(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
なお、本発明の実施の形態において、A(数値)〜B(数値)は、A以上B以下を意味する。
【0016】
[発泡成型体]
本発明の一実施形態の発泡成型体を圧縮方向Zに切断した断面図の一例を
図1に示す。
本発明の発泡成型体は、
図1に示されるように、表面層1と圧縮変形層2と発泡層3とから構成される3層構造を有している。
各層は、樹脂を含む発泡粒子で構成されており、構成する発泡粒子の形状、具体的には、独立気泡構造の有無と、H/Lとで規定することができる。例えば、
図1の断面図では、表面層1と圧縮変形層2との境界面B1、圧縮変形層2と発泡層3との境界面B2が判別できる(
図1)。
【0017】
発泡成型体の全体の厚みは、3mm以上5000mm以下が好ましい。ここでいう厚みとは、発泡成型体の圧縮方向寸法の平均値を意味する。
3mm以上であると、発泡成型体が自立性を持ち、構造部材として使用できる点で好ましく、さらに好ましくは5mm以上である。
また、5000mm以下であると、加熱プレス機や発泡成型機により成型品が得られるという点で好ましい。
【0018】
発泡成型体の剛性は、発泡成型体の曲げ弾性率を測定して評価することができ、曲げ弾性率の数値が大きい程、剛性に優れる。
発泡成型体の曲げ弾性率は、JIS K7171(2008)に従って測定できる。発泡成型体の曲げ弾性率は、発泡層3の曲げ剛性が強化されるよう、表面層1や圧縮変形層2の厚みや材質の調節で調整することができる。
発泡成型体の曲げ弾性率は、100MPa以上であることが好ましく、より好ましくは120MPa以上、さらに好ましくは130MPa以上である。
【0019】
表面層1は、溶融により発泡粒子の独立気泡構造が消失した層として規定される。
圧縮変形層2は、表面層1と発泡層3との間に位置し、圧縮方向長さ(H)と、圧縮方向に対する垂直方向長さ(L)で表されるH/Lが0.5以下である発泡粒子で構成されている層として規定される。
また、発泡層3は、上記H/Lが0.5を超える発泡粒子で構成されている層として規定される。
【0020】
なお、本実施形態の発泡成型体において、圧縮方向Zは、後述する実施例に記載の方法によって特定することができる。
【0021】
[[独立気泡率]]
本発明の発泡成型体の独立気泡率は、特に限定されないが、30%以上99%以下であることが好ましい。独立気泡率がこの範囲であることにより、圧縮時に弾性反発力が維持され、金型への追従性が向上し、表面平滑性が高い意匠面を形成することができる。
本実施形態の発泡成型体の独立気泡率は、発泡成型体の強度を向上させると共に、連続気泡部分において生じ得る樹脂中への水の取り込みを生じにくくして、発泡成型体の密度を低下しにくくする観点から、80%以上99%以下であることがより好ましく、85%以上99%以下であることが更に好ましい。
なお、独立気泡率S(%)は、下記式(1)で表される式により算出される。
S(%)={(Vx−W/ρ)/(Va−W/ρ)}×100
・・・(1)
式中、Vxは、発泡成型体の真の体積(cm
3)であり、Vaは、発泡成型体の見かけの体積(cm
3)であり、Wは、発泡成型体の重量(g)であり、ρは、発泡成型体の基材樹脂の密度(g/cm
3)である。
【0022】
本発明の発泡成型体の発泡層を構成する発泡粒子の発泡倍率は、軽量化の観点から、3.0倍以上が好ましく、5.0倍以上であればより好ましい。また、圧縮時の弾性反発力を維持できる観点から30倍未満であることが好ましく、20倍以下であることがより好ましい。ここで、発泡倍率とは、体積が、基材樹脂の状態から、発泡剤の含有(含浸)、予備発泡、および最終段階の発泡を経て、どの程度膨張したかを意味する。
発泡成型体の発泡層を構成する発泡粒子の発泡倍率は、発泡層を構成する基材樹脂(出発材料)の密度を、最終製品である発泡成型体の発泡層部分の見掛け密度で除することによって算出すればよい。
あるいは、基材樹脂の密度を、中間製品である発泡体の見掛け密度で除することによって算出してもよい。発泡層を構成する発泡粒子は、表面層および圧縮変形層を構成する発泡粒子の存在により、発泡成型体の製造過程の加圧圧縮の影響を受け難く、加圧圧縮直前の発泡倍率を維持することができるためである。
発泡倍率は、より具体的には、後述する実施例記載の方法で算出することができる。
【0023】
[[発泡粒子・予備発泡粒子]]
本発明の発泡成型体は、発泡粒子の形態で、樹脂を含む。
ここで、本発明において、発泡粒子とは、本実施形態の発泡成型体及び発泡体を構成する粒子であり、予備発泡粒子に最終段階の発泡を行った後の膨張した粒子を指す。
また、本発明において、予備発泡粒子とは、最終段階の発泡を行っていない発泡性の粒子を指し、最終段階でない予備的な発泡の実施前から実施後の状態を含む。
【0024】
−樹脂−
上記樹脂としては、特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂等が挙げられる。
上記熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン、スチレン無水マレイン酸コポリマー、ポリフェニレンオキサイドとポリスチレンとのブレンド又はグラフトポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー、ハイインパクトポリスチレンなどのスチレン系重合体;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、後塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン又はプロピレンと塩化ビニルのコポリマーなどの塩化ビニル系重合体;ポリ塩化ビニリデン系共重合樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6等の、単独および共重合ポリアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート等の、単独および共重合ポリエステル系樹脂;変性ポリフェニレンエーテル樹脂(フェニレンエーテル−ポリスチレンアロイ樹脂);ポリカーボネート樹脂;メタクリルイミド樹脂;ポリフェニレンスルフィド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;フェノール樹脂;ウレタン樹脂;ポリオレフィン系樹脂;などが挙げられる。
【0025】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、チーグラー触媒またはメタロセン触媒等を用いて重合されたポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン3元共重合体等のポリプロピレン系樹脂や、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂等が挙げられる。これらのポリエチレン系樹脂は、それぞれ単独であるいは2種以上を混合して用いられる。
【0026】
特に好ましい熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、メタクリル系樹脂、変性ポリエーテル樹脂(フェニレンエーテル−ポリスチレンアロイ樹脂)等である。中でも、耐熱性、耐薬品、耐溶剤性に優れ、高耐熱発泡成型体用途に適した樹脂としてポリアミド樹脂、耐熱性、高温剛性に優れた樹脂としては、変性ポリエーテル樹脂(フェニレンエーテル−ポリスチレンアロイ樹脂)が挙げられる。
【0027】
上記熱可塑性樹脂としては、20℃における表面張力が35mN/m以上60mN/m以下であることが好ましく、より好ましくは36mN/m以上57mN/m以下、更に好ましくは37mN/m以上55mN/mである。熱可塑性樹脂の表面張力が上記範囲内であれば、力学的強度の高い発泡成型体が得られ、意匠面に剛性を付与することができる。
熱可塑性樹脂の表面張力は、JIS K6768:1999「プラスチック−フィルム及びシート−ぬれ張力試験方法」記載の方法において測定温度を20℃に変更して測定される値を用いる。
【0028】
上記熱可塑性樹脂は、無架橋の状態で用いてもよく、パーオキサイドや放射線などにより架橋させて用いてもよい。
【0029】
−配合剤−
