特許第6844051号(P6844051)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6844051
(24)【登録日】2021年2月26日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】抗ウィルス性基体
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/20 20060101AFI20210308BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20210308BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20210308BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   A01N59/20 Z
   A01N25/10
   A01P1/00
   B32B27/18 F
【請求項の数】13
【全頁数】55
(21)【出願番号】特願2020-77708(P2020-77708)
(22)【出願日】2020年4月24日
(62)【分割の表示】特願2019-135462(P2019-135462)の分割
【原出願日】2018年10月12日
(65)【公開番号】特開2020-142522(P2020-142522A)
(43)【公開日】2020年9月10日
【審査請求日】2020年5月18日
(31)【優先権主張番号】特願2017-198616(P2017-198616)
(32)【優先日】2017年10月12日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2018-61612(P2018-61612)
(32)【優先日】2018年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2018-165952(P2018-165952)
(32)【優先日】2018年9月5日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀野 克年
(72)【発明者】
【氏名】高田 孝三
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和紘
(72)【発明者】
【氏名】大塚 康平
(72)【発明者】
【氏名】塚田 輝代隆
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/170593(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/141600(WO,A1)
【文献】 特表2011−530400(JP,A)
【文献】 特開2017−88586(JP,A)
【文献】 特開昭63−104218(JP,A)
【文献】 特開2002−352410(JP,A)
【文献】 特開2007−161755(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/080606(WO,A1)
【文献】 特開平8−252302(JP,A)
【文献】 特開平8−299418(JP,A)
【文献】 特開平8−324195(JP,A)
【文献】 特開2006−51658(JP,A)
【文献】 特表2015−525840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 1/00−56/48
A01P 1/00−23/00
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面に、銅化合物及び光重合開始剤を含むバインダの硬化物が固着し、前記銅化合物の少なくとも一部は、前記バインダの硬化物の表面から露出しており、前記バインダの硬化物の架橋密度は、5%以上であり、
前記硬化物は、脂肪酸で被覆された一価の銅化合物粒子を含まず、かつ、光触媒を含まないことを特徴とする抗ウィルス性基体。
【請求項2】
前記銅化合物の少なくとも一部は、前記バインダの硬化物の表面から、微生物と接触可能な状態で露出している請求項1に記載の抗ウィルス性基体。
【請求項3】
前記バインダの硬化物は、水に不溶性の光重合開始剤を含む請求項1または2に記載の抗ウィルス性基体。
【請求項4】
前記光重合開始剤は、アルキルフェノン系の重合開始剤及びベンゾフェノン系の重合開始剤を含み、前記アルキルフェノン系の重合開始剤とベンゾフェノン系の重合開始剤との比率は、重量比でアルキルフェノン系の重合開始剤/ベンゾフェノン系の重合開始剤=1/1〜4/1である請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗ウィルス性基体。
【請求項5】
前記光重合開始剤は、アルキルフェノン系の重合開始剤及びベンゾフェノン系の重合開始剤を含み、前記アルキルフェノン系の重合開始剤の濃度がバインダに対して、0.5〜3.0wt%、前記ベンゾフェノン系の重合開始剤の濃度がバインダに対して0.5〜2.0wt%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗ウィルス性基体。
【請求項6】
前記バインダは、有機バインダ及び無機バインダからなる群から選択される少なくとも1種以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗ウィルス性基体。
【請求項7】
前記有機バインダは、電磁波硬化型樹脂及び熱硬化型樹脂からなる群から選択される少なくとも1種以上である請求項6に記載の抗ウィルス性基体。
【請求項8】
前記バインダは、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、シリカゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、金属アルコキシド、及び、水ガラスからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜7のいずれか1項に記載の抗ウィルス性基体。
【請求項9】
前記銅化合物は、X線光電子分光分析法により、925〜955eVの範囲にあるCu(I)とCu(II)に相当する結合エネルギーを5分間測定することで算出される、前記銅化合物中に含まれるCu(I)とCu(II)とのイオンの個数の比率(Cu(I)/Cu(II))が0.4〜50である請求項1〜8のいずれか1項に記載の抗ウィルス性基体。
【請求項10】
前記バインダの硬化物は、基材表面に島状に固着形成されてなるか、基材表面にバインダの硬化物が固着形成された領域とバインダの硬化物が固着形成されていない領域が混在してなる請求項1〜9のいずれか1項に記載の抗ウィルス性基体。
【請求項11】
前記バインダの硬化物は、基材表面に膜状に固着形成されてなる請求項1〜10のいずれか1項に記載の抗ウィルス性基体。
【請求項12】
前記バインダの硬化物の基材表面に平行な方向の最大幅は、0.1〜500μmであり、その厚さの平均値は、0.1〜20μmである請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗ウィルス性基体。
【請求項13】
前記抗ウィルス性基体は、拭き取りの力が加わる用途に使用される請求項1〜12のいずれか1項に記載の抗ウィルス性基体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗微生物基体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、病原体である種々の微生物を媒介とした感染症が短時間で急激に広がる、いわゆる「パンデミック」が問題になっており、SARS(重症急性呼吸器症候群)や、ノロウィルス、鳥インフルエンザ等のウィルス感染による死者も報告されている。
【0003】
そこで、様々のウィルスに対して抗ウィルス効果を発揮する抗ウィルス剤の開発が活発に行われており、実際に様々な部材に抗ウィルス効果のあるPd等の金属や有機化合物からなる抗ウィルス剤を含む樹脂等を塗布したり、抗ウィルス剤が担持された材料を含む部材を製造することが行われている。
【0004】
特許文献1には、無機系抗菌剤及び金属酸化物を含有する硬化性樹脂からなる層を表面に有する成形体であって、前記無機系抗菌剤が脂肪酸修飾金属超微粒子であることを特徴とする成形体が開示されている。
【0005】
特許文献2には、亜酸化銅と還元性を有する糖からなる抗ウィルスコート剤が開示されている。
また、特許文献3には、銅のアミノ酸塩、すなわち銅のアミノ酸錯塩を含むコーティング剤を塗布した抗菌性建築資材が開示されている。さらに、特許文献4には、亜酸化銅とリン酸エステル型アニオン界面活性剤を含むバインダー樹脂からなるコーティング剤が開示されている。また、特許文献5には、一価の酢酸銅の粒子を用いた抗ウィルス性塗料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−105252号公報
【特許文献2】特許第5812488号公報
【特許文献3】特開平11−236734号公報
【特許文献4】国際公開第2014/132606号
【特許文献5】特許第5723097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された成形体では、硬化性樹脂からなる層は、成形体表面に形成された連続した層であるため、保護フィルムやディスプレイ用のフィルム等、充分な透明性が要求される層として使用することは難しかった。
また、銀や銅などの金属粒子では、抗菌性能は得られても、金属粒子には酸化力もしくは還元力がないため、酸化、還元反応を必要とする抗ウィルス性能が得られないという問題があった。
【0008】
特許文献2に記載された抗菌材料では、亜酸化銅と還元性を有する糖からなる抗ウィルスコート剤が開示されているが、電磁波硬化型樹脂については開示されておらず、塗工性に劣る。また、コート剤中の糖が水に溶出しやすく、樹脂硬化物の劣化を招き、亜酸化銅が脱離してしまうため耐水性に乏しい。
【0009】
特許文献4に記載されたコーティング剤も、塗工性に劣り、コーティング剤組成物として、アクリル樹脂等が開示されているものの、実施例では、熱硬化性のアクリル樹脂を使用しており、また、水溶性のリン酸エステル系界面活性剤を含むため、特許文献2と同様に亜酸化銅の脱離を招き易く耐水性に乏しい。
【0010】
さらに、特許文献3の建築資材は、銅のアミノ酸錯塩を使用しており、一般的に銅のアミノ酸錯塩を安定して形成することができる銅イオンの価数は二価であるため、抗菌性は発現可能であるとしても充分ではなく、抗ウィルス性能としても不充分であった。
【0011】
また、特許文献5の抗ウィルス性塗料は、原料として一価の塩化銅を使用しているため、分散媒に溶解せず懸濁して、未硬化の状態から硬化後まで塗料中に粒子状物質として存在する。このため、銅イオンの分散性が不充分でウィルス等との接触機会が低くなり、抗ウィルス性能として満足できるものではなかった。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、抗微生物性に優れるとともに、透明性等に優れ、基材の透明性や基材表面の色彩等の特性をそのまま維持することが可能な抗微生物基体、該抗微生物基体を製造するために最適な抗微生物組成物及び容易に上記抗微生物基体を製造可能な、塗工性能に優れた該抗微生物基体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、また、抗ウィルス性に優れるとともに、透明性等に優れ、基材の透明性や基材表面の色彩等の特性をそのまま維持することが可能な抗ウィルス性基体、該抗ウィルス性基体を製造するために最適な抗ウィルス性組成物及び容易に上記抗ウィルス性基体を製造可能な、塗工性能に優れた該抗ウィルス性基体の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、好ましくは、抗カビ性に優れるとともに、透明性等に優れ、基材の透明性や基材表面の色彩等の特性をそのまま維持することが可能な抗カビ性基体、該抗カビ性基体を製造するために最適な抗カビ性組成物及び容易に上記抗カビ性基体を製造可能な、塗工性能に優れた該抗カビ性基体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の本発明の抗ウィルス性基体は、基材表面に、銅化合物を含む電磁波硬化型樹脂の硬化物が島状に散在し、上記銅化合物の少なくとも一部は、上記電磁波硬化型樹脂の硬化物の表面から露出していることを特徴とする。
【0014】
以下、種々の技術的事項を説明するが、単に「本発明の銅化合物」、「本明細書において」等、本発明、本明細書という言葉を付して説明する場合には、第1の本発明のほか、下記する第2の本発明、のすべてを含む技術的事項について説明しているものとする。
【0015】
第1の本発明の抗ウィルス性基体では、基材表面に、銅化合物を含む電磁波硬化型樹脂の硬化物(以下、樹脂硬化物という場合がある)が島状に散在し、上記銅化合物の少なくとも一部は、上記電磁波硬化型樹脂の硬化物の表面から露出しているため、銅化合物がウィルスと接触しやすく、銅化合物に基づく抗ウィルス性を有する基体としての効果を充分に発揮することができる。
本明細書において、「銅化合物の少なくとも一部が電磁波硬化型樹脂の硬化物の表面から露出している」、「銅化合物の少なくとも一部は、上記バインダの硬化物(以下、バインダ硬化物という場合がある)の表面から露出している」とは、銅化合物一部が樹脂硬化物やバインダ硬化物に被覆されておらず、樹脂硬化物やバインダ硬化物の周囲に存在する空気等の雰囲気媒体と接触可能な状態にあることをいい、樹脂硬化物やバインダ硬化物に形成されている開気孔の内部に銅化合物が周囲の空気等の雰囲気媒体と接触可能な状態で存在している場合も、露出していることとなる。なお、閉気孔の内壁面から銅化合物の少なくとも一部が露出していても、電磁波硬化型樹脂の硬化物やバインダ硬化物の周囲の空気等の雰囲気媒体から孤立しているため、「露出」の概念に含まないこととする。
【0016】
また、第1の本発明の抗ウィルス性基体では、上記銅化合物の少なくとも一部は、上記電磁波硬化型樹脂の硬化物の表面から、ウィルスと接触可能な状態で露出していることが望ましい。ウィルスと接触可能な状態で露出しているので、ウィルスを失活させることができるからである。
【0017】
また、第1の本発明の抗ウィルス性基体では、上記電磁波硬化型樹脂の硬化物が島状に散在しているため、基材表面に、上記樹脂硬化物が存在せず、基材表面が露出している部分が存在し、上記樹脂硬化物の厚さも薄くなり、可視光線の基材表面に対する透過率が低下するなど不都合を防止することができる。そのため、基材が透明な材料である場合には、基材の透明性が低下することはなく、基材表面に所定パターンの意匠等が形成されている場合には、意匠等の外観を損ねることもない。
【0018】
さらに、第1の本発明の抗ウィルス性基体では、上記樹脂硬化物が島状に散在しているため、上記樹脂硬化物の基材表面との接触面積を小さくすることができ、樹脂硬化物の残留応力や冷熱サイクル時に発生する応力を抑制することが可能となり、基材と高い密着性を有する上記樹脂硬化物を形成することができる。
また、樹脂硬化物が島状に散在しているため、バインダ硬化物の表面積が大きくなり、また、ウィルスを樹脂硬化物間にトラップさせやすくなるため、抗ウィルス性能を持つ樹脂硬化物とウィルスとの接触確率が高くなり、高い抗ウィルス性能を発現できる。
【0019】
本明細書において、島状とは、基材表面の樹脂硬化物が他の樹脂硬化物と接触しない孤立した状態で存在していることをいう。島状に散在している樹脂硬化物の形状は特に限定されず、その輪郭を平面視した際、円形、楕円形等の曲線から構成される形状であってもよく、多角形等の形状であってもよく、円形、楕円形等が細い部分を介して繋がり合ったような形状であってもよい。
【0020】
第1の本発明の抗ウィルス性基体では、上記電磁波硬化型樹脂の硬化物は、多孔質体からなることが望ましい。
上記銅化合物が空気などの雰囲気媒体と接触しやすくなり、銅イオン(I)が空気中の水や酸素を還元して、活性酸素、過酸化水素水やスーパーオキサイドアニオン、ヒドロキシラジカルなどを発生させて、ウィルスを構成する蛋白質を破壊してウィルスを失活させやすくなるからである。
【0021】
第1の本発明の抗ウィルス性基体では、上記電磁波硬化型樹脂の硬化物は、重合開始剤を含んでいてもよく、特に光重合開始剤を含んでいてもよい。
【0022】
上記重合開始剤は、ラジカルやイオンを発生させ、その際に銅化合物を還元させることができるため、銅の抗ウィルス活性を高くすることができる。一般に銅(I)の方が銅(II)よりも抗ウィルス活性が高く、銅が還元されることで抗ウィルス活性が改善される。
このような重合開始剤が銅に対する還元力を持つことは、本発明者らは初めて知見したものであり、銅化合物を重合開始剤が還元することで銅(I)の存在割合を増やすことができるのである。
【0023】
第1の本発明の抗ウィルス性基体では、上記電磁波硬化型樹脂の硬化物は、水に不溶性の重合開始剤を含むことが望ましい。水に触れても溶出しないため、樹脂硬化物を劣化させることがなく、銅化合物の脱離を招かないからである。
銅化合物が水溶性であっても樹脂硬化物で保持されていれば、脱離を抑制できるが、樹脂硬化物中に水溶性物質が含まれていると、樹脂硬化物の銅化合物に対する保持力が低下して、銅化合物の脱離が生じると推定される。
また、上記水に不溶性の重合開始剤は、光重合開始剤であることが好ましい。可視光線、紫外線等の光により、容易に重合反応を進行させることができるからである。
【0024】
第1の本発明の抗ウィルス性基体では、還元力のある光重合開始剤を用いることが望ましい。第1の本発明の抗ウィルス性基体に含まれる上記銅化合物を、抗ウィルス効果を持つ銅イオン(I)に還元するとともに、銅イオン(I)が酸化して抗ウィルス性の劣る銅イオン(II)に変わることを抑制できるからである。
【0025】
第1の本発明の抗ウィルス性基体では、具体的には、上記重合開始剤は、アルキルフェノン系の重合開始剤、ベンゾフェノン又はその誘導体から選ばれる少なくとも1種以上であるであることが望ましく、特に、上記重合開始剤は、ベンゾフェノン又はその誘導体を含むことが望ましい。
【0026】
第1の本発明の抗ウィルス性基体では、上記電磁波硬化型樹脂は、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、及び、アルキッド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
【0027】
第1の本発明の抗ウィルス性基体において、上記電磁波硬化型樹脂は、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、及び、アルキッド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であると、樹脂硬化物は、透明性を有するとともに、基材に対する密着性にも優れる。
【0028】
第1の本発明の抗ウィルス性基体では、X線光電子分光分析法により、925〜955eVの範囲にあるCu(I)とCu(II)に相当する結合エネルギーを5分間測定することで算出される、上記銅化合物中に含まれるCu(I)とCu(II)とのイオンの個数の比率(Cu(I)/Cu(II))は、0.4〜50であることが望ましい。特に銅化合物中に含まれるCu(I)とCu(II)とのイオンの個数の比率(Cu(I)/Cu(II))は、0.5〜50であることが望ましい。
【0029】
また、Cu(I)の銅は、Cu(II)の銅と比較して抗ウィルス性により優れているため、第1の本発明の抗ウィルス性基体において、X線光電子分光分析法により、925〜955eVの範囲にあるCu(I)とCu(II)に相当する結合エネルギーを5分間測定することで算出される、上記銅化合物中に含まれるCu(I)とCu(II)とのイオンの個数の比率(Cu(I)/Cu(II))が1.0〜4.0がより望ましく、特に1.4〜2.9がより望ましく、さらに1.4〜1.9が最適であり、より抗ウィルス性に優れた抗ウィルス性基体となる。
【0030】
また、上記電磁波硬化型樹脂の硬化物が、島状に分散固定されている場合や、基材表面に電磁波硬化型樹脂の硬化物が固着形成された領域と電磁波硬化型樹脂の硬化物が固着形成されていない領域が混在している状態の場合は、銅化合物中のCu(I)/Cu(II)が0.4/1〜4.0/1に調整されていると、抗ウィルス性を高くできるため、望ましい。
第1の本発明の抗ウィルス基体における銅化合物中のCu(I)/Cu(II)の比率は、電磁波硬化型樹脂、重合開始剤、銅化合物の選択、これらの濃度調整、及び、紫外線などの電磁波の照射時間や強度で調整することができる。
【0031】
なお、Cu(I)とは、銅のイオン価数が1であることを意味し、Cuと表す場合もある。一方、Cu(II)とは、銅のイオン価数が2であることを意味し、Cu2+と表す場合もある。なお、一般的に、Cu(I)の結合エネルギーは、932.5eV±0.3(932.2〜932.8eV)、Cu(II)の結合エネルギーは、933.8eV±0.3(933.5〜934.1eV)である。
【0032】
第1の本発明の抗ウィルス性基体では、上記銅化合物を含む電磁波硬化型樹脂のエネルギー分散型X線分析装置で求めた表面組成比は、樹脂成分の主構成元素である炭素元素と銅元素の特性X線のピーク強度に基づいて算出され、その重量比はCu:C=1.0:28.0〜200.0であることが望ましい。
上記銅化合物を含む電磁波硬化型樹脂のエネルギー分散型X線分析装置で求めた表面組成比が上記範囲であると、Cuが樹脂硬化物より脱落しにくく、高い抗ウィルス性を維持することができる。
【0033】
第1の本発明の抗ウィルス性基体では、上記電磁波硬化型樹脂の硬化物の基材表面に平行な方向の最大幅は、0.1〜200μmであり、その厚さの平均値は、0.1〜20μmであることが望ましい。
第1の本発明の抗ウィルス性基体において、樹脂硬化物の厚さの平均値が0.1〜20μmであると、樹脂硬化物の厚さが薄いので、樹脂硬化物の連続層を形成しにくく、樹脂硬化物が島状に散在し易くなり、光透過率が高くなり易く、また、抗ウィルス性の効果が発生し易い。
さらに、上記樹脂硬化物の上記基材の表面に平行な方向の最大幅を0.1〜200μmとすることにより、基材の表面が樹脂硬化物により被覆されていない部分の割合が多くなり、光透過率の低下を抑制することができる。
