1に通知する(ステップS105)。
音量算出部8は、放送音量の通知後はステップS102に戻り、騒音センサ4からのデータ配信を待つ。
【0029】
以上のように、本例の放送制御システムでは、データ記憶部7が、過去の列車走行中に測定された騒音量を示す騒音情報と、その測定位置を示す位置情報を含む車両情報とを対応付けて記憶している。そして、車両管理部1が、列車の現在位置を取得して、その位置情報を含む車両情報を配信し、音量算出部8が、騒音センサ4経由で配信された車両情報に基づいて、車両管理部1により取得された現在位置を特定し、現在位置に後続する区間内の位置情報を含む車両情報に対応付けてデータ記憶部7に記憶されている騒音情報に基づいて、車内放送の音量を算出する構成となっている。
【0030】
したがって、本例の放送制御システムによれば、列車の車内放送の音量を過去の同じ区間を走行中に測定された騒音量に応じて調整することができ、適切な音量で車内放送を行うことが可能となる。これは、列車の走行経路は固定であり、基本的に過去の走行時と同様な騒音が発生すると考えられることに基づいている。また、本例の放送制御システムによれば、放送音量が自動で調整されるので、扱者が手動で音量調整する必要がなく、車内放送の手間を軽減することができる。
【0031】
なお、上記の説明では、騒音センサ4からデータ配信される度に放送音量を算出しているが、これは一例に過ぎない。例えば、操作卓2の扱者が車内放送の開始操作を行ったことに応じて、放送音量を算出するようにしてもよい。
【0032】
また、上記の説明では、車両管理部1からの車両情報を騒音センサ4経由でデータ記憶部7及び音量算出部8に配信しているが、騒音センサ4を経由せずに直接配信してもよい。この場合には、例えば、車両管理部1が車両情報に現在時刻情報を含めて配信すると共に、騒音センサ4が騒音情報に現在時刻情報を含めて配信する構成とすればよい。これにより、データ記憶部7は、現在時刻情報をキーにして車両情報と騒音情報との対応を特定することができ、互いを紐付けて記憶することができる。
また、データ記憶部7には、試験的な走行時に収集した騒音情報を蓄積し、通常運行時には騒音情報を収集しない構成であっても構わない。
【0033】
また、過去の騒音情報だけを用いて放送音量を算出する構成に限定されず、現在の騒音情報を考慮して放送音量を算出するようにしてもよい。具体的には、音量算出部8は、騒音センサ4から受信した騒音情報及び車両情報に基づいて、騒音センサ4により測定された現在の騒音量と、その測定が行われた位置(すなわち、現在位置)を特定する。そして、同じ位置の位置情報を含む車両情報と対応付けてデータ記憶部7に記憶されている騒音情報に基づいて、現在の騒音量と過去の騒音量との比率(以下、「騒音比」という)を算出し、対象区間における過去の騒音量を騒音比に基づいて補正して、放送音量を算出する。あるいは、対象区間における過去の騒音量より算出した放送音量を、騒音比に基づいて補正する。これにより、天候や乗客数の違い等の要因による騒音状態の変化に適応させた音量で、車内放送を行えるようになる。
【0034】
この場合において、音量算出部8は、車両毎に騒音比を算出し、対象区間における過去の騒音量を各騒音比を用いて車両毎に補正し、車内放送の音量を車両毎に算出してもよい。あるいは、対象区間における過去の騒音量より算出した放送音量を、各騒音比を用いて車両毎に補正する。これにより、車両毎の騒音状態の相違を踏まえて、各車両に適した音量で車内放送を行えるようになる。
【0035】
また、騒音は列車の走行速度により変動するので、現在の列車の走行速度を考慮して放送音量を算出するようにしてもよい。具体的には、音量算出部8は、騒音センサ4から受信した車両情報に基づいて、現在の走行速度を特定する。そして、現在の走行速度に対応する補正係数を所定の演算式又はテーブルより求め、対象区間における過去の騒音量を補正係数により補正して、放送音量を算出する。あるいは、対象区間における過去の騒音量より算出した放送音量を、補正係数に基づいて補正する。または、現在の騒音量を用いた補正と同様に、現在の走行速度と過去の走行速度との比率(速度費)を算出し、放送音量の算出に用いるようにしてもよい。これにより、走行速度の違いによる騒音状態の変化に適応させた音量で、車内放送を行えるようになる。
【0036】
また、上記のような放送音量の調整だけでなく、騒音に対して逆位相の音を発生させて、車内の騒音が低減するようにしてもよい。具体的には、データ記憶部7に記憶されている騒音情報及び車両情報(特に、騒音信号及び位置情報)に基づいて、列車が走行中の位置で過去に検出された騒音を取得し、過去の騒音に対して逆位相の音を発生させてスピーカ3から出力させる騒音キャンセル部を更に備える。また、騒音キャンセル部は、車内放送中は、過去の騒音に対して逆位相の音を車内放送に重畳させてスピーカ3から出力させる。これにより、車内の騒音を低減させることができ、車内放送を聞き取り易くすることができる。
【0037】
また、車内放送を扱者が適切なタイミングで行えるようにする仕組みを設けてもよい。具体的には、過去の騒音量の変動幅が閾値以上となる変動点がある場合に、変動点を示す情報を通知する通知部を更に備える。一例として、通知部は、操作卓2に設けたディスプレイに、変動点を示す情報を表示させることで、変動点を操作卓2の扱者に通知する。別の例として、通知部は、変動点を示す情報を車両管理部1又は操作卓2に通知し、車両管理部1又は操作卓2は、変動点が所定時間内に訪れる場合にはその経過を待って、車内放送が開始されるように制御してもよい。これにより、例えば5秒後にトンネルに入る場合のように、騒音量の大幅な変動が間もなく到来することが予見される場合には、変動点の通過を待って車内放送が開始されるように調整することができる。したがって、車内放送中に騒音量が大幅に変動して車内放送が聞き取りにくくなることを防止できる。
【0038】
ここで、本発明に係るシステムや装置などの構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。例えば、上述した種々の拡張例や変形例を組み合わせてもよい。
また、本発明は、本発明に係る処理を実行する方法や方式、このような方法や方式を実現するためのプログラムや当該プログラムを記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、列車の車内放送を制御する放送制御システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1:車両管理部、 2:操作卓、 3:スピーカ、 4:スイッチングハブ、 5:中継部、 6:騒音センサ、 7:データ記憶部、 8:音量算出部、 9:スイッチングハブ
図1
図2
図3