上記樹脂は必要に応じて、通常の配合剤、たとえば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、染料、顔料などの着色剤、可塑剤、滑剤、結晶化核剤、タルク、炭酸カルシウム等の無機充填剤等を目的に応じて含んでいてもよい。
【0030】
上記難燃剤としては、臭素系、リン系等の難燃剤が使用可能である。上記酸化防止剤としては、フェノール系、リン系、硫黄系等の酸化防止剤が使用可能である。上記光安定剤としては、ヒンダードアミン系、ベンゾフェノン系等の光安定剤が使用可能である。
【0031】
上記予備発泡粒子の平均気泡径を調節する必要がある場合は、気泡調整剤を添加してもよい。気泡調整剤としては、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪藻土、クレー、重曹、アルミナ、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、ベントナイト等があり、その使用量は通常、予備発泡粒子の原料全量100質量部に対して、0.005〜2質量部とする。
【0032】
予備発泡粒子は、ペレット化した上記樹脂に発泡剤を含有(含浸)させて、発泡を生じさせることによって得ることができる。この発泡は、最終段階の発泡でない、予備発泡である。
上記予備発泡粒子の製造時に用いる発泡剤としては、揮発性発泡剤等が挙げられる。上記揮発性発泡剤としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、へプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の鎖状または環状低級脂肪族炭化水素類、ジシクロジフルオロメタン、トリクロロモノフルオロメタン、1−クロロ−1、1−ジフルオロエタン、1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素類、窒素、空気、二酸化炭素等の無機ガス系発泡剤等が挙げられる。
【0033】
上記予備発泡粒子の平均粒子径は、100gの予備発泡粒子をJIS Z8801−1:2006で規定される標準ふるいを用いた分級法により測定することができる。上記予備発泡粒子の平均粒子径は1.0〜4.0mmであることが好ましく、より好ましくは1.2〜3.0mmである。平均粒子径が1.0mm未満であると製造工程での取り扱いが難しく、4.0mmを超えると複雑な成形品の表面精度が低下する傾向が現れ好ましくない。
なお、本実施形態の予備発泡粒子の形状は、特に限定されず、様々な形状としてよい。
【0034】
上記予備発泡粒子の製造方法としては、熱可塑性樹脂の熱可塑性を利用した方法、固体状態の樹脂粒子の切削などの後加工による方法などが可能であり、粒子に所望の外形を付与できる方法であればいずれも適用可能である。その中でも、生産性に優れ、安定した形状の粒子が製造可能な方法として、吐出断面を設けたダイを使用した異形押し出し法が好適に使用できる。異形押し出し法として、押出機により熱可塑性樹脂を溶融押し出し、ストランドカットまたはアンダーウォーターカットなど工業的に通常使用されている方法によりペレタイズして得られた基材樹脂ペレットを発泡させ予備発泡粒子を得る方法;および押し出し機に発泡剤をバレル途中から注入し吐出と同時に発泡させ、冷却後、アンダーウォーターカットまたはストランドカットし予備発泡粒子を直接得る方法;押出機内で熱可塑性樹脂を溶融させ所望の断面形状を有するダイスから押し出し、冷却後ペレタイザーにより所定の長さに切断することにより基材樹脂ペレットを製造し、該基材樹脂ペレットに発泡剤を含浸させ、加熱することにより所定の発泡倍率で発泡させる方法;等、従来公知の方法を任意に応用して製造することができる。
【0035】
樹脂に発泡剤を含有(含浸)させる方法としては、特に限定されることなく、一般的に用いられている方法としてよい。
かかる方法としては、特に限定されないが、例えば、水等の懸濁系で水性媒体を用いて行う方法(懸濁含浸)や、重炭酸ナトリウム等の熱分解型発泡剤を用いる方法(発泡剤分解)、ガスを臨界圧力以上の雰囲気とし液相状態にして、基材樹脂に接触させる方法(液相含浸)、ガスを臨界圧力未満の雰囲気とし気相状態にして、基材樹脂に接触させる方法(気相含浸)等が挙げられる。
【0036】
−基材樹脂の粒子またはペレットの形状−
予備発泡粒子の原料としての基材樹脂の粒子またはペレットには、任意の3次元形状を付与することができる。かかる3次元形状としては、特に限定されないが、中実のビーズ形状、中空部又は凹外形部を有するビーズ形状などが挙げられる。
基材樹脂の粒子またはペレットの正射影像は、任意の形状を取ることができる。一般的な中実のビーズ形状は、正射影像が、円形状もしくは楕円形状を有している略球状のものを意味する。中空部を有するとは、粒子またはペレットの正射影像が内部に中空領域を有しつつ該中空円領域を取り囲む外周領域を有することを意味し、かかる中空領域及び外周領域がある正射影像が得られる方向が存在することを意味する。中空部の例を
図4(c)に示す。
また、凹外形部を有するとは、粒子またはペレットの正射影像が凹図形となる正射影像が得られる方向が存在することを意味する。また、本明細書において凹図形とは、凹図形となる正射影像図形の外表面上の2点間を結んだ線分の少なくとも一部(好ましくは全線分)が粒子またはペレットの外部領域を通る線分となる2点を選ぶことが可能であることを言う。凹図形の例を
図4(a)、(b)に示す。凹外形部は、発泡時に形成される発泡気泡と異なる構造である。上記凹外形部は、一個でも複数個でもよい。
【0037】
以下、本実施形態の発泡成型体が有する3層構造の各層について、より具体的に説明する。
【0038】
[[発泡層]]
発泡層の発泡粒子は、圧縮方向長さ(H)、圧縮方向に対する垂直方向長さ(L)により規定され、本発明における発泡層は、H/Lが0.5を超える発泡粒子から構成される。
発泡層の厚みは、特に限定されないが、1mm以上5000mm以下であることが好ましく、3mm以上1000mm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは5mm以上500mm以下である。発泡層の厚みがこの範囲であると、成形品が構造体としての自立が可能であり、また、実用的な加熱プレス機や発泡成形機により成形品が得られるという観点で好ましい。
なお、発泡層の厚みは、圧縮方向に測定される成型体全体の厚みから、後述の表面層及び圧縮変形層の厚みを差し引くことにより求める。
【0039】
発泡層の硬度は、デュロメータ硬度でHDA10以上であることが好ましく、より好ましくはHDA30以上である。デュロメータ硬度が、これ以上の範囲であると、圧縮時の反発力が十分高く、金型追従性を十分に発現することができる。また、発泡成型体に耐衝撃性を付与する観点から、デュロメータ硬度は、HDA89以下が好ましく、より好ましくはHDA85以下である。HDAがこれ以上であると、見掛け密度が高過ぎる発泡層では、硬度が高過ぎて、衝撃エネルギーを十分に吸収することができない。
発泡層の硬度は、発泡成型体を切り出した断面方向から測定され、発泡層のデュロメータ硬度は、JIS K7215:1986に準拠して、荷重1kgfで加圧してから1秒以内に測定された値とする。そして、発泡層についてデュロメータ硬度を30箇所測定し、その相加平均値を発泡層のデュロメータ硬度とする。デュロメータ硬度の測定は、硬度計(例えば、ASKER社製 商品名「DUROMETER HARDNESS TYPE A」など)を用いて行うことができる。
【0040】
[[圧縮変形層]]
圧縮変形層は、表面層と発泡層との間に存在し、圧縮により、発泡粒子内部の気泡が変形し、また独立気泡体によりセル内圧が上昇するために、冷却時の温度変化による体積収縮能をもたないよう調整される。
さらに、適切な厚みの圧縮変形層を形成することにより、表面層の冷却固化における歪や、意図せずして軟化した発泡層の収縮変形による歪を吸収し、表面の意匠面に良好な金型追従性を発現させる機能を付与させることができる。
【0041】
圧縮変形層を構成する発泡粒子のH/Lの平均値(本明細書中で「平均H/L」とも称する)は、0.50以下であり、0.47以下であることが好ましく、0.45以下であることが更に好ましい。
圧縮変形層を構成する発泡粒子の圧縮率はH/Lで表すことができ、平均H/Lが0.5以下であると、発泡粒子内部の独立気泡内の空気による線膨張変化に対して、加熱により軟化した樹脂が追従し、変形する現象が生じない。