上記電磁波硬化型樹脂の硬化物の基材表面に平行な方向の最大幅は、1〜100μmであり、その厚さの平均値は、1〜20μmであることがより望ましい。
【0034】
一般に化合物は、共有結合性の化合物、イオン性化合物を指し、錯体は化合物には含まれない。従って、銅錯体(銅錯塩)は本発明でいう銅化合物には含まれず、錯塩である銅のアミノ酸塩も本発明の銅化合物には含まれない。本発明の銅化合物は、銅を含む共有結合性の化合物、銅を含むイオン性化合物を言う。あえて換言すれば、第1の本発明の抗ウィルス性基体、抗ウィルス性組成物および抗ウィルス性基体の製造方法における銅化合物は、銅化合物(銅錯体を除く)である。
【0035】
第1の本発明の抗ウィルス性基体において、上記銅化合物は、イオン性化合物としては、銅の硫酸塩、銅のカルボン酸塩、銅の硝酸塩、銅の塩化物、銅のリン酸塩、銅のアルコキシドから選ばれる少なくとも1種以上が望ましい。また、銅の共有結合性化合物としては、例えば、銅の酸化物、銅の水酸化物などが挙げられる。
【0036】
第1の本発明の抗ウィルス基材では、上記銅化合物は、銅のカルボン酸塩、銅の水酸化物、銅の酸化物、又は、銅の水溶性無機塩であることが望ましい。
また、上記銅化合物としては、銅のカルボン酸塩がより望ましい。カルボン酸はCOOH基を持ち、樹脂との親和性に優れ、樹脂硬化物により保持されやすく、他の銅の無機塩に比べて、水で溶出しにくいため、耐水性に優れるからである。また、銅の水酸化物もOH基を持ち、樹脂中の官能基と水素結合を形成するので、樹脂硬化物に保持されやすいため、水で溶出されにくく、耐水性に優れる。
なお、電磁波硬化型樹脂は、硬化後は水に不溶であり、樹脂硬化物は耐水性を有する。
【0037】
第1の本発明の抗ウィルス性組成物は、銅化合物と未硬化の電磁波硬化型樹脂と分散媒と重合開始剤とを含むことを特徴とする。
なお、本明細書において、未硬化の電磁波硬化型樹脂とは、樹脂硬化物の原料であるモノマーやオリゴマーをいう。
【0038】
第1の本発明の抗ウィルス性組成物が銅化合物と未硬化の電磁波硬化型樹脂と分散媒と重合開始剤とを含んでいると、上記抗ウィルス性組成物を基材表面に散布することにより、任意の形状、例えば島状や、基材表面の一部を露出させるように組成物を付着形成することができ、上記した組成物に紫外線等の電磁波を照射することにより未硬化の電磁波硬化型樹脂であるモノマーやオリゴマーの重合反応や架橋反応等が容易に進行し、基材に対する透明性、基材表面の意匠の視認性及び基材との密着性に優れた島状又は基材表面の一部を露出させるように付着形成された樹脂硬化物を形成することができる。
【0039】
本明細書において、散布とは、銅化合物と未硬化の電磁波硬化型樹脂と分散媒と重合開始剤とを含む抗ウィルス性組成物を、複数の部分に分割された状態で基材表面に付着させることをいう。この場合、なるべく多数の部分に分割された状態で基材表面に付着させることが望ましい。
第1の本発明の抗ウィルス性組成物では、上記重合開始剤は、光重合開始剤であることが望ましい。
光を照射するという比較的簡単な方法により、未硬化の電磁波硬化型樹脂を重合させることができるからである。また、光重合開始剤には、銅イオンに対する還元力を持っており、抗ウィルス活性力が高い銅(I)の量を増やすことができる。
【0040】
一般に化合物は、共有結合性の化合物、イオン性化合物を指し、錯体は化合物には含まれない。従って、銅錯体(銅錯塩)は本発明でいう銅化合物には含まれず、銅のアミノ酸塩も本発明の銅化合物には含まれない。本発明の銅化合物は、銅を含む共有結合性の化合物、銅を含むイオン性化合物を言う。あえて換言すれば、第1の本発明における銅化合物は、銅化合物(銅錯体を除く)である。
【0041】
第1の本発明の抗ウィルス性組成物において、上記銅化合物は、イオン性化合物としては、銅の硫酸塩、銅のカルボン酸塩、銅の硝酸塩、銅の塩化物、銅のリン酸塩、銅のアルコキシドから選ばれる少なくとも1種以上が望ましい。また、銅の共有結合性化合物としては、例えば、銅の酸化物、銅の水酸化物などが挙げられる。
第1の本発明の抗ウィルス性組成物において、上記銅化合物は二価の銅化合物(銅化合物(II))であることが望ましい。一価の銅化合物(銅化合物(I))は、分散媒である水に不溶であり、粒子状となってしまい、分散性に劣るからである。また、二価の銅化合物を抗ウィルス性組成物中に加え、この二価の銅化合物を還元することで、一価と二価の銅化合物が共存した状態を簡単に形成できるという利点も有する。水溶性の二価の銅化合物が最適である。
【0042】
第1の本発明の抗ウィルス性組成物では、上記銅化合物は、銅のカルボン酸塩、銅の水酸化物、銅の酸化物、又は、銅の水溶性無機塩であることが望ましい。
【0043】
第1の本発明の抗ウィルス性組成物において、上記銅化合物が銅のカルボン酸塩、又は、銅の水溶性無機塩であると、基材表面に樹脂硬化物を形成した際、樹脂硬化物の表面よりウィルスと接触可能な状態で露出した銅化合物が優れた抗ウィルス性を発揮することができる。
上記銅化合物としては、銅のカルボン酸塩がより望ましい。カルボン酸はCOOH基を持ち、樹脂との親和性に優れ、樹脂硬化物により保持されやすく、他の銅の無機塩に比べて、水で溶出しにくいため、耐水性に優れるからである。また、銅の水酸化物もOH基を持ち、樹脂中の官能基と水素結合を形成するので、樹脂硬化物に保持されやすいため、水で溶出されにくく、耐水性に優れる。
なお、電磁波硬化型樹脂は、硬化後は水に不溶であり、樹脂硬化物は耐水性を有する。
【0044】
第1の本発明の抗ウィルス性組成物では、上記電磁波硬化型樹脂は、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、及び、アルキッド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
なお、本発明の抗ウィルス性組成物における上記電磁波硬化型樹脂とは、電磁波の照射により、原料であるモノマーやオリゴマーの重合反応や架橋反応等が進行して製造される樹脂を意味している。
【0045】
第1の本発明の抗ウィルス性組成物において、上記電磁波硬化型樹脂が、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、及び、アルキッド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であると、上記樹脂硬化物は、透明性を有するとともに、基材に対する密着性にも優れる。
【0046】
第1の本発明の抗ウィルス性組成物では、上記分散媒は、アルコール又は水であることが望ましい。
第1の本発明の抗ウィルス性組成物において、上記分散媒がアルコール又は水であると、上記分散媒中に銅化合物が良好に分散し、その結果、銅化合物が良好に分散した樹脂硬化物を形成することができる。
【0047】
第1の本発明の抗ウィルス性組成物では、水に不溶性の重合開始剤を含むことが望ましい。水に触れても溶出しないため、樹脂硬化物を劣化させることがなく、銅化合物の脱離を招かないからである。
銅化合物が水溶性であっても樹脂硬化物で保持されていれば、脱離を抑制できるが、樹脂硬化物中に水溶性物質が含まれていると、樹脂硬化物の銅化合物に対する保持力が低下して、銅化合物の脱離が生じると推定される。
また、上記水に不溶性の重合開始剤は、光重合開始剤であることが好ましい。可視光線、紫外線等の光により、容易に重合反応を進行させることができるからである。
【0048】
第1の本発明の抗ウィルス性組成物では、還元力のある光重合開始剤を用いることが望ましい。第1の本発明の抗ウィルス性組成物に含まれる上記銅化合物を抗ウィルス効果を持つ銅イオン(I)に還元するとともに、銅イオン(I)が酸化して抗ウィルス性の劣る銅イオン(II)に変わることを抑制できるからである。
【0049】
第1の本発明の抗ウィルス性組成物では上記重合開始剤は、アルキルフェノン系、ベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、分子内水素引き抜き型、及び、オキシムエステル系からなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
【0050】
第1の本発明の抗ウィルス性組成物において、上記重合開始剤が、アルキルフェノン系、ベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、分子内水素引き抜き型、及び、オキシムエステル系からなる群から選択される少なくとも1種であると、基材表面に組成物を形成した後、該組成物を乾燥し、紫外線等の電磁波を照射することにより重合反応が容易に進行し、電磁波硬化型樹脂を容易に硬化させることができ、樹脂硬化物を形成することができる。
前記重合開始剤は、アルキルフェノン系の重合開始剤、ベンゾフェノン又はその誘導体から選ばれる少なくとも1種以上であるが特に好ましい。
【0051】
第1の本発明の抗ウィルス性組成物では、具体的には、上記重合開始剤は、アルキルフェノン系の重合開始剤、ベンゾフェノン又はその誘導体から選ばれる少なくとも1種以上であるであることが望ましく、特に、上記重合開始剤は、ベンゾフェノン又はその誘導体であることが望ましい。
これらの重合開始剤は、特に、銅に対する還元力が高く、銅イオン(I)の状態を長期間維持できる効果に優れるからである。
【0052】
第1の本発明の抗ウィルス性組成物では、上記重合開始剤は、アルキルフェノン系の重合開始剤およびベンゾフェノン系の重合開始剤を含み、上記アルキルフェノン系の重合開始剤の濃度が電磁波硬化型樹脂に対して、0.5〜3.0wt%、上記ベンゾフェノン系の重合開始剤の濃度が電磁波硬化型樹脂に対して0.5〜2.0wt%であることが望ましい。
電磁波の照射時間が短くても高い架橋密度を実現できるからである。前記アルキルフェノン系の重合開始剤とベンゾフェノン系の重合開始剤の比率は、重量比でアルキルフェノン系の重合開始剤/ベンゾフェノン系の重合開始剤=1/1〜4/1であることが望ましい。高い架橋密度を実現でき、硬化物の硬度を高くして耐摩耗性を改善できるとともに、銅に対する還元力を高くすることができるからである。架橋密度は85%以上、特に95%以上が望ましい。
【0053】
第1の本発明の抗ウィルス性基体の製造方法は、基材の表面に、銅化合物と未硬化の電磁波硬化型樹脂と分散媒と重合開始剤とを含む抗ウィルス性組成物を散布する散布工程と、上記散布工程により散布された上記抗ウィルス性組成物中の上記未硬化の電磁波硬化型樹脂に電磁波を照射して上記電磁波硬化型樹脂を硬化させる硬化工程とを含むことを特徴とする。
【0054】
また、第1の本発明の抗ウィルス性基体の製造方法は、基材の表面に、銅化合物と未硬化の電磁波硬化型樹脂と分散媒と重合開始剤とを含む抗ウィルス性組成物を散布する散布工程と、上記散布工程により散布された上記抗ウィルス性組成物を乾燥させて上記分散媒を除去する乾燥工程と、上記乾燥工程で分散媒を除去した上記抗ウィルス性組成物中の上記未硬化の電磁波硬化型樹脂に電磁波を照射して上記電磁波硬化型樹脂を硬化させる硬化工程とを含むことを特徴とする。
【0055】
第1の本発明の抗ウィルス性基体の製造方法においては、基材の表面に、銅化合物と未硬化の電磁波硬化型樹脂と分散媒と重合開始剤とを含む抗ウィルス性組成物を散布することにより、基材の表面に抗ウィルス性組成物を付着させることができ、乾燥と同時に、又は、乾燥工程の後、該組成物に電磁波を照射することにより未硬化の電磁波硬化型樹脂であるモノマーやオリゴマーの重合反応や架橋反応等が容易に進行し、比較的容易に島状に散在、もしくは基材表面の一部を露出させた状態で、銅化合物を含む樹脂硬化物を形成することができ、また、樹脂が硬化収縮するため、上記銅化合物の一部を樹脂硬化物の表面からウィルスと接触可能な状態で露出させてウィルスと接触させることにより、銅化合物による抗ウィルス性に優れた抗ウィルス性基体を製造することができる。
乾燥は、赤外線ランプやヒータなどで行うことができ、また、電磁波を照射して乾燥と硬化を同時行ってもよい。
【0056】
第1の本発明の抗ウィルス性基体の製造方法において、未硬化の電磁波硬化型樹脂に照射する電磁波としては、特に限定されず、例えば、紫外線(UV)、赤外線、可視光線、マイクロ波、電子線(ElectronBeam:EB)等が挙げられる。
【0057】
得られた樹脂硬化物は、基材表面に島状に散在しているか、樹脂硬化物が存在している部分と存在していない部分が混在した状態となっているため、基材表面が露出している部分が存在し、上記樹脂硬化物の厚さも薄くなり、可視光線の透過率が低下するなど不都合を防止することができる。
【0058】
さらに、上記樹脂硬化物を島状に散在させているか、樹脂硬化物が存在している部分と存在していない部分が混在した状態となっているため、基材を被覆する樹脂硬化物の面積を小さくすることができ、残留応力、冷熱サイクル時に発生する応力を抑制することが可能であり、基材と高い密着性を有する上記樹脂硬化物を形成することができる。
【0059】
第1の本発明の抗ウィルス性基体の製造方法では、上記銅化合物は、銅のカルボン酸塩、銅の水酸化物、銅の酸化物、又は、銅の水溶性無機塩であることが望ましく、銅のカルボン酸塩であることがより望ましい。
第1の本発明の抗ウィルス性基体の製造方法において、上記銅化合物は、銅のカルボン酸塩、又は、銅の水溶性無機塩であると、基材表面に樹脂硬化物を形成した際、樹脂硬化物よりウィルスと接触可能な状態で露出した銅化合物が優れた抗ウィルス性を発揮することができる。
第1の本発明の抗ウィルス性基体の製造方法において、上記銅化合物は、二価の銅化合物(銅化合物(II))であることが望ましい。一価の銅化合物(銅化合物(I))は、分散媒である水に溶解しないため、粒子状に局在化して、樹脂硬化物中に均一分散しないからである。また、二価の銅化合物を抗ウィルス性組成物中に加え、この二価の銅化合物を還元することで、一価と二価の銅化合物が紫外線硬化型樹の脂硬化物中に共存した状態を簡単に形成できるという利点も有する。水溶性の二価の銅化合物を用いることが最適である。
【0060】
第1の本発明の抗ウィルス性基体の製造方法では、上記電磁波硬化型樹脂は、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、及び、アルキッド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
なお、第1の本発明の抗ウィルス性基体の製造方法における上記電磁波硬化型樹脂とは、電磁波の照射により、原料であるモノマーやオリゴマーの重合反応や架橋反応等が進行して製造される樹脂を意味している。
【0061】
上記第1の本発明の抗ウィルス性基体の製造方法において、上記電磁波硬化型樹脂が、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、及び、アルキッド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であると、上記樹脂硬化物は、透明性を有するとともに、基材に対する密着性にも優れる。
【0062】
第1の本発明の抗ウィルス性基体の製造方法では、上記分散媒は、アルコール又は水であることが望ましい。
【0063】
第1の本発明の抗ウィルス性基体の製造方法において、上記分散媒がアルコール又は水であると、上記分散媒中に銅化合物や未硬化の電磁波硬化型樹脂が良好に分散し易く、銅化合物が良好に分散した樹脂硬化物を形成することができる。
【0064】
第1の本発明の抗ウィルス性基体の製造方法では、水に不溶性の光重合開始剤を含むことが望ましい。水に触れても溶出しないため、樹脂硬化物を劣化させることがなく、銅化合物の脱離を招かないからである。
銅化合物が水溶性であっても樹脂硬化物で保持されていれば、脱離を抑制できるが、樹脂硬化物中に水溶性物質が含まれていると、樹脂硬化物の銅化合物に対する保持力が低下して、銅化合物の脱離が生じると推定される。
また、上記水に不溶性の重合開始剤は、光重合開始剤であることが好ましい。可視光線、紫外線等の光により、容易に重合反応を進行させることができるからである。
【0065】
第1の本発明の抗ウィルス性基体の製造方法では、還元力のある光重合開始剤を用いることが望ましい。上記銅化合物を抗ウィルス効果を持つ銅イオン(I)に還元するとともに、銅イオン(I)が酸化して抗ウィルス性の劣る銅イオン(II)に変わることを抑制できるからである。
【0066】
第1の本発明の抗ウィルス性基体の製造方法では、上記重合開始剤は、アルキルフェノン系、ベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、分子内水素引き抜き型、及び、オキシムエステル系からなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
【0067】
上記第1の本発明の抗ウィルス性基体の製造方法において、上記重合開始剤は、アルキルフェノン系、ベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、分子内水素引き抜き型、及び、オキシムエステル系からなる群から選択される少なくとも1種であると、基材表面に組成物を付着せしめた後、該組成物を乾燥し、紫外線等の電磁波を照射することにより未硬化の電磁波硬化型樹脂、すなわち、上記樹脂のモノマーやオリゴマーの重合反応が容易に進行し、電磁波硬化型樹脂を容易に硬化させることができ、樹脂硬化物を形成することができる。
【0068】
第1の本発明の抗ウィルス性基体の製造方法では、具体的には、上記重合開始剤は、アルキルフェノン系の重合開始剤、ベンゾフェノン又はその誘導体から選ばれる少なくとも1種以上であるであることが望ましく、特に、上記重合開始剤は、ベンゾフェノン又はその誘導体であることが望ましい。
これらの重合開始剤は、特に、銅に対する還元力が高く、銅イオン(I)の状態を長期間維持できる効果に優れるからである。
【0069】
第1の本発明の抗ウィルス性基体の製造方法では、上記重合開始剤は、アルキルフェノン系の重合開始剤およびベンゾフェノン系の重合開始剤を含み、上記アルキルフェノン系の重合開始剤の濃度が電磁波硬化型樹脂に対して、0.5〜3.0wt%、上記ベンゾフェノン系の重合開始剤の濃度が電磁波硬化型樹脂に対して0.5〜2.0wt%であることが望ましい。電磁波の照射時間が短くても高い架橋密度を実現できるからである。前記アルキルフェノン系の重合開始剤とベンゾフェノン系の重合開始剤の比率は、重量比でアルキルフェノン系の重合開始剤/ベンゾフェノン系の重合開始剤=1/1〜4/1であることが望ましい。高い架橋密度を実現でき、硬化物の硬度を高くして耐摩耗性を改善できるとともに、銅に対する還元力を高くすることができるからである。架橋密度は85%以上、特に95%以上が望ましい。
【0070】
ついで、第2の本発明の抗微生物基体、抗微生物組成物、及び、抗微生物基体の製造方法について説明する。第2の本発明の抗微生物とは、抗ウィルス、抗菌、抗カビ、防カビを含む概念である。
第2の本発明の抗微生物基体、抗微生物組成物、及び、抗微生物基体の製造方法については、いずれも抗ウィルス性基体、抗ウィルス性組成物、及び、抗ウィルス性基体の製造方法であることが望ましい。第2の本発明の効果が最も顕著だからである。
【0071】
第2の本発明の抗微生物基体は、基材表面に、銅化合物及び重合開始剤を含むバインダの硬化物が固着し、上記銅化合物の少なくとも一部は、上記バインダの硬化物の表面から露出していることを特徴とする。
なお、一般に化合物は、共有結合性の化合物、イオン性化合物を指し、錯体は化合物には含まれない。従って、銅錯体(銅錯塩)は第2の本発明の抗微生物基体、抗微生物組成物、抗微生物基体の製造方法でいう銅化合物には含まれず、銅のアミノ酸塩も本発明の銅化合物には含まれない。第2の本発明における銅化合物は、銅を含む共有結合性の化合物、銅を含むイオン性化合物を言う。あえて換言すれば、第2の本発明の抗微生物基体、抗微生物組成物、抗微生物基体の製造方法における銅化合物は、銅化合物(銅錯体を除く)ということである。
【0072】
なお、本明細書において、上記抗微生物基体は、抗ウィルス、抗菌、抗カビ及び防カビのうちいずれか1種の活性を示す基体であってもよく、抗ウィルス、抗菌、抗カビ及び防カビのうち、いずれか2種類の活性を示す基体であってもよく、いずれか3種類の活性を示す基体であってもよく、4種類全ての活性を示す基体であってもよい。
本明細書において、上記抗微生物組成物は、抗ウィルス活性組成物、抗菌活性組成物、抗カビ活性組成物及び防カビ活性組成物のうちいずれか1種の活性を示す組成物であってもよく、抗ウィルス、抗菌、抗カビ及び防カビのうち、いずれか2種類の活性を示す組成物であってもよく、いずれか3種類の活性を示す組成物であってもよく、4種類全ての活性を示す組成物であってもよい。
上記抗微生物基体の製造方法は、上記した効果を有する抗微生物組成物を用い、上記した効果を有する抗微生物基体を製造する方法である。
【0073】
第2の本発明の抗微生物基体では、基材表面に、銅化合物及び重合開始剤を含むバインダの硬化物が固着形成され、上記銅化合物の少なくとも一部は、上記バインダの硬化物の表面から露出しているため、銅化合物がウィルスと接触しやすく、銅化合物に基づく抗微生物性を有する基体としての効果を充分に発揮することができる。
【0074】
第2の本発明の抗微生物基体は、重合開始剤を含むが、この重合開始剤は、ラジカルやイオンを発生させ、その際に銅化合物を還元させることができるため、銅の抗微生物活性を高くすることができる。一般に銅(I)の方が銅(II)よりも抗微生物活性が高く、銅が還元されることで抗微生物活性が改善される。また、重合開始剤は、疎水性で水に不溶であるため、耐水性に優れたバインダ硬化物を有する抗微生物基体となる。
このような重合開始剤が銅に対する還元力を持つことは、本発明者らは初めて知見したものであり、銅化合物を重合開始剤が還元することで銅(I)の存在割合を増やすことができるのである。
【0075】
第2の本発明の抗微生物基体では、上記銅化合物の少なくとも一部は、上記バインダの硬化物の表面から、ウィルスなどの微生物と接触可能な状態で露出していることが望ましい。ウィルスなどの微生物と接触可能な状態で露出していると、ウィルスなどの微生物の機能を失活させることができるからである。
【0076】
また、第2の本発明の抗微生物基体では、バインダの硬化物が島状に散在して固着形成されているか、もしくは、基材表面にバインダの硬化物が固着形成された領域とバインダの硬化物が固着形成されていない領域が混在し、基材表面に、上記バインダの硬化物が固着しておらず、基材表面が露出している部分が存在するため、可視光線の基材表面に対する透過率が低下するなど不都合を防止することができる。そのため、基材が透明な材料である場合には、基材の透明性が低下することはなく、基材表面に所定パターンの意匠等が形成されている場合には、意匠等の外観を損ねることもない。
【0077】
また、第2の本発明の抗微生物基体では、上記バインダの硬化物が島状に散在して固着形成されているか、もしくは、基材表面にバインダの硬化物が固着形成された領域とバインダの硬化物が固着形成されていない領域が混在しているため、上記バインダの硬化物の基材表面との接触面積を小さくすることができ、バインダの硬化物の残留応力、冷熱サイクル時に発生する応力を抑制することが可能となり、基材と高い密着性を有する上記バインダの硬化物を形成することができる。
また、バインダの硬化物が島状に散在して固着されているか、もしくは、基材表面にバインダの硬化物が固着形成された領域とバインダの硬化物が固着形成されていない領域が混在している場合は、バインダ硬化物の表面積が大きくなり、また、ウィルスなどの微生物をバインダ硬化物間にトラップさせやすくなるため、抗微生物性能を持つバインダ硬化物と微生物との接触確率が高くなり、高い抗微生物性能を発現できる。
【0078】
さらに、第2の本発明の抗微生物基体では、上記バインダ硬化物が膜状に形成されていてもよい。
抗微生物性のバインダ硬化物が膜状に形成されていると、島状に分散固定されている場合や基材表面にバインダ硬化物が固着形成された領域とバインダ硬化物が固着形成されていない領域が混在している状態に比べて、バインダ硬化物の表面が滑りやすくなるためふき取り清掃に対する耐性に優れている。その一方で、バインダ硬化物が基材上に膜状に固着形成されている場合、基材表面の意匠の視認性、抗微生物性能、及び、冷熱サイクル後のバインダ硬化物の基材に対する密着性は、バインダ硬化物が島状に分散固定されている場合や基材表面にバインダ硬化物が固着形成された領域とバインダ硬化物が固着形成されていない領域が混在している場合に比べて低下する。
【0079】
上記バインダ硬化物からなる膜の厚さは、0.5〜100μmが望ましい。厚すぎると応力が発生して膜が剥離して抗微生物性が低下し、膜が薄すぎても抗微生物性を十分発揮できないからである。
上記基材に意匠が施されていない場合、あるいは、意匠性よりも抗微生物性能を優先させる場合には、上記のように、バインダ硬化物からなる膜が基材上に形成されていてもよい。
【0080】
第2の本発明の抗微生物基体では、上記バインダの硬化物は、多孔質体からなることが望ましい。
上記銅化合物が空気などの雰囲気媒体と接触しやすくなり、銅イオン(I)が空気中の水や酸素を還元して、活性酸素、過酸化水素水やスーパーオキサイドアニオン、ヒドロキシラジカルなどを発生させて、微生物を構成する蛋白質を破壊して微生物を失活させやすくなるからである。
【0081】
第2の本発明の抗微生物基体では、上記重合開始剤は、光重合開始剤を含むことが望ましい。上記光重合開始剤を含むと、上記銅化合物を抗微生物効果を持つ銅イオン(I)に還元するとともに、銅イオン(I)が酸化して抗微生物性の劣る銅イオン(II)に変わることを抑制できるからである。
【0082】
第2の本発明の抗微生物基体では、上記バインダの硬化物は、水に不溶性の重合開始剤を含むことが望ましい。水に触れても溶出しないため、耐水性に優れたバインダ硬化物を有する抗微生物基体となるからである。
【0083】
第2の本発明の抗微生物基体では、上記重合開始剤は、アルキルフェノン系の重合開始剤、ベンゾフェノン又はその誘導体から選ばれる少なくとも1種以上であることが望ましく、特に、上記重合開始剤は、ベンゾフェノン又はその誘導体を含むことが望ましい。
これらの重合開始剤は、特に、銅に対する還元力が高く、銅イオン(I)の状態を長期間維持できる効果に優れるからである。
【0084】
第2の本発明の抗微生物基体では、上記重合開始剤は、アルキルフェノン系の重合開始剤およびベンゾフェノン系の重合開始剤を含み、上記アルキルフェノン系の重合開始剤の濃度がバインダに対して、0.5〜3.0wt%、上記ベンゾフェノン系の重合開始剤の濃度がバインダに対して0.5〜2.0wt%であることが望ましい。電磁波の照射時間が短くても高い架橋密度を実現できるからである。
前記アルキルフェノン系の重合開始剤とベンゾフェノン系の重合開始剤の比率は、重量比でアルキルフェノン系の重合開始剤/ベンゾフェノン系の重合開始剤=1/1〜4/1であることが望ましい。高い架橋密度を実現でき、硬化物の硬度を高くして耐摩耗性を改善できるとともに、銅に対する還元力を高くすることができるからである。架橋密度は85%以上、特に95%以上が望ましい。
【0085】
第2の本発明の抗微生物基体では、上記バインダは、有機バインダ、無機バインダ、有機バインダと無機バインダの混合物及び有機・無機ハイブリッドのバインダから選択される少なくとも1種以上であることが望ましい。比較的容易に密着性に優れたバインダ硬化物を、基材表面に固着形成させることができるからである。
【0086】
上記有機バインダは、電磁波硬化型樹脂および熱硬化型樹脂からなる群から選択される少なくとも1種以上であることが望ましい。これらの有機バインダは、電磁波の照射や加熱により、樹脂が硬化して基材表面に銅化合物を固着できるからである。また、これらの樹脂は、重合開始剤の銅に対する還元力を低下させることがないため有利である。電磁波硬化型樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種以上を使用することができる。また、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂から選ばれる少なくとも1種以上を使用できる。
【0087】
第2の本発明の抗微生物基体では、上記バインダは、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、シリカゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、金属アルコキシド、及び、水ガラスからなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
【0088】
第2の本発明の抗微生物基体では、上記銅化合物は、X線光電子分光分析法により、925〜955eVの範囲にあるCu(I)とCu(II)に相当する結合エネルギーを5分間測定することで算出される、上記銅化合物中に含まれるCu(I)とCu(II)とのイオンの個数の比率(Cu(I)/Cu(II))が0.4〜50であることが望ましい。より抗微生物性に優れた抗微生物基体となるからである。特に、上記銅化合物中に含まれるCu(I)とCu(II)とのイオンの個数の比率(Cu(I)/Cu(II))が0.5〜50であることが好ましい。上記銅化合物中に含まれるCu(I)とCu(II)とのイオンの個数の比率(Cu(I)/Cu(II))が1.0〜4.0がより望ましく、特に1.4〜2.9がより望ましく、さらに1.4〜1.9が最適であり、より抗ウィルス性に優れた抗ウィルス性基体となる。
【0089】
また、上記バインダ硬化物が、島状に分散固定されている場合や、基材表面にバインダ硬化物が固着形成された領域とバインダ硬化物が固着形成されていない領域が混在している状態の場合は、銅化合物中のCu(I)/Cu(II)が0.4/1〜4.0/1に調整されていると、抗ウィルス性を高くできるため、望ましい。
第2の本発明の抗微生物基体におけるCu(I)/Cu(II)の比率は、バインダ、重合開始剤、銅化合物の選択、これらの濃度調整、及び、紫外線などの電磁波の照射時間や強度で調整することができる。
【0090】
第2の本発明の抗微生物基体では、上記バインダの硬化物の基材表面に平行な方向の最大幅は、0.1〜500μmであり、その厚さの平均値は、0.1〜20μmであることが望ましい。上記バインダ硬化物の上記基材の表面に平行な方向の最大幅が0.1〜500μmであると、基材の表面がバインダ硬化物により被覆されていない部分の割合が多くなり、光透過率の低下を抑制することができるからである。また、バインダ硬化物の厚さの平均値が0.1〜20μmであると、バインダ硬化物の厚さが薄いので、バインダ硬化物の連続層を形成しにくく、バインダ硬化物が島状に散在し易くなるか、基材表面にバインダ硬化物が固着形成された領域とバインダ硬化物が固着形成されていない領域が混在している状態に調整しやすく、光透過率が高くなり易く、また、抗微生物性の効果が発生し易い。
上記バインダの硬化物の基材表面に平行な方向の最大幅は、1〜100μmであり、その厚さの平均値は、1〜20μmであることがより望ましい。
【0091】
第2の本発明の抗微生物組成物は、銅化合物、未硬化のバインダ、分散媒及び重合開始剤を含むことを特徴とする。
【0092】
第2の本発明の抗微生物組成物は、銅化合物、未硬化のバインダ、分散媒及び重合開始剤を含むので、上記抗微生物組成物を基材表面に付着させることにより、抗微生物組成物を基材表面にバインダ硬化物が固着形成された領域とバインダ硬化物が固着形成されていない領域が混在している状態もしくは島状に散在した状態とすることができ、乾燥工程の後、硬化させることにより、基材に対する透明性及び基材との密着性に優れた島状もしくはバインダ硬化物が固着形成された領域とバインダ硬化物が固着形成されていない領域が混在している状態のバインダ硬化物を形成することができる。
【0093】
また、バインダの硬化物が島状に散在して固着されているか、もしくは、基材表面にバインダの硬化物が固着形成された領域とバインダの硬化物が固着形成されていない領域が混在している場合は、バインダ硬化物の表面積が大きくなり、また、ウィルスなどの微生物をバインダ硬化物間にトラップさせやすくなるため、抗微生物性能を持つバインダ硬化物と微生物との接触確率が高くなり、高い抗微生物性能を発現できる。
【0094】
また、第2の本発明の抗微生物組成物は、銅化合物、未硬化のバインダ、分散媒及び重合開始剤を含むので、上記抗微生物組成物を基材表面に付着させることにより、抗微生物組成物を基材表面に膜状に形成することもでき、耐摩耗性に優れ、清掃時のふき取りでも抗微生物性能が低下しない。
しかし、抗微生物組成物が基材表面に膜状に形成されている場合、基材表面の意匠の視認性、抗微生物性能、及び、冷熱サイクル後のバインダ硬化物の基材に対する密着性は、島状に分散固定されている場合や基材表面にバインダ硬化物が固着形成された領域とバインダ硬化物が固着形成されていない領域が混在している状態に比べて低下する。
【0095】
また、第2の本発明の抗微生物組成物は、重合開始剤を含むが、この重合開始剤は、ラジカルやイオンを発生させ、その際に銅化合物を還元させることができるため、銅の抗微生物活性を高くすることができるのである。一般に銅(I)の方が銅(II)よりも抗微生物活性が高く、銅が還元されることで抗微生物活性が改善される。
【0096】
第2の本発明の抗微生物組成物では、上記重合開始剤は、光重合開始剤であることが望ましい。上記光重合開始剤を含むと、上記銅化合物を抗微生物効果を持つ銅イオン(I)に還元するとともに、銅イオン(I)が酸化して抗微生物性の劣る銅イオン(II)に変わることを抑制できるからである。
【0097】
第2の本発明の抗微生物組成物では、上記銅化合物は、銅のカルボン酸塩、銅の水酸化物、銅の酸化物、又は、銅の水溶性無機塩であることが望ましく、銅のカルボン酸塩であることがより望ましい。基材表面にバインダ硬化物を形成した際、バインダ硬化物の表面よりウィルスなどの微生物と接触可能な状態で露出した銅化合物が優れた抗微生物性を発揮することができるからである。
第2の本発明の抗微生物組成物では、上記銅化合物は、二価の銅化合物(銅化合物(II))であることが望ましい。一価の化合物(銅化合物(I))は、分散媒である水に不溶であり、粒子状に局在化する、バインダ中への分散が不充分であり、抗微生物活性に劣るからである。また、二価の銅化合物を抗微生物組成物中に加え、この二価の銅化合物を還元することで、一価と二価の銅化合物がバインダ硬化物中に共存した状態を簡単に形成できるという利点も有する。水溶性の二価の銅化合物を用いることが最適である。
【0098】
第2の本発明の抗微生物組成物では、上記バインダは、有機バインダ、無機バインダ、有機バインダと無機バインダの混合物及び有機・無機ハイブリッドのバインダからなる群から選択される少なくとも1種以上であることが望ましい。比較的容易に密着性に優れたバインダ硬化物を、基材表面に固着形成できるからである。
【0099】
上記有機バインダは、電磁波硬化型樹脂および熱硬化型樹脂からなる群から選択される少なくとも1種以上であることが望ましい。
これらの有機バインダは、電磁波の照射や加熱により、樹脂が硬化して基材表面に銅化合物を固着できるからである。また、これらの樹脂は、重合開始剤の銅に対する還元力を低下させることがないため有利である。電磁波硬化型樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種以上を使用することができる。また、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂から選ばれる少なくとも1種以上を使用できる。
【0100】
第2の本発明の抗微生物組成物では、上記バインダは、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、シリカゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、金属アルコキシド、及び、水ガラスからなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
【0101】
第2の本発明の抗微生物組成物では、上記分散媒は、アルコール又は水であることが望ましい。上記分散媒中に銅化合物が良好に分散し、その結果、銅化合物が良好に分散したバインダ硬化物を形成することができるからである。
【0102】
第2の本発明の抗微生物組成物では、上記重合開始剤は、水に不溶性の重合開始剤であることが望ましい。水に触れても溶出しないため、耐水性に優れたバインダ硬化物となるからである。
【0103】
第2の本発明の抗微生物組成物では、上記重合開始剤は、アルキルフェノン系、ベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、分子内水素引き抜き型、及び、オキシムエステル系からなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましく、アルキルフェノン系の重合開始剤、ベンゾフェノン又はその誘導体から選ばれる少なくとも1種以上であることがより望ましい。
これらの重合開始剤は、特に、銅に対する還元力が高く、銅イオン(I)の状態を長期間維持できる効果に優れるからである。
【0104】
第2の本発明の抗微生物組成物では、上記重合開始剤は、アルキルフェノン系の重合開始剤およびベンゾフェノン系の重合開始剤を含み、上記アルキルフェノン系の重合開始剤の濃度がバインダに対して、0.5〜3.0wt%、上記ベンゾフェノン系の重合開始剤の濃度がバインダに対して0.5〜2.0wt%であることが望ましい。電磁波の照射時間が短くても高い架橋密度を実現できるからである。
前記アルキルフェノン系の重合開始剤とベンゾフェノン系の重合開始剤の比率は、重量比でアルキルフェノン系の重合開始剤/ベンゾフェノン系の重合開始剤=1/1〜4/1であることが望ましい。高い架橋密度を実現でき、硬化物の硬度を高くして耐摩耗性を改善できるとともに、銅に対する還元力を高くすることができるからである。架橋密度は85%以上、特に95%以上が望ましい。
【0105】
第2の本発明の抗微生物基体の製造方法は、
(1)基材の表面に、銅化合物と未硬化のバインダと分散媒と重合開始剤とを含む抗微生物組成物を付着せしめる付着工程と、
上記付着工程により付着した上記抗微生物組成物中の上記未硬化のバインダを硬化させて、基材の表面にバインダ硬化物を固着せしめる硬化工程とを含むことを特徴とする。
また、別の第2の本発明の抗微生物基体の製造方法は、
(2)基材の表面に、銅化合物と未硬化のバインダと分散媒と重合開始剤とを含む抗微生物組成物を付着せしめる付着工程と、
上記付着工程により付着した上記抗微生物組成物を乾燥させて上記分散媒を除去する乾燥工程と、
上記乾燥工程で分散媒を除去した上記抗微生物組成物中の上記未硬化のバインダを硬化させて、基材の表面にバインダ硬化物を固着せしめる硬化工程とを含むことを特徴とする。
【0106】
第2の本発明の抗微生物基体の製造方法においては、銅化合物と未硬化のバインダと分散媒と重合開始剤とを含む抗微生物組成物を付着させることにより、基材の表面に抗微生物組成物を付着させることができ、乾燥と同時に、又は、乾燥工程の後、抗微生物組成物の硬化反応を進行させることにより、比較的容易に銅化合物を含むバインダ硬化物を形成することができ、上記銅化合物の一部をバインダ硬化物の表面から微生物と接触可能な状態で露出させて微生物と接触させることにより、銅化合物による抗微生物に優れた抗微生物基体を製造することができる。
また、バインダの硬化時に収縮が生じるため、硬化収縮時に銅化合物をバインダ表面から露出せしめることができる。
【0107】
第2の本発明の抗微生物基体の製造方法において、乾燥や加熱は、赤外線ランプやヒータなどで行うことができ、また、電磁波を照射して乾燥と硬化を同時行ってもよい。
【0108】
第2の本発明の抗微生物基体の製造方法(1)および(2)においては、重合開始剤の還元力を発現せしめるために、所定波長の電磁波を照射する工程を含むことが望ましい。電磁波としては高エネルギーを持つ紫外線が好適に利用される。電磁波の照射工程は、乾燥工程を含む場合は、その前後、もしくは硬化工程の前後に行うことが好ましい。
また、第2の本発明の抗微生物基体の製造方法(1)および(2)においては、抗微生物組成物を基材表面に島状に付着させてもよく、バインダを硬化させた後、当該バインダ硬化物が固着形成された領域とバインダ硬化物が固着形成されていない領域が混在している状態になるように、抗微生物組成物を基材表面に付着させてもよい。さらに、抗微生物組成物を膜状に付着させてもよい。
【0109】
上記抗微生物組成物は、重合開始剤を含むが、この重合開始剤は、ラジカルやイオンを発生させ、その際に銅化合物を還元させることができるため、得られた抗微生物基体中の銅の抗微生物活性を高くすることができるのである。一般に銅(I)の方が銅(II)よりも抗微生物活性が高く、銅が還元されることで抗微生物活性が改善される。
【0110】
第2の本発明の抗微生物基体の製造方法では、上記銅化合物は、銅のカルボン酸塩、銅の水酸化物、銅の酸化物、又は、銅の水溶性無機塩であることが望ましく、銅のカルボン酸塩であることがより望ましい。基材表面にバインダ硬化物を形成した際、バインダ硬化物の表面より微生物と接触可能な状態で露出した銅化合物が優れた抗微生物性を発揮することができるからである。また、カルボン酸はCOOH基を持ち、樹脂との親和性に優れ、バインダ硬化物により保持されやすく、他の銅の無機塩や銅の酸化物、銅の水酸化物に比べて、水で溶出しにくいため、耐水性に優れる。
【0111】
第2の本発明の抗微生物基体の製造方法では、上記バインダは、有機バインダ、無機バインダ、有機バインダと無機バインダの混合物及び有機・無機ハイブリッドのバインダから選択される少なくとも1種以上であることが望ましい。比較的容易に密着性に優れたバインダ硬化物を、基材表面に固着させることができるからである。
【0112】
上記有機バインダは、電磁波硬化型樹脂および熱硬化型樹脂からなる群から選択される少なくとも1種以上であることが望ましい。これらの有機バインダは、電磁波の照射や加熱により、樹脂が硬化して基材表面に銅化合物を固着できるからである。また、これらの樹脂は、重合開始剤の銅に対する還元力を低下させることがないため有利である。
電磁波硬化型樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種以上を使用することができる。また、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂から選ばれる少なくとも1種以上を使用できる。
【0113】
第2の本発明の抗微生物基体の製造方法では、上記バインダは、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、シリカゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、金属アルコキシド、及び、水ガラスからなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
【0114】
第2の本発明の抗微生物基体の製造方法では、上記分散媒は、アルコール又は水であることが望ましい。上記分散媒中に銅化合物や未硬化のバインダが良好に分散し易く、銅化合物が良好に分散したバインダ硬化物を形成することができるからである。
【0115】
第2の本発明の抗微生物基体の製造方法では、上記重合開始剤は、水に不溶性の光重合開始剤であることが望ましい。水に触れても溶出しないため、耐水性に優れたバインダ硬化物を有する抗微生物基体を形成することができるからである。
【0116】
第2の本発明の抗微生物基体の製造方法では、上記重合開始剤は、アルキルフェノン系、ベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、分子内水素引き抜き型、及び、オキシムエステル系からなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましく、アルキルフェノン系の重合開始剤、ベンゾフェノン又はその誘導体から選ばれる少なくとも1種以上であることがより望ましく、上記重合開始剤は、ベンゾフェノン又はその誘導体がさらに望ましい。これらの重合開始剤は、特に、銅に対する還元力が高く、銅イオン(I)の状態を長期間維持できる効果に優れるからである。
【0117】
上記重合開始剤は、アルキルフェノン系の重合開始剤およびベンゾフェノン系の重合開始剤を含み、上記アルキルフェノン系の重合開始剤の濃度がバインダに対して、0.5〜3.0wt%、上記ベンゾフェノン系の重合開始剤の濃度がバインダに対して0.5〜2.0wt%であることが望ましい。電磁波の照射時間が短くても高い架橋密度を実現できるからである。
前記アルキルフェノン系の重合開始剤とベンゾフェノン系の重合開始剤の比率は、重量比でアルキルフェノン系の重合開始剤/ベンゾフェノン系の重合開始剤=1/1〜4/1であることが望ましい。高い架橋密度を実現でき、硬化物の硬度を高くして耐摩耗性を改善できるとともに、銅に対する還元力を高くすることができるからである。架橋密度は85%以上、特に95%以上が望ましい。
【0118】