一般的な樹脂の溶融温度が100℃〜300℃である場合、室温(300K)までの冷却による空気の体積収縮が20〜48%見込まれるため、この体積収縮分である加圧圧縮を発泡粒子へ加えることにより、冷却過程での空気の体積収縮にともなう発泡成型体の収縮変形を抑制することが可能となる。したがって、圧縮率H/Lを0.50以下とする。
また、圧縮変形層の発泡粒子の平均H/Lが0.1以上であれば、圧縮弾性率が低く、発泡成型時の金型追従性を高めることができるため好ましい。
【0042】
圧縮変形層の厚みは、0.2mm以上が好ましい。この厚み以上であると、発泡層の発泡粒子の冷却に伴う収縮応力を吸収し、表面平滑性及び意匠面の写像性を保つことができる。より好ましくは0.5mm以上、更に好ましくは0.7mm以上である。
圧縮変形層の厚みは、軽量化の観点から、10mm以下であることが好ましく、5mm以下がより好ましい。
なお、圧縮変形層の厚みは、後述する実施例記載の方法によって求める。
【0043】
[[表面層]]
表面層は、樹脂隔壁により独立した複数の気泡構造が連続して存在しない層であり、表面層を形成する過程などで例外的に生じる単独の気泡構造が内部に存在していてもよい。樹脂隔壁により独立した気泡構造が連続して存在する層は、圧縮変形層または発泡層とする。
表面層の厚みは、特に限定されないが、機械特性を発現する観点から、0.1mm以上が好ましい。0.1mm以上であると、耐衝撃性を発現できる。また、曲げ強度、圧縮強度の観点から、表面層の厚みは、0.2mm以上であることが好ましいが、発泡成型体の軽量化の観点から5mm以下が好ましい。
なお、表面層の厚みは、後述する実施例記載の方法によって求める。
【0044】
また、表面層と圧縮変形層の界面における接着強度の観点から、表面層と圧縮変形層および発泡層が同一種類の樹脂からなることが好ましい。同一種類の樹脂とは、可塑剤や熱安定剤などの添加剤を除いた樹脂成分が、JIS K−6899−1:2006による分類上の同一の樹脂からなることを指す。より具体的には、前記JIS規格の「5.ホモポリマー材料,コポリマー材料及び天然高分子材料に関する略語」と「6.特性を示す記号」との組み合わせを用いて同一の樹脂として分類されるものを同一種類とする。
たとえば、表面層と圧縮変形層と発泡層がともに、変性ポリフェニレンエーテル樹脂である場合は同一種類の樹脂である。
また、たとえば、表面層と圧縮変形層と発泡層がいずれも、ポリアミド6樹脂とポリアミド66樹脂との混合物を基材樹脂とする発泡粒子で構成されている場合は、ポリアミド6樹脂もポリアミド66樹脂もポリアミドのホモポリマーとして分類されるため、同一種類の樹脂からなるものである。この場合、上記3層を構成する樹脂混合物の間でポリアミド6樹脂とポリアミド66樹脂との混合比率が異なっていても、同一種類の樹脂からなるとする。
【0045】
表面層のデュロメータ硬度は、HDA90以上であることが好ましく、より好ましくはHDA92以上である。表面層のデュロメータ硬度が前記範囲以下であると、十分な耐擦傷性が得られない。
表面層のデュロメータ硬度は、表面層の上面、すなわち、意匠面に対して、JIS K7215:1986に準拠して、荷重1kgfで加圧してから1秒以内に測定された値とする。そして、表面層においてデュロメータ硬度を30箇所測定し、その相加平均値を表面層のデュロメータ硬度とする。
【0046】
[[表面層の上面(意匠面)の写像性]]
本実施形態の発泡成型体の表面層の上面(意匠面)の平滑性を示す指標として、写像性測定装置を用いて評価した写像性(%)を使用することができる。写像性が高い程、表面平滑性に優れる。
本実施形態の発泡成型体では、特に限定されないが、意匠面の写像性が30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、更に好ましくは70%以上である。意匠面の写像性が上記範囲であると、十分な表面平滑性を有し、意匠面に良好な写像鮮明性を付与することができる。
意匠面が平坦である場合の表面平滑性は以上のような評価方法で評価することができる。
【0047】
一方、意匠面を曲面形状としたり、意匠面にシボ形状のような微細凹凸形状を付与してもよい。これら形状は、金型形状を適宜選択することにより、付与することができる。
この場合、上記のような写像性測定装置を用いて意匠面の写像性を測定することができないが、意匠面が平坦である場合と同様の本実施形態の製造方法によって、金型追従性が良く、意匠性に優れた発泡成型体を提供することができる。
【0048】
[発泡成型体の製造方法]
本実施形態の発泡成型体の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の第一実施形態、第二実施形態などが挙げられる。
第一実施形態:樹脂を含む予備発泡粒子を発泡及び融着させて、発泡粒子で構成される発泡層からなる発泡体を形成する工程と、前記発泡体を、前記樹脂のガラス転移点(Tg)又は融点以上の温度に加熱した発泡成型用金型の内部に配置し、発泡体を予備加熱する工程と、プレス機構により、前記発泡体を金型寸法へ圧縮して、表面層と圧縮変形層とを形成する工程と、前記金型を冷却し、前記表面層を固化せしめて、本発明における意匠面を有する発泡成型体を得る工程と、を含む方法。
第二実施形態:樹脂を含む予備発泡粒子を発泡成型用金型の内部に充填する工程と、前記予備発泡粒子を融着せしめる温度の熱媒を前記金型の内部に投入し発泡及び融着させて、発泡粒子で構成される発泡層からなる発泡体を形成する工程と、前記金型を前記樹脂のTg又は融点以上の温度まで加熱して、前記発泡体を予備加熱する工程と、プレス機構により、前記発泡体を金型寸法へ圧縮して、表面層と圧縮変形層とを形成する工程と、前記金型を冷却し、前記表面層を固化せしめて、本発明における意匠面を有する発泡成型体を得る工程と、を含む方法。
【0049】
[[第一実施形態の製造方法]]
以下、本発明の発泡成型体の製造方法の第一実施形態(以下、「第一実施形態の製造方法」と称する)について具体的に述べる。
第一実施形態の製造方法では、樹脂を含む予備発泡粒子を発泡及び融着させて、発泡粒子で構成される発泡層からなる発泡体を形成する工程と、
前記発泡体を、前記樹脂のガラス転移点(Tg)又は融点以上の温度に加熱した発泡成形用金型の内部に配置し、予備加熱する工程と、
プレス機構により、前記発泡体を金型寸法へ圧縮して、表面層と圧縮変形層とを形成する工程と、
前記金型を冷却し、前記表面層を固化せしめて、発泡成型体を得る工程と、
を含むことを特徴とする。
【0050】
以下、圧縮成型を行う前の発泡体の成形について説明する。
【0051】
−−発泡体−−
発泡体は、予備発泡粒子が最終段階の発泡を行われ相互に融着した成形体である。即ち、本実施形態の発泡体は、少なくとも2個以上の予備発泡粒子が最終段階の発泡に供されてなる発泡粒子が互いに融着した部分を少なくとも有する成形体である。
【0052】
−発泡体成形工程−
予備発泡粒子を発泡体へ成形する方法としては、特に限定されないが、例えば、予備発泡粒子を成形用金型のキャビティ内に充填し、加熱することによって、発泡を生じさせると同時に予備発泡粒子同士を熱融着させた後、冷却により生成物を固化し、成形することができる。ここで、予備発泡粒子の充填方法は、特には限定されないが、例えば、金型を多少開けた状態で予備発泡粒子を充填するクラッキング法、金型を閉じたままの状態で加圧圧縮した予備発泡粒子を充填する圧縮法、金型に加圧圧縮した予備発泡粒子を充填した後に上記クラッキング法を行う圧縮クラッキング法等が挙げられる。
【0053】
本発明では、予備発泡粒子の気泡に一定のガス圧力を付与して、粒子内部の気泡の大きさ(セルサイズ)を均一にする観点から、予備発泡粒子を成形用金型のキャビティ内に充填する前に、予備発泡粒子に対してガスによる加圧処理を行うことが好ましい。加圧処理に用いるガスとしては、特には限定されないが、難燃性、耐熱性、寸法安定性の観点から、無機ガスを用いるのが好ましい。無機ガス及び加圧処理の方法については、前述のポリアミド系樹脂に発泡を生じさせる方法において発泡前の予備発泡粒子に対して施されるガスによる加圧処理の場合と同様である。
【0054】
予備発泡粒子を発泡体へ成形する際に用いられる熱媒体は、汎用の熱媒体としてよく、発泡体の酸化劣化を抑制する観点から、飽和水蒸気や過熱水蒸気であることが好ましく、発泡体に対して均一な加熱を可能にする観点から、飽和水蒸気が更に好ましい。