第2の本発明の抗微生物基体の製造方法により、バインダ硬化物が、基材表面に島状に固着形成されてなるか、基材表面にバインダ硬化物が固着形成された領域とバインダ硬化物が固着形成されていない領域が混在してなる抗微生物基体を製造することができる。その結果、上記バインダ硬化物の基材表面との接触面積を小さくすることができ、バインダ硬化物の残留応力、冷熱サイクル時に発生する応力を抑制することが可能となり、基材と高い密着性を有する上記バインダ硬化物を形成することができる。
バインダの硬化物が島状に散在して固着されているか、もしくは、基材表面にバインダの硬化物が固着形成された領域とバインダの硬化物が固着形成されていない領域が混在している場合は、バインダ硬化物の表面積が大きくなり、また、ウィルスなどの微生物をバインダ硬化物間にトラップさせやすくなるため、抗微生物性能を持つバインダ硬化物と微生物との接触確率が高くなり、高い抗微生物性能を発現できる。
【0119】
第2の本発明の抗微生物基体の製造方法により、バインダ硬化物が、基材表面に膜状に固着形成されてなり、ふき取り清掃に対する耐久性に優れた抗微生物基体を製造することができる。
上記抗微生物基体は、島状に分散固定されている場合や基材表面にバインダ硬化物が固着形成された領域とバインダ硬化物が固着形成されていない領域が混在している状態に比べて抗微生物性のバインダ硬化物の表面が滑りやすいため、ふき取り清掃への耐性に優れている。
その一方で、バインダ硬化物が基材上に膜状に固着形成されている場合、基材表面の意匠の視認性、抗微生物性能、及び、冷熱サイクル後のバインダ硬化物の基材に対する密着性は、バインダ硬化物が島状に分散固定されている場合や基材表面にバインダ硬化物が固着形成された領域とバインダ硬化物が固着形成されていない領域が混在している場合に比べて低下する。
【0120】
第2の本発明の抗微生物基体は、抗ウィルス性基体であることが望ましく、第2の本発明の抗微生物組成物は、抗ウィルス性組成物であることが望ましく、第2の本発明の抗微生物基体の製造方法は、抗ウィルス性基体の製造方法であるであることが望ましい。
【0121】
第2の本発明の抗微生物基体においては、前記重合開始剤は、水に不溶性の光重合開始剤であり、上記バインダは、電磁波硬化型樹脂であり、上記銅化合物(銅錯体を除く)は、X線光電子分光分析法により、925〜955eVの範囲にあるCu(I)とCu(II)に相当する結合エネルギーを5分間測定することで算出される、上記銅化合物中に含まれるCu(I)とCu(II)とのイオンの個数の比率(Cu(I)/Cu(II))が0.4〜50であることが望ましい。
【0122】
上記水に不溶性の光重合開始剤は、還元力のある光重合開始剤であることが望ましい。
上記バインダ硬化物は、島状に分散固定されているか、基材表面にバインダ硬化物が固着形成された領域とバインダ硬化物が固着形成されていない領域が混在している状態であることが望ましい。またその場合は、銅化合物中のCu(I)/Cu(II)が0.4/1〜4.0/1に調整されていることが望ましい。
上記抗微生物基体は、抗ウィルス性基体および/または抗カビ性基体であることが望ましい。
【0123】
第2の本発明の抗微生物組成物においては、上記バインダは、電磁波硬化型樹脂であり、上記分散媒は水であり、上記銅化合物(銅錯体を除く)は、水溶性の二価の銅化合物であり、上記重合開始剤は、水に不溶性の光重合開始剤であることが望ましい。
【0124】
上記水に不溶性の光重合開始剤は、還元力のある光重合開始剤であることが望ましい。
上記抗微生物組成物は、基材に対して散布して付着せしめる用途に使用されることが望ましい。
上記抗微生物組成物は、抗ウィルス性組成物および/または抗カビ性組成物として使用されることが望ましい。すなわち、上記抗微生物組成物の抗ウィルス性組成物および/または抗カビ性組成物の使用(USE)が望ましい。
【0125】
第2の本発明の抗微生物基体の製造方法において、上記抗微生物組成物に含まれる上記バインダは、電磁波硬化型樹脂であり、上記分散媒は水であり、銅化合物(銅錯体を除く)は、水溶性の二価の銅化合物であり、上記重合開始剤は、水に不溶性の光重合開始剤であることが望ましい。
【0126】
上記水に不溶性の光重合開始剤は、還元力のある光重合開始剤であることが望ましい。
上記抗微生物基体の製造方法は、電磁波を照射する工程を含むことが望ましい。
上記抗微生物基体の製造方法は、抗ウィルス性基体の製造方法および/または抗カビ性基体の製造方法であることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0127】
図1図1(a)は、第1の本発明の抗ウィルス性基体の一実施形態を模式的に示す断面図であり、図1(b)は、図1(a)に示した抗ウィルス性基体の平面図である。
図2図2は、実施例1で得られた抗ウィルス性基体を示すSEM写真である。
図3図3は、実施例1で製造した樹脂硬化物の断面を示すSEM写真である。
図4図4は、実施例1で製造した樹脂硬化物中の銅化合物をエネルギー分散型X線分析装置で分析した結果を示すSEM写真である。
図5図5は、C/Cuの比率と安全性(目刺激性)スコアとの関係を示すグラフである。
図6図6は、実施例7で製造した抗ウィルス性基体を示す光学顕微鏡写真である。
【0128】
(発明の詳細な説明)
以下、第1の本発明の抗ウィルス性基体について詳細に説明する。
第1の本発明の抗ウィルス性基体は、基材表面に、銅化合物を含む電磁波硬化型樹脂の硬化物が島状に散在し、上記銅化合物の少なくとも一部は、上記電磁波硬化型樹脂の硬化物の表面から露出していることを特徴とする。
【0129】
図1(a)は、第1の本発明の抗ウィルス性基体の一実施形態を模式的に示す断面図であり、図1(b)は、図1(a)に示した抗ウィルス性基体の平面図である。
【0130】
図1に示すように、第1の本発明の抗ウィルス性基体10では、基材11の表面に、銅化合物を含む多孔質体からなる電磁波硬化型樹脂の硬化物12が島状に散在している。
【0131】
第1の本発明の抗ウィルス性基体の基材の材料は、特に限定されるものでなく、例えば、金属、ガラス等のセラミック、樹脂、繊維織物、木材等が挙げられる。
また、第1の本発明の抗ウィルス性基体の基材となる部材も、特に限定されるものではなく、タッチパネルの保護用フィルムやディスプレイ用のフィルムであってもよく、建築物内部の内装材、壁材、窓ガラス、てすり等であってもよい。また、ドアノブ、トイレのスライド鍵などでもよい。さらに事務機器や家具等であってもよく、上記内装材の外、種々の用途に用いられる化粧板等であってもよい。
【0132】
上記樹脂硬化物に含まれる銅化合物は、銅のカルボン酸塩、銅の水酸化物、銅の酸化物、又は、銅の水溶性無機塩であることが望ましい。
上記銅のカルボン酸塩としては、銅のイオン性化合物を使用することができ、酢酸銅、安息香酸銅、フタル酸銅等が挙げられる。
上記銅の水溶性無機塩としては、銅のイオン性化合物を使用することができ、例えば、硝酸銅、硫酸銅等が挙げられる。
その他の銅化合物としては、例えば、銅(メトキシド)、銅エトキシド、銅プロポキシド、銅ブトキシドなどが挙げられ、銅の共有結合性化合物としては銅の酸化物、銅の水酸化物などが挙げられる。
このような銅化合物は、樹脂硬化物を製造する際に用いる抗ウィルス性組成物を調製する際に添加する銅化合物と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0133】
第1の本発明においては、エネルギー分散型X線分析装置で求めた樹脂硬化物の表面組成比は、樹脂成分の主構成元素である炭素元素と銅元素の特性X線のピーク強度から算出し、その重量比はCu:C=1.0:28.0〜200.0が望ましい。
銅元素1.0に対して炭素元素が28.0未満であると、樹脂硬化物の眼に対する刺激性が刺激物区分となり、人体への安全性が確保できず、Cuが樹脂硬化物より脱落してしまい、抗ウィルス機能が不充分となるおそれがある。一方、銅元素1.0に対して炭素元素が200.0を超えると、Cuが樹脂硬化物に埋没してしまい、やはり抗ウィルス機能が不充分になるおそれがある。
【0134】
図5は、C/Cuの比率と安全性(目刺激性)スコアとの関係が記載されたグラフである。安全性スコアの値は低い方が望ましく、安全性スコア20以下がよい。この安全性スコア20以下が、Cu:C=1.0:28.0〜200.0に相当する。
【0135】
第1の本発明の抗ウィルス性基体では、X線光電子分光分析法により、925〜955eVの範囲にあるCu(I)とCu(II)に相当する結合エネルギーを5分間測定することで算出される、上記銅化合物中に含まれるCu(I)とCu(II)とのイオンの個数の比率(Cu(I)/Cu(II))が0.4〜50であることが望ましい。Cu(II)と共存した方が、Cu(I)のみの場合に比べて、抗ウィルス性能が高くなる。この理由は明確ではないが、不安定なCu(I)のみの場合と比較して、安定なCu(II)と共存することで、Cu(I)が酸化されることを防止できるためではないかと推定している。上記銅化合物中に含まれるCu(I)とCu(II)とのイオンの個数の比率(Cu(I)/Cu(II))が0.5〜50であることが望ましい。
【0136】
また、Cu(I)の銅は、Cu(II)の銅と比較して抗ウィルス性により優れているため、第1の本発明の抗ウィルス性基体において、X線光電子分光分析法により、925〜955eVの範囲にあるCu(I)とCu(II)に相当する結合エネルギーを5分間測定することで算出される、上記銅化合物中に含まれるCu(I)とCu(II)とのイオンの個数の比率(Cu(I)/Cu(II))が1.0〜4.0であると、より抗ウィルス性に優れた抗ウィルス性基体となる。
最も望ましい範囲は、上記銅化合物中に含まれるCu(I)とCu(II)とのイオンの個数の比率(Cu(I)/Cu(II))が1.4〜2.9がより望ましく、さらに1.4〜1.9が最適である。
【0137】
また、上記電磁波硬化型樹脂の硬化物が、島状に分散固定されている場合や基材表面に電磁波硬化型樹脂の硬化物が固着形成された領域と電磁波硬化型樹脂の硬化物が固着形成されていない領域が混在している状態の場合は、銅化合物中のCu(I)/Cu(II)が0.4/1〜4.0/1に調整されていると、抗ウィルス性を高くできるため、望ましい。
第1の本発明の抗ウィルス基体における銅化合物中のCu(I)/Cu(II)の比率は、電磁波硬化型樹脂、重合開始剤、銅化合物の選択、これらの濃度調整、及び、紫外線などの電磁波の照射時間や強度で調整することができる。
【0138】
なお、Cu(I)とは、銅のイオン価数が1であることを意味し、Cuと表す場合もある。一方、Cu(II)とは、銅のイオン価数が2であることを意味し、Cu2+と表す場合もある。なお、一般的に、Cu(I)の結合エネルギーは、932.5eV±0.3(932.2〜 932.8eV)、Cu(II)の結合エネルギーは、933.8eV±0.3(933.5 〜 934.1eV)である。
【0139】
次に、第1の本発明の電磁波硬化型樹脂の硬化物について説明する。
未硬化の電磁波硬化型樹脂であるモノマー又はオリゴマーと光重合開始剤と各種添加剤を含んだ組成物に電磁波を照射することにより、光重合開始剤は、開裂反応、水素引き抜き反応、電子移動等の反応を起こし、これにより生成した光ラジカル分子、光カチオン分子、光アニオン分子等が上記モノマーや上記オリゴマーを攻撃してモノマーやオリゴマーの重合反応や架橋反応が進行し、樹脂の硬化物が生成する。このような反応により生成する第1の本発明の樹脂を電磁波硬化型樹脂という。
第1の本発明では、このような電磁波硬化型樹脂の硬化物が島状に散在するが、島状に散在する樹脂硬化物の製造方法については、後で詳細に説明する。
【0140】
第1の本発明においては、電磁波硬化型樹脂の硬化物に含まれる光重合開始剤が、銅イオン(II)を還元して銅イオン(I)を生成せしめるため、銅(I)の還元力によって、銅イオン(I)が空気中の水や酸素を還元することで、活性酸素、過酸化水素水やスーパーオキサイドアニオン、ヒドロキシラジカルなどを発生させて、ウィルスを構成する蛋白質を破壊してウィルスを失活させることができるからである。銅イオン(I)は空気中の水や酸素を還元すると、銅(II)に変わるが、電磁波硬化型樹脂に含まれる光重合開始剤によって、再び銅イオン(I)に還元されるため、還元力が常に維持される。このため、還元性糖などの還元剤は不要となり、また、光重合開始剤は、樹脂と結合しており、水に溶出しないので、耐水性にも優れる。
なお、銅イオン(II)の錯体を銅イオン(I)に還元すると錯体を形成し得ないため、銅イオン(II)から銅イオン(I)のような還元反応が生じにくく、銅のアミノ酸塩などの錯塩を第1の本発明に使用することは不適切である。
【0141】
このような電磁波硬化型樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、及び、アルキッド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種が望ましい。
【0142】
上記アクリル樹脂としては、エポキシ変性アクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂(ウレタン変性アクリレート樹脂)、シリコン変性アクリレート樹脂等が挙げられる。
上記ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。
【0143】
上記エポキシ樹脂としては、脂環式エポキシ樹脂やグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂とオキセタン樹脂を組みわせたもの等が挙げられる。
アルキッド樹脂としては、ポリエステルアルキッド樹脂等が挙げられる。
これらの樹脂は、透明性を有するとともに、基材に対する密着性にも優れる。
【0144】
第1の本発明の抗ウィルス性基体では、上記電磁波硬化型樹脂の硬化物の基材表面に平行な方向の最大幅は、0.1〜200μmであり、その厚さの平均値は、0.1〜20μmであることが望ましい。
第1の本発明の抗ウィルス性基体において、上記電磁波硬化型樹脂の樹脂硬化物の厚さの平均値が0.1〜20μmであると、樹脂硬化物の厚さが薄いので、樹脂硬化物の連続層を形成しにくく、樹脂硬化物が島状に散在し易くなり、抗ウィルス性の効果が発生し易い。
また、上記樹脂硬化物の上記基材の表面に平行な方向の最大幅を0.1〜200μmとすることにより、基材の表面が樹脂硬化物により被覆されていない部分の割合が多くなり、光透過率の低下を抑制することができる。
上記樹脂硬化物の基材表面に平行な方向の最大幅は、1〜100μmであり、その厚さの平均値は、1〜20μmであることがより望ましい。
【0145】
上記樹脂硬化物の厚さの平均値が20μmを超えると、樹脂硬化物の厚さが厚くなりすぎるため、樹脂硬化物の大きさが大きくなりすぎ、樹脂硬化物を島状に散在させることが難しくなり、透明性も低下してしまうおそれがある。一方、樹脂硬化物の厚さの平均値が0.1μm未満であると、十分な抗ウィルス性能を発揮できない、あるいは銅化合物が脱落しやすくなるなどの問題が発生するおそれがある。
【0146】
また上記樹脂硬化物の上記基材表面に平行な方向の最大幅が200μmを超えると、樹脂硬化物を島状に散在させることが難しくなり、透明性も低下してしまうおそれがある。一方、上記樹脂硬化物の表面に平行な方向の最大幅が0.1μm未満であると、基材との密着性が低下して硬化物が脱落しやすくなるおそれがある。
【0147】
第1の本発明の抗ウィルス性基体では、上記電磁波硬化型樹脂の硬化物は、重合開始剤として、水に不溶性の重合開始剤を含むことが望ましい。水に触れても溶出しないため、樹脂硬化物を劣化させることがなく、銅化合物の脱離を招かないからである。
銅化合物が水溶性であっても樹脂硬化物で保持されていれば、脱離を抑制できるが、樹脂硬化物中に水溶性物質が含まれていると、樹脂硬化物の銅化合物に対する保持力が低下して、銅化合物の脱離が生じると推定される。
また、上記水に不溶性の重合開始剤は、光重合開始剤であることが好ましい。可視光線、紫外線等の光により、容易に重合反応を進行させることができるからである。
【0148】
第1の本発明の抗ウィルス性基体では、還元力のある光重合開始剤を用いることが望ましい。第1の本発明の抗ウィルス性組成物に含まれる上記銅化合物を抗ウィルス効果を持つ銅イオン(I)に還元するとともに、銅イオン(I)が酸化して抗ウィルス性の劣る銅イオン(II)に変わることを抑制できるからである。
【0149】
第1の本発明の抗ウィルス性基体では、上記重合開始剤は、アルキルフェノン系、ベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、分子内水素引き抜き型、及び、オキシムエステル系からなる群から選択される少なくとも1種が望ましい。
【0150】
第1の本発明の抗ウィルス性基体では、具体的には、上記重合開始剤は、アルキルフェノン系の重合開始剤、ベンゾフェノン又はその誘導体から選ばれる少なくとも1種以上であるであることが望ましく、特に、上記重合開始剤は、ベンゾフェノン又はその誘導体を含むことが望ましい。
【0151】
第1の本発明の抗ウィルス性基体では、全光線透過率が90%以上であることが望ましく、全光線透過率が99%以上であることがより望ましい。
【0152】
第1の本発明の抗ウィルス性基体において、全光線透過率が90%以上であると、可視光等の光線を透過するので、光の透過性を利用した用途に用いることができる。
【0153】
第1の本発明の抗ウィルス性基体によれば、例えば、タッチパネルの保護用フィルムやディスプレイ用のフィルムに透明性を低下させず、抗ウィルス性を付与することができる。
また、建築物内部の内装材、壁材、窓ガラス、ドア、台所用品等や、事務機器や家具等や、種々の用途に用いられる化粧板等に、表面に形成されたパターン、色彩、意匠、色調等を変えることなく、抗ウィルス性を付与することができる。
【0154】
次に、第1の本発明の抗ウィルス性組成物及び抗ウィルス性基体の製造方法について説明する。
第1の本発明の抗ウィルス性基体の製造方法は、基材の表面に、銅化合物と未硬化の電磁波硬化型樹脂と分散媒と重合開始剤とを含む抗ウィルス性組成物を散布する散布工程と、上記散布工程により散布された上記抗ウィルス性組成物を乾燥させて上記分散媒を除去する乾燥工程と、上記乾燥工程で分散媒を除去した上記抗ウィルス性組成物中の上記未硬化の電磁波硬化型樹脂に電磁波を照射して上記電磁波硬化型樹脂を硬化させる硬化工程とを含むことを特徴とする。
【0155】
(1)散布工程
第1の本発明の抗ウィルス性基体の製造方法においては、まず、散布工程として、基材の表面に、銅化合物と未硬化の電磁波硬化型樹脂と分散媒と重合開始剤とを含む第1の本発明の抗ウィルス性組成物を散布する。
【0156】
第1の本発明の抗ウィルス性基体の製造方法では、銅化合物と未硬化の電磁波硬化型樹脂と分散媒と重合開始剤とを含む第1の本発明の抗ウィルス性組成物を使用する。
【0157】
上記抗ウィルス性組成物に含まれる銅化合物は、銅のカルボン酸塩、銅の水酸化物、銅の酸化物、又は、銅の水溶性無機塩であることが望ましい。特に二価の銅化合物(銅化合物(II))は、分散媒である水に溶解しやすく、銅イオンが紫外線硬化型樹脂中に分散しやすいからである。また、二価の銅化合物を抗ウィルス性組成物中に加えることで、この二価の銅化合物を還元することで、一価と二価の銅化合物が樹脂硬化物中に共存した状態を簡単に形成できるという利点も有する。水溶性の二価の銅化合物を用いることが最適である。
上記銅のカルボン酸塩としては、酢酸銅(II)、安息香酸銅(II)、フタル酸銅(II)等が挙げられる。上記銅化物としては、二価のカルボン酸銅(カルボン酸銅(II))が望ましい。
上記銅の水溶性無機塩としては、銅のイオン性化合物を使用することができ、例えば、硝酸銅(II)、硫酸銅(II)等が挙げられる。
その他の銅化合物としては、例えば、銅(II)(メトキシド)、銅(II)エトキシド、銅(II)プロポキシド、銅(II)ブトキシドなどが挙げられ、銅の共有結合性化合物としては銅の酸化物、銅の水酸化物などが挙げられる。
【0158】
上記電磁波硬化型樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、及び、アルキッド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。上記したように、上記電磁波硬化型樹脂とは、電磁波照射により原料であるモノマーやオリゴマーの重合反応や架橋反応等が進行して製造される樹脂を意味している。
従って、上記抗ウィルス性組成物は、上記電磁波硬化型樹脂の原料となるモノマーやオリゴマー(未硬化の電磁波硬化型樹脂)を含有している。
【0159】
上記分散媒の種類は特に限定されるものではないが、安定性を考慮した場合にはアルコール類や水を使用する事が好ましい。アルコール類としては、粘性を下げる事を考慮して、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール等のアルコール類が挙げられる。これらのアルコールのなかでは、粘度が高くなりにくいメチルアルコール、エチルアルコールが好ましく、アルコールと水との混合液が望ましい。
【0160】
第1の本発明の抗ウィルス性組成物及び抗ウィルス性基体の製造方法では、重合開始剤として、水に不溶性の重合開始剤を含むことが望ましい。水に触れても溶出しないため、樹脂硬化物を劣化させることがなく、銅化合物の脱離を招かないからである。
銅化合物が水溶性であっても樹脂硬化物で保持されていれば、脱離を抑制できるが、樹脂硬化物中に水溶性物質が含まれていると、樹脂硬化物の銅化合物に対する保持力が低下して、銅化合物の脱離が生じると推定される。
また、上記水に不溶性の重合開始剤は、光重合開始剤であることが好ましい。可視光線、紫外線等の光により、容易に重合反応を進行させることができるからである。
【0161】
第1の本発明の抗ウィルス性組成物及び抗ウィルス性基体の製造方法では、還元力のある光重合開始剤を用いることが望ましい。第1の本発明の抗ウィルス性組成物に含まれる上記銅化合物を抗ウィルス効果を持つ銅イオン(I)に還元するとともに、銅イオン(I)が酸化して抗ウィルス性の劣る銅イオン(II)に変わることを抑制できるからである。
【0162】
上記重合開始剤は、具体的には、アルキルフェノン系、ベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、分子内水素引き抜き型、及び、オキシムエステル系からなる群から選択される少なくとも1種が望ましい。
【0163】
上記アルキルフェノン系の重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(実施例1〜4の重合開始剤に相当)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホニル)フェニル]−1−ブタノン等が挙げられる。