上記発泡体の製造は、上記予備発泡粒子を閉鎖した金型内に充填、発泡させて得る方法、密閉し得ない金型内に充填して加熱し、予備発泡粒子を相互に融着させる方法のいずれを採用してもよい。樹脂種と成形条件によっては汎用の型内発泡自動成形機を使用することができる。
【0055】
また、第二実施形態の製造方法について後述するように、予備発泡粒子を二段階で加熱して発泡及び融着させて発泡体へ成形してもよい。
上述のように成形した発泡体は、金型から取り出す前に、水冷ノズルでキャビティ内に冷却水を供給することによって、冷却してもよい。
【0056】
発泡層、圧縮変形層および表面層のうちの1又は2層を構成する各発泡体を別個に成形し、各発泡体を金型内に所望する順番で積層して配置して、後述する圧縮成型を行ってもよい。
あるいは、発泡層または発泡層および圧縮変形層を構成する1の発泡体を予め成形し、当該発泡体を別の金型内に配置した上に圧縮変形層および表面層用または表面層用の予備発泡粒子を積層充填し発泡成形し、新たに得られた発泡体に後述する圧縮成型を行ってもよい。
あるいは、発泡層または発泡層および圧縮変形層を構成する1の発泡体を予め成形し、当該発泡体を金型内に配置した上に圧縮変形層および表面層用または表面層用の予備発泡粒子を積層充填して、第二実施形態について後述する型内発泡成形および圧縮成型を行ってもよい。
例えば、発泡成型体の各層を構成する各基材樹脂の融点又はガラス転移温度が互いに異なる場合、具体的には、各基材樹脂が、同一種類の樹脂として分類される混合物であるが混合比率が大幅に異なる場合、または、互いに異なる種類の樹脂である場合は、上記のような手法が有効であり得る。
【0057】
第一実施形態の製造方法では、上記発泡体に、以下の予備加熱工程、圧縮工程、及び冷却工程を行って、上記発泡体を圧縮成型することにより、発泡成型体を得る。
以下、第一実施形態の製造方法における圧縮成型の各工程について説明する。
【0058】
−予備加熱工程−
第一実施形態の製造方法では、圧縮工程の前に、発泡体を、非晶性熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上、または結晶性熱可塑性樹脂の融点温度以上で加熱する予備加熱工程を実施することが好ましい。予備加熱工程を実施することによって、発泡体の表面部を溶融流動化させ、また圧縮変形層を形成させたい部位を選択的に加熱、軟化させることができる。その後に圧縮と金型の急冷却工程を実施することによって、表面部に写像鮮明性の良い平滑な表面層と圧縮変形層とが形成された発泡成型体を得ることができる。
【0059】
−−加熱条件−−
樹脂が非晶性樹脂の場合、予備加熱工程における発泡体の加熱温度は、ガラス転移温度を「Tg(℃)」として、Tg℃以上で且つ(Tg+100)℃未満であることが好ましく、(Tg+10)℃以上で且つ(Tg+90)℃未満であることがより好ましい。発泡体の加熱温度が低過ぎると、溶融した樹脂の流動性が悪く、得られる意匠面に発生した気泡が消失せず、発泡成型体の意匠面の意匠性が低下する虞れがある。また、発泡体の加熱温度が高過ぎると、発泡層内部まで加温され、冷却時に収縮するため、圧縮時に弾性反発力が得られず、表面の平滑性が低下する虞れがある。
【0060】
なお、非晶性樹脂のガラス転移温度は、JIS K7121に準じて、示差走査熱量測定(DSC)により測定した値を指す。測定で現れた吸熱を示すピークを樹脂の融解を示すピークとし、最も高温側に現れた吸熱を示すピークにおける温度を、ガラス転移温度とする。測定装置としては、市販の示差走査熱量計を用いてよく、エスアイアイナノテクノロジー社から商品名「DSC6220型」が挙げられる。
【0061】
なお、本発明において、非晶性樹脂のガラス転移温度は、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法で測定する。但し、サンプリング方法・温度条件に関しては以下のように行う。示差走査熱量計装置を用いアルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう試料を約6mg充てんして、窒素ガス流量20mL/分のもと、試料を30℃から290℃まで昇温(1st Heating)し290℃に10分間に亘って保持した後に290℃から30℃まで降温(Cooling)し、30℃で10分間に亘って保持した後に30℃から290℃まで昇温(2nd Heating)した時のDSC曲線を得た。なお、全ての昇温速度及び降温速度は10℃/分で行い、基準物質としてアルミナを用いる。
【0062】
発泡樹脂が結晶性樹脂の場合、融点温度を「Tm(℃)」とした時に、Tm℃以上で且つ(Tm+100)℃未満が好ましく、(Tm+10)℃以上で且つ(Tm+90)℃未満がより好ましい。発泡成型体の加熱温度が低過ぎると、溶融樹脂の流動性が悪く、得られる意匠化表面に発生した気泡が消失せず、これにより発泡成型体の意匠性が低下する虞れがある。また、発泡成型の加熱温度が高過ぎると、発泡層内部まで加温され、冷却時に収縮するため、圧縮時に弾性反発力が得られず、表面の平滑性が低下する虞れがある。
【0063】
結晶性樹脂の融点は、以下の手順で測定を行う。樹脂6mgを試料として採取する。示差走査熱量計装置を用い、装置内で流量20mL/分の窒素ガス流の下、試料を10℃/分の昇温速度で30℃から290℃まで昇温して290℃にて試料を10分間に亘って保持する。その後、試料を装置から速やかに取出して30℃まで冷却した後、装置内で、流量20mL/分の窒素ガス流の下、10℃/分の昇温速度で試料を290℃まで再度、昇温した時に得られるDSC曲線より融点(中間点)を算出する。測定においては基準物質としてアルミナを用いる。なお、示差走査熱量計装置としては、例えば、エスアイアイナノテクノロジー社から商品名「DSC6220型」にて市販されている示差走査熱量計装置を用いることができる。
【0064】
予備加熱工程における温度は、上記の範囲であれば、2段階以上の任意の昇温速度で昇温しても構わない。また意匠化する面が両側の金型の場合は冷却後の成形品そりを抑制するために、複数の金型を異なる温度に設定して予熱してもよい。
【0065】
金型の熱源は、昇温速度の観点から、水蒸気が好ましい。加熱の均一性の観点から飽和水蒸気が好ましいが、飽和水蒸気を過熱した過熱水蒸気を使用してもよい。
【0066】
また、予備加熱工程では、発泡体を圧縮しないことが好ましい。発泡体を圧縮せずに予備加熱工程を実施することによって、加熱溶融により発泡体表面に生じる解放気泡を効率的に除外できる。
【0067】
−圧縮工程−
圧縮工程は、油圧式によるプレス機構、またはサーボ駆動機構による電動式によるプレス機構などがある。特に、圧縮変形層を形成する際に、位置制御による駆動機構を使用することで、冷却速度に合わせて段階的に圧縮動作を行い、常時発泡層の持つ弾性反発力により金型追従性を得た状態で圧縮でき、平坦性が向上するという観点で好ましい。
【0068】
−−圧縮条件−−
圧縮工程における発泡体の圧縮は、得られる発泡成型体の圧縮変形層の平均H/Lが0.5以下となるように調整することが好ましい。
発泡体の圧縮率の調整は、発泡体への加圧度を調整することによって行うことができる。例えば、発泡体の圧縮変形率を調整する方法としては、発泡体をその厚み方向に押圧部材によって挟持し、これらの押圧部材によって発泡体に付加する押圧力を調整する方法などが用いられる。この時、発泡体の外方、例えば、発泡体の幅方向又は長さ方向における両端部外側にスペーサを配置することが好ましい。スペーサの高さを調整することによって発泡体への加圧度や発泡体の圧縮変形率を容易に調整することが可能となる。
【0069】
なお、スペーサを用いる場合、スペーサは、発泡体の外方に配置すればよく、例えば、発泡体の幅方向又は長さ方向における両端部外側に少なくとも配置すればよく、発泡体の幅方向における両端部外側及び長さ方向における両端部外側の双方に配置してもよい。
また、プレス機構そのものを段階的に加圧できるようなサーボ機構を具備することにより、任意に圧縮率を調整でき、冷却速度に合わせた圧縮ができる観点から好ましい。
このような圧縮機構を備えた装置として、特開2015−112827号公報に開示されているような可動金型を備えた特殊な圧縮成型用金型を好適に使用することができる。
【0070】
−冷却工程−
冷却工程は、冷媒を使用した冷却方法を好適に実施することができる。
この冷却工程は圧縮工程と同時に行うことが、圧縮変形層の厚みを調整できる観点から好ましい。
また、冷却速度が速いほど好ましく、少なくとも意匠面を形成する側の金型として、冷却媒体と加熱媒体を具備した急速加熱と急速冷却が可能なヒートアンドクール金型を用いることが好ましい。
【0071】
−−冷却条件−−
樹脂が非晶性樹脂である場合、冷却温度は、樹脂のTg以下であることが好ましく、さらに好ましくはTg−10℃以下である。
樹脂が結晶性樹脂である場合、冷却温度は、樹脂のTm以下であることが好ましく、さらに好ましくはTm−10℃以下である。
【0072】
[[第二実施形態の製造方法]]
以下、本発明の発泡成型体の製造方法の第二実施形態(以下、「第二実施形態の製造方法」と称する)について述べる。
第二実施形態の製造方法は、発泡成型用金型内で予備発泡粒子を発泡及び融着させ、発泡体形成を行うと同時に、プレス駆動による圧縮変形層の形成と、加熱、冷却による表面層形成とを行う方法である。この方法は、発泡成型用金型内部にヒートアンドクール機能を付与し、さらに上記第一実施形態の製造方法で示したような圧縮機構を前記金型に付与することにより、発泡成型体の成型と同時に、表面層、圧縮変形層を形成でき、製造コストを大幅に低減できる観点から、望ましい。
【0073】
より具体的には、第二実施形態の製造方法は、
1)樹脂を含む予備発泡粒子を、発泡成型用金型の内部に充填する工程;
2)予備発泡粒子を融着せしめる温度の熱媒を前記金型の内部に投入し発泡及び融着させて、発泡粒子で構成される発泡層からなる発泡体を形成する工程;
3)前記金型を前記樹脂のTg又は融点以上の温度まで加熱して、前記発泡体を予備加熱することにより、金型表面樹脂を溶融する工程;
4)プレス機構で前記発泡体を金型寸法へ圧縮し、表面層と圧縮変形層とを形成する工程;及び
5)前記金型を冷却し、前記表面層を固化せしめて、発泡成型体を得る工程;
を含む。
なお、上記第二実施形態の製造方法において、工程5)と同時に、水冷ノズルで前記金型内に冷却水を供給して、発泡成型体を冷却してもよい。
【0074】
本発明の発泡成型体の第二実施形態の製造方法では、上記1)及び2)の型内発泡成形の工程として、以下の工程:
予備発泡粒子を発泡成形用金型のキャビティ内に充填する工程と、
キャビティ内に予備発泡粒子の熱融着温度以下の水蒸気を5〜30秒間供給して、予備発泡粒子を予備的に加熱する、前加熱工程(第一段階の加熱)と、
キャビティ内に予備発泡粒子の熱融着温度以上の水蒸気を20〜120秒間供給して、予備発泡粒子を発泡させ、且つ熱融着させることによって、樹脂発泡体を得る、後加熱工程(第二段階の加熱)と、を含んでもよい。
言い換えると、第二実施形態の製造方法では、発泡成型用金型内で、予備発泡粒子を二段階で加熱することによって、型内発泡成形を行い、発泡体を得てもよい。
【0075】
二段階での加熱によれば、第一段階に、予備発泡粒子の熱融着温度以下の水蒸気で予備発泡粒子を予備的に加熱することによって、予備発泡粒子の集合体全体における温度分布をより均一にすることができる。そして、この第一段階の予備的な加熱により、第二段階に、熱融着温度以上の水蒸気で予備発泡粒子を加熱した際に、予備発泡粒子における発泡がより均一なものとなり、予備発泡粒子を発泡体に成形しやすくなる。
また、この方法によれば、結晶性樹脂を用いて得られる結晶性樹脂発泡成型体において、樹脂の結晶子サイズがより大きくなり、また、結晶化度がより高くなり、ひいては、耐熱性に優れた発泡成型体を得ることができる。
【0076】
熱可塑性樹脂の予備発泡粒子を加熱する際の温度としては、前述の通り、熱可塑性樹脂の予備発泡粒子の熱融着温度(Tf)近傍であることが望ましい。
なお、熱融着温度とは、予備発泡粒子を飽和水蒸気内において加熱し、予備発泡粒子同士が融着する温度を指す。熱融着温度の測定方法は、次の通りである。予備発泡粒子を、気泡内部の圧力が大気圧であり、炭化水素等の発泡剤を含んでいない状態にする。この予備発泡粒子10gを金属メッシュの容器に予備発泡粒子同士が接触するように入れ、次いで、所定温度の飽和蒸気で30秒間加熱する。そして、加熱後に予備発泡粒子同士が全体で80%以上融着していた温度のうちの最低の温度(℃)を、予備発泡粒子の熱融着温度とする。
【0077】
第一段階の加熱温度は、Tf(℃)より低い温度であることが望ましく、Tf−20℃以上であることが好ましく、Tf−15℃以上であることが更に好ましく、また、Tf−2℃以下であることが好ましく、Tf−5℃以下であることが更に好ましい。
第一段階の加熱時間は、2秒以上であることが望ましく、3秒以上であることが更に望ましく、20秒以下であることが望ましく、15秒以下であることが更に望ましい。
【0078】
第二段階の加熱温度は、Tf(℃)より高い温度であり、Tf+15℃以下であることが好ましく、Tf+10℃以下であることが更に好ましく、Tf+5℃以下であることが特に好ましい。
第二段階の加熱時間は、10秒以上であることが望ましく、15秒以上であることが更に望ましく、60秒以下であることが望ましく、45秒以下であることが更に望ましい。
【0079】
第一段階及び第二段階の加熱温度及び加熱時間を、上記範囲とすれば、結晶性樹脂の予備発泡粒子同士を十分に発泡及び熱融着させることができ、また、樹脂の結晶化がより促進された発泡成型体を得ることができる。
【0080】
第二実施形態の製造方法の上記3)の工程では、上記1)及び2)の型内発泡成形の工程によって形成された発泡体を、第一実施形態の製造方法の予備加熱工程について上述した加熱条件に従って、加熱すればよい。この加熱によって、発泡体の表面部を溶融流動化させ、また圧縮変形層を形成させたい部位を選択的に加熱、軟化させることができる。その後に4)の圧縮工程と5)の金型の急冷却工程を実施することによって、表面部に写像鮮明性の良い平滑な表面層と圧縮変形層とが形成された発泡成型体を得ることができる。
【0081】
第二実施形態の製造方法の上記4)の工程は、第一実施形態の製造方法について上述した圧縮工程と同様に行えばよい。
なお、プレス機構は、充填時の片開き、充填後にクラッキングを押す通常の型内発泡成形機のフレーム部位と圧縮により圧縮変形層を形成するための可動駒を備えた金型を組み合わせて使用することができる。
【0082】
第二実施形態の製造方法の上記5)の工程における金型の冷却は、第一実施形態の製造方法の冷却工程と同様に行えばよい。
また、金型の冷却と同時に、水冷ノズル等で発泡成型用金型内に冷却水を供給して、発泡成型体を冷却することが好ましい。
【0083】
[[発泡成型用金型]]
発泡成型に使用される発泡成型用金型としては、特に限定されないが、少なくとも1つはヒートアンドクール金型であることが好ましい。
ヒートアンドクール金型は、成型時に使用される、少なくとも2つ(例えば、コア金型、キャビ金型)の金型のうちの意匠面を形成する側の金型に具備されていればよく、2つの金型に具備されてもよい。
それ以外は、特に限定されず、発泡成型体の製造に使用される一般的な材質や形状の金型を用いることができる。
【0084】
発泡成型用金型の表面は、発泡成型体の表面が、鏡面形状、多面体レンズカット形状、円錐状シボ形状、つやけし層などの所望形状となるような反転形状を有することができる。
【0085】
[[表皮材]]
本実施形態の発泡成型体は、表面層の上面(すなわち、意匠面)に表皮材を更に備えていてもよい。また、本実施形態の発泡成型体において、表面層と接着した表皮材が意匠面を形成してもよい。
表皮材を備える発泡成型体は、特に限定されないが、例えば、上記第一実施形態の製造方法、上記第二実施形態の製造方法において、表皮材を予め配置した発泡成型用金型の内部に、発泡体を配置し又は予備発泡粒子を充填して、発泡成形することによって得てもよい。
【0086】
表皮材としては、フィルム表面もしくはハードコート層下面が印刷面や、蒸着、スパッタやメッキされた金属光沢面からなる加飾フィルムを好適に使用することができる。
また植毛フィルムやフェルトなどの不織布体でもよい。
【0087】
印刷の絵柄層は種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される。模様としては、木目模様、大理石模様等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等があり、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様もある。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、及び黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成される。