【0164】
アシルフォスフィンオキサイド系の重合開始剤としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0165】
分子内水素引き抜き型の重合開始剤としては、例えば、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、オキシフェニルサクサン、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルトオキシフェニル酢酸と2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルとの混合物等が挙げられる。
【0166】
オキシムエステル系の重合開始剤としては、例えば、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0167】
第1の本発明の抗ウィルス性組成物及び抗ウィルス性基体の製造方法においては、重合開始剤は、アルキルフェノン系の重合開始剤、ベンゾフェノン又はその誘導体から選ばれる少なくとも1種以上を含むことが望ましい。紫外線等の電磁波により還元力を発現するからである。上記光重合開始剤のなかで、特に、ベンゾフェノン又はその誘導体が好ましい。
【0168】
第1の本発明の抗ウィルス性組成物及び抗ウィルス性基体の製造方法においては、上記重合開始剤は、アルキルフェノン系の重合開始剤およびベンゾフェノン系の重合開始剤を含み、上記アルキルフェノン系の重合開始剤の濃度が電磁波硬化型樹脂に対して、0.5〜3.0wt%、上記ベンゾフェノン系の重合開始剤の濃度が電磁波硬化型樹脂に対して0.5〜2.0wt%であることが望ましい。電磁波の照射時間が短くても高い架橋密度を実現できるからである。
上記アルキルフェノン系の重合開始剤とベンゾフェノン系の重合開始剤の比率は、重量比でアルキルフェノン系の重合開始剤/ベンゾフェノン系の重合開始剤=1/1〜4/1であることが望ましい。高い架橋密度を実現でき、硬化物の硬度を高くして耐摩耗性を改善できるとともに、銅に対する還元力を高くすることができるからである。架橋密度は85%以上、特に95%以上が望ましい。
【0169】
上記抗ウィルス性組成物中の銅化合物の含有割合は、4.0〜30.0重量%が望ましく、未硬化の電磁波硬化型樹脂(モノマー又はオリゴマー)の含有割合は、65〜95重量%が望ましく、分散媒の含有割合は、0.1〜5.0重量%が望ましい。
【0170】
第1の本発明の抗ウィルス性組成物中には、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、接着促進剤、レオロジー調整剤、レベリング剤、消泡剤等が配合されていてもよい。
【0171】
上記抗ウィルス性組成物を調製する際には、分散媒に銅化合物とモノマー若しくはオリゴマーと重合開始剤を添加した後、ミキサー等で充分に攪拌し、銅化合物、未硬化の電磁波硬化型樹脂等、重合開始剤が均一な濃度で分散する組成物とした後、散布することが望ましい。
【0172】
本明細書において、散布とは、上記抗ウィルス性組成物を、分割された状態で基材表面に付着させることをいう。
上記散布方法としては、例えば、スプレー法、二流体スプレー法、静電スプレー法、エアロゾル法等が挙げられる。
【0173】
第1の本発明において、スプレー法とは、高圧の空気などのガスや機械的な運動(指やピエゾ素子など)用いて抗ウィルス性組成物を霧の状態で噴霧し、基材表面に上記抗ウィルス性組成物の液滴を付着させることをいう。
第1の本発明において、二流体スプレー法とは、スプレー法の一種であり、高圧の空気などのガスと抗ウィルス性組成物とを混合した後、ノズルから霧の状態で噴霧し、基材表面に上記抗ウィルス性組成物の液滴を付着させることをいう。
第1の本発明において、静電スプレー法とは、帯電した抗ウィルス性組成物を利用する散布方法であり、上記したスプレー法により抗ウィルス性組成物を霧の状態で噴霧するが、上記抗ウィルス性組成物を霧状にするための方式には、上記抗ウィルス性組成物を噴霧器で噴霧するガン型と、帯電した抗ウィルス性組成物の反発を利用した静電霧化方式があり、さらに、ガン型には帯電した抗ウィルス性組成物を噴霧する方式と、噴霧した霧状の抗ウィルス性組成物に外部電極からコロナ放電で電荷を付与する方式とがある。霧状の液滴は、帯電しているため、基材表面に付着し易く、良好に上記抗ウィルス性組成物を、細かく分割された状態で基材表面に付着させることができる。
第1の本発明において、エアロゾル法とは、金属の化合物を含む抗ウィルス性組成物を物理的及び化学的に生成した霧状のものを対象物に吹き付ける手法である。
【0174】
上記散布工程により、銅化合物と未硬化の電磁波硬化型樹脂と分散媒と重合開始剤とを含む抗ウィルス性組成物が基材表面に島状に散在した状態、もしくは基材表面の一部を露出するように抗ウィルス性組成物が基材表面に付着した状態となる。
【0175】
(2)乾燥工程
上記散布工程により散布された銅化合物と樹脂硬化物と分散媒と重合開始剤とを含む抗ウィルス性組成物を乾燥させ、分散媒を蒸発、除去し、銅化合物等を含む樹脂硬化物を基材表面に仮固定させるとともに、樹脂硬化物の収縮により、銅化合物を樹脂硬化物の表面から露出させることができる。乾燥条件としては、60〜85℃、0.5〜1.0分が望ましい。
第1の本発明の抗ウィルス性基体の製造方法では、乾燥工程と硬化工程を同時に行ってもよい。
【0176】
(3)硬化工程
第1の本発明の抗ウィルス性基体の製造方法では、硬化工程として、上記乾燥工程で分散媒を除去した抗ウィルス性組成物中、もしくは、分散媒を含む抗ウィルス性組成物中の上記未硬化の電磁波硬化型樹脂であるモノマーやオリゴマーに電磁波を照射して上記電磁波硬化型樹脂を硬化させ、樹脂硬化物とする。
第1の本発明の抗ウィルス性基体の製造方法において、未硬化の電磁波硬化型樹脂に照射する電磁波としては、特に限定されず、例えば、紫外線(UV)、赤外線、可視光線、マイクロ波、電子線(ElectronBeam:EB)等が挙げられるが、これらのなかでは、紫外線(UV)が望ましい。
これらの工程により、上記した第1の本発明の抗ウィルス性基体を製造することができる。
【0177】
上記抗ウィルス性組成物中には、上記した重合開始剤が添加されているので、電磁波を照射することにより未硬化の電磁波硬化型樹脂であるモノマーやオリゴマーの重合反応や架橋反応等が進行し、銅化合物を含む樹脂硬化物が形成される。
上記散布工程により散布された抗ウィルス性組成物は、島状に散在、もしくは基材表面の一部を露出するように、抗ウィルス性組成物を付着させているので、得られた樹脂硬化物も島状、もしくは、銅化合物を含む樹脂硬化物が一部を露出させるように散在している。
上記樹脂硬化物の気孔率は、溶媒の濃度、重合開始剤の濃度、電磁波の照度、電磁波照射時の抗ウィルス性組成物の温度等を調整することにより、調整することができる。
【0178】
第1の本発明の抗ウィルス性基体の製造方法では、基材の表面に、銅化合物と未硬化の電磁波硬化型樹脂と分散媒と重合開始剤とを含む抗ウィルス性組成物を散布することにより、基材の表面に島状に抗ウィルス性組成物を付着させるか、基材表面の一部を露出するように、抗ウィルス性組成物を付着させることができ、乾燥工程の後、該島状の組成物に電磁波の照射により、未硬化の電磁波硬化型樹脂であるモノマーやオリゴマーの重合反応や架橋反応等が容易に進行し、比較的容易に島状に散在する、もしくは基材表面の一部を露出させるように銅化合物を含む樹脂硬化物を形成することができ、上記銅化合物の一部を樹脂硬化物の表面からウィルスと接触可能な状態で露出させてウィルスと接触させることにより、銅化合物による抗ウィルス性に優れた抗ウィルス性基体を製造することができる。また、製造された抗ウィルス性基体は、還元力のある光重合開始剤を含むことが望ましい。上記抗ウィルス性基体に含まれる上記銅化合物を抗ウィルス効果を持つ銅イオン(I)に還元するとともに、銅イオン(I)が酸化して抗ウィルス性の劣る銅イオン(II)に変わることを抑制でき、高い抗ウィルス性を発揮させることができるからである。
【0179】
次に、第2の本発明の抗微生物基体について説明する。
第2の本発明の抗微生物基体は、基材表面に、銅化合物及び重合開始剤を含むバインダの硬化物が固着し、上記銅化合物の少なくとも一部は、上記バインダの硬化物の表面から露出していることを特徴とする。
第2の本発明の抗微生物基体では、基材表面に、銅化合物及び重合開始剤を含むバインダの硬化物が固着し、上記銅化合物の少なくとも一部は、上記バインダの硬化物の表面から露出しているため、銅化合物が微生物と接触しやすく、銅化合物に基づく抗微生物活性を有する基体としての効果を充分に発揮することができる。
【0180】
第2の本発明の抗微生物基体では、基材表面に、銅化合物及び重合開始剤を含むバインダの硬化物が固着形成されていることを特徴とする。
【0181】
第2の本発明の抗微生物基体では、上記バインダの硬化物は、多孔質体からなることが望ましい。
上記銅化合物が空気などの雰囲気媒体と接触しやすくなり、銅イオン(I)が空気中の水や酸素を還元して、活性酸素、過酸化水素水やスーパーオキサイドアニオン、ヒドロキシラジカルなどを発生させて、微生物を構成する蛋白質を破壊し微生物を失活させやすくなるからである。第2の本発明においては、微生物としては、ウィルスおよび/またはカビに対して最も効力を発揮する。
【0182】
第2の本発明の抗微生物基体の基材の材料は、特に限定されるものでなく、例えば、金属、ガラス等のセラミック、樹脂、繊維織物、木材等が挙げられる。
また、第2の本発明の抗微生物基体の基材となる部材も、特に限定されるものではなく、タッチパネルの保護用フィルムやディスプレイ用のフィルムであってもよく、建築物内部の内装材、壁材、窓ガラス、手すり等であってもよい。また、ドアノブ、トイレのスライド鍵などでもよい。さらに事務機器や家具等であってもよく、上記内装材の外、種々の用途に用いられる化粧板等であってもよい。
【0183】
上記バインダ硬化物を形成するためのバインダは、有機バインダ、無機バインダ、有機バインダと無機バインダの混合物及び有機・無機ハイブリッドのバインダから選択される少なくとも1種以上であることが望ましい。
【0184】
また、無機バインダとしては、無機ゾル、金属アルコキシド、及び、水ガラスからなる群から選択される少なくとも1種を使用できる。さらに、有機・無機ハイブリッドのバインダとしては有機金属化合物を使用することができる。上記無機ゾルにおけるシリカ等の無機酸化物の含有割合は、固形分換算で1〜80重量%が好ましい。
【0185】
上記有機バインダとしては熱硬化性樹脂、電磁波硬化型樹脂を使用することができる。
これらの有機バインダは、電磁波の照射や加熱により、樹脂が硬化して基材表面に銅化合物を固着できるからである。また、これらの樹脂は、重合開始剤の銅に対する還元力を低下させることがないため有利である。電磁波硬化型樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種以上を使用することができる。また、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂から選ばれる少なくとも1種以上を使用できる。
【0186】
具体的には、上記バインダは、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、シリカゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、金属アルコキシド、及び、水ガラスからなる群から選択される少なくとも1種を使用できる。金属アルコキシドとしては、アルコキシシランを使用することができる。加水分解によりシロキサン結合を形成してゾルとなり、乾燥によってゲル化してバインダ硬化物となるからである。シリカゾル、アルミナゾル及び水ガラスについても、加熱、乾燥させることによりバインダ硬化物となる。
第2の本発明のバインダ硬化物は、第1の本発明に記載の電磁波硬化型樹脂の硬化物を含んだ概念である。
【0187】
第2の本発明において、上記バインダ硬化物に含まれる銅化合物は、銅のカルボン酸塩、銅の水酸化物、銅の酸化物、又は、銅の水溶性無機塩であることが望ましい。
上記銅のカルボン酸塩としては、銅のイオン性化合物を使用することができ、酢酸銅、安息香酸銅、フタル酸銅等が挙げられる。
上記銅の水溶性無機塩としては、銅のイオン性化合物を使用することができ、例えば、硝酸銅、硫酸銅等が挙げられる。
その他の銅化合物としては、例えば、銅(メトキシド)、銅エトキシド、銅プロポキシド、銅ブトキシドなどが挙げられ、銅の共有結合性化合物としては銅の酸化物、銅の水酸化物などが挙げられる。銅のカルボン酸塩、銅の水酸化物は、有機バインダ、無機バインダとの親和性が高く、水により溶出しないため、耐水性に優れる。
このような銅化合物は、バインダ硬化物を製造する際に用いる抗微生物組成物を調製する際に添加する銅化合物と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0188】
第2の本発明の抗微生物基体では、X線光電子分光分析法により、925〜955eVの範囲にあるCu(I)とCu(II)に相当する結合エネルギーを5分間測定することで算出される、上記銅化合物中に含まれるCu(I)とCu(II)とのイオンの個数の比率(Cu(I)/Cu(II))が0.4〜50であることが望ましい。Cu(II)と共存した方が、Cu(I)のみの場合に比べて、抗ウィルス性能が高くなる。この理由は明確ではないが、不安定なCu(I)のみの場合と比較して、安定なCu(II)と共存することで、Cu(I)が酸化されることを防止できるためではないかと推定している。特に、上記銅化合物中に含まれるCu(I)とCu(II)とのイオンの個数の比率(Cu(I)/Cu(II))が0.5〜50であることが好ましい。
【0189】
また、Cu(I)の銅は、Cu(II)の銅と比較して抗微生物性により優れているため、第2の本発明の抗微生物基体において、X線光電子分光分析法により、925〜955eVの範囲にあるCu(I)とCu(II)に相当する結合エネルギーを5分間測定することで算出される、上記銅化合物中に含まれるCu(I)とCu(II)とのイオンの個数の比率(Cu(I)/Cu(II))が1.0〜4.0であると、より抗微生物性に優れた抗微生物基体となる。
最も望ましい範囲は、上記銅化合物中に含まれるCu(I)とCu(II)とのイオンの個数の比率(Cu(I)/Cu(II))が1.4〜2.9がより望ましく、特に1.4〜1.9が最適である。
第2の本発明の抗微生物基体において、銅イオン(I)の抗微生物性は、ウィルスおよび/またはカビに対して最も効果が高い。一価の銅イオンがウィルスとカビを構成する蛋白を最も効果的に破壊するからである。
【0190】
また、バインダ硬化物が、島状に分散固定されている場合や、基材表面にバインダ硬化物が固着形成された領域とバインダ硬化物が固着形成されていない領域が混在している状態の場合は、銅化合物中のCu(I)/Cu(II)が0.4/1〜4.0/1に調整されていると、抗ウィルス性を高くできるため、望ましい。
第2の本発明における抗微生物基体における銅化合物中のCu(I)/Cu(II)の比率は、バインダ、重合開始剤、銅化合物の選択、これらの濃度調整、及び、紫外線などの電磁波の照射時間や強度で調整することができる。
【0191】
なお、Cu(I)とは、銅のイオン価数が1であることを意味し、Cuと表す場合もある。一方、Cu(II)とは、銅のイオン価数が2であることを意味し、Cu2+と表す場合もある。なお、一般的に、Cu(I)の結合エネルギーは、932.5eV±0.3(932.2〜 932.8eV)、Cu(II)の結合エネルギーは、933.8eV±0.3(933.5 〜 934.1eV)である。
【0192】
次に、第2の本発明の電磁波硬化型樹脂の硬化物について説明する。
未硬化の電磁波硬化型樹脂であるモノマー又はオリゴマーと光重合開始剤と各種添加剤を含んだ組成物に電磁波を照射することにより、光重合開始剤は、開裂反応、水素引き抜き反応、電子移動等の反応を起こし、これにより生成した光ラジカル分子、光カチオン分子、光アニオン分子等が上記モノマーや上記オリゴマーを攻撃してモノマーやオリゴマーの重合反応や架橋反応が進行し、樹脂の硬化物が生成する。このような反応により生成する第2の本発明の樹脂を電磁波硬化型樹脂という。
【0193】
第2の本発明においては、電磁波硬化型樹脂の硬化物に含まれる光重合開始剤が、銅イオン(II)を還元して銅イオン(I)を生成せしめるため、銅(I)の還元力によって、銅イオン(I)が空気中の水や酸素を還元することで、活性酸素、過酸化水素水やスーパーオキサイドアニオン、ヒドロキシラジカルなどを発生させて、微生物を構成する蛋白質を破壊してウィルスなどの微生物を失活させることができるからである。銅イオン(I)は空気中の水や酸素を還元すると、銅(II)に変わるが、電磁波硬化型樹脂に含まれる光重合開始剤によって、再び銅イオン(I)に還元されるため、還元力が常に維持される。このため、還元性糖などの還元剤は不要となり、また、光重合開始剤は、樹脂と結合しており、水に溶出しないので、耐水性にも優れる。
なお、銅イオン(II)の錯体を銅イオン(I)に還元すると錯体を形成し得ないため、銅イオン(II)から銅イオン(I)のような還元反応が生じにくく、銅のアミノ酸塩などの錯塩を第2の本発明に使用することは不適切である。
【0194】
上記アクリル樹脂としては、エポキシ変性アクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂(ウレタン変性アクリレート樹脂)、シリコン変性アクリレート樹脂等が挙げられる。
上記ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。
【0195】
上記エポキシ樹脂としては、脂環式エポキシ樹脂やグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂とオキセタン樹脂を組みわせたもの等が挙げられる。
アルキッド樹脂としては、ポリエステルアルキッド樹脂等が挙げられる。
これらの樹脂は、透明性を有するとともに、基材に対する密着性にも優れる。
【0196】
第2の本発明の抗微生物基体では、上記重合開始剤は、光重合開始剤を含むことが望ましい。上記光重合開始剤を含むと、上記銅化合物を抗微生物効果を持つ銅イオン(I)に還元するとともに、銅イオン(I)が酸化して抗微生物性の劣る銅イオン(II)に変わることを抑制できるからである。第2の本発明の抗微生物基体では、銅イオン(I)の抗微生物性は、ウィルスおよび/またはカビに対して最も効果が高い。
【0197】
第2の本発明の抗微生物基体では、上記バインダの硬化物は、水に不溶性の重合開始剤を含むことが望ましい。水に触れても溶出しないため、耐水性に優れたバインダ硬化物を有する抗微生物基体となるからである。
【0198】
第2の本発明の抗微生物基体では、上記重合開始剤は、アルキルフェノン系の重合開始剤、ベンゾフェノン又はその誘導体から選ばれる少なくとも1種以上であることが望ましく、特に、上記重合開始剤は、ベンゾフェノン又はその誘導体を含むことが望ましい。
これらの重合開始剤は、特に、銅に対する還元力が高く、銅イオン(I)の状態を長期間維持できる効果に優れるからである。
【0199】
第2の本発明の抗微生物基体では、上記重合開始剤は、アルキルフェノン系の重合開始剤およびベンゾフェノン系の重合開始剤を含み、上記アルキルフェノン系の重合開始剤の濃度がバインダに対して、0.5〜3.0wt%、上記ベンゾフェノン系の重合開始剤の濃度がバインダに対して0.5〜2.0wt%であることが望ましい。電磁波の照射時間が短くても高い架橋密度を実現できるからである。
上記アルキルフェノン系の重合開始剤とベンゾフェノン系の重合開始剤の比率は、重量比でアルキルフェノン系の重合開始剤/ベンゾフェノン系の重合開始剤=1/1〜4/1であることが望ましい。高い架橋密度を実現でき、硬化物の硬度を高くして耐摩耗性を改善できるとともに、銅に対する還元力を高くすることができるからである。架橋密度は、85%以上、特に95%以上が望ましい。
【0200】
第2の本発明の抗微生物基体におけるバインダ硬化物の基材表面に平行な方向の最大幅は、0.1〜500μmであり、その厚さの平均値は、0.1〜20μmであることが望ましく、全光線透過率は90%以上であることが望ましい。
【0201】
第2の本発明の抗微生物基体において、バインダ硬化物の厚さの平均値が0.1〜20μmであると、バインダ硬化物の厚さが薄いので、バインダ硬化物の連続層を形成しにくく、バインダ硬化物が島状に散在し易くなり、抗微生物の効果が発生し易い。
また、上記バインダ硬化物の上記基材の表面に平行な方向の最大幅を0.1〜500μmとすることにより、基材の表面がバインダ硬化物により被覆されていない部分の割合が多くなり、光透過率の低下を抑制することができる。
上記バインダの硬化物の基材表面に平行な方向の最大幅は、1〜100μmであり、その厚さの平均値は、1〜20μmであることがより望ましい。
【0202】
上記バインダ硬化物の厚さの平均値が20μmを超えると、バインダ硬化物の厚さが厚くなりすぎるため、バインダ硬化物の大きさが大きくなりすぎ、バインダ硬化物を、基材表面を露出させた状態で基材表面に固着させることが難しくなり、透明性も低下してしまうおそれがある。一方、バインダ硬化物の厚さの平均値が0.1μm未満であると、十分な抗微生物性能を発揮できない、あるいは銅化合物が脱落しやすくなるなどの問題が発生するおそれがある。
【0203】
また上記バインダ硬化物の上記基材表面に平行な方向の最大幅が500μmを超えると、バインダ硬化物を、基材表面を露出させた状態で基材表面に固着させることが難しくなり、透明性も低下してしまうおそれがある。一方、上記バインダ硬化物の表面に平行な方向の最大幅が0.1μm未満であると、基材との密着性が低下して硬化物が脱落しやすくなるおそれがある。
【0204】
第2の本発明の抗微生物基体において、全光線透過率が90%以上であると、可視光等の光線を透過するので、光の透過性を利用した用途に用いることができる。
【0205】
第2の本発明の抗微生物基体では、バインダの硬化物が島状に散在して固着形成されているか、もしくは、基材表面にバインダ硬化物が固着形成された領域とバインダ硬化物が固着形成されていない領域が混在し、基材表面に、上記バインダ硬化物が存在せず、基材表面が露出している部分が存在するため、可視光線の基材表面に対する透過率が低下するなど不都合を防止することができる。そのため、基材が透明な材料である場合には、基材の透明性が低下することはなく、基材表面に所定パターンの意匠等が形成されている場合には、意匠等の外観を損ねることもない。
【0206】
また、第2の本発明の抗微生物基体では、上記バインダ硬化物が島状に散在して固着形成されているか、もしくは、基材表面にバインダ硬化物が固着形成された領域とバインダ硬化物が固着形成されていない領域が混在しているため、上記バインダ硬化物の基材表面との接触面積を小さくすることができ、バインダ硬化物の残留応力、冷熱サイクル時に発生する応力を抑制することが可能となり、基材と高い密着性を有する上記バインダ硬化物を形成することができる。
バインダの硬化物が島状に散在して固着されているか、もしくは、基材表面にバインダの硬化物が固着形成された領域とバインダの硬化物が固着形成されていない領域が混在している場合は、バインダ硬化物の表面積が大きくなり、また、ウィルスなどの微生物をバインダ硬化物間にトラップさせやすくなるため、抗微生物性能を持つバインダ硬化物とウィルスなどの微生物との接触確率が高くなるため、高い抗微生物性能を発現できる。
【0207】
さらに、第2の本発明の抗微生物基体では、上記バインダ硬化物が膜状に形成されていてもよい。
抗微生物性のバインダ硬化物が膜状に形成されていると、島状に分散固定されている場合や基材表面にバインダ硬化物が固着形成された領域とバインダ硬化物が固着形成されていない領域が混在している状態に比べてふき取り清掃への耐性に優れているのである。
その一方で、バインダ硬化物が基材上に膜状に固着形成されている場合、基材表面の意匠の視認性、抗微生物性能、及び、冷熱サイクル後のバインダ硬化物の基材に対する密着性は、バインダ硬化物が島状に分散固定されている場合や基材表面にバインダ硬化物が固着形成された領域とバインダ硬化物が固着形成されていない領域が混在している場合に比べて低下する。
【0208】
上記バインダ硬化物からなる膜の厚さは、0.5〜100μmが望ましい。厚すぎると応力が発生して膜が剥離して抗微生物性が低下し、膜が薄すぎても抗微生物性を十分発揮できないからである。
上記基材に意匠が施されていない場合や、表面がエンボス加工された基材である場合、バインダ硬化物による外観毀損の影響が少ないため、バインダ硬化物からなる膜が基材上に形成されていることが望ましい。
また、意匠性よりも抗微生物性能を優先させる場合には、上記のように、バインダ硬化物からなる膜が基材上に形成されていてもよい。
【0209】
次に、第2の本発明の抗微生物組成物及び抗微生物基体の製造方法について説明する。
第2の本発明の抗微生物基体の製造方法は、基材の表面に、銅化合物と未硬化のバインダと分散媒と重合開始剤とを含む抗微生物組成物を付着せしめる付着工程と、上記付着工程により付着した上記抗微生物組成物中の上記未硬化のバインダを硬化させて、基材の表面にバインダ硬化物を固着せしめる硬化工程とを含むことを特徴とする。
【0210】
また、第2の本発明の抗微生物基体の製造方法は、基材の表面に、銅化合物と未硬化のバインダと分散媒と重合開始剤とを含む抗微生物組成物を付着せしめる付着工程と、上記付着工程により付着した上記抗微生物組成物を乾燥させて上記分散媒を除去する乾燥工程と、上記乾燥工程で分散媒を除去した上記抗微生物組成物中の上記未硬化のバインダを硬化させて、基材の表面にバインダ硬化物を固着せしめる硬化工程とを含むことを特徴とする。
第2の本発明の製造方法におけるいずれかの工程中で、重合開始剤の還元力を発現せしめるために、所定の波長の電磁波、例えば紫外線等を照射することが望ましい。
【0211】
すなわち、第2の本発明の抗微生物基体の製造方法では、付着工程の後、直ちに硬化工程を行ってもよく、付着工程の後、乾燥工程を経た後、硬化工程を行ってもよい。
【0212】
第2の本発明の抗微生物基体の製造方法では、付着工程において、銅化合物、未硬化のバインダ、分散媒及び重合開始剤を含む第2の本発明の抗微生物組成物を基材の表面に付着せしめる。
【0213】
上記バインダは、有機バインダ、無機バインダ、有機バインダと無機バインダの混合物及び有機・無機ハイブリッドのバインダから選択される少なくとも1種以上であることが望ましく、有機バインダとしては熱硬化性樹脂、電磁波硬化型樹脂を使用することができる。
また、無機バインダとしては、無機ゾル、金属アルコキシド、及び、水ガラスからなる群から選択される少なくとも1種を使用できる。さらに、有機・無機ハイブリッドのバインダとしては有機金属化合物を使用することができる。
【0214】
電磁波硬化型樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種以上を使用することができる。また、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂から選ばれる少なくとも1種以上を使用できる。
また、上記バインダの具体例としては、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、シリカゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、金属アルコキシド及び水ガラスからなる群から選択される少なくとも1種を使用することが望ましい。
【0215】
上記無機バインダは、分散媒として、水を用いたものと有機溶媒を用いたものが存在するので、添加する銅化合物の種類等を考慮して、無機バインダを選択することができ、銅化合物が均一に分散した抗微生物組成物を得ることができる。
【0216】
次に、第2の本発明の抗微生物基体の製造方法について各工程毎に説明する。
(1)付着工程
第2の本発明の抗微生物基体の製造方法においては、まず、付着工程として、基材の表面に、銅化合物と未硬化のバインダと分散媒と重合開始剤とを含む第2の本発明の抗微生物組成物を付着せしめる。
【0217】
第2の本発明の抗微生物基体の製造方法では、銅化合物と未硬化のバインダと分散媒と重合開始剤とを含む抗微生物組成物を使用する。
【0218】
上記抗微生物組成物に含まれる銅化合物は、銅のカルボン酸塩、銅の水酸化物、銅の酸化物、又は、銅の水溶性無機塩であることが望ましい。特に、二価の銅化合物(銅化合物(II))が望ましい。二価の銅化合物は、分散媒である水に溶解して、銅イオンがバインダ中に均一分散しやすくなるためである。これに対して、一価の銅化合物(銅化合物(I))は、水に溶解せず、粒子状に懸濁してしまい、均一性に劣る。
また、二価の銅化合物を抗微生物組成物中に加えることで、この二価の銅化合物を還元することで、一価と二価の銅化合物がバインダ硬化物中に共存した状態を簡単に形成できるという利点も有する。水溶性の二価の銅化合物を用いることが最適である。
【0219】
上記銅のカルボン酸塩としては、酢酸銅(II)、安息香酸銅(II)、フタル酸銅(II)等が挙げられる。上記銅化物としては、二価の銅のカルボン酸塩が望ましい。
上記銅の水溶性無機塩としては、銅のイオン性化合物を使用することができ、例えば、硝酸銅(II)、硫酸銅(II)等が挙げられる。
その他の銅化合物としては、例えば、銅(II)(メトキシド)、銅(II)エトキシド、銅(II)プロポキシド、銅(II)ブトキシドなどが挙げられ、銅の共有結合性化合物としては銅の酸化物、銅の水酸化物などが挙げられる。
【0220】
上記未硬化のバインダは、有機バインダ、無機バインダ、有機バインダと無機バインダの混合物及び有機・無機ハイブリッドのバインダから選択される少なくとも1種以上であることが望ましく、有機バインダとしては熱硬化性樹脂、電磁波硬化型樹脂を使用することができる。
また、無機バインダとしては、無機ゾル、金属アルコキシド、及び、水ガラスからなる群から選択される少なくとも1種を使用できる。さらに、有機・無機ハイブリッドのバインダとしては有機金属化合物を使用することができる。
【0221】
電磁波硬化型樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種以上を使用することができる。また、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂から選ばれる少なくとも1種以上を使用できる。
また、上記バインダの具体例としては、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、シリカゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、金属アルコキシド及び水ガラスからなる群から選択される少なくとも1種を使用することが望ましい。
【0222】
なお、上記電磁波硬化型樹脂とは、電磁波照射により原料であるモノマーやオリゴマーの重合反応や架橋反応等が進行して製造される樹脂を意味している。
従って、上記抗微生物組成物は、上記電磁波硬化型樹脂の原料となるモノマーやオリゴマー(未硬化の電磁波硬化型樹脂)を含有している。
【0223】
上記分散媒の種類は特に限定されるものではないが、安定性を考慮した場合にはアルコール類や水を使用する事が好ましい。アルコール類としては、粘性を下げる事を考慮して、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール等のアルコール類が挙げられる。これらのアルコールのなかでは、粘度が高くなりにくいメチルアルコール、エチルアルコールが好ましく、アルコールと水との混合液が望ましい。
【0224】
第2の本発明の抗微生物組成物及び抗微生物基体の製造方法では、重合開始剤として、水に不溶性の重合開始剤を含むことが望ましい。水に触れても溶出しないため、バインダ硬化物を劣化させることがなく、銅化合物の脱離を招かないからである。
銅化合物が水溶性であってもバインダ硬化物で保持されていれば、脱離を抑制できるが、バインダ硬化物中に水溶性物質が含まれていると、バインダ硬化物の銅化合物に対する保持力が低下して、銅化合物の脱離が生じると推定される。
また、上記水に不溶性の重合開始剤は、光重合開始剤であることが好ましい。電磁波硬化型樹脂を用いた場合、可視光線、紫外線等の光により、容易に重合反応を進行させることができるからである。
【0225】
第2の本発明の抗微生物組成物及び抗微生物基体の製造方法では、還元力のある光重合開始剤を用いることが望ましい。第2の本発明の抗微生物組成物に含まれる上記銅化合物を抗ウィルス効果などの抗微生物効果を持つ銅イオン(I)に還元するとともに、銅イオン(I)が酸化して抗微生物の劣る銅イオン(II)に変わることを抑制できるからである。
第2の本発明の抗微生物組成物は、ウィルスおよび/またはカビに最も効果的に作用する。銅(I)の還元力によって、銅イオン(I)が空気中の水や酸素を還元することで、活性酸素、過酸化水素水やスーパーオキサイドアニオン、ヒドロキシラジカルなどを発生させてウィルスまたはカビを構成する蛋白を効果的に破壊するからである。
【0226】
上記重合開始剤は、具体的にはアルキルフェノン系、ベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、分子内水素引き抜き型、及び、オキシムエステル系からなる群から選択される少なくとも1種が望ましい。
【0227】
上記アルキルフェノン系の重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(実施例1〜4の重合開始剤に相当)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホニル)フェニル]−1−ブタノン等が挙げられる。
【0228】
アシルフォスフィンオキサイド系の重合開始剤としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0229】
分子内水素引き抜き型の重合開始剤としては、例えば、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、オキシフェニルサクサン、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルトオキシフェニル酢酸と2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルとの混合物等が挙げられる。
【0230】
オキシムエステル系の重合開始剤としては、例えば、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0231】
第2の本発明の抗微生物組成物及び抗微生物基体の製造方法においては、重合開始剤は、アルキルフェノン系の重合開始剤、ベンゾフェノン又はその誘導体から選ばれる少なくとも1種以上を含むことが望ましい。紫外線等の電磁波により還元力を発現するからである。上記光重合開始剤のなかで、特に、ベンゾフェノン又はその誘導体が好ましい。
【0232】
上記重合開始剤は、アルキルフェノン系の重合開始剤およびベンゾフェノン系の重合開始剤を含み、上記アルキルフェノン系の重合開始剤の濃度がバインダに対して、0.5〜3.0wt%、上記ベンゾフェノン系の重合開始剤の濃度がバインダに対して0.5〜2.0wt%であることが望ましい。上記アルキルフェノン系の重合開始剤とベンゾフェノン系の重合開始剤の比率は、重量比でアルキルフェノン系の重合開始剤/ベンゾフェノン系の重合開始剤=1/1〜4/1であることが望ましい。高い架橋密度を実現でき、硬化物の硬度を高くして耐摩耗性を改善できるとともに、銅に対する還元力を高くすることができるからである。架橋密度は85%以上、特に95%以上が望ましい。
【0233】
バインダとして未硬化の電磁波硬化型樹脂(モノマー又はオリゴマー)を用いた場合は、上記抗微生物組成物中の銅化合物の含有割合は、2.0〜30.0重量%が望ましく、未硬化の電磁波硬化型樹脂(モノマー又はオリゴマー)の含有割合は、15〜40重量%が望ましく、分散媒の含有割合は、30〜80重量%が望ましい。
また、バインダとして未硬化の無機バインダを用いた場合は、上記抗微生物組成物中の銅化合物の含有割合は、2〜30重量%が望ましく、分散媒の含有割合は、30〜80重量%が望ましい。この場合、上記混合組成物中のシリカ等の無機酸化物の含有割合は、5〜20重量%となる。
【0234】
第2の本発明の抗微生物組成物中には、必要に応じて、pH調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、接着促進剤、レオロジー調整剤、レベリング剤、消泡剤等が配合されていてもよい。
【0235】
上記抗微生物組成物を調製する際には、分散媒に銅化合物とバインダ成分と重合開始剤を添加した後、ミキサー等で充分に攪拌し、均一な濃度で分散する組成物とした後、基材の表面に付着せしめることが望ましい。
【0236】
本明細書においては、基材の表面に抗微生物組成物を付着せしめる。上記抗微生物組成物を、分割された状態で基材表面に島状に散在させるか、基材表面に抗微生物組成物が付着された領域と抗微生物組成物が付着されていない領域とを混在させた状態、すなわち、基材表面の一部が露出するような状態となるように抗微生物組成物を付着せしめてもよく、上記抗微生物組成物を、基材表面に膜状に形成してもよい。
【0237】
基材表面を上記した状態とするためには、例えば、スプレー法、二流体スプレー法、静電スプレー法、エアロゾル法等を用いて抗微生物組成物を散布する方法、塗布用のバーコーター、アプリケーター等の塗布冶具を用いて抗微生物組成物を塗布する方法等が挙げられる。
【0238】
第2の本発明において、スプレー法とは、高圧の空気などのガスや機械的な運動(指やピエゾ素子など)用いて抗微生物組成物を霧の状態で噴霧し、基材表面に上記抗微生物組成物の液滴を付着させることをいう。
第2の本発明において、二流体スプレー法とは、スプレー法の一種であり、高圧の空気などのガスと抗微生物組成物とを混合した後、ノズルから霧の状態で噴霧し、基材表面に上記抗微生物組成物の液滴を付着させることをいう。
第2の本発明において、静電スプレー法とは、帯電した抗微生物組成物を利用する散布方法であり、上記したスプレー法により抗微生物組成物を霧の状態で噴霧するが、上記抗微生物組成物を霧状にするための方式には、上記抗微生物組成物を噴霧器で噴霧するガン型と、帯電した抗微生物組成物の反発を利用した静電霧化方式があり、さらに、ガン型には帯電した抗微生物組成物を噴霧する方式と、噴霧した霧状の抗微生物組成物に外部電極からコロナ放電で電荷を付与する方式とがある。霧状の液滴は、帯電しているため、基材表面に付着し易く、良好に上記抗微生物組成物を、細かく分割された状態で基材表面に付着させることができる。
第2の本発明において、エアロゾル法とは、金属の化合物を含む抗微生物組成物を物理的及び化学的に生成した霧状のものを対象物に吹き付ける手法である。
【0239】
上記付着工程により、銅化合物と未硬化のバインダと分散媒と重合開始剤とを含む抗微生物組成物が、分割された状態で基材表面に島状に散在しているか、基材表面に抗微生物組成物が付着された領域と抗微生物組成物が付着されていない領域とが混在した状態となる。もちろん、上記抗微生物組成物が、基材表面に膜状に形成されていてもよい。
【0240】
(2)乾燥工程
上記散布工程により散布された銅化合物と未硬化のバインダと分散媒と重合開始剤とを含む抗微生物組成物を乾燥させ、分散媒を蒸発、除去し、銅化合物等を含むバインダ硬化物を基材表面に仮固定させるとともに、バインダ硬化物の収縮により、銅化合物をバインダ硬化物の表面から露出させることができる。乾燥条件としては、20〜100℃、0.5〜5.0分が望ましい。乾燥は、赤外線ランプやヒータなどで行うことができる。また、減圧(真空)乾燥させてもよい。
第2の本発明の抗微生物基体の製造方法では、乾燥工程と硬化工程を同時に行ってもよい。
【0241】
(3)硬化工程
第2の本発明の抗微生物基体の製造方法では、硬化工程として、上記乾燥工程で分散媒を除去した抗微生物組成物中、もしくは、分散媒を含む抗微生物組成物中の上記未硬化のバインダを硬化させ、バインダ硬化物とする。
未硬化のバインダを硬化させる方法としては、乾燥による分散媒除去、加熱や電磁波照射によるモノマー、オリゴマーの重合促進などがある。乾燥は、減圧乾燥、加熱乾燥などが挙げられる。また、バインダが熱硬化性樹脂の場合は、加熱により硬化が進行する。加熱はヒータ、赤外線ランプ、紫外線ランプなどで行うことができる。未硬化のバインダが電磁波硬化型樹脂である場合に照射する電磁波としては、特に限定されず、例えば、紫外線(UV)、赤外線、可視光線、マイクロ波、電子線(ElectronBeam:EB)等が挙げられるが、これらのなかでは、紫外線(UV)が望ましい。
これらの工程により、上記した第2の本発明の抗微生物基体を製造することができる。
【0242】
上記抗微生物組成物中には、上記した重合開始剤が添加されているので、バインダとしてモノマーやオリゴマーを含む場合は、それらの重合反応が進行する。また、重合開始剤は銅を還元するため、銅(II)を銅(I)に還元でき、銅(I)の量を増やすことができるため、ウィルスなどの抗微生物活性の高いバインダ硬化物が得られるのである。
【0243】
上記付着工程により抗微生物組成物は、島状に散在しているか、基材表面に抗微生物組成物が付着された領域と抗微生物組成物が付着されていない領域とが混在した状態となっているので、得られたバインダ硬化物も島状に散在しているか、基材表面にバインダ硬化物が付着された領域とバインダ硬化物が付着されていない領域とが混在した状態となっている。また、バインダ硬化物が基材表面に膜状に形成されていてもよい。
【0244】
上記バインダ硬化物の基材表面への被覆率は、抗微生物組成物中の抗ウィルス成分等の抗微生物成分の濃度、分散媒の濃度等や散布の圧力、塗液の噴出速度、塗工時間等を操作することにより、調整することができる。スプレーガンを用いて噴射する場合は、スプレーガンのエアー圧力やスプレー塗布幅、スプレーガンの移動速度、塗液の噴出速度、塗布距離を変化させることにより、バインダ硬化物の被覆率を調整することができる。
【0245】
その後、紫外線照射をして、重合開始剤の還元力を発現せしめる。第2の本発明の製造方法におけるいずれかの工程中で、重合開始剤の還元力を発現せしめるために、所定の波長の電磁波、例えば紫外線等を照射することが望ましい。特に光重合開始剤を用いた場合は、電磁波の照射により、ラジカルが発生し、銅イオンを還元することで、抗微生物活性、特に抗ウィルス活性の高い銅(I)の量を増やすことができ、有効である。
【0246】
上記した第2の本発明の抗微生物基体の製造方法により、バインダ硬化物が、基材表面に島状に固着形成されてなるか、基材表面にバインダ硬化物が固着形成された領域とバインダ硬化物が固着形成されていない領域が混在してなる抗微生物基体を製造することができる。その結果、上記バインダ硬化物の基材表面との接触面積を小さくすることができ、バインダ硬化物の残留応力、冷熱サイクル時に発生する応力を抑制することが可能となり、基材と高い密着性を有する上記バインダ硬化物を形成することができる。
バインダの硬化物が島状に散在して固着されているか、もしくは、基材表面にバインダの硬化物が固着形成された領域とバインダの硬化物が固着形成されていない領域が混在している場合は、バインダ硬化物の表面積が大きくなり、また、ウィルスなどの微生物をバインダ硬化物間にトラップさせやすくなるため、抗微生物性能を持つバインダ硬化物とウィルスなどの微生物との接触確率が高くなり、高い抗微生物性能を発現できる。
【0247】
また、上記した第2の本発明の抗微生物基体の製造方法により、上記バインダ硬化物が、基材表面に膜状に固着形成されてなり、ふき取り清掃への耐久性に優れた抗微生物基体を製造することができる。そのため、島状に分散固定されている場合や基材表面にバインダ硬化物が固着形成された領域とバインダ硬化物が固着形成されていない領域が混在している状態に比べてふき取り清掃への耐性に優れている。
その一方で、バインダ硬化物が基材上に膜状に固着形成されている場合は、基材表面の意匠の視認性、抗微生物性能、及び、冷熱サイクル後のバインダ硬化物の基材に対する密着性は、バインダ硬化物が島状に分散固定されている場合や基材表面にバインダ硬化物が固着形成された領域とバインダ硬化物が固着形成されていない領域が混在している場合に比べて低下する。
【実施例】
【0248】
(実施例1)