【0088】
金属光沢や質感をもたらす装飾性素材として、フィルム上に蒸着、スパッタ、メッキ法などにより金属層を形成したものを意匠面として使用することができる。
【0089】
不織布体としては、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、フェノール系繊維、再生繊維等の合成繊維及び木材パルプ、麻パルプ、コットンリンターパルプ等の天然繊維から選ばれる繊維、ガラスファイバーの様な無機繊維を単独あるいは複数混合して使用することができる。
【実施例】
【0090】
以下実施例により本発明の実施態様を説明する。ただし、本発明の範囲は実施例によりなんら限定されるものではない。
実施例及び比較例で用いた評価方法について以下に説明する。
【0091】
(1)表面層厚み
発泡成型体を表面に対して垂直方向に切断し、得られた断面をマイクロスコープ(VHX−2000 キーエンス株式会社)で観察した。具体的には、
図1のような断面図の画像を取得する。断面図の画像上で発泡粒子の断面形状を観察して、独立気泡の有無によって表面層と圧縮変形層との境界を特定する。表面層は、樹脂隔壁により独立した複数の気泡構造が連続して存在しない層であり、表面層を形成する過程などで例外的に生じる単独の気泡構造が内部に存在していてもよい。樹脂隔壁により独立した気泡構造が連続して存在する層は、圧縮変形層または発泡層とする。圧縮変形層を構成する発泡粒子の断面形状を観察し、アスペクト比(長軸径/短軸径)が最大値をとる短軸方向を、圧縮方向として特定する。
図2の模式図のように、発泡成型体の表面S上の任意の1点から内側I方向に見て、ビーズ形状の内部に発泡形態が観察される最初の発泡粒子(以下、「第1ビーズ」と称する)を特定し、ビーズの圧縮方向に2直線と、圧縮方向に対して垂直な方向の2直線とで、第1ビーズを囲む長方形を作成する。その長方形において、圧縮方向に対して垂直な方向の2直線が第1ビーズと接する点を、各々、ビーズ上部点(発泡粒子上部点U)、ビーズ下部点(発泡粒子下部点D)とする。その第一ビーズ上部点から圧縮方向と平行に計測した表面Sまでの距離を、同様に30点加算平均したものを表面層厚みとする。
【0092】
(2)圧縮変形層のH/Lの計測
発泡成型体の断面をマイクロスコープVHX−2000付随の解析ソフトの測長機能を用いて観察した。上記(1)表面層厚みを求める方法と同様にして、複数のビーズの上部と下部を求め、さらに表面Sから内側Iへの法線方向とビーズが接する2点の距離をビーズ幅(L)とし、ビーズ上部と下部の距離を(H)とし、H/Lを算出した。H/Lが0.5以下となるビーズを圧縮変形ビーズとした。
【0093】
(3)圧縮変形層厚みの計測
圧縮変形層の厚みは、表面からみて上記第1ビーズの上部点とH/Lが0.5以下の最下部のビーズの下部点の距離の30点加算平均することにより算出される。
【0094】
(4)発泡成型体の独立気泡率
なお、独立気泡率S(%)は、下記式(1)で表される式により算出される。
S(%)={(Vx−W/ρ)/(Va−W/ρ)}×100
・・・(1)
式中、Vxは、発泡成型体の真の体積(cm
3)であり、Vaは、発泡成型体の見かけの体積(cm
3)であり、Wは、発泡成型体の重量(g)であり、ρは、発泡成型体の基材樹脂の密度(g/cm
3)である。見かけの体積は発泡成型体の外形寸法から算出される体積、真の体積は発泡成型体の空隙部を除いた実体積をそれぞれ意味する。
発泡成型体の真の体積はピクノメータを用いて測定することにより得られる。
【0095】
(5)発泡層を構成する発泡粒子の発泡倍率
発泡成型体の発泡層を構成する発泡粒子の発泡倍率は、最終製品である発泡成型体を断面方向に観察して、発泡層と定義される部分を切り出し、基材樹脂の密度(g/cm
3)を当該発泡層部分の見掛け密度(g/cm
3)で除することにより算出した。発泡層部分の見掛け密度は、JIS K7222:2005に準拠して測定することができる。
発泡成型体の発泡層を構成する発泡粒子の発泡倍率は、基材樹脂の密度(g/cm
3)を圧縮成型前の発泡体(「樹脂発泡体」とも称する)の見掛け密度(g/cm
3)で除することにより算出してもよい。
また、後述する予備発泡粒子の発泡倍率は、予備発泡粒子の見掛け密度を、基材樹脂の密度で除して算出した。
【0096】
(5)発泡成型体の金型追従性
発泡成型体の表面層側の目視評価を行い、下記基準に従って、金型追従性を評価した。
○:欠陥は確認されず、金型の反転形状の成型体表面が形成されているもの
×:欠陥は確認されないが、金型表面とは異なる、表面うねりが観察されるもの
××:空孔などの陥没欠陥が観察されるもの
【0097】
(6)発泡成型体の写像性
写像性測定器(スガ試験機(株)製ICM−1T)を用いて、発泡成型体の意匠面の写像性を評価した。
写像性は以下の式で評価した。
C(n)=(M−m)/(M+m)×100
ここで、nはスリットの幅であり、Mは受光側スリットの透過光量であり、mは受光側スリット遮光部の漏れ光量である。
発泡成型体の意匠面の写像性は、受光側のスリット幅=0.125mmで評価した。
写像性(%)の数値が大きい程、写像性に優れる。例えば、完全な写像性が得られる光学ミラーの場合、受光側スリットで完全に遮光されて漏れ光量m=0となるため、写像性は100%となる。
【0098】
(7)デュロメータ―硬度
デュロメータ硬度の測定は、硬度計(例えば、ASKER社製 商品名「DUROMETER HARDNESS TYPE A」など)を用いて、発泡層のデュロメータ硬度は、JIS K7215に準拠して、荷重1kgfで加圧してから1秒以内に測定された値とする。そして、発泡層についてデュロメータ硬度を30箇所測定し、その相加平均値を発泡層のデュロメータ硬度とした。
表面層のデュロメータ硬度は、表面側から荷重1kgfで加圧してから1秒以内に測定された値とする。そして、表面層についてデュロメータ硬度を30箇所測定し、その相加平均値を発泡層のデュロメータ硬度とした。
【0099】
(8)曲げ弾性率
発泡成型体の曲げ弾性率の測定は、JIS K7171(2008)に従って実施した。発泡成型体を、あらかじめ真空下で40℃、24時間以上乾燥させたのち、島津製作所製オートグラフ(AG−5000D)型を用いて、表面層側から荷重をかけることで曲げ弾性率(MPa)を計測した。
曲げ弾性率が130MPaより大きいものを剛性◎、100MPa以上130MPa以下のものを剛性〇、100MPaより小さいものを剛性×と評価した。曲げ弾性率の数値が大きい程、剛性に優れる。
【0100】
以下、第一実施形態の製造方法について実施例及び比較例を示す。
【0101】
[樹脂発泡体の製造例1、2(A−1、A−2)]
ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)(商品名:ザイロンTYPES201A、旭化成(株)製、20℃における表面張力40mN/m)を60質量%、汎用ポリスチレン樹脂(PS)(商品名:GP685、PSジャパン(株)製)を40質量%加え、押出機にて加熱溶融混練押し出しダイから吐出させたストランドをペレタイザーでペレタイズし、中実ビーズ形状のペレットを得た。このペレットの表面張力は37mN/m、ガラス転移温度Tgは150℃であった。特開平4−372630号公報の実施例1に記載の方法に準じ、基材樹脂としての上記ペレットを耐圧容器に収容し、容器内の気体を乾燥空気で置換した後、発泡剤として二酸化炭素(気体)を注入し、圧力3.2MPa、温度11℃の条件下で3時間かけて基材樹脂としてのペレットに対して二酸化炭素を7質量%含浸させ、基材樹脂ペレットを発泡炉内で攪拌羽させながら加圧水蒸気により発泡させた。予備発泡粒子A−1は、4.3倍、予備発泡粒子A−2は8.7倍の発泡倍率を有した。
得られた予備発泡粒子を耐圧容器に移し、圧縮空気により内圧を0.5MPaまで1時間かけて昇圧し、その後0.5MPaで8時間保持し、加圧処理を施した。これを、型内発泡成形装置の水蒸気孔を有する金型内に充填し、加圧水蒸気0.37MPaで加熱して予備発泡粒子を相互に膨張・融着させた後、冷却し、成形金型より取り出し、発泡体A−1(発泡倍率5.0倍、25mm厚み)及びA−2(発泡倍率10.0倍、25mm厚み)の樹脂発泡体を得た。