(1)酢酸銅の濃度が6wt%になるように、酢酸銅(II)・一水和物粉末(富士フイルム和光純薬製)を純水に溶解させた後、マグネチックスターラーを用い、600rpmで15分撹拌して酢酸銅水溶液を作成した。紫外線硬化樹脂液は、光ラジカル重合型アクリレート樹脂(ダイセル・オルネクス社製 UCECOAT7200)と光重合開始剤(IGM社製 Omnirad500)を重量比98:2で混合し、撹拌棒で撹拌して作成した。上記6wt%酢酸銅水溶液と紫外線硬化樹脂液を重量比4.8:1.0で混合し、マグネチックスターラーを用い、600rpmで2分撹拌して抗ウィルス性組成物を調製した。なお、IGM社製 Omnirad500は、BASF社のIRGACURE 500と同じもので、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンとベンゾフェノンの混合物(重量比で1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(アルキルフェノン):ベンゾフェノン=1:1)である。この光重合開始剤は、水に不溶性であり、紫外線により還元力を発現する。
【0249】
(2)ついで、300mm×300mmの大きさのガラス板上に、分散媒を含んだ状態で23g/mに相当する抗ウィルス性組成物をスプレーガン(明治機械製作所製 FINER SPOT G12)で霧化状に散布し、抗ウィルス性組成物の液滴をガラス板表面に島状に散在させた。
【0250】
(3)この後、80℃で1分間乾燥させることにより、基材であるガラス板表面に銅化合物を含む電磁波硬化型樹脂の硬化物が島状に散在する抗ウィルス性基体を得た。
【0251】
(4)次に、紫外線照射装置を用いて1250mJ/cmの積算光量となるように抗ウィルス性組成物に紫外線を照射することにより、未硬化の光ラジカル重合型アクリレート樹脂(モノマー)を重合、硬化させ、樹脂硬化物の基材表面に平行な方向の最大幅が1〜100μmの島状の塗膜を得た。
このようにして、基材であるガラス板表面に銅化合物を含む電磁波硬化型樹脂の硬化物が島状に散在する抗ウィルス性基体を得た。酢酸銅は、水酸化銅および一部は酸化銅に変化していると推定される。
【0252】
(実施例2)
(1)硝酸銅の濃度が6wt%になるように、硝酸銅(II)・三水和物粉末(関東化学製)を純水に溶解させた後、マグネチックスターラーを用い、600rpmで15分撹拌して硝酸銅水溶液を作成した。紫外線硬化樹脂液は、光ラジカル重合型アクリレート樹脂(ダイセル・オルネクス社製 UCECOAT7200)と光重合開始剤(IGM社製 Omnirad500)を重量比98:2で混合し、撹拌棒で撹拌して作成した。上記6wt%硝酸銅水溶液と紫外線硬化樹脂液を重量比4.8:1.0で混合し、マグネチックスターラーを用い、600rpmで2分撹拌して抗ウィルス性組成物を調製した。なお、IGM社製 Omnirad500は、BASF社のIRGACURE500と同じもので、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンとベンゾフェノンの混合物(重量比で1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(アルキルフェノン):ベンゾフェノン=1:1)である。この光重合開始剤は、水に不溶性であり、紫外線を吸収することで還元力を発現する。
【0253】
(2)ついで、300mm×300mmの大きさのガラス板上に、分散媒を含んだ状態で23g/mに相当する抗ウィルス性組成物をスプレーガン(明治機械製作所製 FINER SPOT G12)で霧化状に散布し、抗ウィルス性組成物の液滴をガラス板表面に島状に散在させた。
【0254】
(3)この後、80℃で1分間乾燥させることにより、基材であるガラス板表面に銅化合物を含む多孔質体からなる電磁波硬化型樹脂の硬化物が島状に散在する抗ウィルス性基体を得た。
【0255】
(4)次に、紫外線照射装置を用いて1250mJ/cmの積算光量となるように抗ウィルス性組成物に紫外線を照射することにより、未硬化の光ラジカル重合型アクリレート樹脂(モノマー)を重合、硬化させ、樹脂硬化物の基材表面に平行な方向の最大幅が1〜100μmの島状の塗膜を得た。
このようにして、基材であるガラス板表面に銅化合物を含む電磁波硬化型樹脂の硬化物が島状に散在する抗ウィルス性基体を得た。
【0256】
(実施例3)
(1)酢酸銅の濃度が3.3wt%になるように、酢酸銅(II)・一水和物粉末(富士フイルム和光純薬製)を純水に溶解させた後、マグネチックスターラーを用い、600rpmで15分撹拌して酢酸銅水溶液を作成した。紫外線硬化樹脂液は、光ラジカル重合型アクリレート樹脂(ダイセル・オルネクス社製 UCECOAT7200)と光重合開始剤(IGM社製 Omnirad500)を重量比98:2で混合し、撹拌棒で撹拌して作成した。上記3.3wt%酢酸銅水溶液と紫外線硬化樹脂液を重量比0.4:1.0で混合し、マグネチックスターラーを用い、600rpmで2分撹拌して抗ウィルス性組成物を調製した。なお、IGM社製 Omnirad500は、BASF社のIRGACURE500と同じもので、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンとベンゾフェノンの混合物である。この光重合開始剤は、水に不溶性であり、紫外線を吸収することで還元力を発現する。
【0257】
(2)ついで、300mm×300mmの大きさのガラス板上に、分散媒を含んだ状態で58.8g/mに相当する抗ウィルス性組成物をスプレーガン(明治機械製作所製 FINER SPOT G12)で霧化状に散布し、抗ウィルス性組成物の液滴をガラス板表面に島状に散在させた。
【0258】
(3)この後、紫外線照射装置を用いて14400mJ/cmの積算光量となるように抗ウィルス性組成物に紫外線を照射することにより、未硬化の光ラジカル重合型アクリレート樹脂(モノマー)を重合、硬化させ、樹脂硬化物の基材表面に平行な方向の最大幅が1〜100μmの島状の塗膜を得た。
このようにして、基材であるガラス板表面に銅化合物を含む電磁波硬化型樹脂の硬化物が島状に散在する抗ウィルス性基体を得た。酢酸銅は、水酸化銅および一部は酸化銅に変化していると推定される。
【0259】
(実施例4)
基本的に実施例3と同様であるが、水酸化銅(II)の粉末を純水100重量部に対して、1.8重量部になるように純水に分散させ、この水酸化銅分散液と紫外線硬化樹脂液を重量比0.4:1.0で混合し、マグネチックスターラーを用い、600rpmで2分撹拌して抗ウィルス性組成物を調製した。
【0260】
(実施例5)
(1)酢酸銅の濃度が0.4wt%になるように、酢酸銅(II)・一水和物粉末(富士フイルム和光純薬製)をエタノール(甘糟化学産業製)に溶解させた後、マグネチックスターラーを用い、600rpmで30分撹拌して酢酸銅エタノール液を調製した。紫外線硬化樹脂に変えて、硬化時にシロキサン結合を形成する無機ゾル(コルコート製 N−103X)と光重合開始剤(IGM社製 Omnirad500)とを重量比1600:1で混合し、撹拌棒で撹拌して無機ゾル硬化液を調製した。上記0.4wt%酢酸銅エタノール液と無機ゾル硬化液を重量比1.0:9.6で混合し、マグネチックスターラーを用い、600rpmで2分撹拌して抗ウィルス性組成物を調製した。なお、IGM社製 Omnirad500は、BASF社のIRGACURE 500と同じもので、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンとベンゾフェノンの混合物である。この光重合開始剤は、水に不溶性であり、紫外線により還元力を発現する。
【0261】
(2)ついで、300mm×300mmの大きさのガラス板上に、分散媒を含んだ状態で1473.5g/mに相当する抗ウィルス性組成物をスプレーガン(明治機械製作所製 FINER SPOT G12)で霧化状に散布し、抗ウィルス性組成物の液滴をガラス板表面に島状に散在させた。
【0262】
(3)この後、80℃で3分間乾燥させ、次に、紫外線照射装置を用いて2400mJ/cmの積算光量となるように抗ウィルス性組成物に紫外線を照射することにより、基材であるガラス板表面に銅化合物を含む無機多孔質体からなる無機ゾル硬化物が島状に散在する抗ウィルス性基体を得た。酢酸銅は、水酸化銅および一部は酸化銅に変化していると推定される。
【0263】
(実施例6)
(1)酢酸銅の濃度が0.7wt%になるように、酢酸銅(II)・一水和物粉末(富士フイルム和光純薬製)を純水に溶解させた後、マグネチックスターラーを用い、600rpmで15分撹拌して酢酸銅水溶液を調製した。紫外線硬化樹脂液は、光ラジカル重合型アクリレート樹脂(ダイセル・オルネクス社製UCECOAT7200)と光重合開始剤(IGM社製 Omnirad500)を重量比98:2で混合し、ホモジナイザーを用いて、8000rpmで10分間撹拌して調製した。上記0.7wt%酢酸銅水溶液と紫外線硬化樹脂液を重量比1.9:1.0で混合し、マグネチックスターラーを用い、600rpmで2分撹拌して抗ウィルス性組成物を調製した。なお、IGM社製 Omnirad500は、BASF社のIRGACURE500と同じもので、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンとベンゾフェノンの混合物である。この光重合開始剤は、水に不溶性であり、紫外線を吸収することで還元力を発現する。
【0264】
(2)ついで、200mm×200mmの大きさの表面エンボス形状のメラミン化粧板及び200mm×200mmの大きさのガラス板の表面に、分散媒を含んだ状態で、No.13のバーコーターを用いて抗ウィルス性組成物を表面塗工し、抗ウィルス性組成物の被膜を表面エンボス形状のメラミン化粧板及びガラス板の表面にコーティングした。
【0265】
(3)この後、80℃で1分間乾燥させることにより、基材である表面エンボス形状のメラミン化粧板表面及びガラス板の表面に銅化合物を含む透明色の抗ウィルス性組成物を得た。
【0266】
(4)さらに、紫外線照射装置を用いて2400mJ/cmの積算光量となるように抗ウィルス性組成物に紫外線を照射することにより、未硬化の光ラジカル重合型アクリレート樹脂(モノマー)を重合、硬化させ、メラミン化粧板表面及びガラス板の表面に厚み10μmの膜状の塗工被膜を得た。酢酸銅は、水酸化銅および一部は酸化銅に変化していると推定される。
【0267】
(実施例7)
実施例1と同様であるが、分散媒を含んだ状態で92g/mに相当する抗ウィルス性組成物をスプレーガン(明治機械製作所製 FINER SPOT G12)で霧化状に散布、基材表面への付着量を増やし、抗ウィルス性の樹脂硬化物が固着した領域と固着していない領域が混在した塗工被膜を得た。
図6は、実施例7で製造した抗ウィルス性基体を示す光学顕微鏡写真である。
【0268】
(実施例8)
(1)酢酸銅の濃度が1.75wt%になるように、酢酸銅(II)・一水和物粉末(富士フイルム和光純薬製)を純水に溶解させた後、マグネチックスターラーを用い、600rpmで15分撹拌して酢酸銅水溶液を調製した。紫外線硬化樹脂液は、光ラジカル重合型アクリレート樹脂(ダイセル・オルネクス社製UCECOAT7200)と光重合開始剤(IGM社製 Omnirad500)、光重合開始剤(IGM社製 Omnirad184)を重量比97:2:1で混合し、ホモジナイザーを用いて、8000rpmで10分間撹拌して調製した。上記0.7wt%酢酸銅水溶液と紫外線硬化樹脂液を重量比1.9:1.0で混合し、マグネチックスターラーを用い、600rpmで2分撹拌して抗ウィルス性組成物を調製した。なお、IGM社製 Omnirad500は、BASF社のIRGACURE500と同じもので、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(アルキルフェノン)とベンゾフェノンの1:1の混合物である。この光重合開始剤は、水に不溶性であり、紫外線を吸収することで還元力を発現する。一方、光重合開始剤(IGM社製 Omnirad184)は、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(アルキルフェノン)であり、結局光重合開始剤としては、アルキルフェノンとベンゾフェノンは重量比で2:1の割合で存在している。
【0269】
(2)ついで、300mm×300mmの大きさの黒色光沢メラミン板上に、混合組成物をスプレーガン(明治機械製作所製 FINERSPOT G12)を用い、0.1MPaのエアー圧力、1.2g/分の噴出速度で、分散媒を含んだ状態で、16.7g/mに相当する混合組成物の液滴を30cm/secのストローク速度で霧状に散布し、メラミン板表面に付着させた。
(3)この後、黒色光沢メラミン板を80℃で3分間乾燥させ、さらに紫外線照射装置(COATTEC社製 MP02)を用い、30mW/cmの照射強度で80秒間紫外線を照射することにより、基材である黒色光沢メラミン板表面にその表面の一部が露出するように銅化合物を含むバインダ硬化物が固着形成された抗ウィルス性基体を得た。なお、酢酸銅は、水酸化銅および一部は酸化銅に変化していると推定される。
【0270】
(実施例9)
実施例8と同様であるが、光ラジカル重合型アクリレート樹脂(ダイセル・オルネクス社製UCECOAT7200)と光重合開始剤(IGM社製 Omnirad500)、光重合開始剤(IGM社製 Omnirad184)を重量比97.5:1:1.5(アルキルフェノンとベンゾフェノンは重量比で4:1の割合で存在している)とする。
【0271】
(実施例10)
実施例8と同様であるが、光ラジカル重合型アクリレート樹脂(ダイセル・オルネクス社製UCECOAT7200)と光重合開始剤(IGM社製 Omnirad500)、光重合開始剤(IGM社製 Omnirad184)を重量比97:1:2(アルキルフェノンとベンゾフェノンは重量比で5:1の割合で存在している)とする。
【0272】
(実施例11)
実施例8と同様であるが、光ラジカル重合型アクリレート樹脂(ダイセル・オルネクス社製UCECOAT7200)と光重合開始剤(IGM社製 Omnirad500)、光重合開始剤としてベンゾフェノン(富士フィルム和光純薬製)を重量比97:2:1(アルキルフェノンとベンゾフェノンは重量比で0.5:1の割合で存在している)とする。
【0273】
(実施例12)
実施例8と同様であるが、紫外線の照射時間を240秒とする。
【0274】
(実施例13)
実施例8と同様であるが、紫外線の照射時間を30分とする。
【0275】
(実施例14)
実施例8と同様であるが、紫外線の照射時間を120分とする。
【0276】
(実施例15)
実施例8と同様であるが、1.75重量%の酢酸銅に代えて、2.2重量%の硫酸銅を使用した。
【0277】
(比較例1)
(1)グリセリン350gにステアリン酸銀1.92gとサッカリン0.192gを加え、150℃で40分間加熱した。グリセリンを60℃まで冷却後、メチルイソブチルケトン350gを加えて攪拌した。1時間程静置した後にメチルイソブチルケトン層を採取し、脂肪酸修飾銀超粒子含有の分散液を得た。紫外線硬化樹脂液は光ラジカル重合型アクリレート樹脂(ダイセル・オルネクス社製 UCECOAT7200)と光重合開始剤(IGM社製 Omnirad500)を重量比98:2で混合し、撹拌棒で撹拌して作成した。上記した脂肪酸修飾銀超粒子含有メチルイソブチルケトン分散液と紫外線硬化樹脂液を重量比61.3:1.0で混合し、マグネチックスターラーを用い、600rpmで2分撹拌して抗ウィルス性組成物を調製した。
【0278】
(2)塗工面がコロナ処理された300mm×300mmの大きさのOPP (延伸ポリプロピレン)フィルム上に番手14番のバーコーターで抗ウィルス性組成物を塗布後、60℃で10分間乾燥させて、OPPフィルム上に固定化させた。
【0279】
(3)この後、紫外線照射装置を用いて2400mJ/cmの積算光量となるように抗ウィルス性組成物に紫外線を照射することにより、未硬化の光ラジカル重合型アクリレート樹脂(モノマー)を重合、硬化させ、微粒子銀を含有する樹脂硬化物の塗工被膜を得た。
【0280】
(比較例2)
(1)蒸留水100mLを50℃に加熱し、攪拌しながら、硫酸銅(II)五水和物5.25gを投入し、完全に溶解した。その後、2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液20mLと、2mol/Lのヒドラジン水和物の水溶液2.8mLとを同時に投入した。1分間強く攪拌することにより、亜酸化銅粒子が分散した分散液が得られた。その後、1.2mol/Lのグルコース水溶液30mLを投入し、1分間攪拌を行った。定量ろ紙(6種)で吸引ろ過して、100mLの蒸留水で水洗を行い、固形分を回収し、60℃で3時間乾燥した後、メノウ乳鉢にて粉砕し、亜酸化銅粒子100質量部に対しグルコースが1.5質量部共存した亜酸化銅を含む微粒子を得た。上記した亜酸化銅を含む微粒子とコロイダルシリカ(日産化学製 メタノールシリカゾル)および純水を重量比1.0:18.6:47.6で混合し、マグネチックスターラーを用い、600rpmで2分撹拌して抗ウィルス性組成物を調製した。
【0281】
(2)ついで、300mm×300mmの大きさのガラス板上に、分散媒を含んだ状態で31.4g/mに相当する抗ウィルス性組成物をスプレーガン(明治機械製作所製 FINER SPOT G12)で霧化状に散布し、抗ウィルス性組成物の液滴をガラス板表面に島状に散在させた。
【0282】
(3)この後、乾燥機(アズワンDOV−450)を用い、空気中50℃で16時間、抗ウィルス性組成物を加熱乾燥させ、溶媒分を揮発させることにより、一価銅粒子を含有する塗工基体を得た。
【0283】
(比較例3)
(1)亜酸化銅100質量部、メチルエチルケトン1000質量部、リン酸エステル型アニオン界面活性剤(ADEKA社製 PS−440E)30質量部を混合し、前分散処理として、攪拌機を用いて8000rpmにて30分間攪拌を行い、亜酸化銅分散液を得る。
(2)(1)の亜酸銅分散液25重量部と、アクリル樹脂(DIC株式会社製 アクリディック A801 ポリイソシアネートを硬化剤としている)とデュラネート(旭化成ケミカルズ社製 TAPA100 ヘキサメチレンジイソシアネート系のポリイソシアネートを硬化剤としている)を2.0:1.0の割合で混合したバインダ樹脂10重量部を混合して、抗ウィルス性組成物を調製する。
【0284】
(3)ついで、300mm×300mmの大きさのガラス板上に、抗ウィルス組成物をバーコータで塗布して、100℃で30秒乾燥、熱硬化させて、一価銅粒子を含有する塗工基体を得る。
【0285】
(比較例4)
(1)塩化銅(I)の濃度が0.34wt%になるように、塩化銅(I)粉末(富士フイルム和光純薬製)を純水に懸濁させた後、マグネチックスターラーを用い、600rpmで15分撹拌して塩化銅懸濁液を調製する。上記0.34wt%塩化銅(I)懸濁液とポリビニルアルコールを重量比1.9:1.0で混合し、マグネチックスターラーを用い、600rpmで2分撹拌して抗ウィルス性組成物を調製する。
(2)ついで、300mm×300mmの大きさのガラス板上に、刷毛で混合組成物をガラス板表面に塗布する。
(3)この後、ガラス板を室温で24時間乾燥させ、基材であるガラス板表面にその表面の一部が露出するように銅化合物を含むバインダ硬化物の膜が固着形成された抗ウィルス性基体を得る。
【0286】
(比較例5)
酢酸銅(II)の濃度が0.7wt%の水溶液を300mm×300mmの大きさの黒色光沢メラミン板上に、刷毛で塗布してメラミン板表面に付着させる。ついで、紫外線を照射せず、室温で48時間乾燥させる。
【0287】
(比較例6)
(1)0.5MのCuSO(II) 10mlに、当量の3倍のアスパラギン酸を加え、さらに0.1MNaOHを徐々に加えてゆく。Cu(OH)(II)が沈殿する直前に、アルカリ滴下を止め、撹拌しながら50℃に加温することで、アスパラギン酸銅錯体(II)の溶液を得る。
(2)光ラジカル重合型アクリレート樹脂(ダイセル・オルネクス社製UCECOAT7200)と光重合開始剤(IGM社製 Omnirad500)、光重合開始剤(IGM社製 Omnirad184)を重量比97:2:1で混合し、ホモジナイザーを用いて、8000rpmで10分間撹拌して紫外線硬化樹脂液を得る。上記アスパラギン酸銅錯体の水溶液と紫外線硬化樹脂液を重量比1.9:1.0で混合し、マグネチックスターラーを用い、600rpmで2分撹拌して抗ウィルス性組成物を調製する。
(3)抗ウィルス性組成物をガラス板に刷毛で塗布した後、ガラス板を80℃で3分間乾燥させ、さらに紫外線照射装置(COATTEC社製 MP02)を用い、30mW/cmの照射強度で80秒間紫外線を照射することにより、基材であるガラス板表面に銅化合物を含むバインダ硬化物の膜が固着形成された抗ウィルス性基体を得る。
【0288】
(抗ウィルス性基体の形状及び銅化合物の分散状態の評価)
得られた抗ウィルス性基体について、走査型電子顕微鏡写真(SEM写真)を撮影した。
図2は、実施例1で得られた抗ウィルス性基体を示すSEM写真である。
基材であるガラス板表面に樹脂硬化物1が島状に散在していることが分かる。
【0289】
また、得られた抗ウィルス性基体の樹脂硬化物が存在する部分の表面およびガラス板に垂直に切断した樹脂硬化物の断面のSEM写真を撮影するとともに、走査型電子顕微鏡(HITACHI S−4800)に装着されたエネルギー分散型X線分析装置(HORIBA ENERGY EMAX EX−350)により樹脂硬化物中の銅化合物の濃度分析を行った。
銅化合物の濃度分析条件は加速電圧10kV、ワーキングディスタンス(WD)15mmにて測定した。なお、サンプル表面には事前に帯電防止のための膜厚6nmのPt蒸着被膜を付着させた後に測定を実施した。
エネルギー分散型X線分析装置で求めた樹脂硬化物の表面組成比は、樹脂成分の主構成元素である炭素元素と銅元素の特性X線のピーク強度から算出し、実施例1の場合では、重量比がCu:C=1:7.5であり、実施例3の場合では、Cu:C=1:46.2であった。
【0290】
図3は、実施例1で製造した樹脂硬化物の断面を示すSEM写真であり、図4は、実施例1で製造した樹脂硬化物中の銅化合物をエネルギー分散型X線分析装置で分析した結果を示すSEM写真である。
図3及び図4から明らかなように、得られた島状の樹脂硬化物中に銅化合物が良好に分散し、表面に露出していることが分かる。
【0291】
(全光線透過率の測定)
実施例1〜7及び比較例2、4、6で得られる抗ウィルス性基体の全光線透過率を、JIS K 7375:2008プラスチック−全光線透過率及び全光線反射率の求め方に準じた方法により測定した。実施例1〜7及び比較例2、4、6の測定結果を表1に示す。
【0292】
(眼刺激性を測定するための試験)
実施例1及び3で調製した抗ウィルス性組成物をガラス板表面に均一に滴下し、80℃で3時間乾燥し、溶媒分を揮発させた。その後、ガラス板で抗ウィルス性組成物を両面から挟み込み、紫外線照射装置を用いて、両面ともに3600mJ/cmの積算光量となるように照射した。片側のガラス板を除去後、さらに抗ウィルス性組成物の表面を3600mJ/cmの積算光量となるように照射し、抗ウィルス性の樹脂硬化物を得た。ガラス板表面の樹脂硬化物を金属ヘラで剥離回収し、瑪瑙乳鉢で混合粉砕後、80℃で1時間乾燥させて粉末状の樹脂硬化物を得た。上記粉末状の樹脂硬化物について、OECD:Guideline for the Testing of Chemicals 405(2017)に準拠したウサギを用いる眼刺激性試験を実施した。試験動物の両眼前眼部を試験開始当日に検査し、異常のないことを確かめた後、ウサギ3匹の片眼結膜嚢内に樹脂硬化物を0.1mL相当量点眼し、約1秒間上下眼瞼を穏やかに合わせ保持した。他眼は無処置の対照とした。点眼後1、24、48、72時間、7日及び10日に、スリットランプを用いて角膜、虹彩、結膜などの観察を行い、Draize法の基準に従って眼刺激性を採点した。得られた採点値を用いて各試験動物の合計評点を計算し,観察時間ごとに3匹の平均合計評点を求めた。観察期間中の平均合計評点の最高値から、樹脂硬化物の眼刺激性を評価した。
【0293】
その結果、実施例1では、眼刺激性スコアが58.3であり、実施例3では、眼刺激性スコアが9.7であった。眼刺激性に関しては、実施例3の抗ウィルス性基体は、Cu:C=1:46.2であり、眼刺激性スコアが9.7で、安全性スコア20以下を満足している。
なお、高い抗ウィルス性が要求される用途(医療用途等)では、ゴーグルなどの防護器具を着用することで、眼刺激性の安全スコアが20を超えていても第1の本発明の抗ウィルス性基体を使用することができる。
【0294】
(耐水性を評価するための試験)
実施例3及び比較例2で得られた抗ウィルス性基体の耐水性能を純水中への浸漬試験前後の抗ウィルス性能から求めた。抗ウィルス性基体を1辺50±2mm角にカットし、外径8.5cmのプラスチック製シャーレに設置した。抗ウィルス性基体を設置したプラスチックシャーレに純水50mLを加えて密閉し、室温で8時間浸漬した。純水に浸漬させた抗ウィルス性基体を回収し、表面及び裏面の付着水をファーバークロスで拭き取り、抗ウィルス性能を測定した。比較例3も同様の試験を行う。
【0295】
(バクテリオファージを用いた抗ウィルス性評価)
実施例1〜15及び比較例1〜2、4、5、6で得られる抗ウィルス性基体の抗ウィルス性を評価するために、JIS R1756 可視光応答形光触媒材料の抗ウィルス性試験方法を改変した手法でウィルス不活性度を測定した。すなわち、得られた抗ウィルス性基体を1辺50±2mm角にカットし、バクテリオファージ液を試料に滴下してフィルムで被覆し、4時間放置してウィルスを不活化させた。その後バクテリオファージを大腸菌に感染させ一晩放置することで、感染能力を保持しているウィルス数を測定した。
測定結果は、大腸菌に対して不活化されたウィルス濃度を、ウィルス不活性度として表示する。ここで、ウィルス濃度の指標として、大腸菌に対して不活化されたウィルスの濃度(ウィルス不活度)を使用し、このウィルス不活度に基づいてウィルス不活性度を算出した。
【0296】
ウィルス不活度とは、バクテリオファージを用いた抗ウィルス性試験で、ファージウィルスQβ濃度:830万個/ミリリットルを用いて、大腸菌に感染することができるウィルスの濃度を測定することにより、大腸菌に対して不活化されたウィルスの濃度を算出した結果である。すなわち、ウィルス不活度は、ファージウィルスQβ濃度に対して、大腸菌に感染することができない濃度の度合いであり、(ファージウィルスQβ濃度−大腸菌に感染することができるウィルスの濃度)/(ファージウィルスQβ濃度)×100で算出することができる。
【0297】
このウィルス不活度からウィルス不活性度を計算する。
ウィルス不活性度とは、元のウィルスの量を1とし、ウィルス失活処理後に失活したウィルスの相対量をXとした場合に、常用対数log(1−X)で示される数値(負の値で示される)であり、絶対値が大きい程ウィルスを不活性化する能力が高い。例えば、元のウィルスの99.9%が失活した場合、ウィルス不活性度は、log(1−0.999)=−3.00で表記される。なお、ウィルス失活処理前の全ウィルス量に対するウィルス失活処理後に失活したウィルス量の割合を%で表したもの(上記の場合、99.9%)をウィルス不活度という。上記のようにして、ウィルス不活度からウィルス不活性度を求めた。実施例1〜15及び比較例1〜2、4、5、6の結果を表1に示す。
【0298】
(ふき取り後のバクテリオファージを用いた抗ウィルス性評価)
(抗ウィルス性基体の表面のふき取り処理)
実施例1、8〜15及び比較例4〜6の抗ウィルス性基体に対しては、水道水を染み込ませたマイクロファイバークロスを用いて、150Paの圧力で5475回の拭き取り試験を実施した。ふき取り試験後にウィルス不活性度を測定した。
【0299】
(ネコカリシウィルスを用いた抗ウィルス性評価)
この抗ウィルス性試験は以下のように実施した。
実施例1〜4で得られる抗ウィルス性基体の抗ウィルス性を評価するために、JIS Z 2801抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果を改変した手法を用いた。改変点は、「試験菌液の接種」を「試験ウィルスの接種」に変更した点である。ウィルスを使用することによる変更点についてはすべてJIS L 1922繊維製品の抗ウィルス性試験方法に基づき変更した。測定結果は実施例1〜4で得られた各抗ウィルス性基体についてJIS L 1922付属書Bに基づき、CRFK細胞への感染能力を失ったネコカリシウィルス濃度をネコカリシウィルス不活性度として表示する。ここで、ウィルス濃度の指標として、CRFK細胞に対して不活化されたウィルスの濃度(ウィルス不活度)を使用し、このウィルス不活度に基づいて抗ウィルス活性値を算出した。
【0300】
以下、手順を具体的に記載する。
(1)1辺50mm角の正方形に切り出した試験試料を滅菌済プラスチックシャーレに置き、試験ウィルス液(>10PFU/mL)を0.4mL接種する。
試験ウィルス液は10PFU/mLのストックを精製水で10倍希釈したものを使用する。
(2)対照資料として50mm角のポリエチレンフイルムを用意し、試験試料と同様にウィルス液を接種する。
【0301】
(3)接種したウィルスの液の上から40mm角のポリエチレンを被せ、試験ウィルス液を均等に接種させた後、25℃で所定時間反応させる。
(4)接種直後又は反応後、SCDLP培地10mLを加え、ウィルス液を洗い流す。
(5)JIS L 1922付属書Bによってウィルスの感染値を求める。
【0302】
(6)以下の計算式を用いて抗ウィルス活性値を算出する。
Mv=Log(Vb/Vc)
Mv:抗ウィルス活性値
Log(Vb):ポリエチレンフイルムの所定時間反応後の感染値の対数値
Log(Vc):試験試料の所定時間反応後の感染価の対数値
参考規格 JIS L 1922、JIS Z 2801
測定方法は、プラーク測定法によった。
また、試験ウィルスはFeline calcivirus; Strain :F−9 ATCC VR−782を用いた。実施例1〜4の結果を表1に示す。
【0303】
(Cu(I)/Cu(II)の測定試験)
Cu(I)とCu(II)のイオンの個数の比率は、X線光電子分光分析法(XPS分析法)により計測した。測定条件は以下の通り。
・装置:アルバックファイ製 PHI 5000 Versa probeII
・X線源:Al Kα 1486.6eV
・検出角:45°
・測定径:100μm
・帯電中和:有り
【0304】
−ワイドスキャン
・測定ステップ:0.8eV
・pass energy:187.8eV
【0305】
−ナロースキャン
・測定ステップ:0.1eV
・pass energy:46.9eV
測定時間は5分で、Cu(I)のピーク位置は、932.5eV ±0.3eV、Cu(II)のピーク位置は933.8eV ±0.3eVであり、それぞれのピークの面積を積分して、その比率からCu(I)/Cu(II)を得た。実施例1〜15及び比較例5、6の結果を表1に示す。
【0306】
(樹脂硬化物(バインダ硬化物)の基材に対する密着性評価)
以下の方法で測定した。
(1)実施例1〜15及び比較例1〜2、4、5、6で得られた抗ウィルス性基体の試験面にカッターナイフを用いて、素地に達する11本の切り傷をつけ100個の碁盤目を作る。切り傷の間隔は2mmを用いる。
(2)碁盤目部分にセロテープ(登録商標)を強く圧着させ、テープの端を45°の角度で一気に引き剥がし、碁盤目の状態を標準図と比較して評価する。
(3)全ての碁盤目にはがれが無い場合(分類0に相当)に、はがれ無と定義する。
(4)実施例1〜15及び比較例1〜2、4、5、6で得られた抗ウィルス性基体に対し、−10℃〜80℃で100回冷熱サイクル試験を行い、その後、(1)〜(3)と同様の方法により密着性評価試験を行う。
【0307】
表1に、実施例1〜15及び比較例1〜2、4、5、6で得られた抗ウィルス性基体のCu(I)/Cu(II)、ウィルス不活性度、抗ウィルス活性値、全光線透過率、基材に対する密着性の評価結果を記載している。また、実施例1、8〜15、比較例4〜6については、ふき取り試験後のウィルス不活性度も示している。また、表2には、実施例3及び比較例2の浸漬試験前後のウィルス不活性度の測定結果(耐水性の評価結果)を記載している。表1中、−が記載されている部分は、データを測定していない部分である。
水酸化銅は、水に不溶であり、またOH構造を持つため、樹脂との親和性にも優れており、カルボキシ基と同様に、実施例4の抗ウィルス性基体も耐水性に優れていると考えられる。
また、比較例3の抗ウィルス性基体の抗ウィルス不活性度は、純水浸漬試験前が−3.1であり、純水浸漬試験後が−1.0である。また、比較例3において、塗工した硬化物は、ガラス基材に硬化直後の密着性評価では剥がれは確認されないが、冷熱サイクル試験後でははがれが確認される。リン酸エステル型アニオン界面活性剤の親水基が水と結合しており、冷熱サイクル時に気化して硬化物とガラス基材との界面に応力を発生させるため、剥離が生じると推定している。
【0308】
【表1】
【0309】
【表2】
【0310】
実施例1、実施例8〜9から、光重合開示剤として、重量比で1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(アルキルフェノン)/ベンゾフェノン=1/1〜4/1の場合には、ふき取り試験後でも、ウィルスの不活性度が全く低下しないことが分かる。アルキルフェノン/ベンゾフェノンの重量比が、1/1〜4/1の場合は、紫外線硬化型エポキシ樹脂の架橋密度が高くなり、拭き取りの力が加わった場合でも、紫外線硬化型樹脂が摩耗欠損しないからであると推定される。架橋密度は85%以上、特に95%以上が望ましい。
【0311】
また、Cu(I)/Cu(II)が0.4/1〜50/1の場合は、Cu(I)のみの場合(比較例3、4)やCu(II)のみの場合(比較例5)に比べてウィルス不活性度の絶対値が高い。Cu(I)のみの場合は、水に不溶の一価の塩化銅(I)が粒子状となっており、バインダである樹脂中に均一分散できないこと、また、安定なCu(II)が、Cu(I)に対する酸化を防いでいると推定されるため、Cu(II)とCu(I)が共存した方がCu(I)のみの場合に比べて抗ウィルス活性が高いと考えられる。逆にCu(I)が多すぎると、ウィルス不活性度が低下する傾向が見られる。Cu(I)は不安定で酸化されやすい上、Cu(I)を酸化から保護すると思われるCu(II)の量が少なくなるからではないかと推測される。
なお、比較例2ではCu(I)のみでも、高い抗ウィルス活性が得られるが、比較例3、4との対比から、これはCu(I)と糖還元剤との相乗効果と推定される。本発明では、Cu(I)とCu(II)が共存しているため、糖還元剤の有無にかかわらず、高い抗ウィルス活性が得られるため、有利である。
【0312】
なお、バインダ硬化物が、島状に分散固定されている場合や、基材表面にバインダ硬化物が固着形成された領域とバインダ硬化物が固着形成されていない領域が混在している状態の場合は、銅化合物中のCu(I)/Cu(II)が0.4/1〜4.0/1に調整されていると、抗ウィルス性を高くできるため、望ましい。
【0313】
また、比較例6のようアミノ酸銅のような、銅錯体(II)は光重合開始剤では還元されず、Cu(II)のまま残存してしまうため、抗ウィルス活性が低い。
【0314】
上記した実施例及び比較例によれば、実施例で得た抗ウィルス性基体では、基材であるガラス板表面等に銅化合物を含む電磁波硬化型樹脂の硬化物又はバインダ硬化物が、島状、バインダ(樹脂)硬化物の固着領域と固着していない領域が混在した状態、又は、膜状に存在し、上記銅化合物の一部が電磁波硬化型樹脂の硬化物又はバインダ硬化物の表面から露出しており、Cu(I)/Cu(II)が0.4〜50、好ましくは0.5〜50、さらに1.0〜4.0もしくは1.4〜2.9、特に1.4〜1.9が最適である。これらの場合、Cu(I)が多く含まれ、もしくはCu(I)とCu(II)が共存しており、透明性に優れ、基材に対する密着性に優れ、優れた抗ウィルス性を示すことが実証された。また原料として使用した銅化合物は、銅のイオン価数が2であるが、紫外線による光重合反応時に、銅のイオン価数が1に還元されていることも実証されている。さらに、銅化合物を含んだ樹脂硬化物又はバインダ硬化物により、抗ウィルス性能が発現しており、銅化合物が樹脂硬化物又はバインダ硬化物の表面から露出していることは明らかであると言える。なお、酢酸銅を構成する銅は、通常二価のイオンであるが、表1から、一価に還元されていることが理解される。これは光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン/ベンゾフェノン)に還元力があるためである。
【0315】
また、比較例1は、金属微粒子(銀)が析出しているが、実施例1〜7に比べて抗ウィルス効果が大きく劣っており、金属微粒子ではウィルスを失活させる作用が乏しいことが分かる。
表2には、実施例3と比較例2の耐水性試験前後のウィルス不活性度が記載されている。実施例3では耐水試験前後でウィルス不活性度に差が無かったが、還元糖を含む比較例2では、ウィルス不活性度が著しく低下しており、亜酸化銅の脱離による抗ウィルス機能の低下と考えられる。このように、樹脂硬化物中に糖やリン酸エステル系界面活性剤のような水に溶出しやすい物質を含む場合は、樹脂硬化物の劣化により、銅化合物の保持力が低下して、銅化合物の脱離が進行しやすくなり、耐水性が低下すると考えられる。
【0316】
さらに、実施例6のようにバインダ(樹脂)硬化物を膜状に固着させた場合に比べて、バインダ(樹脂)硬化物を島状に散在させて固着する、もしくはバインダ(樹脂)硬化物の固着領域と固着していない領域を混在させる実施例1〜5、実施例7の方が抗ウィルス機能は高いことが分かる。バインダ(樹脂)硬化物を島状に散在させて固着する、もしくはバインダ(樹脂)硬化物の固着領域と固着していない領域を混在させた方が、抗ウィルス性のバインダ(樹脂)硬化物の表面積が大きくなり、ウィルスとの接触確率が高くなるためであると推定される。なお、全光線透過率は、ガラス基板に抗微生物組成物を塗布したもので測定している。
【0317】
バインダ(樹脂)硬化物の基材に対する密着性の評価では、実施例1〜15および比較例1、2、4、5、6のいずれも初期段階では剥がれは確認されないが、冷熱サイクル試験後では、実施例1〜5、7〜15においては、剥がれは確認されなかったが、実施例6、比較例1、2、4、6では剥がれが確認されている。実施例6、比較例1は抗ウィルス性の樹脂硬化物を膜状に固着させており、冷熱サイクル時に基材と樹脂硬化物との熱膨張率差により、基材と樹脂硬化物との界面に応力が発生して、樹脂硬化物の基材であるガラス板又はOPPフィルムに対する密着性が低下して、剥がれが発生しやすくなったものと考えられる。また、比較例2は、糖を還元剤として使用しており、糖は空気中の水と結合して吸湿しているため冷熱サイクル時に糖の分子と結合していた水が気化してバインダ硬化物の基材に対する密着性を低下させるものと推定される。比較例4については、塩化銅(I)の粒子を含む膜であるため、冷熱サイクル時に粒子の周囲に応力が集中して、剥離が生じやすくなるのではないかと推定される。さらに、比較例6では、銅錯体が紫外線を吸収して樹脂の硬化が不十分であり、剥離が生じやすいのではないかと推定している。
【0318】
次に、実施例1、実施例8〜15、比較例1〜6の抗ウィルス性組成物、抗ウィルス性基体が抗菌活性、抗カビ活性を有するか否かについて検証した。結果を表3に示す。
【0319】
(黄色ブドウ球菌を用いた抗菌性評価)
黄色ブドウ球菌を用いた抗菌性評価を、以下のように実施した。
(1)実施例1、8〜15及び比較例1〜6で得られた抗ウィルス性基体を、50mm角の正方形に切り出した試験試料を滅菌済プラスチックシャーレに置き、試験菌液(菌数2.5×10〜10×10/mL)を0.4mL接種する。
試験菌液は、培養器中で温度35±1℃で16〜24時間前培養した培養菌を、さらに斜面培地に移植して、培養器中で温度35±1℃で16〜20時間前培養したものを、1/500NB培地により適宜調整したものを使用する。
(2)対照資料として50mm角のポリエチレンフイルムを用意し、試験試料と同様に試験菌液を接種する。
【0320】
(3)接種した試験菌液の上から40mm角のポリエチレンフイルムを被せ、試験菌液を均等に接種させた後、温度35±1℃で8±1時間反応させる。
(4)接種直後または反応後、SCDLP培地10mLを加え、試験菌液を洗い出す。
(5)洗い出し液を適宜希釈し、標準寒天培地と混合して生菌数測定用シャーレを作成し、温度35±1℃で40〜48時間培養した後、集落数を測定する。
(6)生菌数の計算
以下の計算式を用いて生菌数を求める。
N=C×D×V
N:生菌数
C:集落数
D:希釈倍率
V:洗い出しに用いたSCDLP培地の液量(mL)
(7)以下の計算式を用いて抗菌活性値を算出する。
R=(Ut−U0)―(At−U0)=Ut−At
R:抗菌活性値
U0:無加工試験片の接種直後の生菌数の対数値の平均値
Ut:無加工試験片の24 時間後の生菌数の対数値の平均値
At:抗菌加工試験片の24時間後の生菌数の対数値の平均値
参考規格 JIS Z 2801
試験菌はStaphylococcus aureus NBRC12732を使用した。
評価結果を表3に記載する。
【0321】
(クロコウジカビを用いた抗カビ性評価)
クロコウジカビを用いた抗カビ性評価を、以下のように実施した。
(1)実施例1、8〜15及び比較例1〜6でで得られた抗ウィルス性基体を、50mm角の正方形に切り出した試験試料を滅菌済プラスチックシャーレに置き、胞子懸濁液(胞子濃度>2x10個/ml)を0.4mL接種する。
(2)対照資料として50mm角のポリエチレンフイルムを用意し、試験試料と同様に胞子懸濁液を接種する。
(3)接種した胞子懸濁液の上から40mm角のポリエチレンフイルムを被せ、胞子懸濁液を均等に接種させた後、温度26℃で約900LUXの光を照射しながら42時間反応させる。
(4)接種直後または反応後、JIS L 1921 13発光量の測定に従い、ATP量を測定する。
(5)以下の計算式を用いて抗カビ活性値を算出する。
=(LogC―LogC)―(LogT―LogT
:抗カビ活性値
LogC:接種直後の対象資料3検体のATP量の算術平均の常用対数地
LogC:培養後の対象資料3検体のATP量の算術平均の常用対数値
LogT:接種直後の試験資料3検体のATP量の算術平均の常用対数値
LogT:培養後の試験資料3検体のATP量の算術平均の常用対数値
参考規格 JIS Z 2801、JIS L 1921
試験カビはAspergillus niger NBRC105649を使用した。
評価結果を表3に記載する。
【0322】
【表3】
【0323】
表3によれば、実施例1、実施例8〜15の抗ウィルス性基体は、いずれも抗菌性および/または抗カビ性を有していることが分かる。
光重合開示剤として、重量比で1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(アルキルフェノン)/ベンゾフェノン=1/1〜4/1の場合には、ふき取り試験後でも、抗菌活性が全く低下しないことが分かる。アルキルフェノン/ベンゾフェノンの重量比が、1/1〜4/1の場合は、紫外線硬化型エポキシ樹脂の架橋密度が高くなり、拭き取りの力が加わった場合でも、紫外線硬化型樹脂が摩耗欠損しないからであると推定される。なお、実施例8の抗ウィルス基体の架橋密度は、97%である。一方、実施例10、実施例11の架橋密度は、91%であった。架橋密度の測定は、煮沸したトルエンに硬化物を8時間浸漬して乾燥、浸漬後の硬化物の重量/浸漬前の硬化物の重量×100%で測定した。
【0324】
また、Cu(I)/Cu(II)が1/1〜50/1の場合は、Cu(I)のみの場合(比較例4)やCu(II)のみの場合(比較例5)に比べて抗カビ活性の絶対値が高い。Cu(I)のみの場合は、水に不溶の一価の塩化銅(I)が粒子状となっており、バインダである樹脂中に均一分散できないこと、また、安定なCu(II)が、Cu(I)に対する酸化を防いでいると推定されるため、Cu(II)とCu(I)が共存した方がCu(I)のみの場合に比べて抗カビ活性が高いと考えられる。
逆にCu(I)が多すぎると、抗カビ活性度が低下する傾向が見られる。Cu(I)は不安定で酸化されやすい上、Cu(I)を酸化から保護すると思われるCu(II)の量が少なくなるからではないかと推測される。
一方、抗菌性は、比較例1では、実施例1、実施例8〜15と遜色のない抗菌活性が得られているが、比較例1〜6は、いずれもふき取りによる耐性が低く、抗菌性を永続的に維持することが難しいと考えられる。また、銅化合物、銅錯体同士で比較すると、実施例1、実施例8〜15では、抗菌性は3.5以上と高く、一方、比較例2〜6では、抗菌性は3.0〜3.1と相対的に低い。
【0325】
また、比較例6のようアミノ酸銅のような、銅錯体(II)は光重合開始剤では還元されず、Cu(II)のまま残存してしまうため、抗菌、抗カビ活性が低い。
【0326】
以上説明のように、本実施例の抗ウィルス性組成物は、抗菌性および/または抗カビ性組成物として、また、本実施例の抗ウィルス性基体は、抗菌・抗カビ性基体として使用することができる。当然、本実施例の抗ウィルス性基体の製造方法は、抗菌性および/または抗カビ性基体の製造方法として利用できる。
このように、本発明の抗微生物基体、抗微生物組成物、抗微生物基体の製造方法は、優れた抗ウィルス性、抗菌性、抗カビ(防カビ)性を示す基体、部材を提供することができ、特に抗ウィルス性、抗カビ(防カビ)性に顕著な効果を有している。
【符号の説明】
【0327】
10 抗ウィルス性基体
11 基材
12 樹脂硬化物(電磁波硬化型樹脂の硬化物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6