【0102】
得られた発泡体を、特開2015−112827号公報に開示されるような、通常のプレス機構に加えて、加熱および冷却機構を備え、加圧圧縮前に効率よく発泡体を予備加熱できるようなヒートアンドクール金型機構を備えた装置を使用して、圧縮成型することにより、発泡成型体を作製した。
なお、前記装置の圧縮機構としては、油圧シリンダー式又はサーボモーター式のものを用いた。
【0103】
[実施例1]
あらかじめ、加熱機構をもつ金型に樹脂発泡体A−1をセットし、発泡体が上金型及び下金型と接触した状態で予備加熱した。この際、意匠面を形成する側である上金型の温度を210℃とし、意匠面を形成しない側である下金型の温度は100℃とした。
加熱時間は30秒とした。
加熱後、油圧シリンダー式の圧縮機構により上金型を10mm圧縮し、圧縮開始と同時に冷却を開始し、90秒後上金型温度が100℃になったところで、金型を開き、表面意匠化された発泡成型体を取り出した。
この発泡成型体の評価結果を表1に示す。
【0104】
[実施例2〜4]
実施例2〜4では圧縮量をそれぞれ7.5mm、5.0mm、2.5mmとし、それ以外は実施例1と同一の条件で加工した。それぞれの評価結果を表1に示す。
【0105】
[実施例5〜8]
実施例5〜8では、A−2の発泡体を加工した以外は、それぞれ実施例1〜4と同一の条件で加工を実施した。評価結果を表1に示す。
【0106】
[比較例1]
上金型による予備加熱時間を10秒とした以外は実施例4と同一の条件で加工した。評価結果を表1に示す。
【0107】
[比較例2]
圧縮量を0mmとした(すなわち、圧縮しなかった)以外は、実施例4と同一の条件で加工した。評価結果を表1に示す。
【0108】
[実施例9]
あらかじめ、加熱機構をもつ金型に樹脂発泡体A−1をセットし、発泡体が上金型及び下金型と接触した状態で加熱した。この際、意匠面を形成する側である上金型の温度を210℃とし、意匠面を形成しない側である下金型の温度は100℃とした。加熱時間は30秒とした。
加熱後、サーボモーター式の圧縮機構により、上金型を1mm圧縮し、4秒保持する圧縮サイクルを10回行い、40秒かけて10mm圧縮した。
圧縮開始と同時に冷却を開始し、40秒後金型温度が100℃になったところで、金型を開き、表面意匠化された発泡成型体を取り出した。
評価結果を表1に示す。
【0109】
[実施例10〜12]
実施例9と同様の手順で樹脂発泡体A−1を加熱後、サーボモーター式の圧縮機構により、4秒保持する圧縮サイクルを等間隔で10回行い、上金型をそれぞれ7.5mm、5mm、2.5mm圧縮した。また、圧縮開始と同時に冷却を開始した。40秒後上金型温度が100℃になったところで、金型を開き、表面意匠化された発泡成型体を取り出した。
評価結果を表1に示す。
【0110】
[実施例13]
あらかじめ、加熱機構をもつ金型に樹脂発泡体A−1をセットし、発泡体が上金型及び下金型と接触した状態で加熱した。この際、意匠面を形成する側である上金型の温度を180℃とし、意匠面を形成しない側である下金型の温度は100℃とした。加熱時間は30秒とした。
加熱後、サーボモーター式の圧縮機構により、上金型を1.5mm圧縮し、4秒保持する圧縮サイクルを5回行い、20秒かけて7.5mm圧縮した。
圧縮開始と同時に冷却を開始し、20秒後金型温度が100℃になったところで、金型を開き、表面意匠化された発泡成型体を取り出した。
結果を表1に示す。
【0111】
[実施例14]
あらかじめ、加熱機構をもつ金型に樹脂発泡体A−1をセットし、発泡体が上金型及び下金型と接触した状態で加熱した。この際、意匠面を形成する側である上金型の温度を210℃とし、意匠面を形成しない側である下金型の温度は100℃とした。加熱時間は60秒とした。
加熱後、サーボモーター式の圧縮機構により、上金型を1mm圧縮し、4秒保持する圧縮サイクルを10回行い、40秒かけて10mm圧縮した。
圧縮開始と同時に冷却を開始し、40秒後金型温度が100℃になったところで、金型を開き、表面意匠化された発泡成型体を取り出した。
結果を表1に示す。
【0112】
[実施例15]
あらかじめ、加熱機構をもつ金型に樹脂発泡体A−1をセットし、発泡体が上金型及び下金型と接触した状態で加熱した。この際、意匠面を形成する側である上金型の温度を210℃とし、意匠面を形成しない側である下金型の温度は100℃とした。加熱時間は60秒とした。
加熱後、サーボモーター式の圧縮機構により、上金型を0.75mm圧縮し、4秒保持する圧縮サイクルを10回行い、40秒かけて7.5mm圧縮した。
圧縮開始と同時に冷却を開始し、40秒後金型温度が100℃になったところで、金型を開き、表面意匠化された発泡成型体を取り出した。
評価結果を表1に示す。
【0113】
[比較例3]
あらかじめ、加熱機構をもつ金型に樹脂発泡体A−1をセットし、発泡体が上金型及び下金型と接触した状態で加熱した。この際、意匠面を形成する側である上金型の温度を210℃とし、意匠面を形成しない側である下金型の温度は100℃とした。加熱時間は90秒とした。
加熱後、サーボモーター式の圧縮機構により、上金型を0.75mm圧縮し、4秒保持する圧縮サイクルを10回行い、40秒かけて7.5mm圧縮した。
圧縮開始と同時に冷却を開始し、40秒後金型温度が100℃になったところで、金型を開き、表面意匠化された発泡成型体を取り出した。
結果を表1に示す。
【0114】
[樹脂発泡体の製造例3(A−3)]
ポリアミド666樹脂(2430A、(株)DSM製、20℃における表面張力46mN/m、表中「PA666」と表記する)タルク0.8%を、押出し機を用いて溶融し、ダイから吐出させたストランドをペレタイザーでペレタイズし、平均粒子径1.4mmの中実ビーズ形状のペレットを得た。このペレットの表面張力は46mN/m、融点は193℃であった。得られたペレットを10℃の圧力釜に投入し、4MPaの炭酸ガスを吹き込み3時間吸収させた。次いで炭酸ガス含浸ペレットを発泡装置に移し、240℃の空気を20秒間吹き込み、ポリアミド予備発泡粒子の集合体を得た。得られたポリアミド予備発泡粒子は、4.2倍の発泡倍率を有し、平均粒子径は2.0mmであった。
得られた予備発泡粒子をオートクレーブ中に封入し、オートクレーブ内の圧力が0.4MPaとなるまで、圧縮空気を1時間かけて導入し、その後、圧力を0.4MPaに24時間保持することによって、予備発泡粒子に加圧処理を施した。
加圧処理した予備発泡粒子を、型内成形金型のキャビティ(キャビティ寸法は、縦:300mm、横:300mm、高さ:25mm)内に充填し、その後、型締めした。そして、この金型を型内発泡成形機に取り付けた。
その後、キャビティ内に105℃の飽和水蒸気を10秒間供給し、その後、キャビティ内に116℃の飽和水蒸気を30秒間供給して、予備発泡粒子を発泡させ、且つ熱融着させることによって、予備発泡粒子を発泡体へ成形した。金型のキャビティ内に冷却水を供給することによって、得られた発泡体を冷却し、その後、型開きを行い、樹脂発泡体A−3を取り出した。樹脂発泡体A−3の発泡倍率は5.0倍であった。
【0115】
[実施例16]
あらかじめ、加熱機構をもつ金型に樹脂発泡体A−3をセットし、発泡体が上金型及び下金型と接触した状態で加熱した。この際、意匠面を形成する側である上金型の温度を210℃とし、意匠面を形成しない側である下金型の温度は100℃とした。加熱時間は30秒とした。
加熱後、サーボモーター式の圧縮機構により、上金型を1mm圧縮し、4秒保持する圧縮サイクルを10回行い、40秒かけて10mm圧縮した。
圧縮開始と同時に冷却を開始し、40秒後金型温度が100℃になったところで、金型を開き、表面意匠化された発泡成型体を取り出した。
結果を表2に示す。
【0116】
[実施例17〜19]
実施例16同様の手順で樹脂発泡体A−3を加熱後、サーボモーター式の圧縮機構により、10回の圧縮サイクルで、上金型をそれぞれ7.5mm、5.0mm、2.5mm圧縮した。また、圧縮と同時に冷却を開始し、40秒後金型温度が100℃になったところで、金型を開き、表面意匠化された発泡成型体を取り出した。
結果を表2に示す。
【0117】
[比較例4]
あらかじめ、加熱機構をもつ金型に樹脂発泡体A−3をセットし、発泡体が上金型及び下金型と接触した状態で加熱した。この際、意匠面を形成する側である上金型の温度を210℃とし、意匠面を形成しない側である下金型の温度は100℃とした。加熱時間は60秒とした。
加熱後、サーボモーター式の圧縮機構により、上金型を0.25mm圧縮し、4秒保持する圧縮サイクルを10回行い、40秒かけて2.5mm圧縮した。
圧縮と同時に冷却を開始し、40秒後金型温度が100℃になったところで、金型を開き、表面意匠化された発泡成型体を取り出した。
結果を表2に示す。
【0118】
以下、第二実施形態の製造方法についての実施例20及び比較例5を示す。
【0119】
[実施例20]
ポリアミド666樹脂(2430A、(株)DSM製)、20℃における表面張力46mN/m)タルク0.8%を、押出し機を用いて溶融し、ダイから吐出させたストランドをペレタイザーでペレタイズし、平均粒子径1.4mmの中実ビーズ形状のペレットを得た。このペレットの融点は193℃であった。得られたペレットを10℃の圧力釜に投入し、4MPaの炭酸ガスを吹き込み3時間吸収させた。次いで炭酸ガス含浸ミニペレットを発泡装置に移し、240℃の空気を20秒間吹き込み、ポリアミド予備発泡粒子を得た。得られたポリアミド予備発泡粒子は、4.2倍の発泡倍率を有し、平均粒子径は2.0mmであった。
得られた予備発泡粒子をオートクレーブ中に封入し、オートクレーブ内の圧力が0.4MPaとなるまで、圧縮空気を1時間かけて導入し、その後、圧力を0.4MPaに24時間保持することによって、予備発泡粒子に加圧処理を施した。
加圧処理した予備発泡粒子を、型内成形金型のキャビティ(キャビティ寸法は、縦:300mm、横:300mm、高さ:25mm)内に充填し、その後、型締めした。そして、この金型を型内発泡成形機に取り付けた。
その後、キャビティ内に105℃の飽和水蒸気を10秒間供給し、その後、キャビティ内に116℃の飽和水蒸気を30秒間供給して、予備発泡粒子を発泡させ、且つ熱融着させることによって、予備発泡粒子を発泡体へ成形した。
その後コア金型に200℃の過熱蒸気を入れ、10秒後に金型温度が210℃になった状態で30秒間保持した。
その後、コア金型に取付けられたサーボモーター式の圧縮機構により、コア金型を2mm圧縮し、4秒保持する圧縮サイクルを5回行い、20秒かけて10mm圧縮した。
圧縮と同時にコア金型を冷却水により20秒間冷却し、また、キャビティ内に冷却水を供給することによって、得られた成型体を20秒間冷却した。
その後、型開きを行い、発泡成型体A−4を取り出した。結果を表2に示す。
【0120】
[比較例5]
実施例20と同様の方法で発泡体までの成形を行い、コア金型を210℃になった状態で30秒間保持後、圧縮せずに冷却を開始した。コア金型を冷却水により20秒間冷却し、また、キャビティ内に冷却水を供給することによって、得られた成型体を20秒間冷却した。
その後、型開きを行い、発泡成型体A−5を取り出した。結果を表2に示す。
【0121】
[実施例21]
あらかじめ、加熱機構をもつ金型に樹脂発泡体A−1をセットし、発泡体が上金型及び下金型と接触した状態で予備加熱した。この際、意匠面を形成する側である上金型の温度を210℃とし、意匠面を形成しない側である下金型の温度は100℃とした。
加熱時間は15秒とした。
加熱後、油圧シリンダー式の圧縮機構により上金型を7.5mm圧縮し、圧縮開始と同時に冷却を開始し、90秒後上金型温度が100℃になったところで、金型を開き、表面意匠化された発泡成型体を取り出した。
この発泡成型体の評価結果を表2に示す。
【0122】
[実施例22〜23]
実施例22〜23では圧縮をそれぞれ5.0mm、2.5mmとし、それ以外は実施例21と同一の条件で加工した。それぞれの評価結果を表2に示す。
【0123】
[樹脂発泡体の製造例4(B−1)]
ポリアミド666樹脂(2430A、(株)DSM製、20℃における表面張力46mN/m、表中「PA666」と表記する)タルク0.8%を、押出し機を用いて溶融し、異形押し出しダイから吐出させたストランドをペレタイザーでペレタイズし、平均粒子径1.4mmの
図4(c)記載の中空断面形状のペレットを得た。このペレットの融点は193℃であった。得られたペレットを10℃の圧力釜に投入し、4MPaの炭酸ガスを吹き込み12時間吸収させた。次いで炭酸ガス含浸ペレットを発泡装置に移し、220℃の空気を20秒間吹き込み、ポリアミド予備発泡粒子の集合体を得た。得られたポリアミド予備発泡粒子は、4.2倍の発泡倍率を有し、平均粒子径は2.0mmであった。
得られた予備発泡粒子をオートクレーブ中に封入し、オートクレーブ内の圧力が0.4MPaとなるまで、圧縮空気を1時間かけて導入し、その後、圧力を0.4MPaに24時間保持することによって、予備発泡粒子に加圧処理を施した。
加圧処理した予備発泡粒子を、型内成形金型のキャビティ(キャビティ寸法は、縦:300mm、横:300mm、高さ:25mm)内に充填し、その後、型締めした。そして、この金型を型内発泡成形機に取り付けた。
その後、キャビティ内に105℃の飽和水蒸気を10秒間供給し、その後、キャビティ内に116℃の飽和水蒸気を30秒間供給して、予備発泡粒子を発泡させ、且つ熱融着させることによって、予備発泡粒子を発泡体へ成形した。金型のキャビティ内に冷却水を供給することによって、得られた発泡体を冷却し、その後、型開きを行い、樹脂発泡体B−1を取り出した。樹脂発泡体B−1の発泡倍率は5.5倍であった。
【0124】
[実施例24]
あらかじめ、加熱機構をもつ金型に樹脂発泡体B−1をセットし、発泡体が上金型及び下金型と接触した状態で予備加熱した。この際、表面層を形成する側である上金型の温度を210℃とし、表面層を形成しない側である下金型の温度は100℃とした。加熱時間は30秒とした。
加熱後、油圧シリンダー式の圧縮機構により上金型を7.5mm圧縮し、圧縮開始と同時に冷却を開始し、90秒後上金型温度が100℃になったところで、金型を開き、樹脂発泡成型体を取り出した。
この発泡成型体の評価結果を表2に示す。
【0125】
[実施例25]
あらかじめ、加熱機構をもつ金型に樹脂発泡体として基材樹脂が無架橋発泡ポリプロピレン(融点142℃、20℃における表面張力25mN/mm、表中「PP」と表記する)であるピーブロック(JSP製 発泡倍率15倍)25mmをセットし、発泡体が上金型及び下金型と接触した状態で加熱した。この際、意匠面を形成する側である上金型の温度を180℃とし、意匠面を形成しない側である下金型の温度は70℃とした。加熱時間は30秒とした。
加熱後、サーボモーター式の圧縮機構により、上金型を0.75mm圧縮し、4秒保持する圧縮サイクルを10回行い、40秒かけて7.5mm圧縮した。
圧縮開始と同時に冷却を開始し、40秒後金型温度が100℃になったところで、金型を開き、表面意匠化された発泡成型体を取り出した。
この発泡成型体の評価結果を表2に示す。
【0126】
[比較例6]
あらかじめ、加熱機構をもつ金型に樹脂発泡体として基材樹脂が無架橋発泡ポリプロピレン(融点142℃、20℃における表面張力25mN/mm、表中「PP」と表記する)であるピーブロック(JSP製 発泡倍率30倍)25mmをセットし、発泡体が上金型及び下金型と接触した状態で加熱した。この際、意匠面を形成する側である上金型の温度を180℃とし、意匠面を形成しない側である下金型の温度は70℃とした。加熱時間は30秒とした。
加熱後、サーボモーター式の圧縮機構により、上金型を0.75mm圧縮し、4秒保持する圧縮サイクルを10回行い、40秒かけて7.5mm圧縮した。
圧縮開始と同時に冷却を開始し、40秒後金型温度が100℃になったところで、金型を開き、表面意匠化された発泡成型体を取り出した。
この発泡成型体の評価結果を表2に示す。
【0127】
[比較例7]
あらかじめ、加熱機構をもつ金型に樹脂発泡体A−1をセットし、発泡体が上金型及び下金型と接触した状態で予備加熱した。この際、意匠面を形成する側である上金型の温度を140℃とし、意匠面を形成しない側である下金型の温度は100℃とした。
加熱時間は30秒とした。
加熱後、油圧シリンダー式の圧縮機構により上金型を7.5mm圧縮し、圧縮開始と同時に冷却を開始し、40秒後上金型温度が100℃になったところで、金型を開き、発泡成型体を取り出した。
意匠面を形成する側である上金型の温度(140℃)が基材樹脂PPの融点(142℃)より低かったため、得られた発泡成型体には表面層が形成されなかった。そのため、圧縮変形層の上面を表面層の上面とみなして、表面層の硬度、意匠面金型追従性、および意匠面写像性を測定し評価した。この発泡成型体の評価結果を表2に示す。
【0128】
【表1】
【0129】
【表2】